(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ヒト活性化プロテインCを対象とするモノクローナル抗体とその製造及び応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231219BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231219BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20231219BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231219BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231219BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231219BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231219BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20231219BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231219BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231219BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20231219BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231219BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20231219BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231219BHJP
G01N 33/86 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/40
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P7/04
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K35/12
A61K48/00
G01N33/531 A
G01N33/53 D
G01N33/86
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530723
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 CN2021108933
(87)【国際公開番号】W WO2023284012
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110791310.X
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】594003676
【氏名又は名称】オクラホマ メディカル リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】OKLAHOMA MEDICAL RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】825 N.E. 13th Street,Oklahoma City,Oklahoma 73104,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】徐俊
(72)【発明者】
【氏名】程露
(72)【発明者】
【氏名】易佳▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】夏之松
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲業▼恒
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045DA36
2G045FB03
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA53
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA53
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA14
4C087ZA53
4H045AA11
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、モノクローナル抗体の技術分野に属し、活性化プロテインC(aPC)を対象とするモノクローナル抗体に関する。前記モノクローナル抗体は、重鎖、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO.5~26で表され、CDR配列がSEQ ID NO.27~92で表される。本発明は、更に、前記モノクローナル抗体に関連するバイオマテリアルを提供する。前記モノクローナル抗体は、aPCには選択的に結合可能であるが、活性化していないプロテインCには結合しない。本発明は、更に、血液凝固欠乏又は欠陥症を治療する薬物の製造における前記モノクローナル抗体及び関連のバイオマテリアルの応用、及び関連の治療方法を提供する。本発明は、広範な応用可能性を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖CDR領域及び/又は軽鎖CDR領域が、突然変異として、
1)SEQ ID NO:31で表される軽鎖CDR2と比較してN57R及び/又はN57Wの突然変異、
2)SEQ ID NO:31で表される軽鎖CDR2と比較してE59G及び/又はE59Pの突然変異、
3)SEQ ID NO:32で表される軽鎖CDR3と比較してQ93Vの突然変異、
4)SEQ ID NO:27で表される重鎖CDR1と比較してN31Fの突然変異、
5)SEQ ID NO:28で表される重鎖CDR2と比較してS55Kの突然変異、
6)SEQ ID NO:29で表される重鎖CDR3と比較してY104Tの突然変異、のうちの1又は複数を含むことを特徴とする抗aPCモノクローナル抗体。
【請求項2】
前記抗aPCモノクローナル抗体の突然変異前の原配列は、
i)SEQ ID NO:27で表される重鎖CDR1、SEQ ID NO:28で表される重鎖CDR2、及びSEQ ID NO:29で表される重鎖CDR3を含む重鎖、及び、
ii)SEQ ID NO:30で表される軽鎖CDR1、SEQ ID NO:31で表される軽鎖CDR2、及びSEQ ID NO:32で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖、を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗aPCモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記抗aPCモノクローナル抗体の軽鎖CDR2は、SEQ ID NO:31で表される軽鎖CDR2と比較してN57R及びE59Gの突然変異を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗aPCモノクローナル抗体。
【請求項4】
(a)SEQ ID NO:27、28及び29で表される重鎖CDR、及び/又は、(b)SEQ ID NO:30、31及び32で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(c)SEQ ID NO:33、34及び35で表される重鎖CDR、及び/又は、(d)SEQ ID NO:36、37及び38で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(e)SEQ ID NO:39、40及び41で表される重鎖CDR、及び/又は、(f)SEQ ID NO:42、43及び44で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(g)SEQ ID NO:45、46及び47で表される重鎖CDR、及び/又は、(h)SEQ ID NO:48、49及び50で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(i)SEQ ID NO:51、52及び53で表される重鎖CDR、及び/又は、(j)SEQ ID NO:54、55及び56で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(k)SEQ ID NO:57、58及び59で表される重鎖CDR、及び/又は、(l)SEQ ID NO:60、61及び62で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(m)SEQ ID NO:63、64及び65で表される重鎖CDR、及び/又は、(n)SEQ ID NO:66、67及び68で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(o)SEQ ID NO:69、70及び71で表される重鎖CDR、及び/又は、(p)SEQ ID NO:72、73及び74で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(q)SEQ ID NO:75、76及び77で表される重鎖CDR、及び/又は、(r)SEQ ID NO:78、79及び80で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(s)SEQ ID NO:81、82及び83で表される重鎖CDR、及び/又は、(t)SEQ ID NO:84、85及び86で表される軽鎖CDRを含む抗体、
(u)SEQ ID NO:87、88及び89で表される重鎖CDR、及び/又は、(v)SEQ ID NO:90、91及び92で表される軽鎖CDRを含む抗体、のいずれかから選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗aPCモノクローナル抗体。
【請求項5】
SEQ ID NO:5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25のいずれかの配列で表される重鎖、及び/又は、
SEQ ID NO:6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26のいずれかの配列で表される軽鎖、を含むことを特徴とする請求項4に記載の抗aPCモノクローナル抗体。
【請求項6】
SEQ ID NO:5で表される重鎖及びSEQ ID NO:6で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:7で表される重鎖及びSEQ ID NO:8で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:9で表される重鎖及びSEQ ID NO:10で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:11で表される重鎖及びSEQ ID NO:12で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:13で表される重鎖及びSEQ ID NO:14で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:15で表される重鎖及びSEQ ID NO:16で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:17で表される重鎖及びSEQ ID NO:18で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:19で表される重鎖及びSEQ ID NO:20で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:21で表される重鎖及びSEQ ID NO:22で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:23で表される重鎖及びSEQ ID NO:24で表される軽鎖を含む抗体、
SEQ ID NO:25で表される重鎖及びSEQ ID NO:26で表される軽鎖を含む抗体、から選択されることを特徴とする請求項4に記載の抗aPCモノクローナル抗体。
【請求項7】
前記抗aPCモノクローナル抗体は、完全抗体又はその抗体断片であり、前記抗体断片は、Fab’、Fab、F(ab’)2、シングルドメイン抗体、Fv又はscFvであることを特徴とする請求項1に記載の抗aPCモノクローナル抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗aPCモノクローナル抗体に関連するバイオマテリアルであって、
1)請求項1に記載の抗aPCモノクローナル抗体をコードする核酸分子、
2)前記1)に記載の核酸分子を含む構造体、
3)前記1)に記載の核酸分子を含む発現システム、のいずれかであることを特徴とするバイオマテリアル。
【請求項9】
製剤製品であって、
前記製剤製品は、薬物組成物又は検出用試薬キットであり、
前記製剤製品は、請求項1に記載の抗aPCモノクローナル抗体、又は請求項8に記載のバイオマテリアルのうちのいずれか1つ又は複数を含み、
前記製剤製品が薬物組成物の場合には、更に、薬学的に許容可能なベクターを含むことを特徴とする製剤製品。
【請求項10】
血液凝固の治療に関連する方法であって、
治療が必要な個体に対し、有効量の請求項1~7のいずれか1項に記載の抗aPCモノクローナル抗体、又は請求項8に記載のバイオマテリアルのうちのいずれか1つ又は複数を投与し、前記個体は血液凝固欠乏又は欠陥症に罹患しており、或いは、前記個体は血液凝固の治療を必要としており、或いは、前記個体は敗血症又は血友病に罹患しており、或いは、前記個体は止血調節を必要としていることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗aPCモノクローナル抗体、又は請求項9に記載のバイオマテリアルの、
i)血液凝固欠乏又は欠陥症を予防及び/又は治療する薬物の製造における応用、
ii)aPCによるヒストンH3及びH4の分解能力を強化する促進剤の製造における応用、
iii)個体内の活性化プロテインCの抗凝固活性を阻害する薬物の製造における応用、
iv)血液凝固を必要とする個体を治療する薬物の製造における応用、
vi)個体の止血を調節する薬物の製造における応用、
vii)疾病、又は非疾病の診断や治療を目的とする免疫学的検査・分析、もしくはaPCの検出用試薬又は試薬キットの製造における応用、
viii)その他の試薬又は薬物と合わせて使用する際の応用、のうちのいずれか1つ又は複数の使用。
【請求項12】
前記血液凝固欠乏又は欠陥症には、血液凝固因子の欠乏に起因して血液凝固障害が生じ、出血が引き起こされる病気、及び、外傷や手術に起因する血液凝固の乱れが含まれることを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項13】
前記血液凝固欠乏又は欠陥症には、血友病、敗血症、外傷性出血が含まれることを特徴とする請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクローナル抗体の技術分野に属し、ヒト活性化プロテインC(aPC)を対象とするモノクローナル抗体とその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインC(PC)経路は、血液凝固及び炎症の調節において重要な役割を果たす。プロテインCは、トロンビンと血管内皮細胞上のトロンボモジュリン(TM)が複合体を形成することで活性化される。活性化プロテインC(aPC)は、活性化したV因子及びVIII因子を分解することでトロンビンの形成をネガティブに下方調節するとともに、体内の血栓形成と止血とのバランスを維持する。また、aPCは動物を保護し、エンドトキシン(LPS)や大腸菌の侵入を減少させる。組換えヒトaPC製品は、FDAにより、ヒト重症敗血症の第1の治療薬として認可されている。しかし、現在のところ、aPCの抗炎症及び細胞保護の分子メカニズムは完全には把握されていない。突然変異研究より、aPCの抗血液凝固活性は、aPCによる内皮細胞の抗アポトーシス作用にとって決して必須ではないことが分かっている。血管内皮細胞プロテインC受容体(EPCR)は、主に大血管内皮上で発現し、トロンビン-TM複合体によってプロテインCの活性化を強化する。最近では、EPCRに結合したaPCが、内皮細胞上でPAR-1を分解可能なことが証明されている。且つ、当該研究より、aPCシグナルが伝達する全ての抗炎症及び抗アポトーシス作用は、いずれも内皮細胞中でPAR-1により媒介されることが明らかとなっている。しかし、致死投与量のLPSによる攻撃下において、PAR-1欠損型マウスの表現型は野生型対照マウスと類似していた。このことは、PAR-1がaPCシグナルによる炎症及びアポトーシス調節に関与する唯一のものではないことを意味している。
【0003】
体内で病理・生理機能を調節する際のaPCの中心的作用に鑑みて、モノクローナル抗体HAPC1573が生産されている。当該抗体は、ヒト活性型プロテインC(aPC)を特異的に識別するが、プロテインCは識別しない(Xu,特許文献1、特許文献2)。当該抗体は、aPCによる発色ペプチド基質のアミド分解活性を変化させるとともに、血漿中のaPC抗凝固活性をブロックする。より重要な点として、当該抗体は、aPCによる細胞外ヒストンH3及びH4の分解には影響せず、内皮細胞のトロンビンが誘発する透過性に対するaPCの細胞保護活性にも影響しない。また、MAPC1591は、抗マウスaPCのモノクローナル抗体であり、HAPC1573と類似の機能を有する。MAPC1591は、マウスaPCの抗凝固活性をブロックしつつ、細胞保護活性は維持可能なことから、血友病Aの場合でも外傷性出血の危険がない。このことは、抗aPC抗体を、血友病や外傷、敗血症等の臨床環境に適用可能なことを意味している。
【0004】
趙(Zhao)らは、抗凝固活性のみを対象とし、aPCのその他の活性は対象としないHAPC1573及びヒト化HAPC1573のCDR配列について報告している。彼らは、急性の後天性血友病Aのサルモデルにおいて、出血に対する体内保護作用を示している(Zhao,特許文献3、特許文献4、非特許文献1)。これらの報告では、aPC-ヒト化HAPC1573 Fab複合体のX線結晶構造より、HAPC1573はaPCの活性部位には結合せず、既知のaPC-FVa結合点を含むaPC自己消化ループ(autolysis loop)に結合する可能性が示された。つまり、ヒト化HAPC1573は、aPCとFVaの相互作用を妨害することでaPCの抗凝固機能を阻害する可能性があった。また、ヒト化HAPC1573の阻害作用はaPCの抗凝固活性にのみ限られ、細胞保護や抗炎症及び細胞シグナル伝達機能には影響しなかった。報告によると、ヒト血漿中のaPC濃度は約40pmであり、表面プラズモン共鳴分析より、aPCに対するヒト化HAPC1573の親和性は10nMであった。また、Protacに基づくAPTT血液凝固分析の結果、ヒトFVIII欠乏血漿及びヒトFIX欠乏血漿においてAPTTの延長を短縮させるHAPC1573の濃度依存性効果が証明されている。しかし、HAPC1573は、濃度50μg/mlの場合でも、このインビトロ試験において、aPCの抗凝固活性に対する最大の阻害作用を達成できていない。この観察の結果は、急性の後天性サル血友病モデルに使用したヒト化HAPC1573の体内観察結果と一致していた。動物研究では、10mg/kg及び30mg/kgという高投与量のHAPC1573の場合にようやく大きな保護作用を付与可能なことが見出されている。しかし、このような高投与量は臨床での使用に適さないため、より親和性の高いヒト化HAPC1573とすることが、将来的な治療におけるaPCの潜在的応用の前提となり、且つそれを保証するものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8153766号明細書
【特許文献2】米国特許第9127072号明細書
【特許文献3】米国特許第9657111号明細書
【特許文献4】国際公開第2017/087391号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Zhao,Nat.Communications 2020
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一の態様において、抗aPCモノクローナル抗体を提供する。前記抗aPCモノクローナル抗体は、原抗体と、当該原抗体について、以下の6つの突然変異位置の1又は複数を突然変異させて得た突然変異抗体を含む。
【0008】
前記原抗体は、(a)SEQ ID NO:27、28及び29の配列のうちのいずれか1つ又は複数で表される重鎖CDR、及び/又は、(b)SEQ ID NO:30、31及び32の配列のうちのいずれか1つ又は複数で表される軽鎖CDR、を含む。
【0009】
前記6つの突然変異位置は、それぞれ、1)VL CDR2に位置するN57R/W、2)VL CDR2に位置するE59G/P、3)VL CDR3に位置するQ93V、4)VH CDR1に位置するN31F、5)VH CDR2に位置するS55K、6)VH CDR3に位置するY104T、である。
【0010】
本発明において、前記抗aPCモノクローナル抗体の定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の配列のうちの1又は複数を含む。
【0011】
好ましくは、本発明において、前記抗aPCモノクローナル抗体の原抗体について行われる突然変異位置には、少なくとも、VH CDR1に位置するN31F、VH CDR2に位置するS55K、VL CDR2に位置するN57R、及びVL CDR2に位置するE59Gが含まれる。
【0012】
好ましくは、本発明において、前記抗aPCモノクローナル抗体の原抗体について行われる突然変異位置には、少なくとも、VL CDR2に位置するN57R、VL CDR2に位置するE59G、VL CDR3に位置するQ93V、VH CDR1に位置するN31F、及びVH CDR2に位置するS55Kが含まれる。
【0013】
本発明は、別の態様において、上記の抗aPCモノクローナル抗体に関連するバイオマテリアルとして、以下の1)~10)のうちのいずれか1つ又は複数を提供する。
【0014】
1) 上記の抗aPCモノクローナル抗体をコードする核酸分子。
【0015】
2) 1)で述べた核酸分子を含む発現カセット。
【0016】
3) 1)で述べた核酸分子を含む構造体。
【0017】
4) 2)で述べた発現カセットを含む構造体。
【0018】
5) 1)で述べた核酸分子を含む発現システム。
【0019】
6) 2)で述べた発現カセットを含む発現システム。
【0020】
7) 3)で述べた構造体を含む発現システム。
【0021】
8) 4)で述べた組換えベクターを含む発現システム。
【0022】
9) 上記抗aPCモノクローナル抗体のアミノ酸配列をコードする核酸分子を増幅するプライマー対。
【0023】
10) 上記の抗aPCモノクローナル抗体を含む融合抗体。
【0024】
本発明は、別の態様において、製剤製品を提供する。前記製剤製品は、薬物組成物又は検出用試薬キットである。前記製剤製品は、上記の抗aPCモノクローナル抗体又はその関連バイオマテリアルのうちのいずれか1つ又は複数を含む。前記製剤製品が薬物組成物の場合には、更に、薬学的に許容可能なベクターを含む。
【0025】
本発明は、別の態様において、血液凝固の治療に関連する方法を提供する。当該方法は、治療が必要な個体に対し有効量の上記抗aPCモノクローナル抗体又はその関連バイオマテリアルを投与することを含む。前記個体は血液凝固欠乏又は欠陥症に罹患している。或いは、前記個体は血液凝固の治療を必要としている。或いは、前記個体は敗血症又は血友病に罹患している。或いは、前記個体は止血調節を必要としている。
【0026】
本発明は、別の態様において、血液凝固欠乏又は欠陥症を予防及び/又は治療する薬物の製造における前記抗aPCモノクローナル抗体又はその関連バイオマテリアルの応用を提供する。前記血液凝固欠乏又は欠陥症には、血液凝固因子の欠乏に起因して血液凝固障害が生じ、出血が引き起こされる病気、及び、外傷や手術に起因する血液凝固の乱れ等が含まれる。更に、前記血液凝固欠乏又は欠陥症には、血友病、敗血症、外傷性出血等が含まれる。
【0027】
本発明は、別の態様において、前記抗aPCモノクローナル抗体又はその関連バイオマテリアルについて、aPCによるヒストンH3及びH4の切断能力を強化する促進剤の製造における応用、或いは、個体内の活性化プロテインCの抗凝固活性を阻害する薬物の製造における応用、或いは、血液凝固を必要とする個体について予防及び/又は治療を行う薬物の製造における応用、或いは、敗血症に罹患している個体について予防及び/又は治療を行う薬物の製造における応用、或いは、血友病に罹患している個体について予防及び/又は治療を行う薬物の製造における応用、或いは、個体の止血を調節する薬物の製造における応用、或いは、非疾病の診断や治療を目的とする免疫学的検査・分析、もしくはaPCの検出用試薬又は試薬キットの製造における応用、或いは、その他の試薬又は薬物と合わせて使用する際の応用、を提供する。
【0028】
本発明は、別の態様において、上記の抗aPCモノクローナル抗体の製造方法を提供する。当該方法は、前記抗aPCモノクローナル抗体の発現に適した条件で、前記抗aPCモノクローナル抗体の発現システムを培養して、前記抗aPCモノクローナル抗体を発現させるステップを含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有益な効果は以下の通りである。即ち、本発明で提供する抗aPCモノクローナル抗体は、ヒト化抗体であって、HAPC1573をヒト化するか、単一位置と複合位置について同時に突然変異スクリーニングを行うことで取得する。当該抗aPCモノクローナル抗体は、活性化プロテインCと選択的に結合して活性化プロテインCを阻害するが、活性化していないプロテインCとは結合しないか、活性化していないプロテインCを阻害しない。当該抗aPCモノクローナル抗体は、ヒトの活性化プロテインCとは選択的に結合するが、その他の種の活性化プロテインC又は活性化していないプロテインCとは結合しない。前記抗体は親和性が顕著に向上しており、一部の抗体については、親和性がHAPC1573と比べて100倍向上している。Protacに基づくAPTT血液凝固分析の結果、本発明では少量の抗体(例えば、1μg/ml)を使用するだけで、aPCの抗凝固活性に対し最大の阻害作用を奏し得る。前記抗体は、潜在的にaPCの抗凝固活性をブロック可能なため、血液凝固欠乏又は欠陥症の治療において広範な応用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】ヒトaPCに対するヒト化抗aPCモノクローナル抗体(Humab001-1~Humab001-28、又はHAPC-1~HAPC-28)の結合力を示す図である。
【
図1B】ヒトaPCに対するヒト化抗aPCモノクローナル抗体(Humab001-1~Humab001-28、又はHAPC-1~HAPC-28)の結合力を示す図である。
【
図1C】ヒトaPCに対するヒト化抗aPCモノクローナル抗体(Humab001-1~Humab001-28、又はHAPC-1~HAPC-28)の結合力を示す図である。
【
図1D】ヒトaPCに対するヒト化抗aPCモノクローナル抗体(Humab001-1~Humab001-28、又はHAPC-1~HAPC-28)の結合力を示す図である。
【
図2A】ヒトPCに対するヒト化抗aPCモノクローナル抗体(Humab001-1~Humab001-28、又はHAPC-1~HAPC-28)の結合力を示す図である。
【
図2B】ヒトPCに対するヒト化抗aPCモノクローナル抗体(Humab001-1~Humab001-28、又はHAPC-1~HAPC-28)の結合力を示す図である。
【
図2C】ヒトPCに対するヒト化抗aPCモノクローナル抗体(Humab001-1~Humab001-28、又はHAPC-1~HAPC-28)の結合力を示す図である。
【
図3A】hAPC/hPCに対するHAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の結合力を示す図である。また、
図3Aの横座標は、それぞれ、10
-6nM、10
-4nM、10
-2nM、10
0nM、10
2nM、10
4nMである。
【
図3B】hAPC/hPCに対するHAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の結合力を示す図である。また、
図3Bの横座標は、それぞれ、10
-6nM、10
-4nM、10
-2nM、10
0nM、10
2nM、10
4nMである。
【
図3C】hAPC/hPCに対するHAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の結合力を示す図である。また、
図3Cの横座標は、それぞれ、10
-6nM、10
-4nM、10
-2nM、10
0nM、10
2nM、10
4nMである。
【
図3D】hAPC/hPCに対するHAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の結合力を示す図である。また、
図3Dの横座標は、それぞれ、10
-6nM、10
-4nM、10
-2nM、10
0nM、10
2nM、10
4nMである。
【
図4A】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4B】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4C】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4D】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4E】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4F】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4G】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4H】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4I】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4J】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図4K】HAPC-14の突然変異抗体(HAPC14-1~HAPC14-10、又はHAPC-14-1~HAPC-14-10)の親和性測定を示す図である。
【
図5】aPCによるヒストン切断能力に対するHAPC-14の突然変異抗体HAPC-14-6の影響を示す図である。
【
図6A】体外薬効試験を示しており、血液凝固因子を欠乏した血漿中において、HAPC-14の突然変異抗体HAPC-14-3、HAPC-14-6がaPCの抗凝固活性を阻害する機能を示す図である。図中のAはFVIII血液凝固因子欠乏血漿に対応している。
【
図6B】体外薬効試験を示しており、血液凝固因子を欠乏した血漿中において、HAPC-14の突然変異抗体HAPC-14-3、HAPC-14-6がaPCの抗凝固活性を阻害する機能を示す図である。図中のBはFIX血液凝固因子欠乏血漿に対応している。
【
図6C】体外薬効試験を示しており、血液凝固因子を欠乏した血漿中において、HAPC-14の突然変異抗体HAPC-14-3、HAPC-14-6がaPCの抗凝固活性を阻害する機能を示す図である。図中のCはFXI血液凝固因子欠乏血漿に対応している。
【
図6D】体外薬効試験を示しており、血液凝固因子を欠乏した血漿中において、HAPC-14の突然変異抗体HAPC-14-3、HAPC-14-6がaPCの抗凝固活性を阻害する機能を示す図である。図中のDはFVII血液凝固因子欠乏血漿に対応している。
【
図6E】体外薬効試験を示しており、血液凝固因子を欠乏した血漿中において、HAPC-14の突然変異抗体HAPC-14-3、HAPC-14-6がaPCの抗凝固活性を阻害する機能を示す図である。図中のEはFXII血液凝固因子欠乏血漿に対応している。
【
図6F】体外薬効試験を示しており、血液凝固因子を欠乏した血漿中において、HAPC-14の突然変異抗体HAPC-14-3、HAPC-14-6がaPCの抗凝固活性を阻害する機能を示す図である。図中のFはFV血液凝固因子欠乏血漿に対応している。
【
図6G】体外薬効試験を示しており、血液凝固因子を欠乏した血漿中において、HAPC-14の突然変異抗体HAPC-14-3、HAPC-14-6がaPCの抗凝固活性を阻害する機能を示す図である。図中のGはFX血液凝固因子欠乏血漿に対応している。
【
図6H】体外薬効試験を示しており、血液凝固因子を欠乏した血漿中において、HAPC-14の突然変異抗体HAPC-14-3、HAPC-14-6がaPCの抗凝固活性を阻害する機能を示す図である。図中のHはVWF欠乏血漿に対応している。
【
図7A】体内薬効試験を示している図である。図中のAは、FVIII血液凝固因子欠乏マウスにFVIII血液凝固因子、HAPC1573、HAPC-14-6を注射した場合の欠乏マウスにおける血液凝固機能に対する影響である。
【
図7B】体内薬効試験を示している図である。図中のBは、FVIII血液凝固因子欠乏マウスに異なる投与量のHAPC-14-6を注射した場合の欠乏マウスにおける血液凝固機能に対する影響である。
【
図7C】体内薬効試験を示している図である。図中のCは、FIX血液凝固因子欠乏マウスにHAPC1573及び異なる投与量のHAPC-14-6を注射した場合の欠乏マウスにおける血液凝固機能に対する影響である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明では、HAPC1573をヒト化したあと親和性の最適化を行った。そして、Fabを利用する方式で、最適化突然変異位置のスクリーニングを行い、最終的に好ましい6つの位置を選別した。更に、突然変異を組み合わせたところ、得られた最適化突然変異体の親和性はHAPC1573と比較して100倍向上した。且つ、Protacに基づくAPTT血液凝固分析の結果、1μg/mlの突然変異抗体量で、aPCの抗凝固活性に対する最大の阻害作用を達成可能であり、臨床への更なる応用の可能性を有していた。
【0032】
本発明は、抗aPC抗体、即ち、抗aPCモノクローナル抗体14(HAPC-14)を提供する。前記抗体は、(a)SEQ ID NO:27、28及び29のうちのいずれか1つ又は複数の配列で表される重鎖CDRを含む重鎖、及び/又は、(b)SEQ ID NO:30、31及び32のうちのいずれか1つ又は複数の配列で表される軽鎖CDRを含む軽鎖、を含む。
【0033】
本発明で提供する抗aPCモノクローナル抗体14(HAPC-14)は、重鎖の配列がSEQ ID NO:5で表され、軽鎖の配列がSEQ ID NO:6で表される。
【0034】
本発明は、更に、ヒト活性化プロテインC(aPC)を対象とするモノクローナル抗体(抗aPCモノクローナル抗体14)の突然変異抗体を提供する。前記突然変異抗体は、上記の抗aPCモノクローナル抗体14の配列をベースとして、設計、スクリーニング及び統計を行った結果、以下の6つの位置の突然変異のうちの1つ又は複数の突然変異を含む場合に、モノクローナル抗体のFab断片と捕捉抗体の結合能力に顕著に影響を及ぼすとともに、親和性が高く、機能活性に優れ、系統配列に由来する差が低いことが分かった。上記6つの位置は、それぞれ、a)VL CDR2に位置するN57R/W(N57RはN57Wより優れる)、b)VL CDR2に位置するE59G/P(E59GはE59Pより優れる)、c)VL CDR3に位置するQ93V、d)VH CDR1に位置するN31F、e)VH CDR2に位置するS55K、f)VH CDR3に位置するY104T、である。
【0035】
これらのうち、最も重要な突然変異位置は軽鎖のN57R及び重鎖のN31Fである。いくつかの実施例において、ヒト化プロテインC(haPC)は、血友病マウスモデルにおいてaPCの抗凝固活性を完全に阻害するとともに、血液凝固機能を正常に戻すために必要な抗aPCモノクローナル抗体の濃度を1μg/ml未満まで低下させた。
【0036】
以下では、記載の便宜上、略称を用いて各突然変異の組み合わせついて説明する。つまり、N57RはVL CDR2に位置するN57R、N57WはVL CDR2に位置するN57W、E59GはVL CDR2に位置するE59G、E59PはVL CDR2に位置するE59P、Q93VはVL CDR3に位置するQ93V、N31FはVH CDR1に位置するN31F、S55KはVH CDR2に位置するS55K、Y104TはVH CDR3に位置するY104Tである。
【0037】
本発明において、上記6つの位置の突然変異の組み合わせには、以下が含まれる(ただし、これらに限らない)。
【0038】
(1)N57R、N57W、E59G、E59P、Q93V、N31F又はS55Kのうちのいずれか1つの位置の突然変異のみを含む。或いは、(2)N57R及びN57W、E59G及びE59P、Q93V及びN31F、N31F及びS55K、N57R及びE59G、N57R及びE59P、N57R及びQ93V、N57R及びN31F、N57R及びS55K、N57W及びE59P、N57W及びQ93V、N57W及びN31F、N57W及びS55K、E59G及びQ93V、E59G及びN31F、E59G及びS55K、E59P及びN31F、E59P及びS55K、Q93V及びS55K、という2つの位置の突然変異を同時に含む。或いは、(3)N57RとN57WとE59G、N57RとN57WとE59P、N57RとN57WとQ93V、N57RとN57WとN31F、N57RとN57WとS55K、N57RとE59GとE59P、N57RとE59GとQ93V、N57RとE59GとN31F、N57RとE59GとS55K、N57RとE59PとQ93V、N57RとE59PとN31F、N57RとE59PとS55K、N57RとQ93VとN31F、N57RとQ93VとS55K、N57RとN31FとS55K、N57WとE59GとE59P、N57WとE59GとQ93V、N57WとE59GとN31F、N57WとE59GとS55K、N57WとE59PとQ93V、N57WとE59PとN31F、N57WとE59PとS55K、N57WとQ93VとN31F、N57WとQ93VとS55K、N57WとN31FとS55K、E59GとE59PとQ93V、E59GとE59PとN31F、E59GとE59PとS55K、E59GとQ93VとN31F、E59GとQ93VとS55K、E59GとN31FとS55K、E59PとQ93VとN31F、E59PとQ93VとS55K、E59PとN31FとS55K、Q93VとN31FとS55K、という3つの位置の突然変異を同時に含む。或いは、(4)N57RとN57WとE59GとE59P、N57RとN57WとE59GとQ93V、N57RとN57WとE59GとN31F、N57RとN57WとE59GとS55K、N57RとE59GとE59PとQ93V、N57RとE59GとE59PとN31F、N57RとE59GとE59PとS55K、N57RとE59GとQ93VとN31F、N57RとE59GとQ93VとS55K、N57RとE59PとQ93VとN31F、N57RとE59PとQ93VとS55K、N57RとE59PとN31FとS55K、N57RとQ93VとN31FとS55K、N57WとE59GとE59PとQ93V、N57WとE59GとE59PとN31F、N57WとE59GとE59PとS55K、N57WとE59PとQ93VとN31F、N57WとE59PとQ93VとS55K、N57WとE59PとN31FとS55K、N57WとQ93VとN31FとS55K、E59GとE59PとQ93VとN31F、E59GとE59PとQ93VとS55K、E59GとQ93VとN31FとS55K、E59PとQ93VとN31FとS55K、という4つの位置の突然変異を同時に含む。或いは、(5)N57RとN57WとE59GとE59PとQ93V、N57RとN57WとE59GとE59PとN31F、N57RとN57WとE59GとQ93VとN31F、N57RとN57WとE59PとQ93VとN31F、N57RとE59GとE59PとQ93VとN31F、N57WとE59GとE59PとQ93VとN31F、N57RとN57WとE59GとE59PとS55K、N57RとN57WとE59GとQ93VとS55K、N57RとN57WとE59PとQ93VとS55K、N57RとE59GとE59PとQ93VとS55K、N57WとE59GとE59PとQ93VとS55K、N57RとN57WとE59GとN31FとS55K、N57RとN57WとE59PとN31FとS55K、N57RとE59GとE59PとN31FとS55K、N57WとE59GとE59PとN31FとS55K、N57RとN57WとQ93VとN31FとS55K、N57RとE59GとQ93VとN31FとS55K、N57WとE59GとQ93VとN31FとS55K、N57RとE59PとQ93VとN31FとS55K、N57WとE59PとQ93VとN31FとS55K、E59GとE59PとQ93VとN31FとS55K、という5つの位置の突然変異を同時に含む。或いは、(6)N57RとN57WとE59GとE59PとQ93VとN31F、N57RとN57WとE59GとE59PとQ93VとS55K、N57RとN57WとE59GとE59PとN31FとS55K、N57RとN57WとE59GとQ93VとN31FとS55K、N57RとN57WとE59PとQ93VとN31FとS55K、N57RとE59GとE59PとQ93VとN31FとS55K、N57WとE59GとE59PとQ93VとN31FとS55K、という6つの位置の突然変異を同時に含む。或いは、(7)N57RとN57WとE59GとE59PとQ93VとN31FとS55Kという7つの位置の突然変異を同時に含む。
【0039】
具体的実施形態において、本発明は、SEQ ID NO:27又は33で表される重鎖CDR1、SEQ ID NO28又は40で表される重鎖CDR2、SEQ ID NO:29又は77で表される重鎖CDR3のうちのCDR1、CDR2、CDR3の1つ又は2つ又は3つ、及び/又は、SEQ ID NO:30で表される軽鎖CDR1、SEQ ID NO:31、37、43、49、73のいずれかの配列で表される軽鎖CDR2、SEQ ID NO:32又は44で表される軽鎖CDR3のうちのCDR1、CDR2、CDR3の1つ又は2つ又は3つ、を含む抗aPCモノクローナル抗体を提供する。
【0040】
具体的実施形態において、前記抗体は、(a)SEQ ID NO:27、28及び29で表される重鎖CDR、及び/又は、(b)SEQ ID NO:30、31及び32で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(c)SEQ ID NO:33、34及び35で表される重鎖CDR、及び/又は、(d)SEQ ID NO:36、37及び38で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(e)SEQ ID NO:39、40及び41で表される重鎖CDR、及び/又は、(f)SEQ ID NO:42、43及び44で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(g)SEQ ID NO:45、46及び47で表される重鎖CDR、及び/又は、(h)SEQ ID NO:48、49及び50で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(i)SEQ ID NO:51、52及び53で表される重鎖CDR、及び/又は、(j)SEQ ID NO:54、55及び56で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(k)SEQ ID NO:57、58及び59で表される重鎖CDR、及び/又は、(l)SEQ ID NO:60、61及び62で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(m)SEQ ID NO:63、64及び65で表される重鎖CDR、及び/又は、(n)SEQ ID NO:66、67及び68で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(o)SEQ ID NO:69、70及び71で表される重鎖CDR、及び/又は、(p)SEQ ID NO:72、73及び74で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(q)SEQ ID NO:75、76及び77で表される重鎖CDR、及び/又は、(r)SEQ ID NO:78、79及び80で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(s)SEQ ID NO:81、82及び83で表される重鎖CDR、及び/又は、(t)SEQ ID NO:84、85及び86で表される軽鎖CDRを含む抗体と、(u)SEQ ID NO:87、88及び89で表される重鎖CDR、及び/又は、(v)SEQ ID NO:90、91及び92で表される軽鎖CDRを含む抗体、から選択される。
【0041】
本発明において、前記抗aPCモノクローナル抗体の重鎖フレームワーク領域は、本発明における前記抗aPCモノクローナル抗体の機能を発揮するのに適した従来のいずれかのフレームワーク領域とすればよく、ヒト由来としてもよいし、マウス由来としてもよい。
【0042】
本発明において、前記抗aPCモノクローナル抗体の軽鎖フレームワーク領域は、本発明における前記抗aPCモノクローナル抗体の機能を発揮するのに適した従来のいずれかのフレームワーク領域とすればよく、ヒト由来としてもよいし、マウス由来としてもよい。
【0043】
具体的実施形態において、前記抗aPCモノクローナル抗体は、SEQ ID NO:5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25のいずれかの配列で表される重鎖配列、及び/又は、SEQ ID NO:6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26のいずれかの配列で表される軽鎖配列、を含む。
【0044】
具体的実施形態において、前記抗aPCモノクローナル抗体は、SEQ ID NO:5で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:6で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14と、SEQ ID NO:7で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:8で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-1と、SEQ ID NO:9で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:10で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-2と、SEQ ID NO:11で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:12で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-3と、SEQ ID NO:13で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:14で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-4と、SEQ ID NO:15で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:16で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-5と、SEQ ID NO:17で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:18で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-6と、SEQ ID NO:19で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:20で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-7と、SEQ ID NO:21で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:22で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-8と、SEQ ID NO:23で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:24で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-9と、SEQ ID NO:25で表される重鎖配列及びSEQ ID NO:26で表される軽鎖配列を含む抗体HaPC14-10、から選択される。
【0045】
本発明において、一部の配列は、構成は同じだが番号が異なっている(具体的には、配列表の具体的なアミノ酸配列を参照すればよい)。
【0046】
例えば、抗体の重鎖CDR1を表す配列では、配列27、87が同じであり、配列33、39、45、51、57、63、69、75、81が同じである。
【0047】
また、抗体の重鎖CDR2を表す配列では、配列28、34、52、70が同じであり、配列40、46、58、64、76、82、88が同じである。
【0048】
また、抗体の重鎖CDR3を表す配列では、配列29、35、41、47、53、59、65、71が同じであり、配列77、83、89が同じである。
【0049】
また、抗体の軽鎖CDR1を表す配列では、配列30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90が同じである。
【0050】
また、抗体の軽鎖CDR2を表す配列では、配列37、61が同じであり、配列49、55、67、79、85、91が同じである。
【0051】
また、抗体の軽鎖CDR3を表す配列では、配列32、38、68、74、86が同じであり、配列44、50、56、62、80、92が同じである。
【0052】
具体的実施形態において、本発明は、更に、上記の抗aPCモノクローナル抗体に関連するバイオマテリアルとして、以下の1)~10)のうちのいずれか1つ又は複数を提供する。
【0053】
1) 上記の抗aPCモノクローナル抗体をコードする核酸分子。
【0054】
2) 1)で述べた核酸分子を含む発現カセット。
【0055】
3) 1)で述べた核酸分子を含む構造体。
【0056】
4) 2)で述べた発現カセットを含む構造体。
【0057】
5) 1)で述べた核酸分子を含む発現システム。
【0058】
6) 2)で述べた発現カセットを含む発現システム。
【0059】
7) 3)で述べた構造体を含む発現システム。
【0060】
8) 4)で述べた組換えベクターを含む発現システム。
【0061】
9) 上記抗aPCモノクローナル抗体のアミノ酸配列をコードする核酸分子を増幅するプライマー対。
【0062】
10) 上記の抗aPCモノクローナル抗体を含む融合抗体。
【0063】
前記発現システムは、細胞としてもよいし、細胞株としてもよい。前記細胞又は細胞株は、前記抗aPCモノクローナル抗体をコードする。
【0064】
具体的実施形態において、本発明は製剤製品を提供する。前記製剤製品は、薬物組成物又は検出用試薬、又は検出用試薬キットである。
【0065】
具体的実施形態において、本発明で提供する薬物組成物は、上記の抗aPCモノクローナル抗体又は上記のバイオマテリアルのうちのいずれか1つ又は複数と、薬学的に許容可能なベクターを含む。前記ベクターは、各種の賦形剤及び希釈剤を含み得るが、それ自体は必須の活性成分ではなく、且つ投与後に過剰な毒性を有さない。適切なベクターは、当業者が熟知するものとし、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,N.J.,1991)に薬学的に許容可能なベクターに関する内容が記載されている。
【0066】
具体的実施形態において、本発明で提供する検出用試薬又は検出用試薬キットは、上記の抗aPCモノクローナル抗体又は上記のバイオマテリアルのうちのいずれか1つ又は複数を含む。また、前記抗体は標識されている。
【0067】
前記標識は、従来のいずれかの方式で実施可能であり、例えば、化学発光標識、蛍光色素分子、放射性標識又は発色団等を用いる。
【0068】
前記検出用試薬又は試薬キットは、更に、緩衝剤、希釈剤、取扱説明書等を含んでもよい。
【0069】
前記抗体は、その働きに適するか、活性を発揮し得るいかなる形式で存在してもよく、例えば、水性懸濁液の形式で存在する。
【0070】
いくつかの実施例において、本発明における前記抗aPCモノクローナル抗体は、aPCによるヒストンH3及びH4の分解能力を強化する。このことは、抗aPCモノクローナル抗体が、ヒストンH3及びH4の細胞傷害性に対する細胞保護作用を提供し得ることを示唆している。
【0071】
具体的実施形態において、本発明は、血液凝固欠乏又は欠陥症を治療する方法を提供する。前記血液凝固欠乏又は欠陥症の定義は上述した通りである。具体的には、遺伝性及び後天性の血液凝固欠乏又は欠陥(例えば、血友病Aや血友病B、又は敗血症)を治療する方法を提供する。また、必要な患者(例えば、外傷患者、又は血液凝固を必要とする患者)に抗aPCモノクローナル抗体を投与することで出血時間を短縮する方法も提供する。更に、対象における活性化プロテインCの抗凝固活性を阻害する方法を提供する。且つ、対象における血栓の形成を調節する方法を提供する。本発明の前記方法は、治療が必要な個体に対し、有効量の本発明における上記抗aPCモノクローナル抗体を投与する。また、抗ヒトaPCモノクローナル抗体を生産する方法も提供する。
【0072】
具体的実施形態において、本発明は、治療が必要な個体に対し、有効量の上記抗aPCモノクローナル抗体又はその関連バイオマテリアルを投与することを含む血液凝固欠乏又は欠陥症を治療する方法を提供する。
【0073】
具体的実施形態において、本発明は、血液凝固の治療に関連する方法を提供する。前記方法は、治療が必要な個体に対し、有効量の上記抗aPCモノクローナル抗体、又は上記バイオマテリアルのうちのいずれか1つ又は複数を投与することを含む。前記個体は血液凝固欠乏又は欠陥症に罹患している。或いは、前記個体は血液凝固の治療を必要としている。或いは、前記個体は敗血症又は血友病に罹患している。或いは、前記個体は止血調節を必要としている。
【0074】
前記血液凝固欠乏又は欠陥症は、遺伝性であってもよいし、後天性であってもよく、血漿中のいずれか1つ又は複数の血液凝固因子の欠乏に起因して血液凝固障害が生じ、出血が引き起こされる病気を含む。具体的には、VIII、IX及びXI血液凝固因子の欠乏に起因する血友病A、血友病B、血友病Cや、その他の血液凝固因子(即ち、I、II、V、V+VIII、VII、X、又はXIII血液凝固因子)のうちの1つ又は複数の欠乏又は働きの異常に伴う出血性疾患等(例えば、外傷に伴う血液凝固の乱れ、敗血症の治療、移植、心臓手術、整形外科手術によって引き起こされる過度の出血等)の稀有な血液凝固因子欠乏症を含む。
【0075】
具体的実施形態において、本発明で提供するaPCによるヒストンH3及びH4の分解能力を強化する方法は、前記抗aPCモノクローナル抗体又はその関連バイオマテリアル又は薬物組成物を投与したあと、aPCによるヒストンH3及びH4の分解能力を強化可能である。これにより、ヒストンH3及びH4の細胞傷害性に対する細胞保護作用を提供し得る。
【0076】
具体的実施形態において、本発明で提供する個体内の活性化プロテインCの抗凝固活性を阻害する方法は、前記抗aPCモノクローナル抗体又はその関連バイオマテリアル又は薬物組成物を投与したあと、個体内の活性化プロテインCの抗凝固活性を阻害することで、個体の血液凝固機能を調節可能である。
【0077】
具体的実施形態において、本発明は、前記抗aPCモノクローナル抗体又はその関連バイオマテリアルの、i)血液凝固欠乏又は欠陥症を予防及び/又は治療する薬物の製造における応用、ii)aPCによるヒストンH3及びH4の分解能力を強化する促進剤の製造における応用、iii)個体内の活性化プロテインCの抗凝固活性を阻害する薬物の製造における応用、iv)血液凝固を必要とする個体を治療する薬物の製造における応用、vi)個体の止血を調節する薬物の製造における応用、vii)疾病、又は非疾病の診断や治療を目的とする免疫学的検査・分析、もしくはaPCの検出用試薬又は試薬キットの製造における応用、viii)その他の試薬又は薬物と合わせて使用する際の応用、を提供する。
【0078】
具体的実施形態において、本発明は、更に、上記の抗aPCモノクローナル抗体の製造方法を提供する。当該方法は、前記抗aPCモノクローナル抗体の発現に適した条件で、前記抗aPCモノクローナル抗体の発現システムを培養して、前記抗aPCモノクローナル抗体を発現させるステップを含む。
【0079】
本発明では、前記抗aPCモノクローナル抗体のアミノ酸配列と一定の同一性を有するポリペプチドも本発明の保護の範囲内である。例えば、前記抗aPCモノクローナル抗体と、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%以上の配列同一性を有し、且つ、前記抗aPCモノクローナル抗体の機能を有する抗体又は抗体断片(90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%以上の配列同一性を有する)が挙げられる。具体的には、前記抗aPCモノクローナル抗体について、1又は複数(具体的には、1~50個、1~30個、1~20個、1~10個、1~5個、1~3個、1個、2個又は3個とすることができる)のアミノ酸を置換、欠損又は添加することで得られるものや、或いは、N-末端及び/又はC-末端に1又は複数(具体的には、1~50個、1~30個、1~20個、1~10個、1~5個、1~3個、1個、2個又は3個とすることができる)のアミノ酸を添加することで得られるものであり、且つ、前記抗aPCモノクローナル抗体の機能を有するポリペプチド断片が挙げられる。
【0080】
「プロテインC」又は「PC」との用語は、酵素前駆体形式のプロテインCのいずれかのバリアント、アイソタイプ及び/又は同族体を意味し、細胞により自然に発現して血漿中に存在するとともに、プロテインCの活性化形式とは異なっている。
【0081】
「活性化プロテインC」或いは「aPC」との用語は、活性化形式のプロテインCを意味する。
【0082】
「抗aPCモノクローナル抗体」との用語は、aPCのエピトープに特異的に結合する抗体を意味し、抗ヒトaPCモノクローナル抗体のことである。前記抗aPCモノクローナル抗体は、完全抗体、抗体断片、ヒト抗体、ヒト化抗体及び遺伝子組換え抗体(例えば、モノクローナル抗体、キメラ抗体又は組換え抗体、及びこれら抗体の断片)を含む複数の抗体形式とすることができるが、これらに限らない。また、本発明に基づく性質を維持することが条件となる。
【0083】
前記抗体断片は、更に、Fab’、Fab、F(ab’)2、シングルドメイン抗体、Fv又はscFv等と定義される。本文中で記載する抗aPCモノクローナル抗体は、単一分子成分の抗体分子製剤を意味する。モノクローナル抗体成分は、特定のエピトープに対して単一的な結合特異性及び親和性を示し、ヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域、定常領域を有し得る。例えば、Fab断片とは、ドメインVL、VH、CL及びCH1からなる一価断片を意味し、F(ab’)2断片とは、ヒンジ領域においてジスルフィド結合により接続された2つのFab断片を含む二価断片を意味する。また、Fv断片とは、抗体の片腕におけるドメインVL及びVHからなるFv断片を意味する。
【0084】
「同一性」との用語については、肉眼又はコンピュータソフトで評価可能である。コンピュータソフトを使用する場合には、2つ又は複数の配列間の同一性をパーセンテージ(%)で表すことが可能である。このパーセンテージは、関連配列間の同一性を評価するために使用可能である。
【0085】
「個体」との用語には、通常、ヒト、ヒト以外の霊長類(例えば、哺乳動物、犬、猫、馬、羊、ブタ、牛等)が含まれる。「個体」は、上記の抗体、薬物、組成物、関連の製剤、試薬キット又は配合剤を用いて治療することで利益を獲得可能である。
【0086】
「治療有効量」との用語は、通常、適切な投与期間を経たあと、上記で列挙した疾病を治療する効果を達成可能な用量を意味する。
【0087】
「モノクローナル抗体」との用語は、単一のアミノ酸組成物による抗体分子製剤を意味する。「モノクローナル抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有し得る。一実施方案において、前記モノクローナル抗体はハイブリドーマから作製する。前記ハイブリドーマはB細胞を含む。当該B細胞は、不死化細胞と融合するヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、遺伝子組換えマウス)から取得する。
【0088】
「融合抗体」との用語は、遺伝子工学技術を利用して、抗体断片をその他の生物の活性化タンパク質と融合して得られる産生物を意味する。つまり、遺伝子レベルにおいて、目的遺伝子をIgの一部の断片遺伝子に連結し、真核又は原核細胞内で発現させた、上記2つの部分のドメインを有する組換えタンパク質を意味する。目的タンパク質がIgのどの断片に連結されるかによって、「融合抗体」は、Fab(Fv)融合タンパク質とFc融合タンパク質の2種類に大別可能である。また、2つの異なるタンパク質が連結されて1つの高分子となる。連結は、化学的手法で行ってもよいし、遺伝子融合で実現してもよい。融合抗体を作製する方法は、当該分野における公知の一般的なDNA組換え技術及び遺伝子導入技術に関連する。融合タンパク質の違いによって、このような抗体融合タンパク質は複数の生物学的機能を有する。且つ、発現される組換えタンパク質は、一本鎖抗体の抗原結合能力に影響することも、融合されるタンパク質の生物学的特性に影響することもない。
【0089】
「ヒト化抗体」との用語は、フレームワーク領域又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンと比較して異なる特異性を有する免疫グロブリンのCDRを含むよう改良されたことを意味する。
【0090】
aPCに対するaPC基質の結合の阻害及び/又はブロックに言及する場合、阻害及びブロックとの用語には、抗aPC抗体との接触時に、生理学的基質に対するaPCの結合親和性が、抗aPC抗体にaPCが接触していないときと比べて測定可能に低下することも含まれる。例えば、aPCとその基質(Va因子又はVIIIa因子を含む)の相互作用を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%ブロックする。
【0091】
「相補性決定領域」又は「CDR」とは、抗体分子の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域内の3つの超可変領域のうちの1つを意味し、結合する抗原の3次元構造と相補的なN末端の抗原-結合面を形成する。重鎖又は軽鎖のN末端から、これらの相補性決定領域は、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」及び「CDR3」と表される。CDRは、抗原-抗体結合に関連する。且つ、CDR3は、抗原-抗体結合に対し特異性を有する固有の領域を含む。従って、抗原-結合部位は6つのCDRを含み得る。これらは、重鎖及び軽鎖のV領域の各々からのCDR領域を含む。
【0092】
「エピトープ」との用語は、抗体が特異的に結合又は相互作用する抗原の範囲或いは領域を意味し、いくつかの実施形態では、抗原が物理的に抗体と接触する箇所を意味する。
【0093】
「保守的置換」との用語は、1又は複数のアミノ酸を、類似の生化学的特性を有するが、ポリペプチドの生物学的又は生化学的機能は喪失させないアミノ酸に置換するポリペプチド修飾を意味する。「保守的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されている。一般的な保守的置換には、例えば、芳香族アミノ酸Phe、Trp、Tyr間の相互置換、疎水性アミノ酸Leu、Ile、Val間の相互置換、極性アミノ酸Gln、Asn間の相互置換、アルカリ性アミノ酸Lys、Arg、His間の相互置換、酸性アミノ酸Asp、Glu間の相互置換、ヒドロキシ基のアミノ酸Ser、Thr間の相互置換がある。
【0094】
「同一性」との用語は、2つの核酸又は2つのポリペプチドを比較したときにヌクレオチドが同じである割合(例えば、少なくとも約80%(通常は少なくとも約85%)のヌクレオチド又はアミノ酸)を表す。いくつかの実施形態では、約90%、91%、92%、93%、94%又は95%、少なくとも1つの実施形態では、少なくとも約96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%又は99.5%のヌクレオチド又はアミノ酸が同じである。
【0095】
核酸は、細胞全体や細胞破砕物中に存在するか、或いは、一部が精製されるか実質的に精製された形式をなす。自然環境において核酸と通常結合しているその他の細胞成分から精製する場合、核酸は、「分離される」か、「実質的に精製される」。核酸は、例えば、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動等の当該分野で熟知されている技術で分離可能である。
【0096】
本発明で使用する関連の用語の説明は以下の通りである。
【0097】
【0098】
以下に、実施例を組み合わせて、本発明につき更に詳述する。なお、これらの実施例は本発明を説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を制限するものではない。本発明を実施する過程、条件、実験方法等は、以下で特に言及する内容を除き、いずれも当該分野における普遍的知識及び公知の常識であるため、本発明ではその内容を特に制限しない。
【実施例1】
【0099】
マウス抗aPCモノクローナル抗体のヒト化
マウスのハイブリドーマ抗体の可変領域配列についてヒト化設計を行った。まず、カバット(Kabat)システムを用いて、VH/VLアミノ酸配列をナンバリングした。次に、ペアリングされていないシステイン残基、N-グリコシル化部位及びCDR内部の脱アミノ部位を含むホットスポット(hot spot)部位がVH/VL配列に存在するか否かを分析するとともに、CDRに近接するN-グリコシル化部位を高リスク部位とみなした。このような部位が識別された場合には、それらを除去する必要があった。また、VH/VL配列の比較に基づいて、最適なヒト遺伝子のフレーム配列を選択した。且つ、最適な相同性に基づき、J領域の配列を選択して連結した。続いて、マウス由来のVH/VL配列につきホモロジーモデリングを行い、3D構造を形成した。そして、CDRと5Åの距離内にあるFR残基、VH/VL結合面を変更したあと、抗原の結合に影響する残基等を潜在的に復帰突然変異が必要な部位とみなした。且つ、コンピュータ分析によって、復帰突然変異の重要性を決定し、1つ又は複数の復帰突然変異を含む異なる組み合わせを設計した。
【0100】
標的セグメントのDNAをPCR増幅することで、ヒト化抗体配列をコードするプラスミドを構築した。続いて、一過性トランスフェクション及び発現を経て、protein Aアフィニティークロマトグラフィーカラムにより抗体を精製した。そして、SEC-HPLC及びSDS-PAGE法でヒト化抗体を分析・鑑定し、28個のヒト化抗aPCモノクローナル抗体のクローンを取得した。
【0101】
1.1 ELISA法によるヒトaPC(haPC)に対する抗aPCモノクローナル抗体の親和性測定
ELISA及びFACSによって、haPCに対するキメラ抗体及び上記28個のヒト化抗体の親和性を測定し、比較した。
【0102】
測定の結果、
図1に示すように、1~28番(Humab001-1~1-28又はHAPC-1~HAPC28)のヒト化抗体、3657陽性対照抗体(3657 PC mAb)、キメラ抗体(30120-mAb001×hIgG)は、いずれもhaPCに対し良好に結合した。また、13~20番の抗体はEC50値が低かった。このことは、これらの抗体のhaPCに対する結合力がより強いことを意味していた。
【0103】
1.2 ELISA法によるヒトPC(hPC)に対する抗aPCモノクローナル抗体の結合力測定
13~20番のヒト化抗aPCモノクローナル抗体(Humab001-13~Humab001-20、又はHAPC-13~HAPC-20)を選択し、hPCに対する結合力を測定した。
【0104】
結果は
図2に示す通りであった。結果より、13~20番のヒト化抗aPCモノクローナル抗体はhPCに一切結合しないことが示された。
【0105】
13番抗体(HAPC-13)、14番抗体(HAPC-14)及び16番抗体(HAPC-16)は、親和性の最適化を試みる際に選択した3つの親抗体であった。これら3つの抗体は、重鎖のフレームワーク領域は同じであったが、軽鎖のフレームワーク領域は異なっていた。そのうち、HAPC-13は原抗体であり、HAPC-14は、HAPC-13をベースに1つの復帰突然変異を有しており、HAPC-16は、HAPC-13をベースに5つの復帰突然変異を有していた。以下の実施例では、HAPC-14の抗体を選択して後続の親和性の最適化を行った。
【実施例2】
【0106】
抗aPCモノクローナル抗体HAPC-14の親和性の最適化
上記の14番抗体(Humab001-14又はHAPC14又はHAPC-14)をベースに、抗体の親和性最適化設計及び突然変異体の作製を行った。
【0107】
【0108】
2.1 部位特異的変異導入
部位特異的変異導入手法を用いて、親HAPC-14 Fabクローンの6つの相補性決定領域(CDR)における各アミノ酸をそれぞれ別の19個のアミノ酸に突然変異させた。突然変異を各標的CDR位置に導入するために、20個のアミノ酸をコードするNNSコドンを含むDNAプライマーを使用した。また、リン酸化した縮重プライマーを部位特異的変異導入反応に用いた。
【0109】
2.2 PCR反応
PCR条件は、94℃で2分(94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で5分)、16サイクル、72℃で10分とした。
【0110】
PCR産物の精製後、コロニーの形成及びFab断片の産生のために、大腸菌TG1内にエレクトロポレーションした。
【0111】
2.3 Fab突然変異体ライブラリの一次スクリーニング
一次スクリーニングは単点(one-point)ELISA(SPE)分析を含んでいた。また、当該分析は捕捉ELISAにより行った。
【0112】
即ち、4℃、pH7.4のコーティングバッファPBS中で、抗Fab抗体を用いて96ウェルマイクロプレートの各ウェルをコーティングした。2日目に、25℃で、pH7.4のPBS中のカゼインを用いてプレートを1時間ブロッキングした。その後、Fab PEをプレートに添加し、25℃で1時間培養した。そして、洗浄後に、ビオチン化した抗原をウェル内に加え、25℃で1時間培養した。続いて、25℃でSA-ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)複合体と1時間培養した。そして、テトラメチルベンジジン(TMB)基質を用いてHRP活性を検出し、2M HClでクエンチ反応させた。プレートは450nMで読み取った。これにより、450nmで親クローンよりも3倍大きい光学密度(OD)信号を示したクローンを選別し、シーケンシングを行った。このように、pH7.4の捕捉ELISAによって、固有配列を有するHAPC-14の結合が改良された突然変異体について実証した。また、直接抗原コーティングELISAによって、HAPC-14の固有配列を有する結合が改良された突然変異体をソートした。結果を表3に示す。
【0113】
【0114】
表3に示すように、HAPC-14の一次スクリーニングで鑑定した9種類の個体(HAPC-14-R1-1H1-F2、HAPC-14-R1-2H6-C2、HAPC-14-R1-3H4-C6、HAPC-14-R1-2L4-B2、HAPC-14-R1-2L4-D4、HAPC-14-R1-2L6-G1、HAPC-14-R1-2L6-G11、HAPC-14-R1-3L1-D11、HAPC-14-R1-3L1-G8)における親和性が改良された突然変異は、更に、組み合わせ突然変異体ライブラリの設計及び構築に用いられた。
【0115】
2.4 直接KDソートELISAによる主要Fab突然変異体ライブラリの検証
直接抗原コーティングELISAのKD ELISAによって、各突然変異体における結合が改良されたFabのKDレベルを特定した。
【0116】
pH7.4の1xPBS緩衝液中で、hPro1.biotinを用いて96ウェルマイクロプレートの各ウェルをコーティングし、4℃で一晩培養した。2日目に、25℃、pH7.4の1xPBS緩衝液中で、カゼインを用いてプレートを1時間ブロッキングした。そして、1つの濃度で希釈した各突然変異体のFab PEをプレートに加えたあと、25℃で1時間培養した。その後、25℃で1時間カップリングしたヤギ抗c-myc HRPと培養した。そして、テトラメチルベンジジン(TMB)基質を用いてHRP活性を検出し、2M HClでクエンチ反応させた。続いて、450nMで各プレートのOD値を読み取った。
【0117】
2.5 HAPC-14 Fabライブラリの組み合わせスクリーニング
抗原との結合に有利なVH及びVL中の点突然変異を特定し、更に組み合わせることで、更なる結合相乗効果を取得した。簡単に述べると、各縮重プライマーを全てリン酸化したあと、ウラシル化したssDNAと10:1の割合で使用した。次に、混合物を85℃まで加熱して5分間経過したあと、55℃まで冷却して1時間以上経過させた。その後、T4リガーゼ及びT4 DNA ポリメラーゼを加え、混合物を37℃で1.5時間培養した。そして、100ngの組み合わせライブラリDNAをTG1にエレクトロポレーションすることで、コロニーの形成及びFab断片の産生を行った。
【0118】
組み合わせ突然変異体にFabを発現させて、捕捉ELISAによりスクリーニングを行った。450nmで、一次リードクローン(lead clone)よりも3倍大きい光学密度(OD)信号を示したクローンにつきシーケンシングを行った。こうして、捕捉ELISAにより、固有配列を有する結合が改良された突然変異体について実証するとともに、直接抗原コーティングELISAによりソートを行った。
【0119】
HAPC-14の複数の組み合わせ突然変異体を選別し、KD ELISAによって、上位16個の親和性が顕著に改善された組み合わせ突然変異体を確認した(表4のNo.1~16参照)。
【0120】
【0121】
スクリーニング及び統計の結果、以下の6つの位置の突然変異がFab断片と捕捉抗体の結合能力に顕著に影響を及ぼすことが見出された。これら6つの位置は、それぞれ、a)VL CDR2に位置するN57R/W(N57RはN57Wより優れる)、b)VL CDR2に位置するE59G/P(E59GはE59Pより優れる)、c)VL CDR3に位置するQ93V、d)VH CDR1に位置するN31F、e)VH CDR2に位置するS55K、f)VH CDR3に位置するY104T、である。
【0122】
これらのうち、最も重要な突然変異位置は、軽鎖に位置するN57R及び重鎖に位置するN31Fである。
【実施例3】
【0123】
HAPC-14の組み合わせ突然変異位置についての抗aPCモノクローナル抗体(完全IgG1の作製)
3.1 HAPC-14の組み合わせ突然変異位置についての抗aPCモノクローナル抗体(HAPC14-1~HAPC14-10)の作製
実施例2の6つの突然変異位置に基づいて、組み合わせ及び作製を行うことで、10個の突然変異体を取得した(下表5の14-1~14-10参照)(HAPC14-1~HAPC14-10)。その後、配列を完全なIgG形式に構成して発現精製を行い、抗体の発現量、親和性及びその他の生物活性の状況について考察した。
【0124】
HAPC-14及び10個の突然変異体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.5~26に示す通りであった。
【0125】
ヒト化抗体13(HAPC-13)
重鎖(SEQ ID NO.1)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKSNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.2)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0126】
ヒト化抗体16(HAPC-16)
重鎖(SEQ ID NO.3)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKSNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.4)
NIVLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKPPKLLIYLASNLESGVPSRFSGSGSRTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0127】
ヒト化抗体14(HAPC-14)
重鎖(SEQ ID NO.5)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKSNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.6)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0128】
HAPC-14-1
重鎖(SEQ ID NO.7)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKSNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.8)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASWLGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0129】
HAPC-14-2
重鎖(SEQ ID NO.9)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKKNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.10)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASWLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCVQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0130】
HAPC-14-3
重鎖(SEQ ID NO.11)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKKNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.12)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASRLGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCVQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0131】
HAPC-14-4
重鎖(SEQ ID NO.13)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKSNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.14)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASRLGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCVQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0132】
HAPC-14-5
重鎖(SEQ ID NO.15)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKKNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.16)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASWLGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCVQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0133】
HAPC-14-6
重鎖(SEQ ID NO.17)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKKNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.18)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASRLGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0134】
HAPC-14-7
重鎖(SEQ ID NO.19)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKSNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDYFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.20)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASRLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0135】
HAPC-14-8
重鎖(SEQ ID NO.21)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKKNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDTFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.22)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASRLGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCVQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0136】
HAPC-14-9
重鎖(SEQ ID NO.23)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKKNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDTFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.24)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASRLGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0137】
HAPC-14-10
重鎖(SEQ ID NO.25)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYYLNWVRQAPGKGLEWVGDIRLKKNNYEKHYAESVKGRFTISRDDSKSITYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGDTFDYWGQGTTVTVSS
軽鎖(SEQ ID NO.26)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSFGATFMHWYQQKPGKAPKLLIYLASRLGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCVQNNEDPYTFGQGTKLEIK
【0138】
HAPC-14
重鎖CDR1(SEQ ID NO.27)
NYYLN
【0139】
HAPC-14
重鎖CDR2(SEQ ID NO.28)
DIRLKSNNYEKHYAESVKG
【0140】
HAPC-14
重鎖CDR3(SEQ ID NO.29)
EGDYFDY
【0141】
HAPC-14
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.30)
RASESVDSFGATFMH
【0142】
HAPC-14
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.31)
LASNLES
【0143】
HAPC-14
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.32)
QQNNEDPYT
【0144】
HAPC-14-1
重鎖CDR1(SEQ ID NO.33)
FYYLN
【0145】
HAPC-14-1
重鎖CDR2(SEQ ID NO.34)
DIRLKSNNYEKHYAESVKG
【0146】
HAPC-14-1
重鎖CDR3(SEQ ID NO.35)
EGDYFDY
【0147】
HAPC-14-1
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.36)
RASESVDSFGATFMH
【0148】
HAPC-14-1
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.37)
LASWLGS
【0149】
HAPC-14-1
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.38)
QQNNEDPYT
【0150】
HAPC-14-2
重鎖CDR1(SEQ ID NO.39)
FYYLN
【0151】
HAPC-14-2(SEQ ID NO.40)
重鎖CDR2
DIRLKKNNYEKHYAESVKG
【0152】
HAPC-14-2
重鎖CDR3(SEQ ID NO.41)
EGDYFDY
【0153】
HAPC-14-2
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.42)
RASESVDSFGATFMH
【0154】
HAPC-14-2
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.43)
LASWLES
【0155】
HAPC-14-2
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.44)
VQNNEDPYT
【0156】
HAPC-14-3
重鎖CDR1(SEQ ID NO.45)
FYYLN
【0157】
HAPC-14-3
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【0158】
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EGDYFDY
【0159】
HAPC-14-3
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.48)
RASESVDSFGATFMH
【0160】
HAPC-14-3
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.49)
LASRLGS
【0161】
HAPC-14-3
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.50)
VQNNEDPYT
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HAPC-14-4
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FYYLN
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【0164】
HAPC-14-4
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EGDYFDY
【0165】
HAPC-14-4
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.54)
RASESVDSFGATFMH
【0166】
HAPC-14-4
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.55)
LASRLGS
【0167】
HAPC-14-4
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VQNNEDPYT
【0168】
HAPC-14-5
重鎖CDR1(SEQ ID NO.57)
FYYLN
【0169】
HAPC-14-5
重鎖CDR2(SEQ ID NO.58)
DIRLKKNNYEKHYAESVKG
【0170】
HAPC-14-5
重鎖CDR3(SEQ ID NO.59)
EGDYFDY
【0171】
HAPC-14-5
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.60)
RASESVDSFGATFMH
【0172】
HAPC-14-5
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.61)
LASWLGS
【0173】
HAPC-14-5
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.62)
VQNNEDPYT
【0174】
HAPC-14-6
重鎖CDR1(SEQ ID NO.63)
FYYLN
【0175】
HAPC-14-6
重鎖CDR2(SEQ ID NO.64)
DIRLKKNNYEKHYAESVKG
【0176】
HAPC-14-6
重鎖CDR3(SEQ ID NO.65)
EGDYFDY
【0177】
HAPC-14-6
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.66)
RASESVDSFGATFMH
【0178】
HAPC-14-6
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.67)
LASRLGS
【0179】
HAPC-14-6
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.68)
QQNNEDPYT
【0180】
HAPC-14-7
重鎖CDR1(SEQ ID NO.69)
FYYLN
【0181】
HAPC-14-7
重鎖CDR2(SEQ ID NO.70)
DIRLKSNNYEKHYAESVKG
【0182】
HAPC-14-7
重鎖CDR3(SEQ ID NO.71)
EGDYFDY
【0183】
HAPC-14-7
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.72)
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【0184】
HAPC-14-7
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.73)
LASRLES
【0185】
HAPC-14-7
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.74)
QQNNEDPYT
【0186】
HAPC-14-8
重鎖CDR1(SEQ ID NO.75)
FYYLN
【0187】
HAPC-14-8
重鎖CDR2(SEQ ID NO.76)
DIRLKKNNYEKHYAESVKG
【0188】
HAPC-14-8
重鎖CDR3(SEQ ID NO.77)
EGDTFDY
【0189】
HAPC-14-8
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.78)
RASESVDSFGATFMH
【0190】
HAPC-14-8
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.79)
LASRLGS
【0191】
HAPC-14-8
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.80)
VQNNEDPYT
【0192】
HAPC-14-9
重鎖CDR1(SEQ ID NO.81)
FYYLN
【0193】
HAPC-14-9
重鎖CDR2(SEQ ID NO.82)
DIRLKKNNYEKHYAESVKG
【0194】
HAPC-14-9
重鎖CDR3(SEQ ID NO.83)
EGDTFDY
【0195】
HAPC-14-9
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.84)
RASESVDSFGATFMH
【0196】
HAPC-14-9
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.85)
LASRLGS
【0197】
HAPC-14-9
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.86)
QQNNEDPYT
【0198】
HAPC-14-10
重鎖CDR1(SEQ ID NO.87)
NYYLN
【0199】
HAPC-14-10
重鎖CDR2(SEQ ID NO.88)
DIRLKKNNYEKHYAESVKG
【0200】
HAPC-14-10
重鎖CDR3(SEQ ID NO.89)
EGDTFDY
【0201】
HAPC-14-10
軽鎖CDR1(SEQ ID NO.90)
RASESVDSFGATFMH
【0202】
HAPC-14-10
軽鎖CDR2(SEQ ID NO.91)
LASRLGS
【0203】
HAPC-14-10
軽鎖CDR3(SEQ ID NO.92)
VQNNEDPYT
【0204】
詳細な情報を表5に示す。
【0205】
【表5】
表中の下線はCDRs領域であり、その他はフレームワーク領域である。
【0206】
【0207】
下線はCDRs領域であり、その他はフレームワーク領域である。また、白字はヒト化位置を示す。
【0208】
【0209】
3.2 HAPC14の組み合わせ突然変異位置について作製した抗aPCモノクローナル抗体のhaPC/hPCに対する結合力測定(HAPC14-1~HAPC14-10)
測定方法:
Elisa法で、haPC/hPCに対する抗aPCモノクローナル抗体の結合力を測定した。
【0210】
1.haPC/hPC(PBS中に1μg/ml)を用い、100μL/ウェル、4℃で、ELISAプレートを一晩コーティングした。
【0211】
2.PBST(0.1%Tween20)を用い、200μL/ウェルでプレートを3回洗浄した。
【0212】
3.200μL/ウェル、室温で、2%BSA(PBS溶液)を用いてプレートを1時間ブロッキングした。
【0213】
4.PBST(0.1%Tween20)を用い、200μL/ウェルでプレートを3回洗浄した。
【0214】
5.抗aPCモノクローナル抗体を一次抗体として用い(2%BSA中で10μg/mlから希釈)、100μL/ウェルでプレートを室温で1時間培養した。
【0215】
6.PBST(0.1%Tween20)を用い、200μL/ウェルでパレットを3回洗浄した。
【0216】
7.プレートと抗hIgG-Fc抗体-HRP(2%BSA緩衝液中で5000倍に希釈)を室温で1時間培養した。
【0217】
8.PBST(0.1%Tween20)を用い、200μL/ウェルでパレットを6回洗浄した。
【0218】
9.100μL/ウェルで、TMB基質を用いてプレートを培養し(A溶液とB溶液を1:1(v/v)で用いて調製)、10分間遮光した。
【0219】
10.100μL/ウェルで、HCl(1M)を用いてクエンチ反応させ、OD450を読み取った。
【0220】
測定結果は、
図3、表8及び表9に示す通りとなった。これより、抗aPCモノクローナル抗体はhAPCと結合するが、hPCとは結合しないことが分かった。
【0221】
【0222】
【0223】
3.3 Octet生体分子相互作用システムによるHAPC-14の組み合わせ突然変異位置について作製した抗aPCモノクローナル抗体の親和性測定(HAPC-14-1~HAPC-14-10)
測定方法:Octet解析は、25℃でProtein A Octetバイオセンサを用い、1x Kinetics緩衝液中で行った。動力学的測定時には、第1のベースラインステップを1x Kinetics緩衝液中で120秒実行したあと、バイオセンサに抗体を付加して240秒実行した。続いて、第2のベースラインステップを1x Kinetics緩衝液中で120秒実行した。その後、5つの希釈濃度(3.13nM、6.25nM、12.5nM、25nM及び50nM)の抗原(huAPC)を含むウェルに捕捉抗体のバイオセンサを180秒浸漬してから、1x Kinetics緩衝液中で400秒解離させた。また、1x Kinetics緩衝液をブランク対照とし、緩衝液中における抗体の自然な解離を示した。そして、pH1.5の10mMグリシンを再生ステップに用いた。且つ、Octetデータ解析ソフトを用いて結合キネティクスを演算するとともに、1:1結合モデルを用いてカーブフィッティングを行った。
【0224】
突然変異抗体の親和性はpH7.4で測定した。結果は、
図4及び表10に示す通りであった。
【0225】
【0226】
図4及び表10の結果から明らかなように、突然変異後の抗体は依然としてhaPCと結合可能であるが、hPCとの結合は不可能であった。且つ、親和性は、突然変異していない14番の抗体HAPC-14よりも向上していた。特に、6番(HAPC14-6)及び3番(HAPC14-3)は100倍近く向上していた。
【実施例4】
【0227】
抗aPCモノクローナル抗体HAPC14-6及びaPCによるヒストン分解作用
測定方法:
【表11】
SDS-PAGEゲル電気泳動後にクマシーブリリアントブルーで染色し、HAPCモノクローナル抗体がaPCによるヒストン分解を促進したか阻害したかを観察した。
【0228】
測定結果は
図5に示す通りであった(
図5は、左から右に向かって順に、ヒストンのみを含んでいた場合、ヒストン及びAPCを含んでいた場合、ヒストン、APC及びHAPC1573を含んでいた場合、ヒストン、APC及びHAPC14-6を含んでいた場合を示す)。図面から明らかなように、HAPC1573及びHAPC14-6は、aPCによるヒストン分解能力を強化した。このことは、本発明のHAPC14-6モノクローナル抗体が、ヒストンH3及びH4の細胞傷害性に対する細胞保護作用を提供し得ることを示唆している。
【0229】
HAPC1573と同様に、HAPC-14-6は、aPCによるヒストンH3及びH4の分解を阻害することなく、実質的に強化した。ただし、HAPC1573との違いとして、HAPC-14-6はaPCによるヒストンH1の分解を軽微に阻害した。このことは、HAPC-14-6が、ヒストンH3及びH4の細胞傷害性に対する細胞保護作用を提供し得ることを示唆している。
【実施例5】
【0230】
抗aPCモノクローナル抗体HAPC-14-3、HAPC-14-6の体外薬効研究
本実施例では、血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度の影響を測定した。
【0231】
protac誘導によるAPTT試験を用い、複数の血液凝固因子を欠乏したヒト血漿中でモノクローナル抗体がaPCの抗凝固活性を阻害する最小投与量を測定した。その結果、HAPC1573の場合には100μg/ml以上の濃度が必要なのに対し、本実施例では、最大でもわずか1μg/mlの濃度でaPCの抗凝固活性を95%以上阻害可能であった。
【0232】
5.1 実験方法と原理
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の測定原理:37℃条件において、カオリンでXII及びXI因子を活性化するとともに、セファリン(部分トロンボプラスチン)を血小板第3因子の代わりとした。そして、Ca2+を関与させて、血漿の凝固に要する時間(即ち、活性化部分トロンボプラスチン時間)を観察した。これは、内因凝固系における感度が高く、最も一般的に用いられるスクリーニング試験である。
【0233】
新たに開発した抗aPCモノクローナル抗体HAPC-14-6は、複数の血液凝固因子を欠乏したヒト血漿中において、最大でも1μg/mlの濃度でaPCの抗凝固活性を阻害可能であった。なお、複数の血液凝固因子の欠乏には、V血液凝固因子の欠乏、VII血液凝固因子の欠乏、VIII血液凝固因子の欠乏、IX血液凝固因子の欠乏、X血液凝固因子の欠乏、XI血液凝固因子の欠乏、XII血液凝固因子の欠乏、VWFの欠乏等が含まれていた。
【0234】
5.2 血液凝固因子欠乏血漿に対する抗体の影響測定
(1)VIII及びVIX血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度についての実験結果
実験方法:OWREN-KOLLER緩衝液を用い、抗体を対応濃度まで希釈した。
【0235】
FVIII血液凝固因子欠乏血漿+表12の各希釈度の抗体(終濃度)+0.05U/ml
Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:FVIII血液凝固因子欠乏血漿150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
FIX血液凝固因子欠乏血漿+表12の各希釈度の抗体(終濃度)+0.01U/ml Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:FIX血液凝固因子欠乏血漿150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
【0236】
測定結果:表12に示すように、VIII及びVIX血液凝固因子欠乏血漿中で、抗aPCモノクローナル抗体HAPC14-1~HAPC14-10は、いずれも異なる度合でaPCの抗凝固活性を阻害可能であった。且つ、同じ抗体濃度において、抗aPCモノクローナル抗体HAPC14-1~HAPC14-10によるaPCの抗凝固活性阻害効果は、いずれもラット抗体1573、HAPC13及びHAPC14よりも優れていた。
【0237】
【0238】
(2)FVIII血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度についての実験結果
実験方法:OWREN-KOLLER緩衝液を用い、抗体を対応濃度まで希釈した。
【0239】
FVIII血液凝固因子欠乏血漿+
図6Aの各希釈度の抗体(終濃度)+0.05U/ml Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:FVIII血液凝固因子欠乏血漿150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
実験結果:
図6Aに示すように、FVIII血液凝固因子欠乏血漿中で、抗aPCモノクローナル抗体はaPCの抗凝固活性を完全に阻害した。
【0240】
(3)FIX血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度についての実験結果
実験方法:OWREN-KOLLER緩衝液を用い、抗体を対応濃度まで希釈した。
【0241】
FIX血液凝固因子欠乏血漿+
図6Bの各希釈度の抗体(終濃度)+0.01U/ml Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:FIX血液凝固因子欠乏血漿150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
測定結果:
図6Bに示すように、FIX血液凝固因子欠乏血漿中で、抗aPCモノクローナル抗体はaPCの抗凝固活性を完全に阻害した。
【0242】
(4)FXI血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度についての実験結果
実験方法:OWREN-KOLLER緩衝液を用い、抗体を対応濃度まで希釈した。
【0243】
FXI血液凝固因子欠乏血漿+
図6Cの各希釈度の抗体(終濃度)+0.06U/ml Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:FXI血液凝固因子欠乏血漿150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
測定結果:
図6Cに示すように、FXI血液凝固因子欠乏血漿中で、抗aPCモノクローナル抗体はaPCの抗凝固活性を完全に阻害した。
【0244】
(5)FVII血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度についての実験結果
実験方法:OWREN-KOLLER緩衝液を用い、抗体を対応濃度まで希釈した。
【0245】
FVII血液凝固因子欠乏血漿+
図6Dの各希釈度の抗体(終濃度)+0.1U/ml Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:FVII血液凝固因子欠乏血漿150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
測定結果:
図6Dに示すように、FVII血液凝固因子欠乏血漿中で、抗aPCモノクローナル抗体はaPCの抗凝固活性を完全に阻害した。
【0246】
(6)FXII血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度についての実験結果
実験方法:OWREN-KOLLER緩衝液を用い、抗体を対応濃度まで希釈した。
【0247】
FXII血液凝固因子欠乏血漿+
図6Eの各希釈度の抗体(終濃度)+0.025U/ml Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:FXII血液凝固因子欠乏血漿150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
測定結果:
図6Eに示すように、FXII血液凝固因子欠乏血漿中で、抗aPCモノクローナル抗体はaPCの抗凝固活性を完全に阻害した。
【0248】
(7)FV血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度についての実験結果
実験方法:OWREN-KOLLER緩衝液を用い、抗体を対応濃度まで希釈した。
【0249】
FV血液凝固因子欠乏血漿(5%の標準血漿を含む)+
図6Fの各希釈度の抗体(終濃度)+0.05U/ml Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:FV血液凝固因子欠乏血漿(5%の標準血漿を含む)150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
測定結果:
図6Fに示すように、FV血液凝固因子欠乏血漿中で、抗aPCモノクローナル抗体はaPCの抗凝固活性を完全に阻害した。
【0250】
(8)FX血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度についての実験結果
実験方法:OWREN-KOLLER緩衝液を用い、抗体を対応濃度まで希釈した。
【0251】
FX血液凝固因子欠乏血漿(1%の標準血漿を含む)+
図6Gの各希釈度の抗体(終濃度)+0.05U/ml Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:FX血液凝固因子欠乏血漿(1%の標準血漿を含む)150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
測定結果:
図6Gに示すように、FX血液凝固因子欠乏血漿中で、抗aPCモノクローナル抗体はaPCの抗凝固活性を完全に阻害した。
【0252】
(9)VWF血液凝固因子欠乏血漿に対する異なる抗体及び異なる濃度についての実験結果
実験方法:OWREN-KOLLER緩衝液を用い、抗体を対応濃度まで希釈した。
【0253】
VWF血液凝固因子欠乏血漿+
図6Hの各希釈度の抗体(終濃度)+0.01U/ml Protac(終濃度)+OWREN-KOLLER緩衝液、室温15min
150μl 合計150μl
対照:VWF血液凝固因子欠乏血漿150μl+OWREN-KOLLER緩衝液150μl
測定方法:STAGO Compact Max APTT-プログラム
測定結果:
図6Hに示すように、VWF血液凝固因子欠乏血漿中で、抗aPCモノクローナル抗体はaPCの抗凝固活性を完全に阻害した。
【実施例6】
【0254】
体内薬効試験
ヒト化プロテインC血友病マウスモデルにおいて(中国特許出願第201911027061.6号の段落[0230]~[0238]参照)、一定投与量の抗aPCモノクローナル抗体を注射したあと、マウスの断尾後の出血量状況を観察することで、抗aPCモノクローナル抗体がaPCの抗凝固機能を阻害した結果達成される血液凝固効果を検査した。
【0255】
6.1 実験方法
マウスの眼角静脈に注射して投薬した。そして、投薬から1時間後に、ペントバルビタールを腹腔注射してマウスを麻酔した。麻酔後に、マウスの尾の末端から2mmの箇所で断尾し、傷口を15ml、37℃の生理食塩水中に配置してマウスから流れ出す血液を収集した。収集は20分後に停止した。収集した液体は、赤血球を破砕したあと遠心分離にかけて上清を収集した。次に、UV分光光度計を使用し、波長600nmで上清液を測定して、測定したOD値によりマウスの出血量を表した。マウスの出血量は、マウスの血液凝固機能を評価するために用いた。WTは正常マウスであり、untreatedは未投薬のヒト化プロテインC血友病Aマウスか、未投薬のヒト化プロテインC血友病Bマウスである。
【0256】
6.2 実験結果
図7Aに示すように、ヒト化プロテインC血友病Aマウスに対し、1U/匹のFVIII血液凝固因子、20μg/匹のマウス抗体1573、1μg/匹のHAPC-14-6をそれぞれ注射した。新たな抗APCモノクローナル抗体HAPC-14-6を注射したマウスの血液凝固機能は正常マウスのレベルまで回復し、且つ、FVIII血液凝固因子を用いてマウスを治療した際の効果と一致していた。
【0257】
図7Bに示すように、ヒト化プロテインC血友病Aマウスに対し、異なる投与量のHAPC-14-6をそれぞれ注射したところ、最大で1μgのHAPC-14-6だけで欠乏マウスの血液凝固機能を正常レベルまで回復させることができた。
【0258】
図7Cに示すように、ヒト化プロテインC血友病Bマウスに対し、異なる投与量のHAPC-14-6をそれぞれ注射したところ、最大で1μgのHAPC-14-6だけで欠乏マウスの血液凝固機能を正常レベルまで回復させることができた。
【0259】
結果として、本発明では、プロテインCキナーゼ(protac)誘導によるAPTT試験を用い、複数の血液凝固因子を欠乏したヒト血漿中で抗aPCモノクローナル抗体がaPCの抗凝固活性を阻害する最小投与量を測定した。その結果、マウス抗体HAPC1573の場合には100μg/ml以上の濃度が必要なのに対し、本発明では、最大でもわずか1μg/mlの濃度で完全に阻害可能であった。
【0260】
以上の実施例は本発明の技術方案を制限するものではなく、説明するためのものにすぎない。好ましい実施例を参照して本発明につき詳細に説明したが、当業者は以下の点を理解すべきである。即ち、依然として、本発明の具体的実施形態の修正や、一部の技術的特徴についての同等の置換が可能である。また、発明思想の精神及び範囲を逸脱することなく、当業者が想到可能な変形及び利点は、いずれも本発明が保護を請求する技術方案の範囲に含まれる。
【配列表】
【国際調査報告】