IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルコン インコーポレイティドの特許一覧

特表2023-553836眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法
<>
  • 特表-眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法 図1
  • 特表-眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法 図2
  • 特表-眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法 図3
  • 特表-眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法 図4
  • 特表-眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法 図5
  • 特表-眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法 図6
  • 特表-眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法 図7
  • 特表-眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法 図8
  • 特表-眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】眼画像の可視化を向上させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20231219BHJP
   A61B 3/13 20060101ALI20231219BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61F9/007 200C
A61B3/13
G06T1/00 290Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532508
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 IB2021059740
(87)【国際公開番号】W WO2022130048
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,069
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ルー イン
(72)【発明者】
【氏名】アショック バートン トリパティ
(72)【発明者】
【氏名】ラメシュ サランガパニ
【テーマコード(参考)】
4C316
5B057
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA08
4C316AA09
4C316AA10
4C316AB07
4C316AB16
4C316FB05
4C316FB21
4C316FB22
4C316FB26
4C316FC12
4C316FC14
5B057AA07
5B057BA02
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CC02
5B057DA07
5B057DA08
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
(57)【要約】
眼の原画像を視覚的に向上させるためのシステム及び方法は、可視化モジュールを含む。コントローラは、可視化モジュールの出力を第1の色空間における第1のピクセルクラウドに変換し、第1のピクセルクラウドを第2の色空間における第2のピクセルクラウドにマッピングするよう構成される。方法は、第2の色空間における少なくとも1つの選択ゾーンを識別することを含む。コントローラは、選択ゾーンを元の位置から第2の色空間における修正された位置に移動させるよう構成される。第2のピクセルクラウドは、第1の色空間における第3のピクセルクラウドに変換される修正された第2のピクセルクラウドを取得するよう更新される。強調画像は、修正された第2のピクセルクラウドに部分的に基づいて形成され、原画像の残りの部分におけるコントラストに影響を及ぼすことなく、選択ゾーンにおける選択的な視覚的強調を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の原画像の可視化を向上させるためのシステムであって、
光センサを有する可視化モジュールと、
前記可視化モジュールと通信し、プロセッサと、命令が記録されている有形の非一時的メモリとを有するコントローラと、を備え、
前記命令の実行により、前記コントローラに、
前記可視化モジュールの出力を第1の色空間における第1のピクセルクラウドに変換することと、
前記第1のピクセルクラウドを第2の色空間における第2のピクセルクラウドにマッピングすることと、
前記第2のピクセルクラウドにおける少なくとも1つの選択ゾーンを識別することであって、前記少なくとも1つの選択ゾーンは、視覚的強調が所望される前記眼の一部であるよう、識別することと、
前記少なくとも1つの選択ゾーンを、元の位置から前記第2の色空間における修正された位置に移動させることと、
修正された第2のピクセルクラウドを取得するよう、前記第2の色空間における前記第2のピクセルクラウドを更新することと、
前記第2の色空間における前記修正された第2のピクセルクラウドを前記第1の色空間における第3のピクセルクラウドに変換することと、
前記修正された第2のピクセルクラウドに部分的に基づいて、前記眼の強調画像を形成することであって、前記強調画像は、前記少なくとも1つの選択ゾーンにおいて選択的な視覚的強調を提供するよう、形成することと、
を行わせる、システム。
【請求項2】
前記第1の色空間はRGB色空間であり、
前記第2の色空間は、明度係数を表す第1の軸(L)と、緑から赤への連続体を表す第2の軸(a)と、青から黄への連続体を表す第3の軸(b)とを有するCIELAB色空間(Lab)である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、複数のデータリポジトリを有するデータ構造を介して前記原画像をリアルタイムで連続的に更新するよう適合され、
前記複数のデータリポジトリのそれぞれは、前記第1の色空間における元のピクセル色を表す第1のリストと、前記第1の色空間における強調されたピクセル色を表す第2のリストとをそれぞれ有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記光センサは、複数のセンサを含み、
前記可視化モジュールからの前記出力を変換することは、前記光センサにおける前記複数のセンサのそれぞれのスペクトル感度に部分的に基づく、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2色空間は、複数の軸を含み、
前記修正された位置は、前記第2の色空間における複数の軸のうちの少なくとも1つに沿った前記元の位置の平行移動である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記修正された位置は、前記第2の色空間におけるそれぞれの軸に沿った前記元の位置の鏡像である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記原画像は、入力光源によって誘発される第1の色かぶりを示し、
前記コントローラは、前記強調画像が第2の色かぶりを示すように、前記第1の色かぶりを前記第2の色かぶりに変換するよう色順応変換を適用するよう適合される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの選択ゾーンは、前記眼内の1つ以上の血管に対応し、前記眼の前記原画像は、空気流体交換中に撮影され、
前記眼の前記強調画像は、前記空気流体交換中に前記1つ以上の血管におけるコントラストの損失を補償するよう適合される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの選択ゾーンは、比較的淡色の前記眼の領域に対応し、前記眼の前記強調画像は、前記領域を所定の色でデジタル処理で着色することによって仮想染料を提供する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの選択ゾーンは、前記眼内に浮遊し、経時的に比較的淡色になる粒子に対応し、前記眼の前記強調画像は、前記粒子を所定の色でデジタル処理で着色することによって仮想染料を提供する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記眼は、選択的吸収のために染料に曝露され、前記少なくとも1つの選択ゾーンは、前記眼の領域によって吸収される前記染料の染色に対応し、
前記眼の前記強調画像は、前記少なくとも1つの選択ゾーンにおいて色強調を提供する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記染料は、第1の時間において部分的に吸収され、第2の時間において完全に吸収され、前記第2の時間は、前記第1の時間よりも長く、
前記眼の前記原画像は、前記眼への前記染料の曝露を最小限にするよう、前記第1の時間において強調される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記原画像は、前記眼の網膜上膜の剥離中に取得される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記染料はインドシアニングリーンである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記染料は、第2の時間において完全に吸収され、第3の時間において退色し始め、前記第3の時間は、前記第2の時間よりも長く、
前記眼の前記原画像は、前記染料の有用持続期間を延長するよう、前記第3の時間において強調される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記原画像は、白内障手術中に取得され、
前記染料は、前記眼の嚢膜によって吸収され、前記強調画像は、前記嚢膜の強調された可視化を提供する、
請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
可視化モジュールと、プロセッサ及び有形の非一時的メモリを有するコントローラとを有するシステムにおいて眼の原画像を視覚的に強調するための方法であって、
前記コントローラを介して、前記可視化モジュールの出力を第1の色空間における第1のピクセルクラウドに変換することと、
前記コントローラを介して、前記第1のピクセルクラウドを第2の色空間における第2のピクセルクラウドにマッピングすることと、
前記コントローラを介して、前記第2のピクセルクラウドにおける少なくとも1つの選択ゾーンを識別することであって、前記少なくとも1つの選択ゾーンは、視覚的強調が所望される前記眼の一部である、ことと、
前記コントローラを介して、前記少なくとも1つの選択ゾーンを、元の位置から前記第2の色空間における修正された位置に移動させることと、
前記コントローラを介して、修正された第2のピクセルクラウドを取得するよう、前記第2の色空間における前記第2のピクセルクラウドを更新することと、
前記コントローラを介して、前記第2の色空間における前記修正された第2のピクセルクラウドを前記第1の色空間における第3のピクセルクラウドに変換することと、
前記第3のピクセルクラウドに部分的に基づいて、前記眼の強調画像を形成することであって、前記強調画像は、前記少なくとも1つの選択ゾーンにおいて選択的な視覚的強調を提供する、ことと、
を含む、方法。
【請求項18】
RGB色空間となるよう前記第1の色空間を選択することと、
明度係数を表す第1の軸(L)と、緑から赤への連続体を表す第2の軸(a)と、青から黄への連続体を表す第3の軸(b)とを有するCIELAB色空間(Lab)となるよう前記第2の色空間を選択することと、
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の色空間は複数の軸を含み、前記方法は、
前記第2の色空間における前記複数の軸のうちの少なくとも1つに沿った前記元の位置の平行移動となるよう前記修正された位置を選択すること、
を更に含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
染料が、第1の時間において部分的に吸収され、第2の時間において完全に吸収され、前記第2の時間が、前記第1の時間よりも長いように、前記眼の領域を前記染料に曝露することと、
前記第1の時間において吸収される前記染料の染色に対応するよう、前記少なくとも1つの選択ゾーンを選択することと、
前記眼への前記染料の曝露を最小限にするよう、前記第1の時間において前記眼の前記原画像を強調することと、
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、眼科手術において外科医を誘導するためのシステム及び方法に関する。特に、本開示は、眼の画像の可視化を向上させることに関する。網膜、黄斑、水晶体、及び硝子体等の眼の種々の部位は、失明につながる種々の疾患及び状態に曝される可能性があり、外科医の注意を必要とする可能性がある。外科手術は困難な分野であり、実施するには知識及び技術の両方を必要とする。この課題は、処置が、小さく、繊細で、肉眼で視覚化するのが困難な身体の構造に関係する場合に、より大きい。眼はかかる構造の一例である。外科チームを支援するために、眼科手術に先立って、及びその間、様々な画像診断法が、リアルタイムで眼の画像を取得するよう採用されてもよい。しかし、幾つかの臨床シナリオにおいて、取得される画像は、十分な視認性又はコントラストを提供しない可能性がある。加えて、画像の一部分においてコントラストを高めることにより、結果として画像の他の部分におけるコントラストの低下を生じる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本明細書中に開示するのは、眼の原画像を視覚的に向上させるためのシステムである。システムは、原画像を取得するよう構成される可視化モジュールを含み、可視化モジュールは光センサを含む。コントローラは、可視化モジュールと通信する。コントローラは、プロセッサと、命令が記録される有形の非一時的メモリとを有する。命令の実行は、コントローラに、可視化モジュールの出力を第1の色空間における第1のピクセルクラウドに変換させる。
【0003】
コントローラは、第1のピクセルクラウドを第2の色空間における第2のピクセルクラウドにマッピングするよう構成される。方法は、第2のピクセルクラウドにおける少なくとも1つの選択ゾーン(以下、「少なくとも1つ」を省略)を識別することを含む。選択ゾーンは、視覚的強調が所望される眼の一部である。コントローラは、選択ゾーンを元の位置から第2の色空間における修正された位置に移動させるよう構成される。第2のピクセルクラウドは、修正された第2のピクセルクラウドを取得するよう、第2の色空間において更新される。修正された第2のピクセルクラウドは、次いで、第1の色空間における第3のピクセルクラウドに変換される。強調画像は、修正された第2のピクセルクラウドに部分的に基づいて形成され、強調画像は、少なくとも1つの選択ゾーンにおいて選択的な視覚的強調を提供する。
【0004】
第1の色空間は、RGB色空間であってもよい。第2の色空間は、明度係数を表す第1の軸(L)と、緑から赤への連続体を表す第2の軸(a)と、青から黄への連続体を表す第3の軸(b)とを有するCIELAB色空間(Lab)である。コントローラは、複数のデータリポジトリを有するデータ構造を介して原画像をリアルタイムで連続的に更新するよう適合されてもよい。複数のデータリポジトリのそれぞれは、第1の色空間における元のピクセル色を表す第1のリストと、第1の色空間における強調されたピクセル色を表す第2のリストとをそれぞれ有する。
【0005】
一実施例において、光センサは複数のセンサを含み、可視化モジュールからの出力を変換することは、光センサにおける複数のセンサのそれぞれのスペクトル感度に部分的に基づく。第2の色空間は、複数の軸を含んでいてもよい。修正された位置は、第2の色空間における複数の軸のうちの少なくとも1つに沿った元の位置の平行移動であってもよい。修正された位置は、第2の色空間におけるそれぞれの軸に沿った元の位置の鏡像であってもよい。別の実施例において、原画像は、入力光源によって誘発される第1の色かぶりを示し、コントローラは、強調画像が第2の色かぶりを示すように、第1の色かぶりを第2の色かぶりに変換するよう色順応変換を適用するよう適合される。
【0006】
幾つかの実施形態において、選択ゾーンは、眼内の1つ以上の血管に対応し、眼の原画像は、空気流体交換中に撮影される。眼の強調画像は、空気流体交換中に1つ以上の血管におけるコントラストの損失を補償するよう適合される。幾つかの実施形態において、選択ゾーンは、比較的淡色の眼の領域に対応し、眼の強調画像は、領域を所定の色でデジタル処理で着色することによって仮想染料を提供する。幾つかの実施形態において、選択ゾーンは、眼内に浮遊し、経時的に比較的淡色になる粒子に対応し、眼の強調画像は、粒子を所定の色でデジタル処理で着色することによって仮想染料を提供する。
【0007】
眼は、選択的吸収のために染料に曝露されてもよく、少なくとも1つの選択ゾーンは、眼の領域によって吸収される染料の染色に対応する。眼の強調画像は、選択ゾーンにおいて色強調を提供する。染料は、第1の時間において部分的に吸収され、第2の時間において完全に吸収され、第2の時間は、第1の時間よりも長い。眼の原画像は、眼への染料の曝露を最小限にするよう、第1の時間において強調されてもよい。原画像は、眼の網膜上膜の剥離中に取得されてもよい。染料はインドシアニングリーンであってもよい。染料は、第2の時間において完全に吸収され、第3の時間において退色し始め、第3の時間は、第2の時間よりも長い。眼の原画像は、染料の有用持続期間を延長するよう、第3の時間において強調されてもよい。幾つかの実施形態において、原画像は、白内障手術中に取得され、染料は、眼の嚢膜によって吸収され、強調画像は、嚢膜の強調された可視化を提供する。
【0008】
可視化モジュールと、プロセッサ及び有形の非一時的メモリを有するコントローラとを有するシステムにおいて眼の原画像を視覚的に強調するための方法が開示される。方法は、コントローラを介して、可視化モジュールの出力を第1の色空間における第1のピクセルクラウドに変換することと、第1のピクセルクラウドを第2の色空間における第2のピクセルクラウドにマッピングすることとを含む。方法は、コントローラを介して、第2のピクセルクラウドにおける少なくとも1つの選択ゾーンを識別することであって、選択ゾーンは、視覚的強調が所望される眼の一部であることを含む。選択ゾーンは、コントローラを介して、元の位置から第2の色空間における修正された位置に移動される。方法は、コントローラを介して、修正された第2のピクセルクラウドを取得するよう、第2の色空間における第2のピクセルクラウドを更新することと、第2の色空間における修正された第2のピクセルクラウドを第1の色空間における第3のピクセルクラウドに変換することとを含む。眼の強調画像は、第3のピクセルクラウドに部分的に基づいて形成され、強調画像は、少なくとも1つの選択ゾーンにおいて選択的な視覚的強調を提供する。
【0009】
本開示の上記の特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、本開示を実施するための最良の態様の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読めば容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、眼の原画像の可視化を向上させるためのシステムの部分斜視略図であり、システムは、可視化モジュールと、コントローラとを有する。
図2図2は、図1のコントローラによって実行可能な方法のフロー図である。
図3図3は、図1の可視化モジュールによって使用可能な例示的な光センサにおける複数のセンサのためのスペクトル感度を示す略図的なグラフであり、波長を横軸に有する。
図4図4は、図1のシステムによって使用可能な第2の色空間の一実施例を示す略図である。
図5図5は、図4の第2の色空間における選択ゾーンを示す略図である。
図6図6は、選択ゾーンが1つ以上の血管である、眼の例示的な強調画像の断片的な略図である。
図7図7は、眼の一部における例示的な染料の吸収を示す略図的なグラフであり、染料の吸収率を縦軸、時間を横軸に有する。
図8図8は、選択ゾーンが網膜上膜である、眼の別の例示的な強調画像の断片的な略図である。
図9図9は、選択ゾーンが水晶体の嚢膜である、眼の別の例示的な強調画像の断片的な略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
同様の参照番号が同様のコンポーネントを指す図面を参照すると、図1は、眼12の向上した可視化を提供するためのシステム10を略図として示している。システム10は、可視化モジュール14において実装されてもよい。図1を参照すると、システム10は、少なくとも1つのプロセッサPと、図2において示され、それに関して以下で説明する方法100を実行するための命令が記録されてもよい少なくとも1つのメモリM(又は有形の非一時的コンピュータ読取可能ストレージ媒体)とを有するコントローラCを含む。メモリMは、コントローラ実行可能命令セットを格納することができ、プロセッサPは、メモリMに格納されるコントローラ実行可能命令セットを実行することができる。
【0012】
図1を参照すると、可視化モジュール14は、眼12の原画像16を生成するよう適合されている。以下に説明するように、システム10は(方法100の実行を介して)、原画像16の残りの部分におけるコントラストに影響を与えることなく、又はコントラストを低下させることなく、本明細書において選択ゾーンZと称する選択領域の視覚的強調を可能にする。言い換えれば、システム10は、原画像16に存在する他の色を変化させない方法で、選択ゾーンZにおける強度の増幅を可能にする。視覚的強調は、様々な臨床シナリオに対する強調ニーズに対応するよう調整可能である。システム10は、網膜、角膜、白内障、及び/又は眼科手術のための構造的特徴及び病状の可視化を向上させる。システム10は、画像診断システム及び/又は眼科手術システムの一部として実装されてもよい。
【0013】
図1を参照すると、原画像16は多次元であり、複数のピクセル18に分割されてもよい。図1を参照すると、可視化モジュール14は、光を捕捉し、それを電気信号に変換する電磁センサである光センサ20を採用してもよい。電気信号は、画像プロセッサ24及び/又はコントローラCによってデジタルデータに変換されてもよい。一実施例において、光センサ20はカメラである。光センサの他の実施例は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサ又は電荷結合素子(CCD)センサを含むが、これらに限定されない。
【0014】
原画像16は、取り込まれた静止画像であってもよいか、又はリアルタイム画像であってもよい。本明細書中で用いるような「リアルタイム」とは、一般に、データを受信するのと同じ速度で情報を更新することを指す。更に具体的に言うと、「リアルタイム」とは、データが表示される場合に、ユーザが気付く激しい振動又は待ち時間なしに、オブジェクトがスムーズに動く十分高いデータレート及び十分に低い遅延で、画像データがフォトセンサから取得、処理、及び送信されることを意味する。通常、これは、新しい画像が少なくとも約30フレーム/秒(fps)のレートで取得、処理、及び送信され、約60fpsで表示される場合、並びにビデオ信号の複合処理が約1/30秒以下の遅延を有する場合に生じる。
【0015】
図1を参照すると、可視化モジュール14は、眼12の複数の光学的ビューを光センサ20に誘導する実体顕微鏡22を含んでいてもよい。コントローラCは、ディスプレイ26上で最終的にブロードキャストするために可視化モジュール14からの出力を処理するよう構成されてもよい。出力は、記録のためにリアルタイム高解像度ビデオ信号として送信されるか、又は表示及び視聴のために提示されてもよい。可視化モジュール14からの出力が眼12の複数のビューを含む場合、ディスプレイ26は、被写界深度が眼科外科医に提示されるように三次元化されてもよい。ディスプレイ26は、高解像度テレビ、超高解像度テレビ、スマートアイウェア、プロジェクタ、1つ以上のコンピュータ画面、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータを含んでいてもよいが、これらに限定されず、タッチスクリーンを含んでいてもよい。
【0016】
眼科手術中の可視化のためにディスプレイ26を利用するデジタル顕微鏡のためのシステムの例は、デジタル支援硝子体網膜手術(DAVS)のためのモジュールであるAlcon Laboratories NGENUITY(登録商標)3D可視化システム(Alcon Inc.,Fribourg,Switzerland)を含む。NGENUITY(登録商標)3D可視化システムは、顕微手術中に対象物の拡大立体画像を提供するよう構成される3D立体高精細デジタルビデオカメラである高ダイナミックレンジ(HDR)カメラを含む。HDRカメラは、手術中に外科用顕微鏡への追加として機能し、原画像又は記録からの画像を表示するために用いられる。
【0017】
ここで図3を参照して、システム10の実装例又は方法100のフロー図を示す。方法100は、本明細書に記載された特定の順序で適用される必要はなく、幾つかのブロックが省略されてもよいことが理解される。メモリMは、コントローラ実行可能命令セットを格納することができ、プロセッサPは、メモリMに格納されるコントローラ実行可能命令セットを実行することができる。
【0018】
図2のブロック102により、コントローラCは、可視化モジュール14(例えば、光センサ)の出力を、図1に示す第1の色空間32内の第1のピクセルクラウド30に変換するよう構成される。第1の色空間32は、赤(R)、緑(G)、及び青(B)の組み合わせを用いて複数の色を生成するRGB色空間であってもよい。デジタルカメラに用いられる幾つかのRGB色空間は、Standard RGB(sRGB)及びAdobe RGBを含む。
【0019】
出力は、光センサ20内の複数のセンサ40のスペクトル強度及び特性に基づいて変換されてもよい。図1の光センサ20は、スペクトルの異なる部分に反応する複数のセンサ40を含み、例えば、1つのセンサは青色に特に反応し、別のセンサは緑色に特に反応し、別のセンサは赤色に特に反応する。図3を参照すると、1組のトレース200を示しており、スペクトル強度Iを縦軸に、波長Wを横軸に示している。トレース208、210、及び212は、それぞれ、赤色、緑色、及び青色に対する複数のセンサ40のスペクトル感度グラフを表している。図3のトレース202、204及び206は、一般的なカメラからの出力をそれぞれ赤色、緑色、及び青色に変換するために用いられるstandard RGBスペクトル感度プロファイルを表す。色変換は、複数のセンサ40のそれぞれのスペクトル特性(トレース208、210、及び212によって表される)に基づいているため、色変換は、より扱いやすく、安定している。
【0020】
図2のブロック104により、コントローラCは、第1の色空間32内の第1のピクセルクラウド30を第2の色空間36内の第2のピクセルクラウド34にマッピング又は変換するよう構成される(図1参照)。第1のピクセルクラウド30は、第1の色空間32内の個々の色(即ち、3D座標)に従って、第2の色空間36に(第2のピクセルクラウド34として)再配置される。一実施例において、第2の色空間36は、本明細書中でLab色空間300と称し、図4に示すCIELAB色空間である。言い換えれば、第2のピクセルクラウド34は、それらのL、a、b値に従って再配置される原画像16内のそれぞれのピクセル50である。原画像16の色覚の変更は、第2の色空間36において定量的に行われる。
【0021】
図4を参照すると、Lab色空間300は、第1の端部304(白)と第2の端部306(黒)との間に、明度係数を表す第1の軸302(L)を有している。Lab色空間300は、緑から赤への連続体を表す第2の軸310(a)を有し、緑は負の方向(端部314)にあり、赤は正の方向(端部312)にある。Lab色空間300は、青から黄への連続体を表す第3の軸320(b)を有し、青は負の方向(端部324)にあり、黄は正の方向(端部326)にある。第2の色空間36はまた、1931年に国際照明委員会(CIE)によって作成されたCIE XYZ色空間であってもよい。
【0022】
図2のブロック106により、図1を参照すると、コントローラCは、第2の色空間36内の少なくとも1つの選択ゾーンZ(以下、「少なくとも1つ」を省略)を選択又は識別するよう構成される。選択ゾーンZは、第2の色空間36(例えば、Lab色空間300)におけるそれらの位置又は座標(L,a,b値)に基づいて選択され、強調の対象となるピクセル群又はピクセルのサブセットである。選択は、個々のL、a、b値、又は値の組み合わせに基づいてもよい。例えば、眼E内の関心領域が緑色染料に曝露されている場合、選択ゾーンZは、明るい緑色がかったピクセルである(例えば、Lが10より大きく、αが負の無限遠から35までの範囲内にある等の基準を用いる)ピクセルの選択されたサブセットとなる。例えば、ここで、aの値は、以下の式に従って増加してもよい。[(a-a)×利得係数+a]であり、ここで、aは、選択ゾーンZの初期値(例えば、上記で挙げたような35等)である。眼Eの関心領域が青色染料に曝露されている場合、選択ゾーンZは、青みがかったピクセルであるピクセルのサブセットとなる。例えば、ここで、b値は、係数(利得)によって増加してもよい。
【0023】
一旦選択されると、第2の色空間36(例えば、Lab色空間300)内の選択ゾーンZの位置は、選択ゾーンZの色を強調する(第2の色空間36内のより深い色合いに移動することによって)ため、又はコントラストを加える(第2の色空間36内の対照的な色合いに移動することによって)ために変更される。ここで図5を参照して、選択ゾーンZを、Lab色空間300内の元の位置330に2次元図で示している。上述したように、Lab色空間300は、緑から赤への連続体を表す第2の軸310(a)と、青から黄への連続体を表す第3の軸320(b)とを有している。図4及び5の矢印A1及びA2によって示すように、選択ゾーンZは、選択ゾーンZの色を強調するために、第2の軸310(a)及び/又は第3の軸320(b)に沿って、修正位置L1又は修正位置L2に移動又は平行移動されてもよい。矢印A1及びA2は、第2の軸310(a)及び第3の軸320(b)と平行である必要はない。代替として、修正位置L2は、第2の軸310(a)及び第3の軸320(b)のうちの一方に沿って元の位置330を回転させることによって取得されてもよい。修正位置L2は、第2の色空間36内のそれぞれの軸のうちの一方に対する元の位置330の鏡像であってもよい。
【0024】
ブロック106は、更に、選択ゾーンZ内のピクセルの選択されたサブセットのL、a、b値を修正された位置で更新して、第2の色空間36(図1参照)内の修正された第2のピクセルクラウド37を取得することを含む。更新は、選択ゾーンZのL、a、又はb値のいずれかに対して行われてもよい。システム10は、パラメータ化された式を採用して、選択ゾーンZの位置を変更してもよい。
【0025】
図2のブロック108により、コントローラCは、第2の色空間36内の修正された第2のピクセルクラウド37を第1の色空間32内の第3のピクセルクラウド38に変換するよう構成される。第3のピクセルクラウド38は、眼12の強調画像を形成するために用いられる。システム10を適用する幾つかの臨床シナリオを、図6~9を参照して以下に説明する。それぞれの場合においてシステム10は上で説明した一般的な実装に従うが、各実施例は、対応する臨床シナリオに対する強調ニーズに合致する特定の表現を有していてもよい。
【0026】
眼Eの強調画像400の略図を図6に示す。ビトロ網膜手術中、空気を眼Eに注入して、眼12の後眼部から眼内液を除去する場合がある。眼圧は、例えば、網膜を所定位置に一時的に保持する等の様々な理由のために、この空気流体交換中に維持される。この空気流体交換中、血管402内のコントラストが失われる。眼E内の1つ以上の血管402の赤みがかった陰影に一致するピクセルのサブセットとして選択ゾーンZ1を選択することによって、血管402の赤色が強調され、空気流体交換中のコントラストの損失を補償する。
【0027】
幾つかの実施形態において、図6を参照すると、選択ゾーンZ2(図6における陰影)は、白色、アイボリー、及びクリーム色の陰影を含むが、それらに限定されない、元々比較的淡色の眼Eの領域404に対応する。他の実施形態において、選択ゾーンZ2は、眼E内に浮遊し、経時的に淡色又は白色となる粒子406に対応する。方法100は、選択ゾーンZ2を所定の色でデジタル処理で着色し、それによって強調画像400内に「仮想」色素を提供するよう用いられてもよい。従って、強調画像400は、原画像16(図1参照)の残りの部分におけるコントラストに影響を及ぼすことなく、選択ゾーンZ2内に選択的な強調を提供する。
【0028】
図1のシステム10は、複数のデータリポジトリ44を有するデータ構造42を介して、リアルタイムで目標色強調を提供するよう用いられてもよい。図1を参照すると、各データリポジトリ44は、第1の色空間32内の元のピクセル色を表す第1のリスト46と、第1の色空間32内の強調されたピクセル色を表す第2のリスト48とを有している。各データリポジトリ44は、複数のピクセル18のそれぞれのピクセル50を表す。第1のリスト46は、均等に離間された格子点においてRGB 3D立方体からサンプリングされるピクセル色(元のRGBトリプレット)のセットであってもよい。第1のリスト46は、元のピクセル色をインデックス付けするために用いられてもよい。第2のリスト48は、ブロック106ごとの強調後に追加される更新又は強調されたピクセルRGB色(修正されたRGBトリプレット)のセットである。複数のピクセル18のそれぞれに対する色強調は、予め計算され、データ構造42に符号化されてもよい。言い換えれば、強調されたピクセル色は、各データリポジトリ44の第2のリスト48内にそれぞれ格納されてもよい。コントローラCは、データ構造42を用いて、原画像16をリアルタイムで連続的に更新するよう適合されてもよい。
【0029】
図1のシステム10は、眼科処置中に染料標識強化を提供するよう用いられてもよい。インドシアニングリーン、ブリリアントブルー染料、又はトリパンブルー染料等の様々な染料が、眼科処置中の可視化を向上させるために用いられる。用いられている各染料に対して、コントローラCは、その特定の染料色の第2の色空間36における位置を識別し、手術場面内に存在する他の色を変更しない方法で、強度を増幅するよう構成される。
【0030】
加えて、図1のシステム10は、染料の使用を最小限にし、染色のための待ち時間を短縮するよう採用されてもよい。幾つかの染料は、好ましくない副作用をもたらすか、又は特定の細胞に対して毒性である場合がある。従って、外科医は、色及び膜の硬化に関して所望の効果を得るのに必要な時間よりも長く染料を眼内に放置したくない場合がある。図7は、例示的な染料についての(眼12の領域における)染料濃度の例示的なトレース450を示している。縦軸Yは、染料の飽和率を示し、横軸は、曝露時間tを示している。染料は、第1の時間T1において部分的に吸収され、第2の時間T2(飽和時間)において完全に吸収され、第3の時間T3において退色し始めるか、又は濃度を失い始める。眼12への染料の曝露を最小限にするために、第1の時間T1における原画像16は、第2の時間T2における染色のより濃い色を待つ必要なく、(方法100の実行を介して)強調される。
【0031】
更に、システム10は、退色する染料を強調することによって、各染料注入/染色の有用な持続時間を延長するよう採用されてもよい。例えば、第3の時間T3における原画像16は、第2の時間T2において最初に生じるより深い染色を反映するよう強調されてもよい。
【0032】
図8を参照すると、眼Eの強調画像500を示している。ここで、選択ゾーンZ3(図8における斑点)は、眼Eの網膜上膜502に対応している。網膜上膜502は、瘢痕組織に類似する膜の成長を伴う。その成長は中心視力を阻害する可能性があるため、網膜上膜502は、多くの場合、インビトロ網膜手術において除去される。剥離処置の一部として、眼科外科医は、高倍率下で器具504(例えば、鉗子)を用いて、網膜上膜502を把持し、穏やかに剥離する。網膜上膜502が剥離されると、血管506が網膜表面508の下に見えるようになる。網膜上膜502は、この繊細な動作中の可視化を支援するよう、染料(例えば、インドシアニングリーン)で染色される。選択ゾーンZ3(図2のブロック106による)は、染料の染色に対応するよう選択され、他の特徴の色を変化させることなく、網膜上膜502の可視化を選択的に向上させる。
【0033】
システム10は、眼12の天然水晶体が除去され、眼内レンズと置換される白内障手術において採用されてもよい。図9は、眼Eの嚢膜602、手術器具604、及び血管606を示す、強調画像600の略図である。白内障手術の間、染料は、嚢膜602による選択的吸収のために適用されてもよい。選択ゾーンZ4は、ここで、嚢膜602によって吸収される染料染色に合致するよう選択される。嚢膜602の目標色強調は、データ構造42を採用することによってリアルタイムで実施されてもよい。システム10はまた、「赤色反射効果」を強化又は高めるよう採用されてもよい。白内障手術において、外科医は、時として、患者の瞳孔が後方照明されて、より大きなコントラストを提供し、眼の嚢膜及び水晶体を可視化する「赤色反射効果」に頼ることがある。言い換えれば、瞳孔を通過する光は、網膜から視野開口に反射されて戻り、赤みがかった輝きを生じる。ここで、選択ゾーンZは、赤みがかった輝きを選択的に強調するために、それに対応するよう選択される。
【0034】
強調を実施するために用いられる正確なパラメータは、患者の眼の病状、及び外科医による異なる光源の使用等の理由により、異なる色温度及び色設定を有する原画像におけるホワイトバランス設定に依存してもよい。幾つかの実施形態において、Lab空間300への変換後、ピクセル選択基準はL、a、b値に基づき、修正は、(a、b)成分及び/又はL、即ち、(a、b)成分のみ、若しくはL成分のみ、或いは両方に対して行われる。赤色反射強調の場合、新しい輝度値(新規L)は、以下の式に従って、R、G、及びBの組み合わせを用いて取得されてもよい。R×重量+(G×0.8374+B×0.1626)×(1-重量)、ここで、重量は、0.2989(変化なし)~1.0(赤色反射の最大強調)の間であってもよい。
【0035】
血管強調の場合、各ピクセルは、赤を強調し、緑を減衰させることによって、その赤色度に応じて更新されてもよい(例えば、a>0の場合、a=a×利得1であり、a<0の場合、a=a×利得2であり、ここで、利得1は2.0であることができ、利得2は0.5であることができる)。グレア低減のために、Lのピクセル強度は、式、例えば、新規L=L×係数、及び係数=1-a×exp((L-100)/a)を用いて、係数によって低減されてもよい。値の例は、以下:a=0.25、a=25であってもよく、Lの値が高いほど低減が大きい。白色染料強調の場合、色距離(color distance)と称する測定値が定義されてもよく、これは、以下のように、ピクセルの色度が基準(白色)点からどのように異なるかを説明する。
【数1】
ここで、x及びyは、正規化されたX及びYであり、各ピクセルの強度は、以下の例示的な式を用いて、白色点までのその色距離に基づいて変化する:係数=(1+a×exp(-(color_distance/a)/(1+a)。ここで、例えば、a=9、a=0.1であり、白色点からのピクセルの色距離が大きくなるにつれて、より高い強度低減を伴う。色距離は、同様に、他の基準色度座標に従って計算されてもよい。色距離に従う強度低減変化を説明する他の式が用いられてもよい。
【0036】
仮想染料の場合、各ピクセルの色は、以下のように特定されてもよい。
【数2】
ここで、x及びyは、正規化されたX及びY値であり、x_white及びy_whiteは、所定の白色染料色(白)である。仮想染料が青(x_blue、y_blue)である場合、基準までのその色距離に応じて、以下の例示的な式を用いて新しい座標を得てもよい。新規x=係数×x_blue+(1-係数)×x、及び、新規y=係数×y_blue+(1-係数)×yここで、係数=a×exp(-(color_distance/a)であり、a=0.25、a=0.05である。
【0037】
図1の原画像16は、眼12が撮像されていた場合の照明条件に依存する第1の色かぶりを示してもよく、即ち、第1の色かぶりは、入力光源(例えば、D50)によって誘発される。様々な光源の特性は、当該技術分野においてスペクトル的に定義される。例えば、光源級数Dは、隣接する数字が光源の相関色温度(CCT)を示す自然昼光を表し、例えば、光源D50は、5000KのCCTを有し、光源D65は、6500KのCCTを有する。光源級数Fは、様々な種類の蛍光照明を表し、例えば、光源F2は、冷白色蛍光を表す一方で、光源F11は、狭帯域蛍光を表す。任意に、コントローラCは、色適応変換(CAT)を用いて、第1の色かぶりを、強調画像のための出力光源(例えば、D65)によって誘発される第2の色かぶりに変更するよう適合されてもよい。Bradford変換、Bartleson変換、及びSharp変換を含むがこれらに限定されない、当業者に利用可能な任意の色順応変換(CAT)行列を用いて、様々な光源間の変換を行ってもよい。
【0038】
システム10の様々なコンポーネントは、図1に示すネットワーク52を介して通信するよう物理的にリンクされるか、又は構成されてもよい。ネットワーク52は、例えばローカルエリアネットワークの形態のシリアル通信バスなどの種々な方法で実装されたバスであってもよい。ローカルエリアネットワークは、コントローラエリアネットワーク(CAN)、コントローラエリアネットワークウィズフレキシブルデータレート(Controller Area Network with Flexible Data Rate、CAN-FD)、イーサネット、bluetooth(登録商標)、WIFI、及び他のデータの形態を含むが、これらに限定されなくてもよい。ネットワーク52は、複数の装置を無線分散方式を用いて繋ぐ無線ローカルエリアネットワーク(LAN)、幾つかの無線LANを接続する無線メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、又は近隣の市町村等の広い地域をカバーする無線ワイドエリアネットワーク(WAN)であってもよい。
【0039】
図1のコントローラCは、可視化モジュール14の一体部分又は動作可能に接続される別個のモジュールであってもよい。コントローラCは、コンピュータによって(例えば、コンピュータのプロセッサによって)読み取られてもよいデータ(例えば、命令)を提供することに関係する非一時的(例えば、有形)媒体を含む、コンピュータ読取可能媒体(プロセッサ読取可能媒体とも称する)を含んでいる。かかる媒体は、不揮発性媒体及び揮発性媒体を含むが限定されない多くの形態をとっていてもよい。不揮発性媒体は、例えば、光ディスク又は磁気ディスク及び他の永続的メモリを含んでいてもよい。揮発性媒体は、例えば、メインメモリを構成してもよいダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)を含んでいてもよい。かかる命令は、コンピュータのプロセッサに結合されるシステムバスを備える配線を含む、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバを含む1つ以上の伝送媒体によって伝送されてもよい。コンピュータ読取可能媒体の幾つかの形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、他の光媒体、パンチカード、紙テープ、他の孔のパターンを有する物理媒体、RAM、PROM、EPROM、フラッシュEEPROM、他のメモリチップ若しくはカートリッジ、又は他のコンピュータが読み取ることができる媒体を含む。
【0040】
本明細書中に説明するルックアップテーブル、データベース、データリポジトリ、又は他のデータストアは、階層型データベース、ファイルシステム内の一式のファイル、独自形式のアプリケーションデータベース、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)等を含む、様々な種類のデータを格納、アクセス、及び取得するための様々な種類の機構を含んでいてもよい。それぞれのかかるデータストアは、上述したようなコンピュータオペレーティングシステムを採用するコンピューティングデバイス内に含まれてもよく、様々な方法のうちの1つ以上でネットワークを介してアクセスされてもよい。ファイルシステムは、コンピュータオペレーティングシステムからアクセス可能であってもよく、様々な形式で格納されるファイルを含んでいてもよい。RDBMSは、上述のPL/SQL言語等のストアドプロシージャを作成、保存、編集、及び実行するための言語に加えて、構造化照会言語(Structured Query Language、SQL)を採用してもよい。
【0041】
詳細な説明及び図面又は各図は、本開示をサポートし、説明するものであるが、本開示の適用範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。特許請求の範囲に記載された開示を実施するための最良の態様及び他の実施形態の幾つかを詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲において定義された開示を実施するための様々な代替的な設計及び実施形態が存在する。更に、図面に示した実施形態又は本明細書で言及した様々な実施形態の特徴は、必ずしも互いに独立した実施形態として理解されるべきではない。むしろ、ある実施形態の例のうちの1つにおいて説明された特性のそれぞれは、他の実施形態からの1つ以上の他の望ましい特性と組み合わせることが可能であり、その結果、言葉で説明されていない、又は図面を参照することによって説明されていない、他の実施形態を得ることができる。従って、かかる他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の枠組み内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の原画像の可視化を向上させるためのシステムであって、
光センサを有する可視化モジュールと、
前記可視化モジュールと通信し、プロセッサと、命令が記録されている有形の非一時的メモリとを有するコントローラと、を備え、
前記命令の実行により、前記コントローラに、
前記可視化モジュールの出力を第1の色空間における第1のピクセルクラウドに変換することと、
前記第1のピクセルクラウドを第2の色空間における第2のピクセルクラウドにマッピングすることと、
前記第2のピクセルクラウドにおける少なくとも1つの選択ゾーンを識別することであって、前記少なくとも1つの選択ゾーンは、視覚的強調が所望される前記眼の一部であるように、識別することと、
前記少なくとも1つの選択ゾーンを、元の位置から前記第2の色空間における修正された位置に移動させることであって、前記修正された位置は、前記第2の色空間におけるそれぞれの軸に沿った、前記元の位置の鏡像である、移動させることと、
修正された第2のピクセルクラウドを取得するよう、前記第2の色空間における前記第2のピクセルクラウドを更新することと、
前記第2の色空間における前記修正された第2のピクセルクラウドを前記第1の色空間における第3のピクセルクラウドに変換することと、
前記修正された第2のピクセルクラウドに部分的に基づいて、前記眼の強調画像を形成することであって、前記強調画像は、前記少なくとも1つの選択ゾーンにおいて選択的な視覚的強調を提供するように、形成することと、
を行わせる、システム。
【請求項2】
前記第1の色空間はRGB色空間であり、
前記第2の色空間は、明度係数を表す第1の軸(L)と、緑から赤への連続体を表す第2の軸(a)と、青から黄への連続体を表す第3の軸(b)とを有するCIELAB色空間(Lab)である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、複数のデータリポジトリを有するデータ構造を介して前記原画像をリアルタイムで連続的に更新するよう適合され、
前記複数のデータリポジトリのそれぞれは、前記第1の色空間における元のピクセル色を表す第1のリストと、前記第1の色空間における強調されたピクセル色を表す第2のリストとをそれぞれ有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記光センサは、複数のセンサを含み、
前記可視化モジュールからの前記出力を変換することは、前記光センサにおける前記複数のセンサのそれぞれのスペクトル感度に部分的に基づく、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記原画像は、入力光源によって誘発される第1の色かぶりを示し、
前記コントローラは、前記強調画像が第2の色かぶりを示すように、前記第1の色かぶりを前記第2の色かぶりに変換するよう色順応変換を適用するよう適合される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記眼内の1つ以上の血管に対応するように、前記少なくとも1つの選択ゾーンを選択するよう適合され、前記眼の前記原画像は、空気流体交換中に撮影され、
前記コントローラは、前記空気流体交換中に前記1つ以上の血管におけるコントラストの損失を補償するように、前記原画像を強調するよう適合される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの選択ゾーンは、比較的淡色の前記眼の領域に対応し、前記眼の前記強調画像は、前記領域を所定の色でデジタル処理で着色することによって仮想染料を提供する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの選択ゾーンは、前記眼内に浮遊し、経時的に比較的淡色になる粒子に対応し、前記眼の前記強調画像は、前記粒子を所定の色でデジタル処理で着色することによって仮想染料を提供する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、選択的吸収を介して前記眼の領域によって吸収される染料の染色に対応するように、前記少なくとも1つの選択ゾーンを選択するよう適合され、
前記眼の前記強調画像は、前記少なくとも1つの選択ゾーンにおいて色強調を提供する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記染料が部分的にのみ吸収される場合に、前記眼の前記原画像を第1の時間において強調するよう適合される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記原画像は、前記眼の網膜上膜の剥離中に取得される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記染料はインドシアニングリーンである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記染料が退色し始める第3の時間において前記眼の前記原画像を強調するよう適合され、前記染料は、前記第3の時間よりも短い第2の時間において完全に吸収される、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
記染料は、前記眼の嚢膜によって吸収され、前記強調画像は、前記嚢膜の強調された可視化を提供する、
請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
可視化モジュールと、プロセッサ及び有形の非一時的メモリを有するコントローラとを有するシステムにおいて眼の原画像を視覚的に強調するための方法であって、
前記コントローラを介して、前記可視化モジュールの出力を第1の色空間における第1のピクセルクラウドに変換することと、
前記コントローラを介して、前記第1のピクセルクラウドを第2の色空間における第2のピクセルクラウドにマッピングすることと、
前記コントローラを介して、前記第2のピクセルクラウドにおける少なくとも1つの選択ゾーンを識別することであって、前記少なくとも1つの選択ゾーンは、視覚的強調が所望される前記眼の一部であるように、識別することと、
前記コントローラを介して、前記少なくとも1つの選択ゾーンを、元の位置から前記第2の色空間における修正された位置に移動させることであって、前記修正された位置は、前記第2の色空間におけるそれぞれの軸に沿った、前記元の位置の鏡像であるように、移動させることと、
前記コントローラを介して、修正された第2のピクセルクラウドを取得するよう、前記第2の色空間における前記第2のピクセルクラウドを更新することと、
前記コントローラを介して、前記第2の色空間における前記修正された第2のピクセルクラウドを前記第1の色空間における第3のピクセルクラウドに変換することと、
前記第3のピクセルクラウドに部分的に基づいて、前記眼の強調画像を形成することであって、前記強調画像は、前記少なくとも1つの選択ゾーンにおいて選択的な視覚的強調を提供する、ことと、を含む、
方法。
【請求項16】
RGB色空間となるよう前記第1の色空間を選択することと、
明度係数を表す第1の軸(L)と、緑から赤への連続体を表す第2の軸(a)と、青から黄への連続体を表す第3の軸(b)とを有するCIELAB色空間(Lab)となるよう前記第2の色空間を選択することと、
を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記眼の領域によって吸収される染料の染色に対応するよう、前記少なくとも1つの選択ゾーンを選択することであって、前記染料は第1の時間において部分的にのみ吸収される、ことと、
記第1の時間において前記眼の前記原画像を強調することと、を更に含む、
請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】