(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】再生ポリプロピレンをベースとする熱可塑性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
C08L23/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535550
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021085161
(87)【国際公開番号】W WO2022123000
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マリー・ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ローレン・メジャン
(72)【発明者】
【氏名】フイ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・デヴェール
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB053
4J002BB121
4J002BB142
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
本発明は、(a)規格ASTM D1238に従って230℃において、2.16kgの負荷のもとで測定して、10分当たり10g(10g/10分)~10分当たり15g(15g/10分)で変動するメルトフローインデックスを有する再生ホモポリプロピレン、hPPと、(b)組成物の総質量に対して2質量%~25質量%の特殊なオレフィンの混合物とを少なくとも含む、熱可塑性組成物に関する。このような組成物から開始する成形物品の調製のための方法を、更に対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)規格ASTM D1238に従って230℃において、2.16kgの負荷のもとで測定して、10分当たり10g(10g/10分)~10分当たり15g(15g/10分)で変動するメルトフローインデックスを有する再生ホモポリプロピレン、hPPと、
(b)(i)「第1のコポリマー」と称される、総質量に対して、少なくとも75質量%のプロピレンに由来する単位と、10質量%~25質量%の、直鎖状又は分枝状のC
2又はC
4~10アルケニル単位とを有する、プロピレン/C
2又はC
4~10α-オレフィンコポリマー、及び
(ii)「第2のコポリマー」と称される、均一な直鎖状又は分枝状のエチレン/オクテンコポリマー
を少なくとも含む、組成物の総質量に対して2質量%~25質量%のオレフィンの混合物と
を少なくとも含む、熱可塑性組成物であって、
「第2のコポリマー/第1のコポリマー」質量比が、0.1から0.4の間、特に0.15から0.30の間である、
熱可塑性組成物。
【請求項2】
総質量に対して少なくとも75質量%、実際、更には80質量%~95質量%の再生hPPを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第1のコポリマーが、0.50~0.95g/cm
3の範囲内、好ましくは0.75~0.90g/cm
3の範囲内の密度を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1のコポリマーが、1.5グラム/10分~500グラム/10分、好ましくは2グラム/10分~100グラム/10分で変動するメルトフローインデックス(ASTM D1238による、条件は230℃、2.16kg)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のコポリマーが、総質量に対して少なくとも75質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より優先的には少なくとも83質量%のプロピレンに由来する単位を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のコポリマーのオレフィン成分が、C
2、C
4、C
6及び/又はC
8α-オレフィン、特にエチレン及び/又は1-ブテン、特にエチレンに由来する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
第1のコポリマーとして、少なくとも1種のプロピレン/エチレンコポリマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
第2のコポリマーが、50質量%~98質量%、好ましくは55質量%~90質量%、より優先的には60質量%~85質量%のエチレン含有率を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
「第2のコポリマー/第1のコポリマー」質量比が、約0.2である、又は0.2に等しい、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
総質量に対して2質量%~25質量%、好ましくは5質量%~15質量%、より優先的には8質量%~12質量%の前記オレフィンの混合物を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
透明化剤を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
好ましくは透明であり、成形型において、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を成形することによって得られる、成形物品、特に射出成形物品。
【請求項13】
カプセル、シール、径違い継手、キャップ、特に容器又はボトル用の密封キャップ及びバンド、容器、ボトル、ボトル用プリフォーム、特に身体ケア及び/又はメイクアップ用のものからなる群から選択される、請求項12に記載の成形物品。
【請求項14】
成形物品の製造のための方法であって、
- 請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を利用可能にする、又はこのような組成物を調製する工程と、
- 前記組成物を、特に射出成形によって、前記物品の形状を有する成形型において成形する工程と、
- 前記成形物品を回収する工程と
で構成される工程を少なくとも含む、方法。
【請求項15】
成形物品、特に射出成形物品をブロー成形する工程を更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の再生ポリマーを含む熱可塑性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然資源を保全するために、今日、消費者製品のための包装材料、例えば、シャンプー及びクレンジングジェルボトル等の身体衛生ケア製品の包装、並びに洗濯又は家事クリーニングのための洗剤タイプの製品の包装のポリマーを、これらの使用済み材料を射出成形することによって新たな包装を生産するために、再生するという要請が存在する。この再生工程は、メカニカルリサイクルから生じるポリプロピレンホモポリマーのグレード「hPP」については、すでに十分に確立されており、次の数年で、ケミカルリサイクルによって生産されるhPPの生産も確立される。
【0003】
しかしながら、本発明者らの知る限り、満足な再生ポリプロピレンコポリマーのグレード「copoPP」は存在しない。実際、copoPPは現在、良好な機械的品質及び透明度に起因して、包装製品の場合に特に評価されるポリマー性材料を構成している。米国特許第8426521号は、特定のグレードの再生ポリプロピレンへの特殊なオレフィンの混合物の添加は、このポリプロピレンの機械的特性に関する有益な効果を含むことを教示している。しかしながら、この文献は、再生hPPに由来する組成物の射出成形によって得られる物品について、copoPPで作製された物品の性能品質を得ることに関するものでは決してない。
【0004】
結果として、透明度、衝撃強度及び耐摩耗性に関して、copoPPで作製された物品の性能品質を与えられている再生hPPで作製された物品を利用可能にできることは、明らかに経済的に、及び環境保護に関して有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8426521号
【特許文献2】WO2017/003800
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特にこの必要性を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、主に、
(a)規格ASTM D1238に従って230℃において、2.16kgの負荷のもとで測定して、10分当たり10g(10g/10分)~10分当たり15g(15g/10分)のメルトフローインデックスを有する再生ホモポリプロピレン、hPPと、
(b)(i)「第1のコポリマー」と称される、少なくとも75質量%のプロピレンに由来する単位と、10質量%~およそ25質量%の、直鎖状又は分枝状のC2又はC4~10アルケニル単位とを有する、プロピレン/C2又はC4~10α-オレフィンコポリマー、及び
(ii)「第2のコポリマー」と称される、均一な直鎖状又は分枝状のエチレン/オクテンコポリマー
を少なくとも含む、組成物の総質量に対して2質量%~およそ25質量%のオレフィンの混合物と
を少なくとも含む、熱可塑性組成物であって、
「第2のコポリマー/第1のコポリマー」質量比が、0.1から0.4の間、特に0.15から0.30の間であり、実際、更には約0.2である、又は更には0.2に等しい、
熱可塑性組成物に関する。
【0008】
ASTM D1238規格及びISO 1133規格は、当業者にとっては、メルトフローインデックスという同じ値を導く2つの規格であることに注意するべきである。
【0009】
特に、第1のコポリマーは、プロピレンとエチレンとのコポリマーである。
【0010】
特に、本発明による熱可塑性組成物は、少なくとも1種の透明化剤を更に含むことができる。
【0011】
その態様の別のものによれば、先行のものと組み合わせて、本発明は、好ましくは透明であり、成形型において、上で定義した組成物を成形することによって、特に射出成形することによって得られる、成形物品、特に射出成形物品に関する。
【0012】
このような成形物品、特に射出成形物品は、カプセル、シール、径違い継手、キャップ(例えば、容器若しくはボトル用の密封キャップ)及びバンド、容器、ボトル、ボトル用プリフォーム、又は任意の他の成形物品、特に射出成形物品、例えば、ボトルと連携して、若しくはそれ自体が容器を構成して使用されるもの、例えば、ケース、特に身体ケア及び/若しくはメイクアップ用のものからなる群から選択することができる。
【0013】
このような物品は、当然、非常に多様な使用の専用品とすることができる。
【0014】
その態様のなおも別のものによれば、先行のものと組み合わせて、本発明は、成形物品の製造のための方法であって、
- 上で定義した組成物を利用可能にする、又はこのような組成物を調製する工程と、
- 前記組成物を、特に射出成形によって、前記物品の形状を有する成形型において成形する工程と、
- 前記成形物品、特に射出成形物品を回収する工程と
で構成される工程を少なくとも含む、方法に関する。
【0015】
方法が、組成物を調製する工程を含む場合、この工程は、
- ホモポリプロピレン、hPPと、オレフィンの混合物とを少なくとも含む、組成物の化合物の選択、
- それぞれの割合のこれらの調製、及び
- ミキサーを使用したこれらの混合
を含むことができる。
【0016】
方法は、成形工程、特に射出成形工程の前に、前記成形型において、プロピレンコポリマーをベースとする、例えば、LyondellBasell社により販売されており、25g/10分のMFIを有する、商品名Moplen RP348R-Basellを有するポリプロピレンコポリマーをベースとする少なくとも1種の試験組成物を使用して、成形工程を、特に射出成形によって行うことで構成される試験工程を含むことができる。
【0017】
この場合、方法は、試験工程のために使用したパラメータを使用した、物品の成形、特に射出成形のパラメータの調整を含むことができる。
【0018】
本発明による製造方法はまた、成形物品、特に射出成形物品をブロー成形する工程を含むことができる。この場合、成形、特に射出成形の工程とブロー成形の工程とは、連続的に、これらの間に短時間の間隔を空けて、又はこれらの間に長時間の間隔を空けて行うことができ、長時間の間隔を空ける場合、これら2つの工程の間に、機械の変更及び/又はプリフォームの貯蔵を想定することができる。
【0019】
上記本発明による組成物から物品を製造するための他の技法としては、射出成形の他に、例えば、熱成形、押出成形、押出/ブロー成形、圧縮、回転成形、付加製造、並びにポリマーの形成のための他の公知の技法が挙げられる。この場合、成形物品はこのとき、射出成形物品ではないが、それぞれ、熱成形、押出成形、押出/ブロー成形、圧縮、回転成形又は3D印刷物品であることになる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下の実施例から明らかになるように、本発明者らは、特定のグレードの再生hPPとの、2種の特定のコポリマーの特殊な混合物の組み合わせによって、これらから発生する熱可塑性組成物に、ポリプロピレンコポリマーから形成される熱可塑性組成物の性能品質と同等の性能品質を与えることが可能になることを発見した。すべての予想とは反対に、これら2つのタイプの組成物から製造される熱可塑性物品の機械的特性及び透明度に関する品質は、協調的であることが判明している。
【0021】
上で指定した通り、本発明による熱可塑性組成物は、
(a)規格ASTM D1238に従って230℃において、2.16kgの負荷のもとで測定して、10分当たり10g(10g/10分)~10分当たり15g(15g/10分)のメルトフローインデックスを有する再生ホモポリプロピレン、hPPと、
(b)上で定義した又は下に詳細に記載する、(i)第1のプロピレン/C2又はC4~10α-オレフィンコポリマー、及び(ii)第2の均一なエチレン/オクテンコポリマーを、(ii)/(i)の適用された質量比で、少なくとも含む、組成物の総質量に対して2質量%~およそ25質量%のオレフィンの混合物と
を少なくとも含む。
【0022】
再生hPPホモポリプロピレン
本発明によって検討されるポリプロピレンホモポリマー、hPPは、再生ホモポリマーである。
【0023】
本発明の意味の中では、例えばWO2017/003800に記載されている通り、再生ホモポリプロピレンは、メカニカル又はケミカルリサイクルによる再変換から得られる、プラスチックホモポリプロピレン廃棄物のホモポリマーである。
【0024】
本発明によって検討されるポリプロピレンホモポリマーは、特に、適切に決定された10分当たり10g(10g/10分)~10分当たり15g(15g/10分)のメルトフローインデックスを有することを特徴とする。このメルトフローインデックスは、ASTM D1238(条件は230℃、2.16kgの質量)によって決定される。
【0025】
本発明によって検討されるポリプロピレンホモポリマーは、加えて、有利には、130~170℃で変動する融点を有する。本発明による組成物は一般に、総質量に対して少なくとも75質量%、実際、更には80質量%~95質量%の再生hPPを含む。
【0026】
再生hPPとして特に好適であるのは、LyondellBasell社により販売されている、商品名HP500Nを有し、ISO 1133、12g/10分のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンホモポリマーである。
【0027】
オレフィンの混合物
本発明による組成物はまた、オレフィンの混合物を含む。
【0028】
下に詳細に記載する通り、このオレフィンの混合物は、2種のコポリマーを少なくとも含み、実際、更にはこれらで構成され、一方はプロピレン/C2又はC4~10α-オレフィンコポリマーであり、他方は均一なエチレン/C4~10α-オレフィンコポリマーである。
【0029】
プロピレン/オレフィンコポリマー
本発明によって「第1のコポリマー」とも称されるこのコポリマーは、弾性特性の観点から、エラストマーとして記載することもできる。
【0030】
この第1のプロピレン系コポリマーの質量平均分子量(Mw)は、特に、165000g/mol~およそ360000g/molで変動させることができる。
【0031】
本発明によって検討される第1のコポリマーは、1.5グラム/10分~500グラム/10分、好ましくは2グラム/10分~100グラム/10分で変動するメルトフローインデックス(ASTM D1238による、条件は230℃、2.16kg)を有しうる。
【0032】
本発明による第1のコポリマーはまた、0.50~0.95g/cm3の範囲内、好ましくは0.75~0.90g/cm3の範囲内の密度を有しうる。
【0033】
上で指定した通り、本発明に好適な第1のポリプロピレン系コポリマーは、総質量に対して少なくとも75質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より優先的には少なくとも83質量%のプロピレンに由来する単位を含む。
【0034】
第1のコポリマーとして本発明に好適なコポリマーは、総質量に対しておよそ10質量%~およそ25質量%、好ましくは12質量%~およそ20質量%、例えば13質量%~16質量%、実際、更にはおよそ15質量%のα-オレフィンに由来する単位を更に含む。
【0035】
「に由来する単位」という表現は、本発明によって所望される品質、すなわち、機械的強度及び透明度にこの単位が影響を及ぼさない限り、それ自体と同一視されるオレフィン単位だけでなく、検討されるオレフィン単位の水素原子の少なくとも1個において、置き換え単位、例えばハロゲン原子を有する関連単位を記載しているものと理解されたい。
【0036】
好ましくは、これらの誘導単位は、それ自体と同一視される単位、例えばプロピレン単位等である。
【0037】
「オレフィン」成分に関して、これはα-オレフィンから誘導され、すなわち、オレフィンはα位又は第1位に二重結合を必ず有する。この「オレフィン」成分は、直鎖状又は分枝状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0038】
直鎖状α-オレフィンの例は、エチレン、プロピレン、1-ブテン及び1-デセンである。分枝状α-オレフィンの例はイソブチレンである。
【0039】
非常に特に好適であるのは、C2、C4、C6及び/又はC8α-オレフィン、特にエチレン及び/又は1-ブテン、特にエチレンである。
【0040】
本発明に非常に特に好適であるのは、プロピレン/エチレンコポリマー、特に、ExxonMobil Chemical社から商品名「Vistamaxx」で入手可能なもの、非常に特定的にはVistamaxx 6202である。
【0041】
均一なエチレン/オクテンコポリマー
本記載の内容から明らかになるように、本発明によって「第2のコポリマー」とも称されるこれらのコポリマーは、「第1のコポリマー」とは異なる。特に、これらはプロピレンに由来する単位を欠いている。
【0042】
本発明によるこの第2のコポリマーは、プラストマーである。プラストマーは、エラストマーとは対照的に、応力の作用下で、永久塑性変形を伴う弾性変形を受けることができる直鎖状ポリマーであることを思い出されたい。このコポリマーは、エチレン及びオクテンに由来する実体が、ランダム、交互及び/又は統計的配列によって配置されるコポリマーであるため、ブロック配列とは対照的に、均一であると言われる。このコポリマーは、統計的と呼ばれることもある。
【0043】
したがって、本発明による第2のコポリマーは、単一の非晶質相を含み、単一のTgを有し、このTgは、対応するホモポリマーの各々によって記録されるTgの中間である。
【0044】
特に、これらのガラス転移温度Tg(ISO 6721-7に従ってDMTAによって測定される)は、一般に-25℃未満、好ましくは-30℃未満、より好ましくは-35℃未満である。
【0045】
本発明の第2のコポリマーは、有利には、非常に低密度のポリオレフィン、より好ましくはシングルサイト触媒、好ましくはメタロセンを使用して重合される、非常に低密度のポリオレフィンである。
【0046】
特に、第2のエチレン系コポリマーは、0.860~0.915g/cm3の範囲内、好ましくは0.860~0.910g/cm3の範囲内、好ましい方法では0.865~0.905g/cm3の範囲内の密度を有しうる。
【0047】
本発明による第2のコポリマーは、少なくとも0.5g/10分、実際、更には少なくとも1.0g/10分のメルトフローインデックス(ASTM D1238による、条件は230℃、2.16kg)を有しうる。これらは、より特定的には、およそ200g/分未満、特に2~15g/10分のメルトフローインデックスを有しうる。
【0048】
第2のエチレン系コポリマーの融点(Tm)(ISO 11357-3:1999に従って、DSCによって測定)は、一般に130℃未満、好ましくは120℃未満、より好ましくは110℃未満、最も好ましくは100℃未満である。これらは更には、一般に80℃超、好ましくは90℃超である。
【0049】
エチレンとオクテンとのコポリマーは、一般に、50質量%~98質量%、好ましくは55質量%~90質量%、より優先的には60質量%~85質量%のエチレン含有率を有する。
【0050】
本発明に非常に特に好適であるのは、エチレンとオクテンとのコポリマー、例えば、Borealis社により商品名Queo 0203で、Dow Chemical Corp社(USA)により商品名Engage若しくはAffinityで、又は三井社により商品名Tafmerで販売されるものである。
【0051】
或いは、これらの第2のコポリマーは、公知の方法によって、当業者に公知である適当な触媒、例えば、酸化バナジウムを含む触媒、又はシングルサイト触媒を有する触媒、例えばメタロセン触媒、又は拘束的幾何を有する触媒の存在下、溶液重合、懸濁重合、気相重合又はこれらの組み合わせを含む、1段階又は2段階重合方法において調製することができる。
【0052】
好ましくは、これらの第2のコポリマーは、1段階又は2段階の溶液重合方法によって、特に、100℃超の温度における高温溶液重合方法によって調製される。
【0053】
上で指定した通り、本発明者らは、他の場合に特定の割合の外では達成可能でない、予想外の機械的性能品質を有する再生hPPを得るために、本発明によるこれらの第1及び第2のコポリマーを、特定の割合において組み合わせることが決定的であることを、特に見出した。
【0054】
したがって、本発明の文脈において、再生hPPは、0.1から0.4の間、特に0.15から0.30の間、実際、更には約0.2である、又は0.2に等しい第2のコポリマー/第1のコポリマー質量比における、これらの2種のコポリマーを含むオレフィンの混合物と組み合わせられる。
【0055】
当然、本発明による組成物は、1種以上の第1のコポリマーと、1種以上の第2のコポリマーとを含むことができる。この場合、先出の質量比は、第1のコポリマーの量の合計と第2のコポリマーの量の合計とを検討することによって確立される。
【0056】
本発明による組成物は、総質量に対しておよそ2質量%~25質量%、好ましくはおよそ5質量%~およそ15質量%、より好ましくはおよそ8質量%~およそ12質量%の本発明に準拠したオレフィンの混合物を含むことができる。
【0057】
当然、本発明による組成物中に存在するオレフィンの混合物の量は、組成物に予想される、可能性のある最終使用に従って調整することができる。
【0058】
例えば、包装用の密封キャップ、シャンプー包装を形成するために、組成物が射出成形されることが意図される場合、組成物は、総質量に対して10質量%超のこのような混合物を含むことができる。
【0059】
本発明によるオレフィンの混合物を構成する第1及び第2のコポリマーの混合物は、更に、後者において、射出成形に適合できるのに十分な流動性を与えるものである。
【0060】
これは、過剰に粘性の溶融熱可塑性組成物には、成形型において高圧が必要であり、型穴にあまりよく流れないためである。反対に、過剰に流動性の溶融熱可塑性組成物は、成形型中で物質の浸透が生じうる。
【0061】
加えて、組成物の高温流動性は、射出成形から得られる物品の機械的強度に対する影響を有する。より流動性であるほど物質は脆く、反対に、物質が過剰に粘性である場合、パーツにおける残留応力が生じることがあり、対応する破損のリスクを伴う。
【0062】
一般に、組成物のメルトフローインデックスは、ポリプロピレンホモポリマーが有するものに近く、したがって、上で詳細に記載した通りである。
【0063】
組成物の他の添加剤
本発明による組成物は、本発明によるポリマー組成物中に、従来検討される1種以上の添加剤を更に含有しうる。
【0064】
したがって、本発明による組成物は、酸化防止剤、熱安定剤、UV安定剤、難燃剤、静電防止剤、発泡剤、衝撃改質剤、相溶化剤、充填剤、強化繊維、蛍光増白剤及び潤滑剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含有することができる。
【0065】
上で指定した通り、本発明は、特に、良好な透明度を有する射出成形物品の開発に関する。
【0066】
この目的のために、組成物は、透明化剤を更に含有することが有利である。
【0067】
透明化剤とは、その機能が、組み込まれたポリマー材料の透明度を改善することである添加剤である。このような添加剤の利用は、処理するポリマー材料の化学的性質、及び選択した透明化剤について、使用に推奨される指示の観点から添加剤を選択する、当業者の能力の範囲内である。
【0068】
特に本発明に非常に特に好適であるのは、Milliken社により名称NX Ultraclear GP110Bで販売されている製品である。
【0069】
以下の実施例は説明のために提示されるものであり、本発明の分野を限定しない。
【0070】
材料
ホモポリプロピレン
以下の再生ホモポリプロピレンを用いて試験を行う:
12g/10分のMFIを有するHP500N(LyondellBasell社、ISO 1133)。
【0071】
コポリプロピレン
商品名Moplen RP348R-Basellを有し、25g/10分のMFIを有し、LyondellBasell社により販売されているポリプロピレンコポリマーを、成形プロトコルを調整するための参照材料として使用した。
【0072】
第1のプロピレンコポリマー
これは、ExxonMobil Chemical社から商品名Vistamaxx(商標) 6202で入手可能な、15質量%のエチレン含有率、18.0グラム/10分のメルトフローインデックス(ASTM D1238による)、0.861g/cm3の密度(ASTM D1505による)を有するプロピレン/エチレン熱可塑性ポリマーである。
【0073】
第2のエチレンコポリマー
これは、Borealis社により商品名Queo 0203で販売されている、3グラム/10分のメルトフローインデックス(ASTM D1238による)、及び0.912g/cm3の密度(ASTM D1505による)を有するエチレン/オクテンコポリマーである。
【0074】
透明化剤
これは、Milliken社から入手可能な、市販製品NX Ultraclear GP110Bである。
【0075】
シャンプーボトル用の蝶番を有するストッパータイプのサービスカプセルの外形を作った射出成形物において、試験を行った。
【0076】
方法
以下の試験によって、機械的品質を評価した。
【0077】
割れ試験
脱イオン水中に0.5%±0.05%(w/wとして)のトリデセス-12を含む、割れ溶液を調製する。必要があれば、水をおよそ35℃に加熱することによって、溶解を行う。モニタリングするカプセルは、それぞれのボトルに嵌め、この割れ溶液で満たされた容器に、各ボトルを上下反対にして突っ込んで24時間浸漬し、次いで、オーブン中で55℃+2℃に60分間曝露する。
【0078】
機械的強度は、10個超のカプセルのサンプルに対して、次の通りに指標化される。
+++ いずれのカプセルも割れを呈していない
++ カプセルの10%未満が割れを呈している
+ カプセルの10%超が割れを呈している
【0079】
密封性(leaktightness)試験
この試験は、着色溶液で満たし、試験カプセルによって封止したボトルを用い、下に詳細に記載する方法1又は2に従って行う。
【0080】
方法1 試験カプセルによって封止したボトルを、横倒しの姿勢において真空チャンバ中に配置し、チャンバ内側の圧力を、15秒間、-800mbarの値に調整する。
【0081】
方法2 試験カプセルによって封止したボトルを、45℃のオーブン中に、横倒しの姿勢で24時間配置する。
【0082】
2つの方法の各々の終了時に、着色溶液の漏れが観察されるかを視覚的に評価する。
【0083】
密封性は、10個超のボトルのサンプルに対して、次の通りに指標化される。
+++ いずれのボトルも漏れを呈していない
++ ボトルの10%未満が漏れを呈している
+ ボトルの10%超が漏れを呈している
【0084】
落下試験
試験は、商品化した収容体積の100%まで水で満たし、試験カプセルによって封止したボトルを、垂直に対して30°の傾きで蝶番側を下にして80cmの高さから落下させることで構成される。カプセルに劣化が観察される場合、キャプチャー(captures)は非準拠であるとみなされる。
【0085】
1回の落下時の機械的強度は、10個超のカプセルのサンプルに対して、次の通りに指標化される。
+++ カプセルの10%未満が壊れている
++ カプセルの10%から20%の間が壊れている
+ カプセルの20%超が壊れている
【0086】
耐久性試験
試験は、50回の開閉のためにカプセルを操作することで構成される。
【0087】
これを行うために、試験カプセルを適当なアダプタ上に配置する。2つの端点、「開いた蓋」及び「閉じた蓋」が、最適に調整されていることをモニタリングする。カウンターをゼロに設定し、最少50回の連続した開閉操作のために、各カプセルを動作させる。試験中のカプセルに破壊が発生した場合、物品は不良とみなされる。
【0088】
したがって、耐久性は、10個超のカプセルのサンプルに対して、次の通りに指標化される。
+++ いずれのカプセルも蝶番が壊れていない
+ カプセルの蝶番が壊れている
【0089】
組み立て試験
この試験は、カプセルとボトルとの間の組み立ての有効性を確立することを目的とする。特に、カプセルをボトルにねじ留めする、又はスナップ固定する品質を評価することを目的とする。
【0090】
手順
試験カプセルとボトルとの間の閉鎖部を、動力計に配列する。変位の速度を1分当たり165±10mmに調整する。動力計を作動させ、示された力を読み取る。仕様シートに示される限度外(最小及び最大)の値を呈する組み立て品はいずれも、非準拠とみなされる。
【0091】
組み立ての品質は、10個超のカプセルのサンプルに対して、次の通りに指標化される。
+++ いずれのカプセルも、仕様範囲外(最小及び最大)でない
++ 仕様範囲の最小値未満の値を有するカプセルが10%未満である
+ 仕様範囲の最小値未満の値を有するカプセルが20%未満且つ10%超である
【0092】
透明度試験
カプセルにおける視覚試験を行い、観察した透明度を、商品名Moplen RP348Rを有するポリプロピレンコポリマーの透明度と比較する。
【0093】
同等の透明度は+++と指標化する。
【0094】
わずかに有害な影響を受けた透明度は++と指標化する。
【0095】
半透明なパーツは+と指標化する。
【実施例1】
【0096】
本発明による組成物の調製
本発明による2つの組成物の成分及びそれぞれの量を、下のTable 1(表1)に詳細に記載する。
【0097】
【0098】
本発明に準拠した組成物No.1及びNo.2について、射出成形によるそれぞれの形成の前に、対応する組成物を形成するため、顆粒の形態における検討したすべての化合物を所定の割合で、やはり所定の割合の物質PPと、研究室用ミキサーを使用して混合する。
【実施例2】
【0099】
実施例1の各組成物の射出成形によって得られる、ボトルを密封するための、相互作用が意図されるカプセルからなる射出成形物品の調製
各組成物は、実施例1において上で記載した通りに調製する。
【0100】
射出成形プレス機、この実施例においては圧力センサを有する又は有しないHusky社の機械に、成形型を嵌める。Netstal社製のSynergy 150射出成形プレス機を使用してもよい。
【0101】
最初に、商品名Moplen RP348R-Basellを有し、25g/10分のMFIを有し、LyondellBasell社により販売されているポリプロピレンコポリマーをベースとする物品を生産するために、組成物T2に対応する、少なくとも1つの試験組成物の射出成形を行う。
【0102】
射出成形のパラメータ、例えば、バレルの温度、射出速度、射出圧力、滞留時間及び滞留圧力を、この試験組成物について構築する。
【0103】
射出時間、射出ノズルの温度の測定値、及び任意選択で他の測定値を記録する。
【0104】
試験組成物を用いた射出成形が行われたら、射出スクリューを空にする。
【0105】
次いで、本発明による各組成物(No.1又はNo.2)を、順番に射出成形プレス機のホッパーに組み込み、バレル中で射出スクリューによる均一化を行う。
【0106】
適当な場合、パラメータ、例えば、バレルの温度、射出速度、射出圧力、滞留時間及び滞留圧力を調整する。試験組成物について、射出時間、ノズルの温度の測定値、及び任意選択で他の測定値を記録し、実際に用いたパラメータを書き留める。
【0107】
組成物T1について、射出成形を組成物No.1又はNo.2と同様に行い、これらの組成物の各々について、射出時間、ノズルの温度の測定値、及び任意選択で他の測定値、並びにバレルの温度、射出速度、射出圧力、滞留時間及び滞留圧力等のパラメータを書き留める。
【0108】
次の表は、このように調製した様々な組成物についてのパラメータ及び測定値をまとめ、比較した表である。
【0109】
【0110】
この方法に従って生産した各射出成形物品は、室温に達するように、例えば、開放空気中で回収されうる。各射出成形物品は、適当な場合、認可試験を行うために、続いて包装される。
【0111】
上に記載した方法は、異なる組成物を試験できるようにし、射出成形のパラメータを構築するために使用される。これは、物品の生産のための方法を開発するための方法である。
【0112】
このような方法は、試験工程を伴わずに、すなわち、1つ以上の試験組成物を用いて射出成形物品を生産することなく、用いることもできる。方法はまた、とりわけ、方法及び使用する組成物の開発を行う場合、並びに方法を使用して、射出成形物品を産業速度で生産する場合、測定値の取得及びパラメータ、特にシステム上のパラメータの記録を含まなくてもよい。
【実施例3】
【0113】
実施例2において得た射出成形物品の品質の特性評価
【0114】
【0115】
これらの結果から明らかである通り、本発明による2つの組成物は、落下試験及び透明度の観点における優れた品質に加えて、参照カプセルT1によって発揮される品質のすべてを有するカプセルを生じる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)規格ASTM D1238に従って230℃において、2.16kgの負荷のもとで測定して、10分当たり10g(10g/10分)~10分当たり15g(15g/10分)で変動するメルトフローインデックスを有する再生ホモポリプロピレン、hPPと、
(b)(i)「第1のコポリマー」と称される、総質量に対して、少なくとも75質量%のプロピレンに由来する単位と、10質量%~25質量%の、直鎖状又は分枝状のC
2又はC
4~10アルケニル単位とを有する、プロピレン/C
2又はC
4~10α-オレフィンコポリマー、及び
(ii)「第2のコポリマー」と称される、均一な直鎖状又は分枝状のエチレン/オクテンコポリマー
を少なくとも含む、組成物の総質量に対して2質量%~25質量%のオレフィンの混合物と
を少なくとも含み、熱可塑性組成物であって、
「
第2のコポリマー/第1のコポリマー」質量比が0.1から0.4の間である、
熱可塑性組成物。
【請求項2】
総質量に対して少なくとも75質量%、実際、更には80質量%~95質量%の再生hPPを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第1のコポリマーが、0.50~0.95g/cm
3
の範囲内の密度を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1のコポリマーが、1.5グラム/10分~500グラム/10分で変動するメルトフローインデックス(ASTM D1238による、条件は230℃、2.16kg)を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のコポリマーが、総質量に対して少なくとも75質量%のプロピレンに由来する単位を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のコポリマーのオレフィン成分が、C
2
、C
4
、C
6
及び/又はC
8
α-オレフィンに由来する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項7】
第1のコポリマーとして、少なくとも1種のプロピレン/エチレンコポリマーを含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項8】
第2のコポリマーが、50質量%~98質量%のエチレン含有率を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項9】
「第2のコポリマー/第1のコポリマー」質量比が、約0.2である、又は0.2に等しい、請求項
1に記載の組成物。
【請求項10】
総質量に対して2質量%~25質量%の前記オレフィンの混合物を含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項11】
透明化剤を更に含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項12】
成形型において、請求項1に記載の組成物を成形することによって得られる、成形物品。
【請求項13】
カプセル、シール、径違い継手、キャップ及びバンド、容器、ボトル、ボトル用プリフォームからなる群から選択される、請求項12に記載の成形物品。
【請求項14】
成形物品の製造のための方法であって、
-
請求項1に記載の組成物を利用可能にする、又はこのような組成物を調製する工程と、
-
前記組成物を、前記物品の形状を有する成形型において成形する工程と、
- 前記成形物品を回収する工程と
で構成される工程を少なくとも含む、方法。
【請求項15】
成形物品をブロー成形する工程を更に含む、請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】