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特表2023-553780下部冷却ファンを含む電池セル充放電装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】下部冷却ファンを含む電池セル充放電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6563 20140101AFI20231219BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231219BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231219BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20231219BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M10/6563
H01M10/613
H01M10/48 301
H01M10/625
H01M10/633
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522764
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 KR2022018267
(87)【国際公開番号】W WO2023090926
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0160235
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0154858
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジュン ナム
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン ヒュン
【テーマコード(参考)】
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
5H030AA09
5H030AS08
5H030FF22
5H031CC09
5H031KK08
(57)【要約】
本発明による電池セル充放電装置は、複数の電池セルが装着されるトレイと、前記トレイに配置される複数の下部冷却ファンと、前記電池セル及び前記下部冷却ファンに電源を供給するための端子を含む電源ジグと、前記トレイの上部に配置される上部冷却ファンとを含み、電池セルの間に温度偏差が発生することを最小化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが装着されるトレイと、
前記トレイに配置される複数の下部冷却ファンと、
前記電池セル及び前記下部冷却ファンに電源を供給するための端子を含む電源ジグと、
前記トレイの上部に配置される上部冷却ファンと、
を含む、電池セル充放電装置。
【請求項2】
前記電池セルの温度を測定する温度センサーをさらに含む、請求項1に記載の電池セル充放電装置。
【請求項3】
前記温度センサーの温度情報を収集し、前記下部冷却ファンの速度を制御するPCBをさらに含む、請求項2に記載の電池セル充放電装置。
【請求項4】
前記PCBは、前記温度センサーから得た前記複数の電池セルの温度情報を上位サーバーに伝送する、請求項3に記載の電池セル充放電装置。
【請求項5】
前記電源ジグの端子ピンは前記トレイと連結される、請求項1に記載の電池セル充放電装置。
【請求項6】
前記電池セルは全長方向の両端から正極リード及び負極リードがそれぞれ突出するパウチ型電池セルであり、
前記下部冷却ファンは、前記電池セルの全長方向の両端のそれぞれ及び前記電池セルの全長方向の中心部に配置される、請求項1に記載の電池セル充放電装置。
【請求項7】
前記下部冷却ファンは前記電池セルに向かって配置されて上昇する気流を作り、
前記上部冷却ファンは上昇した空気を排出させる、請求項1に記載の電池セル充放電装置。
【請求項8】
前記電源ジグは、
上面に前記トレイが配置されるベース部と、
前記電池セルの正極リード及び負極リードのそれぞれと対向するように配置される第1側面部及び第2側面部と、を含み、
前記第1側面部と前記第2側面部とは相互間の距離が小さくなるように移動するか、または相互間の距離が大きくなるように移動することができるように構成される、請求項1に記載の電池セル充放電装置。
【請求項9】
前記第1側面部は、前記下部冷却ファン及びPCBに電源を供給するための端子ピンを含み、
前記第1側面部及び前記第2側面部は、前記複数の電池セルの正極リード及び負極リードと結合するグリッパーを含む、請求項8に記載の電池セル充放電装置。
【請求項10】
前記上部冷却ファンは、
前記複数の電池セルのうちで両側の最外側に配置された電池セルに隣接した上部で前記電池セルの全長方向に沿って2列に配置され、
前記複数の電池セルが排出する熱エネルギーを前記複数の電池セルが装着された前記トレイの外側に排出する、請求項1に記載の電池セル充放電装置。
【請求項11】
前記トレイは、上下方向に積層される複数のトレイを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の電池セル充放電装置。
【請求項12】
前記トレイは、それぞれのトレイに装着された前記電池セルの熱エネルギーが下部冷却ファンからの空気によって上方に移動することができるように、熱移動通路が形成されている、請求項11に記載の電池セル充放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年11月19日付の韓国特許出願第10-2021-0160235号及び2022年11月17日付の韓国特許出願第10-2022-0154858号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は下部冷却ファンを含む電池セル充放電装置に関するものである。具体的には、電池セルを充放電する過程で電池セルの過熱を防止するように下部冷却ファンを含む電池セル充放電装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
充放電可能なリチウム二次電池は、ワイヤレスモバイル機器(wireless mobile device)または身体に着用するウェアラブル機器(wearable device)のエネルギー源として広範囲に使われているだけではなく、大気汚染を引き起こす既存のガソリン車両及びディーゼル車両に対する代案として提示される電気自動車、ハイブリッド電気自動車などのエネルギー源としても使われている。
【0004】
前記リチウム二次電池は、電池ケースの素材及び形態によって、金属缶に電極組立体を内蔵する円筒型電池セル及び角型電池セル、並びにラミネートシートからなる電池ケースに電極組立体を内蔵するパウチ型電池セルに分類することができ、前記パウチ型電池セルは形態変形が自由であり、エネルギー密度が高い利点がある。
【0005】
リチウム二次電池は、電極板を製造して分離膜とともに積層または巻き取って電極組立体を製造する極板工程、及び前記電極組立体を電池ケースに収納し、電解液を注液した後、密封する組立工程によって製造される。このように組み立てられたリチウム二次電池は、充放電過程及びエイジング過程などを含む化成工程によって不良製品を選別し、性能を向上させることができる。
【0006】
前記充放電過程のために、複数の電池セルがトレイに装着された状態で充放電ジグに配置されて充電及び放電を繰り返し遂行する過程を経ることになる。
【0007】
リチウム二次電池は充電及び放電の過程で発熱する。これは電池の性能を低下させる原因となり得るので、電池セルの上部に冷却ファンを配置する構造を用いた。しかし、このような構造では、上昇する高温の気体が下降することによって対流が発生するので、電池セルの冷却効果が低い、という問題がある。
【0008】
これに関連して、特許文献1は充放電装置に関するものであり、すべての電池セルの温度を測定して電池セルの間の温度偏差を容量計算の際に考慮することができ、非接触式温度センサー部を用いることで、電池セルに影響を与えずに早い温度測定が可能である。
【0009】
特許文献1は、電池セルの温度偏差を減らすための冷却ファンを備え、前記冷却ファンの風向及び出力を調節することができるが、前記冷却ファンが電池セルを収納したトレイの上部に設けられて直下方の二次電池に対して送風するように配置されるので、電池セルが排出する熱い空気が外部に排出されず、内部で循環する、という問題がある。
【0010】
特許文献2は、電池セルの活性化工程の際、電池セルを充放電するための二次電池の充放電装置に関するものであり、二つ以上のトレイのそれぞれに搭載される電池セルが同時に充放電できるように、トレイが相互積層された状態で電池セルを充放電させ、電池セルと接続される充放電接続モジュールに備えられる第1冷却部材、及びトレイに搭載された電池セルの上部側に位置する第2冷却部材を含む構成を開示している。
【0011】
特許文献2は充放電される電池セルを冷却して電池セルの温度を調節するための冷却部材を含んでいるが、第1冷却部材は電池セルの側面の方向に空気を送風し、第2冷却部材は電池セルの下方に空気を送風する。
【0012】
特許文献2は垂直方向に積層された二つ以上のトレイの側面のうち下部及び上面のそれぞれに冷却部材が配置された構造であり、冷却部材が排出した空気が直角を成して互いに会って衝突し易い構造である。よって、加熱された空気を容易に排出しにくい形態である。
【0013】
このように、複数の電池セルをトレイに装着し、充電及び放電を遂行する電池セル充放電装置において電池セルが排出する熱い空気を効率的に排出して電池セルの温度偏差を減らすことができる技術に対する必要性が高いのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国公開特許第2020-0078207号公報
【特許文献2】韓国登録特許第2089264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであり、電池セルの充放電過程で加熱された空気を効率的に排出し、電池セルの温度偏差を管理することができる電池セル充放電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するための本発明による電池セル充放電装置は、複数の電池セルが装着されるトレイと、前記トレイに配置される複数の下部冷却ファンと、前記電池セル及び前記下部冷却ファンに電源を供給するための端子を含む電源ジグと、前記トレイの上部に配置される上部冷却ファンとを含むことができる。
【0017】
前記電池セルの温度を測定する温度センサーをさらに含むことができる。
【0018】
前記温度センサーの温度情報を収集し、前記下部冷却ファンの速度を制御するPCBをさらに含むことができる。
【0019】
前記PCBは、前記温度センサーから得た複数の電池セルの温度情報を上位サーバーに伝送することができる。
【0020】
前記電源ジグの端子ピンは前記トレイと連結されることができる。
【0021】
前記電池セルは全長方向の両端から正極リード及び負極リードがそれぞれ突出するパウチ型電池セルであり、前記下部冷却ファンは、前記電池セルの全長方向の両端のそれぞれ及び前記電池セルの全長方向の中心部に配置されることができる。
【0022】
前記下部冷却ファンは前記電池セルに向かって配置されて上昇する気流を作り、前記上部冷却ファンは上昇した空気を排出させることができる。
【0023】
前記電源ジグは、上面に前記トレイが配置されるベース部と、前記電池セルの正極リード及び負極リードのそれぞれと対向するように配置される第1側面部及び第2側面部とを含み、前記第1側面部と第2側面部とは相互間の距離が小さくなるように移動するか、または相互間の距離が大きくなるように移動することができるように構成されることができる。
【0024】
前記第1側面部は、下部冷却ファン及びPCBに電源を供給するための端子ピンを含み、前記第1側面部及び第2側面部は、複数の電池セルの正極リード及び負極リードと結合するグリッパーを含むことができる。
【0025】
前記上部冷却ファンは、前記複数の電池セルのうちで両側の最外側に配置された電池セルに隣接した上部で電池セルの全長方向に沿って2列に配置され、前記複数の電池セルが排出する熱エネルギーを前記複数の電池セルが装着されたトレイの外側に排出することができる。
【0026】
前記トレイは、上下方向に積層される複数のトレイを含むことができる。
【0027】
前記トレイは、それぞれのトレイに装着された電池セルの熱エネルギーが下部冷却ファンからの空気によって上方に移動することができるように、熱移動通路が形成されることができる。
【0028】
また、本発明は、前記課題の解決手段を多様に組み合わせた形態としても提供することが可能である。
【発明の効果】
【0029】
以上で説明したように、本発明による電池セル充放電装置は、下部冷却ファンによって空気が上昇し、上昇した空気は上部冷却ファンによって電源ジグの外側に排出されることができるので、電池セルを効率的に冷却することができる。
【0030】
また、温度センサーを電池セルに隣接して配置することで、電池セルの温度を正確に測定し、電池セルの間の温度偏差を減らすことができる。
【0031】
また、一つの電池セルに少なくとも3個以上の冷却ファンが配置され、冷却ファンの個別的な温度制御が可能であるので、一つの電池セル内でも温度偏差が発生することを最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施例による電池セル充放電装置の正面図である。
図2】第2実施例による電池セル充放電装置の分解斜視図である。
図3】第2実施例による電池セル充放電装置の正面図である。
図4】電池セル充放電装置の電源ジグの移動の前及び後を示す正面図である。
図5】第2実施例による電池セル充放電装置の平面図である。
図6】第3実施例による電池セル充放電装置の正面図である。
図7】電源ジグの一部の正面図及び側面図である。
図8】トレイの一部の正面図及び側面図である。
図9】温度記録計で測定したパウチ型電池セルの平均温度グラフである。
図10】温度センサーで測定したパウチ型電池セルの平均温度グラフである。
図11】比較例によって温度センサーで測定したパウチ型電池セルの温度分布を示すグラフである。
図12】実施例によって温度センサーで測定したパウチ型電池セルの温度分布を示すグラフである。
図13】参考例及び比較例によるシミュレーション結果を示すグラフである。
図14】参考例及び実施例によるシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただし、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0034】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0035】
また、構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用可能であり、特定の発明に限定されない。
【0036】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0037】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって「または」は、別に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「AまたはBを含む」はAを含むか、Bを含むか、またはA及びBの両者を含む3種の場合を意味する。
【0038】
本発明を図面に基づいて詳細な実施例と一緒に説明する。
【0039】
図1は第1実施例による電池セル充放電装置の正面図である。
【0040】
図1を参照すると、本発明による電池セル充放電装置は、複数の電池セル10が装着されるトレイ100、トレイ100に配置される複数の下部冷却ファン210、電池セル10及び下部冷却ファン210に電源を供給するための端子を含む電源ジグ300、及びトレイの上部に配置される上部冷却ファン220を含む。
【0041】
リチウム二次電池の組立の後、電池の性能を向上させる活性化過程、及び電池セルの性能検査過程などで電池セルの充放電を実施する必要がある。このとき、本発明のような電池セル充放電装置を使うことができる。
【0042】
電池セルを充放電する過程で電池セルの温度が上がる発熱現象が発生することができる。これは、電池セルの性能を低下させる原因になる。したがって、電池セル充放電装置は、高温の電池セルの温度を冷却するための下部冷却ファン及び上部冷却ファンを備えている。
【0043】
下部冷却ファン210は電池セル10に向けて空気を噴射することで上昇気流を生成する。このように上昇した空気が再び下降することを防止するために、上部冷却ファン220は電源ジグ300と対面しないように配置され、上昇した空気をトレイ及び電源ジグの外に排出させる気流を作る。
【0044】
このように加熱された空気を上昇させて排出させることができるので、加熱された空気が再び下降して電池セルの温度を上げる問題を防止することができる。
【0045】
電源ジグ300は、下部冷却ファン210及びPCB(Printed Circuit Board、プリント基板)160に電源を供給するための端子ピン330と、電池セル10を充放電するために電池セル10の電極リード11と結合されるグリッパー340とを含む。
【0046】
上部冷却ファン220の作動のための電源は、電源ジグ300の他に別に配置される電源を介して供給することができる。
【0047】
図2は第2実施例による電池セル充放電装置の分解斜視図であり、図3は第2実施例による電池セル充放電装置の正面図である。
【0048】
図2及び図3を参照すると、本発明による電池セル充放電装置は、電池セル10の温度を測定する温度センサー150をさらに含む。また、温度センサーの温度情報を収集し、下部冷却ファン210の速度を制御するPCB160をさらに含む。
【0049】
温度センサー150はすべての電池セル10の全長方向(x)の両端部にそれぞれ位置し、電池セル10と密着するように配置されることができるので、電池セル10の温度変化を実時間で正確に測定することができる。
【0050】
また、温度センサー150は電池セルにおいて一番激しく発熱する部分である電極タブ及び電極リードに隣接して配置されるので、電池セルの最高温度が基準温度を超えないように管理することができる。
【0051】
また、すべての電池セルに隣接して温度センサーが配置されるので、電池セルのうちで温度偏差が発生したことをセンシングした場合、温度偏差が発生した電池セルの温度を平均温度になるように下部冷却ファンの速度を調節することができる。よって、電池セルの間に温度偏差が発生する場合、これを早く調節することができる。
【0052】
具体的には、本発明は、トレイの全体部分にかけて複数の下部冷却ファンが配置されているので、温度が高い電池セルの下部にある下部冷却ファンの速度を速くし、温度が低い電池セルの下部にある下部冷却ファンの速度は遅く制御することで、すべての電池セルの温度が均一になるように管理することができる。
【0053】
また、電池セルは全長方向(x)の両端から正極リード及び負極リードがそれぞれ突出するパウチ型電池セルであり、下部冷却ファン210は電池セル10の全長方向(x)の両端のそれぞれと前記電池セルの全長方向(x)の中心部に配置される。よって、一つの電池セル内でも温度偏差が発生する場合、下部冷却ファンの速度を調節することで、単一の電池セル内で温度偏差が発生することを防止することができる。
【0054】
一具体例で、温度センサー150はトレイ100の上面に付着されることができるので、温度センサーが電池セルの温度を正確に測定するのに邪魔にならないように、下部冷却ファンと温度センサーとが垂直方向(y)に重畳しないように配置されることができる。
【0055】
また、トレイ100の上面には電池セル10が装着されるので、電池セル10が下部冷却ファン210の動作に障害物にならないように、電池セルと下部冷却ファンとの間に離隔空間が形成されることができる。前記離隔空間には網状構造体170が配置されることで、下部冷却ファンから噴射される冷却風が上昇するのに邪魔にならないようにすることができる。
【0056】
PCB160は、温度センサー150から得た複数の電池セルの温度情報を上位サーバーに伝送することができる。この際、無線通信を介して伝送することができる。
【0057】
図4は電池セル充放電装置の電源ジグの移動の前及び後を示す正面図である。
【0058】
図4を参照すると、電源ジグ300は、上面にトレイ100が配置されるベース部311、及び電池セルの正極リード及び負極リードのそれぞれと対向するように配置される第1側面部310及び第2側面部320を含み、第1側面部310と第2側面部320とは相互間の距離が小さくなるように移動するか、または相互間の距離が大きくなるように移動することができる形態になることができる。
【0059】
第1側面部310は、下部冷却ファン210及びPCB160に電源を供給するための端子ピン330を含み、第1側面部310及び第2側面部320は複数の電池セル10の正極リード及び負極リードと結合するグリッパー340を含む。また、前記複数の電池セルの充放電のための電源が第1側面部及び第2側面部を介して供給されることができ、グリッパーが正極リード及び負極リードと結合した状態で充放電を遂行することができる。一方、複数の電池セルが安定的に充放電されるように、前記電源は補助電源をさらに含むことができる。
【0060】
具体的には、第1側面部310と第2側面部320とが相互間の距離が小さくなるように移動することで、グリッパー340が電極リード11と結合して電池セルを充放電することができ、端子ピン330がトレイ100と連結されることで、下部冷却ファン210及びPCB160に電源を供給することができる。
【0061】
図5は第2実施例による電池セル充放電装置の平面図である。したがって、図5に表示された参照符号は図2及び図3に表示された参照符号と同じ構成に相当する。
【0062】
図5を参照すると、電源ジグは、電池セルの長軸方向(x)の両端のそれぞれに配置される第1側面部310及び第2側面部320を含み、複数の電池セル10は温度センサー150と密着するようにトレイに装着されている。
【0063】
トレイに配置された下部冷却ファン210は電池セル10に向かって配置されるので、上昇する気流を作る。上部冷却ファン220はトレイの外周辺の上部またはトレイの外周辺の外側上部に配置され、複数の電池セル10の反対方向の下側に向かうように配置される。したがって、上部冷却ファンが作動すると、下部冷却ファンによって上昇した空気をトレイの外側に排出させることができる。
【0064】
具体的には、上部冷却ファン220は複数の電池セル10のうち両側の最外側に配置された電池セルに隣接した上部で電池セルの全長方向(x)に沿って2列に配置され、複数の電池セル10が排出する熱エネルギーを、図5の点線矢印の方向のように、複数の電池セル10が装着されたトレイの外側に排出する。
【0065】
したがって、トレイに装着された複数の電池セルの冷却効果が向上することができる。
【0066】
図6は第3実施例による電池セル充放電装置の正面図である。
【0067】
図6を参照すると、電池セル充放電装置は、上下方向に積層される複数のトレイ100を含む形態を有する。
【0068】
複数のトレイ100のそれぞれの上部には充放電のための複数の電池セル10が配置され、トレイ100には下部冷却ファン210及びPCB160が配置される。最上端に位置するトレイに装着された電池セルの上部には複数の上部冷却ファン220が配置される。
【0069】
複数のトレイが積層されるように配置されるので、電源ジグの第1側面部310の高さ及び第2側面部320の高さも高くなるが、第1側面部310と第2側面部320とはトレイ100に近くなるかまたは遠ざかるように移動する。
【0070】
第1側面部310は、それぞれのトレイ100に電源を供給するためにトレイ100の側面に結合する複数の端子ピン330を含み、電池セル10の充放電のために電極リードと結合するグリッパー340は上下方向に積層された電池セルの電極リードに対応する位置に配置される。
【0071】
このように、複数のトレイが積層されてもそれぞれのトレイに装着された電池セルの熱エネルギーが下部冷却ファンの空気によって上方に移動することができるように、熱移動通路が形成されることができる。
【0072】
具体的には、トレイは網状構造体から構成されるか、または空気が通過することができる複数の貫通口が形成された形態を有することができる。
【0073】
図7は電源ジグの一部の正面図(a)及び側面図(b)である。
【0074】
図7の(a)は図4のA位置で第1側面部を見たとき、第1側面部の端子ピン330の部分を拡大して示しており、図7の(b)は図7の(a)を側面で見た状態を示している。
【0075】
図7を参照すると、端子ピン330の外側面にボード350が位置し、ボード350の上端には3個の端子331が配置されている。3個の端子331はPCBから得た温度情報を上位サーバーに伝送するための通信端子であり得る。例えば、前記通信端子はRS-232通信のRx線、Tx線、及びGND線であり得る。3個の端子331のそれぞれにはリーノピン361が結合されており、リーノピン361は第1結合面からボード350が付着された面の反対側外面に突出するように端子331と連結されている。
【0076】
ボード350の下端には2個の端子332が配置されている。これらはPCB及び下部冷却ファンに電源を供給するための電源端子である。前記電源端子は、例えば、DC24Vの電源端子とすることができる。端子332のそれぞれにはリーノピン362が結合されており、リーノピン362は第1結合面からボード350が付着された面の反対側外面に突出するように端子332と連結されている。
【0077】
図8はトレイの一部の正面図及び側面図である。
【0078】
図8の(a)は、図4のA位置でトレイ100を見たとき、トレイ100において端子ピン330と結合する部分を拡大して示し、図8の(b)は図8の(a)を側面で見た状態を示している。
【0079】
図8を参照すると、第1側面部がトレイに近くなるように移動すると、端子ピン330のリーノピン361、362はトレイ100の結合部180にあるコネクタ181、182と接触するようになる。すなわち、コネクタ181に図7のリーノピン361が結合することによって電気的に連結されるので、PCBから得た温度情報を上位サーバーに伝送することができる。また、コネクタ182は図7のリーノピン362が結合されて電気的に連結されることで、PCB及び下部冷却ファンに電源を供給することができる。
【0080】
このように、本発明は、複数の電池セルが装着されるトレイに複数の下部冷却ファンが装着されることで、電池セルの間に温度偏差が発生することを防止することができ、前記トレイの上部に上部冷却ファンが装着されることで、上昇した熱い空気をトレイ及び電源ジグの外部に排出することができるので、電池セルの冷却効率を向上させることができる。
【0081】
以下では、本発明の実施例を参照して説明するが、これは本発明のより容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がそれによって限定されるものではない。
【0082】
<温度記録計及び温度センサーを用いた電池セルの温度測定の結果>
20個のパウチ型電池セルの全長方向の両端部のそれぞれに温度記録計を付着し、充放電過程で前記パウチ型電池セルの温度変化を実時間で測定した。
【0083】
前記20個のパウチ型電池セルが装着されるトレイに位置するとともに前記パウチ型電池セルの両端部のそれぞれで前記パウチ型電池セルと密着するように温度センサーを配置し、充放電過程で前記パウチ型電池セルの温度変化を実時間で測定した。
【0084】
前記のように、温度記録計及び温度センサーのそれぞれで測定された温度を互いに比較した。
【0085】
図9は温度記録計で測定したパウチ型電池セルの平均温度グラフであり、図10は温度センサーで測定したパウチ型電池セルの平均温度グラフである。
【0086】
図9及び図10を参照すると、横軸は20個のパウチ型電池セルを示し、縦軸は測定された温度を示す。グラフを構成する複数の線はパウチ型電池セルの温度を7回にかけて測定した結果を示し、各回の充電及び放電の全過程の平均温度を示している。
【0087】
温度記録計で測定した電池セルの平均温度及び温度センサーで測定した電池セルの平均温度の変化推移は同一であることが確認される。
【0088】
温度記録計及び温度センサーで測定した結果で、平均温度差が±1℃以下と現れている。
【0089】
したがって、トレイに設けられた温度センサーを用いて測定したパウチ型電池セルの温度と電池セルに直接付着された温度記録計で測定した結果とはほとんど差がない類似値であることが分かる。
【0090】
したがって、すべての電池セルの外面に温度記録計を付着する過程を省略し、本発明のようにトレイに備えられた温度センサーにパウチ型電池セルを密着させて配置する簡単な過程のみで、温度記録計で測定したものと類似した水準の温度変化推移を得ることができる。
【0091】
<比較例>
トレイの上部にのみ上部冷却ファンを装着し、前記トレイ上に20個のパウチ型電池セルを配置した後、前記パウチ型電池セルに対して充電及び放電を遂行した。
【0092】
前記20個のパウチ型電池セルの正極タブ及び負極タブの付近に温度センサーを付着し、実時間で温度を測定する過程を5回遂行した。
【0093】
前記上部冷却ファンは、前記複数のパウチ型電池セルの上部に一定の間隔で離隔するように、複数の上部冷却ファンを配置し、前記複数のパウチ型電池セルに向けて下方に5m/sの速度で空気を吹くように設置した。
【0094】
図11は比較例によって温度センサーで測定したパウチ型電池セルの温度分布を示すグラフである。
【0095】
<実施例>
トレイの側面に下部冷却ファンを装着し、前記トレイ上に20個のパウチ型電池セルを配置した後、前記パウチ型電池セルに対して充電及び放電を遂行した。
【0096】
前記20個のパウチ型電池セルの正極タブ及び負極タブの付近に温度センサーを付着し、実時間で温度を測定する過程を5回遂行した。
【0097】
前記下部冷却ファンは、前記複数のパウチ型電池セルの両側面に一定の間隔で離隔するように配置し、前記複数のパウチ型電池セルに向けて1m/sの速度で空気を吹くように設置した。
【0098】
図12は実施例によって温度センサーで測定したパウチ型電池セルの温度分布を示すグラフである。
【0099】
図11及び図12を参照すると、前記複数のパウチ型電池セルで発生した熱気が外部に排出されずトレイ内に累積するので、前記パウチ型電池セル及びトレイ内の温度が増加することになる。したがって、図11のグラフは、図12のグラフより相対的に温度が高い電池セルの個数が多い結果を示す。
【0100】
図11の比較例では、20個のパウチ型電池セルの間の温度偏差が39±3℃と測定されて相対的に温度差がひどく現れており、CH1、Ch5、CH11は上部冷却ファンの影響を多く受けて温度が低く測定されたと判断される。
【0101】
図12の実施例では、20個のパウチ型電池セルの間の温度偏差が39±1℃と測定されて相対的に温度差が小さいことが現れている。
【0102】
このように、下方に空気を吹く上部冷却ファンのみを備える場合に比べて、パウチ型電池セルの側面に下部冷却ファンを配置する場合、トレイの内部で空気が循環して全体温度が均一に形成されるので、複数のパウチ型電池セルの間の温度偏差が小さくなることが分かる。したがって、実施例のような下部冷却ファンを備え、追加として複数のパウチ型電池セルから排出する熱をトレイの外側に排出するように上部冷却ファンをさらに備える場合には、パウチ型電池セルの温度増加をもっと抑制し、温度偏差も小さくなることができると予想することができる。
【0103】
<参考例>
前記比較例及び実施例で測定された気流シミュレーションを遂行するために、下記の境界条件及び材料物性を反映してシミュレーションを遂行した。
境界条件
-Analysis Type:Steady State
-Turbulence:SST(Shear Stress Transport)
-Energy:Thermal Energy Model
-Front Inlet:Opening Condition(29℃流入)
-Rear Outlet:Velocity Outlet Condition(0.5m/s)
-Wall:No slip Condition
-Fan:P-Q Curve(Momentum Source)
物性情報
【0104】
【表1】
シミュレーションモデル構成情報
-比較例 節点/要素:40,965,121EA/132,988,707EA
-実施例 節点/要素:39,104,3668EA/146,031,145EA
-格子Type:Tetra、Wedge
-Pre/Post processor:Ansys Meshing 2021R2/CFD Post 2021R2
-Solver:CFX2021R2
【0105】
前記シミュレーション条件による比較例及び実施例のシミュレーション結果を図13及び図14に示した。
【0106】
図13は参考例及び比較例によるシミュレーション結果を示すグラフであり、図14は参考例及び実施例によるシミュレーション結果を示すグラフである。
【0107】
図13を参照すると、トレイの上部に装着された上部冷却ファンから吐き出される空気の平均速度は5m/sと計算され、上部から下部に空気が吹かれてくる構造であるので、空気が先に接するパウチ型電池セルの上部は周辺より相対的に温度が低いことが確認される。
【0108】
パウチ型電池セルの平均温度は34℃として計算され、パウチ型電池セルの間の温度偏差は平均4.2℃であり、最大温度偏差は14.1℃であることが確認された。
【0109】
図14を参照すると、トレイの内部から外部に空気を吹くので、空気がもっと広い面積のパウチ型電池セルと接触して熱伝逹効率を高めることができるが、下部冷却ファンの流量が上部冷却ファンの流量より約6.8倍低くてパウチ型電池セル全体の平均温度が10℃高いものとして計算された。
【0110】
Cell1及びCell20の最高温度が高い理由は、トレイの前端及び後端が塞がっている構造であり、下部冷却ファンの空気がトレイの両端に到達しにくい構造であるので、温度が異常に高く計算されたからである。
【0111】
すなわち、パウチ型電池セルの平均温度は44℃として計算され、パウチ型電池セルの間温度偏差は平均3.2℃であり、最大温度偏差は64.7℃であることが確認された。
【0112】
したがって、本発明は、実施例のように下部冷却ファンを備えることで、気流がトレイの内部から外部に伝達されるように構成されることにより、トレイに装着された電池セルの温度偏差を減らすことができることが分かる。
【0113】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形をなすことが可能であろう。
【符号の説明】
【0114】
10 電池セル
11 電極リード
100 トレイ
150 温度センサー
160 PCB
170 網状構造体
180 結合部
181、182 コネクタ
210 下部冷却ファン
220 上部冷却ファン
300 電源ジグ
310 第1側面部
311 ベース部
320 第2側面部
330 端子ピン
331、332 端子
340 グリッパー
350 ボード
361、362 リーノピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】