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特表2023-553637シクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法およびその製造方法により製造された触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】シクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法およびその製造方法により製造された触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/24 20060101AFI20231218BHJP
   C07C 5/05 20060101ALI20231218BHJP
   C07C 13/275 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B01J31/24 Z
C07C5/05
C07C13/275
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535784
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 KR2021095124
(87)【国際公開番号】W WO2022131888
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0174054
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ユンジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ナムジン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BB08C
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BD12C
4G169BE27A
4G169BE27B
4G169BE42A
4G169BE42B
4G169BE46A
4G169BE46B
4G169BE48A
4G169BE48B
4G169CB02
4G169CB62
4G169FB05
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC11
4H006BA23
4H006BA48
4H006BC10
4H006BE20
(57)【要約】
本発明は、シクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法およびその製造方法により製造された触媒に関する。
本発明のシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法は、(S1)塩化ルテニウムとホルムアルデヒドを反応させてルテニウム複合物を製造するステップと、(S2)前記ルテニウム複合物にトリフェニルホスフィンを投入した後、反応させるステップとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)塩化ルテニウムとホルムアルデヒドを反応させてルテニウム複合物を製造するステップと、
(S2)前記ルテニウム複合物にトリフェニルホスフィンを投入した後、反応させるステップとを含む、シクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法。
【請求項2】
前記(S1)ステップは、40℃~80℃の温度で行われる、請求項1に記載のシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法。
【請求項3】
前記(S1)ステップにおいて、前記塩化ルテニウム:ホルムアルデヒドのモル比は、1:20~400である、請求項1に記載のシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法。
【請求項4】
前記(S1)ステップにおいて、塩化ルテニウムとホルムアルデヒドの反応によりCOリガンドが形成される、請求項1に記載のシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法。
【請求項5】
前記(S2)ステップの反応は、前記ホルムアルデヒドの気化温度で行われる、請求項1に記載のシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法。
【請求項6】
前記(S2)ステップにおいて、前記塩化ルテニウム:投入される前記トリフェニルホスフィンのモル比が1:1~300である、請求項1に記載のシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法。
【請求項7】
前記(S2)ステップにおいて、ルテニウム複合物とトリフェニルホスフィンの反応によりPPhリガンドが形成される、請求項1に記載のシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法により製造されるシクロドデカトリエンの選択水添反応用触媒。
【請求項9】
前記触媒は、シクロドデカトリエンの選択水添反応時に、シクロドデカトリエンに対して、ルテニウム基準に、40ppm~200ppmが投入される、請求項8に記載のシクロドデカトリエンの選択水添反応用触媒。
【請求項10】
前記触媒は、RuH(PPhCOClである、請求項8に記載のシクロドデカトリエンの選択水添反応用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法およびその製造方法により製造された触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロドデカトリエン(Cyclododecatriene、CDT)を出発物質とする選択的水素化反応によるシクロドデセン(Cyclododecene、CDEN)の合成は、文献にしばしば記載されており、シクロドデセンの収率を向上させるための様々な研究がなされてきた。
【0003】
前記選択的水素化反応のために、ウィルキンソン触媒(Wilkinson catalyst)として知られている金属リガンド触媒、すなわち、ルビジウム(Ru)、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属にトリフェニルホスフィン(Triphenylphosphine、TPP)、COなどのリガンドとハロゲン元素が結合した触媒が使用されてきた。
【0004】
このような触媒は、選択的水素化反応、すなわち、選択水添反応において、自分は反応せず、全体の反応が迅速に行われるように活性化するか、生成物の収率を高めるなど、反応の全体にわたり主な役割を果たすことから、様々な触媒関連研究がなされている。
【0005】
米国登録特許US第7838705号では、塩化ルテニウム(RuCl)、トリフェニルホスフィン(TPP)、ホルムアルデヒド、酢酸、エタノールなどをシクロドデカトリエンの水素化反応器に添加し、水素化反応条件で、インサイチュ(in-situ)方式でルテニウム複合触媒を合成し使用している。このような触媒の製造方法は、シクロドデセンの収率を高めることができるルテニウム複合触媒を製造することを目的とするが、触媒の製造過程で、塩酸が副生成物として生成され、メタノール、水、ホルムアルデヒドなど反応残渣が残存することから、選択水添反応の後、分離した生成物に多量の不純物が含まれる欠点がある。
【0006】
また、触媒の製造時に、様々な溶媒を使用することから、溶媒の管理および使用に不都合があり、そのため、全体の工程が複雑であるという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡単な工程だけで高純度の触媒の製造が可能であり、触媒の生成収率が高いシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、選択水添反応に投入される時に、より短時間で、高い選択度で高収率のシクロドデセンを製造することができるシクロドデカトリエンの選択水添反応用触媒を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法は、(S1)塩化ルテニウムとホルムアルデヒドを反応させてルテニウム複合物を製造するステップと、(S2)前記ルテニウム複合物にトリフェニルホスフィンを投入した後、反応させるステップとを含む。
【0010】
本発明の一実施形態によるシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法において、前記(S1)ステップは、40℃~80℃の温度で行われることができる。
【0011】
本発明の一実施形態によるシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法において、前記(S1)ステップにおいて、前記塩化ルテニウム:ホルムアルデヒドのモル比は、1:20~400であることができる。
【0012】
本発明の一実施形態によるシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法において、前記(S1)ステップにおいて、塩化ルテニウムとホルムアルデヒドの反応によりCOリガンドが形成されることができる。
【0013】
本発明の一実施形態によるシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法において、前記(S2)ステップの反応は、前記ホルムアルデヒドの気化温度で行われることができる。
【0014】
本発明の一実施形態によるシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法において、前記(S2)ステップにおいて、前記塩化ルテニウム:投入される前記トリフェニルホスフィンのモル比が1:1~300であることができる。
【0015】
本発明の一実施形態によるシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法において、前記(S2)ステップにおいて、ルテニウム複合物とトリフェニルホスフィンの反応によりPPhリガンドが形成されることができる。
【0016】
本発明は、上述の方法により製造されるシクロドデカトリエンの選択水添反応用触媒である。
【0017】
本発明の一実施形態によるシクロドデカトリエンの選択水添反応用触媒において、前記触媒は、シクロドデカトリエンの選択水添反応時に、シクロドデカトリエンに対して、ルテニウム基準に、40ppm~200ppmが投入されることができる。
【0018】
本発明の一実施形態によるシクロドデカトリエンの選択水添反応用触媒はRuH(PPhCOClであることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法は、別の溶媒を使用することなく、比較的簡単な工程だけで、高純度の触媒を高収率で製造することができる。
【0020】
本発明による製造方法により製造された触媒は、優れた触媒能を有することから、シクロドデカトリエンの選択水添反応に投入されて使用される時に、シクロドデカトリエンの選択水添反応時間を短縮し、且つ高収率でシクロドデセンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用される技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付の図面において本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0022】
また、本明細書で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むものと意図することができる。
【0023】
また、本明細書で特別な言及なしに使用された単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味し、重量%は、他に定義されない限り、全体の組成物のいずれか一つの成分が組成物内で占める重量%を意味する。
【0024】
また、本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、二重限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において特別な定義がない限り、実験誤差または値の四捨五入によって発生する可能性がある数値範囲以外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0025】
本明細書の用語、「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、さらに挙げられていない要素、材料または工程を排除しない。
【0026】
また、本明細書の用語、「実質的に」は、特定の要素、材料または工程とともに挙げられていない他の要素、材料または工程が、発明の少なくとも一つの基本的であり、新規な技術的思想に許容できないほどの著しい影響を及ぼさない量または程度で存在し得ることを意味する。
【0027】
本発明は、シクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法に関し、(S1)塩化ルテニウムとホルムアルデヒドを反応させてルテニウム複合物を製造するステップと、(S2)ルテニウム複合物にトリフェニルホスフィンを投入した後、反応させるステップとを含む。
【0028】
従来、塩化ルテニウム(RuCl)、トリフェニルホスフィン(Triphenylphosphine、TPP)、ホルムアルデヒド、酢酸、エタノールなどをシクロドデカトリエンの水素化反応器に添加し、水素化反応の条件で、インサイチュ(in-situ)方式でルテニウム複合触媒を合成し使用している。このような触媒の製造方法は、触媒の製造過程で塩酸が副生成物として生成され、メタノール、水、ホルムアルデヒドなどの反応残渣が残存することから、選択水添反応の後に分離した生成物に多量の不純物が含まれる欠点がある。また、触媒の製造時に、様々な溶媒を使用することから溶媒の管理および使用に不都合があり、そのため、全体の工程が複雑であるという欠点がある。
【0029】
しかし、本発明は、別の溶媒を使用せず、比較的簡単な工程で、塩化ルテニウム、ホルムアルデヒドおよびトリフェニルホスフィン(Triphenylphosphine、TPP)からシクロドデカトリエン(Cyclododecatriene、CDT)の選択水添反応のための触媒を製造することができる。また、触媒の製造工程中にHClなどの副生成物が除去されることから、高純度の触媒を得るために別の分離工程を行う必要がなく、製造の後、シクロドデカトリエンの選択水添反応にすぐ投入することができる。さらに、本発明は、触媒の製造時に、高収率で触媒を生成することができ、優れた工程効率を示すことができる。
【0030】
さらに、本発明による製造方法により製造された触媒は、優れた触媒能を有することから、シクロドデカトリエンの選択水添反応に投入され使用される時に、シクロドデカトリエンの選択水添反応時間を短縮し、且つ高い収率でシクロドデセンを製造することができる。
【0031】
具体的には、本発明は、先ず、(S1)塩化ルテニウムとホルムアルデヒドを反応させてルテニウム複合物を製造するステップを行う。ここで、塩化ルテニウム(RuCl)とホルムアルデヒド(CHO)が反応するにつれて、COリガンド(カルボニル)が形成されることができる。すなわち、ルテニウム複合物は、COリガンドおよびルテニウムを含むことができる。
【0032】
(S1)ステップの温度は、塩化ルテニウムとホルムアルデヒドが反応する範囲であれば限定されないが、好ましくは40℃~80℃、さらに好ましくは50℃~60℃の温度で行われることができる。前記範囲で、塩化ルテニウムおよびホルムアルデヒドが比較的短時間でスムーズに反応して、ルテニウム複合物が生成されることができる。
【0033】
また、(S1)ステップにおいて、反応時間は、10分~1時間、具体的には20分~40分であることができるが、塩化ルテニウムとホルムアルデヒドの反応が完了する時間であれば、特に限定されない。
【0034】
(S1)ステップにおいて、塩化ルテニウム:ホルムアルデヒドのモル比は、1:20~400、具体的には1:80~350、さらに具体的には1:100~150であることができるが、これに限定されない。ただし、前記範囲で、塩化ルテニウムとホルムアルデヒドが反応して生成されたルテニウム複合物がホルムアルデヒドに溶解された状態で、後述する(S2)ステップにおいて反応がスムーズに行われるようにする。なお、比較的高価である塩化ルテニウムの消費なく、ルテニウム複合物を形成することができる。
【0035】
(S1)ステップにおいて、塩化ルテニウムは、暗褐色または黒色の粉末状であることができ、ホルムアルデヒドは、純粋ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド水溶液などであることができ、前記ホルムアルデヒド水溶液は、5wt%~40wt%の濃度であることができるが、これに限定されない。
【0036】
(S1)ステップにおいて、COリガンドが形成され、ルテニウム複合物が生成されることは、目視による色の変化から知ることができる。一例として、ホルムアルデヒド溶液に塩化ルテニウム粉末を混合すると、反応前には赤褐色を示すが、反応の後、濃緑色を示すことができる。
【0037】
本発明は、このような(S1)ステップの後、(S2)前記ルテニウム複合物にトリフェニルホスフィンを投入した後、反応させるステップを行って、シクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒を製造することができる。(S2)ステップを行うことから、ルテニウム複合物とトリフェニルホスフィンの反応によりPPhリガンドが形成されることができる。すなわち、製造された触媒は、上述のCOリガンドおよびPPhリガンドを含むことができる。
【0038】
具体的には、(S1)ステップを経ることにより、ルテニウム複合体が溶解されたホルムアルデヒドに溶融されたトリフェニルホスフィンを投入し、不均一な液状の混合物を取得することができる。ここで、溶融されたトリフェニルホスフィンは、融点である80℃以上の温度で溶融され、溶融されたものであれば、具体的に限定されないが、好ましくは、完全に液状に溶融されたものを使用することができる。次に、ルテニウム複合体およびトリフェニルホスフィンを反応させて、シクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒を製造することができる。
【0039】
(S2)ステップにおいて、反応は、ホルムアルデヒドの気化温度で行われることができる。ルテニウム複合体およびトリフェニルホスフィンの反応は、ホルムアルデヒドが気化するにつれて行われることができる。遂行温度は、ホルムアルデヒドが気化する範囲であれば限定されないが、具体的には、トリフェニルホスフィンの溶融温度以上であることができ、好ましくは80℃~200℃、さらに好ましくは100℃~140℃の温度で行われることができる。前記範囲で、(S1)ステップにおいて反応に参加しない残存ホルムアルデヒド、水分、メタノールおよび(S1)ステップにおいて生成されたHClなどが気化して、ルテニウム複合体およびトリフェニルホスフィンが比較的短時間でスムーズに反応し、ルテニウム複合物が短時間で生成されることができる。
【0040】
また、(S2)ステップにおいて、反応時間は、ホルムアルデヒドが全て気化する時間であれば、限定なく行われることができる。
【0041】
(S2)ステップにおいて、投入されるトリフェニルホスフィンの量は、(S1)で投入された塩化ルテニウムを基準に投入されることができる。具体的には、塩化ルテニウム:投入されるトリフェニルホスフィンのモル比は、1:1~300、具体的には1:4.5~230であることができるが、これに限定されない。ただし、前記範囲で、優れた触媒能を有する触媒の製造が可能である。
【0042】
また、本発明は、上記の方法により製造された触媒に関し、以下、上記の方法により製造された触媒について詳細に説明する。
【0043】
上述の方法により製造された触媒は、シクロドデカトリエンの選択水添反応用であり、化学式RuH(PPhCOClで表されることができる。このような触媒は、優れた触媒能を有することから、シクロドデカトリエンの選択水添反応に投入され使用される時に、シクロドデカトリエンの選択水添反応時間を短縮し、且つ高い収率でシクロドデセンを製造することができる。
【0044】
具体的には、シクロドデカトリエンの選択水添反応時に、本発明の触媒は、反応物の反応が十分に行われることができる程度であれば、制限なく投入されることができるが、シクロドデカトリエンに対して、ルテニウムを基準に、40ppm~200ppm、具体的には50ppm~150ppmが投入されることができる。前記範囲で、投入される触媒量に比べて優れた触媒能を有することができ、シクロドデカトリエンからシクロドデセン(Cyclododecene、CDEN)を効率よく製造することができる。
【0045】
なお、このような本発明の触媒が投入されたシクロドデカトリエンの選択水添反応は、100~200℃の温度および10~80barの圧力の条件下で行われることができ、より好ましくは140~180℃の温度および20~60barの圧力の条件下で、さらに好ましくは150~175℃の温度および20~40barの圧力の条件下で行われることができるが、これは、シクロドデセンの収率を向上させるための好ましい一例であって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0046】
以下、実施例により、本発明によるシクロドデカトリエンの選択水添反応のための触媒の製造方法についてさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明は、これに限定されず、様々な形態に実現されることができる。
【0047】
また、他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本願において説明に使用される用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。また、明細書において特別に記載していない添加物の単位は、重量%であることができる。
【0048】
(実施例1)
RuCl 1.0gをホルムアルデヒド(37% formaldehyde aqueous solution)119.7gに溶解して反応溶液を製造した後、60℃で30分間反応させた。反応溶液が赤褐色から濃緑色に変化したことを確認してから、100℃で完全に溶融したトリフェニルホスフィン(TPP)を3.27g投入および混合した後、100℃で残りのホルムアルデヒドを蒸発させて、触媒を製造した。
【0049】
(実施例2)
実施例1で、トリフェニルホスフィン(TPP)を3.27gの代わりに4.91gを使用した以外は、実施例1と同じ方法で触媒を製造した。
【0050】
(実施例3)
実施例1で、トリフェニルホスフィン(TPP)を3.27gの代わりに205.7gを使用した以外は、実施例1と同じ方法で触媒を製造した。
【0051】
(実験例)
実施例の触媒能を評価するために、シクロドデカトリエンの選択水添反応に触媒として投入して、反応時間、転化率、およびシクロドデセンの選択度および収率を測定した。
【0052】
各実施例の投入条件は、下記表1のとおりである。ここで、各実施例のTPPは、触媒に含まれたTPPをはじめ総使用量が、Ruに対して230倍になるように固定した。比較例は、CDT投入量(mol)は、実施例と同一であり、RuCl0.08g、ホルムアルデヒド(37% formaldehyde aqueous solution)9.58g、TPP 20.0gをインサイチュ方式で投入した。
【0053】
【表1】
【0054】
水素6barの条件で、反応溶液を攪拌した後、180℃、20barが維持される条件で、2時間選択的水素化反応を行っており、ここで、反応は、ガス誘導中空型攪拌機が備えられた攪拌タンク反応器で行った。1.5時間選択的水素化反応を行った後、窒素条件で、30℃以下に冷却した後、反応溶液を回収した。
【0055】
転化率は下記計算式1、選択度は下記計算式2、収率は下記計算式3により計算され、下記表2に結果を示した。
【0056】
[計算式1]
転化率(%)=(CDT0-CDT1-CDDN1)/CDT0×100
【0057】
計算式1中、CDT0は、投入されたシクロドデカトリエンのモル数であり、CDT1は、反応後のシクロドデカトリエンのモル数であり、前記CDDN1は、シクロドデカリエンのモル数である。ここで、シクロドデカジエン(Cyclododecadiene、CDDN)は、シクロドデカトリエンの三つの二重結合のうち一つの二重結合のみが水素化して、二つの二重結合が残っている水素化反応が完了していない生成物である。
【0058】
[計算式2]
選択度(%)=CDEN1/(CDEN1+CDAN1)×100
【0059】
前記計算式2中、CDEN1は、生成されたシクロドデセンのモル数であり、CDAN1は、生成された副生成物であるシクロドデカン(Cyclododecane)のモル数である。
【0060】
[計算式3]
収率(%)=転化率×選択度
【0061】
【表2】
【0062】
前記表2を参照すると、本発明は、触媒は比較例の方式と類似する高い転化率および選択度でシクロドデセンを製造することができることを確認し、比較例に比べて、短い反応時間で、高い収率でシクロドデセンを製造することができることを確認した。
【0063】
以上、本発明は、特定の事項と限定された実施例および図面により説明されているが、これは、本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0064】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等もしくは等価的な変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属すると言える。
【国際調査報告】