(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】HP-SPS-ベルト装置を用いて高性能多結晶ダイヤモンドモノリスを焼結するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C04B 35/528 20060101AFI20231219BHJP
C01B 32/28 20170101ALI20231219BHJP
B01J 3/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C04B35/528
C01B32/28
B01J3/06 Q
B01J3/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533654
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021083423
(87)【国際公開番号】W WO2022117520
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】513267062
【氏名又は名称】インスティテュート ポリテクニーク デ ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルジュトー,アラン
(72)【発明者】
【氏名】プラカサム,ミシリ
(72)【発明者】
【氏名】バリマ,フェリックス
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA04
4G146AB01
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC16B
4G146AC17B
4G146AD20
4G146AD22
4G146AD26
4G146CB16
4G146DA16
(57)【要約】
本発明は、高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリス、単結晶ダイヤモンドの製造方法、及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリスを製造するための方法であって、結合剤、黒鉛材料前駆体、及び焼結工程中のダイヤモンド粒間の粒間結合の形成を触媒することを目的とした焼結助剤/触媒などの任意の添加剤の非存在下で、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPaの圧力下で、1400~1600℃で、ダイヤモンド粉末を高圧放電プラズマ焼結(HP-SPS)する焼結工程を含み、ダイヤモンド粉末粒子のサイズが、10nm~100μmの範囲である、方法。
【請求項2】
前記焼結工程が、パルス電流生成器と組み合わせてHP-HT工具ベルトタイプ装置を使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放電プラズマ焼結効果が、パルス電流の印加によってもたらされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記パルス電流が、3000A/10Vを送達することができる電気パルス生成器によって生成された3.3msのパルス持続時間で生成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
パルスシーケンス(オン:オフ)が、12:2であり、直流パルス電流から送達される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ダイヤモンド粉末が、静的高圧法、大きいダイヤモンド粒子の機械的破砕、化学蒸着によって取得された原料ダイヤモンド粉末材料、又は天然鉱物、ダイヤモンド鉱山の採掘若しくはダイヤモンドの切削からの残留物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記原料ダイヤモンド粉末が、
-10~900nm、好ましくは、10~500nm、より好ましくは、10~300nm、最も好ましくは、70~130nmの範囲の粒径を有するナノメートルダイヤモンド粉末であるか、
-1~100μm、好ましくは、1~50μm、より好ましくは、1~10μm、より好ましくは、6~10μm、最も好ましくは、3~6μmの範囲の粒径を有するマイクロメートルダイヤモンド粉末であるか、又は、
-10nm~100μmの範囲の粒径を有するナノメートル及びマイクロメートルダイヤモンド粉末の不均一混合物であり、
前記ダイヤモンドの粒径が、動的光散乱(DLS)によって測定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記原料ダイヤモンド粉末が、前記HP-SPS-ベルト導電セル内に設置され、4~5GPa、好ましくは、5GPaの圧力下で、1400~1600℃で、5秒~30分間、好ましくは、10秒~30分間、好ましくは、30秒~30分間、好ましくは、1~30分間、好ましくは、1~20分間、より好ましくは、1~10分間焼結される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記原料ダイヤモンド粉末が、前記HP-SPS-ベルト導電性セル内に設置される前に、又は前記HP-SPS-ベルト導電性セル内で焼結される前に、結合剤なしで本体に成形される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
結果として得られた多結晶ダイヤモンドモノリスが、
-XRDによって測定された際、化学的に純粋であり、
-ラマン分光法によって測定された際、黒鉛相を含まず、
-ラマン分光法によって測定された際、ダイヤモンド相のみを提示する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
結果として得られた高密度の多結晶ダイヤモンドモノリスが、離散することなく前記多結晶ダイヤモンドモノリスを取り扱うために十分な機械的強度を呈する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
結果として得られた多結晶ダイヤモンドモノリスが、波長700nm~0.1mmの入射光の85%以上の透過を可能にするように、赤外領域において透明である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
結合剤、黒鉛材料前駆体、及び焼結工程中のダイヤモンド粒間の粒間結合の形成を触媒することを目的とした焼結助剤/触媒などの任意の添加剤の非存在下で、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPaの圧力下で、ダイヤモンド粉末から高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリスを製造するためのHP-SPS-ベルト装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリスに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、自然界において既知の最も硬い物質である。これは、純粋な場合、以下の特性:
硬度:モース硬度において10(10=最も硬い)、電気抵抗:1018Ω・m、熱伝導率:約2500W・m/m2(Cu=385W・m/m2)、屈折率:2.417、誘電率/強度:5.6、107V/cm、バンドギャップ:5.45eV、移動度:1,600cm2/Ns、酸化温度:空気:=約1000℃、O2=約600℃、黒鉛変態温度(真空、不活性雰囲気):約1,500℃、最も広い既知の透過スペクトル:220nm~>50μm-X線、赤外線、テラヘルツ及びマイクロ波、化学的に非常に不活性、最低熱膨張係:1.1~1.3(インバー=1.4)を呈する炭素の同素体である。
【0003】
ダイヤモンドは、高い光透過率、高い熱伝導率、高いキャリア移動度、高い誘電破壊電界、及び低い誘導損失などの優れた特徴を有し、特にその非常に高い硬度のために切削工具及び耐摩耗工具に対して広く使用されている。ダイヤモンドは、耐摩耗性、圧縮強度、放熱率、及び音透過率の点で優れた性能を有する。その非常に望ましい物理的特性に加えて、ダイヤモンドは、ダイヤモンドを宝石用原石の「キング」とする、美しく光沢のある透明な結晶である。
【0004】
ダイヤモンドは、産業及び軍事分野で広く使用されている。しかしながら、現在の世界における天然ダイヤモンドの総生産量は、限定されかつ高価であり、天然ダイヤモンド工具の応用分野の拡大に深刻な影響を及ぼす。大量の合成ダイヤモンド単結晶が、大規模に生成されてきたが、それらの成長速度は遅く、合成時間が長く、製造コストが高い。超微細切削加工の分野において、それらは、天然ダイヤモンド工具材料に完全に取って代わることはできない。
【0005】
2つの最も一般的なダイヤモンド作製方法は、HP-HT(high pressure-high temperature、高圧-高温)及びCVD(chemical vapor deposition、化学蒸着)を含む。
【0006】
HP-HTは、元素炭素が約2000℃の高温及び約150万psiの高圧にさらされ、地殻内深くのダイヤモンド形成の自然プロセスを模倣する。これらの条件下で、工業プロセスは、ニッケルなどの溶融金属中での溶解及び沈殿(低圧力範囲)によって、又は炭素のダイヤモンドへの固相変態(高圧力範囲)によって起こる、炭素のダイヤモンドへの相変態に基づく。生成サイクルは、合成されるダイヤモンド粒子のサイズに関して約3週間~2ヶ月の範囲であり、ナノ/マイクロサイズの粒子については数分である。
【0007】
HP-HTプロセスはまた、典型的には、金属(多くの場合Co)のマトリックスの内側のダイヤモンド粒子から構成されるセラミックの形成を誘導するために、結合剤又は焼結助剤を使用してダイヤモンド粉末とともに使用され、これは、より低い圧力(約6GPa)でプロセスを実行することを可能にする。従来の合成ダイヤモンドの多結晶ダイヤモンド(PCD(polycrystalline diamond)と称される)焼結体は、合成ダイヤモンド粉末とCo、Ni及び他の金属粉末とを均一に混合し、高圧及び高温下で焼結することによって作製される複合超硬材料である。より高い硬度及び靭性を有
するので、適用性能は、いくつかの態様において単結晶よりも良好であり、自動車製造、家具製造、航空宇宙産業及び他の分野において広く使用されている。しかしながら、従来の合成多結晶ダイヤモンド材料中に含有される、Co、Niなどの結合剤は、人工ダイヤモンド多結晶焼結材料の硬度、耐摩耗性及び熱安定性に深刻な影響を及ぼす。
【0008】
結合剤の影響を排除するために、結合剤なしで黒鉛粉末からHP-HTダイヤモンドを製造することが試みられているが、この方法は、超高圧(15~20GPa)及び非常に高い温度(2000~2500℃)を必要とする。[参考文献1]より最近では、結合剤を用いないダイヤモンド粉末からのHP-HTダイヤモンド調製が試みられているが、この方法は、依然として、相対的に高い圧力(8~20GPa)及びかなり高い温度(1400~2500℃)を必要とする。[参考文献2]
【0009】
CVDダイヤモンド作製プロセスは、周囲に炭素原子が集合して、ダイヤモンドを形成する種として機能するダイヤモンド微粒子を担持する約800℃に加熱されたダイヤモンド形成表面を有する、ガスによって充填された大きい封止チャンバの内側のメタンなどの炭素源ガスのエネルギー分解によってダイヤモンドを成長させる。生成サイクルは、2週間~2ヶ月の範囲である。CVDプロセスは、HP-HTプロセスよりもサイクル当たりより多くのダイヤモンドを生成するが、HP-HTプロセスよりもCVDプロセスの方が労働コスト、電力コスト、及びサポートコストが高い。
【0010】
したがって、高純度ダイヤモンド生成物を確実に、経済的に、かつ容易に提供することができるダイヤモンド作製方法が依然として必要とされている。本発明は、この必要性を満たし、更なる関連する利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の文脈内で使用されるHP-HT工具ベルトタイプ装置の例示的なHPセルアセンブリを概略的に示す。黒鉛加熱器管内の2つの黒鉛スタッド(従来のSPS型アセンブリと同様)の間に挟持された試料及び両方のスタッドは、表現されない。
【
図2】本開示により取得されたダイヤモンドモノリス(表1、HP001)のXRDディフラクトグラムを示し、本発明のプロセスによりマイクロメートルサイズのダイヤモンド粉末を焼結した後に取得された純粋なダイヤモンドモノリス中に、結合剤、焼結助剤などの不純物がないことを示す。
【
図3】純粋なダイヤモンドと比較した、本開示によって取得されたダイヤモンドモノリス(表1、HP004)間の比較ラマン分析を示す。
【
図4】本発明の方法により、マイクロメートルサイズのダイヤモンド粉末を焼結した後に取得された純粋なダイヤモンドモノリス(表1、HP002)のSEM写真を示す。
【0012】
本出願のシステム及びプロセスは、様々な修正形態及び代替形態の影響を受けやすいが、その特定の実施形態が、例として図面に示されており、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本明細書における具体的な実施形態の説明は、本出願を、開示された特定の実施形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲によって定義される本出願のプロセスの趣旨及び範囲内に入る全ての修正形態、等価物、及び代替物を包含することを意図するものであることを理解されたい。
【0013】
定義
別様に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって概して理解されるものと同じ意味を有する。概して、本明細書中で使用される命名法及び以下に説明される実験方法は、当該分野で既知であり、一般的に用いられるものである。
【0014】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び句を以下に定義する。
【0015】
特許請求の範囲以外の本明細書において使用される場合、「a」、「an」、「the」、及び/又は「said」という用語は、1つ以上を意味する。特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」という単語と併せて使用されるとき、「a」、「an」、「the」及び/又は「said」という語は、1つ又は1つより多くを意味し得る。本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「有する(having)」、「有する(has)」、「である(is)」、「有する(have)」、「含む(including)」、「含む(includes)」及び/又は「含む(include)」という用語は、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprise)」と同じ意味を有する。本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「別の」は、少なくとも第2の又はそれ以上を意味し得る。本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「約」は、任意の固有の測定誤差又は値(例えば、測定値、比などの計算値)の桁の丸めを表し、それゆえ、「約」という用語は、任意の値及び/又は範囲で使用され得る。
【0016】
列挙に続く「これらの組み合わせ」、「これらの混合物」などの句、列挙の一部としての「及び/又は」の使用、表中の列挙、列挙の一部としての「等」の使用、「など」という句、及び/又は「例えば」若しくはすなわちを伴う括弧内の列挙は、一組の列挙された構成要素の任意の組み合わせ(例えば、任意のサブセット)を表し、並びにかかる列挙内に直接配置されない、本明細書において説明された関連種及び/若しくは実施形態の組み合わせ並びに/又は混合物がまた、企図される。本明細書に説明されるかかる関連及び/若しくは同様の属、亜属、種、並びに/又は実施形態は、特許請求され得る個々の構成要素、並びに特許請求の範囲において「から選択される少なくとも1つ」、「これらの混合物」、及び/若しくは「これらの組み合わせ」として説明され得る混合物並びに/又は組み合わせの両方の形態で企図される。
【0017】
本明細書において使用される場合、「及び/又は」という用語は、この用語が関連付けられる項目のうちのいずれか1つ、項目の任意の組み合わせ、又は項目の全てを意味する。
【0018】
当業者によって理解されるように、成分の量、粒径、圧力及び温度などの特性、実験条件などを表すものを含む、全ての数は、近似値であり、全ての場合において「約」という用語によって任意選択的に修飾されるものとして理解される。これらの値は、本明細書の説明の教示を利用して当業者が取得しようとする所望の特性に応じて変化し得る。かかる値は、それらのそれぞれの試験測定において見出された標準偏差から必然的にもたらされる変動性を本質的に含むことも理解される。
【0019】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、指定された値の±5%の変動を表すことができる。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの実施形態では、45~55パーセントの変動を有し得る。整数範囲に関して、「約」という用語は、記載された整数より大きい及び/又は記載された整数未満の1つ又は2つの整数を含むことができる。本明細書において別段の指示がない限り、「約」という用語は、個々の成分、組成物、又は実施形態の機能性に関して同等である、列挙された範囲に近い値、例えば、粒径値を含むことが意図される。
【0020】
当業者によって理解されるように、ありとあらゆる目的のために、特に書面による説明を提供することに関して、本明細書に列挙される全ての範囲はまた、ありとあらゆる可能
な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせ、並びに範囲を構成する個々の値、特に整数値を包含する。列挙された範囲は、その範囲内の各々特定の値、整数、小数、又は単位元を含む。いかなる列挙された範囲も、同じ範囲が少なくとも二分の一、三分の一、四分の一、五分の一、又は十分の一に分解されることを十分に説明し、可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、下三分の一、中三分の一、上三分の一などに容易に分解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例解的な実施形態を以下に説明する。明瞭さのために、実際の実装形態の全ての特徴が、本明細書で説明されるわけではない。任意のかかる実際の実施形態の発展において、一実装形態から別の実装形態へと変化する、システム関連及びビジネス関連の制約への準拠など、開発者の特定の目標を達成するために、実装形態固有の決定が行われなければならないことを、当然のことながら理解されたい。更に、かかる開発努力は、複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であることが理解されよう。
【0022】
本明細書では、デバイスが添付の図面に描写される際、様々な構成要素間の空間的関係、及び構成要素の様々な態様の空間的配向に言及し得る。しかしながら、本出願を読了後に当業者によって認識されるように、本明細書において説明されるデバイス、部材、装置などは、任意の所望の配向において位置決めされ得る。それゆえ、様々な構成要素間の空間関係を説明するための、又はかかる構成要素の態様の空間配向を説明するための用語の使用は、本明細書において説明されるデバイスが任意の所望の方向において配向され得る際、構成要素間の相対的な関係又はかかる構成要素の態様の空間配向をそれぞれ説明すると理解されるべきである。
【0023】
システム及びプロセスは、その構造及び動作の両方に関して、添付の説明と併せて解釈される添付の図面から理解されるであろう。システムのいくつかの実施形態が、本明細書において
図1~
図4内に提示される。異なる実施形態の様々な構成要素、部品、及び特徴は、ともに組み合わされ得、及び/又は互いに交換され得、全ての変形形態及び特定の実施形態が図面内に示されているわけではないが、それらの全てが、本出願の範囲内であることを理解されたい。また、様々な実施形態間の特徴、要素、及び/又は機能の混合及び整合は、本明細書において明示的に企図されており、そのため、当業者は、別段の説明がない限り、1つの実施形態の特徴、要素、及び/又は機能が、別の実施形態に適宜組み込まれ得ることを本開示から理解されたい。
【0024】
一態様において、本発明は、高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリスを製造するための方法であって、焼結工程中のダイヤモンド粒間の粒間結合の形成を触媒することを目的とする結合剤、黒鉛材料前駆体、及び焼結助剤/触媒の非存在下で、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPaの圧力下で、1400~1600℃で、ダイヤモンド粉末を高圧放電プラズマ焼結(HP-SPS)することによる焼結工程を含み、ダイヤモンド粉末粒子のサイズが、10nm~100μmの範囲である方法を提供する。
【0025】
電界支援焼結技術(field-assisted sintering technique、FAST)と称されることもある放電プラズマ焼結(Spark plasma sintering、SPS)は、加熱及び低圧支援のためにパルス電流を使用する固結方法である。SPSは、速い加熱速度及び短い固結サイクル(数分程度)に起因する魅力的な固結技術である。SPSにおいて電流を使用することの利点は、強い電流が、焼結されることが意図される試料を通して直接流れることを可能にすることにある。SPSの主な特徴は、パルス化(オン)若しくは非パルス化(オフ)DC又はAC電流のシーケ
ンスが、SPS試料セル、並びに、導電性試料の場合は、粉末圧密体を直接通過することである。
【0026】
本発明によれば、パルス直流電流が使用され得る。
【0027】
本発明によれば、任意のHP-SPS装置が、使用され得る。例えば、HP-SPS-ベルト又はHP-SPS-ブリッジマンが、使用され得る。好ましいのは、HP-SPS-ベルト装置である。例えば、パルス電流生成器(パルス電流によって作動するHP-HT工具ベルトタイプ装置(HP-SPS-ベルト))と組み合わせて、HP-HT従来型工具ベルトタイプ装置が使用され得る。
【0028】
有利に、放電プラズマ焼結効果は、パルス電流の印加によってもたらされ得る。パルス電流は、1~5ms、例えば、1~4ms、例えば、2~4ms、例えば、3~4msのパルス持続時間で生成され得る。3.0ms、3.1ms、3.2ms、3.3ms、3.4ms、3.5ms、3.6ms、3.7ms、3.8ms、3.9ms又は4.0msのパルス持続時間が、使用され得る。例えば、パルス電流は、3.3msのパルス持続時間で生成され得る。パルス電流は、任意の好適なパルス発電機(従来のSPSにおいて使用されるパルス発電機と同一であり得る)によって生成され得る。パルス持続時間は、使用されるパルス発電機に依存する。例えば、サイリスタパルス発電機は、3.3msのパルス持続時間を有するパルス電流を生成し得る。
【0029】
読者が容易に理解するように、生成器から必要とされる電力は、到達されるべき温度、使用される加熱要素材料及び幾何学形状(例えば、黒鉛管が、本開示の有利な変形形態において使用され得、例えば、本開示による、HP-SPS-ベルト装置)、並びに加熱されるセル/圧力容器(例えば、HP-SPS-ベルト装置が使用されるときのベルトシリンダ)のサイズによって定義されるであろう。例えば、実施例に説明されるようなHP-SPS-ベルト装置が使用される場合、パルス電流は、30000W(例えば、3000A/10V)を送達することができる電気パルス生成器によって生成され得る。例えば、それは、直流パルス電流から(例えば、サイリスタパルス電流生成器から)送達され得る。
【0030】
パルスシーケンス(オン:オフ)は、1~99:1~9であり得、(上記のいくつかの変形形態において定義されるように)パルスが、所与のパルス持続時間の1~99倍にわたって「オン」であり得、次いで、パルス持続時間の1~9倍にわたって「オフ」であり得ることを意味する。例えば、パルスシーケンス(オン:オフ)は、例えば、11~13:1~3など10~14:1~3であり得、(別の言い方をすれば、(上記のいくつかの変形形態において定義されるように)パルスは、所与のパルス持続時間の10~14倍、例えば、所与のパルス持続時間の11~13倍「オン」であり得、次いで、パルス持続時間の1~3倍「オフ」であり得る)。有利に、パルスシーケンス(オン:オフ)は、12:2であり得る。有利に、パルスシーケンス(オン:オフ)は、12:2であり得、直流パルス電流から送達され得る。有利に、パルスシーケンス(オン:オフ)は、上記のいくつかの変形形態において定義されたパルス持続時間のうちのいずれか1つと組み合わされ得る。有利に、パルスシーケンス(オン:オフ)は、12:2であり得、パルス持続時間は、3.3msである(パルスは、12×3.3msの間「オン」であり、次いで、2×3.3msの間「オフ」である)。
【0031】
本発明によれば、高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリスは、高圧(例えば、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPa)下でSPSを使用してナノサイズ又はマイクロサイズのダイヤモンド粉末から合成することができる。ダイヤモンドモノリスを製造するための既存の焼結プロセスに対する本発明の方法の際立った利点
は、プロセスが、結合剤、黒鉛材料前駆体、又は焼結工程中にダイヤモンド粒間の粒間結合の形成を触媒することを目的とした焼結助剤/触媒などのいかなる添加剤も使用しないことである。このように、本発明の方法は、高純度ダイヤモンドモノリスにつながる。既存の方法に対する別の利点は、より低い圧力及び温度の適用にある。
【0032】
本明細書において使用される場合、「高純度」は、多結晶ダイヤモンドモノリス(「PCDモノリス」)を認定するとき、98%超のダイヤモンド、好ましくは、99%超のダイヤモンド、より好ましくは、99.5%超のダイヤモンド、最も好ましくは、99.9%超のダイヤモンドを含有するPCDモノリスを表す。
【0033】
有利に、本発明の方法によって取得される高性能多結晶ダイヤモンドモノリス中に、黒鉛状炭素及び添加剤は、検出されない。
【0034】
有利に、本発明の方法から取得される多結晶ダイヤモンドモノリスは、XRDによって測定される際、化学的に純粋である。
【0035】
有利に、本発明の方法から取得される多結晶ダイヤモンドモノリスは、ラマン分光法によって測定される際、黒鉛相を含まない。
【0036】
有利に、本発明の方法から取得される多結晶ダイヤモンドモノリスは、ラマン分光法によって測定される際、ダイヤモンド相のみを提示する。
【0037】
最も有利に、本発明の方法から取得される多結晶ダイヤモンドモノリスは、上記の3つの特徴全てを有する:XRDによって測定される際、化学的に純粋であり、ラマン分光法によって測定される際、黒鉛相を含まず、ラマン分光法によって測定される際、ダイヤモンド相のみを提示する。
【0038】
本開示によれば、本方法において使用されるダイヤモンド粉末は、当技術分野で既知の任意の方法によって、又は天然鉱物から取得される原料ダイヤモンド粉末材料であり得る。例えば、ダイヤモンド粉末は、静的高圧法、大きいダイヤモンド粒子の機械的破砕、化学蒸着から、又は天然鉱物、ダイヤモンド鉱山の採掘若しくはダイヤモンドの切削からの残留物から取得され得る。
【0039】
本開示によれば、本方法で使用されるダイヤモンド粉末は、10~900nm、好ましくは、10~500nm、より好ましくは、10~300nm、最も好ましくは、70~130nmの範囲の粒径を有するナノメートルダイヤモンド粉末であり得る。
【0040】
本開示によれば、本方法で使用されるダイヤモンド粉末は、1~100μm、好ましくは、1~50μm、より好ましくは、1~10μm、より好ましくは、6~10μm、最も好ましくは、3~6μmの範囲の粒径を有するマイクロメートルダイヤモンド粉末であり得る。
【0041】
本明細書において使用される場合、「ナノメートルダイヤモンド」という用語は、その粒径(最小値~最大値)が空間次元のうちの少なくとも1つにおいて数ナノメートルであるダイヤモンド粉末を表すと理解される。例えば、空間次元のうちの少なくとも1つにおけるダイヤモンド粉末の粒径の最小値~最大値は、10~900nm、好ましくは、10~500nm、より好ましくは、10~300nm、最も好ましくは、70~130nmである。
【0042】
本明細書において使用される場合、「マイクロメートルダイヤモンド」という用語は、
粒径(最小値~最大値)が、1~100μm、好ましくは、1~50μm、より好ましくは、1~10μm、より好ましくは、6~10μm、最も好ましくは、3~6μmであるダイヤモンド粉末を表すと理解される。
【0043】
ダイヤモンド粉末は、マイクロメートル寸法のみ、若しくはナノメートル寸法のみのダイヤモンド粒子、又はマイクロメートル及びナノメートルダイヤモンド粒子の混合物を含み得る。
【0044】
本開示によれば、本方法で使用されるダイヤモンド粉末は、10nm~100μmの範囲の粒径の最小値~最大値を有するナノメートル及びマイクロメートルのダイヤモンド粉末の異種混合物であり得る。
【0045】
ダイヤモンド粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering、DLS)によって測定され得る。
【0046】
動的光散乱(DLS)測定は、懸濁したナノメートルダイヤモンド及び/又はマイクロメートルダイヤモンド試料に対して実施され得る。ナノメートルダイヤモンド及び/又はマイクロメートルダイヤモンドの懸濁液は、1g/Lの濃度で調製され得、1時間の超音波撹拌及び超遠心分離に供され得る。結果として得られた懸濁液の上澄み中に存在するナノメートルダイヤモンド及び/又はマイクロメートルダイヤモンドの粒径は、動的光散乱によって(例えば、Malvern zetasizer NanoZSを使用して)分析され得る。粒径は、各試料に関して500を超える個々の粒子のサイズの注意深い統計的評価によって取得され得る(ナノメートルダイヤモンド及び/又はマイクロメートルダイヤモンドの寸法は、結果の再現性を確実とするために、4人の異なる人によって測定することができる)。ダイヤモンド粒子(ナノメートル及び/又はマイクロメートル)が非対称であるとき、粒径は、ダイヤモンド粒子の主軸の寸法のサイズを参照して測定され得る。
【0047】
本開示によれば、原料ダイヤモンド粉末は、HP-SPS導電性セル内にそのまま、又はHP-SPS-ベルト導電性セルなどの事前充填された成形体の形態で設置され得る。典型的には、原料ダイヤモンド粉末試料は、黒鉛管の内側の2つの黒鉛スタッドの間に挟持され得る(これは、HP-SPSセルの導電特性を説明する)。したがって、本開示全体を通して、「HP-SPS導電性セル」又は「HP-SPS-ベルト導電性セル」に言及するとき、HP-SPSセル又はHP-SPS-ベルトセルは、試料が黒鉛管内の2つの黒鉛スタッドの間に挟持されるセルアセンブリなど、導電性であるように特別に構成されることが理解されよう。HP-SPS導電性セル内にそのまま設置される場合、ダイヤモンド粉末は、最初に(粉末を成形体に事前圧密するために)所望の圧力に供され得、次いで温度増加が、実行され得る。HP-SPS-ベルト導電性セルなどのHP-SPS導電性セルにおいて、好ましくは、上で説明されたように成形体に事前圧密された原料ダイヤモンド粉末は、4~5GPa、好ましくは、5GPaの圧力下、1400~1600℃で、5秒~30分間、好ましくは、10秒~30分間、好ましくは、30秒~30分間、好ましくは、1~30分間、好ましくは、1~20分間、より好ましくは、1~10分間焼結され得る。
【0048】
本開示によれば、原料ダイヤモンド粉末は、HP-SPS-ベルト導電性セルなどの、HP-SPS導電性セル内に設置される前に、又はHP-SPS導電性セル内で焼結される前に、結合剤なしで本体に成形され得る。
【0049】
本開示によれば、方法は、原料ダイヤモンド粉末を事前充填して予め調整することによって成形体を製造することを更に含み、成形体は、放電プラズマ焼結されて、高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリスを製造し得る。成形体を形成する場合、方法が粉末を使用して成形体を形成する従来の方法である限り、任意の方法が、制限なく使用され得、その代表的な例としては、複合粉末を型に供給することによって事前成形体を製造する方法が挙げられ得る。
【0050】
例えば、事前成形体は、原料ダイヤモンド粉末を、HP-SPS導電性セルに含まれる黒鉛管(加熱要素)内に充填することによって製造され得、原料ダイヤモンド粉末は、HP-SPSセルの導電性を確実とするために、黒鉛管内の2つの黒鉛スタッドの間に挟持されている。焼結される試料が真空チャンバ内に設置された黒鉛型(加熱要素である)内に含まれる従来のSPS技術とは異なり、本発明の好ましい変形形態によれば、2つの黒鉛スタッドの間に挟持された試料(原料ダイヤモンド粉末)は、HP-SPSセルがベルトシリンダ(圧力容器)を完全に充填するので真空下にないベルトシリンダ(典型的には、高圧に耐えるために炭化タングステン製)内に設置されたHP-SPS導電性セル内に含まれる黒鉛管(加熱要素)内に設置され得る。
【0051】
ダイヤモンド粉末は、好ましくは、ダイヤモンド粒子間の空隙に起因する損失体積を低減させることを試みるために、HP-SPS導電性セル内で事前圧密される。成形体は、多くの場合、その型から取り出されるセラミック内の「グリーン体」と比較することができ、これは本開示により使用されるダイヤモンド粉末事前成形体の場合には行われない。ダイヤモンド粒子の特殊性は、それらが凝集しないことである。それにもかかわらず、本発明を通して、結合剤なしでもダイヤモンド粒子をともに保持すること(粒間密着=粒間結合)を可能にするために、これらのダイヤモンド粒子の焼結がある場合、ダイヤモンド粒子の試料に形状を与えることが可能である。
【0052】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、放電プラズマ焼結プロセス中、放電現象は、圧力がそこに適用された状態で、ダイヤモンド粉末にオン:オフパルス電流のシーケンスを適用することによって、原料ダイヤモンド粉末の粒子間を流れるパルス直流電流を使用して引き起こされる。それによって、ダイヤモンド粉末は、電気エネルギーによって印加された圧力下で、HP-SPS-ベルトセル(
図1、黒鉛スタッド及びダイヤモンド粉末は表現せず)内の黒鉛管加熱器アセンブリ(黒鉛管内のダイヤモンド粉末試料を挟持する2つの黒鉛スタッド)の電気抵抗によって生成された熱と組み合わせて、瞬間的に生成されるオンパルス時間(例えば、オン=12=>12×3.3ms)のシーケンス中の放電プラズマの高エネルギーによって引き起こされる熱拡散及び電気輸送に起因して焼結される。したがって、ナノメートル及び/又はマイクロメートルのダイヤモンド粉末の焼結は、短期間で実施され得、それゆえ、緻密な構造を有する高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリスを製造し得る。かかる焼結性は、多結晶ダイヤモンドモノリスの結晶粒の成長を効果的に制御し、高純度で高性能な多結晶ダイヤモンドモノリスを製造することを可能にする。
【0053】
温度増加速度
好ましくは、成形体に事前圧密されたダイヤモンド粉末は、HP-SPSプロセスを通してダイヤモンド粉末の内側及び外側に温度が均一に供給されることを可能にするために、一定の加熱速度で温度を増加させることによって、所望の焼結温度にされ得る。例えば、100℃/分~500℃/分の任意の一定加熱速度が、使用され得る。例えば、100℃/分、150℃/分、200℃/分、250℃/分、300℃/分、350℃/分、400℃/分、450℃/分、又は500℃/分の一定の温度増加速度が、使用され得る。
【0054】
焼結時間及び温度
HP-SPSプロセスは、好ましくは、1400~1600℃、例えば、1500~1600℃の温度で実施され得る。例えば、温度は、5秒~30分間、好ましくは、10秒~30分間、好ましくは、30秒~30分間、好ましくは、1~30分間、好ましくは、1~20分間、より好ましくは、1~10分間維持され得る。より低い及びより高い温度が使用される場合があるが、有利な利益を与えると考えられるので、1400~1600℃、例えば、1500~1600℃の範囲が好ましい。具体的には、HP-SPSプロセスの温度が1600℃より高いとき、ダイヤモンドモノリスの結晶粒は、急速に成長し得、それゆえ、その機械的特性が低下する可能性がある。更に、HP-SPSプロセスが5秒未満で実施されるとき、不完全な焼結に起因して、十分な焼結効果を予想することが困難であり得る。一方、焼結時間が30分を超過するとき、エネルギー消費が増加し、それゆえ経済性が低減し、焼結によって引き起こされた緻密化効果を予想することは困難であり得る。
【0055】
焼結圧力
更に、HP-SPSプロセスは、ダイヤモンド粉末を加圧するために3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPaの圧力下で実施され得、それゆえ高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリスが製造される。圧力が3GPa未満であるとき、多結晶ダイヤモンド材料の密度が低下するという欠点がある。圧力が5GPaを超えるとき、高圧に起因して多結晶ダイヤモンド内にクラックが形成され得、それにより機械的特性に悪影響を及ぼすリスクが高くなる。本発明の1つの利点は、パルス発電機(従来のSPSで使用されるパルス発電機と同一であり得る)と組み合わされたベルトシステムが存在するため、HP-SPSシステム(すなわち、装置)が、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPaなどの高圧に達することを可能にすることである。
【0056】
圧縮時間
ダイヤモンド粉末は、圧力がダイヤモンド粉末を通して均一に供給されることを可能にするために、一定の圧縮率で圧力を増加させることによって所望の焼結圧力にされ得る。これは、付随的に、原料ダイヤモンド粉末を成形体に事前圧密する効果を有し得る。例えば、圧力は、大気圧(101325Pa)から目標焼結圧力(すなわち、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPa)まで、0.5~5時間、例えば、0.5~4時間、例えば、0.5~3時間かけて増加され得る。
【0057】
減圧時間
焼結後、一定の減圧速度で圧力を減少させることによって、試料は、大気圧(101325Pa)にされ得る。例えば、焼結後、圧力は、目標焼結圧力(例えば、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPa)から大気圧に、0.5~5時間、例えば、0.5~4時間、例えば、0.5~3時間かけて減少され得る。
【0058】
温度減少率
焼結後、試料は、一定の冷却速度で温度を減少させることによって室温に戻され得る。例えば、-100℃/分~-500℃/分の任意の一定の冷却速度が、使用され得る。例えば、-100℃/分、-150℃/分、-200℃/分、-250℃/分、-300℃/分、-350℃/分、-400℃/分、-450℃/分、又は-500℃/分の一定の温度減少速度が、使用され得る。
【0059】
有利には、
(i)ダイヤモンド粉末は、上記で定義されたように、一定の圧縮速度に続いて、加熱することなく、目標圧力(例えば、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPa)にされ得、
(ii)次いで、試料は、上記で定義されたように、一定の加熱速度に続いて、目標焼結温度(例えば、1400~1600℃、例えば、1500~1600℃)に加熱され得
、
(iii)次いで、試料は、焼結温度で所望の焼結持続時間(例えば、5秒~30分、好ましくは、10秒~30分、好ましくは、30秒~30分、好ましくは、1~30分、好ましくは、1~20分、より好ましくは、1~10分)維持され得、
(iv)次いで、試料は、上記で定義されたように、一定の加熱速度に続いて、室温まで冷却され得、
(v)最後に、試料は、上記で定義されたように、一定の減圧速度に続いて、大気圧にされ得る。
【0060】
より好ましくは、HP-SPSプロセスは、1400~1600℃、例えば、1500~1600℃の焼結温度で、5秒~30分間、好ましくは、10秒~30分間、好ましくは、30秒~30分間、好ましくは、1~30分間、好ましくは、1~20分間、より好ましくは、1~10分間、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPaの圧力下で、結合剤、黒鉛材料前駆体及び焼結工程中にダイヤモンド粒間の粒間結合の形成を触媒することを目的とする焼結助剤/触媒などの任意の添加剤の非存在下で実施され得、それにより、優れた機械的特性を有する金属及び単層カーボンナノチューブの複合材料を製造する。
【0061】
例えば、方法は、
-ナノメートルダイヤモンド粉末のみを使用し、5GPaで、少なくとも1400~1500℃、好ましくは、少なくとも1500℃の温度で、5秒間~30分間、好ましくは、10秒間~30分間、好ましくは、30秒間~30分間、好ましくは、1~30分間、好ましくは、1~20分間、より好ましくは、1~10分間焼結することによって、
-マイクロメートルダイヤモンド粉末のみを使用し、5GPa、少なくとも1500℃の温度で、5秒間~30分間、好ましくは、10秒間~30分間、好ましくは、30秒間~30分間、好ましくは、1~30分間、好ましくは、1~20分間、より好ましくは、1~10分間焼結することによって、
-ナノメートル及びマイクロメートルのダイヤモンド粉末の混合物を使用して、5GPaで、少なくとも1600℃の温度で、5秒間~30分間、好ましくは、10秒間~30分間、好ましくは、30秒間~30分間、好ましくは、1~30分間、好ましくは、1~20分間、より好ましくは、1~10分間焼結することによって、実行され得る。
【0062】
いくつかのプロセスパラメータが、本開示による方法の実施を低減させるために、本明細書に説明されている:焼結圧力、焼結温度、焼結時間、電気パルスオン:オフシーケンス、電気パルス持続時間、温度増加速度、温度減少速度、圧縮時間、及び減圧時間。各パラメータの例示的な値の範囲が、本明細書に提供されている。本開示による方法は、各々及び全ての上記で挙げられたパラメータについて本明細書において説明される任意の1つの値の範囲、又は任意の1つの特定の値を使用することによって実行され得ることが理解される。
【0063】
実施例に示されるように、本開示の方法は、かかる焼結条件中にダイヤモンドの安定性を維持することを可能にする。
【0064】
先で考察されるように、本開示による方法は、XRDによって測定される際、化学的に純粋であり、ラマン分光法によって測定される際、黒鉛相を含まず、ラマン分光法によって測定される際、ダイヤモンド相のみを有する、3つではないとしても、少なくとも1つの特徴を有する多結晶ダイヤモンドモノリスを製造することを可能にし、それによって、優れた機械的特性及びゼロ多孔度の場合に、IR及び可視における透明性を確実とする。
【0065】
機械的特性
有利に、結果として得られる多結晶ダイヤモンドモノリスは、離散することなく多結晶ダイヤモンドモノリスを取り扱うために十分な機械的強度を呈し得る。換言すれば、方法は、非破砕性モノリスにつながる(加熱が5GPaで適用されないときに流動粉末が取得される)。
【0066】
市販の切削工具及び耐摩耗性工具において使用される従来の多結晶ダイヤモンド(「PCD」)は、焼結助剤又はCoなどの結合剤材料を使用するダイヤモンド粉末の焼結された圧密体を表す。PCDは、粒界中に添加剤を含有し、これは、機械的特性及び熱安定性を減少させ、その上工具の性能を著しく損なう。
【0067】
本開示の方法により取得された多結晶ダイヤモンドモノリスは、結合剤を含まない。それらはまた、任意の黒鉛材料前駆体及び焼結工程中にダイヤモンド粒間の粒間結合の形成を触媒することを目的とした焼結助剤/触媒の非存在下で作製される。そのため、本開示の方法により取得された多結晶ダイヤモンドモノリスは、結合剤を使用して調製された従来のPCDよりも優れた硬度、強度及び耐摩損性を呈する。かかる焼結助剤及び結合剤を含まない多結晶ダイヤモンドは、硬度、強度、及び熱安定性が全てバランスのとれた理想的な硬質材料であると考えられる。
【0068】
例えば、本開示の方法により取得された多結晶ダイヤモンドモノリスは、H.Sumiya et al.,「Super-hard diamond indenter prepared from high-purity synthetic diamond crystal,」Rev.Sci.Instrum.,76,026112(2005)[参考文献3]によって教示されているように、高硬度配向によって特徴付けられる合成タイプIIa SCDから作製された高硬度ヌープ圧子を使用して、室温(25℃±5℃)で測定される際、70GPa以上、好ましくは、80GPa以上、好ましくは、90GPa以上、好ましくは、100GPa以上の硬度を呈し得る。
【0069】
強度測定は、室温(25℃±5℃)で抗折強度(transverse rupture strength、TRS)法を使用して実行され得る。本開示の方法により取得された多結晶ダイヤモンドモノリスのTRSは、Sic製の治具(スパン長:4mm)を用いて測定することができる。例えば、本開示の方法により取得された多結晶ダイヤモンドモノリスは、室温2.5GPa以上、好ましくは、3.0GPa以上のTRSを呈し得、これは他のセラミック材料及び従来の結合剤含有PCDのTRSよりも高い。
【0070】
本開示の方法により取得された多結晶ダイヤモンドモノリスの摩損特性は、金属結合ダイヤモンド研削砥石を使用する研削実験において評価することができる。例えば、耐摩損性は、適用された負荷:3kg/mm2、試料1.0.×1.0mm、ダイヤモンド砥石(金属結合、♯800)、2800rpmで摩耗率を測定することによって評価され得る。本開示の方法により取得された多結晶ダイヤモンドモノリスは、同じ実験条件における他のセラミック材料及び従来の結合剤含有PCDの摩耗率よりも高い、20μm/分以上、好ましくは30μm/分以上、好ましくは、40μm/分以上、好ましくは、50μm/分以上、好ましくは、60μm/分以上、好ましくは、70μm/以上、好ましくは、80μm/分以上、好ましくは、90μm/分以上、好ましくは、100μm/分以上の摩耗率を呈し得る。
【0071】
光学特性
有利には、結果として得られた高密度多結晶ダイヤモンドモノリスは、波長700nm~0.1mmの入射光の85%以上の透過を可能にするように、赤外領域において透明であり得る。
【0072】
有利には、結果として得られる多結晶ダイヤモンドモノリスは、波長380nm~700nmの入射光の85%以上の透過を可能にするように、可視領域において少なくとも半透明、好ましくは、透明であり得る(物理的欠陥がなく、化学的不純物がなく、100%密度の多結晶ダイヤモンドモノリス)。
【0073】
用途
本開示の方法により取得された多結晶ダイヤモンドモノリスのこれらの特徴は、ドレッサ、スクライバ、スタイラス、ダイ、及びノズルなどの切削工具及び耐摩耗性工具に適した硬質材料としてのそれらの顕著な可能性を示唆する。本開示の方法により取得された多結晶ダイヤモンドモノリスは、IR及び可視範囲におけるその透光性/透明性に起因して、高強度光学窓(例えば、研究用途のための耐圧窓及び超高圧ダイヤモンドアンビル)などの高強度、耐環境光学構成部品の用途においても有用である。
【0074】
それらはまた、宝石細工(大きいサイズ、すなわち、数mmのダイヤモンドモノリスが本発明の方法により製造され得る)、及びマイクロエレクトロニクス(導電性材料)において用途を見出し得る。
【0075】
別の態様では、結合剤、黒鉛材料前駆体、及び焼結工程中にダイヤモンド粒間の粒間結合の形成を触媒することを目的とする焼結助剤/触媒などの任意の添加剤の非存在下で、3~5GPa、好ましくは、4~5GPa、より好ましくは、5GPaの圧力下でダイヤモンド粉末から高純度高性能多結晶ダイヤモンドモノリスを製造するための、パルス電流生成器に結合された、従来の高圧高温(high pressure high temperature、HP-HT)工具ベルトタイプ装置の使用が提供される。HP-HT工具ベルトタイプ装置とパルス電流生成器との組み合わせは、「HP-SPS-ベルト装置」と称され、パルス電流によって作動されるHP-HT工具ベルトタイプ装置(HP-SPS-ベルト)である。これは、有利に、非破砕性モノリスにつながる(5Paで加熱が適用されないときに流動粉末が取得される)。
【0076】
したがって、本発明は、既存のプロセスの欠点を克服するダイヤモンドモノリスの製造のための非常に有益な代替案を提供する。
【0077】
等価物
以下の代表的な実施例は、添付の図面とともに、発明の例解に役立つことを意図しており、発明の範囲を限定することを意図しておらず、そのように構成されるべきでもない。実際、発明の種々の修正及びその多くの更なる実施形態は、本明細書において示されかつ説明されるものに加えて、以下の実施例、並びに本明細書において引用される科学文献及び特許文献への参照を含む、本文書の全内容から、当業者に明らかとなるであろう。更に、これらの引用された参考文献の内容は、最新技術を例解することに役立てるように、参照により本明細書に組み込まれることを理解されたい。
【0078】
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態及びその等価物における本発明の実施に適合され得る、重要な追加的情報、例示、及びガイダンスを含む。
【実施例】
【0079】
本発明によるプロセス及びシステム(すなわち、装置)並びにそれらの実施に対する低減は、プロセスのいくつかがどのように実行され得るかを例解する実施例によって更に理解され得る。しかしながら、これらの実施例は、発明を限定するものと解釈されるべきではないことが理解されるであろう。現在既知の又は更に開発される本発明の変形形態は、本明細書に説明され、以下で特許請求される本発明の範囲内に入ると考えられる。
【0080】
材料及び方法
ベルト装置は、Strecon(Denmark)によって供給された。圧力容器は、内径32mm及び高さ29mmの円筒形空洞を有するシリンダ(炭化タングステンダイ)からなる。高温高圧実験を実施するために、ベルト装置(HP-SPS-ベルト)は、Fuji Electronic Industrial(SCM-3000モデル)によって供給される電気パルス電流生成器に結合され、10Vに対して3000Aに達することができる。20~1800℃の動作温度範囲は、サイリスタによって提供される直流パルス電流によって提供される。ユニットパルスは、SPSプロセスのための従来及びHPと比較することができるように、Fujiからの従来のSPSと同様の3.3msの持続時間を有する。パルスシーケンスは、ゼロ電流の期間が後に続く所与の数のパルス列によって画定される。本発明者らは、ゼロ電流の6.6msの2つの周期が後に続く、合計40msの12のパルスのシーケンスを使用した。以後、このシーケンスを、12:2と呼ぶ。かかる装置は、新規であり、最新技術における我々の研究を通じて初めて構築されることに留意されたい。発電機は、ソフトウェア制御モニタを介して手動又は自動で制御することができる。実験は、概して、自動電流制御モードを使用して行った。
【0081】
高圧セルは、最大試料直径に対応する17mmの内径を有する黒鉛炉(黒鉛管及び管の内側にダイヤモンド粉末試料を挟持する2つの黒鉛スタッド)を含んだ。焼結試料は、直径10mmを有し、六方晶窒化ホウ素(hexagonal boron nitride、h-BN)リングの事前圧密されたペレットを用いて、従来のSPS直径10mmダイと同等の試料サイズを取得した。h-BNリングの外径は、黒鉛炉に適合させるために17mmであった。試料を、従来のSPSダイアセンブリと同様の黒鉛管の内側で2つの黒鉛スタッドで圧縮した。温度は、基本3.3msパルスを有するセットパルスの充填の%の修正によって調整される。h-BNリングを黒鉛炉内に挿入する前に、ダイヤモンド粒子の粉末は、h-BNリング内で事前圧縮される。
【0082】
2つのタイプの粉末ダイヤモンドを、使用した:マイクロメートル:Sandvik(MBM 3-6 100:3~6μm)及びナノメートル:Advanced Abrasives(MDP(N)100nm:70~130nm)。これら2つはまた、混合物としても使用された(目標は、マイクロメートル粒子間の空間をナノメートル粒子によって充填し、高密度化の増加につなげることであった)。
【0083】
実施例1-純粋なマイクロメートルダイヤモンド粉末から
Sandvik製の純粋なマイクロメートルダイヤモンド粒子(MBM 3-6 100:3-6μm)を、加熱することなく、5GPaで圧縮して、事前圧密された成形体を形成した。圧力を、最初に所望の値に増加させた。次いで、加熱サイクルを実行した。
【0084】
実施例2-ナノメートル及びマイクロメートルのダイヤモンド粉末の混合物から
マイクロメートルダイヤモンド粉末(Sandvik,MBM 3-6 100:3~6μm)とナノメートルダイヤモンド粉末(Advanced Abrasives、MDP(N)100nm:70~130nm)との混合物を、加熱せずに5GPaで圧縮して、事前圧密された成形体を形成した。最初に圧力を30分間かけて所望の値まで増加させた。次いで、100℃/分の一定加熱速度を有して加熱サイクルを実行して、目標焼結温度Tに到達させた。目標焼結温度を、所望の焼結期間(表1参照)維持し、その後、-100℃/分の冷却速度により試料を冷却して、室温(25℃±3℃)に到達させた。次いで、圧力を、5GPaから大気圧まで30分間かけて減少させた。
【0085】
表1は、実験条件及び結果をまとめたものである。取得されたダイヤモンドモノリスを、XRD及びラマンによって分析した。
【0086】
【0087】
これらの結果は、温度が、マイクロメートル粒子のみを含有する粉末については少なくとも1500℃であり、マイクロ/ナノメートル粉末の混合物については少なくとも1600℃である場合、5GPaでの焼結中にダイヤモンドの安定性を保つ可能性を示す。実に、最大5分の期間が、黒鉛化につながらない。
【0088】
表1のダイヤモンドモノリスに対してXRD回折及びラマン分析を実施した。全ての試料HP001~HP004は、XRD回折(HP001については
図2)によって測定される際、結合剤、焼結助剤のような不純物を含まず、ラマン分光法によって測定される際、黒鉛を含まなかった。HP004のラマンスペクトルは、純粋なダイヤモンド(ダイヤモンド粉末前駆体)の基準と同様である。
図3
HP002のSEM分析は、いくつかのマイクロメートル粒子間のネックの形成を示し、これは、ダイヤモンド粒間の粒間結合の形成を示す(
図4)。
【0089】
参考文献一覧
1.Hitoshi SUMIYA,Novel Development of High-Pressure Synthetic Diamonds「Ultra-hard Nano-polycrystalline Diamonds」,SEI TECHNICAL REVIEW・N°74(2012).
2.CN103331129A
3.H.Sumiya et al.,「Super-hard diamond indenter prepared from high-purity synthetic diamond crystal,」Rev.Sci.Instrum.,76,026112(2005)
【国際調査報告】