(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】パイプ用軟質ブテン-1コポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 210/08 20060101AFI20231218BHJP
C08F 210/14 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C08F210/08
C08F210/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536807
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021085207
(87)【国際公開番号】W WO2022128793
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】マルキーニ,ロベルタ
(72)【発明者】
【氏名】ピカ,ロベルタ
(72)【発明者】
【氏名】スパタロ,ステファノ
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA04P
4J100AA16Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA24
4J100DA41
4J100DA42
4J100DA49
4J100DA52
4J100FA09
4J100FA19
4J100JA57
4J100JA67
(57)【要約】
本開示は、パイプの製造に特に適しており、以下の特徴を有するブテン-1とヘキセン-1とのコポリマーに関する。
【解決手段】1) ヘキセン-1コモノマー単位の含有量が2~4重量%であること、2) 溶融温度TmIが115℃以上であること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴を有するブテン-1とヘキセン-1とのコポリマー。
1) ヘキセン-1コモノマー単位の含有量が2~4重量%、好ましくは2~3.5重量%、特に2.2~4重量%または2.2~3.5重量%であること
2) 溶融温度TmIが115℃以上、好ましくは117℃以上であること
【請求項2】
MIEが0.1~10g/10分、より好ましくは0.1~1g/10分であり、前記MIEは、ISO 1133-2:2011に準拠して190℃/2.16kgで測定されたメルトフローインデックスである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
X線結晶化度が48%~53%である、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
走査速度10℃/分のDSCにより測定された結晶化温度Tcが68~75℃である、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項5】
0℃でキシレンに可溶な画分の含有量が8重量%以下、より好ましくは6重量%以下であり、全ての場合、下限がコ3.2重量%であることが好ましく、前記量は前記ポリマーの総重量に対するものである、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項6】
Mw/Mnの値が4以上、特に5以上、5.8以上、6以上であり、前記MwはGPC分析により測定された重量平均分子量であり、前記MnはGPC分析により測定された数平均分子量である、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項7】
Mz値が1,000,000~2,500,000g/molであり、前記MzはGPC分析により測定されたz平均分子量である、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項8】
Mz/Mw値が2~4である、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項9】
成形30日後に圧縮プラークに対して標準ISO 178:2019に準拠して測定された曲げ弾性率が、200~300MPa、より好ましくは220~280MPaである、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項10】
成形30日後にISO 8986-2:2009に準拠した圧縮プラークに対してISO 180:2000に準拠して測定された0℃でのアイゾット耐衝撃性が、20~50kJ/m
2、特に20~45kJ/m
2である、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のコポリマーを含む物品。
【請求項12】
パイプ、特にUFHパイプの形態である、請求項11に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ、特に床暖房パイプ(UFHパイプ)の製造に有用である、低い曲げ弾性率を有するブテン-1/ヘキセン-1コポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のブテン-1ポリマーは、当業者に知られており、広範な適用性を有する。特に、結晶化度の高いブテン-1ポリマーは、一般的に耐圧性、耐クリープ性、衝撃強度の点で良好な特性を有しており、金属パイプに代わるパイプの製造に用いることができる。
【0003】
これらがUFHパイプ分野で使用されるための重要な要件の1つは、柔軟性(低い曲げ弾性率)と十分に高い結晶化度と融点との優れた組み合わせであり、これにより、圧性と耐熱性が提供される。
【0004】
このような要件を満たすブテン-1/プロピレン/エチレン三元コポリマーはWO2008132035に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブテン-1とヘキセン-1との特定のコポリマーは、柔軟性、融点および結晶化度のバランスをさらに改善することを見出した。
【0006】
したがって、本開示は、以下の特徴を有するブテン-1とヘキセン-1とのコポリマー(以下、「コポリマー」と称する)を提供する。
1) ヘキセン-1コモノマー単位の含有量が2~4重量%、好ましくは2~3.5重量%、特に2.2~4重量%または2.2~3.5重量%であること
2) 溶融温度TmIが115℃以上、好ましくは117℃以上であること
【0007】
ヘキセン-1コモノマー単位の前記量は、コポリマーの総重量を指す。
【0008】
本発明のコポリマーは、高い融点に加えて、結晶化度が高く、曲げ弾性率が比較的低く、これは良好な柔軟性を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のコポリマーは、ヘキセン-1に加えて、TmIが115℃未満の値にならないことを条件として、他のオレフィンコモノマー単位を含有してもよい。
【0010】
したがって、本明細書で使用されるように、「コポリマー」という用語は、ブテン-1以外の2種以上のモノマー単位を含有するポリマーも含む。
【0011】
ただし、ヘキセン-1単位が唯一のコモノマー単位である(他のコモノマー単位は存在しない)コポリマーが好ましい。
【0012】
本コポリマー中の任意のコモノマー単位の例としては、エチレン、プロピレン、ペンテン-1、オクテン-1のような炭素数7~10のα-オレフィンから選択されるコモノマー単位が挙げられる。
【0013】
本発明のコポリマーは、TmIが115~120℃であることが好ましく、117~120℃であることがより好ましい
【0014】
溶融温度TmIは、コポリマーの結晶形Iに起因する溶融温度である。
【0015】
TmIを測定するには、コポリマーサンプルを溶融した後、10℃/分の冷却速度で20℃まで冷却し、室温で10日間保存し、-20℃まで冷却した後、10℃/分に相当する走査速度で200℃まで加熱することにより、示差走査熱量法(DSC)分析を行う。この加熱運転では、サーモグラムにおける最高温度ピーク値を溶融温度(TmI)とする。
【0016】
好ましくは、本発明のコポリマーは、以下の追加のDSC特徴のうちの少なくとも1つを有する。
【0017】
-10℃/分の走査速度で行われた2回目のDSC加熱走査で測定された融解温度TmIIが105℃~109℃であること
【0018】
-走査速度10℃/分でDSCにより測定された結晶化温度Tcが、68℃~75℃であること
【0019】
TmII温度値は、1回の溶融サイクル(2回目のDSC加熱走査)の後に決定される。
【0020】
したがって、これらは、ポリマーサンプルを最初に溶融した後に行われる加熱運転中に測定されるので、このようなTmII温度値は、本コポリマーの結晶形態IIに起因するものである。
【0021】
溶融または結晶化のピークが1つ以上検出された場合、最も強いピークの温度をTmIIまたはTcとする。
【0022】
好ましくは、本発明のコポリマーのMIEは、0.1~10g/10分、より好ましくは、0.1~1g/10分であり、ここで、MIEはISO 1133-2:2011に準拠して190℃/2.16 kgで測定されたメルトフローインデックスである。
【0023】
本発明のコポリマーは、好ましくは、以下の少なくとも1つの追加的な特徴を有し得る。
-X線結晶化度が48%~53%であること
-0℃でキシレンに可溶な画分の含有量が8重量%以下、より好ましくは6重量%以下であり、全ての場合、下限が3.2重量%であり、前記量はコポリマーの総重量に対するものである。
【0024】
本発明のコポリマーの分子量分布(MWD)は、一般に広い範囲に含まれ得る。しかし、パイプの準備における加工の容易さと最終的な機械的特性の最適なバランスを達成するためには、GPC分析により測定されたMWD値が、Mw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)で表される場合に4以上、特に5以上、5.8以上、6以上であることが好ましい。
【0025】
いずれの場合も、Mw/Mnの値の上限は9であることが好ましい。
【0026】
Mw/Mnの値が5より大きい値は、一般に広いMWDに相当すると考えられる。
【0027】
前記コポリマーは、単独でまたはMw/Mnの値と組み合わせて、好ましくは、Mz値が1,000,000~2,500,000g/molであり、ここで、Mzは、GPC分析により測定されたz平均分子量である。
【0028】
本発明のコポリマーは、Mz/Mw値が2~4であることが好ましい。
【0029】
任意に、エチレンポリマーA)は、以下のさらなる追加特徴のうちの少なくとも1つを有していてもよく、
-成形30日後に圧縮プラークに対して標準ISO 178:2019に準拠して測定された曲げ弾性率が、200~300MPa、より好ましくは220~280MPaであること
-成形30日後にISO 8986-2:20 09に準拠した圧縮プラークに対してISO 180:2000に準拠して測定された23℃でのアイゾット耐衝撃性が30~65kJ/m2、特に35~60kJ/m2であること
-成形30日後にISO 8986-2:20 09に準拠した圧縮プラークに対してISO 180:2000に準拠して測定された0℃でのアイゾット耐衝撃性が20~50kJ/m2、特に20~45kJ/m2であること
-成形30日後に圧縮プラークに対してISO 527-1:2019に準拠して測定された破断伸びが250%~350%であること
【0030】
本発明のコポリマーは、ブテン-1の低圧配位重合、特に、塩化マグネシウムに担持されたチタンのハロゲン化化合物(特に、TiCl4)と助触媒(特にアルミニウムのアルキル化合物)とをベースとするジーグラー・ナッタ触媒を用いてブテン-1およびヘキセン-1(および任意の追加コモノマー)を重合することにより得ることができる。
【0031】
特に、本発明のコポリマーは、(i)Ti化合物およびMgCl2に担持された内部電子供与性化合物を含む固体成分、(ii)アルキルアルミニウム化合物、および(iii)外部電子供与性化合物を含む立体特異的触媒の存在下でモノマーを重合することにより製造することができる。
【0032】
担体としては、活性形態の二塩化マグネシウムが好適に用いられる。特許文献から周知のように、活性形態の二塩化マグネシウムは、ツィーグラー-ナッタ触媒の担体として特に適している。特に、USP 4,298,718およびUSP 4,495,338は、ジーグラー・ナッタ触媒におけるこれらの化合物の使用を初めて記載したものである。これらの特許から分かるように、オレフィンを重合するための触媒成分中の担体または共担体として使用される活性形態のマグネシウムジハライドはX線スペクトルを特徴とし、ここでは、不活性ハロゲン化物のスペクトルに現れる最も強い回折線は強度が弱められ、最大強度がより強い線の最大強度に対してより低い角度にシフトしているハローで置換される。
【0033】
触媒成分(i)に用いられるチタン化合物は、TiCl4およびTiCl3であることが好ましく、また、式Ti(OR)n-y Xy(式中、nはチタンの価数、Xはハロゲン、好ましくは塩素、yは1~nの範囲の数である)で表されるチタノハロアルコキシドを用いることもできる。
【0034】
内部電子供与性化合物は、好ましくはエステルから選択され、さらに好ましくは、モノカルボン酸(例えば安息香酸)またはポリカルボン酸(例えばフタル酸、コハク酸、グルタル酸)のアルキル、シクロアルキルまたはアリールエステルから選択され、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリールは、炭素数1~18のものである。前記電子供与性化合物の例として、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジヘキシル、3,3-ジメチルグルタル酸ジエチルまたはジイソブチルが挙げられる。通常、内部電子供与性化合物はMgCl2に対するモル比が0.01~1、好ましくは0.05~0.5である。
【0035】
アルキル-Al化合物(ii)は、好ましくは、トリアルキルアルミニウム化合物、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどから選択される。トリアルキルアルミニウム化合物と、アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライドまたはアルキルアルミニウムセスキクロライド例えばAlEt2ClおよびAl2Et3Cl3との混合物が使用されてもよい。
【0036】
外部電子供与性化合物(iii)は、Ra
1Rb
2Si(OR3)c(式中、aおよびbは0~2の整数であり、cは1~3の整数であり、(a+b+c)は4であり、R1、R2およびR3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~18のアルキル、シクロアルキルまたはアリールである。)のケイ素化合物から選択されることが好ましい。特に好ましいケイ素化合物群としては、aは0であり、cは3であり、bは1であり、R2はヘテロ原子を含有してもよい分岐アルキルまたはシクロアルキルであり、R3はメチルである。このような好ましいケイ素化合物の例としては、シクロヘキシルトリメトキシシラン、tert-ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルトリメトキシシランおよびヘキシルトリメトキシシランが挙げられる。特に好ましくは、ヘキシルトリメトキシシランを使用する。
【0037】
電子供与性化合物(iii)の使用量は、有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物(iii)とのモル比が0.1~500、好ましくは1~300、より好ましくは3~100となるようにする。
【0038】
触媒を重合ステップに特に適したものとするために、予備重合ステップにおいて触媒を予備重合することができる。前記予備重合は、液体(スラリーまたは溶液)または気相中で、通常100℃未満、好ましくは20~70℃の温度で行われてもよい。予備重合ステップは、固体触媒成分1g当たり0.5~2000g、好ましくは5~500g、より好ましくは10~100gの量で、ポリマーを得るのに必要な時間だけ少量のモノマーで行う。
【0039】
重合方法は、希釈剤として液体不活性炭化水素を用いたスラリー重合や、反応媒体として例えば液体ブテン-1を用いた溶液重合などの公知の技術に従って行うことができる。さらに、重合プロセスは気相にて行われてもよく、1つまたは複数の流動層または機械的撹拌層反応器で操作を行う。重合は反応媒体としての液体ブテン-1中で行うことが非常に好ましい。
【0040】
好ましい重合温度は、特に液状ブテン-1中で重合を行う場合、20~120℃、特に40~90℃である。
【0041】
分子量を制御するために、分子量調整剤、特に水素を重合環境に供給する。
【0042】
重合触媒および方法の例はWO99/45043およびWO2004048424に開示されている。
【0043】
広いMWDを有するコポリマーは、いくつかの方法で得ることができる。1つの方法は、ブテン-1を共重合する際に、実質的に幅広のMWDコポリマーを製造することができる触媒を用いることである。他の可能な方法は、十分に異なる分子量を有するブテン-1ポリマーを、従来の混合装置を用いて機械的にブレンドすることである。
【0044】
また、分子量の異なるブテン-1ポリマーを、各反応器に供給する分子量調整剤の濃度などの反応条件の異なる2つ以上の反応器で順次製造する多段重合方法に従った操作も可能である。
【0045】
本発明のコポリマーは、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、加工助剤、核剤、顔料、有機充填剤および無機充填剤など、その分野で一般的に使用される添加剤も含むことができることは明らかである。
【0046】
前述したように、本発明のコポリマーの好ましい使用は、パイプ、特にUHFパイプの製造である。一般に、改善された熱的および機械的特性を必要とするあらゆる用途に有利に使用することができる。
【0047】
本明細書で提供される様々な実施形態、組成物および方法の実施例および利点は、以下の実施例で開示される。これらの例は説明的なものに過ぎず、いかなる方式で本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0048】
共重合単量体含有量
【0049】
13C NMRにより決定する。
【0050】
13C NMRスペクトルは、フーリエ変換モードで、150.91MHzで動作するクライオプローブを備えたBruker AV-600分光計で取得した。
【0051】
T((炭素のピーク(C. J. Carman, R. A. HarringtonとC. E. Wilkesの命名法により、<高分子(Macromolecules)>、10、3、536(1977))は、内部参照として37.24 ppmで利用される。試料を120℃で1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2に8% wt/v濃度で溶解する。90°パルスで各スペクトルを取得し、パルス間の15秒の遅延およびCPDで1H-13Cカップリングを除去する。9000 Hzのスペクトルウインドウを用いて、約512個の過渡状態を32Kデータ点に格納する。
【0052】
Diad分布は、以下の関係に従って、S((炭素(表1参照)から計算される。
HH=A/Σ
BH=B/Σ
BB=C/Σ
ただし(Σ=A+B+C
【0053】
1-ブテンと1-ヘキセンの合計量(モル%)は、diadによって次の関係式を使用して計算される。
[H]=(HH+0.5 HB)*100
[B]=(BB+0.5 HB)*100
【0054】
次いで、モノマー分子量を用いて、モル組成を重量組成に変換する。
【表1】
【0055】
示差走査熱量測定法(DSC)による溶融および結晶化温度
【0056】
アルミディスクに封入した秤量サンプル(5~10mg)を使用して、Perkin Elmer DSC-7装置を用いて示差走査熱量(DSC)データを取得した。
【0057】
ポリブテン-1結晶形I(TmI)の溶融温度を決定するために、サンプルを10℃/分に相当する走査速度で200℃まで加熱し、200℃で5分間保持した後、10℃/分の冷却速度で20℃まで冷却した。その後、サンプルを室温で10日間保管する。10日後、サンプルをDSCに供し、-20℃まで冷却した後、10℃/分に相当する走査速度で200℃まで加熱した。この加熱運転では、サーモグラムにおける最高温度ピーク、すなわちサーモグラムにおけるより高温側からの第1ピーク温度を溶融温度(TmI)とする。
【0058】
ポリブテン-1結晶形II(TmII)の融解温度および結晶化温度Tcを決定するために、サンプルを10℃/分に相当する走査速度で200℃に加熱し、200℃で5分間保持して、全ての微結晶を完全に融解させ、サンプルの熱履歴を除去した。続いて、10℃/分に相当する走査速度で-20℃まで冷却し、ピーク温度を結晶化温度(Tc)とし、面積を結晶化エンタルピーとする。-20℃で5分間静置した後、10℃/分に相当する走査速度でサンプルについて200℃まで2回目の加熱を行った。この2回目の加熱運転では、ピーク温度をポリブテン-1結晶形IIの融解温度(TmII)、面積を融解エンタルピー(ΔHfII)とする。
【0059】
X線結晶化度の決定
【0060】
X線結晶化度は、固定スリットを備えたCu-Kα1放射線を用いて、回折角度2Θ=5°と2Θ=35°の間で、6秒ごとに0.1°のステップでスペクトルを収集したX線回折粉末回折計を用いて測定した。
【0061】
測定は、厚さ1.5~2.5mm程度、直径2.5~4.0cm程度の円盤状の圧縮成形試験片に対して行う。これらの試験片は、200℃±5℃の温度で、特に圧力を加えることなく10分間圧縮成形プレスで得られた後、約10kg/cm2の圧力を約数秒間かけ、最後の操作を3回繰り返す。
【0062】
回折パターンを使用して、スペクトル全体に適切な線形ベースラインを定義し、スペクトルプロファイルとベースラインの間の総面積(Ta)(カウント/秒・2Θで表される)を計算することにより、結晶化度に必要なすべての成分を導き出した。
次に、全スペクトルに沿って、2相モデルに従ってアモルファス領域と結晶領域を分離する適切なアモルファスプロファイルを定義する。したがって、カウント/秒・2Θで表される非晶質領域(Aa)を、非晶質プロファイルとベースラインとの間の領域、およびカウント/秒・2Θで表される結晶領域(Ca)をCa=Ta-Aaとして計算してもよい。
【0063】
次に、次式に基づいてサンプルの結晶化度を計算した。
【0064】
%Cr=100×Ca/Ta
【0065】
0℃でキシレンに可溶な画分と不溶な画分(XS-0℃)
【0066】
ポリマーサンプル2.5gを135℃で撹拌し、250mlのキシレンに溶解した。30分後、溶液を撹拌しながら100℃まで冷却した後、氷水浴に入れて0℃まで冷却したその後、溶液を氷水浴中で1時間沈殿させた。ろ紙で沈殿物を濾過した。ろ過中、フラスコ内温をできるだけ0℃に近づけるために、フラスコを氷水浴中に放置した。濾過終了後、濾液温度を25℃に保ち、メスフラスコを水流浴に約30分間浸漬した後、50mlのアリコートを2つにわけた。溶液アリコートを窒素ガス流中で蒸発させ、残留物を一定重量に達するまで80℃の真空で乾燥させた。両残留物の重量差が3%未満でなければならない。それ以外の場合は、テストを繰り返す必要がある。そこで、残留物の平均重量からポリマー可溶物の重量百分率(0℃でのキシレン可溶物=XS 0℃)を算出する。0℃でのo-キシレン中の不溶画分(0℃でのキシレン不溶物=XI%0℃)は以下のとおりである。
【0067】
XI%0℃=100-XS%0℃。
【0068】
MIE
【0069】
ISO 1133-2:2011に準拠して190℃、荷重2.16kgで決定した。
【0070】
固有粘度
【0071】
標準ASTM D 2857-16に準拠して135℃でテトラヒドロナフタレン中決定した。
【0072】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるMw、MnおよびMzの決定
【0073】
PolymerChar社のGPC-IR装置を用いて、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により平均値Mn、Mw、Mzとそこから派生したMw/Mnを測定し、この装置は4つのPLgel Olexis混合層(ポリマー実験室社)とIR5赤外線検出器(PolymerChar社)からなるカラムセットを備えている。カラムの寸法は300×7.5mmであり、粒径はμmである。移動相流速は、1.0 mL/minに維持する。全ての測定は150℃で行われる。溶液濃度は2.0mg/ml(150℃)であり、2,6-ジブチル-p-クレゾールを0.3g/L添加して劣化を防止する。GPC計算には、PolymerCharから提供された12個のポリスチレン(PS)標準試料(ピーク分子量範囲266~1220000)を用いて汎用校正曲線を得る。三次多項式フィッティングを用いて実験データを補間し、対応する検量線を得た。Empower 3(Waters)を用いることによりデータ収集と処理を行う。
【0074】
Mark-Houwink 関係を使用して分子量分布と関連する平均分子量を決定した。PSおよびポリブテン(PB)のそれぞれのK値が、KPS=1.21×10-4dL/gおよびKPB=1.78×10-4dL/gであり、また、PSのMark-Houwink指数a=0.706およびPBのa=0.725は使用される。
【0075】
曲げ弾性率
【0076】
成形30日後に標準ISO 178:2019に準拠して圧縮プラークに対して測定して決定した。
【0077】
降伏時と破断時の引張応力と伸び
【0078】
成形30日後に標準ISO 527-1:2019に準拠して圧縮プラークに対して測定して決定した。
【0079】
23℃および0℃におけるアイゾット耐衝撃性
成形30日後にISO 8986-2:20 09に準拠して、ISO 180:2000に準拠した圧縮プラークに対して測定して決定した。
【0080】
多分散性指数
【0081】
この特性は、測定されたポリマーの分子量分布と密接に関連している。特に、溶融状態でのポリマーの耐クリープ性に反比例する。低弾性率値(500Pa)での弾性率分離と呼ばれているこの抵抗は、0.1rad/sから100rad/sに増加した発振周波数で動作するRHEOMETRICS(米国)が販売するRMS-800型パラレルプレートレオメーターを用いて200℃の温度で決定された。弾性率分離から、以下の式によりP.Iを導き出すことができる。
P.I:= 54.6x(弾性率分離)-1.76
弾性率分離は次のように定義される。
弾性率分離=G’での周波数=500Pa/G’’での周波数=500Pa
ここで、G’は貯蔵弾性率であり、G’は損失弾性率である。
【0082】
実施例1と実施例2、および比較例1
【0083】
固体触媒成分の製造
【0084】
0℃で、TiCl4225mlを、窒素ガスでパージされた500mlの四つ口丸底フラスコに導入した。撹拌しながら、ミクロ球状MgCl2(2.7C2H5OH(10,000rpmではなく3,000rpmで動作している以外、USP4,399,054の実施例2で説明したように調製されている)を添加した。フラスコを40℃に加熱し、フタル酸ジイソブチルを4.4mmol添加した。100℃に昇温して2時間保持した後、撹拌を停止して固形物を沈殿させ、上澄み液をサイフォンで吸引した。
【0085】
新鮮なTiCl4を200ml添加し、120℃で1時間反応させた後、上澄み液をサイフォンで吸引し、得られた固形物を60℃で無水ヘキサン(6×100ml)により6回洗浄した後、真空乾燥させた。触媒成分は、2.8重量%のチタンと12.3重量%のフタル酸エステルとを含有する。
【0086】
重合
【0087】
重合は、液体ブテン-1が液体媒体を構成する直列に接続された2つの液相撹拌反応器内で、予備接触工程の後に連続して行われた。予備接触ステップでは、固体触媒成分、アルミノアルキル化合物トリイソブチルアルミニウムおよび外部供与体であるエチルトリメトキシシランを表2に示す相対量で予備混合した。触媒系を最初の反応器に注入し、表2に報告した条件で重合を行った。
【0088】
第1重合ステップの後、第1反応器の内容物を第2反応器に移送し、第2反応器で同じ表2に示す条件で重合を継続した。触媒を不活性化させて脱揮ステップで重合物質を移送することにより重合を停止した。
【0089】
この方法の詳細な説明は、国際特許出願WO2004000895に記載されている。
【0090】
得られたコポリマーを特徴付けた結果を表3に示す。
【表2】
*当該反応器内で生成したポリマーの量
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴を有するブテン-1とヘキセン-1とのコポリマー。
1) ヘキセン-1コモノマー単位の含有量が2~4重量%であること
2) 溶融温度TmIが115℃以上であること
【請求項2】
MIEが0.1~10g/10分であり、前記MIEはISO 1133-2:2011に準拠して190℃/2.16kgで測定されたメルトフローインデックスである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
X線結晶化度が48%~53%である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
走査速度10℃/分のDSCにより測定された結晶化温度Tcが68~75℃である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項5】
0℃でキシレンに可溶な画分の含有量がコポリマーの総重量に対して8重量%以下である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項6】
Mw/Mnの値が4以上であり、前記MwはGPC分析により測定された重量平均分子量であり、前記MnはGPC分析により測定された数平均分子量である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項7】
Mz値が1,000,000~2,500,000g/molであり、前記MzはGPC分析により測定されたz平均分子量である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項8】
Mz/Mw値が2~4である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項9】
成形30日後に標準ISO 178:2019に準拠して圧縮プラークに対して測定された曲げ弾性率が200~300MPaである、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項10】
成形30日後にISO 8986-2:2009に準拠した圧縮プラークに対して標準ISO 180:2000に準拠して測定された0℃でのアイゾット耐衝撃性が、20~50kJ/m
2である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項11】
前記コポリマーを含む、物品。
【請求項12】
パイプ、特にUFHパイプの形態である、請求項11に記載の物品。
【国際調査報告】