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  • 特表-スフィンゴモナス属の細菌の抽出物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】スフィンゴモナス属の細菌の抽出物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20231218BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 36/537 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231218BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20231218BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61K35/74 C
A61K38/05
A61K36/537
A61K33/00
A61P37/02
A61P17/00
A61P17/04
A61P37/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537176
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021086534
(87)【国際公開番号】W WO2022129549
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】2013724
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2109095
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】カリマ・ラビアド-ハドジ
(72)【発明者】
【氏名】コシマ・デュフール-シュロイフ
(72)【発明者】
【氏名】ガイーヌ・アザディギアン
(72)【発明者】
【氏名】シルビー・バン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA14
4C084BA31
4C084NA05
4C084ZA89
4C084ZB07
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086HA21
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZB07
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC31
4C087CA09
4C087CA11
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB07
4C088AB38
4C088AC11
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA01
4C088NA05
4C088ZA89
4C088ZB07
(57)【要約】
本発明は、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、並びに免疫応答の調整に、及び任意選択で皮膚のバリア機能の強化に使用するための、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属の細菌の抽出物、並びにスフィンゴモナス属の細菌の抽出物若しくはスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属の細菌の抽出物。
【請求項2】
アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む、組成物。
【請求項3】
スフィンゴモナス属の細菌が、スフィンゴモナス・ゼノファグム(Sphingomonas xenophaga)種の細菌である、請求項1に記載の使用のための抽出物、又は請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
スフィンゴモナス・ゼノファグム種の細菌が、CNCMアクセッション番号I-5455の下で提出された株の細菌である、請求項3に記載の使用のための抽出物又は使用のための組成物。
【請求項5】
好ましくは皮膚の表面における、その局所使用のための、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の使用のための抽出物、又は請求項2から4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
抽出物の濃度が、組成物の総質量に対して0.0001質量%から30質量%の間に含まれる、請求項2から5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
アセチルジペプチド-1セチルエステル、タンジン(Salvia miltiorrhiza)根の抽出物、ターマルウォーター、例えば、ラロッシュポゼ(La Roche Posay)水及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の活性物質を更に含む、請求項2から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
アレルギー反応が、即時型アレルギー反応である、請求項1、3から5のいずれか一項に記載の使用のための抽出物、又は請求項2から7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
反応が、蕁麻疹、皮膚の発疹、及び/又は発赤の出現を含む、請求項1、3から5及び8のいずれか一項に記載の使用のための抽出物、又は請求項2から8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
免疫応答の調整に、及び任意選択で皮膚のバリア機能の強化に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物。
【請求項11】
免疫応答の調整に、及び任意選択で皮膚のバリア機能の強化に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、並びに免疫応答の調整に、及び任意選択で皮膚のバリア機能の強化に使用するための、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属の細菌の抽出物、並びにスフィンゴモナス属の細菌の抽出物若しくはスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギーは、生物がアレルゲンに曝露された後に過剰な炎症反応が起こる複雑な現象である。特に、アレルギーは、生物と外部媒体との間のバリアの多孔性、及び免疫系の調節という2つの価に依存する。
【0003】
したがって、アレルギーは、外部、特に粒子、化学物質、又は化学的攻撃に対するバリアであるだけでなく、水及び他の間質の化合物の漏出を制限するためでもある、皮膚の透過性に依存する。皮膚のこの特性は、バリア機能と呼ばれる。特に、バリア機能は、タイトジャンクション及び関連タンパク質によって確実にされる。これらのタンパク質の発現及びタイトジャンクションの形成を刺激することによって、Toll 2(TLR2)型受容体の活性化が、バリア機能を強化することを可能にする。
【0004】
アレルギーはまた、特にE型抗体(IgE)、プロスタグランジンE2(PGE2)及び様々なインターロイキン(IL)を介した、免疫系の調節に依存する。
【0005】
IgEは、蕁麻疹又は血管浮腫を引き起こしうる即時型アレルギー反応に関与する。
【0006】
PGE2及びIL-6/IL-8はまた、好中球の誘因において役割を果たす。それらは、一方では、PGE2について血管透過性の増加のおかげで、他方では、IL-6又はIL-8について好中球を誘引するケモカインの勾配を通じて、相補的な作用機序を有する。したがって、これらの2つの異なる、組み合わされた作用機序は、免疫応答を改善する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、スフィンゴモナスの抽出物が、インビトロでhTLR2受容体を活性化し、皮膚のバリア機能の強化に関連する遺伝子の発現を促進することを可能にすることを発見した。本発明者らはまた、この抽出物が、他の炎症誘発性インターロイキン、例えば、IL-12、IL-6及びIL-8に著しく影響を及ぼさずに、炎症誘発性メディエーターPGE2の分泌を阻害し、IL-10(抗炎症性サイトカイン)を促進するインターロイキンの発現を調整することを可能にすることを示した。最後に、本発明者らは、抽出物が、ヒトBリンパ球によるIgE生成を制限することを可能にすることを示した。
【0008】
したがって、スフィンゴモナス属の細菌及びそれらの抽出物は、皮膚のバリア機能の強化と組み合わされたいくつかの抗炎症活性を有し、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療を可能にする。
【0009】
したがって、本発明は、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物に関する。
【0010】
本発明はまた、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む、組成物に関する。
【0011】
本発明はまた、免疫応答の調整に、及び任意選択で皮膚のバリア機能の強化に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物に関する。
【0012】
更に、本発明は、免疫応答の調整に、及び任意選択で皮膚のバリア機能の強化に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む、組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般的定義
「細菌」という用語は、生きている、半活性の、不活性化された又は死んだ形態の原核微生物、好ましくはプロテオバクテリアを指す。
【0014】
本発明により使用される細菌又は本発明により使用される抽出物の細菌は、スフィンゴモナス属の細菌である。一実施形態では、細菌は、スフィンゴモナス・アバシー(Sphingomonas abaci)、スフィンゴモナス・アドハエシバ(Sphingomonas adhaesiva)、スフィンゴモナス・アエロラータ(Sphingomonas aerolata)、スフィンゴモナス・アクアティーリス(Sphingomonas aquatilis)、スフィンゴモナス・アサッカロリティカ(Sphingomonas asaccharolytica)、スフィンゴモナス・アウランティアカ(Sphingomonas aurantiaca)、スフィンゴモナス・アゾティフィゲンス(Sphingomonas azotifigens)、スフィンゴモナス・ドクドネンシス(Sphingomonas dokdonensis)、スフィンゴモナス・エキノイデス(Sphingomonas echinoides)、スフィンゴモナス・ファエニ(Sphingomonas faeni)、スフィンゴモナス・フェニカ(Sphingomonas fennica)、スフィンゴモナス・ハロアロマティカマンス(Sphingomonas haloaromaticamans)、スフィンゴモナス・ジャスプシ(Sphingomonas jaspsi)、スフィンゴモナス・コレエンシス(Sphingomonas koreensis)、スフィンゴモナス・マリ(Sphingomonas mali)、スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)、スフィンゴモナス・ナタトリア(Sphingomonas natatoria)、スフィンゴモナス・オリゴフェノリカ(Sphingomonas oligophenolica)、スフィンゴモナス・パニー(Sphingomonas panni)、スフィンゴモナス・パラパウシモビリス(Sphingomonas parapaucimobilis)、スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)、スフィンゴモナス・ファイロスファエラエ(Sphingomonas phyllosphaerae)、スフィンゴモナス・ピテュイトサ(Sphingomonas pituitosa)、スフィンゴモナス・プルーニ(Sphingomonas pruni)、スフィンゴモナス・ロセイフラバ(Sphingomonas roseiflava)、スフィンゴモナス・サングイニス(Sphingomonas sanguinis)、スフィンゴモナス・ソリ(Sphingomonas soli)、スフィンゴモナス・エスピー(Sphingomonas sp)、スフィンゴモナス・スベリファシエンス(Sphingomonas suberifaciens)、スフィンゴモナス・トゥルーペリ(Sphingomonas trueperi)、スフィンゴモナス・ウィッティチイ(Sphingomonas wittichii)、スフィンゴモナス・ゼノファグム(Sphingomonas xenophaga)、スフィンゴモナス・ヤブウチアエ(Sphingomonas yabuuchiae)、スフィンゴモナス・ユンナネンシス(Sphingomonas yunnanensis)、及びスフィンゴモナス・ヤノイクヤエ(Sphingomonas yanoikuyae)の中から選択される種の細菌である。本発明の一実施形態では、細菌は、スフィンゴモナス・ゼノファグムである。好ましい実施形態では、細菌は、L'Oreal、101 Avenue Gustave Eiffel、37390 Notre Dame d'Oeにより番号CNCM I-5455の下でthe National Collection of microorganism culture((CNCM)、Paris、France)の前に、2019年11月21日にブダペスト条約に従って提出されたスフィンゴモナス・ゼノファグムである。
【0015】
本明細書で使用される場合、「予防する」又は「予防」という用語は、ある障害、又はこの障害に関連する1つ若しくはいくつかの症状の出現を予防することを目的としたあらゆる行動を指す。したがって、この用語はまた、症状の減速、中断又は制限を包含する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療」という用語は、ある障害、又はこの障害に関連する1つ若しくはいくつかの症状の進行を抑制するか、緩和するか又は予防することを目的としたあらゆる行動を指す。したがって、この用語は、症状の減弱、軽減又は抑制を包含する。
【0017】
「アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療」によって、対象においてアレルギー反応によって引き起こされる皮膚症状の減速、中断、制限、減弱、軽減又は抑制が理解されるべきである。一般に、これらの症状は、蕁麻疹、皮膚の発疹、及び/又は発赤の出現を含む。
【0018】
「対象」によって、ヒト、好ましくはアレルギーに罹患しているヒトが本明細書において理解されるべきである。本発明のある実施形態では、対象は、皮膚反応を引き起こしているアレルギー反応を既に有している。
【0019】
「皮膚の」によって、皮膚のレベルにおける、特に、アレルゲンに曝露された又は曝露される可能性がある皮膚の領域のレベルにおけることが理解されるべきである。本発明のある実施形態によれば、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応は、蕁麻疹、皮膚の発疹、及び/又は発赤の出現を含む。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の文脈において使用される抽出物及び組成物は、局所的に使用される。好ましい実施形態では、本発明の文脈において使用される抽出物及び組成物は、皮膚に対する適用について意図される。
【0021】
本発明の文脈において、「皮膚」という用語は、体のあらゆる皮膚表面、好ましくは顔の皮膚、首の皮膚、割れ目の皮膚、特に顔の皮膚を指す。
【0022】
「アレルギー反応」によって、当業者によって通常使用される意味、即ち、アレルゲンへの生物の曝露後に起こる過剰な炎症反応が理解されるべきである。この反応は、一般に無害で、環境に存在する物質であるアレルゲンへの生物の過敏症の徴候である。これらの物質は、大気、化粧品等に見出されうる。
【0023】
いわゆる即時型アレルギー反応は、最も頻繁にはアレルゲンとの接触から数分(2時間未満)後における、症状の出現を特徴とする。この場合、これは蕁麻疹からなり、これは広がり、IgEを伴いうる。いわゆる遅延型アレルギー反応は、一般にはアレルゲンとの接触から48時間後の症状の出現を特徴とする。この場合、それは、接触部位における局所的湿疹からなり、化学的分子を伴う。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明の文脈において実施される抽出物及び組成物は、即時型アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用される。
【0025】
「免疫応答の調整」によって、免疫応答の減速、中断又は減弱が本明細書において理解されるべきである。特に、本発明による免疫応答の調整は、炎症誘発性サイトカインの活性の減少、及び/又は抗炎症性サイトカインの活性の増加である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、免疫応答の調整は、炎症誘発性インターロイキンIL-12、IL-6及び/又はIL-8に著しく影響を及ぼさずに、IL-10の活性の増加を通じて達成される。
【0027】
「皮膚のバリア機能の強化」によって、皮膚のバリア機能を改善すること、特にタイトジャンクションの数の増加を通じて、並びに/又は皮膚のレベルにおける関連タンパク質、例えば、クローディン-1、コルニフェリン及び/若しくは閉鎖帯1の増加を通じて皮膚のバリア機能を改善することが本明細書において理解されるべきである。
【0028】
スフィンゴモナス属の細菌の抽出物
本発明は、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物に関する。
【0029】
本発明の文脈において、「細菌の抽出物」という用語は、細菌によって生成及び/若しくは分泌され、したがって細菌培養物の培養培地(細胞外媒体とも呼ばれる)中に存在する一連の化合物、並びに/又は細菌中に含まれ、したがって遠心分離後の細菌培養物の細菌ペレット中に存在する一連の化合物、例えば、細胞内媒体並びに/又は細胞壁及び/若しくは膜の成分、の両方を指す。
【0030】
本発明による抽出物は、当業者に周知の任意の従来法によって調製できる。典型的には、これらの方法は、発酵、分離及び精製工程を含む。
【0031】
典型的には、スフィンゴモナス属の細菌は、適切な培地中で培養され、所望の密度で培養される。好ましくは、細菌自体は、任意の公知のプロセス、例えば、遠心分離によって濃縮される。その後、濃縮された細菌は、粗調製物として直接使用されてもよいし、又は当業者に周知の追加の処理工程、例えば、凍結乾燥、脱水、濾過、精製、凍結と場合によってはその後の解凍、滅菌、カラムクロマトグラフィー、粉砕、溶解等が行われてもよい。
【0032】
好ましくは、細菌抽出物は、細菌溶解物である。このような溶解物は、特に、細菌中に含まれ、したがって遠心分離後に細菌培養物の細菌ペレット中に存在する化合物を含む。好ましくは、細菌抽出物は、細胞内媒体並びに/又は細胞壁及び/若しくは膜の成分を含む、細菌溶解物である。
【0033】
溶解物は、細胞溶解と呼ばれ、したがって想定される微生物の細胞中に天然に含有される細胞内生物学的成分の放出を誘導する現象による、生物学的細胞の破壊又は溶解の完了時に得られる物質を通常意味する。
【0034】
本発明の文脈において、溶解物という用語は、想定される微生物の溶解によって得られる溶解物の全体、又はその一部のみを指すためにどちらでもよく使用される。
【0035】
したがって、実施される溶解物は、細胞内生物学的成分によって、並びに細胞壁及び膜の成分によって、完全に又は部分的に形成される。
【0036】
したがって、好ましくは、実施される溶解物は、本質的に細胞内生物学的成分によって、並びに細胞壁及び膜の成分によって、完全に又は部分的に形成される。
【0037】
好ましい実施形態では、溶解物は、1乾燥質量%未満の細胞外媒体を含み、更に良好には、溶解物は、0.5乾燥質量%から1乾燥質量%の間の細胞外媒体を含み、更により好ましくは、溶解物は、0.7乾燥質量%から0.8乾燥質量%の間の細胞外媒体を含む。
【0038】
この細胞溶解は、様々な技術、例えば、浸透圧ショック、熱ショック、例えば、凍結とその後の解凍によって、超音波によって、高圧処理によって又は遠心分離型の機械的負荷の下で完了されうる。
【0039】
好ましくは、本発明の文脈において実施される溶解物は、以下の工程を含む方法によって得られる:
i)遠心分離工程、
ii)ペレットを回収する工程、
iii)ペレットを凍結する工程、
iv)ペレットを解凍する工程、
v)任意選択で、特に121℃で、オートクレーブすることによって滅菌する工程。
【0040】
本発明の特定の実施形態では、細菌抽出物は、不活性化された細菌を含む。
【0041】
「不活性化された」によって、当業者によって通常使用される意味、即ち、様々な原因(熱、化学物質、機械的、酵素的)の影響下における細菌の活性の抑制が理解されるべきである。特に、細菌は、熱、特にオートクレーブすることによって不活性化される。
【0042】
好ましくは、本発明による前記抽出物は、hTLR2受容体を活性化すること、及び/又は皮膚のバリア機能の強化に関連する遺伝子の発現を促進することにおいて活性を有する。
【0043】
好ましくは、前記抽出物は、炎症誘発性メディエーターPGE2の分泌を阻害することにおいて活性を有する。
【0044】
好ましくは、前記抽出物は、IL-12、IL-6及びIL-8の発現に著しく影響を及ぼさずに、IL-10の発現を刺激することにおいて活性を有する。
【0045】
好ましくは、前記抽出物は、Bリンパ球によるIgEの生成を阻害することにおいて活性を有する。
【0046】
これらの全ての活性は、本明細書において以下の実施例に記載される特定の実施例を含む、当業者に公知の手法によって検出及び/又は分析されうる。
【0047】
したがって、スフィンゴモナス属の細菌及びそれらの抽出物は、皮膚のバリア機能の強化と組み合わされたいくつかの抗炎症活性を有し、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療を可能にする。
【0048】
本発明はまた、免疫応答の調整に、及び任意選択で皮膚のバリア機能の強化に使用するための、本発明による細菌の抽出物に関する。
【0049】
組成物
本発明はまた、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む、特に局所適用について意図される、組成物に関する。
【0050】
本発明はまた、免疫応答の調整に、及び任意選択で皮膚のバリア機能の強化に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む、組成物に関する。
【0051】
一実施形態では、組成物は、本明細書において上に記載される抽出物を含む。
【0052】
一実施形態では、組成物は、一般的定義のセクションに記載されるスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む。
【0053】
本発明による組成物中の細菌又は細菌の抽出物の量は、想定される組成物タイプに応じて変わる。好ましくは、微生物又は抽出物の量は、組成物の総質量に対して0.0001から30乾燥質量%の間、組成物の総質量に対して0.001から15乾燥質量%の間、組成物の総質量に対して0.01から10乾燥質量%の間、好ましくは、組成物の総質量に対して0.01から5乾燥質量%の間、又は組成物の総質量に対して0.01から3乾燥質量%の間に含まれる。
【0054】
細菌が、生きている形態で組成物中に配合される場合、生きた細菌の量は、組成物1グラムあたり、103から1015ufc/gまで、特に105から1015ufc/gまで、特に107から1012ufc/gの細菌まで変わりうる。
【0055】
好ましくは、本発明による組成物は、水性相を含む。
【0056】
好ましくは、本発明による組成物は、組成物の総質量に対して20質量%から95質量%、好ましくは30質量%から70質量%の範囲の含水量を有する。
【0057】
本発明による組成物は、組成物の総質量に対して0.5質量%から25質量%、好ましくは5質量%から20質量%、より良好には10質量%から15質量%の範囲の濃度で1つ又はいくつかの水混和性有機溶媒を更に含んでもよい。
【0058】
前に示されたように、本発明の文脈において使用される組成物は、好ましくは、局所的に使用される。
【0059】
これは当業者には周知であるように、局所適用のための組成物はまた、通常の添加剤、例えば、親水性又は親油性のゲル化剤、本発明による抽出物とは異なる親水性又は親油性の活性物質、保存剤、酸化防止剤、水に混和性でない溶媒、香料、臭気吸収剤、着色剤を含有してもよい。これらの様々な添加剤の量は、想定される分野で通常使用される量であり、例えば、組成物の総質量の0.01から20%である。
【0060】
当然、当業者であれば、本発明による抽出物の有利な特性が、想定される添加によって変更されない、又は実質的に変更されないように、これらの任意選択の追加の成分及び/若しくは活性物質、並びに/又はそれらの量を注意深く選択することになる。
【0061】
一実施形態では、スフィンゴモナス属の細菌又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物は、組成物の唯一の活性物質である。
【0062】
別の実施形態では、本発明の組成物は、本発明による細菌又は抽出物とは異なる他の活性物質を更に含有してもよい。これらの活性物質は、皮膚に対する効果、特に鎮静効果を有しうる。
【0063】
本発明の特定の実施形態では、本発明による組成物は、アセチルジペプチド-1セチルエステル、タンジン(Salvia miltiorrhiza)根の抽出物、ターマルウォーター、例えば、ラロッシュポゼ(La Roche Posay)水、及びそれらの混合物の中から選択される少なくとも1種の活性物質を更に含む。
【0064】
本発明による組成物は、局所適用に通常使用される任意のガレノス形態、特に、水性、水性-アルコール性溶液、水中油型(O/W)又は油中水型(O/W)又は複数(3重:W/O/W又はO/W/O)エマルション、水性ゲル、又は小球を使用した水性相中の脂肪相の分散体の形態であってもよく、これらの小球は、イオン型及び/又は非イオン型脂質小胞(リポソーム、ニオソーム、オレオソーム)からなってもよい。これらの組成物は、決まった手順の方法を使用して調製される。
【0065】
有利には、本発明による組成物は、ゲル、又はエマルション、又はペーストの形態である。更に、本発明による組成物は、程度の差はあっても流体であることができ、白色又は有色クリーム、軟膏、乳液、ローション、セラム、ペースト、フォーミング若しくは非フォーミングゲル、角質除去、マスク、トリートメント、トニック又は泡状物質の外観を有することができる。それは、場合によりスプレーの形態で皮膚に適用可能である。それはまた、固体形態、例えば、スティック又は石鹸の形態であってもよい。
【0066】
本発明による組成物は、脂肪相、特に油性相を含んでもよい。
【0067】
本発明による組成物における使用に好適な油として、例えば以下が挙げられてもよい:
- 炭化水素油、
- 特に脂肪酸の、合成エステル及びエーテル、例えば、式R'COOR2及びR'COR2(式中、R'は、8から29個の炭素原子を含む脂肪酸の残基を表し、R2は、3から30個の炭素原子を含有する、分枝状又は非分枝状炭化水素鎖を表す)の油、
- 無機又は合成起源の直鎖状又は分枝状炭化水素、
- 8から26個の炭素原子を有する脂肪アルコール、
- 部分的に炭化水素化及び/又はシリコーン化されたフッ素化油、
- シリコーン油、
- それらの混合物。
【0068】
上に列挙される油のリストにおける炭化水素油によって、主に炭素原子及び水素原子を含むあらゆる油が理解されるべきである。
【0069】
油性相は、油性相中に存在しうる他の脂肪体、例えば、8から30個の炭素原子を含む脂肪酸、ワックス、シリコーン樹脂、及びシリコーンエラストマーを含みうる。これらの脂肪は、求められる特性、例えば稠度又はテクスチャ特性を有する組成物を調製するために、多様な形で当業者によって選択されてもよい。
【0070】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、油中水型(W/O)又は水中油型(O/W)エマルションである。エマルションの油性相の割合は、組成物の総質量に対して5から80質量%、好ましくは30から70質量%の範囲であってよい。エマルションは、単独で又は混合物として使用される、両性、アニオン性、カチオン性又は非イオン性の乳化剤から選択される少なくとも1種の乳化剤、及び任意選択で共乳化剤を一般に含有する。乳化剤は、得ようとするエマルション(W/O又はO/W)に応じて適切に選択される。一般に、乳化剤及び共乳化剤は、組成物中に、組成物の総質量に対して0.3質量%から30質量%、好ましくは0.5質量%から20質量%の範囲の割合で存在する。
【0071】
W/Oエマルションについて、乳化剤として、例えば、ジメチコンコポリオール及びアルキル-ジメチコンコポリオールが挙げられてもよい。W/Oエマルションの界面活性剤として、少なくとも1つのオキシアルキレン化基を含む架橋エラストマー固体オルガノポリシロキサンを使用することも可能である。
【0072】
O/Wエマルションについて、乳化剤として、例えば非イオン性乳化剤が挙げられてもよい。
【0073】
組成物は、皮膚に適用された後にすすぎ落とされても又はすすぎ落とされなくてもよい。
【0074】
方法
本発明はまた、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物若しくはスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む組成物を、好ましくは皮膚の表面において局所的に、投与する工程を含む、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応を予防又は治療する方法に関する。
【0075】
アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防又は治療のための医薬の製造における、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物若しくはスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む組成物の使用も提案される。
【0076】
本発明はまた、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物若しくはスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む組成物を、好ましくは皮膚の表面において局所的に、投与する工程を含む、免疫反応を調整する、及び任意選択で皮膚のバリア機能を強化する方法に関する。
【0077】
免疫反応の調整、及び任意選択で皮膚のバリア機能の強化のための医薬の製造における、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物若しくはスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む組成物の使用も提案される。
【0078】
特定の実施形態では、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む、組成物は、本明細書において上記の組成物のセクションに記載される通りである。
【0079】
特定の実施形態では、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物は、本明細書において下記のスフィンゴモナス属の細菌の抽出物のセクションに記載される通りである。
【0080】
好ましくは、適用は、それを必要とする対象に対して、有効量の、スフィンゴモナス属の細菌の少なくとも1種の抽出物、又はスフィンゴモナス属の細菌の抽出物若しくはスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む少なくとも1種の組成物において、行われる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、全体として、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/若しくは低下を可能にするスフィンゴモナス属の細菌の抽出物の量、又は全体として、アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/若しくは低下を可能にするスフィンゴモナス属の細菌の量を指す。
【0082】
有効量は、当然、想定される活性物質、投与様式、治療適応、患者の年齢及び患者の状態に依存する。
【0083】
有利には、組成物又は抽出物は、場合により生理学的に許容される賦形剤を更に含む、皮膚科学的組成物の形態で特に使用される。
【0084】
「生理学的に許容される」によって、対象に投与された際に、望ましくない二次反応、アレルギー等を生じない組成物及び分子実体が本明細書において理解されるべきである。したがって、生理学的に許容される賦形剤又はビヒクルは、カプセル化材料、希釈剤、支持体、又は任意の他の液体、半固体若しくは固体の非毒性の配合補助剤である。
【0085】
本発明の文脈において使用される皮膚科学的組成物は、典型的には、投与様式に適合するように調製される。生理学的に許容される賦形剤は、典型的には、投与される組成物によって部分的に決定されるだけでなく、組成物を投与するために使用される特定の手法によっても決定される。
【0086】
投与しようとする化合物の投与量は、個々の場合に依存し、当業者には周知のように、有効量及び最適な効果を得るために個々の状況に適合させるべきである。有効用量レベルは、全ての対象に特異的であり、特に、様々な要因、例えば、治療される障害、及び障害の重症度、使用される具体的な化合物の活性、使用される具体的な組成物に依存する。例えば、所望の効果に達するのに必要とされるレベルよりも低いレベルにおける化合物の用量で開始して、所望の効果が得られるまで用量を次第に増加させることが当業者に周知である。
【0087】
好ましくは、本発明による方法は、スフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌、又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の抽出物、又はそれを含む組成物を局所適用する工程を含む。
【0088】
好ましい実施形態では、本発明の文脈における局所適用は、皮膚に対する適用である。
【0089】
本発明の方法は、たった1回の投与を含んでもよい。別の実施形態では、投与は、例えば、1日又は複数日にわたって1日2から3回繰り返され、又は連続した数日か否かにかかわらず毎日適用され、一般に少なくとも4週間又は4から15週間の長期間にわたって、又は必要な場合には起こり得る中断を挟みながら、必要なだけ長く繰り返される。
【0090】
別の実施形態では、本発明の方法は、アレルゲンへの皮膚の領域の曝露の前及び/又は後に、この領域に対して投与する工程を含んでもよい。
【0091】
本説明及び以下の実施例において、別段の指示がない限り、百分率は、質量百分率であり、「~から~の間」と表される値の範囲は、特定された上限及び下限を含む。成分は、その包装前に、当業者によって容易に決定される順序及び条件下で混合される。
【0092】
本発明は、本明細書において下記の実施例によって更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】単球によるサイトカインの分泌に対する、スフィンゴモナスの抽出物の効果を表すグラフである。
【実施例
【0094】
(実施例1)
本発明による抽出物の調製
スフィンゴモナス・ゼノファグムCNCM-I 5455株の培養は、バッチモードで3000有効リットルのバイオリアクター中において完全培養培地中で行う。この工程の間、pHを調節せず、温度を26℃で維持し、酸素を30%で溶解する。
【0095】
初期培養培地の組成を、本明細書において下記のTable 1(表1)に記載する。
【0096】
【表1】
【0097】
プラトーレベルに達したら、細胞の抽出及び分離を、遠心分離(連続的に10,000g)によって行う。次いで、細胞を含有する、バイオマスとも呼ばれるペレットを回収し、その後-20℃で凍結し、次いで解凍し、それにより、細胞の破裂、及びこうして、溶解物の取得を可能にする。その後、溶解物を小袋に入れ、最後に、121℃で30分間の滅菌により安定化する。
【0098】
実施例1により記載される方法の完了時に得られる溶解物は、溶解物の総質量に対して、4.5質量%の乾燥物質を含有する。
【0099】
(実施例2)
インビトロ試験 - TLRの用量反応分析(Invivogen社)。
HEK293-TLR細胞株:
組換えHEK-293細胞株に対して2連で、抽出物及び対照を試験する。これらの細胞株は、ヒトTLRタンパク質だけでなく、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)であるレポーター遺伝子も機能的に過剰発現する。このレポーター遺伝子の生成は、NFkB誘導性プロモーターによって支配される。TLRレポーターの活性化の結果は、光学密度(OD)値の形態で与えられる。
【0100】
陽性対照:
CU-T12-9及びFSL-1を、hTLR2を発現する細胞に対して使用し、それぞれ、TLR1/TLR2及びTLR2/TLR6活性を評価する。
【0101】
FSL-1を、10pg/ml及び30pg/mlで試験する。CU-T12-9を、200nM及び300nMで試験する。
【0102】
陰性対照:
レポーター遺伝子についてのみ組み換えたHEK-293細胞株を、hTLRを発現する細胞株についての陰性対照として使用した。誘導性レポーター遺伝子NFkB(SEAP)の有効性を確認するために、このHEK-293 TLR細胞株を、以下の濃度におけるTNFαで刺激した:100ng/ml、30ng/ml、10ng/ml、3ng/ml、1ng/ml、0.3ng/ml、及び0.1ng/ml。
【0103】
この陰性対照細胞株を、様々な濃度の試験される抽出物でも刺激した。
【0104】
抽出物の試験:
20μlの抽出物を用いて、200μlの反応体積中のレポーターhTLR細胞株を刺激した。HEK-Blue-hTLR5細胞株に対する用量反応について、実施例1に従って得られた液体抽出物を、以下の濃度において2連で試験した:1000μg/ml、500μg/ml、250μg/ml、125μg/ml、62.5μg/ml、31.5μg/ml。
【0105】
TLR1/2及び/又はTLR2/6特異性について、実施例1に従って得られた液体抽出物を、以下の濃度において2連で試験した:100μg/ml、30μg/ml及び10μg/ml。
【0106】
結果:
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
結論:
抽出物は、陰性対照細胞株を活性化しないが、レポーター細胞株hTLR2(1/6)を強く活性化し、10μg/mlにおいてさえ活性化する。それは、非特異的様式でhTLR1/2及びhTLR2/6を活性化する。
【0111】
(実施例3)
インビトロ試験 - 正常ヒトケラチノサイトにおける遺伝子の発現の調整
材料及び方法
細胞毒性:
正常ヒト表皮ケラチノサイトを、96ウェル培養プレート中に播種し、37℃及び5%CO2で培養培地中において24時間培養する。その後、培地を、試験しようとする化合物(8個の試験される濃度)を含有するか、又は含有しない(対照)培養培地に置き換え、その後、細胞を24時間インキュベートした。全ての条件を、2連で行った。インキュベーションの終了時に、細胞生存率を、ミトコンドリア活性の測定の標準的試験によって測定した。
【0112】
RT-qPCTによるバリア機能/水分補給に関連する遺伝子の発現の分析:
正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)を、48ウェル培養プレート中に播種し、次いで、37℃及び5%CO2で培養培地中において3日間培養し、培養の最初の24時間後に培養培地を取り替えた。インキュベーションの終了時に、培養培地を、試験しようとする化合物を含有しない(対照)か、又は含有する試験培地(1.5mMのCaCl2を補充した)に置き換え、次いで、細胞を24時間インキュベートした。全ての条件を、2連で行った。
【0113】
処理の終了時に、培養培地を除去し、細胞をPBS(CaCl2なし、MgCl2なし)で2回すすいだ。その後、全RNAを、抽出キットを使用して単離した。RNAの定量化、及びその品質管理を、Labchip GX(Perkin Elmer社)によって分析した。
【0114】
選択された転写産物の発現を、2工程で定量的PCRによって分析した。第一に、cDNAを、RNAから反対方向に転写した。その後、定量的PCR実験を、リアル-タイムPCRシステムを使用して行った。
【0115】
実験プロトコール
正常ヒト表皮ケラチノサイトを、キャンペーンあたり最大72個の試料を評価するのに十分な細胞を生成するように、培養し、増殖させる。48ウェルマイクロプレートに細胞(ウェルあたり50,000個の細胞)を播種し、制御された温度、湿度及びCO2における環境中で48時間インキュベートする。培養培地を取り替える際に、試験しようとする試料を細胞に添加し、次いで、細胞を24時間インキュベートする。
【0116】
細胞を洗浄し、RNAを保存するために-80℃で凍結乾燥する。RNAを抽出し、定量化し、cDNAへのそれらの逆転写を行う前に、それらの品質を確認する。最後に、選択された遺伝子のセットの発現を定量化するために、各実験条件についてRT-qPCRを行う。
【0117】
【表5】
【0118】
この実施例では、試験されたスフィンゴモナスバッチは、実施例1に従って得られた液体抽出物(4.5%MS)の凍結乾燥物(100%MS)に相当する。
【0119】
結論として、1g/Lが0.1%の濃度に相当するという事実を考慮すると、実施例1に従って得られた液体抽出物は、遺伝子クローディン-1、コルニフェリン及び閉鎖帯1に対して0.0009(計算:0.2×0.1×0.045)及び0.0045%(計算:1×0.1×0.045)でNHEKにおいて発現の著しい調整を可能にする。
【0120】
(実施例4)
インビトロ試験「ヒト骨髄細胞によるPGE2放出の調節の評価」
U937ヒト骨髄細胞株(Uppsala University、Rapphonsvagen 11、75653 Uppsala、Swedenの免疫学、遺伝学、及び病理学部の細胞病理学教授であるKenneth NILSSON博士から提供された)に対する抗炎症有効性試験。
【0121】
試験の原理
この細胞株をこのプロトコールにおいて使用して、インビトロで単球/マクロファージの免疫応答をモデル化する。PMA及びLPSによる処理は、炎症誘発性メディエーター及びサイトカインの分泌を誘導する。抗炎症剤による共処理は、インビトロにおける炎症誘発性反応の固有の調節活性の特定を可能にする。
【0122】
細胞処理
L-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン、10%で熱処理したウシ胎児血清、10μg/mLのホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)及び60μg/mLの大腸菌(E. coli)についてのリポ多糖(LPS)を補充したRPMI 1640培養培地中のスフィンゴモナス・ゼノファグム抽出物で、ヒト骨髄細胞株を処理した。7個の濃度のスフィンゴモナス・ゼノファグム抽出物を試験した:1、3、10、30、100、300及び1000μg/mL。
【0123】
5%CO2の湿潤雰囲気中、37℃における処理の24時間後、細胞生存率を、各条件について測定した。
【0124】
その後、上清を、PGE2アッセイのために収集した。
【0125】
サイトカインアッセイ
PGE2レベルを、ELISA試験によって決定する。
【0126】
生存率の計算 - CV75
CV75=C1+((V1-75)/(V1-V2))×(C2~C1)
(式中、
C1=生存率>75%を有する最低濃度
C2=生存率<75%を有する最高濃度
V1=最低生存率百分率>75%
V2=最高生存率百分率<75%)
【0127】
反応性指数の計算 - RI
RI=処理上清のマーカーの量(pg/ml)×100/非処理上清中の分析物の量(pg/ml)。
【0128】
50%における阻害濃度の計算 - IC50
IC50=C1+((50-RI1)/(RI2-RI1))×(C2~C1)
(式中、
C1=RI<50を有する最高濃度
C2=RI>50を有する最低濃度
RI1=最高RI<50
RI2=最低RI>50)
【0129】
【表6】
【0130】
スフィンゴモナス抽出物は、199μg/mlに等しいIC50で炎症誘発性メディエーターの分泌を阻害する。
【0131】
(実施例5)
単球によるサイトカイン(IL-6、IL-8、IL-10及びIL-12p40)の分泌に対する抽出物の効果のインビトロ試験。
実験の目的は、36時間後の単球によるサイトカインの分泌に対する抽出物の効果を研究することである。
【0132】
材料及び方法:
細胞単離及び培養:
単核細胞を、標準的フィコール-ハイパック勾配法によって健康な献血者の白血球層から取得した。単球を、マクロファージの培養に最適化された無血清培地(M-SFM)中で、37℃で、5%CO2を含有する湿潤雰囲気中で、2時間、プラスチックに付着させることによって単核細胞から単離した。単球が高度に濃縮された付着細胞を、試験される化合物と共に36時間インキュベートした。
【0133】
細胞毒性試験:
最後の6時間の間に、細胞培養物にアラマーブルーを導入する。アラマーブルーの成分の1つの変換により得られる蛍光分子であるレゾルフィンを、細胞死の指標として測定した。Tecan Infinite F500蛍光分光光度計によって、測定を行った。
【0134】
サイトカインのアッセイ:
36時間後、上清を収集し、アッセイまで-80℃で凍結する。Luminex LX100装置におけるmillplexアッセイキット(IL-6、IL-8、IL-10及びIL-12p40)によって、測定を行った。
【0135】
結果の評価のための計算法:
値の範囲がサイトカインごとに異なるため、化合物間で比較するのが容易な値を得るために、IL-10と比較してサイトカインによって乗算係数は異なる。
【0136】
IL-10とIL-6との間の比較:比率は、IL-10×100/IL-6である
IL-10とIL-12p40との間の比較:比率は、IL-10/IL-12p40である
IL-10とIL-8との間の比較:比率は、IL-10×100000/IL-8である
【0137】
結果を図1に表す。生成物2は、実施例1に従って得られた液体抽出物に相当する。
【0138】
抽出物は、単球に対する免疫調節効果を有する:IL10>IL-6/IL-8/IL-12(p40)。
【0139】
抽出物は、IL-6及びIL-8(炎症誘発性サイトカイン)と比較して用量反応に関して、IL-10(抗炎症性サイトカイン)の高生成を誘導する。
【0140】
(実施例6)
抗CD40及びIL-4の組み合わせで刺激されるヒトBリンパ球によるIgEの生成に対する抽出物の効果のインビトロ試験
この研究では、精製されたヒトBリンパ球(末梢血の単核細胞からのCD19+リンパ球の単離)によるIgE生成に対する抽出物の効果を評価した。より具体的には、IgE生成を、抗CD40抗体及びIL-4の組み合わせによるBリンパ球の刺激によって誘導した。14日間のインキュベーション後、培養上清中に放出されたIgEの量を、特異的ELISAキットを使用して定量化した。試験される抽出物と同時に、3種の他の分子もこの試験で評価した。参照標準CpG-ODN 2006(TLR9リガンド)、並びにIFN-γ及びPGE2を、参照化合物として試験した。
【0141】
【表7】
【0142】
培養及び処理
Bリンパ球CD19+を単離し、24ウェルプレート中に播種し、培養培地中で一晩にわたってインキュベートした。その後、単独又は組み合わせで試験される、試験しようとする化合物、及び参照化合物を添加するか、又は添加せず(対照)、細胞を2時間プレインキュベートした。その後、誘導因子(CD40+IL-4の組み合わせ)を添加するか、又は添加せず(非刺激対照)、試験又は参照化合物による処理を繰り返した。その後、細胞を、最終密度1.7×106個の細胞/mlで14日間インキュベートした。
【0143】
全ての実験条件を、n=3で行った。
【0144】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
培養上清中に放出されたIgEの量を、供給業者の説明書に従って特異的ELISAキットを使用して測定した。
【0145】
統計学
群間比較を、対応のないスチューデントのt検定を通じて行った。n≧5の場合、統計分析を解釈することができるが、n<5の場合は、統計値は、目安のために与えられる。
【0146】
この報告で使用される式:
平均標準誤差:
MSE=Sd/√n
【0147】
平均標準誤差(MSE)は、試料の平均と、集団の実際の平均との間の偏差の測定値である。MSEは、試料のサイズ(n)の平方根で割った、試料の標準偏差(Sd)として計算される。
【0148】
結果及び結論
非刺激条件では、Bリンパ球によるIgEの放出のベースラインは、非常に低い(<199pg/ml、検出限界に近い)。抗CD40+IL-4の組み合わせによる14日間の刺激は、高レベルのIgE生成(3657pg/ml)をもたらした。参照化合物として3μMで試験したTLR9 CpG-ODN2006アゴニストは、抗CD40+IL-4の会合によって誘導されるIgE生成を完全に阻害した(刺激された対照の<3%)。これらの結果は予想されたものであり、試験の妥当性を確認した。
【0149】
他の2つの潜在的な参照化合物も、IgE生成に対する阻害効果を示したが、CpG-ODN2006と比較すると程度は低かった。10ng/mlで試験したIFN-γも、非常に強く著しい阻害効果を示した(刺激された対照の20%)。しかし、1μMで試験したPGE2の効果は、はるかに限定的であり、統計的に有意ではなかった(刺激された対照の58%)。
【0150】
0.2%及び0.4%で試験した実施例1の抽出物は、組み合わせ抗CD40+IL-4によって刺激されるBリンパ球によるIgEの生成に対してほぼ完全な阻害効果を示した(それぞれ、刺激された対照の<3%及び<11%)。
【0151】
この研究の実験条件では、様々な濃度の実施例1の抽出物は、抗CD40+IL-4の組み合わせによって刺激される細胞BによるIgE生成に対して非常に強力な阻害効果を示した。
【0152】
【表8】
【0153】
(実施例7)
以下の組成を有するゲルを調製した:
【0154】
【表9】
【0155】
得られた組成物を、アレルギーの傾向がある皮膚を有する顔に適用した。
【0156】
【表10】
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属の細菌の抽出物。
【請求項2】
アレルギー反応によって引き起こされる皮膚反応の予防及び/又は治療に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む、組成物。
【請求項3】
スフィンゴモナス属の細菌が、スフィンゴモナス・ゼノファグム(Sphingomonas xenophaga)種の細菌である、請求項1に記載の使用のための抽出物、又は請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
スフィンゴモナス・ゼノファグム種の細菌が、CNCMアクセッション番号I-5455の下で提出された株の細菌である、請求項3に記載の使用のための抽出物又は使用のための組成物。
【請求項5】
の局所使用のための、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の使用のための抽出物、又は請求項2から4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
抽出物の濃度が、組成物の総質量に対して0.0001質量%から30質量%の間に含まれる、請求項2から5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
アセチルジペプチド-1セチルエステル、タンジン(Salvia miltiorrhiza)根の抽出物、ターマルウォーター、例えば、ラロッシュポゼ(La Roche Posay)水及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の活性物質を更に含む、請求項2から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
アレルギー反応が、即時型アレルギー反応である、請求項1、3から5のいずれか一項に記載の使用のための抽出物、又は請求項2から7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
反応が、蕁麻疹、皮膚の発疹、及び/又は発赤の出現を含む、請求項1、3から5及び8のいずれか一項に記載の使用のための抽出物、又は請求項2から8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
免疫応答の調整に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物。
【請求項11】
免疫応答の調整に使用するための、スフィンゴモナス属の細菌の抽出物又はスフィンゴモナス属の少なくとも1種の細菌を含む、組成物。
【国際調査報告】