(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料、二次電池と電力消費装置
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20060101AFI20231219BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231219BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231219BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501335
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2021126698
(87)【国際公開番号】W WO2023070368
(87)【国際公開日】2023-05-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張振国
(72)【発明者】
【氏名】王嗣慧
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AB05
4G048AC06
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050EA01
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5H050EA12
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5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本願は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料を提供する。前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のK値は、1~2であり、前記K値は、次式のように計算する:K=Dv50/dv50。ここで、dv50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料における結晶粒の体積メジアン径であり、Dv50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料であって、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のK値は、1~2であり、前記K値は、次式のように計算し、
【数1】
ここで、d
v50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料における結晶粒の体積メジアン径であり、D
v50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径である、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項2】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の結晶粒の体積メジアン径d
v50は、5μm~15μm、選択的に、5.5μm~11μmである、請求項1に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項3】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径D
v50は、9μm~20μm、選択的に、9μm~11μmである、請求項1又は2に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項4】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、P4
332空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物と、Fd-3m空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物とを含み、前記P4
332空間群のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の含有量は、前記Fd-3m空間群のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の含有量よりも大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項5】
前記P4
332空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の重量の50%以上、選択的に、80%~91%を占める、請求項4に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項6】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、Mn
3+を含有し、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料におけるMn
3+の含有量は、5.5wt%以下、選択的に、1.0wt%~2.2wt%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項7】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の比表面積は、1m
2/g以下、選択的に、0.1m
2/g~0.9m
2/gである、請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項8】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のタップ密度は、1.9g/cm
3以上、選択的に、1.9m
2/g~3.0m
2/gである、請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項9】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、少なくとも一部の表面に被覆層が設けられたリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子を含み、
選択的に、前記被覆層の材質は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、希土類酸化物、リチウム塩、リン酸塩、ホウ酸塩、フッ化物のうちの少なくとも一つを含み、
選択的に、前記被覆層は、高速リチウムイオン導体層を含み、
選択的に、前記被覆層は、多層構造を有し、前記被覆層は、内側に位置する高速リチウムイオン導体層と、外側に位置する酸化アルミニウム層とを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項10】
(1)前記高速リチウムイオン導体は、リチウムイオン導電性を有する酸化物系、リン酸塩系、ホウ酸塩系、硫化物系、LiPON系無機材料から選択されることと、
(2)前記高速リチウムイオン導体は、リン、チタン、ジルコニウム、ホウ素及びリチウムのうちの一種又は複数種の元素を含有することと、
(3)前記高速リチウムイオン導体は、Li
2BO
3、Li
3PO
4又はその組み合わせから選択されることと、
のうちの一つ又は複数の特徴を有する、請求項9に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料。
【請求項11】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一般式は、式Iに示すとおりであり、
【数2】
式Iにおいて、元素Mは、Ti、Zr、W、Nb、Al、Mg、P、Mo、V、Cr、Zn又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、元素Xは、F、Cl、I又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、0.9≦a≦1.1、-0.2≦x≦0.2、-0.2≦y≦0.3、0≦z≦1であり、
選択的に、元素Mは、Mg、Ti又はその組み合わせから選択され、
選択的に、元素Xは、Fである、請求項1~10のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物。
【請求項12】
リチウムニッケルマンガン複合酸化物の製造方法であって、
リチウム源と、ニッケル源と、マンガン源とを含有する前駆体組成物を提供することと、
前記前駆体組成物を焼結し、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を得ることとを含み、
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のK値は、1~2であり、前記K値は、次式のように計算し、
【数3】
ここで、d
v50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の結晶粒の体積メジアン径であり、
ここで、D
v50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径である、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の製造方法。
【請求項13】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一般式は、式Iに示すとおりであり、
【数4】
式Iにおいて、元素Mは、Ti、Zr、W、Nb、Al、Mg、P、Mo、V、Cr、Zn又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、元素Xは、F、Cl、I又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、0.9≦a≦1.1、-0.2≦x≦0.2(例えば0≦x≦0.2)、-0.2≦y≦0.3(例えば0≦y≦0.3)、0≦z≦1である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
i.前記ニッケル源と前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料との体積メジアン粒子粒径の比値は、0.4~1であることと、
ii.前記マンガン源と前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料との体積メジアン粒子粒径の比値は、0.4~1であることと、
iii.前記リチウム源体積メジアン粒子粒径は、1~20μmであることと、
のうちの一つ又は複数を満たす、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記焼結は、第一の熱処理段階を含み、
前記第一の熱処理段階のピーク温度は、950℃~1200℃であり、ピーク温度における前記第一の熱処理段階の保温時間は、5h~30hである、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第一の熱処理のピーク温度まで昇温する昇温速度は、5℃/min以下、選択的に、0.5~3℃/minである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記焼結は、第一の熱処理段階後の第二の熱処理段階をさらに含み、
前記第二の熱処理段階のピーク温度は、550℃~680℃であり、前記第二の熱処理段階の時間は、5h~50hである、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
焼結する前に、前記前駆体組成物をボールミルすることをさらに含み、
選択的に、ボールミル時間は、2h以上、例えば、選択的に、2~6hである、請求項12~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
正極極板を含む二次電池であって、前記正極極板は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、請求項1~11のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料又は請求項12~18のいずれか1項に記載の方法により製造されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む、二次電池。
【請求項20】
請求項19に記載の二次電池を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池技術分野に関し、特にリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料、二次電池と電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー蓄積電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事用機器、航空宇宙などの多くの分野で広く応用されている。
【0003】
二次電池は、大きな発展を遂げているため、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などに対してより高い要求が出されている。
【発明の概要】
【0004】
本願は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が、一つ又は複数の改善された性能、例えば、
i)サイクル性能の向上、
ii)イオン溶出の低減、
iii)ガス発生の低減、から選択される改善された性能を示すことができるリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料を提供することを目的とする。
【0005】
上記目的を達成するために、本願は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料(lithium nickel-manganese-based composite oxide material)を提供する。前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のK値は、1~2(例えば1-1.1、1.1-1.2、1.2-1.3、1.3-1.4、1.4-1.5、1.5-1.6、1.6-1.7、1.7-1.8、1.8-1.9、1.9-2)であり、前記K値は、次式のように計算する:K=Dv50/dv50。ここで、dv50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の結晶粒の体積メジアン径(Volume median crystallite diameter)であり、Dv50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径(Volume median particle diameter)である。
【0006】
これにより、本願は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のK値を1~2の範囲内に調整することによって、このリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料を二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が、一つ又は複数の改善された性能、例えば
i)サイクル性能の向上、
ii)イオン溶出の低減、
iii)ガス発生の低減、から選択される改善された性能を示す。
【0007】
任意の実施の形態では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の結晶粒の体積メジアン径dv50は、5μm~15μm、選択的に、5.5μm~11μmである。このリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0008】
任意の実施の形態では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径Dv50は、9μm~20μm、選択的に、9μm~11μmである。このリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0009】
任意の実施の形態では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、P4332空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物と、Fd-3m空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物とを含み、前記P4332空間群のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の含有量は、前記Fd-3m空間群のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の含有量よりも大きい。
【0010】
任意の実施の形態では、前記P4332空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の重量の50%以上、選択的に、80%~91%を占める。
【0011】
任意の実施の形態では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、Mn3+を含有し、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料におけるMn3+の重量含有量は、5wt%以下、選択的に、1.0wt%~2.2wt%である。
【0012】
任意の実施の形態では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の比表面積は、1m2/g以下、選択的に、0.1m2/g~0.9m2/gである。
【0013】
任意の実施の形態では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のタップ密度は、1.9g/cm3以上、選択的に、1.9g/cm3~3.0g/cm3である。
【0014】
任意の実施の形態では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、少なくとも一部の表面に被覆層が設けられたリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子を含み、
選択的に、前記被覆層の材質は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、希土類酸化物、リチウム塩、リン酸塩、ホウ酸塩、フッ化物のうちの少なくとも一つを含み、
選択的に、前記被覆層は、高速リチウムイオン導体層を含み、
選択的に、前記被覆層は、多層構造を有し、前記被覆層は、内側に位置する高速リチウムイオン導体層と、外側に位置する酸化アルミニウム層とを含む。
【0015】
任意の実施の形態では、前記高速リチウムイオン導体は、リチウムイオン導電性を有する酸化物系、リン酸塩系、ホウ酸塩系、硫化物系、LiPON系無機材料から選択される。
【0016】
任意の実施の形態では、前記高速リチウムイオン導体は、リン、チタン、ジルコニウム、ホウ素及びリチウムのうちの一種又は複数種の元素を含有する。
【0017】
任意の実施の形態では、前記高速リチウムイオン導体は、Li2BO3、Li3PO4又はその組み合わせから選択される。
【0018】
任意の実施の形態では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一般式は、式Iに示すとおりであり、
【数1】
式Iにおいて、元素Mは、Ti、Zr、W、Nb、Al、Mg、P、Mo、V、Cr、Zn又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、元素Xは、F、Cl、I又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、0.9≦a≦1.1、-0.2≦x≦0.2、-0.2≦y≦0.3、0≦z≦1であり、
選択的に、元素Mは、Mg、Ti又はその組み合わせから選択され、
選択的に、元素Xは、Fである。
【0019】
本願の第二の態様によれば、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の製造方法を提供する。この方法は、
リチウム源と、ニッケル源と、マンガン源とを含有する前駆体組成物を提供することと、
前記前駆体組成物を焼結し、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を得ることとを含み、
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のK値は、1~2であり、前記K値は、次式のように計算し、
【数2】
ここで、d
v50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の結晶粒の体積メジアン径であり、
ここで、D
v50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径である。
【0020】
任意の実施の形態では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一般式は、式Iに示すとおりであり、
【数3】
式Iにおいて、元素Mは、Ti、Zr、W、Nb、Al、Mg、P、Mo、V、Cr、Zn又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、元素Xは、F、Cl、I又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、0.9≦a≦1.1、-0.2≦x≦0.2(例えば0≦x≦0.2)、-0.2≦y≦0.3(例えば0≦y≦0.3)、0≦z≦1である。
【0021】
任意の実施の形態では、前記方法は、
i.前記ニッケル源と前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料との体積メジアン粒子粒径の比値は、0.4~1であることと、
ii.前記マンガン源と前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料との体積メジアン粒子粒径の比値は、0.4~1であることと、
iii.前記リチウム源体積メジアン粒子粒径は、1~20μm(例えば3~10μm)であることと、のうちの一つ又は複数を満たす。
【0022】
任意の実施の形態では、前記焼結は、第一の熱処理段階を含み、
前記第一の熱処理段階のピーク温度は、950℃~1200℃であり、ピーク温度における前記第一の熱処理段階の保温時間は、5h~30hである。
【0023】
任意の実施の形態では、前記第一の熱処理のピーク温度まで昇温する昇温速度は、5℃/min以下、選択的に、0.5~3℃/minである。
【0024】
任意の実施の形態では、前記焼結は、第一の熱処理段階後の第二の熱処理段階をさらに含み、
前記第二の熱処理段階のピーク温度は、550℃~680℃であり、前記第二の熱処理段階の時間は、5h~50hである。
【0025】
任意の実施の形態では、前記方法は、焼結する前に、前記前駆体組成物をボールミルすることをさらに含み、
選択的に、ボールミル時間は、2h以上、例えば、選択的に、2~6hである。
【0026】
本願の第三の態様によれば、二次電池を提供する。前記二次電池は、正極極板を含み、前記正極極板は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、本願の第一の態様のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料又は本願の第二の態様のいずれか1項に記載の方法により製造されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む。
【0027】
本願の第四の態様によれば、本願の第三の態様の二次電池を含む電力消費装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例2aのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の走査型電子顕微鏡による写真である。
【
図2】実施例2bのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の走査型電子顕微鏡による写真である。
【
図3】実施例2cのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の走査型電子顕微鏡による写真である。
【
図4】実施例3bのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の走査型電子顕微鏡による写真である。
【
図5】比較例1のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の走査型電子顕微鏡による写真である。
【
図6】比較例2のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の走査型電子顕微鏡による写真である。
【
図7】比較例3のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の走査型電子顕微鏡による写真である。
【
図8】本願の一実施の形態の二次電池の概略図である。
【
図9】本願の一実施の形態の二次電池の分解図である。
【
図10】本願の一実施の形態の二次電池が電源として用いられる電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、添付図面を適当に参照しながら、本願の正極活物質及びその製造方法、正極極板、負極極板、二次電池と電力消費装置の実施の形態について詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者に本願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0030】
本願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定範囲は、特定の範囲の境界を限定する1つの下限と1つの上限を選定することによって限定される。このように限定される範囲は、端値を含んでもよく含まなくてもよく、そして任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて1つの範囲を形成してよい。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲がリストアップされた場合、60~110と80~120の範囲として理解されることも想定できることである。なお、リストアップされた最小範囲値が1と2で、かつリストアップされた最大範囲値が3、4と5である場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5の範囲の全ては想定できるものである。本願において、別段の記載がない限り、数値範囲「a~b」は、aないしbの間の任意の実数の組み合わせを表す短縮表現であり、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」の間の全ての実数がリストアップされていることを意味し、「0~5」は、これら数値の組み合わせの短縮表現にすぎない。また、あるパラメータ≧2の整数であると記述している場合、このパラメータは、例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0031】
特に説明されていない限り、本願の全ての実施の形態及び選択可能な実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0032】
特に説明されていない限り、本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0033】
特に説明されていない限り、本願の全てのステップは、順次行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順次行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が順次行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上で言及した前記方法がステップ(c)をさらに含むことは、ステップ(c)が任意の順で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)と(b)などを含んでもよい。
【0034】
特に説明されていない限り、本願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0035】
特に説明されていない限り、本願において、用語「又は」は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、また、AとBが共に真である(又は存在する)条件のいずれかも「A又はB」を満たしている。
【0036】
[二次電池]
二次電池は、充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池放電後に充電の方式により活物質を活性化させて引き続き使用可能な電池である。
【0037】
二次電池は、一般的には、正極極板と、負極極板と、セパレータと、電解液とを含む。電池の充放電過程において、活性イオン(例えばリチウムイオン)は、正極極板と負極極板との間で往復して吸蔵及び脱出する。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすとともに、活性イオンを通過させることもできる。電解液は、主に、正極極板と負極極板との間で活性イオンを伝導する役割を果たす。
【0038】
[正極極板]
正極極板は、一般的には、正極集電体及び正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた正極膜層を含み、正極膜層は、正極活物質を含む。
【0039】
正極集電体は、その自体の厚み方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両者上に設けられている。
【0040】
本願の正極活物質は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料(lithium nickel-manganese-based composite oxide material)を含み、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のK値は、1~2(例えば1-1.1、1.1-1.2、1.2-1.3、1.3-1.4、1.4-1.5、1.5-1.6、1.6-1.7、1.7-1.8、1.8-1.9、1.9-2)であり、前記K値は、次式のように計算する:K=Dv50/dv50、ここで、dv50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の結晶粒の体積メジアン径(Volume median crystallite diameter)であり、Dv50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径(Volume median particle diameter)である。
【0041】
メカニズムが不明であるが、出願人は、本願が、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のK値を1~2の範囲内に調整することによって、このリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料を二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が、一つ又は複数の改善された性能、例えば
i)サイクル性能の向上、
ii)イオン溶出の低減、
iii)ガス発生の低減、から選択される改善された性能を示すことを意外に見出した。
【0042】
用語「結晶粒」とは、材料体において原子が規則的に繰り返し配列された(少量の原子レベルの点欠陥又は線欠陥が許容される)最大領域をいう。隣接する結晶粒間の界面にて原子の配列は、結晶粒内の原子の配列とは異なる。隣接する結晶粒間の界面では、原子が一つの薄層のように連続して結晶粒間の接触面(粒界)を貫通している。例えば、走査型電子顕微鏡の視野では、粒子内部が明確な界面によって分離された一つずつのナノ又はミクロンレベルの領域は、一つずつの結晶粒である。ここでは、結晶粒の近似直径を結晶粒の粒径と呼ぶ。結晶粒の形態は、走査型電子顕微鏡で観察されることができる。
【0043】
リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、複数の結晶粒(例えば、単結晶粒子、多結晶粒子)を含有する。単結晶粒子は、一つの結晶粒で構成される。多結晶粒子は、複数の結晶粒で構成され、隣接する結晶粒の間に粒界が存在する。
【0044】
用語「比表面積」(BET比表面積とも呼ばれる)は、GB/T 19587-2004ガス吸着BET法を参照して固体物質比表面積を測定して得られたものである。
【0045】
用語「体積メジアン粒子粒径Dv50」は、GB/T 19077-2016粒度分析レーザー回折法を参照して測定したものである。試験機器は、Mastersizer 3000レーザー粒度計を用いた。
【0046】
用語「結晶粒の体積メジアン径」は、以下の方法によって得られたものである。走査型電子顕微鏡(例えば、Zeiss Sigma300電界放出形走査電子顕微鏡)を用いてリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料を観察し、撮影中(又は撮影された写真から)5つの領域をランダムに選択し、この領域における最大の結晶粒粒径dmaxを決定し、0.1dmaxからdmaxまでの区間の粒径区間の結晶粒を有効結晶粒と定義し、そしてこの領域内の結晶粒の粒径が0.1dmaxからdmaxまでの区間の結晶粒を一つずつ統計し、結晶粒の粒径が0.1dmax未満の結晶粒を微粉結晶粒と定義し、微粉結晶粒を統計しない。一つの領域内の有効結晶粒数を100~150個に制御し、各領域内の各有効結晶粒の粒径を一つずつ統計する。単一結晶粒の粒径の測定方法は、以下の通りであってもよい。この結晶粒に対して最小面積の外接円(外接円は、真円形又は楕円形であってもよい)をプロットし、外接円が真円形である場合、真円形の直径を結晶粒の粒径とする。外接円が楕円形である場合、楕円形の長軸と短軸との長さの平均値を結晶粒の粒径とする。各領域内の単一の有効結晶粒の粒径を統計した後、それらをまとめてn個の有効結晶粒の粒径(d1、d2、d3…dn)として記録する。そして、「結晶粒の体積メジアン径」dv50を次式により計算する。
【0047】
【0048】
任意の実施案では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の結晶粒の体積メジアン径dv50は、5μm~15μm(例えば5μm~6μm、6μm~7μm、7μm~8μm、8μm~9μm、9μm~10μm、10μm~11μm、11μm~12μm、12μm~13μm、13μm~14μm、14μm~15μm)、選択的に、5.5μm~11μm、選択的に、5.5~8μmである。上記態様に基づき、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池に用いられ、二次電池は、一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0049】
任意の実施案では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径Dv50は、9μm~20μm(例えば9μm~10μm、10μm~11μm、11μm~12μm、12μm~13μm、13μm~14μm、14μm~15μm、15μm~16μm、16μm~17μm、17μm~18μm、18μm~19μm、19μm~20μm)、選択的に、9μm~13μm、選択的に、9~11μmである。上記態様に基づき、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池に用いられ、二次電池は、一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0050】
任意の実施案では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、P4332空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物と、Fd-3m空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物とを含み、前記P4332空間群のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の含有量は、前記Fd-3m空間群のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の含有量よりも大きい。
【0051】
任意の実施案では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、P4332空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含み、前記P4332空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の重量の50%以上、選択的に、80%~91%、50%~60%、60~70%、70~80%、80%~90%又は90%~95%を占める。上記態様に基づき、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池に用いられ、二次電池は、一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0052】
任意の実施案では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料はMn3+を含み、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料における前記Mn3+の重量含有量は、5.5wt%以下(例えば1wt%~2wt%、2wt%~3wt%、3wt%~4wt%又は4wt%~5wt%)である。上記態様に基づき、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池に用いられ、二次電池は、一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0053】
任意の実施案では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の比表面積は、1m2/g以下、選択的に、0.1m2/g~0.9m2/gである。上記態様に基づき、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池に用いられ、二次電池は、一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0054】
任意の実施案では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のタップ密度は、1.9g/cm3以上、選択的に、1.9g/cm3~3.0g/cm3である。上記態様に基づき、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池に用いられ、二次電池は、一つ又は複数の改善された性能を示す。K値1~2、外形規則であるため、粉体のタップ過程においてより緊密に堆積しやすいため、タップ密度が高い。
【0055】
任意の実施案では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、少なくとも一部の表面に被覆層が設けられたリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子を含む。
【0056】
任意の実施の形態では、前記被覆層の材質は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、希土類酸化物、リチウム塩、リン酸塩、ホウ酸塩、フッ化物のうちの少なくとも一つを含む。
【0057】
任意の実施の形態では、前記被覆層は、高速リチウムイオン導体層を含む。
【0058】
任意の実施の形態では、前記被覆層は、多層構造を有し、前記被覆層は、内側に位置する高速リチウムイオン導体層と、外側に位置する酸化アルミニウム層とを含む。
【0059】
任意の実施の形態では、前記高速リチウムイオン導体は、リチウムイオン導電性を有する酸化物系、リン酸塩系、ホウ酸塩系、硫化物系、LiPON系無機材料から選択される。
【0060】
任意の実施の形態では、前記高速リチウムイオン導体は、リン、チタン、ジルコニウム、ホウ素及びリチウムのうちの一種又は複数種の元素を含有する。
【0061】
任意の実施の形態では、前記高速リチウムイオン導体は、Li2BO3、Li3PO4又はその組み合わせから選択される。上記態様に基づき、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池に用いられ、二次電池は、一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0062】
任意の実施案では、高速リチウムイオン導体とは、1.0×10-5 S cm-1リチウムイオン導電率を有する物質である。高速リチウムイオン導体は、リチウムイオン導電性を有する酸化物系、リン酸塩系、ホウ酸塩系、硫化物系及びLiPON系無機材料から選択される。高速リチウムイオン導体は、例えばLi2BO3又はLi3PO4から選択される。
【0063】
任意の実施案では、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物の一般式は、式Iに示すとおりであり、
【数4】
式Iにおいて、元素Mは、Ti、Zr、W、Nb、Al、Mg、P、Mo、V、Cr、Zn又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、元素Xは、F、Cl、I又はその組み合わせから選択され、
式Iにおいて、0.9≦a≦1.1、-0.2≦x≦0.2(例えば0≦x≦0.2)、-0.2≦y≦0.3(例えば0≦y≦0.3)、0≦z≦1である。
【0064】
任意の実施案では、a=1~1.05である。
【0065】
任意の実施案では、-0.1≦x≦0.1、例えば-0.01≦x≦0.01、選択的に、x=0である。
【0066】
任意の実施案では、-0.1≦y≦0.1、例えば-0.01≦y≦0.01、選択的に、y=0である。
【0067】
任意の実施案では、x+y≧0、0≦x+y≦0.1、選択的に、x+y=0である。
【0068】
任意の実施案では、z=0~0.1、例えばz=0である。
【0069】
任意の実施案では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、Li1.01Ni0.49Mn1.51O4である。
【0070】
任意の実施案では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、Li1.02Ni0.5Mn1.4Ti0.1O4である。
【0071】
任意の実施案では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の製造方法を提供する。この方法は、
リチウム源と、ニッケル源と、マンガン源とを含有する前駆体組成物を提供することと、
前記前駆体組成物を焼結し、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を得ることとを含み、
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料のK値は、1~2(例えば、1~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4、1.4~1.5、1.5~1.6、1.6~1.7、1.7~1.8、1.8~1.9、1.9~2)であり、前記K値は、次式のように計算し、
【数5】
ここで、d
v50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の結晶粒の体積メジアン径であり、
ここで、D
v50は、前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料の体積メジアン粒子粒径である。上記態様に基づき得られるこのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が、一つ又は複数の改善された性能、例えば、
i)サイクル性能の向上、
ii)イオン溶出の低減、
iii)ガス発生の低減、から選択される改善された性能を示す。
【0072】
任意の実施案では、前記リチウム源は、リチウムの酸化物、水酸化物、塩又はその組み合わせから選択されてもよい。前記ニッケル源は、ニッケルのニッケル化合物、水酸化物、塩又はその組み合わせから選択されてもよい。前記マンガン源は、マンガンの酸化物、水酸化物、塩又はその組み合わせから選択されてもよい。前記リチウム源は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酸化リチウム又はその組み合わせから選択されてもよい。前記ニッケル源は、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル又はその組み合わせから選択されてもよい。前記マンガン源は、水酸化マンガン、酸化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン又はその組み合わせから選択されてもよい。
【0073】
任意の実施案では、ニッケル源とマンガン源は、ニッケルマンガン水酸化物、例えばNi0.25Mn0.75(OH)2であってもよい。
【0074】
任意の実施案では、前記ニッケル源と前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料との体積メジアン粒子粒径の比値は、0.4~1:1(例えば0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1又は1.0:1)である。上記態様に基づき得られるこのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0075】
任意の実施案では、前記マンガン源と前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料との体積メジアン粒子粒径の比値は、0.4~1:1(例えば0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1又は1.0:1)である。上記態様に基づき得られるこのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0076】
任意の実施案では、前記リチウム源の体積メジアン粒子粒径は、1~20μm(例えば3~10μm)である。上記態様に基づき得られるこのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0077】
任意の実施案では、前記焼結は、第一の熱処理段階を含み、前記第一の熱処理段階のピーク温度は、950℃~1200℃(例えば950℃~1000℃、1000℃~1050℃、1050℃~1100℃、1100℃~1150℃、1150℃~1200℃)であり、ピーク温度における前記第一の熱処理段階の保温時間は、5h~30h(例えば5h~10h、10h~15h、15h~20h、20h~25h、25h~30h)である。上記態様に基づき得られるこのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0078】
任意の実施案では、前記第一の熱処理段階において、ピーク温度まで昇温する昇温速度は、5℃/min以下、選択的に、0.5~3℃/min、選択的に、1℃/min~2℃/min、2℃/min~3℃/min、3℃/min~4℃/min又は4℃/min~5℃/minである。上記態様に基づき得られるこのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0079】
任意の実施案では、前記焼結は、第一の熱処理段階後の第二の熱処理段階をさらに含み、前記第二の熱処理段階のピーク温度は、550℃~680℃(例えば550℃~570℃、570℃~590℃、590℃~610℃、610℃~630℃、630℃~650℃、650℃~670℃)であり、前記第二の熱処理段階の時間は、5h~50h(5h~15h、15h~25h、25h~35h、35h~45h)である。上記態様に基づき得られるこのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0080】
任意の実施案では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の製造方法は、焼結する前に、前記前駆体組成物をボールミルすることをさらに含み、選択的に、ボールミル時間は、2h以上、例えば選択的に、2~6hである。ボールミルするのは、第一の熱処理後の製品を分散させるためである。上記態様に基づき得られるこのリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の正極活物質として、電池が一つ又は複数の改善された性能を示す。
【0081】
任意の実施案では、正極活物質におけるリチウムニッケルマンガン複合酸化物の含有量は、10~100wt%(例えば20wt%、30wt%、40wt%、50wt%、60wt%、70wt%、80wt%、90wt%)であってもよい。
【0082】
いくつかの実施の形態では、正極活物質は、上述した、いずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン複合酸化物以外、電池に用いられる当技術分野で既知の正極活物質をさらに含んでもよい。例として、他の正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれらのそれぞれの変性化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、本願では、これらの材料に限定されなく、電池正極活物質として、使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と略称されてもよい))LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と略称されてもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びそれらの変性化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。
【0083】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、選択的に、接着剤をさらに含む。例として、接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0084】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、選択的に、導電剤をさらに含む。例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0085】
いくつかの実施の形態では、正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0086】
いくつかの実施の形態では、以下の方式によって正極極板を製造することができる。上記正極極板を製造するための成分、例えば正極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させて正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥、冷間加圧などの工程を経て、正極極板を得ることができる。
【0087】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた負極膜層とを含み、前記負極膜層は、負極活物質を含む。
【0088】
例として、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のいずれか一つ又は両者上に設けられている。
【0089】
いくつかの実施の形態では、負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0090】
いくつかの実施の形態では、負極活物質は、電池に用いられる当技術分野で既知の負極活物質を採用してもよい。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料とチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも一つを含んでもよい。ケイ素系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。しかし、本願では、これらの材料に限定されなく、電池負極活物質に用いることができる他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0091】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、選択的に、接着剤をさらに含む。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸メチル(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0092】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、選択的に、導電剤をさらに含む。例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0093】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、選択的に、他の助剤、例えば増稠剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などをさらに含む。
【0094】
いくつかの実施の形態では、以下の方式によって負極極板を製造することができる。上記負極極板を製造するための成分、例えば負極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させて負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥、冷間加圧などの工程を経て、負極極板を得ることができる。
【0095】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は、電解質の種類を具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液状、ゲル状又は全固体状であってもよい。
【0096】
いくつかの実施の形態では、電解質は、液状のものであり、且つ電解質塩と、溶媒とを含む。
【0097】
いくつかの実施の形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート及びリチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェートのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0098】
いくつかの実施の形態では、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ぎ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0099】
いくつかの実施の形態では、電解液は、選択的に、添加剤をさらに含む。例として、添加剤は、負極被膜形成添加剤、正極被膜形成添加剤を含んでいてもよいし、電池の何らかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能又は低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0100】
[セパレータ]
いくつかの実施の形態では、二次電池には、セパレータがさらに含まれている。本願では、セパレータの種類に対して特に制限せず、よく知られている、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の多孔質構造のセパレータを選択してもよい。
【0101】
いくつかの実施の形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。セパレータは、単層薄膜であってもよく、多層複合薄膜であってもよく、特に制限されない。セパレータが多層複合薄膜である場合、各層の材料は、同じであってもよく、異なってもよく、特に制限されない。
【0102】
いくつかの実施の形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネントを製造することができる。
【0103】
いくつかの実施の形態では、二次電池は、外装を含んでもよい。この外装は、上記電極コンポーネント及び電解質のパッケージングに用いられてもよい。
【0104】
いくつかの実施の形態では、二次電池の外装は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。二次電池の外装は、軟質バッグ、例えば袋式軟質バッグであってもよい。軟質バッグの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0105】
本願は、二次電池の形状に対して特に制限せず、それは、円柱形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図8は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0106】
いくつかの実施の形態では、
図9を参照すると、外装は、ケース51と蓋板53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と、底板上に接続される側板とを含んでもよく、底板と側板は、囲んで収容室を形成する。ケース51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容室を閉塞するように前記開口に覆設可能である。正極極板、負極極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネント52を形成することができる。電極コンポーネント52は、前記収容室内にパッケージングされる。電解液は、電極コンポーネント52に浸み込んでいる。二次電池5に含まれる電極コンポーネント52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、実際の具体的な需要に応じて選択してもよい。
【0107】
いくつかの実施の形態では、二次電池を電池モジュールに組み立てもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0108】
また、本願は、電力消費装置をさらに提供する。前記電力消費装置は、本願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動体設備(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムを含んでもよいが、それらに限らない。
【0109】
前記電力消費装置として、その使用上の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0110】
図10は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の二次電池に対する高出力と高エネルギー密度の需要を満たすために、上記二次電池を含有する電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0111】
[実施例]
以下では、本願の実施例を説明する。以下に説明されている実施例は、例示的なもので、本願を解釈するためにのみ用いられ、本願を制限するものとして理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品説明書に従って実行する。使用する試薬又は機器について、製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0112】
実施例1a-1b
リチウムニッケルマンガン複合酸化物の製造
(1)該当する前駆体組成物を目標生成物LiNi0.5Mn1.5O4の成分比率で提供する。前駆体組成物の組成は、リチウム源(Li2CO3)と、ニッケルマンガン源Ni0.25Mn0.75(OH)2とを含む。ニッケルマンガン源前駆体の体積メジアン粒子粒径Dv50(P)は、Dv50(P)=xDv50(C)を各々満たし、ここで、Dv50(C)は、ニッケルマンガン複合酸化物材料生成物の体積メジアン粒子粒径であり、x=0.4~1である。ニッケルマンガン源前駆体の体積メジアン粒子粒径の詳細は、表2に示すとおりである。前駆体組成物を3h混合ボールミルして、ボールミル生成物を得る。
【0113】
(2)ボールミル生成物に対して第一の熱処理を行い、第一の熱処理の雰囲気は、空気であり、第一の熱処理は、
a)予め設定される昇温速度c1(℃/min)で室温からピーク温度まで昇温することと、
b)ピーク温度でT1を保温し、一定時間t1を保温することと、を含み、
昇温速度、ピーク温度と保温時間(ピーク温度での保温時間)は、表1に示すとおりである。第一の熱処理後の生成物を室温まで冷却する。リチウムニッケルマンガン複合酸化物Li1.01Ni0.49Mn1.51O4を得る。
【0114】
(3)前のステップの生成物に対して第二の熱処理を行い、第二の熱処理の雰囲気は、空気であり、第二の熱処理のピーク温度T2と保温時間t2は、表1に示すとおりであり、熱処理後の生成物を室温まで冷却する。リチウムニッケルマンガン複合酸化物Li1.01Ni0.49Mn1.51O4を得る。
【0115】
実施例2a-2c
リチウムニッケルマンガン複合酸化物の製造。
【0116】
実施例2a、2b、2cと実施例1aとの相違点は、第一の熱処理と第二の熱処理の昇温速度、ピーク温度及び/又は保温時間が異なることであり、具体的な製造方法パラメータ相違点の詳細は、表1に示すとおりである。リチウムニッケルマンガン複合酸化物の物理化学的パラメータを表2に示す。
【0117】
実施例3a
(1)該当する前駆体組成物を目標生成物LiNi0.5Mn1.4Ti0.1O4の成分比率で提供する。前駆体組成物の組成は、リチウム源(Li2CO3)と、ニッケル源(Ni(OH)2)と、マンガン源(Mn(OH)2)と、ドープ剤(ナノTiO2)とを含む。前駆体組成物を3h混合ボールミルし、ボールミル生成物を得る。ニッケルマンガン源前駆体の体積メジアン粒子粒径の詳細は、表2に示すとおりである.
(2)ボールミル生成物に対して第一の熱処理を行い、第一の熱処理昇温速度、ピーク温度とピーク温度での保温時間は、表1に示すとおりであり、熱処理後、室温まで冷却する。
【0118】
(3)前のステップの生成物を3h研磨する。
【0119】
(4)上記研磨生成物に対して第二の熱処理を行い、熱処理温度と時間は、表1に示すとおりであり、熱処理後、室温まで冷却する。リチウムニッケルマンガン(チタン添加)複合酸化物Li1.02Ni0.5Mn1.4Ti0.1O4を得る。リチウムニッケルマンガン複合酸化物の粒子パラメータを表2に示す。
【0120】
実施例3b、3c、3d
実施例3b、3c、3dと実施例3aとの相違点は、ステップ(3)であり、具体的には:
(3)第一の被覆材を前のステップの生成物に目標配合比で加え、3h研磨する。第一の被覆材と添加量の詳細は、表1に示すとおりである。
【0121】
具体的な製造方法パラメータの相違点の詳細は、表1に示すとおりである。リチウムニッケルマンガン複合酸化物の粒子パラメータを表2に示す。
【0122】
実施例3e、3f
(1)該当する前駆体組成物を目標生成物LiNi0.5Mn1.4Ti0.1O4の成分比率で提供する。前駆体組成物の組成は、リチウム源(Li2CO3)と、ニッケル源(Ni(OH)2)と、マンガン源(Mn(OH)2)と、ドープ剤(ナノTiO2)とを含む。前駆体組成物を3h混合ボールミルし、ボールミル生成物を得る。
【0123】
(2)ボールミル生成物に対して第一の熱処理を行い、第一の熱処理の昇温速度、ピーク温度と保温時間は、表1に示すとおりであり、熱処理後、室温まで冷却する。
【0124】
(3)第一の被覆材を前のステップの生成物に目標配合比で加え、3h研磨する。第一の被覆材と添加量の詳細は、表1に示すとおりである。
【0125】
(4)上記研磨生成物に対して第二の熱処理を行い、第二の熱処理温度と時間は、表1に示すとおりであり、熱処理後、室温まで冷却する。
【0126】
(5)第二の被覆材を前のステップの生成物に目標配合比で加え、3h研磨する。第二の被覆材と添加量の詳細は、表1に示すとおりである。
【0127】
(6)上記研磨生成物に対して第三の熱処理を行い、熱処理温度と時間は、表1に示すとおりであり、熱処理後、室温まで冷却する。リチウムニッケルマンガン複合酸化物を得る。
【0128】
具体的な製造方法パラメータの相違点の詳細は、表1に示すとおりである。リチウムニッケルマンガン複合酸化物の粒子パラメータを表2に示す。
【0129】
比較例1-3
三種類の異なる市販のリチウムニッケルマンガン複合酸化物粉体を提供し、それぞれB1、B2、B3と番号を付与する。
【0130】
半電池(ボタン型電池)の組み立て
リチウムシートを対極とし、実施例と比較例のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料を半電池に組み立てる。
【0131】
リチウムニッケルマンガン複合酸化物と導電性カーボンブラック、PVDFを90:5:5の重量比で混合し、適量の溶媒を加え、均一に攪拌し、正極スラリーを得た。正極スラリーをアルミニウム箔上に塗布し、塗布後乾燥させ、正極極板を得た。正極極板上のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の担持量は、0.015g/cm2であった。
【0132】
電解液として、1mol/LLiPF6のカーボネート、リン酸エステルなどを含有する混合溶液を提供した。
【0133】
厚さ12μmのポリプロピレンフィルム(Φ16mm)をセパレータとし、リチウムシート、セパレータ、正極極板を順番に置き、セパレータを金属リチウムシートと複合負極極板との間に位置させて隔離する役割を果たす。電解液を注入し、CR2030ボタン型電池に組み立て、24h静置し、半電池を得た。
【0134】
軟質バッグ電池の製造
実施例と比較例のリチウムニッケルマンガン複合酸化物材料を軟質バッグ電池に組み立てる。
【0135】
リチウムニッケルマンガン複合酸化物と導電性カーボンブラック、PVDFを96:2.5:1.5の重量比で混合し、適量の溶媒を加え、均一に攪拌し、正極スラリーを得た。正極スラリーをアルミニウム箔上に塗布し、塗布後乾燥させ、正極極板を得た。正極極板上のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の担持量は、0.02g/cm2であった。
【0136】
黒鉛と導電性カーボンブラック、カルボキシメチルセルロースを96:1:3の重量比で混合し、適量の溶媒を加え、均一に攪拌し、負極スラリーを得た。負極スラリーを銅箔上に塗布し、塗布後乾燥させ、負極極板を得た。負極極板上の黒鉛の担持量は、0.008g/cm2であった。
【0137】
ボタン型半電池と同じ電解液を用いた。
【0138】
厚さ12μmのポリプロピレンフィルム(Φ16mm)をセパレータとし、上記製造した正極極板、セパレータ、負極極板を順番に置き、セパレータを正負極極板の間に位置させて隔離する役割を果たし、巻回成形し、アルミニウムプラスチック袋で包装した。電解液を注入し、パッケージング後化成容量化し、軟質バッグ電池セルを製造した。
【0139】
分析検出
一、形態観察、粒径検出とタップ密度検出
図1は、一枚の実施例2aのリチウムニッケルマンガン複合酸化物の走査型電子顕微鏡による写真を示した。ここで、楕円輪郭は、いくつかの代表的な結晶粒を示し、結晶粒I、結晶粒II、結晶粒III、結晶粒IVを含み、結晶粒粒径は、それぞれ6.0μm、7.1μm、3.8μmと3.9μmであった。
【0140】
図2は、一枚の実施例2bのリチウムニッケルマンガン複合酸化物の走査型電子顕微鏡による写真を示し、楕円輪郭は、いくつかの代表的な結晶粒を示し、結晶粒I、結晶粒II、結晶粒III、結晶粒IV、結晶粒Vを含み、結晶粒粒径は、それぞれ3.1μm、3.8μm、8.2μm、7.5μmと5.7μmであった。
【0141】
図3は、一枚の実施例2cのリチウムニッケルマンガン複合酸化物の走査型電子顕微鏡による写真を示し、楕円輪郭は、いくつかの代表的な結晶粒を示し、結晶粒I、結晶粒II、結晶粒IIIを含み、結晶粒粒径は、それぞれ9.3μm、6.0μm、12.9μmであった。
【0142】
図4は、一枚の実施例3bのリチウムニッケルマンガン複合酸化物の走査型電子顕微鏡による写真を示し、円形輪郭は、いくつかの代表的な結晶粒を示し、結晶粒I、結晶粒II、結晶粒III、結晶粒IV、結晶粒Vを含み、粒径分布は、4.2μm、6.6μm、9.5μm、9.6μm、9.1μmであった。図における四角形輪郭は、粒径が0.1d
max未満の微粉結晶粒を示し、これらの微粉結晶粒は、統計範囲に計上しなかった。
【0143】
図5は、一枚の比較例1のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の走査型電子顕微鏡による写真を示した。円形輪郭は、いくつかの代表的な結晶粒を示し、結晶粒I、結晶粒II、結晶粒IIIを含み、粒径分布は、4.7μm、1.9μm、3.5μmであった。図における四角形輪郭は、粒径が0.1d
max未満の微粉結晶粒を示し、これらの微粉結晶粒は、統計範囲に計上しなかった。
【0144】
図6は、比較例2のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の走査型電子顕微鏡による写真を示した。図示するように、円形輪郭は、いくつかの代表的な結晶粒を示し、結晶粒I、結晶粒II、結晶粒IIIを含み、粒径分布は、1.5μm、1.6μm、1.0μmであった。図における四角形輪郭は、粒径が0.1
dmax未満の微粉結晶粒を示し、これらの微粉結晶粒は、統計範囲に計上しなかった。
【0145】
図7は、比較例3のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の走査型電子顕微鏡による写真を示した。図示するように、円形輪郭は、いくつかの代表的な結晶粒を示し、結晶粒I、結晶粒II、結晶粒III、結晶粒IV、結晶粒Vを含み、粒径分布は、5.0μm、4.4μm、3.0μm、4.3μm、2.8μmであった。図における四角形輪郭は、粒径が0.1d
max未満の微粉結晶粒を示し、これらの微粉結晶粒は、統計範囲に計上しなかった。
【0146】
以上の方法によって、実施例と比較例のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の結晶粒の体積メジアン径dv50と体積メジアン粒子粒径Dv50をそれぞれ検出し、以下の式からK値を算出した。
【0147】
【0148】
タップ密度試験は、標準GB/T 5162-2006『金属粉末タップ密度の測定』を参照した。
【0149】
結果の詳細は、表2に示すとおりである。
【0150】
二、電池性能検出
1、Mn3+含有量(wt.%)とP4332との構造割合
実施例と比較例の半電池を試験対象とした。その4.5~3.5Vの放電容量(Q1)と4.9~3.5V放電総容量(Q2)を測定し、4Vプラットフォーム容量割合x=Q1/Q2を計算した。具体的なテスト方法は、以下のとおりである。
【0151】
25℃で、ボタン型半電池を0.1Cで電圧4.9Vまで定電流充電し、そして4.9Vで電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、5min静置した後、ボタン型半電池を0.1Cで電圧3.5Vまで定電流放電した。原始充放電データから4.5~3.5Vの放電容量(Q1)と4.9~3.5V放電総容量(Q2)を切り出した。
【0152】
xに基づき、材料の以下の成分特徴(1)~(2)を反映することができ、
(1)xに基づき、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料におけるMn
3+含有量(r)を算出することができ、
【数6】
【0153】
上記式において、係数0.45は、LiNi0.5Mn1.5O4におけるMnの質量含有量であり、1.5は、化学式における1.5(即ち、Mn/Liの化学量論比)である。
【0154】
(2)本材料のスピネル相は、P4
332空間群とFd-3m空間群とを含み、かつP4
332空間群とFd-3m空間群のみを含む。xに基づき、リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料におけるP4
332空間群を有するニッケルマンガン複合酸化物の含有量(y)を算出することもでき、
【数7】
上記式において、係数0.375は、ニッケルマンガンが完全に無秩序な状態で、理論的には3/4のNiをNi
3+とし、充放電曲線に対応して、Ni
3+/Ni
2+プラットフォームが、3/4を4Vプラットフォームに変わるのに対し、Ni
3+/Ni
2+プラットフォーム容量が総容量の半分を占めるため、1/2×3/4=0.375である。P4
332空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、Ni
2+/Ni
3+とNi
3+/Ni
4+の価数変化に依存して充放電し、放電電圧区間は、4.8~4.5V(主に4.7~4.6Vに集中している)である。Fd-3m空間群を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物の充放電の価数変化ペアは、Ni
2+/Ni
3+と、Ni
3+/Ni
4+と、Mn
3+/Mn
4+とを含み、ここで、Mn
3+/Mn
4+の放電電圧区間は、4.4~3.5V(主に4.0V付近に集中している)であり、そのため、r値は、材料におけるMn
3+含有量を正確に反映することができ、Mn
3+の含有量は、Fd-3m含有量と線形正相関である。
【0155】
Mn3+含有量(r)とP4332空間群を有するニッケルマンガン複合酸化物の含有量(y)の統計結果の詳細は、表3に示すとおりである。
【0156】
2、サイクル性能
実施例と比較例の黒鉛軟質バッグ電池を試験対象とした。
【0157】
25℃で、黒鉛軟質バッグ電池を0.3Cで電圧4.9Vまで定電流充電し、そして4.9Vで電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、5min静置した後、黒鉛軟質バッグ電池を0.33Cで電圧3.5Vまで定電流放電し、これを一つの充放電サイクル過程とし、今回の放電容量は、初回サイクルの放電容量とした。全電池を上記の方法に従って複数回のサイクル充放電試験を行い、全電池の放電容量が80%に減衰するまで、全電池のサイクル回数を記録した。統計結果の詳細は、表3に示すとおりである。
【0158】
3、ガス発生とイオン溶出
実施例と比較例の黒鉛軟質バッグ電池を試験対象とした。
【0159】
25℃で、黒鉛軟質バッグ電池を0.3Cで電圧4.9Vまで定電流充電し、そして、4.9Vで電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。この満充電状態の電池を25℃の恒温工場内に置き、この過程に10dごとに排水法で軟質バッグ電池セル体積を測定し、増大した体積をガス発生体積とした。100d後、100d保管ガス発生データを得て、試験終了後、電池を0.33Cで3.5Vまで定電流放電し、そして、0.05Cで3.5Vまで定電流放電し、十分に放電された電池を得ることができる。
【0160】
十分に放電された電池を分解し、陽極極板を分離し、陽極表面の残留電解液を除去するために、陽極極板をDMC溶媒で軽く5s揺動し、そして、乾燥させた。陽極極板の表面から負極材料を掻き落とし、誘導結合プラズマ分光技術を用いて、負極材料におけるNi含有量(μg/g)とMn含有量(μg/g)を検出し、Niイオン溶出値とMnイオン溶出値とした。ガス発生とイオン溶出の試験結果の詳細は、表3に示すとおりである。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
表3のデータから、次のような結論を得ることができる:
(1)K値について
実施例(1a-1b、2a-2c)のリチウムニッケルマンガン複合酸化物のK値は、1.36~1.89の範囲にあり、比較例(1-3)のリチウムニッケルマンガン複合酸化物のK値は、2.10~4.15の範囲にあった。
【0165】
電池性能検出から、実施例のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、以下の利点を有することが分かった。
【0166】
実施例(1a-1b、2a-2c)のリチウムニッケルマンガン複合酸化物をリチウムイオン電池正極活物質として使用し、リチウムイオン電池がカットオフ容量に到達するサイクル数が365~449サイクルであり、比較例の120~283サイクルよりも高い。これは、実施例の材料を用いたリチウムイオン電池は、改善されたサイクル性能を持つことを示している。
【0167】
実施例(1a-1b、2a-2c)のリチウムニッケルマンガン複合酸化物をリチウムイオン電池正極活物質として使用し、リチウムイオン電池のNiイオン溶出値が209μg/g~308μg/gであり、比較例の312μg/g~367μg/gよりも低い。リチウムイオン電池のMnイオン溶出値は、1665μg/g~2072μg/gであり、比較例の2571μg/g~3021μg/gよりも低い。これは、実施例の材料を用いたリチウムイオン電池は、低減されたイオン溶出を持つことを示している。
【0168】
実施例(1a-1b、2a-2c)のリチウムニッケルマンガン複合酸化物をリチウムイオン電池正極活物質として使用し、リチウムイオン電池のガス発生量が27.2―35.6ml/Ahであり、比較例の36.9ml/Ah~49.2ml/Ahよりも低い。これは、実施例の材料を用いたリチウムイオン電池は、低減されたガス発生を持つ。
【0169】
(2)ドープについて
実施例3aのリチウムニッケルマンガン複合酸化物には、Ti元素がドープされており、このリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、リチウムイオン電池正極活物質として用いられ、リチウムイオン電池がカットオフ容量に到達するサイクル数は、481サイクルであり、リチウムイオン電池のNiイオン溶出値は、262μg/gであり、比較例の1895μg/gよりも低く、ガス発生量は、35.3ml/Ahであった。
【0170】
実施例3aのリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、実施例(1a-1b、2a-2c)より良好なサイクル性能、より低いイオン溶出、より低いガス発生量を示した。これは、ドープされたリチウムニッケルマンガン複合酸化物がより良い性能を持つことを示している。
【0171】
(3)被覆について
実施例3b-3eのリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、被覆層を有し、このリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、リチウムイオン電池正極活物質として用いられ、リチウムイオン電池がカットオフ容量に到達するサイクル数は、570~724サイクルであり、リチウムイオン電池のNiイオン溶出値は、157~201μg/gであり、リチウムイオン電池のMnイオン溶出値は、1168~1592μg/gであり、リチウムイオン電池のガス発生量は、16.6~25.7ml/Ahであった。
【0172】
実施例3b-3eのリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、実施例3aより良好なサイクル性能、より低いイオン溶出、より低いガス発生量を示した。これは、被覆層を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物がより良い性能を持つことを示している
(4)製造プロセスについて
K値が1~2の範囲にあるリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得るためには、以下の要因は、キーである。
【0173】
要因1.第一の熱処理温度と保温時間である。第一の熱処理のピーク温度によって、結晶粒粒径の上限と平均値が決まり、結晶粒の成長と変形の駆動力でもある。第一の熱処理のピーク温度と保温時間によって、結晶粒の大きさと形態が共同で決まる。第一の熱処理段階のピーク温度は、好ましくは950℃~1200℃であり、ピーク温度における前記第一の熱処理段階の保温時間は、好ましくは5h~30hである。
【0174】
要因2.第一の熱処理の昇温速度である。昇温速度が速すぎると、局所に熱アンバランスが発生し、一部の結晶粒が先に成長し、深刻な大結晶粒が小結晶粒を吸収する状況が発生し、結晶粒間のブロッキングが深刻になる。第一の熱処理の室温からピーク温度まで昇温する昇温速度は、好ましくは5℃/min以下、選択的に、0.5~3℃/minである。
【0175】
要因3.ニッケル源、マンガン源前駆体の粒径である。ニッケル源、マンガン源前駆体の粒子が小さいほど、同一目標粒径を得た完成品粒子は、より多くの小粒子を連合する必要があり、対応する第一の熱処理温度は、上昇する必要があり、完成品における粒子間ブロッキングが深刻になる。ニッケルマンガン前駆体粒子が大きすぎると、焼成が困難であり、第一の熱処理温度を高め、粒子間のブロッキングを招くおそれがある。ニッケル源、マンガン源前駆体と前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物材料との体積メジアン粒子粒径の比値は、好ましくは0.4~1、選択的に、0.6~0.8である。
【0176】
実施例(1a-1b、2a-2c、3a-3f)の製造プロセスは、上記要求を満たしており、したがって、K値が1~2の範囲にあるリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得ることに成功した。
【0177】
(5)P4332構造の含有量又はMn3+の含有量について
実施例(1a-1b、2a-2c、3a-3f)で確認されたように、P4332構造の含有量が50%以上(又はMn3+の含有量が5%以下)であることは、電池の性能に有利である。
【0178】
P4332構造を主体とするリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得るために、以下の要因は、キーである。
【0179】
要因1.第二の熱処理温度及び保温時間は、目標結晶粒の大きさ及び第一の熱処理温度と時間と一致する。P4332は、低温相であるため、熱力学的観点から見ると、温度が低いほど、P4332構造傾向にある。しかし、動力学的観点から見ると、温度が低いほど、原子拡散して相転移を行うことに不利である。第一の熱処理温度が高いほど、Fd-3m構造含有量が高くなり、第二の熱処理保温時間が長くなる必要である。結晶粒が大きいほど、比較的大きな拡散動力が必要となり、第二の熱処理温度が高くなる。第二の熱処理温度は、第二の熱処理時間にも同様に影響を与える。第二の熱処理段階のピーク温度は、好ましくは550℃~680℃であり、第二の熱処理段階の保温時間は、好ましくは5h~50hである。
【0180】
要因2.元素成分。Fd-3m相の発生は、遷移金属層の各原子半径に関連し、異なる半径の原子(特に安定半径を有する原子)は、結晶構造を安定させ、Ni、Mn順序配列の方向性を向上させることができ、Ti、Cr、Zrなどの高価イオンとNi位置の+1、+2価原子ドープは、いずれもそれに相関している。好ましくはドープ元素は、Ti元素である。
【0181】
説明すべきこととして、本願は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、例示に過ぎず、本願の技術案の範囲内で、技術思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用と効果を奏する実施の形態は、いずれも本願の技術範囲内に含まれるものとする。なお、本願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を実施し、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本願の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0182】
5 二次電池;51 ケース;52 電極コンポーネント;53 蓋板
【国際調査報告】