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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】非接触式広角網膜観察システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20231219BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20231219BHJP
   A61B 3/13 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61F9/007 200C
A61B3/12
A61B3/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529038
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 IB2021060143
(87)【国際公開番号】W WO2022123346
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】17/116,912
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】アショック バートン トリパティ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA11
4C316AB16
4C316FA07
4C316FA08
4C316FC07
4C316FC12
4C316FC14
4C316FY05
(57)【要約】
網膜観察システム及びそれを使用する方法は、眼科用顕微鏡と、使い捨てレンズアタッチメントと、電子制御ユニット(ECU)とを含む。顕微鏡は、光学ヘッドと、内焦式レンズの組とを有し、内焦式レンズの組は、顕微鏡に可変作動距離又は焦点距離を提供する。使い捨てレンズアタッチメントは、光学ヘッドに接続される近位端と、高倍率/高ジオプター遠位レンズに接続される遠位端とを有する弾性体を含む。ECUは、患者の眼の網膜又は他の眼内構造を観察するための命令を実行する。命令の実行は、ECUに、遠位レンズを通して網膜の像を観察するとき、顕微鏡の可変作動距離又は焦点距離を自動的に調節させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜観察システムであって、
光学ヘッドと、内焦式レンズの組とを有する眼科用顕微鏡であって、前記内焦式レンズの組は、前記眼科用顕微鏡に可変作動距離又は焦点距離を提供する、眼科用顕微鏡と、
弾性体と、高倍率/高ジオプター遠位レンズとを有する使い捨てレンズアタッチメントであって、前記使い捨てレンズアタッチメントの近位端は、前記光学ヘッドに接続され、及び前記使い捨てレンズアタッチメントの遠位端は、前記遠位レンズに接続される、使い捨てレンズアタッチメントと、
前記眼科用顕微鏡と通信し、且つ患者の眼の網膜を観察するための命令を実行するようにプログラムされた電子制御ユニット(ECU)であって、前記ECUのプロセッサによる前記命令の実行は、前記ECUに、自律的に又は臨床医入力デバイスからの入力信号に応答して、前記内焦式レンズの焦点を合わせて、それにより、前記遠位レンズを通して前記網膜の像を観察するとき、前記眼科用顕微鏡の前記可変作動距離又は焦点距離を調節することを行わせる、電子制御ユニット(ECU)と
を含む網膜観察システム。
【請求項2】
前記ECUと通信する多軸ロボットを更に含み、前記プロセッサによる前記命令の実行は、前記遠位レンズが前記患者の眼の角膜表面から所定の距離だけ離れるように、前記多軸ロボットに前記眼科用顕微鏡を自動的に位置決めさせる、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項3】
前記使い捨てレンズアタッチメントの前記弾性体は、円錐形を有し、及び前記患者の眼との接触に応答して、前記患者の眼から離れて曲がり且つ/又は折り畳まれるように構成された可撓性材料で構成される、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項4】
前記弾性体は、前記患者の眼との接触に応答して、前記患者の眼から離れて折り畳まれるように集合的に構成された入れ子式の複数の弾性体を含む、請求項3に記載の網膜観察システム。
【請求項5】
前記弾性体は、前記光学ヘッドに機械的に係合するように構成された第1のアームセグメントと、前記遠位レンズが接続される遠位端を有する第2のアームセグメントとを含む複数のヒンジ式アームセグメントを含む、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項6】
前記使い捨てレンズアタッチメントは、前記弾性体の前記近位端を形成するアタッチメントリングを含み、前記使い捨てレンズアタッチメントは、前記眼科用顕微鏡の前記光学ヘッドに磁気的に接続される、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項7】
前記遠位レンズは、70ジオプター~110ジオプターの屈折力レベルを有する、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項8】
前記使い捨てレンズアタッチメントの表面は、前記使い捨てレンズアタッチメントの再利用を防止するように構成された固有のシリアル識別コードを刻印される、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項9】
前記使い捨てレンズアタッチメントの前記再利用を防止するために、前記ECUは、
前記シリアル識別コードの走査入力を受け取ることと、
前記走査入力が、事前に記録されたシリアル識別コードに合致することに応答して、前記使い捨てレンズアタッチメントの前記再利用を防止する制御アクションを実行することと
を行うように構成される、請求項8に記載の網膜観察システム。
【請求項10】
前記眼科用顕微鏡は、前記シリアル識別コードを自動的に走査して前記走査入力を生成し、且つその後、前記走査入力を前記ECUに送信するように構成される、請求項9に記載の網膜観察システム。
【請求項11】
患者の眼に対する眼科処置中に網膜観察システムを制御する方法であって、
電子制御ユニット(ECU)によって開始信号を受信することに応答して、眼科用顕微鏡の光学ヘッドに対する使い捨てレンズアタッチメントの近位端の接続を自動的に確認することであって、前記眼科用顕微鏡は、前記眼科用顕微鏡に可変作動距離又は焦点距離を提供する内焦式レンズの組を含み、前記使い捨てレンズアタッチメントの遠位端は、高倍率/高ジオプター遠位レンズに接続される、自動的に確認することと、
前記近位端の前記接続を確認することに応答して、自律的に又は臨床医入力デバイスからの入力信号に応答して、前記ECUを介して前記眼科用顕微鏡の前記可変作動距離又は焦点距離を自動的に調節して、それにより、前記眼科用顕微鏡を使用して、前記遠位レンズを通して前記患者の眼の網膜の像を観察することと
を含む方法。
【請求項12】
前記ECUは、多軸ロボットと通信し、前記方法は、前記眼科用顕微鏡が前記多軸ロボットのエンドエフェクタに結合されている間、
前記遠位レンズが前記患者の眼の角膜表面から5mm~10mm離れるように、前記ECUによる前記多軸ロボットへの位置制御信号の送信を介して、前記眼科用顕微鏡及び前記使い捨てレンズアタッチメントを自動的に位置決めすること
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記使い捨てレンズアタッチメントの前記近位端の前記接続を自動的に確認することは、前記ECUを介して、前記接続を示す確認信号を制御パネルから受信することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記使い捨てレンズアタッチメントは、固有のシリアル識別コードを刻印され、前記方法は、
前記ECUを介して前記固有のシリアル識別コードの走査入力を受け取ることと、
前記走査入力が、事前に記録されたシリアル識別コードに合致することに応答して、制御アクションを実行することであって、前記制御アクションは、前記使い捨てレンズアタッチメントの再利用を防止することを対象とする、実行することと
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記眼科用顕微鏡を介して前記識別コードを走査して前記走査入力を生成し、且つその後、前記走査入力を前記ECUに送信することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記制御アクションを実行することは、前記使い捨てレンズアタッチメントの以前の使用を示すエラーコードを前記ECUのメモリに登録又は記録し、且つその後、前記ECUを介して音声及び/又は視覚インジケータを作動させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
光学ヘッドを備える眼科用顕微鏡を有する網膜観察システムで使用するための使い捨てレンズアタッチメントであって、
70ジオプター~110ジオプターの屈折力を有する高倍率遠位レンズと、
前記眼科用顕微鏡の前記光学ヘッドに接続するように構成された近位端と、前記遠位レンズに接続される遠位端とを有する円錐形の弾性体であって、患者の眼との接触時、前記患者の眼から離れて折り畳まれるように構成された弾性材料で構成される円錐形の弾性体と
を含む使い捨てレンズアタッチメント。
【請求項18】
前記円錐形の弾性体は、可撓性の多孔又は格子状材料で構成される、請求項17に記載の使い捨てレンズアタッチメント。
【請求項19】
前記円錐形の弾性体に接続され、且つ前記光学ヘッドに磁気的に接続するように構成された磁気アタッチメントリングを更に含む、請求項17に記載の使い捨てレンズアタッチメント。
【請求項20】
前記磁気アタッチメントリングは、前記使い捨てレンズアタッチメントの再利用を防止するように構成された固有のシリアル識別コードを刻印される、請求項19に記載の使い捨てレンズアタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科処置を実施するときに患者の眼の網膜及び他の構造を可視化するための自動化されたシステム及び方法に関する。人間の眼の眼内容積は、硝子体と呼ばれる透明なゲル状の物質によって占められている。網膜は、眼の内腔、すなわち硝子体腔の後壁を覆い、それにより相互に結合された神経組織の薄層を形成する。眼に入った光は、角膜及び水晶体嚢を通過し、毛様小帯及び毛様体筋が水晶体嚢に作用して、受け入れた光が網膜上で焦点を合わせる。網膜の個々の桿体細胞及び錐体視細胞は、受け入れた光に、神経インパルスを発生させることによって反応し、これは、更に、脳によって色及び映像として解釈される。したがって、適切な視力は、健康な網膜及び粘体に依存する。
【背景技術】
【0002】
外傷、年齢及び重症近視などの要因は、硝子体が網膜から剥離する原因となり得る。剥離した硝子体によって網膜にかかる結果的に生じる一過性の又は持続的な張力は、網膜裂孔を引き起こし得る。同様に、頭部の眼又は周囲領域に対する鈍力により、網膜を直接損傷する可能性がある。網膜裂孔、硝子体剥離及び他の眼内状態を適切に診断するために、臨床医は、一般に、高解像度の網膜観察システムを利用する。このようなシステムは、電磁スペクトルの眼に安全な部分の光で硝子体腔を照明し、その後、照明された構造を高倍率で示す。このようにして、網膜、黄斑、硝子体及び他の周囲組織の鮮明な像が臨床医に提供される。同様の倍率レベル及び高解像度の観察が術前及び術後診断状況で用いられ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書に開示されるのは、人間の眼の網膜及び他の眼内構造を観察するための改良された網膜観察システム及び付随する方法である。本システムは、付随する眼科用顕微鏡の手動外部焦点制御の要件を排除する、より低コストの非接触式広角網膜観察解決策を提供することを意図したものである。更に、本開示の態様は、デジタルバーコーディング/シリアル化又は別のロジックベースの自動化シーケンスを使用して、以下で説明する網膜観察システムの単回使用の使い捨て構成要素の不注意による再利用を防止することができる。
【0004】
例示的な実施形態による網膜観察システムは、光学ヘッドを有する眼科用顕微鏡と、高倍率/高ジオプター遠位レンズを有する使い捨てレンズアタッチメントと、電子制御ユニット(ECU)とを含む。使い捨てレンズアタッチメントの近位端は、顕微鏡の光学ヘッドに例えば磁気引力、フックアンドループ接続、接着剤又は直接的な機械的係合によって接続するように構成される。顕微鏡と通信するECUは、眼科処置中、遠位レンズ及び顕微鏡の操作により、網膜又は他の眼内構造を観察するための命令を実行するようにプログラムされる。
【0005】
異なる実施形態ではデジタル又はアナログであり得る、本明細書で企図される眼科用顕微鏡は、顕微鏡に可変作動距離又は焦点距離を集合的に提供する内焦式レンズの組を含む。この特徴は、調節不能な/固定の作動距離によって特徴付けられ、したがって縮小レンズ及び外部焦点調整アクションに臨床医の手動関与を必要とするタイプの一般的な眼科用顕微鏡とは対照的である。ECUは、使い捨てレンズアタッチメントの遠位端に配置された遠位レンズの空間的位置及び屈折力が通知されると、内焦式レンズの焦点設定を自動的に制御する。いくつかの実施形態では、ECUは、この調節を自動的に、すなわち臨床医による介入又はアクションなしに実施し、したがって「自動焦点調整」機能を提供することができる。このような任意の自動焦点制御は、使い捨てレンズアタッチメントが光学ヘッドに確実に接続された後に行われる。代替的に、ECUは、臨床医からの制御入力、例えばフットペダルの操作に応答して制御入力を提供するローカルコントローラとして機能し得る。
【0006】
患者の眼に対する眼科処置中に網膜観察システムを制御する方法も開示される。開示される例示的な実施形態によれば、本方法は、ECUによって開始信号を受信することに応答して、眼科用顕微鏡の光学ヘッドに対する使い捨てレンズアタッチメントの近位端の接続を自動的に確認することを含む。上記のように、本明細書で企図される顕微鏡は、顕微鏡に可変作動距離又は焦点距離を提供する内焦式レンズの組を含む。使い捨てレンズアタッチメントの遠位端は、高倍率/高ジオプター遠位レンズに接続される。
【0007】
この実施形態では且つ近位端の接続の確認に応答して、ECUは、自律的に又は臨床医からの制御入力に応答して、眼科用顕微鏡の可変作動距離又は焦点距離を調節して、それにより、顕微鏡を使用して、遠位レンズを通して患者の眼の網膜の像を観察する。
【0008】
特定の非限定的な構成における使い捨てレンズアタッチメントは、約70ジオプター~約110ジオプターの屈折力を有する高倍率/高ジオプター遠位レンズと、円錐形の弾性体とを含む。弾性体は、眼科用顕微鏡の光学ヘッドに接続するように構成された近位端と、遠位レンズに接続される遠位端とを有する。円錐形の弾性体は、患者の眼と接触した場合、患者の眼から離れて曲がり且つ/又は折り畳まれるように構成された弾性材料で構成される。
【0009】
本開示の上述の特徴及び利点並びに他の可能な特徴及び利点は、本開示を実施するための最良の態様の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むことで容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示による、使い捨て非接触レンズアタッチメントデバイスを用いて構築された網膜観察システムを使用して行われる例示的な眼科処置の概略図である。
図2図2は、図1に示される網膜観察システムの概略図である。
図3図3は、図2に示されるシステムで使用可能な使い捨て非接触レンズアタッチメントデバイスの入れ子式折り畳み可能実施形態の概略図である。
図4図4は、図1及び図2の網膜観察システムで使用可能な使い捨てレンズアタッチメントデバイスの代替的な実施形態の概略斜視図である。
図5図5は、図2の網膜観察システムを使用する方法の代表的な実施形態を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態が本明細書で説明される。しかしながら、開示される実施形態は単なる例示であり、他の実施形態が様々な代替形態を取り得ることが理解されよう。図は、必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張又は最小限にされる場合がある。したがって、本明細書に開示される特定の構造的及び機能的な詳細は、限定的に解釈されるべきではなく、単に、本開示を様々に採用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0012】
以下の説明では、特定の用語が参照のみを目的として使用される場合があり、そのため、それらは、限定を意図するものではない。例えば、「上方」及び「下方」などの用語は、参照される図面内における方向を指す。「前部」、「後部」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「後部」及び「側部」などの用語は、議論している構成要素又は要素を説明する本文及び関連図面を参照することによって明確になる、一貫しているが、任意の基準系の範囲内での構成要素又は要素の部分の向き及び/又は位置を説明するものである。更に、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、別々の構成要素を説明するために使用され得る。そのような用語には、具体的に上述された語、それらの派生語及び類似の意味の語を含み得る。
【0013】
同様の参照番号が同様の構成要素を指す図面を参照すると、代表的な眼科処置10が図1に概略的に示されている。臨床医12は、眼科処置10中、患者140の眼14内の網膜又は他の眼内組織を正確に可視化する必要がある。この目的のために、臨床医12は、網膜観察システム16の高解像度の多次元デジタル観察機能によって支援され、網膜観察システム16は、本明細書に説明するように構築及び制御される。説明を簡潔にするために、図1には、網膜観察システム16の選択した構成要素のみが示され、網膜観察システム16については、残りの図を参照して以下でより詳細に説明する。
【0014】
図2及び図3を参照して以下で説明するように、網膜観察システム16は、眼科用顕微鏡18、例えばデジタル又はアナログ医療用顕微鏡の常駐する内部焦点調整機能を利用し、広角網膜観察の低コストで使い捨ての非接触式オプションを提供する。本教示の付帯的な利点の少なくともいくつかには、図1の例示的な眼科処置10の過程中、臨床医12が外部焦点調整アクションを実施する必要なく、且つ縮小レンズなしで又はそのような外部焦点調整アクション及びハードウェアに対する臨床医12の依存を少なくとも低減して、高倍率が提供されることが含まれる。図5を参照すると、光学的透明度の改善、使用の容易さ及びシリアル化/トレーサビリティを提供するための特定の制御手法が本明細書に開示される。
【0015】
代表的な実施形態では、図1に概略的に示される眼科処置10は、硝子体網膜手術又は眼14の眼内構造の疾患及び/若しくは傷害の診断並びに治療に関連する任意の他の処置であり得る。限定しないが、例えば、このような処置10は、裂孔若しくは剥離した網膜の直接修復若しくは再接合、硝子体切除の実施並びに/又は眼14の他の様々な起こり得る状態の診断及び/若しくは修復を含み得る。処置10の過程における標的組織の可視化は、臨床医12及び手術室内の他の参加人員から容易に見える範囲に位置する、医療用4K若しくは他の超高解像度液晶ディスプレイ(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)パネルなどのディスプレイモニタ11を介したリアルタイムビデオ放送によって強化され得る。
【0016】
眼科処置10の準備において、患者140は、滅菌サージカルドレープ20によって覆われ得、ドレープ20又は別の覆いは、眼14を露出させる開口部21を画定する。処置10中に眼14を開放状態に保持するためにワイヤー開瞼器22又は他の適切な器具が使用され得る。臨床医12は、処置10中、処置専用の手術器具23を上記の硝子体腔に挿入し得る。処置10の性質又は特定の段階に応じて、手術器具23は、鉗子、ブレード状の硝子体切除プローブ、カニューレ、輸液器具、エンドイルミネータ又は必要とされ得る任意の他の手術器具23として様々に具現化される。
【0017】
本手法の一部として、網膜観察システム16は、眼14の眼内構造をリアルタイムで拡大し、明瞭に可視化して、臨床医12及び他の参加人員が眼科処置10を実施することを補助するように構成される。この目的のために、網膜観察システム16の眼科用顕微鏡18は、例えば、多軸ロボット30(図2を参照されたい)に接続及び/又は支持されて、頭上から吊り下げることができる。本開示の範囲内の網膜観察システム16において意図したように機能するために、顕微鏡18は、固定の作動距離とは対照的に可変の作動距離を有し、したがって、可変の又は調節可能な焦点距離を有する。顕微鏡18の下面29又は別の適切な表面に配置されたタスク照明70は、眼14及び周囲作業空間を更に照明するための頭上照明LLを提供し得る。
【0018】
当業者であれば、本非接触式広角使い捨て網膜観察システムは、典型的には、固定距離顕微鏡を利用し、したがって臨床医12によって提供される外部焦点制御に依存することを理解するであろう。例えば、回転ダイヤル又はつまみを手動で又は外科医が制御するサーボモータを介して回転させて、網膜に適切に焦点を合わせることができる。このようなシステムで使用される縮小レンズは、典型的には、患者の角膜の上方に、例えば、150mm~175mm離れて配置される。上述した固定の作動距離が理由で、網膜に所望の通りに焦点を合わせるために、縮小レンズを、臨床医12による上記のつまみの操作及び/又はフットスイッチの動作によって移動させる。
【0019】
これに対して、本開示の網膜観察システム16は、外部焦点調整及び縮小レンズの必要性を低減し、場合によっては排除する。これにより、更に、ときに不安定となり得、更なる技能及び動作時間を必要とする、潜在的に問題となる特徴を排除する。例えば、開示される網膜観察システム16の実施形態は、上記の縮小レンズのみならずその外部焦点調整の必要性も排除するが、特定の臨床医12がこのオプションを保持することを好む場合、縮小レンズの使用が厳密に排除されるわけではない。したがって、眼科用顕微鏡18の内焦式レンズ18Lの組の直接又は間接焦点制御と網膜観察システム16の他の態様との統合により、性能的利点が提供される。すなわち、本手法は、眼科用顕微鏡18、例えばそのデジタル実施形態の焦点調整機能を活用及び利用して、硝子体網膜手術処置を大幅に簡略化し、向上させる、網膜観察のためのより低コストで使い捨てのオプションを提供する。
【0020】
更に図1を参照すると、網膜観察システム16は、図3に示されるような機械的な係合要素を使用して又は磁気引力などの引力、フックアンドループ接続、摩擦/締まり嵌め若しくは図1及び図2に示すような医療用接着剤により、眼科用顕微鏡18の光学ヘッド24に取り付けられ得る。臨床医12及び/又は図2の多軸ロボット30は、露出した眼14の角膜表面に対して顕微鏡18の空間的位置及び向きを調節し得る。説明を簡潔にするために、顕微鏡18とそれに接続された使い捨てレンズアタッチメント25は、使い捨てレンズアタッチメント25の高倍率/高ジオプター遠位レンズ26が典型的に配置される、眼14の角膜表面から約5mm~10mm離れた実際の操作位置から大きく離れて示されている。したがって、角膜表面に対する遠位レンズ26の精密且つ再現性のある位置決めの必要性は、本開示の統合的な精密焦点調整手法に適している。例示的な網膜観察システム16の使用方法100については、再度、図5を参照して以下で説明する。
【0021】
図1の例示的な眼科処置10を実施する過程で、いくつかの実施形態では、臨床医12は、光学アイピースの組(図示せず)を介して網膜又は眼14の他の標的領域を観察することを選択する場合がある。当技術分野で理解されるように、このようなアイピースは、臨床医12又は他の参加施術者に特定の像を提供するための、市販の特定の医療用眼科用顕微鏡の一体部品である。このカテゴリーにおける非限定的な例示的な顕微鏡としては、Alcon,Inc.のLuxOR(登録商標)Revalia(商標)眼科用顕微鏡並びにCarl Zeiss Meditec,Inc.のOPMI Lumera(登録商標)700が挙げられる。Aesculap,Inc.のAesculap AEOS(商標)デジタル顕微鏡などであるが必ずしもこれに限定されない他の市販の顕微鏡では、そのようなアイピースの使用をなしで済ます。したがって、本開示の範囲内の眼科用顕微鏡18の構造にアイピースが存在する場合も又はしない場合もある。
【0022】
制御表面は、眼科用顕微鏡18の制御ハンドル118の対上に存在し得、図1の斜視図ではそのような制御ハンドル118の1つが見える。このようなパドル状の制御ハンドル118は、代替的に、図2に示されるような円筒状の自転車グリップ型のハンドル218又は別の適切な形状として構成され得る。眼科処置10が完了すると、使い捨てレンズアタッチメント25は、顕微鏡18の光学ヘッド24から素早く容易に取り外して廃棄することができ、それにより上記の低コストの使い捨てオプションが提供される。図2の電子制御ユニット(ECU50)及び/又は顕微鏡18の追加的な制御入力デバイスとして、小型のタッチスクリーン110も同様に使用され得る。
【0023】
使い捨てレンズアタッチメント25の一体構成要素として使用される高倍率/高ジオプター遠位レンズ26に関して、「高倍率/高ジオプター」という用語は、用途に適したレベルの倍率を指す。非限定的な例では、少なくとも70ジオプターの屈折力が望ましい場合があり、特定の代表的な処置10、例えば硝子体網膜手術を実施するためには約70ジオプター~約110ジオプターの範囲が場合によっては最適である。遠位レンズ26は、いくつかの実施形態では非球面であり得るが、この形状は厳密に必要ではない。例えば、遠位レンズ26は球面であり得、この場合、球面収差は、別のレンズ、顕微鏡18などを使用し、ECU50によってソフトウェアで補正され得る。
【0024】
当業者に理解されるように、遠位レンズ26は、眼14の硝子体腔の後部領域からの光を光学的に反転させるように構成され、このような光は、場合により眼内照明によって硝子体腔内から放射される。したがって、遠位レンズ26は、網膜及び周囲組織の虚像を提供する。遠位レンズ26を通過する光は、いくつかの実施形態では、眼科用顕微鏡18に直接伝播する。これには、上記のような作動距離が固定された眼科用顕微鏡で典型的に使用されるタイプの介在縮小レンズが排除されるという利点がある。他の実施形態では、任意の縮小レンズ47(図2を参照されたい)が使用される場合があり、このようなオプションは、異なる又は好ましい視野を提供する。
【0025】
本開示の網膜観察システム16で使用するための、本明細書で企図される眼科用顕微鏡18の可変作動距離/焦点距離性能に関して、内焦式レンズ18Lは、非限定的な代表的な実施形態では、例えば約150mm~450mmの可変作動距離を提供する。他の実施形態では、これらの限界内の範囲、例えば150mm~300mm又は150mm~200mmが使用される場合があり、図2に示され、以下で説明するように、内焦式レンズ18Lの自動調節は、ECU50からの焦点制御(矢印CC18)に応答して直接的又は間接的に行われる。したがって、顕微鏡18は、遠位レンズ26によって生成された虚像に直接焦点を合わせる。
【0026】
使い捨てレンズアタッチメント25は、使い捨てレンズアタッチメント25の近位端E1に配置された接続リング34を介して、眼科用顕微鏡18の光学ヘッド24に確実に、しかし一時的に接続される。図1及び図2の例示的な実施形態では、例えば、使い捨てレンズアタッチメント25は、弾性体28から構成される。弾性体28は、図示されている代表的な構成では、円錐形の形状であり、曲げることができる且つ/又は折り畳み可能な弾性の足場を形成する。遠位レンズ26と眼14とが不意に接触した場合、弾性体28は、眼14から離れて安全に収縮するか、曲がるか又は他に折り畳まれるように構成される。すなわち、弾性体28は、剛性で曲がらないのとは対照的に、非常に柔軟であり、曲げられ、且つ弾性的な反発力がある。可能な構造としては、以下で説明するような図3の入れ子式構成のみならず、柔らかい軽量の成形プラスチック若しくはシリコーンゴム、多孔若しくは格子状材料若しくは吊り網を形成する交互に編まれた水平及び垂直リンクのネットワーク、使い捨て薄膜又は別の適切な構造が挙げられる。
【0027】
使い捨てレンズアタッチメント25の近位端E1において、接続リング34は、弾性体28にはめ込まれ得るか、又は他に例えば硬化型医療用接着材料によって接続され得る。接続リング34は、例えば、直接係合(図3)又は単に磁力若しくは他の引力(図1及び図2)によって眼科用顕微鏡18の光学ヘッド24に確実に係合するように構成される。磁力若しくは他の引力の可能な代替としては、上記のように、フックアンドループ、接着材料及び摩擦/締まり嵌めが挙げられる。このような力は、取り付け及び取り外しプロセスを簡略化するために効果的に使用され得る。接続は、接続リング34が光学ヘッド24に対して適所に確実にロックされることを集合的に可能にする顕微鏡18及び/又は接続リング34上の構造的アライメント特徴により支援される可能性がある。
【0028】
使い捨てレンズアタッチメント25の遠位端E2、すなわち近位端E1/接続リング34の正反対の位置では、遠位レンズ26と弾性体28との間において、遠位レンズ26のグレアの低減を促進し、且つ弾性体28への遠位レンズ26の確実な接続を容易にするための、不透明な医療用ポリマー又は金属材料で構成された小さい保護スリーブ32が配置され得る。本開示の範囲内で弾性体28の他の形状及び/又は構造的構成が可能であるが、図示される円錐形は、上方、すなわち眼科用顕微鏡18の方向から遠位レンズ26上に埃又はゴミが侵入することを防ぐのに役立ち得る。
【0029】
図3を手短に参照すると、弾性体28は、任意選択的に、入れ子式の複数の弾性体280、すなわち弾性体28A、28B及び28Cを含み得る。弾性体280は、他に対して関節運動又は枢動する、したがって患者の眼14との接触に応答して、患者の眼14から離れて折り畳まれるように集合的に構成される。すなわち、遠位レンズ26が弾性体280のうちの最小直径のもの、すなわち弾性体28Aに取り付けられた状態で、眼14との接触により、弾性体28Aは、矢印DDによって示されるように、わずかに大きい直径の弾性体28B内に上方に移動し、更に、弾性体28Bは、弾性体28C内に入れ子状に押勢される。眼14と接触していなければ、弾性体280は、重力により、図3に示される平衡位置に戻る。
【0030】
図4に示されるように、図1の使い捨てレンズアタッチメント25は、代替的に、別の弾性体128を有する使い捨てレンズアタッチメント125として具現化され得る。図示されるように、弾性体128は、それぞれ第1のアームセグメント36及び第2のアームセグメント136として示される複数のヒンジ式アームセグメントを有する関節式の機構である。第1のアームセグメント36は、近位端E1において、例えば締結具39及び板状の拡張部38を介して眼科用顕微鏡18の光学ヘッド24に機械的に係合するように構成される。
【0031】
図示される構成では、第1のアームセグメント36は、板状の拡張部38及び締結具39を受け入れるように開くY字形又はフォーク状の端部37を画定する。遠位端E2に配置された遠位レンズ26を上昇又は下降させるために第2のアームセグメント136が締結具45の軸線の周りを回転することを可能にする枢着部を締結具45が形成するように、追加の締結具45が第2のアームセグメント136を第1のアームセグメント36に接続し得る。この実施形態では、遠位レンズ26及び保護スリーブ32を遠位端E2に接続するための適切な質量を提供するために、円筒形若しくは略円錐形の金属又はプラスチックなどの支持部材35が使用され得る。
【0032】
ここで、図2を参照すると、上記の眼科用顕微鏡18は、任意選択的に、簡潔に上記した多軸ロボット30のエンドエフェクタ31に結合され得る。このような結合は、両矢印CCによって示される。理解されるように、このようなロボット30は、典型的には、車輪41の組に接続された基部40を含む。複数の運動の自由度を提供するために、ロボット30は、複数のリンク機構42を備え、各種リンク機構42は、対応する回転ジョイント44を介して相互接続される。基部40は、施設又は所与の手術室内でのロボット30の再配置又は移動を容易にするために車輪41に接続され得る。
【0033】
したがって、ロボット30の構造内において、各回転ジョイント44は、いくつかの実施形態では、ロータリーアクチュエータ(図示せず)、例えばサーボモータによって能動的に駆動され、前方/後方、垂直及び水平移動並びにエンドエフェクタ31のピッチ、ヨー及びロールの向きを含む複数の制御自由度を提供し得る。他の実施形態は、臨床医12がそのようなアクチュエータの支援なしにロボット30を受動的に再配置することを可能にし得る。集合的に、回転ジョイント44及び各種リンク機構42は、エンドエフェクタ31及びそれに接続された網膜観察システム16の構成要素が、定義された作業スペース内で移動すること又は移動されることを可能にする。このようにして、ロボット30は、矢印AA及び矢印BBによって示されるような眼14の角膜表面15に対する遠位レンズ26の精密な位置決めを容易にすることができる。
【0034】
図2に示されるように、眼科用顕微鏡18と、それに接続された網膜観察システム16との運動制御は、図1の臨床医12によって異なる制御入力を用いて命令され得る。例えば、光学ヘッド24を3次元の直交座標系内の特定の向き及び空間的位置に位置決めするようにロボット30に命令するために、臨床医12は、フットペダル60を押す及び/又は眼科用顕微鏡18の制御ハンドル118若しくは制御ハンドル218上に配置されたキーパッド(図示せず)を作動させることができ、後者の構成が図2に示されている。更なる制御入力は、タッチスクリーン110を介して入力され得る。
【0035】
ロボット30のソフトウェアプログラミングは、いくつかの実施形態では、例えばマシンビジョンアルゴリズム、ニューラルネットワーク、近接センシングなどを用いて眼14を自動的に識別し、その後、網膜観察システム16、特にその遠位レンズ26を、当技術分野において理解されるように、角膜表面15から所定の距離、典型的には約5~10mm離して自動的に位置決めし、方向付けることができる。したがって、このようなソフトウェアは、臨床医12による介入を必要とすることなく、眼科用顕微鏡18の常駐制御ロジックと通信して、その内焦式レンズ18Lの作動距離/焦点距離を自動的に調節することができる。
【0036】
更に、フットペダル60、制御ハンドル118若しくは制御ハンドル218及び/又は網膜観察システム16の近傍若しくは網膜観察システム16上に取り付けられたタッチスクリーン110からの制御入力を使用して、臨床医12は、眼科用顕微鏡18の下面29の照明70(図1を参照されたい)をオンにし、顕微鏡18に上記の光ビームLLを放出させることができるか、若しくは光学ヘッド24を所定の距離、例えば50~75mmだけ自動的に後退させることができ、且つ/又は眼14の前方部分に対する作業時に網膜観察システム16を視界から排除することができる。臨床医12が後方視に戻る準備ができると、臨床医12は、単に網膜観察システム16を光学ヘッド24上の所定位置に戻し、その後、同じ制御入力を使用することができる。
【0037】
ある点において、ECU50を介して制御される眼科用顕微鏡18は、上記のタイプの位置検知、マシンビジョン及び/若しくは人工知能を使用して網膜観察システム16を自動的に検出することができるか、又は他に網膜観察システム16が光学ヘッド24に正常に取り付けられていると決定することができる。マシンビジョンは、同様に、網膜観察システム16が取り付けられていること又は取り外されていることを検出するために使用され得る。これに応答して、ECU50は、ロボット30に、顕微鏡18を上若しくは下に動かし、且つ/又は遠位レンズ26を角膜15上方の事前設定された5~10mmの距離に位置決めすることを命令し得る。したがって、臨床医12が手術に対応する準備ができるように、臨床医12による外部焦点調整入力又は任意の他の入力を必要とすることなく、図5に示される方法100の一部としてECU50による内焦式レンズ18Lの任意の自動焦点制御/調節を使用して、適切な焦点を得ることができる。
【0038】
本開示の網膜観察システム16は、単回使用を意図し、したがって使い捨てであるように構成される。この目的のため、所与の網膜観察システム16の不注意による再利用を防ぐために、ECU50によってシリアル化戦略を実施することができる。このような戦略は、眼科用顕微鏡18の既存のCMOS又は他のカメラによって容易になり得る。使用を記録し、再利用を防止するために、例えば、走査可能なバーコード、QRコード(登録商標)又は他の固有のシリアル識別コード33は、網膜観察システム16及び/又はその密封パッケージ(図示せず)に印刷、接着又は他に組み込まれ得る。シリアル識別コード33を刻印するための例示的な場所としては、上から見るとシリアル識別コード33を含むラベルを印刷するか又は取り付けるための十分に広く平らな表面を提供し得る接続リング34又は保護スリーブ32の表面が挙げられる。他の実施形態では、RFIDタグなどの他の手法が使用され得る。
【0039】
本開示の様々なソフトウェアベースの制御態様を可能にするために、ECU50は、眼科用顕微鏡18及びロボット30とネットワーク通信し、このような双方向通信は、図3の両矢印CC30によって示される。ECU50は、網膜可視化システムの使用に関わる1つ以上のタスクを実施する方法100を具現化したコンピュータ可読コード又は命令を実行するように構成され得る。方法100の例示的な実施形態は、図5に示され、以下で説明される。ECU50は、図示を簡略化するために一体型デバイスとして概略的に示されているが、ECU50は、1つ以上のプロセッサ(P)が読み取ることができるデータ/命令の提供に関与する非一時的な(例えば、有形の)媒体を含む関連のコンピュータ可読媒体又はメモリ(M)とともに、1つ以上のネットワークコンピュータデバイスを含み得る。
【0040】
メモリ(M)は、不揮発性媒体及び揮発性媒体を含むがこれらに限定されない、多くの形態を取り得る。理解されるように、不揮発性媒体としては、光ディスク及び/又は磁気ディスク及び他の永続的なメモリを挙げることができ、揮発性媒体としては、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)、静的RAM(SRAM)などが挙げられ得る。これらのいずれか又は全てがメインメモリを構成し得る。眼科用顕微鏡18及びロボット30との通信は、ECU50の入出力(I/O)回路へのネットワーク接続を介して達成され得る。局部発振器又は高速クロック、信号バッファ、デジタル信号フィルタなどを含むが、これらに限定されない、不図示ではあるが、当技術分野で十分に確立された他のハードウェアがECU50の一部として含まれ得る。
【0041】
図5を参照すると、例示的な実施形態において上述した方法100は、順次ブロックB102において、網膜観察システム16の初期化から開始し得る。例えば、臨床医12は、図1に示される眼科処置10の準備にあたり、ロボット30及び眼科用顕微鏡18の電源を投入することができる。ブロックB102は、図1の患者140が占める操作位置に対するロボット30及び顕微鏡18の粗い自動又は手動位置決めを伴い得る。初期化により、ECU50による開始信号(矢印CCIN)の受信がもたらされ得、ECU50は、以下で説明するように、最終的に、光学ヘッド24への使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125の接続を促すことによって応答することができる。方法100は、初期化の完了後にブロックB104に進む。
【0042】
ブロックB104において、臨床医12は、図1図3の上記使い捨てレンズアタッチメント25又は図4の代替的な使い捨てレンズアタッチメント125を含む密封パッケージを開封する。図5の方法100の一部として、パッケージ及び/若しくは使い捨てレンズアタッチメント25又は125は、固有のシリアル識別コード33を含み得る。このような実施形態では、臨床医12は、シリアル識別コード33を走査し、それにより、使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125の使用をメモリ(M)又はデータベースに記録することができる。可能な実施形態では、内蔵CMOSカメラ又は眼科用顕微鏡18の他の内蔵光学走査機能を使用して、シリアル識別コード33を走査入力として走査することができる(この場合、顕微鏡18は、走査入力をECU50に送信することができる)か、又は走査は、外部走査デバイスを使用して達成され得る。方法100は、その後、ブロックB106に進む。
【0043】
ブロックB106において、ECU50は、ブロックB104からの走査入力としてのシリアル識別コードを、プリロードされた以前に使用された識別コードのリストと比較する。このようなリストは、ECU50のメモリ(M)、例えばルックアップテーブルに格納又は事前準備され得る。臨床医12が開封し、各使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125の各シリアル識別コード33を走査するたびに、シリアル識別コードは、後の比較のためにメモリ(M)に記録される。方法100は、プリロードされたリスト上にシリアル識別コードが表示された場合にはブロックB108に進み、その代わり、シリアル識別コードがプリロードされたリスト上に表示されない場合にはブロックB110に進む。
【0044】
ブロックB108において、制御アクションとして、ECU50は、使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125の以前の使用を示すエラーコードをメモリ(M)に登録/記録することができ、その後、ECU50を介して音声及び/又は視覚インジケータを作動させる。すなわち、エラーコードの記録に応答して、ECU50は、使い捨てレンズアタッチメント25若しくは使い捨てレンズアタッチメント125又は少なくともその関連するシリアル識別コードが以前に使用されたものであることを臨床医12に通知することができる。例えば、ECU50は、赤色光若しくは他の視覚インジケータを点灯することができるか、又は図1及び図2のディスプレイ画面11及び/若しくはディスプレイ画面110上に対応するメッセージを表示することができ、且つ/又は使い捨てレンズアタッチメント25の以前の使用を示す聴覚警報を作動することができる。方法100は、その後、ブロックB104を繰り返す。
【0045】
ブロックB110は、例えば、使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125の以前の使用がないことを示すビットコードを、ECU50を介して記録することにより、ブロックB104の走査結果を確認することを含み、この制御アクションに、場合により確認信号が続く。例えば、ECU50は、ディスプレイモニタ11、タッチスクリーン110及び/又は別個のデバイス上で緑色光又は他の視覚インジケータデバイスを点灯させることなどにより、音声及び/又は視覚インジケータを制御アクションとして自動的に作動させることができる。ECU50は、各図1及び図2のディスプレイモニタ11及び/若しくはタッチスクリーン110上に対応するメッセージを表示させることができ、且つ/又は使い捨てレンズアタッチメント25若しくは使い捨てレンズアタッチメント125の以前の使用が検出されないことを示す可聴チャイム若しくはトーンを作動させることもできる。
【0046】
したがって、ブロックB110は、例えば、マシンビジョン機能を使用して正確な位置決めを認識し、且つ/又は適切な接続を示す確認信号(矢印CCIN)を制御パネルから受信することにより、眼科用顕微鏡18の光学ヘッド24に対する使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125の近位端E1の適切な接続を自動的に確認することを含む。このような確認は、使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125の以前の使用がないことを示すビットコードと関連して行われ、制御パネルは、上記の制御ハンドル118又は制御ハンドル218、タッチスクリーン110などを含む可能性がある。方法100は、その後、ブロックB112に進む。
【0047】
ブロックB112は、使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125を眼科用顕微鏡18の光学ヘッド24に接続することを伴う。ブロックB112は、図1及び図2の実施形態の使い捨てレンズアタッチメント25を光学ヘッド24に隣接させて配置することと、磁気コネクタリング34による磁気引力或いはフックアンドループ引力又は摩擦力若しくは接着力によって使い捨てレンズアタッチメント25を所定の位置に固定することとを含み得る。図4の代替的な実施形態では、使い捨てレンズアタッチメント125は、光学ヘッド24に機械的に結合され得る。方法100は、その後、ブロックB114に進む。
【0048】
ブロックB114は、図1の眼科処置10を開始することを含む。可能な実施形態では、ブロックB114は、臨床医12が処置10を始めたいことを示す開始信号をECU50に入力することを含み得る。これに応答して、ECU50は、使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125、特にその遠位レンズ26を、図2に示される眼14の角膜表面15から約5~10mm離れた所定の距離に位置決めするように、図2のロボット30に自動的に命令することができる。
【0049】
このように位置決めされると、ECU50は、その後、その内焦式レンズ18Lの直接自動焦点制御又は臨床医12からの入力に対するモータ駆動型の応答により、眼科用顕微鏡18の可変作動距離又は焦点距離を調節することができる。すなわち、ECU50による、顕微鏡18の焦点設定に対する制御応答は、完全に自律的に、或いは臨床医入力デバイス、例えばフットペダル60、制御ハンドル118若しくは制御ハンドル218又はタッチスクリーン110からの入力信号にのみ応答して発生し得る。これにより、臨床医12が網膜又は患者の眼14の他の眼内構造の像を、顕微鏡18を使用して、遠位レンズ26を介して観察することが可能になる。方法100は、その後、ブロックB116に進む。
【0050】
ブロックB116において、臨床医12は、眼科処置10をそれが完了するまで実施する。処置10の過程におけるECU50への入力は、それぞれ図1及び図2の制御ハンドル118又は制御ハンドル218、図2のタッチスクリーン110及び/又はフットペダル60などを介して提供することができ、ECU50は、対応する位置制御信号(矢印CC30)をロボット30に送信することによって反応する。方法100は、対応する位置制御信号(矢印CC30)がロボット30に送信されると、ブロックB118に進む。
【0051】
ブロックB118は、眼科処置10が完了したかどうかを決定することを含み得る。例えば、処置10が完了すると、ECU50は、臨床医12が処置10を終了したいことを示す完了信号(図2の矢印CCCOMP)を受信することができる。様々な実施形態では、臨床医12がディスプレイ画面110上の対応する「処置終了」アイコンをタッチするか、又は臨床医12が患者140から所定の距離だけ離れて眼科用顕微鏡18を移動させるか若しくは眼科用顕微鏡18の移動を命令すると、完了信号の生成が生じ得る。いずれかの入力に応答し、ECU50は、ロボット30の回転ジョイント44のいくつか又は全てを作動させて、眼科用顕微鏡18の再配置を支援することができる。方法100は、その後、ブロックB120に進む。
【0052】
ブロックB120は、使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125を光学ヘッド24から取り外すことを伴う。その後、臨床医12は、使い捨てレンズアタッチメント25又は使い捨てレンズアタッチメント125を廃棄することができる。方法100は、その後、完了し、後続の眼科処置10のためにブロックB102において新たに開始する。
【0053】
したがって、本明細書に記載される網膜観察システム16は、より低コストの非接触式広角網膜観察オプションを提供する。外科医12が外部から眼科用顕微鏡18の焦点を合わせる必要性を排除することにより、実用の簡素化が提供される。すなわち、遠位レンズ26からの虚像を顕微鏡18の可変作動距離内に配置するように顕微鏡18を構成し、且つECU50をプログラミングすることにより、本解決策は、縮小レンズに介入することにより外部から焦点を合わせる必要性を排除する。当業者に理解されるように、外部焦点制御の要件の排除によって眼科処置10の長さが短縮される。これは、更に、上記の再利用防止シリアル化戦略と併せて解釈すると、手術の合併症の全体的なリスクの低下に役立つ場合がある。これらの及び他の付帯的な利点は、上記の開示に鑑みて当業者に容易に理解されるであろう。
【0054】
詳細な説明及び図面は、本開示をサポートし、且つ説明するものであるが、本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。特許請求される本開示を実施するための最良の態様及び他の実施形態のいくつかを詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲で定義された本開示を実施するための様々な代替的な設計及び実施形態が存在する。
【0055】
更に、図面に示された実施形態又は本明細書で言及された様々な実施形態の特徴は、必ずしも互いに独立した実施形態として理解されるべきではない。むしろ、ある実施形態の例の1つで説明された各特徴は、他の実施形態の1つ又は複数の他の望ましい特徴と組み合わせることが可能であり、その結果、記載されていないか又は図面を参照することによって説明されていない他の実施形態を得ることができる。したがって、このような他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の枠組み内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜観察システムであって、
光学ヘッドと、内焦式レンズの組とを有する眼科用顕微鏡であって、前記内焦式レンズの組は、前記眼科用顕微鏡に可変作動距離又は焦点距離を提供する、眼科用顕微鏡と、
弾性体と、高倍率/高ジオプター遠位レンズとを有する使い捨てレンズアタッチメントであって、前記弾性体は、患者の眼との接触に応答して、前記患者の眼から離れて折り畳まれるように構成され、前記使い捨てレンズアタッチメントの近位端は、前記光学ヘッドに接続され、及び前記使い捨てレンズアタッチメントの遠位端は、前記遠位レンズに接続される、使い捨てレンズアタッチメントと、
前記眼科用顕微鏡と通信し、且つ患者の眼の網膜を観察するための命令を実行するようにプログラムされた電子制御ユニット(ECU)であって、前記ECUのプロセッサによる前記命令の実行は、前記ECUに、自律的に又は臨床医入力デバイスからの入力信号に応答して、前記内焦式レンズの焦点を合わせて、それにより、前記遠位レンズを通して前記網膜の像を観察するとき、前記眼科用顕微鏡の前記可変作動距離又は焦点距離を調節することを行わせる、電子制御ユニット(ECU)と
を含む網膜観察システム。
【請求項2】
前記ECUと通信する多軸ロボットを更に含み、前記プロセッサによる前記命令の実行は、前記遠位レンズが前記患者の眼の角膜表面から所定の距離だけ離れるように、前記多軸ロボットに前記眼科用顕微鏡を自動的に位置決めさせる、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項3】
前記使い捨てレンズアタッチメントの前記弾性体は、円錐形を有する、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項4】
前記弾性体は、前記患者の眼との接触に応答して、前記患者の眼から離れて折り畳まれるように集合的に構成された入れ子式の複数の弾性体を含む、請求項3に記載の網膜観察システム。
【請求項5】
前記弾性体は、前記光学ヘッドに機械的に係合するように構成された第1のアームセグメントと、前記遠位レンズが接続される遠位端を有する第2のアームセグメントとを含む複数のヒンジ式アームセグメントを含む、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項6】
前記使い捨てレンズアタッチメントは、前記弾性体の前記近位端を形成するアタッチメントリングを含み、前記使い捨てレンズアタッチメントは、前記眼科用顕微鏡の前記光学ヘッドに磁気的に接続される、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項7】
前記遠位レンズは、70ジオプター~110ジオプターの屈折力レベルを有する、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項8】
前記使い捨てレンズアタッチメントの表面は、前記使い捨てレンズアタッチメントの再利用を防止するように構成された固有のシリアル識別コードを刻印される、請求項1に記載の網膜観察システム。
【請求項9】
前記使い捨てレンズアタッチメントの前記再利用を防止するために、前記ECUは、
前記シリアル識別コードの走査入力を受け取ることと、
前記走査入力が、事前に記録されたシリアル識別コードに合致することに応答して、前記使い捨てレンズアタッチメントの前記再利用を防止する制御アクションを実行することと
を行うように構成される、請求項8に記載の網膜観察システム。
【請求項10】
前記眼科用顕微鏡は、前記シリアル識別コードを自動的に走査して前記走査入力を生成し、且つその後、前記走査入力を前記ECUに送信するように構成される、請求項9に記載の網膜観察システム。
【請求項11】
患者の眼に対する眼科処置中に網膜観察システムを制御する方法であって、
電子制御ユニット(ECU)によって開始信号を受信することに応答して、眼科用顕微鏡の光学ヘッドに対する使い捨てレンズアタッチメントの近位端の接続を自動的に確認することであって、前記ECUを介して、前記接続を示す確認信号を受信することを含み、前記眼科用顕微鏡は、前記眼科用顕微鏡に可変作動距離又は焦点距離を提供する内焦式レンズの組を含み、前記使い捨てレンズアタッチメントの遠位端は、高倍率/高ジオプター遠位レンズに接続される、自動的に確認することと、
前記近位端の前記接続を確認することに応答して、自律的に又は臨床医入力デバイスからの入力信号に応答して、前記ECUを介して前記眼科用顕微鏡の前記可変作動距離又は焦点距離を自動的に調節して、それにより、前記眼科用顕微鏡を使用して、前記遠位レンズを通して前記患者の眼の網膜の像を観察することと
を含む方法。
【請求項12】
前記ECUは、多軸ロボットと通信し、前記方法は、前記眼科用顕微鏡が前記多軸ロボットのエンドエフェクタに結合されている間、
前記遠位レンズが前記患者の眼の角膜表面から5mm~10mm離れるように、前記ECUによる前記多軸ロボットへの位置制御信号の送信を介して、前記眼科用顕微鏡及び前記使い捨てレンズアタッチメントを自動的に位置決めすること
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記使い捨てレンズアタッチメントの前記近位端の前記接続を自動的に確認することは、前記確認信号を制御パネルから受信することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記使い捨てレンズアタッチメントは、固有のシリアル識別コードを刻印され、前記方法は、
前記ECUを介して前記固有のシリアル識別コードの走査入力を受け取ることと、
前記走査入力が、事前に記録されたシリアル識別コードに合致することに応答して、制御アクションを実行することであって、前記制御アクションは、前記使い捨てレンズアタッチメントの再利用を防止することを対象とする、実行することと
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記眼科用顕微鏡を介して前記識別コードを走査して前記走査入力を生成し、且つその後、前記走査入力を前記ECUに送信することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記制御アクションを実行することは、前記使い捨てレンズアタッチメントの以前の使用を示すエラーコードを前記ECUのメモリに登録又は記録し、且つその後、前記ECUを介して音声及び/又は視覚インジケータを作動させることを含む、請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】