(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】超粒子の、あらゆるスケールでの自己-組織化及び正確な配置化
(51)【国際特許分類】
B82B 3/00 20060101AFI20231219BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20231219BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20231219BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20231219BHJP
B01J 13/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
B82B3/00
B82Y40/00
B82Y5/00
B82Y30/00
B01J13/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528339
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021059097
(87)【国際公開番号】W WO2022104027
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214259
【氏名又は名称】山本 睦也
(72)【発明者】
【氏名】ヤドン イン
(72)【発明者】
【氏名】ディロン リュウ
【テーマコード(参考)】
4G065
【Fターム(参考)】
4G065AA02
4G065AA04
4G065AA05
4G065AB03X
4G065AB16X
4G065AB19X
4G065BA07
4G065BB06
4G065CA11
4G065FA02
4G065GA01
(57)【要約】
ビルディング・ブロックを超粒子に組織化する方法を開示する。前記方法は、パターン化された凹状領域のテンプレート上に、前記凹状領域の表面を湿潤化するために、第1の溶媒を加えるステップ;パターン化された凹状領域の前記テンプレート上に、第2の溶媒を加えるステップ、ここで、前記ビルディング・ブロックは、前記第2の溶媒中で、懸濁化する;ここで、前記第1の溶媒、及び前記第2の溶媒は、不完全な混和性であり、その結果、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との間の界面表面張力は、無視できるものになる;並びに、ここで、前記第2の溶媒の液滴は、前記第1の溶媒の液滴を、前記凹状領域の中で拡散させ、それによって、前記凹状領域の中で、前記ビルディング・ブロックを超粒子に組織化する、を含む。
【選択図】
図1e
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルディング・ブロックを超粒子に組織化する方法、ここで、前記方法は。以下を含む:
パターン化された凹状領域のテンプレート上に、前記凹状領域の表面を湿潤化するために、第1の溶媒を加えるステップ;
パターン化された凹状領域の前記テンプレート上に、第2の溶媒を加えるステップ、ここで、前記ビルディング・ブロックは、前記第2の溶媒中で、懸濁化する;
ここで、前記第1の溶媒、及び前記第2の溶媒は、不完全な混和性であり、その結果、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との間の界面表面張力は、無視できるものになる;並びに、
ここで、前記第2の溶媒の液滴は、前記第1の溶媒の液滴を、前記凹状領域の中で拡散させ、それによって、前記凹状領域の中で、前記ビルディング・ブロックを超粒子に組織化する。
【請求項2】
請求項1に記載の方法、ここで、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との間の無視できる界面表面張力、並びに前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒の、乳化した液滴の内部の無視できるラプラス圧によって、前記乳化した液滴は、乳化剤を必要とすることなく、一体化すること、及び壊れること、から免れる。
【請求項3】
更に以下を含む、請求項1に記載の方法:
前記ビルディング・ブロックを、機械的な振動、及び/又は超音波処理を組み合わせて分散化させることによって、懸濁化するステップ。
【請求項4】
請求項1に記載の方法、ここで、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との間の溶解性は、0.5重量%から35重量%である。
【請求項5】
請求項1に記載の方法、ここで、前記ビルディング・ブロックは、固体粒子、ポリマー、分子、及び/又はイオン、である。
【請求項6】
請求項1に記載の方法、ここで、前記ビルディング・ブロックは、原子からマイクロメートルまでの範囲のサイズを有する。
【請求項7】
更に以下を含む、請求項1に記載の方法:
ドロッピング(dropping)、ドリッピング(dripping)、又は湿潤化によって、前記テンプレート上の前記凹状領域の中に、前記第1の溶媒を導入するステップ。
【請求項8】
更に以下を含む、 請求項7に記載の方法:
ドロッピング(dropping)、ドリッピング(dripping)、又は湿潤化によって、パターン化された凹状領域のテンプレート上で懸濁化したビルディング・ブロックと共に、前記第2の溶媒を、導入するステップ;及び、
ここで、導入した懸濁化したビルディング・ブロックと共の前記第2の溶媒の体積は、前記テンプレート上に残っている前記第1の溶媒の体積の、少なくとも2倍である。
【請求項9】
更に以下を含む、請求項8に記載の方法:
前記テンプレートの表面上の過剰な第2の溶媒を除くために、ドロッピング(dropping)、ドリッピング(dripping)、又は洗浄によって、前記テンプレート上にスウィーピング溶媒(sweeping solvent)を導入するステップ。
【請求項10】
請求項9に記載の方法、ここで、導入する前記スウィーピング溶媒(sweeping solvent)の体積は、前記テンプレート上に導入した懸濁化したビルディング・ブロックと共の前記第2の溶媒の体積の、少なくとも5倍である。
【請求項11】
請求項9に記載の方法、ここで、前記スウィーピング溶媒(sweeping solvent)は、比較的純粋な形態の前記第1の溶媒である。
【請求項12】
更に以下を含む、請求項1に記載の方法:
第2の溶媒中に懸濁化したビルディング・ブロックの濃度、及び/又は前記凹状領域のサイズ、を変化させることによって、凹状領域中の超粒子のサイズを調整するステップ。
【請求項13】
請求項1に記載の方法、ここで、前記超粒子は、球状構造、楕円状構造、又は固体粒子の不規則な配置の形態、を有する。
【請求項14】
請求項1に記載の方法、ここで、前記第1の溶媒は、ブタノール又はペンタノールである、並びに前記第2の溶媒は、水である。
【請求項15】
請求項14に記載の方法、ここで、前記第1の溶媒は、1-ブタノールである。
【請求項16】
請求項1に記載の方法、ここで、前記ビルディング・ブロックを、SiO
2ナノ粒子、Fe
3O
4ナノ粒子、ポリドーパミン(PDA)ナノ粒子、金ナノ粒子、CdTe量子ドット、FeOOHナノロッド(nanorod)、及びFe
2O
3ナノディスク(nanodisc)、からなる群より選択する。
【請求項17】
請求項1に記載の方法、ここで、前記ビルディング・ブロックは、生体高分子であり、前記生体高分子は、キトサン、カゼイン・タンパク質、魚類精子DNA、及び/又はミクロコッカス生細胞、である。
【請求項18】
請求項1に記載の方法、ここで、前記ビルディング・ブロックは、NaClのマイクロ-結晶、Na
2SO
3のマイクロ-結晶、又はNa
2SO
4のマイクロ-結晶、である。
【請求項19】
請求項1に記載の方法、ここで、前記パターン化された凹状領域を、円筒状マイクロ孔-アレイ、円筒状ダイマー・マイクロ孔-アレイ、逆ピラミッド状マイクロ孔-アレイ、円筒状トリマー・マイクロ孔-アレイ、テトラマー・マイクロ孔-アレイ・フィルム、及び不規則な形体を有するマイクロ孔-アレイ、からなる群より選択する。
【請求項20】
更に以下を含む、請求項1に記載の方法:
前記第2の溶媒により、前記第1の溶媒の液滴が拡散している間に、外部刺激を印加することによって、前記超粒子を調整するステップ。
【請求項21】
請求項20に記載の方法、ここで、前記外部刺激は、磁場又は電場、である。
【請求項22】
更に以下を含む、請求項1に記載の方法:
電子ディスプレイ、ディスプレイ・パネル、半導体デバイス、電子デバイス、薬物担体、バイオセンサー、タンパク質チップのナノスケール製造、細胞選別の用途、並びに/又はエネルギー生成及びストレージ材料(storage material)において、前記超粒子を使用するステップ。
【請求項23】
以下含む溶媒システム:
第1の溶媒、ここで、前記第1の溶媒は、1-ブタノールである;
第2の溶媒、ここで、前記第2の溶媒は、水である;
前記第2の溶媒中で懸濁化するように、及び超粒子に組織化するように、構成されたビルディング・ブロック、ここで、前記ビルディング・ブロックを、SiO
2ナノ粒子、Fe
3O
4ナノ粒子、ポリドーパミン(PDA)ナノ粒子、金ナノ粒子、CdTe量子ドット、FeOOHナノロッド(nanorod)、及びFe
2O
3ナノディスク(nanodisc)、からなる群より選択する;並びに、
ここで、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との間の溶解性は、0.5重量%から35重量%まで、である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[政府条項]
本発明は、国立科学財団(National Science Foundation (NSF))による助成金番号DMR-1810485の下で、政府の支援を受けてなされた。米国政府は、この発明において、ある一定の権利を有する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、一般に、ビルディング・ブロックを超粒子に組織化する方法に関する、及びより詳細には、微小なビルディング・ブロック又はナノ粒子を超粒子に組織化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
個々のビルディング・ブロックを秩序化した超粒子に自己-組織化させる作用能は、新たな機能性を得るための、自然システム(例えば、タンパク質)において知られている現象である。正確かつ制御された様式で、超粒子の自己-組織化を調節することは、それらの潜在的な用途を実現するのに役立つだけでなく、自然における自己-組織化に関する基本的な理解も進歩させる。最近の発展にもかかわらず、ナノ-長から巨視的-長さまでの範囲のスケールでの、超粒子に関する、普遍的な、拡張可能な、及び堅牢な、自己-組織化の方策を開発することは、良く分からないままである。現在のアプローチは、大抵、サイズが限定されており、ビルディング・ブロックの化学的な改変及び面倒な製造手順を必要とし、並びに利用するビルディング・ブロックによって著しく異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乳化をベースとした自己-組織化の方法は、その簡便性及び化学的な改変を必要としないことから、超構造形成(superstructuring)にとって理想的である。しかしながら、それらの長年の欠点は、乳化液滴の多分散サイズ分布(polydisperse size distribution)、乳化剤(例えば、界面活性剤)を使用することによって引き起こされる不快感、及びそれらの流体特性が固定されていないことによる正確な配置化の難しさ、を含み、それらによって、総合的に、自己-組織化した超粒子のサイズ、均一性、及び用途を規定することが妨げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[概要]
1つの実施形態によれば、ビルディング・ブロックを超粒子に組織化する方法、ここで、前記方法は。以下を含む:
パターン化された凹状領域のテンプレート上に、前記凹状領域の表面を湿潤化するために、第1の溶媒を加えるステップ;
パターン化された凹状領域の前記テンプレート上に、第2の溶媒を加えるステップ、ここで、前記ビルディング・ブロックは、前記第2の溶媒中で、懸濁化する;
ここで、前記第1の溶媒、及び前記第2の溶媒は、不完全な混和性であり、その結果、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との間の界面表面張力は、無視できるものになる;並びに、
ここで、前記第2の溶媒の液滴は、前記第1の溶媒の液滴を、前記凹状領域の中で拡散させ、それによって、前記凹状領域の中で、前記ビルディング・ブロックを超粒子に組織化する。
【0006】
別の実施形態によれば、以下含む溶媒システム:
第1の溶媒、ここで、前記第1の溶媒は、1-ブタノールである;
第2の溶媒、ここで、前記第2の溶媒は、水である;
前記第2の溶媒中で懸濁化するように、及び超粒子に組織化するように、構成されたビルディング・ブロック、ここで、前記ビルディング・ブロックを、SiO2ナノ粒子、Fe3O4ナノ粒子、ポリドーパミン(PDA)ナノ粒子、金ナノ粒子、CdTe量子ドット、FeOOHナノロッド(nanorod)、及びFe2O3ナノディスク(nanodisc)、からなる群より選択する;並びに、
ここで、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒との間の溶解性は、0.5重量%から35重量%まで、である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1a-1eは、2種類の不完全な混和性の溶媒に基づく、凹状領域内の超粒子の自己-組織化の模式図である。
【
図2】
図2a-2hは、テンプレート・マイクロ-孔内に制約を受けた超粒子のSEMイメージ (
図2a及び
図2b)、酸素プラズマ処理を用いてテンプレート表面を不完全にエッチングすることによって露出させた超粒子のSEMイメージ(
図2c)、断面での超粒子のSEMイメージ (
図2d)、暗視野光学顕微鏡イメージ(
図2e)、テンプレートを除去した後に回収した超粒子のSEMイメージ(
図2f及び
図2g)、並びに前記超粒子の対応するサイズ分布(
図2h)、である。
【
図3】
図3a-3hは、溶液中のナノ粒子濃度を増加させることによって、組織化した超粒子のサイズを調整するステップに関する図である。
【
図4】
図4a-4eは、前記テンプレート内のマイクロ-孔のサイズを増加させることによって、組織化した超粒子のサイズを調整するステップに関する図である。
【
図5】
図5は、ビルディング・ブロックとして、様々な形体及び組成物を有する、様々なナノ構造物質によって構築した超粒子のSEMイメージである。
【
図6】
図6は、ミリメートル(右側)からナノメートル(左側)までの範囲の、超粒子の自己-組織化に関する図である。
【
図7】
図7a-7bは、外部磁場下で超粒子の形体を調整するステップに関する図である、ここで、
図7aは、印加した磁場の強さを変化させることにより、準-球状構造から楕円状構造まで、組織化したFe
3O
4超粒子の形体進化に関するSEMイメージである、並びに、
図7bは、磁気組織化下での、一次元(1D)の及び頭-尾鎖の楕円状超粒子に関するSEMイメージである。
【
図8】
図8a-8dは、磁場下でのタンブラー-様超粒子の自己-組織化メカニズムに関する模式図であり(
図8a)、ビルディング・ブロックとしてのSiO
2及びFe
3O
4ナノ粒子のタンブラー-様超粒子の、光学イメージ(
図8b)及びSEMイメージ(
図8c)、並びに磁場に沿って整列した、一次元(1D)の及び頭-尾鎖のタンブラー-様超粒子に関するSEMイメージ(
図8d)、である。
【
図9】
図9a-9dは、各種テンプレート孔内での超粒子組織化に関する図である、ここで、
図9a-9cは、それぞれ、円筒状の、円筒状-ダイマーの、及び逆ピラミッド状のマイクロ孔-アレイ・フィルム内で組織化した、SiO
2超粒子のSEMイメージであり、これは、
図9d、円筒状トリマーの及び円筒状テトラマーのマイクロ孔-アレイ・フィルム、並びに不規則な形体を有するマイクロ孔-アレイ、に対しても適しており、並びにここで、
図9dでのマイクロ孔の不規則な形体は、それらの内壁が壊れている場合、円筒状テトラマー・マイクロ孔から変化展開した。
【
図10】
図10a-10fは、キトサン・モノマーの濃度を減少させることによって、種々のサイズを有するキトサン超粒子を組織化するステップに関する図である。
【
図11】
図11a-11cは、例えば、カゼイン・タンパク質(
図11a)、魚類精子DNA(
図11b)、及びミクロコッカス・リゾデイクティカス(micrococcus lysodeikticus)の細胞(
図11c)等の、生物学的ビルディング・ブロックから組織化した超粒子に関する図である。
【
図12】
図12a-12cは、イオンから組織化した超粒子に関する図である、ここで、塩化ナトリウム(NaCl)の立方体-様のマイクロ-結晶の成長(
図12a)、中央に長いクラックを有する、亜硫酸ナトリウム(Na
2SO
3)の「米粒-様」マイクロ-結晶の成長(
図12b)、及び硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)の「花-様」マイクロ-結晶の成長 (
図12c)、を示す。
【
図13】
図13a-13eは、PDMSソフト・リソグラフィ方策を介して、シリコン・ウェハから複製したマイクロ孔-アレイPSフィルムの製造に関する図である。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
[詳細な説明]
本開示は、不完全な混和性を有する2種以上の溶媒(例えば、ブタノール又はペンタノールの中に水)に基づいて、凹状領域における、超粒子の、あらゆるスケールでの自己-組織化のための、及び正確に配置化するための、方法に関する。これらの溶媒の不完全な混和性を利用することによって、基材上にパターン化された凹状領域で、ターゲット・ビルディング・ブロックを含む一過性の乳化液滴を生成することができる。
【0020】
1つの実施形態によれば、例えば、1-ブタノール中へ水が拡散すると、乳化液滴は減少し、前記テンプレート内の前記ビルディング・ブロックの自己-組織化が駆動され、前記テンプレートによって規定される位置的な秩序を有する、はっきりとした超粒子が、生成される。更に、外部刺激(例えば、磁場又は電場)を印加して、組織化のプロセスを調整することができる。この方法は、比較的簡単である、時間を節約できる、低コストである、拡張可能である、及び汎用性である。これらは、例えば、先進的な精密製造の将来的な発展のための、重要な利点である。前記超粒子を、例えば、電子ディスプレイ、ディスプレイ・パネル、半導体デバイス、電子デバイス、薬物担体及びバイオセンサー、タンパク質チップのナノスケール製造、細胞選別、並びに/又はエネルギー生成及びストレージ材料(storage material)、のために、使用することがある。
【0021】
別の実施形態によれば、本開示は、不完全な混和性を有する2種以上の溶媒に基づいて、設計した凹状領域における、超粒子を生成するための、及び正確に配置化するための、方法を記載する。本出願では、2種以上の溶媒が不完全な混和性であることを、相互に、不完全な混和性であることがある溶媒、として定義することがある。溶媒間の溶解性は、例えば、0.5 重量%から35 重量%まで、より好ましくは、15 重量%から30 重量%まで、例えば、限定されるものではないが、1-ブタノール中の水(20.1重量%)など、であることがある。
【0022】
1つの実施形態によれば、前記溶媒間の溶解性は、ターゲット・ビルディング・ブロックを含む一過性の乳化液滴が形成されるのことにとって重要であることがある。例えば、溶解性が高すぎると、一過性の乳化液滴が形成されることなく、前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒は、比較的速く混合する。或いは、溶解性が低すぎると、前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒は、別々の相に留まり易いので、乳化液滴が形成されることも困難になる。
【0023】
更に、例えば、磁気ビルディング・ブロック及び非磁気ビルディング・ブロック等の、前記ビルディング・ブロック(例えば、ナノ粒子)について、(前記第1の溶媒中に拡散することにより)(前記第2の)溶媒が無くなると、前記ビルディング・ブロックの凝集が進む。
【0024】
更に、前記ビルディング・ブロックは、好ましくは、前記第2の溶媒中でのみ分散化可能であるが、前記第1の溶媒中では分散化可能ではない。従って、前記第2の溶媒が前記第1の溶媒中に拡散すると、前記ビルディング・ブロックは、第1の溶媒中では分散化可能ではないので、前記ビルディング・ブロックは、そのコロイド安定性を失い、それ故に凝集する。
【0025】
図1a-1eは、2種の不完全な混和性の溶媒に基づく、自己-組織化に関する、及び配置化手順に関する、概略図を示す。この方法の詳細なステップを以下に説明する。
【0026】
ステップ1:
【0027】
図1aに示すように、純粋な溶媒のうちの1種(以下、「第1の溶媒」)を、最初に、基材に導入して、前記基材内の複数の凹状領域を、湿潤化した、及び充填化した。前記第1の溶媒を、例えば、ドロッピング(dropping)、ディッピング(dipping)、又は湿潤化、等によって、前記基材中に導入することがある。複数の凹状領域は、例えば、アレイの形態の、及び/又は不規則なパターンの形態の、孔及び溝、であることがある。凹状領域のサイズは、いかなる特定のサイズにも限定されず、例えば、前記ビルディング・ブロック(例えば、固体粒子)のサイズ以上であるべきである。複数の凹状領域を、例えば、従来のリソグラフィ方策、インプリンティング方策、ブレス・フィギュア法(breath figure method)等によって、前記基材上に作製することができる。
【0028】
ステップ2:
【0029】
ビルディング・ブロックは、第2の溶媒(以下、「第2の溶媒」)中で分散化する、及び懸濁化する。前記ビルディング・ブロックとしては、限定されるものではないが、固体粒子、ポリマー、分子、イオンなど、が挙げられる。前記ビルディング・ブロックのサイズは、例えば、原子からマイクロメートルまでの範囲であることがある。一実施形態によれば、2種の溶媒のうちの1種は、固体粒子の懸濁化溶媒とみなされる、及び好ましくは、ビルディング・ブロックをより良好に分散化させる溶媒を、懸濁化溶媒として選択する。例えば、機械的な振動若しくは撹拌、及び/又は超音波処理を使用して、懸濁化溶媒(即ち、第2の溶媒)中でのビルディング・ブロックの分散化を改善することができる。
【0030】
ステップ3:
【0031】
次に、
図1bに示すように、ビルディング・ブロックが懸濁している第2の溶媒を、基材中に導入する。前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒が不完全な混和性であるために、複数の凹状領域内に存在する第1の溶媒は、
図1cに示すように、懸濁化溶媒、例えば、第2の溶媒で、置き換えられる、及び充填化される。前記第2の溶媒を、例えば、ドロッピング(dropping)、ディッピング(dipping)、及び湿潤化、等によって、前記基材上に導入することができる。一実施形態によれば、前記第2の溶媒の体積は、前記基材上に残っている第1の溶媒の体積の少なくとも2倍である。複数の凹状領域で生じる置換プロセスは、第1の溶媒が第2の溶媒相中に拡散していくことによるものであることがある、及びこの置換プロセスのために消費される時間は、数ミリ秒(ms)から数日(d)まで、変化することがある、これは、前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒の、相互の溶解性によって、決まる。
【0032】
ステップ4:
【0033】
比較的大量の純粋な形態の第1の溶媒(例えば、純粋な第1の溶媒)をスウィーピング溶媒(sweeping solvent)として使用することができ、これを、次いで、これを前記基材上に導入して、前記基材表面上の余分な第2の溶媒を除去する。例えば、
図1dに示されるように、前記基材上の余分な第2の溶媒を取り除くと、前記第1の溶媒によって、複数の凹状領域の各々の中で単離される、第2の溶媒の液滴を形成させることができる。一実施形態によれば、余分な第2の溶媒が完全に除去されることを確実にするように促すために、純粋な第1の溶媒の体積は、ステップ3で使用した第2の溶媒の体積の、少なくとも5倍であるべきである。比較的大量の純粋な第1の溶媒を、例えば、ドロッピング(dropping)、ディッピング(dipping)、洗浄、等によって、導入することがある。
【0034】
ステップ5:
【0035】
前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒の不完全な混和性を利用することによって、前記凹状領域の中で形成された、前記第2の溶媒の液滴は、前記第2の溶媒の液滴が消失するまで、前記第1の溶媒相の中へ拡散する。追加的な実施形態によれば、前記第2の溶媒の液滴中に懸濁化したビルディング・ブロックは、封入され、それ故に、拡散プロセスの中で、前記凹状領域内で組織化する。前記第2の溶媒の液滴が、前記第1の溶媒の中へ拡散する時間は、例えば、数ミリ秒(ms)から数時間(h)まで、であることがある。これは、前記第1の溶媒及び前記溶媒の、相互の溶解性によって、決まる。複数の凹状領域のそれぞれにおけるビルディング・ブロックの量は、例えば、溶媒中に懸濁化したビルディング・ブロックの濃度を、及び/又はテンプレートとして使用する凹状領域のサイズを、変化させることによって、調整可能であることがある。前記凹状領域において、コンパクト化したビルディング・ブロックは、限定されるものではないが、球状構造(
図1e)、固体粒子が密に充填した楕円状構造、コロイドソーム(colloidosome)、生体構造、結晶、の形態、又は固体粒子の不規則な配置の形態、であることがある。
【0036】
別の実施形態によれば、外部刺激(例えば、磁場又は電場)もまた、上記拡散プロセスの中で印加して、前記凹状領域内で、超粒子の、組織化を、及び配置化を、補助することもある。前記磁場を使用して、前記超粒子の形体を変形させることがある。
【0037】
実施例1:水/1-ブタノールのシステムに基づく、ハニカム孔-アレイ・フィルム内での、固体粒子を超粒子へ組織化するステップ
【0038】
ヤング-ラプラス(Young-Laplace)の法則によれば、乳化液滴内部のラプラス(Laplace)圧力は、前記液滴の界面表面張力を前記液滴の半径で割ることによって決定することができる。水及び1-ブタノールは、不完全な混和性のシステムを示すので、水と1-ブタノールとの間の界面表面張力は、乳化する過程で無視できると考えることができる。更なる実施形態によれば、この無視できる表面張力によって、前記システムに最小限の外力(例えば、1-ブタノールによるスウィーピング(sweeping)が誘導する流体-剪断力)を与えることによって、前記テンプレートの凹状領域(例えば、孔)内の乳化液滴のサイズを、比較的簡単に、且つ正確に、調節できるようになる。前記乳化液滴内部のラプラス(Laplace)圧力は無視できるので、前記乳化液滴は、乳化剤を必要とすることなく、一体化すること、及び壊れること、から免れる。これらの特徴は、実証された広範囲の寸法での、超粒子の自己-組織化にとって重要であり、このことはまた、他の非混和性の乳化-ベースの自己-組織化の方法と比較した場合、著しい利点を提供することもできる。例えば、流体乳化を操作するための小型化されたチャネル・チップに基づく、マイクロ流体自己-組織化は、比較的複雑な手順を必要とする、並びに比較的低い収率に、及び時間のかかる操作に、苦労する、並びに前記乳化液滴のサイズを数マイクロメートル程度に減少させるために、高圧のマイクロフローを加えることが、及びマイクロ-チャネルを狭くすることが、必須になる。更に、これらの非混和性の乳化システムが一体化するのを防ぐことを促すために、界面活性剤が必要とされる。このことは、それが生物学的用途について意図される場合、前記システムに毒性の可能性があるようになることがある。
【0039】
水/1-ブタノールのシステムを、不完全な混和性の溶媒として使用した。1-ブタノールの中での水についての、及び水の中での1-ブタノールについての、溶解性は、25℃で、それぞれ、20.1重量%、及び7.7重量%、である。六角形に充填された構造であるハニカム孔-アレイ・フィルムは、準-球状の孔のサイズがマイクロメートルのスケールである、ブレス・フィギュア法(breath figure method)によって、得ることができる。例えば、ナノメートル・スケールの球状形体の固体粒子を使用することができる、及び前記固体粒子は、好ましくは、水相中に十分に分散化する。
図2a-2hは、水/1-ブタノールのシステムに基づく、ハニカム孔-アレイ・フィルムの中での、超粒子の自己-組織化に関する結果を示す。
【0040】
図2a-2hに示すように、前記ハニカム孔-アレイ・フィルムの孔の中で形成された超粒子は、良好に秩序化した球状構造を示す。
図3a-3h及び
図4a-4eは、それぞれ、組織化した超粒子のサイズを、水相中の固体粒子の濃度を変化させることによって、及びハニカム孔-アレイ・フィルム中の孔のサイズを変化させることによって、調整することができることを示す。
図5は、様々なタイプの、及び様々な形体のビルディング・ブロックを使用することによる、超粒子の自己-組織化を示し、これは、広範囲の汎用性を実証する。
図6は、ナノメートルからミリメートルまでの範囲のサイズを有する超粒子の自己-組織化に関する結果を図示し、これは、本開示の方法を使用して、前記テンプレートのサイズを、及び前記ビルディング・ブロックの濃度を、直接的に制御することによって、あらゆるスケールで、超粒子を調製することができることを、示す。
【0041】
実施例2:外部的な場の下での超粒子の組織化
【0042】
別の実施形態によれば、前記ビルディング・ブロックが外部刺激に応答することができる場合、限定されるものではないが、例えば、磁場に応答することができる磁性粒子など、前記外部刺激を使用して、凹状領域内で組織化した超粒子の形体を調整することができる。例えば、水/1-ブタノールのシステムを、不完全な混和性の溶媒として選択し、水相中に分散化した磁性ナノ粒子(例えば、Fe
3O
4)を使用した。ある実施形態によれば、外部磁場を、全体プロセスの過程で、垂直に基材を貫いて印加した。
図7aに示されるように、外部磁場中、磁場強度を増加させながら、磁性Fe
3O
4ナノ粒子を組織化することによって、準-球状超粒子から楕円状超粒子へ、転移させることができる。磁性ナノ粒子を、z乳化液滴内部の前記場の方向に沿った一次元(1D)鎖へ、組織化することによって、前記楕円状超粒子が伸びるようになり、比較的より強い磁場では、より大きなアスペクト比(L/D、長さ対直径)になる(
図7a)。前記テンプレートから放出され、1-ブタノール中で再分散化するとき、これらの楕円状超粒子は構造的に安定なままである、並びに、
図7bに示されるように、前記磁場に沿って、一続きの1Dの長鎖及び頭-尾鎖に、更に整列する。更に、磁気ナノ粒子と非-磁気ナノ粒子とを組合せることによって、前記超粒子は、例えば、楕円体からタンブラー-様形体に変わることがある。
図8a-8dは、1つの実施形態に従って、磁場下で、Fe
3O
4ナノ粒子(115 ± 27 nm)とSiO
2ナノ粒子(220 ± 16.7 nm)との混合物から組織化した、タンブラー-様超粒子を示す。
【0043】
実施例3:種々のテンプレート孔内での超粒子を組織化するステップ
【0044】
上記のハニカム孔-アレイ・フィルムとは別に、開示される方法及びシステムはまた、様々な形体の孔-アレイ・フィルム、例えば、円筒状(
図9a)、円筒状-ダイマー(
図9b)、逆-ピラミッド状(
図9c)、及び不規則な孔形体(
図9d)、にも適している。一実施形態によれば、形態及び周期性が異なっていても、類似の超粒子は、全てのマイクロ-孔-アレイ・フィルムにおいて、うまく組織化した。例えば、超粒子のほとんど全ては、それらの表面エネルギーを効果的に低減するために、マイクロ-孔の壁の内側境界に選択的に堆積した。例えば、前記超粒子は、最も低いポテンシャル・エネルギーになる逆ピラミッド状孔の底部先端に堆積した(
図9c)。従って、本結果によって、前記超粒子を、ターゲットとした位置に選択的に堆積させるための有効な方策が実証され、これは、孔-アレイを前もって設計することのみを必要とする。
【0045】
実施例4.分子の及びイオンのビルディング・ブロックから、超粒子を組織化するステップ
【0046】
加えて、固体粒子、生体高分子(例えば、キトサン、カゼイン・タンパク質、魚類精子DNA、及びミクロコッカス生細胞)もまた、上記と同じ方法を用いて、独特の超粒子に自己-組織化させることができる。(
図10a-11c)。
【0047】
更に、この超構造化の方策は、ナノ構造分子の、又はポリマー分子の、自己-組織化に限定されず、前記テンプレートによって提供される、制約を受けた空間において、イオン性化合物の結晶を成長させることに適用することもできる。
図12a-12cは、NaClの「立方体-様」マイクロ-結晶、Na
2SO
3の「米粒-様」マイクロ-結晶、及びNa
2SO
4の「花-様」マイクロ-結晶の成長を示し、それぞれ、立方晶、単斜晶、及び斜方晶のシステムを表す。
【0048】
特定の位置に超粒子を堆積させることができることによって、ある特定の技術に対する独自の特性、例えば、バイオセンサーの機能化、タンパク質チップのナノスケール製造、及び細胞選別、が可能になる。そのターゲットとした空間に前記超粒子を配置化するために、複雑な技術(例えば、AFM、リソグラフィ)による、他の超粒子の自己-組織化方法においては、一般に、転写プロセスが必要とされ、このプロセスは、ナノスケール・サイズの超粒子では、典型的により困難になる、並びに限定的な配置化の精度及び収率によって、前記超粒子はダメージを受ける。
【0049】
更なる実施形態によれば、不完全な混和性の溶媒に基づく開示した方法によって、均一な超粒子を構築するための、比較的低コストな、及び比較的ハイ-スループットな、方法が提供される。また、開示した方法によって、構造的なダメージを全く受けることなく、所定の空間内で、前記超粒子が正確に配置化されることが保証される。超粒子のサイズに関する高度な制御可能性、広範囲の寸法、組成物及び形態のビルディング・ブロックに対する適用可能性、並びにあらゆるスケールを組織化する作用能、により、この方策は、材料科学に対してだけでなく、他の分野、例えば、データ・ストレージ、バイオ-及びケミカル・センシング、並びに生物医学、に対しても、大きな影響を及ぼす可能性がある。
【0050】
ナノ粒子の合成
【0051】
SiO2ナノ粒子の合成:
【0052】
SiO2ナノ粒子を、改変ストーバー法(modified Stober method)によって調製することができる。一実施形態によれば、約220 nmのサイズのSiO2ナノ粒子の合成では、0.86 mLのテトラエチル・オルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate (TEOS))、28 mLのエタノール、4.3 mLの水、及び0.65 mLのアンモニア(NH4OH、28%)液、を混合することがある。この混合物を、磁気撹拌をしながら、室温で、4時間、反応させた。前記SiO2ナノ粒子を、遠心分離によって回収する、水及びエタノールで数回洗浄する、並びに、最後に、更に使用するために、水に再分散化させる、ことがある。
【0053】
Fe3O4ナノ粒子の合成:
【0054】
Fe3O4ナノ粒子を、ジエチレン・グリコール(DEG)溶液中、高温、窒素雰囲気の保護下での加水分解プロセスを経て、調製することがある。まず、窒素雰囲気下、120℃で1時間、加熱することにより、50 mmolのNaOH粉末を20 mLのDEGに溶解し、NaOH/DEGストック溶液を得た。この混合物を70℃に保って保存した。約115 nm3のFe3O4ナノ粒子を合成するために、ポリ(アクリル酸)(PAA、4 mmol)、塩化鉄(FeCl3、0.4 mmol)、及びDEG(17 mL)の混合物を、激しく撹拌しながら、30分間、220 ℃に加熱し、次いで、その熱い混合物に、1.85 mLのNaOH/DEGストック溶液を、素早く注入した。220℃で1時間、更に反応させた後、比較的大きなサイズを有するFe3O4ナノ粒子を得た。約10 nm4のFe3O4ナノ粒子を合成するために、PAA(4 mmol)、FeCl3(2 mmol)、及びDEG(10 mL)の混合物を、220℃に、30分間、加熱した。その後、その熱い混合物に、4.5 mLのNaOH/DEGストック溶液を、素早く加えた。その反応の10分後、その上記熱い混合物に、更に、FeCl3(2 mmol)及びNaOH/DEGストック溶液(3 mL)を、素早く注入した。反応の更に15分後、比較的小さなサイズのFe3O4ナノ粒子が得られた。両方の最終生成物を、遠心分離によって回収した、エタノール及び水で数回繰り返し洗浄した、並びにその後、更に使用するために、水に再分散化させた。
【0055】
ポリドーパミン(PDA)ナノ粒子の合成:
【0056】
約200 nmのPDAナノ粒子を合成するために、2 mLのNH4OH(28%)、40 mLのエタノール、及び90 mLの水を、室温で、30分間、穏やかに攪拌しながら混合することがある。その後、10 mLの水に溶解した0.5 gの塩酸ドパミンを、上記混合物に注入し、そして、室温で、空気中で、48時間、反応させた。そのPDAナノ粒子を遠心分離によって回収する、水で3回洗浄する、及び、更に使用するために、水に再分散化させる、ことがある。
【0057】
金ナノ粒子の合成:
【0058】
0.035 mLのクロロ金酸(HAuCl4、1 M)、1.4 mLのポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド(poly(diallyldimethylammonium) chloride (PDDA))、0.35 mLの塩酸(HCl)、及び70 mLのエチレン・グリコール(EG)、の混合物を、ガラス・バイアル中に密封し、油浴中で、220℃で、30分間、攪拌せずに、反応させた。その反応の後、Auナノ結晶コロイドを含む上記の混合物を、自然に室温に冷却した、及び次いで、更なる体積の(AuCl4
-イオン対Au NPsのモル比率が1:40である)HAuCl4液を添加して、Auナノ結晶の、角部及びより鋭い縁部、を除去した。最終的な金ナノ粒子生成物を、遠心分離によって回収する、水で3回繰り返しすすぐ、及び、更に使用するために、水に再分散化させる、ことがある。
【0059】
水溶性CdTe量子ドットの合成:
【0060】
16 mLの塩化カドミウム(CdCl2、0.04 M)、400 mgのクエン酸三ナトリウム二水和物、400 mgの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、4 mLの亜テルル酸ナトリウム(Na2TeO3 0.01 M)、200 mgのメルカプトコハク酸(MSA)及び184 mLの水、を、フラスコ中で、激しく撹拌しながら、混合して、CdTe量子ドットを、調製することがある。上記混合物が緑色に変わると、前記フラスコに凝縮器を取り付けた、及び前記混合物を、空気条件下で、5時間の反応で、還流した。その最終生成物を、遠心分離によって回収する、エタノール及び水で繰り返し洗浄する、並びに、更に使用するために、水に再分散化させる、ことがある。
【0061】
FeOOHナノロッド(nanorod)の合成:
【0062】
0.405 gのFeCl3・6H2O、4.05 mgのNaHPO4、及び75 mLの水、の混合物を、テフロン・オートクレーブ(Teflon autoclave)中で、移した、並びに密封した、並びに次いで、105℃で、48時間、保持した。その最終生成物を、遠心分離によって回収する、水ですすぐ、及び、更に使用するために、水に再分散化させる、ことがある。
【0063】
Fe2O3ナノディスク(nanodisc)の合成:
【0064】
以前に報告されたのように10、Fe2O3ナノディスク(nanodisc)を、アルコール-熱反応によって調製することができる。簡単に説明すると、1.09 gのFeCl3・6H2O、5 gのナトリウム酢酸塩、2.8 mLの水、及び40 mLのエタノールの混合物を、テフロン・オートクレーブ(Teflon autoclave)中で密封した、並びに次いで、180 ℃で、12 時間、保持した。その最終生成物を、水で洗浄する、遠心分離によって回収する、及び、更に使用するために、水に再分散化させる、ことがある。
【0065】
テンプレートとしての様々な孔-アレイ・フィルムの作製
【0066】
ハニカム・マイクロ孔-アレイ・ポリスチレン(PS)フィルム:
【0067】
このハニカム・マイクロ-孔アレイ・フィルムを、ブレス・フィギュア法(breath figure method)により作製した。まず、固体PS(分子量≒192 000)を、クロロホルム溶媒に溶解し、3.0重量%の濃度のPS前駆体溶液を生成した。次いで、350 μLのPS溶液を、密封容器中のガラス・カバースリップ(18 cm × 18 cm)上に、流し込んだ。次に、水蒸気を含む空気ガス流(湿度 85%)を、200 sccmの流量で、使用して、前記PS溶液を、室温で、10分間、吹き飛ばした。前記クロロホルム溶媒を蒸発させて、その系を冷却すると、多数の水滴が、その湿った流れから凝縮することがある、及び次いで、PS溶液の表面上で、秩序化したアレイの単層に、組織化することがある。クロロホルム溶媒及び水滴が完全に蒸発した後、ハニカム・マイクロ-孔アレイ・フィルムが得られた。前記フィルム中のマイクロ孔サイズを、PS溶液の使用体積を、及び凝縮時間を変化させることによって、調整した。
【0068】
他のマイクロ孔-アレイPSフィルム:
【0069】
種々のパターンを有する他のマイクロ-孔アレイPSフィルムの作製プロセスを、2つのステップに分けた。第1のステップは、従来のフォトリソグラフィー方策を、エッチング・プロセスと更に組み合わせることによって、マイクロ-孔アレイのシリコン(Si)ウェハを製造すること、とした。簡単に述べると、円筒状マイクロ-孔アレイのSiウェハ、例えば、ダイマー-、トリマー-、及びテトラマー-マイクロ孔アレイ等、について、前記フォトリソグラフィ技術によってSiウェハをパターン化し、次いで、SF6ガスの深掘り反応性イオン・エッチング(deep reactive-ion etching)によって、エッチングすることがある。逆ピラミッド状アレイのSiウェハについて、厚さ300 nmの酸化ケイ素(SiO2)層を有するSiウエハを、フォトリソグラフィー・プロセスを通してパターン化し、次いで、湿式エッチング・プロセス(wet etching process)によって、エッチングした。より具体的には、まず、前記SiO2層を、緩衝酸化物エッチング液(buffered oxide etchant (BOE))で、6分間、エッチングし、次いで、露出したケイ素を、水酸化カリウム溶液(6 重量%)によって、90℃の水浴中で、1時間、エッチングした。これらのSiウェハを、アセトン、エタノール、及び水によって、数回洗浄することがある。
【0070】
これらのSiウェハを、型枠として使って、PDMS(ポリ-ジメチルシロキサン)ソフト-リソグラフィ方策によって、それらを複製するように、第2のステップを、設計した。まず、前記Siウエハ上へのPDMS型枠の付着を避けるために、これらのSiウェハを、トリメチルクロロシラン(TMCS)蒸気で、15分間、処理することがある。その後、10:1の比率である、PDMSエラストマーとクロス-リンカーとの混合物を、前記Siウェハの上に流し込み、70℃で、1時間、硬化させた。その後、逆-パターンのアレイのPDMS型枠を、前記Siウエハから剥離することによって、複製した。これらのPDMS型枠に基づいて、次に、PS/DMAC(N, N-ジメチルアセトアミド)液(5 重量%)を、これらのPDMS型枠の上に流し込み、60℃で、6時間、乾燥させて、DMAC溶媒を完全に蒸発させた。最後に、対応するパターンを有するPSマイクロ-孔アレイ・フィルムを、前記PDMS型枠から剥離することによって、作製することができる。
【0071】
PDMSソフト・リソグラフィ方策によってシリコン・ウェハから複製した、マイクロ孔-アレイPSフィルムの製造に関する説明。
【0072】
5-mm-サイズの孔-アレイ・フィルム、及び500-nm-サイズの孔-アレイ・フィルム:
【0073】
5-mm-サイズの孔-アレイ・フィルムを、3Dプリンターにより調製した。そのプリンティング前駆体は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)であった。500 nm-サイズの孔-アレイ・フィルムを、空気-水の界面での、改変したin-situ重合プロセスにより、調製した。簡単に説明すると、まず最初に、界面自己-組織化法(interfacial self-assembly method)によって、ピロール・モノマー水溶液(水中で0.8 重量%)の表面上に、2Dコロイド性結晶の単層(500 nmのPSナノ粒子)を組織化した。そのシステムを2時間静置し、前記ピロール・モノマーをPSナノ粒子にまで膨張させた。次いで、200 μLのFeCl3水溶液(1 M)を上記システムに添加して、PSナノ粒子単層の水-浸漬部分上で、前記ピロール・モノマーの重合コーティングを開始させ、これを、室温で、24時間、持続させた。上部-開口しているナノ孔-アレイを有するポリピロール・フィルムが、テトラヒドロフラン(THF)により、PSナノ粒子を除去した後に、作製された。最終生成物を、THF及び水で、数回すすいだ。種々の周期的な構造を有するマイクロ-孔アレイ・ポリピロール・フィルムを、種々のサイズのPSナノ粒子を使用することによって、得ることができる。
【0074】
テンプレート-支援の乳化方策に基づく自己-組織化
【0075】
マイクロ-孔アレイ・フィルムを、最初に1-ブタノールによって、湿潤化することがある。次いで、ビルディング・ブロックを含む水溶液を、その湿潤化した孔-アレイ・フィルム上に、滴下(drop)-流し込んだ (1-ブタノール中での水の溶解度限界は、25℃で、20.4 % w/wである)。5分後、大量の純粋な1-ブタノールを使用して、前記水溶液を迅速にスウィーピングした。最終的に、均一な超構造を、フィルム中のマイクロ-孔内に、生成することができる。そのポリマーPSフィルムのテンプレートを、大気中で、45℃で、3時間、加熱することによって除去することがある、又は前記フィルムをクロロホルム中に溶解することによって、完全にエッチングすることがある。
【国際調査報告】