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▶ フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】モジュール型照射装置及び照射方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/08 20060101AFI20231218BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20231218BHJP
   A61L 101/52 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
A61L2/08 108
A61L2/10
A61L101:52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536383
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021085979
(87)【国際公開番号】W WO2022129219
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020216088.0
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】シュタンドフェスト バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】トーマ マルティン
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058AA28
4C058BB06
4C058EE15
4C058KK02
4C058KK03
4C058KK46
(57)【要約】
本発明は、メインモジュール及び少なくとも1つのキャリアカセットを備えたモジュール型照射装置に関し、キャリアカセットは、メインモジュールの収容部に挿入され得る。キャリアカセットは、少なくとも1つのポンプを備え、メインモジュールは、少なくとも1つのポンプアクチュエータを備え、これは、キャリアカセットがメインモジュールの収容部に挿入されたときに、ポンプアクチュエータによってポンプを動作させ得るように構成される。
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール型照射装置であって、
メインモジュールと、
少なくとも1つのキャリアカセットとを備え、
前記キャリアカセットは、
少なくとも1つの照射ラインが走る露出面であって、照射対象の流体が、前記少なくとも1つの照射ラインを流れることができる、露出面と、
第1の流体ラインを介して、前記少なくとも1つの照射ラインに接続された少なくとも1つのポンプとを備え、
前記メインモジュールは、
前記少なくとも1つのキャリアカセットが、破壊されることなく、取り外し可能に挿入可能な少なくとも1つの収容部と
少なくとも1つのポンプアクチュエータであって、前記少なくとも1つのキャリアカセットが、対応する収容部に挿入されたときに、前記少なくとも1つのポンプを動作させることができるように構成された、少なくとも1つのポンプアクチュエータとを備えた、
モジュール型照射装置。
【請求項2】
前記キャリアカセットは、複数のポンプのうちの少なくとも1つの他のポンプを備え、
前記他のポンプは、第2の流体ラインを介して前記照射ラインに接続された、請求項1に記載のモジュール型照射装置。
【請求項3】
前記ポンプアクチュエータは、ポンプ接続部を備え、
前記ポンプ接続部は、前記キャリアカセットが前記メインモジュールに挿入されているときに、対応する少なくとも1つのポンプの可動部に、形状が固定された状態で係合するように構成された、請求項1又は2に記載のモジュール型照射装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのキャリアカセットは、少なくとも1つのバルブを含み、
前記バルブは、少なくとも1つの前記流体ラインに配置され、これにより、この流体ラインを介して前記照射ラインに接続された対応するポンプと前記照射ラインとの間の流体の流れが、制御可能であり、
前記メインモジュールは、前記少なくとも1つのバルブのうちの1つ、前記少なくとも1つのバルブのうちの一部、又は前記少なくとも1つのバルブの全てのための、個別の1つのバルブアクチュエータを備え、
前記バルブアクチュエータは、いずれの場合にも、前記少なくとも1つのキャリアカセットが、前記対応する収容部に配置されたときに、対応するバルブを調整できるように構成された、
請求項1~3のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのバルブは、ストップコックを備え、これを用いて、前記バルブは、流体の流れを制御するために調整可能であり、
対応するバルブアクチュエータが、接続部を備え、前記接続部は、前記バルブを調整する力又は前記バルブを調整するトルクが、前記バルブアクチュエータを介して前記ストップコックに作用し得るように、前記ストップコックに接続でき、
前記接続部は、前記キャリアカセットが前記メインモジュールに挿入されているときに、前記ストップコックに係合するように構成された、
請求項1~4に記載のモジュール型照射装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバルブは、3つのポートを有する三方弁を備え、又は、前記三方弁であり、
前記流体ラインの1つが、前記ポートのうちの第1のポートに接続され、
前記少なくとも1つのポンプが、前記ポートのうちの第2のポートに接続され、
前記ポンプの他の1つのポンプが、前記ポートのうちの第3のポートに接続された、先行する2つの請求項のうちのいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポンプは、流体チャンバと、プランジャとを備え、
前記プランジャは、流体が流出しない方法で前記流体チャンバを密閉し、また、前記流体チャンバ内で位置を変更することができ、
前記少なくとも1つのポンプアクチュエータは、前記少なくとも1つのキャリアカセットが前記対応する収容部に挿入されたときに、前記ポンプの前記プランジャに係合し、
前記ポンプアクチュエータにより、力が、前記プランジャの変更された方向に作用することができる、
請求項1~6のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポンプは、注射器、好適には、交換可能なプラスチック製の注射器である、請求項1~7のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項9】
前記キャリアカセットは、第2の流体ラインに接続された3つのポンプと、前記第1の流体ラインに接続された2つのポンプを備えた、請求項2~8のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項10】
前記メインモジュールは、メインモジュール面を含み、
前記キャリアカセットの露出面と前記メインモジュール面は、前記キャリアカセットが前記メインモジュールの前記対応する収容部に挿入されたときに、同一平面上にある、請求項1~9のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項11】
前記メインモジュールは、前記流体ラインの1つに接続された各ポンプのための、正に1つのアクチュエータを備えており、
前記流体ラインは、流体の排出ラインとして使用されることが好適であり、
対応するポンプは、前記アクチュエータによって動作可能である、請求項1~10のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項12】
前記メインモジュールは、2つの可動及び/又は折畳み可能な側部を備え、
好適には、前記第1の流体ラインを介して前記照射ラインに接続されたポンプを動作させることが可能なアクチュエータが、前記側部の一方に配置され、
第2の流体ラインを介して前記照射ラインに接続されたポンプを動作させることが可能なアクチュエータが、前記側部の他方に配置された、請求項2~11のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項13】
前記キャリアカセットは、流体チップを備え、
前記流体チップは、基体を備え、
前記基体は、前記少なくとも1つの照射ラインが形成された基体露出面を含み、
前記少なくとも1つの照射ラインは、少なくとも1つのチャネルを含むチャネル構造であり、
前記基体はさらに、前記第1の流体ラインが接続された第1の流体接続部と、第2の流体ラインが接続された第2の流体接続部とを備え、
前記基体はさらに、フィルムを備え、前記フィルムは、前記基体露出面に配置され、かつ、前記チャネル構造を覆い、
前記フィルムは、前記チャネル構造を密閉して、流体が前記基体露出面に流出するのを防止する、請求項1~12のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項14】
チャネル構造は、多数のチャネルを含み、
前記多数のチャネルは、それらの個別の端部が、個別の流体接続部に集合する、請求項1~13に記載のモジュール型照射装置。
【請求項15】
チャネルは、それらの端部がそれぞれ対になって集合して、複合チャネルを形成し、
そして、前記複合チャネルは、正に2つの複合チャネルが集合して流体接続部の1つを形成するまで、いずれの場合にも、対になって集合して複合チャネルを形成する、請求項1~14に記載のモジュール型照射装置。
【請求項16】
基体は、モノリシックブロックであり、好適には、射出成形部品であり、その中に、チャネル構造が、エンボス加工及び/又はカットされた、請求項13~15のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項17】
フィルムは、厚さが、80μm以下であり、好適には、60μm以下、及び/又は1μm以上であり、好適には、10μm以上、及び/又は、ポリエチレンフィルムである、請求項13~16のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つのチャネルの深さが、300μm以下であり、好適には、200μm以下、及び/又は、好適には10μm以上であり、好適には、50μm以上である、請求項13~17のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置。
【請求項19】
流体を照射するための照射方法であって、
請求項1~18のいずれか1項に記載のモジュール型照射装置において、
前記少なくとも1つのキャリアカセットのうちの少なくとも1つが、前記メインモジュールに挿入され、
次いで、前記少なくとも1つのキャリアカセットの露出面が、電離放射線によって照射され、一方、照射対象の流体が、前記少なくとも1つの照射ラインを介して移動され、次いで、前記キャリアカセットが、前記メインモジュールから取り外される、
照射方法。
【請求項20】
先行する個別のキャリアカセットが、前記メインモジュールから取り外された後、少なくとも1つの他のキャリアカセットが、前記メインモジュールに、1回又は数回挿入され、
次いで、少なくとも1つの他のキャリアカセットの露出面が、電離放射線によって照射され、一方、照射対象の流体が、この他のキャリアカセットの少なくとも1つの照射ラインを介して移動される、
請求項19に記載の照射方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのキャリアカセットが、前記メインモジュールに挿入された後であって、前記照射対象の流体が、前記照射ラインを介して移動する前に、消毒剤が、流体チップのチャネル構造を介して移動される、請求項19又は20に記載の照射方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのキャリアカセットが、前記メインモジュールに挿入された後であって、前記照射対象の流体が、前記照射ラインを介して移動する前に、及び/又は、前記照射対象の流体が、チャネル構造を介して移動した後に、細胞培地が、前記チャネル構造内に移動される、請求項19~21のいずれか1項に記載の照射方法。
【請求項23】
前記照射ラインを介した前記流体の輸送は、対応するポンプが負圧を発生させることによって行われる、請求項19~22のいずれか1項に記載の照射方法。
【請求項24】
前記照射対象の流体は、細胞懸濁液、ウイルス懸濁液、培地、血清、及び/若しくは血液サンプルを含み、又は、細胞懸濁液、ウイルス懸濁液、培地、血清、及び/若しくは血液サンプルである、請求項19~23のいずれか1項に記載の照射方法。
【請求項25】
前記電離放射線は、電子線又は紫外線である、請求項19~24のいずれか1項に記載の照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインモジュールと少なくとも1つのキャリアカセットを備えたモジュール型照射装置に関するものであり、キャリアカセットは、メインモジュールの収容部に挿入することができる。キャリアカセットは、少なくとも1つのポンプを備え、メインモジュールは、少なくとも1つのポンプアクチュエータを備え、これらは、キャリアカセットがメインモジュールの収容部に挿入されたときに、ポンプアクチュエータによってポンプを動作させることができるように配置される。
【背景技術】
【0002】
電離放射線は、新しい治療法(先端医療医薬品、ATMP)やオーダーメイド医療の医薬品の製造時だけでなく、例えば、病原性液体の不活性化や殺菌の際にも、ますます使用されるようになっている。均一な照射を確保するためには、一定の放射線量を液体に照射する必要がある。例えば、低エネルギーの電子線を照射している間、加速された電子は、侵入深さが増すにつれてエネルギーを失うため、深部線量は減少する。その結果、処理する液膜の層厚は、200μm未満でなければならない。一定の放射線パラメータに加えて、液膜の一定の流動特性が重要であり、これには、特に層厚及び流量が含まれる。
【0003】
先端医療医薬品を取り扱う際の他の重要な側面は、二次汚染を回避することである。特に、オーダーメイド医療の医薬品の製造及び/又は少量の患者検体の取り扱いについては、注射器、注入バッグ等の標準化された使い捨ての使用が有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016216573号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
独国特許出願公開第102016216573号明細書では、回転式ステンレスローラを利用した液体薄膜の放射線照射について記載されている。これには、製品に接触する溶液を含むため、二次汚染を起こすことなく、異なる患者検体の間で迅速に変更することが担保されない。
【0006】
本発明の目的は、可能な限り二次汚染のリスクを低減した、流体試料の効率的な照射を可能にする照射装置及び照射方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、請求項1に記載のモジュール型照射装置及び請求項19に記載の照射方法によって達成される。個別の従属請求項は、本発明に係るモジュール型照射装置及び本発明に係る照射方法の有利な改良について記載している。
【0008】
本発明は、モジュール設計を有する照射装置に関する。照射装置は、モジュールとして、一方にメインモジュールを備え、また、他方に少なくとも1つのキャリアカセットを備える。モジュールは、構造ユニットであることが望ましく、その構成部品は、いずれの場合にも、相互に構造的に接続され、また、モジュールの構成部品を取り外すことなく、一緒に扱うことができる。
【0009】
本発明によれば、メインモジュールは、少なくとも1つの収容部を備えており、その中に、少なくとも1つのキャリアカセットを、破壊することなく取り外すことができるように、挿入することができる。キャリアカセットは、キャリアカセットの構成部品を互いに分離することなく、また、メインモジュールの構成部品を互いに分離することなく、収容部に挿入できることが好ましい。したがって、キャリアカセットの全ての構成部品が互いに接続され、かつ、メインモジュールの全ての構成部品が互いに接続された状態で、また、キャリアカセットの1以上の部品を分離する必要がなく、かつ、メインモジュールの1以上の部品を分離する必要がない状態で、キャリアカセットをメインモジュールの収容部に挿入できるように、メインモジュールと少なくとも1つのキャリアカセットを構成することが好ましい。異なる複数のジュール、すなわち、メインモジュールとキャリアカセットを一体に取り扱うことができるという事実は、本発明のモジュールの概念の現れと考えることができる。
【0010】
本発明によれば、キャリアカセットは、少なくとも1つの露出面を有しており、この露出面には、少なくとも1つの照射ラインが走る。「露出面」の語は、一義的には単純に、照射源によって照射可能な表面積として解釈されるであろう。最も単純な場合、これは、照射ライン自体の表面であることもある。したがって、例えば、照射ラインがホースである場合、照射源に対向するホースの表面が、露出面であると考えられる。しかしながら、露出面は、照射ラインが設けられる表面積であることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、照射対象の流体は、少なくとも1つの照射ライン内で送達され得る。この流体は、例えば、気体でもよく、または、好ましくは液体であり、例えば、細胞の懸濁液は、同様に、その意味において液体であると解釈できる。流体ラインは、ホース又はチャネルでもよく、例えば、チャネルは、露出面に設けられ、また、露出面を少なくとも部分的に覆うフィルムによって覆うことができる。
【0012】
本発明によれば、キャリアカセットは、少なくとも1つのポンプを備えており、これは、第1の流体ラインを介して、少なくとも1つの照射ラインに接続される。ここでは、ポンプは、流体を送達可能な装置を意味すると理解することができる。好適には、流体に作用するこれらの部品は、ポンプと称され、すなわち、例えば、プランジャ及びポンプチャンバと称されるが、ポンプを動作させるアクチュエータは、ポンプ自体の一部とはみなさない。
【0013】
少なくとも1つのポンプが、第1の流体ラインを介して、少なくとも1つの照射ラインに接続されるということは、ここでは、ポンプの動作の結果として、流体が第1の流体ラインを介して照射ラインに移動可能であり、または、照射ラインから第1の流体ラインに移動可能であることを意味すると理解されるであろう。したがって、ポンプは、第1の流体ラインを介して、流体が送達される方法で、少なくとも1つの照射ラインに接続される。
【0014】
本発明によれば、メインモジュールは、少なくとも1つの収容部を備えており、その中に少なくとも1つのキャリアカセットを、破壊することなく取り外し可能に挿入することができる。特に、メインモジュールの構成部品を分離することなく、また、キャリアカセットの構成部品を分離することなく、少なくとも1つのキャリアカセットを少なくとも1つの収容部に挿入できることが好ましい。したがって、キャリアカセットを一体として、収容部に挿入できることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、メインモジュールはさらに、少なくとも1つのポンプアクチュエータを備え、これは、対応するキャリアカセットが、対応する収容部に挿入されることにより、キャリアカセットの少なくとも1つのポンプを動作させることができるように、構成される。キャリアカセットを収容部に挿入するプロセスは、複数のステップ、例えば、キャリアカセットを収容部に配置すること、また、閉じること、例えば、ロックすること、又は、同様の他のステップを含み得る。特に、挿入するプロセスは、例えば、ポンプアクチュエータのポンプ接続部が、ポンプ又はポンプの動作可能な部品に係合するステップを含み得る。例えば、接続部品を、アクチュエータと、対応するポンプとの間に挿入することも、挿入するプロセスの一部であると理解できる。これらの接続部品がメインモジュール又はキャリアカセットに接続されていない場合、これらは、2つのモジュールの一方の一部であるとは見なされない。ポンプアクチュエータによるポンプの動作能力は、遅くとも、キャリアカセットを収容部に挿入する全てのステップが完了した時点で、存在する必要がある。
【0016】
キャリアカセットがメインモジュールの収容部に挿入されたときに、ポンプアクチュエータによってポンプを動作できるように、少なくとも1つのポンプをキャリアカセットに配置し、また、少なくとも1つのポンプアクチュエータをメインモジュールに配置するための多数の異なる選択肢が存在する。この実施形態では、ポンプアクチュエータの実施形態だけでなく、ポンプの実施形態にも依存する。例えば、ポンプが注射器として構成される場合、ポンプアクチュエータは、圧力面を有することができ、例えば、当該圧力面は、キャリアカセットが収容部に挿入されているときに、注射器の注射器プランジャの先端面に押しつけられ、その結果、ポンプアクチュエータが、圧力面によって注射器プランジャの先端面を押すことにより、注射器プランジャを、注射器シリンダ内に押し込むことができる。代替的に、又は加えて、ポンプアクチュエータは、例えば、把持部も備えることができ、当該把持部は、カセットが収容部に挿入されたときに、ポンププランジャの先端面の後ろにおいて、その後ろ側に配置できるため、ポンプアクチュエータは、プランジャを、注射器シリンダから引き抜くことができる。しかしながら、これらの実施形態は、例示としてのみ理解されたい。所定の形態のポンプについては、当業者であれば常に、それに応じてアクチュエータを選択でき、また、アクチュエータを調整してポンプを動作させることができるであろう。
【0017】
本発明の有利な実施形態では、キャリアカセットは、少なくとも1つの他のポンプを備えることができ、これは、第2の流体ラインを介して、照射ラインに接続される。特に、このような他のポンプは、照射ラインの反対側の端部、第1のポンプの反対側に、有利に配置することができる。このようにして、流体は、一方のポンプから照射ラインを介して他方のポンプに送達できる。これは、ポンプの一方のみが動作する場合、または、照射ラインの一方側のポンプのみが動作する場合には十分である。そして、他方側のポンプは、貯蔵容器又は収容容器としてのみ機能し、流体自体によって動かされる。その内部で流体が照射ラインを介して移動されるこれらのポンプが、駆動される実施形態は、有利である。この場合、流体は、照射ラインを介して吸引される。このプロセスでは、流体が漏れ易い部分を通ってシステムから流出できないという利点がある。また、正圧を用いて、流体を輸送することもできる。
【0018】
本発明の有利な実施形態では、ポンプアクチュエータは、ポンプ接続部を備えることができ、これは、カセットがメインモジュールに挿入されているときに、形状が固定された状態で、対応するポンプの可動部に係合するように、構成される。このようにして、ポンプ接続部品とポンプの可動部の形状がフィットし、それにより、ポンプアクチュエータが、ポンプの可動部に力又はトルクを提供できる。最も簡単な例では、ポンプ接続部品は、軸受面又は圧力面にすることができ、これは、アクチュエータが動作中に、ポンプの可動部を押すことができる。しかしながら、ポンプの可動部は、例えば、突出部を備えることもでき、ポンプ接続部品は、例えば、突起又はフォークを備えることができ、これは、ポンプの可動部が突出部の方向に動作できるように、突出部の後ろに係合する。また、例えば、キャリアカセットが、メインモジュールの収容部に挿入されているときに、ポンプ接続部品とポンプの可動部が、例えば、ダブテールジョイントのようなジョイントを形成することも可能である。
【0019】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つのキャリアカセットは、少なくとも1つのバルブを備えることができ、バルブは、少なくとも1つの流体ラインに配置され、それにより、この流体ラインを介して照射ラインに接続される対応するポンプの間を流体の流れと、照射ラインを、制御することができる。バルブが流体ラインに配置されることは、バルブが、流体ラインの一方の端部に配置され、又は、流体ラインの2つの部分の間に接続され、そして、流体ラインの一部が、バルブの1つのポートに配置され、流体ラインの他の部分が、バルブの別のポートに配置されることを意味すると理解されるであろう。したがって、流体ラインを介した流体の流れは、バルブを介して行われる。
【0020】
この実施形態では、メインモジュールは、1つのバルブ、いくつかのバルブ、又は、全てのバルブのための個別のバルブアクチュエータを備えることが望ましく、いずれの場合にも、キャリアカセットが、メインモジュールの対応する収容部に挿入されたときに、対応するバルブを調整できるように、バルブアクチュエータが構成される。このように、キャリアカセットを収容部に挿入することにより、バルブがバルブアクチュエータによって動作可能な状態を作り出すことができる。そして、バルブアクチュエータは、有利に自動的に制御でき、その結果、キャリアカセット内の流体の流れを、バルブを介して自動的に制御できる。
【0021】
少なくとも1つのポンプアクチュエータ及び/又は少なくとも1つのバルブアクチュエータは、電気式アクチュエータ、空気圧式アクチュエータ、油圧式アクチュエータ、又は磁気式のアクチュエータとすることが有利である。
【0022】
少なくとも1つのバルブがストップコックを備えた実施形態は有利であり、これにより、バルブは、流体の流れを制御するために調整できる。この場合、キャリアカセットが収容部に挿入されているときに、このバルブと接触する、対応するバルブアクチュエータは、バルブを調整する力又はトルクが、バルブアクチュエータによってストップコックに作用し得るように、ストップコックに接続できる。キャリアカセットが収容部に挿入されているときに、接続部品と、対応するバルブのストップコックの形状がフィットし得るため、有利である。キャリアカセットがメインモジュールに挿入されているときに、接続部品が、対応するバルブのストップコックに係合できるため、有利である。また、バルブがそのストップコックを用いて接続部品に接続可能な方法について、多くの選択肢が存在する。本発明のこの実施形態は、接続部品の特定の形態又は特定の構成に限定されない。例えば、バルブがキャリアカセットの外側に配置され、かつ、バルブのストップコックがキャリアカセットから外側に向くように、バルブをキャリアカセット内に配置できる。そして、キャリアカセットが収容部に挿入されたときにキャリアカセットが存在する領域を囲むように、バルブアクチュエータをメインモジュールに配置できる。いずれの場合にも、挿入された状態で、バルブストップコックが、対応するアクチュエータと同じ高さ、かつ、同じ方向に配置された場合、バルブストップコックとアクチュエータは、互いに係合することができる。しなしながら、この実施形態は一例として理解すべきであり、他の構成も容易に可能である。
【0023】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つのバルブのうち少なくとも1つは、3つのポートを有する三方弁とし得る。3つのポートのうちの1つは、照射ラインに開口する流体ラインの1つに接続できるため有利であり、他の2つのポートは、それぞれポンプに接続することができる。このように、三方弁は、一方のポンプが照射ラインに接続された状態と、他方のポンプが照射ラインに接続された状態を切り替えることができる。これにより、複数のポンプをキャリアカセット内に設けることができ、これは、例えば、異なるタイミングで照射ラインを介して送達可能な異なる流体を含み、その間をバルブの位置によって切り替えることができる。
【0024】
本発明は、一般に、任意の種類のポンプで実施することができる。しかしながら、少なくとも1つのポンプが、流体チャンバ及びプランジャを備えた実施形態が好ましく、プランジャは、流体が流出しない方法で流体チャンバを密閉し、また、流体チャンバ内で位置を変えることができる。特に、流体チャンバは、円筒形であることが有利であり、プランジャは、先端面を有することができ、プランジャは、当該先端面を用いて流体チャンバを画定し、また、その形状は、流体チャンバの底面と実質的に同じである。少なくとも1つのキャリアカセットが、対応する収容部に挿入されると、個別のポンプアクチュエータが、ポンプのプランジャに係合することができる。その結果、ポンプアクチュエータにより、力が、プランジャの変更された方向に作用し得る。
【0025】
有利な実施形態では、ポンプは、注射器、特に交換可能なプラスチック製の注射器とし得る。これにより、照射の前後において、対応する注射器に流体を収容することができ、また、使用後に注射器を廃棄することできる。その結果、注射器を汚染部品として廃棄できるため、システムの無菌性を確保できる。
【0026】
本発明の特に有利な実施形態では、キャリアカセットは、第1の流体ラインに接続された2つのポンプと、第2の流体ラインに接続された3つのポンプとを備え得る。この実施形態では、例えば、照射ラインを介して移動する流体を、第2の流体ラインに接続された3つのポンプに提供でき、また、第1の流体ラインに接続された2つのポンプは、一方が、照射される流体を収容する容器として機能し、他方が、廃棄物を収容する容器として機能し得る。
【0027】
有利な実施形態では、例えば、第2の流体ラインに接続されたポンプのうちの第1のポンプに消毒剤を供給し、3つのポンプのうちの第2のポンプに細胞培地を供給し、3つのポンプのうちの第3のポンプに細胞懸濁液を供給できる。そして、例えば、三方弁を介して、消毒剤を収容するポンプを照射ラインに接続することができ、また、照射ラインを介して、消毒剤を吸引することができる。第1の流体ラインの側では、同様に、例えば、三方弁を介して、廃棄物用の注射器を照射ラインに接続できる。そして、消毒剤は、照射ラインを介して、廃棄物用のポンプに送られる。そして、第2の流体ラインの側では、例えば、三方弁を介して、細胞培地を収容する注射器を照射ラインに接続でき、また、細胞培地を、照射ラインを介して輸送することができる。この細胞培地は、例えば、第1の流体ラインの側の廃棄物用のポンプに送達することもできる。そして、第2の流体ラインの側では、細胞懸濁液を収容するポンプを照射ラインに接続することができ、また、細胞懸濁液を、照射ラインを介して送達することができ、これは、その後、例えば、放射線にさらすことができる。そして、第1の流体ラインの側では、処理された流体のポンプを照射ラインに接続して、照射された細胞懸濁液を、このポンプに送達することができる。
【0028】
本発明の有利な実施形態では、メインモジュールは、メインモジュール面を含むことができ、これは、キャリアカセットがメインモジュールの対応する収容部に挿入されたときに、メインモジュール面とキャリアカセットの露出面が同一平面上になるように、収容部に配置される。このメインモジュール面の結果、照射源からの放射線が、放射線にさらされない予定のメインモジュール及び/又はキャリアカセットの他の部品に衝突することを防ぐことができる。露出面及びメインモジュール面は、照射ラインのみが放射線にさらされるように、構成されることが望ましい。キャリアカセットの露出面は、できれば完全に、メインモジュール面の開口部を埋めて、この開口部の内側縁部が、露出面の外側縁部に重なるようにすることが望ましい。
【0029】
特に有利な実施形態では、メインモジュールは、照射ラインを通過した流体を収容するために設けられた各ポンプのための、正に1つのアクチュエータを含む。この実施形態では、照射ラインを介して送達される流体が提供されるポンプのためのアクチュエータは、設けられていない。この実施形態では、流体の輸送は、流体が照射ラインを介して吸引されることによって行われる。これは、潜在的に漏れ易い部分を介して流体が流出するのを防ぐため、有利である。
【0030】
本発明の有利な実施形態では、メインモジュールは、2つの折畳み可能な側部を備えることができ、これにより、少なくとも1つのキャリアカセットの収容部を有利に閉じることができる。したがって、対応するキャリアカセットを最初に収容部に挿入することができ、そして、挿入のプロセスは、折畳み可能な側部を閉位置に折り畳むことにより、継続又は完了することができる。特に、折畳み可能な側部は、アクチュエータ及び/又はポンプアクチュエータの一部又は全てを備えることができるため、有利である。ここでは、特に、第1の流体ラインを介して照射ラインに接続されたポンプ及び/又はバルブを動作させることが可能なアクチュエータを、側部の一方に配置する場合が好ましく、また、第2の流体ラインを介して照射ラインに接続されたポンプ及び/又はバルブを動作させることが可能なアクチュエータを、側部の他方に配置する場合が好ましい。この配置は、特に、第1の流体ライン及び第2の流体ラインに接続されたポンプを、キャリアカセットの反対側の半分に配置する場合に有用である。閉状態では、2つの側部は、1つの平面で接することができ、この平面は、照射ラインと交差し、好適には照射ラインの半分をカットし、また、第1の流体ラインに接続されたポンプと第2の流体ラインに接続されたポンプの間に位置する。
【0031】
本発明の有利な実施形態では、キャリアカセットは、流体チップを備えることができる。この流体チップは、基体を含むことができ、基体は、少なくとも1つの照射ラインの具体化である基体露出面を有する。基体露出面は、キャリアカセットの露出面を提供することができ、また、この露出面の一部とすることもできる。そして、少なくとも1つの照射ラインは、少なくとも1つのチャネルを含むチャネル又はチャネル構造とし得る。基体は、第1の流体ラインが接続された第1の流体接続部と、第2の流体ラインが接続された第2の流体接続部とを備えることができる。流体接続部は、例えば、プラグ接続部等、任意の方法で構成できるが、この実施形態は、基体と、第1の流体ライン及び/又は第2の流体ラインが、モノリシック設計を有する実施形態も含む。ここでは、流体の接続は、単に、対応する流体ラインとチャネル構造との間の移動である。
【0032】
基体はさらに、フィルムを備えることができ、これは、基体の露出面に配置され、また、チャネル構造を覆う。フィルムは、チャネル構造を覆って密閉し、流体が基体の露出面へ流出するのを防ぐことができる。フィルムは、少なくとも、チャネル構造が形成される領域の露出面にあることが好ましい。
【0033】
例えば、ポリエチレンブロックが基体として機能することができ、これは、例えば、射出成形することができる。フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレン(PET-PE)フィルム等を含むことができ、又は、ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレンフィルム等とすることができる。
【0034】
有利な実施形態では、チャネル構造は、多数のチャネルを含むことができ、これらは、その個別の端部が、個別の流体接続部に集合する。したがって、複数のチャネルは、その一方の端部が、流体接続の一方の端部に集合し、その他方の端部が、流体接続の他方の端部に集合することができる。一実施形態では、複数のチャネルは、その端部が、いずれの場合にも、対になって共有チャネルに集合し、次いで、この共有チャネルは、正に2つの共有チャネルが流体接続の1つに集合するまで、いずれの場合にも、対になって共有チャネルに集合するため、特に有利である。個別の流体接続から進むと、チャネルのツリー構造によってプロセスが始まり、このプロセスでは、分岐チャネルが、露出面に広がる長いチャネルに開口し、反対側では、同じ設計であることが好ましいツリー構造に開口するまで、各チャネルが、2つのチャネルに分岐し、これらが、他方の流体接続部に再び接続される。チャネルの長い部分は、直線的に、かつ、互いに平行に延在するのが好ましい。
【0035】
基体は、モノリシックブロック、例えば、射出成形部品であることが好ましく、その中に、チャネル構造が、エンボス加工によって形成され、及び/又は、カットによって形成される。カットは、任意の機械加工処理、すなわち、例えば、削り(カービング)、彫り(エングレービング)、フライス加工等を意味すると理解すべきである。
【0036】
フィルムの厚さは、80μm以下であることが有利であり、60μm未満及び/又は1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが好ましい。フィルムは、例えば、ポリエチレンフィルムであることが有利である。
【0037】
少なくとも1つのチャネルは、エンボス加工によって、深さが300μm以下、好適には200μm以下、及び/又は、好適には10μm以上、好適には50μm以上の流体チップの基体を形成することが有利である。これらの深さは、チャネル内を流れる流体が深さ全体に亘って確実に照射されるため、低エネルギーの電子放射による照射に特に有利である。
【0038】
流体チップは、基体にエンボス加工によって形成され、かつ、フィルムによって密閉されたチャネルによって製造する方が、この構造が使い捨て部品としてコスト効率よく製造できるため、有利である。
【0039】
本発明はさらに、流体を照射するための照射方法に関する。モジュール型照射装置は、上述したようなプロセスで使用される。この照射方法では、モジュール型照射装置の少なくとも1つのキャリアカセットのうちの少なくとも1つが、メインモジュールに挿入され、そして、任意でその後に、任意で直後に、少なくとも1つのキャリアカセットの露出面が、電離放射線によって照射され、同時に、照射対象の流体が、少なくとも1つの照射ラインを介して移動させ、そして、任意でその後、任意で直後に、キャリアカセットが、メインモジュールから取り外される。
【0040】
この手順は、非常に効率的であるため有利である。対応するポンプに流体を充填して、それを短時間でメインモジュールに挿入し、照射及び流体の輸送を行い、そして、キャリアカセットを再び取り外すことにより、キャリアカセットを準備することができる。複数のキャリアカセットを使用することができ、それらを個別に準備し、メインモジュールに迅速に連続して挿入して、照射を行うことができるため有利である。特に、キャリアカセットは、複雑なアクチュエータを収容しないため、完全に使い捨て部品として設計できるため有利である。この方法では、キャリアカセットは、処理された流体が除去された後に消毒する必要なく、廃棄することができる。流体が、メインモジュールに接触することがないため、異なるキャリアカセットの流体の二次汚染を防ぐことができる。この方法では、多数の個別の流体試料を、効率的に照射することができる。
【0041】
複数のキャリアカセットが用意される場合、この方法は、先行する個別のキャリアカセットが、メインモジュールから取り外された後、少なくとも1つの他のキャリアカセットが、メインモジュールに1回又は数回挿入され、そして、少なくとも1つの他のキャリアカセットの露出面が、電離放射線によって照射され、一方、照射対象の流体が、この他のキャリアカセットの少なくとも1つの照射ラインを介して移動させることにより、実行できる。
【0042】
特に有利な手順は、少なくとも1つのキャリアカセットをメインモジュールに挿入した後、照射対象の流体を、照射ラインを介して移動させる前に、消毒剤を、照射ラインを介して移動させることができる。これにより、照射中に、確実に照射対象の流体の無菌状態を維持することができる。
【0043】
有利な手順では、さらに、少なくとも1つのキャリアカセットが、メインモジュールに挿入された後、照射対象の流体が、照射ラインを移動する前、及び/又は、照射対象の流体が、照射ラインを介して移動した後に、細胞培地が、照射ライン内を、及び/又は照射ラインを介して移動され得る。特に、これは、細胞培地が、潜在的な消毒剤に続いて、照射ラインを介して移動される場合に、照射対象の流体が、消毒剤と混ざるのを防ぐことができるため、有利である。
【0044】
照射ラインを介した流体の輸送が行われる場合、対応するポンプが、負圧を発生させる点で有利である。したがって、流体は、いずれの場合も、照射ラインを介して吸引される。その結果、不用意な流体の流出を防ぐことができる。
【0045】
本発明に係る方法は、特に、細胞懸濁液、ウイルス懸濁液、培地、血清及び/又は血液サンプルを照射するのに有利である。したがって、照射対象の流体は、細胞懸濁液を含み、または、細胞懸濁液であることが有利である。
【0046】
電離放射線、特に、電子放射線及び/又は紫外線を、照射に使用できるため、特に有利である。したがって、照射源は、電子源又は紫外線源とすることができる。
【0047】
以下、いくつかの図に基づいて、本発明を例示によって説明する。図に示す対応する例の特徴はまた、独立して実装することができ、また、様々な例において互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図面では、
図1A図1Aは、モジュール型照射装置を示す。
図1B図1Bは、モジュール型照射装置を示す。
図1C図1Cは、モジュール型照射装置を示す。
図2A図2Aは、モジュール型照射装置を示す。
図2B図2Bは、モジュール型照射装置を示す。
図2C図2Cは、モジュール型照射装置を示す。
図3A図3Aは、メインモジュールのいくつかの部品を含むキャリアカセットを示す。
図3B図3Bは、メインモジュールのいくつかの部品を含むキャリアカセットを示す。
図3C図3Cは、メインモジュールのいくつかの部品を含むキャリアカセットを示す。
図4A図4Aは、メインモジュールの部品を含むキャリアカセットを示す。
図4B図4Bは、メインモジュールの部品を含むキャリアカセットを示す。
図4C図4Cは、メインモジュールの部品を含むキャリアカセットを示す。
図5A図5Aは、キャリアカセットを示す。
図5B図5Bは、キャリアカセットを示す。
図6A図6Aは、流体チップを示す。
図6B図6Bは、流体チップを示す。
図7A図7Aは、流体を照射する方法を実行可能な概略的な装置の一例を示す。
図7B図7Bは、流体を照射する方法を実行可能な概略的な装置の一例を示す。
図7C図7Cは、流体を照射する方法を実行可能な概略的な装置の一例を示す。
図8図8は、流体を照射する方法を実行可能な概略的な装置の一例を示す。
図9図9は、流体を照射する方法を実行可能な概略的な装置の一例を示す。
図10図10は、流体を照射する方法を実行可能な概略的な装置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1A図1B図1Cは、本発明に係るモジュール型照射装置を示し、モジュール型照射装置は、メインモジュール1と、キャリアカセット2とを備える。図1Aでは、キャリアカセット2は、メインモジュール内に配置されていないため、図示していない。図1B及び図1Cでは、キャリアカセット2は、メインモジュールの収容部3に挿入されている。図2A図2B及び図2Cはそれぞれ、図1の照射装置の側面図を示す。キャリアカセット2は、少なくとも1つの照射ライン13が走る露出面4を有しており、これは、図3図4及び図5に明示されている。照射対象の流体は、照射ライン13を介して送達され得る。
【0050】
キャリアカセット2はさらに、少なくとも1つのポンプ5a,5bを備えており、当該ポンプは、流体ラインを介して照射ライン13に接続される。メインモジュール1は、キャリアカセット2が破壊されることなく取り外し可能に挿入可能な収容部3に加えて、ポンプ5a,5bのそれぞれのための少なくとも1つのポンプアクチュエータ6a,6bを備えており、キャリアカセット2が収容部3に挿入されたときに、当該ポンプアクチュエータを用いて、対応するポンプ5a,5bを動作させることができる。図1及び図2の例では、2つのポンプ5a,5bが設けられており、ここでは、当該ポンプは、注射器として構成されている。したがって、メインモジュール2は、ここでは、リニアアクチュエータであるアクチュエータ6a,6bを備える。
【0051】
図1A及び図2Aは、それぞれキャリアカセット2が挿入されていないメインモジュールを示す。図1B及び図2Bは、キャリアカセット2が挿入されたメインモジュール1を示す。これらの例では、メインモジュール1は、2つの折畳み可能な側部7a,7bを備えており、これは、バルブアクチュエータ8a,8bと、リニアアクチュエータ6a及び6bを備える。キャリアカセット2はさらに、バルブストップコック9a,9bを含むバルブを備えており、当該バルブストップコックによって、ポンプ5a,5bと照射ライン13との間の流体の流れを制御できる。リニアアクチュエータ6a,6bとバルブアクチュエータ8a,8bは、ポンプ5a,5bとバルブストップコック9a,9bに係合するように、メインモジュール1において調整され、これにより、キャリアカセット2が挿入された後、側部7a,7bが閉じられると、これらが動作することができる。図1C及び図2Cの例では、ポンプ5aは、アクチュエータ6aによって動作する一方、ポンプ5bは、動作しないが、流体の容器として機能する。アクチュエータ6bは、ポンプ5aの後方に配置されたポンプ(図示されていない)を動作させる。
【0052】
ポンプ5a,5bは、ここでは注射器として構成されており、それぞれ、円筒形のシリンダ内を走るプランジャを含む。図示された例では、注射器は、プランジャが垂直方向に移動するように構成されており、上端部において、その出口開口部がバルブ9a,9bに開口する。
【0053】
メインモジュール1は、4本の平行なロッドを含むリンク機構として構成され、これらのロッドは、垂直に配置され、また、メインモジュール面10を支えており、当該メインモジュール面は、上部に向かってメインモジュールを閉じる。キャリアカセット2は、露出面11を有しており、当該露出面は、キャリアカセット2が収容部3に挿入されたときに、メインモジュール面10と同一平面上になる。折畳み可能な側部7a,7bは、メインモジュール1の平行なロッドに配置され、それを中心に回転可能であり、図1C及び図2Cに示す閉状態に折り畳まれる。
【0054】
図3A図3B及び図3Cは、例示として、図1及び図2に示すキャリアカセット2の詳細に示す。キャリアカセットは、ここでは、4つのポンプ5a,5b,5c,5dを備えており、そのうち3つを見ることができる。ポンプは、同様に注射器として構成される。ポンプ5b及び5cは、バルブ9a及び9bと流体ライン12を介して、照射ライン13に接続され、照射ラインは、ここでは、流体チップ14のチャネル構造として構成される。キャリアカセットは、ここでは支持構造15を備えており、注射器5a,5b,5c,5dが、当該支持構造内に取り外し可能に挿入される。注射器5a,5b,5c,5dのシリンダ軸は、互いに平行に配置される。
【0055】
バルブ9a,9bは、ここでは三方弁であり、これは、バルブストップコックによって調整することができる。図3A図3B図3Cは、バルブアクチュエータ8a,8bを示しており、これを介して、接続部は、バルブ9a,9bのストップコックに係合することができ、また、これらを回転させることができる。アクチュエータ8a,8bは、回転式アクチュエータである。アクチュエータ8a,8bは、キャリアカセット2の一部ではないが、メインモジュール1の一部であり、その他の構成部品は、明確にするために、図3には示していない。図3A図3B及び図3Cは、バルブ9a,9bに対して異なる位置にあるバルブアクチュエータ8a,8bを示す。これらの位置は、バルブアクチュエータ8a,8bが配置される折畳み可能な側部7bのその側部の閉状態を形成する。図3Cは、矢印で示す閉状態と共に、バルブアクチュエータ8a,8bによるバルブ9a,9bの回転動作を示す。バルブアクチュエータ8a,8bは、形状が固定された状態で、バルブ9a,9bにトルクを伝える。図に示す例では、バルブアクチュエータ8a,8bの接続部品は、バルブ9a,9bのストップコックのネガティブ形状を有することができる。しなしながら、バルブは、空気圧、油圧、電気、磁気、又は別の方法によっても調整され得ることに留意すべきである。回転式バルブの使用もまた、単なる典型的な選択肢である。
【0056】
図4A図4B図4Cは、図3に示すキャリアカセットを、垂直軸を中心に90°回転させたものを示す。その結果、図3では見えないポンプ5dが、他のポンプ5a,5b、5cと平行に配列された状態で見える。さらに、バルブ9cが、ここでは明示されており、当該バルブを介して、ポンプ5aが照射ライン13に接続される。ここで特に断りのない限り、図3の説明は、図4にも適用される。
【0057】
図4は、キャリアカセット2に加えて、部品6a,6bを示しており、これらは、ポンプアクチュエータの一部であり、したがって、メインモジュール1の一部である。ここでは、メインモジュール1のうち、ポンプに係合するバルブアクチュエータ6a,6bの構成部品のみを示し、メインモジュール1の他の全ての構成部品は、明確にするため、表されていない。図4A図4B及び図4Cは、メインモジュールの折畳み可能な側部7aが閉じているため、キャリアカセット2に対するポンプアクチュエータ6a,6bの位置を示す。
【0058】
ポンプアクチュエータ6a及び6bはそれぞれ、凹部61a及び61bを有する。注射器5aは、注射器5aのプランジャのプランジャロッドの上に突出した先端面51aを有する。それに応じて、小さい方の注射器5eは、当該注射器のプランジャの上を突出した先端面51eを有する。図5Aから図5Cでは、側部7aは閉じられており、アクチュエータ6a,6bは、注射器5e及び5aに向かって移動する。図4Cに示す閉状態では、アクチュエータ6aの開口部61aは、注射器5eの先端面51eの後ろ側に係合し、その結果、図4Cの矢印で示すように、注射器は、アクチュエータ6aによって充填できる。同時に、アクチュエータ6bの凹部61bは、注射器5aの先端面51aの後ろ側に係合し、その結果、図4Cにおいて対応する矢印が示すように、注射器5aは、このアクチュエータによって充填できる。
【0059】
図5A及び図5Bは、図3及び図4に示すキャリアカセットを、拡大した形で、斜視図及び側面図で再び示す。注射器5aは、三方弁9cを介して流体ライン12aに接続され、そして、流体ライン12aは、流体チップ12の流体接続部に接続され、この流体チップ12に照射ライン13が挿入される。注射器5dは、他の流体ライン12bを介して接続される。他の設計に関しては、図3及び図4の説明を参照されたい。
【0060】
図6は、例示として、図1から図5で使用され得る流体チップ14を示す。流体チップ14は、例えば、ポリエチレンから、モノリシックブロックとして製造することができ、その中に、照射ライン13が、エンボス加工又はカットによって形成される。流体チップ14は、基体露出面16を有しており、その中に、チャネル構造の形態の照射ライン13が、エンボス加工によって形成される。チャネル構造13は、流体接続部15a及び15bで終了する。流体接続部15aから進むと、チャネル構造は、初めに2つのチャネルに分岐し、そして、これらのチャネルのそれぞれが、2つのチャネルに分岐する。そして、これらのチャネルのそれぞれがさらに、2つのチャネルに分岐し、そして、これらはこのように開口し、合計8つの平行で真っすぐなチャネルセクションになる。反対側の端部では、真っすぐなチャネルセクションが、共有の流体接続部15bに開口するまで、対になって再び接続する。図示する例では、流体接続部15a及び15bは、基体露出面16に垂直な方向、すなわち、基体露出面16から離れる方向に、流体チップから下向きに誘導され、そこで流体ライン12a,12bに接続することができる。図示する例では、基体露出面16は、フィルム17で覆われており、当該フィルムは、チャネル構造13を密閉して、流体が基体露出面16へ流出するのを防ぐ。
【0061】
図7A図7B図7C及び図7Dは、例として、本発明に係る方法が、本発明のモジュール型照射装置において、どのように実行されるかを示す。明確にするために、図7A図7B図7C及び図7Dは、注射器5a,5b,5c,5d,5eと、バルブ9a,9b、9cと、照射ライン13を含む流体チップ14のみを示す。これらの部品は、図1から図6に示すように構成することができる。ここでは、図7の部品の配置は、概略的な機能としてのみ理解されるであろう。
【0062】
ここでは、バルブ9a,9b、9cは三方弁であり、これを用いて、注射器5aから5eのいずれかを、流体が流れる状態で流体チップ14に接続するかを切り替えることができる。注射器5a及び5bは、三方弁9aを用いて、第1の流体ライン12aを介して流体チップ14の第1の流体接続部に接続され、また、注射器5c,5d,5eは、三方弁9b及び9cを用いて、第2の流体ライン12bを介して流体チップ14の第2の流体接続部に接続される。
【0063】
以下、例えば、注射器5aは、照射される流体を収容するのに使用され、注射器5bは、廃液を収容するのに使用され、注射器5cは、細胞懸濁液を収容し、注射器5dは、細胞培地を収容し、注射器5eは、例えば、エタノール等の消毒剤を収容するものと仮定する。
【0064】
微小流体チップ14が製造されて密閉された後、微生物等が、照射ライン13に存在することがある。したがって、流体チップ14は、消毒されるのが有利である。そのために、図7Aに示すように、三方弁9aを切り替えて、廃棄用注射器5bと流体チップ14との接続を確立する。さらに、三方弁9b及び9cは、注射器5c及び5dを閉じて、注射器5eと流体チップ14との間に流体が流れる接続を確立するように構成される。ここで、注射器5bが充填され、これにより、消毒剤である流体が、注射器5eから吸引され、流体チップ14を介して送られる。
【0065】
図7Bに示す次のステップでは、三方弁9aの位置は変わらないため、廃棄用注射器5bは、流体チップ14に接続されたままである。注射器5dを流体チップに接続する三方弁9cは、流体が送達される方法で注射器5dが流体チップ14に接続されるように、配置される。注射器5cにおける三方弁9bの位置は変わらない。ここで、廃棄用注射器5bは、継続してさらに充填されるため、ここでは細胞培地である液体が、注射器5dから、また、それを用いて、液体チップ14に吸引される。
【0066】
図7Cに示す次のステップでは、第1の流体ライン12aのバルブストップコック9aが、ここでは流体が送達される方法で、第1の流体ライン12aに接続され、したがって、流体チップ14の照射ライン13に接続されるように、配置される。また、三方バルブ9bは、注射器5d及び5eが第2の流体ライン12bから遮断され、かつ、細胞懸濁液を収容する注射器5cが、流体が送達される方法で照射ライン13に接続されるように、配置される。さらに、照射源18が起動され、露出面及び照射ライン13を照射する。一方、注射器5aは、充填されている状態であり、これにより、注射器5cの細胞懸濁液が、流体チップ14を介して吸引され、注射器5aに収容される。照射が完了した後、三方弁9bは任意で、注射器5dが再び照射ライン13に接続されるように、構成できる。このように、注射器5aをさらに充填することにより、チャネル構造13は、細胞培地によって洗浄することができ、その結果、流体チップ14から注射器5aへの照射された細胞を、可能な限り多く洗浄することができる。
【0067】
必要に応じて、流体チップ14は、続いて、注射器5eからのエタノールを用いて、再び洗浄することができる。この構成は、同様に、図7Aに示す構成に対応する。注射器5bが再び充填されることにより、消毒剤が、注射器5eから流体チップ14を介して吸引される。
【0068】
図8は、例として、本発明の非常に簡単な実施形態を示しており、この実施形態では、照射試料用の単一の注射器5aと、細胞懸濁用の単一の注射器5bが設けられる。注射器5aは、第1の流体ライン12aを介して流体チップ14の流体接続部に接続され、注射器5bは、流体ライン12bを介して流体チップ14の第2の流体接続部に接続される。本実施形態では、照射装置は、バルブを備える必要がない。照射に必要なのは、照射源18(ここには示されていない)を起動して、注射器5aに充填することだけであり、これにより、細胞懸濁液が、注射器5bからチャネル構造13を介して注射器5aに輸送される。
【0069】
図9は、本発明の別の簡単な実施形態を示しており、本実施形態でもまた、照射試料用の単一の注射器5aのみが、流体ライン12aを介して流体チップ14の第1の流体接続部に配置される。一方の細胞懸濁液を収容する注射器5bと、他方の細胞培地を収容する注射器5cが、第2の流体ライン12b及び三方弁9bを介して、第2の流体接続部に接続される。図7に示すものと同様に、細胞懸濁液は、まず、注射器5aに充填することにより、注射器5bから流体チップ14を介して吸引することができる。そのために、三方弁は、注射器5bと流体チップ14の流体接続との間の接続を確立するために切り替えられる。照射後、三方弁9bは、次いで、細胞培地を収容する注射器5cと流体チップ14との間の接続を確立するように切り替えられると共に、注射器5bを閉じる。その後、注射器5aがさらに充填されると、流体チップ14のチャネル構造13が、細胞培地によって洗浄され、これにより、チャネル構造13から可能な限り多くの細胞が除去される。
【0070】
図10は、図7に示した状況の変形例を示す。図10は、図7の注射器5dの代わりに、4つの注射器5ca,5cb,5cc及び5cdが、対応するバルブ9bに配置され、これが、三方バルブ59a,59b,59cを介してバルブ9bに接続される点で、図7と異なる。異なる懸濁液が、注射器5ca,5cb,5ccに提供することができ、これは、チャネル構造13を介して送達することができる。注射器5cdを用いることにより、さらに細胞懸濁液を提供することができ、これを用いて、バルブストップコック9bに接続されたシステムを洗浄することができる。バルブ59a,59b,59cを配置することにより、注射器5ca,5cb,5cd及び5cdを、バルブ9bに選択的に接続できる。そして、この方法は、図7に示す方法と同様に実行できる。
【0071】
本発明により、安全かつ無菌状態で液体を照射することができる。例えば、微小流体チップ14は、射出成形部品としてポリエチレンから製造することができ、次いで、PET/PEフィルムで密閉することができる。薄いフィルム(例えば、60μm未満)を用いて密閉することにより、照射のごく一部のみがフィルムに吸収されるのが担保される。細胞懸濁液に接触する全ての構成部品、特に、流体チップ14及び注射器5は、使い捨て可能な部品として設計することが有利である。メインモジュール及びキャリアカセットを備えたモジュールの概念により、複数のキャリアカセットを製造することができ、また、それらを並列に配置することができる。これにより、プロセスの準備を並行して行うことができる。それに伴う流れにおいて予想される弾性と変化を避けるために、システムの自動的なベントが可能である。例えば、流量を変化させ得る、シリコーンホースによる追加の弾性が生じないように、ポンプと照射ラインの間の経路は、短く保つことが好適である。さらに、デッドボリュームを小さく保つことができ、これは、オーダーメイド医療の医薬を提供する際の大きな利点である。層の厚さと、照射ライン内の流体の流量を正確に設定し、制御することができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
【国際調査報告】