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  • 特表-低悪性度の腫瘍の代謝標的化 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】低悪性度の腫瘍の代謝標的化
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20231219BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61N 7/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61K49/00
A61K45/00
A61P35/00
A61P25/00
A61N7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532510
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 US2021060998
(87)【国際公開番号】W WO2022115695
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/119,061
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】521516260
【氏名又は名称】ソンエーエルエーセンス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート エル.マークス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C160
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZB26
4C084ZC78
4C085HH11
4C085JJ01
4C085KA27
4C085KB45
4C085LL18
4C160JJ33
(57)【要約】
本開示は、5-アミノレブリン酸又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを対象に投与し、組織の蛍光を測定することを含む、対象における低悪性度の悪性組織を検出及び治療する方法を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における低悪性度の悪性組織を検出し、治療するための方法であって、
a)有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを対象に投与すること;
b)対象において組織の蛍光を測定すること;
c)低悪性度の悪性組織を治療すること
を含み、ここで、低悪性度の悪性組織における蛍光は、隣接組織における蛍光よりも高い、方法。
【請求項2】
低悪性度の悪性組織が、以前にWHO悪性度I又は悪性度II腫瘍として分類されていた、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低悪性度の悪性組織が、侵攻性、進行性、又は再発性になっている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
測定が、蛍光画像化用に修飾された外科用顕微鏡を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
測定が、約610nm~約720nmの蛍光発光を測定することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
低悪性度の悪性組織が、脳、乳房、結腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、又は子宮の組織である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
低悪性度の悪性組織が神経膠腫である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
神経膠腫が、乏突起膠腫、びまん性星細胞腫、視経路神経膠腫、毛様細胞性星細胞腫、上衣下巨細胞星細胞腫、又は多形性黄色星細胞腫を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項9】
低悪性度の悪性組織の治療が音波力学療法を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
低悪性度の悪性組織の治療が手術を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
低悪性度の悪性組織の治療が放射線を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
5-アミノレブリン酸が、経口製剤の経口投与、又は静脈内製剤の静脈内投与によって、対象における低悪性度の悪性組織に提供される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
5-アミノレブリン酸が静脈内投与によって提供される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
対象がヒトである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
有効量の5-ALAが、約1mg/kg体重~100mg/kg体重である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
有効量の5-ALAが、約10mg/kg体重~75mg/kg体重である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
対象の低悪性度の悪性組織を検出するためのキットであって、有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)、又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステル、及び使用説明書を含むキット。
【請求項18】
対象における低悪性度の悪性組織を検出するためのシステムであって、以下を含むシステム:
a)有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル;及び
b)蛍光検出デバイス
を含むシステム。
【請求項19】
低悪性度の悪性組織が、以前にWHO悪性度I又は悪性度II腫瘍として分類されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
低悪性度の悪性組織が侵攻性、進行性、又は再発性になっている、請求項18又は19に記載のシステム。
【請求項21】
蛍光検出デバイスが、蛍光イメージング用に修飾された外科用顕微鏡を含む、請求項18~20のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に提供される開示は、一般に、医学的診断及び治療に関する。より詳細には、本開示は、超音波及び超音波増感剤を用いる医学的治療に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘマトポルフィリン及びその誘導体は、1942年に腫瘍細胞において優先的に蓄積すると記載された(H. Auler et al., Z. Krebsforsch. (1942) 53:65-68)。本化合物の蛍光特性は、腫瘍組織を標識するために、手術補助として、及び診断として使用される(R. Vanseviciute et al., Medicina (2014) 50:137-43; J. Zhang et al., Acta Pharm Sinica B (2018) 8:137-46)。1972年に、ヘマトポルフィリンを用いて、酸素の存在下で腫瘍細胞を光に選択的に感作することができ(「光力学効果」)、その結果、腫瘍の大きさが減少することが示された。この方法は、現在、光力学療法として知られている(I. Diamond et al., Lancet (1972) 2:1175-77)。ほとんどの生物のヘマトポルフィリンはヘム及び関連分子に変換される。ヘマトポルフィリンは、鉄の欠乏又は代謝酵素の機能不全により、ある種の腫瘍組織に蓄積すると考えられている(W. Song et al., Anticancer Res (2011) 31:39-46; C.J. Gomer et al., Cancer Res (1979) 39:146-51)。これにより、光を用いて腫瘍細胞を選択的に破壊することが可能となり、健康な近傍の組織は比較的影響を受けない。また、ヘム経路の最初の運命決定分子である外因性5-アミノレブリン酸(「5-ALA」)を投与すると、光感作性ポルフィリンプロトポルフィリン-IXが蓄積し、数時間以内に組織の光感作を可能にすることも発見された(C. Perotti et al., Br J Cancer (2004) 90:1660-65)。しかしながら、光線力学療法は組織の混濁により制限され、体表面又は内腔からアクセスできない効果的な治療腫瘍は、腫瘍部位への外科的アクセスを必要とすることがある。
【0003】
音波力学療法(「SDT」)は、超音波増感剤で感作した後、集束超音波(FUS)を用いて細胞を破壊する方法である。作用メカニズムは決定的には決定されていないが、キャビテーションによって生成される熱効果及び/又は一重項酸素に起因すると考えられている。超音波は、光よりもはるかに遠い距離まで組織を透過することができ、非侵襲的な治療を受けやすくする。驚くべきことに、プロトポルフィリン-IXはまた、効果的なソノセンシタイザー(N. Yumita et al., Jpn J Cancer Res (1989) 80(3):219-22)であり、そうでなければ効果的ではない条件下での超音波による細胞の破壊を可能にすることが発見された。この場合も、作用機序は不明であるが、一重項酸素生成の結果であると仮定されている。
【0004】
現在までに、多くのインビトロ及びインビボ実験が報告されているが、臨床試験の結果はない(H. Hirschberg et al., Ther Deliv (2017) 8:331-42)。例えば、N.Yumitaら(前出)は、15、30又は60秒間、1.27、2.21又は3.18W/cmの強度でヘマトポルフィリン(10、25、又は50μg/mL)及び超音波(1.92MHz)を用いて、SDTがマウス肉腫180又はラット腹水肝癌130細胞に及ぼす影響を試験管内で調べた。ヘマトポルフィリンを、超音波適用の15、30、又は60秒前に細胞に適用した。Yumitaは、トリパンブルー色素排除により測定したところ、60秒間の超音波単独で有意な数の細胞(肉腫180及び腹水肝がんでそれぞれ16%及び17%)が損傷したと報告した。より高い強度(2.21W/cm:71%及び75%;3.18W/cm:79%及び86%)で多くの細胞が損傷を受けた。ヘマトポルフィリン(50μg/mL)を添加すると、1.27又は3.18W/cm(67%及び98%)への曝露後に実質的に多くの肉腫細胞が損傷を受けたが、2.21及び3.18W/cm(95%及び96%)ではより多くのAH細胞が損傷を受けた。統計学的に有意な細胞損傷も、ヘマトポルフィリン25μg/mL、超音波強度3.18W/cm(98%及び96%)を用いて報告され、これは50μg/mLを用いた細胞破壊と同等であった。
【0005】
低悪性度の悪性腫瘍などの腫瘍を検出し分類する方法は当該技術分野で公知であるが、侵攻性、進行性、又は再発性となった低悪性度の悪性腫瘍を決定し、治療することは困難である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、低悪性度の悪性組織を検出し、治療するための方法が提供される。
【0007】
一態様は、対象における低悪性度の悪性組織を検出及び治療する方法であって、該方法は、(a)有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを対象に提供する工程;(b)対象における組織の蛍光を測定する工程;ならびに(c)低悪性度の悪性組織を治療する工程を含み、低悪性度の悪性組織における蛍光は、隣接組織における蛍光よりも高い。
【0008】
別の態様は、対象中の低悪性度組織を検出するためのキットであり、キットは、有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、及び使用説明書を含む。
【0009】
別の態様は、対象における低悪性度の悪性組織を検出するためのシステムであって、該システムは、(a)有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル;及び(b)蛍光検出デバイスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、1年以内に進行し、2回目の切除を必要とした、毛様細胞性星細胞腫(WHO悪性度Iの腫瘍)である光学経路神経膠腫の外科的切除中に蛍光画像が得られたことを示す。ピンク色の腫瘍蛍光は、特殊な撮像デバイスを使用することなく観察された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様は、対象における低悪性度の悪性組織を検出及び治療する方法であって、該方法は、(a)有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを対象に提供する工程;(b)対象における組織の蛍光を測定する工程;ならびに(c)低悪性度の悪性組織を治療する工程を含み、低悪性度の悪性組織における蛍光は、隣接組織における蛍光よりも高い。世界保健機関(WHO)腫瘍悪性度のような分類で悪性組織を病期分類する技術は当該技術分野で知られているが、より侵攻性の腫瘍に変化したWHO悪性度I又は悪性度IIの腫瘍などの低悪性度腫瘍を決定し、治療することは困難である。現在開示されている方法は、低悪性度の悪性組織が生化学的に変化して、5-ALAを取り込む及び/又は蓄積するか、従って、高悪性度腫瘍のような生化学的レベルで挙動するかを決定することによって、これら及び他の必要性を満たす。
【0012】
5-ALAの有効量は、標準的な方法によって決定することができる。一般に、有効量は、正常組織を実質的に染色することなく、又は許容できないレベルの毒性を誘導することなく、治療される悪性組織を実質的に染色するのに十分な量であろう。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、超音波処理は、キャビテーション及び微小気泡発生を引き起こし、その崩壊は、組織内で約300nm~700nmの波長を有する光子を生成し、これらの光子は、プロトポルフィリン-IXを活性化し、組織破壊をもたらすと考えられる。
【0013】
本明細書において値の範囲が提供される場合、文脈が別段の明確な指示をしない限り、各介在値は、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限及び下限と、その記載された範囲内の他の記載又は介在値との間に、開示内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲に含めることができ、また、記載された範囲内のいずれかの具体的に除外された制限に従うことを条件として、開示内に包含される。記載された範囲が制限の一方又は両方を含む場合、含まれた制限のいずれか又は両方を除いた範囲も開示に含まれる。
【0014】
本明細書に開示される全ての範囲はまた、そのサブレンジの任意の及び全ての可能なサブレンジ及び組み合わせを包含する。列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分割されることを十分に説明し、可能にするものとして認識することができる。非限定的な例として、本明細書で説明する各範囲は、下部第3、中部第3及び上部第3などに容易に分解することができる。当業者には理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」等の全ての言語は、列挙された数を含み、上述のように後にサブレンジに分解することができる範囲を指す。最後に、当業者に理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の物品を有する群は、1、2、又は3個の物品を有する群を指す。同様に、1~5条を有する群は、1、2、3、4、又は5条などを有する群を指す。
【0015】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で説明されている本開示の特定の特徴もまた、単一の実施形態では組み合わせて提供することができることが理解される。逆に、本開示の種々の特徴は、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されるが、別個に、又は任意の適切なサブコンビネーションで提供することもできる。本開示に係る実施形態の全ての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、各組み合わせ及び各組み合わせが個々に明示的に開示されたように、本明細書において開示される。さらに、種々の実施形態及びその要素の全てのサブコンビネーションもまた、本開示によって具体的に包含され、本明細書では、そのようなサブコンビネーションの各々及び全てが、本明細書で個々に明示的に開示されたものとして開示される。
【0016】
悪性組織
悪性組織は、典型的には、腫瘍性又は癌性であるが、一般に、5-ALAを取り込み、プロトポルフィリン-IXを蓄積することができる任意のタイプの組織、例えば、良性腫瘍又は他の望ましくない増殖であり得る。悪性組織は、低悪性度の悪性組織、すなわち、世界保健機関(WHO)の悪性度I又は悪性度IIの腫瘍であり得る。
WHO悪性度I:増殖能が低く、しばしば離散的な性質を有し、外科的切除単独後に治癒の可能性がある病変。
WHO悪性度II:病変は、低分裂活性にもかかわらず一般に自然に浸潤する非定型細胞を示し、局所療法後に悪性度Iの悪性腫瘍よりも頻繁に再発する。
腫瘍の種類によっては、悪性度が高くなる傾向がある。
WHO悪性度III:組織学的に悪性の証拠が認められる病変で、核異型/退形成及び有糸分裂能の亢進を含む;これらの病変は退形成性組織型及び浸潤能を有する;通常、積極的な補助放射線療法及び/又は化学療法で治療される。
WHO悪性度IV:有糸分裂能で壊死しやすい病変で、一般に周囲組織の新生血管分布及び浸潤、頭蓋脊髄播種の傾向、及び急速な術後進行及び致死的転帰を伴う病変;病変は通常、積極的な補助療法、典型的にはStuppプロトコル併用化学放射線療法で治療される。
【0017】
他の悪性組織としては、腫瘍、癌腫、肉腫などが挙げられるが、これらに限定されない。他の腫瘍には、限定されないが、脳腫瘍、神経芽腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、及び軟部組織肉腫などの小児固形腫瘍;頭頸部がんなどの成人によくみられる固形腫瘍(例えば、浸潤性又は転移性扁平上皮がん、唾液腺腫瘍、鼻咽頭がん、口腔がん、喉頭がん及び食道腫瘍);泌尿生殖器がん(例えば、尿道がん、尿管がん、腎細胞がん、膀胱がん及び上皮内膀胱がん、前立腺の局所進行がん又は転移性がん、膀胱がん、腎がん、子宮がん、卵巣がん、精巣がん、子宮がん、子宮がん、子宮がん、子宮頸がん及び子宮がん);直腸がん、及び結腸がんが含まれるが、これらに限定されない。肺がん(中皮腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平上皮肺がんを含む);乳がん;胃がん、食道がん、結腸がん、胆管がん、肝がん、膵腺がん;黒色腫、浸潤性基底細胞がん、及びその他の皮膚がん;胃がん、脳がん、肝がん、及び甲状腺がんが含まれる。例えば、低悪性度の悪性組織は、脳、乳房、結腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、又は子宮の組織であり得る。
【0018】
本開示の方法は、多形性膠芽腫(低悪性度膠芽腫を含む)、光経路神経膠腫、びまん性内在性橋神経膠腫、星状細胞腫、上衣腫、髄芽腫、乏突起膠芽腫、血管芽腫、ラブドイド腫瘍、他の癌(例えば、乳腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮肺癌、転移性悪性黒色腫、及び前立腺癌を含むが、これらに限定されない)、髄膜腫、原発性下垂体悪性腫瘍、悪性神経鞘腫瘍、及び神経線維腫からの脳転移を含む)である低悪性度の悪性組織の種類を検出し、治療するのに有用である。
ある例では、低悪性度の悪性組織は神経膠腫である。例えば、低悪性度の悪性組織は、乏突起膠腫、びまん性星細胞腫、視経路神経膠腫、毛様細胞性星細胞腫、上衣下巨細胞星細胞腫、又は多形性黄色星細胞腫であり得る。
【0019】
5-アミノレブリン酸
5-ALAは、任意の薬学的に許容される製剤で提供することができ、遊離酸、薬学的に許容される塩、又は薬学的に許容されるエステルとして提供することができる。製剤Gliolan(登録商標)は市販されている。
【0020】
活性剤の塩、エステル、アミド、プロドラッグ及び他の誘導体は、合成有機化学の当業者に公知の標準的手順を用いて調製することができ、例えば、1992年3月のAdvanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms and Structure, 4th Ed. N.Y. Wiley-Interscienceに記載されている。薬学的に許容される塩は、親化合物の生物学的有効性及び特性を保持する塩であり、生物学的又はその他の望ましくない塩である。5-ALAは、アミノ基及び/又はカルボキシル基の存在により、酸及び/又は塩基塩を形成することができる。そのような塩の多くは、例えば、国際公開第87/05297号に記載されているように、当該技術分野で公知である。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸で形成することができる。塩を誘導することができる無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。塩が誘導され得る有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機及び有機塩基で形成することができる。塩を誘導することができる無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが挙げられる。塩を誘導することができる有機塩基としては、例えば、第一級、第二級及び第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂など、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンが挙げられる。薬学的に許容されるエステルには、酸性基上の水素をアルキル基で置換することによって、例えば酸基をアルコール又はハロアルキル基と反応させることによって得られるものが含まれる。エステルの例としては、C(O)OH基上の水素がアルキルで置換されてC(O)O-アルキルを形成するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
いくつかの実施形態において、5-ALAは、ガンマ線照射によって滅菌される(参照により本明細書に組み込まれるUS6335465を参照されたい)。5-ALA製剤は、経口、静脈内、髄腔内、又は腫瘍内に投与することができる。一部の実施形態では、5-ALAは、静脈内投与によって投与される。一部の実施形態では、ガンマ線照射5-ALAは、静脈内投与によって投与される。
【0022】
検出方法
本明細書に記載される低悪性度組織を検出する方法は、有効量の5-ALAを投与し、プロトポルフィリン-IX及び/又は5-ALAの取り込み又は蓄積後に組織の蛍光を検出することを含む。より高い蛍光は、隣接組織におけるより低い蛍光と比較して、低悪性度の悪性組織の存在を示すであろう。一部の実施形態では、5-ALAは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、98、98、100、120、125、150、175、200、300、400、500、600、750、又は少なくとも約1000mg/kgの投与量で投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、約1000、900、800、700、600、500、400、300、250、200、180、175、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、又は20mg/kg以下の投与量で投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、約0.5~約250mg/kgの投与量で投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、1~100mg/kgの投与量で投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、5~90mg/kgの投与量で投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、10~75mg/kgの投与量で投与される。
【0023】
蛍光を測定する方法は、フローサイトメトリー、共焦点顕微鏡法、手術顕微鏡法、及び定量プロトポルフィリン-IX顕微鏡法のような当該技術分野における多数の技術によって公知である。一部の実施形態では、測定は、低悪性度の悪性組織の視覚的検出を可能にする蛍光イメージング用に改良された外科用顕微鏡を含むことができる。Valdes, et al. J. Neurosurg. 2015, 123(3), 771-780; Claus, et al. Neurosurg. Focus 2015, 38(1), E6.を参照されたい。
【0024】
治療方法
一部の実施形態では、本開示の方法は、低悪性度の悪性組織を検出し、その後、検出された組織を処置することを含む。例えば、本方法は、(a)有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを対象に投与する工程;(b)対象中の組織の蛍光を測定する工程;及び(c)低悪性度の悪性組織を治療する工程を含み得、ここで、低悪性度組織中の蛍光は、隣接組織中の蛍光よりも高い。
【0025】
低悪性度の悪性組織の治療は、手術、放射線、又は音波力学療法など、当該技術分野で公知の任意の数の方法によって行うことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、手術を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、放射線を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、音波力学療法を含む。
【0026】
音波感作の方法は当該技術分野で公知であり、例えば、音波力学療法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT/US20/34944に記載されている。ある態様において、超音波力学療法は、5-ALAを投与し、悪性組織を超音波処理することを含む。必要とされる5-ALAの有効量は、当業者に公知の標準的方法によって決定することができ、例えば、PCT/US20/34944の実施例1に記載されているように、マウス又は他の実験モデル対象に腫瘍組織を移植し、異なる量の5-ALA及びFUSで対象を処置することができる。ラットを20mg/kgの5-ALAで処理し、次に6.9W/cm、13.8W/cm、27.6W/cm、又は55.2W/cmで20分間超音波処理することができる。結果は、13.8W/cmでの超音波処理が約2℃から32℃まで腫瘍温度を上昇させたことを示した。27.6W/cmで超音波処理したところ、腫瘍温度は約37℃に上昇した。55.2W/cmで超音波処理したラットは組織損傷を受けた。未処置対照群は32±10mmの正常化腫瘍容積を示したが、5-ALAのみとFUSのみの群は24±6mmの正常化腫瘍容積を示した。実験群はいずれも、対照群と比較して腫瘍増殖を抑制し、生存率を改善した。腫瘍内の複数箇所で超音波処理した群(MP群)は生存率が最も高く、被験者の50%が過去60日間生存した。一部の実施形態では、5-ALAの有効量は、1mg/kg~1,000mg/kgである。一部の実施形態では、5-ALAの有効量は、5mg/kg~750mg/kgである。一部の実施形態では、5-ALAの有効量は、10mg/kg~750mg/kgである。一部の実施形態では、5-ALAの有効量は、20mg/kg~500mg/kgである。一部の実施形態では、5-ALAの有効量は、40mg/kg~500mg/kgである。一部の実施形態では、5-ALAの有効量は、10mg/kg~40mg/kgである。一部の実施形態では、5-ALAの有効量は、10mg/kg~20mg/kgである。
【0027】
一部の実施形態では、5-ALAが悪性組織に取り込まれ、プロトポルフィリン-IXに変換されるのに十分な時間を可能にするために、5-ALAを投与することと悪性組織を超音波処理することとの間に潜伏期間が含まれる。一部の実施形態では、インキュベーション期間は、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約13時間、少なくとも約14時間、少なくとも約15時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間である。少なくとも約20時間、又は少なくとも約24時間である。一部の実施形態では、潜伏期間は、72時間、約72時間未満、約60時間未満、約48時間未満、約36時間未満、約24時間未満、約22時間未満、約20時間未満、約18時間未満、約16時間未満、約15時間未満、約14時間未満、約13時間未満、約12時間未満、約11時間未満、約10時間未満、約9時間未満、約8時間未満、約7時間未満であり、約6時間未満、約5時間未満、約4時間未満、又は約3時間未満である。一部の実施形態では、潜伏期間は、1~72時間である。一部の実施形態では、潜伏期間は、2~48時間である。一部の実施形態では、潜伏期間は、3~36時間である。一部の実施形態では、潜伏期間は、4~24時間である。一部の実施形態では、潜伏期間は、4~18時間である。一部の実施形態では、潜伏期間は、4~24時間である。一部の実施形態では、潜伏期間は、4~18時間である。一部の実施形態では、潜伏期間は、約6時間である。
【0028】
強力な薬剤
一部の実施形態では、本方法は、例えば、プロトポルフィリン-IX及び/又は5-ALAの取り込み又は蓄積を促進又は増加させ、プロトポルフィリン-IX及び/又は5-ALAが代謝される速度を減少させることなどによって、5-ALAの治療効果を増強する増強剤を投与することをさらに含む。このように、増強剤は、所定の効果を得るために必要な5-ALAの量を減少させることができ、又は所定の量の5-ALAから得られる効果を増加させることができ、又はその間に所望の効果及び量の任意の組み合わせを増加させることができる。好適な増強剤としては、例えば、メトトレキサート、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、ビタミンD3及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、D.-F. Yang et al., J Formos Med Assoc (2014) 113(2):88-93; M.-J. Lee et al., PLoS ONE (2017) 12(5):e0178493; and E.V. Maytin et al., Isr J Chem (2012) 52(8-9):767-75を参照されたい。一部の実施形態では、増強剤は、メトトレキサート、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、ビタミンD3及びそれらの誘導体からなる群より選択される。一部の実施形態では、増強剤は、メトトレキサートである。一部の実施形態では、増強剤は、ドキシサイクリンである。一部の実施形態では、増強剤は、ミノサイクリンである。ある態様において、増強剤はビタミンD3である。一部の実施形態では、2種以上の増強剤の組み合わせが使用される。一部の実施形態では、メトトレキサート、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、及びビタミンD3の2種以上の組み合わせが使用される。
【0029】
増強剤は、5-ALAと同時に、又は超音波処理の前の任意の他の時間に投与することができる。増強剤を投与するための最適な時間は、増強剤の選択又は薬剤の組み合わせによって変化し得る。一部の実施形態では、増強剤は、5-ALAと同時に投与される。一部の実施形態では、増強剤は、5-ALAと同じ処方で投与される。一部の実施形態では、増強剤は、異なる時間に投与される。一部の実施形態では、増強剤は、5-ALA投与の前に投与される。一部の実施形態では、増強剤は、最初の超音波処理の少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約13時間、少なくとも約14時間、少なくとも約15時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、少なくとも約24時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、又は少なくとも約6日前に行われる。一部の実施形態では、増強剤は、最初の超音波処理の8日、7日、6日、5日、4日、84時間、72時間未満、約72時間未満、約72時間未満、約60時間未満、約48時間未満、約36時間未満、約24時間未満、約22時間未満、約20時間未満、約18時間未満、約16時間未満、約15時間未満、約14時間未満、約13時間未満、約12時間未満、約11時間未満、約10時間未満で投与され、最初の超音波処理の約9時間未満、約8時間未満、約7時間未満、約6時間未満、約5時間未満、約4時間未満、又は約3時間未満前に行われる。一部の実施形態では、増強剤投与期間は、超音波処理の1~72時間前である。一部の実施形態では、増強剤投与期間は、超音波処理の2時間~5日前である。一部の実施形態では、増強剤投与期間は、超音波処理の18時間~4日前である。一部の実施形態では、増強剤投与期間は、超音波処理の24時間~4日前である。一部の実施形態では、増強剤投与期間は、超音波処理の24~48時間前である。一部の実施形態では、増強剤投与期間は、超音波処理の48~96時間前である。一部の実施形態では、増強剤投与期間は、超音波処理の4~18時間前である。
【0030】
投与される増強剤の量は、当業者によって決定することができ、一般に、選択される増強剤又は薬剤、及び得られる増強効果の程度に依存する。適切な方法には、例えば、限定されるものではないが、モデル動物又は外植組織を用いた細胞培養アッセイ及び/又はインビボ実験が含まれ、様々な量の5-ALA及び/又は増強剤を用いて、超音波処理又は光力学的処理のいずれかを用いて細胞殺傷の程度を決定する。例えば、D.-F. Yang et al., J Formos Med Assoc (2014) 113(2):88-93; M.-J. Lee et al., PLoS ONE (2017) 12(5):e0178493; 及びE.V. Maytin et al., Isr J Chem (2012) 52(8-9):767-75を参照されたい。
【0031】
使用される増強剤の量は、許容できない毒性を経験する量よりも少なく、増強効果を得るのに必要な5-ALAの量を減少させるのに十分な量である。例えば、比較のために、ベースラインとしてセット量の5-ALAを使用して殺された悪性組織又は細胞の量又は数を決定し、次に、異なる濃度又は量の増強剤と組み合わせて、同量の5-ALAを使用して殺傷された悪性組織又は細胞の量又は数を決定することができる。あるいは、異なる濃度又は量の増強剤の存在下で、同じレベルの殺傷を生じるのに必要な5-ALAの量を決定することができる。殺傷された悪性組織又は細胞の量又は数は、細胞計数、腫瘍体積の測定、生体色素排除、及び医学研究において一般的に使用される他の技術によって決定することができる。増強剤で得られる効果は、ベースラインの測定値から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%の5-ALA用量の増加又は減少である。一部の実施形態では、増強剤で得られる効果は、ベースラインの殺傷度の尺度から、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、100、120、125、150、175、200、300、400、又は500%の効果の増加である。一部の実施形態では、増強剤で得られる効果は、ベースライン殺傷速度の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%を得るのに必要な5-ALAの量の減少である。
【0032】
増強剤の量は、増強剤単独の使用のために通常又は典型的に処方される量よりも大きい、同等である、又は少ないことができる。上限は、単独又は5-ALAとの併用で許容できない毒性が発現する量である。下限は、測定可能な増強効果を得るのに必要な量であり、典型的な用量の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、100、120、125、150、175、又は200%であり得る。例えば、限定されるものではないが、メトトレキサートは、超音波処理前の24時間~72時間に約7.5mg~10mgの単回経口投与として投与することができ;ドキシサイクリンは、超音波処理前の2~4日に開始して、200mgの初回負荷用量で開始する100mgの用量で1日2回投与することができ;ミノサイクリンは、超音波処理前の2~4日に開始する50~100mgの用量で1日2回投与することができ;ビタミンD3は、超音波処理の2~4日前に、コレカルシフェロールとして1日10,000~100,000IUの用量で投与することができる。
【0033】
微小気泡
微小気泡(ミクロスフェアとしても知られる)は、約1~5μmのオーダーの直径を有するガス充填球体である。それらのエコー発生特性は、液体で満たされた血管を周囲の組織から区別するのに役立つため、医用超音波検査において造影剤として使用されることがある。例えば、P.A. Dijkmans et al., Eur J Cardiology (2004) 5:245-56を参照されたい。ガスは、しばしば空気、窒素、六フッ化硫黄、又はパーフルオロカーボン、例えばオクタフルオロプロパンである。微小気泡の殻はしばしばアルブミン、ガラクトース、脂質、又はポリマーである。超音波音波場では、微小気泡は低電力で線形振動を受け、高電力では非線形振動を受け、高電力では破断を招く。微小気泡が共振する周波数は、主に、コア内のガスの選択、及びシェルの機械的特性によって決定される。2つ以上の異なるタイプの微小気泡の混合物を使用することができる。本開示の方法の実施において、微小気泡は、そうでなければ得られるであろうよりも低い音響パワーでキャビテーション(従って標的細胞死)を引き起こすために使用することができる。一部の実施形態では、有効量の微小気泡が悪性組織に提供される。
【0034】
微小気泡の有効量は、殺傷の程度のベースライン測定値から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、98、99、100、120、125、150、175、200、300、400、又は500%だけ悪性組織に対する5-ALA及びFUSの直接的細胞毒性効果を増加させるのに十分な量である。あるいは、微小気泡の有効量は、ベースライン測定値から、5-ALA用量及び/又はFUS用量を少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%減少させるのに十分な量として表すことができる。
【0035】
微小気泡は、当該技術分野で公知の方法によって調製することができ、又は市販の供給源から得ることができる。適切な微小気泡としては、限定されるものではないが、Definity(登録商標)ペルフルトレン脂質微小気泡(Lantheus Medical Imaging、N.Billerica、MA)、Levovist(登録商標)脂質/ガラクトースマイクロスフェア(Schering)、Optison(登録商標)微小気泡(GE Healthcare)、及びLumason(登録商標)微小気泡(Bracco Imaging)(Monroe Township、NJ)などの増強された造影超音波微小気泡が挙げられる。一部の実施形態では、微小気泡は、造影超音波微小気泡である。一部の実施形態では、微小気泡は、六フッ化硫黄又はパーフルオロカーボンを含む。ある態様において、ペルフルオロカーボンは、オクタフルオロプロパン又はペルフルオロヘキサンである。一部の実施形態では、微小気泡は、空気又は窒素を含む。一部の実施形態では、微小気泡シェルはアルブミンを含む。一部の実施形態では、微小気泡は、Definity(登録商標)ペルフルトレン脂質微小気泡、Levovist(登録商標)脂質/ガラクトースマイクロスフェア、Optison(登録商標)微小気泡、又はLumason(登録商標)微小気泡である。
【0036】
微小気泡は、対象のシステムにおける微小気泡の半減期に依存して、5-ALA及び/又は増強剤と共に投与することができる。一般に、多くの微小気泡剤は、ヒト循環において非常に短い半減期を有し、従って、典型的には超音波処理の直前に投与される。投与される量及び投与モードは、造影超音波検査の目的のために微小気泡を投与する際に当業者によって使用される量及びモードに類似している。投与される量は、造影剤超音波検査剤として使用又は推奨される量の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、140、150、160、180、200、250、300、350、又は400%である。投与量は、造影剤増強超音波検査剤として使用又は推奨される量の500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、75、70、60、45、40、35、30、25、又は20%以下である。
【0037】
集束超音波(FUS)
悪性組織は、集束超音波(FUS)デバイスを使用して集束超音波エネルギー(「超音波処理」)にさらされる。適切なデバイスには、Exableate(登録商標)モデル4000タイプ2システム(Insightec、Dallas、TX)などが含まれる。タイプ2は、低パワーで「バースト超音波処理」を生成するために低持続時間デューティサイクルを使用する超音波処理モード(すなわち、収束超音波圧波送達モード)で動作することができる専用の1000素子トランスデューサを有する。このバースト超音波処理モードは、超音波誘起キャビテーションよりもはるかに低いエネルギーレベルで微小気泡と組み合わせて使用すると、デバイスが安定なキャビテーションを誘起することを可能にする。微小気泡の振動は、良好に標的化され、一時的で可逆的であるが安定した血液脳関門破壊を誘発する。Exablate(登録商標)デバイスの特徴は、リアルタイムで音響フィードバックをモニターし、安全で効果的なBBB破壊を確保できることである。Exablate(登録商標)デバイスは、磁気共鳴ガイド下集束超音波(MRgFUS)デバイスであり、したがって、リアルタイムMRイメージングを使用して、手技の安全性を評価及びモニタリングする。
【0038】
超音波周波数は、少なくとも約0.1MHz、少なくとも約0.2MHz、少なくとも約0.25MHz、少なくとも約0.3MHz、少なくとも約0.4MHz、少なくとも約0.45MHz、少なくとも約0.5MHz、少なくとも約0.55MHz、少なくとも約0.6MHz、少なくとも約0.65MHz、少なくとも約0.7MHz、少なくとも約0.75MHz、少なくとも約0.8MHz、少なくとも約0.85MHz、少なくとも約0.9MHz、少なくとも約0.95MHz、少なくとも約1MHz、少なくとも約1.1MHz、少なくとも約1.5MHz、少なくとも約2.0MHz、少なくとも約2.1MHz、少なくとも約2.2MHz、少なくとも約2.3MHz、少なくとも約2.4MHz、少なくとも約2.5MHz、少なくとも約2.75MHz、少なくとも約3.0MHz、少なくとも約3.5MHz、少なくとも約4.0MHz、少なくとも約4.5MHz、少なくとも約4.5MHz、少なくとも約5.0MHz、少なくとも約6.0MHz、少なくとも約7.0MHz、少なくとも約8.0MHz、少なくとも約9.0MHz、又は少なくとも約10.0MHzである。
【0039】
超音波周波数は、約20MHz以下、約15MHz以下、約10MHz以下、約9.0MHz以下、約8.0MHz以下、約7.0MHz以下、約6.0MHz以下、約5.0MHz以下、約4.0MHz以下、約3.0MHz以下、約2.8MHz以下、約2.6MHz以下、約2.5MHz以下、約2.4MHz以下、約2.3MHz以下、約2.2MHz以下であり、約2.1MHz以下、又は約2.0MHz以下である。超音波ビーム焦点における集束超音波強度は、少なくとも約1W/cm、少なくとも約1.5W/cm、少なくとも約2.0W/cm、少なくとも約2.5W/cm、少少なくとも約3.0W/cm、少なくとも約3.5W/cm、少なくとも約4.0W/cm、少なくとも約4.5W/cm、少なくとも約5.0W/cm、少なくとも約6.0W/cm、少なくとも約7.0W/cm、少なくとも約8.0W/cm、少なくとも約9.0W/cm、少なくとも約10.0W/cm、少なくとも約15W/cm、少なくとも約20W/cm、少なくとも約25W/cm、少なくとも約30W/cm、少なくとも約35W/cm、少なくとも約40W/cm、少なくとも約45W/cm、少なくとも約50W/cm、少なくとも約60W/cm、少なくとも約70W/cm、少なくとも約75W/cm、少なくとも約80W/cm、少なくとも約90W/cm、少なくとも約100W/cm、少なくとも約120W/cm、少なくとも約125W/cm、少なくとも約130W/cm、少なくとも約140W/cm、少なくとも約145W/cm、少なくとも約150W/cm、又は少なくとも約200W/cmである。超音波ビーム焦点における収束超音波強度は、約200W/cm未満、約150W/cm未満、約125W/cm未満、約100W/cm未満、約98W/cm未満、約95W/cm未満、約92W/cm未満、約90W/cm未満、約89W/cm未満、約88W/cm未満、約87W/cm未満、約86W/cm未満、約85W/cm未満、約84W/cm未満、約83W/cm未満、約82W/cm未満、約81W/cm未満、約80W/cm未満であり、約75W/cm未満、約70W/cm未満、約68W/cm未満、約67W/cm未満、約65W/cm未満、約64W/cm未満、約63W/cm未満、約62W/cm未満、約61W/cm未満、約60W/cm未満、約58W/cm未満、約55W/cm未満、約53W/cm未満、約52W/cm未満、約51W/cm未満、約50W/cm未満、約45W/cm未満、約40W/cm未満、約35W/cm未満、又は約30W/cm未満である。一部の実施形態では、集束超音波強度は、空間ピーク時間平均強度(ISPTA)である。
【0040】
音波力学的治療中に適用されるFUSエネルギーは、一般に、組織を切除するためにFUSを使用する場合のエネルギー量よりも少なく、超音波処理前に微小気泡を投与する場合には、さらに減少させることができる。一部の実施形態では、印加されるFUSエネルギーは、少なくとも10、20、30、40、50、60、75、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、350、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、900、1000、1200、1400、1800、又は2000ジュールである。一部の実施形態において、印加されるFUSエネルギーは、5000、4000、3000、2500、2000、1800、2500、1900、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1250、1200、1150、1100、1150、1000、950、900、850、800、750、600、600、550、500、450、400、350、300、又は250J以下である。いくつかの実施形態において、印加されるFUSエネルギーは、10J~2000Jである。いくつかの実施形態において、印加されるFUSエネルギーは、20J~1500Jである。いくつかの実施形態において、印加されるFUSエネルギーは、50J~1250Jである。いくつかの実施形態において、印加されるFUSエネルギーは、50J~1250Jである。印加されるFUSエネルギーは、100J~1250Jである。いくつかの実施形態において、印加されるFUSエネルギーは、250J~1250Jである。いくつかの実施形態において、印加されるFUSエネルギーは、500J~1250Jである。
【0041】
超音波処理の期間は、対象、悪性組織の特定のタイプ及び病期、悪性組織の位置及び量、及び悪性組織が5-ALAを取り込み、プロトポルフィリン-IXを蓄積する程度に依存して変化し得る。一部の実施形態では、悪性組織は、例えば、腫瘍内の複数の点で、複数の点で超音波処理される。本明細書で使用される場合、「点」とは、FUS焦点、及びFUSによって影響される点を取り囲む組織を指す。悪性組織全体に分布する点を超音波処理することによって、腫瘍体積全体にわたってより一層一定の効果を達成することができる。これにより、より低い電力を使用することが可能になり、温度上昇の可能性(及び周囲の正常組織に対するリスクの可能性)を低減する。ある態様において、悪性組織は、悪性組織の全てをFUSに一緒に曝露する個々の点で超音波処理される。いくつかの実施形態において、点は、重複する。ポイントは、同時に、個別に、又はグループで超音波処理することができる。例えば、16点をターゲティングすることを含む治療においては、全ての16点を同時に超音波処理することができ、又は、点を連続的に、又はランダムな順序で、又は、例えば、ペア若しくはトリプレット、又は他のサイズのグループのようなグループで超音波処理することができる。グループが超音波処理される場合、グループは物理的にグループ化され得るか、又は非隣接領域に分配され得る。一部の実施形態では、悪性組織は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、25、又は30個の個々の点で、又は1~30の任意の値で超音波処理される。一部の実施形態では、悪性組織は、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10個以下の個々の点で超音波処理される。
【0042】
一部の実施形態では、超音波処理期間は、少なくとも約20秒、少なくとも約30秒、少なくとも約45秒、少なくとも約1分、少なくとも約2分、少なくとも約3分、少なくとも約4分、少なくとも約5分、少なくとも約6分、少なくとも約7分、少なくとも約8分、少なくとも約9分、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約60分であり、少なくとも約75分、少なくとも約90分、少なくとも約105分、少なくとも約120分、少なくとも約135分、少なくとも約150分、少なくとも約165分、少なくとも約180分、少なくとも約195分、少なくとも約210分、少なくとも約230分、少なくとも約245分、少なくとも約260分、少なくとも約275分、少なくとも約300分、少なくとも約330分、又は少なくとも約360分である。一部の実施形態では、超音波処理持続時間は、約360分未満、約330分未満、約300分未満、約290分未満、約280分未満、約270分未満、約260分未満、約250分未満、約240分未満、約230分未満、約220分未満、約210分未満、約200分未満、約195分未満、約190分未満、約185分未満、約180分未満、約170分未満であり、約160分未満、約150分未満、約140分未満、約130分未満、約120分未満、約110分未満、約100分未満、約90分未満、約80分未満、約70分未満、約60分未満、約50分未満、約40分未満、約30分未満、約20分未満、又は約10分未満である。
【0043】
超音波処理は、連続的であっても、又は周期的であってもよい。周期的な超音波処理では、集束超音波に曝される時間(「超音波処理時間」)は、超音波処理を行わずに、安静時間と散在する。いくつかの実施形態において、超音波処理は、少なくとも1つの休止期間を含む。一実施形態では、超音波処理期間及び休止期間は、それぞれ、少なくとも約5秒、少なくとも約10秒、少なくとも約15秒、少なくとも約20秒、少なくとも約25秒、少なくとも約30秒、少なくとも約35秒、少なくとも約40秒、少なくとも約45秒、少なくとも約50秒、少なくとも約55秒、少なくとも約60秒、少なくとも約65秒、少なくとも約70秒、少なくとも約75秒、少なくとも約80秒、少なくとも約85秒、少なくとも約90秒、少なくとも約95秒、少なくとも約100秒、少なくとも約105秒、少なくとも約110秒、少なくとも約115秒、少なくとも約120秒、少なくとも約125秒、少なくとも約130秒、少なくとも約140秒、少なくとも約150秒、少なくとも約160秒、少なくとも約165秒、少なくとも約170秒、少なくとも約175秒、又は少なくとも約180秒である。一実施形態では、超音波処理期間及び休止期間は、それぞれ、約600秒未満、約500秒未満、約400秒未満、約300秒未満、約250秒未満、約240秒未満、約220秒未満、約200秒未満、約180秒未満、約170秒未満、約160秒未満、約150秒未満、約140秒未満、約130秒未満、約120秒未満、約110秒未満、約100秒未満、約95秒未満、約90秒未満、約85秒未満、約80秒未満、約75秒未満、約70秒未満、約65秒未満、約60秒未満、約55秒未満、又は約50秒未満である。
【0044】
本開示の方法において、悪性組織は、超音波焦点に存在する非悪性組織に影響を与えることなく選択的に破壊される。一部の実施形態において、超音波焦点に存在する非悪性組織の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満が損傷される。一部の実施形態において、超音波焦点に存在する非悪性組織の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、又は約25%が損傷される。組織損傷の量は、当業者に公知の方法、例えばMRIを用いて決定することができる。一部の実施形態では、悪性組織の温度は、15℃以下、14℃以下、13℃以下、12℃以下、11℃以下、10℃以下、9℃以下、8℃以下、7℃以下、6℃以下、5℃以下、4℃以下、3℃以下、2℃以下、又は1℃以下で上昇する。
【0045】
超音波は、悪性組織に焦点を合わせることができ、又は悪性組織を含むより広い容積に焦点を合わせることができる。5-ALAによる治療は、悪性組織をFUSに対してより感受性にし、焦点容積に含まれる非悪性組織に過度の損傷を与えることなく悪性組織を破壊することを可能にする。例えば、腫瘍とその周囲の容積を超音波処理することができる。さらに、例えば、側頭葉、頭頂葉、前頭葉、後頭葉、視床、下垂体、橋、脳梁、基底核、脳幹、半球全体、テント上領域、テント下領域などのような脳の完全な解剖学的領域を超音波処理することができる。さらに、脳のFLAIR領域の一部又は全部を超音波処理することもできる(液体減衰反転回復-脳内の液体から信号を除去するように設計されたMRI技術)。本開示の方法はまた、腫瘍の外科的切除と関連して、例えば、切除によって除去されない悪性細胞を除去するために、結果として生じる腫瘍腔を治療することもできる。
【0046】
いくつかの実施形態において、腫瘍の位置は、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて位置決めされる。一部の実施形態では、腫瘍は、X線イメージングを用いて位置決めされる。一部の実施形態では、腫瘍は、超音波処理される。一部の実施形態では、腫瘍及び腫瘍の周囲の容積は、超音波処理される。一部の実施形態では、腫瘍及び腫瘍表面から0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、又は8cmだけ広がる辺縁を超音波処理する。一部の実施形態では、脳の完全な解剖学的領域は、超音波処理を受ける。一部の実施形態では、側頭葉、頭頂葉、前頭葉、後頭葉、視床、下垂体、橋、脳梁、基底核、脳幹、半球全体、テント上領域、又はテント下領域を超音波処理する。一部の実施形態では、脳FLAIR領域は、超音波処理される。一部の実施形態では、2つ以上の解剖学的領域を超音波処理する。ある態様において、腫瘍は切除され、腫瘍腔は、残存する悪性組織又は細胞を除去するために超音波処理される。ある態様において、腫瘍腔は、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、又は8cmの深さまで超音波処理される。
【0047】
一部の実施形態では、本開示の方法は、5-ALAの投与及び悪性組織の超音波処理を含み、治療間隔で、又は少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約7日、少なくとも約8日、少なくとも約9日、少なくとも約10日、少なくとも約12日、少なくとも約14日、少なくとも約15日、少なくとも約16日、少なくとも約18日間、少なくとも約20日、少なくとも約21日、少なくとも約24日、少なくとも約25日、少なくとも約26日、少なくとも約28日、少なくとも約30日、少なくとも約35日、少なくとも約40日、少なくとも約45日、少なくとも約50日、少なくとも約55日、少なくとも約60日、少なくとも約65日、少なくとも約70日、少なくとも約75日、少なくとも約80日、少なくとも約85日、又は少なくとも約90日反復される。一部の実施形態では、治療反復間隔は、約120日未満、約110日未満、約100日未満、約90日未満、約80日未満、約70日未満、約60日未満、約50日未満、約40日未満、約30日未満、約20日未満、約14日未満、約10日未満、約7日未満、約6日未満、約5日未満、約4日未満、約3日未満である。又は約2日未満である。
【0048】
本開示の対象は哺乳動物であり、これはヒト又は非ヒト哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ラットなどのコンパニオン動物、又はウマ、ロバ、ラバ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、又はウシなどの農場動物である。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0049】
別の態様は、上記の方法及びパラメータを用いて、有効量の5-アミノレブリン酸を悪性組織に提供し、約3W/cm~約100W/cmの超音波ビーム焦点で約0.1MHz~約3MHzの周波数で集束超音波デバイスを用いて組織を超音波処理することによって、対象内の悪性組織内のアポトーシスを選択的に誘導する方法である。
【0050】
剤型及びシステム
超音波検査は、治療を行っている医師以外の人が行うことがある。リスクを最小限に抑え、治療が適切に実施されることを保証するために、1つの態様は、集束超音波デバイス動作を治療対象物にキーイングするための投与形態である。一部の実施形態では、5-ALA製剤は、機械読み取り可能な識別子を含む容器内に提供され、識別子は、容器の内容物、製剤の供給源、製剤の量、製剤が投与される対象物、対象物について規定された集束超音波治療(例えば、超音波周波数、電力、エネルギー、持続時間、又はそれらの組み合わせを特定する)、識別コード若しくはシリアル番号、又はそれらの組み合わせを識別する。機密の患者情報を保存するために、機械可読識別子を暗号化することができる。一部の実施形態では、容器は、有効量の5-アミノレブリン酸、有効量の増強剤、及び/又は有効量の微小気泡を含有するのに十分である。一部の実施形態では、機械可読識別子は、バーコード、QRコード、又はRFIDデバイスである。一部の実施形態では、集束超音波デバイスは、機械可読識別子を読み取るためのデバイスを含む。一部の実施形態では、機械可読識別子は、暗号化される。一部の実施形態では、FUSデバイスは、適切な機械可読識別子がない状態でロックされる。一部の実施形態では、FUSデバイス治療パラメータは、機械可読識別子を介してプログラムされる。
【0051】
特定の実施形態
一部の実施形態では、対象において、低悪性度の悪性組織を検出及び治療する方法が提供され、a)有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを対象に投与すること;b)対象における組織の蛍光を測定すること;及びc)低悪性度の悪性組織を治療することを含み、低悪性度の組織における蛍光が隣接組織における蛍光よりも高い。
【0052】
一部の実施形態では、低悪性度の悪性組織は、以前、WHO悪性度I又は悪性度II腫瘍として分類されている。一部の実施形態では、低悪性度の悪性組織は、侵攻性、進行性、又は再発性になっている。一部の実施形態では、低悪性度の悪性組織は、脳、乳房、結腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、又は子宮の組織である。一部の実施形態では、低悪性度の悪性組織は、神経膠腫である。一部の実施形態では、神経膠腫は、乏突起膠腫、びまん性星細胞腫、視経路神経膠腫、毛様細胞性星細胞腫、上衣下巨細胞星細胞腫、又は多形性黄色星細胞腫を含む。
【0053】
一部の実施形態では、測定は、蛍光画像化用に修飾された外科用顕微鏡を含む。一部の実施形態では、測定は、約610nm~約720nmの蛍光発光を測定することを含む。
【0054】
一部の実施形態では、低悪性度の悪性組織を治療することは、音波力学療法を含む。
【0055】
一部の実施形態では、低悪性度の悪性組織を治療することは、手術を含む。
【0056】
一部の実施形態では、低悪性度の悪性組織を治療することは、放射線を含む。
【0057】
一部の実施形態では、5-アミノレブリン酸は、経口製剤の経口投与、又は静脈内製剤の静脈内投与によって、対象における低悪性度の悪性組織に提供される。一部の実施形態では、5-アミノレブリン酸は、静脈内投与によって提供される。
【0058】
一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、5-ALAの有効量は、約1mg/kg体重~100mg/kg体重である。一部の実施形態では、5-ALAの有効量は、約10mg/kg体重~75mg/kg体重である。
【0059】
一部の実施形態では、キットは、対象における低悪性度の悪性組織を検出するためのキットであって、有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、及び使用説明書を含むキットが提供される。
【0060】
一部の実施形態では、対象における低悪性度組織を検出するためのシステムが提供され、該システムは、a)有効量の5-アミノレブリン酸(5-ALA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル;及びb)蛍光検出デバイスを含む。一部の実施形態では、低悪性度の悪性組織は、以前にWHO悪性度I又は悪性度II腫瘍として分類されている。一部の実施形態では、低悪性度の悪性組織は、侵攻性、進行性、又は再発性になっている。一部の実施形態では、蛍光検出デバイスは、蛍光画像化用に修飾された外科用顕微鏡を含む。
【実施例
【0061】
以下の調製及び実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施できるようにするために与えられる。これらは、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、単に例示的であり、その代表的なものであるとみなされるべきである。
【0062】
実施例例1:WHO GRADE i神経膠腫の検出
図1は、1年の経過以内に進行し、2回目の切除を必要とした、毛様細胞性星細胞腫(WHO悪性度Iの腫瘍)である光学経路神経膠腫の外科的切除中に得られた蛍光画像を示す。ピンク色の腫瘍蛍光は、特殊な撮像デバイスを使用することなく観察された。
【0063】
本明細書に記載される一般的な方法の検討は、例示的な目的のためにのみ意図されている。他の代替的な方法及び代替物は、本開示を検討することにより当業者に明らかであり、本出願の精神及び範囲内に含まれるべきである。
【0064】
本明細書を通して、種々の特許、特許出願、及び他の種類の刊行物(例えば、ジャーナル記事、電子データベースエントリーなど)が参照される。本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、及び他の刊行物の開示は、各個別の刊行物又は特許出願が、参照により援用されるように具体的かつ個別に指示された場合と同じ程度に、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0065】
引用された文献が先行技術を構成することは認められず、引用文献の考察では、著者が主張するものを記載し、発明者は、引用文献の正確性及び適切性に異議を申し立てる権利を留保する。科学雑誌論文、特許文献、及び教科書を含む多くの情報源が本明細書において言及されるが、この言及は、これらの文献のいずれも当該技術分野における技術常識の一部を構成することを認めるものではないことが明確に理解されるであろう。
図1
【国際調査報告】