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特表2023-553818PSCAを標的とするキメラ抗原受容体改変細胞の組成物および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】PSCAを標的とするキメラ抗原受容体改変細胞の組成物および使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20231219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20231219BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20231219BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20231219BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20231219BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20231219BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20231219BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231219BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20231219BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/24
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/869 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0789
C12N5/0786
C12N5/09
C07K19/00
C07K16/30
C07K14/725
A61K35/17
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531014
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 US2021060500
(87)【国際公開番号】W WO2022115421
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/117,904
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/172,489
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598004424
【氏名又は名称】シティ・オブ・ホープ
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ユー, ジャンフア
(72)【発明者】
【氏名】カリジューリ, マイケル エー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZC61
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
IL-15ドメイン、および前立腺幹細胞抗原を発現する細胞を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸分子、ならびにそれによりコードされるポリペプチドが提供される。核酸分子を含有するベクターおよび宿主細胞、例えば免疫細胞、ならびにそれらの使用方法も開示される。キメラ抗原受容体(CAR)またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、キメラ抗原受容体またはポリペプチドが、PSCAを標的とするscFvと、スペーサーと、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインと、IL-15ドメインを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む核酸分子が、本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1のヌクレオチド分子、および
(ii)IL-15ドメインをコードする第2のヌクレオチド分子
を含む核酸分子であって、
前記CARが、前立腺幹細胞抗原(PSCA)を標的とする一本鎖可変断片(scFv)、スペーサー、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、核酸分子。
【請求項2】
前記scFvが、DYYIを含む重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1(CDRH1)(配列番号33のaa 31~aa 34)、WIDPENGDTEFVPKFQGを含むHC CDR 2(CDRH2)(配列番号33のaa 50~aa 66)、およびGGFを含むHC CDR 3(CDRH3)(配列番号33のaa 99~aa 101)を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記scFvが、SASSSVRFIHを含む軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)1(CDRL1)(配列番号32のaa 24~aa 33)、DTSKLASを含むLC CDR 2(CDRL2)(配列番号32のaa 49~aa 55)、およびQQWGSSPFTを含むLC CDR 3(CDRL3)(配列番号32のaa 88~aa 96)を含む、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記scFvが、DYYIを含むCDRH1(配列番号33のaa 31~aa 34)、WIDPENGDTEFVPKFQGを含むCDRH2(配列番号33のaa 50~aa 66)、GGFを含むCDRH3(配列番号33のaa 99~aa 101)、SASSSVRFIHを含むCDRL1(配列番号32のaa 24~aa 33)、DTSKLASを含むCDRL2(配列番号32のaa 49~aa 55)、およびQQWGSSPFTを含むCDRL3(配列番号32のaa 88~aa 96)を含む、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記scFvが、配列番号32またはその等価物の軽鎖可変領域、および配列番号33またはその等価物の重鎖可変領域を含む、請求項1または3に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記scFvが、配列番号32および33、またはその各々の等価物のアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記scFvが、SYSMSを含むCDRH1(配列番号35のaa 31~aa 35)、YINDSGGSTFYPDTVKGを含むCDRH2(配列番号35のaa 50~aa 66)、およびRMYYGNSHWHFDVを含むCDRH3(配列番号35のaa 99~aa 111)を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記scFvが、GTSQDINNYLNを含むCDRL1(配列番号34のaa 24~aa 34)、YTSRLHSを含むCDRL2(配列番号34のaa 50~aa 56)、およびQQSKTLPWTを含むCDRL3(配列番号34のaa 89~aa 97)を含む、請求項1または7に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記scFvが、SYSMSを含むCDRH1(配列番号35のaa 31~aa 35)、YINDSGGSTFYPDTVKGを含むCDRH2(配列番号35のaa 50~aa 66)、RMYYGNSHWHFDVを含むCDRH3(配列番号35のaa 99~aa 111)、GTSQDINNYLNを含むCDRL1(配列番号34のaa 24~aa 34)、YTSRLHSを含むCDRL2(配列番号34のaa 50~aa 56)、およびQQSKTLPWTを含むCDRL3(配列番号34のaa 89~aa 97)を含む、請求項1および7から8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記scFvが、配列番号34またはその等価物の軽鎖可変領域、および配列番号35またはその等価物の重鎖可変領域を含む、請求項1および7から9のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記scFvが、配列番号1、40、41もしくは42、またはその各々の等価物のアミノ酸配列を含む、請求項1および7から10のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記膜貫通ドメインが、CD4膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、またはNKG2D膜貫通ドメインのいずれか1つを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記膜貫通ドメインが、CD28膜貫通ドメインまたはNKG2D膜貫通ドメインである、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
前記膜貫通ドメインが、配列番号13から20、85、86、もしくは93から95、またはその各々の等価物のいずれか1つを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項15】
前記共刺激ドメインが、CD28、4-1BB、または2B4共刺激ドメインのうちのいずれか1つまたは複数を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項16】
前記共刺激ドメインが、配列番号22から25もしくは66、またはその各々の等価物のいずれか1つまたは複数のアミノ酸配列を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項17】
前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号21またはその等価物のアミノ酸配列を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項18】
3~15アミノ酸のリンカーが、前記共刺激ドメインと前記CD3ζシグナル伝達ドメインとの間に位置決めされている、請求項1から17のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項19】
前記スペーサーが、配列番号2から12もしくは44、またはその各々の等価物のいずれか1つを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項20】
前記CARが、VLをコードする核酸分子とVHをコードする核酸分子との間に位置決めされたシグナル配列またはリンカーをさらに含み、さらに必要に応じて、PSCA抗原結合ドメインが、VL-リンカー-VH、またはVH-リンカー-VLを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項21】
前記シグナル配列が、ヒトGM-CSF受容体アルファシグナル配列、IgGkシグナルペプチド、IgG2シグナルペプチド、またはIL-2シグナルペプチドのうちのいずれか1つである、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項22】
前記シグナル配列が、配列番号29から31、36、もしくは106から108、またはその各々の等価物のいずれか1つを含む、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項23】
前記CARが、配列番号1、40、41もしくは42、またはその各々の等価物、または1~5のアミノ酸改変を有するその各々のバリアントのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項12から21のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項24】
前記IL-15ドメインが、可溶性ヒトIL-15を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項25】
前記IL-15ドメインが、可溶性IL-15とIL-15Rαの機能的部分とを含む融合タンパク質を含み、または前記IL-15ドメインが、リンカーにより接続されている配列番号43および配列番号72を含み、または前記IL-15ドメインが、リンカーにより接続されている配列番号70および配列番号72、もしくはその各々の等価物を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項26】
前記IL-15ドメインが、膜結合型IL-15を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項27】
前記IL-15ドメインが、配列番号から43、70もしくは72、またはその各々の等価物を含む、請求項1から23および26のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項28】
第2のポリペプチドが、ヒトIL-15Rαをさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項29】
前記IL-15Rαが、配列番号72またはその等価物を含む、請求項28に記載の核酸分子。
【請求項30】
前記第2のポリペプチドが、リンカーにより必要に応じて接続されている可溶性IL-15とIL-15Rαとを含む融合タンパク質を含む、請求項29に記載の核酸分子。
【請求項31】
第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に位置決めされた、第1のリボソームスキップ配列、または自己切断ペプチドをコードする第4のヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項32】
検出可能なマーカーもしくは自殺遺伝子産物または両方をコードする第3のヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項33】
前記第3のヌクレオチド配列が、tEGFR、tCD19、またはLNGFRドメインのうちのいずれか1つをコードする、請求項32に記載の核酸分子。
【請求項34】
前記第3のヌクレオチド配列が、配列番号45またはその等価物をコードする、請求項32または33に記載の核酸分子。
【請求項35】
5’から3’へ、
(1)前記第1のヌクレオチド配列、前記第1のリボソームスキップ配列、もしくは前記自己切断ペプチドをコードする前記第3のヌクレオチド配列、前記第2のヌクレオチド配列、第2のリボソームスキップ配列、もしくは位置決めされた自己切断ペプチドをコードする第5のヌクレオチド配列、および前記第4のヌクレオチド配列;
(2)前記第1のヌクレオチド配列、前記第1のリボソームスキップ配列、もしくは前記自己切断ペプチドをコードする前記第3のヌクレオチド配列、前記第4のヌクレオチド配列、前記第2のリボソームスキップ配列、もしくは位置決めされた前記自己切断ペプチドをコードする前記第5のヌクレオチド配列、および前記第2のヌクレオチド配列;
(3)前記第2のヌクレオチド配列、前記第1のリボソームスキップ配列、もしくは前記自己切断ペプチドをコードする前記第3のヌクレオチド配列、前記第1のヌクレオチド配列、前記第2のリボソームスキップ配列、もしくは位置決めされた前記自己切断ペプチドをコードする前記第5のヌクレオチド配列、および前記第4のヌクレオチド配列;
(4)前記第2のヌクレオチド配列、前記第1のリボソームスキップ配列、もしくは前記自己切断ペプチドをコードする前記第3のヌクレオチド配列、前記第4のヌクレオチド配列、前記第2のリボソームスキップ配列、もしくは位置決めされた前記自己切断ペプチドをコードする前記第5のヌクレオチド配列、および前記第1のヌクレオチド配列;
(5)前記第4のヌクレオチド配列、前記第1のリボソームスキップ配列、もしくは前記自己切断ペプチドをコードする前記第3のヌクレオチド配列、前記第1のヌクレオチド配列、前記第2のリボソームスキップ配列、もしくは位置決めされた前記自己切断ペプチドをコードする前記第5のヌクレオチド配列、および前記第2のヌクレオチド配列;または
(6)前記第4のヌクレオチド配列、前記第1のリボソームスキップ配列、もしくは前記自己切断ペプチドをコードする前記第3のヌクレオチド配列、前記第2のヌクレオチド配列、前記第2のリボソームスキップ配列、もしくは位置決めされた前記自己切断ペプチドをコードする前記第5のヌクレオチド配列、および前記第1のヌクレオチド配列
のうちのいずれか1つを含む、請求項32から34のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項36】
DNA分子である、請求項1から35のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項37】
mRNA分子である、請求項1から36のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項38】
配列番号46もしくは47、またはその各々の等価物のいずれか1つまたは複数をさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項39】
前記等価物が、少なくとも80%または90%同一である、請求項5から38のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項40】
請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項41】
発現ベクターである、請求項40に記載のベクター。
【請求項42】
前記核酸分子の発現を指示するための前記核酸分子に動作可能に連結された調節配列をさらに含む、請求項40または41に記載のベクター。
【請求項43】
前記核酸分子の複製を指示するための前記核酸分子に動作可能に連結された調節配列をさらに含む、請求項40に記載のベクター。
【請求項44】
非ウイルスベクター、必要に応じてプラスミドを含む、請求項40から43のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項45】
レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターから必要に応じて選択されるウイルスベクターを含む、請求項40から43のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項46】
請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項40から42および44から45のいずれか一項に記載のベクターによりコードされるポリペプチド。
【請求項47】
請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項40から45のいずれか一項に記載のベクター、または請求項46に記載のポリペプチドのうちの1つまたは複数を含む細胞。
【請求項48】
原核細胞または真核細胞である、請求項47に記載の細胞。
【請求項49】
前記真核細胞が、動物細胞、哺乳動物細胞、ウシ亜科動物細胞、ネコ科動物細胞、イヌ科動物細胞、ネズミ科動物細胞、ウマ科動物細胞、またはヒト細胞から選択される、請求項48に記載の細胞。
【請求項50】
前記真核細胞が、免疫細胞、必要に応じて、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、骨髄性細胞、単球、またはマクロファージである、請求項48または49に記載の細胞。
【請求項51】
前記免疫細胞が、造血幹細胞(HSC)または人工多能性幹細胞(iPSC)に由来する、請求項50に記載の細胞。
【請求項52】
前記真核細胞が、幹細胞、必要に応じて、造血幹細胞(HSC)または人工多能性幹細胞(iPSC)である、請求項48または49に記載の細胞。
【請求項53】
請求項47から52のいずれか一項に記載の1つまたは複数の細胞を含む細胞集団。
【請求項54】
請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクターにより形質導入されたヒトNK細胞の集団。
【請求項55】
請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子によりコードされる前記CARを発現するヒトNK、T細胞またはマクロファージの集団。
【請求項56】
担体と、請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項40から45のいずれか一項に記載のベクター、請求項46に記載のポリペプチド、請求項47から52のいずれか一項に記載の細胞、または請求項53から55のいずれか一項に記載の集団のうちの1つまたは複数とを含む組成物。
【請求項57】
前記担体が、薬学的に許容される担体である、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
請求項47から52のいずれか一項に記載の細胞を産生する方法であって、請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項40から45のいずれか一項に記載のベクターを細胞に導入するステップを含む方法。
【請求項59】
PCSAを発現するがん細胞または前記がん細胞を含む組織の成長を阻害する方法であって、前記がん細胞または前記組織を、請求項47から52のいずれか一項に記載の細胞、または請求項53から55のいずれか一項に記載の集団と接触させるステップを含む方法。
【請求項60】
前記がん細胞または前記組織を、前記がん細胞上でのPCSAの発現を上方調節する治療薬と接触させるステップをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記がん細胞または前記組織を追加の抗がん治療薬と接触させるステップをさらに含む、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
それを必要とする対象におけるPSCAを発現するがんを処置する方法であって、前記対象に、請求項47から52のいずれか一項に記載の細胞、または請求項53から55のいずれか一項に記載の集団を投与するステップを含み、それによって前記がんを処置する方法。
【請求項63】
前記細胞または集団が、処置される前記対象にとって自家である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記細胞または集団が、処置される前記対象にとって同種異系である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
患者における固形腫瘍またはがんを処置する方法であって、請求項1から39に記載の核酸分子を含むベクターにより形質導入された自家または同種異系ヒトNK細胞の集団を投与するステップを含み、前記固形腫瘍またはがんが、PSCAを発現する細胞を含む、方法。
【請求項66】
対象におけるPSCA陽性細胞を低減または消失させる方法であって、請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクターにより形質導入された自家または同種異系ヒトNK細胞の集団を投与するステップを含む方法。
【請求項67】
前記PSCA陽性細胞が、がん細胞または非がん性細胞である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記固形腫瘍もしくはがんが、または前記がん細胞が、胆嚢がん、胆嚢腺癌 膵臓がん、PSCA発現NSCLC、前立腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、食道がん、または胃がんのうちのいずれか1つまたは複数からの細胞である、請求項59から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞または集団が、請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子によりコードされる前記CARを発現する、請求項56から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞または集団が、局所投与または全身投与される、請求項62から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記細胞または集団が、単回または反復投薬により投与される、請求項62から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記細胞または集団が、投与の前に凍結および融解される、請求項59から71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
前記対象または患者から試料を単離すること、前記対象または患者から単離された前記試料におけるPSCA発現を判定すること、および前記試料にPSCA発現があると判定された場合、前記投与ステップを反復することにより、前記処置をモニターするステップをさらに含む、請求項62から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記細胞または集団の投与の前に前記対象または患者から単離された試料におけるPSCA発現を判定するステップをさらに含む、請求項62から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記対象または患者に、追加の抗がん療法、もしくは前記PSCA発現を上方調節する療法、または両方を投与するステップをさらに含む、請求項62から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記追加の抗がん療法が、化学療法、凍結療法、温熱療法、標的療法、または放射線療法のうちの1つまたは複数を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記投与が、前記対象に、第1選択療法、または第2選択療法、または第3選択療法、または第4選択療法として適用される、請求項62から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
自殺遺伝子産物を認識し、それに結合する抗体を、前記自殺遺伝子産物を発現する前記細胞または集団の投与後に投与するステップをさらに含み、それによって前記自殺遺伝子産物発現細胞を消失させる、請求項62から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記自殺遺伝子産物を認識し、それに結合する前記抗体の前記投与が、前記細胞の投与から約4週間、または約1.5ヵ月、または約2ヵ月、または約3ヵ月、または約4ヵ月、または約5ヵ月、または約6ヵ月、または約7ヵ月、または約8ヵ月、または約9ヵ月、または約10ヵ月、または約11ヵ月、または約12ヵ月、または約1.5年後である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記対象または患者が、哺乳動物、イヌ科動物、ネコ科動物、ウマ科動物、ネズミ科動物、またはヒトである、請求項62から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
使用のための必要に応じた使用説明書と、以下:請求項1から39のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項40から45のいずれか一項に記載のベクター、請求項46に記載のポリペプチド、請求項47から52のいずれか一項に記載の細胞、請求項53から55のいずれか一項に記載の集団、または請求項56もしくは56に記載の組成物のうちの1つまたは複数とを含むキット。
【請求項82】
請求項1に記載の核酸分子を含むベクターにより形質導入されたヒトNK細胞であって、1、2または3サイクルの凍結-融解サイクル後に安定している、ヒトNK細胞。
【請求項83】
前記細胞が、投与の前に凍結され、必要に応じて、前記細胞がNK細胞である、請求項59から79のいずれかに記載の方法。
【請求項84】
前記細胞が、投与の前に融解され、必要に応じて、前記細胞がNK細胞である、請求項83に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年11月24日に出願した米国特許仮出願第63/117,904号および2021年4月8日に出願した米国特許仮出願第63/172,489号の優先権を主張するものであり、各々の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式で電子的に提出した配列表を含み、この配列表は、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。2021年11月9日に作成した前記ASCIIコピーは、113086-0230_SL.txtという名であり、サイズは90,793バイトである。
【0003】
技術分野
本開示は、PSCA特異的キメラ抗原受容体(CAR)で操作された免疫細胞、製剤化方法、および使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
前立腺幹細胞抗原(PSCA)は、膵臓がん、前立腺がんおよび膀胱がんをはじめとする様々な固形腫瘍において高度に発現されるが、正常な細胞にはあまり発現されない(Argani et al., (2001) Cancer Res. 61, 4320-4324;Abate-Daga et al., (2014) Hum Gene Ther. 25(12), 1003-1012)。膵臓がんは、10番目に診断頻度が高い悪性腫瘍であるにもかかわらず、米国では依然としてがん関連死の死因第4位である(Siegel et al., (2012) CA Cancer J. Clin. 62, 10-29)。ほとんどの患者は、診断時に局所進行性または転移性疾患を呈し、それ故、外科的切除の対象にならない。加えて、膵臓がん細胞は、化学および放射線療法に対して本質的に抵抗性を示す傾向がある。標準治療は、ゲムシタビンに基づく化学療法であり、これは、病的状態を軽減するが、立証された生存利益を誘導しない。生存期間中央値は、今のところ、6~8ヵ月であると推定される(Cartwright et al., (2008) Cancer Control 15, 308-313)。より有効な療法が、これらのPSCA陽性がんを有効に処置するために必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の概要
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1のヌクレオチド分子、およびIL-15ドメインをコードする第2のヌクレオチド分子を含むか、または代替的にそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらからなる核酸分子が、本明細書において提供される。CARは、前立腺幹細胞抗原(PSCA)を標的とする一本鎖可変断片(scFv)、スペーサー、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含むか、または代替的にそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらからなる。核酸分子は、DNAまたはRNAであり得る。
【0006】
様々な固形腫瘍(例えば、非小細胞肺癌、胆嚢がん、膵臓がん、前立腺がん、および膀胱がん)を処置するための、IL-15ドメイン(例えば、IL-15の少なくとも一部分、IL-15Raの少なくとも一部分、またはIL-15の少なくとも一部分とIL-15Raの少なくとも一部分とを含む融合タンパク質)を共発現する、PSCAを標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するCAR T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞または他の免疫細胞(本明細書ではPSCA CAR NK細胞とも呼ばれる)を作製および使用する方法が、本明細書に記載される。本明細書に記載されるPSCA CAR NK細胞は、in vitroおよびin vivoで強力な抗原特異的抗腫瘍有効性を有する。本明細書に記載されるPSCA CAR NK細胞は、強力な抗原特異的抗腫瘍有効性も有する。
【0007】
キメラ抗原受容体(CAR)またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、キメラ抗原受容体またはポリペプチドが、PSCAを標的とするscFvと、スペーサーと、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインと、IL-15ドメインを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む核酸分子が、本明細書に記載される。
【0008】
一部の実施形態では、第1のヌクレオチド分子によりコードされるCARは、scFvを含み、または代替的にそれから本質的になり、またはなおさらにそれからなり、このscFvは、DYYIを含む重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1(CDRH1)(配列番号33のaa 31~aa 34)、WIDPENGDTEFVPKFQGを含むHC CDR 2(CDRH2)(配列番号33のaa 50~aa 66)、およびGGFを含むHC CDR 3(CDRH3)(配列番号33のaa 99~aa 101)を含むか、または代替的にそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらからなる。一部の実施形態では、第1のヌクレオチド配列によりコードされるCARは、scFvを含み、または代替的にそれから本質的になり、またはなおさらにそれからなり、このscFvは、SASSSVRFIHを含む軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)1(CDRL1)(配列番号32のaa 24~aa 33)、DTSKLASを含むLC CDR2(CDRL2)(配列番号32のaa 49~aa 55)、およびQQWGSSPFTを含むLC CDR 3(CDRL3)(配列番号32のaa 88~aa 96)を含み、または代替的にそれから本質的になり、またはなおさらにそれからなる。
【0009】
別の態様では、IL-15ドメインをコードする核酸分子は、可溶性IL-15(sIL-15またはs15)、膜結合型IL-15(mbIL-15またはmIL-15またはm15)、可溶性IL-15とIL-15Rαの少なくとも一部分とを含む融合タンパク質(sIL-15cまたはs15c)、および膜貫通ドメインと、IL-15の少なくとも一部分と、IL-15αの少なくとも一部分とを含む融合タンパク質(mbIL-15cまたはmIL-15cまたはm15c)を含み、これらは、必要に応じてコドン最適化されていることがある。
【0010】
本明細書に開示の核酸分子を含むか、または代替的にそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなるベクターも提供される。一部の実施形態では、ベクターは、核酸分子の発現または複製を指示する、核酸分子の1つまたは複数のエレメントに動作可能に連結された調節配列をさらに含む。
【0011】
本明細書に記載される核酸分子を含む発現ベクター、およびそのベクターにより形質導入された、または本明細書に記載される核酸分子(例えば、mRNA)を保有する、ヒト免疫細胞(例えば、NK細胞、T細胞またはマクロファージ)の集団も記載される。
【0012】
患者における固形腫瘍またはがんを処置する方法であって、本明細書に記載される核酸分子を含むベクターにより形質導入された自家または同種異系ヒトCAR細胞またはヒトNK細胞の集団を投与するステップを含み、固形腫瘍またはがんが、PSCAを発現する細胞を含む、方法も記載される。様々な実施形態では、キメラ抗原受容体またはポリペプチドを発現するヒトCARまたはNK細胞の集団は、局所投与または全身投与され、キメラ抗原受容体またはポリペプチドを発現するヒトCARまたはNK細胞の集団は、単一または反復投薬により投与される。
【0013】
様々な実施形態では、NK細胞は、臍帯血、末梢血または幹細胞に由来する。
【0014】
開示される核酸分子によりコードされるCARおよびIL-15ドメインポリペプチド、ならびにそれを発現するおよび含む細胞が、本明細書においてさらに提供される。
【0015】
加えて、本明細書に開示のポリペプチド、本明細書に開示の核酸分子または本明細書に開示のベクターのうちの1つまたは複数を含む、単離された細胞が提供される。一部の実施形態では、細胞は、本明細書に開示のキメラ抗原受容体(CAR)およびIL-15ドメインを発現する。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、および必要に応じて、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、骨髄性細胞、単球、またはマクロファージである。
【0016】
加えて、本明細書に開示される単離された細胞を含むか、または代替的にそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる集団が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、本明細書に開示される核酸分子もしくはその核酸分子によりコードされるCARおよびIL-15ドメインを含むか、または代替的にそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる免疫細胞、例えばヒトNK細胞、T細胞またはマクロファージの集団が、本明細書において提供される。
【0017】
例えばCARをコードする、本開示の核酸分子を含むベクターにより形質導入されたヒトNK細胞であって、1、2または3サイクルの凍結-融解サイクル後に安定しているヒトNK細胞がさらに提供される。それらの細胞を本開示の方法において使用することができ、細胞は、投与の前に凍結され、必要に応じて、細胞は、NK細胞である。別の態様では、細胞は、投与の前に融解され、必要に応じて、細胞は、NK細胞である。
【0018】
加えて、担体と、本明細書に開示される核酸分子、ベクター、ポリペプチド、細胞もしくは細胞集団のうちの1つもしくは複数とを含むか、または代替的にそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらからなる組成物が、本明細書において提供される。
【0019】
一態様では、本明細書に開示される細胞の細胞系を産生する方法であって、本明細書に開示される核酸または本明細書に開示されるベクターを、本明細書に開示される細胞に導入するステップ、および核酸分子を発現させるステップを含むか、または代替的にそれらのステップから本質的になるか、またはなおさらにそれらのステップからなる方法が、提供される。
【0020】
さらに別の態様では、PSCAを発現するがん細胞またはそのがん細胞を含む組織の成長を阻害する方法であって、がん細胞または組織を、本明細書に開示される細胞と接触させるステップを含むか、または代替的にそのステップから本質的になるか、またはなおさらにそのステップからなる方法が、提供される。
【0021】
さらに別の態様では、それを必要とする対象におけるPSCAを発現するがんを処置する方法であって、対象に、本明細書に開示される細胞または細胞の集団を投与するステップを含むか、または代替的にそのステップから本質的になるか、またはなおさらにそのステップからなり、それによってがんを処置する方法が提供される。
【0022】
さらに別の態様では、それを必要とする患者における固形腫瘍またはがんを処置する方法であって、本明細書に開示される核酸分子を含むか、または代替的にそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなるベクターにより形質導入された、自家または同種異系(allogenic)ヒトNK細胞の集団を投与するステップを含み、または代替的にそのステップから本質的になり、またはなおさらにそのステップからなり、固形腫瘍またはがんが、PSCAを発現する細胞を含む、方法が提供される。
【0023】
一部の実施形態では、固形腫瘍を処置する方法、またはPSCA陽性細胞を低減もしくは消失させる方法が、本明細書に記載される。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵臓がん、前立腺がん、膀胱がん、胃がん、乳がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、肺がん、卵巣がん、精巣がん、甲状腺がんなど、またはこれらのもしくは他のがんの亜集団のうちのいずれか1つまたは複数である。また、患者におけるPSCA陽性がんまたは障害(例えば、膵臓がん、前立腺がん、および膀胱がんを含む)を処置する方法であって、本明細書に記載される核酸分子を含むベクターにより形質導入された自家または同種異系ヒトNK細胞の集団を投与するステップを含み、PSCA陽性がんまたは障害が、PSCAを発現する細胞を含む、方法も本明細書に記載される。様々な実施形態では、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体またはポリペプチドを発現するヒトNK細胞は、局所投与または全身投与され、PSCAを発現する標的細胞は、がん性細胞であり、キメラ抗原受容体またはポリペプチドを発現するヒトNK細胞は、単一または反復投薬により投与される。
【0024】
PSCA陽性細胞に対して選択的な抗がん剤としてPSCA CAR NK細胞を使用する方法も、本明細書に記載され、非がん性PSCA陽性細胞の集団を減少させる方法も、本明細書に記載される。一部の実施形態では、対象におけるPSCA陽性細胞を低減または消失させる方法であって、PSCA CARまたはPSCAポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターにより形質導入された自家または同種異系ヒトNK細胞の集団を投与するステップを含む方法が、本明細書に記載される。
【0025】
さらに別の態様では、対象におけるPSCA陽性細胞を低減または消失させる方法であって、本明細書に開示される核酸分子を含むベクターにより形質導入された自家または同種異系ヒトNK細胞の集団を投与するステップを含む方法が、提供される。
【0026】
本明細書に記載されるCARまたはポリペプチドを当技術分野において公知の任意の手段により産生することができるが、好ましくは、それは、組換えDNA技法を使用して産生される。キメラ受容体のいくつかの領域をコードする核酸を調製し、適便であるような、当技術分野において公知の標準的な分子クローニング技法(ゲノムライブラリースクリーニング、オーバーラップPCR、プライマー利用ライゲーション、部位指定突然変異誘発など)によって、完全コード配列に組み立てることができる。得られたコード領域は、好ましくは、発現ベクターに挿入され、好適な発現宿主細胞系、好ましくはNK細胞、最も好ましくは自家NK細胞を形質転換するために使用される。
【0027】
CARまたはポリペプチドを、NK細胞集団において、CARまたはポリペプチドをコードするmRNAによって一過性に発現させることができる。mRNAを、NK細胞に、電気穿孔によって導入することができる(Wiesinger et al. 2019 Cancers (Basel) 11:1198)。
【0028】
一部の実施形態では、がんに罹患している対象の生存期間を増加させる方法であって、本明細書に記載されるCAR NK細胞を含む組成物を投与するステップを含む方法が、本明細書に記載される。
【0029】
一部の実施形態では、患者におけるがんを処置する方法であって、本明細書に記載されるCAR NK細胞を含む組成物を投与するステップを含む方法が、本明細書に記載される。
【0030】
一部の実施形態では、患者におけるがんに関連する症状を低減または改善する方法であって、本明細書に記載されるCAR NK細胞を含む組成物を投与するステップを含む方法が、本明細書に記載される。
【0031】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCAR NK細胞またはCAR T細胞を含む組成物は、局所投与または全身投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるCAR NK細胞を含む組成物は、単一または反復投薬により投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるCAR NK細胞を含む組成物は、がん、病原体感染、自己免疫障害に罹患している、または同種移植を受ける患者に投与される。
【0032】
一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍である。一部の実施形態では、がんは、膵臓がん、前立腺がん、および膀胱がんからなる群から選択される。一部の実施形態では、がんは、PSCA陽性細胞を含む任意のがんまたは腫瘍である。
【0033】
加えて、使用のための必要に応じた使用説明書と、本明細書に開示される核酸分子、ベクター、ポリペプチド、細胞、細胞の集団、もしくは組成物のうちの1つもしくは複数とを含むか、または代替的にそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらからなるキットが、本明細書において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、様々な腫瘍組織におけるPSCA抗原RNA発現を描示するグラフを示す。点線は、正常PSCAレベルを表し、囲み枠は、膵臓がんのPSCA発現レベルの概要を示す。
【0035】
図2図2は、様々な例示的CAR構築物を描示する概略図を示す。SP:シグナルペプチド;TM:膜貫通;Codon Opm IL15:可溶性または膜結合型のどちらかのコドン最適化IL15。
【0036】
図3図3A~3Bは、PSCA-CARを有さない短縮化CD19を発現するNK細胞および未処置と比較して、CD28または2B4シグナル伝達ドメインを有するPSCA-CAR NK細胞での処置の結果として、in vitro細胞溶解を示す。図3Aは、PSCA-CAR NK細胞が、PSCA(+)Canpan-1 lyse膵臓腫瘍細胞を抗原特異的様式で溶解することを示す。図3Bは、PSCA(-)PANC-1細胞系に対するPSCA-CAR NK細胞の特異的CAR活性がないことを示す。
【0037】
図4図4A~4Bは、処置なしと比較して、操作されたNK細胞におけるA1またはM1 scFvを有する2つのPSCA-CARの様々なエフェクター:標的(E:T)比での細胞溶解パーセントを示す。図4Aは、PSCA-CAR NK細胞が、PSCA(+)Canpan-1 lyse膵臓腫瘍細胞を抗原特異的様式で溶解することを示す。図4Bは、PSCA(-)PANC-1細胞系に対するPSCA-CAR NK細胞の細胞溶解をそこに示す。データを、51Cr放出アッセイから収集した。
【0038】
図5-1】図5A~5Bは、4つの異なるタイプのIL-15を有するPSCA CAR NK細胞の、PSCA(+)Canpan-1膵臓がん細胞(図5A)およびPSCA(-)PANC-1細胞系(図5B)に対する、一連のエフェクター:標的(E:T)比での、細胞傷害性を示す。細胞傷害効果を、51Cr放出アッセイから解析した。
図5-2】同上。
【0039】
図6図6は、4つの異なるタイプのIL-15を有するPSCA-CAR NK細胞の、PSCA(+)Canpan-1膵臓がん細胞に対する細胞傷害性を示す。上のパネルは、CAPAN-1細胞に対する腫瘍成長指数を経時的に示す、xCELLigenceリアルタイム細胞解析(RTCA)から得られた正規化セルインデックスデータを示す。下のパネルは、腫瘍細胞とCAR NK細胞の共培養を開始してからおよそ25時間後の一時点(上のパネルの縦実線を参照されたい)における定量的データを示す。使用した凡例は、上のパネルと下のパネル両方の各群についての処置を示す。左から右へ:tEGFR、M1 scFvを有するPSCA CAR、A1-t19、A1-m15c、A1 s15c、A1-m15、A1-s15、および未処置の「腫瘍のみ」。
【0040】
図7-1】図7A~7Cは、膵臓がん生着マウスモデルにおけるPSCA NK細胞の腫瘍枯渇効果を示す。図7Aは、膵臓がん(ルシフェラーゼ遺伝子を発現するCAPAN1_luc)生着マウスのIVISイメージングを示す。マウスをNK処置の前および後にイメージングした。凍結PSCA-CAR-sIL15 NK細胞を融解し、直接マウスに全身(i.v.)および局所(i.p.)注射した。図7Bは、膵臓がん細胞の生物発光の定量化を示す。図7Cは、膵臓がん細胞の生物発光の定量化を示す。処置前に正規化することにより定量化を達成し、変化倍数として表した。
図7-2】同上。
【0041】
図8図8A~8Bは、PSCA CAR NK細胞発現可溶性IL-15のin vitroでの有効性を示す。PSCA CAR NK細胞発現可溶性IL-15を、2つの異なる膵臓細胞系に対する細胞傷害性について試験した。図8Aは、Capan-1(PSCA+)細胞に対する影響を示し、図8Bは、Panc-1(PSCA-)細胞に対する影響を示す。NK細胞と膵臓細胞の、1:3のE:T比での、72時間にわたる共培養後に、細胞傷害性を試験した。
【0042】
図9図9は、RTCAアッセイによる研究用構築物と臨床的構築物の機能の比較を示す。可溶性IL-15を発現する研究用および臨床的PSCA CAR NKベクターを、Capan-1(PSCA+)細胞に対する細胞傷害性について試験した。非ヒトDNA配列を、研究グレードPSCA CAR-可溶性IL-15ベクターから除去して、臨床グレードPSCA CAR-可溶性IL-15ベクターを作出した。示されているNK細胞またはPSCA CAR-可溶性NK細胞と膵臓細胞の、1:3のE:T比での、72時間にわたる共培養後に、細胞傷害性を試験した。細胞成長を、xCELLigenceリアルタイム細胞解析(RTCA)により解析した。
【0043】
図10-1】図10A~10Dは、PSCA NK細胞の抗腫瘍効果を示す。図10Aは、本研究の模式的描写である。ルシフェラーゼ(luc)を発現する、0.2×10個のCAPAN1細胞を、NSGマウスに腹腔内生着させ、その後、可溶性IL-15を発現するNK細胞、またはPSCA CARおよび可溶性IL-15を発現するNK細胞での3サイクルの処置を施した。各サイクルは、4回の注射を含み、各々、腹腔内投与される2×10個の細胞、および静脈内投与される2×10個の細胞で構成されていた。図10Bは、CAPAN1_lucを生着させ、可溶性IL-15を発現する示されているNKまたはCAR NK細胞で処置したまたはしていないマウスの、IVISイメージングである。マウスをNK処置の前および後にイメージングした。図10Cは、膵臓がん細胞の生物発光の定量化を示す。図10Dは、CAPAN1_lucを生着させ、可溶性IL-15を発現する示されているNK細胞またはCAR NK細胞で処置したまたはしていないマウスの、生存期間解析を示す。
図10-2】同上。
【0044】
図11図11A~11Bは、PSCA CAR-可溶性IL-15 NK細胞とアルドキソルビシンの組合せの細胞殺滅効果を示す。図11Aは、膵臓がん細胞系CAPAN1とPSCA CAR-可溶性IL-15 NK細胞(エフェクター/標的=1:3、PSCA CAR NK)との、またはアルドキソルビシン(0.3μM)との、または組合せでの共培養から48時間後の一連の代表画像である。図11Bは、xCELLigenceリアルタイム細胞解析(RTCA)により解析した、PSCA CAR-可溶性IL-15 NK細胞で、アルドキソルビシ(0.3μM)で、または組合せで処置したCAPAN1の正規化腫瘍成長指数の解析を描示する。可溶性IL-15を発現するNK細胞は、対照としての役割を果たした。
【0045】
図12図12A~12Bは、PSCA CAR-可溶性IL-15 NK細胞とゲムシタビン(gemcibabine)の組合せの細胞殺滅効果を示す。図12Aは、膵臓がん細胞系CAPAN1と、PSCA CAR NK-可溶性IL-15細胞発現(エフェクター/標的=1:3、PSCA CAR NK)との、またはゲムシタビン(0.3μM)との、または組合せでの共培養から48時間後の一連の代表画像である。図12Bは、xCELLigenceリアルタイム細胞解析(RTCA)により解析した、PSCA CAR-可溶性IL-15 NK細胞で、アルドキソルビシン(0.3μM)で、または組合せで処置したCAPAN1の正規化腫瘍成長指数の解析を描示する。可溶性IL-15を発現するNK細胞は、対照としての役割を果たした。
【0046】
図13図13A~13Bは、新たに調製した(図13A)および事前に凍結してあった(図13B)NK細胞によるCapan-1腫瘍細胞殺滅を示す。
【0047】
図14-1】図14A~14Dは、PSCA NK細胞の抗腫瘍効果を示す。図14Aは、CAPAN1_lucを生着させ、示されている、可溶性IL-15を発現するNK、または可溶性IL-15を発現するPSCA CAR NK細胞で、処置したまたはしていないマウスの、IVISイメージングである。マウスをNK処置の前および後にイメージングした。図14Bは、3つの異なる処置を受けている膵臓のイメージングを示す。図14Cは、CAPAN1_lucを生着させ、示されている、可溶性IL-15を発現するNK細胞、または可溶性IL-15を発現するPSCA CAR NK細胞で、処置したまたはしていないマウスの、生存期間解析を示す。図14Dは、3つの異なる処置を受けている腫瘍細胞およびNK細胞の定量化を示す。
図14-2】同上。
図14-3】同上。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
本開示には、抗PSCA抗原結合ドメインを有するCARの生成およびその抗腫瘍有効性が、とりわけ記載される。
【0049】
当然のことながら、本明細書で使用される節または小節の見出しは、単に構成を目的としたものであり、記載される主題を限定するおよび/または分けるものと解釈すべきでない。
【0050】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての専門および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または等価の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験の際に使用することができるが、好ましい方法、デバイスおよび材料が以下に説明される。本明細書に引用される全ての技術刊行物および特許公報は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。先行開示を理由に当該開示に時間的に先行する権利が本開示にないことを認めるものと解釈すべきものは、本明細書にはない。
【0051】
本開示の実施は、別段の指示がない限り、当技術分野における技能の範囲内である組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来の技法を用いることになる。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition;the series Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology;the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press);MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach;Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual;Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5th edition;Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986));Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London);Herzenberg et al. eds (1996) Weir's Handbook of Experimental Immunology;Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, 3rd edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press (2002));Sohail (ed.) (2004) Gene Silencing by RNA Interference: Technology and Application (CRC Press)を参照されたい。
【0052】
全ての数字表示、例えば、pH、温度、時間、濃度および分子量は、範囲を含めて、適宜、0.1または1.0ずつ変わる(+)または(-)、近似値である。必ずしも明示的に述べられるとは限らないが、全ての数字表示の前に用語「約」があることを理解されたい。必ずしも明示的に述べられるとは限らないが、本明細書に記載される試薬が単に例示的なものであること、およびそのような試薬の等価物が当技術分野において公知であることも、理解されたい。
【0053】
定義
【0054】
本明細書で使用される場合、前立腺幹細胞抗原またはPSCAは、前立腺に高度に発現されるグリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型細胞膜糖タンパク質を指す。このタンパク質は、図1で特定されている組織、例えば、膀胱、胎盤、結腸、腎臓および胃にも発現される。PSCAは、前立腺がんの大部分において上方調節される。PSCAをコードする遺伝子は、一部の個体において上流開始コドンを生じさせる結果となる多型を含み、この多型は、ある特定の胃および膀胱がんのリスクに関連すると考えられる。PSCAに関連する疾患としては、前立腺がん、胆嚢腺癌および移行上皮癌が挙げられる。その関連経路の中には、タンパク質の代謝、およびGPIアンカー型タンパク質の翻訳後修飾-合成もある。
【0055】
用語「約」は、量または濃度などのような測定可能な値を指すときに本明細書で使用される場合、指定量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらには0.1%の変動量を包含することを意味する。
【0056】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈による別段の明白な指示がない限り、複数の被指示語を含む。例えば、用語「細胞(a cell)」は、その混合物を含む、複数の細胞を含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」または「含む(comprises)」は、組成物および方法が、述べられている要素を含む(include)が他のものを除外しないことを意味するように意図されている。組成物および方法を定義するために使用されるときの「から本質的になる」は、述べられている目的のための組合せにとって何らかの本質的に有意な他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書において定義される要素から本質的になる組成物は、単離および精製方法からの微量夾雑物、ならびに薬学的に許容される担体、例えばリン酸緩衝食塩水、保存薬などを除外しないことになる。「からなる」は、他の成分の、微量を超える要素、および実質的な、本開示の組成物を投与するための方法ステップ、または組成物を生成するためのもしくは意図された結果を達成するためのプロセスステップを除外することを意味するものとする。これらの移行用語の各々により定義される実施形態は、本開示の範囲内である。
【0058】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、その後に記載される状況が、起こることもありまたは起こらないこともあること、したがって、その記載が、その状況が起こる事例と、それが起こらない事例とを含むことを意味する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「および/または」は、関連した掲載される事柄の1つまたは複数についての任意のおよび全ての可能な組合せはもちろん、択一的に(「または」と)解釈される場合には組合せの欠如も指し、それらを包含する。
【0060】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ全面的にまたは完全に、例えば、ある所与の量の95%またはそれより多い、という意味である。一部の実施形態では、「実質的に」または「本質的に」は、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%を意味する。
【0061】
用語「対象」、「宿主」、「個体」、および「患者」は、ヒトおよび獣医学的対象、例えば、ヒト、動物、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、マウス、ウマおよび雌ウシを指すために本明細書において同義で使用されるような用語である。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、それらは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。哺乳動物は、これらに限定されないが、ネズミ科動物、ラット、ウサギ、サル、ウシ亜科動物、ヒツジ類、ブタ類、イヌ科動物、ネコ科動物、家畜、スポーツ動物、ペット、ウマ科動物、および霊長類、特にヒトを含む。ヒトの処置に有用であることに加えて、本開示は、哺乳動物、げっ歯動物を含む、伴侶哺乳動物、エキゾチックアニマルおよび飼い慣らされた動物の、獣医学的処置にも有用である。一実施形態では、哺乳動物は、ウマ、イヌおよびネコを含む。本開示の別の実施形態では、ヒトは、胎児、乳児、思春期前の対象、青少年、小児患者、または成人である。一態様では、対象は、症状が出る前の哺乳動物またはヒトである。別の態様では、対象は、疾患の最小限の臨床症状を有する。対象は、雄または雌、成体、乳児または小児対象であり得る。追加の態様では、対象は、成体である。一部の事例では、成体は、成人、例えば、18歳より高齢の成人である。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「動物」は、生きている多細胞脊椎生物、例えば、哺乳動物および鳥を含むカテゴリーを指す。用語「哺乳動物」は、ヒトと非ヒト哺乳動物の両方を含む。
【0063】
用語「単離された」は、本明細書で使用される場合、他の材料を実質的に含まない分子または生物製剤または細胞物質を指す。一態様では、用語「単離された」は、天然源に存在する他のDNAもしくはRNA、またはタンパク質もしくはポリペプチド、または細胞もしくは細胞小器官、または組織もしくは臓器からそれぞれ分離された、核酸、例えば、DNAもしくはRNA、またはタンパク質もしくはポリペプチド(例えば、抗体またはその誘導体)、または細胞もしくは細胞小器官、または組織もしくは臓器を指す。用語「単離された」はまた、組換えDNA技法により産生された場合、細胞物質もウイルス物質も培養培地も実質的に含まない、または化学合成された場合、化学的前駆体も他の化学物質も実質的に含まない、核酸またはペプチドを指す。さらに、「単離された核酸」または「単離された核酸分子」は、断片として天然に存在しないおよび自然な状態で見出されない核酸断片を含むことを意味する。用語「単離された」は、本明細書では他の細胞タンパク質から単離されているポリペプチドを指すためにも使用され、精製されたポリペプチドと組換えポリペプチドの両方を包含することを意味する。用語「単離された」は、本明細書では他の細胞または組織から単離されている細胞または組織を指すためにも使用され、培養された細胞または組織と操作された細胞または組織の両方を包含することを意味する。
【0064】
一部の実施形態では、用語「操作された」または「組換え(の)」は、参照される種の、天然に存在するタンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、株、野生型株または親宿主株には通常は見られない少なくとも1つの改変を有することを指す。一部の実施形態では、用語「操作された」または「組換え(の)」は、ヒトの介入により合成されることを指す。本明細書で使用される場合、用語「組換えタンパク質」は、組換えDNA技法によって産生されるポリペプチドを指し、一般に、ポリペプチドをコードするDNAが好適な発現ベクターに挿入され、そしてまたそのベクターが使用されて、宿主細胞が異種タンパク質を産生するように形質転換される。
【0065】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「核酸分子」、および「オリゴヌクレオチド」は、同義で使用され、任意の長さの多量体型のヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのどちらか、またはそのアナログを指す。ポリヌクレオチドは、いかなる三次元構造を有するものであってもよく、公知のまたは未知の、いかなる機能を果すものであってもよい。次のものは、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。一部の実施形態では、本明細書に開示のポリヌクレオチドは、RNAである。一部の実施形態では、本明細書に開示のポリヌクレオチドは、DNAである。一部の実施形態では、本明細書に開示のポリヌクレオチドは、DNAとRNAのハイブリッドである。ポリヌクレオチドは、改変ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログであり得る。存在する場合、ヌクレオチド構造の改変は、ポリヌクレオチドの組み立て前にもたらされることもあり、または組み立て後にもたらされることもある。ヌクレオチドの配列が非ヌクレオチド成分により分断されていることもある。ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば、標識成分とのコンジュゲーションにより、さらに修飾されることもある。この用語はまた、二本鎖分子と一本鎖分子の両方を指す。別段の指定または要求がない限り、ポリヌクレオチドである本開示のいずれの実施形態も、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが公知であるかまたは予測される2つの相補的一本鎖形態の各々とを両方とも包含する。
【0066】
ポリヌクレオチドは、アデニン(A)と、シトシン(C)と、グアニン(G)と、チミン(T)と、ポリヌクレオチドがRNAの場合はチミンの代わりにウラシル(U)、という4つのヌクレオチド塩基の特異的配列で構成されている。それ故、用語「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表現である。このアルファベット表現を、中央処理装置を有するコンピュータのデータベースに入力し、バイオインフォマティクスへの応用、例えば、機能ゲノミクスおよび相同性検索に使用することができる。
【0067】
語句「ポリヌクレオチドの増幅」は、PCR法、ライゲーション増幅(またはリガーゼ連鎖反応、LCR)法および増幅法などの、方法を含む。これらの方法は、当技術分野において公知であり、広く実施されている。例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号、ならびにInnis et al., 1990(PCRについて)、およびWu et al. (1989) Genomics 4:560-569(LCRについて)を参照されたい。一般に、PCR手順は、(i)DNA試料(またはライブラリ-)内の特定の遺伝子とのプライマーの配列特異的ハイブリダイゼーション、(ii)DNAポリメラーゼを使用するアニーリング、伸長および変性の複数ラウンドを含むその後の増幅、ならびに(iii)PCR産物の正しいサイズのバンドについてのスクリーニングで構成される、遺伝子増幅法を説明する。使用されるプライマーは、重合の開始をもたらすために十分な長さおよび適切な配列のオリゴヌクレオチドであり、すなわち、各プライマーは、増幅すべきゲノム遺伝子座の各鎖に相補的であるように特異的に設計される。
【0068】
PCRを行うための試薬およびハードウェアは、市販されている。特定の遺伝子領域からの配列の増幅に有用なプライマーは、好ましくは、標的領域またはその隣接領域における配列に相補的であり、これらの配列と特異的にハイブリダイズする。増幅により生成された核酸配列を、直接シークエンシングすることができる。あるいは、増幅された配列を、配列解析の前にクローニングすることができる。酵素的に増幅されたゲノムセグメントの直接クローニングおよび配列解析方法は、当技術分野において公知である。
【0069】
「遺伝子」は、転写され、翻訳された後に特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するポリヌクレオチドを指す。
【0070】
用語「発現する」は、遺伝子産物の産生を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAが、その後、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。遺伝子の発現レベルは、細胞または組織試料中のmRNAまたはタンパク質の量を測定することにより決定され得る。一態様では、1つの試料からの遺伝子の発現レベルは、対照または参照試料からのその遺伝子の発現レベルと直接比較され得る。別の態様では、1つの試料からの遺伝子の発現レベルは、化合物の投与後の同じ試料からのその遺伝子の発現レベルと直接比較され得る。
【0072】
「遺伝子産物」または代替的に「遺伝子発現産物」は、遺伝子が転写および翻訳されたときに生成されるアミノ酸(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)を指す。
【0073】
用語「コードする」は、この用語が核酸配列に適用される場合、その天然の状態で、または当業者に周知の方法によりマニピュレートされたとき、ポリペプチドおよび/またはその断片のmRNAを産生するように転写および/または翻訳され得る場合にポリペプチドを「コードする」と言われるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖は、そのような核酸の補体であり、コード配列をそこから推定することができる。
【0074】
一部の実施形態では、成分名における用語「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」または同様の用語は、これらの名称の中のある特定の同一性を共有する1つより多くの成分を区別および識別するために使用される。例えば、「第1のヌクレオチド分子」および「第2のヌクレオチド分子」は、本明細書または特許請求の範囲では2つのヌクレオチド配列または分子を区別するために使用され得、一部の実施形態では、第1のヌクレオチド分子は、本明細書に開示のキメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド分子を指すことがあり、その一方で第2のヌクレオチド分子は、IL-15ドメインをコードするヌクレオチド分子を指すことがある。
【0075】
用語「調節配列もしくは分子」、「発現制御エレメント」または「プロモーター」は、本明細書で使用される場合、転写および/または複製すべき標的ポリヌクレオチドに動作可能に連結されているポリヌクレオチドであって、標的ポリヌクレオチドの発現および/または複製を助長するポリヌクレオチドを意図している。プロモーターは、発現制御エレメントまたは調節配列の一例である。
【0076】
用語「プロモーター」は、本明細書で使用される場合、遺伝子などのコード配列の発現を調節する任意の配列を指す。プロモーターは、例えば、構成的、誘導性、抑制性、または組織特異的であり得る。「プロモーター」は、転写の開始および速度を制御する、ポリヌクレオチド配列の領域である、制御配列である。プロモーターは、調節タンパク質および分子が結合し得る遺伝子エレメント、例えば、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子を含有し得る。プロモーターの非限定的な例としては、EF1アルファプロモーターおよびCMVプロモーターが挙げられる。EF1アルファ配列は、当技術分野において公知である(例えば、addgene.org/11154/sequences/、ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/J04617、各々への最終アクセス日2019年3月13日、およびZheng and Baum (2014) Int'l. J. Med. Sci. 11(5):404-408を参照されたい)。CMVプロモーター配列は、当技術分野において公知である(例えば、snapgene.com/resources/plasmid-files/?set=basic_cloning_vectors&plasmid=CMV_promoter、最終アクセス日2019年3月13日、およびZheng and Baum (2014)、上掲を参照されたい)。
【0077】
エンハンサーは、標的配列の発現を増加させる調節エレメントである。「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含有するポリヌクレオチドである。例えば、レトロウイルスの長い末端反復は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方を含有する。エンハンサー/プロモーターは、「内因性」または「外因性」または「異種」であり得る。「内因性」エンハンサー/プロモーターは、ゲノム内の所与の遺伝子と天然に連結されているエンハンサー/プロモーターである。「外因性」または「異種」エンハンサー/プロモーターは、遺伝子マニピュレーション(すなわち、分子生物学的技法)によって遺伝子と並んで配置されるエンハンサー/プロモーターであり、したがって、その遺伝子の転写は、その連結されたエンハンサー/プロモーターにより指示される。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「エンハンサー」は、本明細書で使用される場合、発現させるべき核酸配列に関してその位置および配向に関係なく核酸配列の転写を増加させる、向上させるまたは改善する配列エレメントを意味する。エンハンサーは、単一のプロモーターからの転写を増強することもあり、または1つより多くのプロモーターからの転写を同時に増強することもある。転写を向上させるこの機能性が、保持される、または実質的に保持される(例えば、野生型活性、すなわち、完全長配列の活性の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%)のであれば、野生型エンハンサー配列のいずれの短縮化された、突然変異したまたは別様に改変されたバリアントも、上記定義の範囲内である。
【0079】
「ハイブリダイゼーション」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化されている複合体を形成する、反応を指す。水素結合は、ワトソン-クリック型の塩基対合により、フーグスティーン結合により、または任意の他の配列特異的様式で、起こり得る。複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、多鎖複合体を形成する3本またはそれより多くの鎖、単一の自己ハイブリダイズする鎖、またはこれらの任意の組合せを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、より広範なプロセスのステップ、例えば、PCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断を構成し得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「相補的」配列は、互いに逆平行にアラインされたときに、互いに対合する複数の個々のヌクレオチド塩基を含有する2つのヌクレオチド配列を指す。ヌクレオチド塩基の対合は、水素結合を形成し、ひいては相補的配列により形成される二本鎖構造を安定化させる。配列が「相補的」と見なされるために、必ずしも2つの配列内のあらゆるヌクレオチド塩基が互いに対合している必要はない。配列は、例えば、2つの配列内のヌクレオチド塩基の少なくとも30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%が互いに対合している場合、相補的と見なされ得る。一部の実施形態では、相補的という用語は、2つの配列内のヌクレオチド塩基の100%が互いに対合していることを指す。加えて、配列は、2つの配列の全長が、互いに有意に異なる場合、それでもやはり「相補的」と見なされることがある。例えば、15ヌクレオチドのプライマーは、何百ものヌクレオチドを含有する、より長いポリヌクレオチドと、そのプライマーがそのより長いポリヌクレオチドの特定の領域と逆平行にアラインされたときにそのプライマーの複数の個々のヌクレオチド塩基がそのより長いポリヌクレオチド内のヌクレオチド塩基と対合する場合、「相補的」であると見なされ得る。ヌクレオチド塩基対合は、当分野において公知であり、例えば、DNAの場合、プリンアデニン(A)は、ピリミジンチミン(T)と対合し、ピリミジンシトシン(C)は、常にプリングアニン(G)と対合するが、RNAの場合、アデニン(A)は、ウラシル(U)と対合し、グアニン(G)は、シトシン(C)と対合する。さらに、対ではない、2つの相補的配列内の互いに逆平行にアラインされたヌクレオチド塩基は、本明細書ではミスマッチと呼ばれる。
【0081】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行われ得る。一般に、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション反応は、10×SSC、または同等のイオン強度/温度の溶液中、約40℃で実行される。中ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、典型的には、6×SSC中、約50℃で行われ、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション反応は、一般に、1×SSC中、約60℃で行われる。ハイブリダイゼーション反応はまた、当業者には周知である「生理条件」下で行われ得る。生理条件の非限定的な例は、細胞において通常見られる温度、イオン強度、pHおよびMg2+濃度である。
【0082】
ハイブリダイゼーションが、2つの一本鎖ポリヌクレオチド間で、逆平行立体配置で起こる場合、その反応は、「アニーリング」と呼ばれ、それらのポリヌクレオチドは、「相補的」と記載される。二本鎖ポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが第1のポリヌクレオチドの鎖の一方と第2のポリヌクレオチドの鎖の一方との間で起こり得る場合、別のポリヌクレオチドに「相補的」、または別のポリヌクレオチドと「相同」であり得る。「相補性」または「相同性」(あるポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと相補的である程度)は、一般に認められている塩基対合則に従って互いに水素結合を形成すると予想される反対鎖内の塩基の比率によって定量化可能である。
【0083】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較を目的としてアラインされ得る各配列内の位置を比較することにより、決定され得る。比較された配列内の位置が、同じ塩基またはアミノ酸により占有されている場合には、それらの分子は、その位置において相同である。配列間の相同度は、配列により共有されるマッチ位置または相同位置の数の関数である。「無関係の」または「非相同」配列は、本開示の配列のうちの1つと40%未満の同一性、または代替的に25%未満の同一性を共有する。
【0084】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、別の配列に対してある特定のパーセンテージ(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%)の「配列同一性」を有し、「配列同一性」は、アラインされたとき、塩基(またはアミノ酸)のパーセンテージが、2つの配列を比較した際に同じであることを意味する。このアラインメント、および相同または配列同一性パーセントは、当技術分野において公知のソフトウェアプログラム、例えば、Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biologyに記載されているものを使用して、決定され得る。好ましくは、デフォルトパラメーターが、アラインメントに使用される。1つのアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターを使用するBLASTである。特に、プログラムは、次のデフォルトパラメーターを使用するBLASTNおよびBLASTPである:遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;行列=BLOSUM62;表示=50配列;ソート順:高スコア;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、次のインターネットアドレスで見つけることができる:www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST。別の実施形態では、プログラムは、次のうちのいずれか1つである:www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/でアクセス可能なClustal Omega、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/でアクセス可能なNeedle(EMBOSS)、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_stretcher/でアクセス可能なStretcher(EMBOSS)、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/でアクセス可能なWater(EMBOSS)、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_matcher/でアクセス可能なMatcher(EMBOSS)、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/lalign/でアクセス可能なLALIGN。さらなる実施形態では、デフォルト設定が使用される。
【0085】
一部の実施形態では、参照核酸、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの等価物は、参照によりコードされる同じ配列をコードする。一部の実施形態では、参照核酸、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの等価物は、必要に応じて高ストリンジェンシーの条件下で、参照、相補的参照、リバース参照、またはリバース相補的参照とハイブリダイズする。
【0086】
加えてまたは代替的に、等価の核酸、ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドは、参照核酸、ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに対して少なくとも70%の配列同一性、もしくは少なくとも75%の配列同一性、もしくは少なくとも80%の配列同一性、もしくは代替的に少なくとも85%の配列同一性、もしくは代替的に少なくとも90%の配列同一性、もしくは代替的に少なくとも92%の配列同一性、もしくは代替的に少なくとも95%の配列同一性、もしくは代替的に少なくとも97%の配列同一性、もしくは代替的に少なくとも98%の配列同一性、もしくは代替的に少なくとも99%の配列同一性を有し、または代替的に、等価の核酸は、高ストリンジェンシーの条件下で参照ポリヌクレオチドもしくはその補体とハイブリダイズする。一態様では、等価物は、本明細書に記載される1つまたは複数のアッセイによって必要に応じて同定され得るタンパク質の、同じタンパク質または機能的等価物をコードしなければならない。加えてまたは代替的に、ポリヌクレオチドの等価物は、参照または親ポリヌクレオチドと同じまたは同様の機能のタンパク質またはポリペプチドをコードすることになる。
【0087】
用語「形質導入する」または「形質導入」は、この用語がキメラ抗原受容体細胞などの細胞の産生に適用される場合、外来ヌクレオチド配列が細胞に導入されるプロセスを指す。一部の実施形態では、この形質導入は、ウイルス性または非ウイルス性のベクターによって行われる。
【0088】
用語「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、2つまたはそれより多くのサブユニットアミノ酸、アミノ酸アナログまたはペプチド模倣物の化合物を指すために、同義でおよびそれらの最も広い意味で使用される。サブユニット(これらは残基とも呼ばれる)は、ペプチド結合により連結され得る。別の実施形態では、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテルなどにより連結され得る。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならないが、タンパク質の配列またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に課される制限はない。本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、グリシンおよびD光学異性体とL光学異性体の両方、アミノ酸アナログならびにペプチド模倣物を含む、天然および/または非天然もしくは合成のアミノ酸のいずれかを指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、集合的に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子を指し、これらには、例として、限定ではなく、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、これらの組合せ、ならびに免疫応答中に任意の脊椎動物において、例えば、哺乳動物、例えばヒト、ヤギ、ウサギおよびマウスにおいて産生される同様の分子、ならびに非哺乳動物種において産生される同様の分子、例えば、サメ免疫グロブリンが含まれる。別段の具体的な記載がない限り、用語「抗体」は、他の分子への結合を実質的に排除して目的の分子(または目的の非常に類似している分子の群)に特異的に結合する、インタクト免疫グロブリンおよび「抗体断片」または「抗原結合断片」(例えば、生体試料中の他の分子に対する結合定数より少なくとも10-1大きい、少なくとも10-1大きい、または少なくとも10-1大きい目的の分子に対する結合定数を有する、抗体および抗体断片)を含む。用語「抗体」は、遺伝子操作された形態、例えば、キメラ抗体(例えば、マウスまたはヒト化非霊長類抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二特異性抗体)も含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.);Owen et al., Kuby Immunology, 7th Ed., W.H. Freeman & Co., 2013;Murphy, Janeway's Immunobiology, 8th Ed., Garland Science, 2014;Male et al., Immunology (Roitt), 8th Ed., Saunders, 2012;Parham, The Immune System, 4th Ed., Garland Science, 2014も参照されたい。一部の実施形態では、用語「抗体」は、一本鎖可変断片(scFv、またはScFV)を指す。一部の実施形態では、用語「抗体」は、必要に応じて、本明細書に開示のペプチドリンカーまたは別の好適な成分を介して、互いに連結されている1つより多くの一本鎖可変断片(scFv、またはScFV)を指す。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、単一特異性抗体または多特異性抗体、例えば、二特異性抗体もしくは三特異性抗体である。抗体の種は、ヒトであることもあり、または非ヒト、例えば、哺乳動物であることもある。
【0090】
本明細書で使用される場合、T細胞またはNK細胞などの、免疫細胞の「近傍」という言葉は、免疫細胞の周囲の任意の位置であって、その位置に存在する免疫細胞の標的(例えば、がん細胞)が、免疫細胞により、例えば、標的上に存在する別の分子への免疫細胞上に存在する分子の結合によって、認識され得、必要に応じて、免疫細胞により損傷または殺滅され得る、位置を指す。それ故、免疫細胞の近傍に持って行く行為は、本明細書では免疫細胞をエンゲージすると言われる。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一クローンにより、または単一抗体の軽鎖および重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞により産生された抗体を指す。モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法により、例えば、骨髄腫細胞と免疫脾細胞の融合体からハイブリッド抗体形成細胞を作製することにより、産生される。モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0092】
抗体構造に関して、免疫グロブリンは、ジスルフィド結合により相互接続されている重(H)鎖と軽(L)鎖を有する。ラムダ(λ)およびカッパ(κ)という、2つのタイプの軽鎖がある。抗体分子の機能活性を決める、5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEがある。各重鎖および軽鎖は、定常領域および可変領域を含有する(これらの領域は、「ドメイン」としても公知である)。共同して、重鎖および軽鎖可変領域は、抗原に特異的に結合する。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域により分断されている、「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域およびCDRの範囲は定義されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991を参照されたく、この参考文献は、これにより参照により本明細書に組み込まれる)。Kabatデータベースは、今はオンラインで維持されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存される。構成要素である軽鎖および重鎖の組み合わせられたフレームワーク領域である、抗体のフレームワーク領域は、主としてβシート立体構造を採り、CDRは、ループを形成し、このループがβシート構造を接続し、一部の場合にはβシート構造の一部を形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合性相互作用によりCDRを正しい配向で配置することに備える足場を形成するように作用する。
【0093】
CDRは、抗原のエピトープへの結合に主に関与する。各鎖のCDRは、典型的には、N末端から出発して逐次的に採番されてCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれ、そしてまた典型的には、特定のCDRが位置する鎖により識別される(CDHRと標識される重鎖領域、およびCDLRと標識される軽鎖領域)。したがって、CDHR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインからのCDR3であるのに対して、CDLR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。例えば、PSCA抗体は、PSCA関連抗原に特有の特異的なV領域およびV領域配列、ひいては特異的なCDR配列を有することになる。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。それは、抗体によって異なるCDRであるが、CDR内の限られた数のアミノ酸位置しか、抗原結合に直接関与しない。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。一態様では、抗体または抗原結合断片の「等価物」または「生物学的等価物」という用語は、ELISAまたは他の好適な方法により測定して、抗体または断片がそのエピトープタンパク質またはその断片に選択的に結合できることを意味する。生物学的に等価の抗体としては、これらに限定されないが、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、ペプチド、抗体断片、抗体バリアント、抗体誘導体および抗体模倣物が挙げられる。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合ドメイン」は、抗原標的に特異的に結合することができる任意のタンパク質またはポリペプチドドメイン、例えば抗体断片を指す。抗体断片の非限定的な例としては、一本鎖可変断片(scFVまたはScFV)、Fab、F(ab’)、Fab’、またはFvが挙げられる。
【0095】
本明細書で使用される場合、一本鎖可変断片は、本明細書では抗体の断片とも呼ばれ、免疫グロブリンの重鎖の可変領域(V)と軽鎖の可変領域(V)の融合タンパク質であり、これらの可変領域は、必要に応じて、約10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで接続されている。リンカーは、通常は、柔軟性のためにグリシンを多く含んでおり、可溶性のためにセリンもしくはトレオニンを多く含んでおり、VのN末端をVのC末端と接続することができ、またはその逆もまたしかりである。このタンパク質は、定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0096】
本明細書で使用される場合、断片結晶化可能(Fc)領域は、抗体を安定化させる抗体のテール領域であって、必要に応じて、免疫細胞上もしくは血小板上のFc受容体と相互作用する(例えば、それに結合する)、または補体タンパク質に結合する、領域を指す。
【0097】
明確な記述がなければ、および他の意図がある場合を除いて、本開示がポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは抗体に関する場合、そのようなポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは抗体の等価物または生物学的等価物が本開示の範囲内で意図されていると推察されたい。本明細書で使用される場合、用語「その生物学的等価物」は、参照タンパク質、抗体、ポリペプチドまたは核酸への言及が、わずかな相同性しか有さないがそれにもかかわらず所望の構造または機能性を維持するものを意図する場合、「その等価物」と同義語であるように意図されている。本明細書に別段の記述がない限り、本明細書において言及されるいずれのポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質もまた、その等価物を含むことが企図されている。例えば、等価物は、少なくとも約70%の相同性もしくは同一性、または少なくとも80%の相同性もしくは同一性および代替的に、または少なくとも約85%、または代替的に少なくとも約90%、または代替的に少なくとも約95%、または代替的に98%の相同性または同一性パーセントを意図し、参照タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と実質的に等価の生物活性を示す。あるいは、ポリヌクレオチドに言及する場合、その等価物は、ストリンジェントな条件下で参照ポリヌクレオチドまたはその補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドである。一部の実施形態では、抗体の「等価物」または「生物学的等価物」という用語は、そのエピトープタンパク質またはその断片に選択的に結合する抗体または断片の能力が、ELISAまたは他の好適な方法により測定されたとき、実質的に、例えば、少なくとも50%、もしくは少なくとも55%、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも65%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも75%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の、またはそれより高いレベルで、保持されることを意味する。生物学的に等価の抗体としては、これらに限定されないが、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、ペプチド、抗体断片、抗体バリアント、抗体誘導体および抗体模倣物が挙げられる。加えてまたは代替的に、等価物と参照抗体はCDRの同じセットを共有するが、他のアミノ酸は改変される。
【0098】
ポリペプチドまたはその等価物のカルボキシ末端(C末端)に、追加の50アミノ酸、または代替的に約40アミノ酸、または代替的に約30アミノ酸、または代替的に約20アミノ酸、または代替的に約10アミノ酸、または代替的に約5アミノ酸、または代替的に約4、もしくは3、もしくは2もしくは1アミノ酸が続き得る。加えてまたは代替的に、ポリペプチドまたはその等価物は、アミン末端(N末端)に、追加の50アミノ酸、または代替的に約40アミノ酸、または代替的に約30アミノ酸、または代替的に約20アミノ酸、または代替的に約10アミノ酸、または代替的に約5アミノ酸、または代替的に約4、もしくは3、もしくは2もしくは1アミノ酸をさらに含み得る。
【0099】
参照ポリペプチドの等価物は、本明細書に開示のCARなどの参照ポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド、または本明細書に開示のCARもしくはIL-15ドメインなどの参照ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの補体と高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを含むか、またはそれから本質的になるか、または代替的にそれからなり、高ストリンジェンシーの条件は、約55℃~約68℃のインキュベーション温度、約1×SSC~約0.1×SSCの緩衝液濃度、約55%~約75%のホルムアミド濃度、および約1×SSC、0.1×SSCまたは脱イオン水の洗浄溶液を含む。
【0100】
「断片」とは、インタクト完全長配列および構造の一部のみからなる分子を意図したものである。ポリペプチドの断片は、C末端欠失、N末端欠失、天然ポリペプチドの内部欠失、またはこれらの任意の組合せを含み得る。特定のタンパク質の活性断片は、一般に、完全長分子の連続する少なくとも約5~10アミノ酸残基、好ましくは、完全長分子の連続する少なくとも約15~25アミノ酸残基、最も好ましくは、完全長分子の連続する少なくとも約20~50もしくはそれより多くのアミノ酸残基、または5アミノ酸と完全長配列との間の任意の整数を、問題の断片が生物活性を実質的に保持することを条件に、含むことになる。
【0101】
用語「抗体バリアント」は、マウス以外の種において産生される抗体を含むことを意図する。それは、抗体またはその断片の線状ポリペプチド配列への翻訳後修飾を含有する抗体も含む。それは、完全ヒト抗体をさらに包含する。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「特異的結合」または「結合」は、抗体と抗原との間の少なくとも10-6Mの結合親和性での接触を意味する。ある特定の実施形態では、抗体は、少なくとも約10-7M、好ましくは、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、または少なくとも約10-12Mの親和性で結合する。
【0103】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、抗体分子またはT細胞受容体などの特定の液性または細胞性免疫の産物により特異的に結合され得る、化合物、組成物または物質を指す。抗原は、例えば、ハプテン、単純な中間代謝物、糖(例えば、オリゴ糖)、脂質およびホルモン、ならびに高分子、例えば、複合炭水化物(例えば、多糖)、リン脂質およびタンパク質を含む、任意のタイプの分子であり得る。抗原の一般的なカテゴリーは、これらに限定されないが、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原生動物抗原および他の寄生虫抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶反応に関与する抗原、毒素、ならびに他の種々の抗原を含む。
【0104】
CD19は、Bリンパ球上のB細胞抗原受容体複合体(BCR)の共受容体として機能する分子である。それは、下流のシグナル伝達経路の活性化の閾値、および抗原へのB細胞応答の誘発の閾値を低下させ、正常なB細胞分化、および抗原チャレンジに応答した増殖に必要とされる。例えば、de Rie et al., Cell Immunol. 1989 Feb;118(2):368-81;およびCarter and Fearon. Science. 1992 Apr 3;256(5053):105-7を参照されたい。B細胞悪性腫瘍の大多数、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、および慢性リンパ球性白血病(CLL)は、正常レベルから高レベルのCD19を発現する。一部の実施形態では、CD19は、ヒトCD19である。このタンパク質または基礎をなす遺伝子の非限定的な例示的配列は、Gene Cards ID:GC16P033267、HGNC:1633、NCBI Entrez Gene:930、Ensembl:ENSG00000177455、OMIM(登録商標):107265、またはUniProtKB/Swiss-Prot:P15391のもとで見つけることができ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
一部の実施形態では、CD19は、CD19アイソフォーム1もしくはCD19アイソフォーム2、または両方を指す。さらなる実施形態では、CD19アイソフォーム1は、
【化1】
【化2】
、もしくは配列番号82のaa 16~aa 556、もしくは配列番号82のaa 20~aa 556を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。さらなる実施形態では、CD19アイソフォーム2は、
【化3】
を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「短縮化」またはその文法的変化形は、ポリペプチドのアミノ酸配列または核酸のヌクレオチド配列の短縮を指す。タンパク質短縮化は、タンパク質をコードする核酸配列の短縮化の結果であることもあり、核酸配列を短縮せずに未成熟停止コドンを生じさせる置換もしくは他の突然変異の結果であることもあり、またはそれ自体が短縮化を引き起こさない置換もしくは他の突然変異によって異常なRNAプロセシングが生じるRNAの選択的スプライシングからの結果であることもある。一部の実施形態では、参照ポリペプチドの短縮化ポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物学的機能を実質的に保持する。他の実施形態では、参照ポリペプチドの短縮化ポリペプチドは、参照のものと比較して低下したまたは実質的に消失した生物学的機能を有する。加えてまたは代替的に、参照ポリペプチドの短縮化ポリペプチドは、参照の1つまたは複数のエピトープを保持する。
【0107】
一部の実施形態では、用語「短縮化CD19」は、CD19の非機能的断片を指す。非限定的な例は、CD19の細胞質ドメインの一部分または全体が短縮化され得るものである。したがって、短縮化CD19は、下流のシグナル伝達経路を活性化する能力、例えば、細胞質カルシウムの代謝を媒介する能力が低下している、または実質的に消滅している。CD19の細胞外ドメインを保持している間は、そのような短縮化CD19は、CD19の細胞外ドメインを特異的に認識しそれに結合する抗体またはその抗原結合断片によって、やはり検出され得る。さらなる実施形態では、CD19の膜貫通ドメインを保持している間は、短縮化CD19は、やはり、細胞膜上に、例えば細胞表面に、発現され得る。一部の実施形態では、短縮化CD19は、
【化4】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかもしくは配列番号26と同一である配列を有する短縮化CD19R(CD19tとも呼ばれる)のうちのいずれか1つもしくは複数を含むか、またはそれ(ら)から本質的になるか、またはなおさらにそれ(ら)からなる。一部の場合には、短縮化CD19tは、配列番号26と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0108】
本明細書で使用される場合、細胞に関して用語「自家の」は、単離され、同じ対象(レシピエントまたは宿主)に注入して戻される細胞を指す。「同種異系の」は、非自家細胞を指す。
【0109】
用語「キメラ抗原受容体」(CAR)は、本明細書で使用される場合、抗原に結合することができる細胞外ドメインと、細胞外ドメインが由来するポリペプチドとは異なるポリペプチドに由来する膜貫通ドメインと、少なくとも1つの細胞内ドメインとを含む、融合タンパク質を指す。「キメラ抗原受容体(CAR)」は、「キメラ受容体」、「Tボディ」、または「キメラ免疫受容体(CIR)」と呼ばれることもある。「抗原に結合することができる細胞外ドメイン」は、ある特定の抗原に結合することができる任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。「細胞内ドメイン」または「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、細胞における生物学的プロセスの活性化または阻害を引き起こすためのシグナルを伝達するドメインとして機能することが公知の任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。ある特定の実施形態では、細胞内ドメインは、主要シグナル伝達ドメインに加えて1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含み得るか、代替的にそれらから本質的になり得るか、またはなおさらにそれらを含み得る。「膜貫通ドメイン」は、細胞膜を貫通することが公知の、および細胞外ドメインとシグナル伝達ドメインとを連結するように機能することができる、任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。キメラ抗原受容体は、スペーサー、例えば、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間のリンカーとしての役割を果たす「ヒンジドメイン」を、必要に応じて含み得る。そのようなドメインの非限定的な例は、本明細書において提供され、例えば、
ヒンジドメイン:IgG1重鎖ヒンジコード配列:
CTCGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCG(配列番号84)である。
【0110】
追加の非限定的な例としては、当技術分野において公知のIgG4ヒンジ領域、IgDおよびCD8ドメインが挙げられる。
【0111】
膜貫通ドメイン:CD28膜貫通領域コード配列:
【化5】
【0112】
細胞内ドメイン:4-1BB共刺激シグナル伝達領域コード配列:
【化6】
【0113】
細胞内ドメイン:CD28共刺激シグナル伝達領域コード配列:
【化7】
【0114】
細胞内ドメイン:CD3ゼータシグナル伝達領域コード配列:
【化8】
【0115】
各例示的ドメイン成分のさらなる実施形態には、上記で開示された核酸配列によりコードされるタンパク質と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他のタンパク質が含まれる。さらに、そのようなドメインの非限定的な例は、本明細書において提供される。
【0116】
本明細書で使用される場合、用語「CD4膜貫通ドメイン」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるようなCD4膜貫通ドメイン配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。CD4膜貫通ドメインの配列例は、Parrish, Heather L et al. "A Transmembrane Domain GGxxG Motif in CD4 Contributes to Its Lck-Independent Function but Does Not Mediate CD4 Dimerization."PloS one vol. 10,7 e0132333. 6 Jul. 2015, doi:10.1371/journal.pone.0132333において提供されている。そのようなものの非限定的な例としては、ヒトCD4膜貫通ドメイン:
MALIVLGGVAGLLLFIGLGIFF(配列番号16)
が挙げられる。
【0117】
本明細書で使用される場合、用語「CD8αヒンジドメイン」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるようなCD8αヒンジドメイン配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。ヒト、マウスおよび他の種のCD8αヒンジドメインの配列例は、Pinto, R.D. et al. (2006) Vet. Immunol. Immunopathol. 110:169-177において提供されている。CD8αヒンジドメインに関連する配列は、Pinto, R.D. et al. (2006) Vet. Immunol. Immunopathol. 110:169-177において提供されている。そのようなものの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【0118】
ヒトCD8アルファヒンジドメイン:
PAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY(配列番号89);
【0119】
マウスCD8アルファヒンジドメイン:
KVNSTTTKPVLRTPSPVHPTGTSQPQRPEDCRPRGSVKGTGLDFACDIY(配列番号90);
【0120】
ネコCD8アルファヒンジドメイン:
PVKPTTTPAPRPPTQAPITTSQRVSLRPGTCQPSAGSTVEASGLDLSCDIY(配列番号91)。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「CD28共刺激シグナル伝達領域」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるCD28共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。配列例CD28共刺激シグナル伝達ドメインは、米国特許第5,686,281号;Geiger, T.L. et al., Blood 98: 2364-2371 (2001);Hombach, A. et al., J Immunol 167: 6123-6131 (2001);Maher, J. et al. Nat Biotechnol 20: 70-75 (2002);Haynes, N.M. et al., J Immunol 169: 5780-5786 (2002);Haynes, N.M. et al., Blood 100: 3155-3163 (2002)において提供されている。非限定的な例としては、下記のCD28配列:
【化9】
の残基114~220、もしくは配列番号15、またはこれらの各々の等価物が挙げられる。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「CD8α膜貫通ドメイン」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるようなCD8α膜貫通ドメイン配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。ヒトT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖(GenBank受託番号:NP_001759.3)のアミノ酸183~203位、またはマウスT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖(GenBank受託番号:NP_001074579.1)のアミノ酸197~217位、およびラットT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖(GenBank受託番号:NP_113726.1)のアミノ酸190~210位に関連する断片配列は、CD8α膜貫通ドメインの追加の配列例を提供する。掲載受託番号の各々に関連する配列が、以下のとおり提供される:
【0123】
ヒトCD8アルファ膜貫通ドメイン:IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT(配列番号17)、または配列番号18もしくは19。
【0124】
マウスCD8アルファ膜貫通ドメイン:IWAPLAGICVALLLSLIITLI(配列番号93)。
【0125】
ラットCD8アルファ膜貫通ドメイン:IWAPLAGICAVLLLSLVITLI(配列番号94)。
【0126】
本明細書で使用される場合、用語「CD28膜貫通ドメイン」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるようなCD28膜貫通ドメイン配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、または代替的に少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。GenBank受託番号:XM_006712862.2およびXM_009444056.1に関連する断片配列は、CD28膜貫通ドメインの追加の非限定的な配列例を提供する。一部の実施形態では、CARは、FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号95)もしくはその等価物を含むCD28膜貫通および細胞質ドメインを含むか、または代替的にそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。さらなる実施形態では、配列番号95の等価物は、配列番号95と比較して1つ、もしくは2つ、もしくは3つ、もしくは4つ、もしくは5つ、もしくは6つ、もしくは7つ、もしくは8つ、もしくは9つ、もしくは10、もしくは11、もしくは12、もしくは13、もしくは14、もしくは15、またはそれより多くの突然変異を含み得るが、それでもやはり、膜貫通ドメインおよび共刺激シグナル伝達領域として機能することができる。
【0127】
本明細書で使用される場合、用語「4-1BB共刺激シグナル伝達領域」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるような4-1BB共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。4-1BB共刺激シグナル伝達領域の非限定的な配列例、例えば、下記に提供される例示的配列は、米国特許出願公開第20130266551A1号(米国特許出願第13/826,258号として出願された)において提供されている:
【0128】
4-1BB共刺激シグナル伝達領域:
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号24)、または配列番号20。
【0129】
本明細書で使用される場合、用語「2B4共刺激シグナル伝達領域」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示される2B4共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。
2B4共刺激シグナル伝達領域:
【化10】
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「ICOS共刺激シグナル伝達領域」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるようなICOS共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。ICOS共刺激シグナル伝達領域の非限定的な配列例は、米国特許出願公開第2015/0017141A1号において提供されており、例示的なポリヌクレオチド配列が下記に提供される。
【0131】
ICOS共刺激シグナル伝達領域コード配列:
【化11】
【0132】
本明細書で使用される場合、用語「OX40共刺激シグナル伝達領域」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるようなOX40共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、または代替的に90%の配列同一性、または代替的に少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。OX40共刺激シグナル伝達領域の非限定的な配列例は、米国特許出願公開第2012/20148552A1号において開示されており、例示的な配列OX40共刺激シグナル伝達領域コード配列:
【化12】
およびその等価物を含む。
【0133】
本明細書で使用される場合、用語「DAP10共刺激シグナル伝達領域」または「DAP10共刺激領域」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるようなDAP10共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも約70%、または代替的に少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、または代替的に少なくとも約90%の配列同一性、または代替的に少なくとも約95%の配列同一性を共有する分子を指す。DAP10共刺激シグナル伝達領域の非限定的な配列例は、米国特許第9,587,020B2号において開示されており、例示的な配列:RPRRSPAQDGKVYINMPGRG(配列番号98)、またはその等価物を含む。
【0134】
本明細書で使用される場合、用語「DAP12共刺激シグナル伝達領域」または「DAP12共刺激領域」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、米国特許第9,587,020B2号において開示されているようなDAP12共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも約70%、または代替的に少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、または代替的に少なくとも約90%の配列同一性、または代替的に少なくとも約95%の配列同一性を共有する分子を指す。DAP12共刺激シグナル伝達領域の非限定的な配列例は、Uにおいて開示されており、例示的な配列:ESPYQELQGQRSDVYSDLNTQ(配列番号99)、またはその等価物を含む。
【0135】
本明細書で使用される場合、用語「CD3ゼータシグナル伝達ドメイン」は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および類似の生物学的機能を有する任意の他の分子であって、本明細書において示されるようなCD3ゼータシグナル伝達ドメイン配列と少なくとも70%、または代替的に少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する分子を指す。CD3ゼータシグナル伝達ドメインの非限定的な配列例は、米国特許出願第13/826,258号、同第15/327,794号において提供されており、米国特許第10,801,012号、例えば、
【化13】
を参照されたく、または例えば、米国特許第10,801,012B2号
【化14】
を参照されたく、または米国特許出願公開第2017/0209492A1号
【化15】
を参照されたく、または米国特許出願公開第2017/0209492A1号
【化16】
を参照されたい。
【0136】
CD3ゼータの代替シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含む。一次細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例としては、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」としても公知)、FcεRI、およびCD66dに由来するものが挙げられる。本発明において特に有用である一次細胞内シグナル伝達ドメインを含有する分子のさらなる例としては、DAP10、DAP12、およびCD32のものが挙げられる。DAP10共刺激シグナル伝達領域の非限定的な配列例は、米国特許出願公開第2017/0209492号において開示されている。
【0137】
本明細書で使用される場合、用語「自殺遺伝子」は、自殺遺伝子を発現する細胞にとって致死的である産物を(必要に応じて、抗体などの別の薬剤の存在に伴って)発現する任意の遺伝子を指す。細胞におけるそのような遺伝子の、単独での、または細胞に、例えばアポトーシスによって、自殺させる他の薬剤と一緒の、転写または発現、すなわち、その遺伝子産物の存在。それは、細胞を消失させることが可能な戦略、例えば、それが、その所望される機能、例えばがんの処置を果たした後にCARを発現する治療用細胞を提供する。さらなる実施形態では、自殺遺伝子産物は、HSV-TK(単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ)、シトシンデアミナーゼ、ニトロレダクターゼ、カルボキシエステラーゼ、チトクロームP450もしくはPNP(プリンヌクレオシドホスホリラーゼ)、短縮化EGFR(tEGFR)、または誘導性カスパーゼ(「iCasp」)のうちの1つまたは複数から選択される。なおさらなる実施形態では、例示的な自殺戦略には、チミジンキナーゼ/ガンシクロビル系、シトシンデアミナーゼ/5-フルオロシトシン系、ニトロレダクターゼ/CB1954系、カルボキシペプチダーゼG2/ナイトロジェンマスタード系、チトクロームP450/オキサザホスホリン系、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ/6-メチルプリンデオキシリボシド(PNP/MEP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ/インドール-3-酢酸系(HRP/IAA)、およびカルボキシエステラーゼ/イリノテカン(CE/イリノテカン)系、短縮化EGFR(tEGFR)、誘導性カスパーゼ(「iCasp」)、E.coli gpt遺伝子、E.coli Deo遺伝子、ならびにニトロレダクターゼが含まれる。さらなる詳細をKarjoo, Z. et al. 2016. Adv. Drug Deliv. Rev. 99 (Pt. A):123-128で参照されたい。
【0138】
細胞表面に発現されたタンパク質を、マーカーとして(例えば、精製または検出または追跡のために)、または本明細書に開示のCAR発現細胞の自殺スイッチを提供するために、使用することができる。そのようなタンパク質は、本明細書では、自殺遺伝子産物、もしくは検出可能なマーカー、またはその両方と呼ばれる。そのようなタンパク質の一部分、またはそのようなタンパク質の全細胞質領域は、通常は、タンパク質の天然の機能を低下またはさらには消滅させるために短縮化される。したがって、そのようなタンパク質は、本明細書では短縮化タンパク質マーカーとも呼ばれる。一部の実施形態では、CAR発現細胞の自殺スイッチとして使用される場合、短縮化タンパク質マーカーは、対象における正常細胞上またはCAR発現細胞に隣接する正常細胞上に発現されないかまたは実質的により低レベルで発現される。したがって、CAR発現細胞の(例えば、短縮化タンパク質マーカーを特異的に認識し、それに結合する抗体を投与することによる、または毒素を短縮化タンパク質マーカーに方向付ける部分にコンジュゲートされた毒素を投与することによる)除去時に、対象の正常細胞は、危険にさらされないことになる。したがって、一部の実施形態では、本明細書に開示の方法は、対象におけるCAR発現細胞を低減または消滅させる薬剤を対象に投与するステップをさらに含み得る。さらなる実施形態では、対象におけるCAR発現細胞を低減または消滅させる薬剤は、自殺遺伝子産物、例えばtEGFRまたはRQR8を特異的に認識し、それに結合する抗体もしくはその断片を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。加えてまたは代替的に、対象におけるCAR発現細胞を低減または消滅させる薬剤の投与は、本明細書に開示の細胞の投与から約1日、約3日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約3ヵ月、約4ヵ月、約5ヵ月、約6ヵ月、約1年、約1.5年、約2年、またはそれより長い期間の後である。
【0139】
本明細書で使用される場合、サイトカインは、免疫系の特定の細胞により分泌されるタンパク質、ペプチドまたは糖タンパク質、ならびに免疫、炎症および造血を媒介および調節するシグナル伝達分子の大きな群である。一部の実施形態では、それらは、約5kDa~約20kDaである。サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子を含むが、一般に、ホルモンも増殖因子も含まない。一部の実施形態では、本明細書で使用される場合のサイトカインは、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞、またはこれらの任意の組合せの、発生、分化、活性化または拡大のうちの1つまたは複数を促進する。
【0140】
本明細書で使用される場合、インターロイキン(IL)は、白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))により発現されることが最初に見られたサイトカインを指す。免疫系の機能は、大部分がインターロイキンに依存する。インターロイキンの大多数は、ヘルパーCD4 Tリンパ球により合成され、単球、マクロファージ、および内皮細胞によっても合成される。それらは、TおよびBリンパ球、NK細胞、NKT細胞、ならびに造血細胞の発生および分化を促進する。本明細書で使用される場合、インターロイキンは、細胞から分泌される可溶性サイトカイン、または細胞表面に発現される膜結合型(mb)サイトカインであり得る。サイトカインの可溶性形態および膜結合形態を、当業者は、例えば、膜貫通ドメイン(例えば、血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFRβ)膜貫通ドメイン)、もしくはシグナルペプチド、または膜貫通ドメインとサイトカインへのシグナルペプチドの両方を操作することを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる方法によって、変換することができる。
【0141】
本明細書で使用される場合、インターロイキン-15またはIL-15は、T細胞およびナチュラルキラー細胞活性化および増殖を調節する、サイトカイン、またはサイトカインをコードする遺伝子を指す。IL-15は、JAKキナーゼの活性化、ならびに転写活性化因子STAT3、STAT5およびSTAT6のリン酸化および活性化を誘導する。IL-15は、キナーゼSYK活性化をもたらす、サブユニットIL15RA、IL2RBおよびIL2RGで構成されているIL15受容体を介したシグナル伝達に恐らくよって、ファゴサイトーシスを刺激する。IL-15は、インターロイキン-2(IL-2)の共通の結合部位である造血性受容体サブユニットに結合することがわかっている。IL-15およびIL-2は、共通の受容体について競合するので、これら2分子は、互いの活性を負に調節する。CD8+メモリー細胞の数は、このサイトカインとIL-2とのバランスにより制御されることが示されている。IL-15は、アポトーシス阻害剤BCL2L1/BCL-x(L)の発現を、ことによるとSTAT6の転写活性化活性によって増加させ、ひいてはアポトーシスを防止し得る。
【0142】
一部の実施形態では、IL-15は、可溶性IL-15である。さらなる実施形態では、可溶性IL-15は、
【化17】
から選択されるアミノ酸配列、または
【化18】
のアミノ酸配列(これらの各々は、本明細書では野生型IL15と呼ばれ得る)、あるいはその等価物を含むか、あるいはそれから本質的になるか、あるいはなおさらにそれからなる。一部の実施形態では、IL15等価物は、野生型IL15と比較して少なくとも約10%、もしくは約20%、もしくは約30%、もしくは約40%、もしくは約50%、もしくは約60%、もしくは約70%、もしくは約80%、もしくは約90%、もしくは約95%、もしくは約100%、もしくは約1.5倍、もしくは約2倍、もしくは約3倍、もしくは約5倍、もしくは約10倍の、またはそれより高い、IL15RAへの結合親和性を有する。一部の実施形態では、IL-15等価物は、L45D、L45E、S51D、L52D、N72D、N72E、N72A、N72S、N72YおよびN72P(ここで、最初の文字は、元のアミノ酸残基を示し、最後の文字は、突然変異したアミノ酸残基を示し、中央の数字は、下記の配列におけるまたはそれにアラインされたアミノ酸残基番号を示す)から選択される1つまたは複数の突然変異を含むIL-15である:
【化19】
または配列番号43。
【0143】
一部の実施形態では、IL-15およびIL15受容体を含むか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらからなる可溶性複合体(SIL15C)が、本明細書ではサイトカインとして使用される。さらなる実施では、IL-15は、
【化20】
のアミノ酸配列、もしくは
【化21】
のアミノ酸配列、またはこれらの各々の等価物を含むか、それから本質的になるか、あるいはなおさらにそれからなる。
【0144】
さらなる実施形態では、IL15受容体は、IL15受容体サブユニットアルファ(IL15RA)もしくはその等価物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。加えてまたは代替的に、IL15受容体は、IL15受容体サブユニットベータ(IL15RB、すなわち、IL2受容体サブユニットベータ)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。一部の実施形態では、IL15RA等価物は、野生型IL15RAと比較して少なくとも約10%、もしくは約20%、もしくは約30%、もしくは約40%、もしくは約50%、もしくは約60%、もしくは約70%、もしくは約80%、もしくは約90%、もしくは約95%、もしくは約100%、もしくは約1.5倍、もしくは約2倍、もしくは約3倍、もしくは約5倍、もしくは約10倍の、またはそれより高い、IL15への結合親和性を有する。結合親和性を、本実施例において、およびWei et al, J. Immunol, vol.167(1), p:277-282, 2001などの、当技術分野において提供されている方法により、決定することができる。一部の実施では、IL15RA等価物は、IL15RAのスシドメインを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。さらなる実施では、IL15RA等価物は、IL15RAのスシドメインを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる、野生型IL15RAの断片である。一部の実施形態では、IL15受容体は、ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIR(配列番号80)もしくはその等価物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。
【0145】
さらなる実施では、SIL15Cは、
【化22】
のアミノ酸配列もしくはその等価物、およびITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIR(配列番号80)のアミノ酸配列もしくはその等価物を含むか、またはそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらからなる。一部の実施形態では、IL15およびIL15受容体は、ペプチドリンカーにより連結されている。一部の実施形態では、リンカーは、SGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQ(配列番号71)、もしくはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号37)、またはこれらの各々の等価物を含む。一部の実施形態では、SIL15Cは、ALT-803(IL15N72D:IL15RαSu/IgG1 Fc複合体)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。ALT-803は、IL-15突然変異体(IL-15N72D)と二量体IL-15受容体αスシドメイン-IgG1 Fc融合タンパク質とを含むか、またはそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらからなる、IL-15スーパーアゴニスト複合体IL-15N72D:IL-15RαSu/Fcである。
【0146】
本明細書で使用される場合、IL15RAスシドメインは、CPXPXSVEHADIXVKSYSLXSRERYXCNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNXAXWTTPSLKC(ここで、Xは、PまたはAであり、Xは、MまたはVであり、Xは、W、RまたはQであり、Xは、YまたはHであり、Xは、IまたはVであり、Xは、VまたはAであり、Xは、VまたはAである)(配列番号105)のコンセンサス配列を指す。
【0147】
本明細書で使用される場合、用語「IL15RA」、「IL 15 RA」、「IL-15 RA」、および「IL15受容体サブユニットアルファ」は、高い親和性でインターロイキン15(IL15)に特異的に結合し、IL15RA遺伝子またはその断片によりコードされる、サイトカイン受容体を指すために同義で使用される。IL15RAは、細胞の1つのサブセットからのIL15受容体(IL15R)が、隣接IL2RG発現細胞にIL15を提示した場合、シスとトランスの両方でシグナル伝達することができる。このタンパク質もしくは基礎をなす遺伝子の非限定的な例示的配列またはその機能は、Gene Cards ID:GC10M005943、HGNC:5978、Entrez Gene:3601、Ensembl:ENSG00000134470、OMIM:601070、またはUniProtKB:Q13261のもとで見つけることができ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施では、IL15RAは、ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIR(配列番号80)のアミノ酸配列を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。
【0148】
本明細書で使用される場合、IL2RBおよびIL15RBは、IL15による好中球ファゴサイトーシスの刺激に関与する、IL2のおよびIL15RAに関連する受容体を指すために、同義で使用される。例えば、Ratthe et al. J. Leukoc. Biol. 76:162-168(2004)を参照されたい。このタンパク質もしくは基礎をなす遺伝子の非限定的な例示的配列またはその機能は、Gene Cards ID:GC22M037125、HGNC:6009、Entrez Gene:3560、Ensembl:ENSG00000100385、OMIM:146710、またはUniProtKB:P14784のもとで見つけることができ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0149】
他の実施形態では、IL-15は、膜結合型IL-15(mbIL-15)、例えば、ペプチドリンカーまたは1つもしくは複数のランダムなアミノ酸残基を必要に応じてさらに含む、膜貫通ドメインとコンジュゲートされた、したがって細胞膜上に結合された、可溶性IL-15である。さらなる実施形態では、mbIL-15は、PDGFRβ膜貫通ドメインまたはその等価物とコンジュゲートされたIL15である。
【0150】
シグナルペプチドは、本明細書で使用される場合、___(シグナル配列、標的化シグナル、局在化シグナル、局在化配列、輸送ペプチド、リーダー配列またはリーダーペプチドと呼ばれることもある)を指し、分泌経路へと運命付けられている新たに合成されるタンパク質の大多数のN末端に存在する短いペプチド(通常は、16~30アミノ酸長)である。一実施形態では、シグナルペプチドは、分泌シグナルである。
【0151】
一部の実施形態では、シグナルペプチドは、MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号31)、もしくはMWLQSLLLLGTVACSIS(配列番号106)、もしくはMRISKPHLRSISIQCYLCLLLNSHFLTEA(配列番号107)、もしくはMRSSPGNMERIVICLMVIFLGTLV(配列番号108)、もしくはMGWSSIILFLVATATGVH(配列番号30)、もしくはMLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号36)、もしくはこれらの各々の等価物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。一実施形態では、シグナルペプチドは、MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号31)、もしくはMWLQSLLLLGTVACSIS(配列番号106)、もしくはMRISKPHLRSISIQCYLCLLLNSHFLTEA(配列番号107)、もしくはMRSSPGNMERIVICLMVIFLGTLV(配列番号108)、もしくはこれらの各々の等価物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。別の実施形態では、シグナルペプチドは、MGWSSIILFLVATATGVH(配列番号30)、もしくはMLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号36)、もしくはこれらの各々の等価物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。一実施形態では、シグナルペプチドは、分泌シグナルである。
【0152】
分泌シグナルは、サイトゾルから分泌経路へのタンパク質の搬出輸送を可能にする分泌シグナルペプチドを表す。タンパク質は、異なる分泌成功レベルを示すことがあり、多くの場合、ある特定のシグナルペプチドは、特定のタンパク質とパートナーになったとき、より低いまたはより高いレベルを生じさせ得る。真核生物の場合、シグナルペプチドは、真核細胞のサイトゾル中のシグナル認識粒子(SRP)により認識されるアミノ酸の疎水性ストリングである。シグナルペプチドがmRNA-リボソーム複合体から産生された後、SRPは、ペプチドに結合し、タンパク質翻訳を停止させる。次いで、SRPは、mRNA/リボソーム複合体を粗面小胞体に往復輸送し、そこでタンパク質は小胞体の内腔に移動される。次いで、シグナルペプチドは、小胞体内でタンパク質から切断されて、可溶性または膜タグ付き(膜貫通領域も存在する場合)タンパク質が生成される。これらは、当技術分野において公知であり、販売会社、例えばOxford Genetics、から市販されている。
【0153】
本明細書で使用される場合、「リボソームスキップ配列」は、リボソームが翻訳中に挿入される新たなアミノ酸分子と共有結合によって連結するのを防止する配列を指す。リボソームスキッピングを、切断可能なペプチドの導入により引き起こして、リボソームにペプチドを作製できなくさせることにより複数のペプチドを形成することができる。非限定的な例としては、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR(配列番号27)と少なくとも95%同一であるかまたは配列番号27と同一であるポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載されるCARまたはペプチドにおいて有用な他のリボソームスキップ配列には、EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号46)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号46と同一である配列を有するT2At、またはGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号47)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号47と同一である配列を有するP2Aが含まれる。一部の場合には、リボソームスキップ配列は、配列番号46または47と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0154】
本明細書で使用される場合、切断可能なリンカーとも呼ばれる「切断可能なペプチド」は、例えば酵素により、切断され得るペプチドを意味する。そのような切断可能なペプチドを含む1つの翻訳ポリペプチドは、2つの最終産物を産生することができ、それ故、それによって、1つのオープンリーディングフレームからの1つより多くのポリペプチドの発現が可能になる。切断可能なペプチドの一例は、自己切断ペプチド、例えば、2A自己切断ペプチドである。2A自己切断ペプチドは、細胞内で組換えタンパク質の切断を誘導することができる、18~22 aa長ペプチドの1クラスである。一部の実施形態では、2A自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、F2AおよびBmCPV2Aから選択される。例えば、Wang Y, et al. 2A self-cleaving peptide-based multi-gene expression system in the silkworm Bombyx mori. Sci Rep. 2015;5:16273. Published 2015 Nov 5を参照されたい。
【0155】
本明細書で使用される場合、用語「T2A」および「2Aペプチド」は、任意の2Aペプチドもしくはその断片を指すために、任意の2A様ペプチドもしくはその断片を指すために、またはコンセンサスポリペプチドモチーフD-V/I-E-X-N-P-G-P(ここで、Xは、自己切断することになると一般に考えられる任意のアミノ酸を指す)(配列番号109)を含有する比較的短いペプチド配列(起源のウイルスに依存しておよそ20アミノ酸長)の必要アミノ酸を含む人工ペプチドを指すために、同義で使用される。追加の例は、本明細書において提供され、参照により組み込まれる。
【0156】
本明細書で使用される場合、「リンカー配列」、「リンカーペプチド」、および「柔軟なリンカー」は、1~10、または代替的に~約8、または代替的~約6、または代替的に~約5、または代替的に約4、または代替的に約3、または代替的に約2回反復され得る、1~10、または代替的に8アミノ酸、または代替的に6アミノ酸、または代替的に5アミノ酸を含む、任意のアミノ酸配列に関して、同義で使用される。例えば、リンカーは、3回反復されるペンタペプチドからなる15以下のアミノ酸残基を含み得る。一実施形態では、リンカー配列は、gly-gly-gly-gly-ser(配列番号39)の3コピーを含む、(グリシンセリン)(配列番号37)の柔軟なポリペプチドリンカーである。一部の実施形態では、リンカー配列は、(G4S)(配列番号110)(ここで、nは、1、または2、または3、または4、または5、または6、または7、または8、または9、または10、または11、または12、または13、または14、または15である)である。一部の実施形態では、リンカーは、SGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQ(配列番号71)、またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号37)、またはこれらの各々の等価物を含む。
【0157】
用語「内部リボソーム侵入部位」または「IRES」は、本明細書で使用される場合、リボソーム結合およびmRNA翻訳を直接促進し、それによって、cap非依存様式での翻訳の開始を可能にする、ポリヌクレオチドを同義で指す。一部の実施形態では、IRESは、メッセンジャーRNA(mRNA)上のRNA配列を指す。加えてまたは代替的に、IRESはまた、IRES RNA配列に対して相補的、またはリバース、または相補的でかつリバースの、ポリヌクレオチド配列(例えば、RNA配列、DNA配列、またはこれらのハイブリッド)を指す。IRESの非限定的な例は、Hellen CU and Sarnow P. Internal ribosome entry sites in eukaryotic mRNA molecules. Genes Dev. 2001 Jul 1;15(13):1593-612において見つけることができる。
【0158】
本明細書で使用される場合、用語「標識」または検出可能な標識は、「標識された」組成物を生成するために、検出すべき組成物に直接または間接的にコンジュゲートされる、直接または間接的に検出可能な化合物または組成物、例えば、N末端ヒスチジンタグ(N-His)、磁気的に活性な同位元素、例えば、115Sn、117Snおよび119Sn、非放射性同位元素、例えば、13Cおよび15N、ポリヌクレオチドまたはタンパク質、例えば抗体を表す。この用語は、挿入された配列の発現時にシグナルを提供することになるポリヌクレオチド、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)などにコンジュゲートされた配列も含む。標識は、それ自体が検出可能であり得(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合には、検出可能である基質化合物または組成物の化学的変更を触媒し得る。標識は、小規模検出に好適であり得、またはハイスループットスクリーニングに、より好適であり得る。しかるが故に、好適な標識には、磁気的に活性な同位元素、非放射性同位元素、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、色素、およびタンパク質が挙げられるが、これらに限定されず、前記タンパク質には酵素が含まれる。標識を簡単に検出することができ、またはそれを定量化することができる。簡単に検出される応答は、存在が単に確認される応答を一般に含むが、定量化される応答は、強度、偏光または他の特性などの、定量化可能な(例えば、数字として報告可能な)値を有する応答を一般に含む。発光または蛍光アッセイにおいて、検出可能な応答は、結合に実際に関与するアッセイ成分と会合している発光団もしくは発蛍光団を使用して直接生成され得るか、または別の(例えば、レポーターもしくは指標)成分と会合している発光団もしくは発蛍光団を使用して間接的に生成され得る。シグナルを生じさせる発光標識の例としては、これらに限定されないが、生物発光および化学発光が挙げられる。検出可能な発光応答は、一般に、発光シグナルの変化または発生を含む。アッセイ成分を発光標識するために好適な方法および発光団は、当技術分野において公知であり、例えば、Haugland, Richard P. (1996) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (6th ed)に記載されている。発光プローブの例としては、これらに限定されないが、エクオリンおよびルシフェラーゼが挙げられる。
【0159】
「検出可能な標識」、「標識」、「検出可能なマーカー」または「マーカー」は、同義で使用され、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、色素、およびタンパク質を含むがこれらに限定されず、前記タンパク質には酵素が含まれる。検出可能な標識を、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体または組成物に結合させることもできる。
【0160】
好適な蛍光標識の例としては、これらに限定されないが、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、ピレン、マラカイト(Malacite)グリーン、スチルベン、Lucifer Yellow、Cascade Blue(商標)、およびTexas Redが挙げられる。他の好適な光学色素は、Haugland, Richard P. (1996) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (6th ed.)に記載されている。
【0161】
一部の実施形態では、蛍光標識、例えば、細胞表面マーカーは、細胞もしくは組織内にまたはその表面に存在する細胞成分への共有結合を助長するように官能化される。好適な官能基としては、イソチオシアン酸基、アミノ基、ハロアセチル基、マレイミド、スクシンイミジルエステル、およびハロゲン化スルホニルが挙げられるがこれらに限定されず、これらの全てが、蛍光標識を第2の分子に結合させるために使用され得る。蛍光標識の官能基の選択は、リンカー、薬剤、マーカーまたは第2の標識剤のいずれかへの結合部位に依存することになる。
【0162】
本明細書で使用される場合、精製標識またはマーカーは、標識がコンジュゲートされる分子または成分の精製に使用され得る標識、例えば、エピトープタグ(Mycタグ、ヒトインフルエンザ赤血球凝集素(HA)タグ、FLAGタグを含むが、これらに限定されない)、親和性タグ(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ポリ-ヒスチジン(His)タグ、カルモジュリン結合タンパク質(CBP)、もしくはマルトース結合タンパク質(MBP))、または蛍光タグを指す。一態様では、短縮化CD19およびEGFRがマーカーとして有用である。
【0163】
本明細書で使用される場合、参照配列内の同定位置に「対応する」目的の配列内のアミノ酸(aa)またはヌクレオチド(nt)残基位置は、その残基位置が、目的の配列と参照配列との配列アラインメントにおいてその同定位置にアラインされることを指す。Clustal OmegaおよびBLASTなどの、様々なプログラムが、そのような配列アラインメントの実行に使用可能である。
【0164】
本明細書で使用される場合、用語「精製マーカー」は、精製または同定に有用な少なくとも1つのマーカーを指す。このマーカーの非網羅的リストは、His、lacZ、GST、マルトース結合タンパク質、NusA、BCCP、c-myc、CaM、FLAG、GFP、YFP、チェリー、チオレドキシン、ポリ(NANP)、V5、Snap、HA、キチン結合タンパク質、Softag 1、Softag 3、Strep、またはS-プロテインを含む。好適な直接または間接的蛍光マーカーは、FLAG、GFP、YFP、RFP、dTomato、チェリー、Cy3、Cy 5、Cy 5.5、Cy 7、DNP、AMCA、ビオチン、ジゴキシゲニン、Tamra、Texas Red、ローダミン、Alexa fluors、FITC、TRITCもしくは任意の他の蛍光色素、またはハプテンを含む。
【0165】
本明細書で使用される場合、用語「組換えタンパク質」は、組換えDNA技法によって産生されるポリペプチドを指し、組換え技法では、一般に、ポリペプチドをコードするDNAが好適な発現ベクターに挿入され、そしてまたそのベクターが使用されて、宿主細胞が異種タンパク質を産生するように形質転換される。
【0166】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、プラスミド、ウイルス、コスミド、ファージ、BAC、YACなどを含むがこれらに限定されない、異なる宿主間の移行用に設計された核酸構築物を指す。プラスミドの非限定的な例としては、RD114、FD114-TRおよびVSVGが挙げられる。一部の実施形態では、プラスミドベクターは、市販のベクターから調製され得る。他の実施形態では、ウイルスベクターは、当技術分野において公知の技法に従ってバキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、AAVなどから産生され得る。一実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0167】
「ウイルスベクター」は、in vivo、ex vivoまたはin vitroのいずれかで宿主に送達されることになるポリヌクレオチドを含む組換え産生ウイルスまたはウイルス粒子と定義される。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクターなどが挙げられる。アルファウイルスベクター、例えば、セムリキ森林ウイルスに基づくベクターおよびシンドビスウイルスに基づくベクターは、遺伝子療法および免疫療法における使用のためにも開発されている。Schlesinger and Dubensky (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 5:434-439およびYing, et al. (1999) Nat. Med. 5(7):823-827を参照されたい。
【0168】
遺伝子移入がレンチウイルスベクターにより媒介される態様では、ベクター構築物は、レンチウイルスゲノムまたはその一部と治療用遺伝子とを含むポリヌクレオチドを指す。本明細書で使用される場合、「レンチウイルス媒介遺伝子移入」または「レンチウイルス形質導入」は、同じ意味を有し、細胞に進入してそのゲノムを宿主細胞ゲノムに組み込むウイルスによって遺伝子または核酸配列が宿主細胞に安定的に移入されるプロセスを指す。ウイルスは、その通常の感染機序によって宿主細胞に進入し得るか、またはそれが異なる宿主細胞表面受容体もしくはリガンドに結合して細胞に進入するように改変され得る。レトロウイルスは、RNAの形態でそれらの遺伝情報を伝えるが、ウイルスが細胞に感染すると、そのRNAが逆転写されてDNA形態になり、このDNA形態が感染細胞のゲノムDNAに組み込まれる。組み込まれたDNA形態は、プロウイルスと呼ばれる。本明細書で使用される場合、レンチウイルスベクターは、ウイルスまたはウイルス様進入機序によって細胞に外因性核酸を導入することができるウイルス粒子を指す。「レンチウイルスベクター」は、非分裂細胞への形質導入において他のレトロウイルスベクターと比較してある特定の利点を有する、当技術分野において周知のレトロウイルスベクターの一種である。Trono D. (2002) Lentiviral vectors, New York: Spring-Verlag Berlin Heidelbergを参照されたい。
【0169】
本開示のレンチウイルスベクターは、オンコレトロウイルス(MLVを含有するレトロウイルスの亜群)およびレンチウイルス(HIVを含有するレトロウイルスの亜群)に基づくか、またはこれらに由来する。例としては、ASLV、SNVおよびRSVが挙げられ、これらの全てが、レンチウイルスベクター粒子産生系のパッケージングおよびベクター成分に分割されている。本開示によるレンチウイルスベクター粒子は、特定のレトロウイルスの遺伝学的にまたは別様に(例えば、パッケージング細胞系の特異的選択により)変更されたバージョンに基づき得る。
【0170】
本開示によるベクター粒子が特定のレトロウイルス「に基づく」ことは、ベクターがその特定のレトロウイルスに由来することを意味する。ベクター粒子のゲノムは、そのレトロウイルスから成分を骨格として含む。ベクター粒子は、逆転写および組込み系を含む、RNAゲノムと適合性の必須ベクター成分を含有する。通常、これらは、特定のレトロウイルスに由来するgagおよびpolタンパク質を含むことになる。したがって、ベクター粒子の構造成分の大多数は、通常はそのレトロウイルスに由来することになるが、それらは、所望される有用な特性を提供するために遺伝学的にまたは別様に変更されていることがある。しかし、ある特定の構造成分、特にenvタンパク質は、異なるウイルスから生じ得る。感染または形質導入されるベクター宿主域および細胞型を、ベクター粒子産生系において異なるenv遺伝子を使用することにより変更して、異なる特異性をベクター粒子に与えることができる。
【0171】
用語「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」は、本明細書で使用される場合、この名称に関連するウイルスの綱のメンバーであって、Parvoviridae科、dependoparvovirus属に属するメンバーを指す。このウイルスの複数の血清型は、遺伝子送達に好適であることが公知であり、あらゆる公知血清型が様々な組織型からの細胞に感染し得る。連番が付けられた少なくとも11のAAV血清型が、当技術分野において公知である。本明細書に開示される方法において有用な非限定的な例示的血清型は、11の血清型のいずれか、例えば、AAV2、AAV8、AAV9、またはバリアントもしくは合成血清型、例えば、AAV-DJおよびAAV PHP.Bを含む。AAV粒子は、VP1、VP2およびVP3という3つの主要ウイルスタンパク質を含むか、代替的にそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらからなる。一実施形態では、AAVは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV PHP.B、またはAAV rh74のものを指す。これらのベクターは、市販されているか、または特許もしくは技術文献に記載されている。
【0172】
用語「形質導入する」または「形質導入」は、この用語がキメラ抗原受容体細胞の産生に適用される場合、外来ヌクレオチド配列が細胞に導入されるプロセスを指す。一部の実施形態では、この形質導入は、ベクターによって行われる。
【0173】
本明細書で使用される場合、細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。さらなる実施形態では、細胞は、免疫細胞である。
【0174】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は、例えば、骨髄において産生される造血幹細胞(HSC)に由来し得る白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte)、例えば、顆粒球(好中球、好酸球および好塩基球)、単球、およびリンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびNKT細胞));リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびNKT細胞);および骨髄由来の細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)を含む。一部の実施形態では、免疫細胞は、次のうちの1つまたは複数に由来する:前駆細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞由来の細胞、胚性生殖細胞、胚性生殖細胞由来の細胞、幹細胞、幹細胞由来の細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSc)、造血幹細胞(HSC)、または不死化細胞。一部の実施形態では、HSCは、対象の臍帯血、対象の末梢血、または対象の骨髄に由来する。
【0175】
「宿主細胞」は、特定の対象細胞ばかりでなく、そのような細胞の子孫または潜在的子孫も指す。突然変異または環境の影響のどちらかに起因して、ある特定の改変が後続世代において起こることがあるので、そのような子孫は、実際には親細胞と同一でないことがあるが、それでもやはり、本明細書で使用される場合にはこの用語の範囲内に含まれる。非限定的な例としては、293、293T細胞および免疫細胞が挙げられる。
【0176】
細胞の「濃縮集団」は、ある特定の定義された特徴を有する細胞の実質的に均一な集団を表す。これらの細胞は、定義された特徴が70%より高度に、または代替的に75%より高度に、または代替的に80%より高度に、または代替的に85%より高度に、または代替的に90%より高度に、または代替的に95%より高度に、または代替的に98%より高度に同一である。
【0177】
用語「繁殖」は、細胞または細胞の集団を成長させることを意味する。用語「成長させること」はまた、支持培地、栄養素、増殖因子、支持細胞、または所望の数の細胞または細胞型を得るために必要な任意の化合物または生体化合物の存在下での、細胞の増殖を指す。
【0178】
用語「培養すること」は、様々な種類の培地上または中での細胞または生物のin vitroまたはex vivoでの繁殖を指す。培養で成長した細胞の後代が、親細胞と完全に同一(すなわち、形態学的に、遺伝学的に、または表現型的に)でないことがあることは、理解される。
【0179】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞」は、胸腺において成熟するリンパ球の一種を指す。T細胞は、細胞性免疫において重要な役割を果たし、細胞表面のT細胞受容体の存在によりB細胞などの他のリンパ球と区別される。T細胞は、単離されるか、または市販の供給源から得られるか、どちらかであり得る。「T細胞」は、ヘルパーT細胞(CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞(Treg)およびガンマ-デルタT細胞をはじめとする、CD3を発現するあらゆる種類の免疫細胞を含む。「細胞傷害性細胞」は、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および好中球を含み、これらの細胞は、細胞傷害性応答を媒介することができる。市販のT細胞系の非限定的な例としては、細胞系BCL2(AAA)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2902(商標))、BCL2(S70A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2900(商標))、BCL2(S87A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2901(商標))、BCL2 Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2899(商標))、Neo Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2898(商標))、TALL-104細胞傷害性ヒトT細胞系(ATCC # CRL-11386)が挙げられる。さらなる例としては、これらに限定されないが、成熟T細胞系、例えば、Deglis、EBT-8、HPB-MLp-W、HUT 78、HUT 102、Karpas 384、Ki 225、My-La、Se-Ax、SKW-3、SMZ-1およびT34など;ならびに未熟T細胞系、例えば、ALL-SIL、Be13、CCRF-CEM、CML-T1、DND-41、DU.528、EU-9、HD-Mar、HPB-ALL、H-SB2、HT-1、JK-T1、Jurkat、Karpas 45、KE-37、KOPT-K1、K-T1、L-KAW、Loucy、MAT、MOLT-1、MOLT 3、MOLT-4、MOLT 13、MOLT-16、MT-1、MT-ALL、P12/Ichikawa、Peer、PER0117、PER-255、PF-382、PFI-285、RPMI-8402、ST-4、SUP-T1~T14、TALL-1、TALL-101、TALL-103/2、TALL-104、TALL-105、TALL-106、TALL-107、TALL-197、TK-6、TLBR-1、-2、-3、および-4、CCRF-HSB-2(CCL-120.1)、J.RT3-T3.5(ATCC TIB-153)、J45.01(ATCC CRL-1990)、J.CaM1.6(ATCC CRL-2063)、RS4;11(ATCC CRL-1873)、CCRF-CEM(ATCC CRM-CCL-119);ならびに皮膚T細胞リンパ腫系、例えば、HuT78(ATCC CRM-TIB-161)、MJ[G11](ATCC CRL-8294)、HuT102(ATCC TIB-162)が挙げられる。REH、NALL-1、KM-3、L92-221を含むがこれらに限定されない、ヌル白血病細胞系は、免疫細胞の別の市販の供給源であり、他の白血病およびリンパ腫、例えば、K562赤白血病、THP-1単球性白血病、U937リンパ腫、HEL赤白血病、HL60白血病、HMC-1白血病、KG-1白血病、U266骨髄腫に由来する細胞系も同様である。そのような市販の細胞系の非限定的な供給源としては、American Type Culture Collection、またはATCC、(http://www.atcc.org/)、およびGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(https://www.dsmz.de/)が挙げられる。
【0180】
本明細書で使用される場合、ナチュラルキラー細胞としても公知の、用語「NK細胞」は、骨髄で発生し、自然免疫系において極めて重要な役割を果たす、リンパ球の一種を指す。NK細胞は、細胞表面に抗体および主要組織適合遺伝子複合体が非存在の場合であっても、ウイルス感染細胞、腫瘍細胞または他のストレスを受けている細胞に対して迅速に免疫応答する。NK細胞は、単離されるか、または市販の供給源から得られるか、どちらかであり得る。市販のNK細胞系の非限定的な例としては、細胞系NK-92(ATCC(登録商標)CRL-2407(商標))、NK-92MI(ATCC(登録商標)CRL-2408(商標))が挙げられる。さらなる例としては、これらに限定されないが、NK細胞系HANK1、KHYG-1、NKL、NK-YS、NOI-90、およびYTが挙げられる。そのような市販の細胞系の非限定的な供給源としては、American Type Culture Collection、またはATCC、(http://www.atcc.org/)、およびGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(https://www.dsmz.de/)が挙げられる。
【0181】
本明細書で使用される場合、用語「B細胞」は、適応免疫系の液性免疫におけるリンパ球の一種を指す。B細胞は、主に、抗体を作るように、抗原提示細胞としての役割を果たすように、サイトカインを放出するように、および抗原相互作用による活性化後にメモリーB細胞を生じさせるように機能する。B細胞は、細胞表面のB細胞受容体の存在により、他のリンパ球、例えばT細胞と区別される。B細胞は、単離されるか、または市販の供給源から得られるか、どちらかであり得る。市販のB細胞系の非限定的な例としては、細胞系AHH-1(ATCC(登録商標)CRL-8146(商標))、BC-1(ATCC(登録商標)CRL-2230(商標))、BC-2(ATCC(登録商標)CRL-2231(商標))、BC-3(ATCC(登録商標)CRL-2277(商標))、CA46(ATCC(登録商標)CRL-1648(商標))、DG-75[D.G.-75](ATCC(登録商標)CRL-2625(商標))、DS-1(ATCC(登録商標)CRL-11102(商標))、EB-3[EB3](ATCC(登録商標)CCL-85(商標))、Z-138(ATCC #CRL-3001)、DB(ATCC CRL-2289)、Toledo(ATCC CRL-2631)、Pfiffer(ATCC CRL-2632)、SR(ATCC CRL-2262)、JM-1(ATCC CRL-10421)、NFS-5 C-1(ATCC CRL-1693);NFS-70 C10(ATCC CRL-1694)、NFS-25 C-3(ATCC CRL-1695)、およびSUP-B15(ATCC CRL-1929)が挙げられる。さらなる例としては、これらに限定されないが、未分化および大細胞リンパ腫に由来する細胞系、例えば、DEL、DL-40、FE-PD、JB6、Karpas 299、Ki-JK、Mac-2A Ply1、SR-786、SU-DHL-1、-2、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、および-16、DOHH-2、NU-DHL-1、U-937、Granda 519、USC-DHL-1、RL;ホジキンリンパ腫に由来する細胞系、例えば、DEV、HD-70、HDLM-2、HD-MyZ、HKB-1、KM-H2、L 428、L 540、L1236、SBH-1、SUP-HD1、SU/RH-HD-1が挙げられる。そのような市販の細胞系の非限定的な供給源としては、American Type Culture Collection、またはATCC、(http://www.atcc.org/)、およびGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(https://www.dsmz.de/)が挙げられる。
【0182】
用語「幹細胞」は、未分化状態または部分的に分化した状態にある細胞であって、自己複製能力、もしくは分化した子孫を生成する能力、または両方を有する細胞を指す。自己複製は、幹細胞の、その発生能(すなわち、全能性、多能性、複能性など)を維持しながら、増殖してより多くの当該幹細胞を生じさせる、能力と定義される。用語「体性幹細胞」は、胎生、幼若および成体組織を含む、非胚組織に由来する任意の幹細胞を指すために本明細書では使用される。天然体性幹細胞は、血液、骨髄、脳、嗅上皮、皮膚、膵臓、骨格筋、および心筋をはじめとする、広範な成体組織から単離されている。例示的な天然に存在する体性幹細胞としては、これらに限定されないが、間葉系幹細胞(MSC)および神経系または神経幹細胞(NSC)が挙げられる。一部の実施形態では、幹または前駆細胞は、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。一部の実施形態では、幹または前駆細胞は、造血幹細胞(HSC)である。本明細書で使用される場合、「胚性幹細胞」は、典型的には妊娠おおよそ10~12週より前だが必ずしもそうとは限らない妊娠期間中の任意の時点で採取された前胚組織(例えば、胚盤胞など)、胚組織、または胎生組織を含む、受精後しかし妊娠期間終了前に形成された組織に由来する幹細胞を指す。最も高頻度に、胚性幹細胞は、初期胚または胚盤胞に由来する多能性細胞である。胚性幹細胞を、ヒトの組織を含むがこれに限定されない好適な組織から、または樹立胚細胞系から、直接得ることができる。「胚様幹細胞」は、胚性幹細胞の全ての特徴ではないが1つまたは複数の特徴を共有する細胞を指す。
【0183】
「分化」は、特殊化されていない細胞が、特殊化された細胞、例えば心臓、肝臓、免疫または筋肉細胞、の特徴を獲得するプロセスを記載する。「分化誘導」は、分化を特定の細胞型に誘導するように幹細胞培養条件をマニピュレートすることを指す。「脱分化した」は、細胞の系譜の中のあまりコミットメントされていないポジションに戻る細胞を定義する。本明細書で使用される場合、用語「分化するまたは分化した」は、細胞の系譜の中のよりコミットメントされた(「分化した」)ポジションを取る細胞を定義する。
【0184】
本明細書で使用される場合、用語「分化するまたは分化した」は、細胞の系列の中のよりコミットメントされた(「分化した」)ポジションを取る細胞を定義する。「脱分化した」は、細胞の系譜の中のあまりコミットメントされていないポジションに戻る細胞を定義する。人工多能性幹細胞は、脱分化細胞の例である。
【0185】
本明細書で使用される場合、細胞の「系譜」は、細胞の遺伝、すなわち、その先祖および子孫を定義する。細胞の系譜は、発生および分化の遺伝体系の中に細胞を据える。
【0186】
「多系譜幹細胞」または「複能性幹細胞」は、それ自体を複製する、かつ別個の発生系譜からの少なくとも2つのさらに分化した子孫細胞を複製する、幹細胞を指す。これらの系譜は、同じ胚葉(すなわち、中胚葉、外胚葉もしくは内胚葉)からのものであることもあり、または異なる胚葉からのものであることもある。
【0187】
「前駆体」または「前駆細胞」は、特定の細胞型に分化する能力を有する細胞を意味することを表す。前駆細胞は、幹細胞であり得る。前駆細胞は、幹細胞より特異的であることもある。前駆細胞は、単能性または複能性であり得る。成体幹細胞と比較して、前駆細胞は、より後の細胞分化ステージにあり得る。前駆細胞の例としては、これらに限定されないが、神経系前駆細胞が挙げられる。
【0188】
本明細書で使用される場合、「多能性細胞」は、少なくとも2つの別個の(遺伝子型的にもしくは表現型的にまたは両方)さらに分化した子孫細胞を生じさせることができる、あまり分化していない細胞を定義する。別の態様では、「多能性細胞」は、1つまたは複数の幹細胞特異的遺伝子の発現を誘導することによって旧来産生されている非多能性細胞、典型的には成体体細胞、から人工的に誘導された幹細胞である、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む。そのような幹細胞特異的遺伝子としては、これらに限定されないが、オクタマー転写因子のファミリー、すなわち、Oct-3/4;Sox遺伝子のファミリー、すなわち、Sox1、Sox2、Sox3、Sox 15およびSox 18;Klf遺伝子のファミリー、すなわち、Klf1、Klf2、Klf4およびKlf5;Myc遺伝子のファミリー、すなわち、c-mycおよびL-myc;Nanog遺伝子のファミリー、すなわち、OCT4、NANOGおよびREX1;またはLIN28が挙げられる。iPSCの例は、Takahashi et al. (2007) Cell advance online publication 20 November 2007;Takahashi & Yamanaka (2006) Cell 126:663-76;Okita et al. (2007) Nature 448:260-262;Yu et al. (2007) Science advance online publication 20 November 2007;およびNakagawa et al. (2007) Nat. Biotechnol. Advance online publication 30 November 2007に記載されている。
【0189】
「人工多能性細胞」は、成体細胞から未熟表現型に再プログラミングされた胚様細胞を表す。様々な方法が、当技術分野、例えば、"A simple new way to induce pluripotency: Acid." Nature, 29 January 2014において公知であり、sciencedaily.com/releases/2014/01/140129184445、最終アクセス日2014年2月5日、および米国特許出願公開第2010/0041054号で入手可能である。ヒトiPSCはまた、幹細胞マーカーを発現し、3つ全ての胚葉に特有の細胞を生成することができる。
【0190】
「単為発生幹細胞」は、卵子の単為発生活性から生じる幹細胞を指す。単為発生幹細胞を作出する方法は、当技術分野において公知である。例えば、Cibelli et al. (2002) Science 295(5556):819およびVrana et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(Suppl. 1)11911-6を参照されたい。
【0191】
本明細書で使用される場合、用語「多能性遺伝子またはマーカー」は、未熟または未分化表現型と相関関係が認められている発現遺伝子またはタンパク質、例えば、Oct 3/4、Sox2、Nanog、c-MycおよびLIN-28を表す。そのようなものを同定するための方法は、当技術分野において公知であり、そのようなものを同定するためのシステムは、例えば、EMD Milliporeから市販されている(MILLIPLEX(登録商標)Map Kit)。
【0192】
本明細書で使用される場合、造血幹細胞(HSC)は、白血球、赤血球および血小板を含むがこれらに限定されない、あらゆる種類の血液細胞を生じさせる細胞、例えば、幹細胞である。造血幹細胞は、末梢血および骨髄において見つけることができる。一部の実施形態では、本明細書に開示の免疫細胞は、HSCに由来する。
【0193】
用語「表現型」は、測定可能であり、集団内の個体のサブセットにのみ発現される、個体の形質または特徴の記載を指す。本開示の一態様では、個体の表現型は、単一細胞の表現型、細胞の実質的に均一な集団の表現型、分化細胞の集団の表現型、または細胞の集団で構成されている組織の表現型を含む。
【0194】
一部の実施形態では、細胞の集団は、表現型もしくは遺伝子型または両方が同一(クローン性)または非同一である1つより多くの細胞の集まりを表す。集団は、本明細書において説明されるように、精製されていることもあり、高度に精製されていることもあり、実質的に均一であることもあり、または不均一であることもある。
【0195】
有効期間(または時間)および有効な条件という用語は、薬剤または組成物がその意図された結果、例えば、所定の細胞型への細胞の分化または脱分化を達成するために必要なまたは好ましい期間または他の制御可能な条件(例えば、in vitroまたはex vivo法の場合は、温度、湿度)を指す。
【0196】
「実質的に均一な」は、細胞の約50%より多く、または代替的に約60%より多く、または代替的に70%より多く、または代替的に75%より多く、または代替的に80%より多く、または代替的に85%より多く、または代替的に90%より多く、または代替的に95%より多くが、同じまたは同様の表現型のものである、細胞の集団を記載する。表現型は、あらかじめ選択された細胞表面マーカーまたは他のマーカーにより決定され得る。
【0197】
本明細書で使用される場合、対象などにおける疾患を「処置すること」または疾患の「処置」は、本明細書では、所望の薬理学的および/または生理学的効果を達成することを意味するように使用される。「処置」の例としては、これらに限定されないが、障害にかかりやすい素因がある可能性があるが、その障害にかかっているとまだ診断されていない対象において障害が起こることを防止すること;障害を抑えること、すなわち、その発症を抑止すること;および/または障害の症状を和らげるもしくは改善することが挙げられる。一態様では、処置は、がんなどの疾患または障害の症状の発生の抑止である。一部の実施形態では、それは、(1)素因があるまたは疾患の症状がまだ現れていない対象において、症状または疾患が起こることを防止すること;(2)疾患を抑えること、またはその発症を抑止すること;あるいは(3)疾患もしくは疾患の症状を改善すること、または疾患もしくは疾患の症状の退行を生じさせることを指す。当技術分野において理解されているように、「処置」は、臨床結果を含む、有益なまたは所望の結果を得るための手法である。本技術では、有益なまたは所望の結果は、検出可能であるのか、検出不能であるのかを問わず、1つまたは複数の次のものを含み得るが、これらに限定されない:1つまたは複数の症状の軽減または改善、病気(疾患を含む)の程度の低下、病気(疾患を含む)の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、病気(疾患を含む)、進行、の遅延または緩徐化、病気(疾患を含む)、状態、の改善または緩和、および寛解(部分寛解であるのか、完全寛解であるのかを問わず)。開示される組成物および方法を含む処置は、第一選択、第二選択、第三選択、第四選択、第五選択療法であり得、単独療法として、または他の適切な療法と組み合わせて、使用されるように意図されている。一態様では、用語「処置」または「処置すること」は、防止または予防を除外する。
【0198】
本明細書で使用される場合、用語「試料」および「生体試料」は、同義で使用され、対象に由来する試料材料を指す。生体試料は、対象から単離された組織、細胞、細胞のタンパク質または膜抽出物、および生体液(例えば、腹水(ascites fluid)または脳脊髄液(CSF))、ならびに対象体内に存在する組織、細胞および流体を含み得る。生体試料は、これらに限定されないが、乳房組織、腎組織、子宮頸、子宮内膜、頭頸部、胆嚢、耳下腺組織、前立腺、脳、下垂体、腎臓組織、筋肉、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺組織、心組織、肺組織、膀胱、脂肪組織、リンパ節組織、子宮、卵巣組織、副腎組織、精巣組織、扁桃腺、胸腺、血液、毛髪、頬側、皮膚、血清、血漿、CSF、精液、前立腺液、精漿、尿、糞便、汗、唾液、痰、粘液、骨髄、リンパ液および涙から採取された試料を含み得る。一部の実施形態では、生体試料は、末梢血、血漿または血清から選択される。
【0199】
本明細書に開示される任意の組成物、範囲、用量形態などの選択を記載するために使用されるときの用語または「許容される」、「有効な」、または「十分な」は、前記成分、範囲、用量形態などが、開示される目的に好適であることを表す。
【0200】
本明細書で使用される場合、治療用タンパク質またはポリペプチドは、抗体もしくはその断片、酵素、リガンドまたは受容体を含むがこれらに限定されない、処置に好適なタンパク質またはポリペプチドを指す。好適な治療用タンパク質またはポリペプチドを、医師または当業者は、処置されることになる疾患に基づいて選択することができる。例えば、がんを処置するために、免疫チェックポイント受容体またはそのリガンドに対する抗体、例えば、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体または両方を使用することができる。
【0201】
一実施形態では、用語「疾患」または「障害」は、本明細書で使用される場合、がんもしくは腫瘍(これらは、同義で使用される)、そのような疾患と診断される状態、そのような疾患への罹患が疑われる状態、またはそのような疾患に罹患するリスクが高い状態を指す。
【0202】
本明細書で使用される場合、「がん」は、対象における異常な無制御の複製を示す細胞の存在を特徴とする病状であり、一部の態様では、この用語は、用語「腫瘍」と同義で使用され得る。用語「がんまたは腫瘍抗原」は、がん細胞または腫瘍細胞または組織と関連していることおよびがん細胞または腫瘍細胞または組織がある表面に発現されることが公知の抗原を指し、用語「がんまたは腫瘍標的化抗体」は、そのような抗原を標的とする抗体を指す。一部の実施形態では、用語「がん」は、本明細書で使用される場合、多発性骨髄腫(MM)を指す。一部の実施形態では、用語「がん」は、本明細書で使用される場合、急性骨髄性白血病(AML)を指す。加えてまたは代替的に、がんは、本明細書で使用される場合、PSCAを発現する。一部の実施形態では、がんは、再燃がんである。一部の実施形態では、がんは、難治性がんである。
【0203】
「固形腫瘍」は、嚢胞も液体領域も通常は含有しない組織の異常な塊である。固形腫瘍は、良性または悪性、転移性または非転移性であり得る。異なる種類の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類にちなんで名付けられている。固形腫瘍の例としては、肉腫、癌腫およびリンパ腫が挙げられる。
【0204】
「組成物」は、典型的に、活性薬剤、例えば、化合物または組成物と、不活性(例えば、検出可能な薬剤もしくは標識)または活性の、天然に存在するまたは天然に存在しない担体、例えば、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存薬、アジュバントなどであって、薬学的に許容される担体を含む担体との組合せを表す。担体は、単独でまたは組合せで1~99.99重量または容量%を構成する、個々にまたは組合せで存在し得る、医薬品賦形剤および添加剤であるタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質および炭水化物(例えば、単糖、二、三、四オリゴ糖およびオリゴ糖、誘導体化された糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化された糖など、ならびに多糖または糖ポリマーを含む、糖)も含む。例示的なタンパク質賦形剤としては、血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝能力の点でも機能することができる代表的なアミノ酸/抗体成分には、アラニン、アルギニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが含まれる。炭水化物賦形剤もまた本技術の範囲内で意図され、それらの例としては、これらに限定されないが、単糖、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;ならびにアルジトール、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)およびミオイノシトールが挙げられる。
【0205】
「医薬組成物」は、活性ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体と、組成物をin vitro、in vivoまたはex vivoでの診断または治療使用に好適なものにする不活性または活性の担体、例えば固体支持体との組合せを含むように意図されている。
【0206】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、標準的な医薬担体のいずれか、例えば、リン酸緩衝食塩溶液、水、エマルジョン、例えば油/水型または水/油型エマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤を包含する。組成物は、安定剤および保存薬も含み得る。担体、安定剤、およびアジュバントの例については、例えば、Martin (1975) Remington's Pharm. Sci., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton)を参照されたい。生物学的に適合性の担体または媒体という用語と同義で使用され得る、薬学的に許容される担体(または媒体)という用語は、治療的に投与されることになる細胞および他の薬剤と適合性であるばかりでなく、正当な医学的判断の範囲内で、人間および動物の組織と接触して使用することに好適でもあり、過度の毒性も、刺激も、アレルギー反応も、他の合併症も伴わず、妥当な損益非に見合っている、試薬、細胞、化合物、材料、組成物、もしくは剤形、またはこれらの任意の組合せを指す。本開示における使用に好適な薬学的に許容される担体は、液体、半固体(例えば、ゲル)および固体材料(例えば、当技術分野において公知の、および本明細書においてより詳細に説明されるような、細胞足場およびマトリックス、管、シートおよび他のそのような材料)を含む。これらの半固体および固体材料は、体内での分解に耐えるように設計されることもあり(非生分解性)、またはそれらは、体内で分解するように設計されることもある(生分解性、生体内分解性)。生分解性材料は、さらに、生体吸収型または生体吸収性であり得、すなわち、それは、溶解して生体液に吸収され得る(水溶性埋込物が一例である)か、または他の材料への変換または天然経路による分解および排出のいずれかにより、分解して最終的に身体から排出され得る。
【0207】
本開示に従って使用される組成物を、投与の容易さおよび投薬量の均一性のため、投薬量単位形で包装することができる。用語「単位用量」または「投薬量」は、各々の単位が、その投与、すなわち、適切な経路およびレジメンに関連して、所望の応答を生じさせるように計算された組成物の所定量を含有する、対象における使用に好適な物理的に個別の単位を指す。処置数による、および単位用量による、両方の、投与されることになる量は、所望される結果もしくは保護または両方に依存する。組成物の正確な量は、実施者の判断にも依存し、各個体に特有である。用量に影響する因子は、対象の身体的および臨床状態、投与経路、処置の意図された目標(治癒に対して症状の軽減)、ならびに特定の組成物の力価、安定性および毒性を含む。製剤化されると、溶液は、投薬製剤に適合する様式で、治療的にまたは予防的に有効であるような量で、投与される。製剤は、本明細書に記載されるタイプの注射用溶液などの様々な剤形で容易に投与される。
【0208】
本明細書で使用される場合、用語「接触させること」は、2つまたはそれより多くの分子または他の実在の間の直接または間接的結合または相互作用を意味する。直接相互作用の特定の例が結合である。間接的相互作用の特定の例は、ある実体が中間分子によって作用し、そしてまたその分子が、第2の参照実体によって作用する場合である。接触させることは、本明細書で使用される場合、溶液中、固相中、in vitro、ex vivo、細胞内およびin vivoで接触させることを含む。in vivoで接触させることは、投与することまたは投与と呼ばれ得る。
【0209】
細胞またはベクターまたは他の薬剤およびそれを含有する組成物の「投与」または「送達」は、単回投薬で、処置の過程を通して連続的にまたは間欠的に行われ得る。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に公知であり、治療に使用される組成物、治療の目的、処置される標的細胞、および処置される対象によって変わることになる。単回または複数回投与が、処置する医師によりまたは動物の場合には処置する獣医により選択される用量レベルおよびパターンで行われ得る。適切な投薬製剤、および薬剤の投与方法は、当技術分野で公知である。投与経路も決定され得、最も有効な投与経路を決定する方法は、当業者に公知であり、処置に使用される組成物、処置の目的、処置される対象の健康状態または疾患ステージ、および標的細胞または組織によって変わることになる。投与経路の非限定的な例としては、経口経路、腹腔内、注入、鼻腔投与、吸入、注射、および局所的適用が挙げられる。一部の実施形態では、投与は、腫瘍内投与、もしくは腫瘍微小環境への投与、または両方である。一部の実施形態では、投与は、ある特定の期間、例えば、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約24時間、またはそれより長い時間にわたっての、注入(例えば、対象の末梢血への)である。
【0210】
投与という用語は、これらに限定されないが、経口投与経路、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、脳室内(ICV)、くも膜下腔内、大槽内注射もしくは注入、皮下注射、埋込み)投与経路、吸入スプレーによる、鼻腔、経膣、直腸、舌下、尿道(例えば、尿道坐薬)または局所的投与経路(例えば、ゲル、軟膏、クリーム、エアロゾルなど)による投与であって、単独で、または一緒に、各投与経路に適した従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤およびビヒクルを含有する好適な投薬単位製剤で処方され得る、投与を含むものとする。本開示は、投与経路によっても、製剤によっても、投薬スケジュールによっても、制限されない。
【0211】
「投与」は、単回投薬で、処置の過程を通して連続的にまたは間欠的に行われ得る。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に公知であり、治療に使用される組成物、治療の目的、処置される標的細胞、および処置される対象によって変わることになる。単回または複数回投与が、処置する医師により選択される用量レベルおよびパターンで行われ得る。適切な投薬製剤、および薬剤の投与方法は、当技術分野で公知である。投与経路も決定され得、最も有効な投与経路を決定する方法は、当業者に公知であり、処置に使用される組成物、処置の目的、処置される対象の健康状態または疾患ステージ、および標的細胞または組織によって変わることになる。一部の実施形態では、本明細書に開示の細胞の1×10~1×1015、または間の範囲、例えば、1×10~1×1010が、対象に投与される。一部の実施形態では、投与すること、またはその文法的変化形はまた、ある特定の間隔での1回より多くの投薬を指す。一部の実施形態では、間隔は、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、1年であるか、またはそれより長い。一部の実施形態では、単回投薬が1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれより多く反復される。例えば、本明細書に開示の細胞は、対象に週1回、最大4週間、投与され得る。組成物および療法は、他の療法と組み合わせられ得、例えば、1サイクルを定義する、リンパ球枯渇化学療法に続いての本治療の注入(例えば、週1回の注入4回)、続いて、部分もしくは完全奏効が見られるまで追加のサイクルであり得、または代替的に、造血幹細胞移植もしくはCAR T細胞療法などの別のモダリティーの「つなぎの」治療として利用され得る。
【0212】
本開示の薬剤を、任意の好適な投与経路により、治療のために投与することができる。最適な経路が、レシピエントの状態および年齢、ならびに処置される疾患によって変わることも、理解されるであろう。
【0213】
「対象」、「個体」または「患者」は、本明細書では同義で使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。哺乳動物は、これらに限定されないが、ネズミ科動物、ラット、ウサギ、サル、ウシ亜科動物、ヒツジ類、ブタ類、イヌ科動物、ネコ科動物、家畜、スポーツ動物、ペット、ウマ科動物、および霊長類、特にヒトを含む。ヒトの処置に有用であることに加えて、本開示は、哺乳動物、げっ歯動物を含む、伴侶哺乳動物、エキゾチックアニマルおよび飼い慣らされた動物の、獣医学的処置にも有用である。一実施形態では、哺乳動物は、ウマ、イヌおよびネコを含む。本開示の別の実施形態では、ヒトは、胎児、乳児、思春期前の対象、青少年、小児患者、または成人である。一態様では、対象は、症状が出る前の哺乳動物またはヒトである。別の態様では、対象は、疾患の最小限の臨床症状を有する。対象は、雄または雌、成体、乳児または小児対象であり得る。追加の態様では、対象は、成体である。一部の事例では、成体は、成人、例えば、18歳より高齢の成人である。
【0214】
用語「患っている」は、この用語が用語「処置」に関連していた場合、本明細書に開示の疾患と診断された、またはそれにかかりやすい素因がある、患者または個体を指す。この患者は、特徴的な疾患病状をまだ発症していない。
【0215】
「有効量」は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の投与、適用または投薬で投与され得る。そのような送達は、個々の投薬単位が使用されることになる期間、治療剤のバイオアベイラビリティー、投与経路などを含む、いくつかの可変要素に依存する。しかし、いずれの特定の対象のための本開示の治療剤の特定の用量レベルも、利用される特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事、投与の回数、排泄率、混合薬、ならびに処置される特定の障害の重症度ならびに投与の形態を含む、様々な因子に依存することは、理解される。処置投薬量は、一般に、安全性および有効性を最適化するように用量設定され得る。典型的には、in vitro、またはex vivo、またはin vivo試験(またはこれらの任意の組合せ)からの投薬量と効果の関係が、最初に、患者への投与のための適切な用量に関する有用な指針を与える。一般に、in vitroまたはex vivoで有効であることが判明した濃度と等しい血清レベルを達成するために有効である、本明細書に開示の薬剤(例えば、細胞)の量を投与することが望まれるだろう。これらのパラメーターの決定は、十分に当技術分野における技能の範囲内である。これらの考慮事項、ならびに有効な製剤および投与手順は、当技術分野において周知であり、標準的な教科書に記載されている。
【0216】
薬物または薬剤の「治療有効量」は、薬理学的応答を得るために十分な量である、または代替的に、特定障害もしくは疾患に罹患している患者に投与されたとき、意図された効果、例えば、患者における特定障害もしくは疾患の1つもしくは複数の徴候の処置、軽減、改善、緩和もしくは消失を有するのに十分である薬物もしくは薬剤の量である、薬物または薬剤(例えば、本明細書に開示の細胞など)の量を指す。治療効果は、必ずしも1用量の投与によって生じるとは限らず、部分的または完全な効果を誘導するための必要に応じた一連の用量の投与後にしか生じないこともある。それ故、治療有効量は、1回の投与で送達されることもあり、または複数回の投与で送達されることもある。一部の実施形態では、本明細書に開示の細胞の治療有効量は、1×10~1×1015、または1×10~1×1010などの範囲である。
【0217】
一部の実施形態では、本明細書に開示のポリペプチドを含む免疫細胞などの処置は、本明細書に開示の対象に有効量で投与される。さらなる実施形態では、本明細書に開示のポリペプチドを含む免疫細胞などの処置は、本明細書に開示の対象に治療有効量で投与される。
【0218】
「抗がん療法」は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、外科的切除、化学療法、凍結療法、放射線療法、免疫療法および標的療法を含む。細胞増殖を低減させるように作用する薬剤は、当技術分野において公知であり、広く使用されている。がん細胞をそれらが分裂しているときにのみ殺滅する化学療法薬は、細胞周期特異的と呼ばれる。これらの薬物は、トポイソメラーゼ阻害剤および代謝拮抗薬をはじめとする、S期において作用する薬剤を含む。
【0219】
トポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼ酵素(トポイソメラーゼIおよびII)の作用に干渉する薬物である。化学療法処置の過程で、トポイソメラーゼ酵素は、複製に必要なDNAの構造のマニピュレーションを制御し、それ故、細胞周期特異的である。トポイソメラーゼI阻害剤の例としては、上記に掲載されたカンプトテカンアナログ、イリノテカンおよびトポテカン、が挙げられる。トポイソメラーゼII阻害剤の例としては、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、およびテニポシドが挙げられる。
【0220】
代謝拮抗薬は、通常は、通常の代謝基質のアナログであり、これらは、多くの場合、染色体複製に関与するプロセスに干渉する。それらは、周期の非常に特異的な期において細胞を攻撃する。代謝拮抗薬は、葉酸拮抗薬、例えば、メトトレキサート;ピリミジン拮抗薬、例えば、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン(foxuridine)、シタラビン、カペシタビン、およびゲムシタビン;プリン拮抗薬、例えば、6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニン;アデノシンデアミナーゼ阻害剤、例えば、クラドリビン、フルダラビン、ネララビンおよびペントスタチン;などを含む。
【0221】
植物アルカロイドは、ある特定のタイプの植物に由来する。ビンカアルカロイドは、ニチニチソウ植物(Catharanthus rosea)から作られる。タキサンは、タイヘイヨウイチイの木(taxus)の樹皮から作られる。ビンカアルカロイドおよびタキサンは、微小管阻害剤としても公知である。ポドフィロトキシンは、ポドフィルム植物に由来する。カンプトテカンアナログは、アジア「カレンボク」(Camptotheca acuminata)に由来する。ポドフィロトキシンおよびカンプトテカンアナログは、トポイソメラーゼ阻害剤としても分類される。植物アルカロイドは、一般に細胞周期特異的である。
【0222】
これらの薬剤の例としては、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびビノレルビン;タキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル;ポドフィロトキシン、例えば、エトポシドおよびテニポシド;ならびにカンプトテカンアナログ、例えば、イリノテカンおよびトポテカンが挙げられる。
【0223】
がんが免疫細胞がんである一部の実施形態では、抗がん療法は、造血幹細胞移植を含むか、またはそれから本質的になるか、またはそれからなる。
【0224】
一部の実施形態では、治療剤、例えば、本明細書に開示の細胞は、がんを処置する際に、別の抗がん療法、または免疫細胞を枯渇させる療法と組み合わせられ得る。例えば、リンパ球枯渇化学療法が行われ、続いて、本明細書に開示の細胞の投与、例えば週1回の注入4回、が行われる。さらなる実施形態では、それらのステップは、部分的もしくは完全な効果が観察されるまで、または臨床エンドポイントが達成されるまで、1回、2回、3回またはより多くの回数、反復され得る。
【0225】
ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))は、癌腫を処置するために使用される代謝拮抗薬であり、膵臓がんの第一選択療法として、ならびに進行または転移性膀胱がんおよび進行または転移性非小細胞肺がんのためにシスプラチンと組み合わせて、使用されている。それは、卵巣がんのためにカルボプラチンと組み合わせて、および転移性であるまたは摘出することができない乳がんのためにパクリタキセルと組み合わせて、第二選択療法として使用される。それは、Lilly Medicalから市販されている。
【0226】
アルドキソルビシンは、CytRxによって開発中の、腫瘍を標的としたドキソルビシンコンジュゲートである。それは、ドキソルビシンの(6-マレイミドカプロイル)ヒドラゾンである。本質的に、この化学名は、酸感受性リンカーに結合されたドキソルビシン(N-ε-マレイミドカプロン酸ヒドラジド、またはEMCH)を表現する。
【0227】
凍結療法は、これらに限定されないが、温度を低下させることを含む療法、例えば、低体温療法を含む。
【0228】
放射線療法は、当技術分野において公知の放射線、例えば、電離放射線、UV線、への曝露を含むが、これに限定されない。例示的な投薬量としては、これらに限定されないが、少なくとも約2Gyから約10Gy以下の範囲での電離放射線の線量、または少なくとも約5J/mから約50J/m以下の範囲、通常は約10J/mでの紫外線の線量が挙げられる。
【0229】
句「第一選択」または「第二選択」または「第三選択」は、患者が受ける処置の順序を指す。第一選択療法レジメンは、最初に施される処置であるのに対して、第二または第三選択療法は、第一選択療法後または第二選択療法後にそれぞれ施される。National Cancer Instituteは、第一選択療法を「疾患または状態の最初の処置」と定義している。がん患者の場合、一次処置は、外科手術、化学療法、放射線療法、またはこれらの療法の組合せであり得る。第一選択療法は、当業者によって「一次療法および一次処置」とも呼ばれる。www.cancer.govでNational Cancer Instituteウェブサイトを参照されたい(最終閲覧日2008年5月1日)。典型的には、患者が第一選択療法に対して陽性の臨床応答も無症候性応答も示さなかったまたは第1選択療法が終了しているという理由で、患者に後続の化学療法レジメンが施される。
本開示を実施する方法
核酸分子およびポリヌクレオチド
【0230】
本開示は、PSCAがんまたは腫瘍抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の核酸分子であって、CARが、細胞外、膜貫通および細胞内ドメイン(本明細書では細胞質ドメインとも呼ばれる)を含む細胞活性化部分を含むか、またはそれから本質的になるか、またはそれからなる第1の核酸分子を提供する。細胞外ドメインは、他に抗原結合ドメインとも呼ばれる標的特異的結合エレメントを含む。細胞内ドメインまたは細胞質ドメインは、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達領域、およびシグナル伝達ドメイン、例えばCD3ゼータ鎖部分を含む。CARは、最大300アミノ酸、好ましくは10~100アミノ酸、より好ましくは25~50アミノ酸のシグナルペプチド、柔軟なリンカーおよび/またはスペーサードメインのうちの1つまたは複数を、必要に応じてさらに含み得る。核酸分子は、DNAまたはRNAであり得る。
【0231】
一態様では、本開示は、様々な固形腫瘍(例えば、膵臓がん、前立腺がん、および膀胱がん)を処置するための、IL-15ドメイン(例えば、IL-15の少なくとも一部分、IL-15Raの少なくとも一部分、またはIL-15の少なくとも一部分とIL-15Raの少なくとも一部分とを含む融合タンパク質)を共発現する、PSCAを標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するナチュラルキラー(NK)細胞または他の免疫細胞(本明細書ではPSCA CAR NK細胞とも呼ばれる)を作製および使用する方法を提供する。本明細書に記載されるPSCA CAR NK細胞は、in vitroおよびin vivoで強力な抗原特異的抗腫瘍有効性を有する。本明細書に記載されるPSCA CAR NK細胞は、強力な抗原特異的抗腫瘍有効性も有する。
【0232】
一態様では、キメラ抗原受容体(CAR)またはポリペプチドをコードする第1の核酸分子を含む核酸分子であって、キメラ抗原受容体またはポリペプチドが、PSCAを標的とする抗体一本鎖可変断片(scFv)と、スペーサー(例えば、ヒンジドメイン)と、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインとを含む、核酸分子が本明細書に記載される。核酸分子は、IL-15ドメインをコードするヌクレオチド分子をさらに含む。IL-15ドメインの非限定的な例としては、例えば、可溶性IL-15(sIL-15またはs15)、膜結合型IL-15(mbIL-15またはmIL-15またはm15)、可溶性IL-15とIL-15Rαの少なくとも一部分とを含む融合タンパク質(sIL-15cまたはs15c)、および膜貫通ドメインと、IL-15の少なくとも一部分と、IL-15αの少なくとも一部分とを含む融合タンパク質(mbIL-15cまたはmIL-15cまたはm15c)を挙げることができ、これらは、必要に応じてコドン最適化されていることがある。
【0233】
PSCA ScFV
【0234】
一態様では、第1の分子のscFv核酸分子は、DYYIを含む重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1(CDRH1)(配列番号33のaa 31~aa 34)、WIDPENGDTEFVPKFQGを含むHC CDR 2(CDRH2)(配列番号33のaa 50~aa 66)、およびGGFを含むHC CDR 3(CDRH3)(配列番号33のaa 99~aa 101)をコードする。
【0235】
別の態様では、第1の分子のscFv核酸分子は、SASSSVRFIHを含む軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)1(CDRL1)(配列番号32のaa 24~aa 33)、DTSKLASを含むLC CDR 2(CDRL2)(配列番号32のaa 49~aa 55)、およびQQWGSSPFTを含むLC CDR 3(CDRL3)(配列番号32のaa 88~aa 96)をコードする。
【0236】
さらなる態様では、第1の分子のscFv核酸分子は、DYYIを含むCDRH1(配列番号33のaa 31~aa 34)、WIDPENGDTEFVPKFQGを含むCDRH2(配列番号33のaa 50~aa 66)、GGFを含むCDRH3(配列番号33のaa 99~aa 101)、SASSSVRFIHを含むCDRL1(配列番号32のaa 24~aa 33)、DTSKLASを含むCDRL2(配列番号32のaa 49~aa 55)、およびQQWGSSPFTを含むCDRL3(配列番号32のaa 88~aa 96)を含む。
【0237】
なおさらなる態様では、第1の分子のscFv核酸分子は、配列番号34またはその等価物の軽鎖可変領域、および配列番号35またはその等価物の重鎖可変領域をコードする。
【0238】
一実施形態では、第1の分子のscFv核酸分子は、配列番号35もしくはその各々の等価物のアミノ酸配列、またはSYSMSを含むCDRH1(配列番号35のaa 31~aa 35)、YINDSGGSTFYPDTVKGを含むCDRH2(配列番号35のaa 50~aa 66)、およびRMYYGNSHWHFDVを含むCDRH3(配列番号35のaa 99~aa 111)をコードする。
【0239】
さらなる実施形態では、第1の分子のscFv核酸分子は、GTSQDINNYLNを含むCDRL1(配列番号34のaa 24~aa 34)、YTSRLHSを含むCDRL2(配列番号34のaa 50~aa 56)、およびQQSKTLPWTを含むCDRL3(配列番号34のaa 89~aa 97)をコードする。
【0240】
なおさらなる実施形態では、第1の分子のscFv核酸分子は、SYSMSを含むCDRH1(配列番号35のaa 31~aa 35)、YINDSGGSTFYPDTVKGを含むCDRH2(配列番号35のaa 50~aa 66)、RMYYGNSHWHFDVを含むCDRH3(配列番号35のaa 99~aa 111)、GTSQDINNYLNを含むCDRL1(配列番号34のaa 24~aa 34)、YTSRLHSを含むCDRL2(配列番号34のaa 50~aa 56)、およびQQSKTLPWTを含むCDRL3(配列番号34のaa 89~aa 97)をコードする。
【0241】
別の態様では、第1の分子のscFv核酸分子は、配列番号34またはその等価物の軽鎖可変領域、および配列番号35またはその等価物の重鎖可変領域をコードする。
【0242】
別の態様では、scFv核酸分子は、HCとLCとの間に柔軟なリンカーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、有用な柔軟なリンカーは、配列GGGS(配列番号38、反復配列は配列番号111として開示される)の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10反復配列である。一部の実施形態では、有用な柔軟なリンカーは、配列GGGGS(配列番号39、反復配列は配列番号112として開示される)の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10反復配列である。有用なリンカーは、(G4S)3 GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号37)を含み得る。一態様では、scFvは、HC-リンカー-LC、または代替的にLC-リンカー-HCを含む。
【0243】
別の態様では、第1の分子のscFv核酸分子は、配列番号1またはその各々の等価物のアミノ酸配列をコードする。
【0244】
別の態様では、第1の分子のscFv核酸分子は、配列番号40またはその各々の等価物のアミノ酸配列をコードする。
【0245】
スペーサー領域
【0246】
本明細書に記載されるCARまたはポリペプチドをコードする第1の核酸は、PSCA標的化ドメイン(すなわち、PSCAを標的とするScFvまたはそのバリアント)と膜貫通ドメインとの間に位置決めされたスペーサーをコードする核酸分子を含み得る。様々な異なるスペーサーが使用され得る。それらの一部は、ヒトFc領域の少なくとも一部分、例えば、ヒトFc領域のヒンジ部分、またはCH3ドメイン、またはそのバリアントを含む。下記の表1は、本明細書に記載されるCARにおいて使用され得る様々なスペーサーを提供する。
【0247】
表1: スペーサーの例
【表1】
【0248】
一部のスペーサー領域は、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)ヒンジ領域の全てまたは一部、すなわち、免疫グロブリンのCH1ドメインとCH2ドメインとの間に位置する配列、例えば、IgG4 FcヒンジまたはCD8ヒンジを含む。一部のスペーサー領域は、免疫グロブリンCH3ドメイン(CH3またはΔCH2と呼ばれる)を含むか、またはCH3ドメインとCH2ドメインの両方を含む。免疫グロブリン由来の配列は、1つまたは複数のアミノ酸改変、例えば、1、2、3、4または5つの置換、例えば、オフターゲット結合を低減させる置換を含み得る。
【0249】
スペーサー領域はまた、配列ESKYGPPCPSCP(配列番号4)またはESKYGPPCPPCP(配列番号3)を有するIgG4ヒンジ領域を含み得る。スペーサー領域はまた、ヒンジ配列ESKYGPPCPPCP(配列番号3)、続いてリンカー配列GGGSSGGGSG(配列番号2)、続いてIgG4 CH3配列
【化23】
を含み得る。したがって、全スペーサー領域は、配列:
【化24】
を含み得る。
【0250】
膜貫通ドメイン
【0251】
CARの膜貫通ドメインをコードする様々な核酸分子が、CARにおいて使用され得る。一部の態様では、スペーサーは、スペーサー領域のカルボキシ末端側に位置決めされている。
【0252】
一部の場合には、膜貫通ドメイン核酸分子は、CD4膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、またはNKG2D膜貫通ドメインから選択されるドメインをコードする。一態様では、膜貫通ドメインは、配列番号13~20もしくは65またはその各々の等価物のアミノ酸配列をコードする。一部の場合には、膜貫通ドメインは、配列番号13~20または65とそれぞれ比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0253】
一態様では、核酸分子は、FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号14)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号14と同一である配列を含む、CD28膜貫通ドメインをコードする。一部の場合には、CD28膜貫通ドメインは、配列番号14と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0254】
表2は、好適な膜貫通ドメインの追加の例を含む。スペーサー領域が存在する場合、膜貫通ドメイン(TM)は、スペーサー領域のカルボキシ末端側に位置決めされている。
【0255】
表2: 膜貫通ドメインの例
【表2】
【0256】
共刺激ドメイン
【0257】
本開示のCARでは、1つまたは複数の共刺激ドメインをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを使用することができ、そのようなドメインの非限定的な例としては、CD28、4-1BB、2B4、OX40、DAP10、もしくはDAP12、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアントが挙げられる。さらなる態様では、共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX40もしくは2B4共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアントのうちの1つまたは複数を含む。
【0258】
さらなる態様では、ポリヌクレオチドは、CD3ζシグナル伝達ドメインとの使用に好適であるドメインをコードする。一部の場合には、共シグナル伝達ドメインは、RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号22)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号22と同一である配列を含む、CD28共シグナル伝達または共刺激ドメインである。一部の場合には、4-1BB共シグナル伝達または共刺激ドメインは、配列番号20、23または24と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0259】
共刺激ドメインは、膜貫通ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインとの間に位置決めされている。表3は、CD3ζシグナル伝達ドメインの配列とともに好適な共刺激ドメインの追加の例を含む。
【0260】
表3: CD3ζドメイン、および共刺激ドメインの例
【表3】
【0261】
様々な実施形態では、共刺激ドメインは、表3に示されている共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアント;CD28共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアント;4-1BB共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアント;およびOX40共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアントからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、4-1BB共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアントが存在する。一部の実施形態では、2つの共刺激ドメイン、例えば、CD28共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変(例えば、置換)を有するそのバリアント、および4-1BB共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変(例えば、置換)を有するそのバリアントがある。様々な実施形態では、1~5つ(例えば、1または2つ)のアミノ酸改変は、置換である。共刺激ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインのアミノ末端であり、2~10、例えば3アミノ酸(例えば、GGG)からなる短いリンカーが、共刺激ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインとの間に位置する/位置し得る。
【0262】
CD3ζシグナル伝達ドメイン
【0263】
第1の核酸分子は、シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ζシグナル伝達ドメイン、または好適な代用物である任意のドメイン、もしくはCD3ζシグナル伝達ドメインとともに使用するための任意のドメインをコードするポリヌクレオチドも含む。一部の場合には、CD3ζシグナル伝達ドメインは、
【化25】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号21と同一である配列を含む。一部の場合には、CD3ζシグナル伝達は、配列番号21と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0264】
自己切断ペプチド
【0265】
一部の態様では、第1の核酸分子は、CARとIL-15ドメインとの間に位置決めされた自己切断ペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含むか、またはそれから本質的になるか、またはそれからなる。そのようなものの非限定的な例としては、2A自己切断ペプチドが挙げられる。2A自己切断ペプチドは、細胞内で組換えタンパク質の切断を誘導することができる、18~22 aa長ペプチドの1クラスを指す。一部の実施形態では、2A自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、F2AおよびBmCPV2Aから選択される。例えば、Wang Y, et al. 2A self-cleaving peptide-based multi-gene expression system in the silkworm Bombyx mori. Sci Rep. 2015;5:16273. Published 2015 Nov 5を参照されたい。
【0266】
シグナルペプチド
【0267】
CARをコードする第1の核酸分子は、シグナルペプチド、例えば、ヒトGM-CSF受容体アルファシグナル配列(MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP;配列番号36);IgGkシグナルペプチド(METDTLLLWVLLLWVPGSTG;配列番号29);IgG2シグナルペプチド(MGWSSIILFLVATATGVH;配列番号30);IL-2シグナルペプチド(MYRMQLLSCIALSLALVTNS;配列番号31)またはこれらの各々の等価物をコードするポリペプチドをさらに含み得る。
【0268】
一部の実施形態では、シグナルペプチドは、MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号31)、もしくはMWLQSLLLLGTVACSIS(配列番号106)、もしくはMRISKPHLRSISIQCYLCLLLNSHFLTEA(配列番号107)、もしくはMRSSPGNMERIVICLMVIFLGTLV(配列番号108)、もしくはMGWSSIILFLVATATGVH(配列番号30)、もしくはMLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号36)、もしくはこれらの各々の等価物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。一実施形態では、シグナルペプチドは、MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号31)、もしくはMWLQSLLLLGTVACSIS(配列番号106)、もしくはMRISKPHLRSISIQCYLCLLLNSHFLTEA(配列番号107)、もしくはMRSSPGNMERIVICLMVIFLGTLV(配列番号108)、もしくはこれらの各々の等価物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。別の実施形態では、シグナルペプチドは、MGWSSIILFLVATATGVH(配列番号30)、もしくはMLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号36)、もしくはこれらの各々の等価物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。一実施形態では、シグナルペプチドは、分泌シグナルである。
【0269】
IL-15ドメイン
【0270】
核酸分子は、IL-15ドメインをコードする第2の核酸分子であって、IL-15ドメインが、ヒトIL-15の機能的部分(例えば、アミノ酸30~162 ヒトIL-15アイソフォームI;GenBank NP_0056)もしくはヒトIL-15受容体アルファサブユニットアイソフォームIの機能的部分(例えば、GenBank NP_002180のアミノ酸31~205)を少なくとも含むか、またはその構造もしくは機能を有する任意のドメインであり得、この任意のドメインには、これらに限定されないが、可溶性IL-15(sIL-15)、膜結合型IL-15(mbIL-15またはmIL-15)、sIL-15複合体IL-15Rα(sIL-15c)、およびIL-15Rαと複合体化したmbIL-15(mbIL-15cまたはmIL-15c)、ならびにこれらの模倣物が含まれる、第2の核酸分子も含む。一部の場合には、IL-15ポリヌクレオチドは、
【化26】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号43と同一である配列を含むドメインをコードする。一部の場合には、IL-15ドメインをコードするポリヌクレオチドは、配列番号43と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。一部の実施形態では、IL-15ドメインをコードするポリヌクレオチドは、コドン最適化されている。
【0271】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、VAISTSTVLLCGLSAVSLLACYL(配列番号74)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号74と同一である膜貫通ドメインを含む、IL-15ドメインをコードする。一部の場合には、IL-15ドメイン内の膜貫通ドメインは、配列番号74と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0272】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、膜貫通ドメイン配列を含むIL-15ドメイン、および可溶性IL-15ドメインをコードし、
【化27】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号77と同一である配列を有する。一部の場合には、IL-15ドメイン内の膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドは、配列番号77と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0273】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、IL-15Rαの機能的部分を含むIL-15ドメインをコードする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、
【化28】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号72と同一である配列を含むIL-15Rαをコードする。一部の実施形態では、IL-15Rαをコードするポリヌクレオチドは、配列番号72と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0274】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、IL-15部分とIL-15Rα部分との間にリンカーを含む、IL-15ドメインをコードする。本明細書に開示されるいずれかのリンカーが、IL-15ドメインにおいて使用され得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、SGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGS(配列番号81)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号81と同一である配列を含む、リンカーをコードする。
【0275】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、可溶性IL-15と、リンカーと、IL-15Raの一部分とを含むIL-15ドメインをコードする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、
【化29】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号70もしくは配列番号75と同一である配列をコードする。一部の場合には、IL-15ドメインをコードするポリヌクレオチドは、配列番号75と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0276】
一部の実施形態では、IL-15ドメインをコードするポリヌクレオチドは、膜貫通ドメイン、可溶性IL-15、リンカー、およびIL-15Raの一部分を含む。例えば、
【化30】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号76と同一である配列。一部の場合には、IL-15ドメインは、配列番号76と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0277】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、IL-15-リンカー-IL15Rαを含むIL-15ドメインをコードする。一部の実施形態では、IL-15は、IL-15RαのN末端である。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、IL-15Rα-リンカー-IL15を含むIL-15ドメインをコードする。一部の実施形態では、IL-15Rαは、IL-15のN末端である。一部の実施形態では、IL-15ドメインは、柔軟なリンカーにより連結されている、最大1、2、3、4もしくは5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号43、または最大1、2、3、4もしくは5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号70、および最大1、2、3、4もしくは5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号72を含み得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、柔軟なリンカーにより連結されている、最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号70、および最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号_を含み得る、IL-15ドメインをコードする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、柔軟なリンカーにより連結されている、最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号_、および最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号72を含み得るIL-15ドメインをコードする。
【0278】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、IL-15ドメインに先行する膜貫通ドメイン「TM」をコードする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、IL-15ドメインのすぐN末端であるTMドメインをコードする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、VAISTSTVLLCGLSAVSLLACYL(配列番号74)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号74と同一であるアミノ酸配列を含むTMドメインをコードする。一部の実施形態では、TMをコードするポリヌクレオチドは、最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号74を含み得る。
【0279】
短縮化EGFRまたは短縮化CD19またはLNGFR、および必要に応じたリボソームスキップ配列
【0280】
一部の場合には、PSCA CARまたはPSCAポリペプチドをコードする核酸分子は、CARオープンリーディングフレームに続いて、リボソームスキップ配列、および細胞質シグナル伝達テールを欠いている短縮化EGFR(EGFRt)、または短縮化CD19R、またはLNGFRがあるベクターを使用して産生される。この配置でのEGFRtの共発現によって不活性、非免疫原性の表面マーカーが得られ、この表面マーカーによって、遺伝子改変細胞の正確な測定が可能になり、遺伝子改変細胞の正の選択はもちろん、養子移入後のin vivoで治療用NK細胞の効率的な細胞追跡も可能になる。サイトカインストームおよびオフターゲット毒性を回避するために増殖を効率的に制御することは、NK細胞免疫療法の成功のために乗り越えるべき重要なハードルである。PSCA CARレンチウイルスまたはレトロウイルスベクターに組み込まれたEGFRt、CD19t、またはLNGFRは、処置関連毒性の症例では自殺遺伝子としてCAR+NK細胞を除去するように働き得る。
【0281】
一部の実施形態では、第2の核酸分子は、リボソームスキップ配列(例えば、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR;配列番号27)をコードするポリヌクレオチド、および
【化31】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号28と同一である配列を有する短縮化EGFRをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。一部の場合には、短縮化EGFRは、配列番号28と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。第2の核酸分子において有用な他のリボソームスキップ配列には、EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号46)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号46と同一である配列を有するT2At、またはGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号47)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号47と同一である配列を有するP2Aが含まれる。一部の場合には、リボソームスキップ配列は、配列番号46または47と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0282】
一部の実施形態では、第2の核酸分子は、リボソームスキップ配列(例えば、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR;配列番号27)、および
【化32】
【化33】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号26と同一である配列を有する短縮化CD19R(CD19tとも呼ばれる)をコードするポリヌクレオチドをコードし得る。一部の場合には、短縮化CD19tは、配列番号26と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。第2の核酸分子において有用な他のリボソームスキップ配列には、EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号46)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号46と同一である配列を有するT2At、またはGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号47)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号47と同一である配列を有するP2Aが含まれる。一部の場合には、リボソームスキップ配列は、配列番号46または47と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0283】
一部の実施形態では、第2の核酸分子は、リボソームスキップ配列(例えば、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR;配列番号27)、および
【化34】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号45と同一である配列を有するtEGFRをコードする。第2の核酸分子において有用な他のリボソームスキップ配列には、EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号46)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号46と同一である配列を有するT2At、またはGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号47)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号47と同一である配列を有するP2Aが含まれる。一部の場合には、リボソームスキップ配列は、配列番号46または47と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0284】
一部の実施形態では、第2の核酸分子は、リボソームスキップ配列、および
【化35】
【化36】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号78と同一である配列を有する短縮化LNGFRをコードする。一部の場合には、短縮化LNGFRは、配列番号78と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。有用な他のリボソームスキップ配列には、EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号46)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号46と同一である配列を有するT2At、またはGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号47)と少なくとも95%同一であるかもしくは配列番号47と同一である配列を有するP2Aが含まれる。一部の場合には、リボソームスキップ配列は、配列番号46または47と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0285】
ベクター
【0286】
加えて、本明細書に開示のポリヌクレオチド、その補体、そのリバース配列もしくはそのリバース相補配列のうちの1つもしくは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなるベクターが提供される。
【0287】
一部の実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクターまたはウイルスベクターである。一実施形態では、非ウイルスベクターは、プラスミド、例えば、RD114、RD114-TRまたはVSVGである。一実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターの群から選択される。
【0288】
加えて、ベクターは、ポリヌクレオチドの複製もしくは発現、または両方を指示する調節配列をさらに含み得る。一部の実施形態では、プラスミドは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターを産生するために、例えば本実施例で示されるように、構築および調製される。
【0289】
一部の実施形態では、ベクターは、本明細書に開示のポリヌクレオチドを複製または増幅するために使用される。さらなる実施形態では、ベクターは、ポリヌクレオチド、その補体、そのリバース配列、またはそのリバース相補配列のうちの1つまたは複数を含む。なおさらなる実施形態では、ベクターは、ポリヌクレオチドの複製を指示する調節配列をさらに含む。
【0290】
一部の実施形態では、ベクターは、本明細書に開示のポリヌクレオチドの、例えば、本明細書に開示のポリペプチド、またはその断片への、転写もしくは翻訳、または転写と翻訳の両方に使用される。さらなる実施形態では、ベクターは、ポリヌクレオチド、その補体、そのリバース配列、またはそのリバース相補配列のうちの1つまたは複数を含む。なおさらなる実施形態では、ベクターは、ポリヌクレオチドの発現を指示する調節配列をさらに含む。加えてまたは代替的に、ベクターは、CARのオープンリーディングフレームに続くリボソームスキップ配列をさらに含む。
【0291】
CARポリペプチド
【0292】
本明細書に記載される核酸分子によりコードされる、CARおよびIL-15ポリペプチドも提供される。
【0293】
様々な実施形態では、キメラ抗原受容体またはポリペプチドは、PSCA scFv(A1 LH)、例えば、最大5つまたは最大10の単一アミノ酸置換(好ましくはCDR外の)を有するアミノ酸配列
【化37】
を含むscFvを含む。
【0294】
様々な実施形態では、キメラ抗原受容体またはポリペプチドは、PSCA scFv(A1 HL)、例えば、最大5つまたは最大10の単一アミノ酸置換(好ましくはCDR外の)を有するアミノ酸配列
【化38】
を含むscFvを含む。
【0295】
ある特定の実施形態では、
【化39】
と少なくとも95%同一である、または配列番号32と比較して最大5つの単一アミノ酸置換(好ましくはCDR外の、下線が引かれている)を含む、軽鎖可変領域(A1 VL)を含む。
【0296】
ある特定の実施形態では、PSCA scFvは、
【化40】
と少なくとも95%同一である、または配列番号33と比較して最大5つの単一アミノ酸置換(好ましくはCDR外の、下線が引かれている)を含む、重鎖可変領域(A1 VH)を含む。
【0297】
一部の実施形態では、PSCA scFvは、
【化41】
と少なくとも95%同一である、または配列番号34と比較して最大5つの単一アミノ酸置換(好ましくはCDR外の、下線が引かれている)を含む、軽鎖可変領域(M1 VL)を含む。
【0298】
ある特定の実施形態では、PSCA scFvは、
【化42】
と少なくとも95%同一である、または配列番号35と比較して最大5つの単一アミノ酸置換(好ましくはCDR外の、下線が引かれている)を含む、重鎖可変領域(M1 VH)を含む。
【0299】
様々な実施形態では、キメラ抗原受容体またはポリペプチドは、PSCA scFv、例えば、最大5つまたは最大10の単一アミノ酸置換(好ましくはCDR外の)を有するアミノ酸配列
【化43】
を含むscFv(M1 LH)を含む。
【0300】
様々な実施形態では、キメラ抗原受容体またはポリペプチドは、PSCA scFv、例えば、最大5つまたは最大10の単一アミノ酸置換(好ましくはCDR外の)を有するアミノ酸配列
【化44】
を含むscFv(M1 HL)を含む。
【0301】
本明細書に記載される、PSCAを標的とするCAR(「PSCA CAR」とも呼ばれる)、またはPSCAを標的とするポリペプチド(「PSCAポリペプチド」とも呼ばれる)は、PSCA標的化scFv、例えば、上記のPSCA scFvを含む。一部の実施形態では、柔軟なリンカーで連結されている、アミノ酸配列:
【化45】
、および配列
【化46】
【化47】
を含む(いずれの順序でも)、scFv。
【0302】
一部の実施形態では、柔軟なリンカーにより連結されている、アミノ酸配列:
【化48】
、および配列
【化49】
を含む(いずれの順序でも)scFv。
【0303】
一部の実施形態では、有用な柔軟なリンカーは、配列GGGS(配列番号38、反復配列は配列番号111として開示される)の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10反復配列である。一部の実施形態では、有用な柔軟なリンカーは、配列GGGGS(配列番号39、反復配列は配列番号112として開示される)の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10反復配列である。有用なリンカーは、(G4S)3GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号37)を含み得る。
【0304】
有用なPSCA CARまたはPSCAポリペプチドは、配列番号Xもしくは配列番号Y(シグナル配列を欠いている成熟CAR)のアミノ酸配列からなり得るか、またはそれを含む。いずれの開示されるCARまたはポリペプチドも、シグナル配列、例えば、ヒトGM-CSF受容体アルファシグナル配列(MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP;配列番号36);IgGkシグナルペプチド(METDTLLLWVLLLWVPGSTG;配列番号29);IgG2シグナルペプチド(MGWSSIILFLVATATGVH;配列番号30);IL-2シグナルペプチド(MYRMQLLSCIALSLALVTNS;配列番号31)を含む形態で、発現され得る。
【0305】
CARまたはポリペプチドは、発現のモニタリングに有用である追加の配列、例えば、T2AまたはP2Aスキップ配列および短縮化EGFRまたは短縮化CD19またはLNGFR(配列番号31のアミノ酸配列からなり得るか、またはそれを含み得る)とともに、発現され得る。
【0306】
CARまたはポリペプチドは、配列番号1もしくは40~42のアミノ酸配列を含み得るか、または配列番号1もしくは40~42と少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。CARまたはポリペプチドは、最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号1または40~42のいずれかのアミノ酸配列を含み得る。CARまたはポリペプチドは、柔軟なリンカーにより連結されている、最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号32、および最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号33を含み得る。CARまたはポリペプチドは、柔軟なリンカーにより連結されている、最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号34、および最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号35を含み得る。
【0307】
一部の実施形態では、アミノ酸配列の配列番号1、32~35、および40~42をコードする核酸は、コドン最適化されている。
【0308】
本明細書に記載されるCARまたはポリペプチドは、PSCA標的化ドメイン(すなわち、PSCAを標的とするScFvまたはそのバリアント)と膜貫通ドメインとの間に位置決めされたスペーサーを含み得る。様々な異なるスペーサーが使用され得る。それらの一部は、ヒトFc領域の少なくとも一部分、例えば、ヒトFc領域のヒンジ部分、またはCH3ドメイン、またはそのバリアントを含む。表1は、本明細書に記載されるCARにおいて使用され得る様々なスペーサーを提供する。
【0309】
IgG4)ヒンジ領域、すなわち、免疫グロブリンのCH1ドメインとCH2ドメインとの間に位置する配列、例えば、IgG4 FcヒンジまたはCD8ヒンジ。一部のスペーサー領域は、免疫グロブリンCH3ドメイン(CH3またはΔCH2と呼ばれる)を含むか、またはCH3ドメインとCH2ドメインの両方を含む。免疫グロブリン由来の配列は、1つまたは複数のアミノ酸改変、例えば、1、2、3、4または5つの置換、例えば、オフターゲット結合を低減させる置換を含み得る。
【0310】
スペーサー領域はまた、配列ESKYGPPCPSCP(配列番号4)またはESKYGPPCPPCP(配列番号3)を有するIgG4ヒンジ領域を含み得る。スペーサー領域はまた、ヒンジ配列ESKYGPPCPPCP(配列番号3)、続いてリンカー配列GGGSSGGGSG(配列番号2)、続いてIgG4 CH3配列
【化50】
を含み得る。したがって、全スペーサー領域は、配列:
【化51】
を含み得る。
【0311】
様々な膜貫通ドメインが、CARにおいて使用され得る。一部の場合には、膜貫通ドメインは、FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号14)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号14と同一である配列を含む、CD28膜貫通ドメインである。一部の場合には、CD28膜貫通ドメインは、配列番号14と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。表2は、好適な膜貫通ドメインの例を含む。スペーサー領域が存在する場合、膜貫通ドメイン(TM)は、スペーサー領域のカルボキシ末端側に位置決めされた。
【0312】
共刺激ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインとの使用に好適である任意のドメインであり得る。一部の場合には、共シグナル伝達ドメインは、RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号22)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号22と同一である配列を含む、CD28共シグナル伝達ドメインである。一部の場合には、4-1BBシグナル伝達ドメインは、配列番号22と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0313】
共刺激ドメインは、膜貫通ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインとの間に位置決めされている。表3は、CD3ζシグナル伝達ドメインの配列とともに好適な共刺激ドメインの例を含む。
【0314】
様々な実施形態では、共刺激ドメインは表3に示されている共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアント;CD28共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアント;4-1BB共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアント;およびOX40共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアントからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、4-1BB共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変を有するそのバリアントが存在する。一部の実施形態では、2つの共刺激ドメイン、例えば、CD28共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変(例えば、置換)を有するそのバリアント、および4-1BB共刺激ドメイン、または1~5つ(例えば、1もしくは2つ)のアミノ酸改変(例えば、置換)を有するそのバリアントがある。様々な実施形態では、1~5つ(例えば、1または2つ)のアミノ酸改変は、置換である。共刺激ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインのアミノ末端であり、2~10、例えば3アミノ酸(例えば、GGG)からなる短いリンカーが、共刺激ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインとの間に位置する/位置し得る。
【0315】
CD3ζシグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインとの使用に好適である任意のドメインであり得る。一部の場合には、CD3ζシグナル伝達ドメインは、
【化52】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号21と同一である配列を含む。一部の場合には、CD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号21と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0316】
IL-15ドメインは、ヒトIL-15の機能的部分(例えば、アミノ酸30~162 ヒトIL-15アイソフォームI;GenBank NP_0056)もしくはヒトIL-15受容体アルファサブユニットアイソフォームIの機能的部分(例えば、GenBank NP_002180のアミノ酸31~205)を少なくとも含むドメインであるか、またはその構造もしくは機能を有する任意のドメインであり得、この任意のドメインには、これらに限定されないが、可溶性IL-15(sIL-15)、膜結合型IL-15(mbIL-15またはmIL-15)、sIL-15複合体IL-15Rα(sIL-15c)、およびIL-15Rαと複合体化したmbIL-15(mbIL-15cまたはmIL-15c)、ならびにこれらの模倣物が含まれる。一部の場合には、IL-15ドメインは、
【化53】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号43と同一である配列を含む。一部の場合には、IL-15ドメインは、配列番号43と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。一部の実施形態では、IL-15ドメインは、コドン最適化されている。
【0317】
一部の実施形態では、IL-15ドメインは、VAISTSTVLLCGLSAVSLLACYL(配列番号74)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号74と同一である、膜貫通ドメインを含む。一部の場合には、IL-15ドメイン内の膜貫通ドメインは、配列番号74と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0318】
一部の実施形態では、IL-15ドメインは、膜貫通ドメイン配列および可溶性IL-15ドメインを含み、
【化54】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号77と同一である配列を有する。一部の場合には、IL-15ドメイン内の膜貫通ドメインは、配列番号77と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0319】
一部の実施形態では、IL-15ドメインは、IL-15部分とIL-15Rα部分との間にリンカーを含む。本明細書に開示されるいずれかのリンカーが、IL-15ドメインにおいて使用され得る。一部の実施形態では、リンカーは、SGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGS(配列番号81)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号81と同一である配列を含む。
【0320】
一部の実施形態では、IL-15ドメインは、IL-15Rαの機能的部分を含む。一部の実施形態では、IL-15Rαは、
【化55】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号72と同一である配列を含む。一部の実施形態では、IL-15Rαは、配列番号72と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0321】
一部の実施形態では、IL-15ドメインは、可溶性IL-15と、リンカーと、IL-15Raの一部分とを含む。例えば、
【化56】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるか、または配列番号70もしくは配列番号75と同一である、配列。一部の場合には、IL-15ドメインは、配列番号70と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0322】
一部の実施形態では、IL-15ドメインは、膜貫通ドメインと、可溶性IL-15と、リンカーと、IL-15Raの一部分とを含む。例えば、
【化57】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるか、または配列番号76と同一である、配列。一部の場合には、IL-15ドメインは、配列番号76と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0323】
一部の実施形態では、IL-15ドメインは、IL-15-リンカー-IL15Rαを含む。一部の実施形態では、IL-15は、IL-15RαのN末端である。一部の実施形態では、IL-15ドメインは、IL-15Rα-リンカー-IL15を含む。一部の実施形態では、IL-15Rαは、IL-15のN末端である。一部の実施形態では、IL-15ドメインは、柔軟なリンカーにより連結されている、最大1、2、3、4もしくは5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号43、または最大1、2、3、4もしくは5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号70、および最大1、2、3、4もしくは5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号72を含み得る。一部の実施形態では、IL-15ドメインは、柔軟なリンカーにより連結されている、最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号43、および最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号72を含み得る。一部の実施形態では、IL-15ドメインは、柔軟なリンカーにより連結されている、最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号70、および最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号72を含み得る。
【0324】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、IL-15ドメインに先行する。一部の実施形態では、TMドメインは、IL-15ドメインのすぐN末端である。一部の実施形態では、TMドメインは、VAISTSTVLLCGLSAVSLLACYL(配列番号74)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号74と同一である、アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TMは、最大1、2、3、4または5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的アミノ酸変化)を有する配列番号74を含み得る。
【0325】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCARまたはペプチドは、リボソームスキップ配列(例えば、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR;配列番号27)、および
【化58】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号28と同一である配列を有する短縮化EGFRを含み得る。一部の場合には、短縮化EGFRは、配列番号28と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0326】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCARまたはペプチドは、リボソームスキップ配列(例えば、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR;配列番号27)、および
【化59】
【化60】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号26と同一である配列を有する短縮化CD19R(CD19tとも呼ばれる)を含み得る。一部の場合には、短縮化CD19tは、配列番号26と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0327】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCARまたはペプチドは、リボソームスキップ配列(例えば、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR;配列番号27)、および
【化61】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号45と同一である配列を有するtEGFRを含み得る。
【0328】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCARまたはペプチドは、リボソームスキップ配列、および
【化62】
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一であるかまたは配列番号78と同一である配列を有する短縮化LNGFRを含み得る。一部の場合には、短縮化LNGFRは、配列番号78と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0329】
本明細書に記載されるCARまたはペプチドにおいて有用な他のリボソームスキップ配列には、EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号46)と少なくとも95%同一である配列を有するT2At、またはGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号47)と少なくとも95%同一である配列を有するP2Aが含まれる。一部の場合には、リボソームスキップ配列は、配列番号46または47と比較して5つのアミノ酸変化(好ましくは、保存的)のうちの1つ、2つ、3つ、4つを有する。
【0330】
細胞
【0331】
次のうちの1つまたは複数を含む単離された細胞が、さらに提供される:本明細書においてコード化されているような核酸分子、本明細書に開示の核酸分子によりコードされるポリペプチド、本明細書に開示のCAR、本明細書に開示のサイトカイン、本明細書に開示の自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方、本明細書に開示の自殺遺伝子、本明細書に開示のポリヌクレオチド、本明細書に開示のベクター、あるいは本明細書に開示のベクター系。
【0332】
したがって、本明細書に記載されるポリペプチド、もしくはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または両方を含むかまた発現する細胞が提供される。一部の実施形態では、ポリペプチドは、さらに、ひとりでにまたは細胞によりプロセシングされて、例えば切断されて、次のうちのいずれか1つ、または2つ、または3つ、または4つ全てを生じさせる:CARペプチド、サイトカイン、および自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方。一部の実施形態では、細胞は、さらに、次のうちのいずれか1つ、または2つ、または3つ、または4つ全てを含む:CARペプチド、サイトカイン、および自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方。一部の実施形態では、細胞は、細胞膜上にCARを発現する。さらなる実施形態では、細胞は、細胞からサイトカインを分泌するか、または細胞膜上にサイトカインを発現する。加えてまたは代替的に、細胞は、自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方を、例えば細胞膜上に発現する。一部の実施形態では、細胞は、本明細書に開示のポリヌクレオチド、および細胞におけるポリヌクレオチドの複製または発現に好適な調節配列を含む。一部の実施形態では、細胞は、単離されている。一態様では、細胞は、(i)本明細書に開示のPSCA CARのアミノ酸配列、(ii)IL-15ドメインのアミノ酸配列、あるいは(iii)本明細書に開示の自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方のアミノ酸配列のうちの1つまたは複数をコードするポリヌクレオチド、あるいは上記の1つもしくは複数を含むか、またはそれ(ら)から本質的になるか、またはなおさらにそれ(ら)からなるコードされたポリペプチド;あるいは本明細書に開示のポリヌクレオチド;あるいはポリペプチドとポリヌクレオチドの両方を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、さらに、ひとりでにまたは細胞によりプロセシングされて、例えば切断されて、CARペプチド、IL-15ドメイン、または自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方のうちの1つまたは複数を生じさせる。さらなる実施形態では、細胞は、さらに、CARペプチド、IL-15ドメイン、または自殺遺伝子産物、検出可能なマーカーまたは両方のうちの1つまたは複数を含む。なおさらなる実施形態では、細胞は、細胞膜上にCARを発現する。一部の実施形態では、細胞は、IL-15ドメインを発現する。さらなる実施形態では、細胞は、IL-15ドメインを分泌する。一部の実施形態では、細胞は、細胞膜上にIL-15ドメインを発現する。一部の実施形態では、細胞は、自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方を発現する。さらなる実施形態では、細胞は、自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方を細胞膜上に発現する。一部の実施形態では、細胞は、本明細書に開示のポリヌクレオチド、および細胞におけるポリヌクレオチドの複製または発現に好適な調節配列を含むか、またはさらに含む。一部の実施形態では、細胞は、単離されている。
【0333】
一部の実施形態では、細胞は、原核細胞または真核細胞である。一部の実施形態では、細胞は、動物細胞、哺乳動物細胞、ウシ亜科動物細胞、ネコ科動物細胞、イヌ科動物細胞、ネズミ科動物細胞、ウマ科動物細胞、またはヒト細胞から必要に応じて選択される、真核細胞である。一部の実施形態では、真核細胞は、免疫細胞、必要に応じて、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、骨髄性細胞、単球またはマクロファージであり、これらは、必要に応じて、造血幹細胞(HSC)または人工多能性幹細胞(iPSC)に由来する。一部の実施形態では、HSCおよびiPSCは、本明細書では前駆体細胞と呼ばれる。一部の実施形態では、細胞は、幹細胞、例えば、HSCまたはiPSCである。
【0334】
一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、骨髄性細胞、単球、マクロファージ、これらの任意のサブセット、または任意の他の免疫細胞である。さらなる実施形態では、免疫細胞は、造血幹細胞(HSC)または人工多能性幹細胞(iPSC)に由来する。真核細胞は、任意の好ましい種からのもの、例えば、動物細胞、哺乳動物細胞、例えば、ヒト、ウシ亜科動物細胞、ネズミ科動物細胞、ウマ科動物細胞、ネコ科動物細胞またはイヌ科動物細胞であり得る。細胞は、患者に由来することもあり、ドナーに由来することもあり、または細胞系、例えば、それらの入手可能な既製品に由来することもある。細胞は、処置される対象にとって自家または同種異系であり得る。一部の実施形態では、細胞は、検出可能なマーカーまたは精製マーカーをさらに含む。一部の実施形態では、細胞は、本明細書に開示のCARを発現する。
【0335】
本明細書に開示の細胞を含むか、または代替的にそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる細胞集団も提供される。一部の実施形態では、細胞集団は、均一または不均一である。さらなる実施形態では、細胞集団は、実質的に均一であり、例えば、1つまたは複数の単離された細胞から本質的になっている。一部の実施形態では、細胞集団は、不均一であり、例えば、本明細書に開示のポリヌクレオチドが導入された単離された細胞と、ポリヌクレオチドが導入されていない残りの細胞とを含んでいるか、またはそれらから本質的になっているか、またはなおさらにそれからなっている。一部の実施形態では、細胞は、遺伝子編集技術、例えばCRISPRまたはTALENを使用してCD52発現を除去するように改変されたT細胞である。
【0336】
一部の実施形態では、細胞は、ポリヌクレオチドまたはベクターまたはベクター系を複製するためのものである。さらなる実施形態では、細胞は、細胞系である。一部の実施形態では、細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。さらなる実施形態では、細胞は、E.coli細胞である。なおさらなる実施形態では、細胞は、効率および品質が最適化された10Kbより大きいサイズを有するポリヌクレオチドを繁殖させるためのもの(例えば、P64)である、MAX Efficiency(商標)Stbl2(商標)Competent Cell(Invitrogen、10268019)である。一部の実施形態では、細胞は、10Kbに等しいまたはそれ未満のサイズを有する他のプラスミドに好適である、NEB(登録商標)Stable Competent E.coli(High Efficiency)(NEB、C3030H)である。
【0337】
次のうちの1つまたは複数を含む単離された細胞が、さらに提供される:本明細書に開示のポリペプチド、または本明細書に開示のその断片、本明細書に開示のCAR、本明細書に開示のポリヌクレオチド、または本明細書に開示のベクター、または本明細書に開示のベクター系。一部の実施形態では、細胞は、細胞膜にCARを含む。さらなる実施形態では、細胞は、本明細書に開示のサイトカインを分泌する。加えてまたは代替的に、細胞は、本明細書に開示の自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方を、例えば細胞表面上に、発現する。
【0338】
本明細書に開示される細胞の拡大および遺伝子改変の前に、細胞を、対象から - 例えば、自家療法を含む実施形態の場合 -、または市販の細胞系もしくは培養物から、または幹細胞、例えば人工多能性幹細胞(iPSC)から得ることができる。
【0339】
末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍をはじめとする、対象におけるいくつかの供給源から、細胞を得ることができる。
【0340】
産生方法および組成物
【0341】
一態様では、本明細書に開示の細胞、例えばCARを発現する細胞を産生する方法が提供される。一部の実施形態では、細胞は、さらに、サイトカインを分泌するか、または自殺遺伝子産物(または検出可能なマーカーもしくは両方)を発現するか、あるいはサイトカインを分泌もし、自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方を発現もする。一部の実施形態では、方法は、本明細書に開示のポリヌクレオチドまたは本明細書に開示のベクターまたは本明細書に開示のベクター系によって細胞またはその集団に形質導入するステップを含むか、またはそのステップから本質的になるか、またはなおさらにそのステップからなる。一部の実施形態では、方法は、同時にまたはその後に、ベクター系のベクターによって細胞またはその集団に形質導入するステップを含むか、またはそのステップから本質的になるか、またはなおさらにそのステップからなる。加えてまたは代替的に、方法は、本明細書に開示の細胞または細胞集団を培養するステップを含むか、またはそのステップから本質的になるか、またはなおさらにそのステップからなる。
【0342】
一部の実施形態では、細胞は、造血幹細胞(HSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、または免疫細胞から選択される。一部の実施形態では、方法は、形質導入されたHSCまたはiPSCを、免疫細胞への分化のための条件下で培養するステップをさらに含む。一部の実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、骨髄性細胞、単球、またはマクロファージから選択される。一部の実施形態では、免疫細胞は、HSCまたはiPSCに由来する。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞である。
【0343】
適切な細胞を単離する方法は、当技術分野において周知であり、本願に容易に適用され得る。例示的な方法は、下記の例で説明される。本開示に関して使用するための単離方法は、これらに限定されないが、Life Technologies DYNABEADS(登録商標)System;STEMCELL(商標)Technologies EASYSEP(商標)、ROBOSEP(商標)、ROSETTESEP(商標)、SEPMATE(商標);Miltenyi Biotec MACS(商標)細胞分離キット、ならびに他の市販の細胞分離および単離キットを含む。免疫細胞の特定の亜集団を、特有の細胞表面マーカーに特異的なそのようなキットで入手可能なビーズまたは他の結合剤の使用によって、単離することができる。例えば、MACS(商標)CD4+およびCD8+MicroBeadsを使用して、CD4+およびCD8+T細胞を単離することができる。公知の技法に従って単離され得る細胞の別の非限定的な例としては、バルク型T細胞、NK T細胞、およびガンマデルタT細胞が挙げられる。
【0344】
一部の実施形態では、本明細書に開示の方法は、本明細書に開示の自殺遺伝子産物を発現する細胞を単離するステップをさらに含む。さらなる実施形態では、方法は、単離すべき細胞を、自殺遺伝子産物を認識し、それに結合する抗体、例えば、RQR8(一部の実施形態では、抗RQR8抗体は、抗CD34抗体または抗CD20抗体である)と接触させることによって自殺遺伝子産物発現細胞を単離するステップをさらに含む。さらなる実施形態では、抗CD20抗体は、次のうちの1つまたは複数から選択される:リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、ビヌツズマブ、イブリツモマブ、またはヨウ素i 131トシツモマブ。加えてまたは代替的に、抗CD34抗体は、ヒトCD34 APCコンジュゲート抗体(R&D Systems、カタログ番号FAB7227A)、抗ヒトCD34抗体、クローン581(STEMCELL(商標)Technologies)、または精製抗ヒトCD34抗体、クローン561(BIOLEGEND(登録商標))から選択される。さらなる実施形態では、CD34 MicroBeadキット、例えば、CD34 MicroBead Kits(Miltenyi Biotecから入手可能)、DYNABEADS(商標)CD34 Positive Isolation Kit(INVITROGEN(商標)から入手可能)、またはEASYSEP(商標)Human CD34 Positive Selection Kit II(STEMCELL(商標)Technologies入手可能)が、自殺遺伝子産物発現細胞を単離するために使用される。
【0345】
代替的に、細胞を、T細胞については、細胞系BCL2(AAA)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2902(商標))、BCL2(S70A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2900(商標))、BCL2(S87A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2901(商標))、BCL2 Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2899(商標))、Neo Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2898(商標));B細胞については、細胞系AHH-1(ATCC(登録商標)CRL-8146(商標))、BC-1(ATCC(登録商標)CRL-2230(商標))、BC-2(ATCC(登録商標)CRL-2231(商標))、BC-3(ATCC(登録商標)CRL-2277(商標))、CA46(ATCC(登録商標)CRL-1648(商標))、DG-75[D.G.-75](ATCC(登録商標)CRL-2625(商標))、DS-1(ATCC(登録商標)CRL-11102(商標))、EB-3[EB3](ATCC(登録商標)CCL-85(商標))、Z-138(ATCC #CRL-3001)、DB(ATCC CRL-2289)、Toledo(ATCC CRL-2631)、Pfiffer(ATCC CRL-2632)、SR(ATCC CRL-2262)、JM-1(ATCC CRL-10421)、NFS-5 C-1(ATCC CRL-1693);NFS-70 C10(ATCC CRL-1694)、NFS-25 C-3(ATCC CRL-1695)、およびSUP-B15(ATCC CRL-1929);ならびにNK細胞については、細胞系NK-92(ATCC(登録商標)CRL-2407(商標))、NK-92MI(ATCC(登録商標)CRL-2408(商標))を含むがこれらに限定されない、市販の細胞培養物によって得ることができる。さらなる例としては、これらに限定されないが、成熟T細胞系、例えば、Deglis、EBT-8、HPB-MLp-W、HUT 78、HUT 102、Karpas 384、Ki 225、My-La、Se-Ax、SKW-3、SMZ-1およびT34;未熟T細胞系、例えば、ALL-SIL、Be13、CCRF-CEM、CML-T1、DND-41、DU.528、EU-9、HD-Mar、HPB-ALL、H-SB2、HT-1、JK-T1、Jurkat、Karpas 45、KE-37、KOPT-K1、K-T1、L-KAW、Loucy、MAT、MOLT-1、MOLT 3、MOLT-4、MOLT 13、MOLT-16、MT-1、MT-ALL、P12/Ichikawa、Peer、PER0117、PER-255、PF-382、PFI-285、RPMI-8402、ST-4、SUP-T1~T14、TALL-1、TALL-101、TALL-103/2、TALL-104、TALL-105、TALL-106、TALL-107、TALL-197、TK-6、TLBR-1、-2、-3、および-4、CCRF-HSB-2(CCL-120.1)、J.RT3-T3.5(ATCC TIB-153)、J45.01(ATCC CRL-1990)、J.CaM1.6(ATCC CRL-2063)、RS4;11(ATCC CRL-1873)、CCRF-CEM(ATCC CRM-CCL-119);皮膚T細胞リンパ腫系、例えば、HuT78(ATCC CRM-TIB-161)、MJ[G11](ATCC CRL-8294)、HuT102(ATCC TIB-162);未分化大細胞リンパ腫に由来するB細胞系、例えば、DEL、DL-40、FE-PD、JB6、Karpas 299、Ki-JK、Mac-2A Ply1、SR-786、SU-DHL-1、-2、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、および-16、DOHH-2、NU-DHL-1、U-937、Granda 519、USC-DHL-1、RL;ホジキンリンパ腫、例えば、DEV、HD-70、HDLM-2、HD-MyZ、HKB-1、KM-H2、L 428、L 540、L1236、SBH-1、SUP-HD1、およびSU/RH-HD-l;ならびにNK細胞系、例えば、HANK1、KHYG-1、NKL、NK-YS、NOI-90、およびYTが挙げられる。REH、NALL-1、KM-3、L92-221を含むがこれらに限定されないヌル白血病細胞系は、免疫細胞の別の市販の供給源であり、他の白血病およびリンパ腫、例えば、K562赤白血病、THP-1単球性白血病、U937リンパ腫、HEL赤白血病、HL60白血病、HMC-1白血病、KG-1白血病、U266骨髄腫に由来する細胞系も同様である。そのような市販の細胞系の非限定的な供給源としては、American Type Culture Collection、またはATCC、(atcc.org/)、およびGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(dsmz.de/)が挙げられる。
【0346】
一部の実施形態では、開示されるCARを発現するT細胞は、内因性TCRの発現を低減または消失させるようにさらに改変され得る。内因性TCRの低減または消失は、オフターゲット効果を低減させ、T細胞の有効性を増加させ得る。機能的TCRの発現を安定的に欠いている細胞は、様々な手法を使用して産生され得る。T細胞は、T細胞受容体全体を複合体として内在化し、局在させ、分解し、上記受容体は、休止T細胞において約10時間および刺激されたT細胞において3時間の半減期を有する(von Essen, M. et al. 2004. J. Immunol. 173:384-393)。TCR複合体が適切に機能するには、TCR複合体を構成する適切な化学量論比のタンパク質が必要である。TCR機能にはまた、ITAMモチーフを有する2つの機能性TCRゼータタンパク質も必要である。そのMHC-ペプチドリガンドのエンゲージメントによるTCRの活性化には、同じT細胞上のいくつかのTCRのエンゲージメントが必要であり、これらのTCR全てが、適切にシグナル伝達しなければならない。したがって、TCR複合体が、必要に応じて、適切に会合しないタンパク質またはシグナル伝達することができないタンパク質によって不安定化された場合、T細胞は、細胞応答を開始できるほど活性化されないだろう。
【0347】
したがって、一部の実施形態では、初代T細胞においてRNA干渉(例えば、shRNA、siRNA、miRNAなど)、CRISPR、または特定のTCR(例えば、TCR-αおよびTCR-β)および/もしくはCD3鎖をコードする核酸を標的とする他の方法を使用して、TCR発現を消失させることができる。これらのタンパク質の1つまたは複数についての発現を阻止することにより、T細胞は、TCR複合体の肝要な成分の1つまたは複数をもはや産生しなくなり、それによって、TCR複合体が不安定化され、機能的TCRの細胞表面発現が防止される。RNA干渉を使用すると、たとえ一部のTCR複合体が細胞表面に再循環されることがあったとしても、RNA(例えば、shRNA、siRNA、miRNAなど)が、TCRタンパク質の新たな産生を防止することになり、その結果、TCR複合体全体が分解され、除去されることになり、その結果、機能的TCR発現を安定的に欠損しているT細胞が産生されることになる。
【0348】
初代T細胞における阻害性RNA(例えば、shRNA、siRNA、miRNAなど)の発現は、任意の従来の発現系、例えば、レンチウイルス発現系を使用して達成することができる。レンチウイルスは、休止初代T細胞の標的化に有用であるが、全てのT細胞がshRNAを発現することになるとは限らない。これらのT細胞の一部は、T細胞の機能活性を変更するのに十分なTCR発現阻害を可能にするのに十分な量のRNAを発現することができない。それ故、ウイルス形質導入後に中から高度のTCR発現を保持するT細胞を、例えば、細胞選別または分離技法により除去することができ、その結果、残存するT細胞は、細胞表面TCRまたはCD3が欠損しており、したがって、機能的TCRまたはCD3の発現が欠損しているT細胞の単離された集団の拡大が可能になる。
【0349】
初代T細胞におけるCRISPRの発現は、従来のCRISPR/Cas系と標的TCRに特異的なガイドRNAとを使用して達成することができる。好適な発現系、例えば、レンチウイルスまたはアデノウイルス発現系は、当技術分野において公知である。阻害性RNAの送達と同様に、CRISPR系を、CAR細胞療法に好適な休止初代T細胞または他の免疫細胞を特異的に標的とするために使用することができる。さらに、CRISPR編集が不成功である場合には、上記に開示された方法によって成功のための細胞を選択することができる。例えば、上述のように、ウイルス形質導入後に中から高度のTCR発現を保持するT細胞を、例えば、細胞選別または分離技術により除去することができ、その結果、残存するT細胞は、細胞表面TCRまたはCD3が欠損しており、したがって、機能的TCRまたはCD3の発現が欠損しているT細胞の単離集団の拡大が可能になる。CRISPR編集構築物が、内因性TCRのノックアウトにも、本明細書に開示されるCAR構築物へのノックインにも有用であり得ることは、さらに理解される。したがって、CRISPR系を、これらの目的の一方または両方を果すように設計することができることは、理解される。
【0350】
例示的なベクターの調製および前記ベクターを使用するCAR発現細胞の生成が、本明細書において論じられる。要約すると、本明細書に開示のポリペプチドをコードする天然もしくは合成核酸、本明細書に開示のCAR、またはこれらの任意の組合せの発現は、ポリペプチド、CARをコードする核酸を、プロモーターに作動可能に連結させること、およびその構築物を発現ベクターに組み込むことにより、典型的に達成される。ベクターは、複製および組込み真核生物に好適であり得る。ベクターまたは外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al.(2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照されたい。
【0351】
パッケージングベクターおよび細胞系を使用することにより、ポリヌクレオチドをレトロウイルスパッケージング系にパッケージングすることができる。パッケージングベクターは、これらに限定されないが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクターを含む。パッケージングベクターは、遺伝物質の細胞への送達を助長するエレメントおよび配列を含有する。例えば、レトロウイルス構築物は、複製不全レトロウイルスベクターをパッケージングするために必要な全てのビリオンタンパク質をin transでコードする複製不全レトロウイルスゲノムに由来する少なくとも1つのレトロウイルスヘルパーDNA配列を含むパッケージングベクターであって、複製不全ヘルパーウイルスを産生せずに高力価の複製不全レトロウイルスベクターをパッケージングすることができるビリオンタンパク質を産生するためのパッケージングベクターである。レトロウイルスDNA配列は、ウイルスのウイルス5’LTRの天然エンハンサーまたはプロモーターをコードする領域を欠いており、ヘルパーゲノムのパッケージングに関与するpsi機能配列も、3’LTRも欠いているが、外来ポリアデニル化部位、例えばSV40ポリアデニル化部位、およびウイルス産生が所望される細胞型において効率的転写を指示する外来エンハンサーもしくはプロモーターまたは両方をコードする。レトロウイルスは、白血病ウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、またはテナガサル白血病ウイルス(GALV)である。外来エンハンサーおよびプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)最初期(IE)エンハンサーおよびプロモーター、モロニーマウス肉腫ウイルス(MMSV)のエンハンサーおよびプロモーター(U3領域)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のU3領域、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)のU3領域、または天然モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)プロモーターに連結されたHCMV IEエンハンサーであり得る。レトロウイルスパッケージングベクターは、プラスミドに基づく発現ベクターによりコードされた2つのレトロウイルスヘルパーDNA配列からなり得、例えば、第1のヘルパー配列は、同種指向性MMLVまたはGALVのgagおよびpolタンパク質をコードするcDNAを含有し、第2のヘルパー配列は、envタンパク質をコードするcDNAを含有する。宿主域を決定するEnv遺伝子は、異種指向性、両種指向性、同種指向性、多種指向性(ミンクフォーカス形成)もしくは10A1マウス白血病ウイルスenvタンパク質、もしくはテナガザル白血病ウイルス(GALV)envタンパク質、ヒト免疫不全ウイルスenv(gp160)タンパク質、水疱性口内炎ウイルス(VSV)Gタンパク質をコードする遺伝子、ヒトT細胞白血病(HTLV)IおよびII型env遺伝子産物、前述のenv遺伝子の1つもしくは複数についての組合せに由来するキメラエンベロープ遺伝子、または前述のenv遺伝子産物の細胞質部および膜貫通部と、所望の標的細胞上の特定の表面分子に対するモノクローナル抗体とをコードするキメラエンベロープ遺伝子に由来し得る。
【0352】
パッケージングプロセスにおいて、パッケージングベクターおよびレトロウイルスベクターは、高力価組換えレトロウイルス含有上清を生成するために、ヒト胎児由来腎細胞、例えば293細胞(ATCC番号CRL1573、ATCC、Rockville、Md.)などの、ウイルスを産生することができる哺乳動物細胞の第1の集団に、一過性にコトランスフェクトされる。本開示の別の方法では、次いで、この一過性にトランスフェクトされた第1の細胞集団は、高効率での外来遺伝子による標的細胞への形質導入のために哺乳動物標的細胞、例えばヒトリンパ球と共培養される。本開示のさらに別の方法では、上記の一過性にトランスフェクトされた第1の細胞集団からの上清は、高効率での外来遺伝子による標的細胞への形質導入のために哺乳動物標的細胞、例えばヒトリンパ球または造血幹細胞とともにインキュベートされる。
【0353】
別の態様では、パッケージングベクターは、ヒト胎児由来腎細胞、例えば293細胞などの、ウイルスを産生することができる哺乳動物細胞の第1の集団において安定的に発現される。レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターは、選択可能なマーカーとのコトランスフェクションまたはシュードタイプウイルスによる感染のどらちかにより、細胞に導入される。どちらの場合も、ベクターが組み込まれる。あるいは、ベクターを、エピソームに維持されたプラスミドに導入することができる。高力価組換えレトロウイルス含有上清が産生される。
【0354】
一部の実施形態では、CARまたは自殺遺伝子産物(もしくは検出可能なマーカーもしくは両方)または両方を発現する細胞は、例えば、CARが認識し、結合する抗原(例えば、CD19もしくはその断片)への結合、もしくは自殺遺伝子産物(例えば、抗体)のリガンドへの結合、または両方に基づく選択によって、濃縮される。そのような選択は、抗原もしくはリガンドまたは両方をプレート、ビーズ、カラム、膜、マトリックスまたは任意の他の好適な固体支持体上に固定化すること、および固定化された抗原またはリガンドまたは両方を認識し、それ(ら)に結合する細胞を、選択することにより、達成され得る。
【0355】
CAR細胞の活性化および拡大。望ましいCARを発現させるために細胞を遺伝子改変する前であろうと、した後であろうと、例えば、米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号、ならびに参考文献、例えばLapateva et al. (2014) Crit Rev Oncog 19(1-2):121-32;Tam et al. (2003) Cytotherapy 5(3):259-72;Garcia-Marquez et al. (2014) Cytotherapy 16(11):1537-44に記載されているものなどの一般に公知の方法を使用して、細胞を活性化および拡大することができる。腫瘍関連抗原によるex vivoでの刺激は、選択されたCAR発現細胞亜集団を活性化および拡大し得る。あるいは、細胞は、腫瘍関連抗原との相互作用によりin vivoで活性化され得る。理論により拘束されることを望まないが、細胞により発現される本明細書に開示のサイトカイン、例えば、IL15は、細胞の活性化および拡大を改善する。
【0356】
ある特定の免疫細胞の場合には、追加の細胞集団、可溶性リガンドもしくはサイトカインもしくは両方、または他の刺激剤が、細胞を活性化および拡大するために必要とされ得る。適切な試薬は、当技術分野において周知であり、公知の免疫学の原理に従って選択される。例えば、可溶性CD-40リガンドは、ある特定のB細胞集団の活性化および拡大に役立ち得る。同様に、照射されたフィーダー細胞は、NK細胞の活性化および拡大手順に使用され得る。
【0357】
適切な細胞を活性化する方法は、当技術分野において周知であり、本願に容易に適用され得る。例示的な方法は、下記の例で説明される。本開示に関して使用するための単離方法は、これらに限定されないが、Life Technologies DYNABEADS(登録商標)System活性化および拡大キット;BD Biosciences PHOSFLOW(商標)活性化キット、Miltenyi Biotec MACS(商標)活性化/拡大キット、および適切な細胞の活性化部分に特異的な他の市販の細胞キットを含む。免疫細胞の特定の亜集団を、そのようなキットで入手可能なビーズまたは他の薬剤の使用によって、活性化または拡大することができる。例えば、α-CD3/α-CD28 DYNABEADS(登録商標)を使用して、単離されたT細胞の集団を活性化および発現することができる。
【0358】
一態様では、担体(必要に応じて、薬学的に許容される担体)と次のうちの1つもしくは複数とを含むかまたはそれ(ら)から本質的になるかまたはなおさらにそれ(ら)からなる組成物が、提供される:本明細書に開示のポリペプチドまたはその断片、本明細書に開示のCAR、本明細書に開示のポリヌクレオチド、本明細書に開示のベクター、本明細書に開示のベクター系、単離された複合体、本明細書に開示の単離された細胞、または本明細書に開示の細胞集団。さらなる実施形態では、担体は、薬学的に許容される担体である。
【0359】
別の態様では、次のうちの1つもしくは複数を含むかまたはそれ(ら)から本質的になるかまたはなおさらにそれ(ら)からなる単離された複合体が、提供される:がん細胞(例えば、PSCAを発現する)に結合されている本明細書に開示のポリペプチド;がん細胞(例えば、PSCAを発現する)に結合されている本明細書に開示のCAR;がん細胞(例えば、PSCAを発現する)に結合されている本明細書に開示の単離された細胞;単離もしくは操作された細胞と結合されているがん細胞(例えば、PSCAを発現する);サイトカインおよびがん細胞(例えば、PSCAを発現する)に結合されている本明細書に開示の単離もしくは操作された細胞;またはがん細胞(例えば、PSCAを発現する)、およびサイトカインにさらに結合されている本明細書に開示の単離もしくは操作された細胞。一態様では、CAR発現細胞を産生する方法が提供される。方法は、本明細書に開示のポリヌクレオチドまたは本明細書に開示のベクターまたは本明細書に開示のベクター系によって細胞またはその集団に形質導入するステップを含むか、またはそのステップから本質的になるか、またはなおさらにそのステップからなる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはベクターまたはベクター系は、CARをコードする。本明細書に開示の任意の態様の一部の実施形態では、細胞は、造血幹細胞(HSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、または免疫細胞から選択される。
【0360】
本明細書に開示の任意の態様の一部の実施形態では、細胞集団は、次のうちの1つもしくは複数を含むか、またはそれ(ら)から本質的になるか、またはなおさらにそれ(ら)からなる:HSC、iPSC、または免疫細胞。
【0361】
本明細書に開示の任意の態様の一部の実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、骨髄性細胞、単球、またはマクロファージから選択される。本明細書に開示の任意の態様の一部の実施形態では、免疫細胞は、HSCまたはiPSCに由来する。
【0362】
本明細書に開示の任意の態様の一部の実施形態では、方法は、本明細書に開示のポリヌクレオチドまたはベクターまたはベクター系を含む細胞を選択または濃縮するステップをさらに含む。加えてまたは代替的に、方法は、CARを発現する細胞を選択または濃縮するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、適切な培養培地において、好適な培養温度のもとで、適切に酸素を供給しながら、またはこれらの任意の組合せなどの、好適な条件下で細胞を培養するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、細胞を保存するステップをさらに含む。
医薬組成物
【0363】
本開示の追加の態様は、担体と、産物 - 例えば、本明細書に開示の細胞集団、CAR、CARを含む単離された細胞、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、単離された核酸、ベクター、ベクター系、本明細書に開示のCARもしくは二特異性抗体もしくは両方またはそのようなものをコードする核酸を含有する細胞、細胞集団または単離された細胞 - のうちの1つまたは複数とを含むか、または代替的にそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらからなる、組成物に関する。一部の実施形態では、担体は、薬学的に許容される担体である。さらなる態様では、組成物は、免疫調節性分子をさらに含み得る。
【0364】
手短に述べると、1つまたは複数の薬学的にまたは生理的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、本明細書において説明されるような請求項記載の組成物のいずれか1つを含むがそれに限定されない、本開示の医薬組成物。そのような組成物は、緩衝剤、例えば、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えば、グリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えば、EDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存薬を含み得る。本開示の組成物を、局所または全身投与用に、例えば、経口、静脈内、頭蓋内、局所的、経腸または非経口投与用に、製剤化することができる。ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、静脈内投与用に製剤化される。
方法
【0365】
一態様では、PSCAを発現するがん細胞またはそのがん細胞を含む組織の成長を阻害する方法が提供される。方法は、がん細胞または組織を、本明細書に開示の単離された細胞または本明細書に開示の細胞集団と接触させるステップを含むか、またはそのステップから本質的になるか、またはなおさらにそのステップからなる。一部の実施形態では、接触させるステップは、in vitro、またはex vivo、またはin vivoである。一部の実施形態では、接触させるステップは、in vivoであり、単離された細胞は、処置される対象にとって自家または同種異系である。一部の実施形態では、接触させるステップは、in vivoであり、単離された細胞は、処置される対象にとって同種異系である。in vitroで実施される場合、方法は、個別療法のための試験にまたは代替的に併用療法のためのアッセイに使用され得る。in vivoで実施される場合、方法は、動物においてその動物を処置するために、または代替的に、個別療法もしくは併用療法を試験するための動物モデルとして、実施され得る。細胞がin vitroまたはin vivoで成長するかどうかを判定するための方法は、本明細書に記載され、当技術分野において公知あり、例えば、in vivoでのスキャン技術による腫瘍成長のモニタリングによる。あるいは、腫瘍負荷の低減、より長い全生存期間、より長い無増悪期間、腫瘍再発までのより長い期間も、治療の有効性を判定するためにモニタリングされ得る。
【0366】
一部の実施形態では、方法は、がん細胞または組織を、がん細胞上での発現PSCAを上方調節する治療薬の有効量と接触させるステップをさらに含む。
【0367】
一実施形態では、接触させるステップは、in vivoであり、単離された細胞は、処置される対象にとって自家または同種異系である。別の実施形態では、接触させるステップは、in vivoであり、単離された細胞は、処置される対象にとって同種異系である。
【0368】
さらなる態様では、方法は、本明細書に記載の細胞の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に実施される療法をさらに含む。非限定的な例としては、例えば、細胞減少療法、または第2のがんの薬剤、例えばゲムシタビンまたはアルドキソルビシン、の投与が挙げられる。
【0369】
一部の実施形態では、第2の抗がん療法は、自殺遺伝子産物を認識し、それに結合する抗体、例えば、RQR8(一部の実施形態では、抗RQR8抗体は、抗CD34抗体または抗CD20抗体である)を、細胞の投与後に投与するステップを含み、それによって、自殺遺伝子産物発現細胞を消失させる。さらなる実施形態では、抗CD20抗体は、次のうちの1つまたは複数から選択される:リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、ビヌツズマブ、イブリツモマブ、またはヨウ素i 131トシツモマブ。なおさらなる実施形態では、抗体の投与は、細胞の投与から約4週間、または約1.5ヵ月、または約2ヵ月、または約3ヵ月、または約4ヵ月、または約5ヵ月、または約6ヵ月、または約7ヵ月、または約8ヵ月、または約9ヵ月、または約10ヵ月、または約11ヵ月、または約12ヵ月、または約1.5年後である。
【0370】
一部の実施形態では、細胞減少療法は、次のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれ(ら)から本質的になるか、またはなおさらにそれ(ら)からなる:化学療法、凍結療法、温熱療法、標的療法、または放射線療法。
【0371】
さらなる態様では、方法は、当技術分野において公知の方法を使用して、がん細胞がPSCAを発現するかどうかを判定するステップ、次いで、PSCA発現腫瘍またはがん細胞を有する対象に本明細書に記載の組成物を投与するステップをさらに含む。
【0372】
別の態様では、それを必要とする対象においてPSCAを発現するがんを処置する方法が提供される。方法は、対象に、本明細書に開示の単離された細胞または本明細書に開示の細胞集団を、対象に投与するステップを含み、またはそのステップから本質的になり、またはなおさらにそのステップからなり、それによってがんを処置する。がんが処置されたかどうかを判定するための方法は、例えば、in vivoでのスキャン技術による腫瘍成長のモニタリングを含む。あるいは、腫瘍負荷の低減、より長い全生存期間、より長い無増悪期間、腫瘍再発までのより長い期間も、療法の有効性を判定するためにモニタリングされ得る。
【0373】
さらに別の態様では、それを必要とする患者における固形腫瘍またはがんを処置する方法であって、本明細書に開示される核酸分子を含むかまたは代替的にそれから本質的になるかまたはなおさらにそれからなるベクターにより形質導入された自家または同種異系ヒトNK細胞の集団を投与するステップを含み、または代替的にそのステップから本質的になり、またはなおさらにそのステップからなり、固形腫瘍またはがんが、PSCAを発現する細胞を含む、方法が提供される。
【0374】
さらに別の態様では、対象におけるPSCA陽性細胞を低減または消失させる方法であって、本明細書に開示される核酸分子を含むベクターにより形質導入された自家または同種異系ヒトNK細胞の集団を投与するステップを含む方法が、提供される。
【0375】
一部の実施形態では、対象は、対象から単離された試料におけるPSCAの発現を判定することによりその療法に選択された者であり、試料は、PSCAを発現する細胞を含む。一部の実施形態では、試料は、がん細胞を含む疑いがあるか、またはがん細胞を含む。さらなる実施形態では、試料は、がんまたは腫瘍生検標本である。一部の実施形態では、発現は、試料を抗PSCA抗体またはその抗原結合断片とin vitroまたはex vivoまたはin vivoで接触させること、および試料と抗体またはその抗原結合断片との結合を検出することにより、判定される。さらなる実施形態では、抗体または抗原結合断片は、検出可能なマーカーを含む。
【0376】
一部の実施形態では、方法は、対象から試料を単離することにより療法をモニタリングするステップ、および対象から単離された試料におけるPSCAの発現を判定するステップをさらに含む。
【0377】
一部の実施形態では、方法は、細胞または細胞集団の投与の前に対象から単離された試料におけるPSCAの発現を判定するステップをさらに含む。
【0378】
一部の実施形態では、方法は、対象に細胞減少療法、もしくはPSCAの発現を上方調節する療法、または両方を投与するステップをさらに含む。
【0379】
さらなる態様では、方法は、本明細書に記載の細胞の投与の前、投与と同時に、または投与の後に実施される療法をさらに含む。非限定的な例としては、例えば、細胞減少療法、または第2のがんの薬剤、例えばゲムシタビンまたはアルドキソルビシン、の投与が挙げられる。
【0380】
一部の実施形態では、細胞減少療法は、次のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれ(ら)から本質的になるか、またはなおさらにそれ(ら)からなる:化学療法、凍結療法、温熱療法、標的療法、または放射線療法。
【0381】
一部の実施形態では、投与は、対象に、第一選択療法、または第二選択療法、または第三選択療法、または第四選択療法として適用される。
【0382】
一部の実施形態では、第2の抗がん療法は、自殺遺伝子産物を認識し、それに結合する抗体、例えば、RQR8(一部の実施形態では、抗RQR8抗体は、抗CD34抗体または抗CD20抗体である)を、細胞の投与後に投与するステップを含み、それによって、自殺遺伝子産物発現細胞を消失させる。さらなる実施形態では、抗CD20抗体は、次の物のうちの1つまたは複数から選択される:リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、ビヌツズマブ、イブリツモマブ、またはヨウ素i 131トシツモマブ。なおさらなる実施形態では、抗体の投与は、細胞の投与から約4週間、または約1.5ヵ月、または約2ヵ月、または約3ヵ月、または約4ヵ月、または約5ヵ月、または約6ヵ月、または約7ヵ月、または約8ヵ月、または約9ヵ月、または約10ヵ月、または約11ヵ月、または約12ヵ月、または約1.5年後である。
【0383】
一部の実施形態では、細胞(例えば、単離または操作された細胞)は、必要としている対象にとって自家または同種異系である。一部の実施形態では、細胞(例えば、単離または操作された細胞)は、必要としている対象にとって同種異系である。
【0384】
本明細書に開示の方法の一部の実施形態では、投与は、対象に、第一選択療法、または第二選択療法、または第三選択療法、または第四選択療法として適用される。
【0385】
本明細書に開示の任意の態様の一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、イヌ科動物、ネコ科動物、ウマ科動物、ネズミ科動物、またはヒト患者である。
【0386】
tEGFRが自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方として使用される、一部の実施形態では、方法は、tEGFRを認識し、それに結合する抗体(抗tEGFR抗体)を、細胞の投与後に投与するステップをさらに含み、それによってtEGFR発現細胞を消失させる。一部の実施形態では、抗tEGFR抗体の投与は、細胞の投与から約4週間、または約1.5ヵ月、または約2ヵ月、または約3ヵ月、または約4ヵ月、または約5ヵ月、または約6ヵ月、または約7ヵ月、または約8ヵ月、または約9ヵ月、または約10ヵ月、または約11ヵ月、または約12ヵ月、または約1.5年後である。好適な抗tEGFR抗体は、次のものの1つまたは複数から選択され得る:セツキシマブ、ネシツムマブ、またはパニツムマブ。
【0387】
自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方が、RQR8を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる、一部の実施形態では、方法は、RQR8を認識し、それに結合する抗体(すなわち、抗RQR8抗体、例えば、抗CD20抗体もしくは抗CD34抗体または両方)を、細胞の投与後に投与するステップをさらに含み、それによってRQR8発現細胞を消失させる。一部の実施形態では、抗RQR8抗体は、RQR8におけるCD34エピトープを認識し、それに結合する。加えてまたは代替的に、抗RQR8抗体は、RQR8におけるCD20エピトープを認識し、それに結合する。一部の実施形態では、抗CD20抗体は、次のうちの1つまたは複数から選択される:リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、ビヌツズマブ、イブリツモマブ、またはヨウ素i 131トシツモマブ。一部の実施形態では、抗RQR8抗体の投与は、細胞の投与から約4週間、または約1.5ヵ月、または約2ヵ月、または約3ヵ月、または約4ヵ月、または約5ヵ月、または約6ヵ月、または約7ヵ月、または約8ヵ月、または約9ヵ月、または約10ヵ月、または約11ヵ月、または約12ヵ月、または約1.5年後である。好適な抗RQR8抗体は、次のうちの1つまたは複数から選択され得る:リツキシマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、イブリツモマブ、またはトシツモマブ。
【0388】
自殺遺伝子産物もしくは検出可能なマーカーまたは両方が、RQR8を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる、一部の実施形態では、方法は、RQR8発現細胞を選択することにより細胞を精製するステップをさらに含む。一部の実施形態では、抗RQR8抗体は、RQR8発現細胞を選択するために使用される。さらなる実施形態では、当業者に入手可能なシステム、例えば、CliniMACS CD34 Reagent Systemが、RQR発現細胞を選択するために使用される。
【0389】
一部の実施形態では、がん細胞は、初代がん細胞または転移がん細胞である。一部の実施形態では、がん細胞は、癌腫、腺癌、胆嚢腺癌および移行上皮癌、肉腫、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫からのものである。一部の実施形態では、がんは、膵臓がん、前立腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、食道がん、または胃がんから選択される。
【0390】
一部の実施形態では、投与するステップは、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれより多く反復され得る。さらなる実施形態では、2回の投与は、約1日離れているか、約2日離れているか、約3日離れているか、約4日離れているか、約5日離れているか、約6日離れているか、約1週間離れているか、約10日離れているか、約2週間離れているか、約3週間離れているか、約4週間離れているか、約1ヵ月離れているか、約2ヵ月離れているか、約3ヵ月離れているか、約4ヵ月離れているか、約5ヵ月離れているか、約6ヵ月離れているか、約7ヵ月離れているか、約8ヵ月離れているか、約9ヵ月離れているか、約10ヵ月離れているか、約11ヵ月離れているか、約1年離れているか、約1.5年離れているか、約2年離れているか、約3年離れているか、約5年離れているか、約10年離れているか、またはそれより長く離れている。
【0391】
細胞または組成物の投与は、単回投薬で、処置過程を通して連続的にまたは間欠的に行われ得、所望の治療利益を得るために有効な量が提供される。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に公知であり、治療に使用される組成物、治療の目的、および処置される対象によって変わることになる。単回または複数回投与が、処置する医師により選択される用量レベルおよびパターンで行われ得る。適切な投薬製剤、および薬剤の投与方法は、当技術分野で公知である。さらなる態様では、本開示の細胞および組成物は、他の処置と組み合わせて投与され得る。
【0392】
細胞および細胞集団は、当技術分野で公知のおよび例えばWO2012079000A1に記載されている方法を使用して、宿主または対象に投与される。本開示の細胞または組成物のこの投与を行って、実験およびスクリーニングアッセイのための所望の疾患、障害または状態の動物モデルを生成することができる。
併用療法
【0393】
本明細書に記載の組成物を、第一選択、第二選択、第三選択、第四選択または他の療法として投与することができ、別の抗がん療法、例えば細胞減少療法と組み合わせることができる。それらを、処置する医師による決定に従って逐次的にまたは同時に投与することができる。
【0394】
一部の実施形態では、本明細書に開示の組成物または方法を、CARが結合する腫瘍または他の抗原の発現を上方調節することができる療法と組み合わせることができる。一部の実施形態では、一部の臨床薬は、標的とされた抗原を増加させることができる。
【0395】
一部の実施形態では、本明細書に開示の組成物または方法を、別の抗がん療法、例えば、細胞減少治療介入、またはがんもしくは腫瘍の摘出と組み合わせることができる。一部の実施形態では、細胞減少療法は、化学療法、凍結療法、温熱療法、標的療法、免疫療法もしくは放射線療法のうちの1つもしくは複数を含むか、または代替的にこれ(ら)から本質的になるか、またはなおさらにこれ(ら)からなる。
【0396】
一部の実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイントを調節する。さらなる実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)阻害剤、もしくはプログラム細胞死1(PD-1)阻害剤、もしくはプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。なおさらなる実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質を認識し、それに結合する抗体もしくはその等価物、例えば、CTLA4を認識し、それに結合する抗体もしくはその等価物(例えば、Yervoy(イピリムマブ)、CP-675,206(トレメリムマブ)、AK104(カドニリマブ)、もしくはAGEN1884(ザリフレリマブ))、またはPD-1を認識し、それに結合する抗体もしくはその等価物(例えば、Keytruda(ペムブロリズマブ)、Opdivo(ニボルマブ)、Libtayo(セミプリマブ)、Tyvyt(シンチリマブ)、BGB-A317(チスレリズマブ)、JS001(トリパリマブ)、SHR1210(カムレリズマブ)、GB226(ゲプタノリマブ)、JS001(トリパリマブ)、AB122(ジムベレリマブ)、AK105(ペンプリマブ)、HLX10(セルプルリマブ)、BCD-100(プロルゴリマブ)、AGEN2034(バルスチリマブ)、MGA012(レチファンリマブ)、AK104(カドニリマブ)、HX008(プコテンリマブ)、PF-06801591(ササンリマブ)、JNJ-63723283(セトレリマブ)、MGD013(テボテリマブ)、CT-011(ピジリズマブ)、もしくはJemperli(ドスタルリマブ))、またはPD-L1を認識し、それに結合する抗体もしくはその等価物(例えば、Tecentriq(アテゾリズマブ)、Imfinzi(デュルバルマブ)、Bavencio(アベルマブ)、CS1001(スゲマリマブ)、もしくはKN035(エンバフォリマブ))を含むか、あるいはそれから本質的になるか、あるいはなおさらにそれからなる。
【0397】
一部の実施形態では、組成物および療法は、他の療法と組み合わせられ得、例えば、1サイクルを定義する、リンパ球枯渇化学療法に続いての本治療の注入(例えば、週1回の注入4回)、続いて、部分もしくは完全奏効が見られるまで追加のサイクルであり得、または代替的に、造血幹細胞移植もしくはCAR T細胞療法などの別のモダリティーの「つなぎの」治療として利用され得る。
キット
【0398】
本明細書において示されるとおり、本開示は、CAR細胞を産生および投与する方法を提供する。1つの特定の態様では、本開示は、これらの方法を行うためのキットはもちろん、細胞もしくは組織の収集、スクリーニング/形質導入などの実施、結果の解析、またはこれらの任意の組合せなどの、本開示の方法を実行するための使用説明書も提供する。
【0399】
一態様では、キットは、次のうちのいずれか1つもしくは複数を含むか、または代替的にそれ(ら)から本質的になるか、またはなおさらにそれ(ら)からなる:本明細書に開示のポリペプチド、本明細書に開示のCAR、本明細書に開示のポリヌクレオチド、本明細書に開示のベクター、本明細書に開示のベクター系、本明細書に開示の細胞、例えば、単離された同種異系細胞、好ましくはT細胞もしくはNK細胞、本明細書に開示の細胞集団、本明細書に開示の組成物、本明細書に開示の単離された複合体、または本明細書に開示の方法における使用についての、例えば、患者から自家細胞の入手に関する、必要に応じた使用説明書。そのようなキットはまた、本明細書に開示されるものなどの、CAR発現細胞の形質導入、選択、活性化、拡大もしくはこれらの任意の組合せに適した培地および他の試薬を含むか、または代替的にそれらから本質的になるか、またはなおさらにそれらを含む。
【0400】
一態様では、キットは、単離されたCAR発現細胞もしくはその集団を含むか、または代替的にそれから本質的になるか、またはなおさらにそれからなる。一部の実施形態では、本キットの細胞は、それを必要とする対象への投与の前に、活性化もしくは拡大または両方を必要とし得る。さらなる実施形態では、キットは、単離されたCAR発現細胞を活性化するための、または拡大するための、または活性化も拡大もするための培地および試薬、例えば、本開示において上記で取り上げられたものをさらに含み得るか、またはそれらから本質的になり得る。一部の実施形態では、細胞は、CAR療法に使用されることになる。さらなる実施形態では、キットは、CAR療法を必要とする患者への単離された細胞の投与に関する使用説明書を含む。
【0401】
本開示のキットは、例えば、緩衝剤、保存薬またはタンパク質安定剤も含むことができる。キットは、検出可能な標識、例えば酵素または基質を検出するために必要な成分をさらに含むことができる。キットは、対照試料または一連の対照試料も収容することができ、これらの試料をアッセイし、被験試料と比較することができる。キットの各成分が個々の容器内に密封されていることもあり、様々な容器の全てが、キットを使用して行われるアッセイの結果を解釈するための使用説明書と一緒に、単一の包装体の中に入っていることもある。本開示のキットは、製品についての記載をキット容器上に含むこともあり、またはキット内に含むこともある。製品についての記載は、キットに収容されている試薬の使用方法を説明するものである。
【0402】
受入れられるように、これらは、キット成分が当業者による使用に通例の方法で包装され得ることを示唆している。例えば、これらは、キット成分が溶液でまたは分散液などとして提供され得ることを示唆している。
【実施例
【0403】
開示するPSCA CARおよびペプチドならびにそれらの使用を以下の実施例でさらに説明するが、本実施例は、本特許請求の範囲を制限するものではない。
【0404】
材料および方法
【0405】
以下の材料および方法を、ここに示す実施例において使用した。
【0406】
細胞系
【0407】
PSCA(+)Canpan-1およびPSCA(-)PANC-1細胞系を、10%ウシ胎孔血清(FBS、Hyclone)を含有するRPMI-1640(Lonza)(完全RPMI)において、または10%FBSと、1X AAと、25mM HEPES(Irvine Scientific)と、2mM L-グルタミン(Fisher Scientific)とを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Life Technologies)(完全DMEM)において、培養した。全ての細胞を37℃で、5%COで培養した。
【0408】
DNA構築物、レンチウイルス産生、およびレトロウイルス産生
【0409】
PSCA CAR構築
【0410】
抗PSCA scFv-ヒンジ-CD28-CD3z-2A断片およびIL-15-2A-短縮化EGFR(tEGFR)断片を含有するPSCA CARを直接合成し、次いで、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターにクローニングした。挿入された配列および配向を、シークエンシングにより確認した。
【0411】
レトロウイルス産生
【0412】
リポフェクタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、またはCaHpo4を使用して、エンベローププラスミド、RD114、RD114-TRまたはVSVGをGP2-293T細胞にコトランスフェクトすることにより、PSCA CARを有するレトロウイルスを産生した。トランスフェクションの48時間後にレトロウイルスを収集し、0.45μmフィルターによって濾過し、分割量で、-80℃で凍結させた。
【0413】
PSCA CAR NK産生およびアッセイ
【0414】
PSCA CAR NKの生成
【0415】
負の選択キットを製造業者の使用説明書に従って使用して、初代NK細胞を臍帯血から濃縮し、レトロウイルス感染前にIL-21および41BBL K562フィーダーで拡大した。拡大したNK細胞にレトロウイルスを感染させた。ウイルス感染から72時間後にFACS解析によってEGFR(Biolegend、#352906)の拡大によりCAR NK形質導入率を決定した。
【0416】
リアルタイム細胞解析(RTCA)
【0417】
CAR NKのin vitro機能を、RTCAアッセイ(ACEA Bioscience、xCELLigence RTCA MP)により評価した。手短に述べると、標的細胞培地を、96ウェルE-Plate(ACEA Biosciences)の各ウェルに添加し、標的細胞の添加の前にバックグラウンドインピーダンスを測定した。標的細胞を、8,000細胞/ウェルの密度で播種し、xCELLigence RTCA MP機器の37度インキュベーターにおいて24時間インキュベートした。次いで、CAR NK細胞を標的細胞に1:3のE/T比で添加し、15分ごとの間隔で72時間、データを収集した。標的細胞の正規化セルインデックスを、xIMTソフトウェア(ACEA Biosciences)を使用して解析した。
【0418】
膵臓転移モデル
【0419】
8週齢である雌NSGマウスに、ルシフェラーゼを発現する膵臓肝転移腫瘍細胞(200,000個のCAPAN1/マウス)をi.p.注射により生着させた。腫瘍生着をCAR NK処置の前にIVISイメージングにより確認した。CAR NK細胞を液体窒素から直接回収し、IP(2,000,000個/マウス)およびIV(2,000,000個/マウス)注射によりマウスに投与した。CAR NKを3サイクルで投与し、各サイクルは4用量を含有し、それを2週間で行った。合計12用量を6週間で投与した。
【0420】
IVISイメージング
【0421】
D-ルシフェラーゼ基質(Biosynth、#L8220)をPBSにより溶解し、CAPAN1-Luc生着マウスにIP注射(150mg/kg)により投与した。マウスをイメージチャンバー内で2%イソフルランおよび酸素(1L/分)により麻酔し、その後、画像を取得した。発光画像をLago-X(Spectral Instruments Imaging)により製造業者の使用説明書に従って取り込んだ。発光をAura Imaging Software(バージョン2.2.1.1)により定量化した。
【0422】
PSCA CAR NK細胞の生成
【0423】
2つの異なる抗PSCA scFvドメインを用いてNK細胞のPSCA CAR構築物を作製した(図2)。
【0424】
一部の場合に、CAR構築物は、シグナルペプチド;柔軟なリンカーにより連結された可変軽鎖と可変重鎖をVL-リンカー-VHまたはVH-リンカー-VLどちらかの立体構造で含み得る抗PSCA;IgG1またはIgG4からのスペーサーまたはヒンジ;膜貫通ドメイン;CD28または2B4共刺激ドメイン;CD3ζ;必要に応じて、コドン最適化IL-15(可溶性または膜結合型であって、IL-15αと複合体化されているものとされていないもの両方)、およびマーカーとしての短縮化ヒト上皮増殖因子受容体短縮化EGFRまたはCD19またはLNGFRを、有する(図2)。CAR構築物はまた、他の共刺激ドメイン、例えば、41BB、2B4、他のスペーサードメインおよび膜貫通ドメイン、例えば、CD28、NKG2D、CD8ヒンジ、およびCD4膜貫通ドメインを使用し得る。IL-15を単独で含み得るかまたはリンカーにより接続されているIL-15とIL-15Rαを含み得るIL-15ドメインが、膜貫通ドメインの後に続き得る。NK細胞のCAR構築物については、膜貫通ドメインは、CD28またはNKG2D膜貫通ドメインであり得、共刺激ドメインは、CD28または2B4共刺激ドメインであり得る。初代NK細胞を使用して、全ての実験を行った。
【0425】
PSCA CAR NK細胞がPSCA陽性細胞を選択的に標的とすることの検証
【0426】
PSCA CAR NK細胞が、PSCA陽性がんおよび非がん性細胞に対して選択的活性を実証するかどうかを判定するために、PSCA CAR NK細胞を、PSCA陽性細胞またはPSCA陰性細胞のどちらかと共培養した。
【0427】
図3A~3Bに示されているように、CD28共刺激ドメインまたは2B4共刺激ドメインのどちらかを有するPSCA-CAR NK細胞(それぞれ、PSCA-NK-28およびPSCA-NK-2B4)は、PSCA-CARを有さない短縮化CD19を発現するNK細胞(t19 NK細胞)と比較して、in vitroで、膵臓PSCA腫瘍細胞を抗原特異的様式で溶解する。xCELLigenceリアルタイム細胞解析(RTCA)を使用して、データを収集した。両方のPSCA-CAR NK細胞が、PSCA(+)Canpan-1膵臓がん細胞を溶解する(図3A)。重要なこととして、PSCA(-)PANC-1細胞系に対するPSCA-CAR NK細胞のCAR活性はない。t19 NK細胞と、腫瘍細胞のみを用いる条件とが、対照としての役割を果たした。
【0428】
2つの異なるコドン最適化PSCA scFv配列を、殺腫瘍アッセイにおいて使用した。A1 scFvは、柔軟なリンカーで接続されている配列番号_を含む。M1 scFvは、柔軟なリンカーで接続されている配列番号_を含む。図4A~4Bに示されているように、PSCA CAR NK細胞の両方のscFv構築物を、PSCACAPAN-1腫瘍細胞またはPSCAnegPANC-1細胞と、示されているエフェクター:標的比(30:1、7.5:1、および1.875:1)で共培養した。51C放出アッセイを使用して、データを収集した。A1 scFv CAR NK細胞およびM1 scFv CAR NK細胞は両方とも、全ての比で、PSCACAPAN-1腫瘍細胞を有効に溶解した(図4A)。PSCAnegPANC-1細胞は、対照としての役割を果たしており、CAR媒介細胞溶解が抗原特異的であることを示す(図4B)。
【0429】
可溶性(s)IL-15、膜貫通型(mb)IL-15、sIL-15複合体IL-15Rα、およびIL-15αと複合体化したmbIL-15を含む、4つの異なるタイプのIL-15ドメインを含むPSCA CARの細胞傷害性は、示されているエフェクター:標的比(10:1、5:1、2.5:1、および1.25:1)で、PSCACAPAN-1腫瘍細胞またはPSCAnegPANC-1細胞のどちらかにおいて試験した。51C放出アッセイを使用して、データを収集した。全てのA1 PSCA CAR NK細胞は、PSCACAPAN-1腫瘍細胞を有効に溶解した(図5A)。IL-15ドメインを含むPSCA CAR NK細胞は、IL-15ドメインを有さないPSCA CAR NK細胞(「A1-tCD19」)と同様に有効に、または一部の場合にはそれより有効に、細胞、腫瘍細胞を溶解した。特に、可溶性IL-15およびIL-15複合体を有するPSCA CAR NK細胞には、抗原特異的腫瘍細胞溶解の驚くべき増加があり(図5A、「A1-J311」赤色)、これにすぐ続く増加が、可溶性IL-15を有するPSCA CAR NK細胞(図5A、「A1-J313」紫色)にあった。PSCAnegPANC-1細胞は、対照としての役割を果たしており、CAR媒介細胞溶解が抗原特異的であることを示す(図5B)。
【0430】
図6に示されているように、4つの異なるタイプのIL-15を有するPSCA-CAR NK細胞の、PSCA(+)Canpan-1膵臓がん細胞に対する細胞傷害性を、xCELLigenceリアルタイム細胞解析(RTCA)を使用して確認し、定量化した。上のパネルは、正規化腫瘍成長指数(PSCACAPAN-1腫瘍細胞とPSCA CAR NK細胞の共培養の開始後の時間における)を経時的に示す。下のパネルは、腫瘍細胞とCAR NK細胞の共培養の始動後およそ25時間の一時点(上のパネルの縦実線を参照されたい)における定量的データを示す。この場合もやはり、全てのPSCA CAR NK細胞は、未処置(「腫瘍のみ」)、および抗PSCAドメインを有さないtEGFR NK細胞と比較して、腫瘍成長の減少をもたらした。可溶性IL-15を有するA1 PSCA CAR NK細胞(A1-s15)は、腫瘍成長を最も低下させ、これに、膜結合型IL-15を有するA1 PSCA CAR NK細胞(A1-m15)、可溶性IL-15複合体IL-15Rαを有するA1 PSCA CAR NK細胞(A1-s15c)、膜結合型IL-15複合体IL-15Rαを有するA1 PSCA CAR NK細胞(A1-m15c)、およびIL-15ドメインを有さないA1 PSCA CAR NK細胞(A1-t19)が続いた。
【0431】
マウスモデルにおいてin vivoで送達されるPSCA CAR NK細胞が強力な抗腫瘍活性を示すことの検証
【0432】
マウスモデルにおいてPSCA陽性細胞を選択的に標的とするPSCA CAR NK細胞のin vivo有効性を評価するために、PSCA CAR NK細胞を送達し、腫瘍サイズを経時的に評価した。
【0433】
図7A~7Cが示すように、製造され、凍結された既成の初代PSCA-CAR-sIL-15 NK細胞は、PSCA(+)Capan-1細胞が生着したマウスを用いる動物モデルにおいて、in vivo有効性を示し、未処置群と比較してより有効に腫瘍細胞を根絶し、そしてまた、PSCA CARを有さないsIL-15形質導入NK細胞を用いた群に比べて良好であった。ヒトPSCA-CAR-sIL-15 NK細胞の処置は、生着腫瘍を有意に消失させた。
【0434】
PSCA CARおよび可溶性IL-15を発現するNK細胞は、PSCA発現膵臓細胞系を標的とする
【0435】
PSCA CAR NK細胞発現可溶性IL-15を、2つの異なる膵臓細胞系に対する細胞傷害性について試験した。図8Aは、Capan-1(PSCA+)細胞に対する影響を示し、図8Bは、Panc-1(PSCA-)細胞を示す。NK細胞と膵臓細胞の、1:3のE:T比での、72時間にわたっての共培養後に、細胞傷害性を試験した。
【0436】
可溶性IL-15を発現する研究用および臨床的PSCA CAR NKベクターを、Capan-1(PSCA+)細胞に対する細胞傷害性について試験した。非ヒトDNA配列を、研究グレードPSCA CAR-可溶性IL-15ベクターから除去して、臨床グレードPSCA CAR-可溶性IL-15ベクターを作出した。示されているNK細胞またはPSCA CAR-可溶性NK細胞と膵臓細胞の、1:3のE:T比での、72時間にわたっての共培養後に、細胞傷害性を試験した。細胞成長を、xCELLigenceリアルタイム細胞解析(RTCA)により解析した。
【0437】
PSCA CAR-可溶性IL15 NK細胞の抗腫瘍効果
【0438】
図10Aに模式的に描示されているように、ルシフェラーゼ(luc)を発現する、0.2×10のCAPAN1細胞を、NSGマウスに腹腔内生着させ、その後、可溶性IL-15またはPSCA CARおよび可溶性IL-15を発現するNK細胞での3サイクルの処置を施した。各サイクルは、4回の注射を含み、各々、腹腔内投与される2×10細胞、および静脈内投与される2×10で構成されていた。図10Bは、CAPAN1_lucを生着させ、可溶性IL-15を発現する、示されているNKまたはCAR NK細胞で処置したまたはしていないマウスのIVISイメージングである。マウスをNK処置の前および後にイメージングした。図10Cは、膵臓がん細胞の生物発光の定量化を示す。図10Dは、CAPAN1_lucを生着させ、可溶性IL-15を発現する、示されているNK細胞またはCAR NK細胞で処置したまたはしていないマウスの生存期間解析を示す。
【0439】
PSCA CAR-可溶性IL15 NK細胞は、抗がん薬との組合せで有効である
【0440】
図11Aは、膵臓がん細胞系CAPAN1と、PSCA CAR-可溶性IL-15 NK細胞(エフェクター/標的=1:3、PSCA CAR NK)との、またはアルドキソルビシン(0.3μM)との、または組合せでの共培養から48時間後の一連の代表画像である。図11Bは、xCELLigenceリアルタイム細胞解析(RTCA)により解析した、PSCA CAR-可溶性IL-15 NK細胞で、アルドキソルビシン(0.3μM)で、または組合せで処置したCAPAN1の正規化腫瘍成長指数の解析を描示する。可溶性IL-15を発現するNK細胞は、対照としての役割を果たした。
【0441】
図12Aは、膵臓がん細胞系CAPAN1と、PSCA CAR NK-可溶性IL-15細胞発現(エフェクター/標的=1:3、PSCA CAR NK)との、またはゲムシタビン(0.3μM)との、または組合せでの共培養から48時間後の一連の代表画像である。図12Bは、xCELLigenceリアルタイム細胞解析(RTCA)により解析した、PSCA CAR-可溶性IL-15 NK細胞で、アルドキソルビシン(0.3μM)で、または組合せで処置したCAPAN1の正規化腫瘍成長指数の解析を描示する。可溶性IL-15を発現するNK細胞は、対照としての役割を果たした。
【0442】
凍結保存はPSCA CAR NK細胞機能に影響を及ぼさない
【0443】
図13Aおよび図13Bは、可溶性IL-15のみ(sIL-15)をまたはIL-15およびPSCA CAR(PSCA CAR)を発現する、新たに調製したおよび事前に凍結しておいた、それぞれの、NK細胞を使用するin vitro腫瘍細胞溶解アッセイの結果を描示する。図に示すように、凍結は、PSCA CARの活性に有意な影響を及ぼさなかった。
【0444】
PSCA CAR-可溶性IL15 NK細胞の抗腫瘍効果
【0445】
ルシフェラーゼ(luc)を発現する、0.2×10のCAPAN1細胞を、NSGマウスに腹腔内生着させ、その後、食塩水、可溶性IL-15を発現するNK細胞、または可溶性IL-15を発現するPSCA CAR NK細胞での3サイクルの処置を施した。各サイクルは、4回の注射を含み、各々、腹腔内投与される2×10細胞、および静脈内投与される2×10で構成されていた。図14Aは、CAPAN1_lucを生着させ、示されている、可溶性IL-15を発現するNK細胞、または可溶性IL-15を発現するCAR NK細胞で、処置したまたはしていないマウスの、IVISイメージングである。処置期間は、4~18日目、19~33日目、および34~48日目であった。マウスをNK処置の前および後にイメージングした。図14Bは、食塩水処置、sIL-15 NK細胞処置またはPSCA CAR/sIL-15処置マウスの膵臓の画像である。図14Cは、CAPAN1_lucを生着させ、sIL-15を発現するNK細胞、またはsIL-15を発現するPSCA CAR NK細胞で処置したマウスの、生存期間解析を示す。PSCA CAR/sIL-15 NK細胞での処置は、腫瘍成長を有意に抑制し、膵臓および肝臓を転移拡散から保護し、この研究のどちらの対照アーム(食塩水またはsIL-15 NK細胞)よりも、マウスの生存期間を有意に延長した。
【0446】
FACS解析を45日目に行って、膵臓から単離した細胞である、腫瘍細胞およびNK細胞の存在を評定した。図14Dに示すように、PSCA CAR/sIL-15 NK処置は、腫瘍細胞のほぼ非存在、およびPSCA CAR NK細胞の持続をもたらした。
【0447】
均等物
【0448】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての専門および科学用語は、本技術が属する技術分野の当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【0449】
本明細書において例証して説明した本技術は、本明細書において具体的に開示していない、いずれかの要素(単数または複数)、制限(単数または複数)の非存在下で、好適に実施されることもある。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などは、拡張的に、および制限を伴わずに、解釈されるものとする。加えて、用いた用語および表現は、説明用語として使用しており、限定用語として使用しておらず、そのような用語および表現の使用には、示されているおよび説明されている特徴またはそれらの部分のいかなる均等物も除外する意図がなく、様々な修飾形態が請求項記載の本技術の範囲内で可能であると認識している。
【0450】
したがって、ここで提供する材料、方法および例は、好ましい態様の代表であり、例示的なものであり、本技術の範囲に対する制限として意図したものではないことを理解されたい。
【0451】
本技術を、本明細書において広く、一般的に説明した。この一般的な開示の範囲に入る、より狭い種および亜属のグループの各々もまた、本技術の一部を形成する。これは、その属からの任意の対象事項を除外する条件または否定的制限を伴う本技術の一般的説明を、削除される物質が本明細書において具体的に述べられているか否かを問わず、含む。
【0452】
加えて、本技術の特徴または態様が、マーカッシュ群によって記載されている場合、それにより、本技術が、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー、またはメンバーのサブグループに関しても記載されていることは、当業者には理解されるであろう。
【0453】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、各々が参照により個々に組み込まれる場合と同程度に、それら全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含めて本明細書が優先するものとする。
【0454】
他の態様は、下記の特許請求の範囲に定めるとおりである。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
【配列表】
2023553818000001.app
【国際調査報告】