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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】テガビビントの凍結乾燥製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20231219BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231219BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61K9/19
A61K47/10
A61K47/26
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531012
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021060530
(87)【国際公開番号】W WO2022115434
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】17/103,468
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519427066
【氏名又は名称】イテリオン・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュクマル,ゴウライ
(72)【発明者】
【氏名】オストビク,ドラゼン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076CC27
4C076DD38
4C076EE23
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA44
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
テガビビントの凍結乾燥製剤、そのような製剤の作製方法、及び製剤を投与することによるがんの治療方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テガビビント又はその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体若しくは幾何異性体の粒子を含む安定な凍結乾燥製剤であって、前記粒子が、レーザー回折を用いて測定した場合、500nm以下の有効D50及び1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有する、安定な凍結乾燥製剤。
【請求項2】
前記製剤が、治療上有用であるために安定である、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項3】
前記製剤が無水である、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項4】
前記製剤が、乾燥雰囲気中に保存される、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項5】
前記製剤が、約-20℃の温度で保存される、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項6】
前記製剤が、約5℃の温度で保存される、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項7】
前記製剤が、約25℃の温度で保存される、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項8】
テガビビントの粒子を含む安定な凍結乾燥製剤であって、前記粒子が、レーザー回折を用いて測定した場合、500nm以下の有効D50及び1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有し、前記製剤が、テガビビント、ポロキサマー、並びに、スクロース、トレハロース及びソルビトールからなる群から選択される1つ以上の安定剤を含む凍結乾燥前製剤の凍結乾燥生成物である、安定な凍結乾燥製剤。
【請求項9】
凍結乾燥前のテガビビント濃度が2%であった、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項10】
凍結乾燥前のテガビビント濃度が5%であった、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項11】
前記ポロキサマーがポロキサマー188である、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項12】
凍結乾燥前の前記ポロキサマー濃度が0.6%であった、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項13】
前記凍結乾燥前のポロキサマー濃度が1.25%であった、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項14】
凍結乾燥前の前記スクロース濃度が10%であった、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項15】
凍結乾燥前の前記トレハロース濃度が10%であった、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項16】
凍結乾燥前の前記ソルビトール濃度が5%であった、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項17】
前記製剤が凍結乾燥前にオートクレーブされる、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項18】
凍結乾燥プロセスが、前記製剤を約-40℃に凍結させることと、-30℃での一次乾燥ステップと、及び約-10℃での二次乾燥ステップとを含む、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項19】
前記凍結乾燥前製剤が、約40℃~約60℃の温度でボールミル粉砕によって調製された、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項20】
前記凍結乾燥前製剤が、約60℃の温度でボールミル粉砕によって調製された、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項21】
前記凍結乾燥前製剤が、約40℃~60℃の温度で高エネルギー粉砕によって調製された、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項22】
前記凍結乾燥前製剤が、約60℃の温度で高エネルギー粉砕によって調製された、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項23】
前記凍結乾燥前製剤中の前記テガビビントが、形態Iの多形である、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項24】
前記凍結乾燥前製剤中の前記テガビビントが、形態IVの多形である、請求項8に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項25】
前記製剤が、5℃~25℃の温度での保存で3ヶ月間安定である、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項26】
前記製剤が、5℃~25℃の温度での保存で6ヶ月間安定である、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項27】
前記製剤が、5℃~25℃の温度での保存で12ヶ月間安定である、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項28】
前記製剤が、5℃~25℃の温度での保存で少なくとも18ヶ月間安定である、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項29】
がん又は腫瘍転移の予防、治療又は改善を必要としている哺乳動物において、がん又は腫瘍転移を予防、治療又は改善するための方法であって、有効量の請求項1に記載の凍結乾燥製剤を前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項30】
前記がんが、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記凍結乾燥製剤が、テガビビントの形態Iの多形からなる、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項32】
再構成された製剤が、テガビビントの形態Iの多形からなる、請求項1に記載の凍結乾燥製剤から調製されるテガビビントの再構成製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、テガビビントの安定な凍結乾燥製剤及びそのような製剤の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは米国で2番目に多い死因である。それは、新しい治療法の開発に複雑な課題を提示する。がんは、腫瘍量の増殖をもたらす一連の遺伝的変化を経た悪性細胞の異常な増殖及び転移特性を特徴とする。
【0003】
ベータカテニン(β-カテニン)は、接着結合(AJ)を構成するタンパク質の複合体の一部である。AJは、細胞成長及び細胞間の接着を調節することにより、上皮細胞層の形成及び維持に必要である。β-カテニンはまた、アクチン細胞骨格を固定し、上皮シートが完成した時点で細胞分裂を停止させる接触阻害シグナルを伝達することに関与し得る。
【0004】
Wnt/β-カテニン経路は、がんにおいて役割を果たすことが示されている。異常なβ-カテニンシグナル伝達は、腫瘍形成において重要な役割を果たす。特に、結腸直腸がんは、β-カテニン経路において80%を超える変異を有し、未制御の発がん性シグナル伝達をもたらすと推定される。異常なβ-カテニンシグナル伝達は、黒色腫、乳がん、肺がん、結腸がん、肝臓がん、胃がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞非ホジキンリンパ腫、結腸直腸及び急性骨髄性白血病(AML)のがんを含むがこれらに限定されない様々ながん種に関与することが示されている。更に、異常なWnt/βカテニンシグナル伝達は、骨粗鬆症、変形性関節症、多発性嚢胞腎疾患、糖尿病、統合失調症、血管疾患、心臓疾患、過剰増殖性疾患、神経変性疾患、並びに特発性肺線維症(IPF)、デュピュイトラン拘縮、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)等を含むがこれらに限定されない線維性疾患を含む多数の他の疾患において見出されている。骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、体の血液細胞を産生する骨髄細胞が異常に発達して機能する、密接に関連した一群の血液悪性腫瘍である。3つの主要な骨髄増殖性腫瘍は、真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)、及び原発性骨髄線維症(PMF)である。JAK2の遺伝子変異は、ほとんどのPV患者、並びにET及びPMF患者の50%に存在する。ベータカテニン経路は、多くの場合MPNで活性化され、これらの細胞の生存に必要とされる。
【0005】
テガビビント及び関連化合物は、例えば、米国特許第8,129,519号に記載されている。テガビビントは、以下の構造式を有する:
【化1】
【0006】
テガビビントの分子式はC2836である。
【0007】
テガビビントの分子量は588.20763amuである。
【0008】
当該技術分野においてテガビビントの安定な凍結乾燥製剤を提供する必要があり、該製剤は、最構成されると、非経口及び吸入を含むがこれらに限定されない異なる投与経路を介した投与を可能にし、テガビビントで治療可能な様々な疾患の臨床試験及び治療に好適であるように安定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8,129,519号明細書
【発明の概要】
【0010】
テガビビントの安定な凍結乾燥製剤を開発することは、非常に課題が多く、困難であった。多数の製剤が開発及び試験されたが、それらは生物学的利用能が低く、かつ/又は保存時に不安定であることが証明され、かつ/又は非常に毒性が高いことが分かった。良好なケーキ完全性を保持し、容易に再懸濁し、経時的に化学的安定性を示す凍結乾燥製剤を得ることは、課題が多く、困難であった。
【0011】
本発明者らは、テガビビントの形態I又は形態IVの多形を出発物質として利用して生成する場合、出発物質が約60℃の高温で高エネルギー粉砕に供されたときに、安定な凍結乾燥製剤が作製され得ることを、予期せずにかつ驚くべきことに発見した。形態I及び形態IVの多形は、米国特許出願第17/037,287号に詳細に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0012】
更に別の実施形態において、本発明は、テガビビントのナノ懸濁液を提供し、該ナノ懸濁液は、形態I又は形態IVのいずれかの出発物質としての使用と、約40℃~約60℃、最も好ましくは約60℃の温度で行われる粉砕とを含むプロセスによって調製された。
【0013】
一実施形態において、粉砕プロセスが約60℃未満の温度で行われる場合、ナノ懸濁液は更に、60℃以上でアニーリングプロセスを受ける。
【0014】
一実施形態において、本発明は、テガビビント又はその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体若しくは幾何異性体の粒子を含む安定な凍結乾燥製剤を提供し、粒子は、レーザー回折を用いて測定した場合、500nm以下の有効D50及び1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有する。
【0015】
一実施形態において、粒子は、レーザー回折を用いて測定した場合、約100nmの有効D90を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、テガビビントの有効平均粒径は、約4900nm、約4800nm、約4700nm、約4600nm、約4500nm、約4400nm、約4300mm、約4200nm、約4100nm、約4ミクロン、約3900nm、約3800nm、約3700nm、約3600nm、約3500nm、約3400mm、約3300nm、約3200nm、約3100nm、約3ミクロン、約2900mm、約2800nm、約2700nm、約2600nm、約2500nm、約2400nm、約2300nm、約2200nm、約2100nm、約2000nm、約1900nm、約1800nm、約1700nm、約1600nm、約1500nm、約1400nm、約1300nm、約1200nm、約1100nm、約1000nm、約900nm、約800nm、約700nm、約600nm、約500nm、約400nm、又は約300nmである。
【0017】
更に、いくつかの実施形態において、化合物の有効平均粒径は、900nm未満、より好ましくは500nm未満、更により好ましくは300nm未満である。
【0018】
提供される凍結乾燥製剤は、治療上有用であるために安定である。
【0019】
一実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は無水である。
【0020】
一実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は、乾燥雰囲気中に保存される。
【0021】
本発明の製剤の保存温度は、約-20℃、約5℃、又は約25℃であり得る。
【0022】
一実施形態において、本発明は、テガビビントの粒子を含む安定な凍結乾燥製剤を提供し、粒子は、レーザー回折を用いて測定した場合、500nm以下の有効D50及び1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有し、製剤は、テガビビント、ポロキサマー、並びにスクロース、トレハロース及びソルビトールからなる群から選択される1つ以上の安定剤を含む凍結乾燥前製剤の凍結乾燥生成物である。
【0023】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のテガビビント濃度は2%である。
【0024】
別の実施形態において、凍結乾燥前製剤中のテガビビント濃度は5%である。
【0025】
一実施形態において、ポロキサマーは、ポロキサマー188である。
【0026】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のポロキサマー濃度は0.6%である。
【0027】
別の実施形態において、凍結乾燥前製剤中のポロキサマー濃度は1.25%である。
【0028】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のスクロース濃度は10%である。
【0029】
別の実施形態において、凍結乾燥前製剤中のトレハロース濃度は10%である。
【0030】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のソルビトール濃度は5%である。
【0031】
一実施形態において、製剤は、凍結乾燥前にオートクレーブされる。
【0032】
一実施形態において、凍結乾燥プロセスは、製剤を約-40℃に凍結させることと、-30℃での一次乾燥ステップと、約-10℃での二次乾燥ステップと、を含む。
【0033】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤は、約60℃の温度でのボールミル粉砕を含むプロセスによって調製される。
【0034】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤は、約60℃の温度での高エネルギー粉砕を含むプロセスによって調製される。
【0035】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のテガビビントは、形態Iの多形である。
【0036】
一実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は、5℃~25℃の温度での保存において3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月又は18ヶ月間安定である。
【0037】
好ましい実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は、長期安定性を示す。
【0038】
一実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は、再構成されると、(a)錠剤及びカプセルからなる群から選択される剤形、(b)制御放出製剤、速溶性製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、脈動放出製剤、及び即時放出と制御放出の混合製剤からなる群から選択される剤形、(c)筋肉内、皮下、静脈内及び皮内注射を含む、吸入又は非経口投与に好適な剤形、(d)(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせに、製剤化され得る。
【0039】
本発明の医薬製剤は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又はそれらの組み合わせを更に含むことができる。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、がん又は腫瘍転移の予防、治療又は改善を必要としている哺乳動物においてそれらを行う方法であって、有効量の本発明の製剤を当該哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0041】
投与方法は、いずれか特定の投与経路に限定されず、静脈内、非経口、経口、吸入(エアロゾル送達を含む)、頬側、鼻腔内、直腸内、病巣内、腹腔内、皮内、経皮、皮下、動脈内、心内、脳室内、頭蓋内、気管内、くも膜下腔内投与、筋肉内注射、硝子体内注射、及び局所適用方法を含むが、これらに限定されない。
【0042】
別の実施形態において、がん又は腫瘍転移の予防、治療又は改善を必要とする哺乳動物においてそれらを行う方法は、追加の抗がん剤及び/又はがん療法(例えば、がんワクチン、抗がん養子細胞療法、及び放射線療法)を投与することを含み得る。
【0043】
一実施形態において、追加の抗がん剤は、抗有糸分裂剤、代謝拮抗剤、HDAC阻害剤、プロテオソーム阻害剤、免疫療法剤、FLT-3 EGFR、MEK、PI3K及び他のプロテインキナーゼ阻害剤、LSD1阻害剤、及びWNT経路阻害剤、アルキル化剤及びDNA修復経路阻害剤、抗ホルモン剤、抗がん抗体、並びに他の細胞毒性化学療法剤からなる群から選択される。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、線維性疾患の治療及び/又は予防を必要としている哺乳動物においてそれらを行う方法であって、有効量の本発明の製剤を当該哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0045】
好ましい実施形態において、線維性疾患は、肺線維症、デュピュイトラン拘縮、強皮症、全身性硬化症、強皮症様障害、皮膚硬化のない強皮症、肝硬変、間質性肺線維症、ケロイド、慢性腎疾患、慢性移植片拒絶、及び他の瘢痕/創傷治癒異常、術後癒着、及び反応性線維症からなる群から選択される。
【0046】
一実施形態において、線維性疾患の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物においてそれらを行う方法は、追加の抗線維化剤の投与を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の製剤のうちの1つの粒径分布(PSD)のオーバーレイである。
図2図1に示される同じ本発明の製剤の光学顕微鏡画像である。
図3】別の本発明の製剤のPSDのオーバーレイである。
図4図3に示される同じ本発明の製剤の光学顕微鏡画像である。
図5】テガビビント熱量測定データのオーバーレイ画像である。
図6】1ヶ月の時点での本発明の製剤のうちの1つのPSDのオーバーレイである。
図7図6に示される同じ本発明の製剤の光学顕微鏡画像である。
図8】3ヶ月の時点での本発明の製剤のうちの1つのPSDのオーバーレイである。
図9図8に示される同じ本発明の製剤の光学顕微鏡画像である。
図10】4日の時点での別の本発明の製剤のPSDのオーバーレイである。
図11図10に示される同じ本発明の製剤の光学顕微鏡画像である。
図12】6週の時点での本発明の製剤のうちの1つのPSDである。
図13図12に示される同じ本発明の製剤の光学顕微鏡画像である。
図14】濾過前後の別の本発明の製剤のPSDのオーバーレイである。
図15図14に示される同じ本発明の製剤の光学顕微鏡画像である。
図16】本発明の製剤を含む凍結乾燥バイアルの写真。
図17】別の本発明の製剤のPSDのオーバーレイである。
図18】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図19】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図20】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図21】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図22】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図23】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図24】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図25】別の本発明の製剤のPSDのオーバーレイである。
図26】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図27】再水和前の本発明の製剤を含む凍結乾燥バイアルの写真である。
図28】再水和後の本発明の製剤を含む凍結乾燥バイアルの写真である。
図29】別の本発明の製剤のPSDのオーバーレイである。
図30】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図31】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図32】別の本発明の製剤のPSDのオーバーレイである。
図33】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図34】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図35】別の本発明の製剤のPSDのオーバーレイである。
図36】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図37】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図38】別の本発明の製剤のPSDのオーバーレイである。
図39】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
図40】本発明の製剤のうちの1つの光学顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
定義
本明細書で使用される用語は、一般に、当該技術分野において、本発明の文脈内で、及び各用語が使用される特定の文脈において、それらの通常の意味を有する。本発明を説明するために使用される特定の用語が、本発明の記載に関して実行者に更なるガイダンスを提供するために、以下に、又は本明細書の他の場所に論じられる。特定の用語の同義語が提供される。1つ以上の同義語の列挙は、他の同義語の使用を排除しない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書の任意の場所での例の使用は、例示的なものにすぎず、本発明又は任意の例示された用語の範囲及び意味を決して限定するものではない。本発明は、本明細書に示される様々な実施形態に限定されない。
【0049】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本文書が優先される。
【0050】
「テガビビント」という用語は、以下の構造を有する化合物を指す:
【化2】
【0051】
「BC2059」という用語は、「テガビビント」と互換的に使用される。
【0052】
「長期保存」又は「長期安定性」という用語は、医薬組成物が3ヶ月以上、6ヶ月以上、12ヶ月以上、及び18ヶ月以上保存され得ることを意味すると理解されたい。長期保存はまた、医薬組成物が2~8℃又は室温15~25℃で、又は2~8℃及び15~25℃の任意の温度で保存されることも意味すると理解されたい。
【0053】
長期保存に関して「安定な」又は「安定化された」という用語は、医薬組成物に含まれる活性成分が、保存開始時の組成物の活性と比較して、その活性の20%超、より好ましくは15%超、更により好ましくは10%超、及び最も好ましくは5%超を失わないことを意味すると理解されたい。更に、本発明の目的のために、凍結乾燥製剤の長期物理的安定性は、良好なケーキ完全性の維持、それぞれの希釈剤を用いた再構成時に容易に再懸濁する能力、及び光学顕微鏡観察によって決定することができる保存時の任意の有意な結晶成長の不在を含む。
【0054】
「哺乳動物」という用語には、ヒトが含まれるが、これに限定されない。
【0055】
「薬学的に許容される担体」という用語は、任意の従来型の非毒性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、又は賦形剤を指す。薬学的に許容される担体は、用いられる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒であり、製剤の他の成分と適合性である。
【0056】
「治療」という用語は、哺乳動物における疾患に対する治療薬の任意の投与又は適用を指し、疾患を抑制すること、その発症を阻止すること、疾患を緩和すること(例えば、退行を引き起こすことによって、又は失われた、欠損している、若しくは欠陥のある機能を回復若しくは修復することによって)、又は非効率的なプロセスを刺激することを含む。この用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを含み、哺乳動物における病態又は障害の任意の治療を網羅する。効果は、障害若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防するという点で予防的であり得、かつ/又は障害及び/若しくは障害に起因する有害作用の部分的若しくは完全な治癒という点で治療的であり得る。それには、(1)障害の素因があり得るがまだ症状がない対象において障害が発生又は再発するのを防止すること、(2)発症を阻止する等、障害を抑制すること、(3)宿主が障害又はその症状に苦しまないように、障害又は少なくともその関連する症状を終わらせる又は停止すること、例えば、失われた、欠損している、若しくは欠陥のある機能を回復若しくは修復することによって、又は非効率的なプロセスを刺激することによって、障害又はその症状の退行を引き起こす等、あるいは(4)障害又はそれに関連する症状を軽減、緩和又は改善することが含まれる(この場合、改善は、炎症、疼痛、及び/又は腫瘍サイズ等のパラメータの大きさの少なくとも減少を指すために広義で使用される)。
【0057】
「治療有効量」という用語は、生体対象に投与されたときに、該生体対象に対する所望の効果を達成する量を指す。例えば、生体対象への投与のための本発明の組成物の有効量は、Wnt/β-カテニン経路を介して媒介される疾患のいずれかを予防及び/又は治療する量である。正確な量は、治療の目的に依存し、既知の技術を用いて当業者によって確認可能であろう。当該技術分野で既知であるように、全身対局所送達、年齢、体重、総体的な健康、性別、食生活、投与期間、薬物相互作用、及び状態の重症度について調整が必要であり得、これは、日常的な実験を用いて当業者によって確認可能であろう。
【0058】
「組成物」又は「製剤」という用語は、当該技術分野において従来的であり、治療、診断、又は予防目的で対象に投与するのに好適な、薬学的に許容される担体又は賦形剤等の担体を通常含有する混合物を指す。例えば、経口投与のための組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤、経口リンス又は散剤を形成することができる。用語「組成物」、「医薬組成物」、及び「製剤」は、互換的に使用される。
【0059】
「ナノ粒子組成物」という用語は、粒子の全て又はほぼ全てが1000nm未満である組成物を指す。
【0060】
「凍結乾燥製剤」という用語は、水溶液の凍結乾燥から得られる製剤を指す。
【0061】
「再構成製剤」という用語は、水(例えば、滅菌水)又は水性溶媒を固体組成物に一定量添加して、組成物を溶解させることによって得られる製剤を指す。一実施形態において、固体組成物は凍結乾燥製剤である。
【0062】
「注射用製剤」という用語は、非経口投与、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、又は腹腔内投与に好適な製剤を指す。
【0063】
「治療上有用であるために安定である」という用語は、少なくとも6ヶ月にわたって、好ましくは少なくとも18ヶ月にわたって、テガビビントで治療可能な状態の治療に依然として好適であるテガビビント製剤を指す。
【0064】
本発明の製剤
本発明者らは、テガビビントの形態I又は形態IVの多形を出発物質として利用して生成する場合、出発物質が少なくとも40℃~60℃、好ましくは約60℃の高温で高エネルギー粉砕に供されたときに、安定な凍結乾燥製剤が作製され得ることを、予期せずにかつ驚くべきことに発見した。形態I及び形態IVの多形は、米国特許出願第17/037,287号に詳細に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0065】
一実施形態において、本発明は、テガビビントのナノ懸濁液を提供し、該ナノ懸濁液は、形態I又は形態IVのいずれかの出発物質としての使用と、約40℃~約60℃、最も好ましくは約60℃の温度で行われる粉砕とを含むプロセスによって調製された。
【0066】
一実施形態において、粉砕プロセスが約60℃未満の温度で行われる場合、ナノ懸濁液は更に、60℃以上でアニーリングプロセスを受ける。
【0067】
形態I及び形態IVの両方の多形形態を、制御された温度の高エネルギー粉砕プロセスのための出発物質として利用した。粉砕には、200mg/mlのテガビビント濃度及び5%ポロキサマー188の安定剤濃度を使用した。顕微鏡イメージング及び粉砕後DSC分析により、形態Iを出発物質として利用するバッチは、粉砕プロセスの最終生成物中に形態Iのみを含有することが見出された。対照的に、形態IVを出発物質として利用したバッチには、形態IVの形態Iへの変換が見られた。60℃以上での形態Iの粉砕は、望ましくない形態IVの結晶種の形成を防止して、アニールされ、高エネルギー粒子を含まず、非晶質材料を含まない高結晶性の粉砕形態Iの材料をもたらすという仮説を立てた。この知見は、本発明によって確認された。
【0068】
120分間にわたる粉砕中に形態IVが形態Iに変換されたため、形態I又は形態IVのいずれかを出発物質として使用した60℃での粉砕から得られた最終生成物は、形態Iのナノ懸濁液であった。
【0069】
したがって、一実施形態において、本発明は、形態I又は形態IVのいずれかを、高温(40~60℃、好ましくは60℃)で粉砕するための出発物質として利用して、最終的な所望の形態(形態I)を得ることを可能にする。しかしながら、形態IVを60℃で粉砕するための出発物質として使用する利点は、系が形態IVから形態Iへの完全な溶媒媒介性の再結晶化を受けることである。形態Iの結晶は、それらが粉砕されるにつれて「ボトムアップ」成長するため、あらゆる未粉砕のより大きな結晶が得られる可能性が著しく減少し、それによって懸濁液の品質が向上する。
【0070】
実際、60℃で形態IVを粉砕することによるナノ懸濁液は、狭い単峰性の粒子径分布を有する、均一で十分に分散した形態Iであることが見出された。5℃及び周囲実験室条件での安定性解析では)、粒径分布に有意な変化は認められなかった。顕微鏡画像により、3ヶ月間の保存の終了時に全ての最終形態I製剤についていずれの結晶成長も見られないことを確認した。
【0071】
一実施形態において、粉砕は、約40℃~約60℃の温度、最も好ましくは約60℃で行われる。好ましくは、粉砕プロセスが約60℃未満の温度で行われる場合、ナノ懸濁液は更に、60℃以上でアニーリングプロセスを受ける。
【0072】
高温(60℃)で粉砕された、分散剤としてのポロキサマー188とともに形態Iを出発物質として利用したバッチからのナノ懸濁液を、次いで製剤の最適化に採用した。加えて、元の試験スケールで調製された4つのバッチを粉砕し、製剤最適化試験に材料を提供するために合成した。
【0073】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤を濾過してあらゆる大きな粒子を除去する。一実施形態において、フィルターは10ミクロンである。
【0074】
一実施形態において、本発明は、テガビビント又はその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体若しくは幾何異性体の粒子を含む安定な凍結乾燥製剤を提供し、粒子は、レーザー回折を用いて測定した場合、500nm以下の有効D50及び1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有する。
【0075】
一実施形態において、粒子は、レーザー回折を用いて測定した場合、約100nmの有効D90を有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、テガビビントの有効平均粒径は、約4900nm、約4800nm、約4700nm、約4600nm、約4500nm、約4400nm、約4300mm、約4200nm、約4100nm、約4ミクロン、約3900nm、約3800nm、約3700nm、約3600nm、約3500nm、約3400mm、約3300nm、約3200nm、約3100nm、約3ミクロン、約2900mm、約2800nm、約2700nm、約2600nm、約2500nm、約2400nm、約2300nm、約2200nm、約2100nm、約2000nm、約1900nm、約1800nm、約1700nm、約1600nm、約1500nm、約1400nm、約1300nm、約1200nm、約1100nm、約1000nm、約900nm、約800nm、約700nm、約600nm、約500nm、約400nm、又は約300nmである。
【0077】
更に、いくつかの実施形態において、化合物の有効平均粒径は、900nm未満、より好ましくは500nm未満、更により好ましくは300nm未満である。
【0078】
提供される凍結乾燥製剤は、治療上有用であるために安定である。
【0079】
一実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は無水である。
【0080】
一実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は、乾燥雰囲気中に保存される。
【0081】
本発明の製剤の保存温度は、約-20℃、約5℃、又は約25℃であり得る。
【0082】
一実施形態において、本発明は、テガビビントの粒子を含む安定な凍結乾燥製剤を提供し、粒子は、レーザー回折を用いて測定した場合、500nm以下の有効D50及び1.0マイクロメートル(μm)以下のD90を有し、製剤は、テガビビント、ポロキサマー、並びにスクロース、トレハロース及びソルビトールからなる群から選択される1つ以上の安定剤を含む凍結乾燥前製剤の凍結乾燥生成物である。
【0083】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のテガビビント濃度は2%である。
【0084】
別の実施形態において、凍結乾燥前製剤中のテガビビント濃度は5%である。
【0085】
一実施形態において、ポロキサマーは、ポロキサマー188である。
【0086】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のポロキサマー濃度は0.6%である。
【0087】
別の実施形態において、凍結乾燥前製剤中のポロキサマー濃度は1.25%である。
【0088】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のスクロース濃度は10%である。
【0089】
別の実施形態において、凍結乾燥前製剤中のトレハロース濃度は10%である。
【0090】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のソルビトール濃度は5%である。
【0091】
一実施形態において、製剤は、凍結乾燥前にオートクレーブされる。
【0092】
一実施形態において、凍結乾燥プロセスは、製剤を約-40℃に凍結させることと、-30℃での一次乾燥ステップと、約-10℃での二次乾燥ステップと、を含む。
【0093】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤は、約60℃の温度でのボールミル粉砕を含むプロセスによって調製される。
【0094】
一実施形態において、凍結乾燥前製剤中のテガビビントは、形態Iの多形である。
【0095】
一実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は、5℃~25℃の温度での保存において3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月又は18ヶ月間安定である。
【0096】
好ましい実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は、長期安定性を示す。
【0097】
一実施形態において、本発明の凍結乾燥製剤は、再構成されると、(a)錠剤及びカプセルからなる群から選択される剤形、(b)制御放出製剤、速溶性製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、脈動放出製剤、及び即時放出と制御放出の混合製剤からなる群から選択される剤形、(c)筋肉内、皮下、静脈内及び皮内注射を含む、吸入又は非経口投与に好適な剤形、(d)(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせに、製剤化され得る。
【0098】
本発明の医薬製剤は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又はそれらの組み合わせを更に含むことができる。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、がん又は腫瘍転移の予防、治療又は改善を必要としている哺乳動物においてそれらを行う方法であって、有効量の本発明の製剤を当該哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0100】
投与方法は、いずれか特定の投与経路に限定されず、静脈内、非経口、経口、吸入(エアロゾル送達を含む)、頬側、鼻腔内、直腸内、病巣内、腹腔内、皮内、経皮、皮下、動脈内、心内、脳室内、頭蓋内、気管内、くも膜下腔内投与、筋肉内注射、硝子体内注射、及び局所適用方法を含むが、これらに限定されない。
【0101】
別の実施形態において、がん又は腫瘍転移の予防、治療又は改善を必要とする哺乳動物においてそれらを行う方法は、追加の抗がん剤及び/又はがん療法(例えば、がんワクチン、抗がん養子細胞療法、及び放射線療法)を投与することを含み得る。
【0102】
一実施形態において、追加の抗がん剤は、抗有糸分裂剤、代謝拮抗剤、HDAC阻害剤、プロテオソーム阻害剤、免疫療法剤、FLT-3 EGFR、MEK、PI3K及び他のプロテインキナーゼ阻害剤、LSD1阻害剤、及びWNT経路阻害剤、アルキル化剤及びDNA修復経路阻害剤、抗ホルモン剤、抗がん抗体、並びに他の細胞毒性化学療法剤からなる群から選択される。
【0103】
別の実施形態において、本発明は、線維性疾患の治療及び/又は予防を必要としている哺乳動物においてそれらを行う方法であって、有効量の本発明の製剤を当該哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0104】
好ましい実施形態において、線維性疾患は、肺線維症、デュピュイトラン拘縮、強皮症、全身性硬化症、強皮症様障害、皮膚硬化のない強皮症、肝硬変、間質性肺線維症、ケロイド、慢性腎疾患、慢性移植片拒絶、及び他の瘢痕/創傷治癒異常、術後癒着、及び反応性線維症からなる群から選択される。
【0105】
一実施形態において、線維性疾患の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物においてそれらを行う方法は、追加の抗線維化剤の投与を含むことができる。
【0106】
本発明は、テガビビント及びその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、又は幾何異性体を含む製剤を包含する。
【0107】
一実施形態において、本発明の組成物は、再構成されると、(a)錠剤及びカプセルからなる群から選択される剤形、(b)制御放出製剤、速溶性製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、脈動放出製剤、及び即時放出と制御放出の混合製剤からなる群から選択される剤形、(c)筋肉内、皮下、静脈内及び皮内注射を含む、吸入又は非経口投与に好適な剤形、(d)(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせに、製剤化され得る。
【0108】
本発明の組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又はそれらの組み合わせを更に含むことができる。
【0109】
本発明の製剤に使用される薬学的に許容される賦形剤は、複数の様式で作用することができる。
【0110】
薬学的に許容される賦形剤は、例えば、分散媒、分散乳化剤、分散促進剤、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0111】
推進剤の例としては、HFA-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、HFA-227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)、それらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
分散媒は、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセリン、それらの組み合わせ等であり得る。
【0113】
分散乳化剤(促進剤)は、例えば、HO、オレイン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール1000、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、モノオレイン酸グリセリル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、乳化ワックス、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ポロキサマー、それらの組み合わせ等であり得る。
【0114】
分散促進剤の例としては、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒプロメロース、エチレングリコールステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、メグルミン、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシル35ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシグリセリド、ピロリドン、ソルビタンエステル、ステアリン酸、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート、ポリエチレングリコール1000、ポビドン、それらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
本発明の組成物は、静脈内、非経口、経口、吸入(エアロゾル送達を含む)、頬側、鼻腔内、直腸内、病巣内、腹腔内、皮内、経皮、皮下、動脈内、心内、脳室内、頭蓋内、気管内、くも膜下腔内投与、筋肉内注射、硝子体内注射、及び局所適用方法を含むがこれらに限定されない、全ての投与経路に好適であり得る。
【0116】
本発明による医薬組成物はまた、1つ以上の結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味料、香味剤、防腐剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、及び他の賦形剤を含み得る。そのような賦形剤は、当該技術分野において既知である。
【0117】
充填剤の例は、ラクトース一水和物、無水ラクトース、及び様々なデンプンであり、結合剤の例は、様々なセルロース及び架橋ポリビニルピロリドン、Avicel(登録商標)PH101及びAvicel(登録商標)PH102等の微結晶性セルロース、微結晶性セルロース、及びケイ化微結晶性セルロース(ProSolv SMCC(商標))である。
【0118】
圧縮される粉末の流動性に作用する薬剤を含む好適な潤滑剤は、Aerosil(登録商標)200、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及びシリカゲル等のコロイド状二酸化ケイ素である。
【0119】
甘味料の例は、スクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテーム、及びアセスルファム等の任意の天然又は人工甘味料である。香味剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、バブルガムフレーバー、及びフルーツフレーバー等である。
【0120】
防腐剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸及びその塩、ブチルパラベン等のパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチル又はベンジルアルコール等のアルコール、フェノール等のフェノール化合物、又は塩化ベンザルコニウム等の四級化合物が挙げられる。
【0121】
好適な希釈剤としては、薬学的に許容される不活性充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウム、糖類、及び/又は上記のいずれかの混合物が挙げられる。希釈剤の例としては、Avicel(登録商標)PH101及びAvicel(登録商標)PH102等の微結晶性セルロース;ラクトース一水和物、無水ラクトース、及びPharmatose(登録商標)DCL21等のラクトース;Emcompres(登録商標)等の第二リン酸カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;並びにグルコースが挙げられる。
【0122】
好適な崩壊剤としては、軽度に架橋したポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、及び加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0123】
発泡剤の例は、有機酸と炭酸塩又は重炭酸塩等との発泡性カップルである。好適な有機酸としてが、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、及びアルギン酸、並びに無水物及び酸性塩が挙げられる。好適な炭酸塩及び重炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、L-リジン炭酸塩、及びアルギニン炭酸塩が挙げられる。代替として、発泡性カップルの重炭酸ナトリウム成分のみが存在し得る。
【0124】
テガビビントは、以下の構造:
【化3】
又はその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体若しくは幾何異性体を有する。
【0125】
別の実施形態において、本発明は、がん又は腫瘍転移の予防、治療又は改善を必要としている哺乳動物においてそれらを行う方法であって、有効量の本発明の組成物を当該哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0126】
別の実施形態において、がん又は腫瘍転移の予防、治療又は改善を必要とする哺乳動物においてそれらを行う方法は、追加の抗がん剤及び/又はがん療法(例えば、がんワクチン、抗がん養子細胞療法、及び放射線療法)を投与することを含み得る。
【0127】
一実施形態において、追加の抗がん剤は、抗有糸分裂剤、代謝拮抗剤、HDAC阻害剤、プロテオソーム阻害剤、免疫療法剤、FLT-3 EGFR、MEK、PI3K及び他のプロテインキナーゼ阻害剤、LSD1阻害剤、及びWNT経路阻害剤、アルキル化剤及びDNA修復経路阻害剤、抗ホルモン剤、抗がん抗体、並びに他の細胞毒性化学療法剤からなる群から選択される。
【0128】
別の実施形態において、本発明は、線維性疾患の治療及び/又は予防を必要としている哺乳動物においてそれらを行う方法であって、有効量の本発明のナノ粒子組成物を当該哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0129】
好ましい実施形態において、線維性疾患は、肺線維症、デュピュイトラン拘縮、強皮症、全身性硬化症、強皮症様障害、皮膚硬化のない強皮症、肝硬変、間質性肺線維症、ケロイド、慢性腎疾患、慢性移植片拒絶、及び他の瘢痕/創傷治癒異常、術後癒着、及び反応性線維症からなる群から選択される。
【0130】
本発明は、その多くの修正例及び変形例が当業者に明らかであるため、例示のみを意図する以下の実施例においてより具体的に説明される。以下の実施例では、様々な成分の重量パーセントがw/vパーセントとして表されることを理解されたい。
【実施例
【0131】
テガビビントの安定な凍結乾燥製剤に到達することは、非常に課題が多く、困難であった。
【0132】
実施例1
温度制御された高エネルギー粉砕
この実験の目的は、選択された形態の熱及び結晶学的分析からの知見を理解して、温度制御された粉砕を行い、その後、凍結乾燥を含む製剤の最適化を行うことであった。更なる目的は、18ヶ月の保存期間中の潜在的な結晶成長又は非晶質材料の形成を評価することによって、ナノ懸濁液の短期安定性を確認することであった。高エネルギー粉砕を用いて、5mLスケールで温度制御された粉砕を行った。
【0133】
形態I及び形態IVの両方の多形形態を、制御された温度の高エネルギー粉砕プロセスのための出発物質として利用した。
【0134】
粉砕した4つの試験懸濁液のうち、2つの試験懸濁液が関心のあるものであったため採用した。表1に概説する200mg/mL APIの2つの主要な試験懸濁液を、表2に概説する粉砕パラメータを使用して処理した。各調製物について、API及び分散剤溶液をミルチャンバーに加え、混合して分散させた。懸濁液に粉砕媒体(0.5mmポリマー球)を加え、チャンバーをミルに取り付け、材料を処理する前に沈降させた。
【表1】
【表2】
【0135】
攪拌の前に、チャンバーを指定された温度に平衡化させた。粉砕時間が達成されたら、高温で粉砕したバッチを積極的に25℃に冷却してからサンプリングした。遠心抽出を使用して、粉砕媒体から完成した懸濁液を分離した。安定性決定のために、懸濁液の0.5mLアリコートを2mLのガラス血清バイアルに容積測定的に加え、ブチルストッパー/アルミニウム圧着シールで密封した。
【0136】
粒径分布(PSD)測定及び光学顕微鏡観察を試験懸濁液に対して行った。PSD測定は、表3に列挙するパラメータを使用して行った。典型的には、明視野照明を用いて400倍の倍率で顕微鏡的評価が行われたが、懸濁液の特定の特徴を強調するために他の可視化が時折用いられた。未粉砕のAPIも同様に分析して、比較のベースラインを提供した。
【表3】
【0137】
調製物1(PSIバッチ191122_For_021)を2時間粉砕し、0.11μmのメジアン径及び0.15μmのD90を有する狭い単峰性のPSDを得た。図1のPSDのオーバーレイに示すように、更に1時間粉砕しても識別可能なサイズ変化はもたらされなかった。図2の光学顕微鏡観察は、均一な、十分に分散されたナノ懸濁液を示す。
【0138】
粉砕された材料の明視野及び位相コントラストからの顕微鏡画像(400X)でも、高温での高エネルギー粉砕プロセス後に均一なサイズ及び十分に分散されたナノ懸濁液分布が確認された。顕微鏡画像では、いずれの未粉砕の材料も存在しないことが確認された。
【0139】
調製物4(PSIバッチ200106_For_012)を2時間粉砕し、図3に示される0.11μmのメジアン径及び0.15μmのD90を有する狭い単峰性のPSDを得た。図4の光学顕微鏡観察は、均一な、十分に分散されたナノ懸濁液を示す。
【0140】
同様に、粉砕された材料の明視野及び位相コントラストからの顕微鏡画像(400X)でも、高温での高エネルギー粉砕プロセス後に均一なサイズ及び十分に分散されたナノ懸濁液分布が確認された。顕微鏡画像では、いずれの未粉砕の材料も存在しないことが確認された。
【0141】
実施例2
テガビビントナノ粒子の熱分析
顕微鏡イメージング及び粉砕後DSCにより、形態Iを出発物質として利用するバッチは、粉砕プロセスの最終生成物中に形態Iのみを含有することが見出された。
【0142】
結晶形態が高温粉砕によって影響を受けたかどうかを判定するために、両方の結晶形態に由来するテガビビントナノ粒子を、遠心分離、デカンティング、及び脱イオン水による再懸濁の連続反復によって、調製物1及び4(実施例1を参照)から単離した。単離された固体を、シリカ乾燥剤上で、周囲条件で乾燥させた。乾燥したナノ粒子に対してDSCを実施し、25℃から300℃まで毎分10度で加熱した。未粉砕のAPIも同様に比較のために分析した。データは図5にオーバーレイされている。
【0143】
未粉砕のAPI形態I及びIV(それぞれ図5の緑色及び赤色の曲線)は、以前の熱データと十分に相関していた。粉砕された形態I(青色の曲線)のデータは、未粉砕の形態Iのデータと相関していた。粉砕された形態IV(黒色の曲線)から収集されたナノ粒子は、167℃で予想される熱事象を示さず、高温粉砕中に形態Iに変換したことが示唆された。単離された粒子はまた、ポロキサマー188の融点(紫色の曲線)と相関する52℃で追加の吸熱を示し、残留賦形剤が単離された粒子と関連していることが示唆された。
【0144】
実施例3
懸濁液調製物1及び4の3ヶ月間までの安定性
手順:
高温での調製物1及び4の高エネルギー粉砕から得られたナノ懸濁液(形態I)のいくつかのアリコートを、5℃及び周囲温度の実験室条件下(約25℃)に置き、3ヶ月間までの安定性を評価した。粒径分布及び顕微鏡観察の評価のために、特定の時点で試料を取り出し、粒径分布に有意な変化がないかどうかを判定し、保存中の顕微鏡観察からいずれの結晶成長も見られないことを確認した。この評価に用いた機器は以下の通りである。
【0145】
PSD及び顕微鏡観察による評価に用いた機器:
粒径アナライザー:Horiba LA-960
顕微鏡:Leica DMRB及びOlympus BX51
【0146】
図6は、1ヶ月の時点での調製物1の粒径分布を示す。図7は、1ヶ月の時点での調製物1の顕微鏡画像を示す。
【0147】
T=0(図1からの粒径分布)では、D10、メジアン、及びD90の結果は、それぞれ0.07663μm、0.11239μm、及び0.16239μmであった。5℃及び25℃で個別に安定させたナノ懸濁液調製物1の20日間の安定性試験の後、以下の結果によって示されるように、粒径分布に有意な変化は見られなかった。5℃条件からのD10、メジアン、及びD90の結果は、0.07063μm、0.10020μm、及び0.14353μmであった。25℃条件からのD10、メジアン、及びD90の結果は、0.06945μm、0.09773μm、及び0.14058μmであった。5℃及び25℃の分布は、25℃に対して5℃で保存した場合に有意な変化がないことを示す重複を示している。
【0148】
T=0(図2)及び20日間の終了時(図7)における顕微鏡観察(明視野及び位相コントラスト(400X))からの画像の比較では、分布に有意な変化は見られなかった。懸濁液は、均一なサイズを示し続け、十分に分散している。顕微鏡画像により、保存中にいずれの結晶成長も見られないことを確認した。
【0149】
T=0(図1からの粒径分布)では、D10、メジアン、及びD90の結果は、それぞれ0.07663μm、0.11239μm、及び0.16239μmであった。5℃及び25℃で個別に安定させた調製物1からのナノ懸濁液の3ヶ月間の安定性試験の後、以下の結果によって示されるように、粒径分布に有意な変化は見られなかった。5℃条件からのD10、メジアン、及びD90の結果は、0.07351μm、0.10600μm、及び0.15095μmであった。25℃条件からのD10、メジアン、及びD90の結果は、0.07251μm、0.10443μm、及び0.14918μmであった。5℃及び25℃の分布は、25℃に対して5℃で保存した場合に有意な変化がないことを示す重複を示している。図8を参照されたい。
【0150】
図9は、調製物1の3ヶ月間の顕微鏡観察(1000X、5℃及び25℃)を示す。
【0151】
T=0(図2)及び3ヶ月間の終了時における顕微鏡観察(明視野及び位相コントラスト(400X))からの画像の比較では、分布に有意な変化は見られなかった。懸濁液は、均一なサイズを示し続け、十分に分散している。顕微鏡画像により、保存中にいずれの結晶成長も見られないことを確認した。
【0152】
T=0(図3からの粒径分布)では、D10、メジアン、及びD90の結果は、それぞれ0.07298μm、0.10578μm、及び0.15163μmであった。5℃及び25℃で個別に安定させた調製物4からのナノ懸濁液の4日間の安定性試験の後、以下の結果によって示されるように、粒径分布に有意な変化は見られなかった。5℃条件からのD10、メジアン、及びD90の結果は、0.07193μm、0.10321μm、及び0.14729μmであった。25℃条件からのD10、メジアン、及びD90の結果は、0.07288μm、0.10516μm、及び0.14967μmであった。5℃及び25℃の分布は、25℃に対して5℃で保存した場合に有意な変化がないことを示す重複を示している。図10を参照されたい。
【0153】
T=0(図4)及び4日間の終了時における顕微鏡観察(明視野及び位相コントラスト(400X))からの画像の比較では、分布に有意な変化は見られなかった。懸濁液は、均一なサイズを示し続け、十分に分散している。顕微鏡画像により、保存中にいずれの結晶成長も見られないことを確認した。図11を参照されたい。
【0154】
図12は、T=0(図3からの粒径分布)において、D10、メジアン、及びD90の結果が、それぞれ0.07298μm、0.10578μm、及び0.15163μmであったことを示す。5℃及び25℃で個別に安定させた調製物4からのナノ懸濁液の6週間の安定性試験の後、以下の結果によって示されるように、粒径分布に有意な変化は見られなかった。5℃条件からのD10、メジアン、及びD90の結果は、0.07521μm、0.10974μm、及び0.15883μmであった。25℃条件からのD10、メジアン、及びD90の結果は、0.07595μm、0.11113μm、及び0.16140μmであった。5℃及び25℃の分布は、25℃に対して5℃で保存した場合に有意な変化がないことを示す重複を示している。
【0155】
T=0(図4)及び6週間の終了時(図13)における顕微鏡観察(明視野及び位相コントラスト(400X))からの画像の比較では、分布に有意な変化は見られなかった。懸濁液は、均一なサイズを示し続け、十分に分散している。顕微鏡画像により、いずれの結晶成長も見られないことを確認した。
【0156】
図14は、10ミクロンのポリプロピレン製研磨フィルターを通した濾過の前後の両方の複合材料のPSD及び顕微鏡観察を示す。フィルターは、あらゆるより大きな粒子を除去するために用いられた。濾過は、図15に見られるように、微粒子径分布に影響を及ぼさなかった。
【0157】
粉砕後に存在する場合、粒子状物質-あらゆる大きな粒子を軽減するために、より大きな粒子を保持するのに十分低い多孔度を有するが、テガビビントアッセイに影響を与えるほど小さくはない「研磨」フィルターが用いられる。元の試験スケールで調製した4つのバッチを粉砕し、合成した。ナノ懸濁液複合体を10ミクロンのポリプロピレン(Pall HDCII)、10ミクロンを通して濾過した。最初に5ミクロンのPall Suporを使用したが、フィルターの目詰まりが観察された。次いで、Pall HDCIIを使用したところ、ナノ懸濁液の粒径分布に識別可能な影響を示さなかった(図14及び図15に示される)。
【0158】
実施例4
凍結乾燥製剤の製造
製造プロセスの主な焦点は、良好なケーキ完全性を保持し、容易に再懸濁し、経時的に化学的安定性を示す凍結乾燥製剤を得ることであった。それにもかかわらず、最適化された粉砕プロセスからのこの粉砕された材料の凍結融解及び懸濁液製剤も、代替オプションとして探索された。加えて、いくつかの製剤を、凍結乾燥、凍結融解、又は更にはナノ粒子懸濁液の製剤化の前に(安定させる前に)オートクレーブに供し、製剤に対する滅菌ステップの影響を決定した。オートクレーブした調製物を、圧着密封された血清ボトルを使用してバルクで処理し、遅放性液体サイクルを使用して121℃まで20分間加熱し、充填前に周囲温度に平衡化させた。試験のために、試料を0.5mLで2mLの血清ボトルに充填した。
【0159】
出発結晶形態にかかわらず、得られた形態Iのナノ懸濁液のオートクレーブは、懸濁粒子のいくらか追加のアニーリング及び品質の改善をもたらすと考えられた。本発明者らは、オートクレーブが、依然としてIV投与の許容範囲内である全体的な粒径のわずかな増加をもたらす可能性があると考えた。表4は、オートクレーブ処理を用いた及び用いない、異なる製剤調製物の概要を提供する。製剤作業には、形態I(高温で粉砕するための出発物質として形態Iから得られた)を用いた。
【表4】
【0160】
ソルビトールを含有する全ての製剤は、最終濃度に2倍のAPI濃度を有していたPSI ID:200529_For_006-Cを除いて、同じ製剤組成を有していた。最終API濃度が25mg/mLのソルビトール製剤を、凍結乾燥(オートクレーブを用いて又は用いずに)及び凍結融解(オートクレーブを用いて又は用いずに)に供した。したがって、3つの異なる賦形剤を評価した全ての製剤が凍結乾燥に供された。
【0161】
PSI ID:200529_For_006-C製剤をオートクレーブ処理に供し、5℃及び25℃で安定させ、高温での最適化された粉砕プロセスを考慮して、懸濁液の安定性をそのまま評価した。
【0162】
製剤の調製:
20%(200mg/mL)のテガビビントポロキサマー水性懸濁液を、様々な潜在的な凍結保護剤含有希釈剤で希釈して、最終濃度が2%(20mg/mL)のテガビビント、0.6%のポロキサマー、及び以下となるようにした。
・スクロース(10%)
・トレハロース(10%)
・ソルビトール(5%)
【0163】
製剤200529_For_006-C
20%(200mg/mL)のテガビビントポロキサマー水性懸濁液を、潜在的な凍結保護剤含有希釈剤(ソルビトール)で希釈して、最終濃度が5%(50mg/mL)のテガビビント、1.25%のポロキサマー、及び以下となるようにした。
・ソルビトール(5%)
【0164】
実施例で使用される材料及び機器に関する追加情報:
賦形剤
ポロキサマー188:スペクトル及びBASF
スクロース:スペクトル
トレハロース:EMD Millipore
ソルビトール:VWR
【0165】
供給品
粉砕媒体:SSDPポリスチレン粉砕媒体、0.4~0.6mm
【0166】
機器
垂直ミル:カスタムデザインバッチミル
粒径アナライザー:Horiba LA-960
顕微鏡:Leica DMRB及びOlympus BX51
示差走査熱量計:Mettler-Toledo DSC-1
【0167】
凍結乾燥パラメータ:
凍結乾燥調製物を、以下に概説するレシピに従って乾燥させた。
凍結乾燥の概要:変更されたサイクル:
・-40℃に凍結させる(最終的に120分間保持する);
・アニーリングなし;
・-30℃/100mTorrで一次乾燥(1440分);
・-10℃/200mTorrで二次乾燥(720分);
・25℃/200mTorrで保存するように昇温する。
【表5】
【0168】
凍結乾燥、凍結融解、及び懸濁を受けた全ての製剤(オートクレーブ処理後のままの粉砕調製物)を初期試験(T0)に供した。
【0169】
予備観察(T0試験から)によって、
凍結乾燥バイアル(その例を図16に示す)が、無視できる程わずかな収縮を伴う、均一で十分に発達したケーキ構造を示したことが示唆された。
【0170】
図16は、以下のような凍結乾燥バイアルを示す。
F4は、200529_For_006-Aに相当する。
F5は、200529_For_006-Bに相当する。
F7(オートクレーブしていない)は、200529_For_006-Eに相当する。
F7(オートクレーブしてある)は、200529_For_006-Gに相当する。
【0171】
脱イオン水を、凍結乾燥製剤の再構成のための希釈剤として使用した。
【0172】
図15図24に示す再構成に関する全ての初期PSDデータ及び顕微鏡観察には、処理前データからの明らかな変化は見られない。
【0173】
全ての凍結乾燥製剤は容易に再懸濁し、PSD及びOM基準を満たした。アッセイ/類縁物質試験では、凍結乾燥後の化学的安定性に対する影響は見られなかった。
【表6】
【0174】
結果はn=3の平均である
【0175】
オートクレーブしていないバイアルの凍結融解サイクルでは、1サイクル(-20℃で凍結し、1~2日後に室温で融解)後に顕微鏡下で塊は見られなかった。
【0176】
図25は、2日間の凍結/融解試料のPSDデータのオーバーレイである。
【0177】
図26は、オートクレーブしていない200529_For_006-Dの凍結/融解顕微鏡観察(400X、明視野及び偏光)である。
【0178】
凍結乾燥製剤を2つの異なる条件(5℃及び25℃)下で安定させ、安定性分析を3M、6M、12M(任意選択)及び18M(任意選択)で実施した。凍結融解試験では、試料を-20℃で6ヶ月間凍結した状態で維持した後、融解及び分析を行う。懸濁液製剤については、安定性分析がT6M、T12M及びT18ヶ月(任意選択)で実施されている。
【0179】
凍結乾燥製剤のT3M試験の最近の分析からの観察は以下の通りである:
T3Mの終了時に、4つの凍結乾燥製剤(5℃及び25℃の両方)全てが良好なケーキ完全性を示した。以下の図は、再水和前後のT3Mの凍結乾燥バイアルを示す。
【0180】
図27は、再水和前の凍結乾燥バイアルを示す。
【0181】
図28は、再水和後の凍結乾燥バイアルを示す。
【0182】
【数1】
全ての凍結乾燥製剤は容易に再構成し、
【数2】
製剤の各々について、5℃と25℃の間の粒径分布プロファイルは重複している(恐らくはオートクレーブの結果としてPSDがわずかな変化を示したF7オートクレーブを除く)。凍結乾燥製剤の各々について再構成試料のPSD及び光学顕微鏡画像を図29に提示する。
【0183】
図30は、10%スクロースバッチの顕微鏡画像(5℃でT3M、400X)を示す。左側のパネルは明視野である。右側のパネルは偏光されている。
【0184】
図31は、10%スクロースバッチの顕微鏡画像(25℃でT3M、400X)を示す。左側のパネルは明視野である。右側のパネルは偏光されている。
【0185】
図32は、10%トレハロースバッチ(5℃及び25℃でT3M)のPSDデータのオーバーレイを示す。
【0186】
図33は、10%トレハロースバッチの顕微鏡画像(5℃でT3M、400X)を示す。左側のパネルは明視野である。右側のパネルは偏光されている。
【0187】
図34は、10%トレハロースバッチの顕微鏡画像(25℃でT3M、400X)を示す。左側のパネルは明視野である。右側のパネルは偏光されている。
【0188】
図35は、5%ソルビトールバッチ(5℃及び25℃でT3M)のPSDデータのオーバーレイを示す。
【0189】
図36は、5%ソルビトールバッチの顕微鏡画像(5℃でT3M、400X)を示す。左側のパネルは明視野である。右側のパネルは偏光されている。
【0190】
図37は、5%ソルビトールバッチの顕微鏡画像(25℃でT3M、400X)を示す。左側のパネルは明視野である。右側のパネルは偏光されている。
【0191】
図38は、5%ソルビトールのオートクレーブバッチ(5℃及び25℃でT3M)のPSDデータのオーバーレイを示す。
【0192】
図39は、5%ソルビトールのオートクレーブバッチの顕微鏡画像(5℃でT3M、400X)を示す。左側のパネルは明視野である。右側のパネルは偏光されている。
【0193】
図40は、5%ソルビトールのオートクレーブバッチの顕微鏡画像(25℃でT3M、400X)を示す。左側のパネルは明視野である。右側のパネルは偏光されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
【国際調査報告】