(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】スペクトル領域光干渉断層撮影用集積光学系
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20231219BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20231219BHJP
G02F 1/313 20060101ALI20231219BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 625
G01N21/17 630
G02F1/313
G02B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528670
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 GB2021052954
(87)【国際公開番号】W WO2022101643
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523176369
【氏名又は名称】シロトン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】アレン・ユアン
(72)【発明者】
【氏名】プライス・アラスデア
【テーマコード(参考)】
2G059
2H149
2K102
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE09
2G059EE11
2G059GG01
2G059GG09
2G059JJ01
2G059JJ30
2G059KK01
2G059LL10
2H149AA22
2H149DA02
2K102AA17
2K102AA28
2K102BA08
2K102BA16
2K102BB04
2K102BC05
2K102BC10
2K102BD00
2K102DA04
2K102DB00
2K102DB02
2K102DB04
2K102DC07
2K102EA05
2K102EA21
2K102EA25
2K102EB22
4C316AB03
4C316AB04
4C316AB08
4C316AB11
4C316FA09
4C316FY01
(57)【要約】
光干渉断層撮影(OCT)スキャンをするための装置について説明する。本装置は、第1信号と、参照信号と、光集積回路(11)と、干渉信号分析手段とを提供する。光集積回路(11)は、被写体(13)から反射された反射第1信号を受信する。光集積回路(11)は、反射第1信号を参照信号と結合して干渉信号を提供する。光集積回路(11)内の可変遅延器(18)は、参照信号と第1信号のうちの一方の光路長を変化させて、参照信号の光路長を反射第1信号の光路長に一致させる。可変遅延器(18)は、異なる長さの経路間で選択するための少なくとも1つの二値スイッチを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層撮影(OCT)スキャンに適した装置であって、
第1信号を提供する手段と、
参照信号を提供する手段と、
光集積回路であって、
(i)被写体から反射された反射第1信号を受信する手段と
(ii)前記反射第1信号を前記参照信号に結合して干渉信号を提供する手段と、
(iii)前記参照信号と前記第1信号のうちの一方の光路長を変化させて、前記参照信号の光路長を前記反射第1信号の光路長に一致させる可変遅延器であって、異なる長さの経路の間で選択するための少なくとも一つの二値スイッチを備える可変遅延器とを備える光集積回路と、
前記干渉信号を分析する手段と
を備える、装置。
【請求項2】
前記可変遅延器は、一連の二値スイッチと、長さの異なる選択可能な経路要素を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記経路要素の長さはL、2L、等の2
NLまでであり、Nは整数である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記可変遅延器は、0からL(Lは2×2
N-1)の段階で遅延を行う二値遅延器である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記可変遅延器は、N個の遅延経路要素と、N+1個の二値スイッチとを有し、各遅延経路要素の前に位置する1つの二値スイッチは、直接経路と遅延経路要素とを選択的に切り替え、出力側にある1つの二値スイッチは、前記直接経路又は前記最終遅延経路要素から前記可変遅延器の出力へ選択的に切り替える、請求項2、3、又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記スイッチは双方向多重化又は逆多重化スイッチである、請求項2~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記可変遅延器は前記参照信号に作用する、先の請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記長さの異なる経路のうちの一つは、位相シフタを有する調整可能な迷路を含む、先の請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1信号を提供する手段は広帯域光源であり、前記干渉信号を分析する手段は分光器である、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記分光器は、アレイ型導波路回折格子、AWG、リングバス、リングファンアウト、二値非対称マッハツェンダ干渉計、AMZI、及びAMZIファンアウトのうちの1つとして実装されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1信号を提供する手段は掃引レーザ光源であり、前記干渉信号を分析する手段は点光検出器である、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記参照信号を提供する手段はビームスプリッタであり、前記ビームスプリッタは前記第1信号をビームスプリットする、先の請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記結合する手段は2×2カプラであり、前記2×2カプラは、方向性カプラ、マルチモード干渉計、及びマッハツェンダ干渉計のうちの1つである、先の請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記光集積回路は、
前記第1信号を一組の撮像光学系に導波して前記被写体に導き、前記被写体からの反射光を前記一組の撮像光学系を介して前記結合する手段へ導波するための第1経路と、
前記参照信号を反射板へ導き、前記結合する手段へ戻すための第2経路を備える、先の請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1経路及び前記第2経路は、前記第1信号及び前記参照信号の偏光をそれぞれ維持するための偏光維持ファイバを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記分析された干渉信号を遠隔で見る手段は出力画像処理装置であり、前記可変遅延器の遠隔制御を行う手段はオンチップ制御ユニットである、先の請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
光干渉断層撮影(OCT)スキャンに適した方法であって、
光源によって提供される第1信号を提供することと、
参照信号を提供することと、
被写体から前記第1信号を反射し、反射第1信号を前記参照信号に結合して干渉信号を提供することと、
前記参照信号の光路長を前記反射第1信号の光路長に一致させるよう、前記参照信号と前記第1信号のうちの一方の遅延を可変遅延器によって調整することであって、異なる長さの経路間で選択することを含む、調整することと、
前記干渉信号を分析することと
を含む、方法。
【請求項18】
前記干渉信号においてピークが同定されるまで、前記異なる長さの経路間で自動的に選択することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記干渉ピークを同定するように、前記干渉信号に対して画像認識を行うことを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用、例えば緑内障の要因を検出するための、例えばスペクトル領域での光干渉断層撮影(OCT)スキャンを行うための装置及び方法に関する。本発明は、光集積回路技術を用いたOCTスキャナを実現しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層撮影(OCT)スキャンは、低コヒーレント光を用いて、例えば眼球網膜やその他の生体組織の媒体内を2次元及び3次元の画像を撮影する撮像技術であって、眼科で一般的に使用されている。媒体によって吸収率や反射特性が異なるため、媒体内のさまざまな構造物に異なる波長が吸収、反射されることで、深さ1~2mmまでの構造物を画像として示すスキャンを可能にしている。生体組織は主に水(約80%)で構成されており、水や生体媒体の吸収率や散乱特性がそれぞれ低いため、従来は可視光線が利用されている。
【0003】
1点の深さ方向のスキャン、すなわちAスキャンは、通常、中心波長を特徴とする光源を使用して行われ、対象点における媒体の構造特性に対応する反射波長から固有のスペクトルを得ることができる。点状スキャンを並べたラインスキャン、すなわちBスキャンを行うと、媒体の断面スキャンが得られる。エリアスキャン、すなわちCスキャンは、直交する2軸(従来はX軸とY軸)のラインスキャンで構成され、媒体の3次元スキャンである。
【0004】
Aスキャンは、通常、適切なソースからの単一の光入力信号を2つの信号にまず分割することによって実行される。本明細書において、単一の光入力信号を「分割する」とは、2つの位相ロックされた信号、例えば位相ロックされたレーザを提供することを含む。
【0005】
ほぼ均等の分割が好ましく、それにより各分割信号は初期入力信号の50%のパワーを有するが、これは必須ではなく、後に説明するように、サンプル経路によっては偏った分割となることがある。初期信号の分割により得られる測定信号と参照信号は、それぞれサンプル経路と参照経路で送信され、それぞれの経路で反射して戻る。それぞれの経路長は、経路差が光源のコヒーレンス長内に収まるように一致させる。2つの信号は重乗され、干渉パターンが得られる。このパターンをスペクトル分析することで、スキャンされる媒体の点に対応したスペクトルを得ることができる。
【0006】
OCTスキャンは、時間領域(TD)又は周波数領域(FD)で行うことができる。TD-OCTでは、参照経路の長さを時間的に変化させて2つの分割信号の干渉を調整し、強度に対する参照ミラーの変位を示す出力強度を得ることができる。FD-OCTでは、2つの信号の広帯域干渉を求め、フーリエ変換を行うことで、強度に対する深さを示すスペクトルを得ることができる。FD-OTCスキャンに対する2つの一般的なアプローチには、スペクトル領域(SD)と掃引ソース(SS)OCTがある。眼科用のフォトニクス集積回路(PIC)上の既存のSD-及びSS-OCTスキャナの例は、E. Rankらによる「眼科用の840nmにおける光集積回路上のスペクトル領域及び掃引光源光干渉断層計」[2019] Proc. of SPIE-OSA Vol. 11078で見ることができる。
【0007】
既存のOCT装置では、参照光路長とサンプル光路長を一致させることが課題である。
【0008】
検査対象のサンプルには個体差があるため、異なるサンプルのサンプル経路長は個体ごとに異なる。例えば、眼球の大きさ(深さ)は、個人差が大きい。また、OCT装置の使用者の眼への提示は、操作者や操作の仕方によって(例えば、被験者の顔への装置の差し出し方によって)変動したり、被験者の眼窩、頬骨、額等の形状に依存する場合がある。
【0009】
Xingchen Jiらによる「オンチップの調整可能な光遅延線」 APL Photonics 4, 090803 (2019)では、チップ上の可変遅延線としてマイクロヒーターを集積した超低損失高閉じ込めSi3N4導波路の使用を開示している。OCT装置に必要な遅延の変化を実現するためには、この文献に記載されているような可変遅延線を非常に長くする必要がある。光遅延線が非常に長いと、不要なばらつきをもたらすという問題がある。また、遅延線の総延長によりチップ面積が大きくなり、かなりの加熱を必要とするため、ファイバ接続の問題や遅延線の遅延変更時の整定時間が長くなるという問題を招き、チップが不安定になり得る。
【0010】
非常に細かい調整が必要である。現在の技術では、OCT装置の操作は臨床医などの有資格者でなければできない。経験不足の人や、有資格者であっても有資格者の支援が得られない場合は、小型で持ち運び可能なOCTスキャン装置で、安定した信頼性の高いOCTスキャンを実施することができない。特に、技術を拡張して発展途上国で使用する際に問題点となる。
【発明の概要】
【0011】
本発明によれば、光干渉断層撮影(OCT)スキャンに適した装置を提供し、該装置は、第1信号を提供する手段と、参照信号を提供する手段と、光集積回路とを備える。光集積回路は、(i)被写体から反射された反射第1信号を受信する手段と、(ii)反射第1信号を参照信号に結合して干渉信号を提供する手段と、(iii)参照信号と第1信号のうちの一方の光路長を変更させて、参照信号の光路長を反射第1信号の光路長に一致させる可変遅延器とを備え、可変遅延器は、異なる長さの経路の間で選択するための少なくとも1つの二値スイッチを備える。干渉信号を分析するための手段が設けられている。
【0012】
第1信号と参照信号は、好ましくは、いずれも共通の光源から得られる光信号である。
【0013】
可変遅延器は、好ましくは、参照信号に作用するが、参照信号にも適切な固定遅延が与えられている場合には、第1信号に作用してもよい。
【0014】
可変遅延器を提供する手段の遅延部品は、集積位相シフタを有する整調可能螺旋又は整調可能スイッチ遅延であってもよい。円形の螺旋は曲率が低いため好ましいが、蛇行パターンや迷路に凝縮された他の経路等を螺旋の代用として使用することができる。
【0015】
第1信号を提供する手段は、好ましくは広帯域光源であり、干渉信号のスペクトルを分離する手段は、好ましくは分光器である。分光器は、アレイ型導波路回折格子(AWG)、リングバス、リングファンアウト、二値非対称マッハツェンダ干渉計(AMZI)、及びAMZIファンアウトのうちの1つとして実装することができる。
【0016】
第1信号を提供する手段は、掃引レーザ光源であってもよく、その場合、干渉信号スペクトルを分離する手段は、相補型金属酸化膜半導体カメラなどの点光検出器であってもよい。
【0017】
参照信号を提供する手段は、好ましくは、第1信号を好ましく分割するビームスプリッタである。
【0018】
PIC内の第1経路は、好ましくは、第1信号を一組の撮像光学系に導波して被写体に導き、被写体からの反射光を一組の撮像光学系を介して結合手段に戻すように導波する。PIC内の第2経路は、好ましくは、参照信号を反射板へ導き、結合手段へ戻す。第1経路及び第2経路は、好ましくは、第1信号及び参照信号の偏光をそれぞれ維持するための偏光維持ファイバを備える。
【0019】
本発明の別の態様によれば、光干渉断層撮影(OCT)スキャンに適した方法を提供する。この方法は、光源によって提供される第1信号を提供することと、参照信号を提供することと、被写体から第1信号を反射し、反射第1信号を参照信号に結合して干渉信号を提供することと、参照信号の光路長を反射第1信号の光路長に一致させるように、参照信号と第1信号のうちのいずれか一方の遅延を可変遅延器によって調整することと、干渉信号を分析することとを含む。調整することは、異なる長さの経路間で選択することを含む。
【0020】
可変遅延器は、好ましくは、干渉信号において干渉ピークが同定されるまで調整される。これは、干渉信号に対して画像認識を行い、干渉ピークを同定することで実現することができる。
【0021】
本発明は、好ましくは、2つの信号の広帯域干渉を利用してFD-OCTスキャンを行う。干渉信号に対してフーリエ変換を行い、強度に対する深さを示すスペクトルを得る。
【0022】
スペクトル領域(SD)スキャンが好ましいが、掃引ソース(SS)スキャンも可能である。
【0023】
次に、本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照しながら、例示的にのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】OCTスキャナの一実施形態の機能ブロック図である。
【
図2】OCTスキャナの更なる実施形態の機能ブロック図であり、モジュールの構成要素を示している。
【
図6】分光器の一実施形態であるアレイ型導波路回折格子(AWG)を示す。
【
図7】分光器の一実施形態であるリングバスを示す。
【
図8】分光器の一実施形態であるリングファンアウトの構成例を示す。
【
図9】分光器の一実施形態である二値非対称マッハツェンダ干渉計(AMZI)を示す。
【
図10】
図10は、分光器の一実施形態であるAMZIファンアウトを示す図である。
【
図11】
図11は、OCTスキャナの更なる実施形態の機能ブロック図であり、光集積回路(PIC)の構成要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、様々な実施形態を実現するのに適したOCTスキャナの一例の機能ブロック図である。
図1は、光入力信号を、光ポート14を介して光集積回路(PIC)モジュール11に提供する広帯域光源10を示す。モジュール11は、偏光維持(PM)ファイバ15によって、一組の撮像光学系12に光学的に接続されている。撮像光学系12は、垂直軸周りに回転可能な2つの独立したミラーを含むスキャンユニットを備える。撮像光学系12は、不定長の自由空間16を介して、人間の眼などのサンプル13に結合されている。操作時、広帯域光源10から提供される光入力信号は、モジュール11のポートに送信される。光源での偏光制御は任意であるが、以下に説明する理由により不要である。信号は、モジュール11からPMファイバ15を経て、撮像光学系12に至る外向きの光路を辿る。撮像光学系12の2つの独立したミラーは、信号が一組の撮像光学系12を通過する際、信号の経路のx軸及びy軸方向の動きを制御する。信号の経路は撮像光学系12から出て引き続き、対象サンプル13に入る。出力画像の1点(例えば1画素)について、信号はサンプル13から反射し、一組の撮像光学系12及びPMファイバ15を通ってモジュール11に戻り、そこで信号がモジュール11によって記録、解釈される。
【0026】
モジュール11が一組の撮像光学系12から信号を受信し、対象上のある点を捉えると、別の点又は画素に対して、上述の信号の経路が繰り返される。撮像光学系12のx軸ミラーとy軸ミラーの一方(例えばx軸ミラー)は、次の点又は画素のためにその位置を調整し、その画素の出力画像をもたらす。これを1ライン分繰り返すことで、サンプル13のラインスキャンが実現される。次に、もう一方のミラー(y軸ミラー)を段階的に回転させて、光を隣接するラインに向け、これを繰り返して別のラインスキャンを行う。すべてのラインがスキャンされると、対象の完全なOCTの3D画像が取得される。指紋、マウスの耳、ヒトの網膜等のこのような画像の例は、E.Rankらによる上記参考論文に見ることができる。
【0027】
スキャンは、ラスタースキャン(定常速度掃引又は階段状など、任意の適切なスキャンパターンのラスタースキャン)であってもよいが、個々のピクセルを備える必要はなく、所定のラインに対して連続的であってもよい。
【0028】
偏光維持ファイバ15及び偏光維持ファイバ23を使用することにより、いずれか又は両方のアームに対する偏光制御が不要になる。
【0029】
あるいは、PMファイバ15及びPMファイバ23の代わりに、単一モードファイバ(非偏光保存)を使用することができる。この場合、ファイバを下る送信により偏光が回転し、モジュールや集積部品の動作が最適化されない。偏光コントローラーで集積デバイスをオン/オフ制御すれば、ファイバ内の回転を中和すことができる。
【0030】
図2は、様々な実施形態の実施に好適な、更なる例のOCTスキャナの機能ブロック図である。上記と同様に、広帯域光源10は、モジュール11に光入力信号を提供する。モジュール11は、初期入力信号を2つの信号に分割する2×2カプラ17を有する。一方の分割信号は、内部経路24に沿って可変遅延器18に送信される。可変遅延器18は、制御経路29を介して内部制御モジュール22により制御される。この分割信号はPMファイバ23に沿って反射板19(好ましくはミラー)まで続き、そこで信号はPMファイバ23、可変遅延器18、及び内部経路24によって提供される経路を介して、2×2カプラ17へ反射される。同時に、他方の分割信号は、PMファイバ15につながる内部経路25に沿って、撮像光学系12に送信される。この分割された信号は、不定長の自由空間16に沿って送信され、信号が対象サンプル13に入射する。信号は、一組の撮像光学系12と、PMファイバ15と、内部経路25とによって提供される経路を介して、2×2カプラ17へ反射される。
【0031】
カプラ17では、2つの受信信号が互いに干渉しあい、得られた信号が分光器20に渡される。分光器20は、受信した信号のスペクトルの内容を分析する。所望のスペクトル(可視スペクトル全体が望ましいが、IRスペクトルやUVスペクトルに及ぶこともある)全体にわたって、異なる波長に対する強度をアナログ又はデジタル値で示すものである。スペクトル内容は、画像を生成するための出力画像処理装置21に配信され、画像処理装置21のディスプレイ上に表示されるか、又はその処理装置によって分析されてもよい。あるいは、保存して、遠隔視用に送信されてもよい。処理装置21は、撮像光学系のXミラーとYミラーの位置を「知っている」ので、画像を構築することができる。すなわち、対象に対するスキャンを制御し、スキャンの各ポイント/ピクセル/ラインの完全なスペクトル結果を受信するので、選択した各空間位置の結果から画像を構築することができる。
【0032】
2×2カプラ17は光源10からの広帯域光の2つの信号への分割し、好ましくは、ほぼ均等分割し、それにより分割信号がそれぞれ初期の入力信号のパワーの50%を有するが、これは必須ではなく、より大きな割合が撮像光学系(これはより損失の多い経路である)を通過し、より小さな割合が反射板19を通過するように、不均等に分割してもよい。したがって、60対40の分割、70対30の分割、あるいは80対20の分割、さらには90対10の分割が、撮像経路に有利な場合がある。
【0033】
説明したように、一方の分割信号は、内部経路24に沿って可変遅延器18に送信される。この経路は、参照信号を提供する。可変遅延器18は、後に説明するように、一組の撮像光学系12からサンプル13までの個人特有の信号経路長を調整するために、内部制御モジュール22を使用する個人により制御経路29を介して予め定義されている。
【0034】
参照信号は、カプラ17から反射板19まで設定された距離を進むため、それに対応する設定された遅延を有する。対象サンプル13からの信号は、カプラ17から撮像光学系12までの距離と対象サンプル13までの自由空間16の不定長の和に相当する、固有の遅延を有する。カプラ17は、受信した2つの分割信号を結合し、干渉信号を生成する。干渉信号は分光器20に送信され、分光器20内の干渉計により干渉信号の相互相関が比較される。
【0035】
信号が干渉するためには、信号が1つのコヒーレンス長内にあることが必要で、2つの分割信号の経路長が一致したときに干渉のピークが現れる。干渉レベルを観察することにより、自由空間16が不定長であることによる追加遅延を分光器20で決定することができ、参照信号経路の遅延を対象信号経路にほぼ一致させることができる。
【0036】
ある実施形態では、この比較から推測される情報を使用すれば、可変遅延器18を手動で調整して、反射板経路長を対象サンプル13経路長に一致させることができる。これにより、ユーザ(例えば、画像処理装置21によって生成された画像を見る検眼医)は、遅延を調整して画像の鮮明度を高めることができる。
【0037】
検眼医は、画像を遠隔地(例えばインターネット経由)から見ることができ、可変遅延器18を遠隔制御することができる。
【0038】
このように、個々の患者ごとに可変遅延器18を調整できるということは、検眼医が個々の患者ごとにOCTスキャナの物理的装置を調整することを必要とせずに、同じ位置に保つことができることである。撮像光学系12は、経験の浅いオペレータが頭の位置や眼の位置の要件がそれほど厳しくない方法で光学系を患者の眼に対して保持できるように、「現場」で使用するために、携帯可能で堅牢なものにすることができる。オンチップ可変遅延器を調整することで、頭や目の位置のより大きな変化を許容することができる。
【0039】
さらなる例として、可変遅延器18を調整するための適応学習又は人工知能画像処理プログラムの実装が考えられる。例えば、プログラムは個人の眼をスキャンし、その結果の画像を干渉パターン、特にピーク干渉のパターンとして認識できるまで、可変遅延器を調整することができる。このように、あらかじめ設定した閾値に応じて、両方の分割信号の遅延がほぼ一致する。
【0040】
個人のデータを保存しておけば、その個人を再びスキャンする場合に、プログラムが直ちに可変遅延器18をその個人特定且つ特有の経路長に調整することができる。
【0041】
2×2カプラ17の様々な実施形態を、
図3A、
図3B、及び
図3Cに示す。
図3A~
図3Cを参照すると、カプラ17は、方向性カプラ30、マルチモード干渉計(MMI)31、及び集積位相シフタ33を有するマッハツェンダ干渉計(MZI)32のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0042】
図3A~
図3Cを参照すると、方向性カプラ30及びMMI31は、入力する光信号を分割し又は結合して干渉させる。入力する信号は、その光パワーに関して少なくとも2つの出力信号に分割される。分割の比率は、方向性カプラやMMI31の製作、及び設計によって予め決定されている。少なくとも2つの入力信号を組み合わせることで、すべての入力信号のパワーを合計した出力信号が生成されるが、出力時のパワー分布は入力経路間の光位相差に依存する。
【0043】
MZI32は、MZI32の2つの中間内部経路の間で、もともと1つの光源から分割された2つのコリメート信号又は導波光信号の間に、位相シフタ33を介して可変位相差を導入する。
【0044】
ある実施形態では、カプラ17は、MZI32で構成されてもよく、MZI32は、2つの平衡した2×2カプラ34及び35を備えていてもよく、カプラは、方向性カプラ30又はMMI31、タップ導波路36、光検出器37、及び内部制御フィードバックブロック38であってもよい。
【0045】
動作時、広帯域光源10からの光入力信号は、モジュール11と、MZI32によって具現化されたカプラ17とに送信される。分割信号のパワーは、上述したとおりである。
【0046】
各分割信号は、それぞれ内部経路24及び25に進む。分割信号がそれぞれの経路から反射板19及び対象サンプル13に戻ると、それぞれMZI32に進む。
【0047】
MZI32は、2つの入出力光モード間で調整可能な分割比を提供することができる、調整可能な2×2カプラとして使用され得る。
【0048】
MZI32内では、中間位相シフタ33が分割比を制御し、2つの入力される信号をそれぞれ送信するMZI32の2つの中間内部経路の間に位相差をもたらす。タップ導波路36は、2×2カプラ35から少量の信号(通常1%程度)を取り出し、光検出器37に送り、光検出器37で光パワー位相が測定される。この測定により、MZI32の分割比を推定することができる。この情報は、フィードバック制御ブロック38にフィードバックされ、MZI32の干渉信号における分割比、ひいては位相を最適化するために使用される。
【0049】
この位相シフトは、内部制御フィードバックブロック38を使用して、ガイド材の屈折率を電子的に制御して変更することで行うことが可能である。例えば、熱光学的に(ヒーターを用いて)、キャリア効果を利用して(アクティブキャリアの空乏領域又は挿入領域を用いて)、微小電気機械システム(MEMs)によって、あるいはその他の屈折率を変化させる手段によって、ガイド材料の屈折率を変更することができる。
【0050】
2つの信号を結合することで、干渉が得られる。この得られた干渉信号は、MZI32から分光器20に送信される。
【0051】
このように、MZIは2×2カプラの分割比を調整することが可能である。この「全体的な」動作は、MMIや方向性カプラと同じ(つまり、干渉し、2つの信号を分割する)であるが、MZI構成では中間位相シフタを介した分割比の調整が可能である。原理的には、100対0から0対100までの分割調整が可能である。
【0052】
可変遅延器18の様々な実施形態を、
図4及び
図5に示す。
図4は、少なくとも1つの集積位相シフタ33を有する可変螺旋導波路40を示す。導波路40の螺旋状の経路は、モジュール17の参照信号アームに追加の所定の経路長を提供し、ひいては自由空間16の平均長を近似する初期遅延を対象サンプル13に提供する。導波路の温度はオンチップ・ヒーターによって調整することができ、螺旋導波路40の経路長を長くしたり短くしたりすることで、参照信号に加えられる追加遅延を増減させることができる。
【0053】
誘導された遅延は、固定遅延と微調整遅延で表すことができる。固定遅延は、ファイバ13の光路を、撮像光学系12と、プローブ経路15、16との経路長の合計にほぼ一致させることができる。固定遅延は通常約40~60cmであるが、撮像光学系が装置の他の部分と同位置にない場合は、さらに長くしてもよい。微調整遅延は、数十ミリ程度、例えば80mmまで、経路長を変化させる必要があるが、アプリケーションによっては、より低い範囲(例えば10~20mm)でも非常に有効である。これらの範囲は、OCTシステムで必要とされる典型的なものである。微調整遅延は、約1mm以下刻みで段階的に実施することができ、総遅延が段階的に変更するように調整される。
【0054】
位相シフタ33は、1つだけの場合、その中心で導波路40の経路の一部を覆い、「S」字を形成する。これにより、通過するあらゆる信号に位相シフトが適用される。位相シフタが複数の場合は、導波路40の経路に沿って任意に分布させてもよい。
【0055】
図5は、いくつかの集積された調整可能なスイッチ511、512、513、514、515を有する二値遅延器50を示し、「L」は予め定義された単位遅延を意味する。二値遅延器50の上側の「レール」は、光ファイバ、自由空間、又はそれぞれ長さL、2L、4L、8Lの集積光遅延線52、53、54、55を備え、集積光遅延線52、53、54、55は、調整可能なスイッチ511、512、513、514、515それぞれの間で2
n単位遅延に対応する2
n桁の大きさを有し得る(nは正の整数)。下側のレールは、非遅延経路要素56からなる経路長にさほど遅延を与えない。2つのレールを組み合わせることで、経路長を再プログラムすることができ、参照信号に対する所望の遅延を与えることができる。
【0056】
動作時、Lの倍数が所望の遅延に対して計算され、調整可能スイッチは信号が所望の遅延に一致する経路長を進むように構成されている。
【0057】
長さLと遅延数nは、光遅延に所望される最小と最大の調整長に依存する。Lは、好ましくは0.1mm~数十mm程度であり、好ましくは0.5mm~20mm程度、より好ましくは1mm~10mm程度である。
【0058】
例えば、Lは約0.5mmであり、5mmの遅延が必要な場合、プログラムされた経路の長さは10Lである。この例では、二値遅延器50は、信号が遅延線52と54に沿って進むように、長さ20Lと22Lの合計5Lの遅延経路要素を導入してプログラムできる。戻ってくる光は同じ経路を通るので、導入された遅延の合計は、この場合、10L又は5mmとなる。
【0059】
他の例では、Lの値が0.5mmであれば、20mmの遅延が必要な場合、プログラムされたパスの長さは40Lである。二値遅延器50は、信号が遅延線54(又は22L)及び24Lに沿って進むように予めプログラムすることができる。ただし、遅延線24Lは図示していない。この場合も、戻ってくる光は同じ経路を通るので、この例では、導入された遅延は合計で20mmとなる。
【0060】
また、スイッチは、非MZIの、例えば、導波路接続部を物理的に移動して切り替えるように動作するものであってもよい。
【0061】
調整可能スイッチ511、512、513、514、515は、個々の双方向スイッチのようなものである。各MZIは、MZIの下部又は上部出力への切り替え(選択、位相シフトを介する)を可能にする。位相シフトを調整することで、100対0又は0対100からの切り替え(すなわち、2つの出力間の切り替え)が可能である。スイッチ511、512、513、514、515は、加熱されることにより作動して、下部レールから上部レールへの信号経路を変更するが、スイッチ511、512、513、514、515のデフォルト設定(すなわち、加熱しない場合)では、信号を下部レールに沿って送信する、又はその逆である。あるいは、調整可能スイッチ511、512、513、514、又は515は、加熱することにより作動して、信号経路を現在のレールから他のレールに変更してもよい。
【0062】
遅延線55が最後の切り替え可能な遅延である場合、最後のスイッチ515は、信号を出力520にもたらすためのデマルチプレクサとして機能する。
【0063】
もちろん、スイッチや遅延経路素子の数は少なくても多くてもよく、長さ順に配置する必要はない。
【0064】
1つの出力/遅延長を何通りにも切り替える必要性がある場合がある(マルチプレクサ)。マルチプレクサは、多数の光路に「ファンアウト」する多数のカスケードMZIや、より複雑なN×N(単純な2×2ではない)のMZI構造であってもよい。これら(2×2のMZ及びN×NのMZI)は、それぞれ前述のように位相シフトによって制御される。
【0065】
異なる長さの経路間で選択する切替可能な遅延素子は、遅延線の全長が短くなるため、ばらつきとチップのサイズが小さくでき、また、いつでも一度にアクティブにする必要のあるヒーターの数が減るため、さらにばらつきを減らし、遅延経路を変更する際の遅延線の整定時間を短くし、チップの安定性を向上させる点で、他の可変遅延器の配置よりも有利である。
【0066】
ある実施形態では、二値遅延器50と、少なくとも1つの位相シフタ構成を有する可変螺旋導波路40の組み合わせバージョンも、可変遅延器18に実装することができる。二値遅延器50は、好ましくは、可変遅延器18を粗調整するために使用され、少なくとも1つの位相シフタを有する可変螺旋導波路40は、好ましくは、可変遅延器18を微調整するために使用されるが、二値遅延器50及び少なくとも1つの位相シフタを有する可変螺旋導波路40は、両方が可変遅延器18を粗調整し、両方が可変遅延器18を微調整する構成、又は二値遅延器50が可変遅延器18を微調整し、少なくとも1つの位相シフタを備えた可変螺旋導波路40が可変遅延器18を粗調整する構成であってもよい。
【0067】
分光器20の様々な実施形態を、
図6~
図10に示す。
図6は、入力導波路62と、出力導波路67から続く一組の光検出器64とを有するアレイ導波路格子(AWG)60を示す。入力される入力信号61は、自由伝搬領域(FPR)65を介して集積導波路63のアレイに送信される。導波路は異なる長さを持つため、入力信号61に異なる位相シフトを与え、それにより、第2のFPR66において信号の異なる波長を分離する。これらの分離された波長は、一組の光検出器64につながる出力導波路67のアレイによって受信される。各光検出器64は、異なる波長を受信する。そして、一組の光検出器が、入力信号61のスペクトルを表示する。
【0068】
図7は、入力61と、平行な線形状に配列された光リング共振器71の上方に位置する線状に配列された光検出器64とを有するリングバス70を示し、1つの光リング共振器71は1つの光検出器64と対をなしている。信号が各リング共振器71に入ると、個々のリング共振器71内の空洞共振効果により、信号の特定の波長のみが支持される。リング共振器71はそれぞれ特性、例えば長さや屈折率が次から次へと異なり、バス導波路72に沿って進む入力信号61から特定の波長を選択的にピックアップする。リングが集まることにより、各光検出器が1つのリング共振器71と対になった光検出器のアレイを介して収集される入力信号61のスペクトルの測定が可能になる。
【0069】
図8は、内部光導波路82を介して光検出器アレイ81に接続されたカスケード状光リング共振器71を備えるリングファンアウト80の構成例である。上述したように、入力信号61が第1リング共振器71に入力され、入力信号61に含まれる一部の波長は、共振効果により入力信号61の主経路から分離される。信号は、予め設定された分離度に波長が分離されるまで、内部光ファイバ82を経由してカスケード状リング共振器71を伝播する。そして、分離された波長は、光検出器アレイ81に入力され、スペクトルが得られる。
【0070】
リングバスやリングファンアウト型の分光器の利点は、集積回路上に容易に製造することができることにある。リングは、光の特定の選択された波長で共鳴するように、正確なサイズで作ることができる。そのため、再現性、信頼性、堅牢性に優れている。
【0071】
図9は、2×2光カプラ101及び102と、2列の集積型調整可能スイッチ103とを有する二値非対称マッハツェンダ干渉計(AMZI)100を示しており、上側列の集積型調整可能スイッチ103は、非対称遅延線111、113、115、117により分離配置されており、下側列の集積型調整可能スイッチ103は、非対称遅延線112、114、118、120により分離配置されており、
図5と同様に、予め定義された単位遅延「L」によって定義される。遅延経路の大きさは、上側列では(2
n-1)Lまで、下側列では2
nLまで設定できる。出力信号は、出力104において分岐され、小型アレイを構成する光検出器105によって検出される。
【0072】
動作時、入力信号61は、第1の2×2カプラ101によって、例えば、50/50といった所定の比率で分割されてもよい。分割信号は、それぞれ、調整可能スイッチ103の遅延線111、113、115、117が分離配置された上側列、又は非対称遅延線112、114、118、120が分離配置された下側列からなる、予めプログラムされた非対称の経路に沿って進み、各遅延線は、長さが異なるため、予め設定された遅延も異なる。信号経路長を変更する工程は、
図5と同様である。今や非対称に遅延した2つの分割信号は、別の2×2カプラ102で再結合され、小型アレイの光検出器105に送信される。分割信号は、2×2カプラ102により再結合されることで干渉が起こり、結果として所定の波長のみが出力104の各分岐路に送信される。2つの分割信号の経路遅延の非対称性を調整することにより、異なる波長を観察することができるので、入力信号61のスペクトルを得ることができる。例えば、フーリエ変換型分光器の計算方法を用いてスペクトルを得ることができる。
【0073】
図10は、遅延線152、156、157で分離された光カプラ151、153、154、155、158、159を有するAMZIファンアウト150と、入力61と、光検出器アレイ81とを示す。例えば、一つ目のAMZI160は、入力光カプラ151と、遅延線152と、出力光カプラ153とを備えることが示されている。各AMZI160は、後続のAMZI160につながる2つの出力を有する。この構造は、AMZIの最終組に到達するまで続き、出力は光検出器アレイ81の個々の光検出器に対応している。
【0074】
各AMZI160は、
図9について説明した非対称性の範囲と同様に、異なる非対称性に設定され、これにより入力61における任意の特定の波長がAMZIファンアウト100を通る固有の経路を経由し、光検出器アレイ81の特定の光ダイオードに到達するアレイ81の各フォトダイオードを測定することにより、入力61におけるスペクトルの再構成を完成させることができる。
【0075】
二値AMZIは、必要な部品がシンプルなため低損失であり、光検出器アレイ全体とは対照的に、出力フォトダイオードを1つ又は2つしか必要としないという利点がある。また、ファンアウト型のAMZI100の拡張は、マルチモーダルデバイスよりも部品がシンプルなため、スペクトルの低損失測定が可能であり、さらには複雑な計算分析析なしに入力スペクトルを瞬時に取得することができる。
【0076】
ある実施形態では、
図6~
図10で説明した複数のデバイスのいずれかの組み合わせバージョンが、分光器を実装するために使用され得る。
【0077】
図11は、様々な実施形態の実施に好適なOCTスキャナの更なる例の機能ブロック図である。先に説明したように、広帯域光源201は、光集積回路(PIC)203によって具現化されたモジュール11に光入力信号を提供する。PICは、内部経路204を進む初期入力信号を2つの信号に分割する2×2可変カプラ205を有する。一方の分割信号は、内部経路206に沿って、二値遅延器207によって具現化された可変遅延器18に送信される。二値遅延器207は、制御経路209を介して内部制御モジュール208によって制御される。この分割信号は、PMファイバ210に沿って、レトロリフレクタ211によって具現化された反射器に送信され、PMファイバ210、2値遅延207、及び内部経路206で構成される経路を介して、2×2可変カプラ205へ反射される。同時に、他方の分割信号は、内部経路212に沿って、PMファイバ213を介して撮像光学系214に送信される。この分割信号は、不定長の自由空間215を介して、対象サンプル217に入射する。信号は、撮像光学系214、PMファイバ213、及び内部経路212で構成される経路を介して、2×2可変カプラ205へ反射される。
【0078】
可変カプラ205において、2つの受信信号が互いに干渉し、得られた信号が分光器220に送信される。分光器220に入力された結果の干渉信号を整える方法は、波長ファンアウト221と検出222モジュールとを備える分光器220の内部モジュールによって示されている。これらの内部モジュールは、
図6~
図10によっても具現化されている。
【0079】
干渉パターンを得るために干渉信号を逆多重化する方法の一例としては、1つ以上の非対称マッハツェンダ干渉計(AMZI)を使用する方法がある。AMZIは、まず導波路を使用して入力信号を分割し、分割信号を長さの異なる2つの光遅延線に沿って送信した後、第2の導波路を使用して再結合する。遅延線間の経路差は、ΔL=mλc/ηeffで定義でき、mは次数、λcは対象スペクトルの中心波長、ηeffは中心波長に対する導波路の有効指数である。次数mは、得られる分光感度の波長のピーク間の分離度を定義する。分離度と次数mの関係は、λFSR=(neffλc)/(ngm)として定義でき、ngは導波路の群指数である。例えば、カスケード状AMZIを使用して、帯域幅が個々の波長と一致するまで入力信号をさらに小さな帯域幅に逆多重化し、より正確な干渉パターンを得ることも可能である。
【0080】
干渉信号のスペクトルを分析し、スペクトル内容を出力画像処理装置223に配信するプロセスは、先に説明したものと同じである。
【0081】
2×2可変カプラ205は、広帯域光源201からの初期光入力信号の分割における結合比の調整を可能にする。先に説明したように、分割は好ましくはほぼ均等であり、それによって各分割信号は初期入力信号のパワーの50%を有する。実際には、50%の分割は難しく、必須ではく、撮像光学系(より損失の大きい経路)に渡す割合が多く、反射板に渡す割合が少ない場合もある。2×2可変カプラ205は、ユーザの好みに応じて、分割をあらかじめ設定したり、再プログラムすることができる。このため、ユーザが指定した画像経路に有利な60対40分割、70対30分割、80対20分割、さらには90対10分割に決定することができ、スキャン間やユーザ間で再プログラムすることができる。レトロリフレクタ211は、入力された分割信号を最小限の散乱で反射するため、信号のパワー損失量を低減することができる。分光器220では、波長ファンアウト221が可変カプラ205から送信された干渉信号の波長を分離することで、干渉信号のスペクトルを得る。次に、検出222内部モジュールが、得られたスペクトルを検出する。スペクトルが検出されると、出力画像処理装置223に送ることができる。
【0082】
オンチップ波長ファンアウトを提供する利点は、波長ファンアウトのために必要とされる追加の外部部品が不要になるため、外部部品から誘発される損失がなく、システムの損失量を低減できることにある。オフチップ検出は、コンパクトで、外部部品が実行しなければならない複雑な操作を簡便化できるため、部品に関連する損失を低減する一方で、実行しなければならない操作の数が少ないため信頼性を向上させることができる。また、材料プラットフォームに適用可能であれば、検出をPIC203上に組み込んだり、集積してもよく、複雑なデバイスをさらに簡素化できる。
【国際調査報告】