(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】溶融エレクトロ書込みシステムおよび対応する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20231219BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20231219BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20231219BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231219BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231219BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20231219BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531102
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2021084607
(87)【国際公開番号】W WO2022122734
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506426030
【氏名又は名称】テヒニシェ ウニヴェルズィテート ミュンヘン
【氏名又は名称原語表記】TECHNISCHE UNIVERSITAET MUENCHEN
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】キリアン、ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ザーラ、ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ、メラ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、レオンハルト
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン、トビアス、パーマー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス、シュバイガー
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC02
4F213AR02
4F213AR07
4F213AR16
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL52
4F213WL74
4F213WL85
(57)【要約】
ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのためのシステム(10)は、印刷ヘッド(12)と、固体ポリマー基材(24)を印刷ヘッド(12)に向けて制御可能に送給するように構成されている送給機構(36)とを備え、印刷ヘッド(12)は、ノズル(14)、ヒータ(30)、および絶縁スペーサ(32)を備え、印刷ヘッド(12)は、ノズル(14)を介してポリマー溶融物を放出するように構成され、ノズル(14)は、選択可能な電位で保持されるように構成され、ヒータ(30)は、印刷ヘッド(12)内にノズル(14)に近接して配置され、ヒータ(30)は、固体ポリマー基材をその融点を超えて加熱して、印刷ヘッド(12)内にポリマー溶融物を作り出すように構成され、絶縁スペーサ(32)は、ヒータ(30)とノズル(14)との間に配置され、絶縁スペーサ(32)は、ヒータ(30)とノズル(14)とを電気的に絶縁し、絶縁スペーサ(32)は、ヒータ(30)によって少なくとも部分的に取り囲まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのためのシステム(10)であって、印刷ヘッド(12)と、固体ポリマー基材(24)を前記印刷ヘッド(12)に向けて制御可能に送給するように構成されている送給機構(36)とを備え、前記印刷ヘッドが、ノズル(14)、ヒータ(30)、および絶縁スペーサ(32)を備え、
前記印刷ヘッド(12)が、前記ノズル(14)を介して前記ポリマー溶融物を放出するように構成され、前記ノズル(14)が、選択可能な電位で保持されるように構成され、
前記ヒータ(30)が、前記印刷ヘッド(12)内に前記ノズル(14)に近接して配置され、前記ヒータ(30)が、前記固体ポリマー基材(24)をその融点を超えて加熱して、前記印刷ヘッド(12)内に前記ポリマー溶融物を作り出すように構成され、
前記絶縁スペーサ(32)が、前記ヒータ(30)と前記ノズル(14)との間に配置され、前記絶縁スペーサ(32)が、前記ヒータ(30)と前記ノズル(14)とを電気的に絶縁し、前記絶縁スペーサ(32)が、前記ヒータ(30)によって少なくとも部分的に取り囲まれている、システム。
【請求項2】
前記システム(10)が、電位を前記ノズル(14)に印加するように構成されている電圧源をさらに備える、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記絶縁スペーサ(32)が雄ねじを備え、前記ヒータ(30)が雌ねじを備え、前記絶縁スペーサ(32)の前記雄ねじが、前記ヒータ(30)の前記雌ねじに係合する、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記絶縁スペーサ(32)が、前記ノズル(14)を少なくとも部分的に取り囲む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記絶縁スペーサ(32)が雌ねじを備え、前記ノズル(14)が雄ねじを備え、前記絶縁スペーサ(32)の前記雌ねじが、前記ノズル(14)の前記雄ねじに係合する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記絶縁スペーサ(32)と前記ヒータ(30)とが、接着剤、好ましくは接着セメントを用いて一体部片に成型されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記絶縁スペーサ(32)が、前記ノズル(14)と前記ヒータ(30)との間に延び、かつ前記ヒータ(30)内に突出する絶縁スペーサ本体(46)を備え、前記絶縁スペーサ本体(46)が、前記ポリマー溶融物を前記ヒータ(30)から前記ノズル(14)に向けて案内するための中央通路を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記ヒータ(30)が、少なくとも部分的に前記絶縁スペーサ本体(46)の周りに配置されて、前記絶縁スペーサ本体(46)を通して固体ポリマー基材(24)を加熱する、請求項7に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記絶縁スペーサ本体(46)の熱伝導率が、1W/K*m超、特に10W/K*m超、好ましくは25W/K*m超である、請求項7または8に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記絶縁スペーサ本体(46)が、セラミック・スペーサ材料から作られ、前記絶縁スペーサ本体(46)が、特に窒化アルミニウムもしくはアルミナを含むか、または窒化アルミニウムもしくはアルミナから略構成されている、請求項7から9のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項11】
前記絶縁スペーサ(32)が、前記絶縁スペーサ本体(46)から半径方向に突出して前記ヒータ(30)と前記ノズル(14)との間の電界を減衰させる誘電シールド部(48)を備える、請求項7から10のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項12】
前記誘電シールド部(48)が、前記ヒータ(30)と前記ノズル(14)とを空間的に仕切る、請求項11に記載のシステム(10)。
【請求項13】
前記中央通路に対する前記誘電シールド部(48)の半径方向伸長が、前記ヒータ(30)の半径方向伸長よりも、特に少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%大きい、請求項11または12に記載のシステム(10)。
【請求項14】
前記誘電シールド部(48)と前記絶縁スペーサ本体(46)とが異なる材料から作られ、前記絶縁スペーサ本体(46)が、特に前記誘電シールド部(48)よりも高い熱伝導率を有する、請求項11から13のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項15】
前記絶縁スペーサ本体(46)が、前記ノズル(14)から絶縁送給管(50)へ延び、前記送給管(50)の熱伝導率が、前記絶縁スペーサ本体(46)の熱伝導率よりも低い、請求項7から13のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項16】
前記固体ポリマー基材(24)が、前記送給機構(36)によって前記ノズル(14)に向けて送られるポリマー・フィラメント(28)であり、前記送給機構(36)が、特に摩擦ホイールを備える、請求項1から15のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項17】
前記送給機構(36)が、動作中、前記ポリマー・フィラメント(28)を制御可能に送給して、前記ノズル(14)において前記ポリマー溶融物上に略一定の圧力を維持するように構成されている、請求項1から16のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項18】
前記システム(10)が、前記ポリマー溶融物を受容するための、前記印刷ヘッド(12)に対向する接地されたコレクタ(16)をさらに備え、前記コレクタ(16)と前記ノズル(14)との間の距離が、特に、前記絶縁スペーサ(32)の誘電率と前記ヒータ(30)の導電性部分および前記ノズル(14)の間の距離との積よりも小さい、請求項1から17のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項19】
前記ポリマー溶融物を用いて前記コレクタ(16)上にエレクトロ書込みするとき、前記コレクタ(16)と前記ノズル(14)との間の距離が、10mm未満、特に8mm未満である、請求項17に記載のシステム(10)。
【請求項20】
前記送給機構(36)および前記印刷ヘッド(12)を制御するための制御システムをさらに備え、前記制御システムが、複数の駆動モードのうちの1つを選択するように構成され、前記複数の駆動モードが、少なくともエレクトロ書込み・モードと融着堆積モデリング・モードとを含み、前記制御システムが、前記駆動モードに基づいて、前記送給機構(36)の送給量と、前記ノズル(14)に印加される電圧とを調節するように特に構成されている、請求項1から19のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項21】
ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのための方法であって、
絶縁スペーサ(32)を用いてノズル(14)とヒータ(30)とを電気的に絶縁することであって、前記絶縁スペーサ(32)が、前記ヒータ(30)によって少なくとも部分的に取り囲まれていることと、
固体ポリマー基材(24)を前記ヒータ(30)に向けて選択的に送給することと、
前記ヒータ(30)を用いて前記固体ポリマー基材(24)をその融点を超えて加熱して、前記ポリマー溶融物を生成することと、
電位を前記ノズル(14)に印加することと、
前記ノズル(14)を介して前記ポリマー溶融物を放出することと
を含む、方法。
【請求項22】
前記絶縁スペーサ(32)を通して前記固体ポリマー基材(24)を加熱することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記絶縁スペーサ(32)の雄ねじおよび前記ヒータ(30)の雌ねじを介して、前記絶縁スペーサ(32)と前記ヒータ(30)とを接合することを含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記絶縁スペーサ(32)の雌ねじおよび前記ノズル(14)の雄ねじを介して、前記絶縁スペーサ(32)と前記ノズル(14)とを接合することを含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
接着セメントを用いて前記絶縁スペーサ(32)と前記ヒータ(30)とを一体部片に成型することを含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマー溶融物を前記ヒータ(30)から前記ノズル(14)に向けて、前記絶縁スペーサ(32)の中央通路を通して案内することを含む、請求項21から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記絶縁スペーサ本体(46)を通して前記固体ポリマー基材(24)を加熱することを含む、請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ポリマー・フィラメント(28)を前記絶縁スペーサ(32)に向けて送ることを含む、請求項21から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
動作中、前記ポリマー・フィラメント(28)を制御可能に送給して、前記ノズル(14)において前記ポリマー溶融物上に略一定の圧力を維持することを含む、請求項21から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマー溶融物を受容するための、前記印刷ヘッド(12)に対向する接地されたコレクタ(16)を設けることをさらに含み、
前記コレクタ(16)と前記ノズル(14)との間の距離が、前記絶縁スペーサ(32)の誘電率と前記ヒータ(30)の導電性部分および前記ノズル(14)の間の距離との積よりも小さい、請求項21から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
特に請求項21から30のいずれか一項に従って、印刷ヘッド(12)からコレクタ(16)上に放出されたポリマー溶融物の部品(54)を付加形成する方法であって、
融着堆積モデリング・モードにおいて、前記ポリマー溶融物を選択的に堆積させて前記コレクタ上にポリマー構造体(56)を形成することであって、前記印刷ヘッド(12)のノズル(14)と前記コレクタ(16)との間の電圧が、前記ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのための閾値よりも低いことと、
エレクトロ書込み・モードに切り替えることであって、前記ノズル(14)と前記コレクタ(16)との間の前記電圧が、前記ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのための閾値よりも高いことと、
前記エレクトロ書込み・モードにおいて、前記印刷ヘッド(12)を用いて前記ポリマー溶融物を選択的に堆積させて、エレクトロ書込み後のポリマー繊維(20、58)を前記ポリマー構造体(56)上に所定の堆積線に沿って形成することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造の分野にある。より詳細には、本発明は、連続ライティング・モードにおけるポリマー構造体のエレクトロ書込みに関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造は、意図された構造体の仮想コピーに基づいて、ビルド材料を連続して堆積させて、連続して堆積された材料層から完全な部分を徐々にビルドすることに依拠している。通常、印刷ヘッドとビルド・プレートとの相対移動が駆動されて、2次元平面に1つの材料層の幾何形状を画定する。以前に堆積された層の上に後続層が堆積されると、3次元構造体が次第に構築され得る。
【0003】
エレクトロ書込みは、エミッタからコレクタに向かうポリマー材料の流動が電界を介して安定される技法である。例えば、溶融エレクトロ(スピニング)ライティングと呼ばれる技法において、ポリマーが、溶融形態で導電性ノズルによって供給され得、高電圧電界によってノズルから導電性コレクタ・プレート上に向けられ得る。電界は、ポリマー材料を帯電させ、帯電されたポリマー材料がコレクタによって引き付けられる間、ポリマー材料を、ノズル直径よりも小さい太さを有する流れに引き入れることができる。
【0004】
ポリマー流は、冷却時にエミッタとコレクタとの間の間隙を埋めて、固体または凝固ポリマー材料がコレクタ上に堆積されるようにすることができる。電圧、エミッタとコレクタとの間の距離、およびエミッタにおけるポリマー材料の流量を制御することによって、ポリマー材料は、コレクタ上の所定の位置に堆積され得、または、コレクタの堆積領域に半ランダムに堆積された細繊維にスピンされ得る。その後、ポリマー材料の多層を連続して堆積させることによって、ポリマー材料の3次元形状が生成され得る。
【0005】
溶融エレクトロスピニング・ライティングの場合、従来、最初は固体のポリマー基材が、シリンジ型リザーバに供給され、溶融されて、粘性のポリマー溶融物をシリンジ・リザーバ内に得る。その後、前記ポリマー溶融物は、シリンジ・ピストンを作動させることにより、または加えられる空気圧を介して、スピナレットとも呼ばれるノズルを介して基板に向けて排出される。
【0006】
EP3444387A1は、ハウジングが導電性スピナレットに接続されている溶融エレクトロスピニング・システムを開示している。原料樹脂が、ホッパに装入され、ねじを介してハウジングに向けて輸送される。ハウジングと導電性スピナレットとの間のアーク放電を避けるために、高電圧が外部帯電電極に印加されて、静電誘導を介してスピナレットを帯電させる。その後、空気流が、スピンされた繊維を、スピナレットから輸送コンベヤ上の捕集シートに吹き付ける。
【0007】
M.L.RiveraおよびS.E.Hudson(「Desktop Electrospinning:A Single Extruder 3D Printer for Producing Rigid Plastic and Electrospun Textiles」、Proc.2019 CHI Conf.Hum.Factors Comput.Syst.、2019)は、硬質プラスチック印刷と溶融エレクトロスピニングとを組み合わせた3Dプリンタを開示している。PLAフィラメントが、スピナレットおよびヒータを有する印刷ヘッドに向けて案内され、ヒータはPLAフィラメントを溶融し、スピナレットはポリマー溶融物を排出する。溶融エレクトロスピニング・モードにおいて、スピナレットは(電気的に)接地され、高電圧が導電性ビルド・プレートに印加され、ポリマー溶融物が、ランダム化堆積モードにおいてビルド・プレート上にエレクトロスピンされて、ビルド・プレートまたは3D印刷された構造体上にポリマー・フェルトの見本を形成する。
【0008】
CN105133054Aは、モータに取り付けられた遠心ディスク状ノズルを備える静電スピニング・デバイスを開示している。使用中、ディスク状ノズルは、接地され、高電圧静電発電機に接続された円錐状の捕集プレートの上方でスピンする。ベアリングの過熱を防止するために、断熱リングがベアリングに付着されている。
【0009】
CN103225116Aは、差動静電ノズルを開示しており、これは、ノズルの内側円錐体の分流を通して複数の繊維を製作するための単一ノズルの機能を実現することができる。ノズルは接地され、受信電極板が高い電位で保持される。加熱デバイスが、内側円錐ノズルに直接接触して、その温度を制御し、空気流入管が、外部高温ガス源から高温ガスを供給して、内側円錐ノズル内でスピンされた繊維を生成する。
【0010】
CN108501371Aは、生物3Dプリンタの高温ノズルを開示している。針が、針の熱伝導スリーブによりバレルの熱伝導スリーブに連結されて、バレルと針とのさらなる加熱を可能にする。針の断熱スリーブと断熱ハウジングとが、印刷ヘッドの外側に配置されて、印刷ヘッドからの熱放散を防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
シリンジ式の繊維押出しに基づく従来の技法およびシステムは、本質的に周期的な動作モードを生じさせ、ポリマー溶融物リザーバは、所定の印刷期間後に補充を必要とする。加えて、延伸樹脂/ポリマー溶融物リザーバは、例えば、生物医学用途の特化デバイスを製造するための生分解性ポリマー基材の場合に、基材の劣化を生じさせることがある。
【0012】
一方、エレクトロスピンされた繊維を連続して製作する従来の試みは、ランダムな堆積領域におけるランダムに配列されたポリマー繊維に限定されている。
【0013】
この現在の技術を考慮して、本発明の目的は、固体ポリマー基材を用いる連続動作も可能にする、ポリマー構造体の制御されたエレクトロ書込みのための改良されたシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、独立請求項によるエレクトロ書込みのためのシステムおよびエレクトロ書込みの方法によって解決される。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0015】
第1の態様によれば、本発明は、ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのためのシステムであって、印刷ヘッドと、固体ポリマー基材を印刷ヘッドに向けて制御可能に送給するように構成されている送給機構とを備え、印刷ヘッドは、ノズル、ヒータ、および絶縁スペーサを備える。印刷ヘッドは、ノズルを介してポリマー溶融物を放出するように構成され、ノズルは、選択可能な電位で保持されるように構成されている。ヒータは、印刷ヘッド内にノズルに近接して配置され、ヒータは、固体ポリマー基材をその融点を超えて加熱して、印刷ヘッド内にポリマー溶融物を作り出すように構成されている。絶縁スペーサは、ヒータとノズルとの間に配置され、絶縁スペーサは、ヒータとノズルとを電気的に絶縁し、絶縁スペーサは、ヒータによって少なくとも部分的に取り囲まれている。
【0016】
本発明者らは、ノズルを帯電させて、ポリマー堆積の方向性を向上させ、同時に、絶縁スペーサによりヒータとノズルとの間の電気絶縁を向上させることによって、従来技術の欠点が克服され得ることを見出した。絶縁スペーサがノズルとヒータとの間に配置されると、ヒータとノズルとの間のアーク放電が防止され得る。さらに、絶縁スペーサはヒータ内に突出するため、ポリマー溶融物は、絶縁スペーサを通して少なくとも部分的に加熱されることにより、ポリマー溶融物とヒータの導電性部分との接触を少なくとも部分的に不要にする。これにより、ノズルからヒータへのポリマー溶融物を通る電流の流れが避けられ得る。本発明者らは、ヒータとノズルとの間のポリマー溶融物の流路が、抵抗損に関連付けられ得、抵抗損は、絶縁スペーサがヒータ内に突出し、ノズルの導電性部分とヒータとの間の距離を増大させた状態で、少なくとも低減され得ることを見出した。
【0017】
その結果、システムは、エレクトロ書込み・モードにおいて、印刷ヘッド内で局所的に加熱された、連続送給される固体ポリマー基材を用いて動作され、略所定の向きおよび/または所定の堆積位置を有するポリマー繊維の決定的な堆積を可能にすることができる。
【0018】
動作中、印刷ヘッドは、導電性コレクタに対向するように取り付けられてよく、コレクタとノズルとの間に電圧が印加されてよく、電圧およびポリマーの送給量は、印刷ヘッドからコレクタに向かうポリマー溶融物の流動を制御するのに適したものである。
【0019】
好ましい実施形態において、システムは、電位をノズルに印加するように構成されている電圧源を備える。
【0020】
電圧源は、ノズルおよびコレクタに反対の極性の電位を印加することができ、または、コレクタが(電気的に)接地されている間に、選択可能な電位をノズルに印加することができ、選択可能な電位およびポリマーの送給量は、印刷ヘッドからコレクタに向かうポリマー溶融物の流動を制御するのに適したものであるべきである。電位は、ノズルの金属部分に接続している導体を介してノズルに印加されてよい。
【0021】
ノズルとコレクタとの間に安定した流体柱が形成されるように、電位が選択されてもよく、ポリマー溶融物の流動は、ノズルとコレクタとの間で略電界線に沿っていてもよい。例えば、ノズルから放出されるポリマー溶融物の流れを安定させるため、かつ/または、ポリマー溶融物をノズルからコレクタに向けるために、電位は100V超、特に1kV超、例えば1kV~100kVであってよい。
【0022】
同時に、ノズルに印加される電位から生じる高い電界強度によるノズルとヒータとの間のアーク放電が、ヒータ内に突出する絶縁スペーサの形状によって防止され得る。例えば、絶縁スペーサは、ヒータ内に少なくとも2mm、または少なくとも3mm、好ましくは少なくとも4mm突出することができ、かつ/または、一部の実施形態において、ヒータを通って突出することができる。
【0023】
好ましい実施形態において、絶縁スペーサは雄ねじを備え、ヒータは雌ねじを備え、絶縁スペーサの雄ねじは、ヒータの雌ねじに係合する。
【0024】
したがって、印刷ヘッドは、ヒータが絶縁スペーサにねじ付けされて強固な機械的接続を形成することができ、密着した、かつ/または空気のない部品の接続を生じさせて、例えば、固体ポリマー基材および/またはポリマー溶融物を、絶縁スペーサを通して加熱することができるため、小型に形成されてよい。
【0025】
ヒータが、複合「ホット・エンド」を構成する部品のアセンブリであってよく、複数の構成部品、特に加熱要素、例えば、加熱カートリッジの加熱コイル、熱伝導率の高い(例えば金属製の)ヒータ・ブロックのような、加熱要素から固体ポリマー基材/ポリマー溶融物の通路に向けて熱を伝達するヒータ本体、およびヒータ本体の現在の温度を判定するための熱電対またはサーミスタを備えることができることを、当業者は認識するだろう。一部の実施形態において、ヒータ本体は、例えば金属製の一体構造のヒータ・ブロックであり、加熱要素からヒータ・ブロックの内部通路に向かう熱伝達を向上させるが、一部の実施形態において、ヒータ本体は複合ヒータ本体であってもよい。
【0026】
好ましくは、ヒータ本体に雌ねじが設けられて、絶縁スペーサの雄ねじに係合し、ヒータ本体から絶縁スペーサに向けて熱を直接伝達するとともに、絶縁スペーサを通して電気損失またはヒータ本体および/もしくは加熱要素へのアーク放電を防止する。
【0027】
好ましい実施形態において、絶縁スペーサは、ノズルを少なくとも部分的に取り囲む。
【0028】
ノズルは、絶縁スペーサに挿入されて、ノズルの近位部分を絶縁スペーサ内で囲むことができる。例えば、ノズルの取入部は、絶縁スペーサ内に少なくとも1mm、少なくとも2mm、または少なくとも3mm突出することができ、絶縁スペーサの収容キャビティ内に保持されてよい。したがって、絶縁スペーサは、ヒータおよびノズルの隣接部分間に、例えば半径方向および軸方向に置かれて、ノズルとヒータとの間の電界強度を低下させることができる。ノズルとヒータとの間の電界強度の低下は、ヒータの動作を向上させることができ、アークを防止することができ、ヒータとノズルとの間の電界線を減衰させることによって、コレクタに向かうポリマー溶融物の方向性を向上させることもできる。
【0029】
好ましくは、ノズルは絶縁スペーサ内に取り付けられて、絶縁スペーサがノズルとヒータとを分離する小型の高温ノズル・アセンブリを形成する。
【0030】
好ましい実施形態において、絶縁スペーサは雌ねじを備え、ノズルは雄ねじを備え、絶縁スペーサの雌ねじは、ノズルの雄ねじに係合する。
【0031】
ノズルは、強固な機械的接続を得るために絶縁スペーサにねじ込まれてもよい。ねじ接続は、密着した、かつ/または空気のない部品の接続を生じさせて、ヒータから絶縁スペーサを通ってノズルに向かう熱伝達を向上させることができる。これにより、例えばノズルと絶縁スペーサとの間の熱伝達を向上させるために、ノズルと絶縁スペーサとの強固な接続がねじ接続部を通して設けられてもよい。ねじ接続部は、例えばノズルの交換を可能にするモジュラ・システムを生じさせることもできる。一部の実施形態において、ノズルと絶縁スペーサとは、細かいピッチのねじ山を介して係合する。
【0032】
一部の実施形態において、絶縁スペーサとヒータとは、接着剤、好ましくは接着セメントを用いて一体部片に成型されている。
【0033】
接着セメントは、ポリマー溶融物とヒータとの間の電気絶縁を向上させることができ、ヒータから絶縁スペーサへの熱伝達を向上させることができる。好ましくは、接着セメントはまた、ポリマー溶融物とヒータとの不慮の接触を防止する。絶縁接着剤/接着セメントは、ヒータおよび絶縁スペーサねじ山の間に供給されて、ヒータと絶縁スペーサとの間の機械的接続を向上させ、かつ/または、ヒータから絶縁スペーサへの熱伝達を向上させることができる。
【0034】
一部の実施形態において、ノズル、絶縁スペーサ、およびヒータは、接着剤を用いて一体部片に融着される。
【0035】
接着剤は、絶縁スペーサとヒータとの間ならびにノズルと絶縁スペーサとの間のねじ接続部に特に供給されて、ヒータとノズルとの間の熱伝達を向上させることができる。
【0036】
好ましい実施形態において、絶縁スペーサは、ノズルとヒータとの間に延び、かつヒータ内に突出する絶縁スペーサ本体を備え、絶縁スペーサ本体は、ポリマー溶融物をヒータからノズルに向けて案内するための中央通路を備える。
【0037】
中央通路は、送給機構からノズルに向かう流路の一部を構成することができる。好ましくは、中央通路は直線状で、ノズルを通る流路と一直線になって、ポリマー溶融物を、中央通路を通して、直線状の経路に沿ってノズル内に案内することができる。絶縁スペーサ本体を通る直線状の流路がノズルと一直線であることは、印刷ヘッド内の溶融ポリマー材料の量を低減させることができ、絶縁スペーサを通るポリマー溶融物の通路を短くすることができる。絶縁スペーサ本体は、ヒータに熱的に結合されて、中央通路内の固体ポリマー基材および/またはポリマー溶融物を加熱することができる。好ましくは、絶縁スペーサ本体は、例えば絶縁スペーサ本体の雄ねじを介して、ヒータ、特にヒータ本体に接触している。
【0038】
好ましい実施形態において、ヒータは、少なくとも部分的に絶縁スペーサ本体の周りに配置されて、絶縁スペーサ本体を通して固体ポリマー基材を加熱する。
【0039】
例えば、ヒータ本体は、絶縁スペーサ本体の周囲に直接接合されて、絶縁スペーサ本体の一部を取り囲み、絶縁スペーサ本体を通して固体ポリマー基材/ポリマー溶融物に熱を伝達することができる。
【0040】
好ましい実施形態において、絶縁スペーサ本体の熱伝導率は、1W/K*m超、特に10W/K*m超、好ましくは25W/K*m超である。
【0041】
絶縁スペーサ本体が、10W/K*mまたは25W/K*m超の熱伝導率のような比較的高い熱伝導率を有するとき、絶縁スペーサ本体は、中央通路内の固体ポリマー基材および/もしくはポリマー溶融物への連続した熱伝達のために採用されて、固体ポリマー基材を溶融し、かつ/または中央通路内のポリマー溶融物の温度を維持することができる。特に、固体ポリマー基材は、ノズルから放出される前に、絶縁スペーサ本体において局所的に溶融されてよい。
【0042】
同時に、絶縁スペーサ、特に絶縁スペーサ本体は、固体ポリマー基材の融点を超える最高サービス温度を有するべきである。溶融エレクトロ書込みに適した固体ポリマー基材は、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリフェニレン・スルフィド(polyphenylene sulfide)、ポリアミド(polyamide)、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリフェニレン・スルフィド(polyphenylene sulfide)、ポリ(エーテルエーテル・ケトン)(PEEK)(Poly(ether-ether ketone) (PEEK))、ポリ(エチレン-コ-ビニル)アルコール(poly(ethylene-co-vinyl)alcohol)、ポリ(l-乳酸)(Poly(l-lactic acid))、デンプン、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(poly(3-hydroxybutyrate))、環状ブチレン・テレフタレート・オリゴマー(Cyclic butylene terephthalate oligomer)、クエン酸アセチル・トリブチル(acetyl tributyl citrate)、ポリスチレン(Polystyrene)、ポリ(ε-カプロラクトン)(poly(ε-caprolactone))、ポリラクチド-ポリ(エチレン-グリコール)(Polylactide-poly(ethylene-glycol))、ポリ(ビニリデン・ジフルオリド)(Poly(vinylidene difluoride))、ポリ(ヒドロキシメチル-グリコリド-コ-ε-カプロラクトン)(Poly(hydroxymethyl-glycolide-co-ε-caprolactone))、ポリ(l-ラクチド-コ-ε-カプロラクトン-コ-アクリロイル・カーボネート)(Poly(l-lactide-co-ε-caprolactone-co-acryloyl carbonate))、ポリ(尿素シロキサン)(Poly(urea-siloxane)s)、またはこれらの混合物を含むことができる。したがって、絶縁スペーサ本体の最高サービス温度は、約200℃超であってよく、または300℃もしくは400℃超であってよい。
【0043】
好ましい実施形態において、絶縁スペーサ本体はセラミック・スペーサ材料から作られ、絶縁スペーサ本体は、特に窒化アルミニウム(aluminum nitride)もしくはアルミナを含むか、または窒化アルミニウムもしくはアルミナから略構成されている。
【0044】
セラミック・スペーサ材料は、比較的高い熱伝導率を特徴とすることができ、4超の相対誘電率と高い絶縁耐力とを特徴として、帯電されたノズルとヒータとの間の誘電破壊/アーク放電を防止することができる。例えば、「Shapal」の商標名で知られる窒化アルミニウム(AlN)系誘電セラミック材料は、最適な固体ポリマー基材の融点を超える最高サービス温度を有する絶縁スペーサ本体を機械加工するために採用されてよく、(20℃で)約100W/K*mの熱伝導率と50kV/mmの絶縁耐力とを特徴とすることができる。
【0045】
好ましくは、絶縁スペーサは、ノズルとヒータの導電性部分とを、これらの間の仮想直線に沿って分離して、ノズルとヒータの導電性部分との間の電界を減衰させる。
【0046】
好ましい実施形態において、絶縁スペーサは、絶縁スペーサ本体から半径方向に突出してヒータとノズルとの間の電界を減衰させる誘電シールド部を備える。
【0047】
誘電シールド部は、一体構造の絶縁スペーサ本体の一部であってもよく、または絶縁スペーサ本体に接合されてノズルとヒータとの間の電界を減衰させる絶縁材料部片であってもよく、エレクトロ書込み・モードにおいてポリマー溶融物の堆積の方向性を向上させ、かつ/またはノズルとヒータとの間のアーク放電を防止する。例えば、誘電シールド部は、例えば絶縁スペーサ本体の雄ねじと誘電シールド部の雌ねじとの係合を介して、絶縁スペーサ本体の外側に接合され、ノズルとヒータとを分離する複合絶縁スペーサを形成することができる。
【0048】
好ましくは、誘電シールド部は、例えば1kV/mm超の絶縁耐力を有する絶縁セメントを用いて絶縁スペーサ本体の外側に接合され、絶縁スペーサ本体と誘電シールド部との(ねじ)接合部を通るアーク放電を防止する。
【0049】
好ましい実施形態において、誘電シールド部は、ヒータとノズルとを空間的に仕切る。
【0050】
言い換えると、誘電シールド部は、ヒータとノズルとの間に延びる仮想直線を遮ることができる。例えば絶縁スペーサが複合絶縁スペーサであり、ノズルが絶縁スペーサ本体内に突出しているとき、ヒータとノズルとが、絶縁スペーサ本体によっても部分的に仕切られてよいことを、当業者は認識するだろう。これにより、半径方向に突出する誘電シールド部の仕切り動作は、中央通路に対するヒータの半径方向伸長により生じるノズルとヒータとの組合せの周囲に沿って、ヒータとノズルとの間の仮想直線を遮るものと理解されるべきである。例えば、絶縁スペーサの半径方向伸長は、中央通路に対して、絶縁スペーサがヒータ内に突出する突出部よりも、ヒータとノズルとの間に配置されたシールド部において大きくてよく、ヒータおよびノズルの半径方向に突出する部分間の仮想直線が、シールド部によって仕切られるようになっている。
【0051】
好ましくは、誘電シールド部の半径方向伸長は、中央通路の周りの少なくとも対応する角度区分において、少なくともヒータの半径方向伸長に等しい。
【0052】
好ましい実施形態において、中央通路に対する誘電シールド部の半径方向伸長は、ヒータの半径方向伸長よりも、特に少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%大きい。
【0053】
誘電シールド部は、中央通路から半径方向に延びて、ノズルとヒータの半径方向に延びる部分との間に延びる仮想直線を遮ることができ、中央通路に対する誘電シールド部の半径方向伸長は、対応する角度区分におけるヒータの半径方向伸長よりも大きく、帯電されたノズルとヒータとの間の電界強度を減衰させる。例えば、誘電シールド部は、絶縁スペーサ本体から半径方向に突出する誘電ディスクであってよく、誘電ディスクの半径方向伸長は、ヒータの導電性部分の半径方向伸長よりも大きくてよい。
【0054】
好ましい実施形態において、誘電シールド部と絶縁スペーサ本体とは異なる材料から作られ、絶縁スペーサ本体は、特に誘電シールド部よりも高い熱伝導率を有する。
【0055】
絶縁スペーサ本体は、ポリマー溶融物/固体ポリマー基材に熱を伝達するために比較的高い熱伝導率を提供すべきであるが、誘電シールド部は、誘電シールド部における熱損失を低減させるように、より低い熱伝導率を特徴とすることができる。加えて、誘電シールド部は、絶縁スペーサ本体よりも高い絶縁耐力および/または高い相対誘電率を特徴として、ヒータとノズルとの間の電界強度の減衰を向上させることができる。言い換えると、誘電シールド部の必要な熱伝導率は、絶縁スペーサ本体の必要な熱伝導率よりも低くてよいため、誘電シールド部の材料は、より高い絶縁耐力/より高い相対誘電率を有する様々な材料から選択されてよい。一部の実施形態において、誘電シールド部の誘電率は、4超である。一例として、誘電シールド部は、1.46W/mKの熱伝導率、約130kV/mmの絶縁耐力(DC)、および約6の相対誘電率を有する、「Macor」の商標名で知られるセラミック材料から機械加工されてよい。しかしながら、この例は、単に例示的な酸化ケイ素(silicon oxide)系セラミックとみなされるべきであり、一部の実施形態において、他のセラミック、例えば、他の酸化ケイ素系セラミック、ジルコニア(zirconia)系セラミック、窒化ケイ素(silicon nitride)系セラミック、アルミナ系セラミック、窒化アルミニウム系セラミック、またはこれらの任意の混合物が等しく使用されてよい。
【0056】
好ましい実施形態において、絶縁スペーサ本体は、ノズルから絶縁送給管へ延び、送給管の熱伝導率は、絶縁スペーサ本体の熱伝導率よりも低い。
【0057】
絶縁送給管は、固体ポリマー基材を絶縁スペーサ本体に向けて案内することができ、絶縁スペーサ本体と送給機構の要素との間のヒート・ブレイクとして機能することができる。絶縁送給管と絶縁スペーサ本体とは、互いに接合されて、印刷ヘッド内に複合絶縁流体通路を形成することができる。例えば、絶縁送給管と絶縁スペーサ本体とは、絶縁接着剤を用いて互いに接合されて、ヒータから半径方向に沿った複合絶縁流体通路内の固体ポリマー基材/ポリマー溶融物を電気的に絶縁する。前記複合絶縁流体通路は、例えば複合絶縁スペーサとして、ヒータを通って突出して、ヒータとポリマー溶融物とを電気的に絶縁することができる。
【0058】
一部の実施形態において、絶縁送給管は、絶縁スペーサ本体に接合された剛性セラミック部を備え、剛性セラミック部は、絶縁スペーサ本体の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する。剛性セラミック部は、材料が劣化することなく、ヒータにおいて絶縁スペーサ本体に接触するように、比較的高い最高サービス温度を特徴とすることができる。
【0059】
絶縁送給管、特に絶縁送給管の剛性セラミック部は、絶縁スペーサ本体に対して反対側でヒータ内に突出することができる。言い換えると、ヒータは、絶縁送給管と絶縁スペーサ本体との接合部を取り囲むことができる。送給管の熱伝導率が絶縁スペーサ本体の熱伝導率よりも低くてよいため、固体ポリマー基材は、絶縁スペーサ本体と絶縁送給管との接合部で略溶融されてよい。
【0060】
一部の実施形態において、印刷ヘッドは、第1のセクションと第2のセクションとを有するポリマー送給通路を備え、第1のセクションは、固体ポリマー基材を保持し、固体ポリマー基材をヒータに向けて案内するように構成され、第2のセクションは、ポリマー溶融物をノズルに向けて案内するように構成されている。
【0061】
固体ポリマー基材は、第1のセクションで印刷ヘッド内に送給され、固体の形態で印刷ヘッドを通って移動されてよい。好ましくは、ポリマー送給通路は、ヒータまで通じて、印刷ヘッド内のポリマー溶融物リザーバを最小にする。言い換えると、第2のセクションは、ヒータにより取り囲まれた流体通路によって形成されてよく、一部の実施形態において、絶縁スペーサ本体とヒータにより取り囲まれた絶縁送給管の部分とによって略形成されてよい。第2のセクションの前記流体通路の直径は、5mm未満、特に4mm未満、例えば3mmであってよい。第2のセクションの流体通路の直径は、ヒータとノズル先端との間で変化してもよく、例えば直径は、ヒータにおいてまたはヒータ近くで約3mmであってよく、ノズルの先端で約0.1mm~約1mm、例えば約0.4mmまたは約0.2mmであってよい。
【0062】
ヒータとノズル先端との間の中央通路内の溶融ポリマー材料の量は、約1000mm3未満、または400mm3未満、好まくは約200mm3未満、例えば約100mm3未満であってよい。
【0063】
好ましい実施形態において、固体ポリマー基材は、送給機構によってノズルに向けて送られるポリマー・フィラメントであり、送給機構は、特に摩擦ホイールを備える。
【0064】
ポリマー・フィラメントは、連続送給される固体ポリマー基材として絶縁スペーサ本体および/または絶縁送給管内に送られてもよい。例えば、摩擦ホイールは、フィラメントを絶縁スペーサ本体内に送給して、ポリマー溶融物をポリマー・フィラメントの固体部分と共に絶縁スペーサ本体およびノズルに押し通すことができる。
【0065】
好ましい実施形態において、送給機構は、動作中、ポリマー・フィラメントを制御可能に送給して、ノズルにおいてポリマー溶融物上に略一定の圧力を維持するように構成されている。
【0066】
例えば、送給機構は、ポリマー・フィラメントを一定の送り速度で送って、エレクトロ書込みのために、ノズルの先端にポリマー溶融物のテイラー・コーンを維持することができる。
【0067】
一部の実施形態において、送給機構は、ノズルを通るポリマー溶融物の放出量に従って、ポリマー・フィラメントをヒータに向けて送るように構成されている。
【0068】
一部の実施形態において、送給機構は、ポリマー・フィラメントを送給管内に送るように構成され、送給管の直径は、送給機構によって送られるポリマー・フィラメントの直径に略対応するように構成されている。
【0069】
一部の実施形態において、絶縁スペーサ本体の中央通路の直径は、送給機構によって送られるポリマー・フィラメントの直径に略対応するように構成されている。
【0070】
例えば、送給機構は、ポリマー・フィラメントを印刷ヘッドに向けて、かつ送給管内に送ることができ、フィラメントは、送給管を通って絶縁スペーサ本体の中央通路に向けて送られてよく、ポリマー・フィラメントが送給管および/または絶縁スペーサ本体内で溶融されて、ポリマー溶融物を作り出すようになっている。
【0071】
好ましい実施形態において、システムは、ポリマー溶融物を受容するための、印刷ヘッドに対向する(電気的に)接地されたコレクタをさらに備え、コレクタとノズルとの間の距離は、特に、絶縁スペーサの誘電率とヒータの導電性部分およびノズルの間の距離との積よりも小さい。
【0072】
エレクトロ書込み・モードにおいて、ポリマー繊維をコレクタの所定の位置に堆積させるために、コレクタとノズルとの間の距離は約10mm~約1mmであってよい。ノズルからコレクタに向かうポリマー溶融物の軌跡が電界線を略たどることができるため、ノズルの先端とコレクタとの間の電界強度は、ノズルの先端とヒータの導電性部分との間の電界強度よりも高くなるはずである。
【0073】
言い換えると、絶縁スペーサは、絶縁スペーサの誘電部分により、ノズルとヒータの導電性部分との間の電界を減衰させるように構成されてよく、ノズルとコレクタとの間の「有効静電距離」が、ノズルとヒータとの間の「有効静電距離」よりも短くなり得るようになっている。前記有効静電距離は、誘電率とそれぞれの要素間の電界線に沿った経路の距離との最小の積によって定義されてよく、前記経路は直線である必要はない。
【0074】
例えば、絶縁スペーサ材料が少なくとも4の相対誘電率を提供するとき、絶縁スペーサは、ノズルとヒータとを、ノズルとヒータとの間の仮想直線に沿って少なくとも2.5mm離間させることができる。さらに、誘電シールド部は、印刷ヘッドを通る中央流体通路から半径方向に突出して、ヒータとノズルとの組合せの周囲における電界を減衰させることができる。
【0075】
ヒータの導電性部分とノズルとの間の有効アーク・ギャップが、有効静電距離に対応するように、かつ/または絶縁スペーサの周囲に沿った誘電シールド部の周りの経路に対応するように、増大されてよい。
【0076】
一部の実施形態において、誘電シールド部は、中央通路から突出して、ノズルとヒータとの間の空気を通るアーク・ギャップが直線をたどらないようにする。
【0077】
それにもかかわらず、絶縁スペーサを通してヒータとノズルとの間の熱伝達/熱損失を低減させるように、ヒータとノズルとの間の距離が限定されてもよい。
【0078】
一部の実施形態において、ヒータとノズルとの間の距離は、10mm未満、特に5mm未満であり、ノズルと第1のセクションとの間の距離は、好ましくは20mm未満である。
【0079】
したがって、固体ポリマー基材は、例えばノズル近くで溶融されて、印刷ヘッド内の固体ポリマー基材の、要求に応じた溶融を可能にすることができる。
【0080】
一部の実施形態において、絶縁スペーサは、システムのエレクトロ書込み・モードにおいて、ノズルとヒータとの間の破壊電圧がノズルとコレクタとの間の破壊電圧よりも大きくなるように選択された誘電材料を用いて、ノズルとヒータとを分離するように構成されている。
【0081】
好ましい実施形態において、ポリマー溶融物を用いてコレクタ上にエレクトロ書込みするとき、コレクタとノズルとの間の距離は、10mm未満、特に8mm未満である。
【0082】
好ましい実施形態において、システムは、送給機構および印刷ヘッドを制御するための制御システムをさらに備え、制御システムは、複数の駆動モードのうちの1つを選択するように構成され、複数の駆動モードは、少なくともエレクトロ書込み・モードと融着堆積モデリング・モードとを含み、制御システムは、駆動モードに基づいて、送給機構の送給量と、ノズルに印加される電圧とを調節するように特に構成されている。
【0083】
制御システムは、単一の制御ユニットを備えることができ、または機能的に接続され得る複数の制御ユニットを備えることができる。制御ユニットは、マイクロコントローラ、ASIC、PLA(CPLA)、FPGA、または、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、もしくはこれらの組合せに基づいて動作する制御デバイスを含む他の制御デバイスを備えることができる。制御デバイスは、集積メモリを含むことができ、または外部メモリと通信することができ、またはその両方であり、センサ、デバイス、器具、集積論理回路、他のコントローラなどに接続するためのインターフェースをさらに備えることができ、インターフェースは、電気信号、光信号、無線信号、音響信号などの信号を送受信するように構成されていてもよい。
【0084】
異なる駆動モード間で切り替えるために、制御システムは、制御信号を送給機構に送信して、固体ポリマー基材の送給量を、例えば融着堆積モデリング・モードの高い値から、例えばエレクトロ書込み用にノズルの先端にテイラー・コーンを形成するための低い送給量に調節することができる。
【0085】
制御システムはまた、制御信号を高電圧源に送信して、ノズルに電位を印加するか、もしくはノズルに対する電位を調節し、例えば、ノズルとコレクタとの間に印加された高電圧でシステムのエレクトロ書込み・モードを開始し、かつ/または、ノズルに対する電位を低減させるか、もしくはオフにして、電界の助けのない融着堆積モデリング・モードに切り替えることができる。
【0086】
制御システムは、印刷ヘッドおよびコレクタの相対運動を駆動するための変位アセンブリを制御するように構成されていてもよい。例えば、制御システムは、意図された構造体を形成するように、かつ/または駆動モード間で切り替えるように、変位アセンブリのアクチュエータに制御信号を送信することができる。
【0087】
一部の実施形態において、意図されたポリマー構造体の3次元幾何形状の仮想レプリカが、制御システムまたは外部コンピューティング・システムのメモリに設けられてもよく、印刷ヘッドおよび/またはコレクタの動きを駆動するための変位アセンブリ用の制御命令を含んでもよく、または制御命令に変換されてもよい。その後、制御システムは、意図されたポリマー構造体を製造するための制御命令に従って、かつ/または、受信された信号、例えばセンサ読取値に基づいて、変位アセンブリを駆動することができる。
【0088】
異なる駆動モード間で切り替えるために、制御システムは、制御信号を変位アセンブリに送信して、ノズルとコレクタとの間の間隔を調節し、例えばエレクトロ書込みのための間隙を画定することもできる。例えば、制御システムは、変位アセンブリをトリガして、エレクトロ書込み・モードのためにコレクタとノズルとの間に約1mm~約10mmの距離を確立し、融着堆積モデリング・モードにおいて、以前に堆積された層の輪郭をたどることができる。
【0089】
第2の態様によれば、本発明は、ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのための方法に関する。方法は、絶縁スペーサを用いてノズルとヒータとを絶縁することを含み、絶縁スペーサは、ヒータによって少なくとも部分的に取り囲まれている。方法は、固体ポリマー基材をヒータに向けて選択的に送給することと、ヒータを用いて固体ポリマー基材をその融点を超えて加熱して、ポリマー溶融物を生成することとをさらに含む。方法は、電位をノズルに印加することと、ノズルを介してポリマー溶融物を放出することとをさらに含む。
【0090】
好ましい実施形態において、方法は、絶縁スペーサを通して固体ポリマー基材を加熱することを含む。
【0091】
好ましい実施形態において、方法は、絶縁スペーサの雄ねじおよびヒータの雌ねじを介して、絶縁スペーサとヒータとを接合することを含む。
【0092】
好ましい実施形態において、方法は、絶縁スペーサの雌ねじおよびノズルの雄ねじを介して、絶縁スペーサとノズルとを接合することを含む。
【0093】
好ましい実施形態において、方法は、接着セメントを用いて絶縁スペーサとヒータとを一体部片に成型することを含む。
【0094】
好ましい実施形態において、方法は、ポリマー溶融物をヒータからノズルに向けて、絶縁スペーサの中央通路を通して案内することを含む。
【0095】
好ましい実施形態において、方法は、絶縁スペーサ本体を通して固体ポリマー基材を加熱することを含む。
【0096】
好ましい実施形態において、方法は、ポリマー・フィラメントを絶縁スペーサに向けて送ることを含む。
【0097】
好ましい実施形態において、方法は、動作中、ポリマー・フィラメントを制御可能に送給して、ノズルにおいてポリマー溶融物上に略一定の圧力を維持することを含む。
【0098】
好ましい実施形態において、方法は、ポリマー溶融物を受容するための、印刷ヘッドに対向する(電気的に)接地されたコレクタを設けることをさらに含み、コレクタとノズルとの間の距離は、絶縁スペーサの誘電率とヒータの導電性部分およびノズルの間の距離との積よりも小さい。
【0099】
一部の実施形態において、方法は、融着堆積モデリング・モードを起動することであって、ノズルに印加される電位が、ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのための閾値よりも低い、起動することと、融着堆積モデリング・モードにおいてポリマー溶融物を選択的に堆積させて固体ポリマー構造体を形成することと、エレクトロ書込み・モードに切り替えることであって、ノズルに印加される電位が、ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのための閾値よりも高い、切り替えることと、エレクトロ書込み・モードにおいて、ポリマー溶融物をエレクトロ書込み後のポリマー繊維として、固体ポリマー構造体上に所定の堆積線に沿って選択的に堆積させることをさらに含む。
【0100】
第3の態様によれば、本発明は、印刷ヘッドからコレクタ上に放出されたポリマー溶融物の部品を付加形成する方法に関する。方法は、融着堆積モデリング・モードにおいて、ポリマー溶融物を選択的に堆積させてコレクタ上に固体ポリマー構造体を形成することであって、印刷ヘッドのノズルとコレクタとの間の電圧が、ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのための閾値よりも低い、堆積させることを含む。方法は、エレクトロ書込み・モードに切り替えることであって、ノズルとコレクタとの間の電圧が、ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのための閾値よりも高い、切り替えることと、エレクトロ書込み・モードにおいて、印刷ヘッドを用いてポリマー溶融物を選択的に堆積させて、エレクトロ書込み後のポリマー繊維を固体ポリマー構造体上に所定の堆積線に沿って形成することとをさらに含む。
【0101】
例えば、方法は、融着堆積モデリング・モードにおいて剛性の外側骨格を印刷することと、エレクトロ書込み・モードにおいて、例えば固体ポリマー構造体の一部をエレクトロ書込み後のポリマー繊維に接続することによって、骨格により少なくとも部分的に取り囲まれた内部容積にポリマー繊維を充填することとを含むことができる。別の例として、エレクトロ書込み・モードにおいて、微細構造体が、融着堆積モデリング・モードにおいて形成された固体ポリマー構造体の表面に、例えば微細構造被覆として堆積されてもよい。融着堆積モデリング・モードおよびエレクトロ書込み・モードを用いて固体ポリマー構造体を形成するステップは、例えば印刷ヘッドが前述の絶縁スペーサを備えるときに、単一の印刷ヘッドを用いて実行されてよい。
【0102】
融着堆積モデリング・モードにおいて、ポリマー溶融物は、ノズルのノズル出口径に略対応する厚さおよび/または幅を有するポリマー・ビーズまたはフィラメントとして堆積されてよい。融着堆積モデリング・モードにおいて、ノズルとコレクタとの間の電圧は略ゼロであってよく、例えばノズルとコレクタとはいずれも(電気的に)接地されてよい。
【0103】
エレクトロ書込み・モードにおいて、ノズルとコレクタとの間の電圧は、印刷ヘッドからコレクタに向かうポリマー溶融物の流動を制御するのに適したものであってよく、例えば電圧は、100V超または1kV超、例えば2kV~10kVであってよい。電圧は、ノズルの先端でポリマー溶融物のテーパを誘導するのに適したものであってよく、コレクタおよび/または固体ポリマー構造体上に堆積されるポリマー繊維の直径が、ノズルの出口径よりも小さく、例えばノズルの出口径の半分よりも小さくなり得るようになっている。例えば、エレクトロ書込み・モードにおいて、約1μm~約50μmの直径を有するポリマー繊維が、コレクタおよび/または固体ポリマー構造体上に堆積されてよい。
【0104】
エレクトロ書込み・モードにおいて、ノズルの先端とコレクタとの間の距離は、融着堆積モデリング・モードのときよりも大きくてよい。さらに、融着堆積モデリング・モードにおいて、ポリマー溶融物をノズルから押し出す押出量が、エレクトロ書込み・モードのときよりも大きく、例えば2倍超の押出量であってもよい。
【0105】
方法は、例えば、明確に定められた構造幾何形状を有する生物医学用途のための移植片もしくは骨格の制御された製造用、またはフィルタの形成用の、固体ポリマー構造体の決定的なエレクトロ書込みに有利に採用されてもよい。
【0106】
例えば、方法は、融着堆積モデリング・モードにおいて、固体ポリマー構造体の固体部分の幾何形状を画定するための第1の構造体を形成することと、エレクトロ書込み・モードにおいて、100μm未満の直径を有するポリマー繊維の決定的なパターンを含む第2の構造体を形成することとを含んで、例えば、固体ポリマー構造体の固体部分に接続する、かつ/または少なくとも部分的に重なる多孔質の骨格、特に生体適合性の骨格を形成することができる。
【0107】
好ましくは、方法は、ポリマー・フィラメントをノズルに向けて送給すること、特に、エレクトロ書込み・モードおよび融着堆積モデリング・モードにおいて同じフィラメントをノズルに向けて送給することを含んで、ポリマー溶融物をノズルからコレクタに向けて放出し、かつ/またはノズルからの押出スピード/押出量を制御することができる。
【0108】
第3の態様による方法は、第2の態様による方法と組み合わされ、逆も同様であり、例えば、異なる堆積モードで形成されたポリマー材料層が異なる物理的特性を有する、ポリマー材料の複合部品を形成することができる。さらに、一部の実施形態において、第2の態様および第3の態様の方法のいずれも、第1の態様によるシステムを用いて有利に使用され得ることを当業者は認識するだろう。
【0109】
第4の態様によれば、本発明は、制御システム上で実行されると、第2の態様もしくは第3の態様による方法を実施する、または第1の態様によるシステムを駆動する機械可読命令を含む、コンピュータ・プログラムまたはコンピュータ・プログラム製品に関する。
【0110】
本発明によるシステムおよび対応する方法の特徴および多くの利点が、添付図面を参照する好ましい実施形態の詳細な説明から最もよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1】エレクトロ書込みシステムの例を概略的に示す図である。
【
図2】連続送給される固体ポリマー・フィラメントを用いるエレクトロ書込みのための印刷ヘッドの例を示す図である。
【
図3A-3C】ノズル、絶縁スペーサ、およびヒータの幾何形状が変化する、印刷ヘッドの概略的な例を示す図である。
【
図4A-4B】それぞれ誘電シールド部を含まない場合と含む場合との、ノズルとヒータとを分離する絶縁スペーサを備える印刷ヘッドの概略的な例の断面図である。
【
図5】絶縁スペーサ本体と誘電シールド部とを備える絶縁スペーサの概略的な例の詳細図である。
【
図6】一例による、絶縁スペーサにより分離されたノズルとヒータとを備える概略的な印刷ヘッドの断面図である。
【
図7】一例による、ポリマー材料のエレクトロ書込みのための方法を概略的に示す図である。
【
図8A-8C】異なる幾何形状を有する複合ポリマー構造体の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図1は、一例によるエレクトロスピニング/ライティング・システム10を概略的に示す。エレクトロスピニング/ライティング・システム10は、導電性コレクタ・プレート16の上方に配置された導電性ノズル14を有する印刷ヘッド12を備える。電圧が印刷ヘッド12とコレクタ・プレート16との間に印加され(印刷ヘッド12および導電性コレクタ・プレート16における例示的な電荷+/-によって示される)、電界(直線矢印「E」によって概略的に示される)を誘導して、印刷ヘッド12とコレクタ・プレート16との間の間隙を埋めることができる。ポリマー材料18の流れが、ノズル14からコレクタ・プレート16に向けて放出されて、コレクタ・プレート16上に受容されたポリマー材料20の層を形成することができる。
【0113】
印刷ヘッド12とコレクタ・プレート16とは、横方向平面において互いに対して移動されて、ポリマー材料18の流れがコレクタ・プレート16上にポリマー繊維として堆積され得るようにすることができ、ポリマー繊維の伸長が、システム10のエレクトロ書込み・モードにおいて印刷ヘッド12とコレクタ・プレート16との相対移動の方向を略たどることができる。システム10のエレクトロスピニング・モードにおいて、繊維は所定の堆積領域上にエレクトロスピンされ、一部の実施形態において、堆積されたポリマー繊維の向きもランダム化され得るようにすることができる。
【0114】
横方向平面における相対運動を駆動し、堆積されたポリマー構造体の幾何形状を画定するために、印刷ヘッド12および/またはコレクタ・プレート16は、並進ステージに連結されて、横方向平面における印刷ヘッド12とコレクタ・プレート16との相対運動を駆動することができる。例えば、印刷ヘッド12は、コレクタ・プレート16に対して横方向に、例えば、コレクタ・プレート16の表面に略平行に延びる垂直なX/Y軸に沿って並進されるキャリッジ(図示せず)に取り付けられていてもよい。
【0115】
ポリマー材料18は、固体ポリマー粒またはポリマー・フィラメントなどのポリマー基材24をその融点を超えて加熱することによって得られるポリマー溶融物であってもよい。例えば、
図1に示すように、ポリマー粒は、印刷ヘッド12内で加熱され、ピストン26を用いて、例えば加圧空気を用いてポリマー溶融物を加圧してポリマー溶融物をノズル開口に通すことなどによって、ノズル14を通って押し出されてもよい。一部の実施形態において、ポリマー基材24は、フィラメントとして供給されてもよく、このフィラメントは、印刷ヘッド12内に送給されて印刷ヘッド12内で加熱され、例えば固体ポリマー・フィラメント(図示せず)によって押されながらノズル14を通って押し出される。
【0116】
少なくとも部分的に液体のポリマー材料18は、ノズル14内で帯電されてもよく(ポリマーの流れにおける正電荷によって概略的に示される)、ノズル14からコレクタ・プレート16に向かって引っ張られてもよい。ポリマー材料18に作用する電気力は、ノズル14においてポリマー材料18のテーパ22を誘導することができる。テーパ22は、近似テイラー・コーンを形成することができ、そこから、帯電されたポリマー材料18の噴射がコレクタ・プレート16に向けて放出され得る。ポリマー材料18がノズル14からテーパ状になるため、ノズル14とコレクタ・プレート16との間のポリマー材料18の流れは、ノズル14の直径よりも小さい直径を特徴とすることができ、ポリマー材料20の層にポリマー繊維として堆積されてもよい。例えば、ポリマー材料18は、100μm未満、例えば0.2μm~100μmまたは5μm~50μmの厚さを特徴とするポリマー繊維として堆積されてもよく、ノズル直径は0.1mm~1mm、例えば0.2mm~0.8mm、例えば0.3mm、0.4mm、または0.6mmであってもよい。
【0117】
ポリマー材料18は、ノズル14とコレクタ16との間を通るときに、溶媒成分の冷却および/または蒸発によって凝固することができ、ポリマー材料18がコレクタ・プレート16に近づくほど、ポリマー材料18の粘度が増加し得るようになっている。その後、凝固または固体ポリマー繊維が、コレクタ・プレート16上または以前に受容されたポリマー材料20の層上に堆積されてもよい。
【0118】
システム10は、ポリマー材料20の複数の層を互いに重なるように徐々に堆積させることができ、ポリマー材料20の各層の幾何形状は、複数の本質的に2次元のスライス/層から3次元形状を構成するように異なっていてもよい。ノズル14とコレクタ16との間の距離および電圧に応じて、ポリマー繊維は、所定の位置または堆積領域で堆積されて、コレクタ16上の受容されたポリマー材料20の決定的な幾何形状を生じさせることができる。例えば、エレクトロ書込み・モードにおいて、ポリマー材料18によるエレクトロ書込みを可能にするために、ノズル14とコレクタ16または受容されたポリマー材料20の最上層との間の距離は、約1.5mm~約10mm、例えば約2.5mm~約8mmであってもよい。
【0119】
コレクタ・プレート16上におけるポリマー材料20の層の堆積高さの増加に従って、ノズル14とポリマー材料20の最上層との間の距離が略一定のままであるように、印刷ヘッド12とコレクタ16との間の距離が調節されてもよい。コレクタ・プレート16とポリマー材料20の最上層との間の略一定の距離は、堆積されたポリマー材料20の層に与えるノズル14の接近の効果、例えば、以前に堆積された繊維の溶解、ポリマー材料18、20がノズル14に向かって引き付けられること、またはテイラー・コーンの変形を避けることができる。
【0120】
ノズル14とコレクタ・プレート16との間に印加される電圧は、コレクタ・プレート16とノズル14との間の間隔の変化に従って増加され、ノズル14において略一定の電界を維持して、テーパ22を誘導し、ノズル14からコレクタ・プレート16に向かうポリマー材料18の流動を制御することができる。例えば、ノズル14とコレクタ・プレート16との間の距離が約3mmのときに、約5kVの電圧がノズル14とコレクタ・プレート16との間に印加されて、凝固ポリマー繊維をコレクタ・プレート16上の所定の位置に堆積させることができ、電圧は、コレクタ・プレート16とノズル14との間の距離の増加に従って増加されてもよい。これにより、ポリマー材料18、20の3次元形状は、ポリマー材料20の連続して堆積された層によって構成されてもよい。
【0121】
図2は、固体ポリマー・フィラメント28の形態の連続送給される固体ポリマー基材24を用いるエレクトロ書込みのための印刷ヘッド12の例を示す。印刷ヘッド12は、ヒータ30と、絶縁スペーサ32と、ノズル14とを備え、絶縁スペーサ32はノズル14とヒータ30とを分離する。ノズル14は、導電性部分を備え、電位をノズル14に印加するために導体34に連結されている。同時に、ヒータ30とノズル14との間に置かれた絶縁スペーサ32は、ノズル14とヒータ30とを電気的に絶縁して、ノズル14に印加される電位が、ヒータ30の動作にごくわずかにしか影響を及ぼすことがないようになっている。
【0122】
印刷ヘッド12は、摩擦ホイール38によって示される送給機構36に連結され、摩擦ホイール38は、固体ポリマー・フィラメント28に両側で係合し、固体ポリマー・フィラメント28を、ヒータ30を通る中央通路40に向けて移送する。送給機構36は、固体ポリマー・フィラメント28を印刷ヘッド12に引き入れるように印刷ヘッド12に取り付けられてもよく、または、固体ポリマー・フィラメント28を印刷ヘッド12に向けて案内管(図示せず)に押し通すように、印刷ヘッド12の外側に設けられてもよい。
【0123】
ヒータ30は、印刷ヘッド12内で固体ポリマー・フィラメント28をその融点を超えて加熱して、電流を介して印刷ヘッド12内にポリマー溶融物を作り出すように構成されていてもよい。例えば、ヒータ30内の加熱コイル(図示せず)が、電流を受けて、ヒータ30の温度を、ヒータ40の中央通路内のポリマー基材24を溶融するため、かつ絶縁スペーサ32およびノズル14内でポリマー溶融物の液相を維持するための目標温度まで上昇させることができる。ヒータ30の加熱コイルは、ヒータ30のヒータ本体を通して絶縁スペーサ32に熱を伝達して、絶縁スペーサ32を通して間接的にノズル14を加熱することができる。ポリマー・フィラメント28を送ることにより、ヒータ30により生成されたポリマー溶融物を、ノズル14内の流路44に向けて、絶縁スペーサ32内の中央通路42に押し通すことができる。その後、ポリマー溶融物は、コレクタ16上へのポリマー材料14のエレクトロ書込みのために、ノズル14を通って放出されてよい。
【0124】
エレクトロ書込み・モードにおいて、ノズル14は、導体34を介して帯電されて、ノズル14とコレクタ16(
図2には示さず)との間に、ノズル14からコレクタ16に向かうポリマー材料18の流動を制御するための電界を作り出すことができる。帯電されたノズル14は、ポリマー材料18(
図2には示さず)をさらに帯電させることができ、これは、コレクタ16上へのポリマー材料18の案内された堆積を助けることができる。
【0125】
絶縁スペーサ32は、ノズル14を部分的に取り囲み、ノズル14をヒータ30から離間させて、ノズル14をヒータ30から電気的に絶縁する。
図2に示すように、ノズル14は、絶縁スペーサ32内に取り付けられてよく、ヒータ30に隣接するノズル14の部分が絶縁スペーサ32によって囲まれ得るようになっている。したがって、絶縁スペーサ32は、ノズル14とヒータ30とのそれぞれの接合部の間に置かれて、ノズル14とヒータ30との間の電界を減衰させ、かつ/または、ノズル14とヒータ30との間のアーク放電を防止することができる。
【0126】
絶縁スペーサ32の反対側で、絶縁スペーサ32はヒータ30内に突出する。したがって、ヒータ30は、絶縁スペーサ32の中央通路42内のポリマー基材24および/またはポリマー溶融物を、ヒータ30に収容された絶縁スペーサ32の本体を通して加熱することができる。好ましくは、ヒータ30は、絶縁スペーサ32に直接接触して、絶縁スペーサ32に熱を伝達し、ポリマー溶融物が絶縁スペーサ32の中央通路42に沿ってノズル14に向かって進む間、ポリマー溶融物の温度を維持する。
【0127】
好ましくは、絶縁スペーサ32は、例えば絶縁スペーサ32およびヒータ30のねじ山を係合させることにより、ヒータ30内に少なくとも部分的に取り付けられて、絶縁スペーサ32とヒータ30との物理的接触を維持し、ヒータ30から絶縁スペーサ32への熱伝達を向上させる。ヒータ30と絶縁スペーサ32との結合は、接着セメントなどの接着剤によって向上されてもよい。
【0128】
絶縁スペーサ32は、ノズル14とヒータ30との間のアーク放電を防止するために、局所的な電界強度に耐えるように設計されるべきである。
図2では、絶縁スペーサ32はヒータ30内に部分的にのみ突出して示されているが、一部の実施形態において、絶縁スペーサ32は、ヒータ30を通って、例えば少なくとも2mm、少なくとも3mm、または少なくとも4mm突出してもよく、ポリマー基材24および/またはポリマー溶融物が、ヒータ30により絶縁スペーサ32を通して加熱されて、ポリマー溶融物を作り出すことができるようになっている。
【0129】
ポリマー溶融物は、ヒータ30の中央通路40から絶縁スペーサ32の中央通路42を通ってノズル14内の流路44に向かって進むことができ、ノズル14内の流路44は、一側でヒータ13の中央通路40と、反対側でノズル14の流路44と一直線にされてよい。
【0130】
好ましくは、印刷ヘッド12を通る流路は、略直線状で、印刷ヘッド12の軸方向を画定し、ヒータ30を通る中央通路40、絶縁スペーサ32を通る中央通路42、およびノズル14の流路44は、軸方向に略一直線にされてよい。これにより、ポリマー基材24は、印刷ヘッド12の加熱された部分に軸方向に沿って入り、ヒータ30を使用してポリマー溶融物を作り出すことができ、ポリマー溶融物は、軸方向に沿って、絶縁スペーサ32を通ってノズル14に向けて移送され、例えば、コレクタ16に向けて軸方向に沿って放出されてよい。
【0131】
図2に示すように、絶縁スペーサ32の中央通路42は、ヒータ30とノズル14との間で、例えばヒータ30側の大きい直径からノズル14側の小さい直径に向かってテーパ状になっていてよい。しかしながら、絶縁スペーサ32を通る中央通路42の直径は、略一定であってもよく、ノズル14の取入側におけるノズル14の直径に対応していてもよい。例えば、絶縁スペーサ32の中央通路42は、ヒータ30とノズル14の取入側とにおいて同じ直径を有していてもよく、ノズル14の流路44は、最初の大きい直径からノズル14の先端14またはその近くの小さい直径に向かってテーパ状になっていてもよい。
【0132】
図2において、絶縁スペーサ32は、一側でヒータ30内に突出し、反対側でノズル14を収容し、軸方向に沿って略一定の断面を有する一体構造のブロックとして示されている。しかしながら、絶縁スペーサ32が複合絶縁スペーサ32であってもよく、軸方向に沿って変化する断面を有していてもよいことを当業者は認識するだろう。
【0133】
図3A、
図3B、および
図3Cは、ノズル14、絶縁スペーサ32、およびヒータ30の幾何形状が変化する、印刷ヘッド12の概略的な例を示す。各図は、軸方向に沿った印刷ヘッド12の中心軸Cにより分離された2つの例示部分に分割されている。印刷ヘッド12のそれぞれの構成部品の幾何形状を示すために、各図の左側に印刷ヘッド12の一方の半分の側面図が示され、右側に印刷ヘッド12の他方の半分の断面図が示されている。
【0134】
各図において、ノズル14は、ノズル14の略円筒形の取入部14pにより、絶縁スペーサ32の収容キャビティ内に突出し、収容キャビティの断面は、ノズル14の取入部14pの断面に略対応して、ノズル14を絶縁スペーサ32内に取り付ける。絶縁スペーサ32は、収容キャビティとは反対側に配置され、かつヒータ30のキャビティ内に突出する略円筒形の突出部32pをさらに備える。
【0135】
ノズル14の円筒形取入部14pおよび絶縁スペーサ32の突出部32pにはそれぞれ、概略的に示される雄ねじ14t、32tが設けられて、絶縁スペーサ32およびヒータ30のそれぞれの対応する雌ねじ(図示せず)に係合することができる。言い換えると、ノズル14の取入部14pの雄ねじ14tが絶縁スペーサ32内の収容キャビティの雌ねじに係合することによって、ノズル14が絶縁スペーサ32内に取り付けられてよい。同様に、絶縁スペーサ32の突出部32pの雄ねじ32tがヒータ30内のキャビティの雌ねじに係合することによって、絶縁スペーサ32がヒータ内に取り付けられてよい。
【0136】
図3Aにおいて、ノズル14の円筒形取入部14pの断面が絶縁スペーサ32の突出部32tの断面に略対応する例が示されている。したがって、絶縁スペーサ32は、エレクトロ書込み用に再構成される印刷ヘッド12のノズル14とヒータ30とを分離するための、間に入る離間要素として設けられてよい。例えば、絶縁スペーサ32は、「融着フィラメント作製」プリンタとしても知られる融着堆積モデリング・プリンタのヒータ本体内に取り付けられてよく、エレクトロ書込み用のノズル14は、絶縁スペーサ32内に取り付けられて、融着堆積モデリング・プリンタの印刷ヘッドをエレクトロ書込み用の印刷ヘッド12に変換することができる。
【0137】
さらに、
図3Aにおいて、軸方向に沿った絶縁スペーサ32の最大半径方向伸長は、軸方向に沿ったノズル14の最大半径方向伸長に略対応する。しかしながら、ノズル14とヒータ30の導電性部分との間の電界のシールドを向上させるように、絶縁スペーサ32の最大半径方向伸長は、好ましくは、ノズル14の最大半径方向伸長よりも大きくすべきである。
【0138】
図3Bは、絶縁スペーサ32の最大半径方向伸長が、中心軸Cに対してノズル14の最大半径方向伸長よりも大きく、絶縁スペーサ32が、ノズル14とヒータ30との間の直線仮想線を遮るようになっている別の例を示す。言い換えると、絶縁スペーサ32は、ヒータ30とノズル14とを空間的に仕切る。
【0139】
加えて、
図3Bにおいて、ノズル14の突出取入部14pの直径は、中心軸Cに対して絶縁スペーサ32の突出部32pの直径よりも小さい。絶縁スペーサ32の収容キャビティの断面は、ノズル14の取入部14pの断面に略対応し、絶縁スペーサ32の突出部32pの断面は、ヒータ30のキャビティの断面に略対応し、それにもかかわらず、ノズル14が絶縁スペーサ32内に強固に取り付けられ得、絶縁スペーサ32がヒータ30内に強固に取り付けられ得るようになっている。
【0140】
図3Cは、絶縁スペーサ32の最大半径方向伸長が、中心軸Cに対してヒータ30の最大半径方向伸長に略対応し、絶縁スペーサ32がノズル14とヒータ30とを空間的に仕切るようになっている別の例を示す。
【0141】
図3Cにおいて、絶縁スペーサ32およびノズル14の異なる突出部分14p、32pの断面が、この場合も異なり、すなわち、ノズル14の突出取入部14pの直径が、中心軸Cに対して絶縁スペーサ32の突出部32pの直径よりも大きいことにも留意されたい。
【0142】
しかしながら、
図3A~
図3Cの例は、例示的なものに過ぎず、一部の実施形態において、例の特徴が異なって組み合わされ得ることを当業者は認識するだろう。例えば、好ましい実施形態において、ノズル14の突出取入部14pの直径は、中心軸Cに対して絶縁スペーサ32の突出部32pの直径に等しくてよく、絶縁スペーサ32の最大半径方向伸長は、中心軸Cに対してヒータ30およびノズル14の最大半径方向伸長に少なくとも等しいか、またはこれよりも大きい。
【0143】
絶縁スペーサ32の最大半径方向伸長がヒータ30およびノズル14の最大半径方向伸長に少なくとも等しい場合、絶縁スペーサ32は、ノズル14とヒータ30とを仕切って、ノズル14とヒータ30との間の電界を減衰させることができ、印刷ヘッド12の周囲に沿った、ノズル14とヒータ30との間のアーク・ギャップを増大させることもできる。
【0144】
一部の実施形態において、絶縁スペーサ32は、中央通路42を取り囲む中央絶縁スペーサ本体を備え、ノズル14とヒータ30とは、中央絶縁スペーサ本体によって分離され、両側で中央絶縁スペーサ本体に取り付けられ、絶縁スペーサ32は、絶縁スペーサ本体から半径方向に突出して、印刷ヘッド12の周囲に沿った、ノズル14とヒータ30との間の電界を減衰させる誘電シールド部をさらに備える。
【0145】
図4Aおよび
図4Bは、ノズル14とヒータ30とを分離する絶縁スペーサ32を備える印刷ヘッド12の概略的な例の2つの断面図である。絶縁スペーサ32は絶縁スペーサ本体46を備え、この絶縁スペーサ本体46は、ヒータ30を通って突出し、ヒータ30および絶縁スペーサ32を通ってノズル14内の流路44に向かう中央通路42を取り囲む。ノズル14は、突出取入部14pにより絶縁スペーサ本体46の収容キャビティ内に突出し、雄ねじにより絶縁スペーサ本体46に取り付けられる。
【0146】
図4Aに示すように、ヒータ30は、絶縁スペーサ本体46の周囲に取り付けられ、絶縁スペーサ本体46から半径方向に突出する。したがって、ノズル14とヒータ30との間の空気を通るアーク・ギャップGは、ノズル14とヒータ30との間の絶縁スペーサ本体46の周囲に沿った直線に略対応する。
【0147】
図4Bにおいて、絶縁スペーサ32は、中央絶縁スペーサ本体46と誘電シールド部48とを備える。誘電シールド部48は、ヒータ30とノズル14との間で絶縁スペーサ本体46に取り付けられる。誘電シールド部48の最大半径方向伸長は、ヒータ30の最大半径方向伸長に略対応する。したがって、ノズル14とヒータ30との間の空気を通る有効アーク・ギャップGは、誘電シールド部48の周りで曲がることができ、
図4Aに示す例に対して、誘電シールド部48の半径方向伸長の分だけ増大され得る。
【0148】
有効アーク・ギャップの増大の結果、ノズル14とヒータ30との間の距離は、ノズル14とヒータ30との間のアーク放電の危険を増加させることなく、
図4Bの例において(
図4Aに示す例に対して)短縮され得る。
【0149】
ノズル14とヒータ30との間の距離の短縮により、絶縁スペーサ32を通したヒータ30とノズル14との間の熱伝達が向上し得、ノズル14内のポリマー溶融物の液相が、ヒータ30により維持され得るようになっている。
【0150】
ヒータ30からノズル14への熱伝達が、絶縁スペーサ本体46を通して略提供され得るため、誘電シールド部48は、絶縁スペーサ本体46の材料とは異なる材料、特により低い熱伝導率を有する材料から作られてよい。誘電シールド部48の材料が絶縁スペーサ本体46の材料よりも低い熱伝導率を有する場合、半径方向に延びるシールド部48における熱損失が低減される。同時に、誘電シールド部48の材料および絶縁スペーサ本体46の材料の最高サービス温度は、約200℃超とすべきであり、または300℃超もしくは400℃超であってもよい。
【0151】
絶縁スペーサ本体46および誘電シールド部48を通るアーク放電を防止するように、絶縁スペーサ本体46および誘電シールド部48はいずれも、比較的高い絶縁耐力、例えば10kV/mm超または20kV/mm超、好ましくは50kV/mm超の絶縁耐力を特徴とする材料から作られるべきである。
【0152】
さらに、ヒータ30とノズル14との間の電界を減衰させるように、絶縁スペーサ本体46および誘電シールド部48の材料の相対誘電率は、少なくとも3、好ましくは少なくとも4とすべきである。
【0153】
絶縁スペーサ本体46と誘電シールド部48とは、絶縁セメントなどの電気絶縁接着剤を用いて互いに接合されて、絶縁スペーサ本体46と誘電シールド部48との接合部を通るアーク放電を防止することができる。絶縁スペーサ本体46と誘電シールド部48とを接合する絶縁セメントは、絶縁スペーサ本体46および誘電シールド部48と同様の熱膨張係数を有するべきであり、約200℃超、300℃超、または400℃超の最高サービス温度を等しく有するべきである。一部の実施形態において、絶縁スペーサ本体46と誘電シールド部48とは、ねじ接合部を介して互いに接続され、接合部に絶縁セメントが充填されてもよい。
【0154】
しかしながら、一部の実施形態において、絶縁スペーサ本体46と誘電シールド部48とは、一体構造部片として設けられる。
【0155】
図5は、絶縁スペーサ本体46と誘電シールド部48とを備える絶縁スペーサ32の概略的な例の詳細図であり、例示の絶縁スペーサ32の左側は絶縁スペーサ32の側面図を示し、右側は絶縁スペーサ32の中央通路42の断面図を示す。
【0156】
絶縁スペーサ本体46は、固体ポリマー基材24/ポリマー溶融物を受容し、かつポリマー溶融物をノズル14に向けて案内するための中央通路42を取り囲む。第1の側で、絶縁スペーサ32はノズル14(図示せず)を受け入れるための収容キャビティ32cを備え、収容キャビティ32cは、ノズル14の雄ねじ14tに係合する雌ねじ32iを備える。収容キャビティ32cは、絶縁スペーサ32の中心軸Cに対して中央に配置されてよく、絶縁スペーサ32の中央通路42と一直線にされてよく、中央通路42が収容キャビティ32c内に取り付けられたノズル14の中央流路44と一直線になるようになっている。第2の側/反対側で、絶縁スペーサ32は、ヒータ30(図示せず)内に突出してヒータ30の雌ねじに係合する雄ねじ32tを有する突出部32pを備える。
【0157】
絶縁スペーサ32の中央セクションにおいて、誘電シールド部48の雌ねじ48iに係合する雄ねじ32oが絶縁スペーサ本体46に設けられ、誘電シールド部48は、前記中央セクションにおいて絶縁スペーサ本体46の外周に取り付けられ、絶縁スペーサ本体46から半径方向に沿って突出する。絶縁スペーサ本体46と誘電シールド部48とのねじ接合部は、複合絶縁スペーサ32を通るアーク放電ギャップの有効長さを増加させることができる。加えて、絶縁スペーサ本体46と誘電シールド部48とのねじ接合部に絶縁セメントが充填されて、接合部を通るアーク放電をさらに防止することができる。異なる材料から作られたセラミック絶縁スペーサ本体46とセラミック誘電シールド部48とを接合するように、絶縁セメントは高温耐熱絶縁セラミック接着剤であってよい。
【0158】
図5に示すように、誘電シールド部48の最大半径方向伸長は、絶縁スペーサ本体46の最大半径方向伸長よりも少なくとも50%または少なくとも100%大きく、絶縁スペーサ本体46の周囲に沿ったノズル14とヒータ30との間の電界線を減衰させて、ノズル14とヒータ30との間のアーク放電を防止し、かつ/または、ヒータ30とノズル14との間の電界によるノズル14とコレクタ16との間のポリマー材料18の流動の変形を防止することができる。したがって、絶縁スペーサ32は、印刷ヘッド12のノズル14とヒータ30との間に置かれて、帯電されたノズル14を用いる、ポリマー溶融物を含む所定の構造体のエレクトロ書込みを可能にすることができる。
【0159】
一部の実施形態において、絶縁スペーサ32は、ヒータ30とポリマー溶融物とを電気的に絶縁する。例えば、ヒータ30は、絶縁スペーサ32の外面に取り付けられてよく、導電性要素によりポリマー溶融物に接触することはないが、固体ポリマー基材24は絶縁スペーサ32を通して加熱され得る。一部の実施形態において、絶縁送給管が絶縁スペーサ32に接合されて、ポリマー基材24を絶縁スペーサ32の中央通路42に向けて、ヒータ30から電気的に絶縁された送給経路に沿って送給する。
【0160】
図6は、一例による、絶縁スペーサ32により分離されたノズル14とヒータ30を備える概略的な印刷ヘッド12の断面図である。絶縁スペーサ32は、絶縁スペーサ本体46と、絶縁スペーサ本体46から半径方向に突出する誘電シールド部48とを備えて、絶縁スペーサ本体46の周囲に沿ってノズル14とヒータ30とを空間的に仕切る。
【0161】
絶縁スペーサ32は、絶縁スペーサ本体46の第1の側でノズル14を収容キャビティ32c内に収容し、絶縁スペーサ本体46の第2の側/反対側でヒータ30内に突出する。
【0162】
送給通路52を取り囲む送給管50が、絶縁スペーサ本体46の第2の側に接合され、送給通路52が絶縁スペーサ本体46の中央通路32と一直線になり、例えば、ポリマー・フィラメント28(図示せず)を、送給通路52を通して絶縁スペーサ本体46の中央通路42内に送給するようになっている。送給管50は、絶縁セメントにより絶縁スペーサ本体46に接合されて、送給管50および絶縁スペーサ本体46を通る固体ポリマー基材24/ポリマー溶融物のための連続流路を形成することができる。
【0163】
図6に示すように、送給管50はヒータ30内に突出し、絶縁スペーサ本体46と送給管50との接合部がヒータ30の中央通路40内に位置し得るようになっている。これにより、固体ポリマー基材24は、送給通路52を通ってヒータ30内の中央通路40に送給されてよく、絶縁スペーサ本体46および送給管50を通して加熱されて、例えば絶縁スペーサ本体46の中央通路42内で溶融されてよい。
【0164】
好ましくは、送給管50は、絶縁スペーサ本体46よりも低い熱伝導率を有し、ヒータ30により生じた熱が、絶縁スペーサ本体46を通してノズル14に向けて伝えられるようになっており、送給管50を通って送給される固体ポリマー基材24、例えばポリマー・フィラメント28は、送給管50内で略固体であってよく、絶縁スペーサ本体46の中央通路42内にポリマー溶融物を形成することができる。したがって、固体ポリマー基材24は、ヒータ30によって取り囲まれた中央通路40内で要求に応じて加熱されて、印刷ヘッド12内における長時間の熱暴露による生分解性ポリマー材料18の劣化を防止することができる。言い換えると、ポリマー溶融物は、絶縁スペーサ本体46の中央通路42内で略作り出されてよく、ポリマー溶融物は、送給管を通ってヒータ30の中央通路40内に送給された固体ポリマー基材24を送ることによって、ノズル14から押し出されてよい。
【0165】
例えば、絶縁スペーサ本体46は、アルミナ系または窒化アルミニウム系セラミック材料などの高い熱伝導率を有するセラミック材料から作られてよく、送給管50は、酸化ケイ素系もしくは窒化ケイ素系セラミック材料などの、低い熱伝導率を特徴とするセラミック材料部分により、絶縁スペーサ本体46に接合されてよい。
【0166】
好ましくは、送給管50と絶縁スペーサ本体46とは、同様の熱膨張係数を特徴とし、ヒータ30が、絶縁スペーサ本体46および/または送給管50を通して固体ポリマー基材24をその融点を超えて加熱したときに、機械的歪みを防止する。同様に、送給管50と絶縁スペーサ本体46とは、同様の熱膨張係数を有する高温耐熱絶縁セメントにより接合されてもよい。
【0167】
一例として、絶縁スペーサ本体46は、「Shapal」の商標名で知られる窒化アルミニウム系セラミック材料から作られてよく、送給管50は、「Macor」の商標名で知られる酸化ケイ素系セラミック材料から作られてよく、同様の熱膨張を有するセラミック接着剤、例えばアルミナまたはリン酸マグネシウム(magnesium phosphate)系のセラミック接着剤により結合されてよい。
【0168】
したがって、ヒータ30により生じた熱が、主に絶縁スペーサ本体46を通して固体ポリマー基材24/ポリマー溶融物に伝えられ、ポリマー基材24の液相をヒータ30によって取り囲まれた中央通路40および/または絶縁スペーサ本体46の中央通路42に限定することができる。したがって、印刷ヘッド12を通る送給経路は、異なるセクションを含むと考えられてよく、固体ポリマー基材24は、印刷ヘッド12内において異なるセクション間で分離された相であり、動的に溶融されてポリマー溶融物を作り出すことができる。固体ポリマー基材24によりポリマー溶融物を押すように送給機構36を作動させることによって、ポリマー溶融物は、ノズル14に向けて1つのセクションから別のセクションへ送られてよい。
【0169】
一部の実施形態において、固体ポリマー基材24からポリマー溶融物に向かう相転移は、ヒータ30において/内で発生し得、特に、絶縁スペーサ本体46と送給管50との接合部において略発生し得る。
【0170】
例えば、システム10を駆動する経過時間に基づいて、かつ/または送給管50がヒータ30内に突出しているときに、送給管50が、絶縁スペーサ本体46よりも低い熱伝導率を有するにもかかわらず、ヒータ30によって(ポリマー基材24の)融点を超える温度まで少なくとも部分的に加熱され得ることを当業者は認識するだろう。さらに、熱は、ヒータ30から送給管50を通る固体ポリマー基材24に、例えば赤外線照射を介して伝達されてもよい。同時に、固体ポリマー基材24は、印刷ヘッド12を通りながら次第に加熱されるだけであってもよく、固体ポリマー基材24の温度は、絶縁スペーサ32を通る間に融点を超えて上昇されるだけであってもよい。これにより、ヒータおよび/または印刷ヘッドの幾何形状の動作パラメータに応じて、送給機構36により送給管50内に送給される固体ポリマー基材24は、絶縁スペーサ本体46に入る前に送給管50内で(部分的に)溶融されてもよく、または、一部の実施形態において、絶縁スペーサ本体46と送給管50との接合部を通った後にのみ溶融されてもよい。
【0171】
ノズル14が導体34(
図6には示さず)を通して印加された電圧を介して高い電位で保持されるときに、ポリマー溶融物は、絶縁スペーサ本体46の中央通路42およびノズル14の流路44を通って案内されて、ノズル14によりコレクタ16に向けて放出されてよい。同時に、ヒータ30の導電性部分とノズル14との電位差によるアーク放電または電界の変形が、ノズル14とヒータ30とを分離する絶縁スペーサ32によって防止されてよい。特に、絶縁スペーサ32の半径方向に延びる誘電シールド部48は、印刷ヘッド12内のノズルとヒータとの組合せの周囲に沿ったアーク放電を防止することができる。
【0172】
したがって、印刷ヘッド12内で生成されたポリマー溶融物は、固体ポリマー基材24の連続送給により、コレクタ16上の所定の位置で、ポリマー繊維18、20としてコレクタ16上に堆積されてよい。
【0173】
図7は、一例によるポリマー材料18のエレクトロ書込みのための方法を概略的に示す図である。方法は、絶縁スペーサ32を用いてノズル14とヒータ30とを絶縁することを含み、絶縁スペーサ32はヒータ30によって少なくとも部分的に取り囲まれている(S10)。方法は、固体ポリマー基材24をヒータ30に向けて選択的に送給すること(S12)と、ヒータ30を用いて固体ポリマー基材24をその融点を超えて加熱して、ポリマー溶融物を生成すること(S14)とをさらに含む。方法は、電位をノズル14に印加すること(S16)と、ノズル14を介してポリマー溶融物を放出すること(S18)とをさらに含む。
【0174】
絶縁スペーサ32を用いてノズル14とヒータ30とを絶縁することは、特に絶縁スペーサ本体46の雄ねじ32tをヒータ30のキャビティの雌ねじに係合させることによって、絶縁スペーサ本体46をヒータ30内に取り付けることを含むことができる。絶縁スペーサ32を用いてノズル14とヒータ30とを絶縁することは、特にノズル14の雄ねじ14tを絶縁スペーサ本体32の収容キャビティ32cの雌ねじ32iに係合させることによって、ノズル14を絶縁スペーサ本体46の収容キャビティ32c内に取り付けることをさらに含むことができる。
【0175】
上記で開示された絶縁スペーサ32の材料の選択肢および印刷ヘッド12の異なる構成部品を接合するための技法は例に過ぎず、複数の異なる材料および接合技法が代わりに使用されてもよいことを当業者は認識するだろう。さらに、システム10および開示された技法は、例示的に前述されたエレクトロスピニング-ライティング技法に加えて、一連の帯電されたポリマー小滴が印刷ヘッド12からコレクタ16に向けられるエレクトロスプレー技法に有利に採用されてもよい。
【0176】
システム10および関連する印刷ヘッド12は、融着堆積モデリング・モードにおいてポリマー材料18を堆積させるのに適したものであってもよく、例えば、融着堆積モデリング・モードにおいて固体ポリマー構造体を堆積させることと、エレクトロ書込み・モードにおいてエレクトロ書込み後のポリマー繊維20を堆積させることとを選択的に切り替えることによって、固体ポリマー基材24に基づいて複合部品を形成するのに適したものであってもよい。
【0177】
融着堆積モデリング・モードにおいて、ポリマー溶融物18は、コレクタ16上に固体ポリマー構造体を形成するように選択的に堆積されてよく、ノズル14とコレクタ16との間の電圧は、ポリマー溶融物18のエレクトロ書込みのための閾値よりも低くてよく、例えばノズル14およびコレクタ16のいずれも(電気的に)接地されていてよい。
【0178】
エレクトロ書込み・モードにおいて、ノズル14とコレクタ16との間の電圧は、ポリマー溶融物18のエレクトロ書込みのための閾値よりも上昇されてよく、ポリマー溶融物は、エレクトロ書込み後のポリマー繊維20をコレクタ16および/または固体ポリマー構造体上に所定の堆積線に沿って形成するように選択的に堆積されてよい。
【0179】
図8A~
図8Cは、異なる幾何形状を有する複合ポリマー構造体54の例を示す。
【0180】
図8Aは、一例による、脊椎ケージと呼ばれることもある椎体間固定ケージ移植片の形態の複合ポリマー構造体54を示す。複合ポリマー構造体54は、脊椎ケージの外周を画定し、かつ内部容積を含む固体ポリマー構造体56を含む。複合ポリマー構造体54は、固体ポリマー構造体56の内部容積を、堆積されたポリマー繊維20の規則メッシュで充填する、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58をさらに含む。
【0181】
固体ポリマー構造体56は、融着堆積モデリング・モードにおいて、前述の例の印刷ヘッド12などの印刷ヘッド12を用いて、印刷ヘッド12のノズル14とコレクタ16(印刷ヘッド12およびコレクタ16は
図8A~
図8Cには示さず)との間に電界を印加することなく堆積されたポリマー材料から作られてよい。
【0182】
融着堆積モデリング・モードにおいて堆積されたポリマー材料は、ノズル14の直径と同等の直径を有するビーズまたは繊維から形成されてよく、50%未満、特に25%未満または15%未満の多孔率を特徴とすることができる。固体ポリマー構造体56は、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58よりも高い機械的強度を特徴とすることができる。
図8Aにおいて、固体ポリマー構造体56が内部容積を囲むものとして示されているが、内部容積は部分的に開いていてもよく、例えば固体ポリマー構造体56が内部容積を部分的にのみ取り囲んでいてもよいことを当業者は認識するだろう。
【0183】
エレクトロ書込み・モードにおいて、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58は、コレクタ16および/またはポリマー構造体56上に所定の堆積線に沿って堆積されてよく、エレクトロ書込み後のポリマー繊維20を所定の向きで堆積させるように、ノズル14とコレクタ16との間の電圧は、ポリマー溶融物のエレクトロ書込みのための閾値よりも高い。
【0184】
エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58内の溶融エレクトロ書込み後のポリマー繊維20の直径は、固体ポリマー構造体56内のポリマー繊維/ビーズの直径よりも小さく、例えば、固体ポリマー構造体56内のポリマー繊維/ビーズの直径の半分よりも小さくてよい。例えば、堆積された溶融エレクトロ書込み後のポリマー繊維20は、ノズル14のノズル出口におけるポリマー材料18のテーパ22により、印刷ヘッド12のノズル14の直径よりも小さい直径、例えば50μm未満の直径を有することができる。
【0185】
エレクトロ書込み・モードにおいて堆積された溶融エレクトロ書込み後のポリマー繊維20は、規則メッシュに配置されて、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58を形成することができる。結果として得られるエレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58は多孔質であり、例えば、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58の多孔率は、25%超、特に40%超または50%超であってよい。好ましくは、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58の構造体は、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58上における、またはこれを通る細胞成長を可能にするように適応される。エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58は、複合ポリマー構造体54の生体適合性を強化するように機能化されてよく、かつ/または、β-リン酸三カルシウムもしくは骨材料などの骨成長促進材料と組み合わされてもよい。
【0186】
複合ポリマー構造体54を形成するために、同じ印刷ヘッド12が融着堆積モデリング・モードとエレクトロ書込み・モードとの間で切り替えられて、例えば、所定数の固体ポリマー構造体56の層を形成した後に、固体ポリマー構造体56の層とエレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58の層とを交互に堆積させてもよい。一部の実施形態において、印刷ヘッド12は、固体ポリマー構造体56が完全に堆積された後に、融着堆積モデリング・モードからエレクトロ書込み・モードに切り替えられる。
【0187】
固体ポリマー構造体56の層およびエレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58の層は、ノズル14に向けて送給される共通のポリマー・フィラメント28などの同じ固体ポリマー基材24から形成されてもよく、融着堆積モデリング・モードとエレクトロ書込み・モードとは、ノズル14とコレクタ16との間に印加される電圧値ならびにポリマー・フィラメント28の送給量が異なっていてもよい。
【0188】
したがって、複合ポリマー構造体54は、同じ固体ポリマー基材24、例えば同じポリマー・フィラメント28に基づいて、異なる物理的特性を有する異なる材料部分により形成されてよい。
【0189】
図8Bは、複合ポリマー構造体54の別の例を示す。複合ポリマー構造体54は、固体ポリマー構造体56の本体とエレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58の被覆とを含む。固体ポリマー構造体56が、
図8Aの文脈で説明した融着堆積モデリング・モードにおいて形成されてよく、次いで、固体ポリマー構造体56が、エレクトロ書込み・モードにおいて、例えば同じ固体ポリマー基材24に基づいて、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58により被覆されてよい。
【0190】
図8Bは正方形の固体ポリマー構造体56を示すが、融着堆積モデリング・モードにおいて、任意の形状が形成されてよく、次いでまたは代わりに、エレクトロ書込み・モードにおいて、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58で被覆されてよく、したがって、
図8Bの例は例示的なものとみなされるべきであることを当業者は認識するだろう。例えば、固体ポリマー構造体56の層とエレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58の層とが、例えばコレクタ16(図示せず)の表面に垂直なビルド方向に沿って交互に積層されてもよい。
【0191】
図8Cは、複合ポリマー構造体54の別の例を示す。複合ポリマー構造体54は、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58が充填された正方形の開口部を取り囲む固体ポリマー構造体56の骨格を含む。エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58は、堆積されたエレクトロ書込み後のポリマー繊維20の規則的なメッシュを含むことができ、エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58の幾何形状は、固体ポリマー構造体56の開口部を通り抜けるターゲット材をフィルタリングするように構成されてもよい。
【0192】
例えば、複合ポリマー構造体54はフィルタとして構成されてもよく、ターゲット材が、開口部内のエレクトロ書込み後のポリマー材料積層体58を通る間に、例えば機能化されたポリマー繊維20を使用してフィルタリングされ、固体ポリマー構造体56は、複合ポリマー構造体54の取付けを可能にするように構成されている取付け要素を含むことができる。
【0193】
好ましい実施形態の説明および図面は、本発明およびそれに関連する有利な効果を示す役割を果たすものに過ぎず、限定を意味するものと理解されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定される。
【符号の説明】
【0194】
10 システム
12 印刷ヘッド
14 ノズル
16 コレクタ(プレート)
18 ポリマー材料
20 受容されたポリマー材料
22 テーパ/テイラー・コーン
24 ポリマー基材
26 ピストン
28 ポリマー・フィラメント
30 ヒータ
32 絶縁スペーサ
34 導体
36 送給機構
38 摩擦ホイール
40 ヒータの中央通路
42 絶縁スペーサの中央通路
44 ノズルの流路
46 絶縁スペーサ本体
48 誘電シールド部
50 送給管
52 送給通路
54 複合ポリマー構造体
56 固体ポリマー構造体
58 エレクトロ書込み後のポリマー材料積層体
G アーク・ギャップ
C 中心軸
E 電界
【国際調査報告】