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特表2023-553663成形部品の電磁スポット溶接のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】成形部品の電磁スポット溶接のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/32 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B29C65/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536187
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021084262
(87)【国際公開番号】W WO2022128547
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】2027111
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520471519
【氏名又は名称】コーク・アンド・ファン・エンゲレン・コンポジット・ストラクチャーズ・ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】KOK & VAN ENGELEN COMPOSITE STRUCTURES B.V.
【住所又は居所原語表記】Laan van Ypenburg 56,2497 GB Den Haag,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マールテン・ラボルドゥス
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AK11
4F211AK13
4F211AR07
4F211TA01
4F211TC03
4F211TD11
4F211TJ29
4F211TN16
4F211TQ11
(57)【要約】
成形部品(2,3)の電磁スポット溶接用の装置(1)が記述される。装置(1)は、加圧体(10);圧力下での溶接によって融合されるべき成形部品(2,3)の接触面(20,30)を接合するように成形部品(2,3)に対して加圧体(10)の加圧面(100)を、又はこれとは逆に動かすように構成された第1変位手段(50)を備える。加圧体(10)は、更に、少なくとも成形部品(2,3)の接触面(20,30)において電磁場を生成するインダクタ(11)を備える。過熱からの保護のためにインダクタ(11)の少なくとも一部の周りで加圧体(10)にシールド(12)が設けられる。インダクタ(11)及び加圧面(100)と直接触してインダクタ(11)及び加圧面(100)の間で加圧体(10)にヒートシンク(13)が設けられる。インダクタ(11)は、インダクタ(11)、シールド(12)、及びヒートシンク(13)を冷却するために構成された冷却手段(111)を具備する。上記装置(1)を用いて成形部品(2,3)を電磁溶接するための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形部品の電磁スポット溶接用の装置であって、
加圧体;
圧力下での溶接によって融合されるべき前記成形部品の接触面を接合するように前記成形部品に対して前記加圧体の加圧面を、又はこれとは逆に動かすように構成された第1変位手段を備え、
前記加圧体は、更に、
前記加圧体に設けられ、かつ少なくとも前記成形部品の前記接触面において電磁場を生成するように構成されたインダクタ;
過熱からの保護のために構成され、前記インダクタの少なくとも一部の周りで前記加圧体に設けられたシールド;及び
前記インダクタ及び前記加圧面と直接触して前記インダクタ及び前記加圧面の間に設けられたヒートシンクを備え、
前記インダクタは、前記インダクタ、前記シールド、及び前記ヒートシンクを冷却するために構成された冷却手段を備える、装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクは、前記インダクタの断面寸法よりも大きい前記加圧面に接触した平面寸法を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インダクタは、四辺形の断面を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記インダクタは、線形セグメントを有し、少なくとも前記成形部品の前記接触面において実質的に円柱状の電磁場を生成するように構成される、上述の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記インダクタは、前記線形セグメントが前記加圧体の前記加圧面に実質的に平行に延びるように前記加圧体に位置付けられる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記加圧体の前記インダクタは、第1及び第2インダクタを備える、上述の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記インダクタにより生成される前記電磁場又は他の手段により加熱されるように構成された機械的締結具;及び
前記成形部品に向けて前記機械的締結具を動かし、加熱された前記機械的締結具を接合した前記成形部品内に前記成形部品の前記接触面よりも離れた位置まで打ち込むように構成された第2変位手段を更に備える、上述の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2変位手段は、前記接触面に対して非ゼロの角度の、好適には前記接触面に対して垂直な方向において、加熱された前記機械的締結具を前記接合した成形部品内に打ち込むように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記加圧体は、前記加圧面まで延びるキャビティーを、オプションとして中央に有し、前記第2変位手段は、前記キャビティーを通して前記機械的締結具を動かすように構成される、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1変位手段とは反対の前記接合した成形部品の側に逆加圧手段を更に備える、上述の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記インダクタに接続された交流電流生成器を更に備える、上述の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記ヒートシンクがセラミックス材料から成る、上述の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記シールドが、磁性誘電材料から成る、上述の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記加圧体は、前記加圧面に加えて2つの側面と、前記加圧面とは反対の上面を有し、前記シールドは、前記インダクタ及び前記側面の間に位置付けられる、上述の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
エンド・エフェクタとしてロボットアームの端部又は他のツールに設けられた上述の請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
成形部品の電磁スポット溶接のための方法であって、
A)上述の請求項のいずれか一項に係る装置を提供する工程;
B)前記第1変位手段によって前記加圧体の加圧面を前記成形部品に対して又はこれとは逆に動かし、圧力下での溶接によって融合されるべき前記成形部品の接触面を接合する工程にして、前記成形部品が、熱溶融可能な結合手段及び誘導感応コンポーネントを備える、工程;
C)前記加圧体の前記インダクタによって少なくとも前記成形部品の前記接触面において電磁場を生成し、これにより前記誘導感応コンポーネントの加熱によって前記結合手段を熱溶融する工程;
D)前記溶融した熱溶融可能な結合手段によって圧力下で前記成形部品を結合する工程;その間、E)前記加圧体の前記インダクタ、前記シールド及び前記ヒートシンクを、前記インダクタの前記冷却手段で冷却する工程を含む、方法。
【請求項17】
実質的に円柱状の電磁場が前記工程C)において生成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記熱溶融可能な結合手段が熱可塑性ポリマーを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記誘導感応コンポーネントが、カーボンファイバー、金属粒子、及び/又は強磁性粒子を含む、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記成形部品に向かって第2変位手段により、前記インダクタ又は他の手段により生成された前記電磁場により加熱されるように構成された機械的締結具を動かすこと、及び前記加熱された機械的締結具を前記接合した成形部品内に前記成形部品の前記接触面よりも遠い位置まで打ち込むことを更に含む、請求項16乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記加熱された機械的締結具は、前記接触面に対して非ゼロの角度の、好適には、前記接触面に垂直な方向において前記第2変位手段によって前記接合した成形部品内に打ち込まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記加圧体は、前記加圧面まで延びるキャビティーをオプションとして中央に有し、前記第2変位手段が、前記キャビティーを通して前記機械的締結具を動かす、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
逆加圧手段により前記第1変位手段とは反対の前記接合した成形部品の側に圧力が付与される、請求項16乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記インダクタにおいて交流電流が生じる、請求項16乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形部品の電磁スポット溶接のための方法、及び、電磁スポット溶接のための装置に関する。本出願のコンテキストにおけるスポット溶接は、交番電圧の下で電磁場を生成する静止インダクタを提供することによって、一つの溶接箇所で不連続溶接を生成する。これは、インダクタが、溶接の軌跡に沿って一緒に溶接される成形部品上を動かされる連続溶接とは対照的である。スポット溶接と連続溶接は、比較対象ではない。例えば、溶接対象の成形部品における熱生成が完全に異なり得る。
【背景技術】
【0002】
成形部品、例えば、繊維強化熱可塑性又は熱硬化性複合部品を接合するための多数の技術がある。成形部品の2つの接触面を接合するため、機械的締結及び接着剤ボンディングが伝統的に用いられている。しかしながら、機械的締結及び接着剤ボンディングの両方が、コスト高であり、また時間を要するように思える。機械的締結は、例えば、高価な孔の位置決め、穿孔、シム(shimming)及び締結具の実装を要求し、他方、接着剤ボンディングは、化学物質を伴い得る複雑な表面前処理を要求する。
【0003】
電磁溶接は、別々の締結具の使用を除去し、また、相対的に速い速度及び、あるとしても僅かな事前処理で、成形複合部品の接触面を接合する潜在的な能力を提供する。電磁溶接は、一つ又は複数の成形部品(群)の誘導感応コンポーネント(induction-sensitive component)において電磁場を生成し、成形部品(群)の熱溶融可能な結合手段を結合手段の融点を超えて加熱する。成形部品の接触面が溶融した結合手段によってお互いに接合される。結合手段は、例えば、接合される一つ又は複数の部品の熱可塑性樹脂であり得、又は、別に適用される熱可塑性樹脂であり得る。熱可塑性及び熱硬化性成形部品を一緒に溶接するため、誘導感応コンポーネントが溶融する熱可塑性樹脂は、例えば、ホットメルト接着剤として機能し得る。
【0004】
成形部品、例えば、繊維強化複合成形部品の間にスポット溶接の接続を形成するために多数の溶接方法が利用可能である。抵抗溶接では、溶接要素として機能する外部材料が加えられる必要がある。伝導溶接については、複合部品又は積層体が徹底的に加熱されて表面のツールプリントに帰結し、超音波溶接では、特定のエネルギーディレクタ材料が要求され、また、例えば、幾何公差及び部分的な再結晶に非常に敏感である。電磁スポット溶接の既知の方法は、特に、航空産業のような相対的に高い機械的強度及び溶接の接続の耐荷重能力が望まれる高グレード用途において品質が劣る接合部品を製造し得る。
【0005】
別の問題は、(スポット)溶接の接続は、溶接された成形部品の面に垂直な方向において十分な強度を提供しないおそれがあることである。所謂、面外荷重は、(スポット)溶接された成形部品(の部分)を離層する傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、成形部品のスポット溶接用の改良された方法及び装置を提供することにある。本発明の別の目的は、面外荷重及び離層に対して高められた耐性を有する溶接された成形部品を製造し得る成形部品のスポット溶接用の方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために本発明は、成形部品の電磁スポット溶接用の装置を提供し、当該装置が、加圧体;圧力下での溶接によって融合されるべき成形部品の接触面を接合するように成形部品に対して加圧体の加圧面を、又はこれとは逆に動かすように構成された第1変位手段を備え、加圧体は、更に、加圧体に設けられ、かつ少なくとも成形部品の接触面において電磁場を生成するように構成されたインダクタ;過熱からの保護のために構成され、インダクタの少なくとも一部の周りで加圧体に設けられたシールド;及びインダクタ及び加圧面と直接触してインダクタ及び加圧面の間に設けられたヒートシンクを備え、インダクタは、インダクタ、シールド、及びヒートシンクを冷却するために構成された冷却手段を備える。
【0008】
その装置により、急速及び効率的な態様で成形部品間で良質なスポット溶接の接続を実現することができ、スポット溶接された製品は、特に良好な機械的耐荷重性能を持つ。成形部品は、熱溶融可能な結合手段と、誘導感応コンポーネントを備える。請求に係る装置は、加圧体のインダクタによって成形部品の少なくとも接触面において電磁場を生成する;これにより誘導感応コンポーネントを加熱することにより結合手段を熱溶融する。請求された加圧体の特徴を備える請求に係る装置は、幾何学的にフォーカスされた被加熱部分を成形部品内に提供するように構成される。
【0009】
ヒートシンクは、インダクタ及び加圧面と直接触してそれらの間に設けられ得る。ヒートシンクの材料は、電気絶縁性でありながら熱伝導性があり、周囲から熱を吸収するように構成される。ヒートシンクは、受動的な熱交換器として働き、周囲の空気に、又は、インダクタの冷却手段に、成形部品の上部で生成された熱を伝導する。ヒートシンクの適切な材料は、高い熱伝導率を有するが、極めて低い電気導電率を有する。
【0010】
装置の好適な実施形態は、インダクタの断面寸法よりも大きい加圧面に接触した平面寸法を有するヒートシンクを備える。この実施形態は、熱伝導を改善することだけではなく、より拡張的かつ均一な成形部品上の加圧も提供する。
【0011】
シールドは、過熱から保護するために構成され、インダクタの少なくとも一部の周りに設けられる。装置の模範的な実施形態では、加圧体が、加圧面に加えて2つの側面と、加圧面とは反対の上面を有し、シールドは、インダクタ及び側面の間に位置付けられる。
【0012】
シールドの材料は、好ましくは断熱性である。シールドの製造に適した材料は、磁性誘電材料、及び有機バインダーに絶縁性の鉄粒子が埋設されたもののようなバインダーに埋設された金属粒子を有する材料を含み得るが、これらに限られない。これらの材料は、例えば、Fluxtrol(登録商標)という商品名で商業的に入手可能である。
【0013】
その断面形状といったインダクタの幾何形状は、原則として必要に応じて選択される。断面は、例えば、三角形又は円形であり得る。有用な実施形態は、インダクタが四辺形の断面を有する装置に関する。
【0014】
インダクタの3D形状もまた必要に応じて選択される。これは、以下に更に開示の幾つかの実施形態において、インダクタは、溶接位置の成形部品を加熱する必要があるだけでなく、装置の他の部分も加熱する必要があるために関連する。幾つかの実施形態では、よって、電磁場が拡張される必要がある。
【0015】
加圧体のインダクタが、第1及び第2インダクタ、又は、複数のインダクタを備える実施形態も提供され得る。
【0016】
ある実施形態では、インダクタが成形部品の少なくとも接触面において実質的に円柱状の電磁場を生成するように構成されるべくインダクタが線形セグメントを有する装置が提供される。この態様において、接触面は、高度に選択的な態様において加熱可能であり、正確なスポット溶接の接続が獲得される。
【0017】
加圧体におけるインダクタの位置も必要に応じて選択される。装置の実用的な実施形態では、インダクタは、線形セグメントが加圧体の加圧面に実質的に平行に延びるように加圧体に位置付けられる。
【0018】
発明に係る装置により形成されるスポット溶接を強化するため、特には、接触面に対して非ゼロ角度で延びる面外方向において強化するため、実施形態に係る装置は、インダクタにより生成される電磁場又は他の手段により加熱されるように構成された機械的締結具;及び成形部品に向けて機械的締結具を動かし、加熱された機械的締結具を接合した成形部品内に成形部品の接触面よりも離れた位置まで打ち込むように構成された第2変位手段を更に備える。
【0019】
そのような実施形態では、第2変位手段は、好適には、接触面に対して非ゼロの角度の、好適には接触面に対して垂直な方向において、加熱された機械的締結具を接合した成形部品内に打ち込むように構成される。
【0020】
実用的な実施形態は、加圧体は、加圧面まで延びるキャビティーを、オプションとして中央に有し、第2変位手段は、キャビティーを通して機械的締結具を動かすように構成される装置に関する。
【0021】
本発明に係る装置は、加圧体によってスポット溶接されるべき成形部品上に圧力を付与する。装置の別形態は、受動的又は能動的のいずれかにおいて、第1変位手段の反対側の接合された成形部品の側に逆加圧手段を備える。
【0022】
実用的な実施形態において請求の装置は、エンド・エフェクタ(end-effector)としてロボットアーム又は他のツールの端部に設けられる。これにより、複数のスポット溶接を行うため、接合された成形部品上で加圧体を正確に位置決めすることができる。
【0023】
一つ又は複数の成形部品が好適には熱可塑性材料から製造され、これが溶融によって溶接可能であるが、熱的結合手段として熱可塑性材料又は熱溶融可能な接着剤を成形部品の間の接触面上だけに形成することも想定できる。
【0024】
本発明の別の側面は、成形部品の電磁スポット溶接のための方法に関する。方法は、A)本発明に係る装置を提供する工程;B)第1変位手段によって加圧体の加圧面を成形部品に対して又はこれとは逆に動かし、圧力下での溶接によって融合されるべき成形部品の接触面を接合する工程にして、成形部品が、熱溶融可能な結合手段及び誘導感応コンポーネントを備える、工程;C)加圧体のインダクタによって少なくとも成形部品の接触面において電磁場を生成し、これにより誘導感応コンポーネントの加熱によって結合手段を熱溶融する工程;D)溶融した熱溶融可能な結合手段によって圧力下で成形部品を結合する工程;その間、E)加圧体のインダクタ、シールド及びヒートシンクを、インダクタの冷却手段で冷却する工程を含む。
【0025】
方法においては、成形部品は、一般的に、例えば、金属製ガーゼ(metal gauze)といった導電性コンポーネントを備え、又は、このコンポーネントが成形部品の間に配置される。好適には発電機から交流電流が提供されたインダクタにより生成された交番電磁場によってフーコー電流又は渦電流が導電性コンポーネントに誘起される。ジュール効果により、これらのフーコー電流は、熱溶融可能な結合手段を溶融するのに必要な熱を生成する。インダクタをスポット溶接の位置上に位置付けることにより、成形部品は、溶接位置で相互に接続される。
【0026】
方法の実施形態における実質的に円柱状の電磁場の使用によって、制御された、均一、かつターゲットに向けられた加熱を可能とし、溶接の必要がない成形部品の過熱ができる限り阻止される。過熱によって材料が劣化し、また従って、構造の望まない弱体化を生じさせ得る。円柱状の電磁場は、10~20mmの幅まで非常に狭く形成され得る。
【0027】
成形部品における誘導感応コンポーネントを加熱する目的のため、熱溶融可能な結合手段に熱的に接触しなければならない。これは、例えば、射出成形可能な混合材料のような、誘導感応コンポーネント及び熱溶融可能な結合手段を混合することにより可能である。
【0028】
使用材料、特には、誘導感応コンポーネント、及びこのコンポーネントからのインダクタの距離に依存して、適切な電力及び周波数を決定可能である。周波数は、とりわけ電磁場の浸透力を決定し、インダクタの電力は、交番電磁場の強さ、従って、誘導感応コンポーネントで生成される熱の程度を決定する。
【0029】
熱溶融可能な結合手段が熱可塑性ポリマーを備えるならば有利である。熱可塑性ポリマー同士は、融合によって単純な態様で結合可能である。更には、金属製ガーゼ又はカーボンファイバーといった誘導感応コンポーネントを熱可塑性ポリマーに混合することが簡単である。特に適した熱可塑性ポリマーの例は、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン及びポリフェニレンスルフィドであるが、方法は、原則として任意の熱可塑性のために適する。
【0030】
誘導加熱可能なコンポーネントは、好適にはカーボンファイバー及び/又は金属を備える。これらの材料は、瞬時に誘導加熱され、また、導電に加えて良好な熱伝導も有し、生成熱が上手く分散される。カーボンファイバーにより材料強度も高められるため、熱可塑性ポリマーに組み込まれたカーボンファイバーが推奨される。
【0031】
方法の別の好適な実施形態においては、誘導加熱可能なコンポーネントが強磁性粒子を備える。適切な粒子は、例えば、WO0185827に記載されており、また、キュリー温度に到達する時、磁気双極子を失い、それ以上加熱されなくなる追加の利益を有する。これにより過熱に対して保護を形成可能である。
【0032】
接触面に誘起されたフーコー電流又は渦電流が成形部品の幾何形状により制限される。成形部品のエッジ、コーナー又は穴が、フーコー電流の分布に影響し、従って、発生する熱にも影響する。このような電磁場の中断により、溶接工程において加熱の必要のないコンポーネントの加熱に帰結し得る。逆に、幾つかのパーツの加熱が困難である可能性もある。これらの問題は、熱可塑性成形部品の決定された場所にフーコー電流が生じはじめるエリアの境界を再配置することで解決可能である。好適な実施形態では、従前は加熱が困難であったパーツがそれにも関わらず加熱され、また望まない場所での高温が阻止可能である。
【0033】
方法の別の実施形態は、成形部品に向かって第2変位手段により、インダクタ又は他の手段により生成された電磁場により加熱されるように構成された機械的締結具を動かし、及び加熱された機械的締結具を接合した成形部品内に成形部品の接触面よりも遠い位置まで打ち込むことを更に含む。
【0034】
好適には、加熱された機械的締結具は、接触面に対して非ゼロの角度の、好適には、接触面に垂直な方向において第2変位手段によって接合した成形部品内に打ち込まれる。
【0035】
実用的な実施形態においては、加圧体は、加圧面まで延びるキャビティーを有し、第2変位手段が、キャビティーを通して機械的締結具を動かす。キャビティーは、ランダムな位置に位置付けられ得るが、好適には、加圧体の略中央に位置付けられる。
【0036】
逆加圧手段によって、第1変位手段とは反対の接合した成形部品の側に圧力が付与され得る。
【0037】
本発明の請求に係る方法における適用としては、インダクタが交流電流生成器に接続され、交流電流生成器が、インダクタの電気的接続手段に電気的に接続される。使用可能な周波数は、一般的に0.1~10MHzの間にある。0.1MHzと0.5MHzの間の周波数が好適に使用され、0.15MHzと0.4MHzの間の周波数がより好適に使用される。そのような好適な周波数で、電磁場の浸透力と加熱速度の最適なバランスが達成される。
【0038】
インダクタは、好適には、複数の巻き線を有する。そのようなインダクタは、コンパクトに具現化でき、好適には、平坦な側面が設けられ得る。精密に決定された誘導のために適切であり得る。
【0039】
インダクタが実質的にフラットであれば有益である。これは、例えば、インダクタを単一面に存在する導電体として具現化することにより可能である。そのようなフラットなインダクタは、非常にコンパクトであり、非常に正確かつ均一な態様で決定された位置で電磁場を適用することに適する。
【0040】
更なる好適な実施形態においては、インダクタは、冷却シースといった、冷媒の通路のために適合された少なくとも一つの供給チャネルが設けられる。インダクタの温度は、これにより、使用中に一定に保持可能であり、これは、インダクタの電気抵抗に関しても望ましい。冷媒は、好適には、高い熱容量を有する水といった液体である。誘導パーツは、例えば、所望の形態に曲げられた金属筒であり、交番電圧で電磁場が金属管自体に生じる間、これを介してポンプにより冷媒が流される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
ここで、次の図面を参照して本発明を説明するが、これに限定されない。
【0042】
図1図1は、エンド・エフェクタとして本発明の実施形態に係る装置が設けられた溶接システムを概略的に示す。
図2図2は、本発明の実施形態に係る装置の断面図を概略的に示す。
図3図3は、本発明の実施形態に係る方法の別工程における図1の装置の断面図を概略的に示す。
図4図4は、本発明の実施形態に係る方法のまた別工程における図1の装置の断面図を概略的に示す。
図5図5は、本発明の実施形態に係る方法のまた別工程における図1の装置の断面図を概略的に示す。
図6図6は、本発明の実施形態に係る方法のまた別工程における図1の装置の断面図を概略的に示す。
図7図7は、本発明の実施形態に係る方法のまた別工程における図1の装置の断面図を概略的に示す。
図8図8は、本発明の実施形態に係る方法のまた別工程における図1の装置の断面図を概略的に示す。
図9図9は、本発明の実施形態に係る別の方法の工程の断面図を概略的に示す。
図10図10は、本発明の実施形態に係る方法のまた別の工程において図9の装置の断面図を概略的に示す。
図11図11は、本発明の実施形態に係る方法のまた別の工程において図9の装置の断面図を概略的に示す。
図12図12は、本発明の実施形態に係る方法のまた別の工程において図9の装置の断面図を概略的に示す。
図13図13は、本発明の実施形態に係る方法のまた別の工程において図9の装置の断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明の実施形態に係る装置1を具備するスポット溶接システム5を示す。装置1は、工業用6軸ロボット51の部分であるロボットアーム50のエンド・エフェクタとして作動する。ロボットアーム50は、本発明の本質ではなく、静止アクチュエータといった装置1のための他の変位手段も想定されることに留意されたい。ロボット51は、ロボットアーム50の形態の第1変位手段及びエンド・エフェクタ装置1を、スポット溶接が行われるべき複数の別々の位置でスポット溶接される成形部品(2,3)のアセンブリに向けて動かすようにプログラムされる。装置1の加圧体10に組み込まれたインダクタ11(図2参照)は、電磁場の生成のためにロボット51上に配置された交流電流生成器52に接続されて作動する。しかしながら、交流電流生成器52を他の場所に配置することもでき、装置1の加圧体10に組み込むことさえもできる。図示の形態では、逆加圧手段4が、アセンブリ(2,3)に接近している第1変位手段又はロボットアーム50の側とは反対の接合した成形部品(2,3)の側に設けられる。逆加圧手段4は、固体として実施され得、又は、接合した成形部品(2,3)の上述の側に対して押圧可能である意味において能動的であり得る。
【0044】
図2により詳細に図示のように、成形部品(2,3)の電磁スポット溶接のための装置1は、加圧体10と、例えば、(図2において矢印50により概略的に表示されている)ロボットアーム50の形態の第1変位手段を含む。加圧体10は、鉄といった金属の固体ブロックであり得、又は、基板に対して圧力を付与する限りにおいて他の方法で実施され得る。図2の加圧体10は、加圧面100と加圧面100の反対の上面102に加えて、2つの側面(101a,101b)を有する。図示のように、加圧体10は、更に、ある実施形態において、後述のように、中央キャビティー103を更に有するが、中央キャビティーは、本発明の本質的特徴ではない。図2は、装置1の垂直な中心面での断面図を示すことに注意されたい。キャビティー103は、前側で開口しているように見えるが、実施形態においては、例えば、固体ブロックに設けられた中央円柱キャビティーにおけるもののように、加圧体10の材料により閉鎖される。
【0045】
ロボットアーム50は、成形部品(2,3)に対して加圧体10の加圧面100を、又はこれとは逆に動かすようにプログラムされる。次に、図3に図示のように、溶接により融合される成形部品(2,3)の接触面(20,30)は、圧力下で接合される(が、まだ溶接されていない)。
【0046】
図2によると、加圧体10は、加圧体10に設けられたインダクタ11を更に備える。インダクタ11は、成形部品(2,3)の少なくとも接触面(20,30)において電磁場12を生成するように構成される。図示の形態においては、インダクタ11は、四辺形の断面を有し、また線形セグメントを更に備え、インダクタが成形部品(2,3)の少なくとも接触面(20,30)において実質的に円柱状の電磁場を生成するように構成される。このようにして、電磁場は、溶接される位置よりも十分遠くに到達しないように集中され得る。図2における線形セグメント(群)は、加圧体10から少し離れた距離104で加圧体10の加圧面100に実質的に平行に延びる。別のセグメントは、加圧面100からより遠く離れた距離105に位置付けられ得る。この他のセグメントは、同一のインダクタ11の一部であり得、又は、より高い高さで加圧体10に設けられた第2のインダクタ11の一部であり得る。
【0047】
インダクタ11の少なくとも一部の周りで加圧体10にシールド12も設けられる。シールドは、過熱からの保護のために構成され、また、Fluxtrol(登録商標)といった適切な断熱材料から成る。シールド12は、板状構造を備え、またインダクタ11と加圧体10の側面(101a,101b)の間に位置付けられる。
【0048】
発明に係る装置10は、更に、加圧体10に組み込まれ、かつインダクタ11と加圧面100の間に設けられたヒートシンク13を更に備える。ヒートシンク13は、更には、インダクタ11(の下面)と加圧面100に直に接触する態様で位置付けられる。適切ならば、追加のヒートシンク材料13aがインダクタ部分11の間にも設けられ得る。ヒートシンク13は、板状構造として実施され得、更には、インダクタ11の断面寸法110よりも大きい加圧面100と接触する平面寸法106を有し得る。ヒートシンク13は、好適には、セラミックス材料から成る。
【0049】
また図示のように、インダクタ11には冷却シース111が設けられ、例えば、水といった冷却液が流れる導管により実施される。冷却シースは、インダクタ11を冷却するだけではなく、少なくとも部分的に、シールド12及びヒートシンク13を冷却するようにも適合される。
【0050】
図示した実施形態は、更には、インダクタ11により生成された電磁場、又は、別個の熱、IR等のヒーター(不図示)のような他の手段により加熱されるように構成されたリブ付きリベット6の形態の機械的締結具を更に備える。本実施形態の装置1は、図5~8に図示のように、成形部品(2,3)に向けてリベット6を動かし、図6に図示のように、加熱されたリベット6を、接触面(20,30)に垂直に、成形部品(2,3)の接触面(20,30)よりも遠い位置まで接合した成形部品(2,3)内に打ち込むように構成されたプランジャー7の形態の第2変位手段も具備している。結果として、リベット6が、接合及び溶接された成形部品(2,3)内に溶接される。これによって、特には面外方向8においてリベット6により機械的に強化された成形部品(2,3)の間にスポット溶接された接続が提供される。この実施形態では、加圧体10は、加圧体10の加圧面100まで延びるオプションの中央キャビティー103を備える。第2変位手段又はプランジャー7は、従って、キャビティー103を通してリベット6を動かすように構成される。
【0051】
図2~4を参照すると、発明に係る装置1を用いて成形部品(2,3)の電磁スポット溶接のための多数の工程が図示される。
【0052】
初めの工程(図2)では、装置1は、スポット溶接の必要がある第1の成形部品2と第2の成形部品3に近傍に配置される。成形部品(2,3)は、まだお互いに離れている。
【0053】
次工程では、ロボットアーム50で、加圧体10の加圧面100が成形部品(2,3)に対して、又はこれとは逆に動かされ、スポット溶接により融合されるべき成形部品(2,3)の接触面(20,30)が圧力下で一緒に合わされ、又は接合される(がまだ溶接されない)。成形部品(2,3)は、熱溶融可能な結合手段、及びインダクタ11により生成される電磁場の影響の下でそれを加熱する誘導感応コンポーネントを備える。これについて、成形部品(2,3)が、カーボンファイバーで強化された熱可塑性ポリマーから製造され得、カーボンファイバーが誘導感応コンポーネントとして機能し、熱可塑性ポリマーが熱溶融可能な結合手段として機能し得る。成形部品(2,3)は、例えば、カーボンファイバー強化ポリフェニレンスルフィドを含むことができ、例えば、1~3mmの材料厚を有する。第1の成形部品2は、折り端を有し、また、例えば、補強材であり得、他方、第2の成形部品3は、平板である。明らかに、両方の成形部品(2,3)は、湾曲といった別の形状を持ち得る。
【0054】
図4を参照すると、別の工程は、加圧体10のインダクタ11で成形部品(2,3)の少なくとも接触面(20,30)において電磁場を生成し、同時に冷却シース111でインダクタ11を冷却することを含む。これは、成形部品(2,3)におけるカーボンファイバーを加熱することにより、成形部品(2,3)の両方の部分(volume)21における成形部品(2,3)の熱可塑性ポリマーを加熱する(また可能性として溶融する)。部分21における温度は全体的に均一ではないかもしれず、また、部分21の中央部分だけが熱可塑性ポリマーの融点を超える温度を持ち得る。(溶接されるべきスポットの周囲の)必要な範囲に部分21を制限するため、円柱状の電磁場が好適である。このような電磁場は、線形セグメント(群)を有するインダクタ11により誘起される。シールド12、ヒートシンク13及び冷却シース111を備える加圧体10の特定の構成は、制御され、かつ上手く集中(フォーカス)された部分21を提供する。熱可塑性ポリマー(オプションとして接触面20,30に塗布された熱溶融可能な接着剤)を加熱溶融するのに十分に高い温度までの接合構成における成形部品(2,3)の加熱は、少なくとも溶接されるスポットの周囲の部分において2つの成形部品(2,3)を一緒に融合する。加熱及び/又はオプションとしてその後の短時間の間、接触面(20,20)は、好適には、加圧体10自体と逆加圧手段4によって一緒に加圧され、これにより成形部品(2,3)の間の接続をもたらす。この接続は、特に高い機械的な耐荷重能力を持つ。加圧体10は、続いて、ロボットアーム50によりスポット溶接された成形部品(2,3)から取り外される。
【0055】
上述の工程が、スポット溶接の実施が必要な別の位置において繰り返される。加圧手段10は、他の位置に動かされ、図2~4に示した一連のイベントが繰り返される。
【0056】
本発明の別の実施形態が図5~8に図示される。この実施形態は、更に、リベット6といった機械的締結具を図3に示した工程において接合した接合済みの成形部品(2,3)内に設けることを含む。インダクタ11による電磁場の励起の後、図4に図示の工程に即して、同じように、インダクタ11により生成された電磁場、又は、別の加熱といった他の手段により、リベット6が加熱される。
【0057】
次工程において、加熱されたリベット6は、部分22でインダクタ11により生成された電磁場により加熱された接合済みの成形部品(2,3)に向けてプランジャー7によって動かされる。この部分22は、部分21よりも僅かに大きいかもしれず、この理由は、例えば、リベット6も加熱されているためである。プランジャー7は、加圧体10の加圧面100まで延びるキャビティー103に沿って動き、従って、キャビティー103を通して加熱されたリベット6を動かす。
【0058】
図6を参照すると、加熱されたリベット6は、次に、ロボットアーム50によって、成形部品(2,3)の接触面(20,30)の位置よりも更に下方の位置60まで接触面(20,30)に略垂直な方向8において接合及び加熱された成形部品(2,3)内に打ち込まれる。この工程においては、リベット6は、形成される接続を実際に強化する側にカーボンファイバーを動かし得る。成形部品(2,3)の熱可塑性ポリマーが加熱され、かつコア部分においてその融点を超えて加熱されるため、加熱されたリベット6の打ち込みが促進される。
【0059】
図7を参照すると、インダクタ11が交流電流生成器52から切断され、電磁場が非活性になる。これにより、まだ圧力を付与している間、加熱された部分22が冷却される。冷却によって熱可塑性ポリマーが硬化し、スポット溶接された成形部品(2,3)においてリベット6を幾何学的にロックする。リベット6の頭部6aが横方向に延びてリベット6が成形部品(2,3)内により遠くまで打ち込まれることを阻止する。
【0060】
最後の工程において、加圧体10は、スポット溶接され、かつ機械的にリベット留めされた成形部品(2,3)からロボットアーム50で取り外される。
【0061】
上述の工程は、リベット留めされたスポット溶接の実施が必要な別の位置のために繰り返され得る。加圧手段10がこの別の位置に動かされ、図2~8に示した一連のイベントが繰り返される。
【0062】
図9~13を参照すると、発明に係る装置1を用いた成形部品(2,3)の電磁スポット溶接のための方法及び装置1のまた別の実施形態が図示される。幾つかの場合には別の実施形態ではあるが、参照番号は、他の図面において用いた参照番号と同一のものにより示されるアイテムに対応する。図9によると、加圧体10は、加圧体10に設けられたインダクタ11を備える。インダクタ11は、単一の巻き線を有し、また、成形部品(2,3)の少なくとも接触面(20,30)において電磁場12を生成するように構成される。図示の実施形態では、インダクタ11は、四辺形の断面を有する。図9におけるインダクタ11の線形セグメントが、加圧体10から少しの距離104で加圧体10の加圧面100に実質的に平行に延びていることが見られる。
【0063】
シールド12も、インダクタ11の少なくとも一部の周りで加圧体10に設けられる。シールドは、過熱から保護するために構成され、またFluxtrol(登録商標)といった適切な断熱材料からそこに成る。シールド12は、板状構造を備え、また、インダクタ11上、更には、インダクタ11と加圧体10の側面(101a,101b)の間に位置付けられる。
【0064】
図示の実施形態における発明に係る装置10は、加圧体10に組み込まれ、かつインダクタ11の巻き線との間、及び、インダクタ11と加圧面100の間に設けられたヒートシンク13を更に備える。ヒートシンク13は、更には、それがインダクタ11(の下面)と加圧面100に直接触する態様で位置付けられる。ヒートシンク13は、板状構造として具現化され得、更には、インダクタ11の断面寸法110よりも大きい加圧面100に接触する平面寸法106を有し得る。ヒートシンク13は、好適にはセラミックス材料から成る。
【0065】
また図示のように、インダクタ11には、他の実施形態について上述したように、冷却シース111が設けられる。
【0066】
本実施形態(図9)に係る方法の最初の工程において、装置1は、スポット溶接が必要な第1の成形部品2と第2の成形部品3の近傍に設けられる。成形部品(2,3)は、まだお互いに分離されている。
【0067】
次工程において、図10に示すように、ロボットアーム50で、加圧体10の加圧面100は、成形部品(2,3)に対して、又は逆に動かされ、スポット溶接されるべき成形部品(2,3)の接触面(20,30)が圧力下で合わされて又は接合される(がまだ溶接されていない)。成形部品(2,3)は、他の実施形態のコンテキストにおいて上述したように、熱溶融可能な結合手段と、インダクタ11により生成される電磁場の影響の下でそれを加熱する誘導感応コンポーネントを備える。
【0068】
図11を参照すると、別の工程は、加圧体10のインダクタ11で成形部品(2,3)の少なくとも接触面(20,30)において電磁場を生成し、同時に、冷却シース111でインダクタ11を冷却することを含む。これは、成形部品(2,3)のカーボンファイバーを加熱することにより、両方の成形部品(2,3)の部分21における成形部品(2,3)の熱可塑性ポリマーを加熱(可能性として溶融)する。シールド12、ヒートシンク13、及び冷却シース111を備える加圧体10の特定の構成は、制御され、かつよく集中(フォーカス)された部分21を提供する。熱可塑性ポリマー(又はオプションとして接触面(20,30)に付与された熱溶融可能な接着剤)を熱溶融するのに十分に高い温度まで接合構成における成形部品(2,3)を加熱することで、少なくとも溶接されるべきスポットの周りの部分において二つの成形部品(2,3)が一緒に融合する。加熱及び/又はオプションとしてその後の短時間の間、接触面(20,20)は、好適には、加圧体10自体と逆加圧手段4によって一緒に加圧され、これにより成形部品(2,3)の間の接続をもたらす。この接続は、図12に示すように、(電磁場をオフに切り替えることにより)部分21を冷却することにより提供される。加圧体10は、次に、図13に示すように、続いて、ロボットアーム50によりスポット溶接された成形部品(2,3)から取り外される。
【0069】
上述の工程は、スポット溶接の実施が必要な別の位置のために繰り返され得る。加圧体10がこの別の位置に動かされ、図9~13に示した一連のイベントが繰り返される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-08-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形部品の電磁スポット溶接用の装置であって、
加圧体;
圧力下での溶接によって融合されるべき前記成形部品の接触面を接合するように前記成形部品に対して前記加圧体の加圧面を、又はこれとは逆に動かすように構成された第1変位手段を備え、
前記加圧体は、更に、
前記加圧体に設けられ、かつ少なくとも前記成形部品の前記接触面において電磁場を生成するように構成されたインダクタ;
過熱からの保護のために構成され、前記インダクタの少なくとも一部の周りで前記加圧体に設けられたシールド;及び
前記インダクタ及び前記加圧面と直接触して前記インダクタ及び前記加圧面の間に設けられたヒートシンクを備え、
前記インダクタは、前記インダクタ、前記シールド、及び前記ヒートシンクを冷却するために構成された冷却手段を備える、装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクは、前記インダクタの断面寸法よりも大きい前記加圧面に接触した平面寸法を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インダクタは、四辺形の断面を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記インダクタは、線形セグメントを有し、少なくとも前記成形部品の前記接触面において実質的に円柱状の電磁場を生成するように構成される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記インダクタは、前記線形セグメントが前記加圧体の前記加圧面に実質的に平行に延びるように前記加圧体に位置付けられる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記加圧体の前記インダクタは、第1及び第2インダクタを備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記インダクタにより生成される前記電磁場又は他の手段により加熱されるように構成された機械的締結具;及び
前記成形部品に向けて前記機械的締結具を動かし、加熱された前記機械的締結具を接合した前記成形部品内に前記成形部品の前記接触面よりも離れた位置まで打ち込むように構成された第2変位手段を更に備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2変位手段は、前記接触面に対して非ゼロの角度の、好適には前記接触面に対して垂直な方向において、加熱された前記機械的締結具を前記接合した成形部品内に打ち込むように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記加圧体は、前記加圧面まで延びるキャビティーを、オプションとして中央に有し、前記第2変位手段は、前記キャビティーを通して前記機械的締結具を動かすように構成される、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1変位手段とは反対の前記接合した成形部品の側に逆加圧手段を更に備える、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記インダクタに接続された交流電流生成器を更に備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記ヒートシンクがセラミックス材料から成る、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記シールドが、磁性誘電材料から成る、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記加圧体は、前記加圧面に加えて2つの側面と、前記加圧面とは反対の上面を有し、前記シールドは、前記インダクタ及び前記側面の間に位置付けられる、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
エンド・エフェクタとしてロボットアームの端部又は他のツールに設けられた請求項1乃至14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
成形部品の電磁スポット溶接のための方法であって、
A)上述の請求項のいずれか一項に係る装置を提供する工程;
B)前記第1変位手段によって前記加圧体の加圧面を前記成形部品に対して又はこれとは逆に動かし、圧力下での溶接によって融合されるべき前記成形部品の接触面を接合する工程にして、前記成形部品が、熱溶融可能な結合手段及び誘導感応コンポーネントを備える、工程;
C)前記加圧体の前記インダクタによって少なくとも前記成形部品の前記接触面において電磁場を生成し、これにより前記誘導感応コンポーネントの加熱によって前記結合手段を熱溶融する工程;
D)前記溶融した熱溶融可能な結合手段によって圧力下で前記成形部品を結合する工程;その間、E)前記加圧体の前記インダクタ、前記シールド及び前記ヒートシンクを、前記インダクタの前記冷却手段で冷却する工程を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
電磁溶接は、別々の締結具の使用を除去し、また、相対的に速い速度及び、あるとしても僅かな事前処理で、成形複合部品の接触面を接合する潜在的な能力を提供する。電磁溶接は、一つ又は複数の成形部品(群)の誘導感応コンポーネント(induction-sensitive component)において電磁場を生成し、成形部品(群)の熱溶融可能な結合手段を結合手段の融点を超えて加熱する。成形部品の接触面が溶融した結合手段によってお互いに接合される。結合手段は、例えば、接合される一つ又は複数の部品の熱可塑性樹脂であり得、又は、別に適用される熱可塑性樹脂であり得る。熱可塑性及び熱硬化性成形部品を一緒に溶接するため、誘導感応コンポーネントが溶融する熱可塑性樹脂は、例えば、ホットメルト接着剤として機能し得る。国際公開第2014/196268A1は、自己貫通リベットを用いる複数の樹脂部材の接合用の接合装置を開示する。米国特許出願公開第2014/0356053A1は、部材を一緒に接続するための方法を開示する。誘導又は絶縁加熱の一つを用いて部材を加熱する間、部材をお互いに押圧し、従って、部材の少なくとも一つの一部である熱可塑性樹脂を溶融する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
図9~13を参照すると、発明に係る装置1を用いた成形部品(2,3)の電磁スポット溶接のための方法及び装置1のまた別の実施形態が図示される。幾つかの場合には別の実施形態ではあるが、参照番号は、他の図面において用いた参照番号と同一のものにより示されるアイテムに対応する。図9によると、加圧体10は、加圧体10に設けられたインダクタ11を備える。インダクタ11は、単一の巻き線を有し、また、成形部品(2,3)の少なくとも接触面(20,30)において電磁場を生成するように構成される。図示の実施形態では、インダクタ11は、四辺形の断面を有する。図9におけるインダクタ11の線形セグメントが、加圧体10から少しの距離104で加圧体10の加圧面100に実質的に平行に延びていることが見られる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
図11を参照すると、別の工程は、加圧体10のインダクタ11で成形部品(2,3)の少なくとも接触面(20,30)において電磁場を生成し、同時に、冷却シース111でインダクタ11を冷却することを含む。これは、成形部品(2,3)のカーボンファイバーを加熱することにより、両方の成形部品(2,3)の部分21における成形部品(2,3)の熱可塑性ポリマーを加熱(可能性として溶融)する。シールド12、ヒートシンク13、及び冷却シース111を備える加圧体10の特定の構成は、制御され、かつよく集中(フォーカス)された部分21を提供する。熱可塑性ポリマー(又はオプションとして接触面(20,30)に付与された熱溶融可能な接着剤)を熱溶融するのに十分に高い温度まで接合構成における成形部品(2,3)を加熱することで、少なくとも溶接されるべきスポットの周りの部分において二つの成形部品(2,3)が一緒に融合する。加熱及び/又はオプションとしてその後の短時間の間、接触面(20,30)は、好適には、加圧体10自体と逆加圧手段4によって一緒に加圧され、これにより成形部品(2,3)の間の接続をもたらす。この接続は、図12に示すように、(電磁場をオフに切り替えることにより)部分21を冷却することにより提供される。加圧体10は、次に、図13に示すように、続いて、ロボットアーム50によりスポット溶接された成形部品(2,3)から取り外される。
【国際調査報告】