(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】歯の硬質物質の厚さの推定
(51)【国際特許分類】
A61C 19/04 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536407
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021085837
(87)【国際公開番号】W WO2022129134
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】プレスラ クリスチャン ニコラエ
(72)【発明者】
【氏名】シャルヴァ インドリフ
(72)【発明者】
【氏名】ピカー マーティン
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052NN02
4C052NN15
(57)【要約】
歯の歯髄を覆う歯の硬質物質の厚さを推定するための装置である。装置は、第1の波長の光と第2の波長の光とを歯に放射するように構成された光源構成部と、歯から反射及び散乱された、第1及び第2の波長に対応する光の強度を測定するためのセンサ構成部とを備える。装置はまた、センサ構成部から、第1の波長に対応する第1の強度マップと、第2の波長に対応する第2の強度マップとを受け取ることと、歯から反射及び散乱された、第1の波長及び第2の波長に対応する光の量を評価するために、第1の強度マップ及び第2の強度マップを分析することと、分析に基づいて歯の歯髄を覆う硬質物質のための厚さのインジケーションを推定することとを行うように構成されたプロセッサを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯の歯髄を覆う前記歯の硬質物質の厚さを推定するための装置であって、前記装置が、
第1の波長の光と第2の波長の光とを前記歯に放射する、光源構成部と
前記歯から反射及び散乱された、前記第1の波長及び前記第2の波長に対応する光の強度を測定するためのセンサ構成部と、
前記センサ構成部から、前記第1の波長に対応する第1の強度マップを受け取ることと、
前記センサ構成部から、前記第2の波長に対応する第2の強度マップを受け取ることと、
前記歯から反射及び散乱された、前記第1の波長及び前記第2の波長に対応する光の量を評価するために、前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップを分析することと、
前記分析に基づいて前記歯の前記歯髄を覆う前記硬質物質のための厚さのインジケーションを推定することと
を行う、プロセッサと
を備える、装置。
【請求項2】
血液が、前記第2の波長の光よりも前記第1の波長の光に対して高い吸光度を持つ、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップの対応する強度値間の差及び/又は比を決定することにより、前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップを分析する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップの対応する強度値に基づいて前記第1の波長と前記第2の波長との間の波長に対する強度の積分を決定することにより、前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップをさらに分析する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の波長が、500nmと600nmとの間、好ましくは、530nmと550nmとの間、又は570nmと590nmとの間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の波長が、600nmと800nmとの間である、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
交差偏光器をさらに備え、前記交差偏光器が、前記光源構成部の正面に配置された第1の偏光素子と、前記センサ構成部の正面に配置された第2の偏光素子とを備え、前記第1の偏光素子が、前記第2の偏光素子に直交する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記光源構成部が、第3の波長の光をさらに放射し、
血液が、前記第2の波長の光よりも前記第3の波長の光に対して高い吸光度を持ち、
前記血液が、前記第1の波長の光よりも前記第3の波長の光に対して低い吸光度を持ち、
前記プロセッサが、前記センサ構成部から、前記第3の波長に対応する第3の強度マップをさらに受け取り、
前記プロセッサが、前記歯から反射及び散乱された、前記第3の波長に対応する光の量を評価するために、前記第3の強度マップをさらに分析する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記光源構成部が、1つ又は複数の光ガイドと、前記光ガイドの近位端に接続された1つ又は複数の発光素子とを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
ハウジングの遠位端にある照明窓と、ロータとを備える、当該ハウジングと、
前記光源構成部及び前記センサ構成部が前記照明窓に対向する、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置と
を備える、手持ち式歯科用プローブ。
【請求項11】
歯の歯髄を覆う前記歯の硬質物質の厚さを推定する方法であって、前記方法が、
センサ構成部から、第1の波長に対応する第1の強度マップを受け取るステップであって、前記第1の強度マップが、前記歯から反射及び散乱された前記第1の波長の光の強度のデータを含む、受け取るステップと、
前記センサ構成部から、第2の波長に対応する第2の強度マップを受け取るステップであって、前記第2の強度マップが、前記歯から反射及び散乱された前記第2の波長の光の強度のデータを含む、受け取るステップと、
前記歯から反射及び散乱された、前記第1の波長及び前記第2の波長に対応する光の量を評価するために、前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップを分析するステップと、
前記分析に基づいて前記歯の前記歯髄を覆う前記硬質物質のための厚さのインジケーションを推定するステップと
を有する、方法。
【請求項12】
血液が、前記第2の波長の光よりも前記第1の波長の光に対して高い吸光度を持つ、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップを分析するステップが、前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップの対応する強度値間の差及び/又は比を決定するステップを有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップを分析するステップが、前記第1の強度マップ及び前記第2の強度マップの対応する強度値に基づいて前記第1の波長と前記第2の波長との間の波長に対する強度の積分を決定するステップを有する、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
処理システムを備えたコンピューティング装置上で実行されると、前記処理システムに、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法のステップの全てを実行させるコンピュータプログラムコードを備えた、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔治療の分野に関し、より詳細には、歯の歯髄を覆う歯の硬質物質の厚さを推定するための概念に関する。
【背景技術】
【0002】
歯髄は、象牙質、エナメル質、及びセメント質を含む硬質チャンバの中に存在し、強力な機械的支持と、微生物が豊富な口腔環境からの保護とを実現する。しかしながら、この硬質シェルは、虫歯、クラック、又は他の開口のためにその完全性を失うと、炎症を起こし、最終的には壊死する。治療しないと、根尖病巣が起こる。
【0003】
歯髄は、以下の本質的機能、すなわち、微生物の侵入に対する歯の抵抗性の向上、熱的及び機械的刺激に対する歯髄の感受性による警告メカニズムの提供、咀嚼筋に対する力覚フィードバックループの提供などの機能を満たす。
【0004】
歯髄の完全性は、う蝕、歯科用ドリルによるう蝕の除去、象牙質の厚さが1mm未満のときの種々の歯科処置時の熱刺激(例えば、製剤、光硬化など)、又は歯の損傷(例えば、脱臼、歯冠破折など)によって毀損され得る。約2mm~0.2mmの範囲における歯髄までの距離を測定する能力は、上で列挙した有害事象のいずれかを回避するため、又は正しい治療法を選定するために必須である。
【0005】
標準的な虫歯治療は、10分ほどしかかからない。しかしながら、この単純な治療は、歯髄が意図せず露出される場合には、時間のかかる高額な歯根管治療に変わり得る。最も単純な歯根管治療でも少なくとも1時間半を要する。歯髄の意図しない露出は、深いう蝕の切削の29%で発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決すべき課題は、歯髄の存在及び歯髄までの距離を、邪魔にならないやり方でどのように検出するかということである。好ましくは、解決策は、切削の最先端のワークフローに影響を及ぼさない。これは、歯科医が、自身の経験、歯の解剖学的構造の知識、外観、及び場合によっては、X線撮像のみに依拠する必要があるため、一般歯科診療で行うことは困難である。しかしながら、X線撮像は、限定的な視野しか得られず、治療時間を増大させ、有害な電離放射線を利用する。
【0007】
意図しない歯髄露出の事故率は、段階的な切削法を利用することにより、18%まで低減できるが、一時的な詰め物の除去又は最終切削時の歯髄露出のリスクの増加、患者が受けるさらなる不快感、及びコストの上昇という代償を伴う。さらに、複数回の診療予約を伴う治療を終えるために患者が歯科医の元に戻らない可能性は、治療の失敗をもたらし得る。したがって、意図しない歯髄露出を回避する手法が必要なことが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0009】
本発明の一態様による例によれば、歯の歯髄を覆う歯の硬質物質の厚さを推定するための装置であって、この装置が、
第1の波長の光と第2の波長の光とを歯に放射するように構成された光源構成部と、
歯から反射及び散乱された、第1及び第2の波長に対応する光の強度を測定するためのセンサ構成部と、
センサ構成部から、第1の波長に対応する第1の強度マップを受け取ることと、
センサ構成部から、第2の波長に対応する第2の強度マップを受け取ることと、
歯から反射及び散乱された、第1の波長及び第2の波長に対応する光の量を評価するために、第1の強度マップ及び第2の強度マップを分析することと、
分析に基づいて歯の歯髄を覆う硬質物質のための厚さのインジケーションを推定することと
を行うように構成されたプロセッサと
を備える、装置が提供される。
【0010】
発明者らは、厚さによっては、歯の硬質物質(すなわち、エナメル質及び象牙質)が、歯髄までのいくらかの光の通過を許容することが分かった。また、歯髄内の血液は、次いで、光を吸収又は反射できることも分かった。場合によっては、吸光度及び/又は反射率は、光の波長に依存する。歯髄内の血液によって反射される光の量は、歯の表面から測定でき、反射された光が進むべき硬質物質の厚さに依存する。
【0011】
したがって、2つの波長の光を歯に放射し、歯によって反射及び散乱された光の強度を測定することが提案される。例えば、2つの波長の光で歯を照明するために、2つのLEDが使用され得る。代替として、1つの特定の波長のみを許容する2つの光フィルタを用いて白色光が使用される。
【0012】
両波長に対する強度マップは、異なるタイミングで、又は同時に測定される。例えば、センサ構成部は、2つの波長の強度マップを同時に取得するために、フィルタを持つ2つのカメラを備える。代替として、最初に、第1の波長に対応する第1のLEDが作動されて、第1の強度マップが取得され、続いて、第2の波長に対応する第2のLEDが作動されて、第2の強度マップが取得される。
【0013】
強度マップは、歯のエリアの対応する波長の光の強度の2D測定に対応している。例えば、センサ構成部は、2つの波長において歯から反射及び散乱された光の強度を測定し、歯のエリアに対する第1の波長及び第2の波長のそれぞれにおける光の強度を反映する2つの強度マップを構築するように構成される。
【0014】
強度マップの強度値は、対応する波長に応じて、また、硬質物質の厚さに基づいて異なる。例えば、硬質物質の厚さが薄い(例えば、1mm未満)場合では、放射光は、歯髄と相互作用する可能性が高いため、強度マップのその位置における反射及び散乱光は、硬質物質がより厚い(例えば、>2mm)、歯の他のエリアと異なる。波長と異なる波長における強度値との間の関係は、実験的に見出すことができる。したがって、第1の強度マップ及び第2の強度マップを分析することにより、硬質物質のための厚さのインジケーションを見出すことができる。
【0015】
第1及び第2の強度値を分析する様々な方法について、以下でさらに説明する。
【0016】
強度マップは、歯の異なるエリアに対応する複数の強度値を含む。各強度値は、波長に対応する光の強度の測定値である。
【0017】
厚さのインジケーションは、例えば、厚さが、特定の閾値を超える又はその閾値未満(例えば、>2mm、<0.2mm、又は2mmと0.2mmとの間)である場合の推定される厚さの値又はインジケーションを提供する。可能性のある厚さのインジケーションは、使用される第1の波長及び第2の波長に依存する。代替として、厚さのインジケーションは、歯の異なるエリアに対する厚さの推定値を与える「厚さマップ」を提供し得る。
【0018】
光源構成部は、少なくとも2つの波長の光を放射可能な単一の発光素子を備える。代替として、光源構成部は、各々が、それぞれ第1及び第2の波長の光を放射するための2つの発光素子を備える。光源構成部は、複数の波長の光(例えば、白色光)を放射し、センサ構成部は、複数の波長のうちの少なくとも2つの光を測定するように構成される。
【0019】
センサ構成部は、1つ又は複数のカメラを備え、受け取られる強度マップは、カメラによって取得される画像に対応する。例えば、可視スペクトルにおける任意の波長で反射される光を捕捉できる単一のカメラが使用される。代替として、センサ構成部は、特定の波長(又は特定の波長の範囲)の光を測定できる1つ又は複数のセンサ素子を備える。
【0020】
装置は、歯内の血液又は歯髄を通って横切らない、歯を通る方向を特定することと、特定された方向において第1の波長の光を放射する(したがって、第1の波長に対応する第1の較正された強度値を取得する)ことと、特定された方向において第2の波長の光を放射する(したがって、第2の波長に対応する第2の較正された強度値を取得する)こととを行うことによって、較正される。
【0021】
血液は、第2の波長の光よりも第1の波長の光に対して高い吸光度を持つ。
【0022】
血液によって一方が他方よりも多く吸収される2つの波長の光を放射することで、硬質物質の厚さをさらに推定し、したがって、歯髄の存在及び歯髄までの距離を推定することが可能である。
【0023】
第1の波長(すなわち、血液に吸収される)に対応する第1の強度マップの強度値は、硬質物質が比較的薄い(典型的には、<<1mm)歯の任意のエリアを比較的低い強度を持つエリアとして示す。しかしながら、他の理由のために第1の波長に対して低い強度を持つ硬質物質の他の「低光エリア」がある場合もある。
【0024】
第2の波長(すなわち、血液によって反射される)に対応する第2の強度マップの強度値は、硬質物質が比較的薄いエリアにおけるような低強度を持たないが、他の「低光エリア」における低強度を持つ可能性が高い。
【0025】
したがって、第1の強度値と第2の強度値との間の比較/分析は、硬質物質が薄い場所を示し、厚さのインジケーションを提供し得る。
【0026】
プロセッサは、第1の強度マップと第2の強度マップの対応する強度値間の差及び/又は比を決定することによって第1の強度マップ及び第2の強度マップを分析するように構成される。
【0027】
2つの強度マップの対応する強度値間の差は、硬質物質の厚さを決定するために使用され得る。硬質物質の厚さと(第1の強度値と第2の強度値との間の)差分強度との間の関係は、例えば、実験的に見出すことができる。この関係は、第1の波長及び第2の波長の選定に依存する。
【0028】
さらに、スペクトルプロット(すなわち、波長に対する強度)にプロットしたとき、第1及び第2の波長に対応する強度値間の勾配は、硬質物質の厚さ(また、したがって、歯髄に対する近接度)のインジケーションを推定するための分析でさらに利用することができる。
【0029】
プロセッサは、第1の強度マップ及び第2の強度マップの対応する強度値に基づいて第1の波長と第2の波長との間の波長に対する強度の積分を決定することによって第1の強度マップ及び第2の強度マップを分析するようにさらに構成される。
【0030】
硬質物質の厚さと波長(2つの波長値間)に対する強度の積分との間の関係を見出した。したがって、第1及び第2の強度マップの強度値は、例えば、2mm(使用される波長に依存する)よりも薄いときの硬質物質の厚さの推定をさらに支援することができる。
【0031】
第1の波長は、500nmと600nmとの間、好ましくは、530nmと550nmとの間、又は570nmと590nmとの間である。
【0032】
硬質物質が、約0.5~2mmを超える厚さを持つとき、歯髄における血液の吸光度は、緑色光の一部の波長に対して顕著となる。これらのピークは、血中のヘモグロビン(酸化、還元など)によって引き起こされる。これは、例えば、スペクトルマップにおける2つのピーク(約540nm及び580nm)によって見て取ることができる。硬質物質が厚くなるほど、ピークの顕著性が低下する(すなわち、硬質物質の後ろ側に血液がないかのように)。したがって、2つの波長(一方は緑色であり、したがって血液によって他方よりも多く吸収される)の反射光の強度値間の差は、厚さが2.5mm未満、約0.5mm超の硬質物質のための厚さのインジケーションを与えることができる。約0.5mmを下回る厚さでは、血液が光の大半を吸収する可能性が高いため、ピークが存在しない。
【0033】
第2の波長は、600nmと800nmとの間となる。
【0034】
装置は、交差偏光器をさらに備え、この交差偏光器は、光源構成部の正面に配置された第1の偏光素子と、センサ構成部の正面に配置された第2の偏光素子とを備え、第1の偏光素子は、第2の偏光素子に直交する。
【0035】
交差偏光器は、光源からの光と光センサにおいて測定された反射光との間の直交偏光を使用して鏡面反射を低減し、それによって、獲得された強度信号におけるコントラストを増大させる。
【0036】
光源構成部は、第3の波長の光を放射するようにさらに構成され、血液は、第2の波長の光よりも第3の波長の光に対して高い吸光度を持ち、血液は、第1の波長の光よりも第3の波長の光に対して低い吸光度を持つ。プロセッサは、センサ構成部から、第3の波長に対応する第3の強度マップを受け取り、歯から反射及び散乱された、第3の波長に対応する光の量を評価するようにさらに構成される。
【0037】
例えば、第1の波長は、血液がその波長に対して高い吸光度(例えば、540nm)を持つように選定され、第2の波長は、血液がその波長に対して低い吸光度(例えば、650nm)を持つように選定され、第3の波長は、血液がその波長に対して高いが、第1の波長ほど高くない吸光度(560nm)を持つように選定される。
【0038】
血液の主成分(すなわち、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンなど)についての光の波長と吸光度との間の関係が分かっているため、第1の波長と第3の波長との間(又は第2の波長と第3の波長との間)の関係を、硬質物質の厚さを推定するためにさらに使用することができる。
【0039】
光源構成部は、1つ又は複数の光ガイドと、光ガイドの近位端に接続された1つ又は複数の発光素子とを備える。
【0040】
光ガイド(例えば、光ファイバケーブル)を使用することにより、光源構成部の光を放射するセクションを、より小さくすることができる。例えば、発光素子(例えば、発光ダイオードLED)を、装置の、ユーザに対して近位となるセクションに配置でき、光ガイドの近位端を、発光素子に接続することができる。次いで、遠位端(発光端)を、歯の近くに配置される、装置の遠位端に配置することができる。
【0041】
本発明はまた、
ハウジングの遠位端にある照明窓と、ロータとを備える、ハウジングと、
歯の歯髄を覆う歯の硬質物質の厚さを推定するための装置であって、光源構成部とセンサ構成部とが照明窓に対向している、装置と
を備える手持ち式歯科用プローブを提供する。
【0042】
手持ち式装置のハウジングは、流体がハウジングの遠位端まで流れることを可能にする流体経路と、ハウジングの遠位端にある1つ又は複数の流体出口とをさらに備える。手持ち式歯科用装置は、ロータの遠位端に接続されたドリルをさらに備える。
【0043】
本発明はまた、歯の歯髄を覆う歯の硬質物質の厚さを推定する方法であって、この方法が、
センサ構成部から、第1の波長に対応する第1の強度マップを受け取るステップであって、第1の強度マップが歯から反射及び散乱された第1の波長の光の強度のデータを含む、受け取るステップと、
センサ構成部から、第2の波長に対応する第2の強度マップを受け取るステップであって、第2の強度マップが歯から反射及び散乱された第2の波長の光の強度のデータを含む、受け取るステップと、
歯から反射及び散乱された、第1の波長及び第2の波長に対応する光の量を評価するために、第1の強度マップ及び第2の強度マップを分析するステップと、
分析に基づいて歯の歯髄を覆う硬質物質のための厚さのインジケーションを推定するステップと
を有する、方法を提供する。
【0044】
血液は、第2の波長の光よりも第1の波長の光に対して高い吸光度を持つ。
【0045】
第1の強度マップ及び第2の強度マップを分析するステップは、第1の強度マップ及び第2の強度マップの対応する強度値間の差及び/又は比を決定するステップを有する。
【0046】
第1の強度マップ及び第2の強度マップを分析するステップは、第1の強度マップ及び第2の強度マップの対応する強度値に基づいて第1の波長と第2の波長との間の波長に対する強度の積分を決定するステップを有する。
【0047】
本発明はまた、処理システムを備えるコンピューティング装置上で実行されると、処理システムに、歯の歯髄を覆う歯の硬質物質の厚さを推定する方法のステップの全てを実行させる、コンピュータプログラムコードを備える、コンピュータプログラム製品を提供する。
【0048】
本発明のこれら及び他の態様は、以下で説明する実施形態を参照して、明らかとなり、明確になるであろう。
【0049】
本発明をより良く理解し、本発明がどのように実行されるのかをより明確に示すために、ここで、例示のみのために添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図2】厚さ1mmの象牙質スライスの場合の測定された反射スペクトルを示す図である。
【
図3A】様々な厚さの象牙質の後ろ側にある、血液で満たされた歯髄の光学的フットプリントを取得するために使用される実験装置を示す図である。
【
図3B】
図3Aの実験装置を用いて取得された3つの厚さに対する測定された反射スペクトルを示す図である。
【
図4】2色照明が使用される、本発明による第1の実施形態を示す図である。
【
図5】歯の強度マップを分析する方法の説明図である。
【
図6】
図5の差分マップと、差分マップの線に沿った強度値とを示す図である。
【
図7】強度マップを取得するために3色照明が使用される、本発明による第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0052】
詳細な説明及び具体例は、装置、システム、方法の例示的な実施形態を示しているが、例示の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、付属の特許請求項、及び添付の図面からより良く理解されるであろう。図面は、概略的なものに過ぎず、縮尺通りに描かれてはいないことを理解されたい。また、同じ参照番号は、図面全体を通して、同一又は類似の部分を示すために使用されるということも理解されたい。
【0053】
本発明は、歯の歯髄を覆う歯の硬質物質の厚さを推定するための装置を提供する。装置は、第1の波長の光と第2の波長の光とを歯に放射するように構成された光源構成部と、歯から反射及び散乱された、第1及び第2の波長に対応する光の強度を測定するためのセンサ構成部とを備える。装置はまた、センサ構成部から、第1の波長に対応する第1の強度マップと、第2の波長に対応する第2の強度マップとを受け取ることと、歯から反射及び散乱された、第1及び第2の波長に対応する光の量を評価するために、第1の強度マップ及び第2の強度マップを分析することと、分析に基づいて歯の歯髄を覆う硬質物質のための厚さのインジケーションを推定することとを行うように構成されたプロセッサを備える。
【0054】
実験的発見
図1は、横軸が波長(nm)を表し、縦軸がミリモル単位の吸光度(L.mmol
-1.cm
-1)を表す、血液100の吸収スペクトルを示す。ヘモグロビン(Hb)、酸化ヘモグロビン(HbO2)、及び一酸化炭素ヘモグロビン(HbCO)は、500nm~600nm近傍の異なる波長におけるピークを持つ。したがって、血液の全体的な吸収スペクトルは、ヘモグロビンの特定の比に依存する。メトヘモグロビン(MetHb)は、他のタイプのヘモグロビンと同様のピークを持たないが、通常、小濃度(健康な対象者では1~2%)で見つかるため、スペクトルに有意な影響を及ぼさない。
【0055】
さらなる調査により、血液の吸収スペクトルが、ピークがしばしば、520~550nm及び570~590nmの範囲内に収まるように、1つがおおよそ540nm、もう1つがおおよそ580nmの2つの吸収ピークを表すことが示された。
図1において観測できるように、ピーク101は、約540nmの波長で生じ、ピーク102は、約580nmの波長前後で生じる。
【0056】
歯によって反射及び散乱された可視光の反射スペクトルについても調査が行われ、反射スペクトルは、
図2及び
図3に示されている。
【0057】
実験に関して提案された測定技法は、光ファイバを通して歯を照明するために広帯域光源が使用される光学分光法を使用する。反射光は、歯の中で散乱及び吸収された後、別の(又は同じ)ファイバによって収集及び案内される。取得されたスペクトル情報を臨床的に重要なパラメータに変換する種々の手法の1つに、知られた組織タイプの測定スペクトルの直接相関がある。これらの方法は、一般に、光-組織の複雑な相互作用の事前知識を必要としない。
【0058】
図2は、歯の歯髄を覆う厚さ1mmの象牙質スライスの場合の反射スペクトル200を示す。横軸は波長(nm)を表し、縦軸は、正規化された反射率(任意単位)を表す。
図2では、反射率におけるトラフが観測でき、トラフ201は、約540nmで生じ、第2のトラフ202は、約580nmで生じる。
図1に示す吸収ピーク101、102は、反射トラフ201、202と非常に類似した波長で生じる。反射率はまた、400nm~600nmの範囲で減少し、この減少は、
図1に示す450nm~600nmの範囲の吸光度の増大と一致している。このため、可視光は、歯髄の血液によって吸収されることが推測される。したがって、歯の歯髄内に含まれる血液の吸収スペクトルは、吸収ピークが反射トラフに対応するように、歯の象牙質によって反射/散乱された可視光の反射スペクトルに関連し得る。
【0059】
調査はまた、2mm未満の厚さの象牙質が、400nm~600nmの範囲における、吸光度の減少、したがって、反射率の増加を呈し得ること、及び変数が従属的であることを示した。
【0060】
図3Aは、様々な厚さの象牙質の後ろ側にある、血液で満たされた歯髄304の光学的フットプリントを取得するために使用される実験装置を示し、
図3Bは、3つの厚さ(0.3mm、0.7mm及び1.2mm)に対する対応する測定された反射スペクトル308a、308b及び308c(反射率については任意単位)を示す。
【0061】
歯302に3つの穴を、歯髄304への様々な距離まで切削した。歯302を、半分に切断し、歯髄304を血液で満たした。
図3Aは、実験装置の写真である。3つの穴のそれぞれに対する反射スペクトル308a、308b及び308cを取得するためにプローブ306を使用した。
【0062】
第1のスペクトル308a(1200μmの歯髄304までの対応する距離を伴う)は、それぞれ約540nm及び580nmにおける2つの窪み201及び202を示しており、これは、光が血液によって吸収されたという明確なインジケーションである。しかしながら、プローブ306が歯髄304に近づくにつれて、400nmから600nmまでの範囲において血液ピークが消失する(そして、反射率全体が減少する)。実際、第2のスペクトル308b(700μm)及び第3のスペクトル308c(300μm)によって分かるように、歯髄304までの距離に対してほとんどの波長で反射率が減少する。
【0063】
しかしながら、前述のスペクトル測定は、歯302に接するように配置する必要があるプローブ306を使用して実行した。実際には、歯302に対してこのように近接させると、可動部分を持つか、又は歯302の穴に適合するのに必要な寸法を持たない、ドリル又は任意の他の既存の歯科用プローブに組み込むのが困難となる。
【0064】
例えば、ドリルとの組合せで使用する場合、通常はドリルビットがある、歯科用プローブの遠位端に光源及びセンサ(例えば、光検出器)を配置する必要が出てくるが、歯302を切削するためにドリルビットは遠位端になければならない。したがって、光源及び光検出器を組み込んだドリルビットを作製することが必要となり、プローブがさらに複雑になる。
【0065】
方法論
装置が邪魔にならないようにするために、スペクトルを取得する代わりに、センサを使用して異なる波長に対する歯の強度マップを取得することを提案する。強度マップの取得は、反射及び散乱光の測定を可能にしつつ、センサを歯に接触させて配置することを必要としない。
【0066】
図4は、2色照明が使用される、本発明による第1の実施形態を示す。第1の実施形態は、歯302を照明するために、緑色光源402g(例えば、緑色LED)及び赤色光源402r(例えば、赤色LED)を使用する。歯302が照明された後で、歯302の画像(すなわち、強度マップ)406g及び406rを捕捉するために、カメラ404が使用される。画像におけるピクセル(又はピクセルのグループ)当たりの輝度値は、強度マップにおける強度値に対応している。
【0067】
第1の実施形態の第1の使用ケースでは、2つの光源402g及び402rが交互に使用されて、歯302を異なるタイミングで照明する。赤色照明が使用される場合、歯髄はほとんど視認不可能である。これは、血液が赤色光に対して低吸収レベルを持つため、赤色光が象牙質と同様に歯髄内でも散乱し、歯髄が象牙質とのコントラストの関係でほとんど視認不可能となるからである(画像406r)。緑色光が使用される場合、歯髄内の血液によって緑色光がより多く吸収されるので、象牙質とのコントラストがより大きくなるため、歯髄は、より視認しやすくなる(画像406g)。
【0068】
歯302が緑色光によって照明される場合、歯髄はより視認しやすくなる(すなわち、象牙質に対するコントラストが増加する)。これは、ほとんどの緑色波長に対して、歯髄の血液による光の吸収率が高いためである(
図1参照)。歯髄がある領域からカメラ404に戻ってくる光はより少なくなる。言い換えれば、歯髄を明らかにするスポットは、周囲環境よりも暗くなる。
【0069】
歯302の2色の画像406g及び406r(赤色)を使用することによって、歯髄のある場所にコントラストが現れる。これは、歯髄を覆う象牙質の比較的薄い層を持つ歯302のエリアを明らかにする。
【0070】
図5は、歯の強度マップ502を分析する方法の説明図を示す。この例では、緑色強度マップ502gと赤色強度マップ502rとが使用される。緑色強度マップ502g及び赤色強度マップ502rは共に、背景エリア504を含む(例えば、厚い象牙質及び/又はエナメル質)。しかしながら、前述したように、硬質物質が薄いエリアでは、緑色強度マップ502gは、硬質物質の薄い部分に対応する薄い領域506を示す。赤色光が、歯髄から反射されるため、赤色強度マップ502rは、薄い領域506を持たない。したがって、2つの強度マップ502a及び502rを、互いから差分して(すなわち、強度マップにおける対応する強度値を差分して)、背景エリア504に対応する強度の大半を削除し、象牙質が比較的薄くなっている薄い領域506をより明確に示す、差分マップ508を生成することができる。
【0071】
硬質物質の厚さは、歯の光学特性に基づいて推定することができる。第1の手法は、全ての歯の光学特性が同様であるという仮定に基づいてシステムを較正することである。例えば、較正は、歯髄(したがって、血液)がないことが分かっている、歯の方向を通るように光を放射することを含む。強度マップ502gにおいて歯髄が見られる薄い領域506のコントラストは、象牙質の厚さのインジケーション(したがって、歯髄までの距離のインジケーション)となる。
【0072】
図6は、
図5の差分マップ508と、差分マップ508の線602に沿った強度値とを示す。グラフ600の横軸は、空間次元を表し、一方、縦軸は、
図5に示す緑色強度マップ502gと赤色強度マップ502rとの間の強度の差を表す。グラフ600は、例示の目的のみで示されている。
【0073】
図5に示す2つの強度マップ間の差から(すなわち、差分マップ508に基づいて)硬質物質の厚さを推定することが可能である。緑色強度マップ502gは、Ig(x,y)と表され、赤色強度マップ502rは、Ir(x,y)と表される。したがって、点(x1,y1)の場合、硬質物質の厚さTは、T~(Ig(x1,y1)-Ir(x1,y1))/Ig(x1,y1)と表される。Ig(x1,y1)-Ir(x1,y1)という式は、差分マップ508に対応している。数値的な厚さTを見つけるために、プローブは、切削前に較正される。
【0074】
本実施形態は、緑色光を第1の波長として、赤色光を第2の波長として使用する。これは、これらの波長が、血液に対して異なる吸光度の値を持つことが知られており、その上、緑色及び赤色LEDは標準的であり、安価であるためである。しかしながら、血液に対して異なる吸光度の値を持つどのような2つの波長も、上で説明したのと同じやり方で使用できる強度マップを生成することが、当業者に理解されるであろう。
【0075】
図7は、強度マップを取得するために3色照明が使用される、本発明による第2の実施形態を示す。本実施形態では、歯を照明するために、2つの緑色波長及び単一の赤色波長が使用される。例えば、第1の緑色波長(例えば、540nm又は580nm)、第2の緑色波長(例えば、560nm)及び赤色波長(例えば、650nm)の光によって歯が照明され、それぞれ、対応する強度マップ502g1、502g2及び502rが収集される。
【0076】
強度マップ502g1及び502g2における背景エリア504は、極めて類似している。しかしながら、薄い領域506と背景エリア504との間のコントラストは、両強度マップ502g1及び502g2に対して異なる。これは、線702及び704に沿った強度値(それぞれ強度マップ502g1及び502g2に対応する)が示されるグラフ700において見て取ることができる。同様に、グラフ700では、線706に沿った、赤色強度マップ502rに対する強度値が示されている。この例では、簡略化のために、線702、704及び706からの強度値は、強度マップの最中心部のセクションについてのみ示されている。
【0077】
3色照明では、2つの緑色強度マップの比が、知られた、血中の光の吸収係数によって決定されるため、歯髄の深さを推定するより正確な方法を提供することができる。また、血液ピーク201及び/又は202(
図2及び
図3Bに示す)は、血液ピークのピーク及びトラフに(又はその近くに)あることが知られている2つの緑色波長を選定し、スペクトルグラフにおける2つの緑色波長の強度値間の傾きを決定することによって特定され得る。
【0078】
2つの緑色光(血液ピークのピーク及びトラフにある)と、赤色光とを用いた3色照明では、複数の厚さのインジケーションが観測され得る。例えば、波長540nm(g1)、560nm(g2)及び650nm(r)の光を使用した場合を以下に示す。
【0079】
象牙質の厚さ>>2mmの場合、血液ピークは観測されず、g2の強度はg1の強度より高くなり、rの強度は比較的高くなる(
図3B参照)。
【0080】
象牙質の厚さが約1~2mmの間の場合、血液ピークは観測可能となり、g2の強度は、g1よりも高くなり、rの強度は、象牙質の厚さが>>2mmのときの値よりも低い値を持つ。
【0081】
象牙質の厚さ<<1mmの場合、血液ピークは観測されず、g2の強度は、g1とおおよそ等しいか、又はそれより低くなり、rの強度は、象牙質の厚さが1~2mmの間のときよりも低くなる。
【0082】
当然ながら、3つの波長のいずれかに対する特定の強度の値、前記強度間の比、強度値間の傾き(スペクトル分析における)、及び/又はg1からrへの積分(スペクトル分析における)を観測することによって厚さのより詳細な(また可能性としては数的な)インジケーションが取得され得ることが、当業者に理解されるであろう。場合によっては、厚さの数的インジケーションを推定するために、例えば、切削前に強度値の較正が必要となる。
【0083】
しかしながら、場合によっては、例えば、歯科医は、厚さが<<1mmの範囲になると、切削を停止するように告げられることが可能であるため、象牙質の厚さが前述の範囲内にあるかどうかを知るだけでよく、正確な厚さの値を知る必要はない。
【0084】
血液ピークの提案された検出は、血液ピークによって画定される三角形の面積が算出され得る、多重緑色光照明(すなわち、複数の緑色波長を用いた照明)からさらなる利益を得ることができる。
【0085】
歯科用プローブ装置
上記の実験的発見及び方法論では、特許請求の範囲による本発明の背後にある発見及び理論を説明するために、一般論を説明した。しかしながら、実際には、本発明が組み込まれた装置が対象者の口に物理的に適合する必要となり、したがって、光源構成部及びセンサ構成部のサイズが限定されるため、特定の実施形態は、実用的でない場合がある。また、例えば、歯の切削中において実用的でなくなるため、必要な処理の量は、長くなり過ぎないことが必要である。
【0086】
一部の既存の歯科用プローブは、プローブの先端に光を案内して切削されるエリアを照明するために、照明窓及び光ファイバを元から含んでいる。したがって、既存のプローブにある既存の照明窓及び光ファイバを再使用し、白色光照明を多色照明(好ましくは、緑色光、赤色光及び白色光)によって置き換えることがさらに提案される。
【0087】
光の照明及び収集が、治療の場所(すなわち、プローブに挿入されたドリルビットの先端)から比較的遠くで発生すると、反射/散乱光を捕捉するために単一の光ファイバが使用される場合、空間解像度が失われる。したがって、照明窓の後ろ又は隣のいずれかに組み込まれた極小の光学カメラによって反射光を収集することが提案される。鏡面反射を回避するために、光学カメラは、偏光器を備える。
【0088】
カメラによって取得される画像の全体的なコントラストを増加させるために、交差偏光器が使用される。交差偏光器の使用は、光学画像におけるコントラストを増加させることが知られている技法である。交差偏光器の解決策は、送光(光源)及び受光(カメラ)において直交偏光を利用することで、獲得画像におけるコントラストを増加させることにより、照明エリアからの鏡面反射を回避する。
【0089】
図8は、照明窓802を備えたプローブ800の説明図を示す。照明窓802は、一体型の多色光源構成部804と、小型カメラを持つセンサ構成部806とを備える。この説明図では、プローブ800は、切削機能のためのロータ812と、プローブ800の遠位端にある3つの出水口814とを備える。しかしながら、プローブ800が、ロータ812及び/又は出水口814なしで製造され得ることが、当業者に理解されるであろう。
【0090】
多色光源、例えば、切り替え可能なLED(図示せず)に接続された(一部の最先端プローブには元から存在する)光ガイド808によって照明窓802に光がもたらされる。カメラ806は、最先端プローブに対する多少の変更のみが必要となるように、カメラ806によって撮られた画像(すなわち、強度マップ)を処理するためのプロセッサ(図示せず)に、配線810を介して、接続される。
【0091】
異なる実施形態では、多色光源構成部804及びカメラ806は、光ガイド808又は配線810を必要とせずに、プローブ800に内蔵される。例えば、小さなLEDの光源が、照明窓802の後ろに直接組み込まれ、光ガイド808のための既存のチャネルは、LEDとカメラ806とに対する両電源配線をホストするために使用され得る。
【0092】
したがって、プローブは、象牙質の厚さを決定することによって、象牙質を通して歯髄の存在及び歯髄までの距離をリアルタイムで評価するために使用され得る。歯髄までの特定の距離に達すると(例えば、>>2mm、1mm、0.2mmなど)、医師/歯科医に警告を与えることが可能である。
【0093】
まとめると、請求項1による本発明は、歯髄内の血液の存在が、歯科組織の表面から反射された光において一意なフットプリントを残すという、実験的発見に基づいている。したがって、歯科組織を照明するための少なくとも2つの狭帯域光源と、歯科用プローブ内へのその反射を収集するための光学カメラとを備えることが提案される。これらの反射は、次いで、前述の方法論を使用して処理される。また、歯髄検出の感度を向上させるための多色照明(例えば、3色照明)がある。装置は、スタンドアロン型のプローブであるか、又は邪魔にならず、使用が単純となるように歯科用ドリルに組み込まれる。
【0094】
当業者は、本明細書で説明した任意の方法を実行するためのプロセッサを容易に開発できるであろう。したがって、フローチャートの各ステップは、プロセッサによって実行される異なる動作を表し、プロセッサのそれぞれのモジュールによって実行される。
【0095】
上述したように、システムは、データ処理を実行するために、プロセッサを使用する。プロセッサは、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多くのやり方で実装され得る。プロセッサは、典型的には、必要な機能を実行するために、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされる1つ又は複数のマイクロプロセッサを採用する。プロセッサは、一部の機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するための1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路構成との組合せとして実装されてもよい。
【0096】
本開示の様々な実施形態で採用される回路構成の例としては、限定されないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が挙げられる。
【0097】
様々な実装形態において、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)などの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなど、1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられる。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要とされる機能を実行する、1つ又は複数のプログラムによって符号化される。様々な記憶媒体が、プロセッサ又はコントローラ内に固定されてもよいし、その上に記憶された1つ又は複数のプログラムがプロセッサにロード可能となるように持ち運び可能であってもよい。
【0098】
本開示の実施形態に対する変形は、特許請求される本発明を実行する当業者によって、図面、開示、及び付属の請求項を検討することにより、理解及び実行され得る。請求項において、「備える(有する、含む、持つ)」という単語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、単数形の要素は、複数を除外するものではない。
【0099】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載の複数の項目の機能を満たしてもよい。
【0100】
単に、特定の手段が、相互に異なる従属請求項に記載されているという事実は、利点を得るために、これらの手段の組合せを使用できないことを示すものではない。
【0101】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一体に又はその一部として供給される光学記憶媒体又はソリッドステート媒体などの好適な媒体上に記憶/配布されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介してなど、他の形態で配布されてもよい。
【0102】
「~するように適合される」という用語が、特許請求の範囲又は説明において使用される場合、「~するように適合される」という用語は、「~するように構成される」という用語と等価であることを意図していることに留意されたい。
【0103】
特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】