(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】半一体型シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20231218BHJP
B60N 2/015 20060101ALI20231218BHJP
A47C 1/024 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/015
A47C1/024
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536031
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 IB2021061920
(87)【国際公開番号】W WO2022137053
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102020000031922
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399016318
【氏名又は名称】オートモビリ ランボルギーニ ソチエタ ペル アツイオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(72)【発明者】
【氏名】マストロヤンニ,エンリコ
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD02
3B087DA05
3B099BA04
(57)【要約】
車両は、底壁(102)および後壁(103)によって少なくとも部分的に画定された内装(101)と、内装(101)内に取り付けられた少なくとも1つのシート(1)とを備え、シートは、着座部(2)および着座部から分離された背もたれ(3)を備え、着座部(2)は底壁(102)に直接接続されており、背もたれ(3)は支持システム(4)によって後壁(103)に接続されている。背もたれ(3)は、支持システム(4)によって、後退位置(A)と前進位置(B)との間で着座部(2)に沿って移動可能であり、底壁(102)は、使用中、使用者が、背もたれが後退位置にあるときに背もたれが前進位置にあるときよりも着座部(2)に低い位置で着座する、ように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部(2)および前記着座部から分離された背もたれ(3)を備えた車両用のシートであって、
前記着座部(2)は前記背もたれ(3)とは独立して車両(100)に固定可能であり、
前記シートは、前記背もたれ(3)を前記車両(100)に設置して且つ前記背もたれ(3)を支持するように構成された背もたれ支持システム(4)を備え、
前記背もたれ(3)は、前記支持システム(4)によって、後退位置(A)と前進位置(B)との間で前記着座部(2)に沿って移動可能であり、
前記着座部は、使用時に、前記背もたれが前記後退位置にあるときに、使用者が、前記背もたれが前記前進位置にあるときよりも低い位置で着座するように、構成されている、シート。
【請求項2】
前記着座部は第1の部分(5)を備え、前記第1の部分(5)は、前記背もたれが前記後退位置(A)にあるとき、水平基準(O)に対して第1の高さ(H1)を有し、前記第1の高さ(H1)は、前記背もたれ(3)が前記前進位置にあるときに前記第1の部分(5)が有する第2の高さ(H2)よりも低い、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記第1の部分(5)は、前記使用者の臀部を支持するための少なくとも一部を規定する、請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記第1の部分(5)は、前記背もたれ(3)の前記後退位置から前記背もたれ(3)の前記前進位置への移動に伴って、前記水平基準(O)に対する高さを増す、請求項2または3に記載のシート。
【請求項5】
前記着座部(2)の少なくとも前記第1の部分(5)は、傾斜面上または傾斜面に近似できる曲面上に延在している、請求項2から4のいずれか一項に記載のシート。
【請求項6】
前記着座部は、前記使用者の脚の少なくとも一部のための第2の部分(6)を備え、前記第2の部分(6)は、前記背もたれが前記後退位置(A)にあるときに、前記背もたれが前記前進位置(B)にある場合よりも長くなる、請求項1から5のいずれか一項に記載のシート。
【請求項7】
前記着座部(2)を支持するための第1の支持構造(12)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシート。
【請求項8】
前記第1の支持構造(12)は、前記背もたれ(3)が前記後退位置(A)にあるときに、前記背もたれ(3)が前記前進位置(B)にあるときに前記第1の支持構造(12)が有する第2の高さよりも低い第1の高さを有する、請求項7に記載のシート。
【請求項9】
前記支持構造(12)は、前記背もたれ(3)の前記後退位置(A)から前記背もたれ(3)の前記前進位置(B)への移動に伴って、前記水平基準(O)に対する高さを増す、請求項7または8に記載のシート。
【請求項10】
前記支持システム(4)は、前記背もたれ(3)の後面に固定される、請求項1から9のいずれか一項に記載のシート。
【請求項11】
前記支持システム(4)はサラス機構(9)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のシート。
【請求項12】
前記シートのHポイント移動パスは、使用中、水平基準に対して傾斜した直線セグメントである、請求項1から11のいずれか一項に記載のシート。
【請求項13】
前記シートのHポイント移動パスは、使用中、参照母集団の少なくとも2つの身長パーセンタイルの関数であるセグメントである、請求項1から12のいずれか一項に記載のシート。
【請求項14】
前記背もたれ(3)は上端部(3a)を有し、前記上端部(3a)は、第1の作動位置と、前記第1の作動位置に対してリクライニングした第2の作動位置との間で移動可能である、請求項1から13のいずれか一項に記載のシート。
【請求項15】
前記上端部(3a)は、前記第2の作動位置で、前記着座部(2)に向かってリクライニングされている、請求項14に記載のシート。
【請求項16】
底壁(102)および後壁(103)によって少なくとも部分的に画定された内装(101)と、前記内装(101)内に取り付けられた少なくとも1つのシート(1)とを備えた車両であって、
前記シートは、着座部(2)および前記着座部から分離された背もたれ(3)を備え、
前記着座部(2)は、前記底壁(102)に直接接続されており、前記背もたれ(3)は、前記背もたれ(3)を前記車両(100)に設置して且つ前記背もたれ(3)を支持するように構成された支持システム(4)によって、前記後壁(103)に接続されており、
前記背もたれ(3)は、前記支持システム(4)によって、後退位置(A)と前進位置(B)との間で前記着座部(2)に沿って移動可能であり、
前記底壁(102)は、前記シートのHポイントが、前記背もたれが前記後退位置にあるときに前記背もたれが前記前進位置にあるときよりも低くなり、その結果、使用者が、前記背もたれが前記後退位置にあるときに前記背もたれが前記前進位置にあるときよりも前記着座部(2)に低い位置で着座する、ように構成されている、車両。
【請求項17】
前記内装(101)を画定するシェルを備え、前記底壁(102)および後壁(103)は少なくとも部分的に前記シェルを規定する、請求項16に記載の車両。
【請求項18】
前記シェルは複合材料でできている、請求項17に記載の車両。
【請求項19】
前記着座部(2)を支持するための支持構造を備える、請求項16から18のいずれか一項に記載の車両。
【請求項20】
前記底壁は、前記支持構造を少なくとも部分的に規定するように成形されている、請求項19に記載の車両。
【請求項21】
前記底壁は、前記着座部が固定されるベース(102a)を規定するように成形されている、請求項16から20のいずれか一項に記載の車両。
【請求項22】
前記ベース(102a)は、前記ベースに配置された前記着座部(2)が、前記背もたれ(3)の前記後退位置(A)から前記背もたれ(3)の前記前進位置(B)への移動に伴って、水平基準(O)に対して高さを増すように、成形されている、請求項21に記載の車両。
【請求項23】
前記ベース(102a)は、前記背もたれ(3)の前記後退位置(A)から前記背もたれ(3)の前記前進位置(B)への移動に伴って、水平基準(O)に対して高さを増すように、成形されている、請求項21または22に記載の車両。
【請求項24】
前記ベース(102a)は、前記背もたれ(3)が前記後退位置(A)にあるときに、水平基準(O)に対して第1の高さを有し、前記第1の高さは、前記背もたれ(3)が前記前進位置(B)にあるときに前記ベース(102a)が有する第2の高さよりも低い、請求項21から23のいずれか一項に記載の車両。
【請求項25】
前記シートのHポイント移動パスは、水平基準に対して傾斜した直線セグメントである、請求項16から24のいずれか一項に記載の車両。
【請求項26】
前記シートのHポイント移動パスは、参照母集団の少なくとも2つの身長パーセンタイルの関数であるセグメントである、請求項16から25のいずれか一項に記載のシート。
【請求項27】
前記着座部の下に収容区画を備える、請求項16から26のいずれか一項に記載の車両。
【請求項28】
前記シート(1)は、請求項1から15のいずれか一項に記載のシートである、請求項16から27のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用シートに関し、より具体的には、好ましくはスポーツカーまたはスーパースポーツカー用のシート、特にツーシーター用のシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの自動車のシートは、大部分の車両で使用されているスタンダードシートと、ワンオフまたはフューオフとして知られているタイプのものを含むスポーツカーおよびスーパースポーツカーで使用されているスポーツシートとに大別できる。
【0003】
SAE J4002は、シートのHポイントとして知られているものと、シート調整範囲内のすべてのHポイントの位置であるHポイント移動パスとして知られているものとを規定する。
【0004】
スタンダードシートは、着座部と、背もたれであって、着座部に対する当該背もたれの少なくとも傾斜を調整することを可能にするようにリクライニングシステムによって着座部に連結された背もたれと、を備える。
【0005】
シートは一般に、着座部と車両との間に配置された適切なガイドを含むスライダシステムによって車両に接続される。
【0006】
スライダおよびリクライニングシステムは、最近のシートが通常、高さ調整装置も備えていることも考慮に入れると、例えば車両操作およびフロントガラスを介した視線に関して、運転者が自分に最適なドライビングポジションを見つけることを可能にする。
【0007】
高さ調整システムも備えたスタンダードシートの場合、Hポイント移動パスは、したがって、平行四辺形の形状をしており、使用者、特に運転者は、HポイントがHポイント移動パスのどこかに来るようにシートを配置することによってドライビングポジションを調整できる。
【0008】
この種のシートの1つの欠点は、スライダ、リクライニングおよびリフティングシステムの存在によって悪化する重量、およびこれらの同様のシステムのために悪化する全体寸法であり、さらに、シートが車両に完全に統合されていない場合がある。
【0009】
スポーツシート、特に、前述したような、ワンオフおよびフューオフのスポーツカーおよびスーパースポーツカー用のスポーツシートでは、着座部および背もたれは一体成形されており、着座部は車両に、例えば車両の一部であるシェルに直接固定されている。これらのシートのHポイントは単一の位置に固定される。
【0010】
したがって、この種のシートは非常に軽量であり且つ使用者が可能な限り低い位置に座ることを可能にし、自動車のシェルに直接座ることさえも可能にする。
【0011】
不利なことに、身長や体格が異なる使用者はすべて、設計段階で決定された単一のシートポジションおよびHポイントに制限されるので、これらのスポーツシートの快適性には限界がある。
【0012】
固定シートは、車両操作に対する位置を最適化することを許容せず、まさにこの理由のために、この種のシートを備えた自動車では、少なくともペダルは通常、位置調整可能である。
【0013】
さらに、車両に固定されたスポーツシートは、使用者の体格または身長に応じて、例えば低すぎたり、高すぎたり、前すぎたり、後ろすぎたりする可能性がある使用者の視点の位置を調整することを許容しない。
【0014】
これらの欠点を少なくとも部分的に克服するために、この種のシートを採用する自動車メーカーは、Hポイントの位置を少なくとも垂直方向に変更することを可能にするように、様々なサイズのブースタークッションを提供している。しかしながら、別の使用者/運転者がハンドルを握るたびにブースタークッションを交換するのはあまり現実的ではない。
【0015】
文献JPS63147326Uは、シートであって、着座部および背もたれが、両方が接続された耐荷重構造によって相互に結合され且つ背もたれの位置がシェルに対して、したがって着座部に対して調節可能であるシートについて記載している。
【0016】
自動車分野、特にスポーツカー等の分野では、身長や体格に関係なく、人が車両操作に関しておよびフロントガラスに対するその人の視点の観点から最適な位置に座ることを可能にして且つ車両シェルに固定可能な軽量シートが引き続き求められている。
【0017】
これに関連して、我々の意図は、従来技術の欠点の少なくとも一部を克服することができ且つ上述の必要性を満たすことができるシートを提案することである。
【発明の概要】
【0018】
より具体的には、本発明は、使用者の身長や体格に関係なく、使用者が車両内において最適な位置に座ることを可能にする軽量シートを提供することを目的とする。
【0019】
この目的は、添付の特許請求の範囲の請求項の1つまたは複数に記載された技術的特徴を備えるシートによって達成される。従属請求項は、本発明の可能な種々の実施形態に対応する。
【0020】
第1の態様によれば、本発明は、着座部および着座部から分離された背もたれを備えるスポーツカーシートに関する。
【0021】
一態様によれば、シートは背もたれとは独立して車両に固定可能である。シートは、背もたれを車両に設置して且つ背もたれを支持するように構成された背もたれ支持システムを備える。
【0022】
一態様によれば、背もたれは、支持システムによって、後退位置と前進位置との間で着座部に沿って移動可能である。
【0023】
このようにして、シートのHポイントは背もたれに対して固定されたままであるが、背もたれの位置に基づいて着座部に対して移動する。
【0024】
好ましくは、前進位置および後退位置は、背もたれの前面によって識別される。
【0025】
一実施形態では、支持システムは背もたれの後面に固定される。
【0026】
一実施形態では、着座部は、使用者の臀部を支持するための支持部分を備える。背もたれが前進位置にあるとき、支持部分は、水平基準に対して、背もたれが後退位置にあるときに支持部分が有する高さよりも高い高さを有する。
【0027】
好ましくは、水平基準に対する支持部分の高さは、背もたれが後退位置から前進位置に移動するにつれて増加する。
【0028】
一実施形態では、少なくとも支持部分は、傾斜面上、または傾斜面に近似できる曲面上に延在する。
【0029】
Hポイント移動パスは、上記傾斜面に平行な直線セグメントである。
【0030】
一態様によれば、着座部は、シートの使用者の脚の少なくとも一部を支持するための支持部分を備える。脚支持部分の長さは、好ましくは、背もたれが前進位置にあるときよりも、背もたれが後退位置にあるときに、より長い。
【0031】
一実施形態では、シートは、少なくとも第1の支持部分を支持するための支持構造を備える。好ましくは、着座部は支持部分によって支持される。
【0032】
一態様によれば、背もたれが前進位置にあるとき、支持構造は、背もたれが後退位置にあるときに支持構造が有する高さよりも高い高さを有する。
【0033】
支持部分の全体の傾斜は、着座部の傾斜および形状、および/または支持構造の傾斜によって決定される。
【0034】
一実施形態では、支持構造は平らで、均一で、実質的に水平であり、臀部を支持する部分の傾斜は、支持構造の、特に着座部の形状に依存する。一実施形態では、着座部は実質的に平らであり且つ臀部を支持する支持部分の、水平基準に対する傾斜および高さを決定する支持構造に結合される。一実施形態では、臀部を支持する支持部分の傾斜および高さは、着座部の傾斜と着座部を支持する支持構造の傾斜との組み合わせによって決定される。一態様によれば、水平基準に対する支持構造の高さは、背もたれが後退位置から前進位置に移動するにつれて増加する。
【0035】
一態様によれば、支持構造は少なくとも部分的に傾斜面に沿って延びる。着座部は好ましくは傾斜面に固定される。
【0036】
一般的に言えば、着座部および/または支持部分の形状、具体的にはそれらの傾斜は、着座部に対する背もたれの位置の関数として車両内装におけるシートのHポイント移動パスを決定する。
【0037】
一態様によれば、支持構造は、着座部の下に収容区画を少なくとも部分的に画定する。
【0038】
一態様によれば、底壁および後壁によって少なくとも部分的に画定された内装を備える車両、好ましくはスポーツカーまたはスーパースポーツカーが提供される。
【0039】
自動車は、着座部と、着座部から分離された背もたれと、背もたれを車両に設置して且つ背もたれを支持するように構成された背もたれ支持システムとを備えるシートを備える。
【0040】
一態様によれば、シートは自動車の内装内に取り付けられ、着座部は底壁に接続され且つ背もたれは支持システムによって後壁に接続される。
【0041】
背もたれは、支持システムによって、後退位置と前進位置との間で着座部に沿って移動可能である。
【0042】
シートは、前述した態様および実施形態のうちの1つまたは複数によるものであってもよい。
【0043】
このようにして、シートのHポイントは背もたれに対して固定されたままであるが、背もたれの位置に基づいて着座部に対して移動し、車両におけるHポイント移動パスは、したがって、直線セグメントによって規定される。
【0044】
一態様によれば、シートのHポイント移動パスは、参照母集団の少なくとも2つの身長パーセンタイルの関数である。
【0045】
一態様によれば、車両は、少なくともシートの着座部および/または第1の支持部分を支持するための支持構造を備える。
【0046】
自動車における支持構造は、自動車の内装内に設けられ且つシートの着座部を支持する支持構造に対応し得る。
【0047】
一実施形態では、自動車に設けられた支持構造は、シートに設けられた支持構造とは別のものであり、着座部の位置は、両者の組み合わせによって決定される。
【0048】
一態様によれば、自動車の内装の底壁は、少なくとも1つの支持部分を支持するための着座部の支持構造を少なくとも部分的に規定する。
【0049】
一態様によれば、シートの少なくとも着座部は第2の支持構造によって支持される。
【0050】
一態様によれば、自動車に設けられた着座部の支持構造は、背もたれが前進位置にあるとき、背もたれが後退位置にあるときに着座部の支持構造が有する高さよりも高い高さを持つ。
【0051】
一態様によれば、自動車に設けられた支持構造の、水平基準に対する高さは、背もたれが後退位置から前進位置に移動するにつれて増加する。
【0052】
一態様によれば、自動車に設けられた支持構造は、少なくとも部分的に傾斜面に沿って延びる。シートの着座部は傾斜面に固定されており且つ傾斜している。
【0053】
一態様によれば、自動車に設けられた支持構造は、着座部の下に収容区画を画定する。
【0054】
一態様によれば、スーパースポーツカーは、好ましくは複合材料から作られたシェルを備え、底壁はシェルの一部である。
【0055】
一態様によれば、自動車のシェルはまた、例えばスポーティな運転のために、可能な限り最も効果的に着座部が自動車の底部に接触するように、シート支持構造を規定するように成形および構成されている。
【0056】
一態様によれば、車両において、シートのHポイント移動パスは、参照母集団の少なくとも2つの身長パーセンタイルの関数である直線セグメントである。
【0057】
一態様によれば、本開示は、着座部と、第1の作動位置と、第1の作動位置に対してリクライニングした第2の作動位置との間で移動可能な上端部を備えた背もたれとを備えるシートに関する。このようにして、第1の作業位置では上端部によって妨げられ得るが、当該上端部が第2の作業位置にあるときにアクセス可能となる空間にアクセスすることが可能である。
【0058】
一実施形態では、上端部は、第2の作業位置にあるとき、着座部に向かって傾斜している。
【0059】
上記の態様の1つまたは複数によるシートは、スタンダードシートの利点とスポーツシートの利点とを兼ねる。
【0060】
着座部はシェルに直接固定されてもよく、背もたれが着座部に対してどのように配置されているかに応じて、様々な身長の使用者が自動車の内装内の最適な位置に各々の特定の視点を持つことを可能にするように、傾斜している。
【0061】
使用者の視点の位置は、使用者の体格にも基づいて楕円を描くことができる。
【0062】
シートのHポイント移動パスが参照母集団の主な身長パーセンタイルの曲線に近似する場合、様々な使用者の視点の位置は、様々な使用者の身長に対してさらに満足のいくものとなる。
【0063】
利用可能な空間、特に高さは、背もたれの位置に依存するので、シートの着座部は使用者の脚をより適切に支持する。
【0064】
背もたれの位置に基づいて、パーセンタイルが低いと着座部が短くなり、パーセンタイルが高くなるにつれて着座部は徐々に長くなる一方で、スタンダードシートまたはスポーツシートでは、着座部の長さは、様々な使用者の脚の長さに合わせることができない妥協の産物となる。
【0065】
着座部は、パーセンタイルが低い場合に、高く、パーセンタイルが高くなるにつれて、徐々に低くなる。
【0066】
シートは、特に自動車の底壁が着座部自体の傾斜を得るのに寄与するように成形されている場合に、着座部の下に追加の空間を作り出すことを可能にする。
【0067】
この追加の空間は、特にHEV/PHEV/EV車両においてバッテリを収容し且つタンクまたは電子制御ユニットを収容するために、自動車内に利用可能なまま残され得る。
【0068】
シートは、自動車の設計仕様上必要であればドライビングポジションを低くすることを可能にでき、より具体的には、完全一体型シートの場合に着座部と自動車の底部との間にレール上をスライドする支持構造がないため、スタンダードシートと比較して運転者はより低い位置に座ることができる。
【0069】
調整機構が背もたれのみに適用され、着座部には適用されないので、シートは、スタンダードシートよりも軽量である。
【0070】
前述のさらなる特徴および利点、およびその追加の態様は、スポーツカーシートおよびそのようなシートを備えた自動車のいくつかの好ましいが非排他的な実施形態の例示的な、したがって非限定的な説明においてより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
説明は以下に、本発明の範囲を制限することなく説明の目的のみで提供される添付の図面を参照してなされる。
【
図1】本開示による自動車の詳細を示す概略側面図である。
【
図2】本開示による自動車の詳細を示す概略斜視図である。
【
図4】本開示によるシートの一実施形態を部分的にブロックで示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
添付の図面を参照すると、数字1は本開示によるシートを示す。
【0073】
シート1は、車両、好ましくはスポーツカーまたはスーパースポーツカー、好ましくはツーシーター用である。
【0074】
一例の自動車は、添付の図面に概略的に且つ部分的に示されており、数字100で示されている。
【0075】
自動車100は、底壁102および後壁103によって少なくとも部分的に画定された内装101を備える。
【0076】
好ましい実施形態では、自動車100は、壁102および103を備えるシェル、例えばモノコック構造のシェルを備える。
【0077】
一実施形態では、壁102はシェルの底部を画定し、壁103はシェルの後部隔壁を画定する。
【0078】
一実施形態では、自動車100は、壁102および103からも形成されるモノコック構造を備える。
【0079】
自動車100は、内装101に取り付けられた少なくとも1つのシート1と、ペダルアセンブリ104とを備える。好ましくは、ペダルアセンブリ104は固定されている、すなわち、位置調整不可能である。
【0080】
シート1は、以下に説明されるタイプのものであり、着座部2と背もたれ3とを備える。
【0081】
着座部2および背もたれ3は互いに自由であり、すなわち、背もたれ3は着座部2に接続されておらず、着座部2は背もたれ3に接続されていない。
【0082】
より具体的には、着座部2は、背もたれ3とは独立して自動車100に固定可能である。
【0083】
図示の例では、着座部2は自動車100に固定されており、例えばクッション2aを備える。
【0084】
一実施形態では、着座部は自動車100に、具体的には自動車の底壁102に直接固定される。「直接固定される」という表現は、介在する構造や機構が存在しないことを意味するために使用される。
【0085】
一実施形態では、着座部2のクッション2aは、使用者が個人的な要件に基づいて選択できるように、交換可能である。
【0086】
シート1は、背もたれ3を車両100に設置して且つ支持するように構成された、背もたれ3用の支持システム4を備える。
【0087】
図示の例では、背もたれ3は壁103に固定されている。
【0088】
より具体的には、壁103は、背もたれ3が支持システム4によって固定される部分105を備える。
【0089】
背もたれ3は、例えば
図1および3に示される後退位置Aと、例えば
図1、3および4に文字Bで示される前進位置との間で、支持システム4によって、着座部2の上部に沿って移動可能である。
【0090】
後退位置Aおよび前進位置Bは、背もたれ3の前面によって識別される。
【0091】
位置Aと位置Bとの間で背もたれ3がカバーする距離は、移動距離Sとして示される。
【0092】
背もたれ3の位置は、シート1のHポイントの位置を決定する。例えば、SAE J4002で定義されているHポイントは、背もたれ3に対して固定されており且つ着座部2に対して移動可能である。
【0093】
背もたれ3の位置は、車両100におけるHポイント移動パスを決定する。
【0094】
背もたれ3の位置は、シート1の使用者が着座部2で利用できる空間を制限する。
【0095】
この空間は、背もたれが後退位置Aにあるときに最大長さMAX、背もたれが前進位置Bにあるときに最小長さMINを有する。
【0096】
着座部2は、使用者の臀部を支持する支持部分5を備える。
【0097】
着座部2、好ましくはその支持部分5は、着座部2の端部5aにおいて、水平基準Oに対して第1の高さH1を有する。
【0098】
着座部2、好ましくはその支持部分5は、端部5aの反対側のセクション5bにおいて、水平基準Oに対して第2の高さH2を有する。
【0099】
簡略化するために、背もたれ3は、後退位置Aにあるとき、実質的に端部5aに位置すると仮定する。
【0100】
簡略化するために、背もたれ3は、前進位置Bにあるとき、実質的にセクション5bに位置すると仮定する。
【0101】
この簡略化では、着座部2の部分5の寸法は考慮されていない。概念的には、背もたれが位置Aにあるときに水平基準に対して高さH1を持ち、背もたれが位置Bにあるときに水平基準に対して高さH2を持つ着座部である。
【0102】
高さH2は高さH1よりも高いので、背もたれ3が後退位置にあるとき、シート1の使用者は、背もたれが前進位置にある状態で同シートに使用者が座る場合よりも低い位置に座ることになる。
【0103】
有利には、簡略化するために、車両100の運転者に関して、最も後退した位置で背もたれを使用する背の高い運転者の視点は、より前方に配置された背もたれを使用する背の低い運転者の視点と同様に、最適に配置されることになる。
【0104】
着座部の、特にその部分5の形状のおかげで、背もたれを動かすと運転者の位置も上方に移動するので、運転者の身長が異なり且つ着座部が車両に固定されている場合であっても、視点の位置は最適化される。
【0105】
着座部2に対する背もたれ3の位置は、着座部2それ自体上の支持部分5の端部を特定する。
【0106】
着座部は、使用者の脚の少なくとも一部を支持し且つ好ましくは着座部2の部分5を補完する第2の支持部分6を備える。
【0107】
支持部分6の長さは、好ましくは、背もたれ3が前進位置Aにあるときよりも、背もたれ3が後退位置Aにあるときに、より長い。
【0108】
背もたれ3の位置は、着座部2上で使用者が利用できる空間を画定する。便宜上、この空間は着座部2と一致するものとする。
【0109】
着座部2は、部分5、6であって、その長さが背もたれ3の位置に対して変化する部分5、6を備える。
【0110】
有利には、第1の使用者にとって、部分6は、第1の使用者よりも身長が低く且つ背もたれをより前方の位置に保つ使用者の場合よりも長い。どちらの使用者にも、身長に比例した脚のサポートが提供される。
【0111】
好ましい実施形態では、水平基準に対する支持部分5の高さは、背もたれが位置Aから位置Bに移動するにつれて増加する。
【0112】
実際には、水平基準Oに対する支持部分の高さは、端部5aからセクション5bに向かってH1からH2に増加する。
【0113】
水平基準Oに対する支持部分5の高さは、H1からH2に、すなわち、実質的に背もたれ3の位置Aから位置Bに向かって増加する。
【0114】
好ましくは、着座部の高さは、参照母集団の平均身長曲線に比例して、端部5aからセクション5bに向かって、すなわちH1からH2に増加する。
【0115】
着座部は、パーセンタイルが低い場合に高く、パーセンタイルが高くなるにつれて徐々に低くなる。
【0116】
一実施形態では、シートのHポイント移動パスは、参照母集団の少なくとも2つの身長パーセンタイル、例えば男性個体の場合の50パーセンタイルおよび95パーセンタイルの関数である直線セグメントである。
【0117】
一実施形態では、シートのHポイント移動パスは、参照母集団の3つの身長パーセンタイル、例えば、男性個体の場合の50パーセンタイルおよび95パーセンタイル並びに女性個体の場合の05パーセンタイルの関数である直線セグメントである。
【0118】
一実施形態では、着座部2の少なくとも支持部分5は、傾斜面上、または、傾斜面であって、その傾斜が、背もたれが位置Aから位置Bに移動するにつれて増加する傾斜面に近似できる曲面上に延在する。
【0119】
図4に概略的に示される実施形態では、支持システム4は、背もたれ3が位置Aから位置Bに移動することを可能にする関節機構7を備える。
【0120】
一実施形態では、シート1、例えば支持システム4は、機構7を駆動するための、ブロック8として概略的に表される少なくとも1つの電気駆動装置を備える。
【0121】
例えば
図5に示される実施形態では、駆動装置8は背もたれ3内に収容される。
【0122】
一実施形態では、例えば
図4に示されるように、駆動装置8はシート1の外側にあり且つシート1に組み込まれていなくてもよい。
【0123】
一実施形態では、機構7は、回転運動を直線運動に変換できる、実質的に既知のタイプのサラス機構9を備える。
【0124】
機構9は、例えば、壁103、具体的には部分105に固定された第1の部材9aと、第1の部材と平行に移動可能であり且つ背もたれ3に固定された図示しない第2の部材9bとを備える。
【0125】
機構9の運動のタイプに起因して、第1および第2の部材9a、9bは、機構9の第1の部材と第2の部材との間の相対運動の方向Dに沿った直線運動で互いに近づいたり遠ざかったりする。
【0126】
一実施形態では、シート1は、背もたれ3をリクライニングさせるためのリクライニングシステム10を備える。
【0127】
例えば、関節機構7は、背もたれ3の並進および回転を可能にするように構成された関節式四辺形を備える。
【0128】
駆動装置8は、例えば、背もたれ3の並進および回転を可能にするように機構7を駆動するための一対の電気モータを備える。
【0129】
一実施形態では、リクライニングシステム10は背もたれ3に組み込まれている。
【0130】
例えば
図5に示されるように、背もたれ3は軸R周りに回転可能である。
【0131】
システム10は、例えば、背もたれ3にR周りの回転を与えることができる電気機械駆動装置11を備える。
【0132】
一実施形態では、シートは、着座部2のための、より具体的には、少なくとも支持部分5のための支持構造12を備える。
【0133】
支持構造12は、着座部と自動車の底壁との間に介在され得、着座部に必要な傾斜を与えるように構成される。
【0134】
好ましい実施形態では、背もたれ3が後退位置Aにあるとき、支持構造12は、水平基準Oに対して、背もたれが前進位置Bにあるときに支持構造が有する第2の高さよりも低い第1の高さを有する。
【0135】
図4に示される例では、構造12は、着座部2の傾斜を規定するのに寄与する傾斜面内に少なくとも部分的に延在する。
【0136】
好ましい実施形態では、着座部2を支持するための支持構造106は、自動車の内装の101の底壁102に直接形成されている。
【0137】
壁102は、自動車の内装の後壁から離れるほど、着座部、具体的には使用者の臀部を支持する部分が除々に高くなるように、成形されている。
【0138】
一実施形態では、壁102は、着座部2のベース102aを規定するように成形されており、当該ベース102aに着座部は固定可能であり、好ましくは、固定される。ベース102aは、ベース上に配置される着座部、より具体的には使用者の臀部を支持する部分が、水平基準Oに対して、位置Aから位置Bに向かって徐々に高くなるように、成形されている。
【0139】
一実施形態では、ベース102aは、水平基準Oに対するその高さが位置Aから位置Bに向かって増加するように成形されている。
【0140】
実際には、支持部分が端部5aからセクション5bに進むにつれて、支持部分の高さは自動車の内装の底壁の形状のおかげで、水平基準Oに対して増加する。
【0141】
一実施形態では、ベース102aが背もたれの移動方向に沿って一端から他端に進むにつれて、ベース102aの高さは水平基準に対して増加する。
【0142】
好ましくは、ベース102aが背もたれの移動方向に沿って一端から他端に進むにつれて、ベース102aの高さは、参照母集団の平均身長曲線に比例して、水平基準に対して増加する。
【0143】
構造12および/または構造106および/または着座部2の形状は、各々単独でまたは組み合わせて、着座部2に対する背もたれ3の位置に基づいて車両100におけるHポイント移動パスを規定することに寄与する。
【0144】
本発明の一態様によれば、Hポイント移動パスは線セグメントであり、好ましい実施形態では、線セグメントは、参照母集団の少なくとも2つの身長パーセンタイルの関数である。
【0145】
自動車100の一実施形態では、ベース102aの下に、例えばバッテリ、電子制御ユニットまたは他のアイテムを収容するために使用され得る区画106が画定される。
【0146】
一実施形態では、シート1は、例えば
図2に示される、左ハンドルの自動車の運転席用の第1の作動位置と、同図に示される、第1の作動位置に対してリクライニングした助手席用の第2の作動位置との間で移動可能な上端部3aを有する背もたれ3を備える。
【0147】
一実施形態では、自動車100の助手席には移動可能な上端部3aが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0148】
【国際調査報告】