(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】抗HMMW抗体、それを含む組成物、及びそれをコードする核酸分子、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20231219BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231219BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C07K16/18
C12N15/13 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K48/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509376
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2022125196
(87)【国際公開番号】W WO2023071821
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111263981.5
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523042972
【氏名又は名称】ナンジン アンジ バイオロジカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANJING ANJI BIOLOGICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シュ, ハンメイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、抗HMMW抗体、本抗体を含む組成物、及び本抗体をコードする核酸分子、並びに本抗体、本組成物又は本核酸分子の使用に関する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトHMMWマイクロペプチドに特異的に結合する抗体であって、相補性決定領域CDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含む重鎖可変領域、並びに相補性決定領域CDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み、
(a)前記CDRH1が、配列番号1、11、21、31、41、51、61又は71に記載のアミノ酸配列を有し;
(b)前記CDRH2が、配列番号2、12、22、32、42、52、62又は72に記載のアミノ酸配列を有し;
(c)前記CDRH3が、配列番号3、13、23、33、43、53、63又は73に記載のアミノ酸配列を有し;
(d)前記CDRL1が、配列番号4、14、24、34、44、54、64又は74に記載のアミノ酸配列を有し;
(e)前記CDRL2が、配列番号5、15、25、35、45、55、65又は75に記載のアミノ酸配列を有し;
(f)前記CDRL3が、配列番号6、16、26、36、46、56、66又は76に記載のアミノ酸配列を有する、抗体。
【請求項2】
(1)前記CDRH1が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH2が配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH3が配列番号3に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL1が配列番号4に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL2が配列番号5に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL3が配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(2)前記CDRH1が配列番号11に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH2が配列番号12に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH3が配列番号13に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL1が配列番号14に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL2が配列番号15に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL3が配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(3)前記CDRH1が配列番号21に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH2が配列番号22に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH3が配列番号23に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL1が配列番号24に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL2が配列番号25に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL3が配列番号26に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(4)前記CDRH1が配列番号31に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH2が配列番号32に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH3が配列番号33に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL1が配列番号34に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL2が配列番号35に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL3が配列番号36に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(5)前記CDRH1が配列番号41に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH2が配列番号42に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH3が配列番号43に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL1が配列番号44に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL2が配列番号45に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL3が配列番号46に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(6)前記CDRH1が配列番号51に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH2が配列番号52に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH3が配列番号53に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL1が配列番号54に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL2が配列番号55に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL3が配列番号56に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(7)前記CDRH1が配列番号61に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH2が配列番号62に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH3が配列番号63に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL1が配列番号64に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL2が配列番号65に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL3が配列番号66に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(8)前記CDRH1が配列番号71に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH2が配列番号72に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRH3が配列番号73に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL1が配列番号74に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL2が配列番号75に記載のアミノ酸配列を有し、前記CDRL3が配列番号76に記載のアミノ酸配列を有する、
請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記重鎖可変領域が、配列番号7、17、27、37、47、57、67若しくは77に記載のアミノ酸配列、又は配列番号7、17、27、37、47、57、67若しくは77に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域が、配列番号8、18、28、38、48、58、68若しくは78に記載のアミノ酸配列、又は配列番号8、18、28、38、48、58、68若しくは78に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
前記重鎖可変領域及び/又は前記軽鎖可変領域が、一本鎖可変断片scFv、F(ab’)
2断片、Fab若しくはFab’断片、二価抗体、三価抗体、四価抗体又はモノクローナル抗体の一部である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項8】
配列番号9、19、29、39、49、59、69若しくは79に記載の重鎖可変領域コード配列、又は配列番号9、19、29、39、49、59、69若しくは79に記載の重鎖可変領域コード配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは少なくとも99.5%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、及び/又は配列番号10、20、30、40、50、60、70若しくは80に記載の軽鎖可変領域コード配列、又は配列番号10、20、30、40、50、60、70若しくは80に記載の軽鎖可変領域コード配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは少なくとも99.5%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項7に記載の核酸分子。
【請求項9】
大腸癌を治療するための薬物の製造における、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体、請求項6に記載の医薬組成物又は請求項7~8のいずれか一項に記載の核酸分子の使用。
【請求項10】
頭頸部扁平上皮癌、腎癌、前立腺癌及び大腸癌を診断するためのキットの製造における、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又は請求項6に記載の医薬組成物又は請求項7~8のいずれか一項に記載の核酸分子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗HMMW抗体、本抗体を含む組成物、及び本抗体をコードする核酸分子、並びに本抗体、本組成物又は本核酸分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本記載の一部は、本開示に関連する背景情報を提供するに過ぎず、従来技術を必ずしも構成するものではない。
【0003】
長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)は、200ntを超える長さの転写産物を有するRNA分子のクラスである。一般的に、lncRNAはタンパク質をコードせず、RNAの形でタンパク質、DNA、及びRNAと相互作用し、エピジェネティック修飾(クロマチンリモデリング及び修飾、並びにDNA/RNAメチル化)、転写レベル(転写因子の結合)、及び転写後レベル(RNA切断、mRNA安定化、及び翻訳、並びにceRNAとして)の点で遺伝子発現を制御すると考えられている。2011年に、驚くべきことに、lncRNAがリボソーム保護フラグメントのディープシークエンスにより、小さな短いペプチドを翻訳している可能性があることが、科学者たちによって発見された。しかし、トランスクリプトームシーケンス技術及び解析手法の深度及び精度に制限され、コーディング能力を持つオープンリーディングフレームを含むノンコーディングRNAについては、国際レベルで大きな議論が行われている。2015年、テキサス大学サウスウェスタン医療センターのEric Olson教授のチームは、骨格筋に特異的に発現するlncRNAを発見した。このlncRNAは、心筋細胞のカルシウムホメオスタシス制御に重要な役割を果たすことが見出されている46アミノ酸のマイクロペプチドミオレグリン(MLN)をコードしている可能性があった。2016年には、Eric Olsonの研究室が、lncRNAがコードする他のマイクロペプチドDWORFがマウスの心臓で高発現し、筋収縮を制御し得ることをScience誌に報告した。近年、lncRNAがコードするマイクロペプチドが、筋形成、アミノ酸代謝、mRNAの転写後修飾、及び粘膜免疫の制御等の重要な生理学的又は病理学的過程に主に関与していることが世界中の研究者によって次々と見出されており、lncRNAが実際に新規機能性マイクロペプチドをコードできることが証明されてきている。しかし、腫瘍においてlncRNAがコードするマイクロペプチドを発見した報告は少ししかない。ヒトゲノムに転写される全RNAのうち、ノンコーディングRNAは90%以上を占め、そのうち85%がlncRNAであることはよく知られている。したがって、マルチオミクス技術とin-vivo及びin-vitroモデルの交差検証を組み合わせることにより、腫瘍においてlncRNAがコードするマイクロペプチドを見出すこと、腫瘍におけるマイクロペプチドの特異的作用及び機構を明らかにすること、標的化した方法で新薬を開発することは、腫瘍の治療にとって大きな意義がある。
【0004】
頭頸部腫瘍は、世界で7番目に多い悪性腫瘍で、主に耳鼻科系腫瘍(喉頭癌、上咽頭癌、及び副鼻腔癌)、口腔顎顔面腫瘍(舌癌、歯肉癌、及び頬部癌)を含む。頭頸部腫瘍の90%超は頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)に属し、毎年83万超の新しい症例及び43万人以上の死亡が発生し、中国における新症例数は全体の約1/5である。現在、臨床診療においては、頭頸部癌は手術と放射線治療、及び化学療法との併用によって治療されるのが未だに一般的であるが、治療効果は満足できるものではない。標的治療薬は、主にEGFR(上皮成長因子受容体)阻害剤である。後期においては薬物耐性を生じる可能性が高いため、臨床的な有効性は重度に妨げられており、頭頸部癌の患者の5年生存率は50%に過ぎない。このため、頭頸部扁平上皮癌の治療効果を改善するためには、薬物開発のための新しいバイオマーカー及び標的の発見が重要な意義を有する。
【0005】
腎細胞癌(RCC)は、腎実質の尿細管上皮に由来する悪性腫瘍で、成人悪性腫瘍の2~3%を占め、腎細胞癌の最も一般的な種類は明細胞癌、次に乳頭状腎細胞癌、及び色素細胞癌であり、稀な種類は集合管癌等である。泌尿器系の三大腫瘍のうちの1つである腎癌の発症率は前立腺癌、及び膀胱癌に次いで高く、その死亡率は三大腫瘍の中で第1位である。現在、世界の腎臓癌の発症率は、全男性悪性腫瘍の中で9位(新規患者数214千人)、全女性悪性腫瘍の中で14位(新規患者数124千人)である。2018年2月に国立がんセンターが発表した最新の癌データによると、中国における腎癌の発症率は4.99/10万人であり、男性の腎癌の発症率は6.09/10万人、女性の腎癌の発症率は3.84/10万人であることが示されている。腎臓の位置が隠れているため、初期の臨床症状は明らかではなく、認知された診断マーカーがないため、腎臓癌患者のうちの30%超が初診時に後期まで進行し、手術による根治治療の最適な機会を逃しており、早期臨床診断率を改善させ適時に治療を行うためには、腎癌の特異的診断マーカーの探索は不可欠な要件である。
【0006】
前立腺癌は、前立腺に発生する上皮性悪性腫瘍を指し、腺癌、管状腺癌、尿路上皮癌、扁平上皮癌、及び腺扁平上皮癌を含む。前立腺腺癌は95%超を占め、早期には症状がなく、症状がある場合は通常、局所浸潤又は遠隔転移を示し、尿道、膀胱、及び三陰交に病巣が広がり、排尿障害を引き起こす。さらに、遠隔転移時に、腰痛、血尿、やせ、及び衰弱が起こり得る。近年、前立腺癌の発症は急激に増加している。2020年には、前立腺癌は肺癌に次いでおり、その発症率は男性悪性腫瘍の2位であった。前立腺癌の臨床診断は、主に直腸デジタル診、血清PSA(前立腺特異抗原)、経直腸的前立腺超音波検査、及び骨盤MRI検査によって行われ、確定診断の前は前立腺穿刺生検による病理検査が必要である。早期及び中期の患者は主に手術及び放射線治療によって治療され、後期の患者は主に内分泌療法が行われる。西洋の先進国の患者と比較すると、中国では初診時に後期まで進行している可能性が高く、後期の前立腺癌患者は予後がより不良であり、治療が困難になっている。したがって、前立腺癌の新しい診断マーカー及び治療薬を発見することは、良好な予後を得るために非常に重要である。
【0007】
大腸癌は、結腸又は直腸の粘膜上皮に生じる悪性腫瘍を指し、結腸癌及び直腸癌を含み、これらは病因及び診断原理が類似していることから、医学的には合わせて大腸癌と称する。現在の臨床治療から、都市化の進展に伴い生活様式及び食生活が変化し、鶏肉、鴨肉、及び魚肉等の高カロリー、及び高脂肪、高タンパク質食品の摂取が増加し、人口の高齢化が加速しており、そのため、大腸腫瘍の高発症率という問題がますます顕著になっている。都市部において大腸癌の発症率は2~3位であり、40歳未満の若年層が大腸癌を罹患する比率は大腸癌を罹患する全集団の約20%を占め、増加傾向を示している。中国は大腸癌の発症率が高い国のうちの1つである。大腸癌の高い発症率及び高い死亡率は、日を追うごとに人々の身体的及び心理的な健康を著しく脅かしており、大腸癌の予防及び治療に対する状況は非常に深刻である。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、相補性決定領域CDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含む重鎖可変領域と、相補性決定領域CDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、ヒトHMMWマイクロペプチドに特異的に結合する抗体であって、
(a)CDRH1が、配列番号1、11、21、31、41、51、61又は71に記載のアミノ酸配列を有し;
(b)CDRH2が、配列番号2、12、22、32、42、52、62又は72に記載のアミノ酸配列を有し;
(c)CDRH3が、配列番号3、13、23、33、43、53、63又は73に記載のアミノ酸配列を有し;
(d)CDRL1が、配列番号4、14、24、34、44、54、64又は74に記載のアミノ酸配列を有し;
(e)CDRL2が、配列番号5、15、25、35、45、55、65又は75に記載のアミノ酸配列を有し;
(f)CDRL3が、配列番号6、16、26、36、46、56、66又は76に記載のアミノ酸配列を有する、抗体を提供する。
【0009】
本開示は、本開示の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物をさらに提供する。
【0010】
本開示は、本開示の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子をさらに提供する。
【0011】
本開示は、大腸癌を治療するための薬物の製造における、本開示の抗体又は医薬組成物又は核酸分子の使用をさらに提供する。
【0012】
本開示は、頭頸部扁平上皮癌、腎癌、前立腺癌、及び大腸癌を診断するためのキットの製造における、本開示の抗体若しくは医薬組成物又は核酸分子の使用をさらに提供する。
【0013】
以下は、添付の図面の簡単な説明を提供するが、これらの図面は、本明細書に開示の例示的な実施形態を限定するものではなく、これらの実施形態を説明するために使用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】HMMWマイクロペプチドのSDS-PAGE電気泳動の結果を示す図である。
【
図2】HMMWマイクロペプチドのHPLCの結果を示す図である。
【
図3】抗HMMW-1抗体、抗HMMW-2抗体、抗HMMW-3抗体、抗HMMW-4抗体、抗HMMW-5抗体、抗HMMW-6抗体、抗HMMW-7抗体、及び抗HMMW-8抗体と固定量のHMMWマイクロペプチドとのウェスタンブロットの結果を示す図である。
【
図4】抗HMMW-1抗体、抗HMMW-2抗体、抗HMMW-3抗体、抗HMMW-4抗体、抗HMMW-5抗体、抗HMMW-6抗体、抗HMMW-7抗体、及び抗HMMW-8抗体と、頭頸部扁平上皮癌のCAL27細胞、腎癌の786-O細胞、前立腺癌のDU145細胞、及び大腸癌のHCT116細胞で発現させたHMMWマイクロペプチドとのウェスタンブロッティングの結果を示す図である。
【
図5】抗HMMW-1抗体、抗HMMW-2抗体、抗HMMW-3抗体、抗HMMW-4抗体、抗HMMW-5抗体、抗HMMW-6抗体、抗HMMW-7抗体及び抗HMMW-8抗体の大腸癌のHCT116細胞の増殖抑制効果を示す図であり;
【
図6】抗HMMW-1抗体、抗HMMW-2抗体、抗HMMW-3抗体、抗HMMW-4抗体、抗HMMW-5抗体、抗HMMW-6抗体、抗HMMW-7抗体、及び抗HMMW-8抗体の大腸癌のHCT116細胞の遊走に対する阻害効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特にことわらない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「A及び/又はB」という表現は:(1)A;(2)B;及び(3)A及びBという3つの場合を含む。
【0017】
「同一性」という用語は、一対の配列(ヌクレオチド又はアミノ酸)間の類似性の程度を指す。同一性は、同じ残基の数を残基の総数で割り、商に100を乗算してパーセンテージを得ることによって決定する。同一性を評価する際には、ギャップは除外される。したがって、完全に同一の配列の2つのコピーは100%の同一性を有するが、欠失、付加又は置換のある配列は、同一性の程度が低くなることがある。当業者であれば、配列の同一性を決定するために使用できるコンピュータプログラム、例えば、BLASTのようなアルゴリズムを使用したプログラムがいくつかあることを認識するであろう。BLASTヌクレオチド検索はNBLASTプログラムを用いて行われ、BLASTタンパク質検索はBLASTPプログラムを用いて行われ、各プログラムのデフォルトパラメータが使用される。
【0018】
2つの異なる配列は、その配列によってコードされるタンパク質の全体的な機能に影響を与えることなく、互いに異なることが可能である。この点に関して、化学的に類似したアミノ酸は、通常、その機能を変えることなく、互いに置換することができることは、当技術分野では周知されている。関連する特性としては、酸性/アルカリ性、極性/非極性、電荷、疎水性、及び化学構造が挙げられる。例えば、アルカリ性残基であるLysとArgは化学的に類似していると考えられ、しばしば互いに置換される。他の例としては、酸性残基であるAsp及びGlu、ヒドロキシル残基であるSer及びThr、芳香族残基であるTyr、Phe、及びTrp、並びに非極性残基であるAla、Val、Ile、Leu、及びMetである。これらの置換は「保存的」であると考えられている。同様に、ヌクレオチドコドン及び許容される変化もまた、当技術分野で知られている。例えば、コドンACT、ACC、ACA、及びACGは全てアミノ酸スレオニンをコードし、すなわち、得られるアミノ酸を変えることなく第3のヌクレオチドを変更することができる。類似性は、類似する残基の数を残基の総数で割り、商に100を乗算してパーセンテージを得ることによって決定する。類似性及び同一性の測定値は、異なる特性を示すことに留意すべきである。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、本開示の抗体と他の化学成分、例えば担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、及び/又は賦形剤との混合物を指す。医薬組成物は、生物への抗体の投与を容易にする。当技術分野において抗体を投与するための多くの技術があり、静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺及び局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される材料、組成物又は担体、例えば液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料を含み、対象内で本開示の抗体を運搬又は輸送するか、又は意図する機能を果たすように対象へ本開示の抗体を運搬又は輸送することに関与している。各塩又は担体は、製剤の他の成分との適合性に関して「許容される」ものでなければならず、対象に有害であってはならない。薬学的に許容される担体として使用することができる材料のいくつかの例としては:糖、例えばラクトース、グルコース、及びスクロース;デンプン、例えばコーンスターチ及びポテトスターチ;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース;粉末トラガカントゴム;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバター及び坐剤ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油;ジオール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセロール、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル、及びラウリン酸エチル;寒天:緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エタノール;リン酸緩衝液;希釈剤;造粒剤;滑沢剤;結合剤;崩壊剤;湿潤剤;乳化剤;着色剤;離型剤;コーティング剤;甘味料;香味料;芳香剤、保存料;酸化防止剤;可塑剤;ゲル化剤;増粘剤;硬化剤;固化剤;懸濁剤;界面活性剤;保湿剤;担体;安定剤;及び医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質、又はその組合せが挙げられる。
【0021】
「抗体」という用語は、免疫系によって標的抗原を認識するために使用されるタンパク質を指す。抗体の基本的な機能単位は、免疫グロブリンモノマーである。モノマーは、2本の同一の重鎖及び2本の同一の軽鎖からなり、これはY字型のタンパク質を形成する。各軽鎖は、1つの定常ドメインと1つの可変ドメインからなる。軽鎖において、定常ドメインは「定常領域」とも呼ばれ、可変ドメインは「可変領域」とも呼ばれる。重鎖はそれぞれ1つの可変ドメインと3つ又は4つの定常ドメインからなる。重鎖では、定常ドメインを合わせて「定常領域」と呼び、可変ドメインは「可変領域」と呼ぶこともある。Yのアームは断片、抗原結合(Fab)領域と呼ばれ、各アームはFab断片と呼ばれる。各Fab断片は、重鎖由来の1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメイン、並びに軽鎖由来の1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインからなる。Yの基部はFc領域と呼ばれ、これは、各重鎖由来の2つ又は3つの定常ドメインからなる。Fab領域における重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、抗体の抗原(本開示ではHMMWなど)を結合するための部分である。より具体的には、可変ドメインの相補性決定領域(CDR)は、その抗原(例えばHMMW)を結合する。各可変ドメインのアミノ酸配列には、3つの不連続なCDRが存在する。本明細書で使用される場合、「完全」という用語は、Fab領域及びFc領域を含む抗体を指す。
【0022】
本明細書で使用する「抗体重鎖」は、天然のコンフォメーションの抗体分子中で存在する2種類のポリペプチド鎖のうち大きい方を指し、通常、抗体の種類を決定するものである。
【0023】
本明細書で使用する「抗体軽鎖」は、天然のコンフォメーションの抗体分子中で存在する2種類のポリペプチド鎖のうち、小さい方を指す。κ及びλ軽鎖は、抗体軽鎖の2つの主要なアイソタイプを指す。
【0024】
現在、頭頸部癌、腎癌、前立腺癌、及び大腸癌の検出及び治療におけるマイクロペプチドの使用に関する研究は行われていない。本発明者は、トランスクリプトームシーケンシングデータ解析、プロテオミクス、CRISPR/cas9遺伝子編集、in-vivo翻訳等を用いて、マイクロペプチド探索技術基盤を確立し、lncRNAがコードするマイクロペプチドHMMWを発見している。HMMWの発現差異がある腫瘍スペクトルをスクリーニングし、解析することにより、頭頸部扁平上皮癌、腎癌、及び前立腺癌の組織におけるHMMWの発現レベルは、癌周辺組織における発現レベルよりも有意に低く、大腸癌組織におけるHMMWの発現レベルは、癌周辺組織における発現レベルよりも有意に高いことが見出されている。このことから、HMMWマイクロペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体が開発されており、これは頭頸部扁平上皮癌、腎癌、前立腺癌、及び大腸癌の検出に使用でき、大腸癌の治療に新しい解決策を提供する。本開示の抗HMMW抗体は、異なる腫瘍細胞(頭頸部扁平上皮癌、腎癌、前立腺癌、及び大腸癌細胞を含むがこれらに限定されない)のHMMWに特異的に結合でき、細胞内のHMMWマイクロペプチドの発現レベルを感度よく検出するため、種々の癌の診断に有効に利用される。また、本開示の抗HMMW抗体は、大腸癌細胞の増殖を有意に阻害するだけでなく、大腸癌細胞の遊走を有意に阻害する。
【0025】
いくつかの実施形態において、本開示は、ヒトHMMWマイクロペプチドに特異的に結合する抗体であって、相補性決定領域CDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含む重鎖可変領域、並びに相補性決定領域CDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み:
(a)CDRH1が、配列番号1、11、21、31、41、51、61又は71に記載のアミノ酸配列を有し;
(b)CDRH2が、配列番号2、12、22、32、42、52、62又は72に記載のアミノ酸配列を有し;
(c)CDRH3が、配列番号3、13、23、33、43、53、63又は73に記載のアミノ酸配列を有し;
(d)CDRL1が、配列番号4、14、24、34、44、54、64又は74に記載のアミノ酸配列を有し;
(e)CDRL2が、配列番号5、15、25、35、45、55、65又は75に記載のアミノ酸配列を有する;
(f)CDRL3が、配列番号6、16、26、36、46、56、66又は76に記載のアミノ酸配列を有する、抗体に関する。
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示は、ヒトHMMWマイクロペプチドに特異的に結合する抗体であって、相補性決定領域CDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含む重鎖可変領域、並びに相補性決定領域CDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み;
(1)CDRH1が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH2が配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH3が配列番号3に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL1が配列番号4に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL2が配列番号5に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL3が配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(2)CDRH1が配列番号11に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH2が配列番号12に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH3が配列番号13に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL1が配列番号14に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL2が配列番号15に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL3が配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(3)CDRH1が配列番号21に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH2が配列番号22に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH3が配列番号23に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL1が配列番号24に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL2が配列番号25に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL3が配列番号26に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(4)CDRH1が配列番号31に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH2が配列番号32に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH3が配列番号33に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL1が配列番号34に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL2が配列番号35に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL3が配列番号36に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(5)CDRH1が配列番号41に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH2が配列番号42に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH3が配列番号43に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL1が配列番号44に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL2が配列番号45に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL3が配列番号46に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(6)CDRH1が配列番号51に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH2が配列番号52に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH3が配列番号53に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL1が配列番号54に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL2が配列番号55に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL3が配列番号56に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(7)CDRH1が配列番号61に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH2が配列番号62に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH3が配列番号63に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL1が配列番号64に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL2が配列番号65に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL3が配列番号66に記載のアミノ酸配列を有する;又は
(8)CDRH1が配列番号71に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH2が配列番号72に記載のアミノ酸配列を有し、CDRH3が配列番号73に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL1が配列番号74に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL2が配列番号75に記載のアミノ酸配列を有し、CDRL3が配列番号76に記載のアミノ酸配列を有する、抗体に関する。
【0027】
いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号7、17、27、37、47、57、67若しくは77に記載のアミノ酸配列、又は配列番号7、17、37、47、57、67若しくは77に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは少なくとも99.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号7、17、27、37、47、57、67又は77に記載されている。
【0028】
いくつかの実施形態において、抗体軽鎖可変領域は、配列番号8、18、28、38、48、58、68若しくは78に記載のアミノ酸配列、又は配列番号8、18、28、38、48、58、68若しくは78に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは少なくとも99.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号8、18、28、38、48、58、68又は78に記載されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号7、17、27、37、47、57、67又は77に記載のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖可変領域は、配列番号8、18、28、38、48、58、68又は78に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖可変領域は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖可変領域は、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号27に記載のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖可変領域は、配列番号28に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号37に記載のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖可変領域は、配列番号38に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号47に記載のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖可変領域は、配列番号48に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖可変領域は、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号67に記載のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖可変領域は、配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖可変領域は、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖可変領域は、配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域は、一本鎖可変断片(scFv)、F(ab’)2断片、Fab若しくはFab’断片、二価抗体、三価抗体、四価抗体又はモノクローナル抗体の一部である。
【0031】
scFvは、通常リンカーによって結合された軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含む。リンカーは、通常、約10アミノ酸~約25アミノ酸の長さである(ただし、この範囲である必要はない)。1つの可変領域のN末端は、他の可変ドメインのC末端と連結している。scFvは、セルトリズマブペゴールのように、PEG化(すなわち、ポリエチレングリコールによる処理)を受けてサイズが増加していることが好ましい。2つのscFvを他のリンカーで結合して、タンデムscFvを生成することができる。
【0032】
軽鎖可変領域と重鎖可変領域が短いリンカーによって結合されてscFvを形成する場合、2つの可変領域は重複することができず、さもなければscFvは二量体化を起こして二価抗体を形成する。さらに短いリンカーであっても、三量体(すなわち三価の抗体)及び四量体(すなわち四価抗体)の形成をもたらし得る。
【0033】
完全なモノクローナル抗体は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる。また、各軽鎖及び各重鎖は可変ドメインを含む。各軽鎖は重鎖と結合している。2本の重鎖はヒンジ領域で結合している。ヒンジ領域の下部にある重鎖の定常領域を取り除くと、合計4つの可変領域を含むF(ab’)2断片が生成される。F(ab’)2断片は、2つのFab’断片に分けることができる。Fab’断片は、ヒンジ領域由来のスルフヒドリル基を含む。ヒンジ領域の上部の重鎖定常領域を取り除くと、Fab断片が形成され、これはヒンジ領域由来のスルフヒドリル基を含まない。しかしながら、これらの断片は全て、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、可変領域/ドメインを含む上記の軽鎖及び重鎖とヒト定常領域とを組み合わせることによって形成される完全なモノクローナル抗体である。重鎖定常領域は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はIgMを含む任意のヒトアイソタイプであり得る。ヒト軽鎖定常領域は、κ又はλアイソタイプであり得る。
【0035】
本開示における抗体についての上述の種々の実施形態及び嗜好性は、互いに組み合わせることができ(互いに本質的に矛盾しない限り)、その組合せによって形成される種々の実施形態は、本開示の一部と考えられる。
【0036】
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物に関する。
【0037】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。担体は、抗体を送達するための媒体として作用する。薬学的に許容される担体の例としては、抗体を溶解又は懸濁することができる液体担体(例えば、水、油、及びアルコール)が挙げられる。
【0038】
また、医薬組成物は、賦形剤を含んでいてもよい。具体的には、賦形剤としては、緩衝剤、界面活性剤、保存料、充填剤、ポリマー、及び安定剤が挙げられ、これらは抗体と併用することができる。緩衝剤は、組成物のpH値を制御するために使用される。界面活性剤は、タンパク質の安定化、タンパク質凝集の阻害、表面へのタンパク質吸着の抑制、及びタンパク質のリフォールディングの補助のために使用される。界面活性剤の例としては、Tween80、Tween20、Brij35、Triton X-10、PluronicF127、及びドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。保存料は、微生物の増殖を阻害するために用いられる。保存料の例としては、ベンジルアルコール、m-クレゾール、及びフェノールが挙げられる。充填剤は、凍結乾燥時に体積を増加させるために使用される。親水性ポリマー(例えば、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリエチレングリコール、及びゼラチン)は、タンパク質を安定化させるために使用することができる。また、非極性部分を有するポリマー(例えば、ポリエチレングリコールポリマー)も、界面活性剤として使用することができる。タンパク質安定化剤としては、ポリオール、糖、アミノ酸、アミン、及び塩が挙げられる。適切な糖としては、スクロース、及びトレハロースが挙げられる。アミノ酸としては、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、メチオニン、プロリン、リジン、グルタミン酸、及びその混合物が挙げられる。また、ヒト血清アルブミン等のタンパク質を表面に競合的に吸着させ、抗体の凝集を減少させてもよい。特定の分子を多くの目的に使用できることは留意すべきである。例えば、ヒスチジンは、緩衝剤及び酸化防止剤として使用することができる。グリシンは、緩衝剤及び充填剤として使用することができる。
【0039】
本明細書に開示される抗体又は組成物は、以下の投与経路、例えば吸入、経口、鼻、直腸、非経口、舌下、経皮、粘膜(例えば、舌下、舌、頬/経頬、尿道/経尿道、膣(例えば。経膣及び膣内)、鼻/経鼻及び直腸/経直腸)、膀胱内、肺内、経十二指腸、胃内、髄腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入及び局所投与に適するように適切に開発することができる。適切な組成物及び剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、カシェー、丸剤、ゲルキャップ、頬錠、分散剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、顆粒、ビーズ、経皮パッチ、ゲル、散剤、ペレット、スラリー、トローチ、クリーム剤、ペースト剤、軟膏剤、ローション剤、プレート、坐剤、鼻又は経口投与用の液体スプレー、吸入用の乾燥散剤又はエアゾール製剤、及び膀胱内投与用の組成物及び製剤が挙げられる。本開示で使用できる製剤及び組成物は、本明細書に記載される特定の製剤及び組成物に限定されないことは理解されるべきである。
【0040】
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子に関する。
【0041】
いくつかの実施形態において、本開示は、核酸分子であって、配列番号9、19、29、39、49、59、69若しくは79に記載の重鎖可変領域コード配列又は配列番号9、19、29、39、49、59、69若しくは79に記載の重鎖可変領域コード配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは少なくとも99.5%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、及び/又は配列番号10、20、30、40、50、60、70若しくは80に記載の軽鎖可変領域コード配列、又は配列番号10、20、30、40、50、60、70若しくは80に記載の軽鎖可変領域コード配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは少なくとも99.5%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、核酸分子に関する。
【0042】
いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号9、19、29、39、49、59、69若しくは79に記載の重鎖可変領域コード配列、及び/又は配列番号10、20、30、40、50、60、70若しくは80に記載の軽鎖可変領域コード配列を含む核酸分子に関する。
【0043】
いくつかの実施形態において、本開示は、大腸癌を治療するための薬物の製造における、本開示の抗体又は医薬組成物又は核酸分子の使用に関する。
【0044】
いくつかの実施形態において、本開示は、頭頸部扁平上皮癌、腎癌、前立腺癌、及び大腸癌を診断するためのキットの製造における、本開示の抗体又は医薬組成物又は核酸分子の使用に関する。
【0045】
本開示における抗体に関する種々の実施形態及び嗜好性は、本開示の組成物、核酸分子、及び用途にも適用可能であり、これらの実施形態及び嗜好性は互いに組み合わせることもでき(互いに本質的に矛盾しない限り)、その組合せによって形成される種々の実施形態は、本出願の一部と考えられる。
【0046】
本開示の技術的解決策は、実施例と組み合わせた例示によって、より明確かつ明示的に説明される。これらの実施例は、例示のためのものに過ぎず、本開示の保護範囲を限定することを意図していないことは理解されるべきである。本開示の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【実施例】
【0047】
実施例1:HMMWマイクロペプチドの組換えベクターの構築及び発現
HMMWマイクロペプチド(アミノ酸配列は配列番号81に記載)に対応するヌクレオチド配列(配列番号82)は、General Biological System (Anhui) Co, Ltd. (以下、General Biologicalと称する)によって合成された。EcoRI--BamHI二重酵素消化(NEB、米国)を通して、合成されたヌクレオチド配列を発現ベクターpET28a(Addgene、米国)に連結し、連結した産物を用いて大腸菌(Escherichia coli)DH5αを形質転換し、これをプレート上に塗布して、いくつかのクローンを拾い、細菌を振盪培養に供し、Beijing Tiangen生物プラスミド抽出キットを用いてプラスミドを抽出し、General Biologicalの配列決定によって正しい発現クローン配列を有する組換え発現ベクターを確認した。得られた発現プラスミドを用いて大腸菌BL21(Beijing TransGen Biotech Co., Ltd.)に形質転換した。形質転換は、以下の具体的なステップを含んでいた:1)プラスミド1μLをコンピテントセルに添加して均一に混合し、混合物を30分間氷上に静置した;2)混合物を42℃の水浴に90秒間供し、直ちに取り出し、2分間氷上に静置した;3)混合物を全てLB培地1mLに接種した;4)培地を37℃で45分間、180rpmのシェーカーで培養して耐性を回復させた;5)培養物を5,000rpm×5分間で遠心分離した。上清を廃棄し、100μLを残して均一に混合し、混合液をプレート(LB-Amp+)に塗布し、まずプレートを上向きに置いて20分間吸収させた後、プレートを12時間倒置し、単一コロニーを拾ってLB(×2)培地5mLに接種し、37℃で振盪培養に供した。細菌溶液の吸光度値OD600が約0.6になった時点でIPTG(Sigma-Aldrich)を添加してさらに3時間誘導培養を行った。細菌溶液を5,000rpmで5分間遠心分離し、細菌を回収してPBSで洗浄し、細菌を遠心分離して回収し、4℃で超音波処理により細菌を破砕した。破砕した細菌を10,000rpmで遠心分離し、上清をSDS-PAGE電気泳動のために回収し、その結果を
図1に示し、これは、HMMWマイクロペプチドの発現を示している。HMMWマイクロペプチドをニッケルイオンアフィニティークロマトグラフィー及びイミダゾール勾配溶出により精製し、HPLC検出結果を
図2に示し、これはHMMWマイクロペプチドの純度が90%超であることを示している。
【0048】
実施例2:抗ヒトHMMWマイクロペプチドのモノクローナル抗体の調製
8~12週齢のBALB/cマウス(Changzhou Cavens Experimental Animal Co., Ltd.)を購入し、免疫原の量が約50μg/マウス/回となるように精製HMMWマイクロペプチドで免疫化した。初回免疫化時には、フロイント完全アジュバント(Sigma-Aldrich)で乳化した抗原を頸部背面の複数点に皮下注射した。初回免疫化から3週間後、2回目、及び3回目の免疫化には、同体積のフロイント不完全アジュバント(シグマ・アルドリッチ)で乳化した免疫原を、初回免疫化と同じ免疫用量で約2週間毎に用いた。3回免疫化後、マウス眼の静脈叢から採血し、抗血清のELISA力価(タンパク質抗原コートプレート)を検出し、抗血清力価が8K超のマウスを融合ステージに選択した。
【0049】
融合の1日前に、8~12週齢のBALB/cマウス1匹を採取し、75%エタノール溶液中に2分間静置した。マウスの脾臓を無菌的に取り出し、200メッシュのステンレス鋼スクリーンに静置した。粉砕することによって単一細胞懸濁液を得た。免疫化マウスの単一細胞懸濁液を同様の方法で得た。よく増殖し指数関数期にあるSP2/0細胞を回収し、脾臓細胞と1:5の比率で50mlの透明プラスチック遠心管内で混合し、予熱したRPMI1640基礎培地(Biological Industries、イスラエル)で1回洗浄し(1,400rpm、5分間)、上清を廃棄し、管底を指で優しく叩いて2種の細胞を十分に混合して細胞懸濁液とした。遠心管を予熱のために37℃の保温水浴カップに入れ、37℃で予熱した50%PEG溶液1mlを吸収させて1分以内に一定の速度で添加し、添加しながら遠心管を穏やかに振盪した後、37℃水浴中で60秒間穏やかに振盪した。37℃で予熱した1640基礎培地14mlを管壁に沿って穏やかに均一に滴下して反応を終了させた(最初の1分間以内に1ml、3分間以内に3mlを添加し、最後に10mlをゆっくり添加した)。37℃で5分間静置した後、混合物を遠心分離(800rpm、5分間)し、上清を廃棄し(遠心分離管を傾け、上清を吸引した)、沈殿した細胞を37℃で予熱した1640選択培地に穏やかに懸濁し(ピペッティングなし)、均一に混合した後、トロホブラストを含む96ウェル培養プレートに100μl/ウェルで滴加し、細胞を37℃の5%CO2インキュベーターで培養し、3日後に溶液の半量を交換し、10日後に細胞をHT培地(Thermo Fisher Scientific、米国)で培養し、2週間後に10%FBS含有1640培地(Biological Industries、イスラエル)を用いて培養した。この期間の間、96ウェルプレート内のクローンの成長を毎日観察した。ハイブリドーマ細胞がウェル底面の1/10の面積を占めた時点で、特異的抗体の検出を開始し、必要なハイブリドーマ細胞株を選別した。ウェル内の細胞株の陽性率が100%(対応する抗原を認識する)になるまで上記ステップを繰り返し、8つのハイブリドーマ細胞株を得た。
【0050】
実施例3:抗ヒトHMMW抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の配列決定
8つのハイブリドーマ細胞株からRNAを抽出し(RNA抽出キットはBaoriyi Biotechnology Co.,Ltd.より購入した)、5’RACE(Baoriyi Biotechnology Co.,Ltd.)を用いてcDNAを逆転写に供し、PCRによりハイブリドーマ細胞の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)をクローニングした後、配列を決定した。配列決定の結果を以下の表1に示し、CDRは斜線部に示した。
【0051】
【0052】
実施例4:ELISAによる抗HMMW抗体力価の検出
HMMWマイクロペプチドの抗原コーティング濃度は1μg/mlであり、シールには5%ミルクPBS-Tを使用した。8つの抗体の希釈倍率は、1:3.125K/6.25K/12.5K/25K/50K/100Kであった。一次抗体は37℃で1時間、二次抗体は37℃で45分間インキュベートした。発色溶液を添加し、37℃で15分間反応させた後、反応を終了させ、値を読み取った。下記の表2から、8つの抗体の力価はいずれも1:100Kに達しており、その後の抗原検出の条件を満たしていることがわかる。
【0053】
【0054】
実施例5:ウェスタンブロットによる抗HMMW抗体の検出における感度の改善
精製したHMMWマイクロペプチドを全ローディング量10ngで15%SDS-PAGEゲル電気泳動に供し、次いで得られた産物をNC膜に移し、膜を室温で5%スキムミルク粉末を用いて1時間シールし、室温で8倍に希釈した一次抗体と2時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、室温で45分間二次抗体とインキュベートし、TBSTで3回洗浄し、フィルムを洗浄した。ECL試薬を添加して1分間反応させ、保存フィルムでシールし、暗室でX線フィルムを露光して現像してスキャンし、結果を
図3に示した。
図3から、8つの抗HMMW抗体はいずれも10ngのHMMWマイクロペプチドを認識することができ、したがって感度が検出要件を満たしていることがわかる。
【0055】
実施例6:ウェスタンブロットによる、異なる腫瘍細胞におけるHMMWマイクロペプチドへの結合に対する抗HMMW抗体の能力の検出
頭頸部扁平上皮癌のCAL27細胞、腎癌の786-O細胞、前立腺癌のDU145細胞、及び大腸癌のHCT116細胞(全てAmerican type culture collection由来)を別々に37℃の5%CO
2インキュベーターで、90%の密度まで培養した。細胞をトリプシン(Biosharp、米国)で消化し、回収した。消化した細胞を遠心分離し、上清を廃棄し、残渣をPBSでリンスし、上清を廃棄した。RIPA溶解緩衝液を添加し、氷上で混合物を20分間溶解した。溶解溶液を12,000gで10分間遠心分離し、上清を回収した。1×SDSローディング緩衝溶液を添加し、溶液をピペッティングして均一に混合し、混合物を5分間沸騰させて変性させた。全タンパク質を10%SDS-PAGEゲルによって分離した後、PVDF膜(Millipore、米国)に移した。膜を5%BSAを用いて室温で2時間シールし、8つの異なる抗HMMW抗体と4℃で一晩インキュベートし、TBSTで3回洗浄した。膜を二次抗体と室温で1時間インキュベートし、TBSTで3回洗浄した。得られた生成物を高感度化学発光(ECL)溶液を用いて現像し、Tanonイメージングシステムによって画像化した。4種の腫瘍細胞におけるHMMWマイクロペプチドの発現を検出するための異なる抗HMMW抗体の能力を比較し、結果を
図4に示した。
【0056】
図4から、8つの抗HMMW抗体は、頭頸部扁平上皮癌のCAL27細胞、腎癌の786-O細胞、前立腺癌のDU145細胞、及び大腸癌のHCT116細胞におけるHMMWマイクロペプチドの発現を有効に検出することができることがわかる。
【0057】
実施例7:抗HMMW抗体のヒト大腸癌細胞の増殖に及ぼす影響
HMMWマイクロペプチドの発現レベルが高い大腸癌細胞HCT116を、37℃の5%CO
2インキュベーターで密度90%まで培養し、細胞をトリプシンで消化し、回収した。細胞を培養溶液に再懸濁し、顕微鏡下で計数した。細胞濃度を3.0×10
4細胞/mLに調整し、細胞懸濁液を96ウェルプレートに1ウェルあたり100μlずつ接種した。細胞を37℃の5%CO
2インキュベーター内で一晩培養した。細胞が壁に完全に接着した後、投与群として8つの抗HMMW抗体のうちの1つをそれぞれ40nMで添加し、陽性対照群としてパクリタキセルを10μg/ml添加し、薬物を全く添加していない培養溶液は1ウェル当たり100μlで陰性対照であり、37℃の5%CO
2インキュベーター内で48時間培養した。96ウェルプレートの各ウェルに5mg/mLのMTTを20μL添加し、細胞を4時間連続培養した。培養培地を吸引し、1ウェルあたり100μLのDMSOを用いて細胞を溶解させた。マイクロプレートリーダーを用いて、検出波長570nm及び参照波長630nmにおける吸光度の値を測定した。増殖阻害(PI)は、PI(%)=1-(投与群又は陽性対照群)/陰性群の式を用いて算出した。実験は独立して3回繰り返した。実験によって得られた結果は、平均値±標準偏差で表し、統計的T検定に供した。
図5に示すように、
*P<0.05を有意差と考え、
**P<0.01を極めて有意な差と考えた。
【0058】
図5から明らかにわかるように、陰性対照と比較して、40nMの用量の8つの抗HMMW抗体は、いずれも大腸癌細胞HCT116の増殖を有意に阻害することができ、その阻害効果は癌の臨床治療に広く用いられている抗癌薬であるパクリタキセルと基本的に同等であり、したがって有効な抗癌薬として使用されることが証明された。
【0059】
実施例8:抗HMMW抗体のヒト大腸癌細胞の遊走に及ぼす影響
HMMWマイクロペプチドの発現レベルが高い大腸癌細胞HCT116をトランスウェルチャンバー(Millipore、米国)に1ウェルあたり100μL接種し、同時に、投与群として40nMの8つの抗HMMW抗体のうち1つを100μL各チャンバーにそれぞれ添加し、陽性対照群として40nMのセツキシマブを添加し、薬物を全く添加していない培養溶液が陰性対照群であった。その後、10%FBS含有完全培地0.6mLをトランスウェルチャンバーに添加して細胞の遊走を刺激し、5%CO
2及び37℃で24時間培養した。ウェル内の培養液を廃棄した。細胞を、室温で90%アルコールを用いて30分間固定し、0.1%クリスタルバイオレットを用いて10分間室温で染色した後、水で清潔にリンスした。上層の非遊走細胞を綿スワブで優しく拭き取った。顕微鏡下で細胞を観察し、4つの視野を選んで撮影し、細胞を計数した。細胞の遊走阻害率(MIR)は、式:
【数1】
にしたがって算出し、式中、N
試験は試験群(抗体投与群又は陽性対照群)の細胞の遊走数であり、N
対照は陰性対照群の細胞の遊走数である。結果を
図6に示した。
【0060】
図6から明らかにわかるように、陰性対照と比較して、40nMの用量の8つの抗HMMW抗体は、いずれも大腸癌細胞HCT116の遊走を有意に阻害することができ、その阻害効果は癌の臨床治療に広く用いられている抗癌薬セツキシマブと基本的に同等であり、したがって、悪性腫瘍細胞の遊走を有効に阻害できる治療薬であることが証明された。
【0061】
具体的な実施形態を説明しているが、出願人又は当技術分野の当業者にとって、上記実施形態の置換、改変、変更、改善及び実質的な等価物が存在し得るか、又は現在のところ予見することができない。したがって、提出された添付の特許請求の範囲及び改変され得る特許請求の範囲は、そのような置換、改変、変更、改善、及び実質的な等価物を全てカバーすることを意図している。
【配列表】
【国際調査報告】