(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】菌糸体材料の官能化方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/643 20060101AFI20231219BHJP
D06M 15/333 20060101ALI20231219BHJP
D06N 7/00 20060101ALI20231219BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20231219BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20231219BHJP
D06M 13/188 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
D06M15/643
D06M15/333
D06N7/00
C08L83/04
C08L101/00
C08K5/00
D06M13/188
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531019
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 US2021060737
(87)【国際公開番号】W WO2022115541
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516079198
【氏名又は名称】ボルト スレッズ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】5858 Horton Street, Suite 400 Emeryville CA 94608 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】スミス マシュー ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】パティル ナムラタ ヴィナイ
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー マシュー ハワード
【テーマコード(参考)】
4F055
4J002
4L033
【Fターム(参考)】
4F055AA00
4F055BA02
4F055EA09
4F055EA33
4F055EA34
4F055EA36
4F055FA04
4F055FA07
4F055FA27
4F055FA39
4F055FA40
4F055HA22
4J002AA00X
4J002AB01X
4J002AB053
4J002AE004
4J002AH00X
4J002BF023
4J002BF033
4J002BG043
4J002CD164
4J002CH024
4J002CH043
4J002CH054
4J002CL093
4J002CP03W
4J002CP05W
4J002CP06W
4J002CP09W
4J002CP18W
4J002DE026
4J002EC056
4J002EH096
4J002EJ067
4J002EN136
4J002FA04X
4J002FD024
4J002FD026
4J002FD207
4J002GC00
4J002GH00
4J002GL00
4L033AA01
4L033AB09
4L033AC11
4L033AC15
4L033CA28
4L033CA59
(57)【要約】
本明細書では、菌糸体材料及びその生産方法が提供される。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料を含み、分岐菌糸の1つ以上の塊は、破壊又はプレスされ得、シロキサン又は脂肪族鎖化合物が、培養菌糸体材料と組み合わされ得る。菌糸体材料を生産する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料と、シロキサンとを含む、複合菌糸体材料。
【請求項2】
前記シロキサンが、ヒドロキシシリコーン、水素化シリコーン、エポキシシリコーン、アミノシリコーン、又はアルキルエチレンオキシド縮合物を含む、請求項1に記載の複合菌糸体材料。
【請求項3】
シロキサンを含む前記複合菌糸体材料が、培養菌糸体材料単独と比較して、より低い曲げ弾性率を有する、請求項1又は2に記載の複合菌糸体材料。
【請求項4】
分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料と、前記分岐菌糸の1つ以上の塊に共有結合した脂肪族鎖化合物とを含む、複合菌糸体材料。
【請求項5】
前記脂肪族鎖化合物が、2-オクテニルコハク酸無水物(OSA)、2-ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、ステアリン酸無水物、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、ヘプタン酸無水物、酪酸無水物、又はクロロヒドリンを含む、請求項4に記載の複合菌糸体材料。
【請求項6】
脂肪族鎖化合物を含む前記複合菌糸体材料が、培養菌糸体材料単独と比較して、より低い曲げ弾性率を有する、請求項4又は5に記載の複合菌糸体材料。
【請求項7】
前記分岐菌糸の1つ以上の塊が破壊されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項8】
前記培養菌糸体材料がプレスされている、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項9】
80MPa未満の曲げ弾性率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項10】
1MPa~80MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項11】
少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項12】
培養菌糸体材料単独と比較して、より可撓性が高い、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項13】
結合剤を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項14】
前記結合剤が、1つ以上の反応性基を含む、請求項13に記載の複合菌糸体材料。
【請求項15】
前記1つ以上の反応性基が、活性水素含有基と反応する、請求項14に記載の複合菌糸体材料。
【請求項16】
前記活性水素含有基が、アミン基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基を含む、請求項15に記載の複合菌糸体材料。
【請求項17】
前記結合剤が、接着剤、樹脂、架橋剤、及び/又はマトリックスを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項18】
前記結合剤が、酢酸ビニル-エチレン(VAE)コポリマー、酢酸ビニル-アクリルコポリマー、ポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂(PAE)、コポリマー、トランスグルタミナーゼ、クエン酸、ゲニピン、アルギン酸塩、アラビアゴム、ラテックス、天然接着剤、及び合成接着剤からなる群から選択される、請求項13~17のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項19】
前記結合剤が、1μm以下の粒径、0未満のガラス転移温度、及び自己架橋機能からなる群から選択される特性を有するコポリマーである、請求項18に記載の複合菌糸体材料。
【請求項20】
前記結合剤が、酢酸ビニル-エチレン(VAE)コポリマーである、請求項18又は19に記載の複合菌糸体材料。
【請求項21】
染料を更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項22】
前記染料が、酸性染料、直接染料、合成染料、天然染料、及び反応性染料からなる群から選択される、請求項21に記載の複合菌糸体材料。
【請求項23】
前記複合菌糸体材料が、前記染料で着色されており、
前記複合菌糸体材料の色が、前記複合菌糸体材料の1つ以上の表面上で実質的に均一である、
請求項21又は22に記載の複合菌糸体材料。
【請求項24】
前記染料が、前記複合菌糸体材料の内部全体にわたって存在する、請求項21~23のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項25】
可塑剤を更に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項26】
前記可塑剤が、油、グリセリン、加脂液、ソルビトール、ジエチルオキシエステルジメチルアンモニウムクロリド、Tween 20、Tween 80、m-エリトリトール、水、グリコール、クエン酸トリエチル、水、アセチル化モノグリセリド、及びエポキシ化ダイズ油からなる群から選択される、請求項25に記載の複合菌糸体材料。
【請求項27】
タンニンを更に含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項28】
仕上げ剤を更に含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項29】
前記仕上げ剤が、ウレタン、ワックス、ニトロセルロース、及び可塑剤からなる群から選択される、請求項28に記載の複合菌糸体材料。
【請求項30】
前記培養菌糸体材料が、固体基質上に生成されている、請求項1~29のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項31】
前記分岐菌糸の1つ以上の塊が絡み合っており、前記菌糸を絡み合わせることが、水流交絡、ニードルパンチ、又はフェルト化を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項32】
前記分岐菌糸の1つ以上の塊が、機械的作用によって破壊されている、請求項1~30のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項33】
前記機械的作用が、前記分岐菌糸の1つ以上の塊をブレンドすることを含む、請求項32に記載の複合菌糸体材料。
【請求項34】
前記機械的特性が、湿潤引張強度、初期弾性率、破断点伸び率、厚さ、及び/又はスリット引裂強度を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の複合菌糸体材料。
【請求項35】
複合菌糸体材料を生産する方法であって、
a.分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料を生成する工程と、
b.前記培養菌糸体材料にシロキサンを添加する工程と
を含み、それにより、前記複合菌糸体材料を生産する、方法。
【請求項36】
工程(a)で生成された前記培養菌糸体材料を、破壊又はプレスする工程
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記シロキサンが、前記分岐菌糸の塊の破壊前、前記分岐菌糸の塊の破壊中、又は前記分岐菌糸の塊の破壊後に添加される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記シロキサンが、前記プレス工程前、前記プレス工程中、又は前記プレス工程後に添加される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記シロキサンが、ヒドロキシシリコーン、水素化シリコーン、エポキシシリコーン、アミノシリコーン、又はアルキルエチレンオキシド縮合物を含む、請求項35~38に記載の方法。
【請求項40】
シロキサンを含む前記培養菌糸体材料が、シロキサンを含まない培養菌糸体材料と比較して、より低い曲げ弾性率を有する、請求項35~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
複合菌糸体材料を生産する方法であって、
a.分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料を生成する工程と、
b.脂肪族鎖化合物を前記培養菌糸体材料に添加する工程と
を含み、それにより、前記複合菌糸体材料を生産する、方法。
【請求項42】
工程(a)で生成された培養菌糸体材料を、破壊又はプレスする工程
を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記脂肪族鎖化合物が、前記分岐菌糸の塊の破壊前、前記分岐菌糸の塊の破壊中、又は前記分岐菌糸の塊の破壊後に添加される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記脂肪族鎖化合物が、前記プレス工程前、前記プレス工程中、又は前記プレス工程後に添加される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記脂肪族鎖化合物が、2-オクテニルコハク酸無水物(OSA)、2-ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、ステアリン酸無水物、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、ヘプタン酸無水物、酪酸無水物、又はクロロヒドリンを含む、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
脂肪族鎖化合物を含む前記培養菌糸体材料が、脂肪族鎖化合物を含まない培養菌糸体材料と比較して、より低い曲げ弾性率を有する、請求項41~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記複合菌糸体材料が、80MPa未満の曲げ弾性率を有する、請求項35~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記複合菌糸体材料が、1MPa~80MPaの曲げ弾性率を有する、請求項35~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記複合菌糸体材料が、少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80MPaの曲げ弾性率を有する、請求項35~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記複合菌糸体材料が、培養菌糸体材料単独と比較して、より可撓性が高い、請求項35~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記複合菌糸体材料が、結合剤を更に含む、請求項35~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記結合剤が、1つ以上の反応性基を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記1つ以上の反応性基が、活性水素含有基と反応する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記活性水素含有基が、アミン基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記結合剤が、接着剤、樹脂、架橋剤、及び/又はマトリックスを含む、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記結合剤が、酢酸ビニル-エチレン(VAE)コポリマー、酢酸ビニル-アクリルコポリマー、ポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂(PAE)、コポリマー、トランスグルタミナーゼ、クエン酸、ゲニピン、アルギン酸塩、アラビアゴム、ラテックス、天然接着剤、及び合成接着剤からなる群から選択される、請求項51~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記結合剤が、1μm以下の粒径、0未満のガラス転移温度、及び自己架橋機能からなる群から選択される特性を有するコポリマーである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記結合剤が、酢酸ビニル-エチレン(VAE)コポリマーである、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
前記複合菌糸体材料が、染料を更に含む、請求項35~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記染料が、酸性染料、直接染料、合成染料、天然染料、及び反応性染料からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記複合菌糸体材料が、前記染料で着色されており、
前記複合菌糸体材料の色が、前記複合菌糸体材料の1つ以上の表面上で実質的に均一である、
請求項59又は60に記載の方法。
【請求項62】
前記染料が、前記複合菌糸体材料の内部全体にわたって存在する、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記複合菌糸体材料が、可塑剤を更に含む、請求項35~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記可塑剤が、油、グリセリン、加脂液、ソルビトール、ジエチルオキシエステルジメチルアンモニウムクロリド、Tween 20、Tween 80、m-エリトリトール、水、グリコール、クエン酸トリエチル、水、アセチル化モノグリセリド、及びエポキシ化ダイズ油からなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記複合菌糸体材料が、タンニンを更に含む、請求項35~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記複合菌糸体材料が、仕上げ剤を更に含む、請求項35~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記仕上げ剤が、ウレタン、ワックス、ニトロセルロース、及び可塑剤からなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記培養菌糸体材料が、固体基質上で生成されている、請求項35~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記分岐菌糸の1つ以上の塊を絡み合わせる工程を更に含み、
前記菌糸を絡み合わせる工程が、水流交絡、ニードルパンチ、又はフェルト化を含む、
請求項35~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記破壊する工程が、前記分岐菌糸の1つ以上の塊を機械的作用によって破壊することを含む、請求項35~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記機械的作用が、前記分岐菌糸の1つ以上の塊をブレンドすることを含む、請求項70に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月24日に出願された米国仮出願第63/117,897号、及び2021年2月9日に出願された米国仮出願第63/147,620号の利益を主張するものであり、両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
菌糸体は、その生物学的効率、強度、及び低い環境フットプリントのために、次世代の持続可能な材料において関心が高まっている。しかしながら、現在開発中の菌糸体材料は、脆性、応力下での層間剥離及び断裂に弱い性質、並びに不均一な審美的品質などの、不十分な機械的品質を有する。したがって、好ましい機械的特性、美的特性、及び他の利点を有する改善された菌糸体材料、並びに改善された菌糸体材料を作製するための材料及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
概要
一態様では、分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料と、分岐菌糸の1つ以上の塊に共有結合した脂肪族鎖化合物とを含む複合菌糸体材料が本明細書で提供される。
【0004】
別の態様では、分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料と、シロキサンとを含む複合菌糸体材料が本明細書で提供される。
【0005】
いくつかの実施形態では、分岐菌糸の1つ以上の塊が破壊される。
【0006】
いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料はプレスされる。
【0007】
いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物は、2-オクテニルコハク酸無水物(OSA)、2-ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、ステアリン酸無水物、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、ヘプタン酸無水物、酪酸無水物、又はクロロヒドリンを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、シロキサンは、ヒドロキシシリコーン、水素化シリコーン、エポキシシリコーン、アミノシリコーン、又はアルキルエチレンオキシド縮合物を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物を含む複合菌糸体材料は、培養菌糸体材料単独と比較して、より低い曲げ弾性率を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、シロキサンを含む複合菌糸体材料は、培養菌糸体材料単独と比較して、より低い曲げ弾性率を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、80MPa未満の曲げ弾性率を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、1MPa~80MPaの曲げ弾性率を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80MPaの曲げ弾性率を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、培養菌糸体材料単独と比較して、より可撓性が高い。
【0015】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、結合剤を更に含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、結合剤は、1つ以上の反応性基を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つ以上の反応性基は、活性水素含有基と反応する。
【0018】
いくつかの実施形態では、活性水素含有基は、アミン基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、結合剤は、接着剤、樹脂、架橋剤、及び/又はマトリックスを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、結合剤は、酢酸ビニル-エチレン(VAE)コポリマー、酢酸ビニル-アクリルコポリマー、ポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂(PAE)、コポリマー、トランスグルタミナーゼ、クエン酸、ゲニピン、アルギン酸塩、アラビアゴム、ラテックス、天然接着剤、及び合成接着剤からなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、結合剤は、1μm以下の粒径、0未満のガラス転移温度、及び自己架橋機能からなる群から選択される特性を有するコポリマーである。
【0022】
いくつかの実施形態では、結合剤は、酢酸ビニル-エチレン(VAE)コポリマーである。
【0023】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、染料を更に含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、染料は、酸性染料、直接染料、合成染料、天然染料、及び反応性染料からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、染料で着色されており、複合菌糸体材料の色は、複合菌糸体材料の1つ以上の表面上で実質的に均一である。
【0026】
いくつかの実施形態では、染料は、複合菌糸体材料の内部全体にわたって存在する。
【0027】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、可塑剤を更に含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、可塑剤が、油、グリセリン、加脂液、ソルビトール、ジエチルオキシエステルジメチルアンモニウムクロリド、Tween 20、Tween 80、m-エリトリトール、水、グリコール、クエン酸トリエチル、水、アセチル化モノグリセリド、及びエポキシ化大豆油からなる群から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、タンニンを更に含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、仕上げ剤を更に含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、仕上げ剤は、ウレタン、ワックス、ニトロセルロース、及び可塑剤からなる群から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料は、固体基質上で生成されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、分岐菌糸の1つ以上の塊は絡み合っており、菌糸を絡み合わせることは、水流交絡、ニードルパンチ、又はフェルト化を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、分岐菌糸の1つ以上の塊は、機械的作用によって破壊される。
【0035】
いくつかの実施形態では、機械的作用は、分岐菌糸の1つ以上の塊をブレンドすることを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、機械的特性は、湿潤引張強度、初期弾性率、破断点伸び率、厚さ、及び/又はスリット引裂強度を含む。
【0037】
別の態様では、複合菌糸体材料を生産する方法であって、分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料を生成することと、培養菌糸体材料にシロキサンを添加することとを含み、それにより、複合菌糸体材料を生産する方法が本明細書で提供される。
【0038】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程(a)で生成された培養菌糸体材料を破壊又はプレスすることを更に含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、シロキサンは、分岐菌糸の塊の破壊前、分岐菌糸の塊の破壊中、又は分岐菌糸の塊の破壊後に添加される。
【0040】
いくつかの実施形態では、シロキサンは、プレス工程前、プレス工程中、又はプレス工程後に添加される。
【0041】
いくつかの実施形態では、シロキサンは、ヒドロキシシリコーン、水素化シリコーン、エポキシシリコーン、アミノシリコーン、又はアルキルエチレンオキシド縮合物を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、シロキサンを含む培養菌糸体材料は、シロキサンを含まない培養菌糸体材料と比較して、より低い曲げ弾性率を有する。
【0043】
別の態様では、複合菌糸体材料を生産する方法であって、分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料を生成することと、脂肪族鎖化合物を培養菌糸体材料に添加することとを含み、それにより、複合菌糸体材料を生産する方法が本明細書で提供される。
【0044】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程(a)で生成された培養菌糸体材料を破壊又はプレスすることを更に含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物は、分岐菌糸の塊の破壊前、分岐菌糸の塊の破壊中、又は分岐菌糸の塊の破壊後に添加される。
【0046】
いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物は、プレス工程前、プレス工程中、又はプレス工程後に添加される。
【0047】
いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物は、2-オクテニルコハク酸無水物(OSA)、2-ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、ステアリン酸無水物、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、ヘプタン酸無水物、酪酸無水物、又はクロロヒドリンを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物を含む培養菌糸体材料は、脂肪族鎖化合物を含まない培養菌糸体材料と比較して、より低い曲げ弾性率を有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、80MPa未満の曲げ弾性率を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、1MPa~80MPaの曲げ弾性率を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80MPaの曲げ弾性率を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、培養菌糸体材料単独と比較して、より可撓性が高い。
【0053】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、結合剤を更に含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、結合剤は、1つ以上の反応性基を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、1つ以上の反応性基は、活性水素含有基と反応する。
【0056】
いくつかの実施形態では、活性水素含有基は、アミン基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、結合剤は、接着剤、樹脂、架橋剤、及び/又はマトリックスを含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、結合剤は、酢酸ビニル-エチレン(VAE)コポリマー、酢酸ビニル-アクリルコポリマー、ポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂(PAE)、コポリマー、トランスグルタミナーゼ、クエン酸、ゲニピン、アルギン酸塩、アラビアゴム、ラテックス、天然接着剤、及び合成接着剤からなる群から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態では、結合剤は、1μm以下の粒径、0未満のガラス転移温度、及び自己架橋機能からなる群から選択される特性を有するコポリマーである。
【0060】
いくつかの実施形態では、結合剤は、酢酸ビニル-エチレン(VAE)コポリマーである。
【0061】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、染料を更に含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、染料は、酸性染料、直接染料、合成染料、天然染料、及び反応性染料からなる群から選択される。
【0063】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、染料で着色されており、複合菌糸体材料の色は、複合菌糸体材料の1つ以上の表面上で実質的に均一である。
【0064】
いくつかの実施形態では、染料は、複合菌糸体材料の内部全体にわたって存在する。
【0065】
一部の実施形態では、複合菌糸体材料は、可塑剤を更に含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、可塑剤が、油、グリセリン、加脂液、ソルビトール、ジエチルオキシエステルジメチルアンモニウムクロリド、Tween 20、Tween 80、m-エリトリトール、水、グリコール、クエン酸トリエチル、水、アセチル化モノグリセリド、及びエポキシ化大豆油からなる群から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、タンニンを更に含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、仕上げ剤を更に含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、仕上げ剤は、ウレタン、ワックス、ニトロセルロース、及び可塑剤からなる群から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料は、固体基質上で生成されている。
【0071】
いくつかの実施形態では、本方法は、分岐菌糸の1つ以上の塊を絡み合わせることを更に含み、菌糸を絡み合わせることは、水流交絡、ニードルパンチ、又はフェルト化を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、破壊することは、機械的作用によって分岐菌糸の1つ以上の塊を破壊することを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、機械的作用は、分岐菌糸の1つ以上の塊をブレンドすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】本明細書に記載のいくつかの実施形態による複合菌糸体材料を生産する方法の概略図である。実線のボックスは必要な工程を示し、破線のボックスは任意選択の工程を示す。
【
図2】菌糸体及びシロキサン又は脂肪族鎖化合物を含む材料を生産する方法のフローチャートである。
【
図3】ATR-FTIRによって測定される、処理された材料へのOSAの組み込みを示す。
【
図4】示された材料のスリット引裂の試験結果を示す。
【
図5】示された材料のT型剥離引裂の試験結果を示す。
【
図6A】対照菌糸体材料の曲げ弾性率の試験結果を示す。
【
図6B】OSAのみで処理した菌糸体材料の曲げ弾性率の試験結果を示す。
【
図6C】OSA+5gのElite Plus結合剤で処理した菌糸体材料の曲げ弾性率の試験結果を示す。
【
図6D】OSA+9.8gのElite Plus結合剤で処理した菌糸体材料の曲げ弾性率の試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
詳細な説明
定義
本開示の様々な実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、説明から明らかになるであろう。本明細中で別途定義しない限り、本開示に関連して用いられる科学的及び技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が特に指示しない限り、複数の言及を含む。一般に、本明細書に記載される生化学、酵素学、分子及び細胞生物学、微生物学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法、並びにそれらの技法は、当技術分野において周知であり、一般に使用されるものである。
【0076】
以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0077】
「菌糸」という用語は、分岐糸状の形状を特徴とする真菌の形態学的構造を指す。
【0078】
「菌糸」という用語は、菌糸から構成される成分を有する物体を指す。
【0079】
「菌糸体」という用語は、分岐菌糸の1つ以上の塊によって形成される構造を指す。「質量」は、物質の量を指す。菌糸体は、真菌又は胞子嚢果の子実体とは別個の分離した構造である。
【0080】
「培養する」及び「培養」という用語は、真菌又は他の生物を意図的に増殖させるための定義された技術の使用を指す。
【0081】
「培養菌糸体材料」という用語は、培養菌糸体の1つ以上の塊を含むか、又は培養菌糸体のみを含む材料を指す。いくつかの実施形態では、培養菌糸体の1つ以上の塊は、本明細書に記載されるように破壊される。ほとんどの場合、培養菌糸体材料は、以下に記載されるように、固体基質上で生成されている。
【0082】
「複合菌糸体材料」という用語は、本明細書に記載の潤滑剤などの別の材料と組み合わされた培養菌糸体材料を含む任意の材料を指す。潤滑剤としては、本明細書に記載のシロキサン又は脂肪族鎖化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施形態では、菌糸体は、支持材料を含む。好適な支持材料としては、限定するものではないが、連続した不規則な繊維(例えば、不織繊維)の塊、穿孔材料(例えば、金網、穿孔プラスチック)、不連続粒子(例えば、木材チップ片)の塊、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、支持材料は、メッシュ、チーズクロス、生地、ニット、織布、及び不織布からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、菌糸体は、補強材料を含む。補強材料は、菌糸体又は複合菌糸体材料内に絡み合った支持材料である。いくつかの実施形態では、菌糸体は、ベース材料を含む。ベース材料は、菌糸体又は複合菌糸体材料の1つ以上の表面上に位置付けられる支持材料である。
【0084】
「組み込む」という用語は、別の物質と組み合わせるか又は接触させることができる任意の物質、例えば、培養菌糸体材料、複合菌糸体材料、又は潤滑剤を指す。特定の実施形態では、菌糸体又は複合菌糸体材料は、支持材料と組み合わされ、接触され、又は組み込まれ得、例えば、一緒に織られ、撚られ、巻かれ、折り畳まれ、絡まされ、絡み合わされ、又は編まれて、支持材料に組み込まれた菌糸体材料を生産することができる。別の実施形態では、1つ以上の潤滑剤は、菌糸体材料を生産するために、破壊された状態又は破壊されていない状態のいずれかで培養菌糸体材料内に組み込まれてもよく、例えば、材料全体に埋め込まれてもよく、又は噴霧、飽和、浸漬、ニップローリング、コーティングなどによって薄いコーティング層として添加されてもよい。
【0085】
本明細書で使用される場合、分岐菌糸の1つ以上の塊に関する「破壊された」という用語は、1回以上の破壊が加えられた分岐菌糸の1つ以上の塊を指す。本明細書に記載の「破壊」は、機械的もしくは化学的、又はそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、分岐菌糸の1つ以上の塊は、機械的作用によって破壊される。本明細書で使用される「機械的作用」は、機械又はツールの操作、又は機械又はツールに関する操作を指す。例示的な機械的作用としては、限定されないが、ブレンド、細断、衝撃付与、締固め、結合、細断、粉砕、圧縮、高圧、せん断、レーザ切断、ハンマーミリング、及び噴射水流の力が挙げられる。いくつかの実施形態では、機械的作用は、例えば、分岐菌糸の塊の少なくともいくつかが1つ以上の方向に平行に整列するように、1つ以上の方向に物理的力を加えることを含んでもよく、物理的力は繰り返し加えられる。いくつかの他の実施形態では、分岐菌糸の1つ以上の塊は、化学処理によって破壊される。本明細書で使用される「化学処理」とは、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を、破壊を引き起こすのに十分な量の化学薬剤、例えば塩基又は他の化学薬剤と接触させることを指す。様々な実施形態では、機械的作用及び化学的処理の組み合わせが本明細書において使用されてもよい。機械的作用の量(例えば、圧力の量)及び/又は適用される化学薬剤、機械的作用及び/又は化学処理が適用される期間、並びに機械的作用及び/又は化学薬剤が適用される温度は、部分的に、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の成分に依存し、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に最適な破壊を提供するように選択される。
【0086】
本明細書で使用される「潤滑剤」という用語は、構造体と相互作用して、構造体の可動性を増加させる任意の分子を指す。
【0087】
本明細書で使用される「加工菌糸体材料」という用語は、保存剤、可塑剤、仕上げ剤、染料による処理、及び/又はタンパク質処理の任意の組み合わせによって後加工された菌糸体を指す。
【0088】
本明細書で使用するとき、「ウェブ」という用語は、破壊され、スラリーに変換され、ある編成に配列された(例えば、乾式積層、空気積層、及び/又は湿式積層された)菌糸体材料又は複合菌糸体材料を指す。
【0089】
本明細書で使用される「スパンレース」という用語は、破壊され、水流交絡された菌糸体材料又は複合菌糸体材料を指し、分岐した菌糸の1つ以上の塊が、ウォータージェットなどを使用して絡み合わされる。
【0090】
特に定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者に共通に理解されるものと同じ意味を有している。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料もまた、開示される主題の実施又は試験において使用され得るが、好適な方法及び材料がここで記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示及び記載するために参照により組み込まれる。
【0091】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈が別途明確に指示しない限り下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載範囲内の任意の他の記載値又は介在値が、本開示の態様内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は独立して、そのより小さな範囲内に含まれ得、また、記載される範囲内の任意の具体的に除外される限界値に従って、本開示内に包含される。記載される範囲がこれらの限界値のうちの1つ又は両方を含む場合、これらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除く範囲も、本開示の一部であることが企図される。
【0092】
特定の範囲は、「約」という語が先行する数値で本明細書に提示される。「約」という用語は、本明細書では、それが先行する正確な数、並びにその用語が先行する数に近い又は近似する数に対する文字通りの裏付けを提供するために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか又は近似しているかどうかを決定する際に、その近いか又は近似している列挙されていない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙された数の実質的な等価物を提供する数であり得る。
【0093】
例示的な方法及び材料を以下に記載するが、本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料も本開示の実施において使用することができ、当業者には明らかであろう。本明細書中で言及される全ての刊行物及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。不一致である場合、定義を含め本明細書が適用される。材料、方法、及び実施例は、単に例示的なものであり、限定を意図したものではない。
【0094】
菌糸体組成物及び生産方法
本明細書では、培養菌糸体材料及び複合菌糸体材料、並びに培養菌糸体材料及び複合菌糸体材料を生産するスケーラブルな方法が提供される。いくつかの又はほとんどの実施形態では、複合菌糸体材料は、分岐菌糸の1つ以上の塊を有する培養菌糸体材料と、シロキサンとを含む。いくつかの又はほとんどの実施形態では、複合菌糸体材料は、分岐菌糸の1つ以上の塊を有する培養菌糸体材料と、脂肪族鎖化合物とを含む。いくつかの又はほとんどの実施形態では、複合菌糸体材料は、分岐菌糸の1つ以上の塊を有する培養菌糸体材料と、潤滑剤とを含む。いくつかの実施形態では、分岐菌糸の1つ以上の塊が破壊される。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料はプレスされる。培養菌糸体材料及び複合菌糸体材料を生産する方法も提供される。
【0095】
菌糸体を増殖させる方法を考察する例示的な特許及び出願としては、限定はしないが、PCT公開第1999/024555号、英国特許第2,148,959号、英国特許第2,165,865号、米国特許第5,854,056号、米国特許第2,850,841号、米国特許第3,616,246号、米国特許第9,485,917号、米国特許第9,879,219号、米国特許第9,469,838号、米国特許第9,914,906号、米国特許第9,555,395号、米国特許出願公開第2015/0101509号、米国特許出願公開第2015/0033620号明細書(これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。2018年10月4日に公開された米国特許出願公開第2018/0282529号は、布地又は皮革代替物への加工のために好ましい機械的特性を有する材料を生産するための、菌糸体材料の溶液ベースの後加工の様々な機構について論じている。
【0096】
図1に示されるように、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による菌糸体材料を生産する例示的な方法は、菌糸体材料を培養すること、任意選択で培養菌糸体材料を破壊又はプレスすること、任意選択でシロキサン又は脂肪族鎖化合物などの潤滑剤を添加すること、任意選択で支持材料などの追加の材料を組み込むこと、及びそれらの組み合わせを含む。様々な実施形態では、従来の製紙装置が、本明細書に提示される工程の一部又は全部を実行するように適合又は使用され得る。そのような実施形態では、菌糸体材料は、従来の紙粉砕装置を使用して生産される。
【0097】
互いに通信するいくつかの構成要素を有する実施形態の説明は、全てのそのような構成要素が必要とされることを示唆するものではない。反対に、本開示の1つ以上の態様の多種多様な可能な実施形態を示すために、及び本開示の1つ以上の態様をより完全に示すために、様々な任意選択の構成要素が説明され得る。同様に、プロセス工程、方法工程、アルゴリズムなどは、連続的な順序で説明され得るが、そのようなプロセス、方法、及びアルゴリズムは、一般に、異なることが具体的に述べられていない限り、代替的な順序で動作するように構成され得る。言い換えれば、本明細書で説明され得る工程の任意のシーケンス又は順序は、それ自体、工程がその順序で実行されるという要件を示すものではない。説明されるプロセスの工程は、実用的な任意の順序で実行され得る。更に、いくつかの工程は、(例えば、1つの工程が他の工程の後に記載されているので)非同時に行われるものとして記載又は示唆されているにもかかわらず、同時に実行されてもよい。更に、図面におけるその描写によるプロセスの例示は、例示されたプロセスがその他の変形及び修正を排除することを示唆したり、例示されたプロセス又はその工程のいずれかが1つ以上の実施形態に必要であることを示唆したり、例示されたプロセスが好ましいことを示唆したりするものではない。また、それらの工程は、概して、実施形態ごとに1回説明されるが、これは、それらが1回発生しなければならないこと、又はプロセス、方法、もしくはアルゴリズムが実行又は実施されるたびに1回のみ発生し得ることを意味しない。いくつかの工程は、いくつかの実施形態もしくはいくつかの発生において省略されてもよく、又はいくつかの工程は、所与の実施形態もしくは発生において2回以上実行されてもよい。
【0098】
培養菌糸体材料
本開示の実施形態は、様々な種類の培養菌糸体材料を含む。特定の実施形態及び求められる材料の要件に応じて、菌糸体を培養する様々な既知の方法が使用され得る。菌糸体として培養することができる任意の真菌が使用され得る。使用に適した真菌種としては、シロオオハラタケ(Agaricus arvensis)、アグロサイブ・ブラシリエンシス(Agrocybe brasiliensis)、乳酸生成糸状菌(Amylomyces rouxii)、アミロマイセス属の種(Amylomyces sp.)、ナラタケ(Armillaria mellea)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)、セリポリア・ラセラタ(Ceriporia lacerata)、ササクレヒトヨタケ(Coprinus comatus)、マワタグサレキン(Fibroporia vaillantii)、カンゾウタケ(Fistulina hepatica)、エノキタケ(Flammulina velutipes)、エブリコ(Fomitopsis officinalis)、オオマンネンタケ(Ganoderma sessile)、ツガノマンネンタケ(Ganoderma tsugae)、ヤマブシタケ(Hericium erinaceus)、クリタケモドキ(Hypholoma capnoides)、クリタケ(Hypholoma sublaterium)、カバノアナタケ(Inonotus obliquus)、キチチタケ(Lactarius chrysorrheus)、カラカサタケ(Macrolepiota procera)、コトガリアミガサタケ(Morchella angusticeps)、マイセリオフィソラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camembertii)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ペニシリウム・ルベンス(Penicillium rubens)、ヒゲカビ(Phycomyces blakesleeanus)、トキイロヒラタケ(Pleurotus djamor)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、アミヒラタケ(Polyporus squamosus)、サチレラ・アクアティカ(Psathyrella aquatica)、リゾプス・ミクロスポア(Rhizopus microspores)、クモノスカビ(Rhizopus oryzae)、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)、ストレプトマイセス・ベネズエラエ(Streptomyces venezuelae)、サケツバタケ(Stropharia rugosoannulata)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、及びトウモロコシ黒穂菌(Ustilago maydis)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、使用される真菌としては、オオマンネンタケ(Ganoderma sessile)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、及び/又はヒゲカビ(Phycomyces blakesleeanus)が挙げられる。
【0099】
いくつかの実施形態では、真菌の株又は種は、菌糸の高密度ネットワーク、菌糸の高分岐ネットワーク、菌糸のネットワーク内の菌糸融合、及び培養菌糸体材料の特性を変化させ得る他の特徴などの、特定の特徴を有する培養菌糸体材料を生産するために繁殖され得る。いくつかの実施形態では、真菌の株又は種は、特定の特徴を有する培養菌糸体材料を生産するように遺伝子改変されてもよい。
【0100】
ほとんどの実施形態では、培養菌糸体は、最初に、固体又は液体基質に、選択された真菌種由来の菌糸体の接種物を接種することによって増殖され得る。いくつかの実施形態では、基質は、他の生物からの汚染又は競合を防止するために、接種前に低温殺菌又は滅菌される。例えば、菌糸体を培養する標準的な方法は、滅菌固体基質(例えば、穀粒)に菌糸体の接種物を接種することを含む。菌糸体を培養する他の標準的な方法としては、滅菌液体培地(例えば、液体ジャガイモデキストロース)に菌糸体の接種物又は純粋な培養種菌を接種することが挙げられる。いくつかの実施形態では、固体及び/又は液体基質は、菌糸体の炭素源としてリグノセルロースを含む。いくつかの実施形態では、固体及び/又は液体基質は、菌糸体のための炭素源として単糖又は複合糖を含有する。
【0101】
図2に示すように、菌糸体材料を生産するための方法100が示されている。方法100は、固体支持体上に栄養源を接種すること104と、106において混合物をインキュベートして菌糸体のバイオマスを増殖させることと、108において菌糸体の培養バイオマスを収集することと、110において菌糸体のバイオマスをウェブ形成して菌糸ネットワークを形成することと、112において菌糸ネットワーク内の菌糸の分岐を任意選択で絡み合わせることとを含む。
【0102】
工程106において、接種された栄養源は、菌糸体バイオマスの増殖を促進するためにインキュベートされる。栄養源及び固体支持体の条件は、下流プロセスにおける交絡のために十分な形態学的特徴を有する菌糸の複数の分岐を有する菌糸体バイオマスの増殖を促進するように選択することができる。例示的な形態学的特徴としては、菌糸分岐の最小長、菌糸ネットワークの所望の密度、菌糸の所望の分岐度、所望のアスペクト比、及び/又は菌糸ネットワークの所望の菌糸融合度が挙げられる。本開示の一態様によれば、106でのインキュベーション工程における固体支持体の条件は、少なくとも約0.1mmの長さを有する菌糸の複数の分岐を有する菌糸体のバイオマスの増殖を促進するように選択される。例えば、菌糸は、約0.1mm~約5mm、約0.1mm~約4mm、約0.1mm~約3mm、約0.1mm~約2mm、約0.1mm~約1mm、約1mm~約5mm、約1mm~約4mm、約1mm~約3mm、約1mm~約2mm、約2mm~約5mm、約2mm~約4mm、又は約2mm~約3mmの長さを有し得る。
【0103】
インキュベーション工程106は、酸素の存在下で好気的条件下で行うことができる。必要に応じて、固体支持体は、インキュベーション工程の全て又は一部の間、チャンバ中に密封され得る。いくつかの例では、酸素がチャンバ内に導入され得る。インキュベーション温度は、特定の真菌種に基づいて選択することができる。いくつかの例では、インキュベーション中のチャンバの温度は、約20℃~約40℃、約25℃~約40℃、約30℃~約40℃、約35℃~約40℃、約20℃~約35℃、約25℃~約35℃、約30℃~約35℃、約20℃~約30℃、又は約25℃~約30℃である。
【0104】
インキュベーション工程106は、菌糸の複数の分岐を含む菌糸体のバイオマスの増殖を促進するように構成される。インキュベーション工程106は、菌糸体の培養バイオマスが工程108で収集されたときに終了することができる。インキュベーション工程106は、所定の時間に、又は菌糸体バイオマスの所定の濃度に達したときに終了してもよい。工程108で培養バイオマスで収集された後、菌糸体のいくらかの継続した増殖が存在し得る。必要に応じて、菌糸体バイオマスは、菌糸体の増殖を停止するために処理され得る。
【0105】
工程108において、培養菌糸体バイオマスが収集される。収集されたバイオマスは、乾燥菌糸体バイオマスを水溶液に添加することによってスラリーにすることができる。工程108において、そのようなスラリー中の菌糸体の収集されたバイオマスの濃度は、工程110における後続のウェブ形成プロセスに基づいて調整され得る。いくつかの例において、菌糸体の培養バイオマスは、スラリーの形態である。菌糸体のバイオマスの濃度は、スラリーの体積を増加させることによって、又はスラリーから液体の少なくとも一部を除去することによって菌糸体バイオマスを濃縮することによって調整され得る。いくつかの例において、菌糸体バイオマスの濃度は、約10g/L~約30g/L、約10g/L~約25g/L、又は約10g/L~約20g/Lの濃度に調整され得る。他の例では、菌糸体の培養バイオマスを収集し、乾燥させ得る。
【0106】
いくつかの態様では、任意選択で、工程110におけるウェブ形成プロセス前、ウェブ形成プロセス中、又はウェブ形成プロセス後に、潤滑剤を菌糸体の培養バイオマスに添加することができる。潤滑剤は、菌糸体の培養バイオマスの収集前、収集中、又は収集後に添加することができ、及び/又は菌糸体の培養バイオマスの濃度を調整することができる。潤滑剤は、本明細書に記載される任意の潤滑剤、例えばシロキサン又は脂肪族鎖化合物であり得る。例えば、シロキサン潤滑剤は、ヒドロキシシリコーン、水素化シリコーン、エポキシシリコーン、アミノシリコーン、又はアルキルエチレンオキシド縮合物であり得るが、これらに限定されない。脂肪族鎖化合物潤滑剤は、2-オクテニルコハク酸無水物(OSA)、2-ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、ヘプタン酸無水物、酪酸無水物、ステアリン酸無水物、又はクロロヒドリンであり得るが、これらに限定されない。
【0107】
結合剤はまた、任意選択で、工程110におけるウェブ形成プロセス前、ウェブ形成プロセス中、又はウェブ形成プロセス後に、菌糸体の培養バイオマスに添加することができる。結合剤は、潤滑剤と共に、潤滑剤の前に、又は潤滑剤の後に添加することができる。結合剤は、本明細書に記載される任意の酢酸ビニル-エチレンコポリマー、酢酸ビニル-アクリルコポリマー、接着剤、樹脂、架橋剤、又はポリマーマトリックス材料、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0108】
いくつかの態様では、菌糸の複数の分岐は、任意選択で、工程110におけるウェブ形成プロセス前、ウェブ形成プロセス中、又はウェブ形成プロセス後に破壊することができる。菌糸の複数の分岐は、菌糸を破壊するための本明細書に記載される機械的及び/又は化学的方法のいずれかに従って破壊することができる。例えば、工程110でのウェブ形成プロセスの前に、菌糸は、ブレンド、細断、衝撃付与、締固め、束縛、細断、粉砕、圧縮、高圧噴射水流、又は剪断力などの機械的作用によって機械的に破壊することができる。菌糸は、菌糸体の培養バイオマスの濃度の調整前、調整中、又は調整後に破壊することができる。
【0109】
いくつかの態様では、収集された菌糸体のバイオマスは、潤滑剤及び/又は結合剤を添加する前又は後に、任意選択でプレスすることができる。
【0110】
いくつかの態様において、収集された菌糸体のバイオマスは、工程110におけるウェブ形成プロセス前、ウェブ形成プロセス中、又はウェブ形成プロセス後に、天然及び/又は合成繊維と任意選択で組み合わせることができる。一態様では、繊維は、菌糸の複数の分岐の破壊、破壊中、又は破壊後に、菌糸体と組み合わせることができる。繊維は、任意の適切な厚さを有することができる。好適な繊維の非限定的な例としては、セルロース繊維、綿繊維、レーヨン繊維、リヨセル繊維、テンセル(商標)繊維、ポリプロピレン繊維、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一態様では、繊維は、約25mm未満、約20mm未満、約15mm未満、又は約10mm未満の長さを有することができる。例えば、繊維は、約1mm~約25mm、約1mm~約20mm、約1mm~約15mm、約1mm~約10mm、約1mm~約5mm、約5mm~約25mm、約5mm~約20mm、約5mm~約15mm、約5mm~約10mm、約10mm~約25mm、約10mm~約20mm、又は約10mm~約15mmの長さを有することができる。繊維は、所望の濃度で菌糸体と組み合わせることができる。一例において、繊維は、約1重量%~約25重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、又は約10重量%~約15重量%の量で菌糸体と組み合わされ得る。
【0111】
工程110では、工程108で収集された菌糸体のバイオマスをウェブ形成プロセスに従って処理して、菌糸ネットワークを形成することができる。ウェブ形成プロセスは、本明細書に記載される湿式積層、乾式積層、又は空気積層技術のいずれかを含むことができる。工程110で形成されたウェブの菌糸は、任意選択で、本明細書に記載の結合剤のいずれかを使用して化学的及び/又は熱的に結合させることができる。
【0112】
任意選択で、工程110におけるウェブ形成は、支持材料上に菌糸の分岐を積層することを含むことができる。本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、支持材料は、補強材料である。適切な支持材料の非限定的な例としては、織繊維、連続した不規則な繊維の塊(例えば、不織繊維)、穿孔材料(例えば、金網又は穿孔プラスチック)、不連続粒子の塊(例えば、木材チップ片)、チーズクロス、布、結節繊維、スクリム、及び布地が挙げられる。菌糸は、支持材料と組み合わせる、接触させる、及び/又は支持材料に組み込むことができる。例えば、いくつかの態様において、菌糸は、本明細書に記載されるように、支持材料と一緒に織られ、撚られ、巻かれ、折り畳まれ、絡まされ、絡み合わされ、及び/又は編まれて、菌糸体材料を形成することができる。いくつかの態様において、繊維は、化学結合剤の添加前、添加中、及び/又は添加後に支持材料上に据えることができる。いくつかの態様では、ウェブ形成工程110前、ウェブ形成工程中、又はウェブ形成工程後に、補強材料を菌糸の枝と組み合わせることができる。
【0113】
工程112において、工程110で形成された菌糸ネットワークは、菌糸ネットワーク内の菌糸の複数の分岐を絡ませる交絡プロセスを経ることができる。交絡プロセスは、ニードルパンチ(フェルト化とも呼ばれる)及び/又は水流交絡を含むことができる。支持材料が存在する場合、交絡プロセスは、複数の菌糸分岐の少なくとも一部を支持材料と絡み合わせることを任意選択で含む。交絡プロセスは、菌糸間、及び任意選択で菌糸と支持材料(存在する場合)との間に機械的相互作用を形成することができる。いくつかの実施形態では、菌糸は、支持材料と絡み合っていない。
【0114】
いくつかの態様では、工程112における交絡は、1本以上の針が菌糸ネットワークに出入りするニードルパンチ又はニードルフェルト化プロセスによって達成される。菌糸ネットワークへの針の出入りは、菌糸の交絡及び任意選択で菌糸の配向を容易にする。針のアレイを有するニードルパンチを使用して、ニードルアレイが通過する度に複数の位置で菌糸ネットワークを穿孔することができる。針の数、針の間隔、針の形状、及び針のサイズ(すなわち、針ゲージ)は、菌糸ネットワークの所望の程度の交絡を提供するように選択することができる。例えば、針は、有棘であってもよく、任意の好適な形状を有してもよく、その非限定的実施例は、ピンチブレード、星型ブレード、及び円錐ブレードを含む。面積当たりのニードルパンチの数及びパンチ速度はまた、菌糸ネットワークの所望の程度の交絡を提供するように選択することができる。ニードルパンチ又はニードルフェルト化プロセスのパラメータは、真菌種、菌糸ネットワークを形成する菌糸の形態及び寸法、所望の交絡度、及び/又は菌糸体材料の最終用途に少なくとも部分的に基づいて選択することができる。
【0115】
いくつかの態様において、工程112における交絡は、水流交絡プロセスによって達成される。水流交絡プロセスは、菌糸の交絡を促進するために、高圧液体ジェットを菌糸ネットワークに方向付ける。液体は、任意の好適な液体であってもよく、その例としては水が挙げられる。交絡プロセスは、菌糸ネットワーク内の特定の位置に液体の流れを方向付けるように構成された孔のアレイを有する紡糸口金を含むことができる。孔の直径は、菌糸ネットワークに方向付けられる、所望の直径の液体噴流を提供するように選択することができる。アレイ中の孔の数及びアレイ中の孔の間隔などの紡糸口金の追加の態様は、菌糸ネットワークの所望の程度の交絡を提供するように選択することができる。菌糸ネットワーク及び紡糸口金は、液体噴流があるパターンで菌糸ネットワークに向けられるように、互いに対して移動し得る。例えば、紡糸口金は、菌糸ネットワークに対してほぼ「Z」又は「N」状のパターンで移動して、菌糸ネットワーク上に紡糸口金を複数回通過させ得る。通過の数及び適用パターンは、菌糸ネットワークの所望の程度の交絡を提供するように選択することができる。水流交絡プロセスのパラメータは、真菌種、菌糸ネットワークを形成する菌糸の形態及び寸法、所望の交絡度、及び/又は菌糸体材料の最終用途に少なくとも部分的に基づいて選択することができる。いくつかの例では、水流交絡プロセスは、菌糸体材料の一部がウェブ形成され(例えば、湿式積層)、水流交絡プロセスが進行し、次いで、菌糸体材料の第2の部分が第1の部分の上にウェブ形成され、水流交絡プロセスが繰り返されるように、段階的に行われる。菌糸体材料の一部をウェブ形成し、ウェブ形成された部分を水流交絡するこのプロセスは、材料の最終厚さがウェブ形成されるまで任意の回数繰り返すことができる。
【0116】
液体圧力、紡糸口金の開口部の直径、及び/又は液体の流量は、所望の程度の菌糸ネットワークの交絡、並びに任意選択で菌糸ネットワーク及び支持材料の交絡を提供するように選択することができる。例えば、水流交絡プロセス中の液体圧力は、少なくとも100psi、少なくとも200psi、少なくとも300psi、少なくとも400psi、少なくとも500psi、少なくとも600psi、少なくとも700psi、少なくとも800psi、少なくとも900psi、又は少なくとも1000psiであり得る。いくつかの例において、液体噴射圧は、約700~約900psiである。いくつかの例では、紡糸口金の開口部の直径は、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約30ミクロン、少なくとも約50ミクロン、少なくとも約70ミクロン、少なくとも約90ミクロン、少なくとも約110ミクロン、少なくとも約130ミクロン、又は少なくとも約150ミクロンである。例えば、紡糸口金の開口部の直径は、約10ミクロン~約150ミクロン、20ミクロン~約70ミクロン、約30ミクロン~約80ミクロン、約40ミクロン~約90ミクロン、約50ミクロン~約100ミクロン、約60ミクロン~約110ミクロン、又は約70ミクロン~約120ミクロンとすることができる。いくつかの例では、開口部は、約50ミクロンの直径を有する。いくつかの例では、液体の流量は、約100mL/分~約300mL/分とすることができる。いくつかの例では、交絡プロセス中のベルト速度は、約1メートル/分である。
【0117】
112での交絡プロセスの完了後、菌糸体材料は、本明細書に記載される後処理方法及び/又は処理のいずれかに従って加工することができる。後処理方法及び処理の非限定的な例としては、可塑剤による処理、タンニン及び/又は染料による処理、防腐剤による処理、タンパク質源による処理、コーティング剤及び/又は仕上げ剤による処理、乾燥プロセス、圧延又はプレスプロセス、並びにエンボス加工プロセスにおける処理が挙げられる。
【0118】
様々な実施形態では、液体又は固体基質は、1つ以上の異なる栄養源が補充され得る。栄養源は、リグノセルロース、単糖(例えば、デキストロース、グルコース)、複合糖、寒天、麦芽抽出物、窒素源(例えば、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、アミノ酸)及び他のミネラル(例えば、硫酸マグネシウム、リン酸塩)を含有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の栄養源は、木材廃棄物(例えば、堅木、ビーチ材、及びヒッコリー材を含むおがくず)及び/又は農業廃棄物(例えば、家畜、わら、トウモロコシ茎葉)中に存在し得る。基質が接種され、任意選択で1つ以上の異なる栄養源が補充されると、培養菌糸体を増殖させ得る。菌糸体を増殖させる方法は、当該技術分野において十分に確立されている。菌糸体を増殖させる例示的な方法としては、米国特許第5,854,056号、米国特許第4,960,413号、及び米国特許第7,951,388号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
いくつかの実施形態では、培養菌糸体の増殖は、子実体の形成を防ぐように制御される。子実体の形成を防止する様々な方法が、米国特許公開第2015/0033620号、米国特許第9,867,337号、及び米国特許第7,951,388号に詳細に論じられている。他の実施形態では、培養菌糸体は、任意の形態学的又は構造的変異を欠くように増殖され得る。求められる実施形態に応じて、光(例えば、日光又は生育ランプ)への曝露、温度、二酸化炭素などの増殖条件が、増殖中に制御され得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、培養菌糸体は、寒天培地上で増殖され得る。栄養素が、寒天/水ベースに添加されてもよい。菌糸体材料を培養するために一般的に使用される標準的な寒天培地としては、限定されないが、強化バージョンの麦芽エキス寒天(MEA)、ジャガイモデキストロース寒天(PDA)、オートミール寒天(OMA)、及びドッグフード寒天(DFA)が挙げられる。
【0121】
ほとんどの実施形態では、培養菌糸体材料は、固体塊として増殖され得、後に破壊され得る。破壊される培養菌糸体材料は、以下に記載されるように、生きたマットであってもよく、保存されてもよく、又はそうでなければ菌糸体を死滅させる(すなわち、菌糸体の増殖を停止させる)ように処理されてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料は、互いに相互接続する微細なフィラメントを規定する細長い菌糸を含むように増殖されてもよく、以下に更に記載されるように、増殖手順において提供される様々な支持材料と更に相互接続してもよい。微細フィラメントは、微細フィラメントの増殖した長さが、微細フィラメントと種々の添加剤との間の十分なネットワーク相互接続を支持するために適切であるかどうかを判定するために、光学拡大又は撮像デバイスを使用して分析され得る。微細フィラメントは、十分な長さであるだけでなく、それらの間に適切な相互接続を提供するために可撓性を有するべきである。
【0123】
いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料は、乾式アレイ、湿式積層、又は空気積層技術を使用して加工され得る。乾式積層又は乾式アレイでは、分岐菌糸の不活性又は増殖中の菌糸体ネットワークを引き離し、ほぐして、ネットワークの体積を拡大し得る。同様に、湿式積層法では、分岐菌糸の不活性な又は増殖中の菌糸体ネットワークを液体培地中で飽和させて、ネットワークをほどき、ネットワークの体積を拡大することができる。更に、空気積層法では、分岐菌糸の不活性又は増殖中の菌糸体ネットワークを空気中に浮遊させて、ネットワークの体積を拡大するウェブを作製し得る。このような技法の後、拡大されたネットワークを圧縮して、高密度又は圧縮されたネットワークを提供することができる。ウェブは、少なくとも6gm/立方メートルの全体密度プロファイルを含むように高密度化することができる。圧縮ウェブは、皮革代替材料を提供するために複製された皮革パターンでエンボス加工することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、本方法は、収集された菌糸体のバイオマスをウェブ形成する工程を含む。いくつかの実施形態では、収集された菌糸体のバイオマスをウェブ形成する工程は、菌糸体のバイオマスを支持材料上に堆積させることを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、支持材料は、織繊維、不織繊維、メッシュ、有孔プラスチック、木材チップ、チーズクロス、織物、結節繊維、スクリム、布地、又はそれらの組み合わせを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、菌糸の複数の分岐を絡み合わせることは、菌糸の複数の分岐の少なくとも一部を支持材料と絡み合わせることを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、本方法は、ウェブ形成工程前、ウェブ形成工程中、又はウェブ形成工程後のうちの1つで、補強材料を菌糸体のバイオマスと組み合わせることを更に含む。いくつかの実施形態では、ウェブ形成は、湿式積層、空気積層、又は乾式積層を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、本方法は、ウェブ形成工程前、ウェブ形成工程中、又はウェブ形成工程後に、天然繊維、合成繊維、又はそれらの組み合わせのうちの1つを菌糸体のバイオマスと組み合わせることを更に含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、繊維は、25ミリメートル未満の長さを有する。
【0130】
破壊された培養菌糸体材料
分岐菌糸の1つ以上の塊を含む様々な種類の培養菌糸体材料は、生産プロセス中の様々な時点で破壊されることによって、破壊された分岐菌糸の1つ以上の塊を生成し得る。そのような実施形態では、培養菌糸体材料は、破壊された分岐菌糸の1つ以上の塊を含む。培養菌糸体材料は、結合剤の添加前又は後に破壊され得る。一態様において、培養菌糸体材料は、結合剤の添加と同時に破壊され得る。破壊の例示的な実施形態は、機械的作用、化学的処理、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。例えば、分岐菌糸の1つ以上の塊は、機械的作用及び化学的処理の両方、機械的作用単独、又は化学的処理単独によって破壊され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、分岐菌糸の1つ以上の塊は、機械的作用によって破壊される。機械的作用としては、ブレンド、細断、衝撃付与、締固め、結合、破砕、粉砕、圧縮、高圧、噴射水流、及び剪断力が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、機械的作用は、分岐菌糸の1つ以上の塊をブレンドすることを含む。このような破壊を達成する例示的な方法としては、ブレンダー、ミル、ハンマーミル、ドラムカーダー、熱、圧力、水などの液体、グラインダー、ビーター、及びリファイナーの使用が挙げられる。例示的な生産プロセスにおいて、培養菌糸体材料は、従来の単位操作(例えば、均質化、粉砕、コアセルベーション、ミリング、ジェットミリング、ウォータージェットなど)によって機械的に破壊される。
【0132】
更なる態様によれば、機械的作用は、分岐菌糸の塊の少なくともいくつかが特定の編成で整列されるように、例えば、平行な編成で、又は応力方向に沿ってもしくは応力方向と反対に整列されるように、分岐菌糸の1つ以上の塊に物理的力を加えることを含む。物理的力は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の1つ以上の層に加えることができる。そのような破壊された菌糸体材料は、典型的には、様々な配向を有する層で構築され得る。例示的な物理的力としては、引張力及び整列力が挙げられるが、これらに限定されない。そのような破壊を達成する例示的な方法としては、ローラ及び延伸機器の使用が挙げられる。いくつかの実施形態では、分岐菌糸の塊の少なくともいくつかが1つ以上の方向に平行に整列するように、物理的力が1つ以上の方向に加えられ、物理的力は繰り返し加えられる。そのような実施形態では、物理的力は、少なくとも2回、例えば、少なくとも3回、少なくとも4回、又は少なくとも5回加えられ得る。
【0133】
いくつかの他の実施形態では、分岐菌糸の1つ以上の塊は、化学処理によって破壊される。そのような実施形態では、化学処理は、分岐菌糸の1つ以上の塊を、アルカリ過酸化物、β-グルカナーゼ、界面活性剤、酸、並びに水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウム(又はソーダ灰)などの塩基を含むがこれらに限定されない、破壊を引き起こすのに十分な塩基又は他の化学薬剤と接触させることを含む。最適pHを維持する目的で、溶液中の培養菌糸体材料のpHを監視することができる。
【0134】
一部の実施形態では、本明細書に記載の破壊は、破壊された分岐菌糸の1つ以上の塊、例えば、サブネットワークを生成する。本明細書で使用される場合、「サブネットワーク」とは、破壊(例えば、機械的作用又は化学処理)後に生産される分岐菌糸の個別の塊を指す。サブネットワークは、例えば、球形、正方形、長方形、菱形、及び異形のサブネットワークなどの幅広い種類の形状であってもよく、各サブネットワークは、様々なサイズであってもよい。培養菌糸体材料は、所望の範囲のサイズを有する破壊された分岐菌糸、例えば、サブネットワークの1つ以上の塊を生産するのに十分に破壊され得る。多くの場合、破壊は、所望の範囲内のサブネットワークのサイズ及びサイズ分布の両方を得るのに十分に制御することができる。サブネットワークのより正確なサイズ分布が必要とされる他の実施形態では、破壊された培養菌糸体材料は、例えば篩い分けや凝集などによって、所望のサイズ分布を提供するように更に処理又は選択され得る。例えば、サブネットワークは、約0.1mm~約5mm、例えば、約0.1mm~約2mm、約1mm~約3mm、約2mm~約4mm、1mm~約3mm、約2mm~約4mm、及び約3mm~約5mmの長さによって表されるサイズを有し得る。いくつかの実施形態では、サブネットワークは、約2mmの長さによって表されるサイズを有し得る。サブネットワークの「長さ」は、サブネットワークの最も拡張された寸法に等しい距離の尺度である。他の測定可能な寸法としては、長さ、幅、高さ、面積、及び体積が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
様々な実施形態では、物理的な力を使用して、破壊後の分岐菌糸の1つ以上の塊の間に新たな物理的相互作用(すなわち、再交絡)を生じさせてもよい。繊維間の機械的相互作用を作り出すことによって不織布材料を作り出す方法を含む、繊維間の交絡を作り出す様々な既知の方法が使用され得る。以下に記載されるいくつかの実施形態では、水流交絡は、菌糸が破壊された後に菌糸間の機械的相互作用を生成するために使用され得る。
【0136】
保存された培養菌糸体材料
いったん培養菌糸体材料が増殖すると、それは、当該技術分野において既知の任意の方法で基質から任意に分離されてもよく、菌糸体を死滅させることによって更なる増殖を防止するために任意に後処理に供されてもよく、そうでなければ菌糸体を腐敗しないようにし、本明細書において「保存された菌糸体材料」と称される。保存菌糸体材料を生成する好適な方法は、培養菌糸体材料を乾燥又は乾燥保存させること(例えば、培養菌糸体材料を圧縮して水分を排出すること)、及び/又は培養菌糸体材料を熱処理することを含むことができる。
【0137】
特定の実施形態では、培養菌糸体材料は、190,000ポンドの力で0.25インチに30分間プレスされる。培養菌糸体材料は、少なくとも100、1000、10,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、180,000、190,000、200,000、又は300,00ポンド以上の力でプレスすることができる。培養菌糸体材料は、少なくとも0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、又は1インチ以上までプレスすることができる。培養菌糸体材料は、少なくとも0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、又は1センチメートル以上までプレスすることができる。培養菌糸体材料は、少なくとも1分間、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、又は60分間以上の間、プレスすることができる。
【0138】
有機物を乾燥させて腐敗しないようにする適切な方法は、当技術分野において周知である。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料は、100°F以上の温度でオーブン中で乾燥される。他の実施形態では、培養菌糸体材料は、熱プレスされる。
【0139】
他の例では、生きている又は乾燥した培養菌糸体材料は、菌糸体から廃棄物及び水を除去するように機能する1つ以上の溶液を使用して加工される。いくつかの実施形態では、溶液は、エタノール、メタノール、又はイソプロピルアルコールなどの溶媒を含む。いくつかの実施形態では、溶液は塩化カルシウムなどの塩を含む。実施形態に応じて、培養菌糸体材料は、圧力の有無にかかわらず、様々な期間にわたって溶液中に浸漬され得る。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料は、いくつかの溶液中に連続的に浸漬され得る。特定の実施形態では、培養菌糸体材料は、最初に、アルコール及び塩を含む1つ以上の第1の溶液中に浸漬され、次いで、アルコールを含む第2の溶液中に浸漬され得る。別の特定の実施形態では、培養菌糸体材料は、最初に、アルコール及び塩を含む1つ以上の第1の溶液に浸漬され、次いで、水を含む第2の溶液に浸漬され得る。溶液による処理の後、培養菌糸体材料は、高温又は低温プロセスを使用してプレスされてもよく、及び/又は空気乾燥及び/又は真空乾燥を含む様々な方法を使用して乾燥されてもよい。米国特許公開第2018/0282529号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、これらの実施形態を詳細に記載している。
【0140】
一態様では、培養菌糸体材料は、ギ酸などの酸を使用してpHを調整することによって定着され得る。特定の実施形態では、pHは、少なくとも2、3、4、又は5である。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料のpHは、ギ酸などの様々な薬剤を使用して培養菌糸体材料を定着させるために、酸性pH3に調整される。特定の実施形態では、pHは、培養菌糸体材料を定着させるために、6、5、4、又は3未満のpHに調整される。一実施形態では、pHは、5.5に調整される。
【0141】
潤滑剤
培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の機械的特性を変更するために、生産中に培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に様々な潤滑剤が適用され得る。潤滑剤の役割は、理論に束縛されるものではないが、菌糸の下部構造内に形成された密に詰まった水素結合ネットワークからの結晶化度を低下させ、それによって菌糸の内部潤滑及び培養菌糸体材料の可撓性を向上させることである。加えて、添加された基中に第四級アンモニウム又はカルボキシレート部分などの様々な電荷を有する潤滑剤は、結合剤、加脂液、及び/又は反応性染料との相互作用に有益な影響を与えることができ、その各々はそれ自体帯電させることができる。例えば、潤滑剤は、潤滑剤側鎖と後に添加される任意の加脂液との間の疎水性相互作用を高め得る。脂肪族鎖化合物潤滑剤はまた、培養菌糸体材料の親水性又は疎水性を調整するために使用することもできる。本開示において使用される潤滑剤の種類及び量は、どのような特性が望まれるかに依存する。様々な実施形態では、有効量の潤滑剤が使用され得る。本明細書中で使用される場合、潤滑剤に関する「有効量」とは、更なる可撓性及び/又は他の特性(例えば、更なる柔軟性、強度、耐久性、及び適合性)を提供するのに十分な潤滑剤の量をいう。
【0142】
理論に束縛されるものではないが、それらの中程度又は大型のポリマーサイズに起因して、シロキサンは、破壊された菌糸体材料又はプレスされたもしくはプレスされていない菌糸体材料に添加されると、菌糸ネットワーク内に捕捉され得る。捕捉されたシロキサン分子は、材料の菌糸ネットワークから浸出することができず、それによって、菌糸ネットワークの内部潤滑に起因して、例えば、培養菌糸体材料の結晶化度及び脆性を低下させることによって、材料の可撓性を向上させることができる。シロキサンはまた、菌糸キチンに結合し、それによって、培養菌糸体材料の結晶化度及び脆性を低下させ得る。シロキサンによる処理はまた、菌糸ネットワーク中に環状シロキサン及び遊離イソシアネート残基を残すことができ、後に追加の処理化合物と反応することができる追加の反応性基を提供する。
【0143】
一般に、潤滑剤は、培養菌糸体材料の最初の生産の間、例えば、機械的破壊、ウェブ形成、湿式積層、プレスの間、又は新たに作製された菌糸体パネルを乾燥する前に添加される。
【0144】
シロキサン及び脂肪族鎖化合物などの潤滑剤は、柔軟性及び可撓性を提供するために仕上げ製品として使用されてきた従来の加脂液を超える改善を提供する。第1に、潤滑剤は、材料を製造するプロセスの初期に添加することができる。例えば、潤滑剤は、湿式堆積プロセスの前若しくは間、又はプレスプロセスの前若しくは間に、破壊された菌糸体材料に添加することができる。この結果、加工され乾燥させた培養材料を後処理工程で加脂液に浸漬することと比較して、材料中への潤滑剤のより良好な取り込み、保持、及び浸透がもたらされる。第2に、湿式積層、ウェブ形成、又はプレスの初期段階で潤滑剤を添加することは、菌糸体材料内に潤滑剤を捕捉し、材料からの潤滑剤の後の浸出を減少させる。したがって、脂肪族鎖化合物が、より均一に菌糸に共有結合される一方、シロキサンは、菌糸ネットワーク内により完全かつ均一に捕捉される。これにより、さほど十分に浸透していない菌糸体材料から浸出する加脂液と比較して、材料からの潤滑剤の浸出が少なくなる。第3に、菌糸体の破壊又はプレス工程の前又はそれと同時に初期段階で滑沢剤を添加することにより、後の加脂液処理工程が排除され、したがって生産プロセスがより速くなる。第4に、加脂液による後処理は、菌糸体材料を浸漬するために加脂液を希釈するのにかなりの量の水を必要とする。破壊された菌糸体材料のスラリーへの潤滑剤の添加は、生産プロセスにおいて必要とされる水の量を減少させる。
【0145】
シロキサンは、Si-0-Si結合を有する官能基を有する化合物である。シロキサンはまた、1個の酸素原子で分離されたケイ素中心の対を有する分岐化合物を含むことができる。シロキサン官能基は、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーンを形成する。シロキサンは疎水性であり、低い熱伝導率及び高い可撓性を有する。培養菌糸体材料に使用することができる例示的なシロキサン化合物としては、Starchem及びWacker製のシロキサン製品が挙げられる。StarSoft GA、StarPel 366、StarChem 2543、StarSoft HS 20、StarSoft HS 40、Reactosil RWS、StarSoft WAM、StarSoft Bis 45、StarSoft TS-T3、又はWacker Elastosil製品を含むがこれらに限定されない、任意のStarchem又はWacker製シロキサンを、本明細書に開示される菌糸体材料において使用することができる。Starchem製シロキサンはまた、シロキサンとポリウレタンとの混合物を含むことができる。
【0146】
脂肪族鎖は、炭化水素鎖が芳香族環を含まない開鎖炭化水素である。脂肪族化合物は、非芳香族炭化水素としても知られている。脂肪族鎖化合物は、少なくとも2個の炭素、少なくとも3個の炭素、少なくとも4個の炭素、少なくとも5個の炭素、少なくとも6個の炭素、少なくとも7個の炭素、少なくとも8個の炭素、少なくとも9個の炭素、少なくとも10個の炭素、少なくとも11個の炭素、少なくとも12個の炭素、少なくとも13個の炭素、少なくとも14個の炭素、少なくとも15個の炭素、少なくとも16個の炭素、少なくとも17個の炭素、少なくとも18個の炭素、少なくとも19個の炭素、少なくとも20個の炭素、少なくとも21個の炭素、少なくとも22個の炭素、少なくとも23個の炭素、少なくとも24個の炭素、少なくとも25個の炭素、少なくとも26個の炭素、少なくとも27個の炭素、少なくとも28個の炭素、少なくとも29個の炭素、又は少なくとも30個以上の炭素を有し得る。本明細書で企図されるように、潤滑剤として使用するのに有用な脂肪族鎖化合物は、脂肪族炭化水素鎖を含む。本明細書で企図されるように、潤滑剤として使用するのに有用な長脂肪族鎖化合物は、少なくとも8個の炭素を有する脂肪族炭化水素鎖を含む。脂肪族鎖化合物潤滑剤は、限定されないが、2-オクテニルコハク酸無水物(OSA)、2-ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、ステアリン酸無水物、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、ヘプタン酸無水物、酪酸無水物、クロロヒドリン、C-12コハク酸無水物、C-18コハク酸無水物、又はC-7ヘプタン酸無水物からC-18ステアリン酸無水コハク酸までの範囲の種々の鎖長の脂肪酸無水物であり得る。例えば、8~18個の炭素の側鎖長を有するアルケニルを使用することができる。得られる好ましい機械的特性を与えるのに十分な炭素鎖長を有する任意の脂肪族鎖を使用することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物は、疎水性である。脂肪族鎖化合物の疎水性は、炭化水素鎖中の炭素数が増加するにつれて増加する。したがって、C-18炭化水素は、C-7炭化水素よりも疎水性が高い。
【0148】
本開示は、適切な潤滑剤の上のリストに限定されない。他の潤滑剤は、当技術分野で公知である。
【0149】
潤滑剤は、プレスされた、1つ以上の菌糸塊が破壊された、及び/又は水流交絡された培養菌糸体材料に添加することができる。潤滑剤は、分岐菌糸の1つ以上の塊の破壊又はプレス前に、培養菌糸体材料に添加することができる。潤滑剤は、分岐菌糸の1つ以上の塊の破壊又はプレス中に、培養菌糸体材料に添加することができる。潤滑剤は、分岐菌糸の1つ以上の塊の破壊又はプレス後に、培養菌糸体材料に添加することができる。いくつかの実施形態では、プレスされた培養菌糸体材料は潤滑剤を含み、プレスされた培養菌糸体材料は加脂液を含まない。いくつかの実施形態では、破壊された培養菌糸体材料は潤滑剤を含み、圧縮された培養菌糸体材料は加脂液を含まない。
【0150】
いくつかの実施形態では、プレスされた培養菌糸体材料は、潤滑剤と接触させられる。いくつかの実施形態では、破壊された培養菌糸体材料は、潤滑剤と接触させられる。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、分岐菌糸の塊の破壊前に添加される。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、分岐菌糸の1つ以上の塊の破壊中に添加される。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、分岐菌糸の塊の破壊後に添加される。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、培養菌糸体材料のプレス前に添加される。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、培養菌糸体材料のプレス中に添加される。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、培養菌糸体材料のプレス後に添加される。
【0151】
いくつかの実施形態では、潤滑剤は、菌糸に共有結合する脂肪族鎖化合物である。いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物は、培養菌糸体材料の菌糸上の少なくとも1つのヒドロキシル基に共有結合する。いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物は、培養菌糸体材料の菌糸上の少なくとも1つのカルボキシル基に共有結合する。いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物は、培養菌糸体材料の菌糸上の少なくとも1つのアミノ基に共有結合する。いくつかの実施形態では、脂肪族鎖化合物は、結合剤、加脂液、及び/又は染料との相互作用を改変する。
【0152】
結合剤
本開示の様々な態様は、結合剤を含む。本明細書で使用するとき、「結合剤」は、追加の強度及び/又は追加の柔軟性、強度、耐久性、及び適合性などの他の特性を提供する任意の好適な薬剤を含んでもよい。結合剤は、培養菌糸体材料のある部分と反応し、培養菌糸体材料の処理を強化し、培養菌糸体材料と共に処理され、又は培養菌糸体材料とネットワークとして別々に処理されて、複合菌糸体材料を生産する薬剤であり得る。いくつかの態様では、結合剤が、破壊前に添加される。他の態様では、結合剤が、破壊後に添加される。いくつかの他の態様において、結合剤は、試料が破壊されている間に添加される。結合剤としては、接着剤、樹脂、架橋剤、及び/又はマトリックスが挙げられる。本明細書に記載される複合菌糸体材料は、培養菌糸体材料と、水性、100%固体、UV及び湿気硬化、2成分反応性ブレンド、感圧性、自己架橋性ホットメルトなどであり得る結合剤とを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、結合剤は、天然接着剤又は合成接着剤を含む群から選択される。そのような実施形態では、天然接着剤は、天然ラテックス系接着剤を含み得る。特定の実施形態では、天然ラテックスベースの接着剤は、皮革用接着剤又は溶着である。結合剤は、陰イオン性、陽イオン性、及び/又は非イオン性薬剤を含み得る。一態様では、結合剤は、架橋剤を含み得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、結合剤は、1μm以下の粒径、0未満のガラス転移温度、又は自己架橋機能を有する。いくつかの実施形態では、結合剤は、1μm以下の粒径、0未満のガラス転移温度、及び自己架橋機能を有する。いくつかの実施形態では、結合剤は、1μm以下の粒径を有する。いくつかの実施形態では、結合剤は、0未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、結合剤は、自己架橋機能を有する。いくつかの実施形態では、結合剤は、500ナノメートル以下の粒径を有する。特定の例示的な結合剤としては、Dur-0-Set(登録商標)Elite Plus及びDur-0-Set(登録商標)Elite 22などの酢酸ビニルエチレンコポリマーが挙げられる。
【0155】
いくつかの実施形態では、結合剤は、-100~-10℃、-100~-90℃、-90~-80℃、-80~-70℃、-70~-60℃、-60~-50℃、-50~-40℃、-40~-30℃、-30~-20℃、-20~-10℃、-10~-10℃、-30~-25℃、-25~-20℃、-20~-15℃、-15~-10℃、-10~-5℃、-5~-0℃、-90℃、-80℃、-70℃、-60℃、-50℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、又は0℃のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、結合剤は、-15℃のガラス転移温度を有する。
【0156】
他の例示的な結合剤としては、トランスグルタミナーゼ、ポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂(PAE)、クエン酸、ゲニピン、アルギン酸塩、酢酸ビニル-エチレンコポリマー、及び酢酸ビニル-アクリルコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、結合剤はポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂(PAE)である。いくつかの実施形態では、結合剤は酢酸ビニル-エチレンコポリマーである。いくつかの実施形態では、結合剤は酢酸ビニル-アクリルコポリマーである。
【0157】
いくつかの実施形態では、結合剤は、1つ以上の反応性基を含む。例えば、結合剤は、アミン基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基などの活性水素含有基と反応する。特定の実施形態では、結合剤は、1つ以上の反応性基を介して分岐菌糸の1つ以上の塊を架橋する。場合によっては、アミンはキチン上に存在し、ヒドロキシル基及びカルボキシル基はキチンを取り囲む多糖類及びタンパク質上に存在する。特定の実施形態では、PAEは、カチオン性アゼチジニウム基を含む。このような実施形態では、PAE上のカチオン性アゼチジニウム基は、ポリアミドアミン骨格中の反応部位として作用し、菌糸の1つ以上の分岐中のアミン基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基などの活性水素含有基と反応する。
【0158】
結合剤の更なる例としては、限定されないが、次亜リン酸ナトリウム又はリン酸一ナトリウム又はジクロロ酢酸ナトリウムと組み合わせたクエン酸、次亜リン酸ナトリウム又はリン酸一ナトリウム又はジクロロ酢酸ナトリウムと組み合わせたアルギン酸塩、エポキシ化大豆油、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(PAE)、及び過硫酸アンモニウムが挙げられる。結合剤のいくつかの例としては、エポキシ、イソシアネート、硫黄化合物、アルデヒド、無水物、シラン、アジリジン、及びアゼチジニウム化合物、並びに全てのそのような官能基を有する化合物が挙げられる。可能なホルムアルデヒド含有結合剤としては、ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、メラミン尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、フェノールレゾルシノール、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0159】
好適な結合剤の更なる例としては、ブタジエンコポリマー、アクリレート、ビニル-アクリル、スチレン-アクリル、スチレン-ブタジエン、ニトリル-ブタジエン、ポリ酢酸ビニル、オレフィン含有ポリマー、例えば、酢酸ビニル-エチレンコポリマー、ビニルエステルコポリマー、ハロゲン化コポリマー、例えば、塩化ビニリデンポリマーなどのラテックス材料が挙げられる。ラテックスベースの薬剤は、使用される場合、官能性を有することができる。アクリルを含む任意の種類のラテックスを使用することができる。代表的なアクリルとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、それらのカルボキシル化バージョン、それらのグリコシル化バージョン、それらの自己架橋バージョン(例えば、N-メチルアクリルアミドを含むもの)、並びにアクリロニトリルなどの他のモノマーとのコポリマーを含む、それらのコポリマー及びブレンドから形成されるものが挙げられる。デンプン、天然ゴムラテックス、デキストリン、リグニン、セルロース系ポリマー、糖ガムなどの天然ポリマーも使用することができる。加えて、エポキシ、ウレタン、フェノール樹脂、ネオプレン、ブチルゴム、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、及びポリエステルアミドなどの他の合成ポリマーも使用することができる。本明細書で使用するとき、用語「ポリプロピレン」は、プロピレンのポリマー、又はプロピレンを他の脂肪族ポリオレフィン、例えばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、5-メチル-1-ヘキセン及びこれらの混合物と重合させたものを含む。特定の実施形態では、結合剤としては、天然接着剤(例えば、皮革用接着剤又は溶着、ラテックス、大豆タンパク質系接着剤などの天然ラテックス系接着剤)、合成接着剤(ポリウレタン)、ネオプレン(PCP)、アクリルコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、エチレン-酢酸ビニル-b、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル(PVA)、及び酢酸ビニルエチレン(VAE)が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、結合剤は、VAEである。
【0160】
一態様では、1つ以上の結合剤が、複合菌糸体材料を生産するために、破壊された状態又は破壊されていない状態のいずれかで、結合される培養菌糸体材料内に組み込まれてもよく、例えば、材料全体に埋め込まれてもよく、又は噴霧、浸漬、圧延、コーティングなどによって薄いコーティング層として添加されてもよい。1つの他の態様において、1つ以上の結合剤は、破壊が起こるのと同時に組み込まれ得る。本開示によれば、任意の適切な結合方法が使用され得る。表面の結合は乾燥時に生じてもよく、強力な硬化結合を発現させることができる。1つ以上の結合剤の結合は、ウレタン、オレフィンゴム、及びビニル発泡体材料のような連続気泡又は独立気泡発泡体材料、並びに様々な積層構成の布地、金属、及び布の使用を含み得る。
【0161】
水性接着剤を培養菌糸体材料に均一に塗布することによって、結合された集合体(すなわち、積層体)が調製され得る。いくつかの実施形態では、積層体は、2つの連続層を含む。いくつかの実施形態では、積層体は、3つの連続層を含む。噴霧、ロールコーティング、飽和などの様々なコーティング方法が使用され得る。コーティングされた基質は、結合前に乾燥させることができる。
【0162】
複合菌糸体材料は、セルロース繊維を互いに連結することを含む、繊維を互いに連結するための化学結合剤を複合菌糸体材料に含浸させることによって化学的に結合され得る。適切な結合剤の非限定的な例としては、アラビアゴム、酢酸ビニル-エチレン(VAE)、及び接着剤が挙げられる。好適な接着剤の例としては、米国のUS Adhesivesから入手可能なS-10、及び米国のTear Menderから入手可能なBish’s Original Tear Mender Instant Fabric&Leather Adhesiveが挙げられる。好適なVAE系結合剤の一例は、米国のCelanese Emulsionsから入手可能なDur-0-Set(登録商標)Elite 22である。好適なVAE系結合剤の他の一例は、米国のCelanese Emulsionsから入手可能なDur-0-Set(登録商標)Elite Plusである。別の例示的な結合剤としては、米国のCelanese Emulsionsから入手可能なX-LINK(登録商標)2833が挙げられ、これは自己架橋性酢酸ビニルアクリルとして記載されている。相互接続された菌糸のウェブにおいて、化学結合剤は、にウェブを飽和させて、ウェブを通って拡散し、ネットワークのコアに到達しなければならない。よって、複合菌糸体材料を結合剤溶液中に浸漬して、材料を完全に含浸させ得る。化学結合剤の噴霧塗布も、複合菌糸体材料に提供され得る。化学結合剤の噴霧塗布は、分散のための毛管作用によって補助されてもよく、又は材料を通じて化学結合剤を引き出すように真空印加によって補助されてもよい。複合菌糸体材料をコーティングするために、コーターが使用され得る。
【0163】
複合菌糸体材料は、熱結合技術を用いて結合されてもよく、添加剤が複合菌糸体材料と共に提供される。この添加剤は、既知の熱レベルで溶融する「溶融性」材料であってもよい。複合菌糸体材料のセルロース系材料は融解しないので、複合菌糸体材料は添加剤と共に添加剤の融点まで加熱することができる。溶融すると、添加剤は複合菌糸体材料内に分散し、次いで冷却して材料全体を硬化させることができる。
【0164】
本開示は、適切な結合剤の上記リストに限定されない。他の結合剤が、当該技術分野で知られている。結合剤の役割は、その種類にかかわらず、部分的に、1分子当たりいくつかの反応部位を提供することである。本開示で使用される結合剤の種類及び量は、どのような特性が望まれるかに依存する。様々な実施形態では、有効量の結合剤が使用され得る。本明細書で使用するとき、結合剤に関する「有効量」とは、追加の強度及び/又は追加の柔軟性、強度、耐久性、及び適合性などの他の特性を提供するのに十分な薬剤の量を指す。
【0165】
結合剤は、プレスされ、1つ以上の菌糸塊が破壊され、及び/又は水流交絡された培養菌糸体材料に添加することができる。結合剤は、分岐菌糸の1つ以上の塊の破壊又はプレス前に、培養菌糸体材料に添加することができる。結合剤は、分岐菌糸の1つ以上の塊の破壊又はプレス中に、培養菌糸体材料に添加することができる。結合剤は、分岐菌糸の1つ以上の塊の破壊又はプレス後に、培養菌糸体材料に添加することができる。
【0166】
いくつかの実施形態では、プレスされた培養菌糸体材料は、結合剤と接触される。いくつかの実施形態では、破壊された、培養菌糸体材料を結合剤と接触させる。いくつかの実施形態では、結合剤は、分岐菌糸の塊の破壊前に添加される。いくつかの実施形態では、結合剤は、分岐菌糸の1つ以上の塊の破壊中に添加される。いくつかの実施形態では、結合剤は、分岐菌糸の塊の破壊後に添加される。いくつかの実施形態では、結合剤は、培養菌糸体材料のプレス前に添加される。いくつかの実施形態では、結合剤は、培養菌糸体材料のプレス中に添加される。いくつかの実施形態では、結合剤は、培養菌糸体材料のプレス後に添加される。
【0167】
支持材料
一態様によれば、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、例えば、結合アセンブリ、すなわち、積層体を形成するために、支持材料を更に含み得る。本明細書で使用される場合、「支持材料」という用語は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に支持を提供する任意の材料、又は1つ以上の材料の組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、支持材料は、足場である。いくつかの実施形態では、支持材料は、スクリムである。
【0168】
いくつかの実施形態では、支持材料は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料、例えば、補強材料内で絡み合っている。いくつかの他の実施形態では、支持材料は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料、例えばベース材料の表面上に位置付けられる。いくつかの実施形態では、支持材料は、メッシュ、チーズクロス、布地、複数の繊維、編布、織布、不織布、ニット繊維、織布繊維、不織布繊維、フィルム、表面噴霧コーティング、及び繊維添加剤を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、編布は、編繊維である。いくつかの実施形態では、織布は、織繊維である。いくつかの実施形態では、不織布は、不織繊維である。いくつかの実施形態では、支持材料は、合成繊維、天然繊維(例えば、リグノセルロース繊維)、アバカ繊維、金属、又はプラスチックの任意の組み合わせの全体又は一部で構成され得る。支持材料は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料内に、例えば、フェルト化又はニードルパンチのような既知の交絡方法を用いて、部分的に絡み合わされ得る。いくつかの態様では、支持材料は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料内で絡み合っていない。当技術分野で公知の様々な方法を使用して、本明細書に記載の積層体を形成し得る。いくつかの他の実施形態では、支持材料は、例えば、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の上面又は下面に適用されるベース材料を含む。支持材料は、化学的付着、例えば適切な噴霧コーティング材料、特に適切な接着剤を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の手段を介して、あるいは、例えばそれらの固有の粘着性によって付着され得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、菌糸体は、少なくとも5重量%のマニラ麻繊維又は繊維添加物を含む。いくつかの実施形態では、菌糸体は、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも7重量%、少なくとも8重量%、少なくとも9重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、又はそれ以上のマニラ麻繊維又は繊維添加物を含む。
【0170】
本開示による積層体は、少なくとも1つの支持材料を含み得る。2つ以上の支持材料が使用される場合、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、複数の層に挟まれた内層を含むことができ、内層は、例えば、編物又は織物又は足場などの支持材料である。この場合、支持材料は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料内に埋め込まれる。
【0171】
本明細書で使用される支持材料は、足場又は布地を含むことができる。本明細書で使用される場合、「足場」は、培養菌糸体材料とは異なり、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に支持体を提供する、当技術分野で公知の任意の材料を指す。「足場」は、培養菌糸体材料若しくは複合菌糸体材料内に埋め込まれてもよく、又は培養菌糸体材料若しくは複合菌糸体材料の上、下、若しくは内部に積層されてもよい。本開示では、フィルム、布地、スクリム、及びポリマーを含むがこれらに限定されない、あらゆる種類及びタイプの足場が使用され得る。本明細書で使用される場合、「布地」は、任意の織られた、編まれた、又は不織繊維構造であり得るタイプの足場を指す。複数の層が培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に含まれる場合、2つ以上の層は足場を含み得る。又は他の実施形態では、2つ以上の層はチーズクロスを含み得る。有用な足場としては、織布及び不織布足場、指向性及び非指向性足場、並びに直交及び非直交足場が挙げられる。有用な足場は、長さ方向に、又は足場の長さに沿って配向された複数の糸、及び幅方向に、又は足場の幅を横切って配向された複数の糸を含む、従来の足場を含み得る。これらの糸は、それぞれ縦糸及び横糸と呼ばれ得る。繊維材料及びポリマーを含むがこれらに限定されない多数の糸を使用することができる。例えば、糸は、ガラス繊維、アルミニウム、又は芳香族ポリアミドポリマーを含むことができるが、これらに限定されない。一実施形態では、足場は、ガラス繊維糸を含む。足場は、架橋性アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、又は類似の接着剤等の従来の結合剤を使用して、一緒に接着され得るか、又は定位置に係止され得る。足場はまた、限定されないが、ニードルパンチなどの技術を用いることによって機械的に絡み合わされ得る。更に別の実施形態では、足場は、織ることによって適所に係止され得る。支持材料の組み合わせが、本開示に従って使用され得る。
【0172】
いくつかの実施形態では、支持材料は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,939,016号及び米国特許第6,942,711号に記載されている方法を含むがこれらに限定されない当技術分野で公知の方法に従って、本明細書に記載されている培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に組み込まれ得る。例えば、支持材料は、水流交絡を介して、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に組み込まれ得る。そのような実施形態では、支持材料は、結合剤及び/又は架橋剤の添加前又は後に、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、水流交絡のための1つ以上の細孔を通して培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に方向付けられた水などの液体は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を通過することができる。いくつかの実施形態では、液体は、高圧液体である。いくつかの実施形態では、圧力及び水流は、支持材料のタイプ及び細孔サイズに部分的に依存して変化し得る。様々な実施形態では、水圧は、少なくとも100psi、例えば、少なくとも200psi、少なくとも300psi、少なくとも400psi、少なくとも500psi、少なくとも600psi、少なくとも700psi、少なくとも800psi、少なくとも900psi、及び少なくとも1000psiである。様々な実施形態では、水圧は、約100psi~約5000psi(、例えば、約200psi~約1000psi、約300psi~約2000psi、約400psi~約3000psi、約500psi~約4000psi、及び約600psi~約5000psiである。いくつかの実施形態では、水圧は、約750psiである。種々の実施形態では、1つ以上の細孔は、少なくとも10ミクロン、例えば、少なくとも30ミクロン、少なくとも50ミクロン、少なくとも70ミクロン、少なくとも90ミクロン、少なくとも110ミクロン、少なくとも130ミクロン、及び少なくとも150ミクロンの直径を有する。様々な実施形態では、1つ以上の細孔は、例えば、約20ミクロン~約70ミクロン、約30ミクロン~約80ミクロン、約40ミクロン~約90ミクロン、約50ミクロン~約100ミクロン、約60ミクロン~約110ミクロン、及び約70ミクロン~約120ミクロンを含めて、約10ミクロン~約150ミクロンの直径を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上の細孔は、約50ミクロンの直径を有する。
【0173】
培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、発泡体材料に使用される補助剤も含み得る。補助剤又は添加剤としては、架橋剤、加工助剤(例えば、排水助剤)、分散剤、凝集剤、粘度低下剤、難燃剤、分散剤、可塑剤、酸化防止剤、相溶化剤、充填剤、顔料、UV保護剤、マニラ麻繊維などの繊維などが挙げられる。複合菌糸体材料に化学結合剤を導入するために発泡剤が使用され得ることが更に企図される。このような発泡剤は、ウェブに空気を導入することによって、複合菌糸体材料のウェブの多孔性を高めることができる。
【0174】
可塑剤
様々な可塑剤を培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に適用して、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の機械的特性を変更し得る。そのような実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、可塑剤を更に含む。米国特許第9,555,395号は、様々な保湿剤及び可塑剤の添加を論じている。具体的には、米国特許第9,555,395号は、グリセロール、ソルビトール、トリグリセリド可塑剤、アマニ油、ヒマシ油、乾性油などの油、イオン性及び/又は非イオン性グリコール、並びにポリエチレンオキシドの使用について論じている。米国特許出願公開第2018/0282529号は更に、グリセロール、ソルビトール又は別の湿潤剤などの可塑剤で培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を処理して、水分を保持し、そうでなければ培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の弾性及び柔軟性などの培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の機械的特性を増強することを論じている。そのような実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、可撓性である。
【0175】
一般に、可塑剤は、菌糸体材料を製造する後の段階で、例えば、パネル又はマットが乾燥され、染色及び仕上げのために加工された後に添加される。
【0176】
他の類似の可塑剤及び保湿剤は、当該技術分野において周知であり、例えば、ポリエチレングリコール、及び油の微小液滴が材料に浸透し得るように、天然油を油と非混和性の液体(例えば、水)で乳化することによって得られる加脂液が挙げられる。各種加脂液は、イオン性及び非イオン性乳化剤、界面活性剤、石鹸、及び硫酸塩などの他の化合物を添加した水中乳化油を含有する。加脂液は、鉱油、動物性油、及び植物性油などの様々な種類の油を含み得る。適切な加脂液としては、限定されないが、Truposol(登録商標)LEX加脂液(Trumpler、ドイツ)、Trupon(登録商標)DXV加脂液(Trumpler、ドイツ)、Diethyloxyester塩化ジメチルアンモニウム(DEEDMAC)、Downy布地柔軟剤、ソルビトール、m-エリトリトール、Tween 20及びTween 80が挙げられる。
【0177】
タンニン及び染料
本開示の様々な実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に色を付与することが理想的であり得る。米国特許出願公開第2018/0282529号に記載されているように、タンニンを使用して、培養菌糸体材料、複合菌糸体材料、又は保存複合菌糸体材料に色を付与することができる。
【0178】
培養菌糸体材料及び/又は複合菌糸体材料は、部分的にキチンを含むため、タンパク質ベースの材料において豊富な官能部位を欠く。したがって、酸性染料及び直接染料のための結合部位を作製するために、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料中のキチンを官能化することが必要であり得る。キチンを官能化する方法は、上述されている。
【0179】
培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に色を付与するために、酸性染料、直接染料、分散染料、硫化染料、合成染料、反応性染料、顔料(例えば、酸化鉄ブラック及びコバルトブルー)及び天然染料などの様々な染料が使用され得る。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、染料溶液の適用の前に、材料への染料の取り込み及び浸透を促進するためにアルカリ性溶液中に浸漬される。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、材料への染料の取り込み及び浸透を促進するために、染料溶液の適用前に、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム、及び/又はギ酸に予め浸漬される。いくつかの実施形態では、タンニンが、染料溶液に添加され得る。様々な実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、染料処理又は前処理の前に、上述のように保存され得る。
【0180】
実施形態に応じて、染料溶液は、異なる適用技術を使用して、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に適用され得る。いくつかの実施形態では、染料溶液は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の1つ以上の外表面に適用され得る。他の実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、染料溶液中に浸漬され得る。
【0181】
様々な溶液に予め浸漬することに加えて、染料の取り込み及び材料への浸透を容易にするために、薬剤が染料溶液に添加され得る。いくつかの実施形態では、水酸化アンモニウム及び/又はギ酸は、材料への染料の取り込み及び浸透を促進するために、酸又は直接染料と共に使用される。いくつかの実施形態では、エトキシ化脂肪アミンが、加工材料への染料の取り込み及び浸透を促進するために使用される。
【0182】
様々な実施形態では、可塑剤は、染料の添加後又は添加中に添加される。様々な実施形態では、可塑剤は、染料溶液と共に添加され得る。特定の実施形態では、可塑液は、ヤシ油、植物性グリセロール、又は亜硫酸化もしくは硫酸化加脂液であってもよい。
【0183】
いくつかの実施形態では、染料溶液は、水酸化アンモニウムなどの塩基を使用して塩基性pHに維持され得る。特定の実施形態では、pHは、少なくとも9、10、11又は12である。いくつかの実施形態では、染料溶液のpHは、ギ酸などの様々な薬剤を使用して染料を定着するために酸性pHに調整される。特定の実施形態では、pHは、染料を定着するために、6、5、4、又は3未満のpHに調整される。
【0184】
様々な方法において、培養菌糸体材料、複合菌糸体材料、及び/又は保存複合菌糸体材料は、材料中への染料の取り込み及び浸透を促進するために、染料溶液が適用されている間、機械的作業又は撹拌に供され得る。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料、複合菌糸体材料、及び/又は保存複合菌糸体材料を、染料溶液中にある間にプレス又は他の形態の圧力に供することは、色素の取り込み及び浸透を増強した。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料、複合菌糸体材料、及び/又は保存複合菌糸体材料は、超音波処理に供され得る。
【0185】
本明細書に記載の方法を使用して、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、加工培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の色が実質的に均一であるように染色又は着色され得る。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、染料で着色され、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の色は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の1つ以上の表面上で実質的に均一である。上記の方法を使用して、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、染料及び色が培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の表面に単に存在するのではなく、その代わりに材料の表面を通って内部コアに浸透するように、染色又は着色され得る。そのような実施形態では、染料は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の内部全体にわたって存在する。
【0186】
本開示の様々な実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料が退色しないように染色され得る。色堅牢度は、ISO 11640:2012:色堅牢度試験-色堅牢度試験-往復摩擦サイクルに対する色堅牢度、又はISO 11640:2012の更新版であるISO 11640:2018などの様々な技法を使用して測定され得る。特定の実施形態では、色堅牢度は、摩擦堅牢度及び試料に対する変化を判定するための測定基準としてグレースケール評価を使用して、上記に従って測定される。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、少なくとも3、少なくとも4、又は少なくとも5のグレースケール評価によって示される強い色堅牢度を示す。
【0187】
タンパク質源
様々な実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料中に天然に存在しない1つ以上のタンパク質源(すなわち、外因性タンパク質源)で任意に処理することが有益であり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のタンパク質は、培養菌糸体材料が生成される真菌種以外の種に由来する。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、エンドウ豆タンパク質、米タンパク質、麻タンパク質及び大豆タンパク質などの植物タンパク質源で任意に処理され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質源は、昆虫タンパク質又は哺乳動物タンパク質などの動物性タンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、微生物によって産生される組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、絹又はコラーゲンなどの繊維状タンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、エラスチン又はレシリンなどの弾性タンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、1つ以上のキチン結合ドメインを有する。キチン結合ドメインを有する例示的なタンパク質としては、レシリン及び種々の細菌性キチン結合タンパク質が挙げられる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、1つ以上のキチン結合ドメインを含む遺伝子操作されたタンパク質又は融合タンパク質である。実施形態に応じて、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、処理前に上記のように保存されてもよく、又は事前の保存なしに処理されてもよい。
【0188】
本開示の特定の実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、タンパク質源を含む溶液中に浸漬される。特定の実施形態では、タンパク質源を含む溶液は、水性である。他の実施形態では、タンパク質源を含む溶液は、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、タンパク質源を含む溶液は、タンパク質源を架橋するように機能する薬剤を含む。実施形態に応じて、アミノ酸の官能基と相互作用する様々な既知の薬剤を使用することができる。特定の実施形態では、タンパク質源を架橋するように機能する薬剤は、トランスグルタミナーゼである。アミノ酸官能基を架橋する他の適切な薬剤としては、チロシナーゼ、ゲニピン、ホウ酸ナトリウム、及びラクターゼが挙げられる。他の実施形態では、クロム、植物性タンニン、なめし油、エポキシ、アルデヒド、及びシンタンを含む従来のなめし剤を使用して、タンパク質を架橋することができる。上述したように、クロムに関する毒性及び環境問題のために、クロムを含む及び含まない、PAEの他の鉱物、例えばアルミニウム、チタン、ジルコニウム、鉄及びそれらの組み合わせが使用され得る。
【0190】
様々な実施形態では、タンパク質源による処理は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を保存すること、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を可塑化すること、及び/又は培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を染色することの前、後、又は同時に行われ得る。いくつかの実施形態では、タンパク質源による処理は、アルコール及び塩を含む溶液を使用して、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の保存の前又は間に行われ得る。いくつかの実施形態では、タンパク質源による処理は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の染色前又は染色と同時に行われる。これらの実施形態のいくつかにおいて、タンパク質源は、染料溶液中に溶解される。特定の実施形態では、タンパク質源は、色素取り込みを促進するための1つ以上の薬剤を任意選択で含む塩基性染料溶液中に溶解される。
【0191】
いくつかの実施形態では、溶解したタンパク質源を含む染料溶液に可塑剤を添加して、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を同時に可塑化する。特定の実施形態では、可塑剤は、加脂液であってもよい。特定の実施形態では、可塑剤は、染料取り込みを促進するための1つ以上の薬剤を含む塩基性染料溶液中に溶解されるタンパク質源に添加される。
【0192】
コーティング剤及び仕上げ剤
培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料が上記の方法の任意の組み合わせを使用して加工された後、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、仕上げ剤又はコーティングで処理され得る。結合剤溶液中のタンパク質、ニトロセルロース、合成ワックス、天然ワックス、タンパク質分散物を有するワックス、油、ポリウレタン、アクリルポリマー、アクリル樹脂、エマルジョンポリマー、耐水性ポリマー、及びそれらの様々な組み合わせなど、皮革産業に一般的な様々な仕上げ剤が使用され得る。具体的な実施形態では、ニトロセルロースを含む仕上げ剤が、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に適用され得る。別の特定の実施形態では、従来のポリウレタン仕上げ剤を含む仕上げ剤が、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に適用される。様々な実施形態では、1つ以上の仕上げ剤が、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に順次適用される。場合によっては、仕上げ剤は、染料又は顔料と組み合わされる。場合によっては、仕上げ剤は、天然及び合成ワックス、シリコーン、パラフィン、鹸化脂肪物質、脂肪酸のアミド、アミドエステル、ステアリン酸アミド、それらのエマルジョン、並びに前述のものの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含む風合い改質剤(すなわち、感触又は手触り改質剤)と組み合わされる。場合によっては、仕上げ剤は、消泡剤と組み合わされる。いくつかの実施形態では、外部要素又は外力が、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に加えられる。そのような実施形態では、外部要素又は外力は、加熱及び/又はプレスを含む。いくつかの実施形態では、外部要素又は外力は、ホットプレスである。いくつかの実施形態では、外力が、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料に加えられる。そのような実施形態では、外力は、加熱及び/又はプレスを含む。いくつかの実施形態では、外力は、ホットプレスである。
【0193】
加工菌糸体材料
本開示の様々な実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、超音波処理される、穿孔される、又は真空加工される。穿孔は、ニードルパンチ、エアパンチ、又はウォーターパンチを含み得る。
【0194】
本開示の様々な実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、溶液(すなわち、染料溶液、タンパク質溶液、又は可塑剤)中で、及び培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料が溶液から取り出された後の両方で、異なる方法で機械的に加工され及び/又は化学的に加工され得る。そのような実施形態では、本方法は、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を機械的に加工すること及び/又は化学的に加工することを含み、加工菌糸体材料が生産される。
【0195】
培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、溶液又は分散液中にある間、溶液の取り込みを確実にするように、撹拌され、超音波処理され、圧搾され、又はプレスされ得る。機械的処理の程度は、適用される特定の処理、及び処理段階における培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の脆弱性の程度に依存する。培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の圧搾又はプレスは、手動絞り、機械的プレス、プラテンプレス、リノローラ、又はカレンダーローラによって達成され得る。
【0196】
同様に、上述したように、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、それが溶液から取り出された後に、複合菌糸体材料から溶液を除去するためにプレスされるか又は他の方法で加工され得る。溶液による処理及び材料のプレスは、数回にわたって繰り返され得る。いくつかの実施形態では、材料は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、又は少なくとも5回プレスされる。
【0197】
(例えば、上述の熱、プレス又は他の乾燥技術を使用して)いったん培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料が完全に乾燥されると、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、追加の機械的及び/又は化学的処理に供され得る。培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を処理するために使用される技術、及び培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の得られる靭性に依存して、サンディング、ブラッシング、プレーティング、ステーキング、タンブリング、振動、及びクロスローリングを含むがこれらに限定されない様々なタイプの機械的処理が適用され得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、任意の熱源を用いて、又は化学物質の適用を通じてエンボス加工され得る。いくつかの実施形態では、溶液中の培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、例えば、水酸化アンモニウムなどの塩基を使用して塩基性pHに維持されるなど、追加の化学処理に供され得る。特定の実施形態では、pHは、少なくとも9、10、11又は12である。いくつかの実施形態では、ギ酸などの様々な薬剤を使用して複合菌糸体材料を固定するために、溶液中の培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料のpHを酸性pHに調整する。特定の実施形態では、pHは、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を固定するために、6、5、4、又は3未満のpHに調整される。
【0199】
乾燥培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の機械的処理及び/又は化学的処理の後又は前に、仕上げ、コーティング、及び他の工程が実行され得る。同様に、エンボス加工又は彫刻などの装飾工程を含む最終プレス工程は、乾燥した培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料の機械的処理及び/又は化学的処理の後又は前に行われてもよい。
【0200】
粗菌糸体材料は、本明細書に記載されるプロセスのいずれかに従って作製された乾燥、冷蔵、又は冷凍材料とすることができる。原材料は、所望の厚さを有する菌糸体パネルを提供するために、上部及び/又は底部で任意選択で分割され得る。分割はまた、切断部においてより滑らかな表面を提供することができる。クラスト材料は、本明細書に記載されるように、染色、可塑化、乾燥、及び/又は他の方法で後加工することができる。
【0201】
前仕上げ処理溶液は、水などの好適な溶媒中に1つ以上の染料、タンニン、及び/又は可塑剤(例えば、加脂液)を含むことができる。一例では、前処理溶液は、1つ以上の染料及び/又はタンニンと、1つ以上の加脂液とを含む。添加される染料の量は、染料の特定の種類及び得られる製品の所望の色に基づくことができる。例示的な前仕上げ処理溶液は、所望の色を生成する濃度の1つ以上の酸性染料、約25g/Lの植物性タンニン、約6.25g/LのTruposol(登録商標)LEX加脂液(Trumpler、ドイツ)、及び約18g/L~約19g/LのTrupon(登録商標)DXV加脂液(Trumpler、ドイツ)を含む。
【0202】
前仕上げ処理溶液は、浸漬プロセスとプレスプロセスとの組み合わせによって菌糸体材料に適用することができる。一実施例では、材料は、所定の期間(例えば、1分間)にわたって前仕上げ処理溶液中に浸漬され、次いで、プレスシステムを通して移動される。適切なプレスシステムの一例は、浸漬された材料を、ローラ間の通過毎に材料に所望の程度のプレスを提供するように離間された一対のローラを通して移動させることを含む。材料は、ローラを通じて押す、及び/又は引っ張ることができる。材料がローラを通過する速度は、変化させることができる。本開示の一態様によれば、浸漬及びプレスプロセスは、1回以上(例えば、1、2、3、4、5回以上)繰り返すことができる。
【0203】
前仕上げ処理の適用に続いて、材料は定着プロセスに進むことができる。定着工程は、前仕上げ溶液のpHを、染料の定着に適したpHに調整する工程である。一例において、定着プロセスは、前仕上げ処理溶液のpHを低下させることを含む酸性定着プロセスである。酸性定着に適した酸の非限定的な例としては、酢酸及びギ酸が挙げられる。例えば、酢酸を使用して、上記の例示的な前処理溶液のpHを3.15±1.0のpHに低下させることができる。
【0204】
菌糸体材料は、上記と同様の方法で、pH調整された前仕上げ処理溶液中に浸漬し、平坦化させることができる。浸漬及びプレスプロセスは、1回以上(例えば、1、2、3、4、5回以上)繰り返すことができる。
【0205】
最後に、pH調整された前仕上げ処理溶液への材料の長時間の浸漬を行うことができる。材料は、長い浸漬期間のほぼ中間で反転させることができる。長い浸漬時間は、約30分~1時間以上とすることができる。長い浸漬時間が完了すると、材料は最終プレスプロセスを通して加工され得る。最終プレス工程は、上記のものと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0206】
定着プロセスに続いて、材料を加熱して又は加熱せずに乾燥させることができる。材料は、乾燥工程の間、概ね垂直、水平、又はそれらの間の任意の配向に保持することができる。材料は、任意選択で乾燥工程中に拘束され得る。例えば、1つ以上のクランプを使用して、乾燥中に材料の全部又は一部を拘束させ得る。いくつかの例では、乾燥工程216は周囲条件下で行われる。
【0207】
複合菌糸体材料の機械的特性
本開示の様々な方法を組み合わせて、様々な機械的特性を有する加工培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料を提供することができる。そのような実施形態では、菌糸体材料は、機械的特性、例えば、湿潤引張強度、初期弾性率、破断点伸び率、厚さ、及び/又はスリット引裂強度を含む。他の機械的特性としては、弾性、剛性、降伏強度、極限引張強度、延性、硬度、靱性、耐クリープ性、及び当該技術分野において既知の他の機械的特性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0208】
様々な実施形態では、加工菌糸体材料は、1インチ未満、1/2インチ未満、1/4インチ未満、又は1/8インチ未満の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、複合菌糸体材料は、約0.5mm~約3.5mm、例えば、約0.5mm~約1.5mm、約1mm~約2.5mm、及び約1.5mm~約3.5mmの厚さを有する。所与の材料片内の材料の厚さは、変動する変動係数を有し得る。いくつかの実施形態では、厚さは、最小の変動係数を生じるように実質的に均一である。
【0209】
いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、少なくとも20MPa、少なくとも25MPa、少なくとも30MPa、少なくとも40MPa、少なくとも50MPa、少なくとも60MPa、少なくとも70MPa、少なくとも80MPa、少なくとも90MPa、少なくとも100MPa、少なくとも110MPa、少なくとも120MPa、少なくとも150MPa、少なくとも175MPa、少なくとも200MPa、少なくとも225MPa、少なくとも250MPa、少なくとも275MPa、少なくとも300MPa、少なくとも325MPa、少なくとも350MPa、少なくとも375MPa、少なくとも400MPa、又は少なくとも500MPaの初期弾性率を有し得る。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約0.5MPa~約500MPa、例えば、約0.5MPa~約10MPa、約1MPa~約20MPa、約10MPa~約30MPa、約20MPa~約40MPa、約30MPa~約50MPa、約40MPa~約60MPa、約50MPa~約70MPa、約60MPa~約80MPa、約70MPa~約90MPa、約80MPa~約100MPa、約90MPa~約150MPa、約100MPa~約200MPa、約150MPa~約300MPa、約200MPa~約300MPa、約300MPa~約400MPa、約350MPa~約500MPa、及び約40MPa~約500MPaの初期弾性率を有し得る。特定の実施形態では、菌糸体材料は、0.8MPaの初期弾性率を有する。一態様において、菌糸体材料は、1.6MPaの初期弾性率を有する。別の態様において、菌糸体材料は、97MPaの初期弾性率を有する。
【0210】
いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約0.05MPa~約50MPa、例えば、約1MPa~約5MPa、約5MPa~約20MPa、約10MPa~約30MPa、約15MPa~約40MPa、及び約20MPa~約50MPaの湿潤引張強度を有し得る。特定の実施形態では、菌糸体材料は、約5MPa~約20MPaの湿潤引張強度を有し得る。一態様において、菌糸体材料は、約7MPaの湿潤引張強度を有する。特定の実施形態では、湿潤引張強度は、ASTM D638によって測定される。
【0211】
いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、少なくとも1.1MPa、少なくとも6.25MPa、少なくとも10MPa、少なくとも12MPa、少なくとも15MPa、少なくとも20MPa、少なくとも25MPa、少なくとも30MPa、少なくとも35MPa、少なくとも40MPa、少なくとも45MPa、少なくとも50MPaの破壊強度(「極限引張強度」)を有し得る。
【0212】
いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、2%未満、3%未満、5%未満、20%未満、25%未満、50%未満、77.6%未満、又は200%未満の破断点伸びを有する。例えば、菌糸体材料は、約1%~約200%、例えば、約1%~約25%、約10%~約50%、約20%~約75%、約30%~約100%、約40%~約125%、約50%~約150%、約60%~約175%、及び約70%~約200%を含む)の破断点伸びを有し得る。
【0213】
いくつかの実施形態では、初期弾性率、極限引張強度、及び破断点伸びは、ASTM D2209又はASTM D638を使用して測定される。特定の実施形態では、初期弾性率、極限引張強度、及び破断点伸びは、ASTM D2209の歪速度でASTM D638と同じ試料寸法を使用する修正版ASTM D638を使用して測定される。
【0214】
いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、少なくとも15N、少なくとも20N、少なくとも25N、少なくとも30N、少なくとも35N、少なくとも40N、少なくとも50N、少なくとも60N、少なくとも70N、少なくとも80N、少なくとも90N、少なくとも100N、少なくとも125N、少なくとも150N、少なくとも175N、又は少なくとも200Nの単一ステッチ引裂強度を有し得る。特定の実施形態では、タング引裂強度は、ASTM D4786によって測定される。
【0215】
いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、少なくとも20N、少なくとも40N、少なくとも60N、少なくとも80N、少なくとも100N、少なくとも120N、少なくとも140N、少なくとも160N、少なくとも180N、又は少なくとも200Nの二重ステッチ引裂強度を有し得る。特定の実施形態では、タング引裂強度は、ASTM D4705によって測定される。
【0216】
いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、ISO-3377によって測定される、少なくとも1.8N、少なくとも15N、少なくとも25N、少なくとも35N、少なくとも50N、少なくとも75N、少なくとも100N、少なくとも150N、又は少なくとも200Nのタング引裂強度(スリット引裂強度とも呼ばれる)を有し得る。特定の実施形態では、タング引裂強度は、ASTM D4704によって測定される。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、ISO-3377-2によって測定される、少なくとも1N、少なくとも20N、少なくとも40N、少なくとも60N、少なくとも80N、少なくとも100N、少なくとも120N、少なくとも140N、少なくとも160N、少なくとも180N、又は少なくとも200Nのスリット引裂強度を有し得る。一態様では、菌糸体材料は、ISO-3377-2によって測定される、約1N~約200N、例えば、約10N~約30N、約20N~約40N、約30N~約50N、約40N~約60N、約50N~約70N、約60N~約80N、約70N~約90N、約80N~約100N、約90N~約110N、約100N~約120N、約110N~約130N、約120N~約140N、約130N~約150N、約140N~約160N、約150N~約170N、約160N~約180N、約170N~約190N、及び約180N~約200Nのスリット引裂強度を有する。
【0217】
いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、少なくとも0.2MPa、少なくとも1MPa、少なくとも5MPa、少なくとも20MPa、少なくとも30MPa、少なくとも50MPa、少なくとも80MPa、少なくとも100MPa、少なくとも120MPa、少なくとも140MPa、少なくとも160MPa、少なくとも200MPa、少なくとも250MPa、少なくとも300MPa、少なくとも350MPa、少なくとも380MPaの曲げ弾性率(撓み)を有する。特定の実施形態では、圧縮は、ASTM D695によって測定される。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、0.2MPa未満、1MPa未満、5MPa未満、20MPa未満、30MPa未満、40MPa未満、50MPa未満、60MPa未満、70MPa未満、80MPa未満、90MPa未満、100MPa未満、110MPa未満、120MPa未満、130MPa未満、140MPa未満、150MPa未満、160MPa未満、200MPa未満、250MPa未満、300MPa未満、350MPa未満、380MPa未満の曲げ弾性率(撓み)を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約5~10MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約10~15MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約10~20MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約20~30MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約30~40MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約40~50MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約50~60MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約60~70MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約70~80MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約10~11MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約10MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約20MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約30MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約40MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約50MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約60MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約70MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約80MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約90MPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、菌糸体材料は、約100MPaの曲げ弾性率を有する。特定の実施形態では、圧縮は、ASTM D695によって測定される。
【0218】
本開示の様々な実施形態では、菌糸体材料は、水中への浸漬後の質量増加率として測定される異なる吸収特性を有する。いくつかの実施形態では、水中に1時間浸漬した後の質量増加率は、1%未満、5%未満、25%未満、50%未満、74%未満、又は92%未満である。特定の実施形態では、1時間の水中浸漬後の質量増加率は、ASTM D6015を使用して測定される。
【0219】
菌糸体材料を生産する方法
また、本明細書に記載の菌糸体材料を生産する方法も提供される。本開示の一実施形態によれば、菌糸体材料は、分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料を生成することと、分岐菌糸の1つ以上の塊を含む培養菌糸体材料を破壊することと、培養菌糸体材料に結合剤を添加すること(例えば、破壊された培養菌糸体材料を結合剤を含む溶液と接触させることによる)とによって、複合菌糸体材料を生産することによって生産することができる。いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料は、破壊された分岐菌糸の1つ以上の塊を含む。いくつかの実施形態では、破壊された分岐菌糸の1つ以上の塊は、長さを有する。そのような実施形態では、破壊された分岐菌糸の1つ以上の塊は、約0.1mm~約5mmの長さを有する。
【0220】
別の態様において、菌糸体材料は、培養菌糸体材料を生成することと、培養菌糸体材料に結合剤を添加すること(例えば、プレスされた培養菌糸体材料を結合剤を含む溶液と接触させることによる)とによって、複合菌糸体材料を生産することによって生産することができる。
【0221】
いくつかの実施形態では、生成することは、固体基質上に培養菌糸体材料を生成することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、支持材料を菌糸体材料に組み込むことを更に含む。いくつかの実施形態では、支持材料は、補強材料である。いくつかの実施形態では、支持材料は、ベース材料である。いくつかの実施形態では、破壊することは、機械的作用によって分岐菌糸の1つ以上の塊を破壊することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、培養菌糸体材料が生成される真菌種以外の種に由来する1つ以上のタンパク質を添加することを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、培養菌糸体材料又は菌糸体材料に染料を添加することを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、培養菌糸体材料又は菌糸体材料に可塑剤を添加することを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、培養菌糸体材料又は菌糸体材料にタンニンを添加することを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、菌糸体材料に仕上げ剤を添加することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、菌糸体材料の機械的特性を決定することを更に含み、機械的特性は、湿潤引張強度、初期弾性率、破断点伸び率、厚さ、スリット引裂強度、弾性、剛性、降伏強度、極限引張強度、延性、硬度、靭性、耐クリープ性などを含むが、これらに限定されない。例えば、菌糸体材料は、約0.05MPa~約50MPaの湿潤引張強度、約0.5MPa~約300MPaの初期弾性率、約1%~約200%の破断点伸び率、約0.5mm~約3.5mmの厚さ、及び/又は約1N~約200Nのスリット引裂強度を有する。
【0222】
いくつかの実施形態では、培養菌糸体材料又は複合菌糸体材料は、従来の製紙機器を使用して生産される。
【実施例】
【0223】
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために記載されており、本発明者らがその発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、以下の実験が、実施された全ての実験又は唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するための努力がなされているが、いくつかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又はその付近である。標準的な略語、例えばbp、塩基対(複数可)、kb、キロベース(複数可)、pl、ピコリットル(複数可)、s又はsec、秒min、分(複数可)、h又はhr、時間(複数可)aa、アミノ酸(複数可)、kb、キロベース(複数可)、bp、塩基対(複数可)、nt、ヌクレオチド(複数可)、などが使用され得る。
【0224】
実施例1:菌糸体材料中の潤滑剤としてのOSA
15gの菌糸体バイオマスを1Lの水に添加し、Blendtecにおいて1.5%、設定5で90秒間ブレンドした。得られたスラリーを500メッシュの篩で篩い分けし、液体を除去した。次いで、菌糸体を、1Lの水中で10秒間、Blendtec中で1で再分散させた。4種のスラリーを調製した。1つのスラリーを、対照として、潤滑剤又は結合剤なしで室温(RT)で撹拌した。12.8mLの2-オクテニルコハク酸無水物(OSA、菌糸体バイオマスの多糖量に対して1モル当量)を、室温で撹拌しながら残りの3つのスラリーにゆっくりと添加した。0.5mLの10M NaOHを3つ全てのスラリーに添加して、OSAからの無水物と菌糸多糖中のグルカンからのヒドロキシル基との間の反応を開始させた。最終pHは、8.5であった。スラリーを室温で4時間撹拌した。4つ全てのスラリーを真空濾過して未反応化学物質を除去し、1Lの水中に再分散させた。湿式積層の前に、異なる量のDur-o-Set Elite Plus結合剤(5g又は9.8gのいずれか)を2つのスラリーに添加した。次いで、4つのスラリーをブフナー真空フラスコ上に湿式積層させてウェブを形成した。4つ全てのウェブを45℃で乾燥させ、次いで90℃及び20kNで2分間プレスし、試験前にチャンバ内で調節した。表1は、4つの培養菌糸体パネルの生産方法の概要を提供する。
【0225】
【0226】
処理材料へのOSAの組み込みは、ATR-FTIRによって測定した。対照菌糸体及びOSA処理材料のATR-FTIRスペクトルを、4000cm
-1~400cm
-1で収集し、OSA処理後に脂肪族領域において追加のピークを示した。
図3に示すように、OSAを材料に組み込んだ。
【0227】
様々な特性後の菌糸体材料の各種機械的特性を評価した。スリット引裂は、ISO 3377-2によって測定した。この試験では、プレスリット材料を破断するのに必要な力を測定した。試料を65±2%RHで24時間調節した。いくつかの実施形態では、試料を、試験前に室温で16時間、相対湿度65%で平衡化した。ISO 3377-2ダイを使用して、中央スリットを有する1インチ×2インチの試験片を切り出した。次いで、適切なスリット引裂試験方法を、Zwick製の万能機械テスター上で実行した。T型剥離は、ゴム菌糸体結合を用いて、ASTM D1876に大まかに従って測定した。剥離強度は、材料の層間抵抗を決定した。簡単に説明すると、ノッチによって形成された2つの層が各側で同等の厚さを有するように、ノッチを材料のz方向に切断した。材料の完全な層間剥離に必要な力を剥離力として測定した。曲げ弾性率は、業界標準試験ASTM D790-03によって測定した。簡単に説明すると、外側表面が破断するまで、又は5.0%の最大ひずみに達するまでのいずれか最初に起こるまで、試料を偏向させた。この手順は、0.01mm/mm/分の歪み速度を使用する。スリット引裂の結果を
図4に示す。T型剥離の結果を
図5に示す。曲げ弾性率の結果を
図6A~Dに示す。
【0228】
対照及び処理菌糸体材料の特性の要約を表2に提供する。
【0229】
【0230】
全ての試料について、プレスの前後に体積密度を追跡した。体積密度は、全ての試料についてCarverホットプレスでプレスした後に約0.3g/cm3増加し、全ての試料の全体的な美的感覚及び豊かさを向上させる。
【0231】
湿式積層プロセス中にOSAを含めると、未処理の対照材料と比較して、材料の曲げ弾性率が大幅に低下した。OSAによる官能化は、菌糸体の曲げ弾性率を219Nから18Nに減少させた。OSA官能化ウェブは、加脂液がなくても可撓であった。結合剤の添加は、OSA処理材料の可撓性に影響を与えなかった。
【0232】
添加剤を含まない対照菌糸体は、高い初期スリット引裂強度(26N)を示すが、全体的な引裂伝播強度は低いままであった。OSAによる菌糸の官能化は、裂け目を通して観察された一定の引裂伝播強度で、裂け目を5.5Nまで低下させた。
【0233】
同様の挙動がT型剥離強度において観察され、OSAによる官能化は、おそらく菌糸内の内部水素結合を破壊する潤滑の結果として、初期最大T型剥離強度及び全体の平均T型剥離強度を低下させる。
【0234】
Elite plusの添加は、厚さに関係なく、OSA官能化試料のスリット引裂強度を改善した。Elite plusはまた、全体的な引き裂き伝播挙動を改善し、Elite plusが多いほどより高いスリット引裂強度を示した。スリット引裂力は、添加された結合剤の量に応じて5.5Nから16N又は27Nに増加し、T型剥離平均は、添加された結合剤の量に応じて1.03から2.52又は3.35に増加した。従って、OSAの添加は菌糸体材料の可撓性を有意に増加させ、引裂力又は剥離力に耐える材料の能力は、OSA処理材料の可撓性に悪影響を及ぼすことなく、結合剤の添加によって改善され得る。
【0235】
OSAはデンプンを修飾するために使用されてきたが、内部潤滑を提供し、繊維材料(例えば、菌糸体材料)に有意な可撓性を付与するOSAの能力は予想されなかった。
【0236】
実施例2:菌糸体材料中の潤滑剤としてのシロキサン
15gの菌糸体バイオマスを1Lの水に添加し、Blendtec中で1.5%、設定5で90秒間ブレンドした。得られたスラリーを500メッシュの篩で篩い分けし、菌糸体の水溶性成分を除去した。最終生成物中の最終濃度が8~15重量%シロキサンであるように、スラリーにStarsoftシロキサンを添加した。8gのElite Plus結合剤(固形分50重量%)もスラリーに添加した。最終StarSoft濃度10%及び13%で、2つの上記スラリーを調製した。次いで、菌糸体を、1Lの水中で10秒間、Blendtec中で1で再分散させた。次いで、スラリーを、形成布上の6インチのブフナー漏斗中の真空濾過を介して湿式堆積させた。4つのウェブを作製し、2つはシロキサンを用い、2つは対照ウェブを作製した。4つ全てのウェブを45℃で乾燥させ、次いで90℃で2回、20kNで2分間、0.8mmシム、次いで0.65mmシムを用いてプレスし、試験前に湿度チャンバ内で50%RH及び21℃で調節した。一方の対照ウェブを未処理のままにし、他方を10%DXV/LEX加脂液で処理した。牛革及びマンゴー果実皮も対照として使用した。試料の曲げ弾性率を、実施例1に記載したように評価した。
【0237】
シロキサン処理した菌糸体材料及び皮革対照の曲げ弾性率の結果を以下の表3に要約する。
【0238】
【0239】
加脂液又はシロキサンの添加は、未処理の材料と比較して、菌糸体材料の曲げ弾性率を有意に減少させた。更に、13%のシロキサンで処理した試料は、従来の加脂液仕上げ剤で処理した試料と同様の曲げ弾性率を有していた。したがって、材料生産の初期段階でシロキサンを添加すると、材料の可撓性が増大した。
【0240】
更に、処理に使用されるシロキサンの量は、所望の材料の可撓性を達成するために変更することができる。例えば、より剛性が高い材料のためには、より少ないシロキサンを使用することができ、より可撓性の高い材料を生産するためには、より多くのシロキサンを使用することができる。
【0241】
シロキサンは、織物産業において仕上げ剤として使用されてきたが、ここで使用されているような開始生成物としては使用されていない。理論に束縛されるものではないが、菌糸体材料合成プロセスの最終段階でのシロキサンの添加は、最初の菌糸体材料合成プロセスでのシロキサンの添加ほど、可撓性、平滑性、及びドレープ性の付与に成功しない可能性が高い。これは、シロキサンが最終繊維製品に均一に又は効率的に透過しない可能性があるのに対して、ブレンド又は湿式積層工程などの材料乾燥前のシロキサンの添加は、材料全体へのシロキサンの均一かつ完全な組み込みを可能にするからである。シロキサンが初期生産中に使用される場合、生産の後期の加脂工程は、必要に応じて省略され得る。
【0242】
説明される開示及び他の構成要素の構成は、任意の特定の材料に限定されないことが、当業者によって理解されるであろう。本明細書に開示される本開示の他の例示的な実施形態は、本明細書に別段の記載がない限り、多種多様な材料から形成され得る。
【0243】
例示的な実施形態に示されるような本開示の要素の構成及び配置は、例示的なものにすぎないことに留意することも重要である。本発明のいくつかの実施形態のみが本開示において詳細に説明されているが、本開示を検討する当業者は、記載された主題の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び比率、パラメータの値、取付け構成、材料の使用、色、向きなどの変更)が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、全てのそのような修正は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。本開示の趣旨から逸脱することなく、所望の例示的な実施形態及び他の例示的な実施形態の設計、動作条件、及び構成において、他の置換、修正、変更、及び省略を行うことができる。
【0244】
本明細書に記載されるプロセス内の任意の記載されるプロセス又は工程は、本開示の範囲内の構造を形成するために、他の開示されるプロセス又は工程と組み合わせられてもよいことが理解されるであろう。本明細書に開示される例示的な構造及びプロセスは、例示目的のためであり、限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】