(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】シリコーン組成物及びその製造方法及びそれから作られたケーブル
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20231219BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231219BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20231219BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20231219BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20231219BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/22
C08K3/38
C09K21/02
C08K3/34
C08K3/36
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023528647
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020082423
(87)【国際公開番号】W WO2022105988
(87)【国際公開日】2022-05-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリングバーグ,デトレフ
(72)【発明者】
【氏名】カミシェク,トッド
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA05
4H028BA04
4J002CP03W
4J002CP03X
4J002CP15X
4J002DA117
4J002DE066
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ019
4J002DJ058
4J002DK006
4J002FD147
4J002GC00
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
組成物は、過酸化物架橋又は縮合架橋オルガノポリシロキサン材料を含む。この組成物はシリコーンポリマーを含む。また、この組成物は、金属酸化物、金属含有化合物、ホウ酸、又はホウ酸亜鉛の少なくとも1種を含む。金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化チタン及び酸化バリウムからなる群から選択される。金属含有化合物は加熱時に前記群の金属酸化物を生成する。前記組成物は、少なくとも1つの不飽和基を含む白金錯体、及び100重量部のオルガノポリシロキサン材料に基づいて、33~100重量部の雲母を含む。この組成物は610℃以上の温度でセラミック材料を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a) 過酸化物架橋又は縮合架橋オルガノポリシロキサン材料、
(b) シリコーンポリマー、
(c) 酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化チタン及び酸化バリウムからなる群から選択される金属酸化物、加熱時に該群の金属酸化物を生じる金属含有化合物、ホウ酸又はホウ酸亜鉛の少なくとも1種、
(d) 少なくとも1つの不飽和基を含む白金錯体、及び
(e) 100重量部のオルガノポリシロキサン材料に基づいて33~100重量部の雲母
を含み、610℃以上の温度でセラミック材料を生成する組成物。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサン材料が、過酸化物架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記雲母が、式KAl
2(F,OH)
2又は(KF)
2(Al
2O
3)
3(SiO
2)
6のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記シリコーンポリマーが、ビニルメチルポリジメチルシロキサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記白金錯体が、白金-ビニルシロキサン錯体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記白金-ビニルシロキサン錯体が、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体である、請求項6に記載の組成物。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサン材料がエラストマーであり、ビニル官能性オルガノポリシロキサン及びヒドロキシル官能性オルガノポリシロキサンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属酸化物が酸化アルミニウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物が酸化アルミニウムであり、前記白金錯体が白金-ビニルシロキサン錯体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
補強充填剤、非補強充填剤、又はそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記補強充填剤がシリカを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項12】
成分(a)~(e)を混合することを含む、請求項1に記載の組成物を調製する方法。
【請求項13】
導体の絶縁が請求項1に記載の架橋組成物を含む、ケーブル。
【請求項14】
請求項1に記載の架橋組成物を含むプロファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、シリコーン組成物に関する。また、本発明は、シリコーン組成物を製造する方法及びそれから製造される部材に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン材料は、絶縁及び火災安全用途を含む多くの用途に利用されている。一部の火災安全用途では、使用される材料が弾力性を有することが望まれる。しかし、これらの材料は典型的には高い熱反射を示さない。あるいは、そのような用途において優れた熱反射を提供するために利用される材料は、しばしば剛性である。さらに、このような用途に使用されることが知られている材料は、しばしば加工が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、前記の欠陥を克服する組成物を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
組成物の実施形態を提供する。実施形態では、組成物は、過酸化物架橋又は縮合架橋オルガノポリシロキサン材料を含む。組成物はシリコーンポリマーを含む。また、組成物は、金属酸化物、金属含有化合物、ホウ酸、又はホウ酸亜鉛のうちの少なくとも1種を含む。存在する場合、金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化チタン及び酸化バリウムからなる群から選択される。存在する場合、金属含有化合物は、加熱時に前記群の金属酸化物を生じる。組成物は、少なくとも1つの不飽和基を含む白金錯体及び100重量部のオルガノポリシロキサン材料に基づいて、33~100重量部の雲母を含む。組成物は610℃以上の温度でセラミック材料を生成する。
【0005】
いくつかの実施形態において、オルガノポリシロキサン材料は、過酸化物架橋剤を含む。他の実施形態では、オルガノポリシロキサン材料はエラストマーであり、ビニル官能性オルガノポリシロキサン及びヒドロキシル官能性オルガノポリシロキサンを含む。
【0006】
他の実施形態では、雲母は式KAl2(F,OH)2又は(KF)2(Al2O3)3(SiO2)6)のものである。
【0007】
さらに他の実施形態では、シリコーンポリマーはビニルメチルポリジメチルシロキサンである。
【0008】
いくつかの実施形態において、白金錯体は白金-ビニルシロキサン錯体である。1つのこのような実施形態では、白金-ビニルシロキサン錯体は白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体である。
【0009】
ある特定の実施形態では、金属酸化物は酸化アルミニウムである。金属酸化物が酸化アルミニウムである実施形態では、白金錯体は白金-ビニルシロキサン錯体である。
【0010】
ある特定の実施形態では、組成物は、さらに、補強充填剤、非補強充填剤又はそれらの混合物を含む。実施形態では、補強充填剤はシリカを含む。
【0011】
組成物を調製する方法の実施形態も提供される。1つのこのような実施形態では、方法は組成物の成分の混合を含む。
【0012】
さらに、各々が該組成物を含む、ケーブルの実施形態及びプロファイルの実施形態が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、逆に明確に記述されている場合を除き、種々の代替組成物及びステップ順序を仮定し得ることが理解されるべきである。また、以下の明細書に記載される特定の成分、部材、及び方法は、単に本発明の概念の例示的な実施形態であることも理解されるべきである。したがって、開示された実施形態に関連する特定の特性、条件、又はその他の物理的特性は、特に明記しない限り、限定的であるとみなされるべきではない。
【0014】
実施形態では、組成物が提供される。いくつかの実施形態において、組成物はセラミック化可能である。例えば、組成物は、高温でセラミック材料を生成することができ、これは、好ましくは610℃以上である。この組成物は、例えば、導体に対する絶縁のような火災安全用途での使用に適している。しかし、組成物は、例えば、プロファイルに使用したり、他の部材を形成したりするなど、他の用途にも適している。
【0015】
好ましくは、組成物は、オルガノポリシロキサン材料を含む。いくつかの実施形態において、オルガノポリシロキサン材料は、一般式(I)の単位で構成することができる。
【0016】
【化1】
式中、Rは同一であっても異なっていてもよく、非置換又は置換炭化水素基であり、
rは0、1、2又は3であり、1.9~2.1の平均数値を有する。
【0017】
炭化水素基Rの例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル又はtert-ペンチル基、n-ヘキシル基のようなヘキシル基、n-ヘプチル基のようなヘプチル基、n-オクチル基及び2,2,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基のようなオクチル基、n-ノニル基のようなノニル基、n-デシル基のようなデシル基、n-ドデシル基のようなドデシル基、n-オクタデシル基のようなオクタデシル基、シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基、アルカリル基、例えば、o-、m-又はp-トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、並びにアラルキル基、例えば、ベンジル基及びα-及びβ-フェニルエチル基である。
【0018】
置換炭化水素基Rの例は、ハロゲン化アルキル基、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基及びペルフルオロヘキシルエチル基、並びにハロゲン化アリール基、例えば、p-クロロフェニル基及びp-クロロベンジル基である。
【0019】
基Rの他の例は、ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基及び1-ペンテニル基、並びに5-ヘキセニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、エチニル基、プロパルギル基及び1-プロピニル基である。
【0020】
基Rは、好ましくは、水素原子又は1~8個の炭素原子を有する炭化水素基、特に好ましくはメチル基である。いくつかの実施形態において、基Rは、2~8個の炭素原子を有するアルケニル基、特に好ましくはビニル基であることが好ましい場合がある。1~8炭素原子を有する非置換又は置換炭化水素基の中で、メチル基、ビニル基、フェニル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基が特に好ましい。
【0021】
好ましくは、アルキル基、特にメチル基は、式(I)の単位から構成されるオルガノポリシロキサン材料中に存在するSi原子の少なくとも70mol%に結合する。オルガノポリシロキサン材料が、Si結合メチル及び/又は3,3,3-トリフルオロプロピル基に加えて、Si結合ビニル及び/又はフェニル基を含む場合、これらの後者の量は0.001~30モル%が好ましい。
【0022】
好ましくは、オルガノポリシロキサン材料は、主にジオルガノシロキサン単位から構成され得る。オルガノポリシロキサンの末端基は、トリアルキルシロキシ基、特にトリメチルシロキシ基又はジメチルビニル-シロキシ基であることができる。しかし、これらのアルキル基の1つ以上が、ヒドロキシル基、又はメトキシ基若しくはエトキシ基のようなアルコキシ基で置換されることも可能である。いくつかの実施形態において、オルガノポリシロキサン材料は、オルガノシロキサンの混合物を含むことができる。例えば、ある特定の実施形態において、オルガノポリシロキサン材料は、ビニル官能性オルガノポリシロキサン及びヒドロキシル官能性オルガノポリシロキサンを含むことができる。
【0023】
オルガノポリシロキサン材料は液体又は高粘度物質であることができる。オルガノポリシロキサン材料は、25℃で103~108mm2/秒の粘度を有することが好ましい。
【0024】
オルガノポリシロキサン材料は過酸化物により架橋されるか、又は縮合架橋される。適切な架橋剤を用いて、オルガノポリシロキサン材料を架橋する。いくつかの実施形態において、過酸化物架橋剤を利用して、オルガノポリシロキサン材料を架橋する。適切な過酸化物架橋剤は、過酸化物、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジクミルペルオキシド若しくは2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、又はこれらの混合物を含み、好ましくはビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド又は2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンを含む。好ましくは、架橋剤は、1:0.4~0.5:1の比で、好ましくは1:0.4の比でビス(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド(PMBP)及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルヘキサンペルオキシド(DHBP)の混合物を含む。
【0025】
本発明によるオルガノポリシロキサン(A)はまた、補強充填剤及び/又は非補強充填剤を含むことが好ましい。補強充填剤の例は、BET比表面積が少なくとも50m2/gである焼成シリカ又は沈降シリカである。前記シリカ充填剤は、親水性の特性を有していてもよく、又は、例えば、米国特許第5,057,151号に記載されているもののような既知の方法によって疎水化されていてもよい。このような場合、疎水化は、一般に、いずれの場合もオルガノポリシロキサン材料の総重量に基づいて、1~20重量%のヘキサメチルジシラザン及び/又はジビニルテトラメチルジシラザン、並びに0.5~5重量%の水を用いて行われる。これらの試薬は、有利には、適切な混合装置、例えば、混練機又は内部ミキサーに供給され、その中で、補強充填剤を徐々に取り込む前に、オルガノポリシロキサン材料の最初の充填が行われる。
【0026】
非補強充填剤の例は、粉末状の石英、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄又は酸化亜鉛などの金属酸化物粉末、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、及びポリアクリロニトリル粉末又はポリテトラフルオロエチレン粉末などの合成ポリマー粉末である。使用される充填剤はまた、ガラス繊維又は合成ポリマー繊維などの繊維成分を含んでもよい。これらの充填剤のBET比表面積は、50m2/g未満が好ましい。
【0027】
オルガノポリシロキサン材料中に存在する充填剤の量は、いずれの場合もオルガノポリシロキサン材料の100重量部に基づいて、好ましくは1~200重量部、特に好ましくは30~100重量部である。
【0028】
特定の用途に応じて、オルガノポリシロキサン材料に、加工助剤、例えば、可塑剤、顔料、又は安定剤、例えば、熱安定剤のような添加剤を加えることができ、オルガノポリシロキサン材料を架橋又は加硫してエラストマーを得ることができる。添加剤として使用され得る可塑剤の例は、トリメチルシリル基、シラノール基により末端化されたポリジメチルシロキサン、又はビニルシロキサン及びジフェニルシランジオールである。上記のような可塑剤の組合せも利用できる。添加剤として使用され得る熱安定剤の例は、オクタン酸鉄のような脂肪酸の遷移金属塩、鉄シラノレートのような遷移金属シラノレート、及びセリウム(IV)化合物である。使用されるオルガノポリシロキサン材料は、例えば、EP0359251に記載されているような従来の縮合-架橋オルガノポリシロキサン、又は他の既知の付加-架橋材料でもよい。
【0029】
オルガノポリシロキサン材料を調製するのに用いられる各成分は、単一の材料のタイプであってもよいし、又は2種類以上の異なる材料の混合物であってもよいし、これらが一緒に該成分を形成する。いくつかの実施形態において、オルガノポリシロキサン材料は、上記のもの以外の追加成分を含まない。例えば、1つのこのような実施形態では、オルガノポリシロキサン材料は、疎水性の金属窒化物及び炭化物を含まない。
【0030】
好ましくは、組成物はシリコーンポリマーを含む。好ましくは、シリコーンポリマーはビニルメチルポリジメチルシロキサンである。ある特定の実施形態では、シリコーンポリマーは、少なくとも1つのビニルジメチルシロキサン末端単位を含む。これらの実施形態では、ビニルメチルポリジメチルシロキサンは以下の式のものであることができる。
【0031】
【化2】
式中、Yは1000~10,000個のシロキサン単位、好ましくは約7500~10,000個の単位である。他の実施形態において、シリコーンポリマーは、主ポリマー鎖に含まれる少なくとも1つのビニルメチルシロキサン単位を含む。これらの実施形態では、ビニルメチルポリジメチルシロキサンは以下の式のものであることができる。
【0032】
【化3】
式中、X+Yは約500~10,000個のシロキサン単位、好ましくは約7,500~10,000個の単位に等しい。さらに他の実施形態では、シリコーンポリマーは、少なくとも1つのビニルジメチルシロキサン末端単位及び主ポリマー鎖に含まれる少なくとも1つのビニルメチルシロキサン単位を含む。これらの実施形態では、ビニルメチルポリジメチルシロキサンは以下の式のものであることができる。
【0033】
【化4】
式中、X+Yは約500~10,000個のシロキサン単位、好ましくは約7,500~10,000個の単位に等しい。上記のビニルメチルポリジメチルシロキサンの混合物も利用することができる。好ましくは、これらの実施形態では、ビニル基は500~10,000個のシロキサン単位毎に提供される。いくつかの実施形態において、ビニル基は、1000~5000個のシロキサン単位毎に提供される。1つのこのような実施形態では、1200個のシロキサン単位毎にビニル基が提供される。他の実施形態では、シリコーンポリマーは、少なくとも1つの飽和末端単位を含むジメチルポリジメチルシロキサンである。これらの実施形態では、ジメチルポリジメチルシロキサンは以下の式のものであることができる。
【0034】
【化5】
式中、Yは1,000~10,000個のシロキサン単位、好ましくは約7,500~10,000個の単位である。
【0035】
組成物は、金属酸化物、金属含有化合物、ホウ酸、又はホウ酸亜鉛のうちの少なくとも1種を含む。存在する場合、金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化チタン及び酸化バリウムからなる群から選択される。存在する場合、金属含有化合物は加熱時に前記群の金属酸化物を生じる。このような金属含有化合物の例としては、例えば、金属水酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記成分は、常に組成物の総重量に基づいて、1.5~40重量%、好ましくは10~20重量%の量で組成物中に提供される。上記の金属酸化物、金属含有化合物、ホウ酸、及びホウ酸亜鉛のうちの少なくとも1種の混合物も使用することができる。
【0036】
組成物は、少なくとも1つの不飽和基を含む白金錯体を含む。好ましくは、不飽和基は炭化水素基である。好ましい白金錯体の例は、白金-オレフィン錯体、白金-アルデヒド錯体、白金-ケトン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体又は白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(有機ハロゲンの検出可能な含有量を伴う又は伴わない)、白金-ノルボルナジエン(norbornadiene)-メチルアセトネート錯体、ビス(ガンマ-ピコリン)白金二塩化物、トリメチレンジピリジン白金二塩化物、ジシクロペンタジエン白金二塩化物、(ジメチルスルホキシド)(エチレン)白金(II)二塩化物、四塩化白金とオレフィン及び第一級アミン、第二級アミン、又は第一級アミン及び第二級アミンの両方との反応生成物、例えば、sec-ブチルアミンと1-オクテンに溶解した四塩化白金との反応生成物を含む。ある特定の実施形態において、白金錯体は、白金-ビニルシロキサン錯体である。好ましくは、白金-ビニルシロキサン錯体は、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体である。しかし、他の白金-ビニルシロキサン錯体が適している場合もある。白金錯体の使用量は、5~200ppm、好ましくは10~100ppmである。この量は元素白金に基づく。また、組成物中に白金錯体の混合物を用いることも可能である。
【0037】
組成物は雲母を含む。雲母は白雲母又は金雲母の種類であり得る。好ましくは、雲母は白雲母種である。これらの実施形態では、雲母は、式KAl2(F,OH)2又は(KF)2(Al2O3)3(SiO2)6のものであることができる。いくつかの実施形態において、組成物は、100重量部のオルガノポリシロキサン材料に基づいて、少なくとも33重量部の雲母を含む。1つのこのような実施形態では、組成物は、100重量部のオルガノポリシロキサン材料に基づいて、33~100重量部の雲母を含む。他の実施形態では、組成物は、100重量部のオルガノポリシロキサン材料に基づいて、50~100重量部の雲母を含む。他の実施形態では、組成物は、100重量部のオルガノポリシロキサン材料に基づいて、65~100重量部の雲母を含む。
【0038】
好ましくは、雲母は微粉末として提供される。いくつかの実施形態において、雲母は、1~75μmというD50値を有することができる。これは、雲母の粒径分布を表す値である。1つのこのような実施形態では、雲母は25μmというD50値を有することができる。雲母はまた、望ましいアスペクト比(ジェニングス因子)を有することができる。例えば、雲母は、80というアスペクト比を有し得る。
【0039】
ある特定の実施形態では、組成物は、上記の成分を混合することを含む方法によって形成することができる。成分は、例えば、内部ミキサー又は別の適切な混合装置のような装置内で混合することができる。これらの実施形態では、雲母を2回以上にわけて混合物に添加することが好ましい。例えば、ある特定の実施形態では、雲母を混合物に等分して加えてもよい。他の実施形態では、混合物に添加される雲母のポーションは互いに等しくなくてもよい。これらの実施形態では、雲母は、100部の混合物当たり1~30部に相当するポーションで添加することができる。いくつかの実施形態では、混合物は、雲母が添加される前に、上記の他の成分を既に含んでもよい。これらの実施形態において、雲母は、10キログラム(kg)以下のポーションで又は10kgを超えるポーションで添加することができる。
【0040】
混合後、混合物を硬化させる。混合物を所定の時間硬化させる。いくつかの実施形態において、組成物は、混合物を周囲温度で硬化させることによって形成される。混合物を加熱することにより、混合物が硬化するのに要する時間を短縮することができる。ある特定の実施形態では、硬化のために混合物を25~250℃の温度まで加熱することができる。好ましくは、この混合物を約40℃~約200℃の範囲の温度で硬化させる。例えば、湿気硬化、過酸化物硬化、及び放射線硬化などの他の硬化機構を利用して、組成物を形成することができる。
【0041】
好ましくは、硬化によりエラストマーである組成物がもたらされる。また、硬化後、この組成物は610℃という低温で焼結を開始することを可能にする。ある特定の実施形態では、この特性により、組成物は610℃以上の温度でセラミック材料を生成することができる。セラミック材料は層として形成され得、火に曝された場合に組成物が機能を保持することを可能にしてもよい。組成物が低密度を示す場合、特に900℃を超える温度のような高温に曝された場合、組成物はまた、従来のシリコーン組成物よりも高いレベルの機械的特性、より良好な熱老化特性、及びより大きな絶縁能力を示す。さらに、火災の際に形成されるセラミック材料は、先行技術で記載されている混合物よりも、衝突及び衝撃に対して著しく耐性がある。これは、単に安定な灰層を形成するだけである。
【0042】
組成物は、既知のシリコーンゴム組成物と同じ電気的特性及び熱老化特性を示すことができる。さらに、組成物は優れた機械的特性を示す。例えば、ある特定の実施形態では、組成物は400psi以上の引張強さを示す。1つのこのような実施形態では、組成物は400~1200psiの引張強さを示す。組成物の引張強さは、引張試験機を用いてASTM D412に従って測定することができる。ASTM D412に従って組成物の引張強さを測定する際に使用するのに適した引張試験機の例は、Tech-Pro, Inc.が製造するTensiTech III試験機である。いくつかの実施形態において、組成物は100%又はそれ以上の破断点伸びを示す。他の実施形態では、組成物は200%以上の破断点伸びを示す。好ましくは、組成物は200~400%の破断点伸びを示す。ASTM D412に従って及び引張強さを測定する際に、組成物の伸びを測定することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、50以上のショアA硬度を示す。これらの実施形態では、組成物は70以上のショアA硬度を示すことができる。好ましくは、組成物は、70~100のショアA硬度を示す。組成物のショアA硬度は、硬度計を用いてASTM D2240に従って測定することができる。ASTM D2240に従ったショアA硬度測定に適した硬度計の例は、Instronが販売する携帯型硬度計タイプAである。さらに他の実施形態では、組成物は100N/mm以上の引裂強度を示す。これらの実施形態では、組成物はインチ当たり100~150ポンドの引裂強度を示すことができる。組成物の引裂強度は、Tech-Pro, Inc.が製造するTensiTech III試験機を用いて、ASTM D624、試験ダイBの試験片に従って測定することができる。さらに、組成物は、例えば、1.40~1.60の望ましい比重を示すことができる。ASTM D792に従い、静圧比重試験機を用いて組成物の比重を測定することができる。ASTM D792に従った比重測定に適した静圧比重試験機の一例として、Sartorius Groupが製造及び販売する密度分析てんびんキットを搭載したSECURA224-1S分析スケールがある。
【0043】
前記したように、組成物は良好な機械的特性、熱老化特性及び絶縁特性を示す。さらに、組成物は、優れたゴム状弾性及び/又は熱反射特性も示すことができる。このように、本組成物は、火災安全用途をはじめとする広範な用途を有する。また、この組成物は、例えば、押出プロセスのような既知の方法においても、加工可能であり、かつ使用しやすい。これらの特性のため、組成物はケーブル及びプロファイルを形成するために、利用することができる。これは該組成物を含むことができる。ケーブルは、通信ケーブル又はエネルギーケーブルであり得る。プロファイルは、部屋、キャビネット又は安全のための耐火スクリーニングのための発泡体若しくはコンパクトガスケット、又はロケット・エンジン若しくは他の航空宇宙システムの裏張りにおけるアブレーション制御のための層であることができる。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、組成物の実施形態をさらに説明し、開示することを目的としてのみ提示される。以下に記載される実施例2は、本発明の範囲内の組成物の実施形態を示す。
【0045】
[実施例1]
トリメチルシロキシ基でエンドキャップされ、99.93モルパーセントのジメチルシロキサン単位及び0.07モルパーセントのビニルメチルシロキサン単位から構成され、25℃で8*106mPa*sの粘度を有するジオルガノポリシロキサン100部を、150℃で操作される混練機中で、まず気相中に熱分解で生じ、200m2/gの表面積を有する二酸化ケイ素50部、次いでトリメチルシロキシ基でエンドキャップされ、25℃で96mPa*sの粘度を有するジメチルポリシロキサン1部、次に各末端単位にSiC結合したヒドロキシ基を有し、25℃で40mPa*sの粘度を有するジメチルポリシロキサン7部、粒径が>10μでアルカリ金属酸化物含有率が<0.5重量%である酸化アルミニウム36部及び0.3重量%の白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体と混合する。
【0046】
[実施例2]
次に、実施例1の85重量部をELASTOSIL(R) V 1200 A 15重量部と混合した。Wacker Chemie AGが製造及び販売するKneader MachineryモデルKD75-250である内部75Lミキサーを用いて混合した。均一なブレンドを達成するために十分な混合時間を適用した。70重量部の雲母(IMERYS Suzorite(R) 325-HK)及び0.6重量部の過酸化物架橋剤(Varox(R) DBPH、Vanderbilt Chemicals)も加えた。雲母は、各添加間で混合しながら、経時的に3つの等しいポーションで添加される。全ての雲母を混合物に添加した後、架橋剤を添加し、組成物が均一になるまで混合した。
【0047】
実施例2の組成物を350°Fで10分間硬化させた。硬化後、実施例2の組成物は、比重1.48、引張強さ562psi、破断点伸び252%、ショアA硬度75、破断強度122ポンド/インチを示した。比重、破断時の引張強さ、破断点伸び、ショアA硬度、及び引裂強度を上記に規定した方法に従って決定した。
【0048】
前記の詳細な説明から、真の範囲及び精神から逸脱することなく、様々な修正、追加、及び他の代替実施形態が可能であることは明白である。本明細書で議論される実施形態は、本発明の原理の最良の例示と、それによって当業者が様々な実施形態で本発明を使用することを可能にし、また意図される特定の使用に適した種々の修正を加えることを可能にするためのその実際的応用を提供するために選択され、記載された。認識されるべきであるが、このような修正及び変更は全て本発明の範囲内である。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a) 過酸化物架橋又は縮合架橋オルガノポリシロキサン材料、
(b) シリコーンポリマー、
(c) 酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化チタン及び酸化バリウムからなる群から選択される金属酸化物、加熱時に該群の金属酸化物を生じる金属含有化合物、ホウ酸又はホウ酸亜鉛の少なくとも1種、
(d) 少なくとも1つの不飽和基を含む白金錯体、及び
(e) 100重量部のオルガノポリシロキサン材料に基づいて33~100重量部の雲母
を含み、610℃以上の温度でセラミック材料を生成する組成物。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサン材料が、過酸化物架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記雲母が、式KAl
2(F,OH)
2又は(KF)
2(Al
2O
3)
3(SiO
2)
6のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記シリコーンポリマーが、ビニルメチルポリジメチルシロキサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記白金錯体が、白金-ビニルシロキサン錯体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記白金-ビニルシロキサン錯体が、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体である、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサン材料がエラストマーであり、ビニル官能性オルガノポリシロキサン及びヒドロキシル官能性オルガノポリシロキサンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属酸化物が酸化アルミニウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物が酸化アルミニウムであり、前記白金錯体が白金-ビニルシロキサン錯体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
補強充填剤、非補強充填剤、又はそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記補強充填剤がシリカを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項12】
100重量部の前記オルガノポリシロキサン材料に対して、50~100重量部の雲母、好ましくは65~100重量部の雲母を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が1.40~1.60の比重を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
成分(a)~(e)を混合することを含む、請求項1に記載の組成物を調製する方法。
【請求項15】
導体の絶縁が請求項1に記載の架橋組成物を含む、ケーブル。
【請求項16】
請求項1に記載の架橋組成物を含むプロファイル。
【国際調査報告】