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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】動的に調整可能な補強スリーブ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20231218BHJP
   A61B 17/28 20060101ALI20231218BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61F9/007 130H
A61B17/28
A61B17/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536075
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 IB2021061718
(87)【国際公開番号】W WO2022130209
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,731
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】レト グリューエブラー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ドラバ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF04
4C160FF14
4C160FF45
4C160GG05
4C160KL03
(57)【要約】
手術中に動的に引き込み可能な補強スリーブを有する外科用ツール。ツールは、手術部位に予め配置されたカニューレを介して低侵襲手術を実施するための針又は器具を含む。器具の周りのツールの補強スリーブは、器具が特に細い場合などに、剛性の程度の追加を提供し得る。しかしながら、手術のためにカニューレを越えて器具を前進させると、スリーブの端部は、カニューレの所定の位置に維持される。それにもかかわらず、外科医によって決定されると、必要に応じて、ツール本体へのスリーブの対応する意図的な引き込みによって、器具を更に前進させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって把持されるように構成された近位端と遠位端とを含むツール本体と、
前記本体の前記遠位端から延びる、患者の組織領域にアクセスするように構成された外科用器具と、
前記本体の前記遠位端から延び、外科的処置中に前記器具を安定させるために前記本体の前記遠位端から延びる前記器具の少なくとも一部分を囲む補強スリーブと、
を含み、
前記補強スリーブは前記スリーブと一体化した付勢機構を含み、前記付勢機構は、前記補強スリーブを前記本体に押し込む力に応答して前記スリーブを前記本体の前記遠位端に引き込むことを可能にするように構成されており、前記力が取り除かれると前記スリーブが伸長位置に戻ることを可能にするように構成されている、
外科用ツール。
【請求項2】
前記外科用器具は、硝子体切除プローブ、鉗子、及び鋏のうちの1つである、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項3】
前記スリーブは、約4mmよりも大きい、最大位置と前記本体の端部内に完全に引き込まれた位置との間の移動範囲を含む、請求項2に記載の外科用ツール。
【請求項4】
前記組織領域は前記患者の眼であり、前記外科的処置は、硝子体切除及び膜除去のうちの1つである、請求項2に記載の外科用ツール。
【請求項5】
前記付勢機構は少なくとも1つのばねを含む、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項6】
前記付勢機構は、前記ツールの前記本体内に固定されている、請求項5に記載の外科用ツール。
【請求項7】
前記付勢機構は、完全に伸長しているときでも前記本体の内部に留まるように構成されている、請求項6に記載の外科用ツール。
【請求項8】
前記付勢機構は、少なくとも2つの異なる直径のセクションを有するばねを含み、前記少なくとも2つの異なる直径のセクションの隣接セクションよりも小さい直径を有する前記少なくとも2つの異なる直径のセクションの少なくとも1つのセクションは、前記ばねが圧縮されると、より大きい直径を有する前記隣接セクションに少なくとも部分的に収まるように構成されている、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項9】
眼科手術で用いるための外科用システムであって、
患者の眼内に挿入して眼内部にアクセスを提供するためのカニューレと、
前記カニューレを通して前記眼内に伸長させて、前記眼科手術を実施するための外針を含む器具であって、前記器具は、動的に調整可能な補強スリーブを前記器具の周りに更に含み、前記動的に調整可能な補強スリーブは、前記カニューレの内面に接触して前記カニューレ内を前記針とともに前記スリーブが通過するのを阻止し、前記スリーブは、前記カニューレを通して前記眼内に前記針が挿入されるときに、前記プローブの本体への前記スリーブの引き込みを容易にするための付勢機構を含む、器具と、
を含み、
前記スリーブと前記付勢機構は、単一の一体型構成要素を形成している、
システム。
【請求項10】
前記カニューレの前記内面は、前記針を案内するためのオリフィスを有する漏斗部を含み、
前記スリーブと前記カニューレの前記漏斗部の表面との接続によって、前記眼科手術のための支点を外科医に提供する、
請求項9に記載の外科用システム。
【請求項11】
前記オリフィスは、約23ゲージよりも小さい直径の針を収容するような大きさである、請求項10に記載の外科用システム。
【請求項12】
手術を実施する方法であって、
カニューレを手術部位に挿入することによって前記カニューレを位置決めすることと、
外科用ツールの器具を前記カニューレのオリフィスを通して前記手術部位の組織領域まで伸長させることと、
前記組織領域に達しない前記カニューレにおいて、前記ツールの補強スリーブを前記器具の周りで安定させることと、
前記器具が前記組織領域内に伸長されると、前記カニューレが前記スリーブを付勢機構に対して押し戻すので、前記スリーブを前記ツールの本体内に動的に引き込むことと、
を含み、
前記スリーブと前記付勢機構は、単一の一体型構成要素を形成している、
方法。
【請求項13】
前記安定させることは、付勢機構を用いて、前記外科用ツールの周りの前記補強スリーブを伸長させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スリーブを前記動的に引き込むことは、前記器具が挿入されるときに外科医が前記スリーブを前記カニューレに対して押すことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記スリーブを前記引き込むことは、前記手術のために、前記器具を前記オリフィスを通して前記組織領域に向かって更に伸長させることを容易にする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、発明者がReto Gruebler及びKlaus Dorawaである、2020年12月17日に出願された「DYNAMICALLY ADJUSTABLE STIFFENING SLEEVE」という名称の米国仮特許出願第63/126,731号の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって低侵襲外科的処置の分野において多くの劇的な進歩が起こってきた。したがって、自然発生的な患者の傷害及び治癒時間は劇的に減少している。例として、眼科手術の領域においては、以前はアクセス不能であった損傷した又は劣化した組織を、低侵襲処置によって修復したり直接治療したりすることができる。眼科手術に網膜へのアクセスが含まれる場合、処置の少なくとも一部に硝子体切除が含まれることが一般的である。硝子体切除とは、患者の眼から硝子体液の一部又は全部を除去することである。濁った硝子体液の除去に限定された手術の場合、場合によっては、硝子体切除術が処置の大半を占める可能性がある。しかし、硝子体切除は、網膜修復手術、黄斑ひだ形成症又は多数の他の疾患に対処する手術を伴うこともある。
【0003】
眼科手術及び硝子体切除の例に従うと、硝子体液自体は透明なゲルであり、細長いプローブが眼に予め配置されたカニューレを通して挿入されると、細長い針によって除去され得る。より具体的には、硝子体切除プローブは、記載されるように、針がツールから現れた状態で外科医によって把持位置で保持される外科用ツールである。針は、硝子体液を除去するための中央チャネルを含む。更に、カニューレは、毛様体扁平部等の眼の前部のオフセットされた位置に戦略的に位置する構造的支持用の導管を提供する。このようにして、プローブ針は、患者の水晶体又は角膜への損傷を回避するやり方で、眼内に案内されるようにして挿入されてもよい。
【0004】
針は、図示されるように、一般に、毛様体扁平部の切開の位置に予め位置決めされたカニューレ及びトロカールアセンブリによって案内及び支持される。したがって、針は、外科的処置を実施するために眼の内部に確実に前進させることができる。当然ながら、硝子体切除用のプローブ針と同様に、他の様々な外科用器具を様々な異なる外科的目的のためにカニューレ及びトロカールアセンブリを通して同様に前進させることができる。これらには、鉗子、鋏、照明器具、及び他の器械が含まれ得る。
【0005】
長年にわたり、記載した硝子体切除などの低侵襲手術では、ますます精密になる外科的手技に対してますます小型化した器具が用いられてきた。例えば、従来約23ゲージであった可能性のある硝子体切除プローブ針は、約25又は27ゲージとなっている可能性がある。これにより、針の直径が約0.5mm弱から約0.4mm未満になる。硝子体切除プローブ針は中空である可能性が高いことを考慮すると、このゲージが次第に細くなっている器具は柔軟である可能性がある。他の機器に関しても、硝子体切除プローブ針を含め、器具のサイズが次第に小さくなるにつれて、同様の柔軟性の課題が出現する可能性がある。
【0006】
外科用器具の柔軟性又は可撓性の増大は、処置中の外科医にとって必ずしも有用ではない。一般に、外科医は、器具のある程度の剛性によって提供されるより高度な制御により良好に支援され得る。すなわち、器具にあまり可撓性がない場合には、外部位置での外科医による器具の手動操作は、手術部位に確実に伝達される可能性が高くなる。したがって、例えば、硝子体切除処置の場合、プローブはグリップを含み得、針は、グリップから、眼にある記載したカニューレ構造体に向かって且つこれを通して伸長する。より大きく且つより剛性の高い補強スリーブが、カニューレの構造的支持部からツールの本体及びグリップに向かって延び得る。したがって、補強スリーブの存在により、少なくとも、外科医の把持位置と眼の前方との間の空間においては、針の屈曲が避けられる可能性がある。むしろ、グリップから眼の表面におけるピボット位置(例えば、補強スリーブがカニューレに接触する場所)への確実且つ信頼性のある直線的な運動の伝達が示される。繰り返しになるが、眼内に存在し、補強スリーブによって構造的に拘束されない針の実際の長さは限定される。したがって、針の屈曲は更に最小限になる。残念ながら、詳述したような補強スリーブを用いると、スリーブの外径がカニューレ内に適合しない可能性があるために、眼内で利用できる針の使用可能長さが減少する可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
外科用ツールが提供される。ツールは、外科医によって手で固定される把持要素を含み、外科用器具は、患者の組織領域への外科的アクセスのために、要素から伸長し得る。補強スリーブは、器具を用いた領域での外科的処置中に器具を安定させるために器具の周りに提供される。付勢機構がスリーブに結合されている。付勢機構は、スリーブを要素から最大限に伸長させるが、器具が組織領域において構造に接触したことに応答して、要素内に引き込むことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】動的に調整可能な補強スリーブの一実施形態によって支援される針を用いた外科用ツールの側面斜視図である。
図2a】伸長構成にある補強スリーブの第1の実施形態の側断面図である。
図2b】圧縮構成にある補強スリーブの第1の実施形態の側断面図である。
図2c】伸長構成にある補強スリーブの第2の実施形態の側断面図である。
図2d】圧縮構成にある補強スリーブの第2の実施形態の側断面図である。
図3】補強スリーブによって支援される、図1のツールによって実施される外科的処置の概要図である。
図4A図3の4-4から取った、スリーブが第1の伸長位置にある状態の処置を示す、図3の処置の拡大図である。
図4B】第2の引込位置にあるスリーブを示す、図4Aの処置の拡大図である。
図5】動的に調整可能な補強スリーブによって支援される針を用いて低侵襲外科的処置を実施する一実施形態の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、本開示の理解を提供するために、多数の詳細を記載する。しかしながら、説明する実施形態が、これらの特定の詳細なしで実施され得ることは、当業者であれば理解するであろう。更に、具体的に説明する実施形態において依然として企図される多数の変形又は修正が採用され得る。
【0010】
実施形態を、ある特定の種類の外科的処置を参照して説明する。特に、鉗子ツールが図2a~図2dに示されている一方で、硝子体出血に対処するために硝子体液を除去する硝子体切除ツールが図1図3図4A、及び図4Bに示されている。しかしながら、本明細書中に詳述するツール及び技法は、他の様々な手法でも用いられ得る。例えば、処置のために眼内に達する器具は、鉗子、硝子体切除プローブ、鋏などであり得る。更に、本明細書中では硝子体切除処置が主に議論されるが、本明細書中に詳述される硝子体切除プローブの実施形態は、網膜剥離、黄斑ひだ形成症、黄斑円孔、硝子体浮遊物、糖尿病性網膜症、又は他の様々な眼の状態に対処するために利用されてもよい。更に、硝子体切除及び他の眼科手術は、多くの場合、相当に細い器具の使用から利するが、他のタイプの手術は、本明細書中に詳述する独特な構造及び技法から利することがある。実際、動的に調整可能な支持的補強スリーブが手術中に用いられる限り、かなりの利点が実現され得る。
【0011】
ここで図1を参照すると、動的に調整可能な補強スリーブ100の一実施形態によって支援される針175を用いた外科用ツール101の側面斜視図が示されている。図示の実施形態では、ツール101は、本明細書で更に詳述する処置で利用され得る硝子体切除プローブである。しかしながら、様々な異なる外科的用途のための他の種類の機器において、そのような動的に調整可能な補強スリーブ100が利用されてもよい。例えば、他の多くの外科用ツールと同様に、プローブ101は、特に細い(例えば、20ゲージ又はこれより小さいサイズ)器具(例えば、針175)を備えている。したがって、ステンレス鋼又は他の適切な耐久性のある外科用材料が用いられている場合であっても、針175だけでは、外科医の観点での望ましい剛性が不足している可能性があり、ある程度の屈曲が生じやすい可能性がある。
【0012】
針175によって示される前述の剛性の不足は、針175の周りに図示のスリーブ100を含むことによって対処され得る。しかしながら、従来のスリーブとは異なり、図示のスリーブ100は、スリーブ100がプローブ101からその把持要素150において伸長し得る長さ又は距離の観点において動的に調整可能である。したがって、以下で詳述するように、外科医は、有利には、針175がどの程度の距離に到達し得るかに対し、どの程度のスリーブ支持を提供するかの制御を施すことができる。これは、針175の距離が所与の外科的処置の全体を通して変化する状態で動的に行われ得る。スリーブ100の動的に調整可能な長さとは、本明細書中では、ツール101の把持要素150からのその伸長範囲に関して言及するものであることに注目すべきである。これは、スリーブ100が伸長する可能性のあるツール101の任意の最遠位本体部分を、そのような特徴が本質的に「把持用」と一般に考えられるか否かを問わず、類推し、含むことを意味する。
【0013】
図1を引き続き参照すると、ツール101は、把持要素150の後方にシェル125を含む。したがって、例えば、硝子体切除プローブの場合、外科医は、シェルが手の第1指間腔(perlicue)に置かれ、シェル内に機器構成要素を保護的に収容した状態で、親指と人差し指との間で把持要素150において機器を保持し得る。以下で更に説明するように、針175は、硝子体液を制御された状態で吸い上げるためにそのポート177と相互作用するカッターを針175内に支持し得る。そのような処置に関して、この努力における外科医の労作を独自に支持し、容易にするのは、補強スリーブ100の動的に位置決め可能な性質である。
【0014】
ここで図2aを参照すると、別のツール101(鉗子)の側断面図が示されている。この図では、補強スリーブ100の第1の実施形態の内部構造が見える。すなわち、外科的処置中の補強スリーブ100の動的移動を容易にする付勢機構200が示されている。したがって、例えば、一実施形態では、補強スリーブ100は、静止時に4~6mm(他のより短い及びより長い長さも企図される)伸長し得る。例えば、補強スリーブは、2mm、0.5cm(センチメートル)、1cm、1.5cm、2cm、2.5cm、3cm、3.5cmなど)伸長し得る。それにもかかわらず、所与の外科的処置で要求されるように、スリーブ100は、完全に引き込まれたときに、おそらくは把持要素150の端部230から約1mm以下だけ伸長した状態で、(例えば、図2bに見られるように)数センチメートル(cm)又はミリメートルだけプローブ101内に引き込まれることがある。以下で更に説明するように、スリーブ100によるこのような引き込み又はある程度の「移動」は、対応する針175の伸長又は露出に変換され、外科的処置中の外科的アクセスを容易にする。当然ながら、より大きい移動の程度が望まれる場合、付勢機構200は、より長いばね又はおそらくは複数の整列したばねさえ含んでもよい。
【0015】
図2c~図2dに見られるように、異なる直径を有するばねが付勢機構として使用され得る。図2cは、一連の3つの直径のセクション(補強材からベースに向かって小から大)を示す、伸長位置にある付勢機構(この場合、ばね)を示す。他の直径の数(例えば、2、4、5、10など)も使用することができる。異なる直径を使用することにより、ばねが圧縮されると、ばねは、更にそれ自体の中に収まることができる。例えば、図2dに見られるように、ばねは、小さい直径のばねセクションが、大きい直径のばねセクション内に部分的に押し込まれた中間直径のばねセクション内に部分的に押し込まれていることを示すために、断面図で示されている。これにより、ばねが(図2a~図2bに見られるような)1つの連続的な直径であった場合に比べて小さい、最終的な圧縮ばね長さがもたらされ得る。
【0016】
図2a~図2dを引き続き参照すると、図示されている付勢機構200は、補強スリーブ100に位置動的特性を提供するために補強スリーブ100と一体的に軸方向に整列しているばねである。支持は、プローブ101の構成要素ハウジング240内に取り付けられたベース250から得られる。図示のように、プローブ101と組み立てるための単一の一体構成要素として全ての3つの特徴が提供され得るように、ベース250もまた、ばね200及びスリーブ100と一体的に軸方向に整列している。いくつかの実施形態では、一体的なスリーブ及びばねは、ステンレス鋼、コバルト鋼、又はニチノールで作製されていてもよい。他の材料も企図される(例えば、他の金属、又は高密度ポリエチレン(HDPE)、塩化ビニル(PVC)、若しくはポリカーボネート(PC)などのプラスチック)。いくつかの実施形態では、ばね200の長さは、ばね200が完全に伸長しているときでも端部230を越えて伸びないことを確実とするために十分に短くされ得る。いくつかの実施形態では、ばね200のコイルの間の空間は、ばね200に要求される引き込み又は伸長の程度に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、スリーブ100と端部230との間の接続部280は、スリーブ100が大きな横方向の(スリーブ外面に垂直な)動きを伴わずに接続部280に対して移動することができるように、わずかな摩擦嵌合を含み得る。いくつかの実施形態では、接続部280は、(ある程度のわずかな更なる横方向の動きという犠牲を払って)より迅速なばね応答を可能にするために、スリーブ100とベース230との間に追加の空間を含み得る。いくつかの実施形態では、接続部280に潤滑剤が加えられてもよい(又は接続部280におけるスリーブ100の表面を滑らかにして、スリーブ100と端部230との間の摩擦を低減してもよい。)
【0017】
図2a~図2dはまた、ばねの動きを減衰させるために、固定されたベース250を更に付勢するプローブばね275などの他の内部特徴を明らかにする。硝子体切除処置を支持するために針175内で最終的に往復運動させるカッター260も明らかである。この点に関して、カッター260は、プローブの内部にある他の機械的構成要素によって往復運動され得る。近位端130の断面及び把持要素150に結合する手法も、図2a~図2dを参照すると明らかである。いくつかの実施形態では、近位端130は、外科医によって把持され得る、又は外科医によって把持されるハンドルに更に結合され得る。
【0018】
ここで図3を参照すると、図1のツール101を用いて実施される外科的処置の概要図が示されている。特に、処置は、補強スリーブ100によって支援される。この図では、患者の眼350の側断面概要が示されており、処置は、硝子体切除処置である。処置中に、プローブ101の針175は、予め配置されたカニューレ330を通して挿入され、硝子体液が除去される領域310に向けられる。具体的には、上述のように、吸引が適用され、ポート177は、硝子体液又は他の物質を吸い上げるために使用される。例えば、図示する処置において、領域310内で出血が起こる可能性があり、血液は、硝子体液と共にポート177に吸い込まれる。
【0019】
説明したような処置においては、針175は眼350の内部に達するが、針175を囲む補強スリーブ100は眼350の内部に達しないことに留意されたい。むしろ、スリーブ100の端部は、カニューレ330の内部構造体にしっかりと載置される。より具体的には、カニューレ内部構造体は、処置中に補強スリーブ100の端部を受け入れて支持するように、漏斗状又は他の収容形態のものであり得る。同様に、カニューレ330の中央には、針175の通過を可能にするのに十分な大きさのオリフィスが含まれる。当然ながら、オリフィスもまた、スリーブ100の同様の通過を可能にするには小さすぎる。したがって、例えば、一実施形態では、オリフィスは、25ゲージ及びそれより小さい針175(例えば、直径0.455mm以下)の通過を可能にするように、直径が約0.475mmであってもよい。同時に、このオリフィスはまた、23ゲージ及びそれより大きいスリーブ100(例えば、直径0.58mm以上)の通過を阻止する。当然ながら、記載したようなカニューレ330のオリフィスを通した針の通過を促し、スリーブの通過を阻むように、様々な異なる寸法の組み合わせを用いてもよい。
【0020】
スリーブ100がカニューレ330の内部構造体に安定的に接続している状態で、外科医は、カニューレ330の支点を中心に針を操作することができる。このようにして、針175が眼350の内部にある状態で、ある種の安定した作業領域が得られる。更に、意図しない屈曲の懸念があるカニューレ330と図1のツール101との間に、スリーブ100によって補助的な剛性が提供される。
【0021】
図3を引き続き参照すると、上述したように、カッターは、この繊細な処置の間、針175内で往復運動する。図示した手術には、別のカニューレ315を介して眼350内に達する照明器具325も含まれる。どちらの状況においても、カニューレ315、330は、強膜370においてオフセットして配置される。このようにして、より繊細な角膜390及び水晶体380を回避することができる。
【0022】
同様に、視神経360及び網膜375も極めて繊細である。このことを念頭に置くと、補強スリーブ100は、針175が眼350の奥深くに意図せずに達することを防止する最初の役割を果たすことができる。しかしながら、同様に、外科医は、スリーブ100がツール101(図1を参照)の内部で付勢機構200に打ち勝つように、意図的な力をかけてもよい。したがって、以下で更に詳述するように、スリーブ100は、把持要素150の端部230で把持要素150内に動的に引き込まれ、針175の意図した更なる前進を可能にし得る。
【0023】
ここで図4Aを参照すると、図3の4-4から取った図3の処置の拡大図が示されている。具体的には、図4Aは、スリーブ100が第1の伸長位置にある状態の処置を示す。伸長位置において、スリーブ100は、図4Bに示されるような引込距離(d’)よりも実質的に大きい、カニューレ330と把持要素150の端部230との間の伸長距離(d)を覆っている。より具体的には、図4Bは、スリーブ100が、処置中に外科医によって意図的に案内される第2の引込位置にある状態の図4Aの処置の拡大図を示す。図2を追加的に参照すると、ツール101内に引き込まれるスリーブ100の引込位置は、内部ばね200が圧縮され、針175が外科医によって眼350内に更に意図的に伸長されることと対応する。一実施形態では、スリーブ100は、伸長距離(d)において約5mm以上(例えば、1cm、1.5cm、2cm、2.5cm、3cm、3.5cmなど)まで伸長することができ、引込距離(d’)において約1mm以下まで引き込まれ得る。当然ながら、この点に関して、様々な異なる範囲、最大値、及び最小値を用いてもよい。
【0024】
図2を引き続き追加的に参照すると、説明した処置では、外科医が内部付勢機構200に打ち勝つのに十分な力を意図的に加え、針175を伸長させることだけを必要とする。このようにして、ばね200は、偶発的な滑りを実質的に回避するほど十分に蓄勢されるが、外科医による力の過度の印加を要するほどには蓄勢されない。このようにして、補強スリーブ100は、本明細書に詳述するように、処置に対して確実に動的に調整可能であると考えることができる。
【0025】
ここで図5を参照すると、動的に調整可能な補強スリーブによって支援される針を用いて低侵襲外科的処置を実施する一実施形態の概要を示すフローチャートが示されている。参照番号515に示されるように、カニューレが支持的構造のために手術部位に配置された状態で、参照番号540に示されるように、針などの器具がカニューレのオリフィスを通して案内され得る。したがって、針は、外科用ツールからカニューレを越えてより特定の組織領域まで伸長し得る。同様に、針の周りに位置するツールの補強スリーブは、組織領域に達しないカニューレの構造によって安定化され得る(参照番号565を参照)。しかしながら、針上のスリーブによる安定化に対する顕著な犠牲を払うことなく、スリーブはまた、外科医によってツール内に動的に引き込まれ得る。すなわち、参照番号590に示されるように、外科医が針を組織領域に向かって更に伸長させることを望む場合、これは、向上したより正確な外科的操作のために、ツール内へのスリーブの動的引き込みによって達成され得る。
【0026】
本明細書中で上記した実施形態は、比較的細い外科用器具を用いた外科的処置を支援するための補強スリーブの実際的な使用を可能にする構造及び手法を含む。すなわち、器具による外科的アクセスを補強スリーブの長さに相変わらず依存して決定するのではなく、スリーブを所定の範囲にわたって動的に調整可能である。したがって、本明細書中に図示及び詳述されるように、組織の領域への外科的アクセスは、様々な異なる距離にわたって支援され得る。これにより、例えば針器具の長さの観点において、外科用ツールの設計の柔軟性が与えられる。おそらくさらにより注目に値するのは、複数の長さ若しくは深さが課題となる又は目標とする深さがある程度の誤差を伴って推定された手術中におけるツール又は器具の交換を回避することができることである。
【0027】
前述の説明は、現在の好ましい実施形態を参照して提示されている。しかし、開示されているが上で詳述されていない他の実施形態及び/又は実施形態の特徴が採用されてもよい。更に、これらの実施形態が属する技術の当業者は、説明された構造及び動作方法における更に他の改変及び変更が、これらの実施形態の原理及び適用範囲から有意に逸脱することなく実施され得ることを理解するであろう。加えて、前述の説明は、説明し、添付の図面に示す正確な構造にのみ関係するものとして読み取るべきではなく、むしろ、それらの最大限且つ最も適正な範囲を有することになる以下の特許請求の範囲と整合し、それらを支持するものとして読み取るべきである。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】