(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ディスクブレーキディスクのブレーキバンド
(51)【国際特許分類】
F16D 65/12 20060101AFI20231218BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16D65/12 U
F16D65/12 X
F16D65/092 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536180
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2021061544
(87)【国際公開番号】W WO2022130142
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020000030893
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルディ,ピエランジェロ
(72)【発明者】
【氏名】ペナーティ,ダニエーレ
(72)【発明者】
【氏名】パッソーニ,ラッファエッロ
(72)【発明者】
【氏名】トゥラニ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ボッティン,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】カロニア,マルコ
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA62
3J058AA69
3J058BA37
3J058CA43
3J058CB14
3J058CB17
3J058DD02
3J058DD11
3J058DD20
3J058EA03
3J058EA05
3J058EA14
3J058EA17
3J058FA01
3J058GA29
3J058GA42
3J058GA43
3J058GA92
(57)【要約】
本発明は、ブレーキ作用を加えるために対向するブレーキ面(5または3,4)と接触するように適合されたブレーキ面(3,4または5)を有する少なくとも1つの部分を含むブレーキ装置(1または2)に関するものであり、ブレーキ面(3,4または5)は、相互に接触しているときに前記ブレーキ面(3,4または5)と対向するブレーキ面(5または3,4)との間の相対回転を可能にするために、周方向に障害物がなく、ブレーキ面(3,4または5)は、ブレーキ面(3,4または5)が固定されている場合にはその回転軸(X-X)に関して、または前記ブレーキ面(3,4または5)が回転可能である場合にはその回転軸(X-X)に関して、前記回転軸または回転軸(X-X)に平行な軸方向(A-A)と、軸方向(A-A)および回転軸(X-X)に直交する半径方向(R-R)と、軸方向(A-A)および半径方向(R-R)に直交し、回転軸(X-X)から等間隔に離間する周方向(C-C)と、軸方向(A-A)および半径方向(R-R)に直交する接線方向(R-R)とを定義し、少なくとも1つの支持連結部分(7または8)が、ブレーキ面(3,4または5)の半径方向外側で、ブレーキ面(3,4または5)から半径方向に離れるかまたは前記ブレーキ面(3,4または5)の外側で、または前記ブレーキ面(3,4または5)に半径方向に近づくかまたはブレーキ面(3,4または5)の内側で、含まれ 少なくとも1つの冷却部分(9または10)が、支持連結部分(7または9)に対して周方向および横方向に含まれ;冷却部分(9または10)が、熱交換面を増加させるように適合され、連結面を形成するように適合されていない複数の軸方向に貫通した開口部(11)を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ作用を加えるために対向するブレーキ面(5または3,4)と接触するように適合されたブレーキ面(3,4または5)を有する少なくとも1つの部分を備えるブレーキ装置(1または2)であって、
前記ブレーキ面(3,4または5)は、相互に接触している状態で前記ブレーキ面(3,4または5)と反対向きのブレーキ面(5または3,4)との間の相対回転を可能にするために、円周方向に障害物がなく、
前記ブレーキ面(3,4または5)は、
前記ブレーキ面(3,4または5)が固定されている場合には前記ブレーキ面の回転軸(X-X)に関して、または前記ブレーキ面(3,4または5)が回転可能である場合には前記回転軸(X-X)に関して、前記回転軸(X-X)に平行な軸方向(A-A)と、
前記軸方向(A-A)および前記回転軸(X-X)に直交する径方向(R-R)と、
前記軸方向(A-A)および前記径方向(R-R)に直交し、前記回転軸(X-X)から等間隔に離間する周方向(C-C)と、
前記軸方向(A-A)および前記径方向(R-R)に直交する接線方向(R-R)とを備え、
少なくとも1つの支持連結部分(7または8)が、
前記ブレーキ面(3,4または5)の半径方向外側に含まれる、または
前記ブレーキ面(3,4または5)から径方向に離れるか又は前記ブレーキ面(3,4または5)の外側に含まれる、もしくは
前記ブレーキ面(3,4または5)に径方向から接近する又は前記ブレーキ面(3,4または5)の内側に含まれ、
少なくとも1つの冷却部分(9または10)が、前記支持連結部分(7または9)に対して周方向および横方向に含まれており、
少なくとも1つの前記冷却部分(9または10)は、熱交換面を増加させるように適合され、接続面を形成するように適合されていない、軸方向に貫通した複数の開口部(11)を有する、ブレーキ装置(1または2)。
【請求項2】
前記ブレーキ面(3,4または5)を有する部分は、ブレーキ面本体部(12)を有し、
前記ブレーキ面本体部(12)が、所定の最大軸方向伸長部(La)を有し、
前記冷却部分(9または10)が、前記ブレーキ面本体部(12)の前記所定の最大軸方向延在部(La)と等しいか、または前記所定の最大軸方向延在部(La)よりも小さい軸方向(A-A)の延在部(Lf)を保って前記半径方向(R-R)に延在しており、
および/または
前記冷却部分(9または10)が、連結スポーク(21)によって前記ブレーキ面本体部(12)に連結されている、請求項1に記載のブレーキ装置(1または2)。
【請求項3】
前記冷却部分(9または10)は、前記軸方向貫通開口部(11)によって互いに分離された複数の冷却フィン(13)を有し、
および/または
前記支持連結部(7)は、前記軸方向貫通開口部(11)によって互いに分離された複数の冷却フィン(13)を有する、請求項1または2に記載のブレーキ装置(1または2)。
【請求項4】
前記冷却部(9又は10)は、前記軸方向貫通開口部(11)によって互いに分離された複数の冷却フィン(13)を有し、
前記冷却フィン(13)はそれぞれ、前記ブレーキ面本体部(12)から片持ち梁状に突出している、請求項2に記載のブレーキ装置(1または2)。
【請求項5】
前記ブレーキ装置(1又は2)は、装置縁部(14)、特に前記回転軸(X-X)の近くに配置された半径方向外側の装置縁部分(15)と、前記回転軸(X-X)から離れて配置された半径方向内側の装置縁部分(16)とを備え、
前記支持連結部(7または9)が存在しない半径方向外側の装置縁部分(15)全体が、前記軸方向貫通開口部(11)によって互いに分離された冷却フィン(13)を有し、
および/または
前記支持連結部(7又は9)が存在しない半径方向内側の装置端部(16)全体が、前記軸方向貫通開口部(11)によって互いに分離された冷却フィン(13)を有する、請求項3または4に記載のブレーキ装置(1または2)。
【請求項6】
前記軸方向貫通開口部(11)が貫通孔である、
または
前記軸方向貫通開口部(11)が、五芒星パターンに配置された貫通孔である、
もしくは
前記軸方向貫通開口部(11)が、半径方向に延びる入口である、請求項1または2に記載のブレーキ装置(1または2)。
【請求項7】
前記ブレーキ装置(1または2)が一体である、
および/または
前記ブレーキ装置(1または2)は、カーボン部分からなるか、または全体がカーボン製である、
および/または
前記ブレーキ装置(1または2)は、カーボン-カーボン部分からなるか、または全体がカーボン-カーボンからなる、
および/または
前記ブレーキ装置(1または2)が、カーボン-セラミック材料からなる部分からなるか、または全体がカーボン-セラミック材料からなる、
および/または
前記ブレーキ装置(1または2)が、スチール部分からなるか、または全体がスチール製である、
および/または
前記ブレーキ装置(1または2)は、鋳鉄製部分からなるか、または全体が鋳鉄製である、請求項1-6のいずれかに記載のブレーキバンド(1または2)。
【請求項8】
前記ブレーキ装置はブレーキバンド(1)であり、
前記ブレーキ面が、環状のブレーキバンド(1)の一対の対向するブレーキ面(3、4)であり、
前記支持連結部(7)が、前記ブレーキバンド(1)のベル(17)への連結部、または車両のスタブアクスルもしくはホイールリムへの直接連結部であり、
および/または
前記支持連結部(7)が、ベル(17)またはブレーキバンド支持要素の座部に幾何学的に結合されるように適合された連結突起(18)を有し、前記ブレーキバンド(1)の前記ベル(17)への、または車両のスタブ車軸またはホイールリムへの直接の連結部であり、
および/または
前記支持連結部(7)は、各々が連結要素(22)のための座部(19)を有する連結突起(18)からなる、前記ブレーキバンド(1)のベル(17)への連結部、または車両のスタブ車軸もしくはホイールリムへの直接連結部であり、
および/または
前記冷却部分(9)は、環状セクタ形状または環状バンド冷却部分(9)である、請求項1-7のいずれかに記載のブレーキバンド(1または2)。
【請求項9】
前記ブレーキ装置は、前記ブレーキディスク(20)を車両のスタブアクスルまたはホイールに連結するためのブレーキバンドベルまたは支持要素(17)に連結されたブレーキバンド(1)を含むブレーキディスク(20)である、請求項8に記載のブレーキ装置(1または2)。
【請求項10】
前記ブレーキ装置がブレーキパッド(2)であり、
前記ブレーキ面(5)は、ブレーキディスク(20)のブレーキバンド(2)のブレーキ面(3または4)をブラッシングするために周方向(C-C)に自由であるブレーキパッドブレーキ面であり、
前記支持連結部(8)は、前記ブレーキパッド(2)又は前記ブレーキパッドを支持又は当接するための当接面をブレーキキャリパ本体に対して付勢する弾性手段への前記ブレーキパッド(2)の接続部である、請求項1から7までのいずれかに記載のブレーキバンド(1または2)。
【請求項11】
前記冷却部(10)は、前記ブレーキパッドブレーキ面(5)の半径方向外側に位置するパッド冷却部であり、
および/または
前記冷却フィン(13)は、前記ブレーキパッド(2)の半径方向内側の装置縁部分(16)および半径方向外側の装置縁部分(15)の両方から半径方向に片持ち梁状に突出している、請求項10に記載のブレーキ装置(1または2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキバンドおよびディスクブレーキディスクに関し、特に、レース用途に限定されない。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキにおいて、ブレーキキャリパは、一般に、軸方向(A-A)を規定する回転軸(X-X)を中心に回転するように適合されたブレーキディスクの外周縁を跨ぐように配置される。ブレーキディスクには、前記軸方向(A-A)に実質的に直交する半径方向(R-R)と、前記軸方向(A-A)および前記半径方向(R-R)の両方に直交する周方向(C-C)と、前記軸方向(A-A)および前記半径方向(R-R)の両方に直交する接線方向(T-T)とが、局所的に、または時間的に、すなわち軸方向と半径方向との交点において画定される。
【0003】
公知のように、ディスクブレーキディスクは、ディスクを車両のハブに取り付けるためのベルを有し、そこからブレーキバンドと呼ばれる環状部分が延び、キャリパのブレーキパッドと協働するようになっている。ベンチレーテッドタイプのディスクの場合、ブレーキバンドは、例えばピンやフィンの形をした連結要素によって互いに連結された2枚の対向プレートによって得られる。2枚のプレートの外側面は、対向するブレーキ面を画定し、内側面は、ピンまたはフィンと共に、ディスクを冷却するための通気路を画定し、この通気路は、ディスク自体の回転運動中、遠心方向に従って空気流によって横切られる。
【0004】
レース用途の場合、ディスクブレーキディスクは、自動車用途ではホイールハブに、オートバイ用途ではホイールリムに直接接続されることが多い。ベンチレーテッドディスクの場合、ブレーキバンドは中央に放射状の孔を有し、この孔がディスクの内周縁から外周縁まで走る通気路を形成する。上述したタイプのベンチレーテッドディスクは、特にいわゆる通気路の数と形状に関して、時代とともに継続的な進化を遂げてきた。
【0005】
前記ブレーキバンドは、パッドによって、ブレーキ面と呼ばれる2枚のプレートの対向面に摩擦を加えることによって、車両にブレーキ作用を加えるように適合されたディスクブレーキキャリパと協働するように意図されている。
【0006】
ブレーキの作動中、ブレーキキャリパのパッドとブレーキバンドのブレーキ面との間の摩擦により、廃棄を必要とする大量の熱が発生することが知られている。
【0007】
発生した熱は、例えばブレーキバンドの変形、ブレーキ面の亀裂の形成、ブレーキバンドを形成する材料の局所的な状態変化など、いくつかの望ましくない現象を実際に引き起こし、その結果、ブレーキバンド自体が劣化する。
【0008】
特に、大きなブレーキ効率を有する高性能自動車への適用では、処理すべきエネルギが多く、ブレーキ動作中に発生する熱を処理する前述の必要性が一層感じられる。
【0009】
モータサイクルのレース用途では、車両性能の継続的な向上により、ブレーキシステムの性能もますます高くなっている。これは、ディスクがカーボン製(例えば、MotoGP用途)であろうとスチール製(例えば、SBK用途)であろうと、必然的にディスク温度に影響する。
[0012]. ブレーキディスクの直径と厚さは、車両のスペースの都合上、大きくすることが困難になっている。
【0010】
さらに、車両メーカーまたはユーザ(レーシングチーム)は、ブレーキング時に前輪により大きなトルクをかけることができるように空力的な解決策を実施し、モータサイクルの横転を遅らせている。
【0011】
さらに、レーシングチームは、ブレーキシステムの温度を下げるために、専用の換気装置にますます注意を払うようになっている。
【0012】
ブレーキディスク、ひいてはブレーキシステム全体の温度上昇は、性能の安定性とブレーキシステムに対するライダのフィーリングに影響する。
【0013】
さらに、二輪車用のディスクレイアウトでは、現在、使用可能な最大厚さが数ミリメートル(通常は8~10ミリメートル)しかないため、四輪車のような従来のベンチレーテッドディスク形状を使用することができない。
【0014】
例えば、現在MotoGPで使用されているカーボンディスクは、ソリッドバンドを採用している。フロント面は、この目的のために通気ダクトを通して強制的に送り込まれる空気によって通気されるのに非常に適している。
【0015】
したがって、同じ最大サイズまたはフットプリントで、熱交換面を増やすことができ、好ましくはこの熱交換を促進する形状で、したがってブレーキシステム周りの冷却液の乱流を抑えることができる新しいディスク構造の必要性が生じる。
【0016】
脚部を有するディスクまたはパッドソリューションが知られている。例えば、ディスクとその支持体との間に幾何学的な接続を形成するために脚部を使用するブレーキまたはクラッチディスクの解決策は、文献DE102018130489A1、EP867634、USRE36363、EP593715、US9400018、US9400018、JP6548290から公知である。従って、これらの公知の解決策では、脚は、表面積の増加をもたらすにもかかわらず、支持要素への結合でこれらの表面を覆い、従って、これらの表面は、このような場合には、これらの表面と接触して、又はこれらの表面の周囲でさえ循環することができない冷却流体との熱交換を生じさせるのに全く適さない。
【0017】
フォニックホイールなどの位置または速度検出装置専用の脚または穴を有するブレーキディスクの解決策も知られている。例えば、このタイプの解決策は、WO2014132202A1から知られている。明らかに、これらの既知の解決策は、完全にセンサ専用であるべきであり、これらの表面の近くに配置されると、熱交換に適さなくなる。さらに、センサ結合専用であるため、これらの面は、他の機能、例えばディスク支持部材との接続のための装置などの側方に円周方向に配置することが全く不可能であるため、装置、例えばブレーキディスクの全体的なサイズを増大させることを余儀なくされる。
【0018】
一方、US2006266600A1に示されている公知の解決策は、ブレーキパッドのサイズ、特に軸方向のサイズを変更するため、全く不適当である。
【0019】
したがって、熱交換を促進し、同時にブレーキシステムの全体的なサイズを変更しない、ブレーキバンドやブレーキパッドのようなブレーキ装置の形状を提案する必要性が、依然として強く感じられる。
【0020】
従って、本発明の根底にある問題は、先行技術を参照して述べた欠点を解決し、上記の必要性を満たしながら、前述の必要性を満たすような構造的および機能的特徴を有する、ブレーキバンドおよびブレーキパッドのようなブレーキ装置を考案することである。
【0021】
特に、レーシングスポーツ用途において、特にカーボン製またはスチール製である必要はないが、ブレーキバンドおよびブレーキパッドなどのブレーキ装置の温度を下げることを可能にし、その結果、重量および全体的なサイズにできるだけ影響を与えない解決策を提案することが目的である。
【0022】
さらなる目的は、ブレーキディスクとブレーキパッドのゾーンに既に搬送されている空気を最大限に活用する可能性をレーシングチームに提供することであり、その結果、そのゾーンのHTCを大幅に増加させ、ディスクとパッドの熱交換をはるかに効率的に行うことができる。
【発明の概要】
【0023】
本発明の目的は、熱交換容量が増大されたブレーキ装置を提供することである。
【0024】
これらおよび他の目的および利点は、請求項1に記載のブレーキ装置によって達成される。
【0025】
いくつかの有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0026】
この解決策の考察から、提案された解決策により、同じ全体サイズ、例えばブレーキディスクの外径で、熱交換面の20~22%の増加を達成することができ、したがって、重量を増加させることなく、同じ使用条件でブレーキディスクおよびブレーキパッドの温度を低下させることができる。
【0027】
均等なテストサイクル条件下(レースサーキットのブレーキ条件を再現)で、現行の解決策と本発明で提案する解決策を比較して実施したテストにおいて、本発明で提案する解決策で以下の結果が得られた。
【0028】
・ブレーキシステムの全体重量の低減;
・ブレーキ開始温度の低減;
・ブレーキ中の最高温度の低減;
・平均温度の低下;
・その結果、パッドだけでなくブレーキキャリパの温度も低下する;
・キャリパとブレーキフルードへの熱伝達が減少するため、ガスケットが保護され、ブレーキフルード中に気泡が発生する危険性がなくなる;
・ライダーが感じるブレーキレバーの動作の一貫性が向上する。
【0029】
さらに、提案された解決策は、2枚のプレートの間に配置され、2枚のプレートを接続するために換気ダクトの内側に配置されたペグまたはフィンの複雑な幾何学形状によって接続された換気チャネルによって得られる自動車のディスク換気と比較して、より単純な機械的構造である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本装置の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、例示のために与えられるが限定するものではない、その好ましい実施形態の以下に提供される説明から明らかになる。
【0031】
【
図1】
図1は、従来技術によるMotoGP用カーボンディスクの軸幾何学図である。
【
図2】
図2は、本発明に従って得られたSBKレース用途のブレーキバンドのボックス内拡大図の軸幾何学図である。
【
図4】
図4は、
図3のバンドの断面の詳細を示し、本発明による冷却フィンのサイズが強調されている。
【
図5】
図5は、本発明に従って得られたMotoGPレース用ブレーキバンドの箱内拡大図を示す。
【
図6】
図6は、ブレーキバンド支持要素に接続された
図5のブレーキバンドの円形セクタの軸方向図であり、この図では、熱伝達率のさまざまな値がグレーの濃淡で強調表示されている。
【
図7】
図7は、レーシング・サーキットに類似したブレーキシミュレーションにおけるブレーキバンド温度の経時変化の直交チャートを示し、実線で示した既知の解決策と破線で示した本発明の解決策とを比較している。
【
図8】
図8は、レーシング・サーキットに類似したブレーキシミュレーションにおけるブレーキパッド温度の経時的傾向を、実線で示した既知の解決策と破線で示した本発明の解決策とを比較した直交チャートである。
【
図9】
図9は、半径方向内側に配置された冷却フィンを有するバンド冷却部を有する本発明の実施形態によるブレーキバンドの正面図詳細であり、バンドのブレーキ面上に見ることができるブレーキパッドの静止フットプリントを用いたブレーキシミュレーションにおいて、異なる温度の領域が異なるグレーの色合いで示されている。
【
図10】
図10は、内側および外側に放射状に配置された冷却フィンを有するバンド冷却部を有する、本発明の実施形態によるブレーキバンドの正面図詳細であり、バンドのブレーキ面上にその静止フットプリントを見ることができるブレーキパッドを用いたブレーキシミュレーションにおいて、異なる温度における領域が異なるグレーの濃淡で示されている。
【
図11】
図11は、半径方向内側に配置された冷却貫通孔を有するバンド冷却部を有する本発明の実施形態によるブレーキバンドの正面図詳細を示し、この図では、バンドのブレーキ面上にその静止フットプリントを見ることができるブレーキパッドによるブレーキシミュレーションにおいて、異なる温度における領域が異なるグレーの濃淡で示されている。
【
図12】
図12は、本発明によるブレーキパッドの軸方向図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一般的な実施形態によれば、ブレーキ装置1または2は、ブレーキ作用を適用するために反対向きのブレーキ面5または3、4と接触するように適合されたブレーキ面3、4または5を有する少なくとも1つの部分を備える。
【0033】
前記ブレーキ面3、4または5は、相互に接触しているときに、前記ブレーキ面3、4または5と反対向きのブレーキ面5または3、4との間の相対回転を可能にするために、周方向に障害物がない。
【0034】
前記ブレーキ面3、4または5は、前記ブレーキ面3、4または5が固定面または回転面でない場合にはその回転軸X-Xに対して、または前記ブレーキ面3、4または5が回転面である場合にはその回転軸X-Xに対して、任意の点において、前記回転軸X-Xまたは回転軸X-Xに平行な軸方向A-Aを画定する、 前記軸方向A-Aおよび前記回転軸X-Xに直交する半径方向R-Rと、前記軸方向A-Aおよび前記半径方向R-Rに直交し、前記回転軸X-Xから等間隔に離間する円周方向C-Cと、前記軸方向A-Aおよび前記半径方向R-Rに直交する接線方向と、を有する。
【0035】
少なくとも1つの支持連結部分7または8が、前記ブレーキ面3,4または5の半径方向外側に、前記ブレーキ面3,4または5から半径方向に離れているか、または前記ブレーキ面3,4または5の半径方向外側に、または前記ブレーキ面3,4または5の半径方向内側に、または前記ブレーキ面3,4または5に半径方向に近接しているか、または前記ブレーキ面3,4または5の半径方向内側に含まれる。
【0036】
少なくとも1つの冷却部分9または10が、前記支持連結部分7または9に対して周方向および横方向に含まれる。
【0037】
前記冷却部分9又は10は、熱交換面を増加させるように適合され、連結面を形成するように適合されていない複数の軸方向に貫通した開口部11を有する。
【0038】
実施形態によれば、ブレーキ面3,4又は5を有する前記部分は、ブレーキ面本体部12を有する。
【0039】
前記ブレーキ面本体部12は、所定の最大軸方向伸長部Laを有する。
【0040】
前記冷却部分9または10は、前記ブレーキ面本体部12の前記所定の最大軸方向延在部Laと等しいか、または前記所定の最大軸方向延在部Laよりも小さい軸方向A-Aにおけるその延在部Lfを維持して半径方向R-Rに延在する。
【0041】
実施形態によれば、前記冷却部分9又は10は、連結スポーク21によってブレーキ面本体部12に連結されている。
【0042】
実施形態によれば、前記冷却部分9又は10は、前記軸方向貫通開口部11によって互いに分離された複数の冷却フィン13を有する。
【0043】
実施形態によれば、前記支持連結部分7は、前記軸方向貫通開口部11によって互いに分離された複数の冷却フィン13から構成される。
【0044】
実施形態によれば、前記冷却部9又は10は、前記軸方向貫通開口部11によって互いに分離された複数の冷却フィン13から構成される。
【0045】
前記冷却フィン13の各々は、前記ブレーキ面本体部12から片持ち状に突出している。
【0046】
一実施形態によれば、前記ブレーキ装置1又は2は、装置縁部14、特に前記回転軸又は回転軸X-Xに近い方に配置された半径方向外側の装置縁部分15と、前記回転軸又は回転軸X-Xから遠い方に配置された半径方向内側の装置縁部分16とを備える。
【0047】
前記支持連結部分7又は9が存在しない半径方向外側の装置縁部分15全体は、前記軸方向貫通開口部11によって互いに分離された冷却フィン13からなる。
【0048】
一実施形態によれば、前記支持連結部分7又は9が存在しない半径方向内側装置縁部分16全体が、前記軸方向貫通開口部11によって互いに分離された冷却フィン13から構成される。
【0049】
実施形態によれば、前記軸方向貫通開口部11は貫通穴である。
【0050】
一実施形態によれば、前記軸方向貫通開口部11は、互いに5角形に配置された貫通孔である。
【0051】
実施形態によれば、前記軸方向貫通開口部11は、半径方向に延びる入口である。
【0052】
実施形態によれば、前記ブレーキ装置1又は2は一体である。
【0053】
実施形態によれば、前記ブレーキ装置1又は2は、炭素部分からなるか又は全体が炭素からなる。
【0054】
実施形態によれば、前記ブレーキ装置1又は2は、カーボン-カーボン部分からなるか、又は全体がカーボン-カーボンでできている。
【0055】
実施形態によれば、前記ブレーキ装置1又は2は、カーボン-セラミック材料からなる部分からなるか、又は全体がカーボン-セラミック材料からなる。
【0056】
実施形態によれば、前記ブレーキ装置1又は2は、鋼製の部分からなるか、又は全体が鋼製である。
【0057】
実施形態によれば、前記ブレーキ装置1又は2は、鋳鉄部分からなるか、又は全体が鋳鉄製である。
【0058】
実施形態によれば、前記ブレーキ装置は、ブレーキバンド1である。
【0059】
前記ブレーキ面は、環状のブレーキバンド1の一対の対向するブレーキ面3,4である。
【0060】
前記支持連結部分7は、ブレーキバンド1をベル17に連結するか、又は車両のスタブアクスル又はホイールリムに直接連結するものである。
【0061】
実施形態によれば、前記支持連結部分7は、ベル17又はブレーキバンド支持要素の座部に幾何学的に結合されるように適合された連結突起18からなる、ブレーキバンド1のベル17への、又は車両のスタブアクスル又はホイールリムへの直接の連結部である。
【0062】
一実施形態によれば、前記支持連結部分7は、ブレーキバンド1をベル17に、又は車両のスタブアクスル若しくはホイールリムに直接連結する連結部であって、例えばボルト若しくはリベット等の連結要素22のための座部19をそれぞれ有する連結突起18からなる。
【0063】
一実施形態によれば、前記冷却部9は、環状セクタ形状又は環状帯状冷却部9である。
【0064】
実施形態によれば、前記ブレーキ装置は、ブレーキディスク20を車両のスタブアクスル又は車輪に連結するためのベル又はブレーキバンド支持要素17に連結されたブレーキバンド1を含むブレーキディスク20である。
【0065】
実施形態によれば、前記ブレーキ装置は、ブレーキパッド2である。
【0066】
前記ブレーキ面5は、ブレーキディスク20のブレーキバンド1のブレーキ面3又は4をブラッシングするために周方向C-Cにおいて自由であるブレーキパッド2のブレーキ面である。
【0067】
前記支持連結部8は、前記ブレーキパッド2を偏倚させる弾性手段又はブレーキパッド2をブレーキキャリパボディに対して支持又は付勢する付勢面に対するブレーキパッド2の連結部である。
【0068】
実施形態によれば、前記冷却部10は、ブレーキパッドブレーキ面5の半径方向外側に配置されたパッド冷却部である。
【0069】
実施形態によれば、前記冷却フィン13は、前記ブレーキパッド2の半径方向内側の装置縁部分16及び半径方向外側の装置縁部分15の両方から半径方向に片持ち梁状に突出している。
【0070】
1 ブレーキバンド
2 ブレーキパッド
3 ブレーキバンドブレーキ面
4 ブレーキバンドブレーキ面
5 ブレーキパッドブレーキ面
6 サポート連結部
7 サポート連結部、すなわちバンドとベルとの連結部。
8 サポート連結部:パッドをキャリパボディに対する弾性手段またはアバットメント手段に連結する部分。
9 バンド冷却部
10 パッド冷却部
11 軸方向貫通開口部
12 ブレーキ面部本体部
13 冷却フィン
14 装置端部
15半径方向外側の装置縁部分
16 半径方向内側装置端部
17 ベルまたはブレーキバンド支持要素
18 連結突起
19 連結要素シート
20 ブレーキディスク
21 連結スポーク
22 ベル・バンド連結要素、例えばボルトまたはリベット
軸対称面のX-X回転軸または回転軸
A-A 軸方向
R-R ラジアル方向
T-T 接線方向
C-C 円周方向
La ブレーキ面部本体の軸方向最大延長部
Lf 冷却フィンの軸方向伸び
【国際調査報告】