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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】植物油の酸敗の低減
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20231219BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20231219BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/37
A61K8/97
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531560
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2021084826
(87)【国際公開番号】W WO2022122843
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20212808.8
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】メンドロク‐エディンガー, クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】デエー, シリル
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC421
4C083AD241
4C083AD242
4C083CC02
4C083EE01
(57)【要約】
本発明は、酸敗しやすい植物油の酸敗を、脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに/又は分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物を添加することによって低減することに関する。こうすることにより、これらの植物油及びその化粧品組成物の貯蔵寿命を、酸化防止剤を添加することなく延長することが可能になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 脂肪酸とデキストリンとのエステルと;
- 分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物と;
- そのトリグリセリドの状態にある不飽和脂肪酸を、35重量%を超え、特に40重量%を超える量で有する植物油と;
を含む化粧品組成物であって、
分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物中の分岐飽和C15~C19アルカンの量は、80重量%を超え、好ましくは90重量%を超え、最も好ましくは92重量%を超える、組成物。
【請求項2】
分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物中の直鎖飽和C15~C19アルカンの量は、10重量%未満、好ましくは8重量%未満、最も好ましくは5重量%超であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
分岐飽和C18アルカンの量は、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量に対し、50重量%超、好ましくは60重量%超、更に好ましくは70重量%超であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
脂肪酸とデキストリンとの前記エステルの前記脂肪酸は、C14~C18脂肪酸、特に直鎖C14~C18脂肪酸、最も好ましくはパルミチン酸であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
脂肪酸とデキストリンとの前記エステルの前記デキストリンの平均糖鎖重合度は、3~20の間、特に8~16の間にあることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
脂肪酸とデキストリンとの前記エステルのエステル化されたヒドロキシル基の数の平均値は、グルコース1単位当たり3を超え、好ましくは3.05~3.5の間、より好ましくは3.1~3.4の間、最も好ましくは3.1~3.2の間にあることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
脂肪酸とデキストリンとの前記エステルの分子量Mは、8000~16000g/モルの間、好ましくは9000~13000g/モルの間、より好ましくは10000~11500g/モルの間にあることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
脂肪酸とデキストリンとの前記エステルの重量対分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量の比は、100重量%未満であり、好ましくは50~80重量%の範囲にあり、最も好ましくは60~70重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
そのトリグリセリドの状態にある一価不飽和脂肪酸の重量対不飽和脂肪酸の重量の比は、80重量%超、好ましくは、85重量%超、最も好ましくは90重量%超であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記植物油は、マカデミア種子油、アーモンド油、アルガニアスピノサ核油、亜麻仁油、シソ種子油、シア脂及びオリーブ果実油からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記植物油は、マカデミア種子油、シア脂及びオリーブ果実油からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
植物油の酸敗を低減するために、脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに/又は分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物を添加する、使用。
【請求項13】
前記植物油は、そのトリグリセリドの状態にある不飽和脂肪酸を、35重量%を超え、特に40重量%を超える量で有することを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記植物油は、マカデミア種子油、アーモンド油、アルガニアスピノサ核油、亜麻仁油、シソ種子油、シア脂及びオリーブ果実油からなる群から選択されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、植物油の酸敗に関する。
【0002】
[発明の背景]
植物油は酸敗しやすい。酸敗とは、油脂が空気、光、水分及び細菌の活動に曝されて完全又は不完全に加水分解又は酸化することを指し、これは一般に食品中で発生し、その食品は食用として望ましくないものになる。酸敗した植物油には、不快臭が生じ、及び/又は食味が悪くなるのが通常である。一度酸敗してしまった油を元に戻してその状態に留めておく方法はない。
【0003】
植物油は化粧品組成物にも含まれており、これは、一方では、皮膚に特殊な化粧効果を与え、他方では、製品をより天然に近いものにすることがねらいである。持続可能性を求める傾向は化粧品産業においても高まっており、植物油を含む化粧製剤は益々増えてきている。
【0004】
酸敗油の不快臭は非常に強烈であるため、酸敗油が少量であっても、もうその化粧品組成物は全ての消費者に受け容れられない。
【0005】
不飽和度の高い脂肪酸をベースとする植物油は、飽和脂肪酸をベースとするそれぞれの油よりもはるかに酸敗しやすいことが知られている。
【0006】
植物油の酸敗を低減するため、即ち、植物油の酸敗しやすさを抑えるか又は植物油が酸敗するまでの時間を延ばすために、酸化防止剤が使用されるのが通常である。
【0007】
化粧品組成物は、匂い、特に匂いの変化に非常に影響を受けやすい。特に消費者は、酸敗した成分に由来する不快臭を放つ化粧品を一切受け容れない。
【0008】
植物油は毛髪及び皮膚に有益な効果をもたらすことから化粧品組成物に広く使用されているため、酸敗は化粧品組成物の処方における大きな課題であり、低減することが必要である。
【0009】
[発明の概要]
したがって、本発明により解決すべき課題は、多量の不飽和脂肪酸をベースとする植物油を含む化粧品組成物の酸敗を低減することにある。
【0010】
驚くべきことに、請求項1に記載の化粧品組成物がこの課題を解決することが見出された。特に、脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに/又は分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物が、植物油全般、特に、多量の不飽和脂肪酸をベースとする植物油の酸敗を強力に低減することが見出された。非常に驚くべきことに、脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物が酸敗を特に強力に低減することが見出された。
【0011】
酸敗を低減することにより、植物油又は化粧品組成物のそれぞれの貯蔵寿命が長くなる。
【0012】
本発明の更なる態様は、更なる独立請求項の主題である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0013】
[発明の詳細な説明]
第1の態様において、本発明は、
- 脂肪酸とデキストリンとのエステルと;
- 分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物と;
- そのトリグリセリドの状態にある不飽和脂肪酸を、35重量%を超え、特に40重量%を超える量で有する植物油と
を含む化粧品組成物であって;
分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物中の分岐飽和C15~C19アルカンの量は、80重量%を超え、好ましくは90重量%を超え、最も好ましくは92重量%を超える、組成物に関する。
【0014】
明確にするために、本文書で使用されている幾つかの用語を以下のように定義する。
【0015】
本文書において、「Cx~yアルカン」とは、x~y個の炭素原子を含むアルカンであり、即ち、例えば、C15~C19アルカンは、15~19個の炭素原子を含むアルカンである。アルカンは、純粋な飽和炭化水素であり、直鎖であっても分岐鎖(即ち、非直鎖)であってもよい。例えば、分子式C1532、C1634、C1736、C1838及びC1940を有するあらゆるアルカン、例えば、ペンタデカン、オクタデカン、ノナデカン、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン、イソヘキサデカンがC15~C19アルカンとみなされる。特に好ましい分岐アルカンは、側鎖としてメチル基のみを有する分岐アルカン、例えば、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン、2-メチルペンタデカン又は3-メチルペンタデカンなどである。
【0016】
本文書において、複数の式中に、記号又は基に関する同じ符号(label)が存在する場合、1つの特定の式に関連してなされた前記基又は記号の定義は、同じ前記符号を含む他の式にも適用される。
【0017】
本文書における「UVフィルター」という用語は、紫外光(=UV光)、即ち280~400nmの波長の電磁放射を吸収する物質を表す。UV(A)フィルターは、UV(A)光、即ち、315~400nmの波長の電磁放射を吸収するUVフィルターである。UV(B)フィルターは、UV(B)光、即ち、280~315nmの波長の電磁放射を吸収するUVフィルターである。
【0018】
液体有機UVフィルターは、周囲温度(即ち、25℃)において液体である。
【0019】
固体有機UVフィルターは、周囲温度(即ち、25℃)において固体である。
【0020】
本文書における「分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物」は、前記混合物が、異なるアルカンを含み、そのそれぞれが、15個、16個、17個、18個又は19個のみの炭素原子を含み、その炭素数を下回るアルカンを一切含まないことを意味する。したがって、この種の混合物は、例えば、ドデカンもイソドデカンも含まない。前記混合物は、分岐及び直鎖の両方のC15~C19アルカンを含む。
【0021】
[植物油]
本化粧品組成物は、植物油を含む。植物油とは、植物、特に種子から抽出された油、及び種類はより少ないが果実の他の部分から抽出された油である。植物油は、好ましくは室温で液体であり、通常は食用に適する。
【0022】
本文書における植物油は、主としてトリグリセリドからなる。トリグリセリドは、グリセロールと脂肪酸とのエステルである。脂肪酸は飽和であっても又は不飽和であってもよい。
【0023】
本化粧品組成物は、そのトリグリセリドの状態にある不飽和脂肪酸の量が35重量%を超え、特に40重量%を超える植物油を含む。
【0024】
本文書における「そのトリグリセリドの状態にある(in its triglyceride)脂肪酸」という用語は、植物油のグリセリドの式中における、グリセロールでエステル化されている各酸に由来する部分に関する。
【0025】
不飽和度の高い脂肪酸をベースとする植物油は、飽和脂肪酸をベースとするそれぞれの油よりもはるかに酸敗が起こりやすいことが知られている。
【0026】
したがって、例えば、そのトリグリセリドの状態にある不飽和脂肪酸を80%超有する亜麻仁油は、そのトリグリセリドの状態にある飽和脂肪酸を多量に含む他の油よりもはるかに酸敗が起こりやすい。
【0027】
好ましくは、そのトリグリセリドの状態にある一価不飽和脂肪酸の重量対不飽和脂肪酸の重量の比は、80重量%超、好ましくは85重量%超、最も好ましくは90重量%超である。
【0028】
植物油は、好ましくは、マカデミア種子油、アーモンド油、アルガニアスピノサ核油、亜麻仁油、シソ種子油、シア脂及びオリーブ果実油からなる群から選択される油である。
【0029】
特に好ましくは、植物油は、マカデミア種子油、シア脂及びオリーブ果実油からなる群から選択される。
【0030】
[脂肪酸とデキストリンとのエステル]
本化粧品組成物は更に、脂肪酸とデキストリンとのエステルを含む。
【0031】
デキストリンはD-グルコースの低重合体である。その構造は以下に示す簡略化された構造で表すことができる。
【化1】
【0032】
デキストリンは、様々な平均糖鎖重合度を有し、その結果として様々な分子量を有する。
【0033】
本発明において、脂肪酸とデキストリンとの前記エステルのデキストリンの平均糖鎖重合度は、好ましくは3~20の間、特に8~16の間にある。
【0034】
脂肪酸とデキストリンとの前記エステルの脂肪酸は、好ましくはC14~C18脂肪酸、特に直鎖C14~C18脂肪酸、最も好ましくはパルミチン酸である。
【0035】
特に好適な脂肪酸とデキストリンとのエステルは、千葉製粉株式会社(Chiba Flour Milling)からレオパール(Rheopearl)(登録商標)KL2として市販されているパルミチン酸デキストリンである。
【0036】
デキストリンは、エステル化可能な数個のヒドロキシル基を有している。
【0037】
好ましくは、脂肪酸とデキストリンとの前記エステルのエステル化されたヒドロキシル基の数の平均値は、グルコース1単位当たり2.5を超え、好ましくは2.7~3.5の間、より好ましくは28~3.4の間、最も好ましくは2.8~3.2の間にある。
【0038】
一実施形態において、脂肪酸とデキストリンとの前記エステルのエステル化されたヒドロキシル基の数の平均値は、グルコース1単位当たり3を超え、好ましくは3.05~3.5の間、より好ましくは3.1~3.4の間、最も好ましくは3.1~3.2の間にある。
【0039】
つまり、好ましくは、本質的にデキストリンの全てのヒドロキシル基がエステル化されている。
【0040】
更に好ましくは、脂肪酸とデキストリンとの前記エステルの分子量Mは、8000~16000Daの間、好ましくは9000~13000Daの間、より好ましくは10000~11500Daの間にある。
【0041】
分子量Mnは、特に、ポリスチレンを標準物質として用いるSEC/GPCにより、ダルトン(Da)単位で求められる。
【0042】
脂肪酸及びデキストリンは両方共生物由来である。化学物質が生物に由来することは、そのような物質又はその製造物の持続可能性が高いことから、非常に有利である。持続可能性の高い製造物又は組成物は市場における需要が非常に高い。
【0043】
[分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物]
本化粧品組成物は、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物を含む。
【0044】
C15~C19アルカンの特に好適な混合物は、特に、国際公開第2016/185046号パンフレット、国際公開第2017/046177号パンフレット、国際公開第2018/109353A1号パンフレット及び国際公開第2018/109354A1号パンフレット及び国際公開第2018/172228A1号パンフレットに開示されているものである。
【0045】
好ましくは、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物は、生物由来炭素の含有率が、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物の総重量に対し90%以上である。化学物質が生物に由来することは、そのような物質の持続可能性が高いことから、非常に有利である。持続可能性の高い製造物又は組成物は市場における需要が非常に高い。
【0046】
生物由来材料(biomaterial)の含有量又は生物由来炭素の含有量の決定は、ASTM規格D 6866-12、B法(ASTM D 6866-06)及びASTM D 7026(ASTM D 7 026-04)に準拠して行われる。ASTM規格D 6866は、「放射性炭素及び同位体比質量分析を用いた自然変動幅範囲のバイオマス由来度の決定(Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis)」に関するものであり、一方、ASTM規格D 7 026は、「炭素同位体分析により材料のバイオマス由来度を測定するための試料採取及び結果の報告(Sampling and Reporting of Results for Determination of Biobased Content of Materials via Carbon Isotope Analysis)」に関するものである。2番目に挙げた規格の第1段落に、1番目に挙げた規格が言及されている。1番目の規格は、試料の14C/12C比を測定する試験について記載しており、この試料を100%再生可能材料に由来する標準試料(sample renewable reference of origin 100%)の14C/12C比と比較することによって、試料中の再生可能材料由来のCの相対的比率が与えられる。この規格は14Cによる年代測定と同じ概念に基づいている。
【0047】
更に好ましくは、本組成物は、芳香族炭化水素を、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカン混合物の総重量に対し、全く含まないか又は非常に少量(100ppm未満、特に30ppm未満)含む。
【0048】
分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物は、特に、国際公開第2016/185046号パンフレットに詳述されているものなどの炭化水素バイオマス供給原料、特に、国際公開第2016/185046号パンフレットの実施例3として開示されているものなどを接触水素化することにより製造される。
【0049】
好ましくは、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物中の直鎖飽和C15~C19アルカンの量は、10重量%未満、好ましくは8重量%未満、最も好ましくは5重量%超である。
【0050】
更に好ましくは、C15の量は、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量に対し、3重量%未満、特に1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満である。
【0051】
好ましくは、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物は、分岐及び直鎖飽和C16~C19アルカンの混合物である。
【0052】
更に好ましくは、分岐飽和C16~C18アルカンの量は、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量に対し、90重量%超、好ましくは95重量%超である。
【0053】
更に好ましくは、C15アルカンの量は、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量に対し、5重量%未満、特に2重量%未満である。
【0054】
更に好ましくは、分岐飽和C17~C18アルカンの量は、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量に対し、85重量%超、好ましくは92重量%超である。
【0055】
更に好ましくは、C17アルカンの量は、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量に対し、15~20重量%の間にある。
【0056】
更に好ましくは、分岐飽和C18アルカンの量は、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量に対し、50重量%超、好ましくは60重量%超、更に好ましくは、70重量%超である。
【0057】
更に好ましくは、C18アルカンの量は、特に、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量に対し、70~75重量%の間にある。
【0058】
つまり、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物は、好ましくは、主としてC18アルカンからなり、最も好ましくは、主として分岐C18アルカンからなる。
【0059】
本化粧品組成物は分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物を含むため、前記組成物は、低級アルカンを含まない、即ち、特にC12アルカンを含まず、特にC12アルカンも又はC13アルカンも又はC14アルカンも含まない。
【0060】
更に好ましくは、C15~C19アルカンの混合物の20℃における粘度は、3~15mPa・sの間、特に6~12mPa・sの間にある。
【0061】
更に好ましくは、C15~C19アルカンの混合物の20℃における屈折率は、1.40~1.48の間、特に1.42~1.45の間、最も好ましくは1.43~1.44の間にある。
【0062】
更に好ましくは、C15~C19アルカンの混合物は、セピック(SEPPIC)からエモグリーン(EMOGREEN)(商標)L19として商品化されているC15~C19アルカンの混合物である
【0063】
前記組成物において、脂肪酸とデキストリンとの前記エステルの重量対分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物の重量の比は、好ましくは100重量%未満であり、好ましくは50~80重量%の範囲にあり、最も好ましくは60~70重量%の範囲にある。
【0064】
つまり、好ましくは、本組成物に含まれるC15~C19アルカンの重量は、脂肪酸とデキストリンとのエステルの重量よりも多い。
【0065】
好ましくは、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物並びに脂肪酸及びデキストリンは、両方共オーガニック由来のもの(organic origin)をベースとする。
【0066】
更に好ましくは、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物並びに脂肪酸とデキストリンとのエステルは、OECD 301Bに準拠して、易生分解性とされるものである。
【0067】
本化粧品組成物は、典型的には、化粧品組成物中で使用するのに適した他の成分を含む。
【0068】
化粧品組成物は、好ましくは水を含む。
【0069】
本化粧品組成物は、溶媒若しくは脂肪性物質中の懸濁液若しくは分散液の形態、或いはエマルジョン若しくはマイクロエマルジョン(特に、水中油(O/W)型又は油中水(W/O)型、水中シリコーン(Si/W)型又はシリコーン中水(W/Si)型、PIT-エマルジョン、多重エマルジョン(例えば、油中水中油(O/W/O)型又は水中油中水(W/O/W)型)、ピッカリングエマルジョン、ヒドロゲル、アルコール性ゲル、リポゲル、単相若しくは多相溶液若しくはベシクル分散液の形態、又はペンによって、美顔用パックとして、若しくはスプレーとして適用することもできる他の通常の形態とすることができる。
【0070】
本発明の全ての実施形態において好ましい化粧品組成物は、水を含み、エマルジョン形態にあるものである。
【0071】
特にこのエマルジョンは、油性相及び水性相を含む、特に、O/W、W/O、Si/W、W/Si、O/W/O、W/O/W多重又はピッカリングエマルジョンなどである。
【0072】
そのようなエマルジョン中に存在する油性相の総量は、化粧品組成物の総重量を基準として、好ましくは、少なくとも10重量%、例えば10~60重量%の範囲、好ましくは15~50重量%の範囲、最も好ましくは15~40重量%の範囲にある。
【0073】
そのようなエマルジョン中に存在する水性相の量は、化粧品組成物の総重量を基準として、好ましくは、少なくとも20重量%、例えば40~90重量%の範囲、好ましくは50~85重量%の範囲、最も好ましくは60~85重量%の範囲にある。
【0074】
より好ましくは、化粧品組成物は、O/W又はSi/W乳化剤の存在下で水性相中に分散された油性相を含む水中油(O/W)エマルジョンの形態にある。そのようなO/Wエマルジョンの調製は当業者に周知である。
【0075】
O/Wエマルジョンの形態にある組成物は、例えば、O/Wエマルジョンのあらゆる製剤形態、例えば、美容液、乳液又はクリームの形態で提供することができ、これらは通常の方法に従い調製される。この組成物は、好ましくは、局所適用することが意図されており、例えば、UV放射の悪影響からヒトの皮膚を保護する(しわ防止、抗老化、保湿、紫外線防御など)ことが意図された、特に皮膚科学的又は化粧品組成物を構成することができる。
【0076】
本化粧品組成物は、更に、化粧品及び紫外線防御分野の当業者に知られている有機又は無機UVフィルターも含むことができる。
【0077】
化粧品組成物は、少なくとも1種の液体有機UVフィルター及び/又は少なくとも1種の固体有機UVフィルターを更に含む。
【0078】
好適な液体有機UVフィルターは、UV(B)及び/又はUV(A)領域の光を吸収し、周囲温度(即ち、25℃)において液体である。この種の液体UVフィルターは当業者に周知であり、特に、ケイヒ酸エステル、例えば、メトキシケイヒ酸オクチル(パルソール(PARSOL)(登録商標)MCX)及びメトキシケイヒ酸イソアミル(Neo Heliopan(登録商標)E 1000)など、サリチル酸エステル、例えば、ホモサレート(2-ヒドロキシ安息香酸3,3,5トリメチルシクロヘキシル、パルソール(登録商標)HMS)及びサリチル酸エチルヘキシル(サリチル酸エチルヘキシル、2-ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、パルソール(登録商標)EHSとしても公知)など、アクリル酸エステル、例えば、オクトクリレン(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、パルソール(登録商標)340)及び2-シアノ-3,3ジフェニルアクリル酸エチルなど、ベンザルマロン酸のエステル、特にベンザルマロン酸ジアルキルエステルなど、例えば、4-メトキシベンザルマロン酸ジ(2-エチルヘキシル)及びポリシリコーン15(パルソール(登録商標)SLX)など、ナフタル酸のジアルキルエステル、例えば、2,6-ナフタル酸ジエチルヘキシル(Corapan(登録商標)TQ)など、シリンギリデンマロン酸エステル、例えば、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン(Oxynex(登録商標)ST liquid)など並びにベンゾトリアゾリルドデシルp-クレゾール(チノガード(Tinoguard)(登録商標)TL)並びにベンゾフェノン-3及びドロメトリゾールトリシロキサンを含む。
【0079】
特に有利な液体有機UVフィルターは、メトキシケイヒ酸オクチル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、2,6-ナフタル酸ジエチルヘキシル、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン、ベンゾトリアゾリルドデシルp-クレゾール、ベンゾフェノン-3、ドロメトリゾールトリシロキサン及びこれらの混合物である。
【0080】
好ましい実施形態において、液体UVフィルターは、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、ベンゾフェノン-3及びドロメトリゾールトリシロキサンからなる群から選択される液体UV(B)フィルターである。
【0081】
好適な固体有機UVフィルターは、UV(B)及び/又はUV(A)領域の光を吸収し、周囲温度(即ち、25℃)において固体である。特に好適な固体UVフィルターは、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、4-メチルベンジリデンカンファー及び1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンからなる群のものである。
【0082】
好ましい固体有機UV(A)フィルターは、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートからなる群から選択されるUV(A)フィルターである。
【0083】
好ましい固体有機UV(B)フィルターは、エチルヘキシルトリアゾン(=ユビナール(Uvinul)(登録商標)T150)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(=Uvasorb(登録商標)HEB)及び4-メチルベンジリデンカンファー(=パルソール(登録商標)5000)からなる群から選択されるUV(B)フィルターである。
【0084】
有機UVフィルターの総量は、目標とするUV防御に大きく依存する。
【0085】
好ましくは、固体有機UVフィルター、特に固体有機UV(A)フィルターの量は、0.1~約6重量%の範囲、好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~4重量%の範囲で選択される。
【0086】
更に好ましくは、固体有機UVフィルター、特に固体有機UV(B)フィルターの量は、0.1~約6重量%の範囲、好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~4重量%の範囲で選択される。
【0087】
一層好ましくは、液体有機UVフィルター、特に液体有機UV(B)フィルターの量は、0.1~約10重量%の範囲、好ましくは0.5~12重量%、最も好ましくは1~10重量%の範囲で選択される。
【0088】
本化粧品組成物は、更に好ましくは、少なくとも1種の乳化剤、好ましくはアニオン性乳化剤を含む。好ましくは、アニオン性乳化剤は、セチルリン酸カリウム、スルホコハク酸セテアリル二ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、クエン酸ステアリン酸グリセリル及びココイルイセチオン酸ナトリウムからなる群から選択されるアニオン性乳化剤である。
【0089】
有利な一実施形態において、本組成物は、更にリン酸エステル乳化剤を含む。好ましいリン酸エステル乳化剤の中でも、リン酸C8~10アルキルエチルエステル(C8-10 Alkyl Ethyl Phosphate)、アルキル(C9-15)リン酸(C9-15 Alkyl Phosphate)、セテアレス-2リン酸、セテアレス-5リン酸、セテス-8リン酸、セテス-10リン酸、リン酸セチル、(C6-10)パレス-4リン酸(C6-10 Pareth-4 Phosphate)、(C12-15)パレス-2リン酸、(C12-15)パレス-3リン酸、セテアレス-2リン酸DEA(DEA-Ceteareth-2 Phosphate)、セチルリン酸DEA、オレス-3リン酸DEA、セチルリン酸カリウム、デセス-4リン酸(Deceth-4 Phosphate)、デセス-6リン酸(Deceth-6 Phosphate)及びトリラウレス-4リン酸が挙げられる。特に好ましいリン酸エステル乳化剤は、例えば、DSM Nutritional Products Ltd KaiseraugstからAmphisol(登録商標)Kとして市販されているセチルリン酸カリウムである。
【0090】
本化粧品組成物は、非イオン性乳化剤も含むことができる。
【0091】
非イオン性乳化剤の例として、脂肪族(C8~C18)1級又は2級直鎖又は分岐鎖アルコールと、アルキレンオキシド、通常はエチレンオキシドとの、一般には6~30個のエチレンオキシド基を有する縮合物が挙げられる。他の代表的な非イオン性乳化剤としては、モノ又はジアルキルアルカノールアミド、例えば、ヤシ油脂肪酸モノ又はジエタノールアミド及びヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミドなどが挙げられる。更なる非イオン性乳化剤として、アルキルポリグリコシド(APG)を挙げることができる。APGは、典型的には、1つ又は複数のグリコシル基のブロックに結合している(任意選択的に架橋基を介して)アルキル基を含むもの、例えば、セピックからのOramix(商標)NS 1O;BASFからのPLANTACARE(登録商標)818UP、PLANTACARE(登録商標)1200及びPLANTACARE(登録商標)2000である。
【0092】
化粧品組成物がO/Wエマルジョンである場合、これは、好ましくは、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、ジラウリン酸PEG-4、ジオレイン酸PEG-8、オレイン酸PEG-40ソルビット、PEG-7グリセリルココエート、PEG-20アーモンド脂肪酸グリセリル、PEG-25水添ヒマシ油、ステアリン酸グリセリル(及び)ステアリン酸PEG-100、オリーブ油脂肪酸PEG-7、オレイン酸PEG-8、ラウリン酸PEG-8、PEG-60アーモンド脂肪酸グリセリル、セスキステアリン酸PEG-20メチルグルコース、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-100、ラウリン酸PEG-80ソルビタン、ステアレス-2、ステアレス-12、オレス-2、セテス-2、ラウレス-4、オレス-10、オレス-10/ポリオキシル10オレイルエーテル(Polyoxyl 10 Oleyl Ether)、セテス-10、イソステアレス-20、セテアレス-20、オレス-20、ステアレス-20、ステアレス-21、セテス-20、イソセテス-20、ラウレス-23、ステアレス-100、クエン酸ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(自己乳化型)、ステアリン酸、ステアリン酸の塩、ジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコースの一覧から選択される少なくとも1種のO/W又はSi/W乳化剤を含む。更に好適な乳化剤は、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ラウリルグルコシド、デシルグルコシド、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ポリステアリン酸スクロース及び水添ポリイソブテンである。
【0093】
更に、1種又は複数種の合成ポリマーを乳化剤として使用することができる。例えば、(PVP/エイコセン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(PEG-22/ドデシルグリコール)コポリマー、(PEG-45/ドデシルグリコール)コポリマー及びこれらの混合物がある。
【0094】
他の特に好適なO/W乳化剤の種類は、例えば、OLIVEM 1000の商品名で販売されている、(INCI名)オリーブ油脂肪酸セテアリル及びオリーブ油脂肪酸ソルビタン(化学組成:オリーブ油脂肪酸のソルビタンエステル及びセテアリルエステル)として知られている、オリーブ油から誘導された非イオン性自己乳化系である。
【0095】
市販の高分子乳化剤、例えば、NoveonからPemulen(登録商標)TR-1及びTR-2の商品名で市販されている(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーなどの疎水化ポリアクリル酸が更に好適である。
【0096】
他の特に好適な種類の乳化剤は、ポリグリセリルエステル/ジエステルとも呼ばれる脂肪酸のポリグリセロールエステル又はジエステル(即ち、脂肪酸がポリグリセリンでエステル化されることによって結合しているポリマー)、例えば、Evonikから市販されているIsolan GPS[INCI名(ジイソステアリン酸/ポリヒドロキシステアリン酸/セバシン酸)ポリグリセリル-4(即ち、イソステアリン酸、ポリヒドロキシステアリン酸及びセバシン酸の混合物とポリグリセリン-4とのジエステル)]又はCognisから入手可能なDehymuls PGPH(INCI:ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2)などである。
【0097】
同様に、ポリエチレングリコールエーテル、例えば、Crodaから入手可能なBrij 72(ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル)又はBrij 721(ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテルなども適している。
【0098】
この少なくとも1種のO/W又はSi/W乳化剤は、好ましくは、組成物の総重量を基準として、0.5~10重量%、特に0.5~5重量%の範囲など、最も具体的には0.5~4重量%の範囲などの量で使用される。
【0099】
好適なW/O又はW/Si乳化剤は、ポリグリセリル-2-ジポリヒドロキシステアリン酸、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、セチルジメチコンコポリオール、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、オレイン酸/イソステアリン酸のポリグリセロールエステル、ヘキサリシノール酸ポリグリセリル-6(polyglyceryl-6 hexaricinolate)、オレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリギルセリル-4(polygylceryl-4 oleate)/ヤシ油脂肪酸PEG-8-PG、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、リシノール酸カリウム、ヤシ脂肪酸ナトリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム、ヒマシ油脂肪酸カリウム、オレイン酸ナトリウム及びこれらの混合物である。更に好適なW/Si乳化剤は、ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又はPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又はセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン及び/又はPEG-12ジメチコンクロスポリマー及び/又はPEG/PPG-18/18ジメチコンである。少なくとも1種のW/O乳化剤は、組成物の総重量に対し、好ましくは約0.001~10重量%の量、より好ましくは0.2~7重量%の量で使用される。
【0100】
化粧品組成物は、更に有利には、少なくとも1種の界面活性助剤、例えば、モノグリセリド及びジグリセリド並びに/又は脂肪アルコールの群から選択されるものなどを含有する。界面活性助剤は、概して、組成物の総重量を基準として、0.1~10重量%の範囲、特に0.5~6重量%の範囲など、最も詳細には1~5重量%の範囲などから選択される量で使用される。特に好適な界面活性助剤は、セチルアルコール(Lorol C16、Lanette 16)、セテアリルアルコール(Lanette O)、ステアリルアルコール(Lanette 18)、ベヘニルアルコール(Lanette 22)、ステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル(Estol 3650)、水添ココグリセリル(Lipocire Na10)及びこれらの混合物などのアルキルアルコールの一覧から選択される。
【0101】
本組成物は、好ましくはスルフェートを含まない。
【0102】
したがって、化粧品組成物は、好ましくは、特に、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアミドエーテルスルフェート、アルキルアリールポリエーテルスルフェート及びモノグリセリドスルフェート並びにその混合物からなる群のスルフェートを含まない。
【0103】
本文書において、例えば、「スルフェートを含まない」に使用される「含まない(free)」という用語は、それぞれの物質が、組成物の重量に対し、0.5重量%未満、特に0.1重量%未満、より詳細には0.05重量%未満しか存在しないことを意味するために使用される。好ましくは、「含まない」とは、それぞれの物質が組成物中に完全に存在しないことを意味する。
【0104】
本文書において使用される「スルフェートを含まない」という用語は、組成物が、次式:
【化2】

の末端陰イオン性基を有するアニオン性界面活性剤を含まないことを意味する。
【0105】
化粧品組成物は、好ましくは、カチオン性乳化剤を含まない。この種のカチオン性乳化剤の典型的な例は、イソステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラルコニウムクロリド、ステアラミドエチルジエチルアミン、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ベヘノイルPG-トリモニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、ベヘン酸ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ブラシカアミドプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ステアラミドプロピルジメチルアミン、コカミドプロピルPG-ジモニウムクロリド、ジステアロイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジステアロイルエチルジモニウムクロリド、シア脂アミドプロピルトリモニウムクロリド、ベヘナミドプロピルジメチルアミンン、ブラシシルイソロイシンエシレート、(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリレーツ)コポリマー、リノールアミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート、イソステアリン酸ジメチルラウラミン、イソステアラミドプロピルラウリルアセトジモニウムクロリド(isostearamidopropyl laurylacetodimonium chloride)、特に、ベヘントリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド及びパルミタミドプロピルトリモニウムクロリドである。
【0106】
化粧品組成物は、化粧品組成物に使用するのに適している、スキンケア産業において一般に使用されている化粧品用担体、賦形剤及び希釈剤並びに添加剤及び有効成分を更に含むことができ、これらは例えば、オンラインでINFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)から閲覧可能なPersonal Care Product Council(http://www.personalcarecouncil.org/)によるInternational Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbookに記載されているが、これらに限定されない。
【0107】
化粧品組成物のこの種の可能な成分は、特に、性能及び/又は消費者受容性を向上する、防腐剤、酸化防止剤、脂肪性物質/油、増粘剤、軟化剤、光遮蔽剤、保湿剤、芳香剤、界面活性助剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、カチオン性、非イオン性若しくは両性ポリマー又はこれらの混合物、酸性化若しくは塩基性化剤、粘度調整剤など並びに植物性物質(botanical)、果実エキス、糖誘導体及び/又はアミノ酸などの天然の毛髪栄養分又は化粧品組成物に通常配合される任意の他の成分などである。補助剤及び添加剤の必要量は、本分野の当業者であれば所望の製造物に基づいて容易に選択することができ、実施例において例示するが、これらに限定されない。
【0108】
全ての実施形態において特に好適な増粘剤は、キサンタンガム、ジェランガム及び/又はカルボキシメチルセルロースである。全ての実施形態において最も好ましい増粘剤は、キサンタンガム又はジェランガムである。
【0109】
そのような増粘剤は、好ましくは、化粧品組成物の総重量を基準として、0.1~1重量%の範囲から選択される(総)量、より好ましくは0.1~0.5重量%の量で使用される。
【0110】
化粧品組成物は、好ましくは、3~10の範囲のpH、好ましくは4~8の範囲のpH、最も好ましくは4~7.5の範囲のpHを有する。このpHは、当該技術分野における標準的な方法に従い、適切な酸、例えばクエン酸又は塩基、例えばNaOHを用いて、必要に応じて容易に調整することができる。
【0111】
化粧品組成物は、好ましくは、スルフェートを含まず、並びに/又はパラベンを含まず、並びに/又はシリコーン油及び/若しくはシリコーン界面活性剤を含まない。
【0112】
化粧品組成物は、好ましくは局所用組成物である。
【0113】
本明細書で使用する「局所用」という用語は、本明細書では、角質物質、特に、皮膚、頭皮、睫毛、眉毛、爪、粘膜及び毛髪、好ましくは皮膚への外用を意味すると理解される。
【0114】
局所用組成物は、局所適用が意図されているため、それらが生理学的に許容される媒体、即ち、皮膚、粘膜及びケラチン線維などの角質物質と適合性である媒体を含むことは十分に理解される。特に、生理学的に許容される媒体は、美容的に許容される担体である。
【0115】
「美容的に許容される担体」という用語は、特に日焼け防止製品などの化粧品組成物中に従来から使用されているあらゆる担体及び/又は賦形剤及び/又は希釈剤を指す。
【0116】
好ましくは、化粧品組成物は、スキンケア製剤、装飾用製剤又は機能性製剤である。
【0117】
スキンケア製剤の例は、特に、光防御製剤、抗老化製剤、光老化治療用製剤、ボディオイル、ボディローション、ボディジェル、トリートメントクリーム、皮膚保護軟膏、スキンパウダー、保湿ゲル、保湿スプレー、顔及び/又は身体用保湿剤、日焼け用製剤(即ち、ヒトの皮膚の人工的/サンレスタンニング及び/又は褐色化用組成物)、例えば、セルフタンニングクリーム並びに皮膚美白用製剤である。
【0118】
機能性製剤の例は、有効成分を含有する化粧品又は医薬品組成物、例えば、ホルモン製剤、ビタミン製剤、植物エキス製剤及び/又は抗老化製剤であるが、これらに限定されない。
【0119】
化粧品組成物は、好ましくはスキンケア組成物である。
【0120】
最も好ましい実施形態において、化粧品組成物は、日焼け防止組成物である。日焼け防止組成物は、紫外線防御乳液、紫外線防御ローション、紫外線防御クリーム、紫外線防御オイル、日焼け止め剤(sun block)又はSPF(紫外線防御指数)を有するデイケアクリームなどの光防御製剤(日焼け防止用製品)である。特に関心が寄せられているのは、紫外線防御クリーム、紫外線防御ローション、紫外線防御乳液及び紫外線防御製剤である。
【0121】
本化粧品組成物は、官能特性が向上しており、特に使用後の感触が向上している。
【0122】
本化粧品組成物は、酸敗が大幅に低下している、即ち、前記脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに/又は分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物を含まない対応する組成物と比較して、誘導時間が大幅に延長されている。
【0123】
本文書において用いられる酸敗は、Laeubli et al.,JAOCS,1986,63(6),792-795に記載されているランシマット試験により、743型ランシマット試験装置(Rancimat apparatus)(メトローム(Methrom)、スイス国ヘリザウ(Herisau,Switzerland))を用いて測定される誘導時間により定量化される。
【0124】
上に述べた分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物を植物油に添加することにより、酸敗が大幅に低減される、即ち、誘導時間が大幅に延長されることが示された。
【0125】
更に、上に述べた前記脂肪酸とデキストリンとのエステルを植物油に添加することにより、酸敗が大幅に低減される、即ち、誘導時間が大幅に延長されることも示された。前記脂肪酸とデキストリンとのエステルを植物油に添加した場合、同量の分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物を植物油に添加した場合と比較して、酸敗がより低減されることが観測された、即ち、誘導時間がより長くなることが観察された。
【0126】
最後に、上に述べた前記脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物を植物油に添加することにより、酸敗が大幅に低減される、即ち、誘導時間が大幅に延長されることが更に示された。驚くべきことに、前記脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物を両方共植物油に添加した場合に、酸敗が最も低減される、即ち、誘導時間が最も延長されることが観察された。
【0127】
したがって、更なる態様において、本発明は、植物油の酸敗を低減するために、脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに/又は分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物を添加する使用に関する。
【0128】
前記エステル並びに分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物に関しては既に上で詳細に述べた。
【0129】
脂肪酸とデキストリンとの前記エステルも、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物も、酸化防止作用を有することは知られていないので、こうして脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに/又は分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物を添加することによってこの前記植物油又は前記植物油を含む化粧品組成物のそれぞれの酸敗が低減されることは、非常に驚くべきことである。
【0130】
特に、この植物油は、そのトリグリセリドの状態にある不飽和脂肪酸の量が、35重量%超、特に40重量%超である、植物油である。
【0131】
植物油は、好ましくは、マカデミア種子油、アーモンド油、アルガニアスピノサ核油、亜麻仁油、シソ種子油、シア脂及びオリーブ果実油からなる群から選択される。
【0132】
前記脂肪酸とデキストリンとのエステル並びに/又は分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの前記混合物による、誘導時間延長率(%-extension induction time)で表される酸敗の低減は、マカデミア種子油、シア脂及びオリーブ果実油で最も顕著になることが観察された。
【0133】
誘導時間延長率で表される酸敗の低減は、マカデミア種子油で最も高くなることが観察された。
【0134】
本発明により、酸敗が大幅に低減されることから、植物油又は化粧品組成物のそれぞれの貯蔵寿命を大幅に延長することが可能になる。これは言うまでもなく、最終使用者にとっても、このような植物油又は化粧品組成物をそれぞれ商品化することに関しても、非常に重要である。前記植物油を含むあらゆる化粧品組成物にとって、酸化防止剤の添加を回避することは更に重要である。
【0135】
植物油は、化粧品中で効能(powerful properties)を示す健康に良い成分であり、且つ天然物である。化粧及びパーソナルケア分野に用いるための持続可能な原料及び製品に対する消費者及び市場の関心は益々高まっていることから、このことは非常に重要である。したがって、化粧品に使用できる植物油は重要であり、興味深い。しかしながら、酸敗油の不快臭は非常に低い濃度で早くも感知される可能性があり、酸敗を、特に更なる酸化防止剤を添加することなく低減することは、現在使用されている多くの酸化防止剤が望ましくない副作用を持つという点で議論の対象になっていることから、したがって本発明は、一方では、植物油及びその化粧品の貯蔵寿命を大幅に延長し、他方では、そのままでは非常に酸敗しやすいこのような植物油を化粧品中で使用できるようにするため、非常に有利である。
【0136】
[実施例]
本発明を以下の実験によって更に説明する。
【0137】
[化粧品組成物及び酸敗]
[予備混合物の調製]
パルミチン酸デキストリン1及び2を、C15~C19アルカンの一部と予備混合することにより予備混合物(パルミチン酸デキストリン25重量%)を作製しておく。
【0138】
次いで前記予備混合物を、各植物油及びC15~19アルカンの残りと、マグネチックスターラーを用いて80℃で混合し、撹拌せずに25℃で放冷した。
【0139】
組成物の酸敗を、Laeubli et al.Laeubli et al.,JAOCS,1986,63(6),792-795に記載されているランシマット試験により、743型ランシマット試験装置(メトローム、スイス国ヘリザウ)を用いて110℃で測定した誘導時間(Induction Time)で定量化した。
【0140】
測定された誘導時間を表1及び2に記載する。
【0141】
更に、使用した純粋な植物油を基準とし、そのそれぞれの基準に対する各組成物の誘導時間の変化率(%)として、組成物1~11について得られた誘導時間の延長率(ΔIT)を求める。
【0142】
例えば、表1及び2の実施例5で得られたΔIT(+54.9%)は、実施例5及び参考例1に関し測定された誘導時間から次に示すように算出したものである:ΔIT=((7.56/4.88)-1)×100。
【0143】
【表1】
【0144】
表1の実施例から、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物(エモグリーン(商標)L19)を用いることにより、植物油の酸敗が大幅に低減される(1及び2対参考例1)ことに加えて、脂肪酸及びデキストリンのエステル(パルミチン酸デキストリン)によっても、植物油の酸敗が大幅に低減される(3及び4対参考例1)ことが分かる。この低減効果は、脂肪酸及びデキストリンのエステルを用いた場合よりも、C15~C19アルカンを用いた場合の方が一層高くなる(4対1)。更に、酸敗は、分岐及び直鎖飽和C15~C19アルカンの混合物(エモグリーン(商標)L19)と、脂肪酸とデキストリンとのエステル(パルミチン酸デキストリン)とを組み合わせた場合に最も低減されることが観察されている(5対参考例1)。
【0145】
表2の実施例では、様々な典型的な植物油又はその化粧品組成物のそれぞれの酸敗を比較して示す。表2の結果から、これらの植物油全てにおいて、酸敗の顕著な低減(ΔIT)が確認できたことが分かる。この酸敗の低減は、マカデミア種子油で最も顕著であり、それに次いでシア脂、次いでオリーブ果実油で顕著である。
【0146】
【表2】
【国際調査報告】