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特表2023-553859鋳型での金属の鋳造に使用するためのフィーダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】鋳型での金属の鋳造に使用するためのフィーダ
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/08 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B22C9/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533667
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021076732
(87)【国際公開番号】W WO2022117242
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102020132342.5
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518273699
【氏名又は名称】ヘメックス ファウンドリー ソリューションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ビーメル ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】シルマー ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】ドメン スヴェン
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093PA01
4E093PA06
(57)【要約】
本発明は、鋳型での金属の鋳造に使用するためのフィーダインサート(1、1’)に関しており、フィーダ本体(2、2’)、及び、前記フィーダ本体(2、2’)と相互作用しそれにより液体金属を受け入れるためのフィーダキャビティ(6)の境界を定めるフィーダ要素(4、4’)を備える。前記フィーダ本体(2、2’)は、前記液体金属のための流路開口部(10)が設けられた第1端部(8)と、前記第1端部(8)の反対側に位置し且つ開放している第2端部(12)とを有する。前記フィーダ要素(4、4’)は、この第2開放端部(12)に配置されている。前記フィーダ本体(2、2’)及び前記フィーダ要素(4、4’)の複数の部分が互いに入れ子式に移動されることが可能である。その結果、前記フィーダキャビティ(6)は、最小容積VKまで圧縮され得て、前記フィーダ本体(2、2’)は、当該最小容積VKの少なくとも40%の割合を画定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型での金属の鋳造に使用するためのフィーダインサート(1、1’)であって、フィーダ本体(2、2’)、及び、前記フィーダ本体(2、2’)と相互作用しそれにより液体金属を受け入れるためのフィーダキャビティ(6)の境界を定めるフィーダ要素(4、4’)を備え、
- 前記フィーダ本体(2、2’)は、前記液体金属のための流路開口部(10)が設けられた第1端部(8)と、前記第1端部(8)の反対側に位置し且つ開放している第2端部(12)とを有し、及び
- 前記フィーダ要素(4、4’)は、この第2開放端部(12)に配置されており、
前記フィーダ本体(2、2’)及び前記フィーダ要素(4、4’)の複数の部分が互いに入れ子式に移動されることが可能であり、
その結果、前記フィーダキャビティ(6)は、最小容積VKまで圧縮され得て、前記フィーダ本体(2、2’)は、当該最小容積VKの少なくとも40%の割合を画定する
ことを特徴とするフィーダインサート。
【請求項2】
前記フィーダ本体(2、2’)は、前記最小容積VKの、45%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に更に好ましくは80%以上、の割合を画定する
ことを特徴とする請求項1に記載のフィーダインサート。
【請求項3】
前記フィーダ本体(2、2’)は、質量mKを有し、
前記フィーダ要素(4、4’)は、質量mEを有し、
前記フィーダ本体(2、2’)の前記質量mKの前記フィーダ要素(4、4’)の前記質量mEに対する比は、0.5以上、好ましくは0.85以上、特に好ましくは1以上、特に非常に好ましくは2以上、更に好ましくは4~5以上、更に特に好ましくは約5.75、である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィーダインサート。
【請求項4】
前記フィーダ本体(2、2’)によって画定される前記最小容積VKの前記割合は、0.75以上、好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.85以上、特に非常に好ましくは0.9以上、の球形度ψを有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項5】
- i)前記フィーダ要素(4)の複数の部分が、前記フィーダ本体(2)内に押し込まれることが可能であるか、
あるいは、
- ii)前記フィーダ本体(2’)の複数の部分が、前記フィーダ要素(4’)内に押し込まれることが可能である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項6】
前記フィーダキャビティ(6)の容積重心が、前記フィーダキャビティ(6)が前記最小容積VKまで圧縮されるときに、前記フィーダ本体(2、2’)によって画定される容積割合内にある
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項7】
鋳型での金属の鋳造に使用するためのフィーダインサートであって、フィーダ本体(2)、及び、前記フィーダ本体(2)と相互作用しそれにより液体金属を受け入れるためのフィーダキャビティの境界を定めるフィーダ要素(4)を備え、
- 前記フィーダ本体(2)は、前記液体金属のための流路開口部(10)が設けられた第1端部(8)と、前記第1端部(8)の反対側に位置し且つ開放している第2端部(12)とを有し、及び
- 前記フィーダ要素(4)は、この第2開放端部(12)に配置され、
前記フィーダ要素(4)の複数の部分が前記フィーダ本体(2)内に押し込まれることが可能であり、
その結果、前記フィーダキャビティ(6)は、最小容積VKまで圧縮され得て、前記フィーダ本体(2)は、当該最小容積VKの少なくとも40%の割合を画定し、
前記フィーダ本体(2)は、質量mKを有し、
前記フィーダ要素(4)は、質量mEを有し、
前記フィーダ本体の前記質量mKの前記フィーダ要素の前記質量mEに対する比は、0.5以上であり、
前記フィーダキャビティの容積重心VSが、前記フィーダキャビティが前記最小容積VKまで圧縮されるときに、前記フィーダ本体(2)によって画定される容積割合内にある
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項8】
前記フィーダ本体(2、2’)は、前記第1端部(8)から前記第2端部(12)まで延在する壁(20)を有し、
前記壁(20)は、前記フィーダキャビティ(6)の境界を定めるその内側(22)に、前記フィーダ要素(4)のためのガイドを形成し、
前記フィーダ要素(4)は、前記ガイド上に沿って、前記フィーダ本体(2)内へと押し込まれ得る
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項9】
前記ガイドは、少なくとも1つの案内面(24)、または、前記壁(20)の前記内側に配置される複数のガイド部分、を有する
ことを特徴とする請求項8に記載のフィーダインサート。
【請求項10】
前記フィーダ本体(2、2’)は、前記第1端部から前記第2端部まで延在する長手方向軸(26)と、少なくともその長手方向軸の一部分に沿って当該長手方向軸の周りで実質的に回転対称形態である内側断面領域(28)と、を有する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項11】
前記フィーダ本体(2、2’)は、その第2端部(12)から始まって、その第1端部(8)の方向に、その長手方向軸(26)の少なくとも一部分に沿ってサイズが一定である及び/または小さくなる内側自由断面領域(28)を有する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項12】
前記フィーダ要素(4)は、前記フィーダ本体(2)の前記第2開放端部上に配置され得て後者を閉鎖し得るフィーダキャップとして構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項13】
前記フィーダ要素(4)は、前記フィーダ本体(2)の前記壁(20)の前記内側(22)と対応して前記フィーダ本体(2)内への前記移動中に当該フィーダ要素の動きを制動するように設計される接触部分(30)を有する
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項14】
前記フィーダ要素(4)は、前記フィーダ本体(2)の前記長手方向軸(26)に対して、少なくとも1つの支持ウェブ(32)を有しており、
当該少なくとも1つの支持ウェブ(32)は、前記フィーダ本体(2)の前記第2端部(12)の前記開口を経由して半径方向に外向きに突出し、好ましくはこの端部にある前記開口の全周に沿って前記フィーダ本体(2)の前記第2端部に存在する
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項15】
前記フィーダ要素(4)の複数の部分が、前記フィーダ本体(2)内に押し込まれることが可能であり、
前記支持ウェブ(32)は、前記フィーダ要素(4)が前記フィーダ本体(2)に入れ子式に押し込まれるときに、切断されるように設計されている
ことを特徴とする請求項14に記載のフィーダインサート。
【請求項16】
前記フィーダ本体(2)の前記壁(20)の前記内側(22)に対面する前記フィーダ要素(4)の接触部分(30)は、前記フィーダ本体(2)の前記壁(20)の前記内側に対して前記フィーダ要素(4)を保持するための少なくとも1つのクランプ部(34)を有する
ことを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項17】
前記フィーダ要素(4、4’)は、前記フィーダキャビティ(6)の境界を定めるその壁(38)のその内側(36)に、少なくとも1つの材料ウェブ(40)を有しており、
当該少なくとも1つの材料ウェブ(40)は、好ましくは前記フィーダ本体(2、2’)の前記長手方向軸(26)に対して半径方向及び軸方向に延在する
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項18】
2個、3個、4個またはそれ以上の材料ウェブ(40)が、前記フィーダ要素(4、4’)の前記内側壁(38)上に、前記長手方向軸(26)の周りに均一に分配されて配置されている
ことを特徴とする請求項17に記載のフィーダインサート。
【請求項19】
前記フィーダ要素(4、4’)は、前記フィーダキャビティ(6)に対面するその内側に、センタリングピン先端部(18)を受け入れるための凹部(16)を有する
ことを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項20】
前記フィーダ本体(2、2’)及び/または前記フィーダ要素の少なくとも複数の部分は、発熱性熱質量を含む
ことを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項21】
前記フィーダインサート(1、1’)は、約0.5cm~約9cmの範囲、好ましくは約1.2cm~約2.6cmの範囲、のモジュラスを有する
ことを特徴とする請求項1乃至20のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項22】
前記フィーダ本体(2、2’)及び前記フィーダ要素(4、4’)は、中心軸に沿って位置決めされ得るセンタリングピン(14)によって位置決めされるように設計されており、
前記フィーダキャビティ(6)は、前記中心軸の水平方向の配置の場合、当該フィーダキャビティ(6)の主要な容積割合が、前記中心軸の上方に位置決めされ得るように構成されている、
鉛直方向に分離可能な鋳型における前記金属の鋳造において使用するための、請求項1乃至21のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項23】
(i)前記フィーダ要素(4、4’)は、発熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が発熱性フィーダ材料を含み、及び/または、前記フィーダ本体(2、2’)は、発熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が発熱性フィーダ材料を含み、
あるいは、
(ii)前記フィーダ要素(4、4’)は、断熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が断熱性フィーダ材料を含み、及び/または、前記フィーダ本体(2、2’)は、断熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が断熱性フィーダ材料を含み、
あるいは、
(iii)前記フィーダ本体(2、2’)は、発熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が発熱性フィーダ材料を含み、及び/または、前記フィーダ要素(4、4’)は、発熱性フィーダ材料を含まず、断熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が断熱性フィーダ材料を含むか、若しくは、金属、プラスチック、厚紙、それらの混合物及びそれらの複合材料からなる群から選択される材料から形成されるか若しくは当該材料を含み、
あるいは、
(iv)前記フィーダ本体(2、2’)は、断熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が断熱性フィーダ材料を含み、及び/または、前記フィーダ要素(4、4’)は、発熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が発熱性フィーダ材料を含むか、若しくは、金属、プラスチック、厚紙、それらの混合物及びそれらの複合材料からなる群から選択される材料から形成されるか若しくは当該材料を含む
ことを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載のフィーダインサート。
【請求項24】
- 1つのフィーダ本体(2、2’)または複数のフィーダ本体(2、2’)、及び
- 1つのフィーダ要素(4、4’)または複数のフィーダ要素(4、4’)であって、フィーダ本体(2、2’)とフィーダ要素(4、4’)とのそれぞれの組み立てによって、請求項1~23のいずれか1項に記載のフィーダインサート(1、1’)が製造され得るか、または、請求項1~23のいずれか1項に記載の複数の異なるフィーダインサート(1、1’)が異なる容積で製造され得る、というように、前記1つまたは複数のフィーダ本体(2、2’)に対応する、1つのフィーダ要素(4、4’)または複数のフィーダ要素(4、4’)
を含む
ことを特徴とする請求項1乃至23のいずれかに記載の1または複数のフィーダインサート(1、1’)を製造するためのキット。
【請求項25】
前記複数のフィーダ本体(2、2’)またはそのうちの1つにある前記流路開口部(10)、及び好ましくは前記複数のフィーダ要素(4、4’)またはそのうちの1つにある、センタリングピン先端部(18)を受け入れるための凹部(16)、と対応するセンタリングピン(14)
を含むことを特徴とする請求項24に記載のキット。
【請求項26】
鋳型の製造中、鋳造作業中の鋳型に存在するモールドキャビティの高密度な供給のために、鉛直方向の鋳型の分離を用いる
ことを特徴とする請求項1乃至23のいずれかに記載のフィーダインサート(1、1’)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型内での金属の鋳造に使用するためのフィーダインサート(feeder insert)であって、フィーダ本体、及び、フィーダ本体と相互作用しそれにより液体金属を受け入れるためのフィーダキャビティの境界を定めるフィーダ要素を備え、フィーダ本体は、液体金属のための流路開口部の設けられた第1端部と、第1端部の反対側に位置し且つ開放している第2端部とを有し、フィーダ要素は、この第2開放端部に配置されており、フィーダ本体及びフィーダ要素の複数の部分が互いに入れ子式に移動されることが可能である、フィーダインサートに関する。更に、本発明は、1または複数のフィーダインサートを製造するためのキット、及び、このタイプのフィーダインサートの使用、に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳型での金属の鋳造において使用されるフィーダインサートが、従来技術において公知である。フィーダインサートは、少なくとも複数の領域において、鋳型を製造するために使用される鋳型材料、例えば鋳型用砂など、によって取り囲まれる。フィーダインサートを取り囲む鋳型材料によって、フィーダインサートは、鋳型内または鋳型の鋳型部分内の予め規定された位置に保持される。ここで、フィーダインサートのフィーダ本体及びフィーダ要素は、フィーダインサート内での鋳造に使用される液体金属を受け入れるためのフィーダキャビティの境界を定める。フィーダ本体は、液体金属のための流路開口部が設けられた第1端部を有し、その流路開口部によって、製造されるべき鋳型の鋳型部分のモールドキャビティの複数の領域への接続が確立される。鋳造中に鋳型のモールドキャビティへ充填される金属量の一部は、当該流路開口部を通ってフィーダインサートのフィーダキャビティ中へ流入する。金属が鋳型内で固まると、フィーダインサート内にあって、液体状態に保たれている金属は、鋳型へ戻るように流れ得る。
【0003】
フィーダ本体は、第2端部を有し、当該第2端部は、第1端部の反対側に位置して開放しており、第2開放端部に配置されるフィーダ要素によって閉鎖される。その結果、鉛直方向に閉鎖されたフィーダキャビティが構成される。圧縮固化(compaction)作業中に鋳型を製造するために使用される鋳型材料に作用する高圧に対抗することを可能にするために、最終の鋳型部分を形成するための鋳型材料の圧縮固化作業中に全体の高さに関して変更され得るフィーダインサートが使用される。
【0004】
ドイツ特許商標庁は、優先出願 DE10 2020 132 342.5に関して、以下の従来技術:DE 101 56 571 C1、DE 10 2005 025 701 A1、EP 1 184 104 A1、及び、EP 1 920 859 A1、を特定している。
【0005】
EP 1 184 104 A1 には、金属の鋳造において使用するためのフィーダインサートが開示されており、そのフィーダインサートは、フィーダ本体及びフィーダ要素を有し、フィーダ本体及びフィーダ要素の複数の部分が互いに入れ子式に移動されることが可能である。それゆえ、圧縮固化作業中、フィーダ本体及びフィーダ要素は、互いに対して動かされる。このフィーダインサート自体が、実際に証明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、使用されるフィーダインサートの幾何学的形状次第で、フィーダ本体の方へ向かって動くフィーダ要素の下方では鋳型材料の過度の圧縮固化が発生し得ることが分かった。これは、時には、鋳型板の損傷につながったり、または、鋳型材料から水が絞り出されたりすることになり、その結果、鋳造法の最中に様々な問題が発生し得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
それゆえ、前述の問題から、本発明は、まず、鋳型の製造中には高い圧縮固化圧力(compaction pressures)に耐え、及び、その使用中にはフィーダ本体の方へ向かって動くフィーダ要素の下方での鋳型材料の過度の圧縮固化のリスクが更に低下されるかまたは最善の場合には回避されるように、フィーダインサートを具体化するという目的に基づく。
【0008】
本発明は、それが基づく目的を、請求項1に記載の特徴を備えるフィーダインサートにおいて、達成する。特に、フィーダ本体及びフィーダ要素の複数の部分は、互いに入れ子式に移動され得て、その結果、フィーダキャビティは最小容積VKにまで圧縮され得て、フィーダ本体は、この最小容積VKの少なくとも40%の割合を画定する。
【0009】
それゆえ、本発明は、鋳型での金属の鋳造に使用するためのフィーダインサートに関し、フィーダ本体、及び、前記フィーダ本体と相互作用しそれにより液体金属を受け入れるためのフィーダキャビティの境界を定めるフィーダ要素を備え、前記フィーダ本体は、前記液体金属のための流路開口部が設けられた第1端部と、前記第1端部の反対側に位置し且つ開放している第2端部とを有し、前記フィーダ要素は、この第2開放端部に配置されており、前記フィーダ本体及び前記フィーダ要素の複数の部分が互いに入れ子式に移動されることが可能であり、その結果、前記フィーダキャビティは、最小容積VKまで圧縮され得て、前記フィーダ本体は、当該最小容積VKの少なくとも40%の割合を画定する。
【0010】
本発明によれば、フィーダ本体が圧縮されたフィーダキャビティの最小容積VKの少なくとも40%の割合を構成する、というアプローチが取られている。本発明によるフィーダ本体は、フィーダインサートの公知のフィーダのフィーダ本体と比較して、特に最大限圧縮されているフィーダインサートの最小容積の割合をかなり増加して有している。それゆえ、フィーダ本体(フィーダ下部とも呼ばれる)は、本発明によるフィーダインサートのフィーダ要素(フィーダ上部とも呼ばれる)に対して、そのフィーダ要素に対する公知のフィーダインサートのフィーダ本体よりも、かなり大きい。最近まで、大きなフィーダ上部が、鋳造プロセス中の満足のいく高密度な供給のために決定的に重要であったと考えられてきた。対照的に、フィーダインサート内のフィーダ本体(すなわち、フィーダ下部)のサイズが、鋳造中、フィーダ要素のサイズよりも、効果的な高密度な供給に対してかなり大きい影響を有する。最小容積VKまで圧縮されるフィーダキャビティは、好ましくは最大限まで圧縮された本発明によるフィーダインサートの状態を意味することが理解される。フィーダインサートの最大限圧縮可能な最小容積は、フィーダインサートのその状態を規定し、その場合、フィーダインサートの更なる圧縮(すなわち、フィーダ本体及びフィーダ要素の互いに対する更なる移動)は、フィーダ本体(フィーダ下部)及び/またはフィーダ要素(フィーダ上部)への損傷につながるかもしれない。圧縮中、フィーダ本体及びフィーダ要素の複数の部分が、好ましくは互いに入れ子式に移動される。
【0011】
本発明によるフィーダインサートの1つの好ましい改良形態は、前記フィーダ本体が、前記最小容積VKの、45%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に更に好ましくは80%以上、の割合を画定することを提供する。最小容積VKにおけるフィーダ本体の割合が大きいほど、フィーダインサートの熱中心は、製造されるべき鋳造部分の方向に更に動く。ここで、最小容積VK内のフィーダ本体の割合が増加する時、フィーダ要素がより軽量な構成とされ得る、及び、本発明によるフィーダインサートが公知のフィーダインサートと比べて材料消費が少ない状態で製造され得る、といった利点が高まる。フィーダ本体と比べてサイズが低減されているフィーダ要素の場合、フィーダ要素の下方での鋳型材料の過度の圧縮固化は、鋳型材料の圧縮固化作業中、次第に更に回避されるようになる。
【0012】
好ましくは、前記フィーダ本体は、質量mKを有し、前記フィーダ要素は、質量mEを有し、前記フィーダ本体の前記質量mKの前記フィーダ要素の前記質量mEに対する比は、0.5以上、好ましくは0.85以上、特に好ましくは1以上、特に非常に好ましくは2以上、更に好ましくは4~5以上、更に特に好ましくは約5.75、である。フィーダ本体がフィーダ要素と比べて大きく構成されるほど、フィーダ本体の質量mKとフィーダ要素の質量mEとの間の比も大きくなる。フィーダ本体のフィーダ要素に対する質量比はまた、製造される鋳造部分の近くに熱中心を配置することに、好都合な影響を及ぼす。フィーダ本体のフィーダ要素に対する質量比が大きいほど、製造されるべき鋳造部分の方向に熱中心が更に動き、鋳造部分の製造中の高密度の供給がより良好になる。ここで、フィーダ本体のフィーダ要素に対する質量比はまた、フィーダ本体及びフィーダ要素の構成に使用される材料に依存する。特に、本発明によるフィーダインサートを構成するために重量な発熱性の下部(フィーダ本体)及び軽量な絶縁性の上部(フィーダ要素)が好ましく使用されるとき、好ましくは5.75という質量比の最高値が達成される。
【0013】
1つの好ましい発展形態は、前記フィーダ本体によって画定される前記最小容積VKの前記割合が、0.75以上、好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.85以上、特に非常に好ましくは0.9以上、の球形度ψを有する、ということを提供する。
【0014】
本発明によるフィーダインサートの1つの好ましい実施形態によれば、前記フィーダ要素の複数の部分が、前記フィーダ本体内に押し込まれることが可能であるか、あるいは、前記フィーダ本体の複数の部分が、前記フィーダ要素内に押し込まれることが可能である。本発明によるフィーダインサートのフィーダ本体は、好ましくは、非変形可能なフィーダ下部である。フィーダ要素は、好ましくは、非変形可能なフィーダ上部である。使用中、フィーダ本体は、通常、鋳型板または鋳型モデル上に載置され、これによって所定位置に保持される。第1の実施形態によれば、鋳型または鋳型の鋳型部分を製造するために使用される鋳型材料を圧縮固化する最中、フィーダ要素(すなわち、フィーダ上部)がフィーダ本体内に押し込まれる。ここで、フィーダ要素及びフィーダ本体の表面領域は、好ましくは、互いに対して摺動する。第2の代替的な実施形態では、フィーダ本体(すなわち、フィーダ下部)がフィーダ要素内に押し込まれる。フィーダ上部及びフィーダ下部の表面領域は、好ましくは、この実施形態においても互いに対して摺動する。フィーダ本体を覆うように外側に押し付けられるフィーダ要素は、フィーダ本体の内側に押し込まれ得るフィーダ要素よりも、大きい寸法及び関連した大きい質量を有する。鋳型材料を圧縮固化する最中にフィーダ要素(フィーダ上部)がフィーダ本体(フィーダ下部)に押し込まれるフィーダインサートの場合、フィーダキャビティの最小容積VKのより高い割合が、好ましくは、フィーダ本体によって達成され、及び/または、より高いフィーダ本体のフィーダ要素に対する質量比が達成される。
【0015】
これに関連して、フィーダ本体を覆うように外側に押し付けられるフィーダ要素を備えるフィーダインサートの場合、フィーダキャビティの全最小容積VKにおけるフィーダ本体の割合は、もっぱらフィーダ本体によって画定され、特に上方へ向かって開放しているその第2端部によってフィーダ要素の方向において境界を定められることに留意されたい。対照的に、フィーダ要素がフィーダ本体の内側に押し込まれる本発明によるフィーダインサートの場合、フィーダキャビティの最小容積VKにおけるフィーダ本体の割合は、フィーダ本体内に押し込まれるフィーダ要素の下方端部によって画定される。この時、特に、フィーダ要素の下方端部は、フィーダ本体内の最小容積VKの境界線を形成する。フィーダ本体の第1端部と正確にこの境界線との間の領域のみが、全最小容積VKにおけるフィーダ本体の割合の決定に考慮される。
【0016】
好ましくは、本発明によるフィーダインサートの1つの発展形態によれば、前記フィーダキャビティの容積重心が、前記フィーダキャビティが前記最小容積VKまで圧縮されるときに、前記フィーダ本体によって画定される容積割合内にある、ということが提供される。鋳型材料を圧縮固化する最中、フィーダインサートの構成に関わらず、すなわち、フィーダ本体がフィーダ要素に押し込まれるかフィーダ要素がフィーダ本体に押し込まれるかに関わらず、本発明によるフィーダインサートの熱中心は、フィーダキャビティの容積重心と一緒に、製造されるべき鋳造部分の方向に移動される。フィーダキャビティの容積重心がフィーダ本体の第1端部の方向に遠くに(大きく)動く場合が、好都合である。
【0017】
1つの好ましい改良形態によれば、本発明は、鋳型での金属の鋳造に使用するためのフィーダインサートに関し、フィーダ本体、及び、前記フィーダ本体と相互作用しそれにより液体金属を受け入れるためのフィーダキャビティの境界を定めるフィーダ要素を備え、前記フィーダ本体は、前記液体金属のための流路開口部が設けられた第1端部と、前記第1端部の反対側に位置し且つ開放している第2端部とを有し、前記フィーダ要素は、この第2開放端部に配置され、前記フィーダ要素の複数の部分が前記フィーダ本体内に押し込まれることが可能であり、その結果、前記フィーダキャビティは、最小容積VKまで圧縮され得て、前記フィーダ本体は、当該最小容積VKの少なくとも40%の割合を画定し、前記フィーダ本体は、質量mKを有し、前記フィーダ要素は、質量mEを有し、前記フィーダ本体の前記質量mKの前記フィーダ要素の前記質量mEに対する比は、0.5以上であり、前記フィーダキャビティの容積重心VSが、前記フィーダキャビティが前記最小容積VKまで圧縮されるときに、前記フィーダ本体によって画定される容積割合内にある。このタイプの本発明によるフィーダインサートは、供給容積の減少及び関連した質量の減少にもかかわらず、鋳造中の補充作業の最中にこのタイプのフィーダインサートが少なくとも不変の或いはより高い加熱能力を達成するように、本発明にとって本質的である特徴を組み合わせる。本発明によるフィーダインサートは、好ましくは、逆入れ子式フィーダ(inverse tele-feeder)である、すなわち、鋳型材料の圧縮固化作業の最中に、フィーダ要素が通常固定されたフィーダ本体の内部に押し込まれる。フィーダ要素及びフィーダ本体は、通常、フィーダインサートが最大限圧縮されるように、互いに対して動かされる。そのため、フィーダインサートの内部のフィーダキャビティは、最小容積VKを有し、その少なくとも40%の割合が、フィーダ本体によって構成される。更に、フィーダ本体の質量は、フィーダ要素の質量の少なくとも半分に対応する。このようにしてフィーダインサートは好ましくは構成され、その場合、フィーダキャビティの容積重心は、フィーダ本体によって画定される容積割合に位置する。本発明の1つの取り得る改良形態では、フィーダ要素は、フィーダ本体内へ押し込まれる代わりに、鋳型材料の圧縮固化作業の最中に通例は固定されているフィーダ本体を覆うように外側に押し込まれるように設計される。
【0018】
本発明によるフィーダインサートの1つの発展形態は、前記フィーダ本体は、前記第1端部から前記第2端部まで延在する壁を有し、前記壁は、前記フィーダキャビティの境界を定めるその内側に、前記フィーダ要素のためのガイドを形成し、前記フィーダ要素は、前記ガイド上に沿って、前記フィーダ本体内へと押し込まれ得る、ということを提供する。鋳型部分または鋳型の製造中の圧縮固化作業の最中のフィーダ要素の傾きは、ガイドの提供によって妨げられる。フィーダ要素は、圧縮固化作業の最初のその開始位置から、フィーダインサートの最大限圧縮可能な状態に到達する範囲で、フィーダ本体内へ押し込まれ得る。互いに摺動するフィーダ本体の表面及びフィーダ要素の表面の間の摺動作用は、好ましくは、フィーダ本体に対してフィーダ要素が動く最中、ガイドによって達成される。
【0019】
前記ガイドは、少なくとも1つの案内面、または、前記壁)の前記内側に配置される複数のガイド部分、を有する。本発明の1つの好ましい改良形態によれば、ガイドは、その全範囲にわたって、フィーダ本体の壁の内側に構成され、その結果、大領域の摺動効果がもたらされる。フィーダインサートの代替的な実施形態は、好ましくはフィーダ本体の周囲に均一に分配されて配置された複数のガイド部分が、フィーダ本体の壁の内側に設けられることを提供する。個々のガイド部分は、フィーダ本体の内側に沿って、予め規定された角度範囲内でのみ、周方向に延在する。各ガイド部分は、フィーダ要素の動きの方向に延在するが、好ましくは、フィーダ本体の第2開放端部から、その流路開口部が設けられた第1端部の方向に、延在する。フィーダ本体に対して移動され得るフィーダ要素は、好ましくは、フィーダ要素のその静止位置からフィーダインサートの最大圧縮状態の範囲までの動きの全体の最中に、案内される。フィーダ本体は、ちょうどフィーダ要素のように、好ましくは案内面を有し、それらの面は互いに対面し、且つ、少なくともフィーダ要素の動きの方向におけるセクションにおいて互いに重なり合う。
【0020】
前記フィーダ本体は、前記第1端部から前記第2端部まで延在する長手方向軸と、少なくともその長手方向軸の一部分に沿って当該長手方向軸の周りで実質的に回転対称形態である内側断面領域と、を有する。好ましくはフィーダ本体の回転対称の断面領域の結果、好ましくはフィーダ本体の内側に沿って動かされ得るフィーダ要素も、実質的に回転対称形態の外側断面形状を有する。このようにして、周面に対して、フィーダ本体及びフィーダ要素は、いずれの所望の向きにおいても互いに結合され得る。フィーダ本体の長手方向軸は、特に、フィーダ本体の第1端部にある流路開口部の中心軸に対して同軸上に延びる。
【0021】
本発明によるフィーダインサートの1つの好ましい改良形態によれば、前記フィーダ本体は、その第2端部から始まって、その第1端部の方向に、その長手方向軸の少なくとも一部分に沿ってサイズが一定である及び/または小さくなる内側自由断面領域を有する。フィーダ本体は、好ましくは、長手方向において2つの機能領域に分割される。フィーダ本体の第2端部に割り当てられる上方機能領域のおかげで、本発明による入れ子式の動きを構成するための、移動可能なフィーダ要素と通常固定されているフィーダ本体との間の相対運動が、保証される。フィーダ本体の長手方向軸の一部分に沿って、上方機能領域は、実質的に一定サイズの自由断面領域を有する。その実質的に一定の断面領域を備える部分は、長手方向軸の方向にある高さを有し、その高さは、フィーダ本体のフィーダ要素に対するサイズ比に依存して規定される。当該高さは、好ましくは、本発明によるフィーダ本体の全高の少なくとも約3分の1に対応する。当該高さは、好ましくは、フィーダ本体の全高の約半分である。
【0022】
第2の下方機能領域は、鋳型モデルまたは鋳型板に取り付けるための、本発明によるフィーダインサートの取付領域を形成する。当該下方機能領域の自由断面は、好ましくは、一定の断面から、フィーダ本体の第1端部の方向に小さくなる。このようにして、小さくなった断面の取付領域がフィーダ本体に生じ、当該取付領域は、鋳造作業後、最終の鋳造部分にごく少量の砂の除去(fettling)を必要とする。当該下方機能領域は、好ましくは、長手方向軸に沿って、凸状に湾曲した輪郭を有する。フィーダ本体の長手方向軸の一部分に沿って、下方機能領域は、好ましくはほぼ球形の輪郭を有する。その結果、最大限圧縮可能なフィーダインサートの最小容積VKにおける本発明によるフィーダ本体の容積割合は、増大されることが意図され、フィーダ本体の第1端部の方向への熱中心の移動がもたらされることが意図される。
【0023】
前記フィーダ要素は、好ましくは、前記フィーダ本体の前記第2開放端部上に配置され得て後者を閉鎖し得るフィーダキャップとして構成される。フィーダキャップを提供することによって、鋳型の製造中にフィーダキャビティに鋳型材料が侵入するのを防止するべくフィーダ本体の開放端部を閉鎖するための構造的に簡単な可能性を提供する。フィーダ本体の第2開放端部を閉鎖することに加えて、フィーダ要素のキャップ様の構成は、フィーダ本体の複数の部分がその全体にわたってまたは後ろ側で係合されて、フィーダ要素がフィーダインサートの非圧縮状態にロックされること、それゆえ、フィーダ本体に対してその開始位置にロックされること、をもたらす。特にフィーダインサートが逆入れ子式フィーダとして構成される場合、フィーダ要素は、好ましくは、フィーダ本体の壁の内側でその開始位置に保持される。これを達成するために、フィーダ本体及び/またはフィーダ要素は、互いに接触される時にしっかりとしたロック接続をもたらす部分を有し得る。
【0024】
本発明によるフィーダインサートの1つの好ましい発展形態によれば、前記フィーダ要素は、前記フィーダ本体の前記壁の前記内側と対応して前記フィーダ本体内への前記移動中に当該フィーダ要素の動きを制動するように設計される接触部分を有するように設計される。フィーダ要素上にある接触部分によって、鋳型材料の圧縮固化作業によって開始されるフィーダ本体とフィーダ要素との間の相対運動の最中に、フィーダ要素の制御式の制動がもたらされる。その結果、本発明によるフィーダインサートは、予め規定された最大限圧縮可能な最小容積の範囲以上は圧縮されない。フィーダ本体に対してフィーダ要素をロックするためのクランプ作用は、好ましくは、フィーダ要素の接触部分とフィーダ本体の壁の内側との間で、フィーダインサートの非圧縮状態において、既に達成されている。当該制動機能は、好ましくは、第2開放端部から始まるフィーダ本体の第1の機能領域が、全周にわたって或いは複数の領域においてのみのいずれかで、第2の機能領域の方向にわずかに小さくなる自由断面を有するという事実によって、達成される。圧縮固化作業中にフィーダ要素が移動する場合、フィーダ要素の接触部分は、フィーダ本体の小さくなる断面上にますます動く(延びる)。フィーダ要素が更にフィーダ本体に対して、特にフィーダ本体中へと、移動される/押し込まれるにつれて、制動作用はより大きくなる。
【0025】
本発明の1つの取り得る実施形態では、フィーダ要素は、その壁の内側に、好ましくはフィーダ本体内に押し込まれ得るフィーダ要素のストッパ部の機能を果たす、好ましくは半径方向内向きに突出する肩部を有する。フィーダ本体の壁の内側での材料突出の形態のこの突出する肩部は、フィーダ本体内へのフィーダ要素の押し込みを制限する。このようにして、本発明によるフィーダインサートの最大限可能な圧縮が、制限され得る。
【0026】
前記フィーダ要素は、好ましくは、前記フィーダ本体の前記長手方向軸に対して、少なくとも1つの支持ウェブを有しており、当該少なくとも1つの支持ウェブは、前記フィーダ本体の前記第2端部の前記開口を経由して半径方向に外向きに突出し、好ましくはこの端部にある前記開口の全周に沿って前記フィーダ本体の前記第2端部に存在する。支持ウェブは、フィーダインサートが埋め込まれる鋳型または鋳型の鋳型部分の製造中、フィーダインサートの内部への鋳型材料の侵入が回避されるという状況を達成する。好ましくは周囲の支持ウェブのおかげで、フィーダ本体の壁の内側とフィーダ要素の外面との間の間隙が覆われる。
【0027】
本発明によるフィーダインサートの1つの好ましい発展形態は、前記フィーダ要素の複数の部分が、前記フィーダ本体内に押し込まれることが可能であり、前記支持ウェブは、前記フィーダ要素が前記フィーダ本体に入れ子式に押し込まれるときに、切断されるように設計されることを提供する。フィーダ要素とフィーダ本体との間の間隙を覆う機能に加えて、支持ウェブは、フィーダ要素を、フィーダ本体に対してその開始位置に保持するという役目をこなす。しかしながら、支持ウェブの材料厚さは、鋳型材料において予め規定された圧縮固化圧力に達した後、支持ウェブが好ましくは切断される、特には、均一にとりわけフィーダ要素の全周にわたって切り落とされる、ように選択される。その結果、フィーダ要素は、鋳型または鋳型の鋳型部分の製造中に、そのなすがままの動き(yielding movement)を行い得て、その結果、勝る押圧圧力にもかかわらず、フィーダインサートの損傷またはフィーダインサートの故障が回避される。
【0028】
前記フィーダ本体の前記壁の前記内側に対面する前記フィーダ要素の接触部分は、好ましくは、前記フィーダ本体の前記壁の前記内側に対して前記フィーダ要素を保持するための少なくとも1つのクランプ部を有する。フィーダ要素の接触部分の1または複数のクランプ部のおかげで、フィーダ本体の壁の内側と全周で当接する接触面の代わりとして、接触部分の幾つかの領域のみが、フィーダ本体とのクランプ作用のために提供される。3個またはそれ以上のクランプ部が、好ましくはフィーダ要素の接触部分に設けられ、それらのクランプ部は、一実施形態では、材料ウェブとして構成され、動きの方向に対して実質的に平行に延びる。クランプ部は、好ましくは、接触部分の実質的に円筒状の外面に半径方向外向きに突出する。
【0029】
本発明によるフィーダインサートの1つの好ましい発展形態は、前記フィーダ要素は、前記フィーダキャビティの境界を定めるその壁のその内側に、少なくとも1つの材料ウェブを有しており、当該少なくとも1つの材料ウェブは、好ましくは前記フィーダ本体の前記長手方向軸に対して半径方向及び軸方向に延在する、ということを提供する。例えばWilliamsストリップまたはWilliamsウェッジとして公知のものとして構成された、内側で突出する少なくとも1つの材料ウェブのおかげで、フィーダキャビティ内での液体金属の表面上の鋳肌の形成、及び、それゆえの金属の時期尚早な凝固、が妨げられる。複数の材料ウェブが、好ましくは、フィーダキャビティに対面するフィーダ要素の内側に配置され、当該材料ウェブは、フィーダキャビティのこの領域をチャンバのように分割する。このタイプの材料ウェブは、好ましくは、フィーダ本体の長手方向軸に対して、半径及び軸方向に延在する。2個、3個、4個またはそれ以上の材料ウェブが、好ましくはフィーダ要素の壁の内側に配置または構成される。材料ウェブは、好ましくは、カバーの内側からフィーダ要素の下方端部の所までフィーダ要素の鉛直方向に延在する。
【0030】
2個、3個、4個またはそれ以上の材料ウェブが、好ましくは、前記フィーダ要素の前記内側壁上に、前記長手方向軸の周りに均一に分配されて配置される。金属は、このタイプの複数の材料ウェブの提供によって、改良された態様で、フィーダキャビティ内で液体に保たれる。互いに直接隣接する2個の材料ウェブは、各場合に互いから同じ角度間隔にあり、当該角度間隔は、明らかに使用される材料ウェブの数に依存する。
【0031】
本発明の1つの好ましい改良形態では、前記フィーダ要素は、前記フィーダキャビティに対面するその内側に、センタリングピン先端部を受け入れるための凹部を有する。フィーダ要素上にセンタリングピン先端部のための受口として少なくとも1つの凹部を設けることによって、フィーダインサートを受け入れる鋳型モデルまたは鋳型板に対するフィーダインサートの位置安定性及び/または所望の向きが、単純な方法で維持され得る。更に、鋳型を構成する鋳型材料の圧縮固化作業の最中、フィーダ要素の案内が、フィーダ要素に設けられる凹部によってもたらされ、そのような圧縮固化作業の場合、フィーダ要素は、フィーダ本体に対して、それゆえセンタリングピンに対して、動かされる。
【0032】
本発明の1つの好ましい発展形態によれば、フィーダ本体及び/またはフィーダ要素の少なくとも複数の部分は、発熱性熱質量を含む。このタイプの発熱性熱質量のおかげで、フィーダキャビティ内での液体金属の凝固のふるまいは、狙い通りに影響を受け得る。フィーダインサートが発熱性質量で構成されているまたは後者をより多く含むほど、フィーダインサート中にある液体金属は前記発熱性質量によってより長く液体に保たれ得て、それゆえ、鋳造部分への補充作業をより長くすることが可能になる。フィーダ本体及び/またはフィーダ要素は、好ましくは複数の点でまたは複数の部分に、このタイプの発熱性質量を備える。
【0033】
フィーダインサートは、好ましくは約0.5cm~約9cmの範囲、更に好ましくは約1.2cm~約2.6cmの範囲、のモジュラスを有する。容積と熱を出力する表面積との間の、約0.5cm~約9cmという示された比は、好ましくは、フィーダインサートを具体化し、それにより、製造されるべき鋳造部分の満足のいく高密度の供給が達成され得る。本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明によるフィーダインサートのモジュラスは、約1.2~約2.6cmの範囲内にある。
【0034】
1つの好ましい改良形態によれば、フィーダインサートは、鉛直方向に分離可能な鋳型における金属の鋳造において使用するために提供され、前記フィーダ本体及び前記フィーダ要素は、中心軸に沿って位置決めされ得るセンタリングピンによって位置決めされるように設計されており、前記フィーダキャビティは、前記中心軸の水平方向の配置の場合、当該フィーダキャビティの主要な容積割合が、前記中心軸の上方に位置決めされ得るように構成される。本発明による対応するフィーダインサートは、1つの好ましい実施形態では、サイドフィーダとして使用され得て、そのおかげで、鋳型へのその上側からの慣習的な高密度供給の代わりに、鋳型のサイド領域に存在する鋳型の重要な領域も補充され得る。本発明によるフィーダインサートの1つの好ましい改良形態によれば、フィーダ本体及び/またはフィーダ本体に対して移動され得るフィーダ要素は、フィーダ本体及びフィーダ要素の長手方向軸に対して非対称的な形態であり、その長手方向軸は、好ましくは、フィーダ本体上の流路開口部または当該流路開口部を通ってフィーダキャビティ内へ突出するセンタリングピンによって画定される。
【0035】
本発明によるフィーダインサートの一実施形態によれば、フィーダキャビティの非対称的な形態は、フィーダ本体及びフィーダ要素の長手方向軸に対して、当該長手方向軸の一方の側でのフィーダ本体及びフィーダインサートの不均一な形態によって、達成される。このように構成されるフィーダインサートを使用した、対応する高密度な供給のために、フィーダインサートは、鋳型モデルまたは鋳型板で好ましい方向に位置決めされることが提供される。更なる改良形態は、フィーダ要素が、フィーダキャビティを規定するその内側に奇数の材料ウェブを有することを提供する。この時、フィーダ要素は、中心軸の水平方向配置の場合、中心軸の上方よりも中心軸の下方により多数の材料ウェブが配置されるというように、フィーダ本体上に位置決めされる。
【0036】
本発明によるフィーダインサートは、好ましくは、前記フィーダ要素が、発熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が発熱性フィーダ材料を含み、及び/または、前記フィーダ本体が、発熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が発熱性フィーダ材料を含む。発熱性フィーダ材料を使用することによって、フィーダインサート中にある金属が当該発熱性フィーダ材料によって比較的長期間にわたって液体状態に保たれ得るため、高い経済効率と、特に、鋳造プロセス中の満足のいく高密度な供給とが達成される。例えば、フィーダ本体を覆うように外側に押し付けられるかまたはフィーダ本体の内側に押し込まれるフィーダ要素の領域はまた、発熱性フィーダ材料からの代わりに、フィーダインサートからの熱の出力を好都合な態様で減少させる断熱性フィーダ材料から構成され得る。一方、結合剤を使用して結合される鋳型用砂、特にケイ砂、もまた、簡単にフィーダ材料として使用され得る。一方、鋳型要素の少なくとも複数の部分を構成するために、発熱性材料が好ましくは頻繁に使用される。フィーダインサートの幾つかの領域が、異なる特性(発熱性または断熱性)の異なる材料から形成され得る。代替例として、フィーダ本体及びフィーダ要素は、いずれの場合も、発熱性構成部分と断熱性構成部分とを備える均質材料混合物から形成され得る。
【0037】
幾つかの目的のために、本発明によるフィーダインサートは、前記フィーダ要素が、断熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が断熱性フィーダ材料を含み、及び/または、前記フィーダ本体が、断熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が断熱性フィーダ材料を含む場合に、好都合である。フィーダインサートの1つの代替的な実施形態の場合、好ましくは、前記フィーダ本体が、発熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が発熱性フィーダ材料を含み、及び/または、前記フィーダ要素が、発熱性フィーダ材料を含まず、断熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が断熱性フィーダ材料を含むか、若しくは、金属、プラスチック、厚紙、それらの混合物及びそれらの複合材料からなる群から選択される材料から形成されるか若しくは当該材料を含む。本発明によるフィーダインサートの更に代替的な改良形態として、前記フィーダ本体が、断熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が断熱性フィーダ材料を含み、及び/または、前記フィーダ要素が、発熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が発熱性フィーダ材料を含むか、若しくは、金属、プラスチック、厚紙、それらの混合物及びそれらの複合材料からなる群から選択される材料から形成されるか若しくは当該材料を含む。
【0038】
市販のフィーダ材料の代わりに、本発明によるフィーダインサートのフィーダ本体は、好ましくは金属、プラスチック、厚紙、それらの混合物及びそれらの複合材料からなる群から選択される様々な材料からなり得る。
【0039】
本発明によるフィーダインサートの更に代替的な改良形態の場合、フィーダ要素は、発熱性若しくは断熱性フィーダ材料から形成されるか、若しくは、少なくともその複数の部分が発熱性若しくは断熱性フィーダ材料を含み、及び/または、フィーダ本体は、金属、プラスチック、厚紙、それらの混合物及びそれらの複合材料からなる群から選択される材料から形成されるか若しくは当該材料を含む。それゆえ、金属、プラスチックまたは厚紙、あるいは、金属、プラスチック及び/または厚紙からなる混合物若しくは複合材料などの発熱性材料または断熱性材料が、任意選択的に、フィーダ本体用の材料として使用され得る。
【0040】
発熱性及び断熱性フィーダ材料は、好ましくは、フィーダ要素を構成するために使用される。フィーダ本体及びフィーダ要素のための材料選択は、実際には個別に実施され、それぞれの場合に実施されるべきタスクが考慮される。フィーダ本体用の材料の選択は、本発明によるフィーダインサートの特定の意図した目的において何らかの釣合いが必要とされない限り、フィーダ要素用の材料の選択とは独立に行われ得る。
【0041】
本発明の更なる態様は、1つのフィーダ本体または複数のフィーダ本体、及び、1つのフィーダ要素または複数のフィーダ要素であって、フィーダ本体とフィーダ要素とのそれぞれの組み立てによって、前述の好ましい実施形態のうちの1つに従って規定されるようなフィーダインサートが製造され得るか、または、前述の好ましい実施形態のうちの1つに従って規定されるような複数の異なるフィーダインサートが異なる容積で製造され得る、というように、前記1つまたは複数のフィーダ本体に対応する、1つのフィーダ要素または複数のフィーダ要素を含む、前述の好ましい実施形態のうちの1つに従って規定されるようなフィーダインサートを製造するためのキットに関する。
【0042】
この程度まで、本発明は、本発明によるフィーダインサートを形成するために、所与のフィーダ本体を異なる設計のフィーダ要素と組み立てることを可能にする、または、所与のフィーダ要素を異なる設計のフィーダ本体と組み立てることを可能にする、という補足的な概念に基づく。異なるフィーダ本体及び/またはフィーダ要素から所望通りに適切に製造され得るフィーダインサートは、好ましくは、いずれの場合も、1つのフィーダ本体及びフィーダ要素を有し、それらの部分は、それらが最小容積VKにまで圧縮され得るフィーダキャビティを構成するように、互いに入れ子式に移動され得て、いずれの場合も、フィーダ本体は、フィーダキャビティのこの最小容積VKの少なくとも40%の割合を画定する。本発明によるキットは、例えば、異なるフィーダ要素と組み合わせられ得るフィーダ本体を提供し、当該フィーダ要素のうちの1つがフィーダ本体を覆うように外側に押し付けられることが可能であり、及び、他のフィーダ要素がフィーダ本体の内側に押し込まれることが可能である。フィーダ本体を覆うように外側に押し付けられ得るフィーダ要素のおかげで、「伝統的な」入れ子式フィーダ(tele-feeder)が製造され、及び、フィーダ本体内に押し込まれ得るフィーダ要素のおかげで、逆入れ子式フィーダが製造される。
【0043】
更に、本発明によるキットは、好ましくは、前記複数のフィーダ本体またはそのうちの1つにある前記流路開口部、及び好ましくは前記複数のフィーダ要素またはそのうちの1つにある、センタリングピン先端部を受け入れるための凹部、と対応するセンタリングピンを含む。センタリングピンのおかげで、鋳型板に対するまたは鋳型モデルに対する、そのフィーダ本体及びそのフィーダ要素を備える本発明によるフィーダインサートの垂直方向の方向付けが、好ましくは行われる。センタリングピンは、好ましくは、流路開口部の形状に適合される形状を有するセンタリングピンベースを有する。1つの好ましい改良形態によれば、流路開口部は、非円筒状の断面を有し、センタリングピンベースの断面は、流路開口部の断面に対して相補的な形態である。この時、この改良形態では、センタリングピンとセンタリングピン上に押し込まれるフィーダ本体との間の回転防止安全装置がもたらされる。センタリングピン先端部も、同様に、非円筒状断面を有し得て、その結果、フィーダ本体及びセンタリングピン先端部と接触され得るフィーダ要素の場合に、中心軸周りの好ましい向きがもたらされる。
【0044】
更なる態様では、本発明は、少なくとも前述の好ましい実施形態のうちの1つに従って規定されるようなフィーダインサートの使用であって、鋳型の製造中、鋳造作業中の鋳型に存在するモールドキャビティの高密度な供給のために、鉛直方向の鋳型の分離を用いるフィーダインサートの使用に関する。本発明による利点に関して、及び、本発明によるキットまたは本発明による使用の好ましい実施形態に関して、フィーダインサートに関する前述の実施形態が参照される。後者は、本発明によるフィーダインサートの利点及び好ましい実施形態と同じである。
【0045】
本発明は、添付図面を参照して、1つの好ましい例示的な実施形態に基づいて、以下のテキストでより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明によるフィーダインサートの第1の実施形態の図を示す。
図2】非圧縮状態にある、図1による本発明によるフィーダインサートの図を断面図で示す。
図3】その最大限圧縮可能な状態にある、図1による本発明によるフィーダインサートの図を断面図で示す。
図4】本発明によるフィーダインサートの第2の実施形態の斜視図を示す。
図5】非圧縮状態にある、図4による本発明によるフィーダインサートの図を断面図で示す。
図6】その最大限圧縮可能な状態にある、図4による本発明によるフィーダインサートの図を断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、鋳型(詳細には図示せず)での金属の鋳造に使用される、本発明による第1の実施形態のフィーダインサート1を示す。フィーダインサート1は、フィーダ本体2と、フィーダ本体2と相互作用してそれにより液体金属を受け入れるためのフィーダキャビティ6の境界を定めるフィーダ要素4と、を含む。
【0048】
フィーダ本体2(フィーダ下部とも呼ばれる)は、液体金属のための流路開口部10が設けられている第1端部8を有する。更に、フィーダ本体2は、第1端部8の反対側に位置する第2端部12を有し、フィーダ本体2の第2端部12は開放している。1つの好ましい実施形態では、本発明によるフィーダインサートのフィーダ要素4は、フィーダ本体2の第2開放端部12に配置され、後者を閉鎖する。
【0049】
本実施形態では、フィーダ本体2及びフィーダ要素4の複数の部分が、互いに入れ子式に移動され得る。互いに対して入れ子式に移動する最中、フィーダ要素4の複数の部分は、フィーダ本体2内に押し込まれ、フィーダ本体の表面とフィーダ要素の表面とが互いに摺動する。フィーダ本体2及びフィーダ要素4は、それら自体が、通常、非変形可能な形態または非圧縮可能な形態である。
【0050】
フィーダ本体2及びフィーダ要素4の移動によって、フィーダキャビティ6は、最小容積VKにまで圧縮され得て、フィーダ本体は、この最小容積VKの少なくとも40%の割合を画定する。
【0051】
図1に示す実施形態では、フィーダ本体2は質量mKを有し、フィーダ要素4は質量mEを有し、フィーダ本体2の質量mKのフィーダ要素の質量mEに対する比は0.5以上である。本実施形態では、質量mKの質量mEに対する比は2以上である。
【0052】
鋳型板または鋳型モデル(詳細には図示せず)にフィーダインサート1を確実に正しく位置決めするために、フィーダインサート1は、センタリングピン14の助けを受けるが、センタリングピンはフィーダインサート自体の一部ではない。センタリングピン14は、単に、鋳型の製造の最中にフィーダインサート1を位置決めする機能を果たし、鋳型の少なくとも1つの鋳型部分の製造後に除去される。
【0053】
図1を見て分かるように、センタリングピン14は、フィーダ本体2の流路開口部10に対応し、及び、センタリングピン14のセンタリングピン先端部18を受け入れるためのフィーダ要素4の凹部16に対応する。
【0054】
図2は、非圧縮状態にある、すなわち、フィーダ本体2及びフィーダ要素4の互いに対する開始位置にある、フィーダインサート1の断面図を示す。図2を見て分かるように、フィーダ要素4の複数の部分が、フィーダ本体2内に押し込まれ得る。フィーダ本体2は、第1端部8から第2端部12まで延在する壁20を有する。
【0055】
一実施形態では、壁20は、フィーダキャビティ6の境界を定めるその内側22に、壁20の内側に沿って押し込まれ得るフィーダ要素4のためのガイドを形成または規定する。当該ガイドは、フィーダ本体2の壁20の内側22に、少なくとも1つの案内面24を含む。1つの取り得る実施形態では、案内面24の代わりに、壁の内側に配置される複数のガイド部分が設けられ得る。
【0056】
フィーダ本体は、第1端部8から第2端部12まで延在する長手方向軸26を有する。更に、フィーダ本体は、長手方向軸26の一部分に沿って、長手方向軸の周りで実質的に回転対称形態である断面領域28を有する(図1)。フィーダインサート1の更なる実施形態では、フィーダ本体は、その第2端部12から始まって、長手方向軸26に沿ったその第1端部8の方向において、一定の及び/または減少する内側自由断面領域を備える少なくとも一部分を有する。
【0057】
図3は、フィーダキャビティがその最小容積VKまで圧縮される、その最大限圧縮可能な状態にあるフィーダインサート1を示す。フィーダキャビティの最小容積VKにあるフィーダ本体2’の割合は、フィーダ要素4’の下方端部によって画定される境界線29によって上限が規定される。
【0058】
フィーダキャビティ6の容積重心VSは、フィーダ本体2によって画定される最小容積VKのその容積割合内にある。フィーダ本体によって画定される最小容積VKのその割合は、0.75以上の球形度を有する。
【0059】
更に、図2及び図3は、フィーダ要素4がフィーダキャップとして構成され、これが、フィーダ本体2の第2開放端部12上に配置され得て、第2端部12を閉鎖し得ることを示す。フィーダ要素4は、フィーダ本体2の壁20の内側22と対応する接触部分30を有する。接触部分30は、フィーダ本体2内へフィーダ要素4の複数の部分が入れ子式に移動する最中、フィーダ要素の動きを制動するように構成される。
【0060】
更に、フィーダ要素4は、フィーダ本体の第2開放端部12を越えて半径方向に外向きに突出する支持ウェブ32を有する。図示の実施形態では、支持ウェブ32は、フィーダ本体2の第2端部12において全周に沿って存在する。支持ウェブ32は、フィーダ本体2の第2端部12においてフィーダ要素4を所定位置に保持して、フィーダ本体2内へのフィーダ要素4の時期尚早な押し込みを回避する。更に、支持ウェブ32は、フィーダ要素4上の接触部分30とフィーダ本体2の壁20の内側22との間の領域を封止し、その結果、鋳型材料が、互いに対して摺動する表面間を通過することはない。
【0061】
支持ウェブ32は、フィーダ本体2内へとフィーダ要素4を入れ子式に押し込む最中に、切断されるように構成される。
【0062】
本発明によるフィーダインサートの一実施形態では、1または複数のクランプ部が、フィーダ要素4の接触部分30に設けられて、フィーダ本体2の壁20の内側に対してフィーダ要素4を保持する。フィーダ本体2の長手方向軸26に対して、1または複数のクランプ部34は、フィーダ要素4の接触部分30上でほぼ半径方向に突出して、フィーダ本体2の壁20の内側に対面する。
【0063】
フィーダキャビティ6の境界を定める壁38の内側36で、フィーダ要素4は、複数の材料ウェブ40を有する。図示の実施形態では、材料ウェブ40は、好ましくは、フィーダ本体2の長手方向軸26に対して半径方向及び軸方向に延在する。フィーダ要素4の壁38の内側に配置された複数の材料ウェブ40は、長手方向軸26の周りに均一に分配されて配置される。
【0064】
本発明の一実施形態では、フィーダインサート1は、その使用中、水平方向に延びる中心軸に沿って位置決めされ、フィーダキャビティの主要な容積割合は、中心軸の上方に位置決めされる。これは、奇数の材料ウェブ40を有するフィーダ要素4であって、中心軸の上方よりも下方により多くの材料ウェブ40が配置されるように中心軸に対して位置決めされるフィーダ要素4によって、達成される。
【0065】
図4は、本発明による第2の実施形態のフィーダインサート1’を示す。フィーダインサート1’は、フィーダ本体2’と、フィーダ本体2’と相互作用してそれにより液体金属を受け入れるためのフィーダキャビティ6の境界を定めるフィーダ要素4’と、を含む。
【0066】
フィーダ本体2’(フィーダ下部とも呼ばれる)は、液体金属のための流路開口部10が設けられる第1端部8を有する。更に、フィーダ本体2’は、第1端部8の反対側に位置する第2端部12を有し、フィーダ本体2’の第2端部12は開放している。図示の実施形態では、本発明によるフィーダインサート1’のフィーダ要素4’は、フィーダ本体2’の第2開放端部12に配置され、それを閉鎖する。
【0067】
本実施形態では、フィーダ本体2’及びフィーダ要素4’の複数の部分が、互いに入れ子式に移動され得る。互いに対して入れ子式に移動する最中、フィーダ要素4’の複数の部分は、フィーダ本体2’を覆うように外側に押し付けられ、フィーダ本体の面とフィーダ要素の面とが互いに摺動する。フィーダ本体2’及びフィーダ要素4’は、それら自体が、通常、非変形可能な形態または非圧縮可能な形態である。
【0068】
フィーダ本体2’及びフィーダ要素4’の移動によって、フィーダキャビティ6は最小容積VKにまで圧縮され得て、フィーダ本体は、この最小容積VKの少なくとも40%の割合を画定する。図4に示すフィーダ本体2’の実施形態は、好ましくは質量MKを有し、フィーダ要素4’は質量mEを有し、フィーダ本体2’の質量MKのフィーダ要素4’の質量mEに対する比は0.5以上である。
【0069】
鋳型板または鋳型モデル(詳細には図示せず)上でのフィーダインサート1’の位置決めを保証するために、センタリングピンが同様に使用され得る。そのため、センタリングピンは、フィーダ本体2’の流路開口部10に対応し、及び、センタリングピンのセンタリングピン先端部を受け入れるためのフィーダ要素4’の凹部16に対応する。
【0070】
図5は、非圧縮状態にある、すなわち、フィーダ本体2’及びフィーダ要素4’の互いに対する開始位置にある、フィーダインサート1’の断面図を示す。図5から明確にされるように、フィーダ要素4’の複数の部分が、フィーダ本体2’を覆うように外側に押し付けられ得る。
【0071】
その外側22’によって、フィーダ本体2’の壁20は、当該壁20の外側22’に沿って押し込まれ得るフィーダ要素4’のためのガイドを形成する。当該ガイドは、壁20の外側22’に、少なくとも1つの案内面24’を含む。
【0072】
図6は、その最大限圧縮可能な状態にあるフィーダインサート1’を示し、ここでは、フィーダキャビティ6はその最小容積VKまで圧縮されている。フィーダキャビティ6の最小容積VKでのフィーダ本体2’の割合は、上方に向かって開放しているその第2端部12それ自体によって決定される。フィーダキャビティ6の容積重心VSは、フィーダ本体2’によって画定される最小容積VKのその容積割合内にある。フィーダ本体2’によって画定される最小容積VKのその割合は、好ましくは0.75以上の球形度を有する。
【0073】
図5及び図6に示すように、フィーダ本体2’は、更に、フィーダ要素4’の内側と対応する接触部分30’を有する。接触部分30’は、フィーダ要素4’の複数の部分がフィーダ本体2’を覆うように入れ子式に移動する最中、フィーダ要素の動きを制動するように構成される。
【0074】
本発明によるフィーダインサート1’の一実施形態では、フィーダ本体2’の壁20の外側22’に対してフィーダ要素4’を保持するための1または複数のクランプ部34’が、フィーダ本体2’の接触部分30’に設けられる。フィーダ本体2’の長手方向軸26に対して、1または複数のクランプ部34’は、フィーダ要素4’の接触部分30’上でほぼ半径方向外向きに突出して、フィーダ要素4’の内側に対面する。
【0075】
フィーダ要素4’は、フィーダキャビティ6の境界を定める壁38の内側36に、複数の材料ウェブ40を有する。図示の実施形態では、材料ウェブ40は、好ましくは、フィーダ本体2’の長手方向軸26に対して半径方向及び軸方向に延在する。フィーダ要素4’の壁38の内側に配置される複数の材料ウェブ40は、長手方向軸26の周りに均一に分配されて配置される。
【0076】
本発明の一実施形態では、フィーダ要素4’は、長手方向軸26の一部分に沿って、下方端部から始まって上方端部の方向に円錐状に先細状である断面領域を有する。
【0077】
同一または類似の構成要素には、同じ符号が付されている。
【符号の説明】
【0078】
1、1’ フィーダインサート
2、2’ フィーダ本体
4、4’ フィーダ要素
6 フィーダキャビティ
8 第1端部
10 流路開口部
12 第2端部
14 センタリングピン
16 凹部
18 センタリングピン先端部
20 壁
22 内側
22’ 外側
24、24’ 案内面
26 長手方向軸
28 断面領域
30、30’ 接触部分
32 支持ウェブ
34、34’ クランプ部
36 内側
38 壁
40 材料ウェブ
K 最小容積、フィーダキャビティ
S 容積重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】