(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/706 20060101AFI20231218BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231218BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231218BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231218BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231218BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20231218BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61K31/706
A61K47/34
A61P37/06
A61P13/12
A61K9/08
A61K47/20
A61K9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536411
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2021085974
(87)【国際公開番号】W WO2022129215
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522099205
【氏名又は名称】メドインセルル エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マリア ディミトロヴァ フェランド
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ボビション
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント ラハイヤ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA14
4C076AA22
4C076AA94
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC17
4C076DD55
4C076EE24
4C076FF12
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA10
4C086EA04
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZA81
4C086ZB08
(57)【要約】
本発明は、
(a)組成物全体の22~34w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の5~9w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~32w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~62w/w%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)組成物全体の22~34w/w%の量の、式:
PLA
v-PEG
w-PLA
x
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の5~9w/w%の量の、式:
mPEG
y-PLA
z
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~32w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~62w/w%の量の有機溶媒
を含む医薬組成物。
【請求項2】
対象の免疫系の治療的抑制における使用のための医薬組成物であって、
該使用が、該医薬組成物を該対象に投与することを含み、
該組成物が:
(a)組成物全体の22~34w/w%の量の、式:
PLA
v-PEG
w-PLA
x
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の5~9w/w%の量の、式:
mPEG
y-PLA
z
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~32w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~62w/w%の量の有機溶媒を含む、
前記医薬組成物。
【請求項3】
前記トリブロックコポリマーに関して、wが、20~25の整数であり、かつv及びxがそれぞれ、35~60又は40~50の整数であり、好ましくは、wが、約22であり、かつv及びxがそれぞれ、約45であるか;又はwが、20~25の整数であり、かつv及びxがそれぞれ、50~90又は60~75の整数であり、好ましくは、wが、約22であり、かつv及びxがそれぞれ、約68であり;かつ/又は
前記トリブロックコポリマーに関して、PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、4又は6である、
請求項1又は2記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項4】
前記ジブロックコポリマーに関して、yが、7~10の整数であり、かつzが、50~90又は60~85の整数であり、好ましくは、yが、約8であり、かつzが、約68であるか;又はyが、38~52又は43~47の整数であり、かつzが、100~180又は129~141の整数であり、好ましくは、yが、約45であり、かつzが、約136であり;かつ/又は
前記ジブロックコポリマーに関して、PEG繰り返し単位の分子量が、0.35kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、8.5であるか;又はPEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、
請求項1~3のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項5】
前記タクロリムスが、タクロリムス一水和物である、請求項1~4のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項6】
前記組成物の複数回用量が、前記対象に投与され、任意に、該用量が、該対象の生涯にわたって投与され、任意に、連続する用量の投与間の期間が、少なくとも7日間又は少なくとも14日間、好ましくは、少なくとも21日間、最も好ましくは、少なくとも28日間であるか、又は
該組成物が、4週毎に又は月1回で該対象に投与される、
請求項2~5のいずれか1項記載の使用のための請求項2~5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項記載の使用のための請求項2~6のいずれか1項記載の組成物であって、
該使用が、該組成物の非経口投与、好ましくは、該組成物の皮下注射を含み;かつ/又は
該使用が、該組成物を、針及びシリンジを用いて、任意に、注射装置を用いて注射することを含み;かつ/又は
前記対象に投与されるタクロリムスの用量が、該対象に投与される該組成物の体積を調整することによって制御される、前記組成物。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか1項記載の使用のための請求項2~7のいずれか1項記載の組成物であって、
該組成物が、治療濃度のタクロリムスを前記対象の血漿中に、該組成物の投与後少なくとも14日間、好ましくは、少なくとも21日間、最も好ましくは、少なくとも28日間放出し、任意に、該対象の血漿中のタクロリムスの該治療濃度が、5~20ng/mLであり、但し、タクロリムスの濃度を、48時間までの期間は20ng/mLよりも高くすることができることを条件とし;かつ/又は
該使用が、1日毎AUCを約130~475ng.時間/mLの範囲に維持することを含み;かつ/又は
該使用が、1日毎AUC比を、約3.60~約3.70の範囲の最大値未満、好ましくは、約3.65未満に維持することを含む、前記組成物。
【請求項9】
請求項2~8のいずれか1項記載の使用のための請求項2~8のいずれか1項記載の組成物であって、
該組成物が、約100~約350mg/mL、好ましくは、約230mg/mL、又は好ましくは、約115mg/mLのタクロリムスの用量濃度を含み;かつ/又は
該用量が、約0.1mL~約2mL、任意に、約0.1mL~約1.5mL、任意に、約0.1mL~約1mL、任意に、約0.1mL~約0.5mLの体積で投与され;かつ/又は
該組成物が、約1秒~約2分、任意に、約1秒~1分、任意に、約1秒~約30秒、任意に、約1秒~約20秒、任意に、約1秒~約10秒、任意に、約1~約5秒の期間にわたって注射される、前記組成物。
【請求項10】
請求項2~9のいずれか1項記載の使用のための請求項2~9のいずれか1項記載の組成物であって、
該使用が、同種移植片を移植された対象における同種移植片拒絶反応の予防及び/又は治療を含む、前記組成物。
【請求項11】
前記同種移植片が、器官、組織、又は細胞であり、任意に、該同種移植片が、肝臓、腎臓、又は心臓、好ましくは、肝臓又は腎臓である、請求項10記載の使用のための請求項10記載の組成物。
【請求項12】
請求項2~9のいずれか1項記載の使用のための請求項2~9のいずれか1項記載の組成物であって、該使用が、自己免疫疾患の予防及び/又は治療を含み、任意に、該使用が、ループス腎炎の予防及び/又は治療を含む、前記組成物。
【請求項13】
体内に注射されたときにデポを形成するのに適している、請求項1~12のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物であって、
前記有機溶媒が、ジメチルスルホキシドであり;かつ/又は
前記トリブロックコポリマーの前記ジブロックコポリマーに対する重量比が、約4:1であり;かつ/又は
約10~30w/w%のタクロリムス、任意に、約10~20w/w%のタクロリムス、任意に、約20w/w%のタクロリムス、任意に、約10w/w%を含み;かつ/又は
約24~32w/w%の該トリブロックコポリマー、任意に、約26~30w/w%、任意に、約27~29w/w%の該トリブロックコポリマー、任意に、約28w/w%の該トリブロックコポリマーを含み;かつ/又は
約6~8w/w%の該ジブロックコポリマーを含み、任意に、約7~8w/w%の該ジブロックコポリマー、任意に、約7w/w%の該ジブロックコポリマーを含み;かつ/又は
約30~60w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約40~50w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約45~50w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約45w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約55w/w%のジメチルスルホキシドを含み;かつ/又は
約150mPa.s.~約3000mPa.s又は200mPa.s.~約3000mPa.s、任意に、約1000mPa.s~約3000mPa.s、任意に、約1000mPa.s~約2000mPa.s、任意に、約1500mPa.s~約1700mPa.s、任意に、約300mPa.s~1500mPa.s、任意に、約350mPa.s~1000mPa.s、任意に、約400mPa.s~500mPa.sの力学的粘性率を有し;かつ/又は
1種以上の医薬として許容し得る賦形剤をさらに含む、
前記組成物。
【請求項15】
前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ
乳酸/エチレンオキシドモル比が、4である、
請求項1~14のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項16】
前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ
乳酸/エチレンオキシドモル比が、6である、
請求項1~14のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項17】
前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、0.35kDaであり、かつ
乳酸/エチレンオキシドモル比が、8.5である、
請求項1~16のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項18】
前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ、
乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、
請求項1~16のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項19】
27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、44~46w/w%のジメチルスルホキシド、及び19~21w/w%のタクロリムスを含み、かつ
該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、4であり、かつ
該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、
請求項1~14のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項20】
27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、54~56w/w%のジメチルスルホキシド、及び9~11w/w%のタクロリムスを含み、かつ
該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、4であり、かつ
該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、
請求項1~14のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項21】
23~25w/w%の前記トリブロックコポリマー、5~7w/w%の前記ジブロックコポリマー、59~61w/w%のジメチルスルホキシド、及び9~11w/w%のタクロリムスを含み、かつ
該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、4であり、かつ
該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、
請求項1~14のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項記載の対象の免疫系の治療的抑制の方法であって、請求項1~21のいずれか1項記載の組成物を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項23】
同種移植片を移植された対象において同種移植片拒絶反応を予防又は治療する方法であって、請求項1~22のいずれか1項記載の組成物を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、タクロリムスを含む長期放出型医薬組成物、及び対象の免疫系の治療的抑制のため、特に、自己免疫疾患又は同種移植片拒絶反応の予防及び/又は治療、特に、肝臓、腎臓、又は心臓の移植片拒絶反応の予防及び/又は治療のための当該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
タクロリムス(別名:TK506又はフジミコン(fujimycone))は、インビトロ及びインビボ試験において証明された活性及び有効性を有する非常に強力な免疫抑制剤である。タクロリムスは、以下の化学構造:
【化1】
を有する。
【0003】
インビトロで、タクロリムスは、アロジェン(allogen)及びマイトジェン刺激に対するリンパ球の増殖応答、細胞傷害性T細胞産生、IL-2受容体の発現、並びにIL-2、IL-3、及びIFN-γの産生を阻害する(Kinoらの文献、「ストレプトマイセスから単離された新規免疫抑制剤であるFK506 II.インビトロでのFK-506の免疫抑制作用(FK506, a Novel Immunosuppressant Isolated from a Streptomyces. II. Immunosuppressive Effect of FK-506 in vitro)」 J Antibiot 1987及びScottらの文献、「タクロリムス:臓器移植の管理におけるそれの使用のさらなるアップデート(Tacrolimus: A Further Update of its Use in the Management of Organ Transplantation)」 Drugs 2003)。タクロリムスの免疫抑制の有効性が、移植のさまざまな動物モデル(イヌ、ラット、ヒヒ、及びカニクイザル)において実証されている(Collier DSらの文献、「FK-506を与えられたイヌにおける腎移植(Kidney Transplantation in the Dog Receiving FK-506)」 Transplant Proc. 1987; Murase Nらの文献、「FK-506を単独で又はシクロスポリンと共に与えられたラットにおける異所性心臓移植(Heterotopic Heart Transplantation in the Rat Receiving FK-506 Alone or with Cyclosporine)」 Transplant Proc1987; Ochiaiらの文献、「ビーグル犬における腎臓同種移植に対するFK506の作用の研究(Studies of the Effects of FK506 on Renal Allografting in the Beagle Dog)」 Transplantation 1987; Inamuraらの文献、「新規免疫抑制剤FK506によるラットにおける皮膚同種移植片生着期間の延長(Prolongation of Skin Allograft Survival in Rats by a Novel Immunosuppressive Agent, FK506)」 Transplantation 1988; Todoらの文献、「FK-506を与えられたイヌにおける同所性肝移植(Orthotopic Liver Transplantation in Dogs Receiving FK-506)」 Transplant Proc 1987; Todoらの文献、「FK506によるイヌ、サル、及びヒヒの同種移植の免疫抑制:他の薬物との相乗作用及び耐性誘導への特別の言及を含む(Immunosuppression of Canine, Monkey, and Baboon Allografts by FK 506: with Special Reference to Synergism with Other Drugs and to Tolerance Induction)」 Surgery1988; Jiangらの文献、「タクロリムス対シクロスポリンA:ラット腎同種移植片生着に関する比較研究(Tacrolimus Versus Cyclosporin A: a Comparative Study on Rat Renal Allograft Survival.)」 Transpl Int. 1999、及びKinugasaらの文献、「カニクイザルにおける腎移植モデルでのタクロリムスを用いる経口治療の有効性(Kinugasa et al. Efficacy of Oral Treatment with Tacrolimus in the Renal Transplant Model in Cynomolgus Monkeys)」 J Pharmacol Sci 2008)。
【0004】
タクロリムスは、初めに、Prograf(登録商標)経口カプセル剤についてEUで1990年代に承認され、次いで、Advagraf(登録商標)及びEnvarsus(登録商標)についてEMAによって長期放出経口製剤として認可された。従って、タクロリムスの特徴は、十分文書化されており、かつ公衆に利用可能である。Prograf(登録商標)0.5mg、1mg、及び5mg硬質カプセル剤(UK PL00166/0206 MAH Astellas Pharma Europe B.V.)が、成人の腎、肝、又は心同種移植患者における移植片拒絶反応の予防及び治療における1日2回の経口投与に認可されている。
【0005】
1日1回投与(さまざまな投薬量でのもの)用の長期放出経口製剤が、成人の腎、肝、又は心同種移植患者における移植片拒絶反応の予防及び治療に認可されている:2007年のAdvagraf(登録商標)長期放出硬質カプセル剤(EMEA/H/C/000712)、及び2014年のEnvarsus(登録商標)長期放出錠剤(EMEA/H/C/002655)。
【0006】
しかしながら、現在市販されている経口タクロリムス製品と比較して患者のコンプライアンスを向上しかつ患者に対しより高い利便性を提供するために長期放出型タクロリムス製剤を提供することか必要とされている。実際に、後向きコホート試験において、薬物療法レジメンを遵守しなかった患者は、重篤な急性拒絶反応後の短期同種移植片喪失のリスクが増加したことが示された(Al-Sheyyabらの文献、「重篤な急性腎移植片拒絶反応の治療後の短期同種移植片喪失と薬物療法ノンアドヒアランスとの関係(Association of Medication Non-Adherence with Short-Term Allograft Loss after the Treatment of Severe Acute Kidney Transplant Rejection)」 BMC Nephrol. 2019。また、315名の腎同種移植患者を追跡する前向き試験において、追跡期間内に60例の腎臓が、機能不全に陥った(中央値:31.4か月)。情報のない4例を除いて、56例の機能不全は、4つの原因:拒絶反応36例(64%)、糸球体腎炎10例(18%)、ポリオーマウイルス腎症4例(7%)、及び併発の事象6例(11%)に起因していた。どの拒絶反応による喪失も、機能不全の時までに抗体介在性拒絶のエビデンスを有していた。36例の拒絶反応による喪失のうち17例(47%)は、担当医によって自己の薬物療法を遵守しなかった患者として独立に特定されていた(Sellaresらの文献「腎移植不全の原因の理解:抗体介在性拒絶反応及びノンアドヒアランスの支配的な役割(Understanding the Causes of Kidney Transplant Failure: the Dominant Role of Antibody-Mediated Rejection and Nonadherence)」 Am J Transplant 2012)。
【0007】
また、より少ない副作用及びより低い患者間での有効性のばらつきを示すタクロリムス組成物を提供することが必要とされている。
【0008】
利用可能なタクロリムスは、一般に、急速に吸収される。吸収にはむらがあり、タクロリムスの平均経口バイオアベイラビリティ(Prograf(登録商標)製品を用いて調査)は、20%~25%の範囲である(成人患者における個別の範囲:6%~43%)。タクロリムスの吸収の速度及び程度は、Prograf(登録商標)及びAvagraf(登録商標)医薬製品双方の場合で食物によって低下した。定常状態でのAUCと全血トラフレベルとの間に強い相関が存在する。従って、全血トラフレベルのモニタリングは、全身曝露量の良い推定を提供する。タクロリムスは、顕著な患者内及び患者間での吸収のばらつきを示す。その吸収は、胆汁に依存せず、むしろ胃腸の通過時間次第で決まり、食品の有無及び食品の脂質含量によって影響を受ける。加えて、年齢、性別、人種、ボディ・マス・インデックス、タクロリムスを受けている期間、血清アルブミン、ヘマトクリット、及びB型もしくはC型肝炎感染又は他の肝疾患の存在は全て、1日あたりの必要用量に影響を与えることが示されている(Schiffらの文献、「腎臓病学者のためのカルシニューリン阻害剤の治療的モニタリング(Therapeutic Monitoring of Calcineurin Inhibitors for the Nephrologist)」 Clin J Am Soc Nephrol 2007)。
【0009】
文献のデータにより、タクロリムスが静脈内又は経口投与される場合、それは、肝臓及び小腸でのヒドロキシル化及び脱メチル化によって少なくとも9種類の代謝産物へと徹底的に代謝されることが示されており、そのうちの8種類が、同定され特性評価されている(Iwasakiの文献、「総説:タクロリムス(FK506)の代謝及び臨床薬物動態における最新の話題(Review: Metabolism of Tacrolimus (FK506) and Recent Topics in Clinical Pharmacokinetics)」 Drug Metab Pharmacokinet 2007)。タクロリムスは、主に、タクロリムスの第I相代謝を担うCYP3Aサブファミリー酵素によって肝臓及び小腸において代謝される。患者間でのタクロリムスPKのばらつきの一部が、CYP3A5における遺伝的変異を原因とすることが示唆されている。公表された論文によって、見かけのタクロリムスクリアランスの個人間でのばらつきのうちの最大で30%が、CYP3A5多型に関連していることが示唆されている(Rogierらの文献、「成人腎移植患者における初期曝露を最適化するためのタクロリムス薬物動態のばらつきの説明(Explaining Variability in Tacrolimus Pharmacokinetics to Optimize Early Exposure in Adult Kidney Transplant Recipients)」 Tjer Drug Monit 2009)。
【0010】
最近の研究では、ナノ/マイクロ粒子又はヒドロゲルなどの制御放出製剤の使用によってこれに対処することが試みられている(Lopez-Farreらの文献、「タクロリムス含有マイクロスフェアに基づく動物モデルにおけるタクロリムス投与の新たな戦略(New Strategy of Tacrolimus Administration in Animal Model Based on Tacrolimus-Loaded Microspheres)」 Transp Immunol 2016; Myamotoらの文献、「タクロリムス含有生分解性マイクロスフェアの薬物動態学的作用及び免疫抑制作用(Pharmacokinetic and Immunosuppressive Effects of Tacrolimus-Loaded Biodegradable Microspheres. Liver transplantation 2004; Littleらの文献、「同種移植片拒絶反応を予防するためのマイクロ及びナノ粒子薬物送達系)」、 Clin Immunol 2015)。しかしながら、これらの論文は、初期段階の研究に関するものであり、タクロリムスの有効な持続性放出製剤の明確な証拠を提供しない。
【0011】
WO2006/066063及びWO2006/101972は、臓器の拒絶反応の治療のため及び薬物動態パラメーターをより良好に制御するために使用されることを目指しているタクロリムスを含有する注射用ナノ粒子製剤を記載している。しかしながら、これらの出願は、製剤の調製を記載しているものの、タクロリムスの放出プロファイルや、薬物動態や、提案される治療的使用に関連するデータを提示していない。
【0012】
CN108743531には、水性点眼薬の調製のために使用されるタクロリムスを含むジブロックコポリマーmPEG-ポリエステルを含むミセルが記載されている。該組成物は、角膜においてタクロリムスの浸透を促進するといわれており、1日1回投与で角膜移植片拒絶反応の治療に用いられる。
【0013】
CN105919924には、関節リウマチ、器官移植、又は自己免疫性眼疾患を治療するためのタクロリムス持続性放出温度感受性ゲルが記載されている。当該ゲルは、Soluplus(登録商標)賦形剤を用いて調製される。7日間のタクロリムスの持続性放出が、記載された。
【0014】
しかしながら、少なくとも14日間、好ましくは、少なくとも21日間、最も好ましくは、少なくとも28日間の期間にわたり、治療上有効な濃度でタクロリムスの放出を提供することのできる組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
(発明の概要)
本発明の態様は、
(a)組成物全体の22~34w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の5~9w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~32w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~62w/w%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
好適な実施態様は、
(a)組成物全体の24~32w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の6~8w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の10~30w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~60w/w%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
別の好適な実施態様は、
(a)組成物全体の24~32w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の6~8w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~15w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~60w/w%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明の組成物は、対象内への該組成物の注射後に医薬組成物の析出によって形成される半固体の局在化した塊である「インサイチュデポ」を形成する。該医薬組成物は、水溶液に実質的に不溶であるコポリマーを含む。従って、該医薬組成物が、ヒト又は動物の体の水性環境に接触すると、転相が生じて、組成物を、液体から半固体へと変化させる、すなわち、組成物の析出が起こり、「インサイチュデポ」の形成に繋がる。
【0019】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の組成物が、少なくとも7日間、又は少なくとも14日間、典型的には、少なくとも21日、又は好ましくは、少なくとも28日間の期間、治療的有効量のタクロリムスの放出を可能にすることを見出した。これは、患者に対する投薬計画を単純化し、市販の製品の場合のような毎日又は1日2回ではなく、より頻度の低い、例えば、28日間毎の投与を可能とし、患者のコンプライアンスの向上に繋がる。タクロリムスが、臓器移植片拒絶反応を予防するのに用いられる場合、患者のコンプライアンスの向上が、臓器移植片拒絶反応のリスクの減少に繋がることが理解されている。加えて、本発明の組成物は、認められる副作用の減少に繋がることが理解されている皮下投与に適している。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、対象の免疫系の治療的抑制における使用のための医薬組成物であって、
該使用が、該医薬組成物を該対象に投与することを含み、
該組成物が:
(a)組成物全体の22~34w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の5~9w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~32w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~62w/w%の量の有機溶媒
を含む、前記医薬組成物を提供する。
【0021】
好適な実施態様において、本発明は、対象の免疫系の治療的抑制における使用のための医薬組成物であって、
該使用が、該医薬組成物を該対象に投与することを含み、
該組成物が:
(a)組成物全体の24~32w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の6~8w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の10~30w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~60w/w%の量の有機溶媒
を含む、前記医薬組成物を提供する。
【0022】
好適な実施態様において、前記トリブロックコポリマーに関して、wは、20~25の整数であり、かつv及びxはそれぞれ、40~50の整数であり、好ましくは、wは、約22であり、かつv及びxはそれぞれ、約45であるか;又はwは、20~25の整数であり、かつv及びxはそれぞれ、60~75の整数であり、好ましくは、wは、約22であり、かつv及びxはそれぞれ、約68である。
【0023】
典型的には、前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4又は6である。
【0024】
好適な実施態様において、前記ジブロックコポリマーに関して、yは、7~10の整数であり、かつzは、60~85の整数であり、好ましくは、yは、約8であり、かつzは、約68であるか;又はyは、43~47の整数であり、かつzは、129~141の整数であり、好ましくは、yは、約45であり、かつzは、約136である。
【0025】
典型的には、前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、0.35kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、8.5であるか;又は前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0026】
組成物又は使用のための組成物の一実施態様において、前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4である。
【0027】
組成物又は使用のための組成物の別の実施態様において、前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、6である。
【0028】
組成物又は使用のための組成物の一実施態様において、前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、0.35kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、8.5である。
【0029】
組成物又は使用のための組成物の別の実施態様において、前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0030】
典型的には、前記組成物の複数回用量が、前記対象に投与される。該組成物は、典型的には、該対象の生涯にわたって投与される。
【0031】
好適な実施態様において、連続する用量の投与間の期間は、少なくとも7日間、又は少なくとも14日間、好ましくは、少なくとも21日間、最も好ましくは、少なくとも28日間である。典型的には、前記組成物は、4週毎に又は月1回で前記対象に投与される。
【0032】
典型的には、前記使用は、前記組成物の非経口投与、好ましくは、該組成物の皮下注射を含む。
【0033】
好適な実施態様において、前記使用は、前記組成物を、針及びシリンジを用いて、任意に、注射装置を用いて注射することを含む。
【0034】
典型的には、前記対象に投与されるタクロリムスの用量は、該対象に投与される前記組成物の体積を調整することによって制御される。
【0035】
好ましくは、前記組成物は、該組成物の投与後少なくとも7日間又は少なくとも14日間、好ましくは、少なくとも21日間、最も好ましくは、少なくとも28日間、前記対象の血漿中に治療濃度のタクロリムスを放出する。典型的には、前記対象の血漿中のタクロリムスの該治療濃度は、5~20ng/mLであり、但し、タクロリムスの濃度は、48時間までの期間は20ng/mLよりも高くすることができることを条件とする。
【0036】
好適な実施態様において、前記使用は、約130~475ng.時間/mLの範囲に1日毎AUCを維持することを含む。
【0037】
典型的には、前記使用は、約3.60~約3.70の範囲の最大値未満、好ましくは、約3.65未満に1日毎AUC比を維持することを含む。
【0038】
好適な実施態様において、前記組成物は、約115~約345mg/mL、好ましくは、約230mg/mL又は約115mg/mLのタクロリムスの用量濃度を含む。
【0039】
典型的には、前記タクロリムスの用量は、約0.1mL~約2mL、任意に、約0.1mL~約1.5mL、任意に、約0.1mL~約1mL、任意に、約0.1mL~約0.5mLの体積で投与される。
【0040】
前記組成物は、約1秒~約2分、任意に、約1秒~1分、任意に、約1秒~約30秒、任意に、約1秒~約20秒、任意に、約1秒~約10秒、任意に、約1~約5秒の期間にわたって注射され得る。
【0041】
最も好ましくは、前記使用は、同種移植片を移植された対象における同種移植片拒絶反応の予防及び/又は治療を含む。該同種移植片は、器官、組織、又は細胞であり得る。好ましくは、該同種移植片は、肝臓、腎臓、又は心臓、最も好ましくは、肝臓又は腎臓である。
【0042】
別の実施態様において、前記使用は、自己免疫疾患の予防及び/又は治療を含む。該使用は、ループス腎炎の予防及び/又は治療を含み得る。
【0043】
本発明の組成物は、体内に注射されたときにデポを形成するのに適している。
【0044】
典型的には、前記有機溶媒は、ジメチルスルホキシドである。
【0045】
本発明の組成物の好適な実施態様において、前記トリブロックコポリマーの前記ジブロックコポリマーに対する重量比は、約4:1である。
【0046】
好適な実施態様において、前記組成物は、約10~30w/w%のタクロリムス、任意に、約10~20w/w%のタクロリムス、任意に、約20w/w%のタクロリムス、任意に、約10w/w%のタクロリムスを含む。
【0047】
好適な実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、約24~32w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、26~30w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、約27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、約28w/w%の前記トリブロックコポリマーを含む。
【0048】
好適な実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、約6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、任意に、約7~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、任意に、約7w/w%の前記ジブロックコポリマーを含む。
【0049】
典型的には、前記組成物又は使用のための組成物は、約30~60w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約40~50w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約45~50w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約45w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約55w/w%のジメチルスルホキシドを含む。
【0050】
前記組成物又は使用のための組成物は、約150mPa.s~約3000mPa.s又は約200mPa.s~約3000mPa.s、任意に、約1000mPa.s~約3000mPa.s、任意に、約1000mPa.s~約2000mPa.s、任意に、約1500mPa.s~約1700mPa.sの力学的粘性率を有し得る。あるいは、前記組成物又は使用のための組成物は、200mPa.s~約2000mPa.s、任意に、約300mPa.s~約1500mPa.s、任意に、約400mPa.s~約500mPa.sの力学的粘性率を有し得る。
【0051】
前記組成物又は使用のための組成物は、1種以上の医薬として許容し得る賦形剤をさらに含んでいてもよい。
【0052】
特に好適な実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、44~46w/w%のジメチルスルホキシド、及び19~21w/w%のタクロリムスを含み、かつ該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4であり、かつ該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0053】
別の実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、54~56w/w%のジメチルスルホキシド、及び9~11w/w%のタクロリムスを含み、かつ該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4であり、かつ該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0054】
別の特に好適な実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、23~25w/w%の前記トリブロックコポリマー、5~7w/w%の前記ジブロックコポリマー、59~61w/w%のジメチルスルホキシド、及び9~11w/w%のタクロリムスを含み、かつ該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4であり、かつ該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0055】
さらなる態様において、本発明は、上述のような対象の免疫系の治療的抑制の方法であって、該対象に前述のような組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0056】
さらなる態様において、本発明は、同種移植片を移植された対象において同種移植片拒絶反応を予防又は治療する方法であって、該対象に前述のいずれか請求項記載の組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1は、3種の異なる製剤(F76、F78、及びF88)からの経時的なタクロリムスのインビトロ累積放出を示す。製剤には、異なるトリブロック:P1R4又はP1R6及び異なるジブロック:dP0.35R8.5又はdP2R3(TB/DB=4/1)を含める。コポリマー含量及びAPI負荷量は、製剤の全てのうちで、それぞれ40及び20%(w/w%)に固定した。
【
図2】
図2は、3種の異なる製剤(F70、F71、及びF72)からの経時的なタクロリムスのインビトロ累積放出を示す。製剤には、P1R4及びdP2R3(TB/DB=4/1)を含める。コポリマー含量は、製剤の全てに関して、同一であり、かつ30%(w/w%)で固定されるが、API負荷量は、異なる:10、20、又は30%(w/w%)。
【
図3】
図3は、3種の異なる製剤(F71、F76、及びF117)からの経時的なタクロリムスのインビトロ累積放出を示す。製剤には、P1R4及びdP2R3(TB/DB=4/1)を含める。API負荷量は、製剤の全てに関して、同一であり、かつ20%(w/w%)で固定されるが、コポリマー含量は、異なる:30、35、又は40%(w/w%)。
【
図4】
図4は、1種の製剤(F72)であるが異なる用量からの経時的なタクロリムスのインビトロ累積放出を示す。製剤には、30%(w/w%)のコポリマー(P1R4/dP2R3=4/1)及び30%(w/w%)のAPIを含める。API用量は、20、40、又は70mg/デポに固定した。用量は、デポサイズを異ならせることによって調整される。
【
図5】
図5は、3種の異なる製剤(F70、F117、及びF124)からの経時的なタクロリムスのインビトロ累積放出を示す。製剤には、P1R4及びdP2R3(TB/DB=4/1)を含めた。コポリマー含量及びAPI負荷量は、製剤の全てに関して異なっているが、API用量は、20mgに固定された。用量は、デポサイズを異ならせることによって調整される。
【
図6】
図6は、3種の異なる製剤(F72、F77、及びF78)からの経時的なタクロリムスのインビトロ放出速度を示す。製剤には、総コポリマー含量を、30~40%(w/w%)で異ならせて、P1R4及び異なるジブロック:dP0.35R8.5又はdP2R3(TB/DB=4/1)を含める。API負荷量は、異なる:10、20、又は30%(w/w%)が、API用量は、製剤の全てに関して70mgに固定された。用量は、デポサイズを異ならせることによって調整される。
【
図7】
図7は、異なる用量での2つの製剤(F72及びF87)からの経時的なタクロリムスのインビトロ放出速度を示す。製剤には、30%(w/w%)のP1R4/dP2R3又は40%(w/w%)のP1R6/dP0.35R8.5(TB/DB=4/1)を含める。API用量は、20及び40mgに固定された。用量は、デポサイズを異ならせることによって調整される。
【
図8】
図8は、3種の異なる製剤(F70、F109、及びF117)からの経時的なタクロリムスのインビトロ放出速度を示す。製剤には、P1R4又はP1R6及びdP2R3(TB/DB=4/1)を含める。コポリマー含量及びAPI負荷量は、製剤の全てに関して異なっているが、API用量は、40mgに固定された。用量は、デポサイズを異ならせることによって調整される。
【
図9】
図9は、製剤F72、F77、又はF78の70mg API用量の単回の皮下注射後の、血液中でのタクロリムスの平均動態プロファイルを示す。
【
図10】
図10は、製剤F72又はF87の4回の月1回反復皮下注射後の203日間にわたる血液中でのタクロリムスの平均動態プロファイルを示す。用量効果を、注射の体積を変化させることによって評価した。
【
図11】
図11は、異なる用量での製剤F72及びF87の各皮下注射後の28日の期間にわたって推定された平均及び個々の1日毎AUC比を表す。狭い範囲内でのタクロリムス血中濃度の持続可能性は、3.65の閾値に近いか又はそれを下回る平均1日毎AUC比を特徴とする。
【
図12】
図12は、製剤F70、F109、及びF117の単回の皮下注射後56日間にわたるタクロリムスの平均血中濃度-時間プロファイルを示す。
【
図13】
図13は、製剤F70、F109、及びF117の単回の皮下注射の後に得た、28日の期間にわたって推定された平均及び個々の1日毎AUC比を表す。狭い範囲内でのタクロリムス血中濃度の持続可能性は、3.65の閾値に近いか又はそれを下回る平均1日毎AUC比を特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0058】
(詳細な説明)
本発明の態様は、
(a)組成物全体の22~34w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の5~9w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~32w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~62w/w%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0059】
好適な実施態様は、
(a)組成物全体の24~32w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の6~8w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の10~30w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~60w/w%の量の有機溶媒
を含む医薬組成物を提供する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「タクロリムス」は、その塩、水和物、又は溶媒和物のすべてを含む。特に、それは、タクロリムスの一水和物形態を含む。
【0061】
本発明で用いられるトリブロック及びジブロックコポリマーは、「生体吸収型」のものであり、これは、ブロックコポリマーが、インビボで加水分解による切断を受けて、その構成要素(m)PEG及びポリエステルブロックから誘導されるオリゴマー又はモノマーを生成することを意味する。例えば、PLAは、加水分解を受けて、乳酸を生成する。この加水分解プロセスの結果は、デポの漸進的な質量の減少をもたらし、最終的にはその消失をもたらす。
【0062】
本明細書で使用される場合、「繰り返し単位」は、ポリマーの基礎反復単位である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」は、本出願の全体にわたりPEGと略されるが、ポリ(エチレンオキシド)又はポリ(オキシエチレン)と称される場合もあり、これらの用語は、本発明において互換的に使用される。mPEGは、メトキシポリエチレングリコールである。
【0064】
「PLA」という略語は、ポリ(乳酸)を意味する。
【0065】
コポリマーは、以下のように命名されている:
本明細書に記載されるトリブロックコポリマーは、PxRyと表示した。式中、xは、PEG鎖の分子量をkDaで表し、yは、乳酸/エチレンオキシド(LA/EO)モル比であり、該コポリマー内のPLA鎖長の計算を可能とする。
【0066】
本明細書に記載されるジブロックコポリマーは、dPxRyと表示した。式中、xは、mPEG鎖の分子量をkDaで表し、yは、乳酸/エチレンオキシド(LA/EO)モル比である。
【0067】
PEG繰り返し単位とも称されるPEG鎖、すなわち、-(CH2CH2O)n-(式中、nは、整数である)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、典型的には、ポリスチレン標準を用いて測定される。測定される分子量は、数平均分子量(Mn)である。
【0068】
ジブロック及びトリブロックコポリマーの一般式を、以下に示す:
ジブロックコポリマー(DB)
【化2】
トリブロックコポリマー(TB)
【化3】
。
【0069】
本明細書において、前記ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、及び溶媒を含む組成物、すなわち、医薬組成物からタクロリムスを抜いたものは、「ビヒクル」と称され得る。
【0070】
前記有機溶媒は、以下の群:ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセリンホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びそれらの混合物から選択され得る。一実施態様において、DMSO、NMP、トリプロピオニン、又はそれらの混合物を、溶媒として用いることができる。好ましくは、該有機溶媒は、ジメチルスルホキシドである。
【0071】
製剤の「注入性(injectability)」は、本明細書で使用される場合、規定のパラメーターを用いて製剤を注射するのに必要とされるニュートン(N)単位での力によって定義される。該パラメーターとしては、注射速度、注射体積、注射期間、シリンジの種類、又は針の種類などが挙げられる。これらのパラメーターは、具体的な製剤、又は皮下、神経周囲、関節内などの所望の投与方法に基づいて異なり得る。これらは、製剤間の差及び変動を観察することができるように調整され得る。注入性は、製剤が許容し得る時間枠内で適任の医療従事者によって容易に投与されることができる程度に低く保たれなければならない。許容し得る注入性の値は、10N~20Nであろう。非最適注入性は、20N超であり得るが、30N未満であろう。注入性は、テクスチュロメーター、好ましくは、Lloyd Instruments FTプラステクスチュロメーターを用いて、以下の分析条件を用いて測定され得る:500μLの製剤を、550μL/分の流速で23℃で21G 1”テルモ針を用いて1mL Soft-jectシリンジを通して注射する。
【0072】
「粘度」は、定義によりかつ本明細書で使用される場合、流動及び剪断応力又は引っ張り強さによるゆっくりした変形に対する流体の抵抗性の尺度である。これは、動いている流体の内部摩擦を記述する。液体の場合、これは、「濃厚性(thickness)」という非公式の概念に対応する。「力学的粘性率」によって、力をかけた状態での流体の流動に対する抵抗性の尺度が意味される。力学的粘性率は、100mPa.s~3000mPa.sの範囲であり得る。好ましくは、前記組成物は、約200~約2000mPa.s、任意に、約400~約500mPa.sの力学的粘性率を有する。より好ましくは、該組成物は、約1000~約2000mPa.s、任意に、約1500~約1700mPa.sの力学的粘性率を有する。
【0073】
力学的粘性率は、円錐-平板測定系(cone plate measuring system)を取り付けたAnton Paarレオメーターを用いて決定される。典型的には、700μLの試験製剤を、測定板上に配置する。温度を、+25℃に制御する。用いられる測定系は、直径が50mmであり円錐角が1度である円錐-平板(CP50-1)である。剪断速度動作範囲は、10~1000s-1であり、好ましくは、100s-1である。製剤を、ポジティブディスプレイスメント式ピペットを用いて温度調節された測定板の中央に配置する。測定系を低下させ、0.104mmの隙間を、該測定系と測定板との間に残す。21の粘度測定点を、10~1000s-1剪断速度範囲の全体にわたって決定する。該液体製剤は、ニュートン挙動を示すために、与えられる値は、100s-1で得られるものである。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、対象の免疫系の治療的抑制における使用のための医薬組成物であって、
該使用が、該医薬組成物を該対象に投与することを含み、
該組成物が:
(a)組成物全体の22~34w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の5~9w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~32w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~62w/w%の量の有機溶媒
を含む、前記医薬組成物を提供する。
【0075】
好適な実施態様において、本発明は、対象の免疫系の治療的抑制における使用のための医薬組成物であって、
該使用が、該医薬組成物を該対象に投与することを含み、
該組成物が:
(a)組成物全体の24~32w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の6~8w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の10~30w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~60w/w%の量の有機溶媒
を含む、前記医薬組成物を提供する。
【0076】
免疫系の治療的抑制は、免疫抑制剤としての使用と称されることもある。
【0077】
好適な実施態様において、前記トリブロックコポリマーに関して、wは、20~25の整数であり、かつv及びxはそれぞれ、35~60の整数であるか;又はwは、20~25の整数であり、かつv及びxはそれぞれ、50~90の整数である。
【0078】
最も好適な実施態様において、前記トリブロックコポリマーに関して、wは、20~25の整数であり、かつv及びxはそれぞれ、40~50の整数であり、好ましくは、wは、約22であり、かつv及びxはそれぞれ、約45であるか;又はwは、20~25の整数であり、かつv及びxはそれぞれ、60~75の整数であり、好ましくは、wは、約22であり、かつv及びxはそれぞれ、約68である。
【0079】
典型的には、前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4又は6である。
【0080】
好適な実施態様において、前記ジブロックコポリマーに関して、yは、6~10の整数であり、かつzは、50~90の整数であるか;又はyは、38~52の整数であり、かつzは、100~180の整数である。
【0081】
最も好適な実施態様において、前記ジブロックコポリマーに関して、yは、7~10の整数であり、かつzは、60~85の整数であり、好ましくは、yは、約8であり、かつzは、約68であるか;又はyは、43~47の整数であり、かつzは、129~141の整数であり、好ましくは、yは、約45であり、かつzは、約136である。
【0082】
典型的には、前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、0.35kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、8.5であるか;又は前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0083】
組成物又は使用のための組成物の一実施態様において、前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4である。
【0084】
組成物又は使用のための組成物の別の実施態様において、前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、6である。
【0085】
組成物又は使用のための組成物の一実施態様において、前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、0.35kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、8.5である。
【0086】
組成物又は使用のための組成物の別の実施態様において、前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0087】
前記組成物の複数回用量が、対象に投与され得る。これは、典型的には、毎週又は2週間毎、より好ましくは、4週間毎又は毎月投与される単一の用量を意味する。組成物は、典型的には、対象の生涯にわたって投与される。これは、組成物が、免疫抑制剤の連続的な投与が臓器の拒絶反応を防ぐために必要とされる臓器移植片を移植された対象に投与されるのであれば、特に、当てはまる。
【0088】
好適な実施態様において、任意選択の初期用量設定期間後の、連続する用量の投与間の期間は、少なくとも7日間、又は少なくとも14日間、好ましくは、少なくとも21日間、最も好ましくは、少なくとも28日間である。あるいは、連続する用量の間の期間は、35日間、42日間、49日間、56日間、又は100日間であり得る。連続する用量の投与間の期間は、少なくとも35日間又は少なくとも42日間であり得る。典型的には、組成物は、2週間毎、又は3週間毎、好ましくは、4週間毎に対象に投与される。投与は、月1回であってもよい。
【0089】
任意選択の初期用量設定期間は、これまでの実施態様に開示されている組成物のより少ない用量の週1回の反復投与によって実施され得る。あるいは、該任意選択の初期用量設定期間は、これまでの実施態様に開示されている組成物のより少ない用量の毎日、又は2、3、4、5、もしくは6日間毎の反復投与によっても実施され得る。
【0090】
典型的には、前記使用は、前記組成物の非経口投与、好ましくは、該組成物の皮下注射を含む。皮下投与は、経口又は静脈内の投与様式と比較して著しい利点を提供するものと理解される。これは、皮下投与が、タクロリムスの吸収及び有効性の患者内及び患者間での変わりやすさを低下させることに繋がるためである。前記組成物は、標準的な針及びシリンジを用いて注射され得る。あるいは、組成物は、注射装置を用いて注射され得る。注射装置の使用は、正確な体積の組成物の対象への送達を可能とする。これは、1000mPa.s-1を超える粘度を有する組成物にとって特に重要である。正確な体積の組成物を対象に投与することによって、投与される用量を、厳密に制御することができる。典型的には、前記対象に投与されるタクロリムスの用量は、該対象に投与される前記組成物の体積を調整することによって制御される。
【0091】
好ましくは、前記組成物は、該組成物の投与後少なくとも7日間又は少なくとも14日間、好ましくは、少なくとも21日間、最も好ましくは、少なくとも28日間、前記対象の血漿中に治療濃度のタクロリムスを放出する。該組成物は、該組成物の投与後少なくとも35日間、42日間、49日間、56日間、又は100日間、前記対象の血漿中に治療濃度のタクロリムスを放出し得る。典型的には、該対象の血漿中のタクロリムスの該治療濃度は、5~20ng/mLである。しかしながら、タクロリムスの濃度は、治療期間の間48時間までの期間は20ng/mLよりも高くすることができる。例えば、投与後48時間を超えないこと、及び5~20ng/mLの目標値が、実質的に維持されていることを条件として、タクロリムス濃度に初期の「スパイク」が存在していてもよい。本発明の組成物の利点は、それが、狭い濃度範囲(5~20ng/mL)内での長期間にわたるタクロリムスの制御放出を可能とすることである。タクロリムス治療には狭い治療域が存在し、組成物の投与が、血漿タクロリムス濃度の突然の変化を招かないことが重要である。
【0092】
本発明者らは、本発明の医薬組成物が、許容し得る薬物動態学的性質を提供することを見出だしている。
【0093】
「曲線下面積」又はAUCは、規定された期間内で時間の関数として血漿中の薬物濃度の変動を記述する曲線の定積分である。当業者にとって、標準的な薬物動態学的パラメーターであるAUCをどのように決定するは公知である。いくつかの仮定を用いて、曲線下面積は、体循環に入る薬物の量及び系が有する薬物を排出するための能力(クリアランス)に密接に依存するパラメーターである。従って、それを使用して、吸収された薬物の量又は薬物排出を特徴付ける生理学的プロセスの効率を測定することができる。好ましくは、1日毎AUC、すなわち、24時間の期間のAUC(1日毎AUC=AUC0-24h)は、定常状態で約130~475ng.時間/mLの範囲内である、これも、ヒトでの臨床的有効性に対応する(Advagraf(登録商標)、製品情報)。濃度対時間曲線下面積(AUC)は、線形台形法を用いて計算し得る。
【0094】
典型的には、前記使用は、投与と投与の間に、規定期間の間の最高1日毎AUCの最低1日毎AUCに対する比として計算される1日毎AUC比を、約3.60~約3.70、好ましくは、約3.65(475/130の比)未満範囲の最大値未満に維持することを含む。
【0095】
好適な実施態様において、前記組成物は、約115~約345mg/mL、好ましくは、約230mg/mL又は約115mg/mLのタクロリムスの用量濃度を含む。
【0096】
典型的には、タクロリムスの前記用量は、約0.1mL~約2mL、任意に、約0.1mL~約1.5mL、任意に、約0.1mL~約1mL、任意に、約0.1mL~約0.5mLの体積で投与される。対象に投与される体積を調整することによって、投与される用量を、変更することができる。このことは、投与される用量を、個々の患者に容易に合わせることを可能とする。
【0097】
前記組成物は、約1秒~約2分、任意に、約1秒~1分、任意に、約 約1秒~約30秒、任意に、約1秒~約20秒、任意に、約1秒~約10秒、任意に、約1~約5秒の期間にわたって注射され得る。
【0098】
最も好ましくは、前記使用は、同種移植片を移植された対象における同種移植片拒絶反応の予防及び/又は治療を含む。これは、臓器移植片を移植された対象における臓器移植片拒絶反応の予防及び/又は治療とも称され得る。特に好適な実施態様は、肝又は腎移植片を移植された対象における、肝臓移植又は腎移植拒絶反応の予防及び/又は治療における使用のための、上で定義されるような組成物である。
【0099】
同種移植は、同じ種の遺伝学的に非同一のドナーからのレシピエントへの細胞、組織、又は器官の移植である。該移植片は、同種移植片(allograft)、同種異系移植片(allogeneic transplant)、又は同種移植片(homograft)と呼ばれる。大部分のヒト組織、細胞、及び臓器移植片は、同種移植片である。
【0100】
同種移植片は、移植された器官、組織、又は細胞であり得る。好ましくは、同種移植片は、肝臓、腎臓、又は心臓、最も好ましくは、肝臓又は腎臓である。同種移植片に対する免疫応答は、拒絶反応と命名されている。本発明の組成物は、異種移植を受けている対象における異種移植片拒絶反応の予防及び/又は治療にも有用であり得る。異種移植片は、異なる種由来の器官、組織、又は細胞の移植片である。
【0101】
拒絶反応は、細胞免疫(標的細胞のアポトーシスを誘導するキラーT細胞によって媒介される)及び液性免疫(抗体分子を分泌する活性化B細胞によって媒介される)による適応免疫応答であるが、その作用には、自然免疫応答の成分(食細胞及び可溶性免疫タンパク質)が加わる。タクロリムスは、強力な免疫抑制剤であり、すなわち、これは、外来性の器官、組織、又は細胞(同種移植片又は異種移植片)に対する免疫系の応答を抑制することによって、器官又は組織の拒絶反応を予防及び/又は治療する。
【0102】
別の実施態様において、前記使用は、自己免疫疾患の予防及び/又は治療を含む。当業者は、本発明の組成物によって治療することができる自己免疫疾患又は状態を認識しているであろう。当該使用は、ループス腎炎の予防及び/又は治療を含み得る。
【0103】
本発明の組成物の好適な実施態様において、前記トリブロックコポリマーの前記ジブロックコポリマーに対する重量比は、約4:1である。
【0104】
好適な実施態様において、前記組成物は、約10~30w/w%のタクロリムス、任意に、約10~20w/w%のタクロリムス、任意に、約20w/w%のタクロリムス、任意に、約10w/w%のタクロリムスを含む。
【0105】
好適な実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、約24~32w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、26~30w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、約27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、約28w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、約24w/w%の前記トリブロックコポリマーを含む。
【0106】
好適な実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、約6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、任意に、約7~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、任意に、約7w/w%の前記ジブロックコポリマー、任意に、約6w/w%の前記ジブロックコポリマーを含む。
【0107】
典型的には、前記組成物又は使用のための組成物は、約30~60w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約40~50w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約45~50w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約45w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約60w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約55w/w%のジメチルスルホキシドを含む。
【0108】
前記組成物又は使用のための組成物は、約150mPa.s~約3000mPa.s、約200mPa.s~約3000mPa.s、約1000mPa.s~約3000mPa.s、約1000mPa.s.~約2000mPa.s、好ましくは、約1500mPa.s~約1700mPa.sの力学的粘性率を有し得る。あるいは、前記組成物又は使用のための組成物は、200mPa.s.~約2000mPa.s、任意に、約300mPa.s~約1500mPa.s、任意に、約350mPa.s~約1000mPa.s、任意に、約400mPa.s~約500mPa.sの力学的粘性率を有し得る。
【0109】
前記組成物又は使用のための組成物は、1種以上の医薬として許容し得る賦形剤をさらに含んでいてもよい。
【0110】
特に好適な実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、44~46w/w%のジメチルスルホキシド、及び19~21w/w%のタクロリムスを含み、かつ該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4であり、かつ該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0111】
別の実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、54~56w/w%のジメチルスルホキシド、及び9~11w/w%のタクロリムスを含み、かつ該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4であり、かつ該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0112】
別の特に好適な実施態様において、前記組成物又は使用のための組成物は、23~25w/w%の前記トリブロックコポリマー、5~7w/w%の前記ジブロックコポリマー、59~61w/w%のジメチルスルホキシド、及び9~11w/w%のタクロリムスを含み、かつ該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、4であり、かつ該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量は、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比は、3である。
【0113】
さらなる態様において、本発明は、上述のような対象の免疫系の治療的抑制の方法であって、該対象に前述のような組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。「免疫系の治療的抑制」という言い回しは、同種移植片拒絶反応又は自己免疫疾患などの免疫の状態又は疾患の予防及び/又は治療に繋がる免疫系の抑制を意味する。
【0114】
さらなる態様において、本発明は、上述のような同種移植片を移植された対象において同種移植片拒絶反応を予防又は治療する方法であって、該対象に前述のような組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0115】
前記組成物は、ヒト又は非ヒト動物に投与され得る。
【0116】
上述の組成物又は使用のための組成物は、典型的には、体内に注射されたときにデポ、すなわち、「インサイチュデポ」を形成するのに適している。
【0117】
本発明の組成物は、注射によって投与されてデポを形成する。「デポ」と呼ばれる固体又は半固体の塊などの局在化した塊の中に薬物を蓄積させる、通常、皮下、皮内、又は筋肉内の流動性医薬組成物の注射が存在する。本明細書で規定されるデポは、注射するとすぐにインサイチュで生成する。従って、製剤は、溶液又は懸濁液として調製することができ、体内に注射することができる。本発明において、前記組成物は、典型的には、皮下注射によって投与され、デポは、皮膚の下に形成される。
【0118】
「インサイチュデポ」は、対象内への前記医薬組成物の注射後に該組成物の析出によって形成される固体又は半固体の局在化した塊である。医薬組成物は、水溶液に実質的に不溶であるコポリマーを含む。従って、該医薬組成物は、ヒト又は動物の体の水性環境に接触すると、転相が生じて、組成物を液体から固体へと変化させる、すなわち、組成物の析出が起こり、「インサイチュデポ」の形成に繋がる。
【0119】
「インサイチュデポ」は、従来技術に記載されるヒドロゲル医薬製剤と明確に区別することができる。ヒドロゲルは、大量の水を吸収することができる三次元ネットワークを有する。ヒドロゲルを構成するポリマーは、水溶液に可溶性である。対照的に、本発明で用いられるポリマーは、水溶液に実質的に不溶である。本発明の医薬組成物は、水を含まないか、又は水を実質的に含まない。例えば、本発明の医薬組成物は、1%w/w未満の水、又は0.5%w/w未満の水を含む。
【0120】
実施態様が、「を含む」という用語を用いて記載されている場合はいつでも、「からなる」及び/又は「本質的に~からなる」という用語によって記載されるその他の点では類似の実施態様が含まれる。
【0121】
本開示に引用される参考文献は全て、それらの全体がこれによって引用により組み込まれる。加えて、本明細書において引用される又は言及される全ての製品の全ての製造業者の説明書又はカタログは、引用により組み込まれる。本文書に引用により組み込まれている文書、又はその中の全ての教示を、本発明の実践に使用することができる。本文書に引用により組み込まれている文書を、先行技術であると認めるものではない。
【0122】
【実施例】
【0123】
(実施例)
(実施例1: 材料)
(直鎖状ブロックコポリマー合成)
コポリマーを、軽微な改変を加えて、引用により本明細書に組み込まれているUS6,350,812に記載の方法に従い合成した。典型的には、必要量のPEG(トリブロックコポリマーを与える)又はメトキシ-PEG(ジブロックコポリマーを与える)を、反応容器内で65℃で加熱し、真空下で2時間乾燥させた。DL-ラクチド(目標LA/EOモル比に対応)及び乳酸亜鉛(ラクチドの量の1/1000)を添加した。先ず、反応混合物を、3回の短時間の真空/N2サイクルによって脱水した。反応混合物を、140℃で加熱し、真空下で急速に脱気した。反応を、一定の窒素流(0.2バール)の下で140℃で4日間行った。反応を、室温まで冷却し、その内容物を、アセトンに溶解させ、次いで、エタノールでの析出を行った。それに続き、得られた生成物を、減圧下乾燥させた。本明細書に記載されるトリブロックPLA-PEG-PLAポリマーを、PxRyと表記する。式中、xは、PEG鎖のサイズをkDaで表し、yは、LA/EOモル比である。本明細書に記載されるジブロックmPEG-PLAポリマーを、dPxRyと表記する。式中、xは、PEG鎖のサイズをkDaで表し、yは、LA/EOモル比である。
【0124】
得られた生成物を、その残留ラクチド含量について及びR比の決定について1H NMRによって特性評価した。
【0125】
1H NMR分光法は、Brucker Advance 300MHz分光計を用いて行った。全ての1H NMRスペクトログラムについて、MestReNovaソフトウェアを、ピークの積分及びその解析のために用いた。化学シフトは、CDCl3のδ=7.26ppm溶媒値を基準とした。
【0126】
乳酸単位のエチレンオキシド単位に対する比(LA/EO)を記述するR比の決定のために、全てのピークを、別々に積分した。シグナルの強度(積分値)は、該シグナルを構成する水素の数に直接比例する。R比(LA/EO比)を決定するために、積分値は、同質かつ同じ数のプロトンを表すものである必要がある(例えば、全てのシグナル値が、1Hについて決定される)。次いで、PLAの特徴的なピーク1つとPEGの1つを用いて、LA/EO比を決定する。この方法は、ポリマー末端官能基に対して得られるシグナルを無視することができる1000g/molを超えるPEGの分子量に対して妥当である。
【0127】
(実施例2: インビトロ放出試験)
(製剤調製:)
風袋を差し引いた空のガラスバイアル内に、必要とされるコポリマーの量を秤量した。該ガラスバイアルから、再び風袋を差し引いた。正確な質量のDMSOを、パスツールピペットを用いて添加した。次いで、ビヒクル(コポリマー+溶媒)を、完全にコポリマーが溶解するまで室温(RT)で6~7時間ローラーミキサーに載せた。次いで、新たな適切なガラスバイアルの風袋を差し引き、必要とされるタクロリムス一水和物の量を秤量した。10mLのシリンジを用いて、正しい量のビヒクルを、API粉末の上に添加した。バイアルに、窒素を流し、アルミニウムを用いて光から保護した。次いで、製剤を、ローラーミキサーに室温で1晩載せた。
【0128】
(インビトロ放出設定:)
製剤中の初期タクロリムス含量及び目標用量に応じて、注射体積を決定した。次いで、適切な量の製剤を、前もってボルテックスしておいた対応するガラスバイアルから0.5mL Codanシリンジ中に抜き出した。シリンジを清潔にし、風袋を差し引き、製剤を、針が付いていない該シリンジから、あらかじめ充填された50mLの放出バッファーが入った150mLの三角フラスコに直接注入した。用いたバッファーは、1%のBrij(登録商標)35を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS) pH 7.4である。注入後、溶媒は、製剤から離れて拡散し、残ったポリマーは、水性環境内でインサイチュデポを形成する。析出及びデポ形成が生じたら、デポを、メスを用いてシリンジから分離した。シリンジを秤量し直して、正確なデポ質量を決定した。
【0129】
ポリマー溶液中に組み込まれたタクロリムスは、凝固すると、ポリマーマトリックスの内部に封入された。
【0130】
全てのデポが形成されたら、ガラスバイアルを、74rpmで37℃の一定の振盪下で維持した。
【0131】
IVRを以下に詳述される工程の後に分析した:
(IVRサンプリング及びAPI定量用のIVR試料の調製)
各所望の時点において、十分な量のバッファーを、バッファー全ての更新の前に、分析のために150mL三角フラスコから抜き出した。1mLの各試料を、0.2μmの親水性フィルターで濾過して、1mLのHPLCガラスバイアルに入れた。媒体の残りは廃棄し、50mLの新たなバッファーを、ガラスバイアルに添加した。シンク条件(sink condition)を、全ての試験期間の間維持した。放出されたバッファー内のAPI含量を、UPLC用いて決定した。製剤から放出されたAPIの量を、タクロリムスの濃度が、1~200μg/mlの範囲にわたる検量線から計算した。
【0132】
インビトロ放出試験の結果を用いて、インビボ試験の間に試験される候補を選択した。また、当該結果を、
図1~8に示す。インビトロ及び/又はインビボ試験で試験した製剤を、下記表1に示す。
(表1)
【表2】
【0133】
(実施例3:注入性)
注入性分析を、Lloyd Instruments FT+テクスチュロメーターを用い、下記手順に従い行った:
製剤を、15秒ボルテックスした。500μLの製剤を、無針の1mLのSoft-jectシリンジを用いて抜き出した。注入性測定の間の干渉を避けるために、気泡を取り除いた。次いで、21G 1”テルモ針を、該シリンジに取り付けた。シリンジを、テクスチュロメーターに配置した。流速は、500μL/分に固定した。製剤の注入は、一定速度で始まった。注射装置(すなわち、シリンジ+針)は、各反復ごとに交換された。
【0134】
各反復を注入するのに必要なニュートン(N)での平均の力を、テクスチュロメーターソフトウェアを用いて計算した。注入性分析は、十分な量が利用可能な場合には、三連で行われた。結果を、表2に開示する。
【0135】
【0136】
(実施例4: 力学的粘性率分析)
力学的粘性率分析は、円錐-平板測定系を取り付けたAnton Paarレオメーターを用いて、以下の分析条件を用いて行った:
-測定系:50mm直径及び1度の円錐角の円錐-平板(CP50)。CP50は、低い粘度を示す製剤の厳密な値を得るのにより適切である
-剪断速度動作範囲:10~1000s-1
-25℃に制御された温度
-製剤の量:0.7mL。
【0137】
製剤を、分析の前に10秒間ボルテックスした。スパチュラを用いて温度調節された測定板の中央に、適切な量の試料を配置した。測定系を低下させ、0.104mmの隙間を、測定系と測定板との間に残した。21の粘度測定点を、10~1000s-1剪断速度の全体にわたって決定した(1ディケードあたり10点)。
【0138】
粘度データは、曲線プラトーの平均値である、100s
-1の剪断速度で計算されたものに対応する。力学的粘性率分析は、十分な量が利用可能な場合には三連で行った。結果を、表3に開示する。
(表3)
【表4】
【0139】
(実施例5: 薬物動態(PK)試験:)
表4に種々のPK試験の設計をまとめる。
(表4: PK実験設計)
【表5】
【0140】
(PK1: 雌のGottingenミニブタでの皮下投与後のタクロリムスの種々の持続放出製剤の2か月間薬物動態試験及びタクロリムスの皮下バイオアベイラビリティ試験)
(タクロリムスの絶対バイオアベイラビリティの評価)
(インビボ詳細設定手順:)
0.2mg/mLのタクロリムス溶液(0.8%のKolliphor EL、3.2%のエタノール99.9%、及び96%の生理食塩水が入ったビヒクルに溶解させたタクロリムス)を、12~14月齢で20~30kgの体重の雌のGottingenミニブタでの皮下バイオアベイラビリティ試験において試験した。各動物の用量体積は、2.5mg/動物の固有用量(unique dose)に対応する12.5mLであった。溶液を:
-20mLのポリプロピレンシリンジ及び23Gの翼状針を用いて耳の静脈内に静脈内投与した
20mLのポリプロピレンシリンジ及び21Gの針を用いて、腋窩領域/肩部に対して尾側の皮膚のひだ(skin fold)に皮下投与した。
【0141】
血液試料を、投与前及び種々の時点でEDTAチューブ内に集めた:
-静脈内投薬:投薬の終了後5分(0.083時間)、15分(0.25時間)、30分(0.5時間)、並びに1、2、6、24、48、72、及び96時間
皮下投薬:投薬の終了後30分(0.5時間)、並びに1、2、4、6、10、24、48、72、及び96時間。
【0142】
適格の分析用手順を用いて、全血試料を分析して、試験項目の濃度を決定した。
【0143】
(持続放出製剤の2か月薬物動態試験)
(インビボ詳細設定手順:)
3つのタクロリムス製剤を、12~14月齢で体重が20~30kgの雌のGottingenミニブタでの薬物動態試験において試験した。70mgのタクロリムスを含有する医薬製品を、1mLのSoft Ject(登録商標)シリンジ及び21G又は19Gの針を用いて、ミニブタの腋窩領域/肩部に対して尾側の皮膚のひだに皮下投与した。注射された製剤の体積は、該製剤中の初期タクロリムス含量に応じて610μL、200μL、又は300μLに固定された。血液試料を、投与前及び種々の時点でEDTAチューブ内に集めた:T0.5h、T1h、T2h、T4h、T6h、T10h、T24h(第1日)、T48h(第2日)、T72h(第3日)、T96h(第4日)、T168h(第7日)、T240h(第10日)、T336h(第14日)、T408h(第17日)、T504h(第21日)、T576h(第24日)、T672h(第28日)、T840h(第35日)、T1008h(第42日)、T1176h(第49日)、T1344h(第56日)。適格の分析用手順を用いて、全血試料を分析して、試験項目の濃度を決定した。
【0144】
結果を、
図9に示し、表5に、対象となる対応PKパラメーターをまとめる。
(表5: 70mg/動物F77、F78及びF72の単回皮下投与後の全血中のタクロリムスの平均±SD PK1パラメーター(薬物動態相))
【表6】
$:中央値(範囲);/D1:1kgあたりの実際の用量によって用量規格化;-:該当せず。
【0145】
静脈内投与後、タクロリムスは、ゆっくりと排出され、複数の組織に高度に分布していた。皮下投与後、4時間でCmaxに到達し、タクロリムスの平均皮下バイオアベイラビリティは、92.4%であった。
【0146】
F78、F77及びF72の70mg/動物の皮下投与後、動物は全て、2か月にわたってタクロリムスに曝露された。その吸収は、10時間から24時間の間にCmaxに到達するゆっくりとしたものであった。バーストは、LAI製剤で制御されており、最低Cmaxが、F72及びF78で観察された。これらのバーストは、即時放出化合物(779kg・ng/mL/mg)のSC投与の後に得た用量規格化Cmaxと比較して制御されている。最高総曝露及び最低相互ばらつき(inter-variability)が、F72で観察された。最後に、CmaxとClastとの差は、F72で最も低かった。
【0147】
(PK2: 3か月の追跡期間を設けた雌のGottingenミニブタでの皮下経路による4回の月1回反復投与後のタクロリムスの種々の持続放出製剤の薬物動態試験)
(インビボ詳細設定手順:)
2種のタクロリムス製剤を、11~12月齢で体重が22~25kgの雌のGottingenミニブタでの薬物動態試験において試験した。3つの異なるタクロリムス用量:10mg、20mg、及び40mgを試験した。医薬製品を、1mLのSoft Ject(登録商標)シリンジ及び21G又は19Gの針を用いて、ミニブタの腋窩領域/肩部に対して尾側の皮膚のひだに皮下投与した。注射される製剤体積は、該製剤中の初期タクロリムス含量及び目標用量に応じて60~350μLに固定した。4回の月1回反復投与を行い、それに続き、3か月の追跡期間を設けた。血液試料を、投与前及び種々の時点でEDTAチューブ内に集めた:
-各注射後(第1日、第29日、第57日、及び第85日):T2h、T4h、T6h、T10h、T24h、T48h、T72h、T96h、T168h、T240h、T336h、T408h、T504h、T576h、T672h。適格の分析手順を用いて、全血試料を、試験項目の濃度について分析した。
3か月の追跡期間内:
試験の終了まで週1回(4時点/月)、第120日、第128日、第135日、第150日、第158日、第165日、第173日、第180日、第188日、第195日、及び第203日。
【0148】
適格の分析用手順を用いて、全血試料を分析して、試験項目の濃度を決定した。
【0149】
結果を、表6及び
図10及び
図11に示す。
(表6: 第1日、第29日、第57日、及び第85日におけるタクロリムスの皮下投与後の雌のGottingenミニブタ全血中のタクロリムス薬物動態学的パラメーターの概要)
【表7】
$:中央値(min-max);/D1:1kgあたりの実際の用量で除したもの;/D2:動物1頭あたりの実際の用量で除したもの;
1: 単一の値に基づく;
2: C
672を用いて計算された。
3: AUC
last/D1の代わりにAUC
(0-672)/D1を使用
【0150】
4か月間のF87の10、20、及び40mg/動物又はF72の20及び40mg/動物でのタクロリムスの月1回の各皮下注射後に、タクロリムスの血中濃度は、672時間のサンプリング期間の全期間にわたり定量可能であった。3か月の追跡において、定量可能な血中濃度が、第203日まで観察された。
【0151】
%CVによって評価される血中濃度の相互ばらつきは、双方の製剤について同等であり、平均%CVは、およそ13%から60%の範囲であった。
【0152】
用量効果を、F87の10~40mg/動物の用量又はF72の20~40mg/動物での曝露パラメーター、Cmax/D1、及びAUClast/D1又はAUC0-672/D1を比較することによって評価した。濃度対時間曲線下面積(AUC)を、線形台形法を用いて計算した。値は、すぐ前の用量と比較された。全体的に、曝露は、F87では用量に比例する様式よりも少ない様式で増加し、F72では用量に比例する様式で増加した。
【0153】
図10に認められるように、F87のプロファイル形状は、大きなピークと、それに続く血中レベルのゆっくりした低下を示した。一方、F72のプロファイル形状は、タクロリムスのより持続放出性の高いプロファイルよりも細いピークと、それに続く速い血中レベルの低下を示した。これは、F87と比較してF72についての濃度のより低いΔによっても示された。全体的に、20mg/動物又は40mg/動物での曝露は、F72とF87とで類似していた。
【0154】
定常状態で、ヒトでの臨床的有効性(Advagraf、製品情報)に対応する5~20ng/mLの目標範囲内のタクロリムスの全血レベル及び130~475ng.時間/mLの目標範囲内の1日毎AUC(すなわち、475/130=3.65の1日毎AUC比)を用いて、ミニブタにおいて候補のインビボで性能を評価した。結果を、
図11に示す。
【0155】
(PK3: 8週間の追跡期間を設けた雌のGottingenミニブタでの皮下経路で投与されたタクロリムスの種々の持続放出製剤の4週間薬物動態試験)
(インビボ詳細設定手順:)
3種のタクロリムス製剤を、9~14月齢で体重が20~26kgの雌のGottingenミニブタでの薬物動態試験において試験した。20mgのタクロリムスを含有する医薬製品を、1mLのSoft Ject(登録商標)シリンジ及び21Gの針を用いてミニブタの腋窩領域/肩部に対して尾側の皮膚のひだに皮下投与した。注射される製剤体積は、該製剤中の初期タクロリムス含量に応じて90又は175μLに固定した。1回の初期投与を行い、それに続き2か月の追跡期間を設けた。血液試料を、投与前及び種々の時点でEDTAチューブ内に集めた:
-注射後:T2h、T4h、T6h、T10h、T24h(第1日)、T48h(第2日)、T72h(第3日)、T96h(第4日)、T168h(第7日)、T240h(第10日)、T336h(第14日)、T408h(第17日)、T504h(第21日)、T576h(第24日)、T672h(第28日)。適格の分析手順を用いて、全血試料を、試験項目の濃度について分析した。
【0156】
2か月の追跡期間内:試験の終了まで週1回(4時点/月)、第36日、第43日、第50日、第57日、第64日、第71日、第78日、及び第85日。
【0157】
適格の分析用手順を用いて、全血試料を分析して、試験項目の濃度を決定した。結果を、表7並びに
図12及び
図13に示す。
(表7: PK3)
【表8】
$:中央値(範囲);/D1:1kgあたりの実際の用量で除したもの;-:該当せず。
【0158】
F70;F109、及びF117の皮下注射後、タクロリムスの血中濃度は、最後のサンプリング(F70及びF109については第84日及びF117については第112日)まで定量可能であった。類似のAUClast 3Mが、全ての製剤について得られたが、最低のCmax及びタクロリムスレベルの相互ばらつきが、F117で得られた。
【0159】
タクロリムスレベルは、
図12に示されるように、F117でのみ、注射後28日間にわたり5~20ng/mLの狭い臨床的目標範囲内にとどまった。
図13に示されているように、個々の及び平均の1日毎AUC比は、3.65の閾値に近いか又はそれを下回った。
【0160】
本発明を、以下の条項に言及してさらに詳細に説明する:
1. (a)組成物全体の22~34w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の5~9w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~32w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~62w/w%の量の有機溶媒
を含む医薬組成物。
【0161】
2. 対象の免疫系の治療的抑制における使用のための医薬組成物であって、
該使用が、該医薬組成物を該対象に投与することを含み、
該組成物が:
(a)組成物全体の22~34w/w%の量の、式:
PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、かつwは、3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、かつv=x又はv≠xである)
を有するトリブロックコポリマー;
(b)組成物全体の5~9w/w%の量の、式:
mPEGy-PLAz
(式中、y及びzは、yが、2~250の範囲かつzが、1~3,000の範囲である繰り返し単位の数である)
を有するジブロックコポリマー;
(c)組成物全体の8~32w/w%の量の、タクロリムス又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物;及び
(d)組成物全体の30~62w/w%の量の有機溶媒
を含む前記医薬組成物。
【0162】
3. 前記トリブロックコポリマーに関して、wが、20~25の整数であり、かつv及びxがそれぞれ、35~60又は40~50の整数であり、好ましくは、wが、約22であり、かつv及びxがそれぞれ、約45であるか;又はwが、20~25の整数であり、かつv及びxがそれぞれ、50~90又は60~75の整数であり、好ましくは、wが、約22であり、かつv及びxがそれぞれ、約68である、条項1又は条項2記載の組成物又は使用のための組成物。
【0163】
4. 前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、4又は6である、条項1~3のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0164】
5.前記ジブロックコポリマーに関して、yが、7~10の整数であり、かつzが、50~90又は60~85の整数であり、好ましくは、yが、約8であり、かつzが、約68であるか;又はyが、38~52 43~47の整数であり、かつzが、100~180又は129~141の整数であり、好ましくは、yが、約45であり、かつzが、約136である、条項1~4のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0165】
6. 前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、0.35kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、8.5であるか;又は前記PEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、条項1~5のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0166】
7. 前記タクロリムスが、タクロリムス一水和物である、条項1~6のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0167】
8. 前記組成物の複数回用量が、前記対象に投与され、任意に、該用量が、該対象の生涯にわたって投与される、条項2~7のいずれか1項記載の使用のための条項2~7のいずれか1項記載の組成物。
【0168】
9. 連続する用量の投与間の期間が、少なくとも7日間又は少なくとも14日間、好ましくは、少なくとも21日間、最も好ましくは、少なくとも28日間である、条項8記載の使用のための条項8記載の組成物。
【0169】
10. 4週毎に又は月1回で前記対象に投与される、条項2~9のいずれか1項記載の使用のための条項2~9のいずれか1項記載の組成物。
【0170】
11. 条項2~10のいずれか1項記載の使用のための条項2~10のいずれか1項記載の組成物であって、該使用が、該組成物の非経口投与、好ましくは、該組成物の皮下注射を含む、前記組成物。
【0171】
12. 条項2~11のいずれか1項記載の使用のための条項2~11のいずれか1項記載の組成物であって、該使用が、該組成物を、針及びシリンジを用いて、任意に、注射装置を用いて注射することを含む、前記組成物。
【0172】
13. 前記対象に投与されるタクロリムスの用量が、該対象に投与される前記組成物の体積を調整することによって制御される、条項2~12のいずれか1項記載の使用のための条項2~12のいずれか1項記載の組成物。
【0173】
14. 条項2~13のいずれか1項記載の使用のための条項2~13のいずれか1項記載の組成物であって、該組成物の投与後少なくとも7日間又は少なくとも14日間、好ましくは、少なくとも21日間、最も好ましくは、少なくとも28日間、前記対象の血漿中に治療濃度のタクロリムスを放出する、前記組成物。
【0174】
15. 前記対象の血漿中のタクロリムスの前記治療濃度が、5~20ng/mLであり、但し、タクロリムスの濃度は、48時間までの期間は20ng/mLよりも高くすることができることを条件とする、条項14記載の使用のための条項14記載の組成物。
【0175】
16. 条項2~15のいずれか1項記載の使用のための条項2~15のいずれか1項記載の組成物であって、該使用が、約130~475ng.時間/mLの範囲に1日毎AUCを維持することを含む、前記組成物。
【0176】
17. 条項2~16のいずれか1項記載の使用のための2~16のいずれか1項記載の組成物であって、該使用が、約3.60~約3.70の範囲の最大値未満、好ましくは、約3.65未満に1日毎AUC比を維持することを含む、前記組成物。
【0177】
18. 条項2~17のいずれか1項記載の使用のための条項2~17のいずれか1項記載の組成物であって、該組成物が、約100~約350mg/mL、好ましくは、約230mg/mL、又は好ましくは、約115mg/mLのタクロリムスの用量濃度を含む、前記組成物。
【0178】
19. 用量が、約0.1mL~約2mL、任意に、約0.1mL~約1.5mL、任意に、約0.1mL~約1mL、任意に、約0.1mL~約0.5mLの体積で投与される、条項2~18のいずれか1項記載の使用のための条項2~18のいずれか1項記載の組成物。
【0179】
20. 約1秒~約2分、任意に、約1秒~1分、任意に、約1秒~約30秒、任意に、約1秒~約20秒、任意に、約1秒~約10秒、任意に、約1~約5秒の期間にわたって注射される、条項2~19のいずれか1項記載の使用のための条項2~19のいずれか1項記載の組成物。
【0180】
21. 条項2~20のいずれか1項記載の使用のための条項2~20のいずれか1項記載の組成物であって、該使用が、同種移植片を移植された対象における同種移植片拒絶反応の予防及び/又は治療を含む、前記組成物。
【0181】
22. 前記同種移植片が、器官、組織、又は細胞である、条項21記載の使用のための条項21記載の組成物。
【0182】
23. 前記同種移植片が、肝臓、腎臓、又は心臓、好ましくは、肝臓又は腎臓である、条項21又は条項22記載の使用のための条項21又は条項22記載の組成物。
【0183】
24. 条項2~20のいずれか1項記載の使用のための条項2~20のいずれか1項記載の組成物であって、該使用が、自己免疫疾患の予防及び/又は治療を含み、任意に、該使用が、ループス腎炎の予防及び/又は治療を含む、前記組成物。
【0184】
25. 体内に注射されたときにデポを形成するのに適している、条項1~24のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0185】
26. 前記有機溶媒が、ジメチルスルホキシドである、条項1~25のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0186】
27. 前記トリブロックコポリマーの前記ジブロックコポリマーに対する重量比が、約4:1である、条項1~26のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0187】
28. 約10~30w/w%のタクロリムス、任意に、約10~20w/w%のタクロリムス、任意に、約20w/w%のタクロリムス、任意に、約10w/w%を含む、条項1~27のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0188】
29. 約24~32w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、約26~30w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、約27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、任意に、約28w/w%の前記トリブロックコポリマーを含む、条項1~28のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0189】
30. 約6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、任意に、約7~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、任意に、約7w/w%の前記ジブロックコポリマーを含む、条項1~29のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0190】
31. 約30~60w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約40~50w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約45~50w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約45w/w%のジメチルスルホキシド、任意に、約55w/w%のジメチルスルホキシドを含む、条項1~30のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0191】
32. 約150mPa.s.~約3000mPa.s又は200mPa.s.~約3000mPa.s、任意に、約1000mPa.s~約3000mPa.s、任意に、約1000mPa.s~約2000mPa.s、任意に、約1500mPa.s~約1700mPa.s、任意に、約300mPa.s~1500mPa.s、任意に、約350mPa.s~1000mPa.s、任意に、約400mPa.s~500mPa.sの力学的粘性率を有する、条項1~31のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0192】
33. 1種以上の医薬として許容し得る賦形剤をさらに含む、条項1~32のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0193】
34. 前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、4である、条項1~33のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0194】
35. 前記トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、6である、条項1~33のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0195】
36. 前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、0.35kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、8.5である、条項1~35のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0196】
37. 前記ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、条項1~35のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0197】
38. 27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、44~46w/w%のジメチルスルホキシド、及び19~21w/w%のタクロリムスを含み、かつ
該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、4であり、かつ該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、
条項1~34のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0198】
39. 27~29w/w%の前記トリブロックコポリマー、6~8w/w%の前記ジブロックコポリマー、54~56w/w%のジメチルスルホキシド、及び9~11w/w%のタクロリムスを含み、かつ
該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、4であり、かつ
該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、
条項1~34のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0199】
40. 23~25w/w%の前記トリブロックコポリマー、5~7w/w%の前記ジブロックコポリマー、59~61w/w%のジメチルスルホキシド、及び9~11w/w%のタクロリムスを含み、かつ
該トリブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、1kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、4であり、かつ
該ジブロックコポリマーに関して、前記PEG繰り返し単位の分子量が、2kDaであり、かつ乳酸/エチレンオキシドモル比が、3である、
条項1~34のいずれか1項記載の組成物又は使用のための組成物。
【0200】
41. 条項1~41のいずれか1項記載の対象の免疫系の治療的抑制の方法であって、該対象に請求項1~41のいずれか1項記載の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【0201】
40. 同種移植片を移植された対象において同種移植片拒絶反応を予防又は治療する方法であって、該対象に条項1~39のいずれか1項記載の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【国際調査報告】