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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ドライブユニットを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/185 20160101AFI20231218BHJP
【FI】
H02P6/185
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536403
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2020086525
(87)【国際公開番号】W WO2022128084
(87)【国際公開日】2022-06-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲマスマー,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】エグベルス,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】モーリン,ニコ
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560AA08
5H560BB04
5H560BB07
5H560BB12
5H560DA14
5H560DB14
5H560DC12
5H560EB01
5H560HA08
5H560SS02
5H560TT15
5H560UA06
5H560XA12
(57)【要約】
電気モータ(2)を備えるドライブユニット(1)を動作させる方法であって、ドライブユニット(1)は、電気モータ(2)と、電気モータ(2)を動作させるための電気回路(3)と、電気回路(3)を作動させるための制御デバイス(4)とを備える。電気モータ(2)は、少なくとも3つのコイル(6、7、8)を有する固定子(5)と、少なくとも2つの磁極(10、11)を有する回転子(9)とを少なくとも有する。電気回路(3)は、第1電位端子(12)と、第2電位端子(13)とを少なくとも備え、端子(12)と端子(13)は、直流電圧源(14)の異なる電位に接続されることができる。電気回路(3)は、電位端子(12、13)間に、3つのハーフブリッジ(15、16、17)を有する。コイル(6、7、8)はそれぞれ、対応する第1の結線(18)を介して、ハーフブリッジ(15、16、17)の1つに導電接続されており、対応する第2の結線(19)を介して、他方の前記コイル(6、7、8)に導電接続されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ(2)を備えるドライブユニット(1)を動作させる方法であって、
前記ドライブユニット(1)は、
前記電気モータ(2)と、
前記電気モータ(2)を動作させるための電気回路(3)と、
前記電気回路(3)を作動させるための制御デバイス(4)と
を備え、
前記電気モータ(2)は、
少なくとも3つのコイル(6、7、8)を有する固定子(5)と、
少なくとも2つの磁極(10、11)を有する回転子(9)とを
少なくとも有し、
前記電気回路(3)は、第1電位端子(12)と、第2電位端子(13)とを少なくとも備え、
端子(12)と端子(13)は、直流電圧源(14)の異なる電位に接続されることができ、
前記電気回路(3)は、前記電位端子(12、13)間に、3つのハーフブリッジ(15、16、17)を有し、
前記コイル(6、7、8)はそれぞれ、
対応する第1の結線(18)を介して、ハーフブリッジ(15、16、17)の1つに導電接続されており、
対応する第2の結線(19)を介して、他方の前記コイル(6、7、8)に導電接続されており、
前記電気回路(3)は、前記対応する第1の結線(18)を介して伝導される出力電流(21)を測定するための電流センサ(20)を少なくとも3つ有し、
前記方法は、
a)前記固定子(5)に対する前記回転子(9)の前記磁極(10、11)の、回転における第1の位置(22)が、前記制御デバイス(4)によって決定されるステップと、
b)前記電気回路(3)によって電圧信号(23)を生成するステップであって、
前記電圧信号(23)は、前記第1の位置(22)と同一の第1の位相位置(24)のみを有する、
ステップと、
c)前記電圧信号(23)によって生成された出力電流(21)の電流信号(25)を、電流センサ(20)によって測定するステップと、
d)時間期間(26)にわたる前記電流信号(25)の立ち上がりに関して、前記制御デバイス(4)によって前記電流信号(25)を評価し、且つ、前記ドライブユニット(1)の状態を評価するステップと
を少なくとも含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
ステップd)において、
時間期間(26)にわたる前記電流信号(25)の立ち上がりに関して、又は、
時間期間(26)の後に到達した前記電流信号(25)の値に関して、
前記制御デバイス(4)によって前記電流信号(25)が少なくとも評価される、
方法。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか1項に記載の方法であって、
ハーフブリッジ(15、16、17)はそれぞれ、互いに電気的に導電接続されている、上部トランジスタ(27)と下部トランジスタ(28)とを少なくとも有し、
前記上部トランジスタ(27)は、前記第1電位端子(12)に電気的に導電接続されており、
前記下部トランジスタ(28)は、前記第2電位端子(13)に電気的に導電接続されており、
ハーフブリッジ(15、16、17)はそれぞれ、前記上部トランジスタ(27)と前記下部トランジスタ(28)の間に、接点(29)を有し、
前記接点それぞれを介して、前記第1の結線(18)は対応する前記ハーフブリッジ(15、16、17)に接続されており、
ステップb)により前記電圧信号(23)を生成するために、すべてのトランジスタ(27、28)がクロックするパルスパターンが選択される、
方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
前記電圧信号(23)は、一定の電圧値(30)を有する
方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記回転子(9)は、少なくともステップa)の間において一定の第1の位置(22)を有し、
ステップd)の間に、前記回転子(9)の前記位置の変化が検出され且つ評価される、
方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記回転子(9)は、少なくともステップa)、b)及びc)の間に、前記固定子(5)に対して回転する、
方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法は、
i.前記ドライブユニット(1)を再始動することと、
ii.回転子(9)が前記固定子(5)に対して静止していることと、
iii.回転子(9)が固定子(5)に対してトルなしで回転していること、
の少なくとも1つが存在する場合に開始される、
方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法であって、
ステップd)において評価された前記電流信号(25)が、前記制御デバイス(4)に格納されている基準電流信号(32)に対して許容領域(31)内である場合、
前記電気モータ(2)を動作させるため且つトルクを発生させるために始動させられ、
前記電流信号(25)が前記許容領域(31)外である場合、
前記制御デバイス(4)によってエラーメッセージ(33)が生成される、
方法。
【請求項9】
ドライブユニット(1)であって、
電気モータ(2)と、
前記電気モータ(2)を動作させるための電気回路(3)と、
前記電気回路(3)を作動させるための制御デバイス(4)とを
少なくとも備え、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法を実行するために設計されており且つ設定されている、
ドライブユニット(1)。
【請求項10】
請求項9に記載のドライブユニット(1)を少なくとも備える、自動車用のドライブトレイン(34)であって、
前記電気モータ(2)は、前記ドライブトレイン(34)の駆動トルクを供給するトラクションドライブである、
ドライブトレイン(34)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブユニットを動作させる方法に関する。ドライブユニットは、電気モータと、電気モータを動作させるための電気回路と、電気回路を作動させるための制御デバイスとを備える。電気モータは、固定子と回転子とを少なくとも有する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、例えば、自動車のトラクションドライブとして使用されている。とりわけ、所定のトルクは電気モータにより供給される。特に、このような方法で使用される電気モータでは、正確に動作できることか、又は、モータが狙い通りの結果を動作中に達成できることを、確実にすべきである。
【0003】
特許文献1は、電気モータを監視する異常診断デバイスに関するものである。この場合では、電気モータの電流波形又は駆動周波数が検出され、周波数分析によって評価される。
【0004】
特許文献2は、回転機械システムの診断デバイスに関するものである。これは、回転機械システムの状態を診断するためのものである。回転する電気モータの、動作中における電流波形及び駆動周波数が検出し、短絡電流を検出する。
【0005】
特許文献3からは、電気システムを診断するための方法が公知である。ここでは、モータを動作中に短絡させて、短絡電流を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許ドイツ語翻訳第11 2017 007 953 T5号
【特許文献2】欧州特許ドイツ語翻訳第11 2018 003 079 T5号
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2018 127 817 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このことから、本発明の目的は、先行技術に関連して考察された技術的な問題を少なくとも軽減するか又は解決することである。特に、ドライブユニットを動作させる方法を提案する。この方法では、ドライブユニットの状態を検出して評価することが可能であり、ドライブユニットを動作させるのに必要な各センサが用いられている。
【0008】
この目的を達成するには、請求項1の特徴における方法が提案される。有利な発展形態は、従属請求項の主題である。特許請求の範囲に列挙する特徴は、技術的に実現可能な態様で組み合わせ可能であり、且つ、本発明の更なる実施形態を開示しているところの、本明細書の説明的な技術内容及び図の詳細により補完してもよい。
【0009】
電気モータを備えるドライブユニットを動作させる方法を提案する。ドライブユニットは、電気モータと、電気モータを動作させるための電気回路と、電気回路を作動させるための制御デバイスとを少なくともを備える。電気モータは、少なくとも3つのコイルを有する固定子と、少なくとも2つの磁極を有する回転子とを少なくとも有する。電気回路は第1電位端子と、第2電位端子を少なくとも備え、これらの端子は、直流電圧源の異なる電位に接続されることができる。電気回路は、電位端子間に、3つのハーフブリッジを有し、コイルはそれぞれ、対応する第1の結線を介してハーフブリッジの1つに導電接続されており、対応する第2の結線を介して他方のコイル(に導電接続されている。電気回路は、対応する第1の結線を介して伝導される出力電流を測定するための電流センサを少なくとも3つ有する。
【0010】
本方法は、
a)固定子に対する回転子の磁極の、回転における第1の位置が、前記制御デバイス(4)によって決定されるステップと、
b)電気回路によって電圧信号を生成するステップであって、電圧信号は、第1の位置と同一の第1の位相位置のみを有する、ステップと、
c)電圧信号によって生成された電流信号を、電流センサによって測定するステップと、
d)制御デバイスによって電流信号を評価し、且つ、ドライブユニットの状態を評価するステップと
を少なくとも含む方法である。
【0011】
方法ステップを上記のようにステップa)~d)に(網羅的にではなく)分割することは、主として区別に資することを意図したものであり、順序又は依存関係又はその両方を課するものではない。例えば、ドライブユニットの準備中又はドライブユニットの実行中又はその両方おいて、方法ステップの頻度を変えてもよい。また、方法ステップが、少なくとも部分的に、時間的に重なることも可能である。方法ステップd)は、ステップc)中に実行されるか、又は、さらにこれに加えてステップb)中に実行されることが非常に特に好ましい。ステップb)からd)は条件付きであってもよく、必要に応じて、ステップa)において第1の位置を決定することができる場合のみ実行してもよい。同様に、ステップc)とd)もそれぞれ条件付きであってもよく、必要に応じて、例えば電流信号の測定又は評価が可能である場合のみ実行してもよい。ステップa)~d)は、記載した順序で実行される。
【0012】
特に、電気モータは、1つの固定子と1つの回転子を少なくとも有する。回転子は、固定子に対して回転可能に配置されている。特に、回転子は永久磁石を有しており、そのため、回転する固定子界磁によって回転子を駆動することができる。電気モータは、公知の方法で設計することができる。特に、回転子は、少なくとも2つの磁極を有するが、2*n(n=2、3、4、…)個の磁極を設けることもできる。
【0013】
電気回路は、特に公知の方法で設計されており、電気モータを駆動するために、第1電位端子と第2電位端子を有し、これらの端子は、直流電圧源の異なる電位(例えば、正極及び接地)に接続することができる。特に、電位端子間には3つのハーフブリッジが設けられ、電気モータのコイルはそれぞれ、第1の結線を介してハーフブリッジの1つに電気的に導電接続されており、第2の結線を介して他方のコイルに電気的に導電接続されている。特に、いくつかのコイルを第1の結線に接続することもできる。
【0014】
電気回路の3つのハーフブリッジにより、三相電流システム又は多相平方電流を生成することが可能となる。このとき、位相を互いに120度ずれている。出力電流又は相電流のそれぞれは、対応する第1の結線を介して、コイルに伝導されるか又はコイルに印加される。コイルは、第2の結線を介して互いに接続されており、異なる出力電流又は相電流が、いわゆるスターポイントで互いに打ち消し合うため、他方の電位端子への別個又は追加の帰線導体(Ruckleiter)を必要としない。
【0015】
特に、公知の方法においては、ハーフブリッジは、上部トランジスタと下部トランジスタからなる装置から構成され、これを介して各電位端子が互いに接続されている。特に、ダイオードがそれぞれのトランジスタと並列に接続されている。
【0016】
特に、ハーフブリッジはそれぞれ、互いに電気的に導電接続された1つの上部トランジスタ(ハイサイドトランジスタ)と1つの下部トランジスタ(ローサイドトランジスタ)とを少なくとも備える。上部トランジスタは、第1電位端子に電気的に導電接続されており、下部トランジスタは、第2電位端子に電気的に導電接続されている。ハーフブリッジはそれぞれ、上部トランジスタと下部トランジスタの間に、対応する第1の結線を有し、これを介して、対応するコイルは、関係付けられているハーフブリッジに接続されている。
【0017】
電圧信号が印加されると、対応する出力電流がハーフブリッジそれぞれを介して生成され、この出力電流が、対応する第1の結線を介して、電気モータの、関係付けられているコイルに印加される。このような方法で生成することができる出力電流は、電流センサによって公知の電気回路で検出されるため、ドライブユニットの動作中に電気モータを制御することが可能となる。
【0018】
公知のドライブユニットと比較して、提案する方法は、特に、本方法を実行するために適切に設計された制御デバイスを1つしか必要としない。この制御デバイスによって本方法が開始し、電圧信号を生成するための電気回路が動作する。
【0019】
ステップa)において、特に、固定子に対する回転子の磁極の、回転における第1の位置が、制御デバイスによって決定される。第1の位置は、公知の方法で決定することができる。例えば、電気モータの位置センサを評価してもよい。
【0020】
ステップb)において、電圧信号が電気回路によって生成され、この電圧信号は、第1の位置と同一の第1の位相位置のみを有する。
【0021】
従って、電圧又は電圧信号の位相角(第1の位相位置)は、ステップa)で決定された位相角(第1の位置)に対応するように設定される。
【0022】
電気モータに印加される電圧により、電気回路の出力電流が増大する。出力電流の時間応答及び定常状態最終値は、ここでは、固定子のモータ巻線の電気的時定数によって、すなわち抵抗及びインダクタンスによって決定される。得られた出力電流の位相角は、磁極の第1の位置、すなわち永久磁石磁束の位相角に対応しているため、ここでは電気モータにトルクが発生しない。
【0023】
ステップc)において、電圧信号によって生成された(対応する第1の結線の出力電流の)各電流信号の測定が、電流センサによって行われる。
【0024】
出力電流、すなわち、対応するハーフブリッジにわたって生成され、対応する第1の結線にわたって各コイルに向かって流れる出力電流は、電気回路に通常存在する電流センサによって測定される。
【0025】
特に、出力電流又は電流信号の測定は、時間又は時間間隔又は試験期間にわたって行われる。特に、一定の値の電流信号若しくは一定の値の電流の強さが確立されるまで、又は、一定の値を決定可能となるまで(例えば、電流信号の立ち上がりが漸近的となる場合に計算によって決定可能となるまで)、この測定が行われる。
【0026】
ステップd)において、電流信号が、制御デバイスによって評価される。例えば、時間又は試験期間にわたる電流信号の立ち上がりに少なくとも関して、又は、ある時間の後に到達した電流信号の値に関して、評価される。この電流信号の立ち上がり又は値は、特に、ドライブユニット1の状態を評価するために使用される。
【0027】
モータ巻線又は電気モータの抵抗とインダクタンスにより、上記で説明した通り、電気モータの関連パラメータがわかる。これらのパラメータは、電流信号の立ち上がりの挙動又は試験期間内の電流信号の挙動の基準となる。
【0028】
特に、ステップc)及びd)において、電圧信号から生じた電流信号の定常状態最終値、すなわち電流の強さを、決定又は評価することができる。特に、電流信号は、例えば、第1の結線それぞれで測定された各電流信号又は各出力電流を重ね合わせることによって形成されるが、この電流信号は、制御デバイスに格納されている、あらかじめ定義された値と比較することができる。この値からのずれが、定義された許容領域の範囲内であれば、クロックトランジスタ又はハーフブリッジ及びそれらの作動と、接続されたモータと、電流センサによる電流信号の測定からなる一連の処理全体が機能していると見なすことができる。
【0029】
特に、ステップc)及びd)において、電圧信号から生じた電流信号の立ち上がり、すなわち、経時的な電流の強さを、決定又は評価することができる。特に、電流信号は、例えば、第1の結線それぞれで測定された電流信号又は出力電流を重ね合わせることによって形成されるが、この電流信号は、制御デバイスに格納されている、あらかじめ定義された電流信号と比較することができ、又は、その曲線すなわち立ち上がりと比較することができる。
【0030】
出力電流又は電流信号が、制御デバイスに格納されている値よりもゆっくりと増大する場合、このことは、例えば、電圧が誤って印加されたか、又は、永久磁石若しくは磁極の位置が誤って測定されたかを示すものである可能性がある。
【0031】
トラクションドライブにしばしば使用される永久励起同期機では、永久磁石の位置に対して平行(d軸)及び垂直(q軸)の電気的時定数は、通常は非常に異なっている。ほとんどの場合、d軸の時定数は、q軸の時定数よりも小さい。この特徴はまた、ステップd)における評価で考慮に入れることができる。
【0032】
提案された方法によって、特に、ソフトウェアの形式だけで実現されている(すなわち、ハードウェアをさらに有さずに公知のドライブユニットと比較して行う)モータ監視を使用して、少なくとも電流信号の経過又は値を検査することができ、且つ、この経過又は値に応じて、ドライブユニットが故障状態かOK状態かを特定する。
【0033】
ステップd)においてエラーが検出されない場合、ドライブユニットは意図された動作を実施することができるため、例えば、要求されたトルクを電気モータによって供給することができる。故障の場合は、例えば、要求されたトルクがこれ以上発生しないように、電気モータが更に動作するのを阻止することができる。
【0034】
特に、ステップd)では、各電流信号は、経時的な電流信号の立ち上がりに関して、又は、時間若しくは時間間隔若しくは試験期間後に到達した電流信号若しくは電流の強さの値に関して、制御デバイスによって少なくとも評価される。特に、一定の値の電流信号又は電流の強さが確立されるまで、電流信号が測定される。
【0035】
特に、ハーフブリッジはそれぞれ、互いに電気的に導電接続されている、上部トランジスタと下部トランジスタとを少なくとも有する。上部トランジスタは、第1電位端子に電気的に導電接続されており、下部トランジスタは、第2電位端子に電気的に導電接続されている。特に、ハーフブリッジはそれぞれ、上部トランジスタと下部トランジスタの間に、接点を有し、接点それぞれを介して、第1の結線は対応するハーフブリッジに接続されている。
【0036】
ステップb)により電圧信号を生成するために、特に、すべてのトランジスタがクロックするパルスパターンが選択される。特に、電圧信号はPWM信号(パルス幅変調信号)として生成されるため、電圧信号は複数の個々の信号から構成される。
【0037】
すべてのトランジスタがクロックされる場合、本方法の枠組の範囲内で電気回路全体を確認することができる。特に、それぞれの個々のトランジスタ又はハーフブリッジの機能を確認することができる。
【0038】
特に、電圧信号は、一定の電圧値を有する。ここでは、「一定の」とは、特に、電圧値が大きくとも5%しかずれず、特に、大きくとも2%しかずれず、好ましくは大きくとも1%しかずれないことを意味する。
【0039】
特に、回転子は、少なくともステップa)の間において一定の第1の位置を有する。特に、ステップd)の間に、回転子の位置の変化が検出され且つ評価される。
【0040】
特に、回転子は、固定子に対して静止している、すなわち、速度がゼロである。ステップb)の最中に回転子の位置の変化が検出された場合、すなわち、電圧信号と、それによって生成され且つ電気機械に印加される電流信号との結果として、回転子がその第1の位置又は位相角を変化させた場合、ドライブユニットに故障があると結論付けることができる。
【0041】
特に、ドライブユニットの以下の故障を検出し、必要に応じて対応付けることができる。
・ 回転子の実際の位置が、ステップa)で決定された第1の位置と異なっていること
・ 電気回路のトランジスタ又はハーフブリッジの少なくとも1つがクロックしないこと
・ 電流センサの少なくとも1つに欠陥があるか、又は、電流センサが電流信号を誤って測定しており、そのため、制御デバイスによる制御を正しく行うことができないこと
・ 端子のうちの1つに短絡している等、電気モータに欠陥があること。
【0042】
特に、回転子は、少なくともステップa)、b)及びc)の間に、固定子に対して回転する。特に、トルクを意図的に供給又は発生させる電気回路は、ステップb)からd)の間は電圧信号を生成しない。しかし、その代わりに、(可能な限りトルクを発生させるべきではない)本方法の枠組の範囲内で発生させた電圧信号のみが印加される。
【0043】
従って、特に、電圧信号が磁極の第1の位置と同一の第1の位相位置のみを有するため、本方法の枠組の範囲内で印加される電圧信号によって、トルクが発生することはない。特に、ステップa)において決定された第1の位置が正しいことを前提とする必要がある。
【0044】
ステップd)において、電流信号の確立した値を決定し、これを制御デバイスに格納された値と比較することができる。この値からのずれが、定義された許容領域の範囲内であれば、クロックトランジスタ又はハーフブリッジ及びそれらの作動と、接続されたモータと、電流センサによる電流信号の測定からなる一連の処理全体機能していると見なすことができる。
【0045】
特に、本方法は、以下の事項のうち少なくとも1つが存在する場合に開始される。
・ ドライブユニットを再始動すること
・ 回転子が固定子に対して静止していること
・ 回転子が固定子に対してトルなしで回転していること
【0046】
特に、ステップd)において評価された電流信号が、制御デバイスに格納されている基準電流信号に対して許容領域内である場合、電気モータを動作させるため且つトルクを発生させるために始動させられる。しかしながら、電流信号が許容領域外である場合、制御デバイスによってエラーメッセージが生成される。この場合、電気モータは始動されない。電気モータを使用してトルクを与えることが妨げられる。
【0047】
特に、許容領域は、制御デバイスに格納されている基準電流信号の立ち上がり又は最終値又はその両方からのずれがあってもよい。ずれは、例えば、電流信号が立ち上がる間の特定の時間において定義するか、又は、電流信号を測定する間の特定の時間において定義するか、又は、すべての時間において定めることができる。特に、基準電流信号に対するずれは、大きくても5%、好ましくは大きくても2%であってもよい。許容可能なずれは、それぞれのドライブユニットで決定することができる。
【0048】
ドライブユニットをさらに提案する。このドライブユニットは、電気モータと、電気モータを動作させるための電気回路と、電気回路を作動させるための制御デバイスとを少なくとも備える。ドライブユニット又は制御デバイスは、本方法を実行するために設計されており且つ設定されている。
【0049】
自動車用のドライブトレインをさらに提案する。このドライブトレインは、前述のドライブユニットを備え、電気モータは、ドライブトレインの駆動トルクを供給するトラクションドライブである。
【0050】
特に、制御デバイスは、ドライブユニット又は電気回路が前述の方法に従って動作することができるような方法で搭載され、構成され、又はプログラムされる。
【0051】
さらに、本方法は、コンピュータにより又は制御ユニットのプロセッサを用いて実行することもできる。
【0052】
本方法を実行するように、又は、提案された方法のステップの一部を実行するように、適合され構成されたプロセッサを備えるデータ処理用のシステムを、さらに提案する。
【0053】
コンピュータ/プロセッサにより実行する場合に、このコンピュータ/プロセッサに本方法を実行させる命令又はこのコンピュータ/プロセッサに提案された方法のステップの少なくとも一部を実行させる命令を有するコンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供可能である。
【0054】
特に、本方法に関する説明は、ドライブユニット、ドライブトレイン、又は、コンピュータで実施される方法に転用可能であり、その逆も同様である。
【0055】
特に、請求項及びこれらの請求項を再掲する記載において、不定冠詞(「ein」、「eine」、「einer」、「eines」)は、数詞として使用したものではなく、そのまま理解すべきであることを意図している。従って、これに対応して導入される用語や構成要素は、少なくとも一回は存在しているが、特に、数回存在することもありうると理解すべきことを意図している。
【0056】
疑義を回避するために言えば、本明細書において使用する序数詞(「第1」、「第2」、等)は、主として、幾つかの同じような対象物、数値、ステップを区別するため(のみ)に供されるものであり、即ち、特に、これらの序数詞が、これら対象物、数値、ステップの、互いに対する任意の依存関係や順序を必ずしも定めるものでない。依存関係や順序が必要である場合には、このことは本明細書に明記されるか、又は、実際に記載されている構成を精査することにより、当業者にとって明らかになる。
【0057】
以下で、図を参照して、本発明及び技術的背景をより詳細に説明する。例示する実施形態により本発明が限定されることを意図したものではないことに留意すべきである。特段の記載のない限り、特に、図で説明する技術内容の部分的特長を抽出し、それらを他の構成要素及び本明細書や図から得られる知見と組み合わせることも可能である。同一の参照符号は同一の対象を指し、したがって、他の図からの説明を併せて利用してもよい。図は概略的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】ドライブユニットを備える自動車のドライブトレインを示す。
図2図1におけるドライブユニットの一部及び本方法の動作を示す。
図3】ドライブユニットがOK状態の場合の本方法のステップa)及びb)を示す。
図4】ドライブユニットがOK状態の場合の本方法のステップa)及びb)を示す。
図5】ドライブユニットが故障状態の場合の本方法のステップa)及びb)を示す。
図6】ドライブユニットが故障状態の場合の本方法のステップc)及びd)を示す。
図7】ドライブユニットが故障状態及びOK状態である場合の本方法のステップa)とd)の比較を示す。
図8】本方法のシーケンスを示す。
図9】本方法の詳細なシーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、ドライブユニット1を備える自動車のドライブトレイン34を示す。図2は、図1におけるドライブユニット1の一部及び本方法の動作を示す。図3は、ドライブユニット1がOK状態の場合の本方法のステップa)及びb)を示す。図4は、ドライブユニット1がOK状態の場合の本方法のステップc)及びd)を示す。図1~4を共に以下で説明する。
【0060】
ドライブユニット1は、電気モータ2と、電気モータ2を動作させるための電気回路3と、電気回路3を作動させるための制御デバイス4とを備える。ドライブユニット1又は制御デバイス4は、説明される方法を実行するために適切に設計され且つ装備されている。電気モータ2は、ドライブトレイン34の駆動トルクを供給するトラクションドライブである。
【0061】
制御デバイス4は、モータアクチュエータ35及びモータ監視ユニット36を有する。電気回路3は、安全ロジックユニット37を介して、モータアクチュエータ35及びモータ監視ユニット36に接続されている。モータアクチュエータ35は、ドライブユニット1の状態を検出した後、電気回路3を作動させることができ、従って電気モータ2を作動させることができる。モータ監視ユニット36は、モータアクチュエータ35で利用可能な信号の一部にアクセスし、これによって測定チェーン(Messkette)の故障を明らかにする。モータ監視ユニット36は、ドライブユニット1の故障状態が本方法の枠組の範囲内で検出された場合、安全ロジックユニット37によって電気モータ2の作動を無効にすることができる。
【0062】
電気モータ2は、少なくとも3つのコイル6、7、8を有する固定子5と、少なくとも2つの磁極10、11を有する回転子9とを少なくとも有する(図3図6参照)。電気回路3は、直流電圧源14の異なる電位に接続可能な、第1電位端子12と第2電位端子13とを有する。直流電圧コンデンサ38が電気回路3と並列に配置されている。
【0063】
電気回路3は、電位端子12、13間に3つのハーフブリッジ15、16、17を有する。ここで、コイル6、7、8はぞれぞれ、対応する第1の結線18を介してハーフブリッジ15、16、17の1つに電気的に導電接続され、且つ、対応する第2の結線19を介して他のコイル6、7、8に電気的に導電接続されている。電気回路3は、それぞれの第1の結線18を介して伝導される出力電流21を測定するための電流センサ20を3つ有する。
【0064】
公知の方法においては、ハーフブリッジ15、16、17は、上部トランジスタ27と下部トランジスタ28からなる装置から構成され、これを介して電位端子12、13が互いに接続されている。ハーフブリッジ15、16、17のぞれぞれにおいて、上部トランジスタ27と下部トランジスタ28が互いに電気的に導電接続されている。上部トランジスタ27は、第1電位端子12に電気的に導電接続されており、下部トランジスタ28は、第2電位端子13に電気的に導電接続されている。ハーフブリッジ15、16、17はそれぞれ、上部トランジスタ27と下部トランジスタ28の間に、対応する第1の結線18を有し、これを介して、対応するコイル6、7、8は、関係付けられているハーフブリッジ15、16、17に接続されている。第1の結線18はそれぞれ、対応するハーフブリッジ15、16、17に接点29を介して接続されている。
【0065】
電圧信号23が印加されると、対応する出力電流21がハーフブリッジ15、16、17それぞれを介して生成され、この出力電流が、対応する第1の結線18を介して、電気モータ2の、関係付けられているコイル6、7、8に印加される。このような方法で生成することができる出力電流21は、電流センサ20によって電気回路3で検出されるため、ドライブユニット1の動作中に電気モータ2を制御することが可能となる。
【0066】
ステップa)において、固定子5に対する回転子9の磁極10、11の、回転における第1の位置22が、制御デバイス4によって決定される(図3を参照されたい)。第1の位置22は、公知の方法で決定することができる。例えば、電気モータ2の公知の位置センサ(ここでは図示せず)を評価してもよい。
【0067】
ステップb)において、電圧信号23が電気回路3によって生成される(図2の上部左の図、及び、図3の下図を参照。縦軸は電圧39、横軸は時間26)。電圧信号23は、第1の位置22と同一の第1の位相位置24を有する(図3の上図を参照)。
【0068】
ステップb)により電圧信号23を生成するために、すべてのトランジスタ27、28がクロックするパルスパターンが選択される。電圧信号23はPWM信号(パルス幅変調信号)として生成されるため、電圧信号23は複数の個々の信号から構成される。
【0069】
図3(並びに図4、5及び6)は、第1の軸43と第2の軸44を有する、固定子に固定された座標系と、第3の軸45と第4の軸46を有する、回転子に固定された座標系を示している。第3及び第4の軸45、46は、磁極10、11と共に、第1及び第2の軸43、44に対して回転する。
【0070】
従って、電圧又は電圧信号23の位相角(第1の位相位置24)は、ステップa)で決定された位相角(第1の位置22)に対応するように設定される(図3の上部を参照されたい)。
【0071】
電気モータ2に印加される電圧39により、電気回路3の出力電流21が増大する(図4の下図を参照。縦軸は電流47、横軸は時間26)。出力電流21の時間応答及び定常状態最終値40は、ここでは、固定子9のモータ巻線の電気的時定数によって決定され、すなわち抵抗41及びインダクタンス42によって決定される。得られた出力電流21の位相角は、磁極10、11の第1の位置22、すなわち永久磁石磁束の位相角に対応しているため(図4を参照)、ここでは電気モータ2にトルクが発生しない。
【0072】
ステップc)において、電圧信号23によって生成された(対応する第1の結線18の出力電流21の)各電流信号25の測定が、電流センサ20によって行われる。
【0073】
出力電流21、すなわち、対応するハーフブリッジ15、16、17にわたって生成され、対応する第1の結線18にわたってコイル6、7、8に向かって流れる出力電流21は、電気回路3に通常存在する電流センサ20によって測定される。
【0074】
出力電流21又は電流信号25(電流信号25の全体)の測定は、時間26又は時間間隔又は試験期間にわたって行われる。この測定は、一定の(最終)値40の電流信号25若しくは一定の(最終)値40の電流の強さが確立されるまで、又は、一定の値を決定可能となるまで(例えば、電流信号25の立ち上がりが漸近的となる場合に計算によって決定可能となるまで)行われる。
【0075】
ステップd)において、電流信号25が、制御デバイス4によって評価される。例えば、時間26又は試験期間にわたる電流信号25の立ち上がりに少なくとも関して、又は、ある時間の後に到達した電流信号25の最終値40に関して、評価される。この電流信号25の立ち上がり又は最終値40は、ドライブユニット1の状態を評価するために使用される。
【0076】
モータ巻線又は電気モータ2の抵抗41とインダクタンス42により、電気モータ2の関連パラメータがわかる。これらのパラメータは、電流信号25の立ち上がりの挙動又は試験期間内の電流信号25の挙動の基準となる。
【0077】
従って、ステップc)及びd)において、電圧信号23から生じた電流信号25の定常状態最終値40、すなわち電流の強さを、決定又は評価することができる。電流信号25は、例えば、第1の結線18それぞれで測定された各電流信号25又は各出力電流21を重ね合わせることによって形成されるが、この電流信号25は、制御デバイス4に格納されている、あらかじめ定義された値と比較することができる。この値からのずれが、定義された許容領域31の範囲内であれば、クロックトランジスタ27、28又はハーフブリッジ15、16、17及びそれらの作動と、接続されたモータ2と、電流センサ20による電流信号25の測定とからなる一連の処理全体が機能していると見なすことができる。
【0078】
提案された方法によって、ソフトウェアの形式だけで実現されている(すなわち、ハードウェアをさらに有さずに公知のドライブユニット1と比較して行う)モータ監視を使用して、少なくとも電流信号25の経過又は(最終)値40を検査することができ、且つ、この経過又は(最終)値40に応じて、ドライブユニット1が故障状態かOK状態かを特定する。
【0079】
ステップd)においてエラーが検出されない場合、ドライブユニット1は意図された動作を実施することができるため、例えば、要求されたトルクを電気モータ2によって供給することができる。故障の場合は、例えば、要求されたトルクがこれ以上発生しないように、電気モータ2が更に動作するのを阻止することができる。
【0080】
図5は、ドライブユニット1が故障状態の場合の本方法のステップa)及びb)を示す。図6は、ドライブユニット1が故障状態の場合の本方法のステップc)及びd)を示す。図5及び図6を共に以下で説明する。図1~4の説明を参照する。
【0081】
図5では、電圧又は電圧信号23の位相角(第1の位相位置24)が、第1の位置22からずれていることがわかる。例えば、固定子5に対する回転子9の磁極10、11の、回転における第1の位置22を制御デバイス3によって決定することは、ステップa)と関連して実行されるが、従って、ここでエラーが生じる。
【0082】
ステップb)の最中に回転子の位置の変化が検出された場合、すなわち、電圧信号と、それによって生成され且つ電気機械に印加される電流信号との結果として、回転子がその第1の位置又は位相角を変化させた場合、ドライブユニットに故障があると結論付けることができる。
【0083】
ステップc)において、電圧信号23によって生成された(対応する第1の結線18の出力電流21の)各電流信号25の測定が、電流センサ20によって行われる。
【0084】
ステップd)において、電流信号25が、制御デバイス4によって評価される。例えば、時間26又は試験期間にわたる電流信号25の立ち上がりに少なくとも関して、又は、ある時間の後に到達した電流信号25の最終値40に関して、評価される。この電流信号25の立ち上がり又は最終値40は、ドライブユニット1の状態を評価するために使用される。
【0085】
ここで、出力電流21又は電流信号25は、制御デバイス4に格納されている値よりもゆっくりと増大することがわかる。すでに説明した通り、このことは、電圧39が誤って印加されたか、又は、電圧信号23が誤って生成されたか、又は、永久磁石若しくは磁極10、11の第1の位置22が誤って測定されたかを示すものである可能性がある。
【0086】
図7は、ドライブユニット1が故障状態及びOK状態である場合の本方法のステップa)~d)の比較を示す。
【0087】
上図では、縦軸に信号値48がプロットされ、横軸に時間26がプロットされている。前述の方法は、第1のトリガ信号49によって開始する。本方法は、第2のトリガ信号49によって終了するか、又は、ステップb)によって生成された電圧信号23が終了させる。
【0088】
上から2番目の図では、縦軸に電圧39がプロットされ、横軸に時間26がプロットされている。トリガ信号49によって起動されると本方法が開始し、ステップa)により磁極10、11の第1の位置22が決定される。ステップb)により、第1の位相位置24の電圧信号23が生成される。電圧信号23は、時間26にわたって一定の電圧値30を有する。
【0089】
上から3番目の図では、縦軸に電流47がプロットされ、横軸に時間26がプロットされている。
【0090】
ステップb)により生成された電圧信号23と、それによって電気モータ2に印加される電圧39とにより、電気回路3の出力電流21が増大する。出力電流21の時間応答及び定常状態最終値40は、ここでは、固定子9のモータ巻線の電気的時定数によって決定され、すなわち抵抗41及びインダクタンス42によって決定される。
【0091】
上から3番目の図では、ステップc)において測定された出力電流21の電流信号25の立ち上がりの第1の経過50と第2の経過51が示されている。
【0092】
第1の経過50は、故障がない状態又はOK状態である場合の、ドライブユニットの立ち上がりと最終値40を示す。
【0093】
第2の経過51は、故障状態である場合の、ドライブユニットの立ち上がりと最終値40を示す。
【0094】
ステップc)及びd)において、電圧信号23から生じた電流信号25の定常状態最終値40、すなわち電流の強さが、決定又は評価される。電流信号25は、例えば、第1の結線18それぞれで測定された各電流信号25又は各出力電流21を重ね合わせることによって形成されるが、この電流信号25は、制御デバイス4に格納されている、あらかじめ定義された値と比較することができる。この値からのずれが、定義された許容領域31の範囲内であれば、クロックトランジスタ27、28又はハーフブリッジ15、16、17及びそれらの作動と、接続されたモータ2と、電流センサ20による電流信号25の測定とからなる一連の処理全体が機能していると見なすことができる。(第1の経過50を参照)。
【0095】
第2の曲線51では、出力電流21又は電流信号25は、制御デバイス4に格納されている値よりもゆっくりと増大することがわかる(第1の曲線50又は許容領域31を参照)。すでに説明した通り、このことは、電圧39が誤って印加されたか、又は、電圧信号23が誤って生成されたか、又は、永久磁石若しくは磁極10、11の第1の位置22が誤って測定されたかを示すものであり得る。
【0096】
下図では、縦軸に磁極10、11の第1の位置22がプロットされ、横軸に時間26がプロットされている。ここでは、第1の経過50に対応する第1の位置22の第3の経過52と、第2の経過51に対応する第1の位置22の第4の経過53が示されている。
【0097】
第3の経過52では電圧信号23を印加して電流信号25を生成するが、この第3の経過52からは、第1の位置22に変化がないことがわかる。従って、本方法を実行した場合、得られた出力電流21の位相角は、磁極10、11の第1の位置22、すなわち永久磁石磁束の位相角に対応しているため、電気モータ2にトルクが発生しない。
【0098】
第4の経過53からは、電圧信号23を印加して電流信号25を生成することによって第1の位置22が変化することがわかる。ステップd)の最中に、第1の位置22のこの変化、すなわち回転子9の位置を、検出して評価することができる。
【0099】
第1の位置22の変化は、例えば、ステップa)における永久磁石若しくは磁極10、11の第1の位置22が誤って測定されたか、又は、ステップb)において生成された電圧信号23の第1の位相位置24が第1の位置22からずれていることによって生じる。
【0100】
第2の経過51及び第4の経過53の少なくとも一方の評価において、ドライブユニット1が故障状態にあると結論付けることができる。
【0101】
図8は、本方法のシーケンスを示す。図9は、本方法の詳細なシーケンスを示す。図8はシーケンスの位置A~Gを示す。図9はシーケンスの位置C~Gをより詳細に示す。図8及び図9を共に以下で説明する。
【0102】
位置Aで、確認対象のドライブユニット1のスイッチがオフになっているかどうかを判定する。位置Bで、ドライブユニット1を始動するための始動信号があるかどうかを判定する。始動信号が存在しない場合、シーケンスは位置Aに戻るように規定されている。始動信号が存在する場合、位置Cで、ドライブユニット1を始動する。
【0103】
図9は、最初のステップが、制御デバイス4が動作する準備が整っているかどうかを確認するためのものであることを示す。動作する準備が整っている場合、直流電圧源14が十分な直流リンク電圧を供給しているかどうかを確認する。動作する準備が十分でない場合、制御デバイス4が動作する準備が整っているかどうかを再度確認する。直流リンク電圧が十分である場合、位置Dで、電気モータ2を確認して回転子9が静止しているかどうかを判定する。
【0104】
この目的のために、例えば、トランスミッションをシフトするセレクタレバー位置と車両速度、すなわちパラメータ56を確認してもよい。この確認が成功した場合、位置センサ55を評価することで、磁極10、11の第1の位置22を決定することができる。第1の位置22を決定することにより、回転子9が静止しているかどうかを確認する。
【0105】
回転子9が静止していない場合、本方法は、以下の位置Eにおいて、回転子9を回転させた状態で実行される。このために、トルクを意図的に供給又は発生させる電気回路3は、ステップb)~d)の間は電圧信号を生成せず、その代わりに、(可能な限りトルクを発生させるべきでない)本方法の間に発生させた電圧信号23のみが印加される。これに対応して、電圧信号23が生成されることになるが、その第1の位相位置24は常に第1の位置22と同一であり、すなわち第1の位置22で回転する。
【0106】
回転子9が静止している場合、本方法は、位置Eにおいて、回転子9が静止している状態で実行される。このために、第1の位置22と同一の第1の位相位置24の電圧信号23が生成される。
【0107】
位置Eにおいて、電流信号25を測定して評価する。まず、電流信号25が、制御デバイス4に格納されている最終値40に到達するかどうか、又は、電流信号25が、立ち上がりと最終値40に関して制御デバイス4に格納されている基準電流信号32に対応するかどうかを確認する。また、電流信号25又は出力電流21の経過50、51が許容領域31内にあるかどうかも確認する。また、電圧信号23を印加することによって電気モータ2にトルクが発生していないかどうかを確認する。
【0108】
これらの確認のうちの1つが否定、すなわち発生していない場合は、さらなる診断54を実行する。例えば、追加の診断を5回を超えて繰り返す必要がある場合、ドライブユニット1に故障があると判定する。そうでない場合、回転子9が静止しているかどうかを再度確認する。
【0109】
位置Fにおいて、エラーが認められたかどうかを確認する。エラーが存在しない場合、ドライブユニット1は、意図された使用を実施することができ、例えば、位置Gに従って、トルクを電気モータ2によって発生させるために実施できる。故障が認められた場合、ドライブユニット1は、位置Gの枠組の範囲内で安全な状態に移行し、意図された使用が無効となる。エラーメッセージ33を生成することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 ドライブユニット
2 モータ
3 電気回路
4 制御デバイス
5 固定子
6 第1のコイル
7 第2のコイル
8 第3のコイル
9 回転子
10 第1の磁極
11 第2の磁極
12 第1電位端子
13 第2電位端子
14 直流電圧源
15 第1のハーフブリッジ
16 第2のハーフブリッジ
17 第3のハーフブリッジ
18 第1の結線
19 第2の結線
20 電流センサ
21 出力電流
22 第1の位置
23 電圧信号
24 第1の位相位置
25 電流信号
26 時間
27 上部トランジスタ
28 下部トランジスタ
29 接点
30 電圧値
31 許容領域
32 基準電流信号
33 エラーメッセージ
34 ドライブトレイン
35 モータアクチュエータ
36 モータ監視ユニット
37 安全ロジック
38 直流電圧コンデンサ
39 電圧
40 最終値
41 抵抗
42 インダクタンス
43 第1の軸
44 第2の軸
45 第3の軸
46 第4の軸
47 電流
48 信号値
49 トリガ信号
50 第1の経過
51 第2の経過
52 第3の経過
53 第4の経過
54 診断
55 位置エンコーダ
56 パラメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】