(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】スフィンゴモナス属の細菌の抽出物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20231218BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20231218BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20231218BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20231218BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61K8/64
A61K8/9789
A61K8/19
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537167
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021086557
(87)【国際公開番号】W WO2022129559
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・イレール
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・マエ
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・プルシェ
(72)【発明者】
【氏名】ガイーヌ・アザディギアン
(72)【発明者】
【氏名】ムリエル・バイエル-ヴァンモエン
(72)【発明者】
【氏名】リシャール・マルタン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB051
4C083AB052
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC442
4C083AC532
4C083AD092
4C083AD242
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC02
4C083EE13
(57)【要約】
本発明は、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌又は前記抽出物を含む組成物、その使用、及び美容方法におけるその実施に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴモナス・ゼノファグム(Sphingomonas xenophaga)種の細菌の抽出物。
【請求項2】
スフィンゴモナス・ゼノファグムの株が、アクセッション番号CNCM I-5455で登録された株である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の抽出物、又は請求項1若しくは2に記載のスフィンゴモナス・ゼノファグム種の少なくとも1種の細菌を含む、組成物、好ましくは化粧品。
【請求項4】
抽出物の濃度が、組成物の総質量に対して0.0001質量%から30質量%の間で含まれる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
アセチルジペプチド-1セチルエステル、タンジンの根の抽出物、ターマルウォーター、例えば、ラロッシュポゼ(La Roche Posay)水及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の活性剤を更に含む、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
1種又は複数の水混和性有機溶媒、好ましくは、直鎖状又は分枝状のC1~C6モノアルコール、ポリオール、ポリオールエーテル及びこれらの混合物から選択される水混和性有機溶媒を含む、美容上許容される媒体を含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
a.親水性若しくは親油性ゲル化剤、本発明による抽出物とは異なる親水性若しくは親油性活性剤、保存剤、酸化防止剤、芳香剤、臭い吸収剤、着色剤及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1種の添加剤、並びに/又は
b.少なくとも1種の乳化剤、並びに/又は
c.少なくとも1種の油
を更に含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
スフィンゴモナス(Sphingomonas)属の少なくとも1種の細菌、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物の使用であって、ブラジキニンの阻害剤としての、使用。
【請求項9】
ブラジキニンの合成及び/又は放出の過剰が関係する美容上の障害を防止及び/又は処理するための、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物の使用であって、赤み、皮膚の血管拡張及び/又は毛細管拡張症を防止する及び/又は減少させるための、使用。
【請求項11】
スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物の使用であって、つっぱり感、刺痛、熱感及び/又は痒みによって特徴づけられる皮膚の不快感を防止する及び/又は減少させるための、使用。
【請求項12】
皮膚の赤みのための非治療的美容処置方法であって、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の少なくとも1種の抽出物、又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物を含む組成物を局所的に適用する工程を含む、方法。
【請求項13】
敏感肌のための非治療的美容処置方法であって、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の少なくとも1種の抽出物、又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物を含む組成物を局所的に適用する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属の細菌の抽出物、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌又は前記抽出物を含む組成物、その使用、及び美容方法におけるその実施に関する。
【背景技術】
【0002】
カリクレイン/キニン系(KKS)の活性化は、不活性な酵素前駆体の第XII因子及びプレカリクレインの酵素(活性形態)への、すなわち、活性化された第XII因子(FXIIa)及びカリクレイン(KK)への変換をもたらす。カリクレインは、高分子量キニノーゲン(HK)を開裂させ、ブラジキニン(BK)を放出させる。ブラジキニン及びその活性代謝物であるdesArg9BKは、それぞれ受容体B2(RB2)及びB1(RB1)に結合する。リガンドBK及びdesArg9BKと、その受容体RB2及びRB1との相互作用は、血管拡張をもたらし、血管透過性のために、水が血管を出て組織に向かい、場合により細胞の血管外遊出が起こる。
【0003】
したがって、ブラジキニンは血管拡張に関与し、血管の透過性を上昇させる。ブラジキニン性アンタゴニストを使用することは、ここで上に記載した系を使用する美容上の障害のすべてに対する、効果的な代替選択肢の1つである。
【0004】
本発明者らは、驚くべきことに、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物は、カリクレイン-キニン系の阻害剤として使用されてもよく、そのため、赤みの発生を軽減できることを実証した。更に、本発明者らは、スフィンゴモナス・ゼノファグム(Sphingomonas xenophaga)の抽出物を含む組成物が、カプサイシンによって刺激された皮膚モデルにおいて、赤みの発生を有意に減少させられることを示した。
【0005】
皮膚の赤みは、主に顔面に存在し、様々な原因を有しうる皮膚障害である。これは、短期間(ホットフラッシュ)である場合もあり、永続的である場合もある。皮膚の赤みは、毛細血管の血管拡張によって特徴づけられる。
【0006】
この赤みは、非常に多様な要因、例えば、(i)食品又は熱い飲料若しくはアルコール飲料の消費による、急激な温度変化による、熱又は冷気による、低い相対湿度による、激しい風又はドラフト(ファン、空調装置)への皮膚の曝露による、及びある特定の界面活性剤の適用によるもの等の外部刺激、或いは(ii)皮膚障害、例えば、酒さ、赤瘡、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎に関連する赤み、並びに(iii)アレルギー性皮膚反応に続く赤みによって引き起こされることがある。
【0007】
これらの赤い斑点は、しばしば魅力を損ね、しばしば不愉快であり、実質的な精神的不快感を生じる。
【0008】
カプサイシンによって刺激された皮膚は、特に、敏感肌のモデルとして使用される。
【0009】
一般に、敏感肌とは、皮膚の特定の反応性によって定義される。
【0010】
この皮膚の反応性は、一般に、様々な起源を有しうる、引き金となる要素に対象が接触したことに応答して、不快感の症状をもたらす。この要素とは、敏感肌の表面に対する、冷たいもの若しくは熱いものの適用、又はある特定の製品の適用、急激な温度変化への曝露等でありうる。年齢及び皮膚のタイプ等の関連要因もある。
【0011】
これらの不快感の症状が現れることは(引き金となる要素と接触して数分以内に現れる)、敏感肌の本質的特徴の1つである。これらの不快感の症状は、主に、皮膚のあるゾーンに感じられる感覚異常、すなわち、いささか不快な感覚、例えば、ツッパリ感、刺痛、痒み、熱感、不快感等である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、スフィンゴモナス・ゼノファグム種の細菌の抽出物に関する。
【0013】
本発明の別の目的は、スフィンゴモナス・ゼノファグム種の少なくとも1種の細菌、又はスフィンゴモナス・ゼノファグム種の細菌の抽出物を含む組成物である。本発明による組成物は、好ましくは化粧品である。
【0014】
本発明はまた、ブラジキニン合成の阻害剤としての、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物の使用に関する。
【0015】
本発明の別の目的は、皮膚の赤みのための非治療的美容処置方法であって、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物を含む組成物を局所的に適用する工程を含む、方法である。
【0016】
本発明はまた、敏感肌のための非治療的美容処置方法であって、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物を含む組成物を局所的に適用する工程を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】スフィンゴモナスの抽出物の百分率としての濃度に応じた、血漿プレカリクレインのVmaxを示す図である。
【
図2】使用したスフィンゴモナスの抽出物の濃度に応じた、血漿プレカリクレインの活性の百分率を示すヒストグラムである。
【
図3】経時的な赤みの臨床スコアの変化を示すヒストグラムである。
【
図4】自己評価による経時的な赤みのスコアの変化を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
スフィンゴモナス属の細菌の抽出物
「細菌」という用語は、原核微生物、好ましくはプロテオバクテリアを指す。
【0019】
本発明の枠組みにおいて、「細菌の抽出物」という用語は、細菌によって産生及び/又は分泌され、そのため、細菌培養の培養培地に存在する化合物の組、並びに/或いは細菌中に含まれ、そのため、遠心分離後の細菌培養物の細菌ペレット中に存在する化合物の組、例えば、細胞内培地、並びに/又は壁及び/若しくは細胞膜の構成要素の両方を指す。
【0020】
本発明による抽出物は、当業者に周知である任意の従来の方法によって調製されうる。これらの方法は、典型的には、発酵、単離、分離及び精製の工程を含む。
【0021】
典型的には、スフィンゴモナス属の細菌は、好適な培地において培養され、所望の密度で培養される。好ましくは、細菌自体が、任意の公知の方法、例えば遠心分離によって濃縮される。濃縮された細菌は、次いで、非処理調製物として直接使用することもでき、当業者に周知の追加の処理の工程、例えば、凍結乾燥、脱水、濾過、精製、凍結に続いて任意選択で解凍すること、滅菌、カラムクロマトグラフィー、粉砕等を行うこともできる。
【0022】
好ましくは、細菌抽出物は、特に、細菌中に含まれ、そのため、遠心分離後の細菌培地の細菌ペレット中に存在する化合物を含む、細菌のライセートである。好ましくは、細菌抽出物は、細胞内培地、並びに/又は壁及び/若しくは細胞膜の構成要素を含む、細菌のライセートである。
【0023】
ライセートとは、通例、細胞溶解と呼ばれる現象による、したがって、検討される微生物の細胞中に天然に含有される細胞内の生物学的構成要素の放出をもたらすことによる、生物学的細胞の破壊又は分解の終了時に得られる材料を指す。
【0024】
本発明の用語では、ライセートという用語は、これとは異なり、検討される微生物の溶解によって得られるライセートのすべて、又は検討される微生物の画分のみを指すために使用される。
【0025】
そのため、実施されるライセートは、細胞内の生物学的構成要素の全体又は部分、並びに細胞壁及び細胞膜の構成要素の形態である。
【0026】
この細胞溶解は、異なる技法を使用して、例えば、浸透圧衝撃、熱衝撃、例えば、凍結に続いて任意選択で溶解、超音波処理を行うことによって、又は例えば遠心分離タイプの機械的応力下におくこと等で行なわれうる。
【0027】
好ましくは、本発明の枠組みにおいて実施されるライセートは、次の工程:
i)遠心分離の工程、
ii)ペレットを回収する工程、
iii)ペレットを凍結させる工程、
iv)ペレットを解凍する工程、
v)任意選択で、オートクレーブによって、特に121℃で滅菌する工程
を含む方法によって得られる。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、細菌の抽出物は不活性化された細菌を含む。
【0029】
ここで、「不活性化された」とは、当業者によって通例使用される意味、すなわち、様々な原因の(熱の、化学的、機械的、酵素物質の)効果のもとでの細菌の活性の抑制という意味を有する。特に、細菌は、熱によって、より特定的にはオートクレーブ処理によって不活性化される。
【0030】
前記抽出物は、好ましくは、ブラジキニンの阻害活性を有する。
【0031】
本発明による抽出物の細菌は、スフィンゴモナス・ゼノファグムである。好ましい実施形態では、細菌は、ブダペスト条約に従って、2019年11月21日に、Collection Nationale de Culture de Microorganismes((CNCM)、パリ、フランス)によって、L’Oreal(101 Avenue Gustave Eiffel, 37390 Notre Dame d’Oe)による番号CNCM I-5455で登録された、スフィンゴモナス・ゼノファグムである。
【0032】
好ましくは、抽出物は、化粧用組成物において、美容上許容される媒体中に含有される。
【0033】
組成物
本発明はまた、スフィンゴモナス・ゼノファグム種の少なくとも1種の細菌又はここで上に定義した抽出物を含む組成物、特に化粧用組成物に関する。
【0034】
好ましくは、本発明による化粧用組成物は、局所的に投与されることが意図される。
【0035】
ここで、「化粧用組成物」とは、当業者によって通例使用される意味を有する。特に、人体の様々な表面部分、特に、表皮、毛髪系、爪、唇及び外性器、並びに口腔の粘膜に、もっぱら又は主として、これらを洗浄すること、これらを装飾すること、これらに芳香を与えること、これらの態様を改質すること、これらを保護すること、これらを良好な状態に維持すること、又は体臭を補正することを目的として、接触して配置されることが意図される物質又は調製物を意味する。
【0036】
「スフィンゴモナス・ゼノファグム種の細菌」とは、生きている、半活性の、不活性化された又は死滅した形態における細菌を意味する。
【0037】
「細菌の抽出物」という用語は、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物のパラグラフに定義した通りである。
【0038】
本発明による組成物中の細菌又は細菌の抽出物の量は、検討される組成物のタイプに応じて変動する。好ましくは、微生物又は抽出物の量は、組成物の総質量に対して0.0001乾燥質量%から30乾燥質量%の間、組成物の総質量に対して0.001乾燥質量%から15乾燥質量%の間、組成物の総質量に対して0.01乾燥質量%から10乾燥質量%の間、好ましくは組成物の総質量に対して0.01乾燥質量%から5乾燥質量%の間、又は組成物の総質量に対して0.01乾燥質量%から3乾燥質量%の間で含まれる。
【0039】
細菌が生きている形態で組成物中に配合されている場合、生きている細菌の量は、1グラムの組成物当たり、103~1015cfu/g、特に105~1015cfu/g、より特定的には107~1012cfu/gの細菌で変動しうる。
【0040】
好ましくは、組成物は、美容上許容される媒体を含む。
【0041】
ここで、「美容上許容される媒体」とは、皮膚及び粘膜等のケラチン物質に適用されうる、非毒性支持体を意味する。したがって、美容上許容される媒体は、皮膚、外皮及び/又は粘膜に適合性であり、使用者に化粧用組成物の投与を中断又は停止させうる一切の不快な感覚、より一般には障害を誘導しない。
【0042】
より特定的には、前記美容上許容される媒体は、水、並びに/又は直鎖状若しくは分枝状のC1~C6モノアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、tertio-ブタノール;ポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール(o 2-メチル-2,4-ペンタンジオール)及びポリエチレングリコール;ポリオールエーテル、例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;並びにこれらの混合物から選択されうる、1種若しくは複数の水混和性有機溶媒を含むことができる。
【0043】
好ましくは、本発明による組成物は、組成物の総質量に対して、20質量%~95質量%、より好ましくは30質量%~70質量%の範囲内の含水量を有する。
【0044】
有利には、組成物は、1種又は複数の水混和性有機溶媒を、組成物の総質量に対して、0.5質量%~25質量%、好ましくは5質量%~20質量%、より好ましくは10質量%~15質量%の範囲内の含有量で含む。
【0045】
当業者には周知の通り、局所的適用のための組成物はまた、化粧品分野で一般的な添加剤、例えば、親水性又は親油性ゲル化剤、本発明による抽出物とは異なる親水性又は親油性活性剤、保存剤、酸化防止剤、芳香剤、臭い吸収剤、着色剤及びこれらの混合物を含有することができる。
【0046】
好ましくは、前記組成物は、
- 親水性若しくは親油性ゲル化剤、本発明による抽出物とは異なる親水性若しくは親油性活性剤、保存剤、酸化防止剤、芳香剤、臭い吸収剤、着色剤及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1種の添加剤、並びに/又は
- 少なくとも1種の乳化剤、並びに/又は
- 少なくとも1種の油
を更に含む。
【0047】
これらの様々な添加剤の量は、従来、特定の領域で使用される量であり、例えば、組成物の総質量の0.01%~20%である。
【0048】
無論のこと、当業者であれば、本発明による抽出物の有利な特性が、企図される添加によって変化しない、又は実質的に変化しないように、これらの追加の成分及び/若しくは活性剤、並びに/又はその量を選択する。
【0049】
実施形態では、スフィンゴモナス属の細菌又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物が、組成物の唯一の活性剤である。
【0050】
別の実施形態では、本発明の組成物は、本発明による細菌又は抽出物とは異なる、他の活性剤を更に含有することができる。これらの活性剤は、血管拡張、赤み、敏感肌又は他の異常感覚要素に対する効果を有することができる。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、本発明による組成物は、アセチルジペプチド-1セチルエステル、タンジン(Salvia miltiorrhiza)の根の抽出物、ターマルウォーター、例えば、ラロッシュポゼ(La Roche Posay)水及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1種の活性剤を更に含む。
【0052】
本発明による組成物は、局所的適用のために従来使用される投与量形態のすべて、特に、水性溶液、水性アルコール溶液、水中油型(O/W)若しくは油中水型(W/O)、又は多重(三重:W/O/W若しくはO/W/O)エマルション、水性ゲル、又は球(これらの球は、潜在的に、イオン性及び/若しくは非イオン性タイプの脂質小胞(リポソーム、ニオソーム、オレオソーム)である)を使用した水性相中の油性相の分散体の形態を有することができる。これらの組成物は、定型的な方法を使用して調製される。
【0053】
有利には、本発明による組成物は、ゲル又はエマルション、粉末又はペーストの形態を有する。更に、本発明による組成物は、いささか流動的とすることもでき、白色の若しくは着色されたクリーム、軟膏、ミルク、ローション、美容液、ペースト、発泡ジェル、ピーリング、マスク、ケア、トニック又はフォームの外観を有することもできる。任意選択で、エアロゾルの形態で皮膚に適用することもできる。また、固体形態を有することもでき、例えばスティックの形態を有することもできる。
【0054】
本発明による組成物は、油性相を含んでもよい。
【0055】
本発明による組成物における使用に好適な油として、例えば、
- 炭化水素油、
- 合成エステル及びエーテル、特に脂肪酸のエステル及びエーテル、例えば、式R'COOR2及びR'OR2[式中、R’は、8~29個の炭素原子を含む脂肪酸の残基を表し、R2は、3~30個の炭素原子を含有する、任意選択で分枝状の、炭化水素鎖を表す]の油、
- 鉱物又は合成起源の、直鎖状又は分枝状の炭化水素、
- 8~26個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、
- 部分的炭化水素及び/又はシリコーンフッ化物油、
- シリコーン油、
- これらの混合物
を挙げることができる。
【0056】
上で引き合いに出した油のリストにおける「炭化水素油」という用語は、主として炭素原子と水素原子とを含む、任意の油を意味する。
【0057】
油性相は、油性相中に存在することができる他の脂肪体、例えば、8~30個の炭素原子を含む脂肪酸、ワックス、シリコーン樹脂及びシリコーンエラストマーを含有することができる。これらの脂肪は、例えば粘稠度又はテクスチャの観点で、所望の特性を有する組成物を調製するために、当業者によって多様な形で選択されうる。
【0058】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、油中水型(W/O)又は水中油型(O/W)エマルションである。エマルションの油性相の割合は、組成物の総質量に対して、5~80質量%、好ましくは5~60質量%の範囲内でありうる。エマルションは、両性、アニオン性、カチオン性又は非イオン性の乳化剤から選択され、単独で又は混合物において使用される、少なくとも1種の乳化剤を一般に含有し、任意選択で共乳化剤を含有する。乳化剤は、得ようとするエマルション(W/O又はO/W)に応じて、適当に選択される。乳化剤及び共乳化剤は、一般に、組成物の総質量に対して、0.3質量%~30質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%の範囲内の割合で、組成物中に存在する。
【0059】
W/Oエマルションの場合、乳化剤として、例えば、ジメチコンコポリオール及びアルキルジメチコンコポリオールを挙げることができる。W/Oエマルションの界面活性剤として、少なくとも1つのオキシアルキレン基を含む、架橋された固体エラストマー性オルガノポリシロキサンを使用することもできる。
【0060】
O/Wエマルションの場合、乳化剤として、例えば非イオン性乳化剤を挙げることができる。
【0061】
本発明による組成物は、皮膚に直接適用されてもよく、代わりに、皮膚に局所的に適用されることが意図される、密封型又は非密封型の化粧品支持体に適用されてもよい。化粧品支持体の非限定例として、支持体上のパッチ、ウェットティッシュ、マスクを挙げることができる。組成物は、皮膚に適用された後、すすがれる場合も、すすがれない場合もある。
【0062】
好ましい実施形態では、本発明の枠組みに使用される組成物は、局所的適用が意図される。好ましい実施形態では、本発明の枠組みに使用される組成物は、皮膚への適用が意図される。
【0063】
本発明の枠組みにおいて、「皮膚」という用語は、体の任意の皮膚表面、好ましくは顔面又は脚の皮膚、より特定的には顔面の皮膚を指す。
【0064】
使用
本発明は、ブラジキニンの阻害剤としての、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物の使用に関する。
【0065】
本発明によって使用される細菌、又は本発明によって使用される細菌の抽出物は、スフィンゴモナス属のものである。実施形態では、細菌は、スフィンゴモナス・アバシー(Sphingomonas abaci)、スフィンゴモナス・アドハエシバ(Sphingomonas adhaesiva)、スフィンゴモナス・アエロラータ(Sphingomonas aerolata)、スフィンゴモナス・アクアティーリス(Sphingomonas aquatilis)、スフィンゴモナス・アサッカロリティカ(Sphingomonas asaccharolytica)、スフィンゴモナス・アウランティアカ(Sphingomonas aurantiaca)、スフィンゴモナス・アゾティフィゲンス(Sphingomonas azotifigens)、スフィンゴモナス・ドクドネンシス(Sphingomonas dokdonensis)、スフィンゴモナス・エキノイデス(Sphingomonas echinoides)、スフィンゴモナス・ファエニ(Sphingomonas faeni)、スフィンゴモナス・フェニカ(Sphingomonas fennica)、スフィンゴモナス・ハロアロマティカマンス(Sphingomonas haloaromaticamans)、スフィンゴモナス・ジャスプシ(Sphingomonas jaspsi)、スフィンゴモナス・コーリエンシス(Sphingomonas koreensis)、スフィンゴモナス・マリ(Sphingomonas mali)、スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)、スフィンゴモナス・ナタトリア(Sphingomonas natatoria)、スフィンゴモナス・オリゴフェノリカ(Sphingomonas oligophenolica)、スフィンゴモナス・パニー(Sphingomonas panni)、スフィンゴモナス・パラパウシモビリス(Sphingomonas parapaucimobilis)、スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)、スフィンゴモナス・ファイロスファエラエ(Sphingomonas phyllosphaerae)、スフィンゴモナス・ピテュイトサ(Sphingomonas pituitosa)、スフィンゴモナス・プルーニ(Sphingomonas pruni)、スフィンゴモナス・ロセイフラバ(Sphingomonas roseiflava)、スフィンゴモナス・サングイニス(Sphingomonas sanguinis)、スフィンゴモナス・ソリ(Sphingomonas soli)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas sp)、スフィンゴモナス・スベリファシエンス(Sphingomonas suberifaciens)、スフィンゴモナス・テゥルエペリ(Sphingomonas trueperi)、スフィンゴモナス・ウィッティチイ(Sphingomonas wittichii)、スフィンゴモナス・ゼノファグム、スフィンゴモナス・ヤブウチアエ(Sphingomonas yabuuchiae)、及びスフィンゴモナス・ユンナンエンシス(Sphingomonas yunnanensis)、スフィンゴモナス・ヤノイクエ(Sphingomonas yanoikuyae)から選択される種の細菌である。本発明の実施形態では、細菌は、スフィンゴモナス・ゼノファグムである。好ましい実施形態では、細菌は、ブダペスト条約に従って、2019年11月21日に、Collection Nationale de Culture de Microorganismes((CNCM)、パリ、フランス)によって、L’Oreal(101 Avenue Gustave Eiffel, 37390 Notre Dame d’Oe)による番号CNCM I-5455で登録された、スフィンゴモナス・ゼノファグムである。
【0066】
好ましくは、本発明による使用は、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又は好ましくは本発明による化粧用組成物の使用に関する。
【0067】
好ましくは、本発明による使用は、局所的使用である。好ましくは、細菌若しくは細菌の抽出物、又はそれを含有する組成物は、皮膚に、より好ましくは顔面、脚又は体に、より好ましくは顔面に適用される。
【0068】
「ブラジキニンの阻害剤」という用語は、ブラジキニンの生物学的活性を阻害又は低減するための効果を有する化合物を意味する。実施形態では、本発明のスフィンゴモナス属の細菌の抽出物は、例えば、カリクレイン/キニン系(KKS)の活性化を阻害若しくは低減することによって、又はプレカリクレインの活性化を阻害若しくは低減することによって、ブラジキニンの活性化の上流での反応を阻害する。好ましくは、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物は、プレカリクレインの活性化の阻害剤として使用される。
【0069】
この阻害は、血管拡張と、血管透過性の上昇とを阻害する。
【0070】
したがって、本発明はまた、血管拡張及び/又は血管透過性の上昇の阻害剤としての、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はそれを含有する組成物の使用に関する。
【0071】
本発明は、ブラジキニンの合成及び/又は放出の過剰が関係する美容上の障害を防止及び/又は処理するための、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はそれを含有する組成物の使用に関する。
【0072】
ここで、「防止する」又は「防止」という用語は、個人の不快感又は懸念の発生を防止することを狙った一切の作用を指す。そのため、この用語は、症状、すなわち感覚異常を減速、停止又は制限することを含むが、美容上の態様に限定される。
【0073】
ここで、「処置する」又は「処置」という用語は、個人の快適さ又は健康を改善することを狙った一切の行為を指す。そのため、この用語は、症状、すなわち感覚異常を軽減、緩和又は抑制することを含むが、美容上の態様に限定される。
【0074】
「美容上の障害」という用語は、不快感の症状、感覚異常、例えば、皮膚のあるゾーンに感じられるいささか不快な感覚、例えば、つっぱり感、刺痛、痒み、熱感等を意味する。これはまた、視覚的な発現、例えば、赤み、皮膚の血管拡張及び/又は毛細管拡張症も意味する。
【0075】
「ブラジキニンの合成及び/又は放出の過剰」という用語は、対象の皮膚における、この対象において観測される合成及び/又は放出の平均レベルに対して、多くのブラジキニンの合成及び/又は多くのブラジキニンの放出を意味する。「多く」という用語は、ここでは、少なくとも20%、少なくとも50%、又は少なくとも100%の上昇を意味する。
【0076】
好ましくは、本発明による、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はそれを含有する組成物の使用は、赤み、皮膚の血管拡張及び/又は毛細管拡張症を防止する及び/又は減少させるためのものである。
【0077】
ここで、「赤み」又は「赤い斑点」という用語は、体の皮膚、頭皮、粘膜又は半粘膜の全体又は一部が、ピンク色~赤色、更には暗赤色を呈色することを指す。この発現は紅斑とも呼ばれ、健康な顔色(血色のよい頬)の現れであることもあるが、しかしながら、良性であるものの往々にして望ましくないものであり、不体裁であると考えられる。
【0078】
この赤みは、非常に多様な要因、例えば、(i)食品又は熱い飲料若しくはアルコール飲料の消費による、急激な温度変化による、熱又は冷気による、低い相対湿度による、激しい風又はドラフト(ファン、空調装置)への皮膚の曝露による、及びある特定の界面活性剤の適用によるもの等の外部刺激、或いは(ii)皮膚障害、例えば、酒さ、赤瘡、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎に関連する赤み、並びに(iii)アレルギー性皮膚反応に続く赤みによって引き起こされることがある。
【0079】
「外部刺激」という用語は、それ自体で皮膚の外傷を生じさせえない、好ましくは、熱、冷気、低い相対湿度、激しい風又はドラフトへの皮膚の曝露から選択される刺激を意味する。
【0080】
ここで、「皮膚の血管拡張」という用語は、体の皮膚、頭皮、粘膜又は半粘膜の全体又は一部における良性の血管拡張を指し、これは往々にして望ましくないものであり、不体裁であると考えられる。このタイプの血管拡張は、しばしば一時的なものである。
【0081】
好ましくは、本発明による、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はそれを含有する組成物の使用は、ブラジキニンによって誘導される皮膚の血管拡張を、防止する及び/又は減少させるためのものである。
【0082】
ここで、「毛細管拡張症」という用語は、皮膚の表面、粘膜の表面付近に位置する小さな血管が、永続的に異常に拡張することを指す。これらは、典型的には、樹状又はネットワーク状であり、細い線及び回旋による赤色~紫色である。より頻繁には、顔面又は脚に見られる。
【0083】
本発明はまた、本発明によるスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はそれを含有する組成物の使用であって、つっぱり感、熱感及び/又は痒みによって特徴づけられる皮膚の不快感を防止する及び/又は減少させるための、使用に関する。
【0084】
方法
本発明は、皮膚の赤みのための非治療的美容処置方法であって、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はそれを含む組成物を局所的に適用する工程を含む、方法に関する。
【0085】
好ましくは、適用は、適用を必要とする対象に対して、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、又はスフィンゴモナス属の細菌の少なくとも1種の抽出物の有効量で行われる。
【0086】
ここで、「有効量」という用語は、全体として、皮膚の赤みを防止すること及び/若しくは減少させることを可能にする、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物の量、又は全体として、皮膚の赤みを防止すること及び/若しくは減少させることを可能にする、スフィンゴモナス属の細菌の量を指す。
【0087】
本発明の枠組みにおいて、「皮膚」という用語は、体の任意の皮膚表面、好ましくは顔面の皮膚を指す。
【0088】
本発明はまた、敏感肌のための非治療的美容処置方法であって、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌若しくはスフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はそれを含む組成物を局所的に適用する工程を含む、方法に関する。
【0089】
ここで、「敏感肌」という用語は、様々な要素、例えば冷気又は熱の適用に対して、熱感、緊張及び/又は刺痛の感覚を通じて反応する、寛容でない皮膚を指す。
【0090】
特定の実施形態では、本発明による敏感肌のための美容処置方法は、皮膚の熱感、つっぱり感及び/又は刺痛の感覚を防止及び/又は軽減することを狙いとする。
【0091】
好ましくは、適用は、適用を必要とする対象に対して、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、又はスフィンゴモナス属の細菌の少なくとも1種の抽出物の有効量で行われる。
【0092】
ここで、「有効量」という用語は、全体として、敏感肌を処置することを可能にする、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物の量、又は全体として、敏感肌を処置することを可能にする、スフィンゴモナス属の細菌の量を指す。
【0093】
本発明による方法において塗布される細菌、又は塗布される抽出物の細菌は、スフィンゴモナス属の細菌である。実施形態では、細菌は、スフィンゴモナス・アバシー、スフィンゴモナス・アドハエシバ、スフィンゴモナス・アエロラータ、スフィンゴモナス・アクアティーリス、スフィンゴモナス・アサッカロリティカ、スフィンゴモナス・アウランティアカ、スフィンゴモナス・アゾティフィゲンス、スフィンゴモナス・ドクドネンシス、スフィンゴモナス・エキノイデス、スフィンゴモナス・ファエニ、スフィンゴモナス・フェニカ、スフィンゴモナス・ハロアロマティカマンス、スフィンゴモナス・ジャスプシ、スフィンゴモナス・コーリエンシス、スフィンゴモナス・マリ、スフィンゴモナス・メロニス、スフィンゴモナス・ナタトリア、スフィンゴモナス・オリゴフェノリカ、スフィンゴモナス・パニー、スフィンゴモナス・パラパウシモビリス、スフィンゴモナス・パウシモビリス、スフィンゴモナス・ファイロスファエラエ、スフィンゴモナス・ピテュイトサ、スフィンゴモナス・プルーニ、スフィンゴモナス・ロセイフラバ、スフィンゴモナス・サングイニス、スフィンゴモナス・ソリ、スフィンゴモナス種、スフィンゴモナス・スベリファシエンス、スフィンゴモナス・テゥルエペリ、スフィンゴモナス・ウィッティチイ、スフィンゴモナス・ゼノファグム、スフィンゴモナス・ヤブウチアエ、及びスフィンゴモナス・ユンナンエンシス、スフィンゴモナス・ヤノイクエから選択される種の細菌である。特定の実施形態では、細菌は、スフィンゴモナス・ゼノファグムである。好ましい実施形態では、細菌は、ブダペスト条約に従って、2019年11月21日に、Collection Nationale de Culture de Microorganismes((CNCM)、パリ、フランス)によって、L’Oreal(101 Avenue Gustave Eiffel, 37390 Notre Dame d’Oe)による番号CNCM I-5455で登録された、スフィンゴモナス・ゼノファグムである。
【0094】
好ましくは、本発明による方法は、本発明による、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、若しくはスフィンゴモナス属の少なくとも1種の抽出物、又は好ましくはそれを含む化粧用組成物を局所的に適用する工程を含む。好ましくは、細菌、抽出物又は組成物は、顔面、脚又は体に、より好ましくは顔面に適用される。
【0095】
ここで「対象」という用語は、ヒトを意味する。
【0096】
本発明によれば、方法は、非治療的方法である。
【0097】
本発明の方法は、単回投与を含んでもよい。別の実施形態では、投与は、例えば1日当たり2~3回が、1日以上にわたって、一般には少なくとも4週間若しくは4~15週間の長期間にわたって、又は必要であれば場合により中断しながら、必要である限り繰り返される。
【0098】
以降の明細書及び実施例において、別段の指定がない限り、百分率は質量百分率であり、「…から…の間」と書かれた値の範囲は、指定される上限と下限とを含む。成分は、包装する前に、当業者によって容易に決定される順序及び条件下で混合される。
【0099】
以下の実施例によって、本発明を更に説明する。
【実施例】
【0100】
(実施例1)
本発明による抽出物の調製
3000有効リットルのバイオリアクター中、バッチモードで、完全培養培地において、スフィンゴモナス・ゼノファグムCNCM-I 5455株の培養を行う。この工程中、pHは調整せず、温度を26℃に維持し、酸素を30%溶解させる。
【0101】
初期培養培地の組成を、以下のTable 1(表1)に記載する。
【0102】
【0103】
安定フェーズに達したらすぐに、遠心分離(10,000g、連続的)によって、細胞の抽出及び分離を行う。次いで、細胞含有バイオマスとも呼ばれるペレットを回収し、次いで-20℃で凍結させ、次いで解凍して細胞を破裂させ、このようにしてライセートを得る。次いで、袋の中でライセートをコンディショニングし、最後に、121℃で30分滅菌することによって安定化させる。
【0104】
実施例1によって記載された方法の最後に得られるライセートは、ライセートの総質量に対して、4.5質量%の乾燥物質を含有する。
【0105】
(実施例2)
in vitro試験 - 正常な血漿のプレカリクレインの活性化に対する、スフィンゴモナスの抽出物の効果の用量/応答曲線
基質に対する実施例1の抽出物の効果を、発色基質の開裂の分光分析(λ=405nm)による測定値によって、モニタリングする。
【0106】
動的反応のモニタリング及び反応の最大速度の計算によって、酵素活性を評価する。結果は、2つの独立した実験で行われる、少なくとも2回反復の平均±標準偏差に相当する。マン・ホイットニー検定(α<0.05)を用いて、統計的検定を実施する。
【0107】
抽出物は、波長405nmにおいて一定であるが固有の吸収を有し、そのため、実験のすべてについて、測定した吸収からこの特有の吸収を減じることが必要であった。
【0108】
試験される抽出物を0.02、0.1、0.2、0.3、0.4及び0.5%の濃度で含む正常な血漿を、0℃で10分インキュベーションした後、続いて、デキストラン硫酸塩によってプレカリクレインを完全に活性化し、プレカリクレインの活性化を評価する。
【0109】
図1は、血漿中のプレカリクレインの活性化に対する、スフィンゴモナスの抽出物の影響を示す。
【0110】
0.02、0.1、0.2及び0.3%の濃度において、抽出物は、一切の有意な阻害効果を示していない(p>0.05)。阻害効果は、0.4%の濃度で開始すると観測することができる。カリクレイン-キニン系の阻害は、0.4及び0.5%の最終濃度において、46±8%及び90±8%である(p<0.001;
図1)。したがって、本発明者らは、カリクレイン-キニン系の活性化を阻害する、抽出物の能力を確認した。
【0111】
これは、使用した抽出物濃度に応じた血漿プレカリクレインの活性の百分率を示す、
図2においても観測することができる。
【0112】
結論として、カリクレイン-キニン系に対してスフィンゴモナスの抽出物を用いて得られるデータによって、経験の条件(0℃で10分のインキュベーション後、血漿の活性化)における、正常な血漿中でのプレカリクレインの活性化に対する阻害効果が確認される。これらの条件において、0.4%の濃度の実施例1の抽出物から開始すると、阻害効果は有意である。
【0113】
(実施例3)
in vivo試験 - スフィンゴモナスの抽出物の鎮静効果の評価
この試験は、2つの群に分配した10人に対して実施する。試験は、第1の群の対象の顔面の皮膚のあるゾーンに、3.16×10-3%の濃度でカプサイシンを適用し、続いて実施例1のスフィンゴモナスの抽出物を含む組成物を局所的に適用することからなる。第2の群は対照群であり、カプサイシンによる処置を受けるが、スフィンゴモナスの抽出物を含む組成物による処置を受けない。カプサイシンによって刺激された皮膚は、ここでは、敏感肌のモデルとして使用される。
【0114】
組成物のために使用した、スフィンゴモナスの抽出物を含む組成物:
【0115】
【0116】
試験するゾーンにおける皮膚の赤みを、臨床医又は対象自身が、0~4で格付けする。このようにして、赤みのレベルは、
- カプサイシンの適用後、且つ組成物の適用前(T0B)、
- 組成物の適用直後(T0A)、次いで
- カプサイシンの適用の5、10、15、20、25及び30分後
に格付けされる。
【0117】
臨床スコアの変化を
図3に示す。対象自身によって与えられたスコア(そのため、自己評価)の変化を
図4に示す。2つのグラフにおいて、スフィンゴモナスの抽出物を含む組成物を受け入れた者の群の場合に、対照群よりもスコアが低いことが観測される。これらの条件において、スフィンゴモナスの抽出物を含む組成物は、赤みを減少させることができた。
【0118】
【国際調査報告】