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特表2023-553781イソシアネート化合物及びそれを含む接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】イソシアネート化合物及びそれを含む接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/77 20060101AFI20231219BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20231219BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231219BHJP
   C07F 9/09 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 18/46 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08G18/77 060
C09J175/06
C09J11/06
C07F9/09 U
C08G18/10
C08G18/38 078
C08G18/46 084
C08G18/50 075
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522895
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2020122735
(87)【国際公開番号】W WO2022082576
(87)【国際公開日】2022-04-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】シー、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ガオビン
(72)【発明者】
【氏名】ク、ジャオフイ
【テーマコード(参考)】
4H050
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB99
4J034CA02
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CB02
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC09
4J034CD03
4J034CD04
4J034CD06
4J034CD07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034DF27
4J034DF34
4J034DG02
4J034DG28
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB15
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA30
4J034JA42
4J034QB10
4J034QB14
4J034QC03
4J034QC05
4J034RA05
4J034RA07
4J034RA08
4J040EF111
4J040EF281
4J040GA27
4J040HB03
4J040HB19
4J040HB30
4J040JA02
4J040JA09
4J040JA13
4J040JB02
4J040KA23
4J040LA06
4J040LA08
4J040LA11
4J040MA02
4J040MA10
4J040NA06
(57)【要約】
イソシアネートモノマー、イソシアネート付加物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つと、ホスフェート官能性ポリオールとの反応によって得ることが可能か又は得られる、ホスフェート官能基を含有するイソシアネート化合物が提供される。また、イソシアネート化合物を含む接着剤組成物、硬化接着剤組成物、硬化積層体の製造方法、そのように製造された硬化積層体、及び2成分溶剤系接着剤組成物におけるイソシアネート化合物の使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートモノマー、イソシアネート付加物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つと、ホスフェート官能性ポリオールとの反応によって得ることが可能か又は得られる、ホスフェート官能基を含有するイソシアネート化合物。
【請求項2】
前記ホスフェート官能性ポリオールは、式(I)によって表される構造を有し、
【化1】

式中、R、R及びRのそれぞれは独立して水素又は有機基を表すが、ただし、R、R及びRのうちの少なくとも1つは有機基を表し、R、R及びRは合わせて少なくとも2つのヒドロキシル基を含む、請求項1に記載のイソシアネート化合物。
【請求項3】
、R及びRに含まれる前記少なくとも2つのヒドロキシル基は、第一級ヒドロキシル基である、請求項1に記載のイソシアネート化合物。
【請求項4】
、R及びRのうちの1つは、有機基を表し、少なくとも2つのヒドロキシル基を含み、あるいは、R、R及びRのうちの2つは、それぞれ独立して有機基を表し、合わせて少なくとも2つのヒドロキシル基を含み、あるいは、R、R及びRは、それぞれ独立して有機基を表し、合わせて少なくとも2つのヒドロキシル基を含む、請求項1に記載のイソシアネート化合物。
【請求項5】
前記イソシアネートモノマー又は前記イソシアネート付加物は、2つ以上のイソシアネート基を含む、請求項1に記載のイソシアネート化合物。
【請求項6】
接着剤組成物であって、
(A)請求項1に記載のイソシアネート化合物を含むイソシアネートプレポリマーを含むイソシアネート成分と、
(B)少なくとも1つのポリエステルポリオールを含むポリオール成分と、を含む、接着剤組成物。
【請求項7】
前記接着剤組成物は、(C)溶剤を更に含む、請求項6に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記ポリオール成分の前記イソシアネート成分に対する乾燥重量混合比は、100:150~100:5の範囲内である、請求項6に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記溶剤は、有機溶剤であり、好ましくは、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記接着剤組成物の前記ポリオール成分と前記イソシアネート成分との硬化性混合物の反応生成物を含む、請求項6に記載の接着剤組成物から調製される硬化接着剤組成物。
【請求項11】
請求項6に記載の接着剤組成物を使用することによる硬化積層体の製造方法であって、
(a)イソシアネート成分及とポリオール成分とを含む前記接着剤組成物を提供することと、
(b)前記イソシアネート成分と前記ポリオール成分とを接触させて、硬化性混合物を形成することと、
(c)前記硬化性混合物を基材の表面の第1の部分に塗布して、前記硬化性混合物の層を形成することと、
(d)前記硬化性混合物の前記層が前記第1の部分と第2の部分との間に挟まれるように、同じ基材又は異なる基材の表面の前記第2の部分を前記硬化性混合物の前記層と接触させることと、
(e)前記溶剤を蒸発させることか又は前記溶剤が蒸発するのを可能にすることと、
(f)前記硬化性混合物を硬化させることか又は前記硬化性混合物が硬化するのを可能にすることと、を含む、硬化積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化積層体の製造方法を使用することによって調製された硬化積層体。
【請求項13】
基材の表面の第1の部分と、請求項10に記載の硬化接着剤組成物の層と、同じ基材又は異なる基材の表面の第2の部分と、を含む硬化積層体であって、前記硬化接着剤組成物の前記層は、前記第1の部分と前記第2の部分との間に挟まれ、かつ前記第1の部分及び前記第2の部分と接触している、硬化積層体。
【請求項14】
2成分溶剤系接着剤組成物における請求項1に記載のイソシアネート化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イソシアネート化合物に関する。より詳細には、本開示は、ホスフェート官能性イソシアネート化合物、それを含む接着剤組成物、接着剤組成物から調製される物品、及びそれらの製造方法に関する。ホスフェート官能性イソシアネート化合物は、例えば、接着強度、ヒートシール性能、及び耐化学性のうちの1つ以上に関して改善された性能を有する接着剤組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
接着剤組成物は、多種多様な目的に有用である。例えば、接着剤組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、金属、紙、又はセロファン等の基材を一緒に結合して複合フィルム、すなわち、ラミネートを形成するために使用される。様々な積層最終用途における接着剤の使用が一般に知られている。例えば、接着剤は、包装産業において、特に食品包装のために使用されるフィルム/フィルム及びフィルム/ホイル積層体の製造に使用することができる。積層用途で使用される接着剤、すなわち「積層用接着剤」は、全般に、溶剤系、水系、及び無溶剤の3つのカテゴリーに分類することができる。接着剤の性能は、カテゴリーによって、また接着剤が適用される用途によって変わる。
【0003】
溶剤系積層接着剤のカテゴリーには多くの種類がある。1つの特定の種類としては、2成分ポリウレタン系積層接着剤が挙げられる。典型的には、2成分ポリウレタン系積層接着剤は、イソシアネート及び/又はポリウレタンプレポリマーを含む第1の成分と、1つ以上のポリオールを含む第2の成分と、を含む。2つの成分を組み合わせ、それによって接着剤組成物を形成する。溶剤中に担持された接着剤組成物は、次にフィルム/ホイル基材などの基材上に塗布される。塗布された接着剤組成物から溶剤を蒸発させる。次いで、別のフィルム/ホイル基材を他の基材と接触させて、硬化性積層構造体を形成する。ラミネート構造体を硬化させて2つの基材を一緒に結合する。
【0004】
しかしながら、現在の2成分溶剤系積層接着剤のほとんどは、モートンスープを用いたボイルインバッグ(boiling in bag、BIB)試験において不合格であることが判明しており、ホイル/PE及びホイル/RCPPの典型的なホイル系構造を用いた食品包装用途などの用途における使用には適していない。したがって、ホイル系積層構造のために、例えば、接着強度、耐化学性、及び耐熱性のうちの1つ以上に関して改善された性能を有する2成分溶剤系接着剤を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、イソシアネートモノマー、イソシアネート付加物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つと、ホスフェート官能性ポリオールとの反応によって得ることが可能か又は得られる、ホスフェート官能基を含有するイソシアネート化合物を提供する。
【0006】
更なる態様では、本開示は、
(A)本明細書に記載されるイソシアネート化合物を含むイソシアネートプレポリマーを含むイソシアネート成分と、
(B)少なくとも1つのポリエステルポリオールを含むポリオール成分と、を含む、接着剤組成物を提供する。
【0007】
更なる態様では、本開示は、接着剤組成物のポリオール成分とイソシアネート成分との硬化性混合物の反応生成物を含む、本明細書に記載の接着剤組成物から調製された硬化接着剤組成物を提供する。
【0008】
更なる態様では、本開示は、本明細書に記載される接着剤組成物を使用することによる硬化積層体の製造方法であって、
(a)イソシアネート成分及とポリオール成分とを含む接着剤組成物を提供することと、
(b)イソシアネート成分とポリオール成分とを接触させて、硬化性混合物を形成することと、
(c)硬化性混合物を基材の表面の第1の部分に塗布して、硬化性混合物の層を形成することと、
(d)硬化性混合物の層が第1の部分と第2の部分との間に挟まれるように、同じ基材又は異なる基材の表面の第2の部分を硬化性混合物の層と接触させることと、
(e)溶剤を蒸発させることか又は溶剤が蒸発するのを可能にすることと、
(f)硬化性混合物を硬化させることか又は硬化性混合物が硬化するのを可能にすることと、を含む、硬化積層体の製造方法を提供する。
【0009】
更なる態様では、本開示は、上述の方法を使用することによって調製された硬化積層体を提供する。
【0010】
更なる態様では、本開示は、基材の表面の第1の部分と、本明細書に記載される硬化接着剤組成物の層と、同じ基材又は異なる基材の表面の第2の部分と、を含む硬化積層体であって、硬化接着剤組成物の層は、第1の部分と第2の部分との間に挟まれ、かつ第1の部分と第2の部分に接触している、硬化積層体を提供する。
【0011】
更なる態様では、本開示は、2成分溶剤系接着剤組成物における、本明細書に記載のイソシアネート化合物の使用を提供する。
【0012】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0014】
本明細書で開示するとき、「及び/又は」は、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0015】
本明細書で開示するとき、本明細書で言及される全ての百分率は、別段明記されない限り、重量基準であり、温度は℃である。
【0016】
イソシアネート化合物
本明細書で提供されるのは、ホスフェート官能基を含有するイソシアネート化合物であり、本明細書ではホスフェート官能性イソシアネート化合物とも称される。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示のホスフェート官能性イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマー、イソシアネート付加物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つと、ホスフェート官能性ポリオールとの反応によって得ることが可能であり得るか、又は得られ得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、ホスフェート官能性イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマー、イソシアネート付加物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つとホスフェート官能性ポリオールとの溶剤中での反応によって得ることが可能であり得るか、又は得られ得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、ホスフェート官能性ポリオールは、リン酸エステルポリオールであり得る。いくつかの実施形態では、ホスフェート官能性ポリオールは、式(I)によって表される構造を有し得る。
【0020】
【化1】

式中、R、R及びRのそれぞれは独立して水素又は有機基を表すが、ただし、R、R及びRのうちの少なくとも1つは有機基を表し、R、R及びRは合わせて少なくとも2つのヒドロキシル基を含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、「有機基」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素結合及び/又は炭素-水素結合を含む任意の基を指す。式(I)のいくつかの実施形態では、有機基は、任意の有機基であり得る。好適な有機基の例としては、アルキル含有基、アルケニル含有基、シクロアルキル含有基、アリール含有基、アルコキシ含有基、エステル含有基、エーテル含有基、ポリエステル含有基、ポリエーテル含有基、及びこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施形態では、R、R及びRに含まれる少なくとも2つのヒドロキシル基は、好ましくは第一級ヒドロキシル基である。本明細書で使用するとき、「第一級ヒドロキシル」という用語は、それに結合した1個の他の炭素原子のみを有する炭素原子上のヒドロキシル基(-OH)を指す(好ましくは、任意の単一の炭素原子に加えて、それに結合した水素原子のみを有する)。
【0023】
式(I)のいくつかの実施形態では、R、R及びRのうちの1つは、有機基を表し、少なくとも2つのヒドロキシル基(例えば、第一級ヒドロキシル基)を含む。いくつかの実施形態では、R、R及びRのうちの2つは、それぞれ独立して有機基を表し、合わせて少なくとも2つのヒドロキシル基(例えば、第一級ヒドロキシル基)を含む。いくつかの実施形態では、R、R及びRは、それぞれ独立して有機基を表し、合わせて少なくとも2つのヒドロキシル基(例えば、第一級ヒドロキシル基)を含む。
【0024】
本明細書で使用される「イソシアネートモノマー」という用語は、2つ以上のイソシアネート基を含有する任意の化合物である。「芳香族イソシアネート」は、1つ以上の芳香族環を含有するイソシアネートである。「脂肪族イソシアネート」は芳香環を含有していない。
【0025】
本開示による使用に好適なイソシアネートモノマーは、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。本開示による使用に好適な芳香族イソシアネートの例としては、4,4-MDI、2,4-MDI及び2,2’-MDIなどのメチレンジフェニルジポリイソシアネート(「MDI」)の異性体、又はカルボジイミド変性MDI若しくはアロファネート変性MDIなどの変性MDI;2,4-TDI、2,6-TDIなどのトルエン-ジポリイソシアネート(「TDI」)の異性体、1,5-NDIなどのナフタレン-ジポリイソシアネート(「NDI」)の異性体、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本開示による使用に好適な脂肪族ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジポリイソシアネート(「HDI」)の異性体、イソホロンジポリイソシアネート(「IPDI」)の異性体、キシレンジポリイソシアネート(「XDI」)の異性体、メチレン-ビス-(4-シクロヘキシルイソシアネート)(「HMDI」)、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、イソシアネートモノマーは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレン-ビス-(4-シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるジイソシアネートモノマーを含む。
【0026】
本明細書で使用するとき、「イソシアネート付加物」は、過剰量のイソシアネート(例えば、芳香族ジイソシアネート)と、400未満の分子量を有する低分子量グリコール及びポリオールとを反応させることによって調製されるポリイソシアネート付加物であり得る。400未満の分子量を有するグリコール及びポリオールの好適な例としては、ジエチレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコール、トリメチルプロパン(TMP)、グリセロール、及びペンタエリスロトールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、イソシアネート付加物は、2つ以上のイソシアネート基を含み得る。
【0027】
いくつかの実施例では、溶剤は有機溶剤であり得る。そのような系に使用される一般的な有機溶剤としては、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエンなどが挙げられ、これらは全てポリウレタンのイソシアネート基の早すぎる反応を防ぐために水分フリーでなければならない。いくつかの実施形態では、溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、イソシアネートモノマー、イソシアネート付加物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを、過剰量でホスフェート官能性ポリオールと反応させる。いくつかの実施形態では、反応におけるイソシアネートモノマー、イソシアネート付加物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つとホスフェート官能性ポリオールとの間の重量比は、例えば、1:1~20:1、1.2:1~18:1、又は1.5:1~15:1の範囲であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示によるホスフェート官能性イソシアネート化合物は、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は3つの末端イソシアネート基を有するリン酸エステル(例えば、リン酸モノエステル、又はリン酸ジエステル、リン酸トリエステル)であり得る。
【0030】
接着剤組成物
本開示による2成分接着剤組成物は、(A)イソシネート(isocynate)成分及び(B)ポリオール成分を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示による接着剤組成物は、2成分接着剤組成物であり得る。いくつかの実施形態では、本開示による接着剤組成物は、溶剤系であり得る。
【0032】
本明細書で使用するとき、「2成分」という用語は、接着剤組成物が使用前に互いに分離された部分で提供されることを意味する。典型的には、本開示による組成物は、少なくとも、イソシアネート含有プレポリマーを含む第1の成分(本明細書では「イソシアネート成分」又は「NCO成分」とも称される)と、1つ以上のポリオールを含む第2の成分(本明細書では「ポリオール成分」又は「OH成分」とも称される)と、を含む。本開示の例示的な実施形態では、イソシアネート成分及びポリオール成分は、別々に調製され、貯蔵され、輸送され、供給され、例えば、基材の表面に塗布される直前に組み合わされる。
【0033】
本明細書に記載される接着剤組成物のイソシアネート成分及びポリオール成分は、別々に作製され得、所望に応じて、接着剤組成物を使用することが望ましいときまで別々に貯蔵され得ることが企図される。接着剤組成物を使用することが所望される場合、イソシアネート成分及びポリオール成分を互いに接触させて一緒に混合する。これらの2つの成分を接触させると、イソシアネート基がヒドロキシル基と反応してウレタン結合を形成する硬化反応が開始することが企図される。2つの成分を接触させることによって形成される接着剤組成物は、「硬化性混合物」と称され得る。
【0034】
本開示の様々な実施形態では、イソシアネート成分は、イソシアネートプレポリマーを含み得る。イソシアネートプレポリマーは、少なくとも1つのイソシアネートモノマーと、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールとの反応生成物を含み得る。いくつかの実施形態では、イソシアネートプレポリマーは、上述のような本開示のホスフェート官能性イソシアネート化合物を含み得る。
【0035】
本開示の様々な実施形態では、ポリオール成分は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、1つ以上のポリエステルポリオールを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールが実質的にフリーでもよく、又はポリエーテルポリオールの非有効量のみを含んでもよく、又はポリエーテルポリオールがフリーでもよい。
【0036】
本明細書で使用するとき、「実質的にフリー」という用語は、成分、組成物、又は物品の1重量%、0.5重量%、0.25重量%、0.1重量%、0.05重量%、0.01重量%、又は0.001重量%未満である材料の量を指す。「フリー」とは、記載された物質又は成分が検出可能な量でないことを指す。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示による接着剤組成物は、溶剤を更に含む。いくつかの実施形態では、溶剤は、ポリオール成分及びイソシアネート成分のうちの一方又は両方に存在し得る。いくつかの実施例では、溶剤は有機溶剤であり得る。ポリオール成分で使用するのに適した一般的な有機溶剤としては、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエンなどが挙げられ得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示による接着剤組成物は、高反応性アミン開始ポリオール及びリン酸エステルポリオールを含まない。
【0039】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物中のNCO基とOH基の混合モル比は、例えば、1:1超、1.2:1超、1.6:1超、1.8:1超、又は2:1超であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示による接着剤組成物中のポリオール成分のイソシアネート成分に対する乾燥重量混合比は、端点100:150、100:140、100:130、100:120、100:110、100:100、100:90、100:80、100:70、100:60、100:50、100:40、100:30、100:25、100:20、100:15、100:10、及び100:5のうちのいずれか2つを組み合わせることによって得られる数値範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、本開示による接着剤組成物中のポリオール成分のイソシアネート成分に対する乾燥重量混合比は、100:150~100:5、例えば、100:150~100:10、100:150~100:15の範囲内であり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示の接着剤組成物は、ポリウレタン系接着剤組成物であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の接着剤組成物は、積層用接着剤組成物であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、任意選択的に、特定の目的のための1つ以上の追加の補助剤及び/又は添加剤を含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、任意選択的に、接着強度を改善するために1つ以上の接着促進剤を含み得る。接着剤組成物での使用に好適な1つ以上の接着促進剤の例としては、シラン、エポキシ、及びフェノール樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
更なる実施形態では、接着剤組成物は、任意選択的に、1つ以上の鎖延長剤を含み得る。接着剤組成物での使用に好適な1つ以上の鎖延長剤の例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、プロパンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
更なる実施形態では、接着剤組成物は、任意選択的に、1つ以上の触媒を含み得る。接着剤組成物での使用に好適な少なくとも1つの触媒の例としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、酢酸亜鉛、2,2-ジモルホリノジエチルエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、他の助触媒、界面活性剤、強靭化剤、流動調整剤、希釈剤、安定剤、可塑剤、触媒失活剤、分散剤、着色剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の補助剤及び/又は添加剤を更に含み得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、着色剤、例えば、顔料、染料、又はこれらの混合物を含まないか又は着色剤フリーである。
【0048】
ポリオール成分
本開示による接着剤組成物中に含まれるポリオール成分は、少なくとも1つのポリオール及び任意選択的に溶剤を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物に含まれるポリオール成分は、2つ以上のポリオールを含み得る。一般に、ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0050】
本明細書で使用するとき、「ポリオール」という用語は、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物を指す。厳密に2つのヒドロキシル基を有するポリオールは、「ジオール」である。厳密に3つのヒドロキシル基を有するポリオールは「トリオール」である。厳密に4つのヒドロキシル基を有するポリオールは、「テトラオール」である。
【0051】
同じ原子の直鎖中に2つ以上のエステル結合を含有する化合物は、本明細書では「ポリエステル」として知られている。ポリエステル及びポリオールである化合物は、本明細書では「ポリエステルポリオール」として知られている。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、10,000g/molを超えない分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリオールは、少なくとも1.5(すなわち、f≧1.5)のヒドロキシル基官能価を有し得る。
【0052】
本開示による使用に適するポリエステルポリオールとしては、ジオール、また場合によってはポリオール(例えばトリオール、テトラオール)の重縮合物、ジカルボン酸、また場合によってはポリカルボン酸(例えばトリカルボン酸、テトラカルボン酸)又はヒドロキシカルボン酸又はラクトンの重縮合物が挙げられるが、それらに限定されない。ポリエステルポリオールはまた、遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物、又は低級アルコールの対応するポリカルボン酸エステルから誘導され得る。
【0053】
好適なジオールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキサレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、また、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。2を超えるポリエステルポリオール官能価を達成するために、任意選択的に、3の官能価を有するポリオール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼン、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート)が接着剤組成物に含まれ得る。
【0054】
好適なジカルボン酸としては、脂肪酸、芳香族酸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な芳香族酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びテトラヒドロフタル酸が挙げられる。好適な脂肪族酸の例としては、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルコハク酸、及びトリメリット酸が挙げられる。本明細書で使用するとき、「酸」という用語は、当該酸の任意の無水物も含む。更に、安息香酸及びヘキサンカルボン酸などのモノカルボン酸は、最小限にするか又は開示された組成物から排除されるべきである。アジピン酸又はイソフタル酸等の飽和脂肪族及び/又は芳香族酸も本開示による使用に適している。
【0055】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、1つ以上のポリエステルポリオールを含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、例えば、ポリオール成分中のポリエステルポリオールの量は、ポリオール成分の重量に基づいて、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物中のポリオール(複数可)の量は、接着剤組成物の重量に基づいて、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%であり得る。いくつかの実施形態では、接着剤組成物中のポリオール(複数可)の量は、接着剤組成物の重量に基づいて、多くとも70重量%、多くとも60重量%、多くとも55重量%、又は多くとも50重量%であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物中のポリエステルポリオール(複数可)の量は、接着剤組成物の重量に基づいて、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%であり得る。いくつかの実施形態では、接着剤組成物中のポリエステルポリオール(複数可)の量は、接着剤組成物の重量に基づいて、多くとも70重量%、多くとも60重量%、多くとも55重量%、又は多くとも50重量%であり得る。
【0059】
本開示による接着剤組成物に適用されるポリオールの平均分子量には、特別な制限はない。本開示の一実施形態では、ポリエステルポリオールは、端点120、200、500、800、900、1000、1200、1500、1800、2000、2200、2500、2800、3000、3200、3500、3800、4000、4200、4500、4800、5000、5200、5500、5800、6000、6200、6500、6800、7000、7200、7500、7800、8000、8200、8500、8800、9000、9200、9500、9800、及び10000g/molのうちのいずれか2つを組み合わせることによって得られる数値範囲内の分子量を有し得る。
【0060】
本開示による接着剤組成物に適用されるポリオールの平均官能価には、特別な制限はない。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールが実質的にフリーでもよく、又はポリエーテルポリオールの非有効量のみを含んでもよく、又はポリエーテルポリオールフリーでもよい。
【0062】
同じ原子の直鎖中に2つ以上のエーテル結合を含有する化合物は、本明細書では「ポリエーテル」として知られている。ポリエーテル及びポリオールである化合物は、「ポリエーテルポリオール」である。いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、10,000g/molを超えない分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、少なくとも1.5(すなわち、f≧1.5)のヒドロキシル基官能価を有し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、ホスフェート官能性ポリオール、例えば、上述のようなホスフェート官能性ポリオールが実質的にフリーでもよく、又はホスフェート官能性ポリオールの非有効量のみを含んでもよく、又はホスフェート官能性ポリオールがフリーでもよい。
【0064】
本明細書で使用するとき、「溶剤」という用語は、いかなる化学反応も引き起こすことなく、1つ以上の固体、液体、又は気体状の材料を単に溶解させる機能を有する有機及び無機液体を指す。ポリオール成分に使用される溶剤は、いかなる化学反応も引き起こすことなく、成分中に含まれる1つ以上の材料を溶解するのに好適な任意の溶剤であり得る。いくつかの実施例では、溶剤は有機溶剤であり得る。ポリオール成分での使用に好適な一般的な有機溶剤としては、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエンなどが挙げられ得、これらは全てポリウレタンのイソシアネート基の早すぎる反応を防ぐために水分フリーでなければならない。
【0065】
ポリオール成分中の溶剤の量に特別な制限はない。いくつかの実施形態では、例えば、ポリオール成分中の溶剤の量は、ポリオール成分の重量に基づいて、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%であり得る。
【0066】
ポリオール成分は、任意選択的に、特定の目的のための1つ以上の追加の補助剤及び/又は添加剤を含み得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、任意選択的に、接着強度を改善するために1つ以上の接着促進剤を含み得る。ポリオール成分での使用に好適な1つ以上の接着促進剤の例としては、シラン、エポキシ、及びフェノール樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
更なる実施形態では、ポリオール成分は、任意選択的に、1つ以上の鎖延長剤を含み得る。ポリオール成分での使用に好適な1つ以上の鎖延長剤の例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、プロパンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
更なる実施形態では、ポリオール成分は、任意選択的に、1つ以上の触媒を含み得る。ポリオール成分での使用に好適な少なくとも1つの触媒の例としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、酢酸亜鉛、2,2-ジモルホリノジエチルエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、他の助触媒、界面活性剤、強靭化剤、流動調整剤、希釈剤、安定剤、可塑剤、触媒失活剤、分散剤、着色剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の補助剤及び/又は添加剤を更に含み得る。
【0071】
イソシアネート成分
本開示による接着剤組成物中に含まれるイソシアネート成分は、イソシアネートプレポリマー及び任意選択的に溶剤を含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、イソシアネートプレポリマーは、イソシアネートモノマー、イソシアネート付加物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つとホスフェート官能性ポリオールとの溶剤中での反応によって得ることが可能か又は得られる生成物を含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、イソシアネートプレポリマーは、本明細書に記載されるようなホスフェート官能性イソシアネート化合物を含み得る。本開示による接着剤組成物中に含まれる場合、ホスフェート官能性イソシアネート化合物は、「ホスフェート官能性イソシアネート硬化剤」とも称され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分中のホスフェート官能性イソシアネート化合物の量に特別な制限はない。いくつかの実施形態では、例えば、イソシアネート成分中のイソシアネートプレポリマーの量は、イソシアネート成分の重量に基づいて、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%であり得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、記載される接着剤組成物中のイソシアネートプレポリマーの量は、接着剤組成物の重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも8重量%、少なくとも10重量%、少なくとも11重量%、又は少なくとも12重量%であり得る。いくつかの実施形態では、記載される接着剤組成物中のイソシアネートプレポリマーの量は、接着剤組成物の重量に基づいて、多くとも40重量%、多くとも30重量%、多くとも25重量%、多くとも20重量%、多くとも18重量%、多くとも17重量%、又は多くとも16重量%であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物中のホスフェート官能性イソシアネートプレポリマーの量は、接着剤組成物の重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも8重量%、少なくとも10重量%、少なくとも11重量%、又は少なくとも12重量%であり得る。いくつかの実施形態では、ホスフェート官能性イソシアネートプレポリマーは、接着剤組成物の重量に基づいて、多くとも40重量%、多くとも30重量%、多くとも25重量%、多くとも20重量%、多くとも18重量%、多くとも17重量%、又は多くとも16重量%を含み得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、イソシアネートプレポリマーは、少なくとも1つのイソシアネートモノマーと、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールとの反応物によって得ることが可能か又は得られる生成物を含み得る。
【0078】
イソシアネートモノマーの好適な例は、「イソシアネート化合物」の部分で上述したとおりである。
【0079】
ポリエステルポリオールの好適な例は、「ポリオール成分」の部分で上述したとおりである。
【0080】
ポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシドの重付加生成物、及びこれらの共付加及びグラフト化生成物、並びに多価アルコールの縮合によって得られるポリエーテルポリオール、又はこれらの混合物であり得る。ポリエーテルポリオールの例としては、ポリプロピレングリコール(「PPG」)、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリブチレングリコール、及びポリテトラメチレンエーテルグリコール(「PTMEG」)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0081】
本開示の一実施形態では、ポリエーテルポリオールは、端点120、200、500、800、900、1000、1200、1500、1800、2000、2200、2500、2800、3000、3200、3500、3800、4000、4200、4500、4800、5000、5200、5500、5800、6000、6200、6500、6800、7000、7200、7500、7800、8000、8200、8500、8800、9000、9200、9500、9800、及び10000g/molのうちのいずれか2つを組み合わせることによって得られる数値範囲内の分子量を有し得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、ポリエーテルポリオールを含まない。
【0083】
イソシアネート基を有する化合物、例えばイソシアネート成分のイソシアネートプレポリマーは、パラメータ「%NCO」によって特徴付けることができ、それは化合物の重量に基づく重量でのイソシアネート基の量である。パラメータ%NCOは、ASTM D2572-97(2010)の方法によって測定される。開示されたイソシアネート成分は、少なくとも3重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも7重量%の%NCOを有し得る。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、30重量%、又は25重量%、又は22重量%、又は20重量%を超えない%NCOを有し得る。
【0084】
イソシアネート成分は、任意選択的に、特定の目的のための1つ以上の追加の補助剤及び/又は添加剤を含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、任意選択的に、接着強度を改善するために1つ以上の接着促進剤を含み得る。イソシアネート成分での使用に好適な1つ以上の接着促進剤の例としては、シラン、エポキシ、及びフェノール樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
更なる実施形態では、イソシアネート成分は、任意選択的に、1つ以上の鎖延長剤を含み得る。イソシアネート成分での使用に好適な1つ以上の鎖延長剤の例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、プロパンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
更なる実施形態では、イソシアネート成分は、任意選択的に、1つ以上の触媒を含み得る。イソシアネート成分での使用に好適な少なくとも1つの触媒の例としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、酢酸亜鉛、2,2-ジモルホリノジエチルエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、他の助触媒、界面活性剤、強靭化剤、流動調整剤、希釈剤、安定剤、可塑剤、触媒失活剤、分散剤、着色剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の補助剤及び/又は添加剤を更に含み得る。
【0089】
接着剤組成物の適用
更なる態様では、本開示は、硬化接着剤組成物を提供する。
【0090】
いくつかの実施形態では、硬化接着剤組成物は、本明細書に記載される接着剤組成物から調製され得る。いくつかの実施形態では、硬化接着剤組成物は、本明細書に記載されるポリオール成分とイソシアネート成分との硬化性混合物の反応生成物を含み得る。いくつかの実施形態では、硬化接着剤組成物は、本明細書に記載される接着剤組成物のイソシアネート成分とポリオール成分とを接触させて硬化性混合物を形成し、硬化性混合物を硬化させることによって調製され得る。いくつかの実施形態では、硬化接着剤組成物は、層の形態であり得る。いくつかの実施形態では、硬化接着剤組成物は、積層体内に含まれ得る。
【0091】
更なる態様では、本開示は、本明細書に記載される接着剤組成物を使用することによる硬化積層体の製造方法を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、本方法は、記載されるようなイソシアネート成分及びポリオール成分を含む接着剤組成物を提供することを含み得る。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分及びポリオール成分のそれぞれは、液体又は固液混合物中に存在し得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、本方法は、イソシアネート成分とポリオール成分とを接触させて硬化性混合物を形成することを含み得る。いくつかの実施形態では、混合中、水分汚染を回避するために窒素が適用される。いくつかの実施形態では、全ての原料の水分含有量は、500ppm未満に制御される。
【0094】
いくつかの実施形態では、本方法は、硬化性混合物の層を形成するために、基材(例えば、フィルム)の表面の第1の部分上に硬化性混合物を適用することを含み得る。本明細書で使用するとき、「基材の表面の第1の部分」は、表面の一部又は全体を指し得る。いくつかの実施形態では、表面の第1の部分は、表面の一部又は表面全体であり得る。いくつかの実施形態では、硬化性混合物の乾燥被覆重量は、1.0~5.0g/m、1.5~5.0g/m、2.0~5.0g/m、2.0~4.0g/m、2.5~4.5g/m、2.5~3.5g/m、又は3.0~4.0g/mであり得る。いくつかの実施形態では、基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、金属、紙、セロファン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、基材は、フィルムの形態であり得る。
【0095】
「フィルム」は、0.5mm以下の厚さを有する材料の層を指し得る。いくつかの実施形態では、フィルムは、1つの寸法が0.5mm以下であり、他の2つの寸法が両方とも1cm以上である構造体であり得る。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、ポリマー又はポリマーの混合物から作製されるフィルムである。いくつかの実施形態では、フィルムに適用される硬化性混合物の層の厚さは1~5μmである。フィルムの例としては、紙、織布及び不織布、金属ホイル、ポリマー、並びに金属被覆ポリマーが挙げられ得る。フィルムは、任意選択的に、その上に画像がインクで印刷される表面を有する。インクは接着剤組成物と接触してもよい。いくつかの実施形態では、フィルムは、ポリマーフィルム及び金属被覆ポリマーフィルムであり、より好ましくはポリマーフィルムである。
【0096】
いくつかの実施形態では、本方法は、硬化性混合物の層が第1の部分と第2の部分との間に挟まれて未硬化積層体を形成するように、基材(例えば、フィルム)の表面の第2の部分を硬化性混合物の層と接触させることを含み得る。本明細書で使用するとき、「基材の表面の第2の部分」は、表面の一部又は全体を指し得る。一般に、第2の部分は、上述のように第1の部分とは異なる。いくつかの実施形態では、第1の部分及び第2の部分は、同じか又は異なる表面上の部分であり得る。いくつかの実施形態では、第1の部分及び第2の部分は、同じか又は異なる基材の同じか又は異なる表面の部分であり得る。いくつかの実施形態では、表面の第1の部分は、表面の一部又は表面全体であり得る。いくつかの実施形態では、表面の第2の部分は、表面の一部又は表面全体であり得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、未硬化積層体は、接着剤組成物中に存在する未反応ポリイソシアネート基の量が、ポリオール成分との接触前のイソシアネート成分中に存在するポリイソシアネート基の量と比較してモル基準で、少なくとも50%、又は少なくとも75%、又は少なくとも90%であるときに作製され得る。未硬化積層体は、硬化性混合物中に存在する未反応ポリイソシアネート基の量が、100%未満、又は97%未満、又は95%未満であるときに更に作製され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、本方法は、溶剤を蒸発させることか又は溶剤が蒸発するのを可能にすることを含み得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、本方法は、硬化性混合物を硬化させることか又は硬化性混合物が硬化するのを可能にすることを含み得る。いくつかの実施形態では、未硬化積層体は、25℃~60℃の好適な硬化温度で硬化されてもよい。いくつかの実施形態では、未硬化積層体を加熱して、硬化反応を促進することができる。いくつかの実施形態では、未硬化積層体は、例えば加熱されていてもされていなくてもよいニップローラに通すことによって、加圧することができる。
【0100】
更なる態様では、本開示は、上述の方法を使用することによって調製された硬化積層体を提供する。
【0101】
更なる態様では、本開示は、基材の表面の第1の部分と、本明細書に記載される硬化接着剤組成物から調整される硬化接着剤組成物の層と、同じ基材又は異なる基材の表面の第2の部分と、を含む硬化積層体であって、硬化接着剤組成物の層は、第1の部分と第2の部分との間に挟まれ、かつ第1の部分及び第2の部分に接触している、硬化積層体を提供する。
【0102】
いくつかの実施形態では、基材は、フィルムの形態であり得る。いくつかの実施形態では、硬化積層体は、上述の硬化積層体を製造する方法を使用することによって調製され得る。
【0103】
更なる態様において、本開示は、2成分ポリウレタン系接着剤組成物における本開示によるホスフェート官能性イソシアネート化合物の使用を提供する。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、溶剤系であり得る。いくつかの実施形態では、ホスフェート官能性イソシアネート化合物は、接着剤組成物のイソシアネート成分中に含まれ得る。
【実施例
【0104】
次に、本開示のいくつかの実施形態を以下の実施例において説明するが、全ての部及び百分率は、特に指定しない限り、重量による。しかしながら、本開示の範囲は、当然ながら、これらの実施例に示される配合に限定されない。むしろ、実施例は単に本開示の発明に関する。
【0105】
1.原料
実施例で使用された原料の情報を以下の表1に示す:
【0106】
【表1】
【0107】
2.合成手順及びサンプル調製
本発明の実施例のホスフェート官能性イソシアネート化合物を、表2に列挙される配合に従って合成した。Desmodur 2460M及びMor-free 88-138を1000mLガラス反応器内に投入し、表2に示される配合物のとおりに注意深く混合した。全ての原料を供給した後、加熱を開始した。原料の混合物の温度が60℃付近に達したとき、回転速度を50RMに上げた。系を水分から保護するために、全プロセス中に窒素を適用した。反応温度が約80℃~85℃に達したとき、冷却プロセスを開始し、反応を80℃~85℃で2時間維持した。NCO値が理論値に達したとき、反応器を可能な限り早く冷却した。系を60℃~70℃に冷却し、酢酸エチルをガラス反応器内に投入し、回転速度を50RMで20分間維持した。次いで、最終生成物を、窒素で保護した十分に密封されたスチールボトルに入れた。
【0108】
【表2】
【0109】
実施例で使用したNCO成分及びOH成分は以下のとおりである。
NCO成分:ホスフェート官能性イソシアネートSR-F1(SR-F2又はSR-F3)及びDowの現在市販されている共反応物Catalyst Fを、試験用のNCO成分として選択した。
OH成分:Dowの現在のGP溶剤系積層接着剤Adcote 545及びローカルベンダーであるHuideの酢酸エチル中ポリエステル溶液8302-3をOH成分として使用した。
【0110】
本発明の実施例及び比較例の接着剤組成物を、表3に列挙される配合に従って調製した。
【0111】
適用前に、NCO成分及びOH成分を一緒に混合した。全撹拌プロセスの間、系を水分から保護するために窒素を適用した。全ての原料の含水量は、500ppm未満であるものとする。
【0112】
【表3】
【0113】
被覆及び積層プロセス:
被覆及び積層プロセスは、SDC Labo-Combi 400機で行われた。全積層プロセスの間、100m/分の速度でニップ温度を70℃に維持した。乾燥被覆重量を3~3.5g/mに制御した。次いで、積層フィルムを室温(23℃~25℃)又はオーブン内で硬化させた後、1週間試験した。
【0114】
3.試験方法:
T型剥離(90°)接着強度(手で補助したT型剥離)
硬化後、Instron 5943機における250mm/分のクロスヘッド速度でのT型剥離試験のために、積層したフィルムを15mm幅のストリップに切断した。3つのストリップを試験して、平均値を取得した。試験中、ストリップの尾部をわずかに指で引っ張り、尾部が剥離方向に対して90°のままであることを確かめた。
【0115】
ヒートシール強度:
積層体を、Brugger Companyから入手可能なHSG-C Heat-Sealing Machine中、140℃のシール温度及び300Nの圧力で1秒間ヒートシールし、次いで、冷却し、ヒートシール強度試験のために、Instron Corporationから入手可能な5940 Series Single Columnmn Table Top Systemを使用して、250mm/分のクロスヘッド速度下で15mm幅のストリップに切断した。各サンプルの3つのストリップを試験し、平均値を計算した。結果をN/15mm単位とした。
【0116】
耐化学性(モートンスープを詰めたボイルインバッグ):
硬化した積層フィルムを8×12インチのサイズに切断し、次いで折り畳んで、140℃及び300N/15mm下で1秒間、より大きな長方形の底部及び側部をヒートシールした。次いで、パウチにモートンスープを全体の2/3ほど充填した後、空気の閉じ込めを最小限に抑えるようにパウチの上部を注意深く密封した。モートンスープは、一般に、大豆油、ケチャップ、及び酢を1:1:1の混合比で混合したものとして説明することができる。ヒートシールが損なわれないよう、ヒートシール領域に水がかからないようにした。ヒートシール領域又は積層領域に既存する顕著な欠陥には、消えないマーカーで印をつけた。次いで、パウチを沸騰水中に慎重に入れ、30分間そこに保持した。全沸騰プロセス中、パウチが常に水中に浸漬されることを確認する。完了したら、トンネリング、層間剥離、及び/又は漏れの程度を、既存の欠陥と比較して記録した。任意の既存のヒートシール又は積層欠陥を超えるトンネリング、層間剥離、又は漏出の証拠を示さなかったサンプルは、「合格」として記録される。パウチを開き、空にし、冷却し、次いで幅15mmのストリップに切断して、Instron5943機においてそのT型剥離結合強度及びヒートシール強度を試験した。
【0117】
5.性能評価
結合強度(BS)、ヒートシール強度(HS)、及びBIB特性を表4に要約する。結果は、ホスフェート官能性イソシアネートの包含が、2成分溶剤系接着剤のホイルへの結合強度、耐化学性(モートンスープを用いたボイルインバッグ試験後にトンネリングのない良好なヒートシール)、及び加水分解安定性を大きく改善し得ることを示している。
【0118】
【表4】
【国際調査報告】