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特表2023-553702活動性強直性脊椎炎を処置するための抗TNF抗体、組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】活動性強直性脊椎炎を処置するための抗TNF抗体、組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231218BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231218BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 31/635 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 31/4706 20060101ALI20231218BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P19/02 ZNA
A61P43/00 121
A61K31/519
A61K31/635
A61K31/4706
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536888
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 IB2021061863
(87)【国際公開番号】W WO2022130281
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,638
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/140,307
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン,ダイアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シャ,エリザベス シー.
(72)【発明者】
【氏名】キム,リー-リアン
(72)【発明者】
【氏名】ロ,キム フン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086CB09
4C086DA20
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA35
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、活動性強直性脊椎炎(AS)の処置における抗TNF抗体又はその抗原結合断片を利用する組成物及び方法、例えば、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を有する抗TNF抗体を利用する処置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、前記方法が、前記患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を投与するステップを含み、処置の16週間後に、前記患者が、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善、及び強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)からなる群から選択される転帰を達成し、前記転帰が、処置の52週間まで維持又は改善される、方法。
【請求項2】
前記抗TNF抗体が前記患者の体重1kg当たり2mgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるように、前記抗TNF抗体が静脈内注入(IV)によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗TNF抗体が、配列番号38の可変重鎖アミノ酸配列及び配列番号39の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗TNF抗体が、配列番号36の重鎖アミノ酸配列及び配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗TNF抗体がゴリムマブ抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)及び/又はヒドロキシクロロキン(HCQ)と共に、前記抗TNF抗体を投与するステップを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、前記方法が、前記患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を投与するステップを含み、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の前記改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり維持される又は継続して改善する、前記方法。
【請求項8】
前記抗TNF抗体が前記患者の体重1kg当たり2mgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるように、前記抗TNF抗体が静脈内注入(IV)によって投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗TNF抗体が、配列番号38の可変重鎖アミノ酸配列及び配列番号39の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記抗TNF抗体が、配列番号36の重鎖アミノ酸配列及び配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記抗TNF抗体がゴリムマブ抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)及び/又はヒドロキシクロロキン(HCQ)と共に、前記抗TNF抗体を投与するステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、前記方法が、前記患者に配列番号38の可変重鎖アミノ酸配列及び配列番号39の可変軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体の組成物を静脈内注入(IV)により投与し、こうして、前記抗TNF抗体が、前記患者の体重1kg当たり2mgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるステップを含み、処置の16週間後に、前記患者が、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善、及び強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)からなる群から選択される転帰を達成し、前記転帰が、処置の52週間まで維持又は改善される、前記方法。
【請求項14】
前記抗TNF抗体が、配列番号36の重鎖アミノ酸配列及び配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗TNF抗体がゴリムマブ抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)及び/又はヒドロキシクロロキン(HCQ)と共に、前記組成物を投与するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎の処置に使用するための抗TNF抗体を含む組成物であって、前記抗TNF抗体が、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含み、処置の16週間後に、前記患者が、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善、及び強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)からなる群から選択される転帰を達成し、前記転帰が、処置の52週間まで維持又は改善される、前記組成物。
【請求項18】
前記抗TNF抗体が、配列番号38の可変重鎖アミノ酸配列及び配列番号39の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗TNF抗体が、配列番号36の重鎖アミノ酸配列及び配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗TNF抗体がゴリムマブ抗体である、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物は、前記抗TNF抗体が、前記患者の体重1kg当たり2mgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるよう、静脈内注入(IV)によって投与される、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)及び/又はヒドロキシクロロキン(HCQ)を更に含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎の処置に使用するための抗TNF抗体を含む組成物であって、前記抗TNF抗体が、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含み、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の前記改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり維持されるか又は継続して改善する、前記組成物。
【請求項24】
前記抗TNF抗体が、配列番号38の可変重鎖アミノ酸配列及び配列番号39の可変軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記抗TNF抗体が、配列番号36の重鎖アミノ酸配列及び配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記抗TNF抗体がゴリムマブ抗体である、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物は、前記抗TNF抗体が、前記患者の体重1kg当たり2mgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるよう、静脈内注入(IV)によって投与される、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)及び/又はヒドロキシクロロキン(HCQ)を更に含む、請求項27に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、2021年12月3日付で作成された、「JBI6445WOPCT1Seqlist.txt」というファイル名のASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出された、25KBのサイズを有する配列表を含む。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、活動性強直性脊椎炎(AS)の処置における抗TNF抗体又はその抗原結合断片を利用する組成物及び方法、例えば、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を有する抗TNF抗体を利用する処置に関する。
【0003】
(発明の背景)
TNFαは、17kDのタンパク質サブユニットの可溶性ホモ三量体である。TNFの膜結合型の26kDの前駆体形態も存在する。
【0004】
単球又はマクロファージ以外の細胞もTNFαを産生する。例えば、ヒト非単球腫瘍細胞株はTNFα並びにCD4+及びCD8+末梢血Tリンパ球を産生し、いくつかの培養されたT及びB細胞株もTNFαを産生する。
【0005】
TNFαは、軟骨及び骨の分解、接着分子の誘導、血管内皮細胞で凝血促進活性を誘導する、好中球及びリンパ球の接着を増大させる、並びにマクロファージ、好中球及び血管内皮細胞からの血小板活性化因子の放出を刺激するなど、組織損傷をもたらす炎症誘発作用を引き起こす。
【0006】
TNFαは、感染、免疫障害、腫瘍性病態、自己免疫病態及び移植片対宿主病態に関連している。TNFαとがん及び感染性病態との関連は、宿主の異化状態に関連していることが多い。がん患者は、通常食欲不振に関連する体重減少に悩まされる。
【0007】
がん及びその他の疾患に関連する大幅な衰弱は、「悪液質」として知られる。悪液質は、悪性腫瘍の成長に応答する、進行性の体重減少、食欲不振、及び除脂肪体重の持続的衰えを含む。悪液質状態は、多くのがん罹患率及び死亡率の原因となる。TNFαが、がん、感染性病態及びその他の異化状態における悪液質に関与するという証拠がある。
【0008】
TNFαは、発熱、倦怠感、食欲不振、及び悪液質を含む、グラム陰性敗血症及び内毒素ショックにおいて中心的な役割を果たすと考えられている。内毒素は、単球/マクロファージ生成並びにTNFα及びその他のサイトカインの分泌を強く活性化する。TNFα及びその他の単球由来サイトカインは、内毒素に対する代謝及び神経ホルモン応答を媒介する。ヒトボランティアへの内毒素投与は、発熱、頻脈、増加した代謝速度、及びストレスホルモン放出など、インフルエンザのような症状を伴う急性疾病をもたらす。TNFαの循環が、グラム陰性敗血症に罹患した患者において増加する。
【0009】
したがって、TNFαは、炎症性疾患、自己免疫疾患、ウイルス、細菌及び寄生虫感染、悪性腫瘍、並びに/又は神経変性疾患に関連付けられており、関節リウマチ及びクローン病などの疾患における特定の生物学的治療に有用な標的である。TNFαに対するキメラモノクローナル抗体(cA2)を用いた非盲検試験における有益な作用が、炎症の抑制、並びに関節リウマチ及びクローン病における再発後の良好な再処置と共に報告されている。cA2を用いた無作為の二重盲検プラセボ対照試験における有益な結果も、関節リウマチにおいて炎症の抑制と共に報告されている。
【0010】
他の研究者は、インビトロで中和活性を有した組換えヒトTNFに特異的なmAbを説明した。これらのmAbのうちのいくつかが、ヒトTNFのエピトープをマッピングし、酵素イムノアッセイを開発するため、また組換えTNFの精製を補助するために使用された。しかしながら、これらの試験は、免疫原性、低特異性及び/又は製薬学的不適性により、ヒトにおけるインビボ診断又は治療用途に使用することができるTNF中和抗体を生成するための基礎を提供するものではない。
【0011】
TNFに対する中和抗血清又はmAbは、ヒト以外の哺乳動物において、実験的内毒素血症及び菌血症における致死的攻撃後の有害な生理学的変化を抑止し、死亡を阻止することが示されている。この作用は、例えば、げっ歯類致死率アッセイ及び霊長類病理モデル系において示されている。
【0012】
hTNFの推定受容体結合座位が開示されており、TNFのアミノ酸11~13、37~42、49~57及び155~157からなるTNFαの受容体結合座位が開示されている。
【0013】
非ヒト哺乳動物、キメラ、ポリクローナル(例えば、抗血清)、及び/又はモノクローナル抗体(Mab)並びに断片(例えば、タンパク質分解消化又はその融合タンパク質生成物)は、ある特定の疾患を処置する試みのために一部の事例において調査されている有力な治療薬である。しかしながら、かかる抗体又は断片は、ヒトに投与された場合、免疫応答を誘発する場合がある。かかる免疫応答は、血液循環からの抗体又は断片の免疫複合媒介クリアランスをもたらし、反復投与を、治療に適さないものとし得、それにより、患者に対する治療的利益が低減し、抗体又は断片の再投与が制限される。例えば、非ヒト部分を含む抗体又は断片の反復投与は、血清病及び/又はアナフィラキシーをもたらし得る。これら及びその他の問題を回避するために、当該技術分野において周知のように、キメラ化及びヒト化を含む、かかる抗体及びその部分の免疫原性を低減するための多くのアプローチが取られてきた。しかしながら、これら及びその他のアプローチは尚も、多少の免疫原性、低親和性、低結合活性を有する、又は細胞培養、スケールアップ、生成及び/若しくは低収率における問題を伴う抗体又は断片をもたらし得る。したがって、かかる抗体又は断片は、治療用タンパク質としての製造又は使用に理想的にはあまり適していない可能性がある。
【0014】
したがって、これらの問題のうちのもう1つを克服する抗TNF抗体又は断片、並びに既知の抗体又はその断片の改善を実現する必要性があった。この必要性から、完全ヒトモノクローナル抗TNF抗体であるSIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)が開発された。
【0015】
(発明の概要)
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者(単数)(又は複数の患者)における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を投与するステップを含み、処置の16週間後に、患者が、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善、及び強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)からなる群から選択される転帰を達成し、転帰が、処置の52週間まで維持又は改善される、方法を提供する。
【0016】
本方法又は使用の実施形態では、処置の16週間後に、患者の≧70%は、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)を達成し、患者の≧45%は、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)を達成し、患者の≧35%は、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成し、患者の≧25%は、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)を達成し、ASAS20、ASAS40、BASDAI50及びASDAS非活動性疾患(<1.3)を達成する患者の百分率は、処置の52週間にわたり増加する。
【0017】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を投与するステップを含み、処置の16週間後に、患者の≧70%は、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)を達成し、患者の≧45%は、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)を達成し、患者の≧35%は、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成し、患者の≧25%は、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)を達成し、ASAS20、ASAS40、BASDAI50及びASDAS非活動性疾患(<1.3)を達成する患者の百分率は、処置の52週間にわたり増加し、当該抗TNF抗体が、患者の体重1kg当たり2mgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるように、当該抗TNF抗体が静脈内注入(IV)によって投与される、方法を提供する。
【0018】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を投与するステップを含み、処置の16週間後に、患者の≧70%は、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)を達成し、患者の≧45%は、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)を達成し、患者の≧35%は、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成し、患者の≧25%は、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)を達成し、ASAS20、ASAS40、BASDAI50及びASDAS非活動性疾患(<1.3)を達成する患者の百分率は、処置の52週間にわたり増加し、当該抗TNF抗体が2mg/kgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるように、当該抗TNF抗体が静脈内注入(IV)によって投与され、当該方法が、メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)又はヒドロキシクロロキン(HCQ)と共に、又はこれらを伴わないで、当該抗TNF抗体を投与するステップを更に含む、方法を提供する。
【0019】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を投与するステップを含み、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰(oucome)の改善があり、患者報告転帰の改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり維持される又は継続して改善する、方法を提供する。
【0020】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を投与するステップを含み、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり継続して改善し、当該抗TNF抗体が2mg/kgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるように、当該抗TNF抗体が静脈内注入(IV)によって投与される、方法を提供する。
【0021】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を投与するステップを含み、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり継続して改善し、当該抗TNF抗体が2mg/kgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるように、当該抗TNF抗体が静脈内注入(IV)によって投与され、当該方法が、メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)及び/又はヒドロキシクロロキン(HCQ)と共に、当該抗TNF抗体を投与するステップを更に含む、方法を提供する。
【0022】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を含む組成物を投与するステップを含み、当該組成物が、静脈内注入(IV)により投与され、処置の16週間後に、患者の≧70%は、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)を達成し、患者の≧45%は、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)を達成し、患者の≧35%は、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成し、患者の≧25%は、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)を達成し、ASAS20、ASAS40、BASDAI50及びASDAS非活動性疾患(<1.3)を達成する患者の百分率は、処置の52週間にわたり増加する、方法を提供する。
【0023】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を含む組成物を投与するステップを含み、当該組成物が、静脈内注入(IV)により投与され、処置の16週間後に、患者の≧70%は、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)を達成し、患者の≧45%は、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)を達成し、患者の≧35%は、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成し、患者の≧25%は、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)を達成し、ASAS20、ASAS40、BASDAI50及びASDAS非活動性疾患(<1.3)を達成する患者の百分率は、処置の52週間にわたり増加し、当該組成物は、当該抗TNF抗体が、2mg/kgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるよう投与される、方法を提供する。
【0024】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を含む組成物を投与するステップを含み、当該組成物が、静脈内注入(IV)により投与され、処置の16週間後に、患者の≧70%は、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)を達成し、患者の≧45%は、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)を達成し、患者の≧35%は、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成し、患者の≧25%は、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)を達成し、ASAS20、ASAS40、BASDAI50及びASDAS非活動性疾患(<1.3)を達成する患者の百分率は、処置の52週間にわたり増加し、当該組成物は、当該抗TNF抗体が、2mg/kgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるよう投与され、当該方法が、メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)又はヒドロキシクロロキン(HCQ)と共に、又はこれらを伴わないで、当該組成物を投与するステップを更に含む、方法を提供する。
【0025】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を含む組成物を投与するステップを含み、当該組成物が、静脈内注入(IV)により投与され、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり継続して改善する、方法を提供する。
【0026】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を含む組成物を投与するステップを含み、当該組成物が、静脈内注入(IV)により投与され、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり継続して改善し、当該組成物は、当該抗TNF抗体が、2mg/kgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるよう投与される、方法を提供する。
【0027】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎を処置する方法であって、当該方法が、患者に重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含む抗TNF抗体を含む組成物を投与するステップを含み、当該組成物が、静脈内注入(IV)により投与され、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり継続して改善し、当該組成物は、当該抗TNF抗体が、2mg/kgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるよう投与され、当該方法が、メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)又はヒドロキシクロロキン(HCQ)と共に、又はこれらを伴わないで、当該組成物を投与するステップを更に含む、方法を提供する。
【0028】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎の処置に使用するための抗TNF抗体を含む組成物であって、抗TNF抗体が、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含み、処置の16週間後に、患者の≧70%は、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)を達成し、患者の≧45%は、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)を達成し、患者の≧35%は、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成し、患者の≧25%は、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)を達成し、ASAS20、ASAS40、BASDAI50及びASDAS非活動性疾患(<1.3)を達成する患者の百分率は、処置の52週間にわたり増加する、組成物を提供する。
【0029】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎の処置に使用するための抗TNF抗体を含む組成物であって、抗TNF抗体が、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含み、当該組成物は、当該抗TNF抗体が、2mg/kgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるよう、静脈内注入(IV)により投与され、処置の16週間後に、患者の≧70%は、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)を達成し、患者の≧45%は、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)を達成し、患者の≧35%は、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成し、患者の≧25%は、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)を達成し、ASAS20、ASAS40、BASDAI50及びASDAS非活動性疾患(<1.3)を達成する患者の百分率は、処置の52週間にわたり増加する、組成物を提供する。
【0030】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎の処置に使用するための抗TNF抗体を含む組成物であって、抗TNF抗体が、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含み、当該組成物は、メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)又はヒドロキシクロロキン(HCQ)と共に、又はこれらを伴わないで投与され、処置の16週間後に、患者の≧70%は、強直性脊椎炎評価20(ASAS20)を達成し、患者の≧45%は、強直性脊椎炎評価40(ASAS40)を達成し、患者の≧35%は、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI50)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成し、患者の≧25%は、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患(<1.3)を達成し、ASAS20、ASAS40、BASDAI50及びASDAS非活動性疾患(<1.3)を達成する患者の百分率は、処置の52週間にわたり増加する、組成物を提供する。
【0031】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎の処置に使用するための抗TNF抗体を含む組成物であって、抗TNF抗体が、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含み、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり継続して改善する、組成物を提供する。
【0032】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎の処置に使用するための抗TNF抗体を含む組成物であって、抗TNF抗体が、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含み、当該組成物は、当該抗TNF抗体が、2mg/kgの用量で投与され、0週目及び4週目に、次にこれ以降8週ごと(q8w)に、30±10分間にわたり投与されるよう、静脈内注入(IV)により投与され、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり継続して改善する、組成物を提供する。
【0033】
ある種の実施形態では、本発明は、<2年の期間、初期疾患を有する患者における活動性強直性脊椎炎の処置に使用するための抗TNF抗体を含む組成物であって、抗TNF抗体が、重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の配列番号40~42及び軽鎖CDRアミノ酸配列の配列番号43~45を含み、当該組成物は、メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)又はヒドロキシクロロキン(HCQ)と共に、又はこれらを伴わないで投与され、処置の16週間後に、強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)、夜の背部痛及び全背部痛に関して、患者報告転帰の改善があり、患者報告転帰の改善が、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛の52週間の処置にわたり継続して改善する、組成物を提供する。
【0034】
上記のある種の実施形態では、抗TNF抗体は、配列番号38の可変重鎖アミノ酸配列及び配列番号39の可変軽鎖アミノ酸配列を含み、抗TNF抗体は、配列番号36の重鎖アミノ酸配列及び配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含み、又は抗TNF抗体は、ゴリムマブ抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】ハイブリドーマ細胞上清中のTNV mAbが組換えTNF受容体へのTNFα結合を阻害する能力のアッセイを示すグラフ表示を示す。既知量のTNV mAbを含有する様々な量のハイブリドーマ細胞上清を、固定濃度(5ng/mL)の125I標識TNFαと共にプレインキュベートした。混合物を、組換えTNF受容体/IgG融合タンパク質p55-sf2で予めコーティングされた96ウェルのOptiplateに移した。mAbの存在下でp55受容体に結合したTNFαの量は、未結合の材料を洗い流し、γ計数器を使用して計数した後に決定した。これらの実験において8つのTNV mAb試料を試験したが、簡潔化のため、DNA配列分析により、他のTNV mAbのうちの1つと同一であることを示したmAbのうちの3つ(セクション5.2.2を参照のこと)は、ここに示されていない。各試料を二重に試験した。示される結果は、2つの独立した実験を代表する。
図2A】TNV mAb重鎖可変領域のDNA配列を示す。示される生殖系列遺伝子は、DP-46遺伝子である。「TNVs」は、示される配列がTNV14、TNV15、TNV148、及びTNV196の配列であることを示す。TNV配列の最初の3つのヌクレオチドは、翻訳開始Metコドンを定義する。TNV mAb遺伝子配列中の点線は、ヌクレオチドが生殖系列配列中のものと同じであることを示す。TNV配列の最初の19のヌクレオチド(下線付き)は、可変領域をPCR増幅するために使用されたオリゴヌクレオチドに対応する。成熟mAbで始まるアミノ酸翻訳(一文字表記)は、生殖系列遺伝子についてのみ示される。生殖系列アミノ酸翻訳における3つのCDRドメインは、太字で示され、下線付きである。TNV148(B)と標識された行は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。生殖系列DNA配列(CDR3)中のギャップは、知られていないか又は生殖系列遺伝子に存在しない配列のためである。TNV mAb重鎖は、J6結合領域を使用する。
図2B】TNV mAb重鎖可変領域のDNA配列を示す。示される生殖系列遺伝子は、DP-46遺伝子である。「TNVs」は、示される配列がTNV14、TNV15、TNV148、及びTNV196の配列であることを示す。TNV配列の最初の3つのヌクレオチドは、翻訳開始Metコドンを定義する。TNV mAb遺伝子配列中の点線は、ヌクレオチドが生殖系列配列中のものと同じであることを示す。TNV配列の最初の19のヌクレオチド(下線付き)は、可変領域をPCR増幅するために使用されたオリゴヌクレオチドに対応する。成熟mAbで始まるアミノ酸翻訳(一文字表記)は、生殖系列遺伝子についてのみ示される。生殖系列アミノ酸翻訳における3つのCDRドメインは、太字で示され、下線付きである。TNV148(B)と標識された行は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。生殖系列DNA配列(CDR3)中のギャップは、知られていないか又は生殖系列遺伝子に存在しない配列のためである。TNV mAb重鎖は、J6結合領域を使用する。
図3】TNV mAb軽鎖可変領域のDNA配列を示す。示される生殖系列遺伝子は、ヒトκ生殖系列可変領域遺伝子のVg/38Kファミリーの代表的なメンバーである。TNV mAb遺伝子配列中の点線は、ヌクレオチドが生殖系列配列中のものと同じであることを示す。TNV配列の最初の16のヌクレオチド(下線付き)は、可変領域をPCR増幅するために使用されたオリゴヌクレオチドに対応する。成熟mAbのアミノ酸翻訳(一文字表記)は、生殖系列遺伝子についてのみ示される。生殖系列アミノ酸翻訳における3つのCDRドメインは、太字で示され、下線付きである。TNV148(B)と標識された行は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。生殖系列DNA配列(CDR3)中のギャップは、知られていないか又は生殖系列遺伝子に存在しない配列のためである。TNV mAb軽鎖は、J3結合領域を使用する。
図4】TNV mAb重鎖可変領域の推定アミノ酸配列を示す。示されるアミノ酸配列(一文字表記)は、非クローン化PCR生成物及びクローン化PCR生成物の両方から決定されたDNA配列から推定された。分泌シグナル配列(シグナル)、フレームワーク(FW)及び相補性決定領域(CDR)ドメインに分割したアミノ配列が示される。DP-46生殖系列遺伝子のアミノ酸配列は、各ドメインの上の行に示されている。点線は、TNV mAbにおけるアミノ酸が生殖系列遺伝子と同一であることを示す。TNV148(B)は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。「TNV」は、異なる配列が示されない限り、示される配列が全てのTNV mAbに関することを示す。生殖系列配列(CDR3)中の破線は、配列が知られていないか又は生殖系列遺伝子に存在しないことを示す。
図5】TNV mAb軽鎖可変領域の推定アミノ酸配列を示す。示されるアミノ酸配列(一文字表記)は、非クローン化PCR生成物及びクローン化PCR生成物の両方から決定されたDNA配列から推定された。分泌シグナル配列(シグナル)、フレームワーク(FW)及び相補性決定領域(CDR)ドメインに分割したアミノ配列が示される。Vg/38K型軽鎖生殖系列遺伝子のアミノ酸配列は、各ドメインの上の行に示される。点線は、TNV mAbにおけるアミノ酸が生殖系列遺伝子と同一であることを示す。TNV148(B)は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。「All」は、示される配列がTNV14、TNV15、TNV148、TNV148B、及びTNV186に関することを示す。
図6】rTNV148B発現C466細胞を作製するために使用された重鎖及び軽鎖発現プラスミドの概略図を示す。p1783は重鎖プラスミドであり、p1776は軽鎖プラスミドである。rTNV148B可変及び定常領域コードドメインは、黒色のボックスで示される。J-Cイントロンの免疫グロブリンエンハンサは、灰色のボックスで示される。関連する制限部位が示される。Ab遺伝子の転写が時計方向に進むように配向されたプラスミドが示される。プラスミドp1783の長さは19.53kbであり、プラスミドp1776の長さは15.06kbである。両プラスミドの完全なヌクレオチド配列は既知である。p1783の可変領域コード配列は、BsiWI/BstBI制限断片を置き換えることにより、別の重鎖可変領域配列に容易に置き換えることができる。p1776の可変領域コード配列は、SalI/AflII制限断片を置き換えることにより、別の可変領域配列に置き換えることができる。
図7】5つのrTNV148B生成細胞株の成長曲線分析のグラフ表示を示す。30mLの容量中に1.0×10細胞/mLの生存細胞密度を有するように、T75フラスコ内のI5Q+MHX培地に細胞を播種することにより、0日目に培養を開始した。これらの試験に使用された細胞培養物は、トランスフェクション及びサブクローニングが行われるため、連続培養であった。その後、Tフラスコ内の細胞を充分に再懸濁し、0.3mlの培養物のアリコートを取り出した。成長曲線試験は、細胞計数が1.5×10細胞/mL未満に低下したときに終了した。アリコート中の生細胞数をトリパン(typan)ブルー排除により決定し、残りのアリコートは後のmAb濃度決定のために保管された。ヒトIgGのELISAが、同じ時に全ての試料アリコートに対して行われた。
図8】様々なMHX選択物濃度の存在下での細胞成長速度の比較のグラフ表示を示す。細胞サブクローンC466A及びC466Bを、無MHX培地(IMDM、5%FBS、2mMグルタミン)に解凍し、更に2日間培養した。次いで、両細胞培養物を、MHX無し、0.2×MHX又は1×MHXのいずれかを含有した3つの培養に分割した。1日後、新しいT75フラスコに、1×10細胞/mLの開始密度で培養物を播種し、細胞を1週間、24時間間隔で計数した。最初の5日間の倍加時間は、SOP PD32.025の式を使用して計算し、バーの上に示す。
図9】2つのrTNV148B生成細胞株からの経時的なmAb生成の安定性のグラフ表示を示す。トランスフェクション及びサブクローニングを行った後、連続培養にあった細胞のサブクローンを使用して、24ウェル培養皿中での長期連続培養を開始した。MHX選択物を伴う又は伴わないI5Q培地中で細胞を培養した。細胞を、4~6日ごとに培養物を分けることにより連続して継代して、新たな生存培養物を維持し、同時に前の培養物を消耗させた。消耗した細胞上清のアリコートは、培養物が消耗した直後に回収し、mAb濃度が決定されるまで保管した。ヒトIgGのELISAが、同じ時に全ての試料アリコートに対して行われた。
図10】実施例4における対照と比較した、本発明の抗TNF抗体に応答した関節炎マウスモデルマウスTg197の体重変化を示す。およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき9つの処置群のうちの1つに割り当て、DulbeccoのPBS(D-PBS)、又は1mg/kg若しくは10mg/kgのいずれかの本発明の抗TNF抗体(TNV14、TNV148、又はTNV196)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。体重を投与前からの変化として分析したとき、10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験を通してD-PBSで処置した動物よりも一貫して高い体重増加を示した。この体重増加は、3~7週目で有意であった。10mg/kgのTNV148で処置した動物も、試験の7週目に有意な体重増加を達成した。
図11A】実施例4に示す関節炎指数に基づく疾患重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、3週目から始まり、残りの試験(7週目)にわたって継続して、D-PBS対照群よりも低かった。1mg/kgのTNV14で処置した動物及び1mg/kgのcA2で処置した動物は、D-PBS処置群と比較したとき、3週目以降のAIにおいて有意な減少を示すことができなかった。各々を類似の用量のその他のものと比較したとき(10mg/kgのTNV14、148及び196と比較した10mg/kgのcA2)、10mg/kgの処置群の間に有意差はなかった。1mg/kgの処置群を比較したとき、1mg/kgのTNV148は、1mg/kgのcA2よりも3、4及び7週目で有意に低いAIを示した。1mg/kgのTNV148も、1mg/kgのTNV14で処置した群よりも3及び4週目で有意に低かった。TNV196は試験の6週目までAIにおいて有意な減少を示したが(D-PBSで処置した群と比較したとき)、TNV148はこの試験の終了時に有意のままであった唯一の1mg/kg処置群であった。
図11B】実施例4に示す関節炎指数に基づく疾患重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、3週目から始まり、残りの試験(7週目)にわたって継続して、D-PBS対照群よりも低かった。1mg/kgのTNV14で処置した動物及び1mg/kgのcA2で処置した動物は、D-PBS処置群と比較したとき、3週目以降のAIにおいて有意な減少を示すことができなかった。各々を類似の用量のその他のものと比較したとき(10mg/kgのTNV14、148及び196と比較した10mg/kgのcA2)、10mg/kgの処置群の間に有意差はなかった。1mg/kgの処置群を比較したとき、1mg/kgのTNV148は、1mg/kgのcA2よりも3、4及び7週目で有意に低いAIを示した。1mg/kgのTNV148も、1mg/kgのTNV14で処置した群よりも3及び4週目で有意に低かった。TNV196は試験の6週目までAIにおいて有意な減少を示したが(D-PBSで処置した群と比較したとき)、TNV148はこの試験の終了時に有意のままであった唯一の1mg/kg処置群であった。
図11C】実施例4に示す関節炎指数に基づく疾患重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、3週目から始まり、残りの試験(7週目)にわたって継続して、D-PBS対照群よりも低かった。1mg/kgのTNV14で処置した動物及び1mg/kgのcA2で処置した動物は、D-PBS処置群と比較したとき、3週目以降のAIにおいて有意な減少を示すことができなかった。各々を類似の用量のその他のものと比較したとき(10mg/kgのTNV14、148及び196と比較した10mg/kgのcA2)、10mg/kgの処置群の間に有意差はなかった。1mg/kgの処置群を比較したとき、1mg/kgのTNV148は、1mg/kgのcA2よりも3、4及び7週目で有意に低いAIを示した。1mg/kgのTNV148も、1mg/kgのTNV14で処置した群よりも3及び4週目で有意に低かった。TNV196は試験の6週目までAIにおいて有意な減少を示したが(D-PBSで処置した群と比較したとき)、TNV148はこの試験の終了時に有意のままであった唯一の1mg/kg処置群であった。
図12】実施例5における対照と比較した、本発明の抗TNF抗体に応答した関節炎マウスモデルマウスTg197の体重変化を示す。およそ4週齢のTg197試験マウスを体重に基づき8つの処置群のうちの1つに割り当て、対照品(D-PBS)、又は3mg/kgの抗体(TNV14、TNV148)(0週目)の腹腔内ボーラス投与で処置した。注射は1、2、3、及び4週目に全ての動物において繰り返された。群1~6は、試験品の有効性に関して評価された。群7及び8の動物から得られた血清試料は、2、3及び4週目のTNV14又はTNV148の免疫応答誘導及び薬物動態クリアランスに関して評価された。
図13A】関節炎指数に基づく実施例5の疾患の重症度の進行を表すグラフである。10mg/kgのcA2で処置した群の関節炎指数は、2週目から始まり、残りの試験全体を通して(5週目)継続してD-PBS対照群よりも有意に低かった。1mg/kg又は3mg/kgのcA2で処置した動物及び3mg/kgのTNV14で処置した動物は、d-PBS対照群と比較したときに、試験を通して任意の時点でAIにおいて任意の有意な減少を達成することができなかった。3mg/kgのTNV148で処置した動物は、d-PBSで処置した群と比較したとき、3週目から始まり、5週目まで継続する有意な減少を示した。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験の4及び5週目でより低い用量の両cA2(1mg/kg及び3mg/kg)と比較したとき、AIにおいて有意な減少を示し、また3~5週目で、TNV14で処置した動物よりも有意に低かった。3mg/kgの処置群のいずれかの間に有意差はなかったようだが、3mg/kgのTNV14で処置した動物に関するAIは、ある時点で10mg/kgよりも有意に高く、一方TNV148で処置した動物は、10mg/kgのcA2で処置した動物と有意に異ならなかった。
図13B】関節炎指数に基づく実施例5の疾患の重症度の進行を表すグラフである。10mg/kgのcA2で処置した群の関節炎指数は、2週目から始まり、残りの試験全体を通して(5週目)継続してD-PBS対照群よりも有意に低かった。1mg/kg又は3mg/kgのcA2で処置した動物及び3mg/kgのTNV14で処置した動物は、d-PBS対照群と比較したときに、試験を通して任意の時点でAIにおいて任意の有意な減少を達成することができなかった。3mg/kgのTNV148で処置した動物は、d-PBSで処置した群と比較したとき、3週目から始まり、5週目まで継続する有意な減少を示した。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験の4及び5週目でより低い用量の両cA2(1mg/kg及び3mg/kg)と比較したとき、AIにおいて有意な減少を示し、また3~5週目で、TNV14で処置した動物よりも有意に低かった。3mg/kgの処置群のいずれかの間に有意差はなかったようだが、3mg/kgのTNV14で処置した動物に関するAIは、ある時点で10mg/kgよりも有意に高く、一方TNV148で処置した動物は、10mg/kgのcA2で処置した動物と有意に異ならなかった。
図13C】関節炎指数に基づく実施例5の疾患の重症度の進行を表すグラフである。10mg/kgのcA2で処置した群の関節炎指数は、2週目から始まり、残りの試験全体を通して(5週目)継続してD-PBS対照群よりも有意に低かった。1mg/kg又は3mg/kgのcA2で処置した動物及び3mg/kgのTNV14で処置した動物は、d-PBS対照群と比較したときに、試験を通して任意の時点でAIにおいて任意の有意な減少を達成することができなかった。3mg/kgのTNV148で処置した動物は、d-PBSで処置した群と比較したとき、3週目から始まり、5週目まで継続する有意な減少を示した。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験の4及び5週目でより低い用量の両cA2(1mg/kg及び3mg/kg)と比較したとき、AIにおいて有意な減少を示し、また3~5週目で、TNV14で処置した動物よりも有意に低かった。3mg/kgの処置群のいずれかの間に有意差はなかったようだが、3mg/kgのTNV14で処置した動物に関するAIは、ある時点で10mg/kgよりも有意に高く、一方TNV148で処置した動物は、10mg/kgのcA2で処置した動物と有意に異ならなかった。
図14】実施例6における対照と比較した、本発明の抗TNF抗体に応答した関節炎マウスモデルマウスTg197の体重変化を示す。およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき6つの処置群のうちの1つに割り当て、3mg/kg又は5mg/kgのいずれかの抗体(cA2又はTNV148)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。この試験は、D-PBS及び10mg/kgのcA2対照群を利用した。
図15】実施例6に示す関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。全ての処置群が初期の時点で多少の保護作用を示し、5mg/kgのcA2及び5mg/kgのTNV148は、1~3週目にAIにおいて有意な減少を示し、全ての処置群が2週目で有意な減少を示した。試験の後期に、5mg/kgのcA2で処置した動物は多少の保護作用を示し、4、6及び7週目で有意に減少した。低用量(3mg/kg)のcA2及びTNV148は両方とも、6週目で有意な減少を示し、全ての処置群が7週目で有意な減少を示した。試験の終わりで(8週目)有意な減少を維持することができた処置群はなかった。任意の時点で処置群のいずれかの間(食塩水対照群は除く)に有意差はなかった。
図16】実施例7における対照と比較した、本発明の抗TNF抗体に応答した関節炎マウスモデルマウスTg197の体重変化を示す。TNV148(ハイブリドーマ細胞に由来する)及びrTNV148B(トランスフェクトした細胞に由来する)の単回腹腔内投与の有効性を比較するために。およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき9つの処置群のうちの1つに割り当て、DulbeccoのPBS(D-PBS)、又は1mg/kgの抗体(TNV148、rTNV148B)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。
図17】実施例7に示す関節炎指数に基づく疾患重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、4週目から始まり、残りの試験(8週目)を通して継続するD-PBS対照群よりも低かった。TNV148で処置した群及び1mg/kgのcA2で処置した群は両方とも、4週目でAIにおける有意な減少を示した。以前の試験(P-099-017)は、TNV148が単回の1mg/kgの腹腔内ボーラス後の関節炎指数の減少にわずかにより効果的であることを示したが、この試験では、両バージョンのTNV抗体で処置した群からのAIがわずかに高いことを示した。1mg/kgのcA2で処置した群(6週目を除く)は、10mg/kgのcA2群と比較したとき、有意に増加せず、TNV148で処置した群は、7及び8週目で有意に高かったが、1mg/kgのcA2、1mg/kgのTNV148及び1mg/kgのTNV148Bの間には試験の任意の時点でAIにおいて有意差はなかった。
図18】活動性強直性脊椎炎(AS)を有する対象における、静脈内投与されるSimponi(ゴリムマブ)の試験に関する試験設計の図を示す。
図19】初期疾患を有する強直性脊椎炎患者のサブセットに関する、処置の16週目及び52週目における患者報告転帰を示す(<2年間の期間)。点線は、プラセボにより処置された患者が、16週目にゴリムマブによる処置とクロスオーバーしたことを示している。プラセボにより処置された患者に関するデータ、及びプラセボにより処置し、次に16週目にゴリムマブとクロスオーバーした患者に関するデータが、灰色の棒として示されている。ゴリムマブにより処置された患者のデータは、黒色の棒として示されている。ベースラインからの平均(SD)変化が報告され、低下は、患者報告転帰の改善を表す。ASQoLは、強直性脊椎炎の生活の質を指す。
【0036】
(発明の記述)
本発明は、配列番号1、2及び3の重鎖可変CDR領域の全て、並びに/若しくは配列番号4、5及び6の軽鎖可変CDR領域の全てを含む、単離された組換え及び/又は合成抗TNFヒト、霊長類、げっ歯類、哺乳類、キメラ、ヒト化若しくはCDR移植抗体、並びにそれらに対するTNF抗イディオタイプ抗体、並びに少なくとも1つの抗TNF抗体又は抗イディオタイプ抗体をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物及びコード核酸分子を提供する。本発明は、診断用及び治療用組成物、方法、並びにデバイスを含む、かかる核酸及び抗体、並びに抗イディオタイプ抗体の作製及び使用方法を更に含むが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用するとき、「抗腫瘍壊死因子α抗体」、「抗TNF抗体」、「抗TNF抗体部分」若しくは「抗TNF抗体断片」、及び/又は「抗TNF抗体変異体」などは、本発明の抗体の中に組み込むことができる、重鎖若しくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)若しくはそのリガンド結合部分、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域、又はこれらの任意の部分、あるいはTNF受容体又は結合タンパク質の少なくとも一つの部分などであるがこれらに限定されない免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含む分子を含む、任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含む。かかる抗体は、任意選択的に、特定のリガンドに更に影響を及ぼし、これらに限定されないが、かかる抗体は、インビトロで、その場で、及び/又はインビボで、少なくとも1つのTNF活性若しくは結合、又はTNF受容体活性若しくは結合を調節、減少、増加、拮抗、作動、軽減、緩和、遮断、阻害、抑止、及び/又は干渉する。非限定的な例として、本発明の好適な抗TNF抗体、特定された部分又は変異体は、少なくとも1つのTNF又はその特定された部分、変異体若しくはドメインに結合することができる。好適な抗TNF抗体、特定された部分又は変異体はまた、任意選択的に、RNA、DNA、若しくはタンパク質合成、TNF放出、TNF受容体シグナル伝達、膜TNF切断、TNF活性、TNF生成、及び/又は合成などであるがこれらに限定されない、TNF活性又は機能のうちの少なくとも1つに影響を及ぼすこともできる。「抗体」という用語は、更に、抗体、その消化断片、特定部分及び変異体を包含することを意図し、これには抗体模倣薬が挙げられ、あるいは抗体の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分若しくはその特定断片若しくは一部を含み、単鎖抗体及びその断片が挙げられる。機能断片としては、哺乳動物のTNFに結合する抗原結合断片が挙げられる。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)及びF(ab’)(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的技術による)断片が挙げられるがこれらに限定されない、TNF又はその部分に結合することができる抗体断片が、本発明に包含される(例えば、上記のColligan,Immunologyを参照のこと)。
【0038】
かかる断片は、当該技術分野において既知であるように、及び/又は本明細書に記載されるように、酵素切断、合成又は組換え技術により産生することができる。抗体は、天然の終止部位の上流に1つ又は2つ以上の終止コドンが導入された抗体遺伝子を使用して、様々な切断型でも産生され得る。例えば、F(ab’)重鎖部分をコードする遺伝子の組み合わせは、重鎖のCHドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列を含むよう設計することができる。抗体の種々の部分を従来技術により化学的に結合することができ、又は遺伝子工学技術を使用して切れ目なく連続するタンパク質として調製することができる。
【0039】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、実質的にタンパク質の全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、C、Cドメイン(例えば、C1、C2、C3)、ヒンジ(V、V))が軽微な配列の変化又は変異を有するだけで実質的にヒトにおいて非免疫原性である抗体を指す。同様に、霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジーなど)、げっ歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスタなど)、及びその他の哺乳動物を指定された抗体は、かかる種、亜属、属、亜科、科に特異的な抗体を指す。更に、キメラ抗体は、上記の任意の組み合わせを含む。このような変化又は変異は、場合によりかつ好ましくは、修飾していない抗体に比べて、ヒト又はその他の種における免疫原性を保持するか、又は低減させる。したがって、ヒト抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体とは異なる。ヒト抗体は、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現することができる、ヒト以外の動物、又は原核若しくは真核細胞により産生され得ることが指摘される。更に、ヒト抗体が単鎖抗体である場合、天然のヒト抗体では見られないリンカペプチドを含むことができる。例えば、Fvは、重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とを接続する2~約8個のグリシン又はその他のアミノ酸残基などのリンカペプチドを含むことができる。このようなリンカペプチドは、ヒト由来のものと見なされる。
【0040】
また、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル、好ましくはヒト又はヒト化抗体である、二重特異的、異種特異的、異種結合性、又は類似の抗体を使用してもよい。この場合では、結合特異性のうち一方は少なくとも1つのTNFタンパク質に対するものであり、他方は任意のその他の抗原に対するものである。二重特異的抗体の製造方法は、技術分野において既知である。従来、二重特異的抗体の組換え体生成は、2種の免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づくが、ここで2本の重鎖は異なる特異性を有する(Milstein及びCuello、「Nature」305:537頁(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の無作為な組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の可能な混合物を産生し、これらのうち1種のみが正しい二重特異的構造を有する。正確な分子の精製(通常アフィニティクロマトグラフィ工程により行われる)はかなり面倒であり、生成物の収率は低い。類似する手順が、例えば、国際公開第93/08829号、米国特許第6,210,668号、同第6,193,967号、同第6,132,992号、同第6,106,833号、同第6,060,285号、同第6,037,453号、同第6,010,902号、同第5,989,530号、同第5,959,084号、同第5,959,083号、同第5,932,448号、同第5,833,985号、同第5,821,333号、同第5,807,706号、同第5,643,759号、同第5,601,819号、同第5,582,996号、同第5,496,549号、同第4,676,980号、国際公開第91/00360号、同第92/00373号、欧州特許第03089号、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)に開示されており、これらの各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0041】
本発明の方法及び組成物において有用である抗TNF抗体(TNF抗体とも称される)は、TNFへの高親和性結合、並びに任意選択的に及び好ましくは低毒性を有することを任意選択的に特徴とし得る。具体的には、可変領域、定常領域、及びフレームワークなどの個々の構成要素が、個々に及び/又は集合的に、任意選択的にかつ好ましくは、低い免疫原性を有する、本発明の抗体、その特定の断片、又は変異体が本発明において有用である。本発明で使用することができる抗体は、任意選択的に症状の測定可能な緩和並びに低い及び/又は許容できる毒性で、長期間患者を処置する能力を特徴とする。低い若しくは許容できる免疫原性、及び/又は高い親和性、並びに他の好適な特性が、得られる治療結果に寄与することができる。「低い免疫原性」は、本明細書では、処置される患者の約75%未満、若しくは好ましくは約50%未満で有意にHAHA、HACA若しくはHAMA応答が増加する、及び/又は、処置される患者において低い力価(二重抗原酵素免疫アッセイで測定したとき約300未満、好ましくは約100未満)が増加することとして定義される(Elliott et al.,Lancet 344:1125-1127(1994)、これは参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0042】
有用性:本発明の単離核酸は、細胞、組織、器官又は動物(哺乳類及びヒトを含む)において測定し、又は作用して、免疫障害若しくは疾患、循環器障害若しくは疾患、感染性、悪性及び/若しくは神経性障害又は疾患のうちの少なくとも1つから選択されるがこれらに限定されない、少なくとも1つのTNF状態を診断、監視、調節、処置、緩和、発生を予防するのを助ける、又はその症状を低減するために使用され得る、少なくとも1つの抗TNF抗体又はその特定された変異体を生成するために使用され得る。
【0043】
かかる方法は、症状、作用、又は機序のかかる調節、処置、緩和、予防、若しくは低減を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含み得る。有効量は、本明細書に記載される、又は関連分野で知られている、既知の方法を使用して行い決定して、単回(例えば、ボーラス)、複数回、若しくは持続投与当たり約0.001~500mg/kgの量、又は単回、複数回、若しくは持続投与当たり0.01~5000μg/mLの血清濃度を達成する量、又はこの中の任意の有効範囲若しくは値を含み得る。引用文献。本明細書で引用する全ての刊行物又は特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、本発明の時点での最高水準を示し、かつ/又は本発明の説明及び使用可能性を提供する。刊行物とは、電子形式若しくは印刷形式で記録されたものを全て含む任意のメディア形式で利用可能な、任意の科学刊行物若しくは特許公報又は任意の他の情報を指す。以下の文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987~2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colliganら,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,Inc.,NY(1994~2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997~2001)。
【0044】
本発明の抗体:配列番号1、2及び3の重鎖可変CDR領域の全て、並びに/又は配列番号4、5及び6の軽鎖可変CDR領域の全てを含む、本発明の少なくとも1つの抗TNF抗体は、任意選択的に、当該技術分野において周知であるように、細胞株、混合細胞株、不死化細胞又は不死化細胞のクローン集団により産生され得る。例えば、Ausubelら編、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley&Sons,Inc.,NY、NY(1987~2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colliganら,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,Inc.,NY(1994~2001)、Colliganら,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997~2001)。
【0045】
ヒトTNFタンパク質又はその断片に特異的なヒト抗体は、単離された及び/若しくはTNFタンパク質、又はそれらの一部分(合成ペプチドなどの合成分子を含む)などの適切な免疫原性抗原に対して生じ得る。その他の特異的な又は一般的な哺乳動物の抗体もまた、同様に生じることができる。免疫原性をもつ抗原の調製及びモノクローナル抗体の生成は、任意の好適な技術を使用して行うことができる。
【0046】
1つのアプローチでは、ハイブリドーマは、適切な不死化細胞株(例えば、Sp2/0、Sp2/0-AG14、NSO、NS1、NS2、AE-1、L.5、>243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2 SA5、U937、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA-1、JURKAT、WEHI、K-562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL-60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2Aなどであるがこれらに限定されない骨髄腫細胞株、又はヘテロミローマ(heteromylomas)、その融合産物、又はそれらに由来する任意の細胞若しくは融合細胞、又は当該技術分野において既知の任意の他の好適な細胞株を融合させることにより産生される。例えば、www.atcc.org、www.lifetech.com.などを参照のこと。単離若しくはクローニングされた脾臓、末梢血、リンパ、扁桃、又はその他の免疫若しくはB細胞含有細胞などであるがこれらに限定されない抗体産生細胞、あるいは組換え若しくは内因性、ウイルス、細菌、藻類、原核生物、両生類、昆虫類、爬虫類、魚類、哺乳動物、げっ歯類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ヒツジ、霊長類、真核生物、ゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNA若しくはRNA、葉緑体DNA若しくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、一本鎖、二本鎖若しくは三本鎖、ハイブリダイズなど、又はそれらの組み合わせのような、内因性若しくは異種の核酸のいずれかとして、重鎖若しくは軽鎖定常若しくは可変若しくはフレームワーク若しくはCDR配列を発現する任意のその他の細胞を有する。例えば、上記のAusubel、及び上記のColligan,Immunologyの第2章を参照されたい。なお両文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
抗体産生細胞は、目的の抗原で免疫されたヒト又は他の好適な動物の末梢血、又は好ましくは脾臓若しくはリンパ節から得ることもできる。任意のその他の好適な宿主細胞を使用して、本発明の抗体、特定の断片又はその変異体をコードする異種核酸若しくは内在核酸を発現させることもできる。融合細胞(ハイブリドーマ)又は組換え細胞は、選択的培養条件又はその他の好適な周知の方法を使用して単離し、限界希釈若しくは細胞選別又はその他の周知の方法によってクローニングすることができる。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、好適なアッセイ(例えば、ELISA)によって選択することができる。
【0048】
ペプチド又はタンパク質ライブラリから組換え抗体を選択する方法が挙げられるがこれらに限定されない、必要とされる特異性を有する抗体を産生又は単離するのに好適なその他の方法を使用することができる(例えば、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなどのディスプレイライブラリであるがこれらに限定されるものではなく、例えば、Cambridge antibody Technologies,Cambridgeshire,UK、MorphoSys,Martinsreid/Planegg,DE、Biovation,Aberdeen,Scotland,UK、BioInvent,Lund,Sweden、Dyax Corp.,Enzon,Affymax/Biosite、Xoma,Berkeley,CA、Ixsys.から入手可能である)。例えば、欧州特許第368,684号、国際出願第GB91/01134号、国際出願第GB92/01755号、国際出願第GB92/002240号、国際出願第GB92/00883号、国際出願第GB93/00605号、米国特許出願第08/350260号(5/12/94)、国際出願第GB94/01422号、国際出願第GB94/02662号、国際出願第GB97/01835号、(CAT/MRC)、同第90/14443号、同第90/14424号、同第90/14430号、国際出願第US94/1234号、国際公開第92/18619号、同第96/07754号(Scripps)、欧州特許第614 989号(MorphoSys)、同第95/16027号(BioInvent)、同第88/06630号、同第90/3809号(Dyax)、米国特許第4,704,692号(Enzon)、国際出願第US91/02989号(Affymax)、国際公開第89/06283号、欧州特許第371998号、欧州特許第550400号、(Xoma)、欧州特許第229046号、国際出願第US91/07149号(Ixsys)、又は確率論的に生成されるペプチド若しくはタンパク質-米国特許第5723323号、同第5763192号、同第5814476号、同第5817483号、同第5824514号、同第5976862号、国際公開第86/05803号、欧州特許第590689号(Ixsys、現在はApplied Molecular Evolution(AME)、各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたく、又は当該技術分野において既知であり、かつ/又は本明細書に記載される、ヒト抗体のレパートリを生成することができるトランスジェニック動物の免疫に依存する(例えば、SCIDマウス、Nguyenら、「Microbiol.Immunol.41:901~907(1997)、Sandhuら,Crit.Rev.Biotechnol.16:95~118(1996)、Erenら,Immunol.93:154~161(1998)、それぞれが参照によりその全体が組み込まれる)。このような技術には、リボソームディスプレイ(Hanesら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:4937~4942(1997年5月)、Hanesら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:14130~14135(1998年11月))、単一細胞抗体産生技術(例えば、選択リンパ球抗体方法(「selected lymphocyte antibody method、SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wenら,J.Immunol.17:887~892(1987)、Babcookら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843~7848(1996))、ゲルマイクロドロップレット及びフローサイトメトリ(Powellら,Biotechnol.8:333~337(1990))、One Cell Systems(Cambridge,MA)、Grayら,J.Imm.Meth.182:155~163(1995)、Kennyら,Bio/Technol.13:787~790(1995))、B細胞選択物(Steenbakkersら,Molec.Biol.Reports 19:125-134 (1994)、Jonakら,Progress Biotech,Vol.5,In Vitro Immunization in Hybridoma Technology,Borrebaeck,ed.,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam、Netherlands(1988))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
ヒト以外の抗体又はヒト抗体を操作又はヒト化する方法も同様に使用でき、当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化又は操作された抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、又はその他の哺乳動物などであるがこれらに限定されない、非ヒトの供給源からの1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を有する。これらのヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変領域、定常領域又はその他のドメインから採取される。
【0050】
既知のヒトIg配列は、数多くの刊行物及びウェブサイトに開示されており、例えば、
www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi;
www.atcc.org/phage/hdb.html;
www.sciquest.com/;
www.abcam.com/;
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「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、U.S.Dept.Health(1983)があり、各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0051】
このようなインポートされた配列は、免疫原性を低減させるため、あるいは、当該技術分野において周知のように、結合、親和性、結合速度定数、解離速度定数、結合活性、特異性、半減期、又は任意のその他の好適な特性を低減、増強又は改変するために使用することができる。一般に、非ヒト若しくはヒトCDR配列の一部又は全ては、可変及び定常領域の非ヒト配列がヒト若しくは他のアミノ酸に置き換えられる間も維持される。抗体はまた、任意選択的に、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持したままで、ヒト化され得る。この目的を達成するために、任意選択的に、ヒト化抗体を、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用した、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製することが可能である。三次元の免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者に周知である。選択された免疫グロブリン配列候補について確率の高い三次元立体構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、免疫グロブリン配列候補の機能において残基が示す可能性の高い働きの解析、すなわち免疫グロブリン候補の抗原結合能に影響する残基の解析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増大など、望ましい抗体特性が達成されるように、コンセンサス配列及びインポート配列から、FR残基を選択し組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、抗原結合に直接的にかつほとんど実質的に影響する。本発明の抗体のヒト化又は操作は、Winter(Joneら,Nature 321:522(1986);Riechmannら,Nature 332:323(1988);Verhoeyenら,Science 239:1534(1988)),Simsら,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987),Carterら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Prestaら,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5723323号、同第5976862号、同第5824514号、同第5817483号、同第5814476号、同第5763192号、同第5723323号、同第5,766886号、同第5714352号、同第6204023号、同第6180370号、同第5693762号、同第5530101号、同第5585089号、同第5225539号、同第4816567号、国際出願第US98/16280号、同第US96/18978号、同第US91/09630号、同第US91/05939号、同第US94/01234号、国際出願第GB89/01334号、同第GB91/01134号、同第GB92/01755号、国際公開第90/14443号、同第90/14424号、同第90/14430号、欧州特許第229246号(それぞれ、参照によりその全体が明細書に組み込まれ、その中に引用される文献を含む)に記載されるものなどであるがこれらに限定されない、任意の周知の方法を使用して行うことができる。
【0052】
抗TNF抗体は、任意選択的に、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知である、ヒト抗体のレパートリを生成することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、ハムスタ、非ヒト霊長類など)の免疫により生成することもできる。ヒト抗TNF抗体を産生する細胞をかかる動物から単離し、本明細書に記載される方法などの好適な方法を使用して不死化してもよい。
【0053】
ヒト抗原に結合するヒト抗体のレパートリを産生することができるトランスジェニックマウスは、既知の方法(例えば、これらに限定されないが、Lonbergらに発行された米国特許第5,770,428号、同第5,569,825号、同第5,545,806号、同第5,625,126号、同第5,625,825号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、及び同第5,789,650号、Jakobovitsらの国際公開第98/50433号、Jakobovitsらの国際公開第98/24893号、Lonbergらの国際公開第98/24884号、Lonbergらの国際公開第97/13852号、Lonbergらの国際公開第94/25585号、Kucherlapateらの国際公開第96/34096号、Kucherlapateらの欧州特許第0463151(B1)号、Kucherlapateらの欧州特許0710719(A1)号、Suraniらの欧州特許第5,545,807号、Bruggemannらの国際公開第90/04036号、Bruggemannらの欧州特許第0438474(B1)号、Lonbergらの欧州特許第0814259(A2)号、Lonbergらの英国特許第2272440(A)号、LonbergらのNature368:856~859(1994)、TaylorらのInt.Immunol.Int.Immunol.6(4)579~591(1994)、GreenらのNature Genetics 7:13-21(1994)、MendezらのNature Genetics 15:146~156(1997)、TaylorらのNucleic Acids Research 20(23):6287~6295(1992)、TuaillonらのProc Natl Acad Sci USA 90(8)3720~3724(1993)、LonbergらのInt Rev Immunol 13(1):65~93(1995)及びFishwaldらのNat Biotechnol 14(7):845~851(1996)であって、これらは、参照により各全体が本明細書に組み込まれる)によって生成することができる。一般に、これらのマウスは、機能的に再構成された、又は機能的な再構成を受けることができる少なくとも1つのヒト免疫グロブリン遺伝子座に由来するDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。このようなマウスの内因性免疫グロブリン遺伝子座を破壊又は欠失させて、マウスの、内因性遺伝子によりコードされている抗体の産生能を除去することができる。
【0054】
類似のタンパク質又は断片への特異的結合についての抗体のスクリーニングは、ペプチドディスプレイライブラリを使用して首尾よく達成することができる。この方法は、望ましい機能又は構造を持つ個々のメンバーについてペプチドの多数の試料採集をスクリーニングすることを伴う。ペプチドディスプレイライブラリの抗体スクリーニングは、当該技術分野において周知である。ディスプレイされたペプチド配列の長さは、3~5000個又はそれ以上のアミノ酸であり、頻繁には5~100個のアミノ酸長、多くは約8~25個のアミノ酸長であることができる。ペプチドライブラリを作成する直接化学合成法に加えて、いくつかの組換えDNA方法も記述されている。1つのタイプは、バクテリオファージ又は細胞の表面上でのペプチド配列のディスプレイを含む。各バクテリオファージ又は細胞は、特定のディスプレイされたペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含有する。このような方法は、国際出願特許公報第91/17271号、同第91/18980号、同第91/19818号、及び同第93/08278号に記載されている。ペプチドライブラリを作成するためのその他のシステムは、インビトロでの化学合成法及び組換え法の両方の態様を有する。国際出願特許公報第92/05258号、同第92/14843号、及び同第96/19256号を参照されたい。米国特許第5,658,754号及び同第5,643,768号も参照されたい。ペプチドディスプレイライブラリ、ベクター、及びスクリーニングキットは、Invitrogen(Carlsbad,CA)及びCambridge antibody Technologies(Cambridgeshire,UK)のような供給元から市販されている。例えば、Enzonに譲渡された米国特許第4704692号、同第4939666号、同第4946778号、同第5260203号、同第5455030号、同第5518889号、同第5534621号、同第5656730号、同第5763733号、同第5767260号、同第5856456号、Dyaxに譲渡された米国特許第5223409号、同第5403484号、同第5571698号、同第5837500号、Affymaxに譲渡された米国特許第5427908号、同第5580717号、Cambridge antibody Technologiesに譲渡された米国特許第5885793号、Genentechに譲渡された米国特許第5750373号、Xomaに譲渡された米国特許第5618920号、同第5595898号、同第5576195号、同第5698435号、同第5693493号、同第5698417号、上記のColligan、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい、上記特許及び刊行物の各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
本発明の抗体は又、かかる抗体を乳中に産生するヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなどのトランスジェニック動物又は哺乳動物を提供するために、核酸をコードする少なくとも1つの抗TNF抗体を使用して調製することもできる。このような動物は、周知の方法を使用して準備することができる。例えば、これらに限定されないが、米国特許第5,827,690号、同第5,849,992号;同第4,873,316号;同第5,849,992号;同第5,994,616号;同第5,565,362号;同第5,304,489号などを参照されたい(それらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0056】
本発明の抗体は、植物部分又はそれから培養された細胞において、かかる抗体、特定された部分又は変異体を産生するトランスジェニック植物及び培養された植物細胞(例えば、タバコ及びトウモロコシであるが、これらに限定されない)を提供するために、少なくとも1つの抗TNF抗体コード核酸を使用して更に調製することができる。非限定的な実施例として、例えば、誘導プロモータを用い、組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉をうまく使用して、大量の組換えタンパク質が提供されてきた。例えば、Cramerら,Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95~118(1999)及びその中で引用される文献を参照されたい。また、トランスジェニックトウモロコシは、その他の組換え系において生成されるタンパク質又は天然資源から精製されるタンパク質に等しい生物学的活性を有する哺乳動物タンパク質を、商業生成レベルで発現するために使用されてきた。例えば、Hoodら,Adv.Exp.Med.Biol.」第464:127~147(1999)及びその中で引用される文献を参照のこと。抗体は、タバコ種子及びポテト塊茎を含む、一本鎖抗体(scFv)などの抗体断片を含むトランスジェニック植物種子からも大量に産生されてきた。例えば、Conradら、「Plant Mol.Biol.」38:101~109(1998)及びその中で引用される文献を参照のこと。したがって、本発明の抗体は、既知の方法により、トランスジェニック植物を使用して産生することもできる。例えば、Fischerら,Biotechnol.Appl.Biochem.30:99~108(1999年10月)、Maら,Trends Biotechnol.13:522~7(1995)、Maら,Plant Physiol.109:341~6(1995)、Whitelamら,Biochem.Soc.Trans.22:940~944(1994)、及びこれらの中で引用される文献も参照されたい。また、限定されないが、一般に抗体の植物発現についても参照のこと。上記文献の各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0057】
本発明の抗体は、広範囲にわたる親和性(K)でヒトTNFに結合することができる。好ましい実施形態では、本発明の少なくとも1つのヒトmAbは、任意選択的にヒトTNFに高い親和性で結合することができる。例えば、ヒトmAbは、ヒトTNFを約10-7M以下、例えば0.1~9.9(又はその中の任意の範囲若しくは値)X10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13又はその中の任意の範囲若しくは値など(ただしこれらに限定されない)のKで結合することができる。
【0058】
抗原に対する抗体の親和性又は結合活性は、任意の好適な方法を用いて実験により求めることができる。(例えば、Berzofsky,et al.,「Antibody-Antigen Interactions,」Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,NY(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,NY(1992)、及び本明細書に記載される方法を参照されたい)。特定の抗体抗原相互作用について測定される親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定された場合に異なることができる。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、K、K、K)の測定は、好ましくは、抗体及び抗原の標準化溶液、及び本明細書で記載される緩衝剤などの標準化緩衝剤を用いて行われる。
【0059】
核酸分子。配列番号1、2、3、4、5、6、7、8のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸の少なくとも70~100%をコードするヌクレオチド配列、特定された断片、変異体若しくはそれらのコンセンサス配列、又はこれらの配列のうちの少なくとも1つを含む寄託ベクターなどの本明細書に提供される情報を使用して、配列番号1、2及び3の重鎖可変CDR領域の全て並びに/又は配列番号4、5及び6の軽鎖可変CDR領域の全てを含む少なくとも1つの抗TNF抗体をコードする本発明の核酸分子は、本明細書に記載される又は当該技術分において既知の方法を使用して得ることができる。
【0060】
本発明の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNA若しくは任意の他の形態のようなRNAの形態、又はクローニングにより得られる若しくは合成的に産生されるcDNA及びゲノムDNAが挙げられるがこれらに限定されないDNAの形態、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。DNAは、3本鎖、2本鎖若しくは1本鎖、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。DNA又はRNAの少なくとも1本の鎖の任意の部分は、センス鎖としても知られるコード鎖であってもよいし、又はアンチセンス鎖と呼ばれる、非コード鎖であってもよい。
【0061】
本発明の単離された核酸分子は、任意選択的に1つ又は2つ以上のイントロンを有するオープンリーディングフレーム(ORF)、例えば、これらに限定されないが、少なくとも1つの重鎖(例えば、配列番号1~3)若しくは軽鎖(例えば、配列番号4~6)のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3のような、少なくとも1つのCDRの少なくとも1つの特定された部分を含む核酸分子、抗TNF抗体若しくは可変領域のコード配列(例えば、配列番号7、8)を含む核酸分子、並びに上述の核酸分子とは実質的に異なるが、遺伝子コードの縮重により、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知である少なくとも1つの抗TNF抗体を尚もコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み得る。当然のことながら、遺伝子コードは、技術分野において周知である。したがって、当業者には、本発明の特定の抗TNF抗体をコードする、かかる縮重核酸変異体を生成することは、日常的であろう。例えば、上記のAusubelらを参照されたい。このような核酸変異体は、本発明に含まれる。本発明の単離核酸分子の非限定的な例としては、それぞれ、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、LC CDR3、のHC可変領域及びLC可変領域をコードする核酸の非限定的な例に対応する、配列番号10、11、12、13、14、15が挙げられる。
【0062】
本明細書に示されるように、抗TNF抗体をコードする核酸を含む本発明の核酸分子としてとしては、それ自体で抗体断片のアミノ酸配列をコードするもの、抗体の全長若しくは抗体の一部をコードする配列、抗体、断片若しくは部分のコード配列、並びに追加の配列、例えば、少なくとも1つのイントロンなど、前述の追加のコード配列を伴って、又は伴わずに、非コード5’及び3’配列、例えば、スプライシング及びポリアデニル化シグナル(例えば、mRNAのリボソーム結合及び安定性)を含む、転写、mRNAプロセシングにおいて役割を果たす転写された非翻訳配列を含むがこれに限定されない追加の非コード配列と共に、少なくとも1つのシグナルリーダ若しくは融合ペプチドのコード配列、追加のアミノ酸、例えば、追加の機能を提供するアミノ酸をコードする追加のコード配列を挙げることができるが、これらに限定されない。したがって、抗体をコードする配列はマーカ配列に融合させることができ、例えば、マーカ配列は、これを融合させた抗体断片又は部分を含む抗体の精製を促進するペプチドをコードする配列である。
【0063】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド。本発明は、本明細書で開示されるポリヌクレオチドに対して、選択的なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする単離核酸を提供する。したがって、本実施形態のポリヌクレオチドは、かかるポリヌクレオチドを含む核酸を単離、検出、及び/又は定量するために使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドを使用して、寄託されたライブラリにおける部分長又は完全長クローンを同定、単離、又は増幅することができる。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、単離された、又はそうでなければヒト若しくは哺乳動物の核酸ライブラリのcDNAに相補的な、ゲノム配列又はcDNA配列である。
【0064】
好ましくは、cDNAライブラリは、完全長配列の少なくとも80%、好ましくは完全長配列の少なくとも85%又は90%、及びより好ましくは完全長配列の少なくとも95%を含む。このcDNAライブラリは、稀な配列の発現量を増大させるよう正規化することができる。相補配列に対する配列同一性が低い配列を使用する、低又は中ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が典型的なものであるが、これに限定されない。同一性がより高い配列には、任意選択的に、中及び高ストリンジェンシーの条件を使用することができる。低ストリンジェンシー条件は、約70%の配列同一性をもつ配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、オーソロガス又はパラロガス配列を特定同定するために利用できる。
【0065】
任意選択的に、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載されているポリヌクレオチドによってコード化される抗体の少なくとも一部をコードすることになる。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドに対する選択的ハイブリダイゼーションのために利用可能な核酸配列を包含する。例えば、上記のAusubel、上記のColliganを参照されたい。各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
核酸の構築。本発明の単離核酸は、当該技術分野にて周知のように、(a)組換え方法、(b)合成技術、(c)精製技術、又はこれらの組み合わせを使用して作製することができる。
【0067】
核酸には、本発明のポリヌクレオチドに加えて、都合よく配列を含ませることができる。例えば、1つ又は2つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含むマルチクローニングサイトを核酸に挿入して、ポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。また、翻訳可能な配列を挿入して、本発明の翻訳されたポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。例えば、ヘキサヒスチジンマーカ配列は、本発明のタンパク質を精製するのに便利な手段を提供する。本発明の核酸(コード配列を除く)は、任意選択的に、本発明のポリヌクレオチドのクローニング及び/又は発現のためのベクター、アダプタ又はリンカである。
【0068】
かかるクローニング配列及び/又は発現配列に追加の配列を付加して、クローニング及び/又は発現におけるそれらの機能を最適化すること、ポリヌクレオチドの単離に役立てること、又は細胞へのポリヌクレオチドの導入を改善することができる。クローン化ベクター、発現ベクター、アダプタ、及びリンカの使用は、技術分野において周知である。(例えば、Ausubel(上記)、又は上記のSambrookを参照のこと)。
【0069】
核酸を構築するための組換え方法。RNA、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらの任意の組み合わせのような本発明の単離核酸組成物は、当業者に既知の任意の数のクローニング手順を用いて生物源から得ることができる。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが、cDNA又はゲノムDNAライブラリ内の望ましい配列の同定に使用される。RNAの単離、並びにcDNA及びゲノムライブラリの構築は、当業者には周知である。(例えば、Ausubel(上記)、又は上記のSambrookを参照のこと)。
【0070】
核酸のスクリーニング及び単離方法。本明細書で開示されているような、本発明のポリヌクレオチドの配列に基づいたプローブを用いて、cDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることができる。プローブを使用して、ゲノムDNA又はcDNA配列にハイブリダイズさせて、同じ又は異なる生体の相同遺伝子を単離することができる。当業者であれば、アッセイに様々な度合のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを用いることができ、ハイブリダイゼーション又は洗浄媒質のいずれかをストリンジェントなものにできることを理解するであろう。ハイブリダイゼーション条件がストリンジェントになるほど、二重鎖の形成が生じる際のプローブと標的との間の相補性の度合が大きくなるはずである。ストリンジェンシーの程度は、温度、イオン強度、pH、及びホルムアミドのような部分的に変性する溶媒の存在、のうちの1つ又は2つ以上によって制御され得る。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、例えば、0%~50%の範囲内でのホルムアミド濃度の操作により反応溶液の極性を変えることにより首尾よく変更される。検出可能な結合に必要とされる相補性(配列同一性)の程度は、ハイブリダイゼーション媒質及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーによって異なる。相補性の程度は、最適には100%、又は70~100%、又はその中の任意の範囲若しくは値である。しかしながら、プローブ及びプライマ中の配列のわずかな違いは、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーを低減させることで埋め合わせることができることを理解すべきである。
【0071】
RNA又はDNAの増幅方法は技術分野において周知であり、本明細書で紹介する教示及び指針に基づいて、過度の実験なしに、本発明に従って使用可能である。
【0072】
DNA又はRNA増幅の既知の方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)及び関連する増幅プロセス(例えば、Mullisらの米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号、Taborらの米国特許第4,795,699号及び同第4,921,794号、Innisの米国特許第5,142,033号、Wilsonらの米国特許第5,122,464号、Innisの米国特許第5,091,310号、Gyllenstenらの米国特許第5,066,584号、Gelfandらの米国特許第4,889,818号、Silverらの米国特許第4,994,370号、Biswasの米国特許第4,766,067号、Ringoldの米国特許第4,656,134号を参照されたい)、及び二本鎖DNA合成のためのテンプレートとして標的配列に対してアンチセンスRNAを使用するRNA媒介増幅(Malekらの米国特許第5,130,238号、商標名NASBA)が挙げられるが、これらに限定されない(これらの文献の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。(例えば、Ausubel(上記)、又はSambrook(上記)を参照されたい。)
【0073】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、ゲノムDNA又はcDNAライブラリから直接、本発明のポリヌクレオチド及び関連する遺伝子の配列を増幅することができる。PCR及び他のインビトロ増幅方法はまた、例えば、発現すべきタンパク質をコードする核酸配列をクローニングすること、サンプル中の所望のmRNAの存在を検出するため、核酸の配列決定のため、又は他の目的のためのプローブとして用いる核酸を作製することに関し有用であり得る。インビトロでの増幅方法によって当業者を導くのに充分な技術の例は、上記のBerger、上記のSambrook、及び上記のAusubel、並びにMullisらの米国特許第4,683,202号(1987)、及びInnisら、「PCR Protocols A Guide to Methods and Applications」、Academic Press Inc編、San Diego,CA(1990)に見られる。ゲノムPCR増幅用の市販キットは技術分野において既知である。例えば、Advantage-GC Genomic PCR Kit(Clontech)を参照されたい。加えて、例えば、T4遺伝子32タンパク質(Boehringer Mannheim)を用いて、長いPCR産物の収率を改善することができる。
【0074】
核酸を構築するための合成方法。本発明の単離核酸は、既知の方法による直接化学合成によっても調製可能である(例えば、上記のAusubelらを参照)。化学合成は、一般に、相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、又は1本鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼとの重合によって、2本鎖DNAに変換可能な1本鎖オリゴヌクレオチドを産生する。当業者であれば、DNAの化学合成は約100又はそれ以上の塩基の配列に限定され得るが、より長い配列は、より短い配列のライゲーションによって得ることができることを認識するであろう。
【0075】
組換え発現カセット。本発明は、本発明の核酸を含む組換え発現カセットを更に提供する。本発明の核酸配列、例えば本発明の抗体をコードするcDNA又はゲノム配列を用いて、少なくとも1つの所望の宿主細胞に導入できる組換え発現カセットを構築することができる。組換え発現カセットは、典型的には、意図される宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を導く、転写開始調節配列に機能的に連結される、本発明のポリヌクレオチドを含む。異種及び非異種(すなわち、内因性)プロモータの両方を使用して、本発明の核酸の発現を導くことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、プロモータ、エンハンサ、又は他の要素として機能する単離核酸を、本発明のポリヌクレオチドの発現を上方又は下方調節するために、本発明のポリヌクレオチドの非異種形の適切な位置(上流、下流、又はイントロン内)に導入することができる。例えば、変異、欠失、及び/又は置換により、インビボ又はインビトロで内因性プロモータを変化させることができる。
【0077】
ベクター及び宿主細胞。本発明は、本発明の単離核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子操作された宿主細胞、及び当該技術分野において周知である組換え技術による少なくとも1つの抗TNF抗体の生成にも関する。例えば、上記のSambrookら、上記のAusubelらを参照されたく、それぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0078】
ポリヌクレオチドは、任意選択的に、宿主の増殖についての選択マーカを含有するベクターに結合することができる。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物内、又は荷電脂質との複合体内に導入される。ベクターがウイルスである場合は、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでこれをパッケージングし、その後、宿主細胞内に形質導入することができる。
【0079】
DNA挿入物は、適切なプロモータに機能的に連結されるべきである。発現コンストラクトは、転写開始部位、転写終結部位、及び転写された領域内では翻訳のためのリボソーム結合部位を更に含む。構築物により発現される成熟した転写産物のコード部分は、好ましくは、最初に翻訳開始部位を含み、翻訳されるmRNAの最後に終止コドン(例えば、UAA、UGA又はUAG)が適切に位置することになる。哺乳動物又は真核生物の細胞の発現ではUAA及びUAGが好ましい。
【0080】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカを含むが、これは任意選択的である。かかるマーカには、例えば、真核細胞培養のためのメトトレキサート(MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR、米国特許第4,399,216号;同第4,634,665号;同第4,656,134号;同第4,956,288号;同第5,149,636号;同第5,179,017号、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、ミコフェノール酸、又はグルタミンシンセターゼ(glutamine synthetase、GS、米国特許第5,122,464号;同第5,770,359号;同第5,827,739号)抵抗性遺伝子、並びにE.coli及び他の細菌又は原核生物における培養のためのテトラサイクリン又はアンピシリン抵抗性遺伝子が含まれるが、これらに限定されない(上記特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。上記の宿主細胞に対して適切な培養培地及び条件は、技術分野において周知である。好適なベクターは、当業者にとって容易に明白となるであろう。宿主細胞へのベクターコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストランを介在させたトランスフェクション、カチオン性脂質を介在させたトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染又は他の周知の方法により達成することができる。このような方法については、上記のSambrook、第1~4章及び第16~18章、上記のAusubel、第1、9、13、15、16章などの技術分野に記載されている。
【0081】
本発明の少なくとも1つの抗体は、融合タンパク質などの修飾された形態で発現され得、分泌シグナルだけでなく、追加の異種機能領域も含み得る。例えば、追加アミノ酸の領域、特に荷電アミノ酸を抗体のN末端に追加して、精製中又は後続の処理及び保存中に、宿主細胞における安定性及び持続性を改善することができる。また、ペプチド部分を本発明の抗体に追加して、精製を促進することもできる。抗体又は少なくとも1つのその断片の最終調製前に、このような領域を除去することができる。このような方法は、上記のSambrook、第17.29~17.42章及び第18.1~18.74章、上記のAusubel、第16、17及び18章などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0082】
当業者であれば、本発明のタンパク質をコードする核酸の発現に利用可能な多数の発現系について精通している。
【0083】
別の方法としては、本発明の核酸は、本発明の抗体をコードする内因性DNAを含む宿主細胞内で、(操作により)オン切換えすることにより、宿主細胞中で発現させることができる。このような方法は、米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号、及び同第5,733,761号に記載されているように、当該技術分野において周知であり、上記特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
抗体、その特定の部分又は変異体の産生に有用な細胞培養物の一例は、哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞系は、しばしば細胞からなる単層形態を取るが、哺乳動物細胞の懸濁液又はバイオリアクタも使用可能である。無傷なグリコシル化タンパク質を発現可能な多くの好適な宿主細胞株が当該技術分野において開発されており、これにはCOS-1(例えばATCC CRL 1650)、COS-7(例えばATCC CRL-1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL-10)、CHO(例えばATCC CRL1610)、及びBSC-1(例えばATCC CRL-26)細胞株、Cos-7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0-Ag14、293細胞、HeLa細胞などが挙げられ、これらは例えば、American Type Culture Collection,Manassas,Va(www.atcc.org)から容易に入手可能である。好適な宿主細胞には、骨髄腫及びリンパ腫細胞などのリンパ系起源の細胞が挙げられる。特に好ましい宿主細胞は、P3X63Ag8.653細胞(ATCC寄託番号CRL-1580)及びSP2/0-Ag14細胞(ATCC寄託番号CRL-1851)である。特に好ましい実施形態では、組換え細胞は、P3X63Ab8.653又はSP2/0-Ag14細胞である。
【0085】
これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモータ(例えば、後期又は初期SV40プロモータ、CMVプロモータ(米国特許第5,168,062号;同第5,385,839号)、HSV tkプロモータ、pgk(ホスホグリセレートキナーゼ)プロモータ、EF-1αプロモータ(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモータ、エンハンサ、及び/又はリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えば、SV40ラージT Agポリ付加部位)、並びに転写終結配列などのプロセシング情報部位などであるがこれらに限定されるものではない、発現制御配列のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。例えば、上記のAusubelら、上記のSambrookらを参照されたい。本発明の核酸又はタンパク質の生成に有用な他の細胞は既知であり、並びに/あるいは例えば、American Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas(www.atcc.org)又は他の既知の若しくは商業的供給源から入手可能である。
【0086】
真核宿主細胞が利用される場合、典型的には、ベクター内にポリアデニル化又は転写終結配列が組み込まれる。終結配列の一例は、ウシ成長ホルモン遺伝子からのポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシングのための配列も、同様に含むことができる。スプライシング配列の一例は、SV40由来のVP1イントロンである(Sprague,ら,J.Virol.45:773~781(1983))。加えて、当該技術分野において周知であるように、宿主細胞内の複製を制御するための遺伝子配列をベクター内に組み込むことができる。
【0087】
抗体の精製。抗TNF抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ及びレクチンクロマトグラフィが挙げられるがこれらに限定されない周知の方法により、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィ(「high performance liquid chromatography、HPLC」)を精製に利用することもできる。例えば、Colligan、Current Protocols in Immunology又はCurrent Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY(1997~2001)の、例えば、第1、4、6、8、9、10章を参照されたく、それぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
本発明の抗体には、天然に精製された生成物、化学合成手順の生成物、並びに例えば、酵母、高等植物、昆虫及び哺乳動物細胞を含む、真核宿主から組換え技法により産生された産物が含まれる。組換体産生手順に用いられる宿主に応じて、本発明の抗体は、グリコシル化されてもグリコシル化されなくてもよいが、グリコシル化されるのが好ましい。このような方法は、上記のSambrook、セクション17.37-17.42、上記のAusubel、第10、12、13、16、18、及び20章、上記のColligan,Protein Science、第12~14章などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されており、全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0089】
抗TNF抗体
配列番号1、2及び3の重鎖可変CDR領域の全て並びに/又は配列番号4、5及び6の軽鎖可変CDR領域の全てを含む本発明の単離された抗体は、任意の好適なポリヌクレオチドによってコードされる本明細書で開示される抗体のアミノ酸配列、又は任意の単離又は調製された抗体を含む。好ましくは、ヒト抗体又は抗原結合断片は、ヒトTNFに結合し、それにより、タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を部分的又は実質的に中和する。少なくとも1つのTNFタンパク質又は断片の少なくとも1つの生物学的活性を部分的に又は好ましくは実質的に中和する抗体又はその特定された部分若しくは変異体は、タンパク質又は断片に結合し、それによりTNFのTNF受容体への結合を通して、又は他のTNF依存性若しくは介在性機序を通して介在される活性を阻害することができる。本明細書で使用するとき、「中和抗体」という用語は、アッセイに応じて約20~120%、好ましくは少なくとも約10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%又はそれ以上、TNF依存性活性を阻害することができる抗体を指す。TNF依存性活性を阻害する抗TNF抗体の能力は、好ましくは、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知の、少なくとも1つの好適なTNFタンパク質又は受容体アッセイによって評価される。本発明のヒト抗体は、任意のクラス(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)又はアイソタイプのものであってもよく、κ又はλ軽鎖を含み得る。一実施形態において、ヒト抗体は、IgG重鎖又は規定された断片、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のうちの少なくとも1つのアイソタイプを含む。このタイプの抗体は、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知の、少なくとも1つのヒト軽鎖(例えば、IgG、IgA)及びIgM(例えば、γ1、γ2、γ3、γ4)導入遺伝子を含む、トランスジェニックマウス又は他のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を用いることによって調製することができる。別の実施形態において、抗ヒトTNFヒト抗体は、IgG1重鎖及びIgG1軽鎖を含む。
【0090】
本明細書で使用するとき、「抗体」又は「複数の抗体」という用語は、2009年のバイオロジクス価格競争・イノベーション法(BPCI Act)並びに同様の世界的な法律及び規則で承認されたバイオシミラ抗体分子を含む。BPCI Actの下で、抗体は、臨床的に不活性な構成成分のわずかな違いにも関わらず、基準品と「非常に類似」しており、安全性、純度、効力の点で基準品と同等の臨床結果が得られると「予想される」ことをデータが示す場合、バイオシミラであることが実証され得る(Endocrine Practice:2018年2月、第24巻第2号第195~204頁)。これらのバイオシミラ抗体分子は、短縮された承認経路を提供し、それにより、出願人は、法的な承認を確保するために、イノベータの基準品の臨床データに依存している。臨床試験の成功に基づいてFDAに承認されたオリジナルのイノベータ基準抗体と比較して、バイオシミラ抗体分子は、本明細書では、「バイオ後続品」と呼ばれる。本明細書に提示されるように、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)は、臨床試験の成功に基づいてFDAに承認されたオリジナルのイノベータ参照抗TNF抗体である。ゴリムマブは、2009年から米国で販売されている。
【0091】
例示的な配列
様々な実施形態において、TNF阻害剤は、抗TNF抗体SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)、又は以下に示す配列を含むその抗原結合断片を含む。抗TNF抗体SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)及び他の抗TNF抗体に関する更なる情報については、例えば、米国特許第7,250,165号;同第7,691,378号;同第7,521,206号;同第7,815,909号;同第7,820,169号;同第8,241,899号;同第8,603,778号;同第9,321,836号;及び同第9,828,424号を参照されたい。
【0092】
例示的な抗TNF抗体の配列 例-SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)
重鎖CDR(HCDR)及び軽鎖CDR(LCDR)は、Kabatにより定義される。
【0093】
CDRに下線が付されたゴリムマブ重鎖(HC)のアミノ酸配列:(配列番号36)
【0094】
【0095】
CDRに下線が付されたゴリムマブ軽鎖(LC)のアミノ酸配列:(配列番号37)
【0096】
【0097】
CDRに下線が付されたゴリムマブ可変重鎖(VH)のアミノ酸配列:(配列番号38)
【0098】
【0099】
CDRに下線が付されたゴリムマブ可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列:(配列番号39)
【0100】
【0101】
ゴリムマブ重鎖の相補性決定領域1(HCDR1)のアミノ酸配列:(配列番号40)
SYAMH
【0102】
ゴリムマブ抗体重鎖の相補性決定領域2(HCDR2)のアミノ酸配列:(配列番号41)
FMSYDGSNKKYADSVKG
【0103】
ゴリムマブ重鎖の相補性決定領域3(HCDR3)のアミノ酸配列:(配列番号42)
DRGIAAGGNYYYYGMDV
【0104】
ゴリムマブ軽鎖の相補性決定領域1(LCDR1)のアミノ酸配列:(配列番号43)
RASQSVYSYLA
【0105】
ゴリムマブ軽鎖の相補性決定領域2(LCDR2)のアミノ酸配列:(配列番号44)
DASNRAT
【0106】
ゴリムマブ軽鎖の相補性決定領域3(LCDRL)のアミノ酸配列:(配列番号45)
QQRSNWPPFT
【0107】
本発明の少なくとも1つの抗体は、少なくとも1つのTNFタンパク質、サブユニット、断片、部分、又はそれらの任意の組み合わせに特異的な少なくとも1つの特定のエピトープに結合する。この少なくとも1つのエピトープは、このタンパク質の少なくとも一部を含む少なくとも1つの抗体結合領域を含むことができ、このエピトープは、好ましくは、このタンパク質の少なくとも1つの細胞外部分、可溶性部分、親水性部分、外部部分、又は細胞質顆粒部分から構成されている。少なくとも1つの特定されたエピトープは、配列番号9の隣接アミノ酸の特定された部分全体に対する少なくとも1~3個のアミノ酸の少なくとも1つのアミノ酸配列の任意の組み合わせを含むことができる。
【0108】
一般に、本発明のヒト抗体又は抗原結合断片は、少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)又は少なくとも1つの重鎖可変領域の変異体、及び少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)又は少なくとも1つの軽鎖可変領域の変異体を含む抗原結合領域を含む。非限定的な例として、抗体又は抗原結合部分若しくは変異体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3及び/又は配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つを含み得る。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、対応するCDR1、2及び/又は3のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、2及び/又は3)を有する少なくとも1つの重鎖CDR(すなわち、CDR1、CDR2及び/又はCDR3)の少なくとも一部を含む抗原結合領域を有することができる。別の特定の実施形態において、抗体又は抗原結合部分若しくは変異体は、対応するCDR1、2及び/又は3のアミノ酸配列(例えば、配列番号4、5、及び/又は6)を有する少なくとも1つの軽鎖CDR(すなわち、CDR1、CDR2及び/又はCDR3)の少なくとも一部を含む抗原結合領域を有することができる。好ましい実施形態において、抗体又は抗原結合断片の3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRは、本明細書に記載される、mAb TNV148、TNV14、TNV15、TNV196、TNV118、TNV32、及びTNV86のうちの少なくとも1つの対応するCDRのアミノ酸配列を有する。このような抗体は、組換えDNA技術に関する従来技術を使用して抗体をコードする(すなわち、1つ又は2つ以上の)核酸分子を調製して発現させることによって、又は任意のその他の好適な方法を使用することによって、従来技術を使用して抗体の種々の部分(例えば、CDR、フレームワーク)を一緒に化学的に結合させることにより調製できる。
【0109】
抗TNF抗体は、規定されたアミノ酸配列を有する重鎖又は軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、好ましい実施形態において、抗TNF抗体は、任意選択的に配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び/又は任意選択的に配列番号8のアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含む。ヒトTNFに結合し、規定された重鎖又は軽鎖可変領域を含む抗体は、好適な方法、例えば、当該技術分野において既知でありかつ/又は本明細書に記載される、ファージディスプレイ(Katsube,Y.ら、「Int J Mol.Med」1(5):863-868(1998))又はトランスジェニック動物を採用する方法など、好適な方法を使用して調製することができる。例えば、機能的に再配列されたヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子と、機能的な再配列を受けることが可能なヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子座からのDNAを含む導入遺伝子と、を含むトランスジェニックマウスを、ヒトTNF又はその断片で免疫して抗体の生成を誘発することができる。所望する場合、抗体産生細胞を単離することができ、本明細書に記載されるように、かつ/又は技術分野において周知であるように、ハイブリドーマ又はその他の不死化させた抗体産生細胞を調製することができる。あるいは、抗体、特定の部分又は変異体は、好適な宿主細胞内で、コード核酸又はその一部分を使用して発現させることができる。
【0110】
本発明はまた、本明細書に記載されるアミノ酸配列と実質的に同じである配列中のアミノ酸を含む抗体、抗原結合断片、免疫グロブリン鎖及びCDRに関する。好ましくは、かかる抗体又は抗原結合断片及びかかる鎖若しくはCDRを含む抗体は、高い親和性(例えば、Kが約10-9M以下)で、ヒトTNFに結合することができる。本明細書に記載されている配列と実質的に同じであるアミノ酸配列としては、保存的アミノ酸置換並びにアミノ酸欠失及び/又は挿入を含む配列が挙げられる。保存的アミノ酸置換は、第1のアミノ酸を、第1のアミノ酸のものに類似する化学的及び/又は物理的特性(例えば、電荷、構造、極性、疎水性/親水性)を有する第2のアミノ酸で置換することを指す。保存的置換は、1個のアミノ酸を、以下の群内の別のアミノ酸で置き換えることを含む:リジン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H);アスパラギン酸塩(D)及びグルタミン酸塩(E);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)、K、R、H、D、及びE;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、及びグリシン(G);F、W、及びY;C、S、及びT。
【0111】
アミノ酸コード。本発明の抗TNF抗体を構成するアミノ酸は、略されることが多い。アミノ酸表記は、その一文字コード、その三文字コード、名称、又は3つのヌクレオチドのコドンによりアミノ酸を表記することにより示すことができ、技術分野においてよく理解されている(Alberts,B.ら、「Molecular Biology of The Cell」第3版、Garland Publishing,Inc.,New York(1994)を参照されたい)。
【0112】
【表1】
【0113】
本発明の抗TNF抗体は、本明細書で特定されるように、自然変異又はヒトによる操作のいずれかによる、1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を含み得る。
【0114】
当然のことながら、当業者が行い得るアミノ酸置換の数は、上述のものを含む数多くの要因に依存する。概して、任意の所与の抗TNF抗体、断片又は変異体についてのアミノ酸置換、挿入、又は欠失の数は、本明細書で特定されるように、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、例えば、1~30、又はこの中の任意の範囲若しくは値を超えない。
【0115】
機能上不可欠である本発明の抗TNF抗体内のアミノ酸は、部位特異的変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発などの、当該技術分野において既知の方法により特定することができる(例えば、上記のAusubel、第8,15章;Cunningham及びWells,Science 244:1081-1085(1989))。後者の手順では、分子内の残基ごとに単個のアラニンによる変異を導入する。次いで、結果として得られたミュータント分子は、例えば、少なくとも1つのTNF中和活性などがあるがこれに限定されない生物学的活性について試験される。抗体結合にとってきわめて重要である部位も、結晶化、核磁気共鳴又は光親和性標識などの構造分析によって特定することができる(Smithら、「J.Mol.Biol.」224:899~904(1992)及びde Vosら、「Science」255:306~312(1992))。
【0116】
本発明の抗TNF抗体は、配列番号1、2、3、4、5、6のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸のうちの1個~全てから選択された、少なくとも1つの部分、配列又は組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0117】
抗TNF抗体は更に、任意選択的に、配列番号7、8のうちの少なくとも1つの、隣接アミノ酸の70~100%の少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。
【0118】
一実施形態では、免疫グロブリン鎖又はその一部分(例えば、可変領域、CDR)のアミノ酸配列は、配列番号7、8のうちの少なくとも1つの対応する鎖のアミノ酸配列と、約70~100%の同一性(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)を有する。例えば、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、配列番号8の配列と比較することができ、又は重鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号7と比較することができる。好ましくは、70~100%のアミノ酸同一性(すなわち、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)は、当該技術分野において周知であるように、好適なコンピュータアルゴリズムを使用して決定される。
【0119】
例示的な重鎖及び軽鎖可変領域の配列は、配列番号7、8に示されている。本発明の抗体又はその特定された変異体は、本発明の抗体から任意の数の隣接アミノ酸残基を含み得、その数は、抗TNF抗体における隣接残基数の10~100%からなる整数の群から選択される。任意選択的に、隣接アミノ酸のこの部分配列は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250又はそれ以上のアミノ酸長、又はその中の任意の範囲若しくは値である。更に、このような部分配列の数は、少なくとも2、3、4、又は5などの、1~20からなる群から選択される任意の整数であることができる。
【0120】
当業者が認識しているように、本発明には、本発明の少なくとも1つの生物学的活性抗体が含まれている。生物学的活性抗体は、天然(非合成)、内因性又は関連する及び既知の抗体のものの、少なくとも20%、30%又は40%、及び好ましくは少なくとも50%、60%又は70%、及び最も好ましくは少なくとも80%、90%又は95%~1000%の比活性を有する。酵素活性及び基質特異性のアッセイ及び定量測定の方法は、当業者にとって周知である。
【0121】
別の態様では、本発明は、有機部分の共有結合により修飾される、本明細書に記載されるヒト抗体及び抗原結合断片に関する。かかる修飾は、改善された薬物動態特性(例えば、増大したインビボでの血清半減期)を有する抗体又は抗原結合断片を産生することができる。有機部分は、直鎖又は分枝鎖親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であることができる。特定の実施形態では、親水性ポリマー基は、分子量が約800~約120,000ダルトンであって、ポリアルカングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol、PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマー又はポリビニルピロリドンであり得、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基は、約8~約40個の炭素原子を含むことができる。
【0122】
本発明の修飾された抗体及び抗原結合断片は、直接的又は間接的に抗体に共有結合される、1つ又は2つ以上の有機部分を含み得る。本発明の抗体又は抗原結合断片に結合される各有機部分は、独立して、親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であることができる。本明細書で使用する場合、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸及びジカルボン酸を包含する。本明細書で使用する場合、「親水性ポリマー基」という用語は、オクタンよりも水に対する溶解度が高い有機ポリマーを意味する。例えば、ポリリシンは、オクタンよりも水に対する溶解度が高い。よって、ポリリシンの共有結合により修飾された抗体は、本発明に包含される。本発明の抗体を修飾するのに好適な親水性ポリマーは、直線状又は分岐状であることができ、例えば、ポリアルカングリコール(例えば、PEG、モノメトキシ-ポリエチレングリコール(monomethoxy-polyethylene glycol、mPEG)、PPGなど)、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸など)、ポリアルカンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、及びポリビニルピロリドンを含む。好ましくは、本発明の抗体を修飾する親水性ポリマーは、個別の分子体として、約800~約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG5000及びPEG20,000を使用することができ、下付き文字は、ポリマーの平均分子量(ダルトン)である。親水性ポリマー基は、1~約6個のアルキル基、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基で置換することができる。脂肪酸又は脂肪酸エステル基で置換される親水性ポリマー類は、好適な方法を利用することによって調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーを、脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボン酸塩に連結させることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボン酸塩(例えば、N,N-カルボニルジイミダゾールで活性化されている)をポリマー上のヒドロキシル基に連結させることができる。
【0123】
本発明の抗体を修飾するために好適な脂肪酸及び脂肪酸エステルは、飽和されてもよいし、又は1つ若しくは2つ以上の不飽和単位を含有していてもよい。本発明の抗体を修飾するのに好適な脂肪酸としては、例えば、n-ドデカン酸塩(C12、ラウリン酸塩)、n-テトラデカン酸塩(C14、ミリスチン酸塩)、n-オクタデカン酸塩(C18、ステアリン酸塩)、n-エイコサン酸塩(C20、アラキジン酸塩)、n-ドコサン酸塩(C22、ベヘン酸)、n-トリアコンタン酸塩(C30)、n-テトラコンタン酸塩(C40)、シス-Δ9-オクタデカン酸塩(C18、オレイン酸塩)、全てのシス-Δ5,8,11,14-エイコサテトラエン酸塩(C20、アラキドン酸塩)、オクタンジオン酸、テトラデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ドコサンジオン酸などが挙げられる。好適な脂肪酸エステルは、直鎖又は分枝鎖の低級アルキル基を含む、ジカルボン酸のモノエステルを含む。低級アルキル基は、1~約12個、好ましくは1~約6個の炭素原子を含み得る。
【0124】
修飾ヒト抗体及び抗原結合断片は、1つ又は2つ以上の修飾剤と反応させることなどによって、好適な方法を使用して調製することができる。本明細書で使用されるとき、「修飾剤」という用語は、活性化基を含む好適な有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を意味する。「活性化基」とは、適切な条件下で第2の化学基と反応し、これにより修飾剤と第2の化学基との間に共有結合を形成することのできる、化学部分又は官能基である。例えば、アミン反応性活性化基は、トシル酸塩、メシル酸塩、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)などの求電子性基、N-ヒドロキシスクシニミジルエステル(NHS)などを含む。チオール類と反応可能な活性化基としては、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5-チオール-2-ニトロ安息香酸チオール(TNB-チオール)などが挙げられる。アルデヒド官能基は、アミン又はヒドラジド含有分子と連結することができ、アジド基は、三価リン基と反応してホスホルアミデート又はホスホルイミド結合を形成することができる。分子中に活性化基を導入するための好適な方法は、当該技術分野において既知である(例えば、Hermanson,G.T.、Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)参照)。活性化基は、有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接的に、又はリンカ部分、例えば、二価のC~C12基(ここで、1つ又は2つ以上の炭素原子は酸素、窒素、又は硫黄などのヘテロ原子で置換され得る)を介して、結合することができる。好適なリンカ部分としては、例えば、テトラエチレングリコール、-(CH-、-NH-(CH-NH-、-(CH-NH-、及び-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-NH-が挙げられる。リンカ部分を含む修飾剤は、例えば1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で、モノ-Boc-アルキルジアミン(例えば、モノ-Boc-エチレンジアミン、モノ-Boc-ジアミノへキサン)を脂肪酸と反応させることにより、遊離アミンと脂肪酸カルボキシレートとの間のアミド結合を形成することによって産生可能である。Boc保護基を、トリフルオロ酢酸(TFA)処理により生成物から除去して、記載されているように別のカルボン酸塩に連結し得る一級アミンを露出させることができ、あるいは、これを無水マレイン酸と反応させ、結果として得られた生成物を環化させて脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を生成することができる。(例えば、参照により教示の全体が本明細書に組み込まれる、Thompsonらの国際公開第92/16221号を参照のこと。)
【0125】
本発明の修飾された抗体は、ヒト抗体又は抗原結合断片を修飾剤と反応させることによって生成することができる。例えば、有機部分は、アミン反応性修飾剤、例えば、PEGのNHSエステルを利用して、部位特異的なものではない方法で抗体に結合させることができる。抗体又は抗原結合断片のジスルフィド結合(例えば、鎖内ジスルフィド結合)を還元することによって、修飾されたヒト抗体又は抗原結合断片を調製することもできる。このとき、還元された抗体又は抗原結合断片をチオール反応性修飾剤と反応させて、本発明の修飾された抗体を産生することが可能である。本発明の抗体の特定の部位に結合される有機部分を含む修飾されたヒト抗体及び抗原結合断片は、逆タンパク質分解(Fischら,Bioconjugate Chem.,3:147-153(1992)、Werlenら、Bioconjugate Chem.,5:411~417(1994)、Kumaranら、Protein Sci.6(10):2233~2241(1997);Itohら,Bioorg.Chem.,24(1号):59~68(1996)、Capellasら,Biotechnol.Bioeng.,56(4):456~463(1997))、及びHermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)に記載される方法などの好適な方法を使用して調製することができる。
【0126】
抗Tnf抗体組成物に対する抗イディオタイプ抗体。モノクローナル又はキメラ抗TNF抗体に加えて、本発明は、本発明のかかる抗体に特異的な抗イディオタイプ(抗Id)抗体にも関する。抗Id抗体は、一般に別の抗体の抗原結合領域に関連する固有の決定基を認識する抗体である。抗Idは、Id抗体源と同じ種及び遺伝子型の動物(例えばマウス株)を、抗体又はそのCDR含有領域により免疫することによって調製することができる。免疫された動物は、免疫する抗体のイディオタイプ決定基を認識かつ応答し、抗Id抗体を産生する。抗Id抗体は、更に別の動物で免疫応答を誘導する「免疫原」としても使用され得、いわゆる抗-抗Id抗体を生成する。
【0127】
抗Tnf抗体組成物。本発明はまた、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知であるように、非自然発生組成物、混合物、又は形態で提供される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又はそれ以上のその抗TNF抗体を含む、少なくとも1つの抗TNF抗体組成物も提供する。かかる組成物は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8の隣接アミノ酸の70~100%、又はその特定される断片、ドメイン若しくは変異体からなる群から選択される抗TNF抗体のアミノ酸配列の少なくとも1つ又は2つの完全長、C及び/若しくはN末端欠失変異体、ドメイン、断片、又はその特定される変異体を含む非自然発生組成物を含む。好ましい抗TNF抗体組成物は、配列番号1、2、3、4、5、6の70~100%の抗TNF抗体、又はその特定された断片、ドメイン若しくは変異体の、少なくとも1つのCDR又はLBR含有部分として少なくとも1つ又は2つの完全長、断片、ドメイン、又は変異体を含む。更に好ましい組成物は、配列番号1、2、3、4、5、6の70~100%、又は特定された断片、ドメイン若しくはその変異体のうちの少なくとも1つを40~99%含む。このような組成物の百分率は、当該技術分野において既知であるように、又は本明細書に記載されるように、重量、体積、濃度、容量モル濃度、あるいは液体若しくは乾燥溶液、混合物、懸濁液、エマルジョン、又はコロイドとしての重量モル濃度によるものである。
【0128】
本発明の抗TNF抗体組成物は更に、かかる調節、処置又は療法を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に対する少なくとも1つの抗TNF抗体を含み、任意選択的に、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、TNF抗体若しくは断片、可溶性TNF受容体若しくは断片、それらの融合タンパク質、又は小分子TNF拮抗薬などであるが、これらに限定されない)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン)、筋弛緩剤、麻酔薬(narcotic)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔薬(anesthetic)、鎮静剤、局所麻酔薬、神経筋ブロッカ、抗菌剤(例えば、アミノグリコシド、抗真菌剤、駆虫薬、抗ウイルス剤、カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他の抗菌剤)、抗乾癬剤、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉剤、鎮咳剤、制吐剤、抗潰瘍剤、緩下剤、抗凝固薬、エリスロポイエチン(例えば、エポエチンα)、フィルグラスチム(例えばG-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)予防接種、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳薬、毛様筋調節薬、アルキル化剤、抗代謝剤、有糸分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠薬、交感神経作動薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息薬、β作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害薬、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン又は類似薬、ドルナーゼα(Pulmozyme)、サイトカイン又はサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つを更に含む、任意の好適かつ有効量の組成物又は医薬組成物のうちの少なくとも1つを含み得る。このようなサイトカインの非限定的な例としては、IL-1~IL-23のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。好適な投与量は、技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000);「PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000」特別版、Tarascon Publishing、Loma Linda,CA(2000)を参照されたく、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0129】
このような抗がん剤又は抗感染薬は、本発明の少なくとも1つの抗体と関連、結合、同時処方、又は併用される毒素分子も含み得る。毒素は、病態細胞又は組織を選択的に死滅させるように、任意選択的に作用させることができる。病態細胞は、がん細胞又は他の細胞であり得る。このような毒素は、これらに限定するものではないが、例えば、リシン、ジフテリア毒素、ヘビ毒素、又は細菌毒素の少なくとも1つから選択される、毒素の少なくとも1つの機能的細胞傷害性ドメインを含む、精製若しくは組換え毒素又は毒素断片であり得る。毒素という用語はまた、ヒト及び他の哺乳動物において、死に至り得る毒素性ショックを含む、任意の病態をもたらし得る任意の自然発生の、ミュータント、又は組換えの細菌又はウイルスによって産生される内毒素及び外毒素の両方を含む。かかる毒素としては、腸管毒素原性大腸菌(E.coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT)、熱安定性エンテロトキシン(ST)、赤痢菌細胞毒素、アエロモナス属エンテロトキシン、毒素性ショック症候群毒素-1(TSST-1)、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、B(SEB)、又はC(SEC)、連鎖球菌エンテロトキシンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。かかる細菌としては、腸管毒素原性大腸菌(E.coli)(ETEC)、腸管出血性大腸菌(E.coli)(例えば血清型0157の株:H7)、ブドウ球菌(Staphylococcus)種(例えば、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス-ピオゲネス(Staphylococcus aureus))、赤痢菌(Shigella)種(例えば、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、ボイド赤痢菌(Shigella boydii)及びソンネ赤痢菌(Shigella sonnei))、サルモネラ(Salmonella)種(例えば、腸チフス菌、サルモネラコレラ-スイス、サルモネラエンテリティディス)、クロストリジウム種(例えば、クロストリジウム-パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム-ディフィシル(Clostridium dificile)、クロストリジウム-ボツリヌス(Clostridium botulinum))、カンピロバクタ(Camphlobacter)種(例えば、カンピロバクタ-ジュジュニ(Camphlobacter jejuni)、カンピロバクタ-フィータス(Camphlobacter fetus))、ヘリコバクタ(Heliocbacter)種(例えば、ヘリコバクタ-ピロリ(Heliocbacter pylori))、アエロモナス(Aeromonas)種(例えば、アエロモナス-ソブリア(Aeromonas sobria)、アエロモナス-ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アエロモナス-キャビエ(Aeromonas caviae))、プレシオモナス-シゲロイデス(Pleisomonas shigelloides)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、ビブリオ(Vibrio)種(例えば、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ビブリオ-パラヘモリティカス(Vibrio parahemolyticus))、クレブシエラ(Klebsiella)種、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及び連鎖球菌(Streptococci)の種の株が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Stein編、「INTERNAL MEDICINE」第3版第1~13頁、Little,Brown and Co.,Boston(1990)、Evansら編、「Bacterial Infections of Humans:Epidemiology and Control」第2版第239~254頁、Plenum Medical Book Co.、New York(1991)、Mandellら、「Principles and Practice of Infectious Diseases」第3版、Churchill Livingstone,New York(1990)、Berkowら編、「The Merck Manual」第16版、Merck and Co.,Rahway,N.J.(1992)、Woodら、「FEMS Microbiology Immunology」76:121~134(1991)、Marrackら、「Science」24:8705~711(1990)を参照のこと(これらの文献の内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0130】
本発明の抗TNF抗体化合物、組成物又は混合物は更に、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどであるがこれらに限定されない、任意の好適な助剤のうちの少なくとも1つを含み得る。薬学的に許容される助剤が好ましい。かかる滅菌溶液を調製する方法及びその非限定例は、当該技術分野において周知であり、例えば、Gennaro,Ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(Easton,PA)1990が挙げられるが、これに限定されない。当該技術分野において周知、又は本明細書に記載されるように、抗TNF抗体、断片、又は変異体組成物の投与方法、溶解度、及び/又は安定性に好適な薬学的に許容できる担体を、日常的に選択することができる。
【0131】
本組成物において有用な製薬学的添加物及び添加剤は、これらに限定されないが、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質及び炭水化物(例えば、単糖類、二糖、三糖、四糖、及びオリゴ糖を含む糖類、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖、並びに多糖類又は糖ポリマー)を含み、これらは、単独で又は組み合わせて存在してよく、単独で又は組み合わせて1~99.99重量%又は体積%含まれる。例示的なタンパク質添加物には、ヒト血清アルブミン(HSA)などの血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどを含む。緩衝能においても機能し得る代表的なアミノ酸/抗体構成要素としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。好ましいアミノ酸の1つはグリシンである。
【0132】
本発明に使用するのに好適な炭水化物添加物としては、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン類などの多糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。本発明で使用するのに好ましい炭水化物添加物は、マンニトール、トレハロース、及びラフィノースである。
【0133】
抗TNF抗体組成物は、緩衝剤又はpH調整剤も含み得、典型的には、緩衝剤は、有機酸又は塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、又はフタル酸の塩などの有機酸塩、トリス、トロメタミン塩酸塩、又はリン酸緩衝剤が挙げられる。本組成物における使用に好ましい緩衝剤は、クエン酸塩などの有機酸塩である。
【0134】
加えて、本発明の抗TNF抗体組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20」及び「TWEEN80」などのポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、及びキレート剤(例えば、EDTA)などのポリマー添加物/添加剤を含み得る。
【0135】
本発明による抗TNF抗体、部分又は変異体組成物における使用に適したこれら及び追加の既知の製薬学的添加物及び/又は添加剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」、19th ed.,Williams&Williams,(1995)、及び「Physician’s Desk Reference」、52nd ed,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)に列挙されており、これらの開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。好ましい担体又は添加物材料は、炭水化物(例えば、単糖類及びアルジトール)及び緩衝剤(例えば、クエン酸)又はポリマー剤である。
【0136】
製剤。上述したとおり、本発明は、好ましくは、生理食塩水又は選択された塩を含むリン酸緩衝剤である安定した製剤、並びに保存剤を含有する保存溶液及び製剤、並びに薬学的に許容できる製剤中に少なくとも1つの抗TNF抗体を含む薬剤学的又は獣医学的用途に好適な多用途保存製剤を提供する。保存製剤は、水性希釈剤中に、少なくとも1つのフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から任意選択的に選択される、少なくとも1つの既知の保存剤を含む。当該技術分野において既知であるように、0.001~5%、又は0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4.、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又はその中の任意の範囲若しくは値などであるがこれらに限定されない、その中の任意の範囲若しくは値の、任意の好適な濃度又は混合物が使用され得る。非限定的な実施例としては、保存剤無添加、0.1~2%のm-クレゾール(例えば、0.2、0.3.0.4、0.5、0.9、1.0%)、約0.1~3%のベンジルアルコール(例えば、0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001~0.5%のチメロサール(例えば、0.005、0.01)、0.001~2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005~1.0%のアルキルパラベン(例えば、0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)などが挙げられる。
【0137】
上述のとおり、本発明は、包装材と、任意選択的に水性希釈剤中に処方された緩衝剤及び/又は保存剤を伴う少なくとも1つの抗TNF抗体の溶液を含む少なくとも1つのバイアルと、を含む製品を提供し、この包装材は、かかる溶液を1、2、3、4、5、6、9、12、18、20、24、30、36、40、48、54、60、66、72時間以上にわたり保持することができることを記したラベルを含む。本発明は、包装材と、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体を含む第1のバイアルと、処方された緩衝剤又は保存剤の水性希釈剤を含む第2のバイアルと、を含む製品を更に含み、この包装材は、少なくとも1つの抗TNF抗体を水性希釈剤で再構成して、24時間以上にわたって保持することができる溶液を形成するように患者に指示するラベルを含む。
【0138】
本発明に従って使用される少なくとも1つの抗TNF抗体は、本明細書に記載されるか又は当該技術分野において既知の、哺乳類細胞又はトランスジェニック調製物から産生することを含む組換え手段により産生してもよいし、又は他の生物源から精製してもよい。
【0139】
本発明の製品中に含まれる、少なくとも1つの抗TNF抗体の範囲は、湿式/乾式系の場合、再構成時に約1.0μg/ml~約1000mg/mlの範囲の濃度が得られる量で含まれるが、これより低い濃度及び高い濃度でも作業可能であり、これらの濃度は意図される送達ビヒクルによって決まり、例えば溶液製剤では、経皮パッチ、肺、経粘膜、又は浸透圧性若しくはマイクロポンプ方法とは異なる。
【0140】
好ましくは、水性希釈剤は任意選択的に、医薬的に許容される保存剤を更に含む。好ましい保存剤には、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。製剤中で使用される保存剤の濃度は、抗菌効果を生み出すのに充分な濃度である。このような濃度は選択された保存剤によって異なり、当業者により容易に決定される。
【0141】
他の添加物、例えば、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、保存剤エンハンサは、任意選択的に及び好ましくは希釈剤に添加することができる。グリセリンなどの等張剤が、既知の濃度で一般に使用される。好ましくは、生理学的に耐性の緩衝剤を添加して、改善されたpH制御を提供する。製剤は、約pH4~約pH10、及び好ましくは約pH5~約pH9の範囲、及び最も好ましくは約6.0~約8.0の範囲などの、広範囲のpH範囲を被検者とすることができる。好ましくは、本発明の製剤は、約6.8~約7.8のpHを有する。好適な緩衝剤には、リン酸塩緩衝剤を含み、最も好ましくは、リン酸ナトリウム、特にリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)を含む。
【0142】
他の添加剤、例えばTween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、及びPEG(ポリエチレングリコール)などの、薬学的に許容できる可溶化剤、又はポリソルベート20若しくは80又はポロキサマー184若しくは188、Pluronic(登録商標)ポリオールなどの非イオン性界面活性剤、その他のブロックコポリマー、並びにEDTA及びEGTAなどのキレート剤を製剤又は組成物に任意選択的に添加することで、凝集を低減させることができる。これらの添加物は、製剤を投与するためにポンプ又はプラスチック容器が使用される場合に特に有用である。医薬的に許容される界面活性剤の存在により、タンパク質が凝集する傾向が軽減される。
【0143】
本発明の製剤は、少なくとも1つの抗TNF抗体と、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール又はこれらの混合物からなる群から選択される保存剤と、を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより調製することができる。少なくとも1つの抗TNF抗体と保存剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、緩衝溶液中の一定量の少なくとも1つの抗TNF抗体を、所望の濃度のタンパク質及び保存剤を提供するのに充分な量の緩衝溶液中で所望の保存剤と組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識されるであろう。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0144】
特許請求される製剤は、透明な溶液として、又は水、保存剤及び/若しくは賦形剤、好ましくはリン酸塩緩衝剤及び/若しくは生理食塩水、並びに選択された塩を水性希釈剤中に含有する第2のバイアルで再構成される、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体のバイアルを含むデュアルバイアル(dual vial)として患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者処置サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な処置レジメンを提供することができる。
【0145】
特許請求される本製品は、即時から24時間以上の期間にわたる投与に有用である。したがって、本発明により特許請求される製品は、患者に大きな利益を提供する。本発明の製剤は、任意選択的に、約2~約40℃の温度で安全に保存することができ、タンパク質の生物学的活性を長期間保持することができ、したがって、包装ラベルで、溶液を6、12、18、24、36、48、72、又は96時間以上保持及び/又は使用し得ることを示すことができる。保存されている希釈剤を使用する場合には、このようなラベルは、最高1~12か月、半年、1年半、及び/又は2年までの使用を含むことができる。
【0146】
本発明の少なくとも1つの抗TNF抗体の溶液は、少なくとも1つの抗体を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより調製することができる。混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な希釈剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質、及び任意選択的に保存剤又は緩衝剤を提供するのに充分な量で組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識されるであろう。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0147】
特許請求される製品は、透明な溶液として、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルで再構成される、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体のバイアルを含むデュアルバイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者処置サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な処置レジメンを提供する。
【0148】
特許請求される製品は、透明な溶液、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルで再構成される、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体のバイアルを含むデュアルバイアルを、薬局、診療所、又はその他のかかる機関及び施設に提供することによって、患者に対し間接的に提供することができる。この場合の透明溶液は最高1リットル又は更にはそれ以上の容量であってもよく、この大きな容器からより少量の少なくとも1つの抗体溶液を1回又は複数回取り出してより小さなバイアルに移し、かつ薬局又は診療所により顧客及び/又は患者に提供できる。
【0149】
これらの単一バイアルシステムを含む承認済みデバイスとしては、B-D(登録商標)(ペン型インジェクタデバイス)、NOvoPen(登録商標)(ペン型インジェクタデバイス)、AutoPen(登録商標)(ペン型インジェクタデバイス)、OptiPen(登録商標)(ペン型インジェクタデバイス)、Genotropin Pen(登録商標)(ペン型インジェクタデバイス)、HUMATROPEN(登録商標)(ペン型インジェクタデバイス)、BIojector(登録商標)(ペン型インジェクタデバイス)、Reco-Pen、Humaject、J-tip Needle-Free Injector、Intraject、Medi-Jectなどの溶液を送達するためのペン型インジェクタデバイスが挙げられ、例えば、Dickensen(Franklin Lakes,NJ,www.bectondickenson.com),Disetronic(Burgdorf,Switzerland,www.disetronic.com;Bioject,Portland,Oregon(www.bioject.com);National Medical Products,Weston Medical(Peterborough,UK,www.weston-medical.com),Medi-Ject Corp(Minneapolis,MN,www.mediject.com)より製造又は開発されたものである。併用バイアル系を含む承認済みデバイスとしては、HUMATROPEN(登録商標)(ペン型インジェクタデバイス)などの、再構成した溶液を送達するためのカートリッジ内で凍結乾燥された薬物を再構成するためのペン型インジェクタシステムが挙げられる。
【0150】
ここで特許請求される製品は、包装材を含む。包装材は、規制当局によって必要とされる情報に加えて、製品を使用することができる条件を提供する。本発明の包装材は、少なくとも1つの抗TNF抗体を水性希釈剤で再構成して溶液を形成し、2~24時間以上の期間にわたって、この溶液を湿式/乾式の2つのバイアル製品に使用する、という指示を患者に提供する。単一バイアルの溶液製品の場合、ラベルは、この溶液が2~24時間以上にわたって使用できることを示す。ここで特許請求される製品は、ヒト用医薬製品用途に有用である。
【0151】
本発明の製剤は、少なくとも1つの抗TNF抗体及び選択された緩衝剤、好ましくは生理食塩水又は選択された塩を含有するリン酸塩緩衝剤を混合することを含むプロセスにより調製することができる。少なくとも1つの抗体と緩衝剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質及び緩衝剤を提供するのに充分な量の水中で所望の緩衝剤と組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識されるであろう。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0152】
特許請求される安定又は保存製剤は、透明な溶液として、又は水性希釈剤中に保存剤若しくは緩衝剤及び添加物を含有する第2のバイアルで再構成される、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体のバイアルを含むデュアルバイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者処置サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な処置レジメンを提供する。
【0153】
本明細書に記載される安定若しくは保存製剤又は溶液のいずれかの少なくとも1つの抗TNF抗体は、当該技術分野において周知のように、SC若しくはIM注射、経皮、経肺、経粘膜、埋め込み、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、又は当業者により理解されるその他の手段などの種々の送達方法を介して、本発明に従って被検者に投与することができる。
【0154】
療法適用。本発明は、当該技術分野において既知である、又は本明細書に記載されるように、本発明の少なくとも1つの二重インテグリン抗体を使用して、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つのTNF関連疾患を調節又は処置するための方法も提供する。
【0155】
本発明は、肥満、免疫関連疾患、循環器疾患、感染症、悪性疾患又は神経学的疾患のうち少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つのTNF関連疾患を調節又は処置するための方法も提供する。
【0156】
本発明はまた、関節リウマチ、若年性、全身性発症若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、強直性脊椎炎、胃潰瘍、血清反応陰性関節症、変形性関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、特発性肺線維症、全身性血管炎/ヴェグナー肉芽腫症、サルコイドーシス、精巣炎/精管切除修復術、アレルギー性/アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、移植、器官移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、敗血症症候群、グラム陽性菌敗血症、グラム陰性菌敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、好中球減少性発熱、尿性敗血症、髄膜炎菌血症、外傷/出血、熱傷、電離放射線暴露、急性膵炎、成人呼吸窮迫症候群、アルコール性肝炎、慢性炎症性病変、サルコイドーシス、クローン病変、鎌状赤血球貧血症、糖尿病、ネフローゼ、アトピー性疾患、過敏性反応、アレルギー性鼻炎、枯草熱、通年性鼻炎、結膜炎、子宮内膜症、喘息、じん麻疹、全身性アナフィラキシー、皮膚炎、悪性貧血、溶血性疾患、血小板減少症、任意の器官又は組織の移植片拒絶反応、腎移植拒絶反応、心臓移植拒絶反応、肝臓移植拒絶反応、膵臓移植拒絶反応、肺移植拒絶反応、骨髄移植(BMT)拒絶反応、皮膚同種移植拒絶反応、軟骨移植拒絶反応、骨移植片拒絶反応、小腸移植拒絶反応、胎児胸腺移植拒絶反応、副甲状腺移植拒絶反応、任意の器官又は組織の異種移植拒絶反応、同種移植拒絶反応、抗受容体過剰反応、グレーブス病、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、喘息、重症筋無力症、抗体媒介性細胞障害、III型過敏症反応、全身性エリテマトーデス、POEMS症候群(多発性神経障害、臓器肥大、内分泌障害、単クローン性免疫グロブリン血症、及び皮膚症状症候群)、多発性神経障害、臓器肥大、内分泌障害、単クローン性免疫グロブリン血症、皮膚症状症候群、抗リン脂質症候群、天疱瘡、強皮症、混合性結合組織病、特発性アジソン病、真性糖尿病、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、白斑、血管炎、MI後心臓切開術症候群、IV型過敏症、接触性皮膚炎、過敏性肺炎、同種移植拒絶反応、細胞内生物による肉芽腫、薬物過敏、代謝性/特発性ウィルソン病、ヘマクロマトーシス、α-1-アンチトリプシン欠乏症、糖尿病性網膜症、橋本甲状腺炎、骨粗鬆症、原発性胆汁性肝硬変、甲状腺炎、脳脊髄炎、悪液質、嚢胞性線維症、新生児慢性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、家族性血食組織のリンパ組織球増多症、皮膚科学的状態、乾癬症、脱毛症、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、急性腎不全、血液透析、尿毒症、毒性、子癇前症、okt3療法、抗cd3療法、サイトカイン療法、化学療法、放射線療法(例えば、無力症、貧血、悪液質などが挙げられるがこれらに限定されない)、慢性サリチル酸塩中毒などの少なくとも1つが挙げられるがそれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つの免疫関連疾患を調節又は処置するための方法も提供する。例えば、「Merck Manual」第12版~第17版、Merck&Company、Rahway,NJ(1972、1977、1982、1987、1992、1999)、「Pharmacotherapy Handbook」Wellsら編、第2版、Appleton and Lange、Stamford,Conn.(1998、2000)を参照されたく、それぞれは参照することにより全体が組み込まれる。
【0157】
本発明は、心機能不全症候群(cardiac stun syndrome)、心筋梗塞、うっ血性心不全、卒中、虚血発作、出血、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、糖尿病性動脈硬化性疾患、高血圧、動脈性高血圧、腎血管性高血圧、失神、ショック、心血管系の梅毒、心不全、肺性心、原発性肺高血圧、不整脈、心房異所性拍動、心房粗動、心房細動(持続性又は発作性)、還流後症候群、心肺バイパス炎症応答、無秩序型又は多源性心房頻脈、規則的狭QRS頻脈(regular narrow QRS tachycardia)、固有不整脈(specific arrhythmias)、心室細動、ヒス束不整脈(His bundle arrhythmias)、房室ブロック、脚ブロック、心筋虚血性疾患、冠動脈疾病、狭心症、心筋梗塞、心筋症、拡張型うっ血性心筋症、拘束型心筋症、心臓弁膜症、心内膜炎、心膜疾患、心臓腫瘍、大動脈瘤及び末梢動脈瘤、大動脈切開、大動脈の炎症、腹部大動脈及びその分岐の閉塞、末梢血管障害、閉塞性動脈障害、末梢アテローム性動脈硬化症、閉塞性血栓性血管炎、機能性末梢動脈障害、レイノー現象及び疾患、先端チアノーゼ、紅痛症、静脈性疾患、静脈血栓症、静脈瘤、動静脈瘻、リンパ浮腫、脂肪性浮腫、不安定狭心症、再灌流傷害、ポンプ後症候群(post pump syndrome)、虚血再灌流傷害などのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における循環器疾患を調節又は処置するための方法も提供する。かかる方法は、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を、かかる調節、処置又は治療を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に投与することを、任意選択的に含み得る。
【0158】
本発明は、急性又は慢性細菌感染、細菌、ウイルス及び真菌感染を含む急性及び慢性寄生又は感染プロセス、HIV感染/HIV神経障害、髄膜炎、肝炎(A、B又はCなど)、敗血症性関節炎、腹膜炎、肺炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:h7、溶血性尿毒症性症候群/塞栓性血小板減少性紫斑病、マラリア、デング出血熱、リーシュマニア症、ハンセン病、中毒性ショック症候群、連鎖球菌筋炎、ガス壊疽、結核菌、マイコバクテリウム-アビウム-イントラセルラーレ、ニューモシスティスカリニ肺炎、骨盤内炎症性疾患、精巣炎/精巣上体炎、レジオネラ、ライム病、a型インフルエンザ、エプスタイン-バーウイルス、ウイルス関連血球貪食症候群、ウイルス性脳炎/無菌性髄膜炎などのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者において少なくとも1つの感染症を調節又は処置するための方法も提供する。
【0159】
本発明は、白血病、急性白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、B細胞、T細胞又はFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、直腸結腸がん、膵臓がん、鼻咽頭がん、悪性組織球増殖症、悪性の腫瘍随伴症候群/高カルシウム血症、固形腫瘍、腺がん、肉腫、悪性黒色腫、血管腫、転移性疾患、がん関連骨吸収、がん関連骨痛などのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つの悪性疾患を調節又は処置するための方法も提供する。
【0160】
本発明は、神経変性疾患、多発性硬化症、片頭痛、エイズ痴呆症候群、脱髄疾患、例えば、多発性硬化症及び急性横断性脊髄炎、錐体外路及び小脳障害、例えば、皮質脊髄系の病変、大脳基底核の障害若しくは小脳障害、多動性運動障害、例えば、ハンチントン舞踏病及び老年性舞踏病、薬剤誘発性運動障害、例えば、CNSドーパミン受容体を遮断する薬物により誘発されるもの、運動低下性運動障害、例えば、パーキンソン病、進行性核上麻痺、小脳の構造病変、脊髄小脳変性症、例えば、脊髄性運動失調症、フリードライヒ失調症、小脳皮質変性症、多系統変性症(Mencel、Dejerine-Thomas,Shi-Drager及びMachado-Joseph)、全身性疾患(レフスム病、無βリポタンパク血症、運動失調症、毛細血管拡張症、及びミトコンドリア多系統障害)、脱髄性コア障害(demyelinating core disorder)、例えば、多発性硬化症、急性横断性脊髄炎及び運動単位の障害、例えば、神経性筋萎縮症(前角細胞変性症、例えば、筋萎縮性側索硬化症、乳児脊髄性筋萎縮症及び若年性脊髄性筋萎縮症)、アルツハイマー病、中年層のダウン症候群、びまん性レヴィー小体病、レヴィー小体型の老人性痴呆症、ウェルニッケコルサコフ症候群、慢性アルコール中毒、クロイツフェルト-ヤコブ病、亜急性硬化性全脳炎、ハレルフォルデン-スパッツ病、並びにボクサー認知症などのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つの神経学的疾患を調節又は処置するための方法も提供する。かかる方法は、任意選択的に、少なくとも1つのTNF抗体又は特定された部分又は変異体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を、このような調節、処置又は治療を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に対し投与する工程を含むことができる。例えば、「Merck Manual」第16版、Merck&Company、Rahway,NJ(1992)を参照のこと。
【0161】
本発明のいずれの方法も、かかる調節、処置又は治療を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含み得る。かかる方法は、任意選択的に、かかる免疫疾患の処置のための同時投与又は併用療法を更に含み得、この少なくとも1つの抗TNF抗体、特定された部分又はその変異体の投与は、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、TNF抗体若しくは断片、可溶性TNF受容体若しくは断片、その融合タンパク質、又は低分子TNF拮抗薬などであるが、これらに限定されない)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン)、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断剤、抗菌薬(例えば、アミノグリコシド、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス薬、カルバペナム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他の抗菌薬)、抗乾癬剤、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐剤、抗潰瘍剤、緩下剤、抗凝固薬、エリスロポエチン(例えば、エポエチンα)、フィルグラスチム(例えば、G-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)、免疫化薬、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳薬、毛様筋麻痺薬、アルキル化剤、抗代謝剤、有糸分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠薬、交感神経作動薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息薬、β作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン若しくは類似体、ドルナーゼα(Pulmozyme)、サイトカイン若しくはサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つを投与する前に、同時に、及び/又は後に投与することを更に含む。好適な投与量は、技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000)、「PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000」特別版、Tarascon Publishing、Loma Linda,CA(2000)を参照されたく、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0162】
本発明の組成物、併用療法、同時投与、デバイス及び/又は方法(本発明の少なくとも1つの抗体、その特定された部分及びその変異体を更に含む)に好適なTNF拮抗薬は、抗TNF抗体、その抗原結合断片、及びTNFに特異的に結合する受容体分子、TNF合成、TNF放出、若しくは標的細胞に対するその作用を阻止及び/又は阻害する化合物、例えば、サリドマイド、テニダプ、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、ペントキシフィリン及びロリプラム)、A2bアデノシン受容体作動薬及びA2bアデノシン受容体エンハンサ、TNF受容体シグナル伝達を阻止及び/又は阻害する化合物、例えば、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ阻害剤、膜TNF切断を遮断及び/又は阻害する化合物、例えば、メタロプロテイナーゼ阻害剤、TNF活性を遮断及び/又は阻害する化合物、例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、カプトプリル)、並びにTNF生成及び/又は合成を遮断及び/又は阻害する化合物、例えば、MAPキナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。
【0163】
本明細書で使用されるとき、「腫瘍壊死因子抗体」、「TNF抗体」、「TNFα抗体」又は「断片」などは、インビトロ、その場で、及び/又は好ましくはインビボで、TNFα活性を減少、遮断、阻害、抑止又は干渉する。例えば、本発明の好適なTNFヒト抗体は、TNFαに結合することができ、抗TNF抗体、その抗原結合断片、及びTNFαに特異的に結合する特定されたミュータント又はそのドメインを含む。好適なTNF抗体又は断片は、TNF RNA、DNA、若しくはタンパク質合成、TNF放出、TNF受容体シグナル伝達、膜TNF切断、TNF活性、TNF生成及び/又は合成を、減少、遮断、抑止、干渉、阻止及び/又は阻害することもできる。
【0164】
キメラ抗体cA2は、A2と呼ばれる高親和性中和マウス抗ヒトTNFαIgG1抗体の抗原結合可変領域及びヒトIgG1のκ免疫グロブリンの定常領域からなる。ヒトIgG1 Fc領域は、同種の抗体のエフェクタ機能を改善し、循環血清半減期を増加させ、抗体の免疫原性を減少させる。キメラ抗体cA2の結合活性及びエピトープの特異性は、マウス抗体A2の可変領域に由来する。特定の実施形態において、マウス抗体A2の可変領域をコードする核酸の好ましい供給源は、A2ハイブリドーマ細胞株である。
【0165】
キメラA2(cA2)は、天然及び組換えの両方のヒトTNFαの細胞傷害性作用を用量依存的に中和する。キメラ抗体cA2と組換えヒトTNFαとの結合アッセイから、キメラ抗体cA2の親和性定数は、1.04×l010-1であると計算された。競合阻害によるモノクローナル抗体の特異性及び親和性を決定するための好ましい方法は、Harlowら、「antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,New York(1988)、Colliganら編、「Current Protocols in Immunology」、Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,New York(1992~2000)、Kozborら、「Immunol.Today」4:72~79(1983)、Ausubelら編、「Current Protocols in Molecular Biology」Wiley Interscience、New York(1987~2000)、及びMuller、「Meth.Enzymol.」92:589~601(1983)に見ることができ、これらの参照文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0166】
特定の実施形態において、マウスモノクローナル抗体A2は、c134Aと呼ばれる細胞株によって産生される。キメラ抗体cA2は、c168Aと呼ばれる細胞株によって産生される。
【0167】
本発明において使用することができるモノクローナル抗TNF抗体の更なる例は、当該技術分野において記載されている(例えば、米国特許第5,231,024号、Moller,A.ら、「Cytokine」2(3):162~169(1990);米国出願第07/943,852号(1992年9月11日出願)、Rathjenら、国際公開第91/02078号(1991年2月21日公開)、Rubinら、EPO特許公開第0 218 868号(1987年4月22日公開)、Yoneら、EPO特許公開第0 288 088号(1988年10月26日)、Liangら、「Biochem.Biophys.Res.Comm.137:847~854(1986)、Meagerら、「Hybridoma」6:305~311(1987)、Fendlyら、「Hybridoma」6:359~369(1987)、Bringmanら、「Hybridoma」6:489~507(1987)及びHiraiら、「J.Immunol.Meth.96:57~62(1987)を参照のこと。これらの参照文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0168】
TNF受容体分子。本発明に有用な好ましいTNF受容体分子は、TNFαに高い親和性で結合し(例えば、Feldmannら、国際公開第92/07076号(1992年4月30日公開)、Schallら、「Cell」61:361~370(1990)、及びLoetscherら、「Cell」61:351~359(1990)を参照のこと。これらの参照文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)、任意選択的に低い免疫原性を有するものである。特に、55kDa(p55 TNF-R)及び75kDa(p75 TNF-R)のTNF細胞表面受容体は、本発明において有用である。受容体の細胞外ドメイン(ECD)又はその機能的部分を含むこれらの受容体の切断型(例えば、Corcoranら、「Eur.J.Biochem.」223:831~840(1994)を参照のこと)も本発明において有用である。ECDを含むTNF受容体の切断型は、尿及び血清中で、30kDa及び40kDaのTNFα阻害結合タンパク質として検出されている(Engelmann,H.ら、「J.Biol.Chem.」265:1531~1536(1990))。TNF受容体多量体分子及びTNF免疫受容体融合分子、並びにそれらの誘導体及び断片又は部分は、本発明の方法及び組成物において有用であるTNF受容体分子の更なる例である。本発明に使用することができるTNF受容体分子は、症状の良好乃至優れた緩和及び低毒性で患者を長期間処置する能力を特徴とする。低い免疫原性及び/又は高い親和性並びにその他の未定義の特性は、得られる治療結果に寄与し得る。
【0169】
本発明において有用なTNF受容体多量体分子は、ポリエチレングリコール(PEG)などの、1つ又は2つ以上のポリペプチドリンカ又はその他の非ペプチドリンカを介して連結された2つ以上のTNF受容体のECDの全て又は機能的部分を含む。多量体分子は、多量体分子の発現をもたらすための分泌タンパク質のシグナルペプチドを更に含むことができる。これらの多量体分子及びそれらの生成方法は、米国出願第08/437,533号(1995年5月9日出願)に記載されており、その内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0170】
本発明の方法及び組成物において有用なTNF免疫受容体融合分子は、1つ又は2つ以上の免疫グロブリン分子の少なくとも1つの部分及び1つ又は2つ以上のTNF受容体の全て又は機能的部分を含む。これらの免疫受容体融合分子は、単量体又はヘテロ若しくはホモ多量体として集合させることができる。免疫受容体融合分子は、一価であっても多価であってもよい。かかるTNF免疫受容体融合分子の例は、TNF受容体/IgG融合タンパク質である。TNF免疫受容体融合分子及びそれらの生成方法は、当該技術分野において記載されている(Lesslauerら、「Eur.J.Immunol.」21:2883~2886(1991)、Ashkenaziら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」88:10535~10539(1991)、Peppelら、「J.Exp.Med.174:1483~1489(1991)、Kollsら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」91:215~219(1994)、Butlerら、「Cytokine」6(6):616~623(1994);Bakerら、「Eur.J.Immunol.」24:2040~2048(1994)、Beutlerら、米国特許第5,447,851号及び米国出願第08/442,133号(1995年5月16日出願)、これらの参照文献の各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。免疫受容体融合分子の生成方法は、Caponら、米国特許第5,116,964号、Caponら、米国特許第5,225,538号及びCaponら、「Nature」337:525~531(1989)にも見ることができ、これらの参照文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0171】
TNF受容体分子の機能的等価物、誘導体、断片、又は領域は、本発明に使用することができるTNF受容体分子に機能的に類似するのに十分な大きさ及び配列のものである(例えば、TNFαに高い親和性で結合し、低い免疫原性を有する)、TNF受容体分子の部分、又はTNF受容体分子をコード化するTNF受容体分子配列の部分を指す。TNF受容体分子の機能的等価物は又、本発明に使用することができるTNF受容体分子に機能的に類似する(例えば、TNFαに高い親和性で結合し、低い免疫原性を有する)修飾されたTNF受容体分子も含む。例えば、TNF受容体分子の機能的等価物は「SILENT」コドン、又は1つ又は2つ以上のアミノ酸置換、欠失、若しくは付加(例えば、1個の酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸の代わりに用いるか、又は同じ若しくは異なる疎水性アミノ酸をコードする1つのコドンを、疎水性アミノ酸をコードする別のコドンの代わりに用いる)を含有し得る。Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Publishing Assoc.and Wiley-Interscience,New York(1987~2000)を参照のこと。
【0172】
サイトカインは、いかなる既知のサイトカインも包含する。例えば、CopewithCytokines.comを参照されたい。サイトカイン拮抗薬としては、任意の抗体、断片若しくは模倣薬、任意の可溶性受容体、断片若しくは模倣薬、任意の低分子拮抗薬、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
療法による治療。本発明の任意の方法は、かかる調節、処置又は治療を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む組成物又は医薬組成物を投与することを含む、TNF媒介障害を処置するための方法を含み得る。かかる方法は、任意選択的に、かかる免疫疾患の処置のための同時投与又は併用療法を更に含み得、この少なくとも1つの抗TNF抗体、特定された部分又はその変異体の投与は、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、TNF抗体若しくは断片、可溶性TNF受容体若しくは断片、その融合タンパク質、又は低分子TNF拮抗薬などであるが、これらに限定されない)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン)、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断剤、抗菌薬(例えば、アミノグリコシド、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス薬、カルバペナム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他の抗菌薬)、抗乾癬剤、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐剤、抗潰瘍剤、緩下剤、抗凝固薬、エリスロポエチン(例えば、エポエチンα)、フィルグラスチム(例えば、G-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)、免疫化薬、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳薬、毛様筋麻痺薬、アルキル化剤、抗代謝剤、有糸分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠薬、交感神経作動薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息薬、β作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン若しくは類似体、ドルナーゼα(Pulmozyme)、サイトカイン若しくはサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つを投与する前に、同時に、及び/又は後に投与することを更に含む。
【0174】
本明細書で使用するとき、用語「安全」は、それが本発明の抗TNF抗体(例えば、抗TNF抗体ゴリムマブ)による組成物、用量、投与レジメン、処置又は方法に関する場合、標準的なケア又は他の抗TNF剤などの別の比較薬と比較した有害事象(adverse events、AE)及び重篤な有害事象(serious adverse events、SAE)の許容可能な頻度及び/又は許容可能な重症度による、良好なリスク対利益比を指す。有害事象とは、医薬品を投与された患者における好ましくない医療上の出来事である。具体的には、本発明の抗TNF抗体による組成物、用量、投与レジメン、処置又は方法に関する場合の安全は、例えば、注入反応、肝胆検査値異常、TBを含む感染、及び悪性腫瘍を含む有害事象の許容可能な頻度及び/又は許容可能な重症度を指す。
【0175】
組成物、用量、処置レジメン、治療又は方法の文脈において本明細書で使用される場合、「有効」及び「効果的な」という用語は、本発明の抗TNF抗体(例えば、抗TNF抗体ゴリムマブ)による特定の組成物、用量、投与量、処置又は方法の有効性を指す。本発明の薬剤に応答した疾患の経過中の変化に基づいて、有効性を測定することができる。例えば、本発明の抗TNF抗体は、処置されている障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標の改善、好ましくは持続的な改善を引き起こすのに充分な量及び時間で、患者に投与される。その処置の量及び時間が充分であるかどうかを判定するために、対象の疾病、疾患又は状態の程度を反映する様々な指標が評価され得る。このような指標には、例えば、疾患重篤度、症状、又は問題となっている障害の発現についての、臨床的に認識されている指標が含まれる。改善の程度は、一般に、医師又は他の適切にトレーニングされた個人によって決定され、彼らは臨床症状の改善を示す徴候、症状、生検、若しくは他の試験結果、又は疾患活動性の任意の他の尺度に基づいて決定し得る。例えば、本発明の抗TNF抗体は、強直性脊椎炎(AS)に関連する患者の状態の改善を達成するために投与され得る。ASに関連する患者の状態の改善は、例えば、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(Ankylosing Spondylitis Disease Activity Score、ASDAS)、Bath強直性脊椎炎機能指標(BASFI)、Bath強直性脊椎炎計測指標(BASMI)、36項目略式健康調査身体的健康度(SF-36 PCS)、36項目略式健康調査精神的健康度(SF-36 MCS)、及び/又は強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)アンケートの結果を含む1つ又は2つ以上の基準を使用して評価することができる。ASDASは、国際強直性脊椎炎評価学会によって開発された、ASにおいて使用するための疾患活動性スコア(disease activity score、DAS)である。ASDASは、例えば、全背部痛、朝のこわばりの持続時間、末梢疼痛/腫脹、及び患者の総合評価を含む評価を有する式を使用して計算される。BASFIは、10個の質問の平均として表される対象の自己評価であり、このうちの8個は対象の機能的な解剖学に関し、このうちの2個は日常生活に対処する対象の能力に関する。BASMIは、外側腰椎屈曲、耳珠-壁間距離、腰椎屈曲、果間距離、及び頸椎回転角度を含む5つの評価のスコアに評価を変換することによって計算される集計スコアである。SF-36は、スコア化された8つのマルチアイテムスケールからなるアンケートであり、SF-36 PSA及びSF-36 MCSは、異なる疾患の相対的な負担及び異なる処置の相対的な利益の比較を可能にする、SF-36から得られるサマリスコアである。ASQoLは、睡眠、気分、動機、対処能力、日常生活の活動、自主性、人間関係、及び社会生活に対する痛みの影響に関連する質問への回答を要求する18項目からなる、自己管理患者報告転帰手段である。
【0176】
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、「臨床的に証明された」という用語(独立して、又は「安全(性)」及び/又は「有効(性)」という用語を修飾するために使用される。例えば、臨床的に安全性が証明された、及び/又は臨床的に有効性が証明された)は、米国食品医薬品局、EMEA、又は対応する国家規制機関の承認基準を満たしている臨床試験によって証明されていることを意味するものとする。例えば、臨床試験は、薬剤の効果を臨床的に証明するために使用される、適切なサイズの無作為化二重盲検試験であってもよい。
【0177】
典型的には、病態の処置は、組成物中に含有される比活性に応じ、平均して、合計、1回の投与当たり患者の体重1kg当たり少なくとも約0.01~500ミリグラムの範囲の少なくとも1つの抗TNF抗体、好ましくは、単回又は複数回投与当たり患者の体重1kg当たり少なくとも約0.1~100ミリグラムの範囲の抗体の、少なくとも1つの抗TNF抗体組成物の安全かつ有効な量又は投与量を投与することにより達成される。あるいは、有効な血清濃度は、単回又は複数回投与当たり、0.1~5000μg/mLの血清濃度を含み得る。好適な投与量は、医療実践者には既知であり、当然のことながら、具体的な疾患状態、投与される組成物の比活性、及び処置を受けている具体的な患者に依存する。いくつかの場合では、望ましい治療量を達成するために、反復投与、すなわち特定の監視された用量又は計量された用量の反復個別投与を提供することが必要となる場合があり、この場合、個別投与は、所望の1日の投与量又は効果が得られるまで繰り返される。
【0178】
好ましい用量は、任意選択的に、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び/若しくは100~500mg/kg/投与、又はその任意の範囲、値若しくは分画を含むか、あるいは単回若しくは複数回投与当たり0.1、0.5、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、1.9、2.0、2.5、2.9、3.0、3.5、3.9、4.0、4.5、4.9、5.0、5.5、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、20、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14.0、14.5、15、15.5、15.9、16、16.5、16.9、17、17.5、17.9、18、18.5、18.9、19、19.5、19.9、20、20.5、20.9、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、96、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500及び/若しくは5000μg/mLの血清濃度、又はその任意の範囲、値若しくは分画を得るように含み得る。
【0179】
あるいは、投与される用量は、特定の薬剤の薬力学的特徴並びにその投与方法及び経路、受容者の年齢、健康状態及び体重、症状の性質及び程度、同時治療の種類、処置頻度、並びに所望の作用などの周知の因子に応じて異なり得る。活性成分の投与量は、通常、体重1キログラム当たり約0.1~100ミリグラムであり得る。通常、投与当たり1キログラム当たり0.1~50、好ましくは0.1~10ミリグラム又は徐放性形態が、望ましい結果を得るために有効である。
【0180】
非限定的な例として、ヒト又は動物の処置は、単回、注入又は反復投与を使用して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39若しくは40日目のうちの少なくとも1日に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51若しくは52週目のうちの少なくとも1週に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20年目のうちの少なくとも1年に、又はこれらの任意の組み合わせで、1日当たり0.1~100mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/kgの、本発明の少なくとも1つの抗体の1回又は周期的な投与量として提供され得る。
【0181】
体内投与に好適な剤形(組成物)は、一般に、1単位又は容器当たり約0.1ミリグラム~約500ミリグラムの活性成分を含有する。これらの医薬組成物において、活性成分は、組成物の総重量に基づいて、通常、約0.5~99.999重量%の量で存在する。
【0182】
非経口投与には、抗体は、薬学的に許容できる非経口ビヒクルと合わせて、又は別途供給される、溶液、懸濁液、エマルジョン若しくは凍結乾燥粉末として、処方することができる。このような溶剤の実施例は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び1~10%ヒト血清アルブミンである。リポソーム及び固定油などの非水性ビヒクルを使用することもできる。溶剤又は凍結乾燥粉末は、等張性及び化学安定性を維持する添加剤(例えば、等張性に関しては塩化ナトリウム、マンニトール、化学安定性に関しては緩衝剤及び保存剤)を含有することができる。製剤は、周知の又は好適な技術によって滅菌される。
【0183】
好適な薬学的担体は、本分野での標準的参考テキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciences,A.Osolの最新版の中で記載されている。
【0184】
代替的投与。製薬学的に有効な量の、本発明による少なくとも1つの抗TNF抗体を投与するために、本発明により、多くの既知の及び開発された投与方法を使用することができる。以下の記述では経肺投与が使用されているが、本発明に従って他の投与方式を使用して、好適な結果を得てもよい。
【0185】
本発明のTNF抗体は、担体中で、溶液、エマルジョン、コロイド若しくは懸濁液として、又は乾燥粉末として、吸入によるか、又は本明細書に記載される若しくは当該技術分野において既知である他の方法による投与に適した様々なデバイス及び方法のいずれかを使用して、送達することができる。
【0186】
非経口製剤及び投与。非経口投与用製剤は、一般的な添加物として滅菌水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物に由来する油、水素化ナフタレンなどを含有し得る。注射用の水性又は油性懸濁液は、周知の方法に従って、適切な乳化剤又は加湿剤及び懸濁剤を使用することによって調製可能である。注射剤は、例えば、水溶液、無菌注射液、又は溶媒中懸濁液などの非毒性の非経口投与可能な希釈剤であってよい。使用可能な溶剤又は溶媒としては、水、リンゲル液、等張生理食塩水などが許容され、通常の溶媒又は懸濁溶媒としては、無菌の不揮発性油を使用することができる。これらの目的では、天然又は合成若しくは半合成の、脂肪油又は脂肪酸、天然又は合成若しくは半合成の、モノグリセリド又はジグリセリド又はトリグリセリドを含む、あらゆる種類の不揮発性油及び脂肪酸を使用することができる。非経口投与は技術分野において周知であり、従来の注射手段、米国特許第5,851,198号に記載されているようなガス加圧式無針注射デバイス、及び米国特許第5,839,446号に記載されているようなレーザ穿孔機デバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0187】
代替的送達。本発明は更に、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮手段による少なくとも1つの抗TNF抗体の投与に関する。少なくとも1つの抗TNF抗体組成物は、非経口(皮下、筋肉内又は静脈内)又は任意のその他の投与、特に、液体溶液若しくは懸濁液の形態で使用するために、特に、クリーム及び座薬などであるがこれらに限定されない半固体形態で、膣若しくは直腸の投与における使用のために、錠剤若しくはカプセルなどであるがこれらに限定されない形態で、口腔若しくは舌下投与用に、あるいは粉末、点鼻剤若しくはエアロゾル、又はある特定の薬剤などであるがこれらに限定されない形態で、鼻腔内に、あるいは皮膚構造を改変するか、又は経皮パッチ中の薬物濃度を増加させるかのいずれかのために、ジメチルスルホキシドなどの化学的促進剤を用いて(Jungingerら、In「Drug Permeation Enhancement」;Hsieh,D.S.(編)、59~90(Marcel Dekker,Inc.New York 1994、参照により全体が本明細書に組み込まれる)、又はタンパク質及びペプチドを含有する製剤の皮膚への適用を可能にする酸化剤を用いて(国際公開第98/53847号)、又はエレクトロポレーションなどの一過性の輸送経路を作り出すための、若しくはイオントフォレシスなどの皮膚を通して荷電薬物の移動度を増加させるための電界の適用、又は超音波導入などの超音波の適用(米国特許第4,309,989号及び同第4,767,402号)を用いて、ゲル、軟膏、ローション、懸濁液若しくはパッチ送達系などであるが、これらに限定されずに、経皮的に、調製することができる(上記の刊行物及び特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0188】
経肺/鼻腔内投与。経肺投与のためには、好ましくは、少なくとも1つの抗TNF抗体組成物は、肺の下気道又は洞に達するのに有効な粒径で送達される。本発明により、少なくとも1つの抗TNF抗体は、吸入により治療薬を投与するための、当該技術分野において既知の様々な吸入又は鼻腔内デバイスのいずれかにより送達することができる。患者の洞腔又は肺胞内にエアロゾル化した製剤を被着させることができるこれらのデバイスとしては、定量吸入器、ネブライザ、乾燥粉末発生器、噴霧器などが挙げられる。抗体の経肺又は鼻腔内投与を目的とするのに適したその他のデバイスも、当該技術分野において既知である。かかるデバイスは全てエアロゾル中の抗体を分配するための投与に適した製剤を使用することができる。このようなエアロゾルは、溶液(水性及び非水性の両方)又は固体粒子のいずれかで構成され得る。VENTOLIN(登録商標)(定量吸入器)のような定量吸入器は、典型的には噴射ガスを使用し、吸気時の作動を必要とする(例えば、国際公開第94/16970号、国際公開第98/35888号を参照のこと)。Turbuhaler(商標)(Astra)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo)、DISKUS(登録商標)(吸入器)(Glaxo)、SPIROS(登録商標)(吸入器)(Dura)、Inhale Therapeuticsにより市販されているデバイス、及びSpinhaler(登録商標)パウダ吸入器(Fisons)などの乾燥粉末吸入器は、混合粉末の呼気作動を使用する(米国特許第4668218号(Astra)、欧州特許第237507号(Astra)、国際公開第97/25086号(Glaxo)、国際公開第94/08552号(Dura)、米国特許第5458135号(Inhale)、国際公開第94/06498号(Fisons)、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。AERX(登録商標)(ネブライザ)(Aradigm)、ULTRAVENT(登録商標)(ネブライザ)(Mallinckrodt)、及びAcorn IIネブライザ(Marquest Medical Products)(米国特許第5404871号(Aradigm)、国際公開第97/22376号)(上記の参照文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる)のようなネブライザは、溶液からエアロゾルを生じる一方、計量吸入器、乾燥粉末吸入器などは、小粒子エアロゾルを発生させる。市販の吸入デバイスのこれらの具体例は、本発明の実施に適した特定のデバイスを代表するものとして意図されており、本発明の範囲を制限するものとして意図されているものではない。好ましくは、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む組成物は、乾燥粉末吸入器又は噴霧器によって送達される。本発明の少なくとも1つの抗体を投与するための吸入デバイスには、複数の望ましい特徴が存在する。例えば、吸入デバイスによる送達は、有利に信頼性が高く、再現可能であり、かつ正確である。吸入デバイスは任意選択的に、うまく呼吸できるように、例えば、約10μm未満、好ましくは約1~5μmの小さな乾燥粒子を送達することができる。
【0189】
スプレーでのTNF抗体組成物の投与。TNF抗体組成物タンパク質を含むスプレーは、少なくとも1つの抗TNF抗体の懸濁液又は溶液に加圧下でノズルを通過させることにより生じさせることができる。ノズルの大きさ及び構成、適用される圧力並びに液体供給速度は、所望の出力及び粒径を達成するように選定することができる。例えば、キャピラリ又はノズルフィードと共に電界により電気スプレーを作製することができる。有利なことに、噴霧器により送達される少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の粒子は、約10μm未満、好ましくは約1μm~約5μm、最も好ましくは約2μm~約3μmの範囲の粒径を有する。
【0190】
噴霧器で使用するのに適した少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の製剤は、典型的には、水溶液中に、例えば、0.1、0.2.、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/mL若しくは100mg/gmであるがこれらに限定されない、1ml若しくは1mg/gmの溶液当たり約0.1mg~約100mg、又はその中の任意の範囲若しくは値の少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の濃度で抗体組成物タンパク質を含む。この製剤は、添加物、緩衝剤、等張剤、保存剤、界面活性剤、及び好ましくは亜鉛などの薬剤を含み得る。この製剤は、添加物、還元剤、バルクタンパク質又は炭水化物などの抗体組成物タンパク質を安定化させるための賦形剤又は薬剤も含み得る。抗体組成物タンパク質の処方において有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミンなどが挙げられる。抗体組成物タンパク質の処方において有用な典型的な炭水化物としては、ショ糖、マンニトール、乳糖、トレハロース、グルコースなどが挙げられる。抗体組成物タンパク質製剤は、エアロゾル形成時の溶液の霧化により引き起こされる抗体組成物タンパク質の表面誘発性の凝集を低減又は阻止することができる界面活性剤も含み得る。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びアルコール、並びにポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルのような様々な従来の界面活性剤を使用することができる。量は一般に、製剤の0.001~14重量%の範囲にわたる。本発明の目的上とりわけ好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80、ポリソルベート20などである。TNF抗体又は特定された部分若しくは変異体などのタンパク質の製剤には、当該技術分野において既知の更なる薬剤も又製剤中に含むことができる。
【0191】
ネブライザによるTNF抗体組成物の投与。抗体組成物タンパク質は、ジェットネブライザ又は超音波ネブライザなどのネブライザにより投与することができる。典型的には、ジェットネブライザでは、オリフィスを通して高速の空気ジェットを作り出すのに圧縮空気供給源を使用する。ガスがノズルを超えて膨脹する際に低圧領域が作り出され、それが液体リザーバに接続された毛細管を通して抗体組成物タンパク質の溶液を引き出す。毛細管からの液体流は、それが管を出る際に不安定な糸状体及び液滴に剪断されてエアロゾルを作り出す。ある範囲の構成、流速及びバッフル型を、所定のジェットネブライザからの所望の性能の特徴を達成するのに使用することができる。超音波ネブライザにおいては、高周波電気エネルギーを使用して、典型的には圧電変換器を使用して、振動性の機械的エネルギーを作り出す。このエネルギーが、直接又はカップリング液を通じてのいずれかで抗体組成物タンパク質の製剤に伝播されて、抗体組成物タンパク質を含むエアロゾルを作り出す。有利なことに、ネブライザにより送達される抗体組成物タンパク質の粒子は、約10μm未満、好ましくは約1μm~約5μm、最も好ましくは約2μm~約3μmの範囲の粒径を有する。
【0192】
ジェット又は超音波のいずれかのネブライザでの使用に適した少なくとも1つの抗TNF抗体の製剤は、典型的には、溶液1ml当たり約0.1mg~約100mgの少なくとも1つの抗TNF抗体タンパク質の濃度を含む。この製剤は、添加物、緩衝剤、等張剤、保存剤、界面活性剤、及び好ましくは亜鉛などの薬剤を含み得る。この製剤は、緩衝剤、還元剤、バルクタンパク質、又は炭水化物などの少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の安定化のための添加物又は薬剤も含み得る。少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の処方において有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミンなどが挙げられる。少なくとも1つの抗TNF抗体の処方において有用な典型的な炭水化物としては、ショ糖、マンニトール、乳糖、トレハロース、グルコースなどが挙げられる。少なくとも1つの抗TNF抗体製剤は、エアロゾル形成時に溶液の霧化により引き起こされる少なくとも1つの抗TNF抗体の表面誘発性の凝集を低減又は阻止し得る界面活性剤も含み得る。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びアルコール、並びにポリオキシエチレンソルビタル脂肪酸エステルのような様々な従来の界面活性剤を使用することができる。量は、一般に製剤の0.001~4重量%の範囲である。本発明の目的上とりわけ好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80、ポリソルベート20などである。抗体タンパク質などのタンパク質の製剤には、当該技術分野において既知の更なる薬剤も又製剤中に含むことができる。
【0193】
定量吸入器によるTNF抗体組成物の投与。定量吸入器(MDI)では、噴射剤、少なくとも1つの抗TNF抗体及び任意の添加物又はその他の添加剤が、液化圧縮ガスを含む混合物としてキャニスタ内に収容される。絞り弁の作動により、好ましくは、約10μm未満、好ましくは約1μm~約5μm、最も好ましくは約2μm~3μmの範囲のサイズの粒子を含有するエアロゾルとしての混合物が放出される。ジェット粉砕、噴霧乾燥、臨界点凝結などを含む、当業者に既知の様々な方法により産生された抗体組成物タンパク質の製剤を用いることにより、所望のエアロゾル粒径を得ることができる。好ましい定量吸入器としては、3M又はGlaxoにより製造されかつヒドロフルオロカーボン噴射剤を使用するものが挙げられる。
【0194】
定量吸入器デバイスで使用するための少なくとも1つの抗TNF抗体の製剤は、一般に、少なくとも1つの抗TNF抗体を、例えば、界面活性剤の助けを借りて噴射剤中に懸濁した非水性溶媒中の懸濁液として含有する微粉を含む。噴射剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン、HFA-134a(ヒドロフルオロアルカン-134a)、HFA-227(ヒドロフルオロアルカン-227)などが挙げられる、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、又は炭化水素のような本目的上使用される任意の従来の物質であることができる。好ましくは、噴射剤はヒドロフルオロカーボンである。界面活性剤は、少なくとも1つの抗TNF抗体を噴射剤中の懸濁液として安定化させる、活性薬剤を化学的分解に対して保護するなどのために選択することができる。好適な界面活性剤には、ソルビタントリオレエート、ダイズレシチン、オレイン酸などが挙げられる。場合によっては、エタノールなどの溶媒を使用する溶液エアロゾルが好ましい。タンパク質の製剤には、当該技術分野で既知の更なる薬剤を製剤中に含んでもよい。
【0195】
当業者は、本発明の方法が、本明細書に記載されないデバイスを介する少なくとも1つの抗TNF抗体組成物の経肺投与により達成され得ることを認識するであろう。
【0196】
経口製剤及び投与。経口のための製剤は、腸壁の浸透性を人工的に増加させるためのアジュバント(例えば、レゾルシノール、並びにポリオキシエチレンオレイルエーテル及びn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルなどの非イオン性界面活性剤)の同時投与、並びに酵素的分解を阻害するための酵素阻害剤(例えば、膵トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFF)及びトラシロール)の同時投与による。経口投与のための固体型剤形の活性成分化合物は、ショ糖、乳糖、セルロース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギン酸塩、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成又は半合成ポリマー、及びグリセリドなどの、少なくとも1つの添加剤と混合することができる。これらの剤形はまた、他の種類の添加剤、例えば、不活性希釈剤、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)、パラベン、保存剤(ソルビン酸、アスコルビン酸、α-トコフェロールなど)、抗酸化剤(システインなど)、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味剤、着香剤、香料などを含有し得る。
【0197】
錠剤及び丸剤は腸溶コーティング調製物に更に加工することができる。経口投与のための液体調製物には、医学的用途に許容できるエマルジョン、シロップ、エリキシル剤、懸濁剤及び溶液調製物が挙げられる。これらの調製物は、当該分野で通例に使用される不活性希釈剤、例えば水を含有することができる。リポソームはインスリン及びヘパリンの薬物送達系としても記述されている(米国特許第4,239,754号)。より最近では、混合アミノ酸の人工的ポリマーのミクロスフェア(プロテイノイド)が、医薬品を送達するために使用されている(米国特許第4,925,673号)。更に、米国特許第5,879,681号及び米国特許第5,5,871,753号に記載される担体化合物が、生物学的活性薬剤を経口で送達するのに使用されることは、当該技術分野において既知である。
【0198】
粘膜製剤及び投与。粘膜表面を通る吸収のため、少なくとも1つの抗TNF抗体を投与するための組成物及び方法は、複数のサブミクロン粒子と、粘膜付着性巨大分子と、生物活性ペプチドと、エマルジョン粒子の粘膜付着を達成することにより粘膜表面を通る吸収を促進する水性連続相と、を含む、エマルジョンを含む(米国特許第5,514,670号)。本発明のエマルジョンの適用に適する粘膜表面には、角膜、結膜、口腔内、舌下、鼻、膣、肺、胃、腸、及び直腸投与経路を挙げることができる。膣又は直腸投与のための製剤、例えば座薬は、添加物として、例えば、ポリアルキレングリコール、ワセリン、カカオバターなどを含有し得る。鼻内投与のための処方は固体であってよく、添加物として、例えば乳糖を含有することができ、又は水性若しくは油性溶液の点鼻薬であることができる。口腔内投与のために、添加物として、糖、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、αデンプン(pregelinatined starch)などが挙げられる(米国特許第5,849,695号)。
【0199】
経皮製剤及び投与。経皮投与のために、少なくとも1つの抗TNF抗体を、リポソーム若しくはポリマーナノ粒子、微小粒子、マイクロカプセル又はミクロスフェア(特に明示しない限り、集合的に微小粒子と称する)などの送達デバイス中にカプセル化する。ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びそれらのコポリマーなどのポリヒドロキシ酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物及びポリホスファゼンなどの合成ポリマー、並びにコラーゲン、ポリアミノ酸、アルブミン及びその他のタンパク質などの天然ポリマー、アルギン酸塩及びその他の多糖類並びにそれらの組み合わせから作製される微小粒子を含む多くの好適なデバイスが既知である(米国特許第5,814,599号)。
【0200】
長時間投与及び製剤。本発明の化合物を、単回投与により、長期間にわたり、例えば、1週~1年間、対象に送達することが時折望ましい場合がある。様々な徐放、デポー又は埋め込み剤形を利用することができる。例えば、剤形は、体液において溶解度が低い化合物の薬学的に許容できる非毒性塩、例えば、(a)リン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンモノ-又はジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの多塩基酸との酸付加塩、(b)亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなどの多価金属カチオン、又は例えば、N,N’-ジベンジル-エチレンジアミン若しくはエチレンジアミンから形成された有機カチオンを有する塩、あるいは(c)(a)及び(b)の組み合わせ、例えば、タンニン酸亜鉛塩を含有し得る。加えて、本発明の化合物、又は好ましくは前述したものなどの比較的不溶性の塩を、注射に好適な、例えばゴマ油とともに、例えば、モノステアリン酸アルミニウムゲルなどのゲル中に処方することができる。とりわけ好ましい塩は、亜鉛塩、亜鉛タンニン酸塩、パモ酸塩などである。別の種類の注射用徐放デポー製剤は、例えば米国特許第3,773,919号に記載されるポリ乳酸/ポリグリコール酸ポリマーなどのゆっくりと分解する非毒性の非抗原性ポリマー中にカプセル化されるために分散された化合物又は塩を含有する。化合物、又は好ましくは上述したものなどの比較的不溶性の塩は、特に動物での使用のために、コレステロールマトリックスのシラスティックペレット中に処方することもできる。更なる徐放デポー又は埋め込み製剤、例えば、ガス又は液体リポソームは、文献(米国特許第5,770,222号、及び「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」,J.R.Robinson ed.,Marcel Dekker,Inc.,N.Y.,1978)で既知である。
【0201】
本発明を全般的に記述したことから、同様物は、具体的説明として提供されるが制限することを意図していない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【0202】
実施例1:哺乳類細胞におけるTNF抗体のクローニング及び発現。
典型的な哺乳動物発現ベクターは、mRNAの転写の開始を媒介する少なくとも1つのプロモータ要素、抗体コード配列、並びに転写の終結及び転写物のポリアデニル化に必要なシグナルを含む。付加的な要素には、エンハンサ、コザック配列並びにRNAスプライシングのためのドナー及びアクセプタ部位に隣接している介在配列が含まれる。高効率の転写は、SV40からの初期及び後期プロモータ、レトロウイルス、例えば、RSV、HTLVI、HIVIからの長末端反復(LTRS)、及びサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモータで達成することができる。しかしながら、細胞要素を使用することもできる(例えば、ヒトアクチンプロモータ)。本発明の実施において使用するのに好適な発現ベクターとしては、例えば、pIRES1neo、pRetro-Off、pRetro-On、PLXSN若しくはpLNCX(Clonetech Labs,Palo Alto,CA)、pcDNA3.1(+/-)、pcDNA/Zeo(+/-)又はpcDNA3.1/Hygro(+/-)(Invitrogen)、PSVL及びPMSG(Pharmacia,Uppsala,Sweden)、pRSVcat(ATCC 37152)、pSV2dhfr(ATCC 37146)並びにpBC12MI (ATCC 67109)などのベクターが挙げられる。使用することができる哺乳動物の宿主細胞には、ヒトHela293、H9及びJurkat細胞、マウスNIH3T3及びC127細胞、Cos1、Cos7及びCV1、ウズラQC1-3細胞、マウスL細胞及びチャイニーズハムスタ卵巣(CHO)細胞が含まれる。
【0203】
あるいは、遺伝子を、染色体に組み込まれた遺伝子を含有する安定した細胞株において発現させることができる。dhfr、gpt、ネオマイシン、又はハイグロマイシンなどの選択マーカとの共トランスフェクションは、トランスフェクトされた細胞の特定及び単離を可能にする。
【0204】
トランスフェクトされた遺伝子はまた、大量のコード化された抗体を発現するために増幅され得る。DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)マーカは、目的の遺伝子の数百又は更には数千のコピーを有する細胞株を開発するのに有用である。別の有用な選択マーカは、酵素グルタミンシンターゼ(GS)である(Murphyら、「Biochem.J.」227:277~279(1991)、Bebbingtonら、「Bio/Technology」10:169~175(1992))。これらのマーカを使用して、哺乳動物細胞を選択的培地中で成長させ、最も高い耐性を有する細胞が選択される。これらの細胞株は、染色体に組み込まれた増幅遺伝子を含有する。チャイニーズハムスタ卵巣(CHO)及びNSO細胞が抗体の生成に使用されることが多い。
【0205】
発現ベクターpC1及びpC4は、ラウス肉腫ウイルスの強いプロモータ(LTR)(Cullenら、「Molec.Cell.Biol.」5:438~447(1985))に加え、CMVエンハンサ(Boshartら、「Cell」41:521~530(1985))の断片を含有する。例えば、制限酵素切断部位BamHI、XbaI及びAsp7l8を伴う複数のクローニング部位は、目的の遺伝子のクローニングを容易にする。ベクターは更に、ラットプレプロインスリン遺伝子の3’イントロン、ポリアデニル化及び終結シグナルを含有する。
【0206】
CHO細胞におけるクローニング及び発現。ベクターpC4は、TNF抗体の発現に使用される。プラスミドpC4は、プラスミドpSV2-dhfr(ATCC受託番号37146)の誘導体である。このプラスミドは、SV40初期プロモータの制御下でマウスDHFR遺伝子を含有する。これらのプラスミドでトランスフェクトされる、ジヒドロ葉酸活性を欠くチャイニーズハムスタ卵巣細胞又はその他の細胞は、化学療法剤メトトレキサートを補充した選択的培地(例えば、α-MEM、Life Technologies,Gaithersburg,MD)中で細胞を成長させることによって選択することができる。メトトレキサート(MTX)に耐性の細胞におけるDHFR遺伝子の増幅は、充分に文書化されている(例えば、F.W.Altら、「J.Biol.Chem.」253:1357~1370(1978)、J.L.Hamlin及びC.Ma、「Biochem.et Biophys.Acta」1097:107~143(1990)、及びM.J.Page及びM.A.Sydenham、「Biotechnology」9:64~68(1991)を参照のこと)。増大したMTX濃度において成長した細胞は、DHFR遺伝子の増幅の結果として、標的酵素であるDHFRの過剰生成により、薬物に対する耐性を発達させる。第2の遺伝子がDHFR遺伝子に連結されている場合、通常、共増幅され、過剰発現される。このアプローチを使用して、増幅遺伝子の1,000を超えるコピーを有する細胞株を開発することができることが、当該技術分野において知られている。続いて、メトトレキサートを回収する際、宿主細胞の1つ又は2つ以上の染色体に組み込まれた増幅遺伝子を含有する細胞株が得られる。
【0207】
プラスミドpC4は、目的の遺伝子を発現するために、ラウス肉腫ウイルスの長末端反復(LTR)の強いプロモータ(Cullenら、「Molec.Cell.Biol.」5:438~447(1985))に加え、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の即初期遺伝子のエンハンサ(Boshartら、「Cell」41:521~530(1985))から単離された断片を含有する。プロモータの下流は、遺伝子の組み込みを可能にするBamHI、XbaI及びAsp718制限酵素切断部位である。これらのクローニング部位の後に、プラスミドは、ラットプレプロインスリン遺伝子の3’イントロン及びポリアデニル化部位を含有する。他の高効率のプロモータ、例えば、ヒトβアクチンプロモータ、SV40初期若しくは後期プロモータ、又は他のレトロウイルス、例えばHIV及びHTLVIからの長末端反復も発現のために使用することができる。ClontechのTet-Off及びTet-On遺伝子発現系、並びに類似の系を使用して、哺乳類細胞において調節された方法で、TNFを発現させることができる(M.Gossen及びH.Bujard、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」89:5547~5551(1992))。mRNAのポリアデニル化のために、例えば、ヒト成長ホルモン又はグロビン遺伝子からの他のシグナルも使用することができる。染色体に組み込まれた目的の遺伝子を有する安定した細胞株は、gpt、G418又はハイグロマイシンなどの選択マーカとの共トランスフェクションの際に選択することもできる。最初に1つを超える選択マーカ、例えばG418、に加えてメトトレキサートを使用するのが有利である。
【0208】
このプラスミドpC4を制限酵素で消化した後に、当該技術分野において既知の手順により、子ウシ腸ホスファターゼを使用して脱リン酸化する。次に、ベクターは1%アガロースゲルから単離される。
【0209】
次に、単離された可変及び定常領域コードDNA及び脱リン酸化ベクターをT4 DNAリガーゼで連結する。次に、大腸菌HB101又はXL-1 Blue細胞を形質転換し、例えば、制限酵素分析を使用して、プラスミドpC4に挿入された断片を含有する細菌を特定する。
【0210】
トランスフェクションには、活性DHFR遺伝子が欠損しているチャイニーズハムスタ卵巣(CHO)細胞が使用される。5μgの発現プラスミドpC4は、リポフェクチンを使用して、0.5μgのプラスミドpSV2-neoで共トランスフェクトされる。プラスミドpSV2-neoは、優性の選択マーカである、G418を含む一群の抗生物質に対して耐性を付与する酵素をコードするTn5からのneo遺伝子を含有する。1μg/mLのG418で補充したαマイナスMEMに細胞を播種する。2日後、細胞をトリプシン処理し、ハイブリドーマクローニングプレート(Greiner,Germany)中の、10、25、又は50ng/mLのメトトレキサート+1μg/mLのG418で補充したαマイナスMEMに播種する。約10~14日後、単一クローンをトリプシン処理した後、異なる濃度のメトトレキサート(50nM、100nM、200nM、400nM、800nM)を使用して、6ウェルペトリ皿又は10mLフラスコに播種する。次に、最高濃度のメトトレキサートで成長させているクローンを、更に高い濃度のメトトレキサート(1mM、2mM、5mM、10mM、20mM)を含む新しい6ウェルプレートに移す。100~200mMの濃度で成長するクローンが得られるまで同じ手順を繰り返す。所望の遺伝子生成物の発現は、例えば、SDS-PAGE及びウエスタンブロットによって、又は逆相HPLC分析によって分析される。
【0211】
実施例2:トランスジェニックマウスを使用する、ヒトTNFと反応する高親和性ヒトIgGモノクローナル抗体の生成。
概要。ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックマウスを使用して、1つ又は2つ以上のTNF媒介性疾患の処置のための、TNF作用を阻害するために治療的に使用することができる高親和性の完全ヒトモノクローナル抗体を生成する。重鎖及び軽鎖両方のヒト可変及び定常領域抗体導入遺伝子を含有する(CBA/JxC57/BL6/J)Fハイブリッドマウスをヒト組換えTNFで免疫する(Taylorら、「Intl.Immunol.」6:579~591(1993)、Lonbergら、「Nature」368:856~859(1994)、Neuberger,M.、「Nature Biotech.」14:826(1996)、Fishwildら、「Nature Biotechnology」14:845~851(1996))。いくつかの融合物が完全ヒトTNF反応性IgGモノクローナル抗体の1つ又は2つ以上のパネルを生み出した。完全ヒト抗TNF抗体を更に特徴付けする。全てはIgG1κである。かかる抗体は、およそ1×10~9×1012の親和性定数を有することが分かっている。これらの完全ヒトモノクローナル抗体の予期せぬ高親和性により、それらはTNF関連疾患、病態、又は障害における治療用途のための好適な候補となる。
【0212】
略語。BSA-ウシ血清アルブミン、CO-二酸化炭素、DMSO-ジメチルスルホキシド、EIA-酵素イムノアッセイ、FBS-ウシ胎児血清、H-過酸化水素、HRP-西洋わさびペルオキシダーゼ、ID-皮内、Ig-免疫グロブリン、TNF-組織壊死因子α、IP-腹腔内、IV-静脈内、Mab-モノクローナル抗体、OD-光学密度、OPD -oフェニレンジアミン二塩酸塩、PEG-ポリエチレングリコール、PSA-ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシン、RT-室温、SQ-皮下、v/v-単位容量当たりの容量、w/v-単位容量当たりの重量。
【0213】
材料及び方法
動物。ヒト抗体を発現し得るトランスジェニックマウスは、当該技術分野において既知であり、(例えば、GenPharm International,San Jose,CA、Abgenix,Freemont,CAなどから)市販されており、これはヒト免疫グロブリンを発現するが、マウスIgM又はIgκを発現しない。例えば、かかるトランスジェニックマウスは、V(D)J結合、重鎖クラススイッチ及び体細胞変異を受けてヒト配列免疫グロブリンのレパートリを生成する、ヒト配列導入遺伝子を含有する(Lonbergら、「Nature」368:856~859(1994))。軽鎖導入遺伝子は、例えば、部分的に、生殖系列ヒトVκ領域のほぼ半分を含む酵母人工染色体クローンに由来し得る。加えて、重鎖導入遺伝子は、ヒトμ及びヒトγ1の両方(Fishwildら、「Nature Biotechnology」14:845~851(1996))並びに/又はγ3定常領域をコードすることができる。適切なゲノトピック系統由来のマウスを免疫化及び融合プロセスにおいて使用して、TNFに対する完全ヒトモノクローナル抗体を生成することができる。
【0214】
免疫付与。1つ又は2つ以上の免疫付与スケジュールは、抗TNFヒトハイブリドーマを生成するために使用することができる。以下の例示的な免疫付与プロトコルに従って、最初のいくつかの融合を行うことができるが、他の類似の既知のプロトコルを使用することもできる。数匹の14~20週齢の雌及び/又は外科的に去勢した雄のトランスジェニックマウスに対して、最終容量100~400μL(例えば、200)で等量のTITERMAX又は完全フロイントアジュバントで乳化した1~1000μgの組換えヒトTNFをIP又はIDに接種する。各マウスは、任意選択的に、2SQ部位の各々に100μLの生理学的生理食塩水中1~10μgを受けることもできる。その後、マウスは、1~7、5~12、10~18、17~25及び/又は21~34日後にIP(1~400μg)及びSQ(1~400μgx2)により等量のTITERMAX又は完全フロイントアジュバントで乳化したTNFで、免疫化され得る。抗凝固薬無しで12~25及び25~40日後に眼窩後方穿刺によりマウスを出血させることができる。次に、血液を室温で1時間凝固させ、血清を回収し、既知の方法によりTNF EIAアッセイを使用して滴定する。反復注射が力価の増加を生じなければ、融合を行う。その際、マウスに、100μLの生理学的生理食塩水に希釈した1~400μgのTNFの最終IVブースタ注射を与えることができる。3日後、マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、脾臓を無菌的に除去し、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン及び0.25μg/mLのアンホテリシンB(PSA)を含有する、10mLの冷リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中に浸漬することができる。PSA-PBSで脾臓を無菌灌流することにより、脾細胞を採取する。細胞を冷PSA-PBS中で1回洗浄し、トリパンブルー染料排除を使用して計数し、25mMヘペスを含有するRPMI 1640培地に再懸濁する。
【0215】
細胞融合。既知の、例えば、当該技術分野で従来の方法に従い、1:1~1:10のマウス骨髄腫細胞対生脾臓細胞比率で融合を行うことができる。非限定的な例として、脾臓細胞及び骨髄腫細胞は一緒にペレット化することができる。次に、30秒かけてペレットを37℃でゆっくり1mLの50%(w/v)PEG/PBS溶液(PEG分子量1,450、Sigma)に再懸濁することができる。その後、1分かけて25mMヘペスを含有する10.5mLのRPMI 1640培地(37℃)をゆっくり添加することによって、融合を停止させることができる。融合細胞を5分間500~1500rpmで遠心分離する。その後、細胞をHAT培地(25mMヘペス、10%胎児クローンI血清(Hyclone)、1mMピルビン酸ナトリウム、4mM L-グルタミン、10μg/mLのゲンタマイシン、2.5%Origen培養サプリメント(Fisher)、10%653調整RPMI1640/ヘペス培地、50μM 2-メルカプトエタノール、100μMヒポキサンチン、0.4μMアミノプテリン及び16μMチミジンを含有するRPMI 1640培地)に再懸濁した後、15の96ウェル平底組織培養プレートに200μL/ウェルで平板培養する。次に、7~10日間、5%CO及び95%空気を含有する加湿した37℃のインキュベータにプレートを配置する。
【0216】
マウス血清におけるヒトIgG抗TNF抗体の検出。固相EIAを使用して、ヒトTNFに特異的なヒトIgG抗体についてマウス血清をスクリーニングすることができる。簡潔に、PBS中2μg/mLのTNFで一晩プレートをコーティングすることができる。0.02%(v/v)Tween20を含有する0.15M生理食塩水で洗浄した後、ウェルをPBS中1%(w/v)BSA、200μL/ウェルで、室温で1時間遮断することができる。プレートは、直ちに使用するか、又は後に使用するために-20℃で凍結する。マウス血清希釈物を、50μL/ウェルでTNFコーティングしたプレート上で、室温で1時間インキュベートする。プレートを洗浄した後、1%BSA-PBS中に1:30,000で希釈したFc特異的な50μL/ウェルHRP標識ヤギ抗ヒトIgGにより、室温で1時間プローブする。プレートを再度洗浄することができ、100μL/ウェルのクエン酸塩-リン酸塩基質溶液(0.1Mクエン酸及び0.2Mリン酸ナトリウム、0.01% H及び1mg/mL OPD)を15分かけて室温で添加する。次に、25μL/ウェルで反応停止溶液(4N硫酸)を添加し、自動プレート分光光度計により490nmでODを読み取る。
【0217】
ハイブリドーマ上清における完全ヒト免疫グロブリンの検出。好適なEIAを使用して、完全ヒト免疫グロブリンを分泌する成長陽性ハイブリドーマを検出することができる。簡潔に、96ウェルのポップアウトプレート(VWR、610744)を、4℃で一晩、炭酸ナトリウム緩衝剤中10μg/mLのヤギ抗ヒトIgG Fcでコーティングすることができる。プレートを洗浄し、37℃で1時間、1%BSA-PBSで遮断し、直ちに使用するか、又は-20℃で凍結する。未希釈ハイブリドーマ上清を、プレート上で、37℃で1時間インキュベートする。プレートを洗浄し、1%BSA-PBS中に1:10,000で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトκにより、37℃で1時間プローブする。次に、上述のように、プレートを基質溶液と共にインキュベートする。
【0218】
完全ヒト抗TNF反応性の決定。上記のハイブリドーマは、好適なRIA又は他のアッセイを使用してTNFに対する反応性について同時にアッセイすることができる。例えば、上記のように、上清をヤギ抗ヒトIgG Fcプレート上でインキュベートし、洗浄した後、室温で1時間、ウェル当たり適切な計数で、放射線標識されたTNFでプローブする。ウェルをPBSで2回洗浄し、好適な計数器を使用して、結合した放射線標識されたTNFを定量化する。
【0219】
ヒトIgG1κ抗TNF分泌ハイブリドーマを細胞培養において拡張し、限定希釈により系列的にサブクローニングすることができる。結果として得られたクローン集団を拡張し、凍結培地(95%FBS、5%DMSO)中で凍結保存し、液体窒素中で保管する。
【0220】
アイソタイプ。抗体のアイソタイプの決定は、特定の滴定に対するマウス免疫血清をスクリーニングするために使用されたものと類似の形式のEIAを使用して達成することができる。上述のように96ウェルプレート上にTNFをコーティングすることができ、2μg/mLの精製された抗体を、室温で1時間、プレート上でインキュベートすることができる。プレートを洗浄し、1%BSA-PBS中に1:4000で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG又はHRP標識ヤギ抗ヒトIgGで、室温で1時間プローブする。プレートを再度洗浄し、上述のように基質溶液と共にインキュベートする。
【0221】
ヒトTNFによるヒト抗ヒトTNF抗体の結合動力学。抗体の結合特徴は、例えば、TNF捕捉EIA及びBIAcore技術を使用して好適に評価することができる。精製されたヒトTNF抗体の段階的濃度は、上述のように、アッセイにおいて、2μg/mLのTNFでコーティングされたEIAプレートへの結合について評価することができる。その後、相対結合効率を示す片対数プロットとしてODを表すことができる。
【0222】
定量的結合定数は、例えば、以下のように、又は任意のその他の既知の好適な方法によって得ることができる。BIAcore CM-5(カルボキシメチル)チップをBIAcore 2000ユニットに配置する。HBS緩衝剤(0.01M HEPES、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%v/v P20界面活性剤、pH7.4)を、安定したベースラインが得られるまで、5μl/分でチップのフローセル上に流す。200μLの水中15mgのEDC(N-エチル-N’-(3-ジメチル-アミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩)の溶液(100μL)を、200μLの水中2.3mgのNHS(N-ヒドロキシコハク酸イミド)の100μLの溶液に添加する。結果として得られた溶液の40μLをチップ上に注入する。6μLのヒトTNFの溶液(10mM酢酸ナトリウム中15μg/mL、pH4.8)をチップ上に注入し、約500RUの増加をもたらす。緩衝剤をTBS/Ca/Mg/BSA泳動緩衝剤(20mMトリス、0.15M塩化ナトリウム、2mM塩化カルシウム、2mM酢酸マグネシウム、0.5%トリトンX-100、25μg/mL BSA、pH7.4)に変更し、一晩チップ上に流してそれを平衡化し、全ての未反応のコハク酸エステルを加水分解又はキャップする。
【0223】
33.33、16.67、8.33、及び4.17nMで泳動緩衝剤中に抗体を溶解する。流量を30μL/分に調整し、器具の温度を25℃に調整する。1つはTNFが固定化され(試料)、2つ目は非誘導化フローセル(ブランク)である、2つのフローセルを動態実行に使用する。各抗体濃度を120μL、フローセル上に30μL/分で注入し(会合相)、続いて360秒間連続して緩衝剤を流す(解離相)。各30μLの2Mチオシアン酸グアニジンを2回順次注入することにより、チップの表面を再生する(組織壊死因子α/抗体複合体の解離)。
【0224】
データの分析は、当該技術分野において既知であるBIA評価3.0又はCLAMP2.0を使用して行われる。各抗体濃度について、ブランクセンソグラムを試料センソグラムから減ずる。解離(kd,sec-1)及び会合(k,mol-1 sec-1)の両方についてグローバルフィットを行い、解離定数(K,mol)を算出する(k/k)。抗体親和性が充分に高いため、捕捉された抗体のRUが>100である場合、抗体の追加希釈が実行される。
【0225】
結果と考察
抗ヒトTNFモノクローナル抗体の生成。いくつかの融合を行い、ヒトTNFに特異的な数十の抗体を生み出す各融合物を15のプレート(1440ウェル/融合物)に播種する。これらのうち、いくつかは、ヒト及びマウスIg鎖の組み合わせからなることが分かる。残りのハイブリドーマは、ヒト重鎖及び軽鎖のみからなる抗TNF抗体を分泌(secret)する。ヒトハイブリドーマの全てがIgG1κであることが予想される。
【0226】
ヒト抗ヒトTNF抗体の結合動力学。ELISA分析は、これらのハイブリドーマのほとんど又は全てからの精製された抗体が、濃度依存的にTNFに結合することを確認する。図1図2は、これらの抗体の相対的結合効率の結果を示す。この場合、抗体のその同族抗原(エピトープ)に対する結合活性度を測定する。TNFを直接EIAプレートに結合すると、タンパク質の変性を引き起こし得、見かけ上の結合親和性は、未変性タンパク質への結合を反映することができないことに留意するべきである。50パーセントの結合が広範な濃度にわたって見られる。
【0227】
定量的結合定数はヒト抗体のBIAcore分析を使用して得られ、ヒトモノクローナル抗体のいくつかが1×10-9~7×10-12の範囲のKを有して非常に高い親和性であることを明らかにする。
【0228】
結論
いくつかの融合は、ヒトTNFで免疫化されるヒト可変及び定常領域抗体導入遺伝子を含有するハイブリッドマウスからの脾細胞を利用して行われる。IgG1κアイソタイプのいくつかの完全ヒトTNF反応性IgGモノクローナル抗体のセットを生成する。完全ヒト抗TNF抗体を更に特徴付けする。生成された抗体のうちのいくつかは、1×10~9×1012の親和性定数を有する。これらの完全ヒトモノクローナル抗体の予期せぬ高親和性により、それらはTNF依存疾患、病態又は関連状態における治療用途に好適なものとなる。
【0229】
実施例3:ヒトTNFαに反応性のヒトIgGモノクローナル抗体の生成。
概要。重鎖及び軽鎖両方のヒト可変及び定常領域抗体導入遺伝子を含有する(CBA/JxC57BL/6J)Fハイブリッドマウス(1~4)を組換えヒトTNFαで免疫化した。GenTNVと命名された1つの融合が、固定化された組換えヒトTNFαに結合する完全ヒトIgG1κモノクローナル抗体を8つ生み出した。特定直後、8つの細胞株は、更に特徴付けするためにMolecular Biologyに譲渡された。これらMabは配列が完全にヒトであるため、それらはヒトにおけるcA2(Remicade)よりも免疫原性が低いと予想される。
【0230】
略語。BSA-ウシ血清アルブミン、CO-二酸化炭素、DMSO-ジメチルスルホキシド、EIA-酵素イムノアッセイ、FBS-ウシ胎児血清、H-過酸化水素、HC-重鎖、HRP-西洋わさびペルオキシダーゼ、ID-皮内、Ig-免疫グロブリン、TNF-組織壊死因子α、IP-腹腔内、IV-静脈内、Mab-モノクローナル抗体、OD-光学密度、OPD-oフェニレンジアミン二塩酸塩、PEG-ポリエチレングリコール、PSA-ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシン、RT-室温、SQ-皮下、TNFα-腫瘍壊死因子α、v/v-単位容量当たりの容量、w/v-単位容量当たりの重量。
【0231】
序論。ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックマウスを利用して、組換えヒトTNFαに特異的な完全ヒトモノクローナル抗体を生成した。cA2(Remicade)は、血清半減期が増加し、免疫原性に関する副作用が減少する利益を有して、TNFα媒介性疾患に関与する炎症性プロセスを治療的に阻害するために使用されるため、これらの固有の抗体を使用することができると期待される。
【0232】
材料及び方法
動物。ヒト免疫グロブリンを発現するが、マウスIgM又はIgκを発現しないトランスジェニックマウスは、GenPharm Internationalにより開発されてきた。これらのマウスは、V(D)J結合、重鎖クラススイッチ及び体細胞変異を受けて抗原特異的ヒト免疫グロブリン(1)のレパートリを生成する、機能性ヒト抗体導入遺伝子を含有する。軽鎖導入遺伝子は、部分的に、生殖系列ヒトV遺伝子座のほぼ半分を含む酵母人工染色体クローンに由来する。いくつかのVH遺伝子に加えて、重鎖(HC)導入遺伝子は、ヒトμ及びヒトγ1(2)、並びに/又はγ3定常領域の両方をコードする。本明細書に記載されるモノクローナル抗体を生成するための免疫付与及び融合プロセスにおいて、HCo12/KCo5遺伝子型系統由来のマウスを使用した。
【0233】
ヒトTNFαの精製。セファロース4B(Pharmacia)に連結されたTNFα受容体-Fc融合タンパク質(p55-sf2)(5)を充填したカラムを使用して、アフィニティクロマトグラフィにより、ヒトTNFαを、C237A細胞からの組織培養上清から精製した。細胞上清を、その容量の9分の1の10xDulbeccoのPBS(D-PBS)と混合し、4mL/分で、4℃でカラムを通過させた。次に、PBSでカラムを洗浄し、0.1Mクエン酸ナトリウム、pH3.5でTNFαを溶出し、2MトリスHCl、pH8.5で中和した。精製されたTNFαは、10mMトリス、0.12M塩化ナトリウム、pH7.5に緩衝剤交換され、0.2umのシリンジフィルタを通して濾過された。
【0234】
免疫付与。およそ16週齢の雌のGenPharmマウスを、0、12及び28日目に等量のTitermaxアジュバントで乳化した合計100μgのTNFα(ロットJG102298又はJG102098)で、IP(200μL)及びID(尾の付け根にて100μL)により免疫化した。抗凝固薬無しで21及び35日目に眼窩後方穿刺によりマウスを出血させた。血液を室温で1時間凝固させ、血清を回収し、TNFα固相EIAアッセイを使用して滴定した。28日目の注射後、マウスを7週間休ませた後に、GenTNVと命名された融合を行った。その後、TNFαに対して1:160の特定のヒトIgG力価を有するマウスに、100μLの生理学的生理食塩水で希釈した50μgのTNFαの最終IVブースタ注射を与えた。3日後、マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、脾臓を無菌的に除去し、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、及び0.25μg/mLのアンホテリシンB(PSA)を含有する、10mLの冷リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中に浸漬した。PSA-PBSで脾臓を無菌灌流することにより、脾細胞を採取した。細胞を冷PSA-PBS中で1回洗浄し、Coulter計数器を使用して計数し、25mMヘペスを含有するRPMI 1640培地に再懸濁した。
【0235】
細胞株。Cell Biology Services(CBS)グループは、97年5月14日に、Centocor’s Product Developmentグループから非分泌マウス骨髄腫融合パートナー653を受け取った。細胞株を、10%(v/v)FBS(Cell Culture Labs)、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM NEAA、2mM L-グルタミン(全てJRH Biosciencesから)で補充したRPMI培地(JRH Biosciences)中で拡張し、95%FBS及び5%DMSO(Sigma)中で凍結保存した後、CBSの蒸気相液体窒素冷凍庫に保管した。細胞バンクは無菌であり(Quality Control Centocor,Malvern)、マイコプラズマ(Bionique Laboratories)がなかった。細胞は融合まで対数増殖期培養物内で維持された。融合前に、それらをPBS中で洗浄し、計数し、トリパンブルー染料排除により生存率を決定した(>95%)。
【0236】
ヒトTNFαは、組換え細胞株により産生され、C237Aと命名され、CentocorのMolecular Biologyで産生された。細胞株を、5%(v/v)FBS(Cell Culture Labs)、2mM L-グルタミン(全てJRH Biosciencesから)及び0.5:g/mLのマイコフェノール酸で補充したIMDM培地(JRH Biosciences)中で拡張し、95%FBS及び5%DMSO(Sigma)中で凍結保存した後、CBS(13)の蒸気相液体窒素冷凍庫に保管した。細胞バンクは無菌であり(Quality Control Centocor,Malvern)、マイコプラズマ(Bionique Laboratories)がなかった。
【0237】
細胞融合。細胞融合は、1:1の比率の653マウス骨髄腫細胞及びマウス生脾臓細胞を使用して行った。簡潔に、脾臓細胞及び骨髄腫細胞を一緒にペレット化した。30秒間かけてペレットを37℃でゆっくり1mLの50%(w/v)PEG/PBS溶液(PEG分子量1,450g/モル、Sigma)に再懸濁した。1分かけて10.5mLのRPMI培地(添加剤無し)(JRH)(37℃)をゆっくり添加することにより、融合を停止させた。融合細胞を5分間750rpmで遠心分離した。その後、細胞をHAT培地(10%ウシ胎児血清(JRH)、1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L-グルタミン、10μg/mLのゲンタマイシン、2.5%Origen培養サプリメント(Fisher)、50μM 2-メルカプトエタノール、1% 653調整RPMI培地、100μMヒポキサンチン、0.4μMアミノプテリン及び16μMチミジンを含有するRPMI/HEPES培地)に再懸濁した後、5つの96ウェル平底組織培養プレートを200μL/ウェルで平板培養した。次に、7~10日間、5%CO及び95%空気を含有する加湿した37℃のインキュベータにプレートを配置した。
【0238】
マウス血清におけるヒトIgG抗TNFα抗体の検出。固相EIAを使用して、ヒトTNFαに特異的なヒトIgG抗体についてマウス血清をスクリーニングした。簡潔に、PBS中1μg/mLのTNFαで一晩プレートをコーティングした。0.02%(v/v)Tween20を含有する0.15M生理食塩水で洗浄した後、ウェルをPBS中1%(w/v)BSA、200μL/ウェルで、室温で1時間遮断した。プレートは、直ちに使用するか、又は後に使用するために-20℃で凍結されるかのいずれかにした。マウス血清を、50μL/ウェルで、室温で1時間、2倍階段希釈法で、ヒトTNFαコーティングされたプレート上でインキュベートした。プレートを洗浄した後、1%BSA-PBS中に1:30,000で希釈したFc特異的(Accurate)な50μL/ウェルのHRP標識ヤギ抗ヒトIgGにより、室温で1時間プローブする。プレートを再度洗浄し、100μL/ウェルのクエン酸塩-リン酸塩基質溶液(0.1Mクエン酸及び0.2Mリン酸ナトリウム、0.01% H及び1mg/mL OPD)を15分かけて室温で添加した。次いで、25μL/ウェルで反応停止溶液(4N硫酸)を添加し、自動プレート分光光度計を使用して490nmでODを読み取った。
【0239】
ハイブリドーマ上清における完全ヒト免疫グロブリンの検出。GenPharmマウスは、マウス及びヒト免疫グロブリン鎖の両方を生成することができるため、2つの別個のEIAアッセイを使用して、ヒト軽鎖及びヒト重鎖の両方の存在について成長陽性ハイブリドーマクローンを試験した。プレートを上述のようにコーティングし、未希釈のハイブリドーマ上清を37℃で1時間、プレート上でインキュベートした。プレートを洗浄し、37℃で1時間、1% BSA-HBSS中で1:10,000に希釈したHRP抱合ヤギ抗ヒトκ(Southern Biotech)抗体、又は1% BSA-HBSS中で1:30,000に希釈したHRP抱合ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的抗体のいずれかでプローブした。次に、上述のように、プレートを基質溶液と共にインキュベートした。抗ヒトκ及び抗ヒトIgG Fc EIA形式の両方で陽性シグナルをもたらさなかったハイブリドーマクローンは廃棄された。
【0240】
アイソタイプ。抗体のアイソタイプの決定は、特定の力価に対するマウス免疫血清をスクリーニングするために使用されたものと類似の形式のEIAを使用して達成した。4ECで一晩、炭酸ナトリウム緩衝剤中10:g/mLのヤギ抗ヒトIgG(H+L)でEIAプレートをコーティングし、上述のように遮断した。24ウェル培養物からの希釈無しの上清を、室温で1時間、プレート上でインキュベートした。プレートを洗浄し、1%BSA-PBS中に1:4000で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG、IgG、IgG又はIgG(Binding Site)で、室温で1時間プローブした。プレートを再度洗浄し、上述のように基質溶液と共にインキュベートした。
【0241】
結果及び考察。完全ヒト抗ヒトTNFαモノクローナル抗体の生成。組換えヒトTNFαタンパク質で免疫化されたGenPharmマウスから、GenTNVと命名された融合を1回行った。この融合から、196の成長陽性ハイブリッドがスクリーニングされた。ヒトTNFαと反応性の完全ヒトIgG抗体を分泌した8つのハイブリドーマ細胞株を特定した。これらの8つの細胞株はそれぞれ、ヒトIgG1κアイソタイプの免疫グロブリンを分泌し、限界希釈により全てを2回サブクローニングして、安定した細胞株を得た(>90%均質)。細胞株名及びそれぞれのCコード表記を表1に列挙する。細胞株の各々は、液体窒素中に保管された12-バイアル研究細胞バンクにおいて凍結された。
【0242】
8つの細胞株の各々の24ウェル培養皿のウェルから回収した親細胞は、トランスフェクション及び更なる特徴付けのために、1999年2月18日にMolecular Biologyグループに引き渡された。
【0243】
【表2】
【0244】
結論
GenTNV融合は、Centocorで調製された組換えヒトTNFαで免疫化されたヒト可変及び定常領域抗体導入遺伝子を含有するハイブリッドマウスからの脾細胞を利用して行われた。IgG1κアイソタイプの8つの完全ヒトTNFα反応性IgGモノクローナル抗体を生成した。更なる特徴付け及び開発のために、親細胞株をMolecular Biologyグループに移した。これらの新しいヒト抗体のうちの1つは、Remicadeと比較して、免疫原性及びアレルギー型合併症が減少する利益の可能性を有して、抗炎症に有用であり得る。
【0245】
参考文献
Taylorら、「International Immunology」 6:579-591 (1993)。
Lonbergら、「Nature」 368:856-859 (1994)。
Neuberger,M.、「Nature Biotechnology」 14:826 (1996)。
Fishwildら、「Nature Biotechnology」 14:845-851 (1996)。
Scallonら、「Cytokine」 7:759-770 (1995)。
【0246】
実施例4:ヒト抗TNFα抗体を発現する細胞株のクローニング及び調製。
概要。TNV表記の8つのヒトモノクローナル抗体(mAb)のパネルは、明らかに高結合活性で固定化されたヒトTNFαに結合することが認められた。8つのmAbのうちの7つは、組換えTNF受容体へのヒトTNFαの結合を効率的に遮断することを示した。7つのmAbをコードするDNAの配列分析は、全てのmAbがヒトV領域を有していることを確認した。DNA配列は、3対のmAbが互いに同一であり、そのため8つのmAbの元のパネルがTNV14、TNV15、TNV148、及びTNV196で表される4つの別個のmAbのみを含有していることも明らかにした。mAbの推定アミノ酸配列の分析及びインビトロTNFα中和データの結果に基づいて、mAb TNV148及びTNV14を更なる試験のために選択した。
【0247】
TNV148重鎖の位置75(フレームワーク3)のプロリン残基がデータベース検索中同じサブグループの他のヒト抗体のその位置に見られなかったため、それを既知の生殖系列フレームワークe配列と一致させるために、部位特異的DNA変異誘発を行って、その位置にセリン残基をコード化した。セリン修飾mAbはTNV148Bと表記された。TNV148B及びTNV14の重鎖及び軽鎖可変領域をコード化するPCR増幅DNAを、別のヒトmAb(12B75)の最近クローニングされた重鎖及び軽鎖遺伝子に基づいた(国際公開第02/12500号として公開された、「IL-12 Antibodies,Compositions,Methods and Uses」と題される、2000年10月7日出願の米国特許出願第60/236,827号、参照により全体が本明細書に組み込まれる)、新しく調製した発現ベクター内にクローニングした。
【0248】
P3X63Ag8.653(653)細胞又はSp2/0-Ag14(Sp2/0)マウス骨髄腫細胞を、それぞれの重鎖及び軽鎖発現プラスミドでトランスフェクトし、高レベルの組換えTNV148B及びTNV14(rTNV148B及びrTNV14)mAbを生成する細胞株について2回のサブクローニングによりスクリーニングした。経時的なmAb産生の成長曲線及び安定性の評価は、653トランスフェクタントクローンC466D及びC466Cが使用済培養物において安定しておよそ125:g/mLのrTNV148B mAbを産生し、一方Sp2/0トランスフェクタント1.73-12-122(C467A)が使用済培養物において安定しておよそ25:g/mLのrTNV148B mAbを産生したことを示した。同様の分析が、Sp2/0トランスフェクタントクローンC476Aが使用済培養物において18:g/mLのrTNV14を産生したことを示した。
【0249】
序論。ヒトTNFα免疫化GenPharm/Medarexマウス(HCo12/KCo5遺伝子型)由来の8つのmAbのパネルは、ヒトTNFαに結合しかつ完全ヒトIgG1κアイソタイプを有することを前に示した。単純な結合アッセイを使用して、TNFαが組換えTNF受容体に結合するのを遮断する能力を評価することにより、本発明の例示的なmAbがTNFα中和活性を有する可能性があるかどうかを決定した。これらの結果、DNA配列結果、及びmAbのいくつかのインビトロ特徴付けに基づいて、更に特徴付けされるmAbとしてTNV148が選択された。
【0250】
TNV148 mAbをコードするDNA配列をクローニングし、好適な定常領域をコードする遺伝子発現ベクター内に合うように修飾し、充分に特徴付けされた653及びSp2/0マウス骨髄腫細胞内に導入し、結果として得られたトランスフェクトされた細胞株を、元のハイブリドーマ細胞株の40倍のmAbを産生するサブクローンが特定されるまでスクリーニングした。
【0251】
材料及び方法
試薬及び細胞。TRIZOL試薬はGibco BRLから購入した。プロテイナーゼKはSigma Chemical Companyから得た。逆転写酵素はLife Sciences,Inc.から得た。Taq DNAポリメラーゼはPerkin Elmer Cetus又はGibco BRLのいずれかから得た。制限酵素はNew England Biolabsから購入した。QIAquick PCR Purification KitはQiagenから得た。QuikChange Site-Directed Mutagenesis KitはStratageneから購入した。Wizardプラスミドミニプレップキット及びRNasinはPromegaからであった。OptiplatesはPackardから得た。125IodineはAmershamから購入した。カスタムオリゴヌクレオチドはKeystone/Biosource Internationalから購入した。この作業で使用したオリゴヌクレオチドの名称、識別番号、及び配列を表2に示す。
【0252】
表2.TNV mAb遺伝子をクローニング、操作又は配列決定するために使用されたオリゴヌクレオチド。
オリゴヌクレオチド5’14s及びHuH-J6によりコード化されるアミノ酸を配列の上に示す。「M」アミノ酸残基は翻訳開始コドンを表す。オリゴヌクレオチド5’14s及びHuH-J6の下線付き配列は、それぞれ、BsiWI及びBstBI制限部位を示す。HuH-J6の斜線はエクソン/イントロン境界に対応する。配列がマイナス鎖に対応するオリゴヌクレオチドは、3’-5’配向で書かれていることに留意する。
【0253】
【表3】
【0254】
653マウス骨髄腫細胞の凍結バイアルを1つ得た。バイアルをその日に解凍し、Tフラスコ中のIMDM、5%FBS、及び2mMグルタミン(培地)中で拡張させた。これらの細胞は、本明細書に記載される抗TNF DNAで2~3週間後にトランスフェクトされるまで、連続培養において維持された。解凍した5日後に培養物のいくつかを採取し、遠心分離によりペレット化し、95%FBS、5%DMSOに再懸濁し、30のバイアルに等分し、凍結し、後に使用するために保管した。同様に、Sp2/0マウス骨髄腫細胞の凍結バイアルを1つ得た。バイアルを解凍し、上述のように新しい凍結物(freeze-down)を調製し、凍結バイアルをCBCの冷凍庫ボックスAA及びAB内で保管した。これらの細胞を解凍し、本明細書に記載される全てのSp2/0トランスフェクションに使用した。
【0255】
受容体へのTNFの結合の阻害のためのアッセイ。TNV mAbを含有するハイブリドーマ細胞上清を使用して、mAbが組換えTNF受容体融合タンパク質p55-sf2への125I標識TNFαの結合を遮断する能力についてアッセイした(Scallonら(1995)「Cytokine」7:759~770)。37℃で1時間インキュベートする際に、PBS中0.5:g/mLで50:Lのp55-sf2をOptiplatesに添加してウェルをコーティングした。PBS/0.1%BSAを希釈剤として使用して、8つのTNV細胞上清の系列希釈を、96ウェル丸底プレートにおいて調製した。抗IL-18 mAbを含有する細胞上清が陰性対照として含まれ、cA2(抗TNFキメラ抗体、Remicade、米国特許第5,770,198号、参照により全体が本明細書に組み込まれる)でスパイクされた同じ抗IL-18上清が陽性対照として含まれた。最終TNFα濃度が5ng/mLとなるように、125I標識TNFα(58:Ci/:g,D.Shealy)を100:Lの細胞上清に添加した。混合物を室温で1時間プレインキュベートした。コーティングされたOptiplatesを洗浄して未結合のp55-sf2を除去し、50:Lの125I-TNFα/細胞上清混合物をOptiplatesに移した。室温で2時間後、PBS-Tweenで3回、Optiplatesを洗浄した。100:LのMicroscint-20を添加し、TopCount γ計数器を使用して結合したcpmを決定した。
【0256】
V遺伝子の増幅及びDNA配列分析。RNAの調製のために、ハイブリドーマ細胞をPBSで1回洗浄した後にTRIZOL試薬を添加した。7×10~1.7×10の細胞を1mLのTRIZOLに再懸濁した。200μLのクロロホルムの添加後に管を激しく振った。試料を4℃で10分間遠心分離した。水相を新しいmicrofuge管に移し、等量のイソプロパノールを添加した。管を激しく振り、室温で10分間インキュベートした。次いで、試料を4℃で10分間遠心分離した。ペレットを1mlの70%エタノールで1回洗浄し、真空乾燥機で短時間乾燥させた。RNAペレットを40μLのDEPC処理水で再懸濁した。RNA調製物の品質は、1%アガロースゲル中で0.5μLを分画することによって決定された。RNAは使用するまで-80℃の冷凍庫に保存した。
【0257】
重鎖及び軽鎖のcDNAを調製するために、11.5μLの容量に3μLのRNA及び1μgのオリゴヌクレオチド119(重鎖)又はオリゴヌクレオチド117(軽鎖)のいずれか(表1を参照のこと)を含む混合物を調製した。混合物を水浴中、70℃で10分間インキュベートし、次に氷上で10分間冷却した。2.5μLの10×逆転写酵素緩衝剤、10μLの2.5mM dNTP、1μLの逆転写酵素(20単位)、及び0.4μLのリボヌクレアーゼ阻害剤RNasin(1単位)から構成される別個の混合物を調製した。13.5μLのこの混合物を、11.5μLの冷RNA/オリゴヌクレオチド混合物に添加し、反応物を42℃で40分間インキュベートした。次に、cDNA合成反応物を、使用するまで-20℃の冷凍庫に保存した。
【0258】
未精製の重鎖及び軽鎖のcDNAをテンプレートとして使用して、可変領域コード配列をPCR増幅した。重鎖DNAの増幅をプライムする能力について、5つのオリゴヌクレオチド対(366/354、367/354、368/354、369/354、及び370/354、表1)を同時に試験した。軽鎖DNAの増幅をプライムする能力について、2つのオリゴヌクレオチド対(362/208及び363/208)を同時に試験した。総容量50μLにおいて2単位のPLATINUM(商標)高忠実度(HIFI)Taq DNAポリメラーゼを使用して、PCR反応を行った。各反応物は、2μLのcDNA反応物、10ピコモルの各オリゴヌクレオチド、0.2mMのdNTP、5μLの10×HIFI緩衝剤、及び2mMの硫酸マグネシウムを含んでいた。サーマルサイクラプログラムは、95℃で5分間、続いて30サイクル(94℃で30秒間、62℃で30秒間、68℃で1.5分間)であった。次に、68℃で10分間の最終インキュベーションを行った。
【0259】
直接DNA配列決定のためのPCR生成物を調製するために、製造業者のプロトコルに従い、QIAquick(商標)PCR Purification Kitを使用してそれらを精製した。50μLの減菌水を使用してスピンカラムからDNAを溶出させた後、真空乾燥機を使用して10μLの容量まで乾燥させた。次に、総容量20μLの、1μLの精製されたPCR生成物、10μMオリゴヌクレオチドプライマ、4μLのBigDye Terminator(商標)ready reaction mix、及び14μLの減菌水でDNA配列決定反応物を設定した。オリゴヌクレオチド対367/354で作製された重鎖PCR生成物は、オリゴヌクレオチドプライマ159及び360を用いて配列決定された。オリゴヌクレオチド対363/208で作製された軽鎖PCR生成物は、オリゴヌクレオチド34及び163を用いて配列決定された。配列決定用のサーマルサイクラプログラムは、25サイクル(96℃で30秒間、50℃で15秒間、60℃で4分間)、続いて4℃で一晩であった。反応生成物は、ポリアクリルアミドゲルを介して分画され、ABI 377 DNAシーケンサを使用して検出された。
【0260】
アミノ酸を変更するための部位特異的変異誘発。TNV148 mAbにおいてPro75をセリン残基に置き換えるために、TNV148重鎖可変領域DNA配列の単一ヌクレオチドを変更した。相補的オリゴヌクレオチド399及び400(表1)を設計し、製造業者により説明されるように、QuikChange(商標)部位特異的変異誘発法を使用して、この変更を起こさせた。15%ポリアクリルアミドゲルにより2つのオリゴヌクレオチドを最初に分画し、主要バンドを精製した。10ng又は50ngのいずれかのTNV148重鎖プラスミドテンプレート(p1753)、5μLの10×反応緩衝剤、1μLのdNTPミックス、125ngのプライマ399、125ngのプライマ400、及び1μLのPfu DNAポリメラーゼを使用して、変異誘発反応物を調製した。減菌水を添加して総容量を50μLにした。次に、反応混合物を、95℃で30秒間インキュベートするようにプログラムされたサーマルサイクラでインキュベートし、次に、95℃で30秒間、55℃で1分間、64℃で1分間、68℃で7分間、続いて30℃で2分間(1サイクル)の一連のインキュベーションで14回サイクルした。これらの反応物は、変異原性オリゴヌクレオチドを、その他の点では同一の新しく合成されたプラスミドに組み込むように設計された。元のTNV148プラスミドを除去するために、元のメチル化プラスミドのみを切断する1μLのDpnIエンドヌクレアーゼを添加した後、試料を37℃で1時間インキュベートした。次に、1μLの反応物を使用して、標準的な熱ショック方法によりEpicurian Coli XL1-Blueスーパーコンピテント大腸菌(E.coli))を形質転換し、LB-アンピシリン寒天プレート上で平板培養した後に形質転換された細菌を特定した。製造業者により説明されるWizard(商標)キットを使用して、プラスミドミニプレップを調製した。Wizard(商標)カラムから試料を溶出した後、エタノールでプラスミドDNAを沈殿させてプラスミドDNAを更に精製し、その後20μLの減菌水に再懸濁した。次に、DNA配列分析を行って、所望の塩基変更を有するプラスミドクローンを特定し、他の塩基変更が不注意にTNV148コード配列内に導入されなかったことを確認した。セクション4.3に記載される同じパラメータを使用して、1μLのプラスミドを、3μLのBigDyeミックス、1μLのpUC19フォワードプライマ、及び10μLの減菌水で調製されたサイクル配列決定反応物に供した。
【0261】
12B75遺伝子からの発現ベクターの構築。いくつかの組換えDNA工程を行って、前にクローニングされた12B75コード重鎖及び軽鎖遺伝子のゲノムコピーから、それぞれ、新しいヒトIgG1発現ベクター及び新しいヒトκ発現ベクターを調製した(これは、国際公開第02/12500号として公開された、IL-12 Antibodies,Compositions,Methods and Usesと題される、2000年10月7日出願の米国特許出願第60/236,827号に開示されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる)。最終ベクターは、任意の適切に設計されたPCR増幅可変領域で、既存の可変領域配列の簡単な一工程置換を可能にするように設計された。
【0262】
プラスミドp1560の12B75重鎖遺伝子を修飾するために、プロモータ及び可変領域を含有する6.85kbのBamHI/HindIII断片をp1560からpUC19に移してp1743を作製した。p1560と比較してサイズがより小さいこのプラスミドは、製造業者のプロトコルに従い、翻訳開始部位のすぐ上流に固有のBsiWIクローニング部位を導入するための、QuikChange(商標)変異誘発の使用(オリゴヌクレオチドBsiWI-1及びBsiWI-2を使用する)を可能にした。結果として得られたプラスミドはp1747と呼ばれた。BstBI部位を可変領域の3’端に導入するために、5’オリゴヌクレオチドプライマはSalI及びBstBI部位で設計された。このプライマをpUCリバースプライマと共に使用してp1747から2.75kbの断片を増幅した。次に、この断片を12B75可変領域の自然に生じるSalI部位及びHindIII部位にクローニングして戻し、それにより固有のBstB1部位を導入した。p1750と表記される結果として得られた中間ベクターは、BsiWI及びBstBI端を有する可変領域断片を受容することができた。定常領域も12B75遺伝子に由来する重鎖ベクターのバージョンを調製するために、p1750のBamHI-HindIIIインサートは、HindIII部位の下流にEcoRI部位を有するためにpBR322に移された。次に、結果として得られたプラスミドp1768を、HindIII及びEcoRIで消化し、p1560からpBCに大きなBamHI-BamHI断片をクローニングすることによって得られたサブクローンであるp1744からの5.7kbのHindIII EcoRI断片にライゲートした。次に、結果として得られたプラスミドp1784は、BsiWI及びBstBI端を有するTNV Ab cDNA断片のベクターとして使用された。追加の作業は、12B75遺伝子からのIgG1定常領域を含み、12B75重鎖J-Cイントロンをどの程度含有するかによって互いに異なる、発現ベクターp1788及びp1798を調製するために行われた。
【0263】
プラスミドp1558の12B75軽鎖遺伝子を修飾するために、12B75プロモータ及び可変領域を含有する5.7kbのSalI/AflII断片を、p1558からプラスミドL28のXhoI/AflII部位に移した。この新しいプラスミドp1745は、変異誘発工程のためのより小さなテンプレートを提供した。オリゴヌクレオチド(C340salI及びC340sal2)を使用して、QuikChange(商標)変異誘発により、可変領域の5’端に固有のSalI制限部位を導入した。結果として得られた中間ベクターp1746は、可変領域断片がクローニングされ得る固有のSalI及びAflII制限部位を有していた。p1746にクローニングされた任意の可変領域断片は、軽鎖遺伝子の3’半分と結合されることが好ましいであろう。この目的のために使用され得る12B75軽鎖遺伝子の3’半分からの制限断片を調製するために、オリゴヌクレオチドBAHN-1及びBAHN-2を互いにアニールして、制限部位BsiW1、AflII、HindII、及びNotIを含有し、KpnI及びSacI部位にライゲートされ得る端部を含有する二本鎖リンカを形成した。このリンカをpBCのKpnI部位とSacI部位との間にクローニングして、プラスミドp1757を得た。p1558をAflIIで消化した後、HindIIIで部分的に消化することにより生成された、12B75軽鎖定常領域を含有する7.1kbの断片を、p1757のAflII部位とHindII部位との間にクローニングしてp1762を得た。この新しいプラスミドは、プロモータ及び可変領域を含有するBsiWI/AflII断片が遺伝子の2つの半分を結合して移入できるBsiWI及びAflIIの固有の部位を含有していた。
【0264】
発現プラスミドのcDNAクローニング及びアセンブリ。DNA端部を更に埋めるために、全てのRT-PCR反応物(上記を参照のこと)をKlenow酵素で処理した。重鎖PCR断片を制限酵素BsiWI及びBstBIで消化した後、プラスミドL28(12B75系中間ベクターp1750は未だ調製されていなかったため、L28を使用した)のBsiWI部位とBstBI部位との間にクローニングした。クローニングされたインサートのDNA配列分析は、結果として得られたコンストラクトが正しく、PCR増幅中に誤差が導入されなかったことを示した。これらのL28プラスミドコンストラクト(TNV14、TNV15、TNV148、TNV148B、及びTNV196)に割り当てられた識別番号を表3に示す。
【0265】
TNV14、TNV148、及びTNV148B重鎖のBsiWI/BstBIインサートは、L28ベクターから新しく調製された中間ベクターp1750に移された。これらの中間プラスミドに割り当てられた識別番号を表2に示す。このクローニング工程及び後続の工程は、TNV15及びTNV196には行われなかった。次に、可変領域は、2つの異なるヒトIgG1発現ベクター内に移された。制限酵素EcoRI及びHindIIIを使用して、可変領域を、Centocorの以前使用されたIgG1ベクターp104内に移した。Gm(f+)アロタイプのIgG1をコードする、結果として得られた発現プラスミドは、p1781(TNV14)、p1782(TNV148)、及びp1783(TNV148B)と表記された(表2を参照のこと)。可変領域は、12B75(GenPharm)遺伝子に由来するIgG1定常領域の上流にもクローニングされた。G1m(z)アロタイプのIgG1をコードするこれらの発現プラスミドも表3に列記される。
【0266】
表3.様々な重鎖及び軽鎖プラスミドのプラスミド識別番号。
L28ベクター又はpBCベクターは、初期のAb cDNAクローンを表す。これらのプラスミドのインサートは、中間プラスミドを作製するために不完全な12B75系ベクターに移された。1つの追加の移動工程により、線形化された後に細胞に導入されたか、又は細胞のトランスフェクション前にmAb遺伝子インサートを精製するために使用されたかのいずれかであった最終発現プラスミドがもたらされた。ND=実施せず。
【0267】
【表4】
【0268】
軽鎖PCR生成物を制限酵素SalI及びSacIIで消化した後、プラスミドpBCのSalI部位とSacII部位との間にクローニングした。1つのアミノ酸で異なる2つの異なる軽鎖バージョンは、p1748及びp1749と表記された(表2)。DNA配列分析により、これらのコンストラクトが正しい配列を有することが確認された。次に、p1748及びp1749のSalI/AflII断片を、中間ベクターp1746のSalI部位とAflII部位との間にクローニングして、それぞれp1755及びp1756を作製した。次に、軽鎖遺伝子のこれらの5’等分を、BsiWI/AflII断片をp1755及びp1756から新しく調製されたコンストラクトp1762に移すことにより遺伝子の3’等分に結合し、それぞれ最終発現プラスミドp1775及びp1776を作製した(表2)。
【0269】
細胞のトランスフェクション、スクリーニング及びサブクローニング。合計15のマウス骨髄腫細胞のトランスフェクションを様々なTNV発現プラスミドで行った(結果及び考察セクションの表3を参照のこと)。これらのトランスフェクションは、(1)宿主細胞がSp2/0又は653であるか、(2)重鎖定常領域がCentocorの以前のIgG1ベクター又は12B75重鎖定常領域でコード化されたか、(3)mAbがTNV148B、TNV148、TNV14、又は新しいHC/LCの組み合わせであったか、(4)DNAが、線形化プラスミド又は精製されたAb遺伝子インサートであるかどうか、及び(5)重鎖遺伝子における完全なJ-Cイントロン配列が存在又は不在であるかどうかにより区別された。加えて、トランスフェクションのいくつかは、多数のクローンをスクリーニングすることができる可能性を増大させるために繰り返された。
【0270】
Sp2/0細胞及び653細胞は各々、前に記載された標準条件下で(Knight DMら(1993)「Molecular Immunology」30:1443~1453)、エレクトロポレーションにより重鎖及び軽鎖DNA(それぞれ8~12:g)の混合物でトランスフェクトされた。トランスフェクション番号1、2、3、及び16に関して、トランスフェクション前に制限酵素で消化することにより、適切な発現プラスミドが線形化された。例えば、SalI及びNotI制限酵素は、それぞれTNV148B重鎖プラスミドp1783及び軽鎖プラスミドp1776を線形化するために使用された。残りのトランスフェクションに関して、BamHIで重鎖プラスミドを、そしてBsiWI及びNotIで軽鎖プラスミドを消化することにより、mAb遺伝子のみを含有するDNAインサートをプラスミドベクターから分離した。次に、アガロースゲル電気泳動及びQiex精製樹脂により、mAb遺伝子インサートを精製した。精製された遺伝子インサートでトランスフェクトされた細胞は、選択マーカ源として、3~5:gのPstI線形化pSV2gptプラスミド(p13)で同時にトランスフェクトされた。エレクトロポレーション後に、96ウェル組織培養皿中のIMDM、15%FBS、2mMグルタミン中に細胞を播種し、5%COのインキュベータにおいて、37℃でインキュベートした。2日後、等量のIMDM、5%FBS、2mMグルタミン、2×MHX選択物(1×MHX=0.5:g/mLのマイコフェノール酸、2.5:g/mLのヒポキサンチン、50:g/mLのキサンチン)を添加し、コロニが形成される間、更に2~3週間プレートをインキュベートした。
【0271】
コロニを有するウェルから回収された細胞上清を、記載されるようにELISAによりヒトIgGについてアッセイした。簡潔に言うと、ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG Fc断片でコーティングされた96ウェルEIAプレート内で、様々な希釈の細胞上清をインキュベートした後、アルカリホスファターゼ抱合ヤギ抗ヒトIgG(H+L)及び適切な色基質を使用して結合ヒトIgGを検出した。細胞上清において測定された同じ精製されたmAbを標準として使用した標準曲線は、上清中のヒトIgGの定量化を可能にするために各EIAプレートに含まれた。最もヒトIgGを生成しているように見えたそれらのコロニ中の細胞を、使用済培養物における更なる生成判断のために24ウェルプレート内に継代し、生成が最も高い親クローンを特定した。
【0272】
生成が最も高い親クローンをサブクローニングして、生成がより高いサブクローンを特定し、より均質な細胞株を調製した。96ウェル組織培養プレートに、IMDM、5%FBS、2mMグルタミン、1×MHXの、ウェル当たり1つの細胞又はウェル当たり4つの細胞を播種し、コロニが現れるまで、12~20日間、5%COインキュベータにおいて37℃でインキュベートした。ウェル当たり1つのコロニを含有するウェルから細胞上清を回収し、上述のようにELISAにより分析した。選択したコロニを24ウェルプレートに継代し、培養物を消耗させた後、それらの上清におけるヒトIgGレベルを定量化することにより、生成が最も高いサブクローンを特定した。このプロセスは、選択された初回のサブクローンを2回目のサブクローニングに供したときに繰り返された。2回目の最良のサブクローンを開発の細胞株として選択した。
【0273】
細胞サブクローンの特徴付け。2回目の最良のサブクローンを選択し、成長曲線を行って、mAbの生成レベル及び細胞成長特徴を評価した。T75フラスコに、30mLのIMDM、5%FBS、2mMグルタミン、及び1×MHX(又は無血清培地)中1×10細胞/mLで播種した。300μLのアリコートを24時間間隔で取り出し、生細胞密度を測定した。生細胞数が1×10細胞/mL未満になるまで分析を継続した。回収された細胞上清のアリコートは、存在する抗体の濃度についてアッセイされた。標準としてrTNV148B又はrTNV14 JG92399を使用して、ELISAアッセイを行った。ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG FcでコーティングされたELISAプレート上で試料を1時間インキュベートし、結合mAbを、1:1000希釈のアルカリホスファターゼ抱合ヤギ抗ヒトIgG(H+L)で検出した。
【0274】
様々な量のMHX選択物の存在下での成長速度を比較する目的のため、2つの細胞株について異なる成長曲線分析も行われた。細胞株C466A及びC466Bを、無MHX培地(IMDM、5%FBS、2mMグルタミン)に解凍し、更に2日間培養した。その後、両細胞培養物を、MHX無し、0.2×MHX、又は1×MHX(1×MHX=0.5:g/mLのマイコフェノール酸、2.5:g/mLのヒポキサンチン、50:g/mLのキサンチン)のいずれかを含有する3つの培養物に分けた。1日後、新しいT75フラスコに、1×10細胞/mLの開始密度で培養物を播種し、細胞を1週間、24時間間隔で計数した。mAb生成のためのアリコートは回収されなかった。SOP PD32.025に提供される式を使用して、これらの試料についての倍加時間を算出した。
【0275】
経時的なmAb生成の安定性を評価するために、追加の試験が行われた。MHX選択物を有する、又は有しないのいずれかで、24ウェルプレート中のIMDM、5%FBS、2mMグルタミン中で培養物を成長させた。培養物がコンフルエントになったら、新しい培養物に分割し、その後、古い培養物は消耗させた。この時、上清のアリコートを取り、4℃で保存した。55~78日の期間にわたって、アリコートを取り出した。この期間の終了時に、上に概説するように、抗ヒトIgG Fc ELISAにより、存在する抗体の量について上清を試験した。
【0276】
結果及び考察
組換え受容体へのTNF結合の阻害
ハイブリドーマ細胞上清に含有される8つのTNV mAbが、受容体へのTNFα結合を阻害することができるかどうかを決定するために、簡単な結合アッセイが行われた。ヒトIgGの標準ELISA分析により、それぞれの細胞上清におけるTNV mAbの濃度を最初に決定した。次に、組換えp55TNF受容体/IgG融合タンパク質p55-sf2をEIAプレート上にコーティングし、様々な量のTNV mAbの存在下で、125I標識TNFαをp55受容体に結合させた。図1に示すように、8つのTNV mAbのうちの1つ(TNV122)を除く全てが、p55受容体へのTNFαの結合を効率的に遮断した。実際、TNV mAbは、陰性対照ハイブリドーマ上清にスパイクされたcA2陽性対照mAbよりもTNFα結合を阻害するのにより有効であるように見えた。これらの結果は、TNV mAbが細胞系アッセイ及びインビボでTNFαの生物活性を遮断する可能性が高く、したがって、追加の分析が必要であることを示すと解釈された。
【0277】
DNA配列の分析
RNAがヒトmAbをコードすることの確認
受容体結合アッセイにおいてTNFα遮断活性を示した7つのTNV mAb(TNV14、TNV15、TNV32、TNV86、TNV118、TNV148、及びTNV196)を特徴付ける際の最初の工程として、これらのmAbを産生する7つのハイブリドーマ細胞株から全RNAを単離した。次に、各RNA試料を使用して、各mAbの完全なシグナル配列、完全な可変領域配列、及び定常領域配列の一部を含むヒト抗体重鎖又は軽鎖cDNAを調製した。次に、これらのcDNA生成物をPCR反応で増幅させ、最初に断片をクローニングすることなくPCR増幅DNAを直接配列決定した。配列決定した重鎖cDNAは、マウスに存在する5つのヒト生殖系列遺伝子のうちの1つであるDP-46と>90%同一であった(図2)。同様に、配列決定した軽鎖cDNAは、マウスに存在するヒト生殖系列遺伝子のうちの1つと100%又は98%のいずれかと同一であった(図3)。これらの配列結果は、cDNAに転写され配列決定されたRNA分子がヒト抗体重鎖及びヒト抗体軽鎖をコード化したことを確認した。可変領域がシグナル配列コード配列の5’端にマッピングされるオリゴヌクレオチドを使用してPCR増幅されたため、シグナル配列の最初の数個のアミノ酸は元のTNV翻訳生成物の実際の配列ではない可能性があるが、組換えTNV mAbの実際の配列を表すことに留意するべきである。
【0278】
固有の中和mAb
各mAbの重鎖及び軽鎖両方の可変領域全体のcDNA配列の分析は、TNV32がTNV15と同一であり、TNV118がTNV14と同一であり、TNV86がTNV148と同一であることを明らかにした。受容体結合アッセイの結果は、DNA配列分析と一致していた、すなわち、TNV86及びTNV148の両方が、TNF結合の遮断においてTNV118及びTNV14の両方よりもおよそ4倍良好であった。したがって、後続の作業は、4つの固有のTNV mAbである、TNV14、TNV15、TNV148、及びTNV196にのみ焦点を当てた。
【0279】
4つのmAbの関連性
DNA配列結果は、4つのTNV mAbの重鎖をコードする遺伝子が全て互いに高度に相同であり、全てが同じ生殖系列遺伝子DP-46に由来するように見えることを明らかにした(図2)。加えて、重鎖CDR3配列の各々が非常に類似し、同じ長さのものであること、及びそれらが全てJ6エクソンを使用することを理由に、それらは、単一のVDJ遺伝子再配列事象、続く各mAbを固有のものにする体細胞変化から生じたと思われた。DNA配列分析は、4つのmAbにおいて2つの別個の軽鎖遺伝子のみが存在したことを明らかにした(図3)。TNV14及びTNV15における軽鎖可変領域コード配列は、互いに同一であり、ヒトκ鎖のVg/38Kファミリーの代表的な生殖系列配列と同一である。TNV148及びTNV196軽鎖コード配列は、互いに同一であるが、2つのヌクレオチド位置での生殖系列配列が異なる(図3)。
【0280】
4つのmAbの推定アミノ酸配列は、実際のmAbの関連性を明らかにした。4つのmAbは、4つの別個の重鎖(図4)を含有するが、別個の軽鎖は2つのみである(図5)。TNV mAb配列と生殖系列配列との間の差異は、大半はCDRドメインに限定されていたが、mAb重鎖のうちの3つもフレームワーク領域において生殖系列配列とは異なっていた(図4)。DP-46生殖系列コードAbフレームワーク領域と比較して、TNV14は同一であり、TNV15は1つのアミノ酸が異なり、TNV148は2つのアミノ酸が異なり、TNV196は3つのアミノ酸が異なっていた。
【0281】
cDNAのクローニング、部位特異的変異誘発、及び最終発現プラスミドのアセンブリ。cDNAのクローニング。PCR増幅可変領域のDNA配列に基づいて、クローニングされるコード配列を発現ベクター内に適応させる目的のため、新しいオリゴヌクレオチドは別のPCR増幅を行うように命じられた。重鎖の場合、この2回目のPCRの生成物は制限酵素BsiWI及びBstBIで消化され、プラスミドベクターL28(表2に示されるプラスミド識別番号)にクローニングされた。軽鎖の場合、2回目のPCR生成物はSalI及びAflIIで消化され、プラスミドベクターpBCにクローニングされた。次に、個々のクローンを配列決定して、それらの配列が、異種の可能性のある分子集団の各位置での最も豊富なヌクレオチドを明らかにするPCR生成物の直接配列決定から得られた前回の配列と同一であることを確認した。
【0282】
TNV148を変化させる部位特異的変異誘発。mAb TNV148及びTNV196は、TNFα生理活性の中和において、次に最良のmAb(TNV14)よりも4倍強力であることが一貫して観察された。しかしながら、上述のように、TNV148及びTNV196重鎖フレームワーク配列は、生殖系列フレームワーク配列とは異なる。TNV148重鎖配列と他のヒト抗体との比較は、多くの他のヒトmAbがフレームワーク1の位置28でIle残基を含有し(成熟配列のみ計数)、一方でフレームワーク3の位置75でのPro残基は、その位置では稀なアミノ酸であったことを示した。
【0283】
TNV196重鎖の類似の比較は、フレームワーク3で生殖系列配列とは異なる3つのアミノ酸がヒトmAbにおいて希であり得ることを示唆した。これらの差異は、ヒトに投与された場合、TNV148及びTNV196を免疫原性にする可能性があった。TNV148は、関心のアミノ酸残基を1個しか有しておらず、この残基はTNFα結合に重要ではないと考えられているため、部位特異的変異誘発技術を使用して、生殖系列Ser残基が位置75でPro残基の代わりにコード化されるように、TNV148重鎖コード配列(プラスミドp1753の)の単一のヌクレオチドを変更した。結果として得られたプラスミドはp1760と呼ばれた(表2を参照のこと)。結果として得られた遺伝子及びmAbは、それを元のTNV148遺伝子及びmAbと区別するためにTNV148Bと呼ばれた(図5を参照のこと)。
【0284】
最終発現プラスミドのアセンブリ。ゲノム断片として前にクローニングされた12B75重鎖及び軽鎖遺伝子に基づいた新しい抗体発現ベクターを調製した。異なるTNV発現プラスミドが調製されたが(表2を参照のこと)、それぞれの場合において、5’フランキング配列、プロモータ、及びイントロンエンハンサは、それぞれの12B75遺伝子に由来した。軽鎖発現プラスミドに関して、完全なJ-Cイントロン、定常領域コード配列、及び3’フランキング配列も12B75の軽鎖遺伝子に由来した。最終生成細胞株(p1781及びp1783、以下を参照のこと)をもたらした重鎖発現プラスミドに関して、ヒトIgG1定常領域コード配列は、Centocorの前に使用された発現ベクター(p104)に由来した。重要なことには、ここで報告される最終生成細胞株は、元のハイブリドーマ由来TNV mAb(G1m(z))とは異なるアロタイプ(Gm(f+))のTNV mAbを発現する。これは、GenPharmマウスに由来する12B75重鎖遺伝子はCH1ドメインのC末端部でArg残基をコードするが、CentocorのIgG1発現ベクターp104はその位置でLys残基をコードするためである。J-Cイントロン、完全定常領域コード配列、及び3’フラランキング配列が12B75重鎖遺伝子に由来する他の重鎖発現プラスミド(例えば、p1786及びp1788)が調製されたが、これらの遺伝子でトランスフェクトされた細胞株は、生成細胞株として選択されなかった。ベクターは、最終発現プラスミドをもたらす後のPCR増幅V領域の一工程クローニングを可能にするように慎重に設計された。
【0285】
PCR増幅可変領域cDNAは、L28又はpBCベクターから、プロモータ領域及びJ-Cイントロンの一部を提供する中間段階の12B75系ベクターに移された(プラスミド識別番号に関しては表2を参照のこと)。次に、抗体遺伝子の5’半分を含有する制限断片を、これらの中間段階のベクターから、それぞれの遺伝子の3’半分を提供する最終発現ベクターに移して、最終発現プラスミド(プラスミド識別番号に関しては表2を参照のこと)を形成した。
【0286】
細胞のトランスフェクション及びサブクローニング。発現プラスミドは、制限消化によって線形化されたか、又は各プラスミド中の抗体遺伝子インサートがプラスミド骨格鎖から精製されたかのいずれかであった。Sp2/0及び653マウス骨髄腫細胞は、エレクトロポレーションにより重鎖DNA及び軽鎖DNAでトランスフェクトされた。15の異なるトランスフェクションが行われ、そのほとんどはAbで規定されるように固有であり、遺伝子が線形化された全プラスミド又は精製された遺伝子インサート上にあるかどうかに関わらずAb遺伝子の特定の特徴であり、宿主細胞株であった(表4に要約される)。マイコフェノール酸に耐性のクローンからの細胞上清を、ヒトIgGの存在についてELISAによりアッセイし、精製されたrTNV148Bを参照標準曲線として使用して定量化した。
【0287】
産生が最も高いrTNV148B細胞株
rTNV148Bトランスフェクション2からの、産生が最高の653親株のうちの10(使用済24ウェル培養物において5~10:g/mLを産生)をサブクローニングして、産生がより高い細胞株についてスクリーニングし、より均質な細胞集団を調製した。親株2.320、2.320-17、及び2.320-20のサブクローンのうちの2つは、使用済24ウェル培養物においておよそ50:g/mLを産生し、これは、それらの親株に対して5倍の増加であった。サブクローニングした株2.320-17及び2.320-20の2回目のサブクローニングがもたらした。
【0288】
各mAbをコードする重鎖及び軽鎖プラスミドの識別番号を示す。精製されたmAb遺伝子インサートで行われたトランスフェクションの場合、gpt選択マーカの供給源としてプラスミドp13(pSV2gpt)が含まれた。重鎖定常領域は、Remicadeをコードするために使用された同じヒトIgG1発現ベクター(「旧」)又は12B75(GenPharm/Medarex)重鎖遺伝子内に含有される定常領域(「新規」)のいずれかによりコード化された。H1/L2は、TNV14重鎖及びTNV148軽鎖で構成される「新規」mAbを指す。プラスミドp1783及びp1801は、それらの重鎖遺伝子がJ-Cイントロンをどの程度含有するかによってのみ異なる。細胞クローンの遺伝子名の最初の数字を定義するトランスフェクション番号は右側に示される。本明細書に記載されるrTNV148B生成細胞株C466(A、B、C、D)及びC467Aは、それぞれトランスフェクション番号2及び1に由来した。rTNV14生成細胞株C476Aはトランスフェクション番号3に由来した。
【0289】
【表5】
【0290】
使用済の24ウェル培養上清でのELISAアッセイは、これらの2回目のサブクローンが全て98~124:g/mLを産生したことを示し、これは初回のサブクローンに対して少なくとも2倍の増加であった。これらの653細胞株に、表5に示されるように、Cコード表記を割り当てた。
【0291】
rTNV148Bトランスフェクション1からの生成が最高のSp2/0親株のうちの3つをサブクローニングした。親株1.73の2回のサブクローニングは、使用済24ウェル培養物において25:g/mLを産生したクローンの特定につながった。このSp2/0細胞株をC467Aと表記した(表5)。
【0292】
産生が最も高いrTNV14細胞株
rTNV14トランスフェクション3からの生成が最高のSp2/0親株のうちの3つを1回サブクローニングした。サブクローン3.27-1は、産生が19:g/mLであり、使用済の24ウェル培養物において最も高い生産体であることが分かった。この細胞株をC476Aと表記した(表5)。
【0293】
表5.選択された生成細胞株及びそれらのCコードの要約。
元のクローン名の最初の1桁は、細胞株がどのトランスフェクションに由来するかを示す。本明細書に報告されるCコード細胞株の全てが制限酵素で線形化された重鎖及び軽鎖全プラスミドでのトランスフェクションに由来した。
【0294】
【表6】
【0295】
サブクローニングされた細胞株の特徴付け
細胞株の成長特徴をより慎重に特徴付けし、大規模でmAb生成レベルを決定するために、T75培養物を使用して成長曲線分析を行った。結果は、細胞株の4つのC466シリーズの各々が1.0×10~1.25×10細胞/mLのピーク細胞密度及び110~140:g/mLの最大mAb蓄積レベルに達したことを示した(図7)。対照的に、生成が最高のSp2/0サブクローンC467Aは、2.0×10細胞/mLのピーク細胞密度及び25:g/mLの最大mAb蓄積レベルに達した(図7)。成長曲線分析は、rTNV14-生成細胞株C476Aに対して行われなかった。
【0296】
更なる成長曲線分析を行って、異なる濃度のMHX選択物における成長速度を比較した。この比較は、MHXの不在下で培養されたC466細胞が、通常量のMHX(1×)で培養された同じ細胞よりも速く成長しているように思われる近年の観測によって促された。マイコフェノール酸などの化合物の細胞傷害性濃度は数桁の大きさ以上に測定される傾向にあるため、より低い濃度のMHXを使用することにより、mAb生成の安定性を犠牲にすることなく細胞の倍加時間を大幅に速くし得ることが可能であると考えられた。細胞株C466A及びC466Bは、MHX無し、0.2×MHX、又は1×MHXのいずれかで培養された。生細胞の計数は、7日間、24時間間隔で行われた。結果により、MHX濃度依存性細胞成長率が明らかになった(図8)。細胞株C466Aは、1×MHXにおいて25.0時間の倍加時間を示したが、MHX無しではわずか20.7時間の倍加時間を示した。同様に、細胞株C466Bは、1×MHXにおいて32.4時間の倍加時間を示したが、MHX無しではわずか22.9時間の倍加時間を示した。重要なことには、0.2×MHXにおける両細胞株の倍加時間は、1×MHXよりもMHX無しで観察されたものとより類似していた(図8)。この観測は、倍加時間が重要なパラメータであるバイオリアクタにおいて、増強された細胞性能がより少ないMHXを使用することにより実現され得る可能性を示す。しかしながら、安定性試験結果(以下を参照のこと)は、細胞株C466DがMHXの不在下でも少なくとも60日間、rTNV148Bを安定して生成することが可能であることを示唆するが、安定性試験はまた、MHXの不在と比較して、細胞がMHXの存在下で培養されたとき、より高いmAb生成レベルも示した。
【0297】
およそ60日の期間にわたって様々な細胞株からのmAbの生成を評価するために、MHX選択物を含有する又は含有しない、いずれかの培養物で安定性試験を行った。細胞株の全てが高mAb生成を維持したわけではなかった。培養のちょうど2週間後、クローンC466Aの生成は試験開始時よりもおよそ45%少なかった。クローンC466Bからの生成も大幅に低下したように思われた。しかしながら、クローンC466C及びC466Dは、かなり安定した生成を維持し、C466Dは最も高い絶対生成レベルを示した(図9)。
【0298】
結論
ヒトTNFαに対する8つのヒトmAbの初期パネルから、タンパク質配列及びTNF中和効力を含むいくつかの基準に基づいて、TNV148B並びにTNV14が好ましいものとして選ばれた。100:g/mL超のrTNV148B及び19:g/mL超のrTNV14を産生する細胞株を調製した。
【0299】
実施例5:単回ボーラス注射を使用した抗TNF抗体及び対照を使用した関節炎マウスの試験
およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき9つの処置群のうちの1つに割り当て、DulbeccoのPBS(D-PBS)、又は1mg/kg若しくは10mg/kgのいずれかの本発明の抗TNF抗体(TNV14、TNV148、又はTNV196)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。
【0300】
結果:体重を投与前からの変化として分析したとき、10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験を通してD-PBSで処置した動物よりも一貫して高い体重増加を示した。この体重増加は、3~7週目で有意であった。10mg/kgのTNV148で処置した動物も、試験の7週目に有意な体重増加を達成した。(図10を参照されたい)。
【0301】
図11A図11Cは、関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、3週目から始まり、残りの試験(7週目)を通して継続して、D-PBS対照群よりも低かった。1mg/kgのTNV14で処置した動物及び1mg/kgのcA2で処置した動物は、D-PBS処置群と比較したとき、3週目以降のAIにおいて有意な減少を示すことができなかった。各々を類似の用量のその他のものと比較したとき(10mg/kgのTNV14、148及び196と比較した10mg/kgのcA2)、10mg/kgの処置群の間に有意差はなかった。1mg/kgの処置群を比較したとき、1mg/kgのTNV148は、1mg/kgのcA2よりも3、4及び7週目で有意に低いAIを示した。1mg/kgのTNV148も、1mg/kgのTNV14で処置した群よりも3及び4週目で有意に低かった。TNV196は試験の6週目までAIにおいて有意な減少を示したが(D-PBSで処置した群と比較したとき)、TNV148はこの試験の終了時に有意のままであった唯一の1mg/kg処置群であった。
【0302】
実施例6:複数ボーラス投与として抗TNF抗体及び対照を使用した関節炎マウスの試験
およそ4週齢のTg197試験マウスを体重に基づき8つの処置群のうちの1つに割り当て、対照品(D-PBS)、又は3mg/kgの抗体(TNV14、TNV148)(0週目)の腹腔内ボーラス投与で処置した。注射は1、2、3、及び4週目に全ての動物において繰り返された。群1~6は、試験品の有効性に関して評価された。群7及び8の動物から得られた血清試料は、2、3及び4週目のTNV14又はTNV148の免疫応答誘導及び薬物動態クリアランスに関して評価された。
【0303】
結果:体重を投与前からの変化として分析したとき、有意差は認められなかった。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験を通してD-PBSで処置した動物よりも一貫して高い体重増加を示した。(図12を参照されたい)。
【0304】
図13A図13Cは、関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2で処置した群の関節炎指数は、2週目から始まり、残りの試験全体を通して(5週目)継続してD-PBS対照群よりも有意に低かった。1mg/kg又は3mg/kgのcA2で処置した動物及び3mg/kgのTNV14で処置した動物は、d-PBS対照群と比較したときに、試験を通して任意の時点でAIにおいて任意の有意な減少を達成することができなかった。3mg/kgのTNV148で処置した動物は、d-PBSで処置した群と比較したとき、3週目から始まり、5週目まで継続する有意な減少を示した。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験の4及び5週目でより低い用量の両cA2(1mg/kg及び3mg/kg)と比較したとき、AIにおいて有意な減少を示し、また3~5週目で、TNV14で処置した動物よりも有意に低かった。3mg/kgの処置群のいずれかの間に有意差はなかったようだが、3mg/kgのTNV14で処置した動物に関するAIは、ある時点で10mg/kgよりも有意に高く、一方TNV148で処置した動物は、10mg/kgのcA2で処置した動物と有意に異ならなかった。
【0305】
実施例7:単回腹腔内ボーラス投与として抗TNF抗体及び対照を使用した関節炎マウスの試験
およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき6つの処置群のうちの1つに割り当て、3mg/kg又は5mg/kgのいずれかの抗体(cA2又はTNV148)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。この試験は、D-PBS及び10mg/kgのcA2対照群を利用した。
【0306】
体重を投与前からの変化として分析したとき、全ての処置は似たような体重増加を達成した。3又は5mg/kgのTNV148又は5mg/kgのcA2のいずれかで処置した動物は、試験の早期(2及び3週目)に体重量が有意に増加した。TNV148で処置した動物のみが後の時点において有意な体重増加を維持した。3及び5mg/kgのTNV148で処置した動物はどちらも、7週目で有意を示し、3mg/kgのTNV148で処置した動物は注射の8週間後に尚も有意に上昇した。(図14を参照されたい)。
【0307】
図15は、関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。全ての処置群が初期の時点で多少の保護作用を示し、5mg/kgのcA2及び5mg/kgのTNV148は、1~3週目にAIにおいて有意な減少を示し、全ての処置群が2週目で有意な減少を示した。試験の後期に、5mg/kgのcA2で処置した動物は多少の保護作用を示し、4、6及び7週目で有意に減少した。低用量(3mg/kg)のcA2及びTNV148は両方とも、6週目で有意な減少を示し、全ての処置群が7週目で有意な減少を示した。試験の終わりで(8週目)有意な減少を維持することができた処置群はなかった。任意の時点で処置群のいずれかの間(食塩水対照群は除く)に有意差はなかった。
【0308】
実施例8:抗TNF抗体と修飾された抗TNF抗体との間の単回腹腔内ボーラス投与として抗TNF抗体及び対照を使用した関節炎マウスの試験
TNV148(ハイブリドーマ細胞に由来する)及びrTNV148B(トランスフェクトした細胞に由来する)の単回腹腔内投与の有効性を比較するために。およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき9つの処置群のうちの1つに割り当て、Dulbecco=S PBS(D-PBS)、又は1mg/kgの抗体(TNV148、rTNV148B)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。
【0309】
体重を投与前からの変化として分析したとき、10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験を通してD-PBSで処置した動物よりも一貫して高い体重増加を示した。この体重増加は、1週目及び3~8週目で有意であった。1mg/kgのTNV148で処置した動物も、試験の5、6及び8週目に有意な体重増加を達成した。(図16を参照されたい)。
【0310】
図17は、関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、4週目から始まり、残りの試験(8週目)を通して継続するD-PBS対照群よりも低かった。TNV148で処置した群及び1mg/kgのcA2で処置した群は両方とも、4週目でAIにおける有意な減少を示した。以前の試験(P-099-017)は、TNV148が単回の1mg/kgの腹腔内ボーラス後の関節炎指数の減少にわずかにより効果的であることを示したが、この試験では、両バージョンのTNV抗体で処置した群からのAIがわずかに高いことを示した。1mg/kgのcA2で処置した群(6週目を除く)は、10mg/kgのcA2群と比較したとき、有意に増加せず、TNV148で処置した群は、7及び8週目で有意に高かったが、1mg/kgのcA2、1mg/kgのTNV148及び1mg/kgのTNV148Bの間には試験の任意の時点でAIにおいて有意差はなかった。
【0311】
実施例9:強直性脊椎炎の治療又は予防のための抗TNF抗体
概要
活動性強直性脊椎炎を有する対象において静脈内投与される抗TNFαモノクローナル抗体ゴリムマブの多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験。
【0312】
SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)は、免疫グロブリンG1(IgG1)重鎖アイソタイプ(G1m[z]アロタイプ)及びκ軽鎖アイソタイプを有する完全ヒトモノクローナル抗体である。ゴリムマブは、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する。ゴリムマブの分子量は、149,802~151,064ダルトンの範囲である。ゴリムマブは、高い親和性及び特異性でヒト腫瘍壊死因子α(TNFα)に結合し、TNFα生物活性を中和する。
【0313】
目的及び仮説
主目的
この試験の主な目的は、ASの徴候及び症状の低減を評価することによって、活動性強直性脊椎炎(AS)を有する対象におけるゴリムマブ2mg/kgのIV投与の有効性を評価することである。
【0314】
二次目的
二次目的は、ゴリムマブについて以下を評価することである。
・身体機能、可動域、健康に関連する生活の質及び他の健康転帰の改善に関連する有効性
・安全性
・薬物動態(PK)、薬力学(PD)及び免疫原性
【0315】
仮説
試験の主な目的に対処するために、統計的仮説(代替仮説)は、IVゴリムマブ2mg/kgが、一次有効性エンドポイントに基づいて、活動性ASを有する対象の徴候及び症状の低減において、プラセボより統計的に優れているというものである。
【0316】
この試験の一次エンドポイントは、16週目に、強直性脊椎炎評価(ASAS)国際作業部会基準におけるベースラインからの20%改善(ASAS20と呼ばれる)を達成する対象の割合である。このエンドポイントは、規制当局及び臨床ASコミュニティによって十分に受け入れられるので選択された。
【0317】
試験設計の概要
これは、NSAIDに対して応答が不十分であるか、又は不耐性である、活動性ASを有する対象におけるIVゴリムマブの有効性及び安全性をプラセボと比較した第3相多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。およそ200人の対象は、およそ40箇所の治験実施施設で無作為化される。全ての対象は、0週目、4週目、及びその後52週まで8週ごと(q8w)に、IV注入でゴリムマブ2mg/kg又はプラセボを受けるように無作為に割り当てられる。16週目に、プラセボ注入を受けた全ての対象は、交差し、ゴリムマブIV注入を受け始める。
【0318】
ゴリムマブIV処置群における対象は、ゴリムマブIV注入を受け続ける。データベースロックは、28週及び60週にスケジュールされる。最後の試験処置投与の少なくとも8週間後に、有害事象(AE)及び重篤な有害事象(SAE)について対象を追跡する。試験の終了は、最後の対象が60週の訪問を完了する時として定義される。
【0319】
対象集団
試験に適格な対象は、改訂ニューヨーク基準によって「明確」として定義される少なくとも3か月間のASの診断、並びに0~10cmのスケールでそれぞれ、全背部痛に対する、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index、BASDAI)≧4及びビジュアルアナログスケール(Visual Analogue Scale、VAS)≧4によって証明されるとおり、活動性疾患の症状を有する18歳以上の男性又は女性である。対象は、≧0.3mg/dLのC反応性タンパク質(C-reactive protein、CRP)レベルを有することが必要である。
【0320】
試験集団の他の主要な特徴は、以下のとおりである:
・メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)及びヒドロキシクロロキン(HCQ)及び低用量経口コルチコステロイドの現在の使用者は許容されており、これらの投薬の安定用量の服用状態で試験を開始するべきである。
・1つ以下の生物学的抗TNFα剤(ゴリムマブ以外)への曝露前の対象は、この試験への組み込みに許容されるが、試験集団の最大でも20%に限定される。
・側面脊椎レントゲン写真上で視覚化された頸椎及び腰椎の全ての椎間レベルに存在して橋渡しする靱帯骨棘形成として定義される完全な脊椎強直症を有する対象は、この試験への組み込みに許容されるが、試験集団の最大でも10%に限定される。
【0321】
適格な対象のためのスクリーニングは、試験薬の投与前6週間以内に実施される。
【0322】
対象はまた、包含及び除外基準を満たす必要がある。
【0323】
用量及び投与
初回スクリーニング訪問では、試験に適格である可能性があると考えられる全ての対象から、実験に登録するためのプロトコル指定の包含及び除外基準に従って、インフォームドコンセントが得られる。無作為化訪問では、対象は再評価され、全ての指定された包含及び除外基準が満たされる場合、対象は、ゴリムマブIV注入又はプラセボIV注入のいずれかを受けるように無作為化される。ランダム化は、地理的領域によって及び抗TNFα療法の使用前に階層化される。
【0324】
第1の試験注入の前に、対象は、以下の2つの処置群のうちの1つに1:1の比で無作為に割り当てられる:
群1(n=100):対象は、0週目、4週目及び12週目にIVプラセボ注入を受ける。対象は、16週目にIVゴリムマブ2mg/kgに交差し、16週目、20週目及びその後q8wに投与を受ける。
群2(n=100):対象は、0週目、4週目及びその後q8wに、2mg/kgのIVゴリムマブを受ける。対象は、盲検を維持するために、16週目にIVプラセボ注入を受ける。
【0325】
全ての注入は、30±10分にわたって完了される。
【0326】
有効性評価/エンドポイント
本試験のために選択された有効性評価は、ASの処置のための治療用生物学的薬剤の以前の試験において確立された。本試験のために選択された患者報告転帰(patient reported outcome、PRO)は、AS及び適用可能なUS/EU規制指針文書における他の試験のために医学文献に受け入れられている臨床的に関連する測定値と一致する。
【0327】
強直性脊椎炎応答評価には、以下が含まれる。
・Bath強直性脊椎炎機能指標(BASFI)
・患者の総合評価
・全背部痛
・Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI)
・36項目略式健康調査(SF-36)
・Bath強直性脊椎炎計測指標(BASMI)
・強直性脊椎炎生活の質(ASQoL)アンケート
・胸郭拡張
・夜の背部痛
・付着部炎指数
・医学的転帰試験睡眠スケール
・作業制限アンケート(WLQ)
・生産性ビジュアルアナログスケール
・EuroQol-5D(EQ-5D)アンケート
【0328】
一次エンドポイント
この試験の一次エンドポイントは、16週目のASAS20応答者の割合である。試験は、16週目のASAS20を有する対象の割合が、プラセボ群と比較してゴリムマブ群において統計的に有意に大きくなることが実証される場合、陽性であると考えられる。
【0329】
主要な二次エンドポイント
以下の主要な二次分析が実行される。エンドポイントは、以下に指定されるような重要性の順序で列挙される。
1. 16週目にASAS40を達成した対象の割合。
2. 16週目に、BASDAIにおけるベースラインからの少なくとも50%の改善を達成する対象の割合。
3. 16週目でのBASFIにおけるベースラインからの変化。
【0330】
薬物動態評価
血液試料を選択された訪問で収集して、ASを有する成人対象におけるIVゴリムマブのPKを評価する。試験薬剤がその訪問で投与される場合、薬物動態試料は、IV注入ラインとは異なるアームから引き出されるべきである。具体的には、0、4、12、20、36、及び52週目の訪問において、血清ゴリムマブ濃度についての2試料が収集され、1つの試料が注入直前に収集され、もう一方が注入終了1時間後に収集される。残りの訪問のそれぞれについては、血清ゴリムマブ濃度についての1試料のみが収集される。この試料は、試験薬剤の注入がその訪問において投与される場合は、注入前に収集されるべきである。無作為なPK試料はまた、12週目、16週目、又は20週目の訪問時以外の12~20週目間の訪問の集団PK分析のために引き出される。この試料は、試験薬剤注入の少なくとも24時間前又は後に、収集される必要がある。適用可能な時点で、ゴリムマブ濃度及びゴリムマブに対する抗体の両方の測定のための血清は、引き出された同じ血液に由来する。
【0331】
免疫原性評価
ASを有する成人対象におけるゴリムマブの免疫原性を評価するために、ゴリムマブに対する抗体の検出のための血清試料を、時間及びイベントスケジュールに従って収集する。
【0332】
バイオマーカ評価
バイオマーカ試料は、臨床転帰における個体間変動の分子的理解を得るために収集され、これは、薬剤に異なる応答を示す集団サブグループを同定するのに役立ち得る。バイオマーカ試料は、新たな問題に対処するのに役立て、将来において安全で、より効果的で、最終的に個別化された療法の開発を可能にするために使用されてもよい。
【0333】
薬理遺伝学的(DNA)評価
ゲノム検査が、疾患又は薬剤に対する応答と、特定の遺伝子とのリンクに関する研究のために行われる。ゴリムマブに関連するDNA研究のみ、又は、この薬物が開発された疾患に関連するDNA研究のみが行われる。ゲノムの幅広い薬理遺伝学的及び/又はエピジェネティクス試験は、同意を得た対象において本試験で行われる。試験のこの部分に参加する対象は、別個のインフォームドコンセント(同意書)に署名する必要がある。更に、対象は、試験の他の側面への参加や、試験への今後の参加に影響を与えること無しに、随時、そのような同意を撤回することができる。
【0334】
薬理遺伝学的血液試料は、必要に応じて薬理遺伝学的研究を可能にするために収集される(現地規制が許可される)。薬理遺伝学的研究への対象の参加は任意である。
【0335】
安全性の評価
他の抗TNFα剤の安全性プロファイル、並びにこれまでのゴリムマブ安全性データに基づいて、いくつかの関心のあるAEが特定され、この試験において監視及び評価される。これらには、輸注反応、肝胆検査値異常、TBを含む感染、及び悪性腫瘍が挙げられる。
【0336】
統計的方法
連続変数のn、平均、SD、中央値、IQ範囲、最小値、及び最大値、並びに離散変数の数及び百分率などの単純な記述要約統計を使用して、ほとんどのデータを要約する。
【0337】
抗TNFα療法の以前の使用によって階層化されたコクラン-マンテル-ヘンツェル(Cochran-Mantel-Haenszel、CMH)検定を使用して、処置に応答する対象の割合などのカテゴリー変数を比較する。一般に、抗TNFα療法を因子として使用する前のANOVAは、特に明記しない限り、連続変数を分析するために使用される。全ての統計的試験は、α=0.05(両側検定)で行われる。統計分析に加えて、グラフデータ表示(卵、折れ線グラフ)及び対象リストもまた、データを要約/提示するために使用され得る。
【0338】
集団セット
集団セットは、意図的な処置集団(即ち、全ての無作為化された対象)である。有効性分析に含まれる対象は、割り当てられた治療を受けるか否かに関わらず、割り当てられた処置群に従って要約される。
【0339】
安全性及びPK分析は、試験処置の少なくとも1回の投与を受けた全ての対象を含む。
【0340】
エンドポイント分析
一次評価項目分析
主目的に対処するために、16週目にASAS20応答を有する対象の割合(一次エンドポイント)が、0.05の有意水準(両側検定)で抗TNFα療法の使用前に階層化されたCMH試験(Yes/No)を用いて、プラセボ群とゴリムマブ群との間で比較される。この主有効性分析では、全ての無作為化された対象からのデータは、それらの実際の治療を受けたかに関わらず、それらの割り当てられた処置群に従って分析される。対象が16週目に少なくとも1つのASAS成分のデータを有する場合に、欠測ASAS成分を割り振るために、最後の観測値の繰り越し(LOCF)手順が使用される。対象が16週目に全てのASAS成分のデータを有しない場合、対象は、非応答者と見なされる。
【0341】
主要二次エンドポイント分析
以下の主要な二次分析は、以下に指定されるような重要性の順序で行われる。
1. 16週目にASAS40を達成した対象の割合を、処置群間で比較する。
2. 16週目にBASDAIにおいてベースラインから少なくとも50%の改善を達成した対象の割合を、処置群間で比較する。
3. 16週目でのBASFIにおけるベースラインからの変化を、処置群間で比較する。
【0342】
多重度についてのタイプI誤差率を制御するために、第1の主要な二次エンドポイントは、一次エンドポイントが0.05の有意水準(両側検定)で統計的有意性を達成した場合にのみ試験される。続く主要な二次エンドポイントは、一次エンドポイント及び前述の主要な二次エンドポイントが、0.05の有意水準(両側検定)で統計的に有意である場合にのみ試験される。
【0343】
安全性分析の概要
日常的な安全性評価が行われる。AE、SAE、並びに注入反応及びTBを含む感染を含む合理的に関連するAEの発生及び種類は、処置群によって要約される。NCI CTCAE毒性等級に基づく異常な実験室パラメータ(血液学及び化学)を有する対象の数が要約される。加えて、ANA及び抗dsDNA抗体を有する対象の数、並びにゴリムマブに対する抗体と注入反応との関係が要約される。
【0344】
全ての安全性分析は、試験薬剤の少なくとも1回の投与を受けた全ての対象の集団を使用して行われる。分析は、対象が実際に受けた処置を使用して行われる。
【0345】
加えて、グラフデータ表示(卵、折れ線グラフ)及び対象リストもまた、データを要約/提示するために使用され得る。
【0346】
略語:
AE 有害事象
AS 強直性脊椎炎
ASAS20 強直性脊椎炎評価20
ASQoL 強直性脊椎炎の生活の質
ASSERT 組換えインフリキシマブ療法の評価のための強直性脊椎炎試験
BASDAI Bath強直性脊椎炎疾患活動性指数
BASFI Bath強直性脊椎炎機能指数
BASMI Bath強直性脊椎炎計測指数
BCG カルメット・ゲラン桿菌
CHF うっ血性心不全
CMH コクラン-マンテル-ヘンツェル
CRP C反応性タンパク質
DAS 疾患活動性スコア
DBL データベースロック
DMARD 疾患変性抗リウマチ薬
DMC データ監視委員会
DNA デオキシリボ核酸
ECG 心電図
eCRF 電子ケースの報告形態
eDC 電子データキャプチャ
EQ-5D EuroQol-5D
EQ VAS EQビジュアルアナログスケール
EU 欧州連合
GCP 良好な臨床実践
HBV B型肝炎ウイルス
HCQ ヒドロキシクロロキン
HCV C型肝炎ウイルス
HIV ヒト免疫不全ウイルス
HRQOL 健康関連の生活の質
IB 治験薬概要書
ICF インフォームドコンセントフォーム
ICH 医薬品規制調和国際会議
IEC 独立倫理委員会
IgG 1 免疫グロブリンG1
IMA 独立筋骨格評価因子
IRB 治験審査委員会
IV 静脈内
IWRS 相互作用ウェブ応答システム
MCS 精神的健康度
MOS-SS 医学的転帰試験睡眠スケール
MMP-1 マトリックスメタロプロテイナーゼ-1
MMP-3 マトリックスメタロプロテイナーゼ-3
MTX メトトレキサート
NSAID 非ステロイド性抗炎症薬
PCS 身体的健康度
PD 薬力学
PK 薬物動態
PQC 製品品質の苦情
PRO 患者報告転帰
PsA 乾癬性関節炎
q8w 8週ごと
RA 関節リウマチ
RBC 赤血球
SAE 重篤な有害事象
SAP 統計的分析計画
SC 皮下
SF-36 36項目略式健康調査
SSZ スルファサラジン
TB 結核
TNFα 腫瘍壊死因子α
TST ツベルクリン皮膚反応
US 米国
VAS ビジュアルアナログスケール
WBC 白血球
WLQ 作業制限アンケート
【0347】
導入
ゴリムマブは、免疫グロブリンG1(IgG1)重鎖アイソタイプ(G1m[z]アロタイプ)及びκ軽鎖アイソタイプを有する完全ヒトモノクローナル抗体である。ゴリムマブは、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する。ゴリムマブの分子量は、149,802~151,064ダルトンの範囲である。ゴリムマブは、ヒト腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)の可溶性形態及び膜貫通生物活性形態の両方を有する高親和性安定複合体を形成するヒトモノクローナル抗体であり、これは、TNFαのその受容体への結合を妨げる。他のTNFαスーパーファミリーリガンドに対する結合は観察されなかった。具体的には、ゴリムマブは、ヒトリンパ球に結合しない、又は中和しない。腫瘍壊死因子αは、主に活性化単球、マクロファージ、及びT細胞によって、自己会合して生物活性ホモトリマーを形成する膜貫通タンパク質として合成され、タンパク質分解によって細胞表面から急速に放出される。TNFαのp55又はp75 TNF受容体のいずれかへの結合は、受容体細胞質ドメインのクラスタ化をもたらし、シグナル伝達を開始させる。腫瘍壊死因子αは、さまざまな刺激に応答して産生され、続いて、カスパーゼ依存性アポトーシス経路並びに転写因子核内因子(NF)-κB及び活性化因子タンパク質-1(AP-1)の活性化による炎症応答を促進する、主要なセンチネルサイトカインとして特定された。κ腫瘍壊死因子αはまた、胚中心での免疫細胞の組織化における役割を介して免疫応答を調節する。TNFαの発現の上昇は、リウマチ性関節炎(RA)などの慢性炎症性疾患、並びに乾癬性関節炎(PsA)及び強直性脊椎炎(AS)などの脊椎関節症に関連しており、これらの疾患に特徴的な関節性炎症及び構造的損傷の重要なメディエーターである。
【0348】
強直性脊椎炎
強直性脊椎炎(AS)は、仙腸関節、多くの場合軸骨格、靭帯付着部、及び末梢関節を伴う未知の病因の慢性炎症性疾患である。ASは、女性よりも男性に罹患することが多く、米国におけるその有病率は、人口の0.2~0.5%と推定される。靱帯付着部の慢性炎症は、主に軸骨格において、新骨形成、靭帯骨棘、及び関節の強直を引き起こす。この軸方向の強直性は、運動範囲の劇的な損失及び障害につながる場合がある。疾患はまた、ブドウ膜炎、心筋炎、肺線維症、腸炎症、及び心伝導異常を含む、骨格外症状も有し得る。脊椎関節炎のサブセットである強直性脊椎炎は、ヒト白血球抗原-B27(HLA-B27)抗原の存在と強く関連していると考えられる。
【0349】
患者は、様々な筋骨格症状(付着部炎による近位関節痛、胸痛、及び末梢関節周囲の圧痛)を経験し得るが、最も一般的な提示症状は慢性的な腰痛症である。腰痛症は、通常、40歳よりも前に始まり、発症が潜行性であり、朝のこわばりに関連付けられ、最終的には対称的である。これらの筋骨格症状は、倦怠感、発熱、及び体重減少などの構成的症状に関連し得る。TNFα阻害剤が承認されるまで、ASの処置は有効性が限られており、末梢関節炎を有する患者のサブセットでは、運動、及び経口スルファサラジン(SSZ)の役割を有するNSAIDから主になった。生物学的TNFα阻害剤は、ランダム化比較試験で、AS患者の徴候と症状、可動性と身体機能を大幅に改善することが示されている。
【0350】
強直性脊椎炎におけるTNFαの役割
ASなどの様々な適用症に対する抗TNFα療法の有効性及び安全性プロファイルは、十分に特徴付けられている。腫瘍壊死因子αは、多種多様な機能活性を示す主要な炎症性メディエーターと考えられる。異常に高レベルのTNFαは、RA、PsA、及びASを含むいくつかの免疫介在性疾患の病態生理学に関与している。抗TNFα抗体によるTNFαの結合は、標的が細胞表面TNFα受容体に結合することを防ぎ、その結果、下流シグナル伝達カスケード及び不適切な又は過剰なTNFα発現の有害な影響を防止する。活動性ASを有する患者に由来する末梢血及び滑膜組織の両方において、TNFαのレベルの上昇が観察された。TNFαはおそらく、RAの滑膜炎にあるようなASの仙腸関節炎において役割を果たすことが示唆されている。コンピュータ断層撮影を対象とする仙腸関節生検で評価された活動性ASを有する5人の患者の試験では、免疫組織学的分析により、大部分がT細胞及びマクロファージからなる細胞浸潤が明らかになり、3人の対象の生検のin situハイブリダイゼーション試験により、豊富なTNFαが明らかになった。
【0351】
多くの非盲検及び二重盲検プラセボ対照試験は、ASの徴候及び症状を緩和する際に、インフリキシマブ、組換えIgG1-κヒトマウスキメラモノクローナル抗TNFα抗体の実質的な有効性を示している。インフリキシマブは、ASに対する処置として試験された第1の抗TNFα剤であり、ASを有する対象又はASを含む脊椎関節症と診断された対象のいずれかにおける0、2、及び6週目での5mg/kgのインフリキシマブ注入の誘導レジメンは、疾患活動性尺度の急速な改善をもたらした。
【0352】
ASのみを有する患者、及びASを含めた脊椎関節症を有する患者におけるインフリキシマブの2つの無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験により、インフリキシマブ療法が臨床転帰尺度の迅速で有意な改善をもたらしたことが示された。ASSERT試験(ASを有する279人の対象を含むインフリキシマブの大型、多施設、二重盲検、プラセボ対照試験)において、24週目の強直性脊椎炎評価20(ASAS 20)応答率は、プラセボ処置群における18%に対してインフリキシマブ処置対象において60%であった。身体機能の測定値、可動域の生活の質、及びMRIの疾患活動性スコアにも有意な改善が見られた。AS患者におけるインフリキシマブ療法は、一般に十分に忍容された。
【0353】
エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、及びセルトリズマブなどの皮下(SC)薬を使用したASにおける腫瘍壊死因子α阻害も、ランダム化プラセボ対照試験で有効であることが示されている。ASの病態生理学におけるTNFαの正確な役割は未だ不明確であるが、TNFα阻害がこの疾患において主要な治療効果を有するという大きく、かつ増加する一連の証拠が既に存在する。
【0354】
試験の全体的な理論的根拠
抗TNFα剤を用いた治療は、炎症性関節炎の処置に首尾よく使用されてきたが、抗TNFα剤は、安全性、投与レジメン、費用及び免疫原性に関して限界がある。これらの制限のいくつかに対処するために、ゴリムマブと呼ばれる完全ヒト抗TNFαmAb(CNTO 148及びrTNV 148Bとしても知られる)。ゴリムマブ、完全ヒト抗TNFαmAbは、ヒトTNFαに高い親和性で結合し、TNFαの生物活性を阻害する。更に、ゴリムマブは、TNFα媒介細胞毒性及びTNFα媒介内皮細胞活性化を阻害する。ゴリムマブはまた補体媒介細胞溶解の活性化を誘導し、ヒトTNFαを過剰発現するマウスにおける関節炎の発症を減少させる。
【0355】
SCゴリムマブを含む抗TNFα剤による治療は、ASに罹患している対象において、徴候及び症状、身体機能、並びに健康関連生活の質(HRQOL)を有意に改善することが実証されている。5年間の追跡調査を通して、SCゴリムマブの長期的な安全性及び有効性を評価するために、ASを有する対象におけるゴリムマブのSC投与に関する全体的な無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験が完了した(試験C0524T09)。ゴリムマブの皮下投与は、ASの徴候及び症状を改善するのに有効であることが実証された。安全性分析は、SCゴリムマブが一般的に耐容性が良好であることを示し、他の抗TNFα剤で観察されたものと同様の安全性プロファイルを示した。
【0356】
SCゴリムマブの既知の安全性及び有効性を考慮すると、IVゴリムマブは、RA、PsA、及びASなどのリウマチ性疾患における他の抗TNFα剤と一致する許容される安全性プロファイルで有効であることが証明されると予想された。ゴリムマブの静脈内投与は、RA処置の承認の基礎となった第3相試験(CNTO148ART3001)で確定的に試験された。CNTO148ART3001試験は、同時メトトレキサート(MTX)療法にもかかわらず活動性RAを有する対象における、0週目、4週目、及びその後8週ごと(q8w)に30±10分にわたって注入されるゴリムマブ2mg/kgのIV投与の有効性及び安全性に関する、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設2群試験であった。MTXにもかかわらず活動性RAを有する対象は、0週目、4週目、及び8週ごとに24週まで2mg/kgでプラセボ注入又はゴリムマブのIV投与のいずれかを受けるように無作為化された。24週目に開始して、100週まで、全ての対象をIVゴリムマブで処置した。IVゴリムマブは、RAの徴候及び症状、身体機能、並びに健康関連の生活の質の改善、並びに構造的損傷の進行の抑制において実質的な利益を提供することが実証された。
【0357】
RAの処置において静脈内投与されたゴリムマブ(CNTO148ART3001)では、輸注反応の発生率は低く、ロバストな有効性及び許容される安全性プロファイルを示した。この提案された第3相試験は、活動性ASを有する対象の処置における静脈内(IV)ゴリムマブの有効性及び安全性を評価するように設計されている。現在入手可能なIV抗TNFα剤は免疫原性及び輸注反応に関して制限があり、IVゴリムマブの提案された30±10分注入と比較してより長い注入時間(60~120分)を有するので、AS患者におけるIV投与経路が評価されている。
【0358】
患者はまた、SC剤と比較してより頻繁な投与よりもq8w IVゴリムマブの維持投与計画を好むことがある。したがって、IVゴリムマブは現在利用可能な処置選択肢への重要な追加であり得る。
【0359】
この試験のための投与レジメンは、0週目及び4週目、その後8週ごとに30分にわたってIV注入により投与される2mg/kgのゴリムマブである。
【0360】
試験設計及び理論的根拠
試験設計の概要
これは、NSAIDに対して応答が不十分であるか、又は不耐性である、活動性ASを有する対象におけるIVゴリムマブの有効性及び安全性をプラセボと比較した第3相多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。およそ200人の対象は、およそ70箇所の治験実施施設で無作為化される。対象は、0週目、4週目及び12週目に、IV注入でゴリムマブ2mg/kg又はプラセボを受けるように無作為に割り当てられる。16週目に、プラセボ注入を受けた全ての対象は、交差し、16週目、20週目、及びその後q8wに52週までゴリムマブIV注入を受け始める。ゴリムマブIV処置群の対象は、16週目にプラセボ注入を受け、盲検を維持し、20週目及びその後q8wに52週までゴリムマブIV注入を受容し続ける。データベースロック(DBL)は、28週目及び60週目に予定されている。
【0361】
最後の試験処置投与の少なくとも8週間後に、有害事象(AE)及び重篤な有害事象(SAE)について対象を追跡する。試験の終了は、最後の対象が60週の訪問を完了する時として定義される。
【0362】
図18に、試験設計の図を示す。
【0363】
試験設計の理論的根拠
試験母集団
標的試験集団は、改訂ニューヨーク基準によって定義されるように、試験薬剤の最初の投与の少なくとも3か月前に活性ASを有する対象である。
【0364】
処置群、投与量、及び用量投与間隔
対象は、以下のように、0週~1週の2つの処置群で無作為化される。
・群1(n=100):IVプラセボ注入
・群2(n=100):IVゴリムマブを2mg/kg注入
【0365】
ゴリムマブに無作為に割り付けられた対象は、0週目、4週目、及びその後q8wに52週目まで、ゴリムマブ2mg/kgのIV注入を受ける。ゴリムマブに無作為化された16人の対象では、プラセボ注入を受けて盲検を維持する。0,4週目及び12週目にプラセボIV注入を受けるために無作為に割り当てられた全ての対象は、第16週での積極的処置にクロスオーバーし、第16,20週及びその後52週目までq8wで、ゴリムマブ2mg/kg IV注入を受ける。ゴリムマブIV処置群における対象は、ゴリムマブIV注入を受け続ける。
【0366】
処置の試験相及び持続時間
この試験では、スクリーニング、二重盲検プラセボ制御、積極的処置、及び安全性追跡調査の4相がある。6週間までのスクリーニング段階は、スクリーニング試験評価を実施するのに充分な時間を可能にし、試験適格性を決定する。試験の第2相は、第0週から第16.週までの二重盲検プラセボ制御期である。試験の第3相は、16週目~52週目までの積極的処置期である。試験の第4相は、安全性追跡調査相であり、試験薬剤の最後の投与から8週間である。安全性追跡調査は、ゴリムマブの半減期のおよそ5倍に相当する期間にわたって対象を監視することを可能にする。各対象の最初の処置割り当ては、試験の60週間にわたって部位及び対象にまだ盲検化されている。この持続時間は、ASに対する維持療法としてのIVゴリムマブの有効性及び安全性を実証するのに適切な時間を提供する。
【0367】
この試験は、最後の対象が最後の予定された訪問を完了すると終了する(60週目の訪問)。
【0368】
試験管理、無作為化、及び盲検化
無作為化は、処置群に対する対象の評価における偏りを最小限に抑え、既知及び未知の対象属性(例えば、人口統計学的及びベースライン特性)が処置群全体に均等にバランスがとれるようにする可能性を高め、処置群にわたる統計的比較の妥当性を高めるために、使用される。加えて、ランダム化は、地理的領域及び抗TNFα療法の使用前に階層化される(はい又はいいえ)。
【0369】
個々の対象及び研究者は、試験の継続期間にわたって盲検化されたままである。盲検処置は、データ収集中及び臨床的エンドポイントの評価中の偏りの可能性を低減するために使用される。2つのDBLは、28週目及び第60.週目の試験のために計画されている。第1のDBLは、全ての対象が、第28週目の訪問又は終了試験参加を完了した後に行われる。第2のDBLは、全ての対象が、第60週目の訪問又は終了試験参加を完了した後のいずれかで行われる。データベースは、第28週にロックされ、サマリーレベルデータは、選択された個人のデータ分析及びデータレビューのために、対象レベルデータをDBLで非盲検化する。全ての施設職員及び対象は、60週目のDBLが行われるまで、無盲検薬剤師を除いて、処置割り当てに対して盲検化されたままである。
【0370】
有効性評価
本試験のために選択された有効性評価は、ASの処置のための治療用生物学的薬剤の以前の試験において確立された。本試験のために選択された患者報告転帰(PRO)はまた、ASの他の試験及び適用可能な米国/EU規制指針文書の医学文献に受け入れられている臨床的に関連する測定とも一致する。
【0371】
強直性脊椎炎応答評価には、以下が含まれる。
・Bath強直性脊椎炎機能指標(BASFI)
・患者の総合評価
・全背部痛
・Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI)
・36項目略式健康調査(SF-36)
・Bath強直性脊椎炎計測指標(BASMI)
・強直性脊椎炎生活の質(ASQoL)アンケート
・胸郭拡張
・夜の背部痛
・付着部炎指数
・医学的転帰試験睡眠スケール
・作業制限アンケート(WLQ)
・生産性ビジュアルアナログスケール
・EuroQol-5D(EQ-5D)アンケート
【0372】
対象集団
試験に適格な対象は、改訂されニューヨーク基準によって「明確」として定義される少なくとも3か月のASの診断、並びに0~10cmのスケールでそれぞれ、全背部痛に対する、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI)≧4及びビジュアルアナログスケール(VAS)≧4によって証明されるように、活動性疾患の症状を有する18歳以上の男性又は女性である。対象は、≧0.3mg/dLのC反応性タンパク質(CRP)レベルを有することが必要である。
【0373】
試験集団の他の主要な特徴は、以下のとおりである:
・MTX、SSZ及びヒドロキシクロロキン(HCQ)、並びに低用量経口コルチコステロイドの現在の使用者は許容されており、これらの投薬の安定用量服用の状態で試験を開始するべきである。
・1つ以下の生物学的抗TNFα剤(ゴリムマブ以外)への曝露前の対象は、この試験への組み込みに許容されるが、試験集団の最大でも20%に限定される。
・側面脊椎レントゲン写真上で視覚化された頸椎及び腰椎の全ての椎間レベルに存在して橋渡しする靱帯骨棘形成として定義される完全な脊椎強直症を有する対象は、この試験への組み込みに許容されるが、試験集団の最大でも10%に限定される。
【0374】
適格な対象のためのスクリーニングは、試験薬の投与前6週間以内に実施される。
【0375】
この試験に対象を登録するための組み入れ基準及び除外基準は、以下の2つのサブセクションに記述される。以下の組み入れ基準又は除外基準について疑問がある場合、治験責任医師は、試験に対象を包含する前に適切な治験依頼者担当者に相談すべきである。
【0376】
組み入れ基準
各可能性のある対象は、この試験に登録されるには下記の基準全てを満たす必要がある。
1. 対象は18歳以上の男女である必要がある。
2. 対象は健康診断、病歴、バイタルサイン、スクリーニング時に行われた12誘導心電図(ECG)に基づいて医学的に安定している必要がある。この決定は、対象の情報源文書に記録され、治験責任医師によって頭文字で署名されている必要がある。
3. 対象は、スクリーニングで行われる臨床検査試験に基づいて医学的に安定である必要がある。肝臓酵素又は血液学を含む血清化学パネルの結果が正常な基準範囲外である場合、対象は、研究者が異常又は正常からの逸脱を臨床的に有意でないと、又は試験中の集団に適切かつ妥当であると、判断した場合にのみ対象が含まれてもよい。この決定は、対象の情報源文書に記録され、治験責任医師によって頭文字で署名されている必要がある。包含基準#6及び#16に記載されている試験については、結果は、評価基準#6及び#16で許容される適格範囲内である必要がある。
4. 改訂ニューヨーク基準によって定義されるように、試験薬剤の最初の投与の少なくとも3か月前に明確なAS診断を受ける。
X線撮影基準と少なくとも1つの臨床基準との両方が満たされる必要がある。
a.X線撮影基準:両側仙腸関節炎等級≧2、又は片側仙腸関節炎等級3~4。
b.臨床基準(少なくとも1つ):
i.運動により改善されるが安静により軽快しない、3か月を超える腰痛症及びこわばり。
ii.矢状面及び前頭面の両方における腰椎の運動の制限。
iii.年齢及び性別について補正された正常値に対する胸郭拡張の制限。
5. 0~10cmのスケールでそれぞれ、≧4の全背部痛に対する、≧4のBASDAIスコア及びVASスコアの両方によって証明されるように、スクリーニング時及びベースライン時の活動性疾患の症状を有する。
6. スクリーニング時に≧0.3mg/dLのCRPレベルを有する。
7. NSAIDの最大推奨用量での合計4週間にわたる少なくとも2つのNSAIDに対して不十分な応答を有するか、又はNSIDに対する不耐性、毒性、禁忌のために、4週間全部の最大NSAID治療を受けることができない。
8. ASにNSAID又は他の鎮痛剤を使用する場合、試験薬剤の最初の投与の少なくとも2週間前に、安定な用量である必要がある。現在ASにNSAID又は他の鎮痛剤を使用していない場合、試験薬剤の最初の投与の少なくとも2週間前にASにNSAID又は他の鎮痛剤を受けていない必要がある。
9. 経口コルチコステロイドを使用する場合、試験薬剤の最初の投与前の少なくとも2週間、≧10mgのプレドニゾン/日に相当する安定用量を服用する必要がある。現在コルチコステロイドを使用していない場合、試験薬剤の最初の投与前の少なくとも2週間にわたって、経口コルチコステロイドを受けていない必要がある。
10. MTX、SSZ、又はHCQを使用する場合、試験薬剤の最初の投与の少なくとも3か月前に処置を開始する必要があり、疾患変性抗リウマチ薬(disease modifying antirheumatic drug、DMARD)に起因する重篤な毒性副作用を有していない必要がある。投与及び投与のメトトレキサート経路(25mg/週を超えない)は、試験薬剤の最初の投与の少なくとも4週間前に安定であるべきである。SSZ又はHCQを使用する場合、試験薬剤の最初の投与前の少なくとも4週間にわたって、同様に安定な用量である必要がある。MTX、SSZ、又はHCQを現在使用していない場合、試験薬剤の最初の投与の少なくとも4週間前にこれらのDMARDを受けていない必要がある。
11. 無作為化の前に、女性は以下のいずれかである必要がある:
・妊娠する可能性がないこと:初経前、閉経後(少なくとも12か月間無月経の>45歳)、永久不妊(卵子、卵管閉塞、子宮摘出術、両側卵管摘出術)、若しくはそれら以外で、妊娠できないこと、
・妊娠の可能性があり、臨床試験に参加している対象に対する避妊法の使用に関する現地の規制に一致する、非常に有効な避妊方法を実践している場合:卵子、確立された経口使用、注射又は埋め込みホルモン法による避妊;子宮内デバイス又は子宮内システムの配置、バリア方法:殺精子フォーム/ジェル/フィルム/クリーム/座薬を有するコンドーム又は殺精子フォーム/ジェル/フィルム/クリーム/座薬を有する閉塞キャップ(横隔膜又は頸部/ボールトキャップ)、男性パートナーの断種(精管切除したパートナーは、その対象の唯一のパートナーであるべきである);真の禁欲(これが対象の好みの通常の生活様式と一致している場合)。
12. 妊娠の可能性がある女性は、スクリーニング時に血清による妊娠検査が陰性(β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン[β-HCG])を有し、及び無作為化前の0週目に尿による妊娠検査が陰性を有する必要がある。
13. 試験期間中及び試験薬の最後の投与を受けてから4か月間は、女性は妊娠しないこと、又は生殖補助医療の目的で卵子(卵子、卵母細胞)を提供しないことに同意する必要がある。
14. 妊娠する可能性のある女性と性的に活動的であり、精管切除を受けていない男性は、試験中及び試験剤の最後の投薬後4か月間は、例えば、殺精子剤フォーム/ジェル/フィルム/クリーム/座薬付きのコンドーム又はパートナーによる殺精子剤フォーム/ジェル/フィルム/クリーム/座薬付きの閉塞キャップ(隔壁又は頚管/ボールトキャップ)の使用のいずれかの、受胎調節の障壁法を使用することに同意する必要がある。また、男性は全員、試験中及び試験薬剤の最後の投薬を受けてから4か月間は、精液を提供しない必要がある。
15. 以下の結核(tuberculosis、TB)スクリーニング基準に従って資格を有すると考えられること:
a.スクリーニング前に、潜在性又は活動性TBの病歴がないこと。潜在性TBの病歴を有し、潜在性TBの処置を現在受けている対象については、試験薬剤の最初の投与の前に潜在性TBに対する処置を開始するか、又は試験薬剤の最初の投与前の5年以内に潜在性TBに適切な処置を完了したことを文書にする。
b.病歴及び/又は身体的検査の際に活動性TBを示唆する徴候又は症状を有しないこと。
c.活動性TBを有する人と最近密接な接触がなかったこと、又はかかる接触があった場合は、TB専門医師に紹介して追加評価を受け、保証された場合は、試験薬剤の最初の投与前に、潜在性TBのための適切な処置を受けること。
d.試験薬剤の最初の投与前6週間以内に、陰性のQuantiFERON-TB Gold試験結果を有するか、又は活動性TBが除外され、潜在性TBのための適切な処置が試験薬剤の最初の投与前に開始されている、新たに同定された陽性のQuantiFERON-TB Gold試験結果を有すること。QuantiFERON-TB Gold試験がその国で承認/登録されていないか、又はTSTが現地の健康機関によって義務付けられている場合には、試験薬剤の最初の投与の6週間以内に、ツベルクリン皮膚反応(tuberculin skin test、TST)陰性、又は活動性TBが除外され、潜在性TBに対する適切な処置が試験薬剤の最初の投与の前に開始された、新たに同定されたTST陽性が更に必要とされる。
i.持続的に不確定なQuantiFERON-TB Gold試験結果を有する対象は、活動性TBが除外され、彼らの胸部X線写真がTB(活動性又は古い、非活動性TB)を示唆する異常を示さず、対象が治験責任医師によって判断されるようなTBの更なるリスク因子を有しない場合、潜在性TBのための処置なしに登録され得る。
ii.QuantiFERON-TB Gold試験及びTSTは、潜在性TBの病歴及び潜在性TBの進行中の処置を有する対象、又は上記のように十分な処置を完了したことを文書にした対象について、スクリーニングにおいて必須ではない。潜在性TBのための更なる治療を開始するために、上記のように十分な処置を完了したことを文書にした対象は必須ではない。
e.試験薬剤の最初の投与の前3か月以内に行った胸部X線写真(後-前像)があり、適格な放射線医の読み取りを受け、現在活動性のTB又は古い非活動性TBのエビデンスがないこと。
16. 以下のパラメータ内のスクリーニング臨床試験結果を有すること:
a.ヘモグロビン≧8.5g/dL
b.白血球≧3.5x103/μL
c.好中球≧1.5x103/μL
d.血小板≧100x103/μL
e.血清クレアチニン≧1.5mg/dL
f.AST、ALT、及びアルカリホスファターゼのレベルは、試験を実施する実験室のULN範囲の1.5倍以内である必要がある。
17. 対象は、このプロトコルに指定された禁止事項及び制限事項を守る意思があり、それが可能である必要がある。
18. 各対象は、各自が試験の目的とそれに必要な手順を理解し、試験に参加する意思があることを示す、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名する必要がある。
19. 研究のために任意選択のDNA試料を提供することに同意する場合は、各対象は別個のインフォームドコンセントフォームに署名する必要がある(現地の規制が許す場合)。任意選択のDNA研究試料に対して許諾を拒否しても、この試験への参加から対象を除外することはない。
20. 試験薬剤の最初の投与前2週間以内、及び試験期間にわたって、アーユルヴェーダ医学、伝統的な漢方薬(複数可)、及び鍼療法を含む、補完療法の使用を控える意思がある。
【0377】
除外基準
以下の基準のうちのいずれかを満たす任意の可能性のある対象は、この試験の参加から除外される。
1. 限定するものではないが、RA、PsA、全身性エリテマトーデス、又はライム病が挙げられるがこれらに限定されない、ゴリムマブ療法からの利益の評価を混乱させることができる他の炎症性疾患を有する。
2. 試験中に登録されている間、又は試験薬剤の最後の投与を受けた4か月以内に、妊娠している、授乳している、又は妊娠若しくは子をもうけることを計画している。
3. 試験薬剤の最初の投与前の4週間以内に、MTX、SSZ、又はHCQ以外の任意の全身性免疫抑制剤又はDMARDを受けた。これらのカテゴリーの薬剤としては、クロロキン、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、金、及びペニシリンが挙げられるが、これらに限定されない。コルチコステロイドはこの基準には含まれない。コルチコステロイドに関する他の適格性基準を参照されたい。
4. 試験薬剤の最初の投与前の4週間以内にレフルノミドを受けた(薬物排除措置を受けることに関係なく)か、又は試験薬剤の最初の投与前の3か月以内にレフルノミドを受け、薬物排除措置を受けていない。
5. 試験薬剤の最初の投与前の4週間前に副腎皮質刺激ホルモンを含む、硬膜外、関節内、IM、又はIVコルチコステロイドを受けた。
6. ゴリムマブを受けたことがある。
7. インフリキシマブ(バイオシミラの抗TNFα剤を含む)、アダリムマブ、又はセルトリズマブペゴオールを、試験薬剤の最初の投与前の3か月以内に受けていた。
8. 試験薬剤の最初の投与前の6週間以内にエタネルセプト又はイサイプを受けた。
9. 2つ以上の以前の抗TNFα剤を受けた。
10. 以前の抗TNFα剤に対する主な失敗(治験責任医師によって評価された場合の応答の欠如、又は処置の最初の16週間以内に有効性の欠如による中止と定義される)を経験したことがある。
11. トシリズマブ、アレフェプトプト、エファリズマブ、ナタリズマブ、アバタセプト、アナキンラ、ウテキヌマブ、ブロダルマブ、セクキヌマブ、イキセキズマブ、及びB細胞枯渇療法を含むがこれらに限定されない抗TNFα薬以外の以前の生物学的療法を受けたことがある。
12. トファシチニブ又は他のJanusキナーゼ阻害剤(JAK)阻害剤を受けたことがある。
13. ヒト免疫グロブリンタンパク質に対する過敏症が知られている。
14. クロラムブシル、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、又は他のアルキル化剤を含む細胞毒性薬を使用していた。
15. スクリーニングの前に、ヒストプラスマ症又はコクシジオイデス症を含む活発な肉芽腫性感染症の病歴がある。潜在的TBの病歴の適格性に関する情報は、組み入れ基準を参照されたい。
16. 12か月間のスクリーニングにおいて、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチン接種をしていた。
17. TBを含む悪性疾患又は現在の活動性感染症の異常な示唆を示す、試験薬剤の最初の投与の3か月前の胸部X線写真を有する。
18. スクリーニング前の6か月以内に非結核性のマイコバクテリア感染症又は日和見感染症(卵、サイトメガロウイルス、肺気胞症、アスペルギロシス症)を有していた。
19. 試験薬剤の最初の投与前の2か月以内に帯状疱疹感染症を有していた。
20. 試験薬剤の最初の投与前の3か月以内、試験中、又は試験薬剤の最後の投与後の3か月以内に、任意の生ウイルス又は細菌ワクチン接種を受けたか、又は受けることが見込まれていること。
21. 感染した関節プロテーゼの病歴を有するか、又はそのプロテーゼが取り外されていない、若しくは交換されていない場合、関節プロテーゼの疑わしい感染のための抗生物質を受けている。
22. 重篤な感染症を有していた(限定するものではないが、肝炎、肺炎、敗血症、若しくは腎盂腎炎を含むが、これらに限定されない)か、又は感染症のために入院したことがあるか、又は試験薬剤の最初の投与前の2か月以内に感染症のためのIV抗生物質で処置していた。
23. 慢性腎臓感染症、慢性胸部感染症(卵、気管支拡張症)、副鼻腔炎、再発性尿路感染症(卵、再発性腎盂腎炎)、開放性、排出性、又は感染性の皮膚創傷、又は潰瘍を含むがこれらに限定されない、慢性又は再発性の感染症の病歴がある、又は継続している。
24. 対象が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体陽性であるか、スクリーニング時にHIV検査結果が陽性である。
25. B型肝炎感染を有する。対象は、B型肝炎ウイルス(HBV)のスクリーニングを受ける必要がある。最低でも、これには、HBsAg(HBV表面抗原)、抗HBs(HBV表面抗体)、及び抗HBc総(HBVコア抗体の合計)を試験することを含む。
26. スクリーニング前に6か月離れて2つの陰性のHCV RNA試験結果を有することがなく、スクリーニング時に第3の陰性のHCV RNA試験結果を有する限り、C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体に対して血清陽性である対象。
27. 多発性硬化症又は視神経炎などの、既知の脱髄性疾患の病歴を有する。
28. 重度、進行性、又は制御されていない腎、肝臓、血液学、胃腸、内分泌、肺、心臓、神経学、脳、又は精神疾患の現在の徴候又は症状を有する。
29. 医学的に制御された無症候性CHFを含む、同時のうっ血性心不全(CHF)を有する。
30. リンパ腫、又は異常な大きさ若しくは位置のリンパ性増殖性疾患、臨床的に有意な巨脾症、又は意義不明の単クローン性γグロブリン血症のようなリンパ増殖性疾患の可能性のあるリンパ腫、又は徴候と症状を含む、リンパ増殖性疾患の既知の病歴を有する。
31. 対象が、スクリーニング前5年以内に悪性疾患の病歴を有する(例外は、外科的に治癒された子宮頸部のその場(in situ)で、試験薬剤の最初の投与及びがんの少なくとも3か月前の再発のエビデンス無しで処置された皮膚の扁平上皮がん及び基底細胞がんである)。
32. 対象が、ゴリムマブ又はその賦形剤に対する既知のアレルギー、過敏症、又は不耐性を有する(ゴリムマブIBを参照)。
33. 対象が、計画された第1の用量の試験薬剤の前に、任意の禁じられた治療を行った。
34. 対象が、5半減期又は3か月以内のいずれか長い方に治験薬(治験ワクチンを含む)を受け、又は計画された第1の用量の試験薬剤の3か月以内に侵襲性治験医療装置を使用しているか、又は治験試験に現在登録されている。
35. 対象が、治験責任医師の意見では参加が対象の最善の利益にならない(卵子、幸福を危うくする)か、又はプロトコルに規定された評価を妨げる、制限する、若しくは混乱させる可能性がある条件を有する。
36. 対象が、スクリーニング前1か月以内に大手術(卵、全身麻酔が必要)を受けたか、又は手術から完全に回復しなかったか、又は対象が試験に参加すると予想される時期中若しくは試験薬剤の投与の最後の投与後1か月以内に手術を計画した。
37. 移植器官を有すること(試験薬剤の最初の投与前>3か月の角膜移植を除く)。
38. 過去3年以内に薬物乱用(薬物又はアルコール)問題を抱えているか又は抱えていたこと。
39. 不良な忍容性、又は静脈へのアクセスが困難であるために、複数の静脈穿刺を受ける意思がない、又は受けることができない。
40. 対象が、治験責任者又は試験実施機関の被雇用者であり、その治験責任者又は試験実施機関の指示に基づいて提示試験又は他の試験に直接的に関与している者、並びにそのような被雇用者又は治験責任者の家族である。
【0378】
注記:治験責任者は、全ての試験登録基準がスクリーニング時に満たされ、再度無作為化の前に満たされていることを確認するべきである。スクリーニング後であるが、第1の用量の試験薬が投与される前に、対象の状態が変化(検査結果又は追加の医療記録の受領を含む)して、全ての適格性基準を満たすことができなくなった場合、対象は、試験への参加から除外されるべきである。
【0379】
禁止事項及び制限事項
可能性のある対象は、試験期間中に参加のために適格であるために、以下の禁止及び制限をいとわず順守することができる必要がある。
1. 妊娠が可能な異性愛の性的に活動的な女性、及び子供をもうけることができる男性はいずれも、非常に効果的な避妊方法を使用し、試験期間中にわたって、及び試験薬剤の最後の投与後4か月間にわたって避妊の使用を継続する必要がある。
2. 以下の薬物の使用は、IV試験薬剤投与と同時に許容されない。
・クロロキン、アザチオプリン、経口シクロスポリンA、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノマイド、経口又は非経口金を含む全身性免疫抑制剤又はDMARD(MTX、SSZ、及びHCQ以外)。全身性免疫抑制剤は、コルチコステロイド類を指すものではない;コルチコステロイドの制限に関する他のものを参照されたい。
・TNFαの低減を標的とした生物剤(インフリキシマブ、SCゴリムマブ、セルトリズマブペゴオール、エタネルセプト、yisaipu、CT-P13[Remsima]及びアダリムマブが挙げられるが、これらに限定されない)α
・IL-1ra(アナキンラ)
・トシリズマブ、又はIL-6若しくはIL-6受容体を標的とする任意の他の生物剤
・トファシチニブ又は任意の他のJAK阻害剤
・B-細胞枯渇剤(卵子、リツキシマブ)
・シクロホスファミド、クロラムブシル、ナイトロジェンマスタード又は他のアルキル化剤などの細胞毒性薬
・アバタセプト
・ウステキヌマブ
・抗IL-17剤(卵子、ブロダルマブ、セクキヌマブ及びイキセキズマブ)
・治験薬
3. 試験中に生ウイルス又は生細菌ワクチン接種を受けないことに同意する必要がある。対象は、試験薬剤の最後の投与を受けた3か月後に生ワクチンを受けないことにも同意する必要がある。スクリーニングの12か月以内にBCGワクチン接種を受けていない必要がある。
4. 試験薬剤以外の治験医療デバイス又は治験薬を、試験期間にわたって受けないことに同意する必要がある。
5. アスピリン及び選択的COX-2阻害剤を含むNSAID、並びに他の鎮痛剤で処置された対象は、試験が行われている国で承認された通常の市販用量を受けるべきである。NSAID及び他の鎮痛剤の処方は、試験薬の最初の投与前の少なくとも2週間調節されるべきではなく、16週目まで、対象が容認できない副作用を生じた場合にのみ変更されてもよい。16週目~60週目の後、1回用量の減少が許容される。そうでなければ、NSAID及び他の鎮痛剤の処方は、対象が容認できない副作用を生じた場合にのみ変更されてもよい。
カプサイシン及びジクロフェナクを含む局所鎮痛剤の使用が許容される。
6. 経口コルチコステロイドで処置された対象は、試験薬剤の最初の投与前の少なくとも2週間にわたって、1日当たり≦10mgのプレドニゾンに相当する安定投与量を受け、この用量を16週間にわたって投与し続ける必要がある。16週目~60週目に、経口コルチコステロイドの1回用量の減少が許容される。そうでなければ、経口コルチコステロイドの用量及び種類は、対象が容認できない副作用を生じた場合にのみ、研究者の裁量で変更されてもよい。
コルチコステロイドの硬膜外投与、IM又はIV投与は、試験薬剤の最初の投与前の4週間以内には許容されず、試験全体を通して処置は許容されない。全ての試みは、AS以外の適用症のための試験中に、硬膜外、IM、及びIVコルチコステロイドの使用を避けるために行われるべきである。AS以外の適用症に対する長期(>2週間)の経口又はIVコルチコステロイドの使用は、60週目まで許容されない。AS以外の適用症に使用される短期(≦2週間)の経口、IV、IM、又は硬膜外コルチコステロイドは、治療医師の意見において、適切な代替物がない状況に限定されるべきである。
関節内ステロイドは、試験薬剤の最初の投与の4週間前に投与されるべきではない。特に試験の最初の16週間、関節内コルチコステロイド注射を避ける試みが行われる必要がある。しかしながら、必要であれば、対象は、試験の60週間の間、2つ以下の影響を受けた部位で、2つ以下の関節内、腱鞘、又は滑液嚢コルチコステロイド注射を受けてもよい。
7. 伝統的医学(卵、漢方薬、鍼療法、アーユルヴェーダ医学)を含むがこれらに限定されない、AS疾患活動性又は評価に影響を及ぼし得る補完療法の使用は、60週目まで禁じられている。
【0380】
試験前治療及び併用治療
全ての努力は、第16週を通して安定した、又はASの治療のために指定された、対象の併用薬を維持するために、全ての努力を行うべきである。併用薬投与量は低減されてもよく、又は異常な検査室値、副作用、併発疾病、又は手術治療の実施のために一時的に中断されてもよいが、変化及び変化の理由は、対象の医療記録において明確に文書化されるべきである。
【0381】
対象は、60週の試験期間中に、ASの新たな処置を開始するべきではない。
【0382】
併用薬レビューは、時間及びイベントスケジュールにおいて特定された試験訪問において行われる。
【0383】
メトトレキサート、スルファサラジン、又はヒドロキシクロロキン
対象は、安定した用量のMTX、SSZ、又はHCQに試験を入れることが可能である。
【0384】
対象がMTX、SSZ、又はHCQを使用している場合、処置は、試験薬剤の最初の投与の少なくとも3か月前に開始されるべきである。投与のMTX経路及び投与量≦25mg/週は、試験薬剤の最初の投与前の少なくとも4週間にわたって安定であるべきである。この試験でMTXを摂取した全ての対象は、少なくとも5mgの経口葉酸又は5mgの葉酸を毎週受容することが推奨される。SSZ又はHCQを使用する場合、対象はまた、試験薬剤の最初の投与前の少なくとも4週間にわたって安定用量を受ける必要がある。
【0385】
MTX、SSZ、又はHCQで処置しない対象は、試験薬剤の最初の投与の少なくとも4週間前に処置を中止する必要があり、60週目までMTX、SSZ、又はHCQを受けない必要がある。
【0386】
全ての努力は、この薬剤を受けている対象における試験の60週目に、MTX、SSZ、及びHCQの投与の安定投与及び投与経路を維持するために行われるべきである。MTX毒性の場合の用量調整に関するガイドラインは、Trial Center Fileに含まれる。
【0387】
コルチコステロイド療法
ASのために経口コルチコステロイドで処置された対象は、試験薬剤の最初の投与前の少なくとも2週間、1日当たり≦10mgのプレドニゾンに相当する安定用量を服用し、この用量を16週目まで服用し続けるべきである。16週目~60週目に、経口コルチコステロイドの1回用量の減少が許容される。そうでなければ、経口コルチコステロイドの用量及び種類は、対象が容認できない副作用を生じた場合にのみ、研究者の裁量で変更されてもよい。ベースラインにおいて経口コルチコステロイドで処置されていない対象は、試験薬剤の最初の投与の少なくとも2週間前に経口コルチコステロイドを中止する必要があり、60週目までASのための経口コルチコステロイドを受けない必要がある。
【0388】
ASの処置のためのコルチコステロイドの静脈内、筋肉内、又は硬膜外投与は60週まで許可されない。
【0389】
AS以外の適用症のための長期(>2週間)の経口又はIVコルチコステロイドの使用は、60週目まで許容されない。AS以外の適用症に使用される短期(2週間以内)の経口、IV、IM、又は硬膜外コルチコステロイドは、治療医師の意見において、適切な代替物がない状況に限定されるべきである。コルチコステロイドの吸入、耳、眼、鼻腔内、及び粘膜送達の他の経路は、試験の過程を通して許容される。
【0390】
特に試験の最初の16週間、関節内コルチコステロイド注射を避ける試みが行われる必要がある。しかしながら、必要であれば、対象は、試験の60週間の間、2つ以下の影響を受けた部位で、2つ以下の関節内、腱鞘、又は滑液嚢コルチコステロイド注射を受けてもよい。単一の関節において重度の圧痛又は腫れがある場合、対象は、関節内コルチコステロイド注射を受ける前に感染について評価されることが勧められる。
【0391】
非ステロイド性抗炎症性薬物及び他の鎮痛薬
安定した用量のNSAID及び他の鎮痛剤の使用が許容される。
【0392】
アスピリン及び選択的シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤を含むNSAID、並びに他の鎮痛剤で処置された対象は、試験が行われている国で認可されている通常の市販用量を受けるべきであり、試験薬剤の最初の投与の少なくとも2週間前に安定投与量を服用しているべきである。16週目に、NSAID及び他の鎮痛剤の用量及び種類は、対象が容認できない副作用を生じた場合にのみ変更されてもよい。16週目~60週目に、1回用量の減少が許容される。そうでなければ、NSAID及び他の鎮痛剤の処方は、対象が容認できない副作用を生じた場合にのみ変更されてもよい。
【0393】
カプサイシン及びジクロフェナクを含む局所鎮痛剤の使用が許容される。
【0394】
この試験では、アスピリンは、心臓血管又は脳血管疾患のために処方された低用量アスピリンを除いて、NSAIDと見なされる。
【0395】
疾患変性抗リウマチ薬/全身性免疫抑制薬
MTX、SSZ、及びHCQを除く疾患変性抗リウマチ薬/全身性免疫抑制薬は、試験薬剤の最初の投与の少なくとも4週間前に中止する必要があり、60週目までは禁止される。これらのDMARDとしては、クロロキン、金製剤、ペニシラミン、及びレフルノミドが挙げられるが、これらに限定されない。対象が試験薬の最初の投与前3か月以内にレフルノミドを投与された場合、対象は薬物排除措置を受ける必要がある。60週までの禁忌の全身性免疫抑制薬には、シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、及びアザチオプリンが含まれるが、これらに限定されない。全身性免疫抑制剤は、コルチコステロイドを指すものではない。
【0396】
生物学的薬剤、細胞毒性剤又は治験薬
生物学的薬剤(卵、SCゴリムマブ、アナキンラ、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、アレファセプト、エファリズマブ、リツキシマブ、ナタリズマブ)、細胞毒性剤(卵、クロラムブシル、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスター、他のアルキル化剤)、又は治験薬は試験の60週の際に許容されない。これらの薬物のいずれかが使用されている場合、対象は更なる試験薬の注入を中止されるであろう。
【0397】
補完療法
60週間の試験期間中は、アーユルヴェーダ医学、漢方薬、又は鍼などの非薬物療法を含む補完療法の使用は許容されない。
【0398】
試験評価
有効性
評価
Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標
BASDAIは、以下に定義される。
以下の基準でVAS(0~10cm)を使用した対象の自己評価:
A.倦怠感
B.脊髄痛
C.関節痛
D.付着部炎
E.定性的な朝のこわばり
F.定量的な朝のこわばり
BASDAI=0.2(A+B+C+D+0.5[E+F])。
【0399】
Bath強直性脊椎炎機能的指標
BASFIは、10個の質問の平均(VAS;0~10cm)として表される対象の自己評価であり、10個の質問のうちの8個は対象の機能的な解剖学に関するものであり、10個の質問のうちの2個は日常生活に対処する対象の能力に関するものである。スケールに沿った増加は、状態が悪化していることを示す。
【0400】
患者の総合評価
患者の疾患活動性の総合評価は、VASに記録される(0~10cm;0=非常に良好、10=非常に悪い)。
【0401】
全背部痛
対象は、VAS(0~10cm;0=痛みなし、10=最も重度の痛み)で、過去1週間にわたるその平均全背部痛を評価するように依頼される。
【0402】
夜の背部痛
対象は、VAS(0~10cm;0=痛みなし、10=最も重度の痛み)で、過去1週間のその夜間の背部痛を評価するよう依頼される。
【0403】
筋骨格の評価
筋骨格系の評価には、BASMIの各構成要素、付着部炎指数、及び胸郭拡張が含まれる。
【0404】
筋骨格評価を実施する際に適切なトレーニング及び経験を有する独立した筋骨格評価因子(independent musculoskeletal assessor、IMA)は、全ての筋骨格評価を行うために各試験実施機関で指定される。対象についてのベースライン筋骨格評価を行う同じIMAはまた、52週目までの全ての後続の訪問において、その対象について筋骨格評価を実施すべきであることが強く推奨される。
【0405】
治験依頼者は、各部位における最初の対象のスクリーニング前に、各部位の指定されたIMAについてトレーニングを提供する。バックアップIMAは、対象の試験訪問のための筋骨格評価を行う前にトレーニングを完了する必要がある。各IMAのトレーニング文書は、試験部位で維持されるべきである。可能な場合、試験実施機関における独立した評価者は、試験中に変更されるべきではない。
【0406】
IMAが過去3年以内の以前の臨床試験において、治験依頼者によってトレーニングされ、このトレーニングの適切な文書(証明書)が存在する場合、そのトレーニングは、この試験に充分であると見なされる。ただし、試験開始前にトレーニングを繰り返すことを勧める。
【0407】
ある機関で筋骨格評価を行っている全てのIMAは、試験実施機関の委任ログに記載されている必要があり、訪問ごとにソースドキュメントに文書化されている必要がある。
【0408】
28週以降、筋骨格系の評価者はもはや独立している必要はない。しかしながら、筋骨格系の評価者を試験中に変更しないことが推奨される。
【0409】
Bath強直性脊椎炎計測(Metrology)指標
BASMIは、5つの要素(0から10の範囲)の総合スコアとして表され、表6に示すようにファンデルハイデ計算を使用して計算される。
【0410】
【表7】
外側腰椎屈曲、耳珠から壁までの距離、及び頸椎回転については、左右の平均をとる必要がある。スコアが0~10の範囲外にある場合、0又は10の値をそれぞれ使用する必要がある。
【0411】
BASMIlinは、5つのSスコアの平均である。
【0412】
5つの成分の評価(A)は部位で収集され、スコア(S)は、分析が行われたときの評価に基づいてプログラム的に計算される。
【0413】
強直性脊椎炎応答基準における評価
ASAS国際作業部会(ASAS20)の基準による応答の20%改善は、次のように定義される:
1. 以下の4つのドメインのうち少なくとも3つにおいて、0~10cmスケールでベースラインから≧20%の改善、及び少なくとも1つのベースラインからの絶対的な改善:
i.患者のグローバル
ii.全背部痛
iii.機能(BASFI)
iv.炎症(朝のこわばりに関するBASDAIの最後の2つの質問の平均)
2. 潜在的な残りのドメインにおけるベースラインからの劣化(≧20%、及び0~10cmスケールで少なくとも1の悪化)。
【0414】
ASAS40は、4つのドメインの3つにおける≧40%の改善として定義され、0~10cmのスケールで少なくとも2の絶対的な改善、及び残りのドメインにおける劣化はない。
【0415】
ASAS 5/6は、疼痛(VAS 0~10cm)、患者全体(VAS 0~10cm)、機能(BASFIスコア)、朝のこわばり(BASDAI)、CRP、及び脊椎の可動性(腰椎側屈)の6つのドメインのいずれか5つにおける≧20%の改善として定義される。
【0416】
低い疾患活動性
低レベルの疾患活動性は、上述の4つのASASドメインのそれぞれにおいて0~10cmのスケールで2未満の値として定義される「ASAS部分寛解」の基準によって測定される。
【0417】
強直性脊椎炎の疾患活動性スコア
脊椎関節炎国際学会(ASAS)の評価は、AS、ASDASで使用するための疾患活動性スコア(DAS)を発展させてきた。この試験では、次の式を使用してASDASスコアを計算する。
ASDAS=0.121×全背部痛+0.058×朝のこわばりの持続時間+0.110×患者の総合評価+0.073×末梢疼痛/腫脹+0.579×Ln(CRP(mg/L)+1)。
【0418】
ASDASの主な改善は、減少≧2.0.として定義される。非活動性疾患は、ASDASスコア<1.3として定義される。
【0419】
ASDASにおける臨床的に重要な改善は、減少≧1.1として定義される。
【0420】
付着部炎指数
付着部炎は、AS及び他の脊椎関節症の重要な特徴である。この試験では、臨床研究で使用されている現在のカリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California San Francisco、UCSF)の付着部炎指数が設定される。IMAによるリストされた靱帯付着部の評価によって、総付着部炎スコアを決定することができる(表7)。
【0421】
【表8】
【0422】
靭帯付着部は、0(圧痛なし)又は1(圧痛あり)のいずれかとしてスコア化される。
【0423】
胸郭の拡張
胸郭の拡張は、cmで表される、最大吸息及び最大呼気における胸郭の円周間の差である。男性の第4肋間腔のレベル、及び女性の乳房の真下のレベルで測定される。
【0424】
36項目略式健康調査
医学的転帰試験の健康指標SF-36アンケートは、ランド医療保険検査の一部として開発されたものであり、以下の8つのマルチアイテムスケールからなる。
・健康問題による身体機能の制限;
・身体健康問題による、通常の役割活動の制限;
・身体疼痛:
・全般的な精神的健康(心理的苦痛及び幸福);
・個人的又は感情的な問題による通常の役割活動における制限;
・身体的又は精神的な健康問題による社会的機能の制限;
・活力(元気及び倦怠感);
・一全般的健康知覚。
【0425】
これらのスケールは、0~100でスコア化され、より高いスコアはより良好な健康を示す。別のアルゴリズムでは、2つの集計スコア、身体的健康度(PCS)及び精神的健康度(、MCS)が得られる。これらのサマリスコアはまた、健康状態が良好であることを示すより高いスコアで尺度化されるが、ノルムベースシステムを用いて尺度化され、このとき、一般の米国母集団の基準に基づいて、線形変換を実施してスコアを平均50及び標準偏差10に変換する。SF-36によって測定される概念は、年齢、疾患又は処置群に対して特異的ではなく、様々な疾患の相対的な負荷、及び様々な治療の相対的な利益を比較することが可能になる。
【0426】
医学的転帰試験睡眠スケール
睡眠障害の程度は、MOS-SSを使用して評価される。MOS-SSは、開始、維持(egg,眠り)、量、妥当性、眠り(egg,眠気)、及び呼吸障害(egg,息切れ、いびき)を含む、6次元の睡眠を測定する。MOS睡眠スケールは、全般的な健康指標であり、健康関連の生活の質(health-related quality of life、HRQOL)概念-睡眠を評価することであり、これは、皆の健康状態及び福利に関連し、また疾患及び処置によって直接影響を受けることが知られている。したがって、MOS-SSは、任意の年齢、疾患、又は処置群に特有ではない。MOS-SSの信頼性及び妥当性は、神経障害性疼痛及びRAを含む多数の疾患領域において評価されている。
【0427】
強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)アンケート
強直性脊椎炎の生活の質は、自己記入式の患者報告転帰手段である。それは、睡眠、気分、動機、対処能力、日常生活活動、自立、人間関係、社会生活に対する痛みの影響に関する質問に対して「はい」又は「いいえ」の回答を求める18項目で構成されている。1のスコアは、各アイテム上の「はい」の応答に与えられ、全ての項目スコアは、0~18の範囲の合計スコアに合計される。より高いスコアは、健康に関係する生活の質を悪化させることを示す。対象は、この手段を4分未満で完了させることができる。
【0428】
EQ-5Dアンケート
EuroQol-5D(EQ-5D)は、EuroQoL群によって開発された健康状態の標準化された尺度であり、臨床的及び経済的な評価(EuroQoL Group、1990)の健康の単純な一般的尺度を提供する。EQ-5Dは、幅広い健康状態及び処置に適用できる。EQ-5Dは、本質的に、2つの要素:EQ-5D記述系及びEQビジュアル類似体スケール(EQ VAS)から本質的になる。EQ-5D記述系は、以下の5次元:移動性、自己ケア、通常の活動、疼痛/不快感、及び不安/うつ病を含む。各次元は、問題なし、わずかな問題、中程度の問題、深刻な問題、及び極端な問題の5レベルである。レスポンデントは、5つの次元のそれぞれにおいて最も適切な陳述に対して、ボックス内の身長を目印する(又は十字を配置する)ことによって、自分の健康状態を示すように依頼される。この決定は、その次元に対して選択されたレベルを表す1桁の数をもたらす。5次元の桁は、応答者の健康状態を記述する5桁の数字で組み合わせることができ、これは、それぞれの次元のレベルのそれぞれに値(重みとも呼ばれる)を取り付ける式を適用することにより、1つの要約指標(EQ-5D指標)に変換され得る。EQ VASは、回答者の自己評価による健康状態を縦線で記録する。VASでは、エンドポイントに「最良の健康状態」及び「最悪の健康状態」と表示される。EQ VASは、個々の応答者によって判定される健康転帰の定量的尺度として使用することができる。
【0429】
エンドポイント
一次エンドポイント
この試験の一次エンドポイントは、16週目にASAS20応答を達成する対象の割合である。
【0430】
試験は、16週目のASAS20を有する対象の割合が、プラセボ群と比較してゴリムマブ群において統計的に有意に大きくなることが実証される場合、陽性であると考えられる。
【0431】
主要な二次エンドポイント
以下の主要な二次エンドポイントは、以下に指定されるような重要性の順序で列挙される。
1. 16週目にASAS40応答を達成した対象の割合。
2. 16週目にBASDAIにおけるベースラインから少なくとも50%の改善を達成する対象の割合。
3. 16週目にBASFIにおけるベースラインからの変化。
【0432】
他の二次エンドポイント
制御された二次エンドポイント(多重度についてのタイプI誤差率の制御を伴う)。
以下の制御された二次エンドポイントは、一次及び主要な二次エンドポイントに加えて分析され、以下に指定されるような重要性の順序で列挙される。
1. 16週目のSF-36 PCSにおけるベースラインからの変化。
2. 16週目のSF-36 MCSにおけるベースラインからの変化。
3. 16週目に低レベルの疾患活動性(ASAS部分寛解)を達成する対象の割合。
4. 16週目のASQoLにおけるベースラインからの変化。
5. 16週目にBASMIにおけるベースラインからの変化。
【0433】
多重度を制御するために、一次及び全ての主要な二次エンドポイントが統計的有意性を達成するときにのみ、上記の順序に従って順次試験される。
【0434】
他の二次エンドポイントとして挙げられるもの
一次、主要二次、及び制御された二次エンドポイントに加えて、以下のエンドポイントが評価される。
1. 2週目にASAS20応答を達成する対象の割合。
2. ASAS20応答及びASAS40応答を経時的に達成する対象の割合。
3. 低疾患活性を達成する対象の割合(ASAS部分寛解)。
4. BASFIにおけるベースラインの経時的な変化。
5. BASMIにおけるベースラインからの経時変化。
6. SF-36のPCS及びMCSスコアにおけるベースラインからの経時的な変化。
7. 経時的に<3のBASDAIスコアを達成する対象の割合。
8. ASDASにおけるベースラインからの経時変化。
9. 経時的にASDAS主改善(減少≧2.0)を達成する対象の割合。
10. ASDAS非活動性疾患(<1.3)を経時的に達成する対象の割合。
11. ベースラインで付着部炎を有する対象における付着部炎スコアにおけるベースラインからの経時的な変化。
12. ASQoLスコアにおけるベースラインからの経時的な変化。
【0435】
対象の完了/離脱
完了
対象は、試験の60週目で評価を完了した場合、試験を完了したと考えられる。いずれの理由についても、試験処置を時期尚早に中止する対象は、試験を完了しているとは見なされない。
【0436】
試験からの離脱
以下の理由のいずれかの場合、対象は試験から離脱させられる。
・追跡調査不能
・同意の撤回
・死亡
【0437】
対象が追跡調査不能の場合、対象に接触し、中止/離脱の理由を判定するために、試験実施機関の職員によってあらゆる妥当な努力を行う必要がある。追跡調査するためにとられた測定値は文書化される必要がある。
【0438】
対象が試験を完了する前に中止する場合、中止の理由は、eCRF及び原資料に文書化する必要がある。中止した対象に割り当てられた試験薬は、別の対象に割り当てられなくてもよい。離脱する対象は交代されない。処置終了前に対象が試験薬剤投与を中止した場合、処置後評価を得る必要がある。
【0439】
主試験に残ったままでの任意選択の研究試料の収集への参加の撤回
対象は、試験に残ったまま、任意選択の研究試料についての同意を撤回することができる。かかる場合、任意選択の研究試料が破棄される。試料破壊プロセスは、上記のように進む。
【0440】
将来の研究における試料の使用の撤回
対象は、研究のために試料を使用するために同意を撤回することができる。かかる場合、試料は、臨床試験に必要とされなくなった後に破棄される。研究のための試料保持の詳細は、任意の研究試料について、主ICF及び別個のICFに提示される。
【0441】
統計的方法
連続変数のn、平均、SD、中央値、IQ範囲、最小値、及び最大値、並びに離散変数の数及び百分率などの単純な記述要約統計を使用して、ほとんどのデータを要約する。
【0442】
特に明記しない限り、抗TNFα療法の以前の使用によって階層化されたコクラン-マンテル-ヘンツェル(CMH)検定を使用して、処置に応答する対象の割合などのカテゴリー変数を比較する。一般に、抗TNFα療法を因子として使用する前のANOVAは、特に明記しない限り、連続変数を分析するために使用される。全ての統計的試験は、α=0.05(両側検定)で行われる。統計分析に加えて、グラフデータ表示(卵、折れ線グラフ)及び対象リストもまた、データを要約/提示するために使用され得る。
【0443】
対象情報の有効性分析及び概要は、処置意図集団(即ち、全ての無作為化対象)に基づく。有効性分析に含まれる対象は、割り当てられた治療を受けるか否かに関わらず、割り当てられた処置群に従って要約される。
【0444】
安全性及びPK分析は、試験処置の少なくとも1回の投与を受けた全ての対象を含む。
【0445】
有効性解析
一次評価項目分析
この試験の一次エンドポイントは、16週目にASAS20応答を達成する対象の割合である。
【0446】
主要な目的に対処するために、16週目にASAS20応答を達成する対象の割合は、0.05(2面)の有意水準で抗TNFα療法(はい又はいいえ)を使用して階層化されたCMH試験を用いて、プラセボ群とゴリムマブ群との間で比較される。
【0447】
この主有効性分析では、全ての無作為化された対象からのデータは、それらの実際の治療を受けたかに関わらず、それらの割り当てられた処置群に従って分析される。対象が16週目に少なくとも1つのASAS成分のデータを有する場合に、欠測ASAS成分を割り振るために、最後の観測値の繰り越し(LOCF)手順が使用される。対象が16週目に全てのASAS成分のデータを有しない場合、対象は、非応答者と見なされる。更に、処置失敗規則が適用される。
【0448】
加えて、サブグループ分析は、人口統計的特性、ベースライン疾患特性、及びベースライン薬剤による一次有効性エンドポイントにおける一貫性を評価するために行われる。サブグループと処置群との間の相互作用検定も、必要に応じて提供される。
【0449】
主要な二次分析
以下の主要な二次分析は、以下に指定されるような重要性の順序で行われる。
1. 16週目にASAS40を達成する対象の割合をまとめて、処置群間で比較する。
2. 16週目にBASDAIのベースラインから少なくとも50%の改善を達成する対象の割合をまとめて、処置群間で比較する。
3. 16週目におけるBASFIにおけるベースラインからの変化をまとめて、処置群間で比較する。
【0450】
2つの処置群(1つの統計的比較)のみが存在するため、各有効性エンドポイント内で多重度を調節する必要はない。
【0451】
多重度についてのタイプI誤差率を制御するために、第1の主要な二次エンドポイントは、一次エンドポイントが0.05の有意水準(両側検定)で統計的有意性を達成した場合にのみ試験される。続く主要な二次エンドポイントは、一次エンドポイント及び前述の主要なセ二次エンドポイントが、0.05の有意水準(両側検定)で統計的に有意である場合にのみ試験される。
【0452】
他の計画された有効性分析
制御された二次エンドポイント(多重度についてのタイプI誤差率の制御を伴う)。
以下の有効性分析は、一次及び主要な二次分析に加えて行われる。
1. 16週目におけるSF-36 PCSのベースラインからの変化をまとめて、処置群間で比較する。
2. 16週目におけるSF-36 MCSのベースラインからの変化をまとめて、処置群間で比較する。
3. 16週目に低レベルの疾患活性(ASAS部分寛解)を達成する対象の割合をまとめて、処置群間で比較する。
4. 16週目でASQoLのベースラインからの変化をまとめて、処置群間で比較する。
5. 16週目でBASMIのベースラインからの変化をまとめて、処置群間で比較する。
【0453】
多重度について制御するために、上記の分析は、全ての一次及び主要な二次エンドポイントが統計的有意性を達成したときにのみ、上記の順序に従って順次実施される。そうでなければ、公称P値が提供される。
【0454】
他の二次エンドポイントとして挙げられるもの
以下のエンドポイントは、処置群によって要約される。エンドポイントの訪問が指定されていない場合、要約は52週まで経時的である。処置群間の比較は、16週目の前の訪問時及び16週目に行われる。
1. 2週目にASAS20応答を達成する対象の割合は、処置群によって要約され、群間で比較される。
2. ASAS20応答及びASAS40応答を達成する対象の割合。
3. 低疾患活性を達成する対象の割合(ASAS部分寛解)。
4. BASFIにおけるベースラインの変化。
5. BASMIにおけるベースラインからの変化。
6. SF-36のPCS及びMCSスコアにおけるベースラインからの変化。
7. <3のBASDAIスコアを達成する対象の割合。
8. ASDASにおけるベースラインからの変化。
9. ASDAS主要改善を達成する対象の割合(減少≧2.0)。
10. ASDAS非活動性疾患を達成する対象の割合(<1.3)。
11. ベースラインにおいて付着部炎を有する対象における付着部炎スコアにおけるベースラインからの変化。
12. ASQoLスコアにおけるベースラインからの変化。
【0455】
エンドポイントの基準
試験は、16週目のASAS20を有する対象の割合が、プラセボ群と比較してゴリムマブ群において統計的に有意に大きくなることが実証される場合、陽性であると考えられる。
【0456】
試験薬情報
試験薬の物理的記述
ゴリムマブ
IV投与用の50mgゴリムマブ最終バイアル製品(FVP)は、4mLのI型ガラスバイアル中にCNTO 148 IgGを含有する使い捨て滅菌溶液として供給される。各バイアルは、pH5.5のヒスチジン、ソルビトール、及びポリソルベート80の水性媒体中の12.5mg/mLゴリムマブの4mL溶液を含む。防腐剤は存在しない。
【0457】
プラセボ
通常の生理食塩水が、単回使用注入バッグ内でIV注入用の滅菌液体として供給される。防腐剤は存在しない。
【0458】
調製、取り扱い、及び保管
試験施設では、ゴリムマブ溶液のバイアルを2℃~8℃(35.6°F~46.4°F)の安全な冷蔵庫に保管し、凍結せず、遮光する。製品の激しい振盪を避けるべきである。投与前に、製品は、粒子状物質及び変色に関して視覚的に検査されるべきである。変色、可視粒子、又は他の異物が溶液中に観察される場合、製品は使用されるべきではない。
【0459】
ガラスバイアル瓶中の試験薬剤は、使用の準備が整う。試験薬剤のIV注入は、盲検薬剤師又は他の適切に許諾された及び許可された人員によって、対象の体重に従って調製される。薬剤師又は他の適切に許諾され、認可された職員は、適切な数のバイアルを使用して必要な量の試験薬剤を調製する。
【0460】
無菌手順は、試験材料の調製及び投与中に使用される必要がある。日光への曝露は、調製及び投与中に回避されるべきである。
【0461】
結果及び結論
活動性強直性脊椎炎を有する成人患者における静脈内ゴリムマブの安全性及び有効性のための28週までの結果:
導入:
GO-ALIVEは、活動性ASを有する成人患者におけるIVゴリムマブの安全性及び有効性を評価するために設計された第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。患者(年齢≧18歳)は、明確なAS(改訂ニューヨーク基準に準拠)及びBASDAI≧4、全背部痛ビジュアルアナログスケール≧4、及びCRP≧0.3mg/dLの診断を受けた。患者は、0週目、4週目及び8週ごとのIVゴリムマブ2mg/kg、又は16週目にゴリムマブにクロスオーバーする0週目、4週目、及び12週目のプラセボに無作為化された(1:1)。最大20%の患者は、以前の抗TNF薬(ゴリムマブ以外)を有し得、患者の最大10%は、脊椎の完全な強直性を有し得る。一次エンドポイントは、16週目におけるASAS20であった。主要な二次エンドポイントは、16週目におけるASAS40、BASDAI50、及びBASFIスコアの変化であった。他の統計的に制御された評価はBASMI、ASAS部分寛解、SF-36 PCS/MCS、及びASQoLであった。患者は、有害について監視され、28週目までのデータをここに報告する。全ての研究者及び何人かの治験依頼者の職員は、試験の終了(60週目)まで処置群について盲検化されたままである。したがって、個々の患者に対する処置群の割り当ては、ここでは報告されていない。
【0462】
結果:
208人の患者を無作為化し、試験薬剤を投与した(プラセボ:103人;ゴリムマブ:105人)。ベースラインの人口統計学的及び疾患の特徴は処置群間で類似していた。患者の78%は男性であり、平均年齢は39歳であり、平均疾患持続期間は5.5年であり、89.9%はHLA-B27陽性であり、5.8%は完全な脊椎強直症を有し、14.4%は過去に抗TNFを使用した。16週目には、プラセボよりもゴリムマブ患者の方が、ASAS20(73.3%対26.2%)、ASAS40(47.6%対8.7%)及びBASDAI50(41.0%対14.6%)の応答を有意に大きな割合で有した(全て、p<0.001;表)。BASFIの減少もゴリムマブで有意に大きかった。16週目では、SF-36 PCS/MCS及びASQoLの改善は、プラセボ群よりもゴリムマブ群の方が有意に大きかった。ASAS20は、早くも2週間で、プラセボよりもゴリムマブの方が有意に高かった(37.1%対19.4%;p=0.005)。ゴリムマブ群における応答は、28週目まで維持された。16週目でゴリムマブに交差したプラセボ患者は、20週目における臨床応答の改善を有し、これは28週目まで維持された。16週目までに、プラセボ患者の23.3%、及びゴリムマブ患者の32.4%が、≧1のAEを有していた。感染症が、最も一般的なAEであった(プラセボ、7.8%;ゴリムマブ、11.4%)。28週目までに、全てのゴリムマブ処置患者の34.8%が≧1AEを示した。鼻咽頭炎(5.4%)は最も一般的であった。2人の患者(1.0%)が、SAEを有した(膵炎、n=1;肺炎、n=1)。28週目まで、日和見感染症、悪性腫瘍、又は死亡はなく、輸注反応率は低かった(1.4%)。3名の患者に4つの反応が有したが、重篤又は重度なものはなかった。
【0463】
結論:
IVゴリムマブ2mg/kgは、プラセボと比較して、ASの徴候及び症状の低減に有効であった。ゴリムマブは、28週目まで十分に忍容され、安全性プロファイルは、SCゴリムマブを含む他の抗TNFと一致した。
【0464】
【表9】
【0465】
【表10】
【0466】
強直性脊椎炎患者の健康関連の生活の質に対する抗TNFαモノクローナル抗体である静脈内ゴリムマブの効果:第III相GO-ALIVE試験の1年間の結果
背景/目的:
強直性脊椎炎(AS)を有する患者では、抗TNFα抗体ゴリムマブ(GLM-IV)のIV投与により、GO-ALIVE試験において、16週目又はそれより早くにプラセボ(PBO)よりも大きい、疾患のさまざまな状況の複合尺度(例えば、ASAS応答百分率、BASDAI及びBASFI)の改善がもたらされた(Deodharら J Rheum.2018;45:341)。α改善は、最大で1年間の処置の間、維持された(Reveilleら J Rheum.2019年.DOI:10.3899/jrheum.180718)。ここでは、健康関連の生活の質(HRQoL)に関する処置効果を調べる。
【0467】
方法:
明確なAS(改訂NY基準に準拠)、4以上のBASDAI、4以上の全背部痛VAS、0.3mg/dL以上のCRP及びNSAIDに対する不十分な応答を示す成人患者を、0週目及び4週目、次に8週間ごとに、GLM-IV 2mg/kg、又は0週目及び4週目にPBO、並びに、16週目及び20週目、次に8週間ごとにGLM-IV、に無作為化した。ベースラインでこれらの薬剤を投与されていた患者には、安定した用量のメトトレキサート(≦25mg/週)、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、NSAID、その他の鎮痛薬、及び低用量の経口コルチコステロイドを許可した。HRQoLの指標には、強直性脊椎炎の生活の質に関するアンケート(ASQoL)、項目略式身体的及び精神的コンポーネントサマリースコア(SF-36 PCS/MCS)、医学的転帰試験睡眠スケール(MOS-SS)、及びEuroQoLビジュアルアナログスケール(EQ VAS)が含まれ、各々16、28、及び52週目に測定された。提示するP値は名目値であり、多重度の調整はしていない。
【0468】
結果:
最初の評価(8週目)において、GLM IVの投与を受けたASを有する患者は、HRQoL尺度であるASQoL;SF-36 PCS;SF-36 MCS;MOS-SS;及びEQ VASにおいて、PBOを服用している患者よりも有意に高いベースラインからの改善を有した(表10)。16週目に、GLM-IVの投与を受けたAS患者はまた、各尺度において、それぞれPBOの投与を受けた患者よりもより大きなHRQoLのベースラインからの改善を有した(ASQoL、-5.4対-1.8 SF-36 PCS、8.5対2.9;SF-36 MCS、6.5対0.78;MOS-SS、6.6対2.5;及びEQ VAS、20.3対4.8;全てp<0.001);表10を参照されたい。ベースラインからの変化は、GLM-IVに無作為化した患者において52週目まで維持された。16週目にPBOからGLMIVに切り替えた患者は、28週目までにベースラインからの改善を示し、これは52週目まで維持され、ベースラインでGLM IVを投与された患者と同様であった(表)。
【0469】
結論:
GLM-IVで処置された活動性AS患者の中でのHRQoLの改善は、8週目でPBOよりも有意に大きく、52週目まで維持された。16週目にPBOからGLM-IVに切り替えた患者は、28週目までにHRQoLの改善を経験し、52週目まで、最初にGLM-IVに無作為化された患者と同様のレベルで改善を維持した。
【0470】
【表11】
【0471】
初期疾患を有する強直性脊椎炎患者における静脈内ゴリムマブの有効性及び安全性:GO-ALIVE試験の52週目までの結果
背景:
GO-ALIVE試験では、強直性脊椎炎を有する患者における静脈内(IV)ゴリムマブの有効性及び安全性を評価した。
【0472】
目標:
この事後分析において、有効性転帰及び強直性脊椎炎の生活の質(ASQoL)を、初期疾患(<2年の持続期間)を有する強直性脊椎炎患者のサブセットにおいて評価した。
【0473】
方法:
GO-ALIVEは、第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験とした。患者は、明確な強直性脊椎炎(改訂ニューヨーク基準に準拠)、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI)≧4、全背部痛ビジュアルアナログスケールスコア≧4及びC反応性タンパク質≧0.3mg/dLを有した。患者は、0週目、4週目、次いで8週間ごと(q8w)にIVゴリムマブ2mg/kgに、又は16~52週目にIVゴリムマブとのクロスオーバーを伴う、0週目、4週目及び12週目のプラセボに無作為化した(1:1)。一次エンドポイントは、16週目における脊椎関節炎国際協会(ASAS)20の評価とした。他の転帰には、ASAS40、BASDAI50、Bath強直性脊椎炎機能指標(BASFI)、Bath強直性脊椎炎計測指標(BASMI)、強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)応答(非活動性疾患、主要かつ臨床的に重要な改善)、ASQoL、夜の背部痛及び全背部痛、並びに付着部炎(UCSF指数[0~17])が含まれた。重篤な事象を含めた、処置により出現した有害事象を評価した。
【0474】
結果:
初期疾患を有する84人の患者(38人のプラセボ、46人のIVゴリムマブ)(平均年齢36.7歳、73.8%が男性、79.8%がHLAB 27に陽性)は、プラセボの場合0.8年、及びIVゴリムマブの場合0.9年の、疾患の平均持続期間を有した。16週目に、数字上、より大きな割合のIVゴリムマブ患者が、ASAS20を達成し(IVゴリムマブ72%対プラセボ26%)、SAS40、BASDAI50、BASFI及びBASMIについて、一貫した応答パターンが見られた(表11)。同様に、16週目において、数字上、より大きな割合のIVゴリムマブ患者が、プラセボ(ASDASの大きな改善及び臨床的に重要な改善それぞれ5%及び16%)に対して、ASDASの大きな改善(59%)及び臨床的に重要な改善(78%)を達成した;全ての有効性転帰についての応答率は、IVゴリムマブを継続した患者では、52週目まで維持され、W16でIVゴリムマブにクロスオーバーした患者は、52週目に同様の応答を示した。IVゴリムマブの投与を受けた患者はまた、プラセボと比較して、16週目及び52週目に、数字上、ASQoL及び夜の背部痛/全背部痛のより大きな改善を有した(図19)。16週目におけるIVゴリムマブによる付着部炎の改善(平均変化:プラセボの場合の-0.9に対して-2.3)は、52週目まで維持され(-2.1)、プラセボからIVゴリムマブにクロスオーバーした患者でも同様であった(-2.8)。初期疾患を有する患者のこの部分集団からの、重篤な有害事象を含む安全性データは、試験集団全体に類似していた。
【0475】
【表12】
【0476】
結論:
この事後分析により、初期疾患を有する強直性脊椎炎患者のサブセットにおいて、IVゴリムマブが徴候及び症状及びASQoLの臨床的に意味のある改善を実現することが示唆される。
【0477】
GO-ALIVE試験の52週目までの初期疾患強直性脊椎炎患者における、後期疾患を有する患者と比較した静脈内ゴリムマブの有効性及び安全性
目標:
この事後分析では、初期疾患(ED)を有する強直性脊椎炎(AS)患者において、GO-ALIVE試験における、対後期疾患(LD)を有する患者と比較したIV GLMの有効性及び安全性を、炎症性背部痛(IBP)の患者報告持続期間に基づいて評価した。
【0478】
方法:
この第3相の二重盲検プラセボ(PBO)対照試験では、活動性ASを有する患者を無作為化(1:1)し、0週(W)目、W4に、次いでQ8Wで2mg/kgのIV GLMを投与したか、又はW0、W4及びW12にPBOを投与し、W16、W20、次いで52週目までQ8WでIV GLMにクロスオーバーした。一次エンドポイントは、W16における脊椎関節炎国際協会(ASAS)20の達成とした。この分析では、208人の患者を、IBP症状の持続期間に基づいて四分位数に群分けした。EDを有する60人の患者(第1の四分位数)における有効性及び安全性を、LDを有する52人の患者(第4の四分位数)と比較した。
【0479】
結果:
試験集団全体について、IBP症状の平均持続期間は10.9年であり、診断からの平均期間は5.5年であった。ED患者の場合、IBP症状の平均持続期間は2.3年(IV GLM);2.6年(PB)であり、LD患者の場合、23.5年(IV GLM)、24.4年(PBO)であった。W16において、ASAS20は、EDを有するPBO患者32%に対してIV GLM72%で、及びLDを有するPBO患者21%に対してIV GLM67%で達成された。EDを有する患者は、ASAS40、Bath強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI)50、Bath強直性脊椎炎機能指標(BASFI)、Bath強直性脊椎炎計測指標(BASMI)及び強直性脊椎炎疾患活動性スコア(ASDAS)非活動性疾患を含む、より厳密なエンドポイントにわたって、LDを有する患者よりも数字上、良好な応答及び大きな改善を有した(表12)。IV GLMで処置された患者の中での応答率は、ED及びLDサブグループの両方において1年を通して概ね一貫していた。同様に、ED及びLDサブグループでは、W16においてIV GLMにクロスオーバーした患者は、W0において、IV GLMを開始した患者と一致する応答をW52に示した。W16では、付着部炎の改善は、ED(平均変化は、IV GLMの場合の-2.9対PBOの場合の0.1)及びLD(平均変化は、IV GLMの場合の-2.5対PBOの場合の0.6)を有する患者の場合、同様であった。応答は、ED及びLD患者の場合、W52で維持された。1年までの処置により出現した有害事象及び重症な有害事象は、それぞれ、LD患者の場合、61%及び2%であるのに比較して、ED患者の場合、46%及び3%であった。
【0480】
【表13】
【0481】
結論:
IV GLMは、ED及びLDを有する患者におけるASの徴候及び症状において臨床的に意味のある改善を実現したが、EDを有する患者における有効性が、数字上、優れていた。これは、迅速な診断及び早期処置の原則を支持するものである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
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【国際調査報告】