(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】プローブから歯の髄までの距離検出
(51)【国際特許分類】
A61C 19/04 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536406
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2021085340
(87)【国際公開番号】W WO2022128831
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】プレスラ クリスチャン ニコラエ
(72)【発明者】
【氏名】シャルヴァ インドリフ
(72)【発明者】
【氏名】ピカー マーティン
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052NN02
4C052NN15
(57)【要約】
歯の象牙質の厚さの指標を決定するステップによって、歯の表面に接触しているプローブから歯の髄までの距離を、検出する方法及び装置が提供される。この方法は、プローブで歯の歯系組織を照射するステップと、次いで歯系組織からの散乱光を表すデータを受信するステップとを有する。次いで、散乱光のスペクトルが取得され、分析され、さらにスペクトル分析結果が取得される。次いで、スペクトル分析結果に基づいて、歯の象牙質の厚さの指標が決定される。この方法は、切削などの歯科治療中の、意図しない髄の露出を防止する助けとなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯の象牙質の厚さの指標を決定するステップによって、プローブから前記歯の髄までの距離を検出する方法であって、前記方法が、
前記プローブによって照射された歯系組織からの300~800nmの波長範囲を有する光を含む散乱光を表すデータを受信するステップと、
300~800nmの波長範囲で、前記散乱光のスペクトルを取得するステップと、
前記スペクトルから、スペクトル分析結果を取得するステップと、
前記スペクトル分析結果に基づいて、前記歯の前記象牙質の前記厚さの前記指標を決定するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記スペクトルから前記スペクトル分析結果を取得するステップが、300~800nmの範囲で、前記スペクトルの強度の勾配を決定するステップを有し、
前記歯の前記象牙質の前記厚さの前記指標が、決定した前記強度の前記勾配を使用して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペクトルから前記スペクトル分析結果を取得するステップが、血液の光吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲を有する、光吸収率のピークを検出するステップを有し、
前記歯の前記象牙質の前記厚さの前記指標が、検出した前記光吸収率のピークを使用して決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
400nmから600nmの範囲の前記スペクトルの積分振幅が、所定の閾値を超え、且つ400nmから600nmの範囲で、前記光吸収率のピークが検出されない場合、前記象牙質の前記厚さが、2mmから1mmの範囲にあると決定され、
400nmから600nmの範囲の前記スペクトルの前記積分振幅が、前記所定の閾値を超えず、且つ400nmから600nmの範囲で、前記光吸収率のピークが検出された場合、前記象牙質の前記厚さが、1mmから0.2mmの所定の範囲にあると決定され、
400nmから600nmの範囲の前記スペクトルの前記積分振幅が、前記所定の閾値を超えず、且つ400nmから600nmの範囲で、前記光吸収率のピークが検出されない場合、前記象牙質の前記厚さが、0.2mm未満であると決定される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記血液の前記光吸収スペクトルの波長範囲が、520~550nm及び570~590nmの範囲内にある、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
請求項7から12のいずか一項に記載の歯科用装置によって実行されるとき、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法のステップのすべてを、処理システムを備えるコンピュータ処理デバイス上で実行されるときに、前記処理システムに実行させる、コンピュータプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【請求項7】
歯の象牙質の厚さの指標を決定することによって、プローブから前記歯の髄までの距離を決定する歯科用装置であって、前記歯科用装置が、
前記歯の歯系組織に光を照射し、前記歯系組織からの300~800nmの波長範囲を有する散乱光を検出するプローブと、
300~800nmの波長範囲で、検出した前記散乱光のスペクトルを取得し、
前記スペクトルから、スペクトル分析結果を取得し、
前記スペクトル分析結果に基づいて、前記歯の前記象牙質の前記厚さの前記指標を決定する、
プロセッサと
を備える、歯科用装置。
【請求項8】
前記スペクトルから前記スペクトル分析結果を取得することが、300~800nmの範囲で、前記スペクトルの強度を決定することを含む、請求項7に記載の歯科用装置。
【請求項9】
前記スペクトルから前記スペクトル分析結果を取得することが、血液の光吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲を有する、光吸収率のピークを検出することを含む、請求項7又は8に記載の歯科用装置。
【請求項10】
前記プロセッサが、
400nmから600nmの範囲の前記スペクトルの積分振幅が、所定の閾値を超え、且つ400nmから600nmの範囲で、前記光吸収率のピークが検出されない場合、前記象牙質の前記厚さが、2mmから1mmの範囲にあると決定し、
400nmから600nmの範囲の前記スペクトルの前記積分振幅が、前記所定の閾値を超えず、且つ400nmから600nmの範囲で、前記光吸収率のピークが検出された場合、前記象牙質の前記厚さが、1mmから0.2mmの範囲にあると決定し、
400nmから600nmの範囲の前記スペクトルの前記積分振幅が、前記所定の閾値を超えず、且つ400nmから600nmの範囲で、前記光吸収率のピークが検出されない場合、前記象牙質の前記厚さが、0.2mm未満であると決定する、
請求項9に記載の歯科用装置。
【請求項11】
前記血液の前記吸収スペクトルの波長範囲が、520~550nm及び570~590nmの範囲にある、請求項9又は10に記載の歯科用装置。
【請求項12】
前記プローブが、前記象牙質の基準部分のスペクトルを測定することにより校正される、請求項9から11のいずれか一項に記載の歯科用装置。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか一項に記載の歯科用装置を備える、ドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口内の治療の分野に関し、より詳細には、プローブから歯の髄までの距離を検出するコンセプトに関する。
【背景技術】
【0002】
歯髄は、象牙質、エナメル質、及びセメント質を有する、口腔の硬い小室(すなわち、歯)内に存在する。歯髄は、以下の不可欠な機能を果たす。歯髄は、細菌の侵入に対する歯の抵抗力を高め、熱の刺激及び機械的刺激に敏感であることにより、警告機構として機能し、咀嚼筋への力の帰還ループを提供する。しかし、歯髄の完全性は、虫歯によって、又は切削など、虫歯を取り除くのに必要な歯科手技によって、損傷を受ける可能性がある。したがって、歯科手技中の歯髄の損傷を防止するために、又は以前に損傷した歯髄に対する正しい治療方法を選択するために、2mmから0.2mmの範囲で、髄までの距離を測定する機能が不可欠である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
う蝕治療は、単純で一般的なプロセスである一方で、深いう蝕の治療のうちの29%で、意図しない歯髄の露出が生じる。歯髄の露出を修正するには、根管治療を行う必要があるが、かかる治療は、最初のう蝕治療よりもはるかに時間及び費用がかかる。したがって、意図しない髄の露出を回避することに伴う、大きな利点がある。
【0004】
段階的除去を利用することで、意図しない髄の露出の可能性を、29%から18%に減らすことができる。しかし、段階的除去は、同時に、患者にさらなる不快感を与え、コストが増加し、一時的な詰め物の取外し又は最終的な剔削の間に、髄が露出するリスクが高まるという結果をもたらす可能性がある。さらに、段階的剔削を使用する治療は、複数回の予約を必要とするため、治療失敗のリスク(例えば患者が、歯科医のところに戻って治療を終了しないことによって、もたらされる)が高まる。したがって、段階的剔削は、長期的な解決策として好適とは考えられない。
【0005】
現在実践されている髄までの距離の測定は、主に主観的なものであり、歯科医は、歯の解剖学的構造の、自身の経験及び知識を、歯の視覚的な見た目に当てはめる。客観的な測定方式にはX線画像化が含まれるが、X線画像化は、有害な電離放射線を利用し、歯の限定された視野しか提示しない。
【0006】
米国特許出願公開第2009/0155735号は、歯の表面から歯の髄までの距離を測定するための、白色光干渉計を備える歯科用装置について開示している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
【0008】
本発明の一態様に従った例によれば、請求項1に記載の、歯の象牙質の厚さの指標を決定することにより、プローブから歯の髄までの距離を検出する方法が提供される。
【0009】
提案される実施形態は、歯の歯系組織を照射することによって、歯の表面に接触しているプローブから歯の髄までの距離の検出を可能にする。提案されているコンセプトによれば、照射された歯系組織からの散乱光を表すデータを受信して、散乱光のスペクトルを取得するために使用することができる。スペクトルの分析によって、歯の表面から歯の髄までの距離が推測される。このようにして、歯髄までの距離を、安全、客観的、且つ正確に測定することができる。提案されている実施形態は、例えば、歯科治療中、特に切削を伴う治療(う蝕治療など)の際に、意図しない髄の露出を防止するために使用される。
【0010】
具体的には、歯の象牙質によって反射又は散乱される可視光のスペクトルの特性を活用して、最大2mmの象牙質の厚さの後ろにある血液(歯の髄にある)の存在を、検出できることが認識されている。
【0011】
血液の吸収スペクトルは、プローブが髄の近傍にあるとき、500nmから600nmの波長範囲の長い波長であることが、調査により示されている。血液の吸収スペクトルは、2つの吸収率のピークを示し、一方が540nm付近、他方が580nm付近であることが、さらなる調査により示されている。象牙質によって反射又は散乱される可視光の反射率スペクトルも調査されており、反射率スペクトルは、540nm及び580nmに谷を表し、これは、540nm及び580nmの波長で、象牙質から反射される可視光の割合が減少していることを示している。可視光は、髄の血液によって吸収されることが提示されている。したがって、歯の髄に含まれる血液の吸収スペクトルは、歯の象牙質によって反射/散乱される可視光の反射率スペクトルに関係づけることができる。
【0012】
象牙質の厚さが1mmで、400nmから600nmの範囲において、反射率が低下することも、調査により観察されている。同等の範囲内(すなわち、0~2mm)の象牙質の厚さは、同様の反射率スペクトルを有することが示唆されている。
【0013】
プローブからの可視光は、象牙質の厚さがより薄いとき(すなわち、0~2mm)、象牙質を通過して髄の血液に達する。血液は、象牙質よりも実質的に多くの光を吸収し、これは、血液の吸収率のピークが存在するため、400nmから600nmの波長範囲で特に顕著である。可視光は、血液と象牙質との両方によって吸収されるため、可視光の吸収率が高まる。したがって、反射されてプローブに戻る光の割合が、より低くなる。
【0014】
可視光は、象牙質の厚さがより厚い(すなわち、2mmを超える)とき、象牙質を通過して髄の血液に達しない。前述の血液と象牙質との組合せと比較すると、象牙質が吸収する可視光の割合が低下するので、結果的に、象牙質から反射される光の割合が高まる。以前のシナリオで使用した象牙質の厚さの閾値2mmは、単なる一例であり、変わる可能性がある(例えば、1.5mmから2.5mmの範囲内)。
【0015】
さらに調査するために、400nmから600nmの範囲のスペクトルの振幅を積分し、約2mm未満の象牙質の厚さに対してグラフ化した。象牙質の厚さが減少すると、スペクトルの積分振幅(integrated amplitude)も減少し、これは、変量が比例することを示唆している。
【0016】
これらの発見を活用することにより、象牙質の厚さを決定する(これにより、歯の象牙質から髄までの距離の指標を提示する)ために、歯によって反射/散乱された可視光のスペクトル及び積分振幅を使用できることが、提案されている。具体的には、象牙質の厚さは、3つの異なる範囲内に決定され得る。
(i)400nmから600nmの範囲のスペクトルの積分振幅が、閾値を超え、且つスペクトルが、反射率の谷(すなわち、光吸収率のピーク)を表さない場合、光がすべて象牙質で反射されているので、血液に光が到達していないと決定され得る。この場合、象牙質の厚さは、約2mmから約1mmの範囲にあると推測される。
(ii)400nmから600nmの範囲のスペクトルの積分振幅が、閾値より小さく、且つスペクトルが、反射率の谷(すなわち、光吸収率のピーク)を表す場合、光は、ただ部分的に象牙質によって反射されており、血液に到達していると決定され得る。この場合、象牙質の厚さは、約1mmから約0.2mmの範囲にあると推測される。
(iii)400nmから600nmの範囲のスペクトルの積分振幅が、閾値より小さく、且つスペクトルが、反射率の谷(すなわち、光吸収率のピーク)を表さない場合、すべての光が血液によって吸収され、光は象牙質で反射されていないと決定され得る。この場合、象牙質の厚さは、約0.2mmより薄い。ただしこの値は、変わる可能性がある。
【0017】
ただし、上記で詳述された距離には、若干のばらつきがあり得ることを理解されたい。例えば、上記で詳述された2mmの閾値は、1.75mmから2.25mmの範囲内にある。さらなる例として、上記で詳述された閾値(すなわち、0.2mm、1mm、及び2mm)の臨床的なばらつき量は、10%~30%の範囲内にある。
【0018】
治療箇所から歯髄までの距離を決定する従来の方法は、ほとんどが主観的なものであり、歯科医の経験に依存している。具体的には、歯科医は、歯の解剖学的構造に関する知識を、歯の視角的な見た目に当てはめる必要がある。しかし、主観への依存により、その後の人為的ミスのリスクが高まる。さらに、このリスクは、歯科医に十分な経験が不足している場合、さらに高まる。歯科医は、提案されている実施形態を使用することで、人為的ミスのリスクを抑える、客観的な測定方法の恩恵を受ける。
【0019】
提案されている実施形態によれば、歯科医は、X線画像化よりもはるかに多くの情報を含むばかりでなく、使用に当たって有害な放射線を必要としない、歯の表面に接触している歯科用プローブから表面の髄までの距離の客観的な測定の、恩恵を受ける。さらに、単一の測定指標又は測定基準(例えば、歯に接触しているプローブと歯の髄との間の、象牙質の厚さの指標)を取得することによって、対象者(例えば、患者)間の比較を行うことがより簡単になる。
【0020】
提案されている実施形態はまた、意図しない髄の露出の発生率を大幅に減らすことにより、歯科医の時間と費用との両方を節約する。
【0021】
実施形態は、歯の表面から歯髄までの距離の指標を決定する堅牢な方法を提供することにより、段階的な剔削の使用に取って代わる。
【0022】
他の実施形態は、スペクトルから、300~800nmの範囲のスペクトルの強度の勾配を決定することにより、スペクトル分析結果を取得し、ひいては決定した強度の勾配を使用して、歯の象牙質の厚さの指標を決定する。決定した強度の勾配を使用して、プローブ(歯の表面に接触している)と歯の髄との間の歯の象牙質の厚さが、より信頼性高く決定される。
【0023】
実施形態は、さらに、スペクトルから、血液の光吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲内で、光吸収率のピークを検出することにより、スペクトル分析結果を取得する。したがって、歯に接触しているプローブから歯の髄までの距離の指標は、検出した光吸収率のピークを使用して決定される。検出した光吸収率のピークを使用することで、(歯の表面に接触している)プローブと歯の髄との間の歯の象牙質の厚さの指標が、より正確に決定される。
【0024】
実施形態は、520~550nm及び570~590nmの範囲内にある、血液の光吸収スペクトルの波長範囲を使用する。波長範囲を制限することにより、光吸収率のピーク検出が、より効率的に行われる。
【0025】
コンピュータプログラム製品は、処理システムを備えるコンピュータ処理デバイス上で実行されると、以前に説明された、プローブから歯の髄までの距離を検出する方法を、処理システムに実行させる、コンピュータプログラムコード手段を含む。
【0026】
他の実施形態では、歯科治療中に、対象者の歯の髄の露出を防止する方法は、広帯域可視光で対象者の歯の歯系組織を照射するステップと、歯系組織から反射された可視光を検出するステップとを有する。対象者の歯の髄の露出を防止する方法はまた、検出した、歯系組織から反射された可視光のスペクトルを分析して、スペクトル分析結果を取得するステップと、さらにスペクトル分析結果に基づいて、対象者の歯の髄までの距離の指標(例えば、歯に接触しているプローブと歯髄との間の、象牙質の厚さの指標)を生成するステップとを有する。
【0027】
実施形態は、さらに、検出した、歯系組織から反射された可視光の、スペクトルを分析する方法を含む。この方法は、400~800nmの範囲で検出された、可視光のスペクトルの強度を決定するステップを有する。
【0028】
この方法は、さらに、400~800nmの範囲で光吸収率のピークを検出するために、検出した、波長に対する可視光の振幅の変動を分析する。この方法は、決定したスペクトルの強度及び検出結果に基づいて、スペクトル分析結果を決定するステップも有する。
【0029】
実施形態は、以下のプロセスを使用して、300~800nmの範囲で光吸収率のピークを検出するために、検出した、波長に対する可視光の振幅の変動を分析する方法を利用する。300~800nmの範囲での光吸収率のピークは、それぞれ520~550nm及び570~590nmの範囲で検出された、可視光の振幅の変動における第1及び第2の谷を観察することで検出される。検出した可視光の振幅の変動における第1及び第2の谷は、それぞれ540nm及び580nmで観察されることが好ましい。
【0030】
他の実施形態は、300~800nmの範囲で検出された、可視光のスペクトルの強度を決定するステップが、積分演算を実行するステップを有する方法を含む。
【0031】
さらに、スペクトル分析を決定するステップの方法は、以下のプロセスを有する。スペクトル分析結果として、強度が閾値を超えると決定され、且つ光吸収率のピークが検出されなかったことに対応して、対象者の歯の髄までの距離が、1~2mmの範囲であると決定される。さらに、スペクトル分析結果として、強度が閾値を超えないと決定され、且つ光吸収率のピークが検出されたことに対応して、対象者の歯の髄までの距離が、0.2~1mmの範囲であると決定される。最後に、スペクトル分析結果として、強度が閾値を超えないと決定され、且つ光吸収率のピークが検出されなかったことに対応して、対象者の歯の髄までの距離が、0.2mm未満であると決定される。
【0032】
コンピュータプログラム製品は、処理システムを備えるコンピュータ処理デバイス上で実行されると、以前に説明された、歯の象牙質の厚さを決定することによって、プローブから歯の髄までの距離を検出する方法を、処理システムに実行させる、コンピュータプログラムコード手段を含む。
【0033】
さらに、実施形態は、請求項6に記載の、歯の象牙質の厚さを決定することにより、プローブから歯の髄までの距離を測定する歯科用装置を含む。
【0034】
実施形態は、さらに、スペクトルから、300~800nmの範囲でスペクトルの強度を決定することにより、スペクトル分析結果を取得する。プロセッサは、特定された範囲にわたって強度を決定するだけで、スペクトル分析の機能をより迅速に実行する。
【0035】
実施形態は、スペクトルから、血液の吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲で、光吸収率のピークを検出することにより、スペクトル分析結果を取得する。前述のプロセスを忠実に実行することにより、血液の吸収率のピークが特定され、髄までの距離をより正確に検出可能となる。
【0036】
他の実施形態は、520~550nm及び570~590nmの、血液の吸収スペクトルの波長範囲を使用する。したがって、吸収率のピークが、より迅速に特定される。
【0037】
提案されている実施形態は、歯科治療中に装置を使用して、対象者の歯の髄の露出を防止する。この装置は、歯科用プローブ、スペクトル分析構成要素、及びプロセッサを備える。歯科用プローブは、使用中に、歯系組織を照明し、歯系組織から反射される可視光を検出するよう構成される。次いで、スペクトル分析構成要素は、反射光のスペクトルを分析し、プロセッサが、歯と接触しているときのプローブから対象者の歯の髄までの距離の指標を生成するのに使用する、結果を生じさせる。指標は、視覚、聴覚、振動、及び人間の感覚を含む他の手法である。
【0038】
他の実施形態は、スペクトル分析構成要素が、以下のプロセスを忠実に実行するよう構成される、概念を使用する。最初に、300~800nmの範囲で検出される、可視光のスペクトルの強度を決定する。次いで、300~800nmの範囲で光吸収率のピークを検出するために、検出した、波長に対する可視光の振幅の変動を分析する。最後に、スペクトルの強度及び検出結果に基づいて、スペクトル分析結果を決定する。前述のプロセスを忠実に実行することにより、光吸収率のピークが特定され、髄までの距離をより正確に検出可能となる。
【0039】
実施形態は、300~800nmの範囲での光吸収率のピークを、それぞれ520~550nm及び570~590nmの範囲で検出された、可視光の振幅の変動における第1及び第2の谷を観察することにより検出する、スペクトル分析構成要素を構成する。検出した可視光の振幅の変動における第1及び第2の谷は、それぞれ540nm及び580nmで観察されることが好ましい。さらに限定された範囲で検出された、可視光の振幅の変動を分析することにより、より迅速に谷を特定でき、ひいては、髄までの距離の指標(すなわち、歯に接触しているプローブと髄との間の象牙質の厚さ)の、素早い決定が可能となる。
【0040】
実施形態はまた、300~800nmの範囲で検出された可視光のスペクトルの強度を、積分演算を実行することにより決定する、スペクトル分析構成要素を構成する。強度のスペクトルの積分振幅を計算することで、歯髄からの距離を、より正確に決定することができる。
【0041】
実施形態は、さらに、スペクトル分析構成要素が、スペクトル分析結果として、強度が閾値を超えると決定し、且つ光吸収率のピークを検出しなかったことに対応して、対象者の歯の髄までの距離は1~2mmの範囲であると決定するよう構成される、概念を使用する。スペクトル分析構成要素はまた、スペクトル分析結果として、強度が閾値を超えないと決定し、且つ光吸収率のピークを検出したことに対応して、対象者の歯の髄までの距離は0.2~1mmの範囲であると決定するよう構成される。さらに、スペクトル分析が、スペクトル分析結果として、強度が閾値を超えないと決定し、且つ光吸収率のピークを検出しなかったことに対応して、対象者の歯の髄までの距離は0.2mm未満であると決定するよう構成される。スペクトル分析構成要素は、測定領域を明確に規定することにより、髄からプローブまでの重要な距離、例えば2mm、1mm、0.2mmを伝える。その結果として、スペクトル分析構成要素は、プローブがリアルタイムで測定するので、歯科医へ警告機構を示し、これにより歯科医は、プローブの歯髄からの大まかな距離を認識する。
【0042】
いくつかの実施形態では、歯科用プローブは、広帯域可視光を受光し、受光した広帯域可視光を光導波路の第1の発光部分に誘導するよう構成された、光導波路を備える。導波路は、次いで、使用中に、対象者の歯の歯系組織に近接して配置されるよう適合される。光導波路の実施態様により、歯系組織への可視光の照射量を正確に制御できるようになり、象牙質が確実に照射される。
【0043】
他の実施形態はさらに、歯系組織から反射された可視光を受光し、歯系組織から反射された、受光した可視光をスペクトル分析構成要素に誘導する、光導波路を構成する。したがって、歯系組織への可視光の放射と、対象者の歯系組織からの反射光の検出との両方用に、単一の光導波路しか必要ではない。
【0044】
実施形態は、光導波路が光ファイバ及びビームスプリッタを備える、概念を使用する。ビームスプリッタは、放射可視光線と反射可視光線との両方が、同じ光ファイバを使用できるようにするので、単一の光ファイバを備えた歯科用プローブの実施態様を可能にする。
【0045】
本発明の別の態様によれば、提案されている実施形態による歯科用装置を備える、ドリルが提供される。
【0046】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、これ以降で説明される実施形態から明らかになり、また実施形態を参照しながら説明される。
【0047】
本発明のより適切な理解のために、また本発明がどのように実行されるかをより明確に示すために、ここでただ単に例として、以下の添付図面を参照することにする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図2】象牙質のスライス厚が1mmの場合の、測定した反射率スペクトルを示すグラフである。
【
図3】ある範囲の象牙質の厚さに対する、測定した反射率スペクトルを示すグラフである。
【
図4】ある範囲の象牙質の厚さに対する、積分振幅を示すグラフである。
【
図5】歯科治療中に、対象者の歯の髄の露出を防止する方法を示す、流れ図である。
【
図6】歯科切削中に、対象者の歯の髄の露出を防止する、提案されている方法を示す流れ図である。
【
図7】実施形態の1つ又は複数の部品がコンピュータ内で使用される、コンピュータの例を示す図である。
【
図8】プローブから歯の髄までの距離を決定する、歯科用装置を示す図である。
【
図9】プローブから歯の髄までの距離を決定する、提案されている歯科用装置を示す図である。
【
図10】2本の光ファイバを備える、提案されているプローブの実施形態を示す図である。
【
図11】光ファイバ及びビームスプリッタを備える、提案されているプローブの実施形態を示す図である。
【
図12】歯科用装置を備える、ドリルの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明について、図を参照しながら説明することにする。
【0050】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム、及び方法の代表的な実施形態を示しているが、例示のみを目的とすることを意図し、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこうした特徴、態様、及び利点、並びに他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付図面から、より適切に理解されよう。特定の手段が、互いに相異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが、利点をもたらすようには使用できないことを示すものではない。図は単に模式的であり、原寸に比例して描かれていないことを理解されたい。同じ又は類似の部品を示すために、図全体を通して同じ参照番号が使用されていることも理解されたい。
【0051】
本開示による実施態様は、歯科治療中の髄の露出防止に関して、歯に接触しているプローブから歯の髄までの距離の指標を検出する、様々なシステム、適合形態、及び/又は方法に関する。提案されている概念によれば、いくつかの可能な解決策が、個別に又は一緒に実施される。すなわち、これらの可能な解決策は、下記で個別に説明されるが、これらの可能な解決策のうちの2つ以上が、何らかの組合せで実施されてもよい。
【0052】
提案されている実施形態は、(歯に接触している)プローブから歯の髄までの距離の指標を検出する方法を提供する。実施形態は、したがって、意図しない髄の露出を防止するために使用される。実施形態は、歯の表面に接触して歯の歯系組織を照射するために、歯科用プローブを利用する。次いで、歯系組織からの散乱光を表すデータが受信され、散乱光のスペクトルが取得される。次いで、スペクトルからスペクトル分析結果が取得され、スペクトル分析結果に基づいて、プローブから歯の髄までの距離が推測される。
【0053】
具体的には、歯の象牙質によって反射又は散乱される可視光のスペクトルの特性を活用して、最大2mmの象牙質の厚さの裏にある血液(歯の髄に含まれているであろう)の存在を、検出できることが認識されている。
【0054】
図1で実証されているように、血液の吸収スペクトルは、500nmから600nmの波長範囲の長い波長であることが、調査により示されている。
【0055】
図1は、血液の吸収スペクトル100を示し、横軸は波長(nm)を表し、縦軸はミリモル吸光率(L・mmol
-1・cm
-1)を表している。さらなる調査により、血液の吸収スペクトルは、2つの吸収率のピークを表すことが示されている。1つはおよそ540nm、もう1つはおよそ580nmであり、したがってピークは、520~550nm及び570~590nmの範囲内にあることが多い。
図1で観察されるように、ピーク101は、約540nmの波長で生じ、ピーク102は、約580nmの波長の両側に生じている。
図1は、したがって、前述の調査と一致している。
【0056】
象牙質によって反射又は散乱された可視光の、反射率スペクトルも調査されており、反射率スペクトルが、
図2に示されている。
【0057】
図2は、象牙質のスライス厚が1mmの場合の、反射率スペクトル200を示し、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は反射率(任意単位)を表している。
図2では、反射率の谷を観察することができる。谷201は、約540nmで生じ、もう1つの谷202は、約580nmで生じている。反射率の谷は、象牙質から反射される可視光の割合が、これらの波長で、低下していることを示唆している。さらに、吸収率のピーク101、102は、反射率の谷201、202と非常によく似た波長で生じ、反射率も、400nmから600nmの範囲で減少しており、これは、
図1に示された450nmから600nmの範囲での吸収率の増加と一致している。可視光は、したがって、髄の血液によって吸収されていると推測される。したがって、歯の髄に含まれる血液の吸収スペクトルは、吸収率のピークが反射率の谷に一致するように、歯の象牙質によって反射/散乱された可視光の反射率スペクトルに関係づけることができる。
【0058】
調査は、象牙質の厚さが2mmより薄いことにより、400nm~600nmの範囲での、吸収率の減少、ひいては反射率の増加を示すことができ、変量が依存性であることも示している。
【0059】
図3は、ある範囲の象牙質の厚さに対する、測定した反射率スペクトル300を示し、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は反射率(任意単位)を表している。さらに、線310、312、314の陰影は、相異なる象牙質の厚さを示し、310は厚い象牙質の厚さを示し、312は中程度の象牙質の厚さを示し、314は薄い象牙質の厚さを示している。
図3から、象牙質の厚さがより薄いほど、一層反射率が低いことが明らかである。さらに、スペクトルの勾配301、302は、髄までの距離(すなわち、象牙質の厚さ)を決定する助けとなり得る。
【0060】
さらに調査するために、
図4に示されているように、
図3のスペクトル(400nmから600nmの範囲)の振幅を積分し、2mm未満の象牙質の厚さの関数としてグラフ化した。
【0061】
図4は、ある範囲の象牙質の厚さに対する、積分振幅のグラフ400を示し、横軸は髄までの距離(ミクロン)を表し、縦軸は積分振幅(任意単位)を表している。象牙質の厚さが減少すると、スペクトルの積分振幅も減少し、これは、変量が比例することを示唆している。
【0062】
これらの発見を活用することにより、象牙質の厚さの指標を決定する(すなわち、歯の表面から髄までの距離の指標を提示する)ために、歯によって反射/散乱された可視光のスペクトル及び積分振幅を使用できることが、提案されている。具体的には、象牙質の厚さは、3つの異なる範囲に決定され得る。
(i)400nmから600nmの範囲のスペクトルの積分振幅が、閾値を超え、スペクトルが、反射率の谷(すなわち、光吸収率のピーク)を表さない場合、光がすべて象牙質で反射されているので、血液に光が到達していないと決定され得る。象牙質の厚さは、したがって、2mmから1mmの範囲にある。
(ii)400nmから600nmの範囲のスペクトルの積分振幅が、閾値より小さく、スペクトルが、反射率の谷(すなわち、光吸収率のピーク)を表す場合、光は、ただ部分的に象牙質によって反射されており、血液に到達していると決定され得る。象牙質の厚さは、したがって、1mmから0.2mmの範囲にある。
(iii)400nmから600nmの範囲のスペクトルの積分振幅が、閾値より小さく、スペクトルが、反射率の谷(すなわち、光吸収率のピーク)を表さない場合、すべての光が血液に吸収され、光は象牙質によって反射されていないと決定され得る。象牙質の厚さは、したがって、0.2mm未満である。
【0063】
図5は、提案されている実施形態による、プローブから歯の髄までの距離を検出する方法500を示している。この方法は、ステップ510、520、及び530を有する。ステップ510では、歯の歯系組織は、歯の表面に接触した状態で配置されたプローブによって照射され、歯系組織からの散乱光を表すデータが受信される。ステップ520では、散乱光のスペクトルが取得され522、次いで分析され524、526、スペクトル分析結果528が取得される。ステップ530では、スペクトル分析結果528に基づいて、プローブから歯の髄までの距離が決定される。
【0064】
スペクトル分析520は、ステップ522、524、526、及び528に展開される方法を含む。ステップ522では、300~800nmの波長範囲でスペクトルが取得される。散乱光は、300~800nmの波長範囲を有する光を含むことに留意されたい。ステップ524では、300~800nmの範囲で、スペクトルの強度が決定される。ステップ526では、光吸収率のピークが検出され、光吸収率のピークは、血液の光吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲を有する。血液の光吸収スペクトルの波長範囲は、520~540nm及び550~570nmの範囲にある。ステップ528では、スペクトルの強度を決定するステップ524、及び血液の光吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲を有する、光吸収率のピークを検出するステップ526により、スペクトル分析結果が取得される。ステップ530では、ステップ524で決定された強度、及びステップ526で検出された光吸収率のピークを使用して、プローブから歯の髄までの距離の指標が決定される。
【0065】
図6は、提案されている実施形態による、歯の切削中にプローブ(歯と接触した状態にある)から歯の髄までの距離を検出する、提案されている方法600を示している。提案されている方法は、光分光法を利用しており、光源を使用して、光ファイバを介して組織を照明する。光は、組織で散乱及び吸収され、次いで反射光が集光され、別のファイバ又は同じファイバによって分光計に誘導される。
【0066】
方法600は、ステップ610、620、630、640、及び650を有する。ステップ610では、歯の歯系組織に対して、歯の切削が開始される。ステップ620では、歯の歯系組織は、プローブからの光で照射され、歯系組織からの散乱光を表すデータが受信される。散乱光は、300~800nmの波長範囲を有する光を含むことに留意されたい。ステップ630では、歯系組織からの散乱光のスペクトルが取得され、次いで分析され、スペクトル分析結果が取得される。ステップ640では、スペクトル分析結果に基づいて、プローブから歯の髄までの距離が決定される。ステップ650では、髄までの所望の距離に達した場合、切削は停止される。
【0067】
スペクトル分析の方法630は、ステップ631、632、633、634、635、及び636をさらに有する。まず、ステップ630は、最初に300~800nmの波長範囲でスペクトルを取得するステップと、次いで、300~800nmの範囲のスペクトルの強度を決定するステップとを有する。スペクトルは、分光計によって生成される、測定反射率スペクトルを含む。
【0068】
ステップ631では、光吸収率のピークが検出され、光吸収率のピークは、血液の光吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲を有する。光吸収率のピーク検出方法は、以前に生成された測定反射率スペクトルを分析するステップと、波長範囲内の振幅の変動における谷を観察するステップとを有する。谷は、光が血液に吸収される指標として機能し、ひいては、光吸収率のピークに相当する。光吸収率のピークが検出されると、光吸収率ピークアルゴリズム632が適用される。光吸収率のピークが検出されない場合、積分振幅評価アルゴリズム633が適用される。
【0069】
ステップ632では、光吸収率ピーク(LAP)アルゴリズムが適用される。まず、300~800nmの範囲の光吸収率のピークが検出される。血液の光吸収スペクトルの波長範囲が適用されるため、光吸収率のピークは、520~550nm及び570~590nmの範囲内で観察されるはずである。光吸収率のピークは、それぞれ520~550nm及び570~590nmの範囲内の、スペクトルの振幅の変動における第1及び第2の谷に相当する。スペクトルの振幅の変動における第1及び第2の谷は、それぞれ550nm及び580nmで観察されることが好ましい。光吸収率ピークアルゴリズムは、血液による光の吸収率には、540nm及び580nm付近に2つのかなり明確なピークがあるという事実を使用する。というのは、プローブが髄に近づくと、血液がより多く光を吸収し、したがってスペクトルの振幅が、これらの波長付近で急激な減少を示すからである。振幅の相対的な減少量が、髄までの距離の測定値となる。スペクトルを当てはめることにより、相対的な減少量、ひいては髄までの距離を推定することができる。光吸収率ピーク検出アルゴリズム632により、プローブから歯の髄までの距離の決定640が可能となる。
【0070】
ステップ633では、300~800nmの範囲の散乱光のスペクトルの決定した強度に対して、積分演算が実行される。プローブが髄に近づくと、吸収が生じるため、強度の積分値が減少することになる。
【0071】
ステップ634では、積分振幅値が分析される。積分振幅値がゼロに等しくない場合、積分振幅値を閾値と比較して、歯科用プローブから髄までの距離を決定する(640)ことができる。積分振幅値がゼロに等しい場合、プローブの光強度を高める必要があるが、これは、既に最大光強度に達しているかどうか(635)によって変わる。
【0072】
ステップ635では、プローブの最大光強度に達しているかどうかが決定される。最大光強度にまだ達していない場合、ゼロを超える積分振幅を生じさせるには光強度が不十分である。したがって、プローブの光強度を高める(636)必要がある。プローブの最大光強度に達している場合、光は血液に吸収されているので、積分振幅値がゼロになっている。したがって、ドリルは最も近く安全な切削距離にあり、それ以上切削すべきではないため、髄の露出を避けるために、切削を停止する(650)必要がある。
【0073】
ステップ636では、プローブの光強度を高め、ステップ631の光吸収率のピーク検出を繰り返す。
【0074】
ステップ640では、決定した強度、及び検出した光吸収率のピークを使用して、プローブから歯の髄までの距離が決定される。プローブから歯の髄までの距離を決定するために、以下の基準が与えられる。積分振幅値が特定の閾値を超え、血液のピークが検出されない場合、光は、すべて象牙質によって反射されているので、血液には到達せず、したがって、髄までの距離は2~1mmの範囲である。積分振幅が特定の閾値より小さく、血液のピークが検出された場合、光は、ただ部分的に象牙質によって反射され、血液に到達するため、髄までの距離は1~0.2mmの範囲である。積分振幅が特定の閾値より小さく、血液ピークが検出されない場合、すべての光が血液に吸収され、光はプローブに戻っていないため、髄までの距離は0.2mm未満である。これは、髄の露出を避けるための、最も近くて安全な切削距離である。髄までのより正確な距離は、測定したパラメータと既知の象牙質スライス厚とを関係づけるルックアップテーブルで、積分振幅又は血液ピーク検出パラメータの値を調べることにより決定される。
【0075】
ステップ641では、髄までの所望の距離が、ステップ640で以前に決定したプローブから歯の髄までの距離と比較される。決定した距離が、髄までの所望の距離に達している場合、切削を停止する(650)。決定した距離が、髄までの所望の距離にまだ達していない場合、切削610は継続され、方法600が繰り返される。
【0076】
さらなる例として、
図7は、実施形態の1つ又は複数の部品がコンピュータ700内で使用される、コンピュータ700の例を示している。上記で論じられた様々な動作は、コンピュータ700の能力を利用する。例えば、対象者の呼吸筋の能力を示すために、本明細書で論じられている任意の要素、モジュール、アプリケーション、及び/又は構成要素に組み込まれている。この点に関連して、システムの機能ブロックは、単一のコンピュータ上で実行できるか、又は複数のコンピュータ及び場所(例えば、インターネットを介して接続されている)にわたって分散されていることを理解されたい。
【0077】
コンピュータ700には、PC、ワークステーション、ラップトップ、PDA、パームデバイス、サーバ、記憶装置などが含まれるが、これらに限定されるものではない。ハードウェアアーキテクチャの観点から、コンピュータ700は、概して、ローカルインタフェース(図示せず)を介して通信可能に結合された、1つ又は複数のプロセッサ710、メモリ720、及び1つ又は複数のI/Oデバイス770を備える。ローカルインタフェースは、例えば、これらに限定されるものではないが、当技術分野で知られている、1つ若しくは複数のバス又は他の有線若しくは無線接続であり得る。ローカルインタフェースは、通信を可能にするための、コントローラ、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、リピータ、及び受信機などの追加要素を備える。ローカルインタフェースは、さらに、前述の構成要素間の適切な通信を可能にする、アドレス、制御、及び/又はデータ接続を有する。
【0078】
プロセッサ710は、メモリ720に記憶され得るソフトウェアを実行する、ハードウェアデバイスである。プロセッサ710は、事実上任意の特注若しくは市販のプロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、又はコンピュータ700と連係する複数のプロセッサの中の、補助プロセッサであり得る。またプロセッサ710は、半導体ベースのマイクロプロセッサ(マイクロチップの形態の)又はマイクロプロセッサであってもよい。
【0079】
メモリ720は、揮発性メモリ素子(例えば、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM))、及び不揮発性メモリ素子(例えば、ROM、消去可能なプログラマブル読取り専用メモリ(EPROM)、電子的に消去可能なプログラマブル読取り専用メモリ(EEPROM(登録商標))、プログラマブル読取り専用メモリ(PROM)、テープ、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD-ROM)、ディスク、ディスケット、カートリッジ、カセットなど)のうちの、任意の1つ又は組合せを含むことができる。メモリ720はさらに、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、及び/又は他のタイプの記憶媒体を組み込んでいてもよい。メモリ720は、様々な構成要素が互いに離れた位置にあるが、プロセッサ710によってアクセスできる、分散アーキテクチャを有することができることに留意されたい。
【0080】
メモリ720内のソフトウェアは、1つ又は複数の別個のプログラムを含み、プログラムのそれぞれは、論理機能を実施するための実行可能な命令の順序づけられたリストを有する。メモリ720内のソフトウェアには、例示的な実施形態による、好適なオペレーティングシステム(O/S)750、コンパイラ740、ソースコード730、及び1つ又は複数のアプリケーション760が含まれる。アプリケーション760は、図示されているように、例示的な実施形態の特徴及び動作を実施するための、多数の機能的構成要素を含む。コンピュータ700のアプリケーション760は、例示的な実施形態による、様々なアプリケーション、計算ユニット、論理機構、機能ユニット、プロセス、演算、仮想エンティティ、及び/又はモジュールを表すが、アプリケーション760は、限定するものを意図するものではない。
【0081】
オペレーティングシステム750は、他のコンピュータプログラムの実行を制御し、スケジューリング、入出力制御、ファイル及びデータ管理、メモリ管理、並びに通信制御及び関連サービスを提供する。発明者らは、例示的な実施形態を実施するアプリケーション760が、すべての市販のオペレーティングシステムに適用可能であると考えている。
【0082】
アプリケーション760は、ソースプログラム、実行可能プログラム(オブジェクトコード)、スクリプト、又は実行されるべき命令セットを含む、他の任意のエンティティである。プログラムは、ソースプログラムの場合、通常、メモリ720内に含まれているか含まれていないかに関わらず、O/S750と共に適切に動作するように、コンパイラ(コンパイラ740など)、アセンブラ、インタプリタなどによって変換される。アプリケーション760は、さらに、データ及びメソッドのクラスを有するオブジェクト指向プログラミング言語、又はルーチン、サブルーチン、及び/若しくは関数を有する手続き型プログラミング言語、例えば、これらに限定されるものではないが、C、C++、C#、Pascal、BASIC、API呼び出し、HTML、XHTML、XML、ASPスクリプト、JavaScript、FORTRAN、COBOL、Perl、Java、ADA、.NETなどで書かれ得る。
【0083】
I/Oデバイス770は、例えば、これらに限定されるものではないが、マウス、キーボード、スキャナ、マイク、カメラなどの入力デバイスを含む。I/Oデバイス770は、さらに、例えば、これらに限定されるものではないが、プリンタ、ディスプレイなどの出力デバイスも含む。I/Oデバイス770は、最後に、入力と出力との両方を伝達するデバイス、例えば、これらに限定されるものではないが、NIC又は変調器/復調器(遠隔デバイス、他のファイル、デバイス、システム、又はネットワークにアクセスするため)、無線周波数(RF)又は他のトランシーバ、電話インタフェース、ブリッジ、ルータなどをさらに含む。I/Oデバイス770は、インターネット又はイントラネットなどの、様々なネットワークを介して通信する構成要素も含む。
【0084】
コンピュータ700が、PC、ワークステーション、インテリジェントデバイスなどである場合、メモリ720内のソフトウェアは、基本入出力システム(BIOS)をさらに含む(簡単にするために省かれている)。BIOSは、起動時にハードウェアを初期化及びテストし、O/S750を始動し、ハードウェアデバイス間のデータ転送を補助する、基本的なソフトウェアルーチンのセットである。BIOSは、コンピュータ700が起動されるとBIOSを実行できるように、ROM、PROM、EPROM、EEPROM(登録商標)などの、何らかのタイプの読取り専用メモリに記憶されている。
【0085】
プロセッサ710は、コンピュータ700の動作時に、メモリ720内に記憶されたソフトウェアを実行し、メモリ320との間でデータ通信し、ソフトウェアに従ってコンピュータ700の動作を全般的に制御するよう構成される。アプリケーション760及びO/S750は、全体又は一部がプロセッサ710によって読み取られ、大概はプロセッサ710内にバッファされ、次いで実行される。
【0086】
アプリケーション360は、アプリケーション760がソフトウェアの形で実装される場合、任意のコンピュータ関連システム若しくは方法が使用するために、又はコンピュータ関連システム若しくは方法と共同で使用するために、事実上任意のコンピュータ可読媒体に記憶できることに留意されたい。コンピュータ可読媒体は、この文書の文脈において、コンピュータ関連システム若しくは方法が使用する、又はコンピュータ関連システム若しくは方法と共同で使用する、コンピュータプログラムを格納又は記憶できる、電子、磁気、光、又は他の物理的なデバイス又は手段である。
【0087】
アプリケーション760は、コンピュータベースのシステム、プロセッサ内蔵システム、又は命令実行システム、装置、若しくはデバイスから命令をフェッチし、命令を実行できる他のシステムなどの、命令実行システム、装置、若しくはデバイスが使用するために、又は命令実行システム、装置、若しくはデバイスと共同で使用するために、任意のコンピュータ可読媒体で具現化され得る。「コンピュータ可読媒体」とは、この文書の文脈において、命令実行システム、装置、若しくはデバイスが使用するための、又は命令実行システム、装置、若しくはデバイスと共同で使用するためのプログラムを記憶、伝送、伝搬、又は転送できる、任意の手段であり得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、これらに限定されるものではないが、電子、磁気、光、電磁気、赤外線、又は半導体のシステム、装置、デバイス、又は伝搬媒体であり得る。
【0088】
本発明は、システム、方法、及び/又はコンピュータプログラム製品である。コンピュータプログラム製品には、プロセッサに本発明の態様を実行させるための、コンピュータ可読プログラム命令を有する、コンピュータ可読記憶媒体(又は複数の媒体)が含まれる。
【0089】
コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行デバイスが使用する命令を保持及び記憶できる、有形のデバイスであり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、これらに限定されるものではないが、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光記憶デバイス、電磁記憶デバイス、半導体記憶デバイス、又は前述の任意の好適な組合せである。
【0090】
本発明の態様が、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品の、流れ図及び/又はブロック図を参照して、本明細書で説明されている。流れ図及び/又はブロック図の各ブロック、並びに流れ図及び/又はブロック図のブロックの組合せが、コンピュータ可読プログラム命令によって実施され得ることが理解されよう。
【0091】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に列挙された複数の項目の機能を果たす。
【0092】
開示されている方法は、コンピュータで実施される方法であることが理解されよう。したがって、処理システム上でプログラムが実行されると、説明されているどんな方法をも実施する、コード手段を含むコンピュータプログラムの概念も提案されている。
【0093】
当業者は、本明細書に説明されているいずれの方法をも実行するプロセッサを、容易に開発できるであろう。したがって、流れ図の各ステップは、プロセッサによって実行される様々な作用を表し、処理プロセッサのそれぞれのモジュールによって実行される。
【0094】
システムは、上記で論じられたように、プロセッサを利用してデータ処理を実行する。プロセッサは、必要となる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアによって、多くの手法で実現することができる。プロセッサは、典型的には、必要な機能を実行するために、ソフトウェア(例えばマイクロコード)を使用してプログラムされる、1つ又は複数のマイクロプロセッサを使用する。プロセッサは、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するための、1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連回路との組合せで実現される。
【0095】
本開示の様々な実施形態で使用される回路の例には、これらに限定されるものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が含まれる。
【0096】
様々な実施態様では、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)などの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなど、1つ又は複数の記憶媒体と連係する。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると必要な機能を実行する、1つ又は複数のプログラムで符号化される。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されていてもよく、又は記憶媒体に記憶されている1つ又は複数のプログラムをプロセッサにロードできるように、可搬型であってもよい。
【0097】
図8は、提案されている実施形態による、プローブ802から歯810の髄814までの距離を決定する、歯科用装置800を示している。この装置は、プローブ802及びプロセッサ804を備える。プローブ802は、歯810の歯系組織に光を照射し、歯系組織からの散乱光を検出するよう構成される。歯810は、象牙質812及び髄814を有する。歯の歯系組織は、光で照射され、光は、少なくとも2色の相異なる色を含み、300~800nmの波長範囲を有する。
【0098】
プロセッサ804は、検出された散乱光のスペクトルを取得し、スペクトルからスペクトル分析結果を取得し、スペクトル分析結果に基づいて、プローブ802から歯810の髄814までの距離を決定するよう構成される。スペクトルは、少なくとも2つの光の波長の強度に等しいことに留意されたい。プロセッサ804は、300~800nmの波長範囲で検出された、散乱光のスペクトルを取得するよう構成される。スペクトルから、スペクトル分析結果を取得するために、スペクトルの強度が、300~800nmの範囲で決定され、強度の決定は、スペクトルの一部の強度を決定することも含む。さらに、スペクトルから、スペクトル分析結果を取得するために、光吸収率のピークが検出され、光吸収率のピークは、血液の吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲を有する。血液の吸収スペクトルの波長範囲は、520~540nm及び550~570nmの範囲内にある。
【0099】
図9は、プローブ910から歯940の髄944までの距離を決定する、提案されている歯科用装置900を示している。この装置は、歯科用プローブ910及びプロセッサ920を備える。歯科用プローブ910は、光ファイバ930を備え、使用中、歯肉縁950に引っ付いた歯940の歯系組織に近接して配置される。歯の歯系組織は、象牙質942及び髄944を有する。
【0100】
歯科用プローブ910は、歯940の歯系組織に光を照射し、歯系組織からの散乱光を検出するよう構成され、光は、少なくとも2色の相異なる色を含んでいなければならない。歯科用プローブ910は、したがって、光線を放射する光源912と、歯系組織からの散乱光線を検出する分光計914とを備える。光は、300~800nmの波長範囲を有する。提案されている実施形態では、光源912は、発光ダイオード(LED)を備え、分光計914は、光検出器を備える。歯科用プローブ910はさらに、光源912から放射された光線932を歯940の歯系組織に誘導する、光ファイバ930を備える。光ファイバ930はまた、歯940の歯系組織から反射された散乱光線934を、分光計914へ誘導する。
【0101】
プロセッサ920は、検出された散乱光のスペクトルを取得し、スペクトルからスペクトル分析結果を取得し、スペクトル分析結果に基づいて、プローブ910から歯940の髄944までの距離を決定するよう構成される。スペクトルは、少なくとも2つの光の波長の強度に等しく、プロセッサは、300~800nmの波長範囲で検出された、散乱光のスペクトルを取得するよう構成されることに留意されたい。スペクトルから、スペクトル分析結果を取得するために、スペクトルの強度が、300~800nmの範囲で決定され、強度の決定は、スペクトルの一部の強度を決定することも含む。さらに、スペクトルから、スペクトル分析結果を取得するために、光吸収率のピークが検出され、光吸収率のピークは、血液の吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲を有する。血液の吸収スペクトルの波長範囲は、520~550nm及び570~590nmの範囲にある。次いで、散乱光のスペクトルの決定した強度に対して、積分演算が実行される。
【0102】
プロセッサ920は、スペクトルの積分振幅及び光吸収率のピーク検出に関する情報を含む、スペクトル分析結果に基づいて、プローブ910から歯940の髄944までの距離を決定するよう構成される。プロセッサは、スペクトルの積分振幅が閾値を超え、光吸収率のピークが検出されない場合、プローブ910から歯940の髄944までの距離が、1~2mmの範囲にあると決定するよう構成される。プロセッサは、スペクトルの積分振幅が閾値より小さく、光吸収率のピークが検出された場合、プローブ910から歯940の髄944までの距離が、0.2~1mmの範囲にあると決定するよう構成される。プロセッサは、スペクトルの積分振幅が閾値より小さく、光吸収率のピークが検出されない場合、プローブ910から歯940の髄944までの距離が、0.2mm未満であると決定するよう構成される。プロセッサ920は、象牙質942を通過して髄944に至るまでの距離を、リアルタイムで測定するよう構成される。プロセッサは、したがって、髄944までのある一定の距離に達すると、医師への警告機構をもたらす。
【0103】
図10は、象牙質1032及び髄1034を有する、歯系組織1030との間で光線を誘導する、2本の光ファイバ1010、1020を備えるプローブの実施形態1000を示している。プローブの実施形態1000は、光源1002及び分光計1004も備える。光ファイバ1010は、光源1002から放射された光線1012を、歯系組織1030に誘導する。光ファイバ1020は、歯系組織1030から反射された散乱光線1022を、分光計1004へ誘導する。
【0104】
図11は、光ファイバ1110及びビームスプリッタ1116を備える、プローブの実施形態1100を示し、光ファイバは、象牙質1122及び髄1124を有する、歯系組織1120との間で光線を誘導する。プローブの実施形態1100は、光源1102及び分光計1104も備える。光ファイバ1110は、光源1102から放射された光線1112を、歯系組織1120に誘導する。光ファイバ1110はまた、ビームスプリッタ1116と組み合わせて使用される場合、歯系組織1120から反射された散乱光線1114を、分光計1104へ誘導する。
【0105】
図12は、歯科用装置1210を含む、ドリルの実施形態1200を示している。ドリルの実施形態は、ドリルヘッド1204に取り付けられたドリルビット1202を備える。ドリルビット1202の湾曲した遠位端は、使用中、象牙質1222及び髄1224を有する歯1220の歯系組織に、近接して配置される。歯科用装置1210は、歯科用プローブ1212及びプロセッサ1214を備える。ドリルビット1202は、光ファイバを収容するのに十分な太さであり、したがって、歯科用プローブ1212の遠位端は、ドリルビット1202内に位置している。したがって、歯科用プローブ1212も、歯1220の歯系組織に近接しており、歯系組織に光を照射し、歯系組織からの散乱光を検出するよう構成される。光は、300~800nmの波長範囲を有し、少なくとも2色の相異なる色を含む。
【0106】
プロセッサ1214は、検出された散乱光のスペクトルを取得し、スペクトルからスペクトル分析結果を取得し、スペクトル分析結果に基づいて、プローブ1212から歯1220の髄1224までの距離を決定するよう構成される。スペクトルは、少なくとも2つの光の波長の強度に等しいことに留意されたい。プロセッサ1214は、300~800nmの波長範囲で検出された、散乱光のスペクトルを取得するよう構成される。スペクトルから、スペクトル分析結果を取得するために、スペクトルの強度が、300~800nmの範囲で決定され、強度の決定は、スペクトルの一部の強度を決定することも含む。さらに、スペクトルから、スペクトル分析結果を取得するために、光吸収率のピークが検出され、光吸収率のピークは、血液の吸収スペクトルの波長範囲に特有の波長範囲を有する。血液の吸収スペクトルの波長範囲は、520~550nm及び570~590nmの範囲にある。
【0107】
開示された実施形態に対する変形形態は、当分野の技術者が、特許請求の範囲に記載された発明を実践する際に、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、理解し、生み出すことができる。特許請求の範囲で、「有する、含む」という単語は、他の要素も、他のステップも排除するものではなく、また単数形は、複数を除外するものではない。
【0108】
特定の手段が、互いに相異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが、利点をもたらすようには使用できないことを示すものではない。「~するよう適合される」という用語が、特許請求の範囲又は説明の中で使用されている場合、「~するよう適合される」という用語は、「~するよう構成される」という用語と同義であることが、意図されていることに留意されたい。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【国際調査報告】