(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】エレベータのシャフト内のキャビンの現在位置に関する情報を評価するための方法およびコントローラ
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20231218BHJP
B66B 3/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B66B3/00 R
B66B3/02 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536419
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2021085958
(87)【国際公開番号】W WO2022129206
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビッラ,バレリオ
【テーマコード(参考)】
3F303
【Fターム(参考)】
3F303CB01
3F303CB11
3F303CB42
(57)【要約】
エレベータ(1)のシャフト(5)内のキャビン(3)の現在位置に関する情報を評価するための方法およびコントローラ(15)が提案され、本方法は、レーザ距離測定装置(33)を用いて、キャビン(3)のキャビン参照位置とシャフト(5)内のシャフト参照位置との間の距離を測定するステップと、距離を測定する際にレーザ距離測定装置(33)によって検出されたレーザビーム(35)の品質を表すレーザ品質データをレーザ距離測定装置(33)から取得するステップと、測定された距離およびレーザ品質データを考慮に入れて、キャビン(3)の現在位置に関する情報を評価するステップと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ(1)のシャフト(5)内のキャビン(3)の現在位置に関する情報を評価するための方法であって、
レーザ距離測定装置(33)を用いて、キャビン(3)のキャビン参照位置とシャフト(5)内のシャフト参照位置との間の距離を測定するステップと、
距離を測定する際にレーザ距離測定装置(33)によって検出されたレーザビーム(35)の品質を表すレーザ品質データをレーザ距離測定装置(33)から取得するステップと、
測定された距離およびレーザ品質データを考慮に入れて、キャビン(3)の現在位置に関する情報を評価するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
レーザ品質データは、距離を測定する際にレーザ距離測定装置(33)によって検出されたレーザビーム(35)の強度を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レーザ品質データは、検出されたレーザビーム(35)の品質が所定の下限を下回ることを示す場合には、キャビンの現在位置に関する情報の信頼性が不十分であると考えられる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
レーザ品質データは、検出されたレーザビーム(35)の品質が所定の差分限界を超えて突然低下したことを示す場合には、キャビンの現在位置に関する情報の信頼性が不十分であると考えられる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
レーザ距離測定装置(33)は一時的に停止され、
距離が測定され、レーザ距離測定装置(33)を再起動した後にレーザ品質データが取得される、
請求項~ら4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
キャビン(3)がシャフト(5)内に停止されると、レーザ距離測定装置(33)が一時的に停止され、
キャビン(3)がシャフト(5)内で変位し始めると、レーザ距離測定装置(33)が再起動される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
エレベータの運転方法であって、
エレベータ(1)の機能は、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法で評価された、エレベータ(5)のシャフト(5)内のキャビン(3)の現在位置に関する情報に基づいて制御される、方法。
【請求項8】
エレベータ(1)のシャフト(5)内のキャビン(3)の現在位置に関する情報を決定するためのコントローラ(15)であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施および制御することの少なくとも一方のために構成される、コントローラ(15)。
【請求項9】
エレベータ(1)であって、
キャビン(3)と、
シャフト(5)と、
キャビン(3)のキャビン参照位置とシャフト(5)のシャフト参照位置との間の距離を測定するレーザ距離測定装置(33)と、
請求項8に記載のコントローラ(15)と、
を備えるエレベータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのシャフト内のキャビンの現在位置に関する情報を評価するための方法に関する。本発明はまた、エレベータの運転方法に関する。さらに、本発明は、そのような方法を実施するように構成されたコントローラ、およびそのようなコントローラを備えるエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータでは、キャビンは、一般に、建物全体の異なるレベルで様々なフロアに接近するためにシャフトに沿って変位する。安全対策を実施するために、および/またはキャビンをシャフト全体にわたって正確に変位させ、走行キャビンを意図されたレベルで正確に停止させるなどの機能を実施するために、シャフト内のキャビンの現在位置を知る必要がある。キャビンの現在位置に関する情報は、例えば、エレベータ内の駆動エンジン、制動機構、および/または他の機能を制御するエレベータコントローラによって使用されてもよい。
【0003】
シャフト内のキャビンの現在位置に関する情報を特定するための様々な従来の方法および技術がある。典型的には、そのような方法および技術は、信頼性の高い位置情報を提供するために、厳しい安全要件を満たさなければならない。
【0004】
欧州特許出願公開第2516304号明細書は、エレベータシステムのフロア位置検出装置を開示している。その中で、ホールセンサは、エレベータシャフト全体の異なる位置に配置された磁気マーカを検出するために使用される。多数の分散された磁気マーカのうちの1つまたは複数を局所的に検出することに基づいてキャビンの位置に関する情報を決定するためのそのような手法は、正確で信頼性の高い位置検出を提供することができるが、一般に複雑なハードウェアを必要とする。したがって、位置検出装置の製造、設置、および/またはメンテナンスは、手間がかかり、費用がかかる可能性がある。
【0005】
英国特許出願公開第2211046号明細書は、シャフト内のキャビンの動きを監視するための装置を開示している。その中で、レーザ送信機は、シャフトの長さに沿ってレーザビームを送信するようにシャフトの一端に配置される。反射器は、レーザビームを反射して送信機に隣接して配置された受信機に戻すようにキャビンに取り付けられている。受信機の出力は、シャフト内のキャビンの位置およびシャフトに対するキャビンの速度を決定するために監視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2516304号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2211046号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、キャビンの現在位置のそのようなレーザベースの監視は、そのような手法の信頼性が、いくつかの安全性が重要な用途には不十分であり得るように、様々な妨害の影響またはエラーを受ける可能性があることが分かっている。
【0008】
エレベータのシャフト内のキャビンの現在位置に関する情報を評価するための方法が必要とされる場合があり、この方法は、決定された位置情報の十分な信頼性を提供しながら、設置および/または維持が容易な比較的単純なハードウェアおよび/またはハードウェアを必要とする。加えて、キャビン位置が示された方法で評価されるエレベータを運転するための方法が必要とされる場合がある。さらに、そのような方法を実施するためのコントローラ、およびそのようなコントローラを備えるエレベータが必要とされる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのような必要性は、独立請求項の主題によって満たされ得る。有利な実施形態は、従属請求項ならびに以下の明細書および図面に画定されている。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、エレベータのシャフト内のキャビンの現在位置に関する情報を評価するための方法が提案される。本方法は、好ましくは示された順序で、少なくとも以下のステップ、
レーザ距離測定装置を用いて、キャビンのキャビン参照位置とシャフト内のシャフト参照位置との間の距離を測定するステップと、
距離を測定する際にレーザ距離測定装置によって検出されたレーザビームの品質を表すレーザ品質データを、レーザ距離測定装置から取得するステップと、
測定された距離およびレーザ品質データを考慮に入れて、キャビンの現在位置に関する情報を評価するステップと、
を備える。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、エレベータを運転するための方法が提案される。その中で、エレベータの機能は、本発明の第1の態様の一実施形態による方法で評価された、エレベータのシャフト内のキャビンの現在位置に関する情報に基づいて制御される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、エレベータのシャフト内のキャビンの現在位置に関する情報を特定するためのコントローラが提案される。その中で、コントローラは、本発明の第1および第2の態様のうちの1つの実施形態による方法を実施および/または制御するように構成される。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、エレベータが提案され、エレベータは、とりわけ、キャビンと、シャフトと、キャビンにおけるキャビン参照位置とシャフトにおけるシャフト参照位置との間の距離を測定するためのレーザ距離測定装置と、を備え、本発明の第3の態様の一実施形態によるコントローラをさらに備える。
【0014】
本発明の基礎となる実施形態の考えは、とりわけ、以下の観察および認識に基づくものとして解釈されてもよい。
【0015】
既に上で簡単に示したように、エレベータシャフト内のキャビンの現在位置を検出するための技術が開発されている。特定された位置情報を安全性重視の用途に使用することを可能にするために、そのような技術は信頼性が高くなければならない。例えば、そのような技術は、例えばSIL2またはSIL3などの高い安全完全性レベルに準拠しなければならない。したがって、エレベータにおける従来のキャビン位置決定技術は、一般に複雑で高価である。
【0016】
簡単に要約すると、本明細書に記載の手法は、エレベータシャフト内の現在のキャビン位置を評価または最終的に特定するための、単純で比較的安価な技術を使用し、そのような技術の信頼性を大幅に高めることを目的とする。具体的には、エレベータシャフト内の固定参照位置とキャビン内の別の参照位置との間の距離を測定するために、レーザ距離測定装置が適用されるべきである。このような距離測定の結果は、様々な影響や外乱を受ける可能性があり、誤った測定結果をもたらす可能性があることが分かっているため、レーザ品質データを追加で取得することが提案されている。このようなレーザ品質データは、指示された距離を測定している間にレーザ距離測定装置によって検出されたレーザビームの品質を表す。そのようなレーザ品質データは、十分に明確な方法で示された距離を測定するのに十分な情報を含まないが、そのような品質データは、距離測定プロセスに関する追加の情報を提供することができる。次いで、そのような追加の情報は、そのような測定の信頼性を高めるために、レーザ距離測定装置によって測定された距離に基づいてキャビンの現在位置に関する情報を評価する際に考慮に入れることができる。好ましくは、レーザ品質データは、エレベータ装置内で既にアクセス可能な1つまたは複数のデータソースを使用して取得されてもよい。例えば、放射されたレーザビームの反射部分を検出するためのレーザ距離測定装置に備えられた光センサは、その主な目的として、反射物体までの距離が判定され得る信号およびデータを提供することができ、追加の情報源として、レーザビームの反射部分のレーザ品質を示す信号およびデータを提供することができる。最後に、レーザ距離測定装置によって測定された距離と取得されたレーザ品質データの両方に基づいてエレベータキャビンの現在位置に関する情報を評価することによって、結果として得られる全体的なキャビン位置情報は、レーザ品質データをさらに考慮せずにレーザ距離測定装置の測定値のみが使用される場合よりも実質的に高い信頼性で提供され得る。したがって、本明細書に記載の手法では、キャビン位置評価および判定は、比較的単純で安価なハードウェアで実施されてもよく、判定結果に信頼性を高めることができるので、提供されたキャビン位置情報は、安全性および信頼性の要件が高まった場合でも使用されてもよい。特に、提案された手法は、一般に、適切なレーザ品質データを提供するためのハードウェアがエレベータ装置および/またはそのレーザ距離測定装置において一般にアクセス可能であるため、レーザ距離測定装置の測定結果の信頼性を高めるための追加のハードウェアをほとんどまたは全く必要としない。
【0017】
以下では、本明細書で提案される手法の可能な実施形態を、より詳細に説明する。
【0018】
キャビン参照位置とシャフト参照位置との間の距離を測定するために適用されるレーザ距離測定装置は、物体に向かってレーザビームを放射し、物体で反射されたレーザビームの一部を検出して、検出されたレーザビーム部分を解析することに基づいて物体の距離を測定する装置であってもよい。例えば、レーザ距離測定装置は、物体の距離を測定するために飛行時間(TOF)技術を使用してもよい。ここで、レーザ光を放射してからレーザ光の反射部分を受信するまでの測定された持続時間は、反射物体の距離を計算するために使用される。任意選択的に、放出されたレーザ光と受信されたレーザ光との間の振動位相の位相シフトが、飛行時間を決定するために使用されてもよい。
【0019】
レーザ距離測定装置は、レーザビームを放射するためのレーザ源と、反射レーザビーム光を検出するための光検出器と、光検出器によって提供される信号を解析するための処理ユニットと、を備えてもよい。レーザ距離測定装置は、比較的単純な構造および/または高いロバスト性の従来の市販の装置であってもよい。レーザ源は、可視スペクトルのレーザビームまたは、例えば赤外スペクトルの不可視レーザビームなどの任意の種類のレーザビームを放射するものとしてよい。レーザ源は、連続レーザビーム(cwレーザ)または、例えば距離測定目的に適合されたパルス長を有するパルスレーザビームを放射するものとしてよい。光検出器は、離れた物体で反射されたときに放射されたレーザビームの一部を検出し、そのようなレーザビーム部分を解析するために処理ユニットに信号を供給するように構成されてもよい。次いで、処理ユニットは、反射物体の距離を最終的に計算するために、例えば飛行時間を判定するものとしてよい。
【0020】
レーザ距離測定装置は、変位可能なエレベータキャビンにおける第1の位置と、エレベータシャフト内で静止している第2の位置と、の間の距離を測定するために適用される。第1の位置は、本明細書ではキャビン参照位置と呼ばれ、キャビン参照位置がエレベータシャフト内のキャビンの位置と明確に相関するように、エレベータキャビンの固定位置に設けられた任意の場所または設備と一致するものとしてよい。第2の位置は、本明細書ではシャフト参照位置と呼ばれ、エレベータシャフト内に、例えばエレベータシャフトの上部または底部に固定的に設けられた静止位置である。例えば、軸参照位置にレーザ距離測定装置が設置されてもよいし、キャビン参照位置にレーザビーム反射部が設置されてもよいし、その逆でもよい。したがって、レーザ距離測定装置とレーザビーム反射器との間の距離を測定することによって、エレベータシャフト内のエレベータキャビンに関する明確な情報が取得されてもよい。
【0021】
しかしながら、レーザ距離測定装置によって提供される、説明された測定値のみに基づいてキャビンの位置を判定することは、様々な影響および外乱を受ける可能性があることが分かっている。例えば、経時的に、および/または構成要素に作用する機械的な力により、レーザ距離測定装置および/またはレーザビーム反射器は、それらの元のキャビンおよびシャフトの参照位置および/または設置方向から変位する可能性があり、その結果、測定された距離は、エレベータシャフト内の現在のキャビン位置をより正確に示さなくなる。さらにまた、レーザ距離測定装置および/またはレーザ光反射部にゴミや汚れが堆積すると、レーザビームの検出性が低下するおそれがある。最悪の場合、レーザ距離測定装置とレーザビーム反射器との間の直接視界は、例えばエレベータシャフト内の異物によって遮られる可能性があり、レーザビーム反射器までの距離ではなく、そのような遮っている異物までの距離が誤って測定される。同様に、レーザ距離測定装置および/またはレーザビーム反射器の位置および/または設置方向は、レーザ距離測定装置がレーザビーム反射器によって反射されたレーザビーム部分を検出しなくなるが、他の物体で反射されたレーザ光を検出し得ることとなり、したがって、レーザビーム反射器までの距離の代わりにそのような物体までの距離を測定するように、過度に変更されてもよい。
【0022】
一般に、従来の手法では、レーザ距離測定装置による距離測定結果の信頼性の有無を確実に検出することができなかった。特に、レーザ距離測定装置が何らかの信号を提供している限り、これらの信号が、レーザ距離測定装置とレーザビーム反射器との両方で反射されたレーザビーム部分を検出することに起因するのか、レーザ距離測定装置とレーザビーム反射器とが正確に位置決めされているのか、またはそのような信号が乱れたまたは誤った測定に起因するのかを判定することができなかった。
【0023】
このような欠点を克服するために、距離測定結果の信頼性を向上させることができるさらなる情報を取得することが提案されている。特に、レーザ距離測定装置によって提供される測定距離の妥当性は、レーザ品質に関するさらなる情報に基づいて評価されてもよい。以下でさらに詳細に説明するように、シャフト内のキャビンの現在位置に関する必要な情報を取得するために、距離測定結果を評価する際に、様々なタイプのレーザ品質データが取得されてもよく、および/またはそのようなレーザ品質データが様々な方法で使用されてもよい。
【0024】
ここで、レーザ品質データは、検出されたレーザビーム部分に基づいて、キャビン参照位置とシャフト参照位置との間の距離が測定され得るように、レーザ距離測定装置によって検出されたレーザビームの部分の品質に関するものであることが重要である。しかしながら、レーザ品質データ自体は、一般に、レーザ品質データのみに基づいて示された距離を決定することができるような十分な情報を具備していない。代わりに、レーザ品質データに加えて、反射されたレーザビーム部分を検出すると、正確で十分に明確な距離測定結果を可能にするために、さらなる物理的特性および対応するデータが取得されてもよい。例えば、取得されたレーザビーム部分は、レーザ距離測定装置のレーザ源によって最初に放射されたレーザビーム部分に関して、それらの発振位相および/またはそれらの飛行時間について解析されてもよい。そのような発振位相および/または飛行時間に含まれる情報は、レーザビーム部分が反射される物体までの距離を正確に計算するために使用されてもよいが、そのような測定中に追加的に取得されるレーザ品質データは、一般に、物体までのそのような距離に応じて変化し得るが、しかし、そのような変化は、典型的には、距離から一義的には依存せず、したがって、そのような距離を計算するために使用され得ない。換言すれば、物体までの距離はレーザ品質データに影響を及ぼす可能性があるが、同じまたは同様の方法でレーザ品質データに影響を及ぼす可能性がある、さらなる影響が存在する可能性があり、したがって、物体までの距離が変化したかどうか、またはレーザ品質データの変化が他の影響の結果であるかどうかは、レーザ品質データのみに基づいて判定されない可能性がある。しかしながら、追加的に取得されたレーザ品質データは、例えば、妥当性を解析することによって、例えば上述の振動位相および/または飛行時間データを評価するのに役立ち得る。
【0025】
したがって、レーザ距離測定装置によって測定された距離だけでなく、レーザ品質データも考慮に入れることによって、キャビンの現在位置に関する情報が著しく高い信頼性で評価されてもよい。これは、距離測定手順における外乱または誤差がレーザ品質データに含まれる情報と比較して認識され得るので、特に当てはまる可能性がある。
【0026】
例えば、レーザ品質データの解析が、測定された距離が妥当であり、したがって信頼できるように見えることを示す場合、キャビンの現在位置に関する情報は信頼できるとマークされ得る。言い換えれば、キャビンの現在位置に関する情報は、レーザ距離測定装置によって測定されたエレベータシャフト内のキャビンの位置を示す実際の位置データからなるだけでなく、さらにそのような位置データの信頼性を示す信頼性データからなるものであることができる。例えば、信頼性データは、レーザ距離測定装置によって測定された距離が厳しい公差内で妥当であること、許容可能な公差内で妥当であること、許容可能な公差内で妥当ではないが、公差範囲からわずかに外れているだけであること、または全く妥当ではないことを示し得る。したがって、例えば、キャビン位置情報のこれらの位置データを続いて使用するエレベータコントローラなどのエレベータの他の構成要素は、追加で提供された信頼性データに基づいて、これらのデータが信頼性要件を満たすかどうかを決定してもよい。
【0027】
一実施形態によれば、レーザ品質データは、キャビン参照位置とシャフト参照位置との間の距離を測定する際に、レーザ距離測定装置によって検出されたレーザビームの強度を表すものであってもよい。
【0028】
言い換えれば、レーザ品質データは、レーザ距離測定装置に備えられたセンサを使用して検出され、指示された距離の測定と同時に検出された物理的特性と相関し得る。次いで、これらの物理的特性は、レーザ距離測定装置内で検出され、それに基づいて示された距離が正確かつ十分に明確に決定され得るレーザビーム部分の強度と相関する。そのような強度は、例えばレーザ距離測定装置の光センサの表面に入射するレーザビーム部分の照明パワーと相関する。
【0029】
一般に、上述の距離を測定する際にレーザ距離測定装置によって検出されるレーザビームの強度は、測定される距離に応じて実質的に変化する。この場合、キャビン参照位置とシャフト参照位置との間の距離が大きいほど、典型的には、検出されたレーザビームの強度は小さくなる。一般に、検出されたレーザビームの強度は、示された距離で線形または非線形に変化し得る。したがって、レーザ距離測定装置によって検出されたレーザビームの測定された強度を考慮に入れることによって、その発振位相および/またはその飛行時間データなどの、そのような検出されたレーザビームの他の物理的特性に基づいて決定された距離が、その妥当性についてチェックされてもよい。
【0030】
例えば、測定された距離が現在縮小しているように見える場合、すなわち、キャビンがシャフト参照位置に接近しているように見えるが、同時に取得されたレーザ品質データが、レーザビームの強度が同時に減少することを示している場合には、そのような状況で予想されるように増加するのではなく、これは、レーザ距離測定装置の実際の距離測定値とそのレーザ品質データの挙動との間に特定の矛盾があることを示していると解釈され得る。したがって、レーザ距離測定装置によって提供される距離測定結果の信憑性は、最適ではないか、許容できない程度に低下しているとさえ考えられる。
【0031】
しかしながら、上述したシャフト参照位置とキャビン参照位置との間の距離への依存に加えて、レーザ距離測定装置によって検出されるレーザビームの強度は、さらなる効果および影響に依存し得る。
【0032】
例えば、そのような強度は、例えば、レーザビームを放射するレーザ距離測定装置のレーザ源と、このレーザビームの一部を反射するレーザビーム反射器との間の任意の位置ずれによって実質的に影響を受ける可能性がある。例えば、そのような位置ずれの場合、放出されたレーザビームはもはやレーザビーム反射器に集束されなくてもよく、および/またはレーザビーム反射器で反射されたレーザビームの一部はもはやレーザ距離測定装置に備えられた光検出器に向けられなくてもよい。したがって、そのような位置ずれの結果として、検出されたレーザビームの強度は、十分な位置合わせの場合よりも実質的に小さくなり得る。したがって、レーザビームの強度の低下を検出することは、記載された位置ずれを示すものとみなされてもよく、したがって、距離測定から導出されたキャビンの現在位置に関する情報の信頼性が低下する可能性があることを示すことができる。
【0033】
一実施形態によれば、レーザ品質データが、検出されたレーザビームの品質が所定の下限を下回ることを示す場合、キャビンの現在位置に関する情報は、信頼性が不十分であると考えられる。
【0034】
言い換えれば、レーザ距離測定装置によって使用される検出されたレーザビーム部分の品質は、連続的または反復的に監視されてもよく、取得されたレーザ品質データが解析されてもよい。そのような解析では、検出されたレーザビーム部分の監視された品質が所定の限界未満であるかどうかがチェックされてもよい。そのような限界は、エレベータまたはそのレーザ距離測定装置の動作を開始する前に設定されてもよい。限界は、例えば、先行する実験、研究、シミュレーション、計算などに基づいて設定されてもよい。特に、限界は、検出されたレーザの品質がそのような限界を下回ることを示す任意のレーザ品質データが、レーザ距離測定装置を使用してシャフト内のキャビンの現在位置を決定する際に発生した或る誤動作、損傷、位置ずれ、または他の欠陥を示すものとして解釈され得るように設定されてもよい。
【0035】
したがって、レーザ品質が所定の下限を下回ったことを示すレーザ品質データを取得すると、レーザ距離測定装置によって提供される距離測定結果は、現在、不十分な信頼性を被ることが想定され得る。したがって、そのような距離測定結果は、それに応じてマーキングまたは破棄されてもよい。例えば、取得されたレーザ品質データが所定の限界を下回るレーザ品質を示すことを検出すると、距離測定結果を表すデータと共に、不十分な信頼性に関する情報を示すデータがレーザ距離測定装置によって発行されてもよい。したがって、例えば、これらの距離測定結果を通常使用するエレベータコントローラは、不十分な信頼性に関するこのような情報を考慮に入れることができる。
【0036】
例えば、レーザ品質データがレーザ距離測定装置によって検出されたレーザビームの強度を表す場合、そのような強度が所定の下限強度を下回ることを示すレーザ品質データは、レーザ距離測定装置と同時に取得された距離測定結果の信頼性が不十分であることを示すと解釈され得る。
【0037】
そのようなシナリオでは、エレベータキャビンがシャフト参照位置から最大距離にある状況、すなわちレーザ距離測定装置とレーザビーム反射器との間に最大距離がある状況でも、レーザ距離測定装置とレーザビーム反射器とが互いに正確に位置合わせされる限り、レーザ距離測定装置の光センサによって検出されるレーザビーム強度がそのような下限強度を超えるように、下限強度が設定されてもよい。したがって、レーザビーム強度がそのような所定の限界を下回ることが検出された場合、これは、例えば、レーザ距離測定装置とレーザビーム反射器との間に実質的な位置ずれがあることを示し得る。
【0038】
あるいは、レーザビーム強度が所定の限界を下回ることが検出された場合、これは、例えば、レーザ距離測定装置および/またはレーザビーム反射器に備えられた構成要素上に過剰な量の汚れまたは埃があることを示し得る。汚れまたは埃の堆積は、放射されたレーザビームの強度および/またはそのようなレーザビームの反射部分の強度を実質的に低下させる可能性がある。したがって、レーザ距離測定装置内の光検出器に最終的に到達するレーザビーム部分の強度は、距離測定の信頼性が不十分になる可能性があるほど低い場合がある。
【0039】
一実施形態によれば、レーザ品質データが、検出されたレーザビームの品質が所定の差分限界を超えて突然低下したことを示す場合には、キャビンの現在位置に関する情報の信頼性が不十分であると考えられる。
【0040】
言い換えれば、レーザ距離測定装置の光センサで受信されたレーザビーム部分の品質が突然大幅に低下する、すなわち許容可能な量を超えて低下することが検出された場合には、これは、レーザ距離測定装置を使用してシャフト内のキャビンの現在位置を決定する際に発生した或る誤動作、損傷、位置ずれ、または他の欠陥の結果であり得る。したがって、そのような突然の低下を示すレーザ品質データは、そのような誤動作、損傷、位置ずれなどの指標としてもよく、レーザ距離測定装置によって提供される対応するレーザ距離測定値は、それに応じてマーキングまたは廃棄されてもよい。
【0041】
例えば、検出されたレーザビーム部分のレーザビーム強度の突然の減少は、レーザ距離測定装置内のレーザビーム源とレーザビーム反射器との間の突然の位置ずれの結果であり得る。そのような位置ずれは、放射されたレーザビームがもはやレーザビーム反射器によって反射されず、エレベータ装置内の他の表面によって反射されることをもたらし得る。あるいは、そのような位置ずれは、放射されたレーザビームがレーザ距離測定装置内の光センサに向かって反射される代わりに、他の方向にレーザビーム反射器によって反射される結果となり得る。このような突然の位置ずれは、例えばメンテナンス作業中に、すなわち技術者がレーザビーム反射器に当たり、意図せずに変形してその向きが変わるときに発生する可能性がある。
【0042】
前述の実施形態について上述したのと同様に、例えば、距離測定結果を通常使用するエレベータコントローラは、不十分な信頼性に関する情報として機能するマーカを考慮に入れてもよい。
【0043】
一実施形態によれば、エレベータの運転中に、レーザ距離測定装置が一時的に停止される状況が存在する。そのような状況では、本明細書に記載の方法を実行すると、距離が測定され、そのような先行する一時的な停止の後にレーザ距離測定装置を再起動した後にレーザ品質データが取得される。
【0044】
特定の条件下でレーザ距離測定装置を一時的に能動的に停止させることが有利となり得ることが分かった。これにより、例えば、レーザ距離測定装置によって引き起こされるエネルギー消費が低減され得る。さらに、レーザ距離測定装置は、例えば、電力供給の中断、停電、または同様の事象の場合に、意図しない一時的な停止を受ける可能性があることが観察されている。さらなる代替として、例えば安全上重大な誤動作の検出により、または保守作業を行うために、エレベータ装置全体が一時的に停止またはシャットダウンされてもよい。レーザ距離測定装置の停止は、数秒(例えば10秒超)、数分(例えば10分超)、数時間(例えば、1時間超)、または数日間(例えば、1日超)続く場合がある。
【0045】
特にそのような停止期間中、エレベータ装置、特にそのレーザ距離測定装置は、現在のキャビン位置情報の判定が誤っているか、または少なくとも十分に信頼性が高くない結果となり得る変更および修正を受けやすい可能性があることが分かっている。例えば、一時的な停止中に、レーザ距離測定装置またはレーザビーム反射器の構成要素は、それぞれ意図されたキャビン参照位置およびシャフト参照位置に対してそれらの位置がわずかに変位することがあり得る。別の例として、そのような構成要素が損傷する可能性があり、またはレーザビーム反射器は、例えばメンテナンス作業中に意図せず破壊される可能性さえある。
【0046】
レーザ距離測定装置における、そのような変化および修正は、例えばそのようなデバイスによって提供される信号の突然の変化に起因して、デバイスの正常動作中に検出可能であり得るが、変化および修正は、デバイスの一時的な停止期間中に検出されないままとなり得る。したがって、例えば、そのような測定された距離の妥当性の評価または解析を可能にするために、レーザ距離測定装置が再起動された後できるだけ早くレーザ距離測定装置を使用してキャビン参照位置とシャフト参照位置との間の距離を具体的に測定し、次いで適時にレーザ品質データも取得することが提案される。例えば、そのような距離測定、レーザ品質データ取得および/または妥当性解析手順は、エレベータおよびそのレーザ距離測定装置の通常動作が再開されるときまたはその直前に実行されてもよい。一例として、そのような手順は、レーザ距離測定装置を再起動した後に、1分未満、好ましくは10秒未満以内に実行されてもよい。
【0047】
さらなる特定の実施形態では、キャビンがシャフト内で停止すると、レーザ距離測定装置が一時的に停止され、キャビンがシャフト内で変位し始めると、レーザ距離測定装置が再起動される。
【0048】
例えば、いずれかのフロアでキャビンが停止している間は、レーザ距離測定装置が停止されてもよい。そのような状況では、キャビンは、一般に、シャフト内で大きく移動することができず、したがって、キャビンの現在位置は、この現在位置を繰り返し測定する必要がないように静止していると仮定されてもよく、関連するエネルギー消費が節約され得る。キャビンがシャフト内で再び変位し始めると、レーザ距離測定装置は、走行キャビンの現在位置を連続的にまたは繰り返し測定され得るように再起動されてもよい。そのような再起動時に、現在のキャビン位置を示す距離が測定され、レーザ品質データを使用して評価され、場合によってはその信憑性が解析される。これは、キャビンの移動を開始するのと同時に、または、好ましくはそのような移動を開始する直前に行われてもよい。所定の安全要件を満たすなどの特定の状況下では、そのような距離測定、評価、および/または信憑性解析はまた、変位を開始した直後に、例えば、キャビン速度が許容可能な所定の限界を超える前の十分に短い期間内に実行されてもよい。
【0049】
なお、本願出願人は、本願と同時に、すなわち同日に別の特許出願を行った。この他の特許出願は、「Method and controller for determining information about a current location of a cabin in a shaft of an elevator」という名称を有する。上記出願に記載の決定方法は、レーザ距離測定装置を使用してキャビンのキャビン参照位置とシャフトのシャフト参照位置との間の距離を測定するステップと、距離測定とは無関係にキャビンの現在位置と相関する信憑性情報を考慮して、測定された距離の信憑性を解析するステップと、最後に、測定された距離および解析された信憑性に基づいてキャビンの現在位置に関する情報を決定するステップと、を備える。他の特許出願に記載された決定方法の実施形態および詳細は、本明細書に記載された現在のキャビン位置に関する情報を評価するための方法に適用可能または適合されてもよい。したがって、他の特許出願の全内容は、参照により本明細書に含まれるものとする。
【0050】
本発明の第2の態様によるエレベータの運転方法の実施形態では、エレベータの様々な機能は、本明細書で提案される方法で評価されるように、エレベータシャフト内のキャビンの現在位置に関する情報に基づいて制御されてもよい。例えば、エレベータシャフト内のエレベータキャビンの変位および/または乗場などの、意図された場所でのエレベータキャビンの停止は、現在のキャビン位置に関する情報に基づいて制御されてもよい。したがって、この情報は、例えば、エレベータ駆動エンジンの機能を制御するエレベータコントローラに提供され、エレベータコントローラによって使用されてもよい。
【0051】
本発明の第3の態様によるコントローラの実施形態は、例えば、コントローラがレーザ距離測定装置によって提供される信号またはデータを受信することができる1つまたは複数のインターフェースを備えてもよい。さらに、コントローラは、例えばドアセンサ、加速度センサ、エンコーダセンサ、ブレーキセンサなどの他の装置から信号またはデータを受信することができる1つ以上のインターフェースを備えてもよい。したがって、そのようなインターフェースを介して受信された信号は、レーザ品質データおよび/またはエレベータキャビンの現在位置に関する情報を評価および/または特定するのに有用な他のデータを取得するために使用されてもよい。さらに、コントローラは、例えば、測定された距離の信憑性を解析し、測定された距離および解析された信憑性に基づいてキャビンの現在位置に関する情報を判定するために、レーザ距離測定装置からの信号またはデータ、ならびにレーザ品質データを導出するために他の装置から受信した信号またはデータの両方を処理するための処理ユニットを備えてもよい。さらに、コントローラは、例えば上述のように距離情報および/またはレーザ品質データを記憶するための、メモリなどの追加の構成要素を備えてもよい。
【0052】
本発明の第4の態様によるエレベータの実施形態は、エレベータシャフト全体にわたって変位可能なエレベータキャビンを備える。さらに、エレベータは、本明細書に記載のレーザ距離測定装置およびコントローラを備える。レーザ距離測定装置は、エレベータキャビンに取り付けられてもよく、レーザビーム反射器は、エレベータシャフト内に固定して設置されてもよく、またはその逆であってもよい。コントローラは、エレベータの1つまたは複数の機能を制御することとしてもよく、例えば、その駆動エンジンなどのエレベータの他の構成要素と通信してもよい。
【0053】
本発明の実施形態の可能な特徴および利点は、本明細書では、部分的には、現在のキャビン位置情報を評価および/または特定する方法に関して、部分的には、そのような情報を使用してエレベータを動作させる方法に関して、部分的には、そのような方法を実施するように構成されたコントローラに関して、および部分的には、そのようなコントローラを備えるエレベータに関して説明されることに留意されたい。当業者は、本発明のさらなる実施形態に到達するために、特徴が1つの実施形態から別の実施形態に適切に移行されてもよく、特徴が修正、適合、組み合わせ、および/または交換されてもよいことを認識するであろう。
【0054】
以下、添付の図面を参照して、本発明の有利な実施形態を説明する。しかしながら、図面も説明も、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明の一実施形態による、シャフト内のキャビンの現在位置に関する情報の評価方法を実施するためのコントローラを備えたエレベータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図は概略図にすぎず、縮尺通りではない。同じ符号は、同じまたは類似の特徴を指す。
【0057】
図1は、キャビン3がシャフト5に沿って垂直に変位され得るエレベータ1を示す。キャビン3およびカウンタウェイト7は、懸架牽引手段9によって懸架されている。懸架牽引手段9は、駆動エンジン11の駆動ディスク13の円周面に沿って延在する。駆動エンジン11の運転は、コントローラ15によって制御される。例えば、コントローラ15は、キャビン3に設けられたキャビンドア19が乗場17に設けられた乗場ドア21と対向する位置に配置されるように、複数の乗場17のうちの1つでキャビン3が停止され得るように駆動エンジン11を制御してもよい。
【0058】
ここで説明するエレベータ1には、レーザ距離測定装置33が設けられている。レーザ距離測定装置33は、シャフト5内のキャビン3の現在位置に関する情報を評価および判定する際に使用されるべきである。
【0059】
図示する例では、レーザ距離測定装置33は、キャビン3の側方に固定され、レーザビーム35を下方向に出射する。レーザビーム35は、シャフト5の底部またはその近くに設置されたレーザビーム反射器37に向けられている。
【0060】
シャフト5におけるキャビン3の現在位置に関する情報を特定するために、キャビン3のキャビン参照位置とシャフト5のシャフト参照位置との間の距離が、レーザ距離測定装置33を用いて測定される。さらに、レーザ品質データは、レーザ距離測定装置33から取得され、このレーザ品質データは、レーザビーム35がレーザビーム反射器37で反射された後に、上記の距離を測定する際にレーザ距離測定装置33に備えられた光検出器によって検出される際のレーザビームの部分の品質を表す。測定された距離とレーザ品質データの両方を考慮して、シャフト5内のキャビン3の現在位置に関する情報が評価されてもよい。
【0061】
そのような手順では、レーザ品質データは、レーザ距離測定装置33によって検出されたときのレーザビーム35の強度を表してもよい。あるいは、レーザ品質データは、レーザビーム反射器37などの物体で反射され、次いでレーザ距離測定装置33で検出されたときのレーザビーム35の他の物理的特性に関連するものとしてもよい。そのような物理的特性は、例えば、レーザビーム幅、レーザビームパルスの長さ、レーザビームのスペクトルなどに関連するものとしてもよい。より一般的には、そのような物理的特性は、エレベータ動作中に発生する任意の誤動作、外乱、劣化、位置ずれおよび/または他の欠陥に影響され得るレーザビーム35の特性に関連するものとしてもよく、そのような誤動作、外乱、劣化、位置ずれおよび/または他の欠陥の結果、距離測定の信頼性が不十分になる傾向がある。
【0062】
具体的には、レーザビーム反射器37で反射された後にレーザ距離測定装置33で検出されたときのレーザビーム35の品質を表すものとし得るレーザ品質データである。例えば、検出される光強度は、キャビン3の現在位置に応じて変化してもよく、これに対応して、レーザビーム35がレーザ距離測定装置33からレーザビーム反射器37まで戻って移動しなければならない距離に応じて変化する。さらに、検出されたレーザ光強度は、ほとんどの場合、例えばレーザビーム35が位置ずれしてレーザビーム反射器37に集束されなくなったとき、またはレーザビーム反射器37で反射されたときにレーザ距離測定装置33内の光検出器に到達しなくなったときに大幅に減少する。したがって、そのような光強度の低下は、レーザ距離測定装置33によって提供される測定の妥当性または信頼性の損失を示し得るものとなる。
【0063】
例えば、レーザ距離測定装置33によって提供された距離測定結果に基づいて得られたキャビンの現在位置に関する情報は、特定のマーカによって補足されてもよい。そのようなマーカは、そのようなキャビン位置情報の信頼性を示すものとしてよい。具体的には、例えば、レーザ品質データが、検出されたレーザビーム35の品質が所定の下限を下回ることを示し、かつ/またはレーザ品質データが、検出されたレーザビーム35の品質が所定の差分限界を超えて突然低下することを示す場合には、キャビン位置情報は、信頼性が不十分であると考えられ得る。
【0064】
特に、提示された手順は、例えば、いずれかの乗場17でキャビン3が停止している間に、レーザ距離測定装置33が一時的に停止された後に実行されてもよい。したがって、再起動時にレーザ距離測定装置33の動作を再開すると、レーザ距離測定装置33とレーザビーム反射器37との間の距離が測定されてもよく、測定結果は、例えば、それによって提供されるキャビン3の現在位置に関する情報の信頼性を著しく高めるために、それらの妥当性についてチェックされてもよい。したがって、そのような情報は、例えば、シャフト5全体にわたってキャビン3を変位させるための駆動エンジン11の運転を制御するなどの安全上重要な機能のために使用されてもよい。
【0065】
一般に、信号またはデータは、例えば無線信号送信デバイス41を使用して、一方の側の様々なセンサおよび情報源と、他方の側のコントローラ15との間で送信されてもよい。あるいは、ハード配線が確立されてもよい。特に、レーザ距離測定装置33は、例えば、検出されたレーザビーム35の発振位相、飛行時間および/または品質に関する情報を含む様々な信号またはデータを出力shにてもよい。これらの信号およびデータは、レーザ距離測定装置33からコントローラ15に送信されてもよい。次いで、信号またはデータは、処理ユニット43で処理されてもよい。さらに、信号またはデータは、その処理の前または後にメモリ45に記憶されてもよい。
【0066】
最後に、「備える(comprising)」という用語は他の要素またはステップを除外せず、「a」または「an」は複数を除外しないことに留意されたい。また、異なる実施形態に関連して説明した要素が組み合わされてもよい。特許請求の範囲における符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【国際調査報告】