(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ケラチン物質をケアするための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20231218BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20231218BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20231218BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20231218BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20231218BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/49
A61K8/60
A61K8/81
A61K8/891
A61Q19/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535754
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 CN2020138315
(87)【国際公開番号】W WO2022133728
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シャオミン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】シウシア・ワン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC542
4C083AC582
4C083AC812
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD572
4C083BB36
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE12
(57)【要約】
水中油型クリームの形態である、ケラチン物質をケアするための組成物であって、(i)組成物の総質量に対して、3質量%~10.5質量%の少なくとも1種の式(I)の化粧用活性化合物(式中、R1、R2及びR3は、互いに独立して、H、-OH、-CH
2OH及び-CH
2CH(OH)CH
3から選択される)、(ii)2-アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及び非イオン性の水溶性コモノマーから誘導される少なくとも1種の水溶性又は水分散性コポリマー(AMPSコポリマー)、(iii)少なくとも1種のシリコーン化合物、並びに(iv)エタノールを含む、組成物。ケラチン物質をケアするための非治療的方法であって、前記組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、非治療的方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型クリームの形態である、ケラチン物質をケアするための組成物であって、
(i)前記組成物の総質量に対して、3質量%~10.5質量%の少なくとも1種の式(I)の化粧用活性化合物:
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は、互いに独立して、H、-OH、-CH
2OH及び-CH
2CH(OH)CH
3から選択される)、
(ii)2-アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及び非イオン性の水溶性コモノマーから誘導される少なくとも1種の水溶性又は水分散性コポリマー、
(iii)少なくとも1種のシリコーン化合物、並びに
(iv)エタノール
を含む、組成物。
【請求項2】
式(I)の前記化粧用活性化合物が、プロキシラン、マンノース、グルコース、ガラクトース、フルクトース及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)の前記化粧用活性化合物が、前記組成物の総質量に対して、3質量%~8.75質量%、より好ましくは3.15質量%~4.2質量%の範囲の量で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記水溶性又は水分散性コポリマーの前記非イオン性の水溶性コモノマーが、
- (メタ)アクリルアミド、
- N-ビニルアセトアミド及びN-メチル-N-ビニルアセトアミド、
- N-ビニルホルムアミド及びN-メチル-N-ビニルホルムアミド、
- 無水マレイン酸、
- ビニルアミン、
- 4~9個の炭素原子を含有する環状アルキル基を含むN-ビニルラクタム、例えばN-ビニルピロリドン、N-ブチロラクタム及びN-ビニルカプロラクタム、
- 式CH
2=CHOHのビニルアルコール、
- 下記式(III)の水溶性ビニルモノマー:
【化2】
[式中、
- R
15は、H、-CH
3、-C
2H
5及び-C
3H
7から選択され、
- X
2は、
-OR
16(ここでR
16は、ハロゲン原子(ヨウ素、臭素、塩素又はフッ素)で任意で置換される、1~6個の炭素を含有する直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和の炭化水素系基である)、ヒドロキシル基(-OH)、エーテルから選択される]
から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記水溶性又は水分散性コポリマーが、アンモニア、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選択される無機塩基で任意で部分的に又は完全に中和された、AMPSとビニルピロリドン又はビニルホルムアミドとのコポリマーから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記水溶性又は水分散性コポリマーが、前記組成物の総質量に対して、0.3質量%~3質量%、好ましくは0.5質量%~2質量%、より好ましくは1質量%~1.5質量%の範囲の量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記シリコーン化合物が、C12~C22アルキル若しくはアルコキシジメチコン、C6~C10アルキル若しくはアルコキシルメチコン、又はそれらの混合物から、好ましくはC16~C18アルキル又はアルコキシジメチコン、C6~C10アルキル又はアルコキシルメチコン、及びそれらの混合物から、より好ましくはステアリルジメチコン、セチルジメチコン及びカプリリルメチコンから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記シリコーン化合物が、前記組成物の総質量に対して、0.05質量%~6質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%、より好ましくは2質量%~4質量%の範囲の量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の水性相が、水、エタノール、ブチレングリコール及びグリセリンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
エタノールが、前記組成物の総質量に対して、0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~5質量%の範囲の量で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の総質量に対して、
(i)3.15質量%~4.2質量%の、プロキシラン、マンノース、グルコース、ガラクトース、フルクトース及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の化粧用活性化合物、
(ii)1質量%~1.5質量%の、無機塩基、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで任意で部分的に又は完全に中和された、AMPSとビニルピロリドン又はビニルホルムアミドとの少なくとも1種の水溶性又は水分散性コポリマー、
(iii)2質量%~4質量%の、C12~C22アルキル又はアルコキシジメチコン、C6~C10アルキル又はアルコキシルメチコン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種のシリコーン化合物、並びに
(iv)2質量%~5質量%のエタノール
を含む、請求項1に記載の化粧用組成物。
【請求項12】
ケラチン物質をケアするための非治療的方法であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を前記ケラチン物質に適用する工程を含む、非治療的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、化粧用組成物に関する。特に、本発明は、ケラチン物質をケアするための組成物に関する。本発明はまた、ケラチン物質をケアするための非治療的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
皮膚は、人体のための保護バリアである。皮膚は、物理的傷害(例えば外傷)及び生物学的負傷(例えば、細菌、ウィルス、又は菌による負傷)から、体の内部を保護する。表皮は、角質化された層状の敷石状上皮である。その平均厚さは、60~100μmの範囲であり、足の裏及び手のひらでは600~700μmに達しうる。それは、主にケラチノサイトからなるが、他の細胞からもなり、真皮からそれを隔てる基底膜上にある。
【0003】
閉経期中に、皮膚は、その全ての区画、即ち真皮及び表皮において変化を受ける。
【0004】
主な変化は、真皮に関係し、コラーゲン含有量の減少及び真皮の厚さの低下である。閉経期の女性では、これにより、皮膚及び/又は粘膜の脆弱化をもたらす。次いで、女性は、「乾燥肌」又は突っ張った皮膚の感覚を経験し、表面じわ及び小じわが強調されることも認められる。皮膚は、荒れた感触を有する。最後に、皮膚は、柔軟性の減少を示す。
【0005】
表皮に関する主な変化は、ケラチノサイト分化の減少であり、その結果、角化細胞のタンパク質マトリックスの欠損、細胞外マトリックスを分解し、皮膚の老化に関与するプロテアーゼであるメタロプロテイナーゼの増加、及びまた、様々なグリコサミノグリカンの合成の減少をもたらす。
【0006】
皮膚及び/又は唇のケア及び/又はメイクアップ専用の配合物の開発には、終わりがない。
【0007】
多種多様な化粧用組成物が、皮膚をケアするため、例えば皮膚の老化と闘うために、使用されている。プロキシランを含む皮膚の老化防止のための市販製品が存在し、これは、プロキシランの濃度が比較的高い場合、皮膚に非常にべとつく感覚を与える。消費者は、このような製品の塗布後、魅力に欠ける油っぽさを感じる。したがって、このような製品は、依然として満足なものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、べとつき感のない、比較的高濃度でプロキシラン等を含む、皮膚をケアするための組成物を配合する必要性が依然として存在する。
【0009】
更に、組成物は、クリームとして比較的高い粘稠度を有することが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の概要
そこで、本出願人は、上記のような所望の特性を有するこのような組成物を配合することが可能であることを発見した。
【0011】
具体的には、本出願人は、比較的高濃度でプロキシラン等を含む、ケラチン物質をケアするための組成物を配合することが可能であり、一方で、それは、べとつき感なく、クリームとして比較的高い粘稠度を有することを発見した。
【0012】
したがって、第1の態様では、本発明は、水中油型クリームの形態である、ケラチン物質をケアするための組成物であって、以下:
(i)組成物の総質量に対して、3質量%~10.5質量%の少なくとも1種の式(I)の化粧用活性化合物:
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は、互いに独立して、H、-OH、-CH
2OH及び-CH
2CH(OH)CH
3から選択される)、
(ii)2-アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及び非イオン性の水溶性コモノマーから誘導される少なくとも1種の水溶性又は水分散性コポリマー(AMPSコポリマー)、
(iii)少なくとも1種のシリコーン化合物、並びに
(iv)エタノール
を含む、組成物を提供する。
【0013】
本発明の組成物は、水中油型クリームの形態である。したがって、前記組成物は、連続水性相及び分散された油性相を含む。
【0014】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、ケラチン物質をケアするための非治療的方法を提供する。
【0015】
本発明の組成物は、べとつき感なく、ケラチン物質に老化防止効果をもたらすことができる。
【0016】
その上、本発明による組成物は、4℃、室温(25℃)、及び45℃で安定である。
【0017】
更に、本発明による組成物は、比較的高い粘度、クリームとして滑らかできめ細かいテクスチャを有し、良好な展延性を有する。
【0018】
本発明の他の利点は、以下の説明及び実施例を読むことで一層明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本記載における用語の定義が、本発明が属する分野の当業者によって通常理解される意味と矛盾する場合には、本明細書に記載される定義が適用されるものとする。
【0020】
以下の記載において、別段の指示がない限り、値の範囲の限界値は、特に「~から~の間」及び「~から~までの範囲」という表現において、その範囲内に含まれる。
【0021】
更に、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、「1つ又は複数」という表現と同等である。
【0022】
本出願全体にわたって、「含む(comprising)」という用語は、全ての特定的に言及される特徴に加えて、任意の、追加の、不特定の特徴を包含するものと解釈されたい。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語の使用はまた、特定的に言及される特徴以外の特徴が存在しない(即ち「からなる」)実施形態を開示している。
【0023】
別段の特定がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分等の量を表現する全ての数値は、「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうでないと指定されない限り、本明細書に記載される数値及びパラメータは、必要に応じて所望の目的に従って変更されることが可能なおおよその値である。
【0024】
本発明の目的において、「ケラチン物質」という用語は、ヒトの皮膚、粘膜、例えば唇を網羅することが意図される。顔面の皮膚は、本発明によって最も特段に考慮される。
【0025】
本発明における全ての百分率は、別段の特定がない限り、質量百分率を指す。
【0026】
第1の態様によれば、本発明は、水中油型クリームの形態である、ケラチン物質をケアするための組成物であって、
(i)組成物の総質量に対して、3質量%~10.5質量%の少なくとも1種の式(I)の化粧用活性化合物:
【化2】
(式中、R1、R2及びR3は、互いに独立して、H、-OH、-CH
2OH及び-CH
2CH(OH)CH
3から選択される)、
(ii)2-アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及び非イオン性の水溶性コモノマーから誘導される少なくとも1種の水溶性又は水分散性コポリマー(AMPSコポリマー)、
(iii)少なくとも1種のシリコーン化合物、並びに
(iv)エタノール
を含む、組成物を提供する。
【0027】
式(I)の化粧用活性化合物
第1の態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種の式(I)の化粧用活性化合物を含む:
【化3】
(式中、R1、R2及びR3は、互いに独立して、H、-OH、-CH
2OH及び-CH
2CH(OH)CH
3から選択される)。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式(I)の化粧用活性化合物として、ヒドロキシプロピルテトラヒドロピラントリオール(プロキシラン)(式中、R1は、-CH
2CH(OH)CH
3であり、R2及びR3は、Hである)、即ち、以下の式の化合物を含む:
【化4】
プロキシラン。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式(I)の化粧用活性化合物として、マンノース(式中、R1は、-CH
2OHであり、R2は、Hであり、R3は、-OHである)、即ち、以下の式の化合物を含む:
【化5】
マンノース。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式(I)の化粧用活性化合物として、グルコース(式中、R1は、-CH
2OHであり、R2は、Hであり、R3は、-OHである)、即ち、以下の式の化合物を含む:
【化6】
グルコース。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式(I)の化粧用活性化合物として、ガラクトース(式中、R1は、-CH
2OHであり、R2は、Hであり、R3は、-OHである)、即ち、以下の式の化合物を含む:
【化7】
ガラクトース。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、式(I)の化粧用活性化合物として、フルクトース(式中、R1は、-CH
2OHであり、R2は、-OHであり、R3は、Hである)、即ち、以下の式の化合物を含む:
【化8】
フルクトース。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)の化粧用活性化合物は、プロキシラン、マンノース、グルコース、ガラクトース、フルクトース及びそれらの混合物から選択される。
【0034】
プロキシランの市販製品には、CHIMEX社(NOVEAL社)によりMEXORYL SCNの商品名で販売されているものが含まれ、これは35質量%のプロキシランを含む。
【0035】
式(I)の化粧用活性化合物は、組成物中に、組成物の総質量に対して、3質量%~8.75質量%、好ましくは3.15質量%~4.2質量%の範囲の量で存在するのが有利である。
【0036】
AMPSコポリマー
第1の態様によれば、本発明の組成物は、2-アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及び非イオン性の水溶性コモノマーから誘導される少なくとも1種の水溶性又は水分散性コポリマー(AMPSコポリマー)を含む。
【0037】
「水溶性又は水分散性」という用語は、1%に等しい質量濃度に、水性相に25℃で導入されると、巨視的に均一で透明な溶液、即ち、500nmに等しい波長により厚さ1cmの試料を通して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%の最大光透過値を有する溶液を得ることを可能にするポリマーを意味する。
【0038】
本発明に従って有用なAMPSコポリマーは、無機塩基(mineral base)、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで部分的に又は完全に中和された形態の、少なくともアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸モノマーを含む架橋又は非架橋のコポリマーである。
【0039】
これらは、好ましくは、完全に中和されているか、又は実質的に完全に中和されている、即ち少なくとも90%中和されている。
【0040】
ポリマーが架橋されている場合、架橋剤は、フリーラジカル重合によって得られるポリマーの架橋に通常使用されるポリオレフィン性不飽和化合物から選択することができる。
【0041】
挙げることができる架橋剤の例には、ジビニルベンゼン、ジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、エチレングリコール若しくはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、ジアリルマレエート、テトラアリルエチレンジアミン、テトラアリルオキシエタン、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリル(メタ)アクリレート、糖類のアルコールのアリルエーテル、又は他の多官能性アルコールのアリルエーテル若しくはビニルエーテル、並びにまた、リン酸誘導体及び/又はビニルホスホン酸誘導体のアリルエステル、或いはこれらの化合物の混合物が含まれる。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、架橋剤は、メチレンビスアクリルアミド、アリルメタクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)から選択される。架橋度は、一般に、ポリマーに対して0.01mol%~10mol%、特に0.2mol%~2mol%の範囲である。
【0043】
本発明による水溶性又は水分散性AMPSコポリマーは、非イオン性の水溶性コモノマーを含有する。
【0044】
非イオン性の水溶性コモノマーのうち、挙げることができる例には、以下が含まれる:
- (メタ)アクリルアミド、
- N-ビニルアセトアミド及びN-メチル-N-ビニルアセトアミド、
- N-ビニルホルムアミド及びN-メチル-N-ビニルホルムアミド、
- 無水マレイン酸、
- ビニルアミン、
- 4~9個の炭素原子を含有する環状アルキル基を含むN-ビニルラクタム、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ブチロラクタム及びN-ビニルカプロラクタム、
- 式CH
2=CHOHのビニルアルコール、
- 下記式(III)の水溶性ビニルモノマー:
【化9】
[式中、
- R
15は、H、-CH
3、-C
2H
5及び-C
3H
7から選択され、
- X
2は、-OR
16型のアルキルエーテル(ここでR
16は、任意でハロゲン原子(ヨウ素、臭素、塩素又はフッ素)で置換される、1~6個の炭素を含有する直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和の炭化水素系基である)、ヒドロキシル基(-OH)、エーテルから選択される]。
【0045】
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びエチレングリコールの、又はジエチレングリコールの(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
本発明の水溶性又は水分散性AMPSコポリマーは、好ましくは、50000g/mol~10000000g/mol、好ましくは80000g/mol~8000000g/mol、更により好ましくは100000g/mol~7000000g/molの範囲のモル質量を有する。
【0047】
挙げることができる本発明による水溶性又は水分散性AMPSコポリマーの例には、以下が含まれる:
- 任意で無機塩基、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで部分的に又は完全に中和された、AMPSとビニルピロリドン又はビニルホルムアミドとのコポリマー、例えばClariant社により名称Aristoflex AVCで販売されている市販製品に使用されるコポリマー(CTFA名:アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマー)、
- AMPSとヒドロキシエチルアクリレートとのコポリマー、例えばAMPS/ヒドロキシエチルアクリレートコポリマー、例えばSEPPIC社により名称EMT 10で販売されている市販製品に使用されるコポリマー(CTFA名:ヒドロキシエチルアクリレート/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレートコポリマー)。
【0048】
好ましくは、AMPSコポリマーは、任意で無機塩基、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで部分的に又は完全に中和された、AMPSとビニルピロリドン又はビニルホルムアミドとのコポリマーから選択される。
【0049】
AMPSコポリマーは、組成物中に、組成物の総質量に対して、0.3質量%~3質量%、好ましくは0.5質量%~2質量%、より好ましくは1質量%~1.5質量%の範囲の量で存在するのが有利である。
【0050】
シリコーン化合物
第1の態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種のシリコーン化合物を含む。
【0051】
例示的なシリコーンには、環状シリコーン、例えば環状主鎖(例えば、シロキサン)中に3~6又は3~4又は3~5個(又は3、4、5又は6個のいずれか)のSi-O基を有するものが含まれる。例示的な環状シリコーンとしては、これらに限定されないが、シクロメチコン、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン(例えば、シクロメチコン5-NF)、シクロヘキサシロキサン並びにシクロヘキサシロキサンとシクロペンタシロキサンとの混合物(例えば、DOW CORNING 246 Fluid(d6+d5))が挙げられる。
【0052】
例示的なシリコーンにはまた、側基又は側鎖を有するシリコーンが含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、側基は、疎水性である。いくつかの実施形態では、側基は、直鎖状であるが、他の実施形態では、側基は、分枝状である。例示的な側鎖には、1~6又は2~6又は3~6又は3~6又は5~6個の炭素又はヘテロ原子(例えば、O、S又はN)(又はそれらの任意の組合せ)を有するものが含まれる。例示的な直鎖状側鎖としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルが挙げられる。例示的な分枝状側鎖としては、これらに限定されないが、イソプロピル、イソブチル、及びtert-ブチルが挙げられる。非限定的な一実施形態において、分枝状側鎖は、-O-Si(CH3)3である。
【0054】
好ましくは、シリコーン化合物は、C12~C22アルキル若しくはアルコキシジメチコン、C6~C10アルキル若しくはアルコキシルメチコン、並びにそれらの混合物から選択される。
【0055】
より好ましくは、シリコーン化合物は、C16~C18アルキル若しくはアルコキシジメチコン、C6~C10アルキル若しくはアルコキシルメチコン、並びにそれらの混合物から選択される。
【0056】
最も好ましくは、シリコーン化合物は、ステアリルジメチコン、セチルジメチコン、カプリリルメチコンから選択され、これらの構造は、以下の通りである:
【化10】
ステアリルジメチコン
【化11】
セチルジメチコン
【化12】
カプリリルメチコン。
【0057】
ステアリルジメチコンの市販製品として、EVONIK GOLDSCHMIDT社による商品名ABIL WAX 9800で販売されているものを挙げることができる。
【0058】
カプリリルメチコンの市販製品として、DOW CORNING社(DOW CHEMICAL社)による商品名DOW CORNING FZ-3196で販売されているものを挙げることができる。
【0059】
シリコーン化合物は、組成物中に、組成物の総質量に対して、0.05質量%~6質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%、より好ましくは2質量%~4質量%の範囲の量で存在するのが有利である。
【0060】
水性相
水中油型クリームとして、本発明の化粧用組成物は、連続水性相を含む。
【0061】
前記水性相は、組成物の総質量の50質量%~95質量%、好ましくは55質量%~90質量%、更により好ましくは60質量%~85質量%の範囲の量で存在するのが有利である。
【0062】
前記水性相は、水及びエタノールを含む。
【0063】
水は、本発明の組成物中に、組成物の総質量に対して、20質量%~80質量%、好ましくは30質量%~75質量%の範囲の量で存在するのが有利である。
【0064】
エタノールは、本発明の組成物中に、組成物の総質量に対して、0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~5質量%の範囲の量で存在するのが有利である。
【0065】
好ましくは、連続水性相は、水分補給効果を提供するために、水(室温25℃で)と混和性の追加の有機溶媒、例えば、2~20個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子を有し、優先的には2~6個の炭素原子を有するグリコール及びポリオール、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びそれらの混合物を含む。
【0066】
好ましくは、本発明の組成物の連続水性相は、水、エタノール、ブチレングリコール及びグリセリンを含む。
【0067】
油性相
水中油型クリームとして、本発明の組成物は、少なくとも1種の分散された油性相を含む。
【0068】
油性相は、本発明の組成物の総質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは2質量%~30質量%、より好ましくは3質量%~20質量%の範囲の量で存在するのが有利である。
【0069】
前記油性相は、好ましくは、上に言及されるシリコーン化合物に加えて、少なくとも1種の追加の油を含む。追加の油は、揮発性又は不揮発性とすることができる。
【0070】
「油」という用語は、室温(25℃)及び大気圧(760mmHg)で液体である、水不混和性の非水性化合物を意味する。
【0071】
「不揮発性油」という用語は、室温及び大気圧においてケラチン物質上に少なくとも数時間残ることができ、特に10-3mmHg(0.13Pa)未満の蒸気圧を有する油を意味する。不揮発性油はまた、先に規定した条件下において30分後に蒸発する量が0.07mg/cm2未満であるような蒸発速度を有すると規定することもできる。
【0072】
これらの油は、植物、無機物又は合成由来であってもよい。
【0073】
前記追加の油は、炭化水素化油又はフッ素化油から選択されうる。
【0074】
「炭化水素系油」又は「炭化水素化油」という用語は、炭素原子及び水素原子、並びに任意でO及びN原子から本質的に形成され、又は構成されさえし、Si及びFヘテロ原子を含まない油を意味する。このような油は、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含有しうる。
【0075】
「フッ素化油」という用語は、少なくとも1個のフッ素原子を含有する油を意味する。
【0076】
好ましくは、保湿効果をもたらし、粘稠性と展延性との間の良好なバランスを得るために、油性相は、ココナツ油、カプリル酸/カプリン酸ヤシアルキル、スクアラン、及びそれらの混合物から選択される油を含む。
【0077】
追加の化粧用活性成分
本発明の組成物は、先に規定した式(I)の化粧用活性化合物に加えて、追加の化粧用活性成分を含んでもよい。
【0078】
化粧用活性成分の例として、保湿剤、例えば、タンパク質加水分解物;天然抽出物;ビタミン、例えば、ビタミンA(レチノール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パンテノール)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)、及び前記ビタミンの誘導体(特にエステル)及びそれらの混合物;尿素;カフェイン;サリチル酸及びその誘導体;アルファ-ヒドロキシ酸、例えば、乳酸若しくはグリコール酸及びそれらの誘導体;レチノイド、例えば、カロテノイド及びビタミンA誘導体;日焼け止め剤;藻類、菌、植物、酵母及び細菌からの抽出物;酵素;引き締め剤;微小循環に作用する薬剤、並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0079】
当業者にとって、本発明による組成物の最終用途に基づいて追加の化粧用活性成分の量を調整することは容易である。
【0080】
追加のアジュバント又は添加剤
本発明の組成物は、従来の化粧用アジュバント又は添加剤、例えば、芳香剤、キレート剤(例えば、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム及び二ナトリウムEDTA)、保存剤(例えば、クロルフェネシン及びフェノキシエタノール)及び殺細菌剤、乳化剤、共乳化剤(例えば、水添レシチン)、追加の増粘剤(例えば、アクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマー)、pH調整剤(例えば、トリエタノールアミン、クエン酸及び水酸化ナトリウム)、フィラー(例えば、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム及びポリメチルシセスキオキサン(polymethiylsisesquioxane))、並びにそれらの混合物を含んでもよく、また、含有してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、べとつきを更に減少させるために、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、ポリメチルシセスキオキサン、それらの混合物から選択されるフィラーを含む。
【0082】
当業者は、本発明による組成物の最終用途に悪影響を及ぼさないように、追加のアジュバント又は添加剤の量を選択することができる。
【0083】
特定の好ましい実施形態によれば、本発明は、水中油型クリームの形態である、ケラチン物質をケアするための組成物であって、組成物の総質量に対して、
(i)3.15質量%~4.2質量%の、プロキシラン、マンノース、グルコース、ガラクトース、フルクトース及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の化粧用活性化合物、
(ii)1質量%~1.5質量%の、任意で無機塩基、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで部分的に又は完全に中和された、AMPSとビニルピロリドン又はビニルホルムアミドとの、少なくとも1種の水溶性又は水分散性コポリマー、
(iii)2質量%~4質量%の、C16~C18アルキル若しくはアルコキシジメチコン、C6~C10アルキル若しくはアルコキシルメチコン、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種のシリコーン化合物、並びに
(iv)2質量%~5質量%のエタノール
を含む、組成物を提供する。
【0084】
ガレノス形態及び方法
本発明の組成物は、クリームの形態である。
【0085】
好ましくは、本発明による組成物は、200rpmで回転するスピンドルM3を備えたRheomat 180粘度計を使用して25℃で測定される、37~70UD(偏差単位)の範囲の粘度を有する。
【0086】
本発明の組成物は、ケラチン物質をケアするために使用可能である。
【0087】
第2の態様によれば、本発明は、ケラチン物質をケアするための非治療的方法であって、本発明の第1の態様による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、非治療的方法を提供する。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明は、ケラチン物質の老化防止のための非治療的方法であって、本発明の第1の態様による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、非治療的方法を提供する。
【0089】
以下の実施例は、本発明を例示する働きをするが、本質的に限定的なものではない。
【実施例】
【0090】
使用した主な原材料、商品名及び供給業者をTable 1(表1)に列挙する。
【0091】
【0092】
(実施例1)
比較配合物(Comp.)1~4及び本発明の配合物(Inv.)1~3の組成物を、Table 2(表2)に示される量に従って調製した。量は、組成物の総質量に対する、活性成分の質量%で示される。
【0093】
【0094】
比較例1の組成物は、AMPSコポリマーを含まない。
【0095】
比較例2の組成物は、エタノールを含まない。
【0096】
比較例3の組成物は、本発明によるAMPSコポリマーの代わりに、アンモニウムポリアクリロイルジメチルタウレートを含む。
【0097】
比較例4の組成物は、本発明によるAMPSコポリマーの代わりに、アクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマーを含む。
【0098】
調製方法:
上に列挙した組成物を、本発明の配合物1の組成物を例にとって、以下のように調製した:
1)ココヤシ(COCOS NUCIFERA)(ココナツ)油、シアバター、カプリリルメチコン及びステアリルジメチコンを混合して、油性相を得、水、グリセリン、ブチレングリコール、フェノキシエタノール、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、及び水添レシチンを混合して、水性相を得る、
2)油性相及び水性相を75℃に加熱する、
3)油性相及び水性相を混合して、混合物を得、高せん断速度で混合物をホモジナイズする、
4)次いで、ポリマー(アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマー)を混合物に添加し、ポリマーが水中で十分にゼリー状になった後、穏やかに撹拌しながらそれを室温まで冷ます、
5)ヒドロキシプロピルテトラヒドロピラントリオール及びエタノールを室温で添加し、撹拌して、均一に分散させる、
6)適切な量のトリエタノールアミンを添加することによってpHを5~6に調整する。
【0099】
評価
得られた各組成物の粘度を、200rpmで回転するスピンドルM3を備えたRheomat 180粘度計を使用して25℃で測定した。
【0100】
得られた各組成物の安定性を、組成物を4℃、室温(25℃)、又は45℃で維持し、肉眼で観察して、撹拌後48時間以内に組成物が層状であるかどうかを確認することによって評価した。撹拌後48時間以内に4℃、室温(25℃)、及び45℃の全てで、試験した組成物が層状でない場合は、それは安定と評価され、そうでない場合は不安定と評価される。
【0101】
上で調製した各組成物のべとつきを、以下のように評価した。
【0102】
5人のスキンケア配合物科学者が、2本の洗浄した指で、腕の皮膚の6.3cm×6.3cmの領域に、試験する組成物50μlを塗布した。次いで、以下の基準に従って塗布中及び塗布後にべとつきをスコア化し、平均した:
1=べとつきがない、
2=顔面用クリームにとってちょうど適切なべとつき、
3=べとつきが非常にある。
【0103】
以下の基準に従って塗布中に展延性をスコア化し、平均した:
1=伸ばすのが非常に容易である、
2=伸ばすのが難しくなく、非常に容易ではない、
3=伸ばすのが難しい。
【0104】
加えて、得られた各組成物の外観を肉眼で観察した。
【0105】
比較配合物及び本発明の配合物による組成物の粘度、安定性、べとつき、展延性及び外観の結果をTable 3(表3)に列挙した。
【0106】
【0107】
本発明の配合物1~3の組成物は、クリームとして滑らかできめ細かいテクスチャを有し、良好な展延性を有する。本発明の配合物1~3の組成物は、べとつき感なく、皮膚に老化防止効果をもたらすことができる。更に、本発明の配合物1~3の組成物は、4℃、室温(25℃)、及び45℃で安定である。
【国際調査報告】