(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】複式溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/173 20060101AFI20231218BHJP
B23K 9/073 20060101ALI20231218BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20231218BHJP
B23K 9/10 20060101ALI20231218BHJP
B23K 9/09 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B23K9/173 E
B23K9/073 545
B23K9/12 305
B23K9/10 Z
B23K9/09
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536928
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021085815
(87)【国際公開番号】W WO2022129122
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504380611
【氏名又は名称】フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ゼリンガー・ドミニク
【テーマコード(参考)】
4E001
4E082
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB08
4E001DB01
4E001DD02
4E001DD04
4E001DE02
4E001DE04
4E082AA03
4E082AA04
4E082AB01
4E082BA01
4E082BA04
(57)【要約】
少なくとも2つの溶融電極3A,3Bでの安定した溶接工程と、複式インパルス溶接方法に比べて小さい母材6中への入熱量とを可能にする複式溶接方法をこれらの溶融電極3A,3Bによって提供するため、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1とこの短絡溶接フェーズSPA1,SPB1に比べて高い当該母材6中への入熱量を呈する熱溶接フェーズSPA2,SPB2とを有するそれぞれ1つの溶接工程が、当該少なくとも2つの電極3A,3Bで実行され、当該短絡溶接フェーズSPA1,SPB1と当該熱溶接フェーズSPA2,SPB2とは周期的に交互し、当該少なくとも2つの電極3A,3Bのこれらの溶接工程の当該短絡溶接フェーズSPA1,SPB1、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1ごとの決定された少なくとも1つの第1同期イベントSEA1,SEB1に基づいて時間同期されることが本発明にしたがって提唱されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの溶融電極(3A,3B)によって母材(6)に対して複式溶接方法を実行するための方法であって、
それぞれの電極(3A,3B)で、前記電極(3A,3B)と前記母材(6)との間のアークの点弧後に、1つの溶接工程が実行され、
少なくとも2つの電極(3A,3B)のこれらの溶接工程が時間同期される当該方法において、
短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)とこの短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)に比べて高い前記母材(6)中への入熱量を呈する熱溶接フェーズ(SPA2,SPB2)とを有するそれぞれ1つの溶接工程が、前記少なくとも2つの電極(3A,3B)で実行され、
前記短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)と前記熱溶接フェーズ(SPA2,SPB2)とは周期的に交互し、
前記少なくとも2つの電極(3A,3B)のこれらの溶接工程の少なくとも前記短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)が、短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)ごとに決定された少なくとも1つの第1同期イベント(SEA1,SEB1)に基づいて時間同期されることを特徴とする方法。
【請求項2】
第1位相シフト(φ1)が、複数の前記第1同期イベント(SEA1,SEB1)との間に提供されることによって、複数の前記短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)が時間同期されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1同期イベント(SEA1,SEB1)として、前記短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)中の短絡の発生の時点、又は短絡を発生させるために実行される送給速度(vA,vB)の上昇の時点、又は短絡を発生させるために実行される溶接電流(IA,IB)の減少の時点が使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの短絡サイクル(ZKA,ZKB)が、短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)中に実行され、当該短絡サイクル(ZKA,ZKB)中に、短絡が発生するまで、それぞれの前記電極(3A,3B)が、前記母材(6)の方向に移動され、前記短絡の発生後に前記母材(6)から離れるように反対方向に移動され、特に2~10個の短絡サイクル(ZKA,ZKB)が、前記短絡溶接フェーズごとに実行されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
熱溶接フェーズ(SPA2,SPB2)として、インパルス溶接フェーズ又は溶射アーク溶接フェーズが使用され、
前記インパルス溶接フェーズでは、インパルス周波数(fA,fB)によって連続する複数のインパルスサイクル(ZPA,ZPB)が実行され、これらのインパルスサイクル(ZPA,ZPB)では、接地電流(IGA,IGB)を有する接地電流フェーズと、前記接地電流(IGA,IGB)に比べて高いインパルス電流(IPA,IPB)を有するインパルス電流フェーズとがそれぞれ交互することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つの電極(3A,3B)の溶接工程の前記インパルス溶接フェーズ(SPA1,SPB1)が、インパルス溶接フェーズ(SPA2,SPB2)ごとの決定された少なくとも1つの第2同期イベント(SEA2,SEB2)に基づいて時間同期されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第2位相シフト(φ2)が、前記第2同期イベント(SEA2,SEB2)間で提供されることによって、前記インパルス溶接フェーズ(SPA2,SPB2)が時間同期されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2同期イベント(SEA2,SEB2)として、前記インパルス溶接フェーズ(SEA2,SEB2)中の特徴時点が使用され、特に溶接パラメータ(U,I,v)の変化の時点又は前記電極(3A,3B)からの溶滴の切断の時点が使用されることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
複式溶接方法を実行するための設備(1)であって、
前記設備内には、少なくとも2つの溶接装置(A,B)が、それぞれ1つの溶接工程を1つの溶融電極(3A,3B)によって1つの母材(6)に対して実行するために設けられていて、
それぞれの溶接装置(A,B)が、それぞれの前記溶接工程を制御するために1つの制御部(9A,9B)を有し、
複数の前記溶接工程を時間同期させるため、少なくとも2つの前記溶接装置(A,B)の複数の前記制御部(9A,9B)が、通信リンク(11)を介して接続されている当該設備において、
複数の前記制御部(9A,9B)は、周期的に交互する短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)とこの短絡溶接フェーズに比べて高い前記母材(6)中への入熱量を呈する熱溶接フェーズ(SPA2,SPB2)とを有するそれぞれ1つの溶接工程を実行するように構成されていて、
少なくとも第1の前記溶接装置(A)の制御部(9A)は、第1の前記溶接装置(A)によって実行された溶接工程の短絡溶接フェーズ(SPA1)の決定された第1同期イベント(SEA1)に関する少なくとも1つの同期情報(Y)を、前記通信リンク(11)を介して少なくとも1つの第2の前記溶接装置(B)の制御部(9B)に送信するように構成されていて、少なくとも1つの第2の前記溶接装置(B)の制御部(9B)は、第2の前記溶接装置(B)によって実行される溶接工程を、受信した前記同期情報(Y)を用いて、第2の前記溶接装置(B)によって実行された溶接工程の短絡溶接フェーズ(SPB1)の決定された第1同期イベント(SEB1)に基づいて、第1の前記溶接装置(A)の溶接工程に時間同期させるように構成されていることを特徴とする設備。
【請求項10】
前記同期情報(Y)は、複数の前記第1同期イベント(SEA1,SEB1)間の少なくとも1つの第1位相シフト(φ1)を含むことを特徴とする請求項9に記載の設備。
【請求項11】
第1同期イベント(SEA1,SEB1)として、前記短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)中の短絡の発生の時点、又は短絡を発生させるために実行される送給速度(vA,vB)の上昇の時点、又は短絡を発生させるために実行される溶接電流(IA,IB)の減少の時点が提供されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の設備。
【請求項12】
それぞれの溶接装置(A,B)は、前記制御部(9A,9B)によって制御可能である溶接ワイヤ送給部(14A,14B)を有し、
前記制御部(9A,9B)は、少なくとも1つの短絡サイクル(ZKA,ZKB)を前記短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)中に実行するように構成されていて、当該短絡サイクル(ZKA,ZKB)中に、短絡が発生するまで、前記溶接ワイヤ送給部(14A,14B)が、前記電極(3A,3B)を前記母材(6)の方向に移動させ、前記短絡の発生後に前記母材(6)から離れるように反対方向に移動させ、
特に2~10個の短絡サイクル(ZKA,ZKB)が、前記短絡溶接フェーズ(SPA1,SPB1)ごとに実行可能であることを特徴とする請求項11に記載の設備。
【請求項13】
複数の前記制御部(9A,9B)は、熱溶接フェーズ(SPA2,SPB2)として、インパルス周波数(fA,fB)によって連続する複数のインパルスサイクル(ZPA,ZPB)を有するインパルス溶接フェーズを実行するように構成されていて、これらのインパルスサイクル(ZPA,ZPB)では、接地電流(IGA,IGB)を有する接地電流フェーズと、前記接地電流(IGA,IGB)に比べて高いインパルス電流(IPA,IPB)を有するインパルス電流フェーズとがそれぞれ交互すること、又は
複数の前記制御部(9A,9B)は、熱溶接フェーズ(SPA2,SPB2)として、一定の溶接電流を有する溶射アーク溶接フェーズを実行するように構成されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の設備。
【請求項14】
少なくとも第1の前記溶接装置(A)の制御部(9A)は、第1の前記溶接装置(A)によって実行された溶接工程のインパルス溶接フェーズ(SPA2)の決定された第2同期イベント(SEA2)に関する1つの同期情報(Y)を、前記通信リンク(11)を介して少なくとも1つの第2の前記溶接装置(B)の制御部(9B)に送信するように構成されていて、少なくとも1つの第2の前記溶接装置(B)の制御部(9B)は、第2の前記溶接装置(B)によって実行される溶接工程を、受信した前記同期情報(Y)を用いて、第2の前記溶接装置(B)によって実行された溶接工程のインパルス溶接フェーズ(SPB2)の決定された第2同期イベント(SEB2)に基づいて、第1の前記溶接装置(A)の溶接工程に時間同期させるように構成されていることを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の設備。
【請求項15】
前記同期情報(Y)は、複数の前記第2同期イベント(SEA2,SEB2)間の少なくとも1つの位相シフト(φ2)を含み、
第2同期イベント(SEA2,SEB2)として、特に、前記インパルス溶接フェーズ(SEA2,SEB2)中の特徴時点が提供されていて、特に好ましくは前記電極(3A,3B)からの溶滴の切断の時点又は溶接パラメータ(U,I,v)の変化の時点が提供されていることを特徴とする請求項14に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの溶融電極によって母材に対して複式溶接方法(Mehrfach-Schweissverfahren)を実行するための方法に関する。この場合、それぞれの電極で、当該電極と当該母材との間のアークの点弧後に、1つの溶接工程が実行される。この場合、少なくとも2つの電極のこれらの溶接工程が時間同期される。さらに、本発明は、複式溶接方法を実行するための設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスメタルアーク溶接方法(MSG)は、従来の技術において長年にわたって公知である。例えば、金属不活性ガス(MIG)方法又は金属活性ガス(MAG)方法が、ガスメタルアーク(MSG)溶接に属する。当該ガスメタルアーク(MSG)溶接の場合、金属の電極材料から成る溶融電極が、いわゆるシールドガスによって包囲される。一般に、ガスメタルアーク溶接方法は、溶接継目を母材上に溶着するために使用されるか(肉盛溶接)又は2つの母材を接合するために使用される(接合溶接)。双方の場合、溶接電圧又は当該溶接電圧から発生する溶接電流によって、当該電極と当該電極を包囲する当該母材の領域とを溶融するアークが、当該電極と当該母材との間で点弧される。これにより、強固な接合が達成される。一般に、母材用の材料と同じ材料又は類似の材料が、電極材料として使用される。当該電極は、所定の送給速度によって溶接個所に送給される。この場合、当該送給速度は、例えば手作業による手動の溶接時に又は溶接装置での設定によって予め設定され得るか、又は別のパラメータ、例えば当該電極が当該母材に対して相対移動されるときの溶接速度に依存し得るか、又は電流等に依存する。
【0003】
溶接性能を向上させるため、少なくとも2つの電極によって同時に溶接される複式溶接方法も公知である。例えば、2つのインパルス溶接工程が同時に実施されるいわゆるタンデムインパルス溶接方法が、当該複式溶接方法に属する。この場合、溶接ワイヤとしての少なくとも2つの電極が、共通の1つの溶融池内で溶融するか又はそれぞれ1つの別の溶融池で溶融する。このため、一般に、個別の1つの溶接装置が、それぞれのインパルス溶接工程ごとに使用される。すなわち、1つの電源、1つの溶接ワイヤ、1つの制御部及び必要に応じて1つの溶接ワイヤ送給部がそれぞれ使用される。それぞれの制御部が、溶接パラメータ、すなわち、特に溶接電流、溶接電圧、ワイヤ送給及び場合によってはシールドガス量を適切に制御又は調整することによって、インパルス溶接工程が、それぞれの溶接装置を用いて実行される。(溶接の品質を低下させ得る)同時に進行するインパルス溶接工程同士の起こり得る相互の悪影響を回避するため、両インパルス溶接工程が時間同期され得ることも公知である。この場合、例えば、それぞれ別の溶接装置に追従するインパルス周波数が、1つの溶接装置で予め設定される。したがって、両溶接工程は、互いに同期されていて、同じインパルス周波数によって溶接を実行する。その結果、溶滴が、両電極で安定に切断される。同期した溶接工程によるタンデム溶接工程は、例えば独国特許出願公開第112014001441号明細書及び米国特許第8,946,596号明細書に開示されている。
【0004】
ただ1つの溶融電極による単式溶接方法の場合、近頃では、例えば欧州特許第1677940号明細書に開示されているように、いわゆるCMT-Mix溶接工程も公知である。この場合、溶接ワイヤが反転移動する、母材中への比較的小さい入熱量を呈する短絡溶接フェーズと、この短絡に比べて高い入熱量を呈するインパルス溶接フェーズとが交互する。従来の方法(例えば、単純なインパルス溶接)と比較したこの方法の利点は、制御された電流供給と、材料の送給時のワイヤの移動の支援作用とによって、母材中に侵入する熱量が非常に小さくて済むことにある。それ故に、CMT-Mix溶接方法は、特に金属と合金とを接合するために、例えば鋼とアルミニウムとを接合するために使用され得る。しかしながら、従来では、CMT-Mix溶接工程が両電極で実行され得る複式溶接方法は知られていない。何故なら、溶接工程が不安定になり得るからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第112014001441号明細書
【特許文献2】米国特許第8,946,596号明細書
【特許文献3】欧州特許第1677940号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故に、本発明の課題は、両電極での安定な溶接工程と、複式インパルス溶接方法に比べて小さい母材中への入熱量とを可能にする複式溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は、短絡溶接フェーズとこの短絡溶接フェーズに比べて高い当該母材中への入熱量を呈する熱溶接フェーズとを有するそれぞれ1つの溶接工程が、当該少なくとも2つの電極で実行され、当該短絡溶接フェーズと当該熱溶接フェーズとは周期的に交互し、当該少なくとも2つの電極のこれらの溶接工程の少なくとも当該短絡溶接フェーズが、短絡溶接フェーズごとに決定された少なくとも1つの第1同期イベントに基づいて時間同期されることによって解決される。これにより、当該複式溶接方法のこれらの電極で実行されたこれらの短絡溶接フェーズが、特定の時間関係にある。このため、これらの溶接工程の相互の悪影響が回避され得る。
【0008】
この場合、特に、第1位相シフトが、複数の当該第1同期イベントとの間に提供されることによって、複数の当該短絡溶接フェーズが時間同期される。この場合、例えば、第1同期イベントとして、当該短絡溶接フェーズ中の短絡の発生の時点、又は短絡を発生させるために実行される送給速度の上昇の時点が使用され得る。これにより、これらの短絡溶接フェーズ間の一定の時間関係が簡単に設定され得る。この場合、当該位相シフトは、例えば位相角又は位相時間として決定され得る。
【0009】
特に少なくとも1つの短絡サイクルが、短絡溶接フェーズ中に実行され、当該短絡サイクル中に、短絡が発生するまで、それぞれの当該電極が、当該母材の方向に移動され、当該短絡の発生後に当該母材から離れるように反対方向に移動され、特に2~10個の短絡サイクルが、当該短絡溶接フェーズごとに実行される。当該反転するワイヤ送給によって、当該電極からの溶滴の切断が改良され得る。当該短絡サイクルの個数を決定することによって、母材中への入熱量が変更され得る。
【0010】
特に、熱溶接フェーズとして、一定の溶接電圧を有する溶射アーク溶接フェーズが使用されるか、又はインパルス周波数によって連続する複数のインパルスサイクルを有するインパルス溶接フェーズが実行される。これらのインパルスサイクルでは、接地電流を有する接地電流フェーズと、当該接地電流に比べて高いインパルス電流を有するインパルス電流フェーズとがそれぞれ交互する。したがって、インパルス溶接フェーズを使用した場合、公知のCMT-Mix溶接工程が、複式溶接方法の複数の電極で有益に実行され得る。
【0011】
当該少なくとも2つの電極の溶接工程の当該インパルス溶接フェーズが、インパルス溶接フェーズごとに決定された少なくとも1つの第2同期イベントに基づいて時間同期されることが有益である。これにより、これらのインパルス溶接フェーズが、決定された時間関係にあり、当該両(又は複数の)溶接工程が互いに悪影響を及ぼし合うことなしに、それぞれ1つのCMT-Mix溶接工程が、当該複式溶接方法の両(又は複数の)電極で実行され得る。
【0012】
特に、第2位相シフトが、当該第2同期イベント間で提供されることによって、当該インパルス溶接フェーズが時間同期される。この場合、特に、第2同期イベントとして、当該インパルス溶接フェーズ中の特徴時点が使用され、例えば溶接パラメータの変化の時点又は当該電極からの溶滴の切断の時点が使用される。これにより、特定の時間関係が簡単に決定され得る。
【0013】
さらに、本発明の課題は、上記の設備を用いることで、複数の当該制御部が周期的に交互する短絡溶接フェーズとこの短絡溶接フェーズに比べて高い当該母材中への入熱量を呈する熱溶接フェーズとを有するそれぞれ1つの溶接工程を実行するように構成されていて、少なくとも第1の当該溶接装置の制御部が第1の当該溶接装置によって実行された溶接工程の短絡溶接フェーズの決定された第1同期イベントに関する少なくとも1つの同期情報を、当該通信リンクを介して少なくとも1つの第2の当該溶接装置の制御部に送信するように構成されていて、少なくとも1つの第2の当該溶接装置の制御部が第2の当該溶接装置によって実行される溶接工程を、受信した当該同期情報を用いて、第2の当該溶接装置によって実行された溶接工程の短絡溶接フェーズの決定された第1同期イベントに基づいて、第1の当該溶接装置の溶接工程に時間同期させるように構成されていることによって解決される。
【0014】
当該設備の好適な構成は、従属請求項10~15に記載されている。
【0015】
以下に、本発明を、例示的に、概略的に且つ限定しないで本発明の好適な構成を示す
図1~5を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】複式溶接方法を実行するための設備の構成を示す。
【
図2】本発明の好適な第1の実施の形態による複式溶接方法の複数溶接パラメータの時間推移を示す。
【
図3】本発明の好適な第2の実施の形態による複式溶接方法の複数溶接パラメータの時間推移を示す。
【
図4】本発明の好適な第3の実施の形態による複式溶接方法の複数溶接パラメータの時間推移を示す。
【
図5】本発明の好適な第4の実施の形態による複式溶接方法の複数溶接パラメータの時間推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、少なくとも2つの溶融電極3A,3Bによって複式溶接方法(例えば、MIG/MAG溶接)を実行するための設備1が概略的に示されている。ここでは、設備1は、互いに独立した2つの溶接装置A,Bを有する。それぞれ1つの所定の溶接工程が、溶接装置A,Bによって金属母材6から成る1つの共通のワーク6で実行され得る。当然に、3つ以上の溶接装置A,Bが設けられてもよい。しかしながら、本発明を理解するためには、2つの溶接装置A,Bの配置だけで十分である。溶接装置A,Bは、必ずしも独立した装置として構成される必要はなくて、2つ(又は複数)の溶接装置A,Bが、例えば共通の1つのハウジング内に配置されていることも考えられる。しかし、これは、それぞれの溶接装置A,Bがそれぞれの溶接工程を実行するための固有の溶接回路ごとに構成されていることとは違う。
【0018】
知られているように、溶接装置A,B(MIG/MAG溶接装置)はそれぞれ、1つの溶接電源2A,2B、1つの溶接ワイヤ送給部14A,14B及び1つの溶接トーチ4A,4Bを有し得る。溶接電源2A,2Bはそれぞれ、溶接電極3A,3Bとしての溶接ワイヤにそれぞれ印加される必要な溶接電圧UA,UBを供給する。当該溶接ワイヤは、溶接ワイヤ送給部14A,14Bによってそれぞれの溶接工程によって予め設定される所定の送給速度vA,vBでそれぞれの溶接トーチ4A,4Bに供給される。当該供給は、例えばホースパケット5A,5Bの内側又はその外側で実行され得る。溶接ワイヤ送給部14A,14Bはそれぞれ、溶接装置A,B内に組み込まれ得るが、
図1に示されているように独立した装置でもよい。例えばワイヤロール16A,16Bが、溶接ワイヤ送給部14A,14B内に設けられ得る。溶接ワイヤが、ワイヤロール16A,16Bに巻き付けられている。しかし、例えば、当該溶接ワイヤは、例えばドラムのような容器内に配置され、当該ドラムから溶接トーチ4A,4Bに供給されてもよい。さらに、当該溶接ワイヤを当該溶接ワイヤ16A,16B又は当該容器から引き出し、送給速度vA,vBで溶接トーチ4A,4Bに供給するため、制御部9A,9Bによって駆動される適切な駆動部17A,17Bが設けられ得る。
【0019】
さらに、同様に対応する制御部9A,9Bによって制御され得る適切な駆動部18A,18Bが、送給速度vA,vBを生成するために溶接トーチ4A,4B内に設けられてもよい。一般に、駆動部17A,17B;18A,18Bは、例えば、溶接ワイヤがロール同士間で搬送される駆動ロール対として構成され得る。溶接装置A,Bが、1つの駆動部17A,17Bだけを当該溶接トーチの外側に有する場合は、いわゆる「プッシュ方式」と呼ばれる。この場合、当該溶接ワイヤは、ほぼ溶接トーチ4A,4Bの方向に押される。さらに図示された駆動部18A,18Bも溶接トーチ4A,4B内に設けられている場合は、「プッシュプル方式」と呼ばれる。この場合、当該溶接ワイヤは、駆動部17A,17Bから溶接トーチ4A,4Bの方向に押され得るだけではなくて、駆動部18A,18Bから溶接トーチ4A,4Bの方向に引かれ得る。
【0020】
「プッシュプル方式」は、特に、例えばCMT溶接工程時のように、送給速度vA,vBと、必要に応じて送給方向とが、比較的急激に変化し得る溶接工程で使用される。「プッシュプル方式」の場合、必要に応じて、適切なワイヤバッファが、例えば公知のワイヤ貯蔵装置として設けられてもよい。当該ワイヤバッファは、溶接トーチ4A,4Bの外側に存在する(プッシュ方式の)駆動部17A,17Bと溶接トーチ4A,4B内に設けられている(プル方式の)駆動部18A,18Bとの間に配置され得る。
【0021】
溶接工程を実行するため、ここでは稲妻のような矢印によって表記されているように、それぞれ1つのアークが、電極3A,3B又は溶接ワイヤと母材6(=ワーク)との間に点弧される。アークによって、一方では母材6の材料が局所的に溶融され、いわゆる溶融池15が生成される。他方では、溶融電極3A,3Bの材料をワーク6上に融着するため、当該溶接ワイヤは、所定の送給速度vA,vBによって溶融池15に供給され、アークによって溶融される。これにより、ワーク6に対する溶接トーチ4A,4Bの相対移動時に、(
図1では、図面に対して法線方向に)溶接継目が形成され得る。
【0022】
それぞれのホースパケット5A,5Bごとに、必要に応じて、別のケーブル(例えば、図示されていない制御ケーブル又は冷却水管)が、溶接装置A,Bとそれぞれの溶接トーチ4A,4Bとの間に設けられてもよい。溶融池15を大気から保護するため、特に大気中に含まれる酸素からシールドして、酸化を回避するため、シールドガスが使用されてもよい。この場合、一般に、適切なシールドガス管12A,12Bと、同様にホースパケット5A,5Bとを介して溶接トーチ4A,4Bに供給され得る不活性ガス(例えば、アルゴン)、活性ガス(CO2)又はこれらのガスの混合物が使用される。一般に、当該シールドガスは、独立した(圧力)タンク7A,7B内に貯蔵されている。当該シールドガスは、例えば適切な配管を介して溶接装置A,Bに(又は溶接トーチ4A,4Bに直接に)供給され得る。同じシールドガスを使用する場合、共通の1つのタンクが、双方の(全ての)溶接装置A,Bに対して設けられてもよい。ホースパケット5A,5Bは、例えば適切な連結部を介して溶接装置A,Bの溶接トーチ4A,4Bに連結され得る。
【0023】
溶接装置A,Bのそれぞれ1つの溶接回路を構成するため、溶接電源2A,2Bがそれぞれ、接地ケーブル8A,8Bによって母材6に接続され得る。溶接電源2A,2Bの一方の電極、一般にマイナス極は、接地ケーブル8A,8Bに接続されている。溶接電源2A,2Bの他方の電極、一般にプラス電極は、適切な電流ケーブル13A,13Bを介して溶接電極3A,3Bに接続されている。又は、溶接電源2A,2Bの一方の電極、一般にマイナス極は、適切な電流ケーブル13A,13Bを介して溶接電極3A,3Bに接続されている。溶接電源2A,2Bの他方の電極、一般にプラス電極は、接地ケーブル8A,8Bに接続されている。したがって、それぞれの溶接工程ごとに、溶接回路が、アークと母材6とを介して構成される。それぞれの溶接ワイヤの送給を含むそれぞれの溶接工程を制御し監視するそれぞれ1つの制御部9A,9Bが、溶接装置A,B内に設けられてもよい。このため、例えば送給速度vA,vB、溶接電流IA,IB,溶接電圧UA,UB、インパルス周波数fA,fB等のような当該溶接工程に必要な溶接パラメータが、制御部9A,9B内に予め設定されているか又は設定可能である。それぞれの溶接工程を制御するため、制御部9A,9Bが、溶接電源2A,2Bと溶接ワイヤ送給部14A,14B(例えば、特に駆動部17A,17B)とに接続されている。特定の溶接パラメータ又は溶接状態を入力又は表示するため、制御部9A,9Bに接続されているユーザインターフェース10A,10Bが設けられてもよい。
【0024】
さらに、溶接装置A,Bが全ての複式溶接方法を制御できる上位の制御部に接続され得る適切な(図示されていない)インターフェースが、溶接装置A,Bに設けられてもよい。例えば、両溶接装置A,B(又は複数の溶接装置A,B)に接続されていて、当該溶接装置A,Bを制御できる(図示されていない)中央制御部が設けられてもよい。当然に、説明されている溶接装置A,Bは、周知であるので、これに関してはもはや詳しく説明しない。
【0025】
これらの電極又は溶接ワイヤ3A,3Bが、分離された2つの溶融池の代わりに、
図1に示されているようにワーク6にある共通の1つの溶融池15内で作動するように、両溶接トーチ4A,4Bが、互いに近接して相対配置され得る。しかし、当該配置は可変でもよい。当該可変の配置では、例えば、それぞれ1つの溶接トーチ4A,4Bが、1つの溶接ロボットによって操縦される。1つの溶接ロボットの代わりに、当然に、別の適切な操縦装置が設けられてもよい。例えば、特に、複数軸方向、特に3軸方向の移動を可能にするポータルクレーン方式のものでもよい。しかし、
図1に破線で示されているように、共通の1つの溶接トーチが、両電極3A,3Bに対して設けられてもよい。この場合、これらの溶接トーチ4A,4Bによって、接合溶接若しくは肉盛溶接又は他の溶接方法が実行されるのか否かは重要でない。当然に、例えば、1つ又は複数の溶接トーチ4A,4Bが、手動で操縦されることによって、複式溶接方法の手動による実行も基本的に可能である。
【0026】
複数の溶接装置A,Bの複数の制御部9A,9Bが、通信リンク11によってリンクされ得る。同期情報Yが、通信リンク11を介して送信及び/又は受信され得る。両溶接工程が、同期情報Yによって時間同期され得る。特に、
図1に二重矢印によって示されているように、同期情報Yが、制御部9A,9B同士で相互に交換され得るように、溶接装置A,Bは構成されている。これにより、両溶接装置A,Bは、「主」としても「従」としても使用され得る。「従」溶接装置A又はBによって実行された溶接工程を「主」溶接装置A又はBに同期させるため、「主」溶接装置A又はBは、同期情報Yを送信でき、「従」溶接装置A又はBは、同期情報Yを使用できる。通信リンク11は、例えば、制御部9A,9B間又はユーザインターフェース10A,10B間の有線リンク又は無線リンク、例えば周知のデータバスでもよい。
【0027】
最も簡単な場合では、同期情報Yは、例えば、一方の送信側の溶接装置A又はBから通信リンク11を介してそれぞれ少なくとも1つの他方の(受信側の)溶接装置A又はBに送信される同期シングルパルスであり得る。この場合、当該同期パルスは、例えば電流パルス又は電圧パルスとして両溶接装置A,B間の有線通信リンク11上で送信され得る。しかし、通信リンク11をバス情報が送信されるデータバスとして構成することも可能である。この場合、同期パルスが、バス情報として送信され得る。当該送信は、有線(ケーブル、光ファイバ等)としても有線(WiFi、ブルートゥース等)としても実行され得る。受信側の溶接装置A又はBでは、それぞれ実行された溶接工程が、受信側の同期パルスによって送信側の溶接装置A又はBの溶接工程に同期され得る。
【0028】
本発明によれば、制御部9A,9Bは、周期的に交互する短絡溶接フェーズSPA1,SPB1と当該短絡溶接フェーズに比べて高い母材6中への入熱量を呈する熱溶接フェーズSPA2,SPB2とを有するそれぞれ1つの溶接工程を実行するように構成されていることが提唱されている(
図2-5参照)。さらに、第1溶接装置Aの少なくとも制御部9Aが、第1溶接装置Aによって実行された溶接工程の短絡溶接フェーズSP1の決定された第1同期イベントSEA1に関する同期情報Yを、通信リンク11を介して少なくとも1つの第2溶接装置Bの制御部9Bに送信する(
図2-
図5)ように構成されていることが提唱されている。少なくとも1つの第2溶接装置Bの制御部9Bは、第2溶接装置Bによって実行された溶接工程を、取得した同期情報Yによって、第2溶接装置Bによって実行された溶接工程の短絡溶接フェーズSPB1の決定された第1同期イベントSEB1に基づいて、第1溶接装置Aの溶接工程に時間同期させるように構成されている。したがって、第1溶接装置Aは、「主」溶接装置として機能し、第2溶接装置Bは、「従」溶接装置として機能する。
【0029】
同期イベントSEA1,SEB1としては、例えば、それぞれ実行された溶接工程ごとの短絡溶接フェーズSPA1,SPB1中の既知又は可能な限り簡単に検出可能である特徴時点が使用され得る。例えば急激な変化、例えば溶接電流I、溶接電圧U又は送給速度vのような、例えば溶接パラメータの時間推移中の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジが、第1同期イベントSEA1,SEB1として使用され得る。この場合、同期情報Yは、例えば、第1溶接装置Aの溶接工程中の第1同期イベントSEA1と第2溶接装置Bの溶接工程中の第1同期イベントSEB1との間の第1位相シフトφ1を含んでもよい。この場合、位相シフトφ1として、以下で
図2~5に基づいてさらに詳しく説明するように、例えば、周期的に繰り返される溶接サイクル又は期間に対する0-360°の角度が使用され得る。
【0030】
知られているように、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1は、それぞれの電極3A,3Bが母材6に接触するときに、短絡が発生することを特徴とする。それ故に、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1に対する当該短絡の発生のこの特徴時点は、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の第1同期イベントSEA1,SEB1として提供され得る。当該短絡の発生の時点は、
図2-
図5に基づいて以下でさらに詳しく説明されるように、溶接電流I又は溶接電圧Uの推移に基づいて確認され得る。しかし、当該実際の短絡の発生の時点の代わりに、第1同期イベントSEA1,SEB1として、例えば、当該短絡をほぼ強制的に発生させるために意図的に実行される送給速度vの上昇の既知の時点が使用されてもよい。代わりに、当該短絡をほぼ強制的に発生させるために意図的に実行される溶接電流IA,IBの減少の既知の時点が、第1同期イベントSEA1,SEB1として使用されてもよい。短絡が発生されるように、アークのアークエネルギーが、溶接電流IA,IBの当該意図的な減少によって減少され得る。上記の送給速度vの上昇と、上記の溶接電流IA,IBの減少とは、例えば時間をずらして実行されてもよい。この場合、送給速度vの上昇の時点又は溶接電流IA,IBの減少の時点が、第1同期イベントSEA1,SEB1として使用され得る。しかし、共通の時点が、第1同期イベントSEA1,SEB1として使用され得るように、送給速度vの上昇と、電流IA,IBの減少とが同時に実行されてもよい。
【0031】
短絡溶接フェーズSPA1,SPB1中の溶滴の切断を改良するため、少なくとも1つの短絡サイクルZKA,ZKBが、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1中に実行されることが有益であり得る。当該短絡サイクルZKA,ZKB中に、短絡が発生するまで、電極3A,3Bが、母材6の方向に移動し、当該短絡の発生後に母材6から離れるように反対方向に移動される。それぞれの溶接ワイヤ送給部14A,14Bが、それぞれの制御部9A,9Bによって制御されることによって、当該移動は公知のように実行される。この場合、例えば、所定数の短絡サイクルZKA,ZKBが予め設定されることによって、例えば、2~10個の短絡サイクルZKA,ZKBが、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1ごとに設定されることによって、(熱溶接に比べて低い母材6中への入熱量を呈する)短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の期間が、フレキシブルに決定され得る。この場合、特にそれぞれの短絡サイクルZKA,ZKBごとに、可逆なワイヤ送給、すなわち短絡の発生までの母材6の方向の移動と、当該短絡後の母材6から離れる移動とが実行される。当然に、可逆なワイヤ送給、すなわち送給速度vA,vBの方向の反転はオプションにすぎない。短絡溶接フェーズSPA1,SPB1は、例えば、溶接ワイヤの移動方向が変わることなしに、可変な送給速度vだけによって実行されてもよい。
【0032】
熱溶接フェーズSPA2,SPB2として、例えば既知のインパルス溶接フェーズ(
図2-
図5)が使用され得る。これにより、上記のCMT-Mix溶接工程が、2つの溶接装置A,Bによって並行にそれぞれ実行され得る。当該CMT-Mix溶接工程の場合、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1と、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2とが周期的に交互する。この場合、当該インパルス溶接フェーズでは、一般に、所定のインパルス周波数fA,fBによって連続する複数のインパルスサイクルZPA,ZPBが実行される。当該複数のインパルスサイクルZPA,ZPBでは、接地電流IGA,IGBを有する1つの接地電流フェーズと、接地電流IGA,IGBに比べて高いインパルス電流IPA,IPBを有する1つのインパルス電流フェーズとがそれぞれ交互する。しかし、熱溶接として、例えば、公知の(図示されていない)ほぼ一定の溶接電流IA,IBを有する溶射アーク溶接フェーズが使用されてもよい。
【0033】
特に、両溶接装置A,Bの制御部9A,9Bが、予め設定されているか又は予め設定可能な同じ溶接パラメータ(U,I,v)f等を調整することによって、同じ溶接工程が、両電極3A,3Bで並行して実行される。例えば、1つのインパルス溶接フェーズが、熱溶接フェーズSPA2,SPB2として両溶接装置A,Bによって実行される場合、同じインパルス周波数fA,fBが、両インパルス溶接フェーズで使用されることが有益である。しかし、一方の溶接装置A,Bのインパルス溶接フェーズ中のインパルス周波数fA,fBが、それぞれ他方の溶接装置A,Bのインパルス周波数fA,fBの整数倍であってもよい。
【0034】
それぞれ1つのインパルス溶接フェーズが、熱溶接フェーズSPA2,SPB2として提供されている場合(CMT-Mix溶接工程)、少なくとも2つの溶接装置A,Bによって少なくとも2つの電極3A,3Bで実行される溶接工程が、決定された少なくとも1つの第2同期イベントSEA2,SEB2に基づいてインパルス溶接フェーズごとに時間同期されることが有益である。これにより、以下で
図2-
図5に基づいてさらに詳しく説明するように、両短絡溶接フェーズと両インパルス溶接フェーズとが相互に、決定された或る時間関係にあるように、並行して実行される少なくとも2つの溶接工程(CMT-Mix)が時間同期され得る。
【0035】
第2位相シフトφ2が、例えば位相角又は期間として、決定された第2同期イベントSEA2,SEB2間で提供されることによって、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2が、短絡溶接フェーズと同様に例えば同期され得る。第2同期イベントSEA2,SEB2として、同様に、1つの特徴時点、例えば溶滴がそれぞれの電極3A,3Bから切断される時点がインパルス溶接フェーズSPA2,SPB2で使用され得るか、又は溶接パラメータ、例えば溶接電流I、溶接電圧U又は送給速度vの時間推移中の例えば立ち上がりエッジ若しくは立ち下がりエッジが急激に変化する時点が、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2で使用され得る。
【0036】
したがって、本発明による両(特にCMT-Mix)溶接工程の時間同期によって、(少なくとも)2つの溶接工程が、安定に且つ可能な限り小さい相互作用で実行され得ることが可能である。何故なら、これらの溶接工程は、決定された時間比で互いに進行するからである。短絡の発生のそれぞれの時点(又は短絡を開始するために実行される送給速度の上昇の時点又は当該短絡の開始に対して引き起こされる溶接電流の減少の時点)及び/又は溶滴の切断の時点が、例えばそれぞれの制御部9A,9Bによって検出され得る。または、例えば、既定の溶接工程が、既知の溶接パラメータ(溶接電流I、溶接電圧U、送給速度v等の既知の時間推移)によって使用される場合は、これらの時点は既知であり得る。
【0037】
例えば所定の溶接電流IA、溶接電圧UA及び所定の送給速度vAのような所定の溶接パラメータが、制御部9Aによって設定されることによって、例えば、第1溶接装置Aのこの制御部9Aが、第1溶接工程(例えば、短絡溶接フェーズSPA1と熱溶接フェーズSPA2としてのインパルス溶接フェーズとを有する予め設定されているCMT-Mix溶接工程)を実行できる。同様に、例えば所定の溶接電流IB、溶接電圧UB及び所定の送給速度vBのような所定の溶接パラメータが、制御部9Bによって設定されることによって、例えば、第2溶接装置Bのこの制御部9Bが、第2溶接工程(例えば、同様に短絡溶接フェーズと熱溶接フェーズSPB2としてのインパルス溶接フェーズとを有する予め設定されているCMT-Mix溶接工程)を実行できる。
【0038】
この場合、第1溶接装置A(「主」)の制御部9Aが、第1溶接工程の短絡溶接フェーズSPA1の少なくとも1つの第1同期イベントSEA1に関する同期情報Y(例えば、短絡の発生の時点)と、(オプションである)第1溶接工程のインパルス溶接フェーズSPA2の少なくとも1つの第2同期イベントSEA2に関する情報(例えば、電極3Aからの溶滴の切断の時点)とを、例えば同期パルス又はバス情報として通信リンク11を介して第2制御部Bの制御部9Bに送信できる。第2溶接装置Bの制御部9B(「従」)は、実行される第2(CMT-Mix)溶接工程を第1溶接装置Aの第1(CMT-Mix)溶接工程に同期させるように、受信した同期情報Yを使用できる。特に、第2溶接装置Bの制御部9Bは、同期情報Yによって短絡溶接フェーズSPB1を第1同期イベントSEB1(例えば、短絡の発生の時点)に基づいて第1溶接装置Aの短絡溶接フェーズSPA1に時間同期させ得る。さらに、必要に応じて、第2溶接装置Bの制御部9Bは、同期情報Yによってインパルス溶接フェーズSPB2を第2同期イベントSEB2(例えば、電極3Bからの溶滴の切断の時点)に基づいて第1溶接装置Aのインパルス溶接フェーズSPA2に時間同期させ得る。
【0039】
例えば、同期情報Yは、所定の第1位相シフトφ1を含み得る。短絡溶接フェーズSPA1,SPB1が、当該第1位相シフトφ1によって互いに時間をずらせて実行される。第1位相シフトφ1は、予め設定され得るが、(例えば、ユーザインターフェース10A及び/又は10Bによって)調整可能でもよい。同様に、同期情報Yは、所定の第2位相シフトφ2を含み得る。短絡溶接フェーズSPA2,SPB2が、当該第2位相シフトφ2によって互いに時間をずらせて実行される。
図3に示されているように、これらの短絡溶接フェーズSPA1,SPB1が、同期して、すなわち第1位相シフトφ1=0で実行されることが考えられ、またインパルス溶接フェーズSPA2,SPB2が、同期して、すなわち第2位相シフトφ2=0で実行されることが考えられる。しかし、当然に、別の時間同期が選択されてもよい。例えば、φ1=0、φ2≠0(
図2)又はφ≠0、φ2=0(
図5)又はφ1=φ2≠0(
図4)(ここで、φ1<φ2、φ1>φ2又はφ1=φ2である)が選択されてもよい。
【0040】
以下に、
図2-
図5に基づいて本発明の同期の好適な実施の形態を説明する。この場合、(ここでは2つの)電極3A,3Bで並行して実行された複数の溶接工程に対して、時間tに対する溶接電流IA,IBの推移と溶接電圧UA,UBの推移と送給速度vA,vBの推移がそれぞれ、上側と中央と下側に示されている。この場合、実線は、例えば第1溶接装置Aによって第1電極3Aで実行された第1溶接工程に関し、破線は、第2溶接装置Bによって第2電極3Bで実行された複式溶接方法の第2溶接工程に関する。例えば、ここでは2つのCMT-Mix溶接工程が、第1溶接工程及び第2溶接工程として示されている。短絡溶接フェーズSPA1,SPB1とインパルス溶接フェーズSPA2,SPB2とがそれぞれ周期的に交互する。基本的に、CMT-Mix溶接工程は、1つの電極による単式溶接方法(Einfach-Schweissverfahren)で公知であるので、ここでは本発明に重要な観点だけを詳しく説明する。しかし、上記のように、インパルス溶接フェーズの代わりの熱溶接フェーズとして、ほぼ一定の溶接電流IA,IBを有する溶射アーク溶接フェーズが使用されてもよい。この場合は、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の同期だけで十分である。
【0041】
知られているように、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2では、予め設定されているか又は設定可能なインパルス周波数fPA,fPBで連続する複数のインパルスサイクルZPA,ZPBが実行され得る。この場合、
図2に第2(インパルス)溶接フェーズSPA2,SPB2のそれぞれ1つのインパルスサイクルZPA,ZPBに基づいて例示されているように、インパルス周波数fPA,fPBは、インパルスサイクルZPA,ZPBの周期TZPA,TZPBの逆数に相当する。それぞれのインパルスサイクルZPA,ZPBごとに、一般に、接地電流IGA,IGBを有する接地電流フェーズと、当該接地電流IGA,IGBに比べて高いインパルス電流IPA,IPBを有するインパルス電流フェーズとが交互する。インパルスサイクルZPA,ZPBごとにこのような電流インパルスを生成することによって、溶滴が、それぞれの電極3A,3Bから目的通りに切断される。以下でさらに詳しく説明するように、両インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2を互に時間同期させるため、この溶滴の切断の時点が、特徴的な第2同期イベントSEA2,SEB2として、例えばインパルス溶接フェーズSPA2,SPB2のために本発明の範囲内で使用され得る。
【0042】
この場合、インパルス周波数fPA,fPB、接地電流IGA,IGB及びインパルス電流IPA,IPBは、同じ大きさに選択され得るが、相違してもよい。中央のグラフにそれぞれ示された溶接電圧UA,UBの時間推移は、溶接電流IA,IBの推移に定量的にほぼ一致するので、ここでは詳しく説明しない。一般に、溶接工程中の電圧Uは、アークでの電圧降下と溶接ワイヤのワイヤ自由端部での電圧降下とから発生する。電極3A,3Bの送給速度vA,vBは、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2中はほぼ一定であり、それぞれの短絡溶接フェーズSPA1,SPB1からの移行時又はそれぞれの短絡溶接フェーズSPA1,SPB1への移行時にそれぞれ変化する。しかし、当然に、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2中の一定でない送給速度vA,vBも考えられる。(複数のインパルスサイクルZPA,ZPBとこれらのインパルスサイクルZPA,ZPBの周期TZPA,TZPBとから得られる)インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2の全体の期間は、例えば、1つの期間を予め設定することによって設定され得るか、又は複数のインパルスサイクルZPA,ZPBとこれらのインパルスサイクルZPA,ZPBの周期TZPA,TZPBとを予め設定することによって設定され得る。
【0043】
図2-
図5に示された例では、第2電極3Bの溶接電流IB、溶接電圧UB及び送給速度vBの大きさは、第1電極3Aの溶接電流IA、溶接電圧UA及び送給速度vAの大きさよりも若干小さい。これは、第1電極3Aが主電極として設定されていて、第2電極3Bが従電極として設定されていることに起因する。当該主電極は、溶接方向に(溶接継目を生成するための溶接トーチ4A,4Bの移動方向に)従電極に先行する。これは、当該従電極が当該主電極によって既に生成された溶融池内で作動するので、若干より少ない溶接エネルギーで済むことを意味する。当然に、これは、例示にすぎず、同じ溶接パラメータが、両溶接工程で使用されてもよい。
【0044】
知られているように、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1では、少なくとも1つの短絡サイクルZKA,ZKBが実行される。下側のグラフの送給速度vA,vBから明らかなように、当該短絡サイクルZKA,ZKBでは、短絡が形成されるまで、それぞれの電極3A,3Bが、母材の方向に移動され、さらに当該短絡後に当該母材6から離れるように反対方向に移動される。当該短絡の発生の時点が、溶接電流IA,IBの上昇によって、又は特に溶接電圧UA,UBの同時の降下によって認識可能である。以下でさらに説明するように、両短絡溶接フェーズSPA1,SPB1を互に時間同期させ得るようにするため、当該短絡の発生の時点は、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の特徴的な第1同期イベントSEA1,SEB1として本発明の範囲内で有益に使用され得る。しかし、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の特徴的な第1同期イベントSEA1,SEB1としての実際の短絡の発生の時点の代わりに、例えば、送給速度vA,vBの(
図5に例示されている)短期間の上昇の時点が使用されてもよい。当該短期間の上昇は、当該短絡の発生を誘発させるために実際の短絡の発生の時点の直前に実行される。
【0045】
図示された例では、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1ごとの単一の短絡サイクルZKA,ZKBだけがそれぞれ示されているが、当然に、複数の短絡サイクルZKA,ZKBが実行されてもよい。例えば、2~10個の短絡サイクルZKA,ZKBが、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1ごとに実行されてもよい。短絡サイクルZKA,ZKBの個数を予め設定することによって、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の期間が決定され得て、したがって(熱溶接フェーズSPA2,SPB2又はインパルス溶接フェーズに比べて)小さい熱量が母材6中に入力しなければならない期間が決定され得る。短絡サイクルZKA,ZKBでは、溶接電流IA,IBが変更されてもよく、特に溶接電流IA,IBの所定の推移が、それぞれの制御部9A,9Bによって制御され得る。溶滴の切断を支援するため、例えば、溶接電流IA,IBは、短絡サイクルZKA,ZKB中にワイヤ送給速度vA,vBとは反対に(インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2の接地電流IGA,IGBに等しくてもよく又は異なってもよい)接地電流から当該接地電流に比べて高く(且つインパルス溶接フェーズSPA2,SPB2のインパルス電流IPA,IPBに比べて低い)ブースト電流に上昇でき、さらに当該設置できるに低下され得る。
【0046】
図2による例では、複数の短絡溶接フェーズSPA1,SPB1は、第1位相シフトφ1=0によって時間同期されている。すなわち、電極3A,3Bで並行して実行される両溶接工程が同時に実行される。既に説明したように、当該同期は、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1ごとのそれぞれ少なくとも1つの第1同期イベントSEA1,SEB1に基づいて実行される。この場合、ここでは、短絡サイクルZKA,ZKB中の短絡の発生の時点が、第1同期イベントSEA1,SEB1として提供されている。図示された例では、溶接電流IA,IBと溶接電圧UA,UBとに基づいて認識可能であるように、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2は、第2位相シフトφ2=180°によって時間同期されている。すなわち、複数のインパルスサイクルZPA,ZPBが互いに時間をずらして実行されている。同様に、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2の同期が、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2ごとのそれぞれ少なくとも1つの第2同期イベントSEA2,SEB2に基づいて実行される。この場合、ここでは、溶滴の切断の時点、すなわち接地電流IGA,IGBからインパルス電流IPA,IPBへの上昇が、第2同期イベントSEA2,SEB2として提供されている。
図2において明らかであるように、複数のインパルス周波数fA,fBは、特に同じ大きさである。しかし、これらのインパルス周波数は、異なる大きさでもよい。この場合、それぞれのより高いインパルス周波数fA,fBは、それぞれのより低いインパルス周波数fA,fBの整数倍である。
【0047】
図3よる例では、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1は、位相シフトφ1=0によって時間同期されていて、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2も、同様に位相シフトφ2=0によって時間同期されている。すなわち、溶接電流IA,IBと溶接電圧UA,UBとに基づいて認識可能であるように、複数の短絡サイクルZKA,ZKBも、複数のインパルスサイクルZPA,ZPBも時間同期される。同様に、当該同期は、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の第1同期イベントSEA1,SEB1としての短絡の発生の時点に基づいて実行され、且つインパルス溶接フェーズSPA2,SPB2の第2同期イベントSEA2,SEB2としての溶滴の切断に基づいて実行される。
図4による例では、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1は、位相シフトφ1=180°によって時間同期されていて、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2も、同様に位相シフトφ2=180°によって時間同期されている。これは、溶接電流IA,IBと溶接電圧UA,UBとに基づいて認識可能であるように、そして短絡溶接フェーズSPA1,SPB1に対しては送給速度vA,vBにも基づいて認識可能であるように、短絡サイクルZKA,ZKBもインパルスサイクルZPA,ZPBも時間をずらして実行されることを意味する。同様に、当該同期も、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の第1同期イベントSEA1,SEB1としての短絡の発生の時点に基づいて実行され、且つインパルス溶接フェーズSPA2,SPB2の第2同期イベントSEA2,SEB2としての溶滴の切断に基づいて実行される。当然に、別の特徴的な時点が、第1同期イベントSEA1,SEB1及ぶ第2同期イベントSEA2,SEB2として提供されてもよい。
【0048】
最後に、
図5による例では、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1は、位相シフトφ1=180°によって時間同期されていて、インパルス溶接フェーズSPA2,SPB2は、位相シフトφ=0°によって時間同期されている。これは、溶接電流IA,IBと溶接電圧UA,UBとに基づいて認識可能であるように、そして短絡溶接フェーズSPA1,SPB1に対しては送給速度vA,vBにも基づいて認識可能であるように、複数の短絡サイクルZKA,ZKBが時間をずらして実行され、複数のインパルスサイクルZPA,ZPBが同期して実行されることを意味する。同様に、当該同期も、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の第1同期イベントSEA1,SEB1としての短絡の発生の時点に基づいて実行され、且つインパルス溶接フェーズSPA2,SPB2の第2同期イベントSEA2,SEB2としての溶滴の切断に基づいて実行される。
【0049】
完全を期すため、
図5の下側のグラフには、既に説明した送給速度vA,vBの短期間の増大が、短絡溶接フェーズSPA1,SPB1の代わりの同期イベントSEA1′,SEB1′としてさらに(点線で)示されている。この場合、短絡を発生させるため、送給速度vA,vBは、決定された時点に対して意図的に短期間で増大される。当該送給速度の増大は、
図5に不規則なパルス状に示されている。しかし、当然に、当該送給速度の増大は規則的であってもよい。この場合、当然に、当該時点は、実行される既知の溶接工程に起因して溶接パラメータの既知の時間推移によって同様に既知である。
【0050】
並行して実行される複式溶接方法の複数の溶接工程が、本発明の時間同期によって希望通りに連続して調整され得る。その結果、2つ(又は3つ以上)の溶接工程同士が影響を及ぼし合うことが可能な限りほとんどない。最後に、説明されている実施の形態は、例示にすぎず、本発明を限定するものではなく、具体的な構成は、当業者によって任意に実現される点に言及する。
【符号の説明】
【0051】
1 設備
2A,2B 溶接電源
3A,3B 溶融電極
4A,4B 溶接トーチ
5A,5B ホースパケット
6 ワーク、金属母材
7A,7B (圧力)タンク
8A,8B 接地ケーブルル
9A,9B 制御部
10A,10B ユーザインターフェース
11 通信リンク
12A,12B シールドガス管
13A,13B 電流ケーブル
14A,14B 溶接ワイヤ送給部
15 溶融池
16A,16B ワイヤロール
17A,17B 駆動部
18A,18B 駆動部
A,B 溶接装置
UA,UB 溶接電圧
IA,IB 溶接電流
vA,vB 送給速度
fA,fB インパルス周波数
Y 同期情報
vA,vB 送給速度
【国際調査報告】