(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】標的RNA検出
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6888 20180101AFI20231219BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20231219BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20231219BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20231219BHJP
【FI】
C12Q1/6888 Z
C12Q1/70 ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6844 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533668
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021084172
(87)【国際公開番号】W WO2022117816
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】305031567
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ バーミンガム
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タッカー, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ダフォーン, ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】カーター, ジェイク
(72)【発明者】
【氏名】デュプレイ, ジャン-ルイス ヘンリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】イトゥルベ, ロレア オレタ
(72)【発明者】
【氏名】ヒックス, マシュー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ10
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4B063QR14
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4B063QX01
(57)【要約】
本開示は、DNA/RNA二重鎖のDNA鎖にニック形成し、その生成物を増幅するプロセスに基づいて、サンプル中の標的RNA配列を検出することにおける使用のための方法および生成物に関する。本開示は、RNA/DNA二重鎖のDNA鎖にニック形成することができる酵素の同定および使用、ならびに増幅された生成物を生成するためのそのニック形成されたDNAの使用に基づく。1つの教示において、その増幅された生成物は、指数関数的増幅反応(EXPAR)を使用して生成され得る。本明細書中の教示に従って、本発明者らは、それらが、サンプル(例えば、CoVID-19患者サンプル)から10分未満で(例えば、5分以内に)RNAを正確に同定し得ることを示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の標的RNA配列を検出する方法であって、前記方法は、
a)前記サンプルと、第1の温度において、バインダーDNA分子および特異的認識配列においてRNA/DNA複合体のDNA鎖にニック形成することができる制限エンドヌクレアーゼとを、ニック形成されたDNA分子を生成するために接触させる工程であって、
ここで前記バインダーDNA分子は、前記第1の温度において前記標的RNA配列に対して特異的に結合し、それによってRNA/DNA二重鎖を形成することができ:前記バインダーDNA分子は、前記第1の温度において前記標的RNA配列に結合せずかつテンプレートDNA分子に相補的な配列を含む配列の一部分;および前記第1の温度において前記標的RNA配列に対して特異的に結合することができかつ前記特異的認識配列を含む配列のさらなる一部分を含み、
ここで前記制限エンドヌクレアーゼは、前記認識配列において前記結合したバインダーDNA分子にニック形成し、その結果、前記ニック形成されたDNA分子を、前記RNA/DNA二重鎖から放出することができる工程;あるいは
a’)前記サンプルと、第1の温度において、バインダーDNA分子、逆転写酵素および特異的認識配列においてRNA/DNA複合体の前記DNA鎖にニック形成することができる制限エンドヌクレアーゼとを、ニック形成されたDNA分子を生成するために接触させる工程であって、
ここで前記バインダーDNA分子は、前記第1の温度において前記標的RNA配列に対して特異的に結合し、それによって、RNA/DNA二重鎖を形成し、dNTPおよび前記逆転写酵素の存在下で鎖伸長および伸長したRNA/DNA二重鎖の生成を開始することができ、前記伸長したRNA/DNA二重鎖は、前記特異的認識配列を含み、
ここで前記制限エンドヌクレアーゼは、前記認識配列において前記伸長したRNA/DNA二重鎖にニック形成し、その結果、前記ニック形成されたDNA分子を、前記RNA/DNA二重鎖から放出することができる工程;ならびに
b)第2の温度において、前記ニック形成されたDNA分子と前記テンプレートDNA分子とを接触させ、その結果、前記ニック形成されたDNA分子が前記テンプレートDNA分子を結合し、dNTPsおよびDNAポリメラーゼの存在下で鎖伸長および増幅された生成物の生成を開始する工程;および
前記増幅された生成物のうちのいずれかを検出する工程であって、ここで前記増幅された生成物の検出は、前記サンプルが検出されるべき前記標的RNA配列を含むことを示す工程、
を包含する方法。
【請求項2】
工程a)/a’)および工程b)は、単一の反応器、レセプタクルまたは容器中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のおよび第2の温度は同じである、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
標的RNA配列は、mRNA;rRNA;siRNA;hnRNA;piRNA;aRNA;miRNA;感染性因子に由来するRNA;または合成RNA分子である、任意の前記の請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記感染性因子は、細菌、真菌またはウイルスである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスは、1本鎖もしくは2本鎖のRNAウイルス、または宿主細胞のゲノムに組み込まれかつmRNAを生成するために転写されるウイルスである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルスは、C型肝炎ウイルス、ウェストナイルウイルス、デングウイルス、SARS、MERS、およびSARS-CoV-2コロナウイルスのようなプラスセンスRNAウイルスである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記SARS-CoV-2コロナウイルスは、CoVID-19である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程a)の前記バインダーDNA分子は、45~70℃の範囲にその標的RNA分子に対する融解温度を有し、前記ニック形成されたDNA分子の融解温度は30~45℃の範囲にある、任意の前記の請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記DNA制限エンドヌクレアーゼは、BstNI、AvrIIまたはPhoIである、任意の前記の請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記増幅された生成物は、可変サーマルサイクリング(PCRのような)、もしくは等温増幅技術および/または線形増幅反応もしくは指数関数的増幅反応(EXPAR)によって生成される、任意の前記の請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記EXPARは、鎖置換増幅(SDA)またはニック形成酵素増幅反応(NEAR)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記増幅された生成物は、発光、UVまたは可視光の分光法もしくは分光測定法、蛍光分光法もしくは分光測定法、質量分析法、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、電気化学、電気泳動、酵素標識、蛍光標識、化学発光、生物発光、表面プラズモン共鳴(SPR)、発蛍光団改変プローブDNAによって、裸眼によって視覚的に、適切な色素生成/色の変化もしくは生成によって(例えば、適切なタグもしくは色素改変プローブもしくは核酸を使用することによって)、またはこれらの任意の組み合わせによって検出される、任意の前記の請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記増幅された生成物は、前記方法開始の15分以内、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、またはさらには5分未満に検出される、任意の前記の請求項に記載の方法。
【請求項15】
任意の前記の請求項に記載の方法における使用のためのバインダーDNA分子であって、前記バインダーDNA分子は、RNAテンプレートを特異的に結合することができ、前記バインダーDNA分子は、
標的RNA分子に相補的であり、前記バインダーDNAがDNA/RNA二重鎖の一部である場合に、制限エンドヌクレアーゼによってニック形成され得るDNA制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む一部分;ならびに
標的RNA分子に相補的である前記一部分が前記標的RNA分子に結合される場合に、前記標的RNA分子に相補的でもなく結合もしないさらなる一部分、
を含む、バインダーDNA分子。
【請求項16】
前記バインダーDNAは、20~50ヌクレオチドの長さである、請求項15に記載のバインダーDNA。
【請求項17】
前記標的RNA配列に結合しない領域は、2~8ヌクレオチドの長さである、および/または前記バインダーDNAの5’末端にある、請求項15または16のいずれかに記載のバインダーDNA。
【請求項18】
1またはこれより多くの化学的改変を含み、ここで必要に応じて前記1またはこれより多くの化学的改変は、前記バインダーDNAの3’および/または5’末端にある、請求項15~17のいずれかに記載のバインダーDNA。
【請求項19】
前記バインダーDNA分子は、以下の配列:
【化8】
【化9】
から本質的になるかまたはからなる、請求項15~18のいずれかに記載のバインダーDNA分子。
【請求項20】
前記バインダーDNAは、以下の配列:
【化10】
から本質的になるかまたはからなる、請求項19に記載のバインダーDNA分子。
【請求項21】
請求項1~14のいずれかに記載の方法における使用のためのキットであって、前記キットは、
第1の温度において、前記標的RNA配列に対して特異的に結合することができ、それによって、RNA/DNA二重鎖を形成するバインダーDNA分子であって:前記バインダーDNA分子は、前記第1の温度において前記標的RNA配列に結合せず、テンプレートDNA分子に相補的な配列を含む配列の一部分;および前記第1の温度において前記標的RNA配列に対して特異的に結合することができ、かつ前記特異的認識配列を含む配列のさらなる一部分を含むバインダーDNA分子、あるいは
第1の温度において、前記標的RNA配列に対して特異的に結合することができ、それによって、RNA/DNA二重鎖を形成し、dNTPsおよび逆転写酵素の存在下で鎖伸長および伸長したRNA/DNA二重鎖の生成を開始することができるバインダーDNA分子であって、前記伸長したRNA/DNA二重鎖は、前記特異的認識配列を含むバインダーDNA分子、
から本質的になるかまたはからなり、前記キットは、必要に応じて、前記逆転写酵素;および
標的RNA分子に結合した場合に、制限エンドヌクレアーゼの前記認識配列において前記バインダーDNA配列にニック形成することができる前記制限エンドヌクレアーゼ、
をさらに含むキット。
【請求項22】
前記バインダーDNA分子は、請求項15~20のいずれかに記載のバインダーDNA分子である、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記制限エンドヌクレアーゼは、BstNI、AvrIIまたはPhoIである、請求項21または22のいずれかに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、サンプル中の標的RNA配列を検出することにおける使用のための方法および生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
CoVID-19は、2020年3月11日に全世界的なパンデミックを宣言され、118,000を超える症例が、114の異なる国々において報告された。3ヶ月以内に、症例数は、188の国々においてほぼ650万症例へと上昇した。集団全体へのその拡がりを低減するために、正確かつ効率的なウイルス検査ストラテジーが、必須である。このストラテジーの重要な部分は、アッセイ時間を短縮し、サンプルスループットの増加を目的とした連続的なアッセイ開発である。SARS-CoV-2感染の臨床症状が、風邪およびインフルエンザのものに似たものであり得ることを考慮すれば、ウイルス自体の明確な同定は、効果的な診断のために極めて重要である。上記疾患の早期ステージでは、これは、ウイルスRNAを検出することによってのみ真に達成され得る。
【0003】
診断産業は迅速に、一連の検出プラットフォームを、とりわけ、CDC、Thermo Fisher、およびPublic Health Englandとともに開発することに応じ、この前例のない危機を管理するために検査を発売した1。SARS-CoV-2検出に使用される最も一般的なアッセイは、1サンプルあたり60分超かかり、2工程プロセスを代表的には含むqPCRベースのものである。第1に、逆転写酵素は、ウイルスRNAを相補的DNA(cDNA)に変換するために使用される(最大30分かかり得るプロセス)2。次いで、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)は、蛍光色素を使用して検出されるcDNAを増幅するために行われ得る(最大1時間かかるプロセス)3-5。アッセイ時間を短縮するために、SARS-CoV-2 RNA検出へのたくさんの新たなアプローチが、過去数ヶ月間で文献中に出現してきている。ほぼまちがいなく、これらの中で最も成功裡のものは、DNA増幅に等温的アプローチを適用し、増幅速度を大きく加速し、よって、アッセイ時間を短縮した6,7。最も一般的な等温増幅システムは、ループ媒介性等温増幅(Loop mediated isothermal AMPlification)(LAMP)である。LAMP法は、SARS-CoV-2のために開発されたが、それらは、<10分で結果を与えることに悪戦苦闘している7。
【0004】
診断アッセイにおいてしばしば使用される別の技術は、指数関数的増幅反応(EXPAR)である。EXPAR反応は、DNAに制限される。なぜなら反応に必要とされるニックエンドヌクレアーゼは、DNA二重鎖に対してのみ活性であるからである。このことは、EXPARを使用してRNAを検出するために、RNA→DNA工程が要求されることを意味する。これは、逆転写酵素(RT)反応によって概して提供される。RT工程をしばしば要求することはさておき、EXPARは、他の類似の技術より迅速である。なぜならそれは、非常に短い1本鎖配列が増幅されることのみを要求するように最適化されているからである。EXPARアッセイのためにかかる時間は一般に、得られる短いフラグメントがポリメラーゼをプライムするために必要とされる二重鎖を形成するために所望の温度での結合エネルギーを有しないであろうことから、さらに最適化され得ない。速度は、温度を上昇させることによって増加され得るが、これはまた、より長い配列が二重鎖を形成するために必要とされることを意味する。このことは、RT工程を使用するEXPARベースのようなEXPARs速度を増加させる方法が制限されることを意味する。さらに、アッセイを行うために必要な任意のさらなる反応は、合計のアッセイ時間をさらに増加させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本開示は、RNA/DNA二重鎖のDNA鎖にニック形成することができる酵素の同定および使用、ならびに増幅された生成物を生成するためのそのニック形成されたDNAの使用に基づく。1つの教示において、その増幅された生成物は、指数関数的増幅反応(EXPAR)を使用して生成され得る。本明細書中の教示に従って、本発明者らは、それらが、サンプル(例えば、CoVID-19患者サンプル)から10分未満で(例えば、5分以内に)RNAを正確に同定し得ることを示した。
【0006】
第1の教示において、サンプル中の標的RNA配列を検出する方法であって、上記方法は、
a)上記サンプルと、第1の温度において、バインダーDNA分子および特異的認識配列においてRNA/DNA複合体の上記DNA鎖にニック形成することができる制限エンドヌクレアーゼとを、ニック形成されたDNA分子を生成するために接触させる工程であって、
ここで上記バインダーDNA分子は、上記第1の温度において上記標的RNA配列に対して特異的に結合し、それによって、RNA/DNA二重鎖を形成することができ:上記バインダーDNA分子は、上記第1の温度において上記標的RNA配列に結合せずかつテンプレートDNA分子に相補的な配列を含む配列の一部分;および上記第1の温度において上記標的RNA配列に対して特異的に結合することができかつ上記特異的認識配列を含む配列のさらなる一部分を含み、
ここで上記制限エンドヌクレアーゼは、上記認識配列において上記結合したバインダーDNA分子にニック形成し、その結果、上記ニック形成されたDNA分子を、上記RNA/DNA二重鎖から放出することができる工程;あるいは
a’)上記サンプルと、第1の温度において、プライマー、逆転写酵素および特異的認識配列においてRNA/DNA複合体の上記DNA鎖にニック形成することができる制限エンドヌクレアーゼとを、ニック形成されたDNA分子を生成するために接触させる工程であって、
ここで上記プライマーは、上記第1の温度において、上記標的RNA配列に特異的に結合し、それによって、RNA/DNA二重鎖を形成し、dNTPsおよび上記逆転写酵素の存在下で鎖伸長および伸長したRNA/DNA二重鎖の生成を開始することができ、上記伸長したRNA/DNA二重鎖は、上記特異的認識配列を含み、
ここで上記制限エンドヌクレアーゼは、上記認識配列において上記伸長したRNA/DNA二重鎖にニック形成し、その結果、上記ニック形成されたDNA分子を、上記RNA/DNA二重鎖から放出することができる工程;ならびに
b)第2の温度において、上記ニック形成されたDNA分子と、上記テンプレートDNA分子とを接触させ、その結果、上記ニック形成されたDNA分子の少なくとも3’部分が、上記テンプレートDNA分子を結合し、dNTPsおよびDNAポリメラーゼの存在下で鎖伸長および増幅された生成物の生成を開始する工程;および
上記増幅された生成物のうちのいずれかを検出する工程であって、ここで上記増幅された生成物の検出は、上記サンプルが、検出されるべき上記標的RNA配列を含むことを示す工程を包含する方法を提供する。
【0007】
本明細書中でより詳細に記載されるように、工程a)および工程b)は、単一のレセプタクル/容器、または2個の別個のレセプタクル/容器の中で行われ得る。
【0008】
いくつかの教示において、上記第1のおよび第2の温度は、同じ温度である。
【0009】
上記標的RNA配列は、任意の適切なRNA配列(ヒトRNA配列が挙げられる)であってもよく、mRNA、rRNA、siRNA、hnRNA、piRNA、aRNA、miRNA、感染性因子に由来するRNAおよび合成RNA分子などを含み得る。1つの教示において、上記標的RNA配列は、感染性因子に由来し、本明細書で記載される方法は、上記サンプルが感染性因子、上記感染性因子に由来するRNAを含むかどうかを確認するために使用され得る。従って、上記方法は、いくつかの教示において、例えば被験体が上記感染性因子に感染しているかどうか、または基材が上記感染性因子に汚染されているかどうかを検出するために使用され得る。
【0010】
さらに、いくつかの組み込まれるウイルス(宿主のゲノムへと組み込まれるウイルス、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV))に関しては、上記ウイルスDNAを検出するよりむしろ、転写されるmRNAを検出する方がよい場合がある。これは、HPVの場合には、高リスクHPVのE6/E7発癌遺伝子の発現が、異形成表現型の発生および維持に必要であることが理由である。従って、E6/E7 mRNAの検出は、HPV DNAを単に検出するよりも良好な予後評価を提供し得る。従って、細胞中で転写されるHPVおよび他の組み込まれるウイルスのmRNAは、本開示に従って検出され得る。例としては、エプスタインバーウイルス(EBV);肝炎(例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV));アデノ随伴ウイルス-2(AAV-2);およびレトロウイルス(例えば、HIVおよび内在性レトロウイルス(ERV1))が挙げられる。
【0011】
上記感染性因子は、例えば、細菌、真菌またはウイルスであり得る。ある特定の教示において、上記感染性因子は、1本鎖もしくは2本鎖のRNAウイルス、またはゲノム組み込みウイルス(ここでそのうちの1もしくはこれより多くの遺伝子が、宿主細胞によって転写される)である。上記教示は、1本鎖RNAウイルス(例えば、プラス鎖およびマイナス鎖のRNAウイルスが挙げられる)の検出に特に適している。
【0012】
プラス鎖RNAウイルスは、Kitrinoviricota門、Lenarviricota門、およびPisuviricota門(特に、Pisoniviricetes綱およびStelpavirictes綱)の間で分けられ、これらは全て、Orthornavirae界(kingdom)およびRiboviria界(realm)の中にある。それらは、単系統であり、共通のRNAウイルス祖先に由来している。
【0013】
プラス鎖RNAウイルスは、C型肝炎ウイルス、ウェストナイルウイルス、デングウイルス、ならびにSARS、MERS、およびSARS-CoV-2コロナウイルスのような多くの病原体、ならびにそれほど臨床上は重大ではない病原体(例えば、風邪を引き起こすライノウイルス)を含む大部分の公知のウイルスを占める。
【0014】
例示的なプラス鎖RNAウイルスとしては、以下が挙げられる:
1.ビモウイルス、コモウイルス、ネポウイルス、ノダウイルス、ピコルナウイルス、ポチウイルス、ソベモウイルス、および一部のルテオウイルス(テンサイ西部萎黄病ウイルスおよびジャガイモ葉巻ウイルス)-ピコルナ様グループ(Picornavirata)。
2.カルモウイルス、ディアントウイルス(dianthoviruses)、フラビウイルス、ペスチウイルス、スタトウイルス(statoviruses)、トンブスウイルス、1本鎖RNAバクテリオファージ、C型肝炎ウイルス、および一部のルテオウイルス(オオムギ黄萎ウイルス)-フラビ様グループ(Flavivirata)。
3.アルファウイルス、カルラウイルス(carlaviruses)、フロウイルス、ホルデイウイルス、ポテックスウイルス、ルビウイルス、トブラウイルス、トリコルナウイルス(tricornaviruses)、ティモウイルス、リンゴクロロティックリーフスポットウイルス(apple chlorotic leaf spot virus)、テンサイ萎黄ウイルスおよびE型肝炎ウイルス-アルファ様グループ(Rubivirata)。
【0015】
例示的なマイナス鎖RNAウイルスとしては、以下が挙げられる:D型肝炎ウイルスおよびネガルナウイルス門ウイルス(Negarnaviricorta viruses)(これは、ハプロウイルス亜門(Haploviricotina)およびポリプロウイルス亜門(Polyploviricotina)のウイルスを含む)。注目すべきハプロウイルス亜門ウイルスとしては、例えば、エボラ、マールブルグ、麻疹、ムンプス、RSVおよび狂犬病が挙げられる。注目すべきポリプロウイルス亜門ウイルスとしては、ラッサウイルスおよびインフルエンザウイルスが挙げられる。
【0016】
本発明は、コロナウイルスおよびCoVID-19を特に検出するという点において本明細書で例証され得るが、これは、限定として解釈されるべきではなく、当業者は、本教示を容易に認識し、他のRNA標的の検出に適応させ得る。
【0017】
標的RNA配列を含み得るサンプルの任意のタイプが、本明細書で開示される方法においてまたはキットとともに使用され得る。よって、標的RNA配列を含むかまたは含むと疑われるサンプルは、具体的に限定されず、例えば、生きている被験体に由来する生物学的サンプル(例えば、全血、血清、バフィーコート、尿、糞便、脳脊髄液、精液、唾液)、組織(例えば、肺組織)、細胞培養物(例えば、哺乳動物細胞培養物または細菌培養物);RNAを含むサンプル(例えば、ウイロイド、ウイルス、細菌、真菌、酵母、植物、および動物);ウイルスまたは細菌のような微生物を含み得るかまたはこれらが感染し得るサンプル(例えば、食品および生物学的調製物);ならびに生物学的物質を含み得るサンプル(例えば、土壌、産業プロセスおよび製造設備、ならびに廃水);ならびに種々の水源に由来するサンプル(例えば、飲用水)が挙げられる。上記サンプルはまた、例えば、感染性因子を含むかまたは感染因子によって汚染されていると疑われる、例えば、固体表面のスワブであり得る。
【0018】
さらに、サンプルは、本明細書で開示される方法において使用されるRNA含有組成物を調製するために任意の公知の方法によって処理され得る。このような調製の例としては、細胞破砕(例えば、細胞溶解物および抽出物)およびサンプル分別が挙げられ得る。サンプルは、1個のサンプルであり得るか、または複数のサンプル(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、8個、10個またはこれより多くのサンプル)であり得、これらは、一緒にプールされ得、単一の試験において試験される。
【0019】
本明細書でさらに記載されるように、本発明者らは、ある特定のDNA制限エンドヌクレアーゼが、それらの通常の/従来の標的がDNA/DNA二重鎖であったとしてもDNA/RNA二重鎖を認識することができ、上記DNA/RNA二重鎖のDNA鎖にニック形成することができることを特定した。本発明のバインダーDNAおよび/またはプライマー分子は、上記第1の温度において、上記標的RNA配列を特異的に結合することができ、上記制限エンドヌクレアーゼは、その認識配列において上記DNA/RNA二重鎖のDNA鎖にニック形成することができなければならない。上記バインダーDNA/プライマー分子は、上記標的RNA配列に相補的であり、その結果、上記バインダーDNA/プライマーが、上記第1の温度において、上記標的RNAを結合し得る配列の一部分であるかまたはその一部分を含む。しかし、上記バインダーDNA/プライマーは、上記第1の温度において、テンプレートDNAを結合することができないか、または少なくともテンプレートDNAを結合して、そこから鎖伸長を開始することができない。
【0020】
さらなる局面において、RNAテンプレートを特異的に結合するためのバインダーDNA分子であって、上記バインダーDNA分子は、
標的RNA分子に相補的であり、かつ上記バインダーDNAがDNA/RNA二重鎖の一部である場合に、制限エンドヌクレアーゼによってニック形成され得るDNA制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む一部分;ならびに標的RNA分子に相補的である上記一部分が、第1の温度において上記標的RNA分子に結合される場合に、上記標的RNA分子に相補的でなく、結合しないさらなる一部分を含むバインダーDNA分子、
が提供される。
【0021】
本明細書で言及されるように、1つの教示において、本開示は、CoVID-19の検出に関し、この点において、本教示は、CoVID-19を検出するために、本教示に従って使用するために具体的に設計されたバインダーDNA配列を提供する。
【0022】
従って、CoVID-19の検出における使用のための1つの教示において、上記バインダーDNA分子は、以下の配列から本質的になり得るかまたはからなる:
【化1】
。
【0023】
1つの教示において、上記バインダーDNA分子は、以下の配列から本質的になるかまたはからなる:
【化2】
。
【0024】
この文脈において、から本質的になるは、特定されたヌクレオチド(例えば、3’ヌクレオチド)の1またはこれより多くのものが、化学的に改変されていてもよいが、ただしこれが、配列がその標的RNA配列に結合する能力に実質的に影響を及ぼさないことを意味することが意図される。
【0025】
1つの教示において、上記バインダーDNA分子は、上記第1の温度において、上記標的RNA配列を結合し得る一部分、および上記第1の温度において、上記標的RNAを結合しないさらなる一部分を含む。上記標的RNA配列を結合する上記一部分はまた、DNA/RNA二重鎖を認識し、その認識配列において上記DNA鎖にニック形成することができる上記DNA制限エンドヌクレアーゼについての認識配列を含む。上記第1の温度は、非標的RNA配列への上記バインダーDNA/プライマー分子のいかなる非特異的結合をも制限または防止するように選択され、よって、上記バインダーDNA/プライマーがその特異的標的にのみ結合することを確実にする。この点において、上記標的RNA配列を結合する上記一部分は、場合によっては、その標的RNA配列への結合という点で完全に相補的であり得ることが認識され得る。しかし、場合によっては、上記標的RNAに結合する上記バインダーDNA/プライマーの上記一部分は、完全に相補的でなくてもよいし、いくつかのミスマッチが、許容されてもよい(例えば、上記バインダーDNA/プライマー配列の上記一部分の長さにわたって1個、2個、3個または4個のミスマッチがあり、これは、上記第1の温度において、上記標的RNAを結合することができる)。このようなミスマッチは、上記DNA制限エンドヌクレアーゼの認識配列を含む一領域にあってもよいし、上記DNA制限エンドヌクレアーゼの認識配列を含まない一領域にあってもよいし、その両方の領域にあってもよい。1つの教示において、任意のミスマッチは、上記認識配列を含まない上記一領域にのみ見出され得る。
【0026】
上記バインダーDNA/プライマー分子は、代表的には、20~50ヌクレオチドの長さ(例えば、25~40ヌクレオチド)であり得る。存在する場合、上記標的RNA配列を結合しない上記一領域は、例えば、2~8ヌクレオチド(例えば、3~6ヌクレオチドの長さ)であり得る。上記標的RNA分子を結合しない上記一領域は、上記バインダーDNAの5’末端に存在し得る。しかし、上記バインダーDNA分子の長さおよび上記標的RNA結合およびその非結合領域はまた、機能的方法で決定され得る。この点において、上記バインダーDNAは、上記第1の温度において、その標的RNA配列に結合することができ、上記第1の温度において、それに由来するニック形成されたDNA分子が上記標的RNA分子から放出されなければならない。従って、上記バインダーDNA/プライマー分子は、上記第1の温度において、上記標的RNA分子に結合するのに対して、上記DNAニック形成された分子は結合しない。
【0027】
上記バインダーDNAは、当該分野で概して公知であるような化学的改変を含み得る。いくつかの実施形態において、例えば、上記バインダーDNAは、化学的に改変されたヌクレオチド(例えば、2’-0メチル誘導体、ホスホロチオエートなど)、3’末端改変、5’末端改変、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、上記バインダーDNAの3’末端は、伸長反応が(例えば、上記標的RNA配列、またはポリメラーゼ伸長のためのプライマーとして働き得る別の非標的配列に結合する際に)上記バインダーDNAの3’末端から起こらないまたは起こり得ないように改変され得る。上記バインダーDNAの3’末端から開始される任意の複製は、検出誤差(例えば、偽陽性)をもたらし得る。よって、いくつかの教示において、上記バインダーDNAは、いかなる所望しない伸長反応(例えば、上で考察したもの)の発生をも低減または排除し得る3’末端改変を含む。3’末端改変の非限定的な例としては、TAMRA、DABCYL、およびFAMの付加が挙げられる。改変の他の非限定的な例としては、例えば、ビオチン化、蛍光色素付加(fluorochromation)、リン酸化、チオール化、アミノ化、または改変/反転ヌクレオチドが挙げられ、これらは、DNAポリメラーゼを使用する従来のDNA伸長反応下で上記バインダーDNA分子の3’末端へのさらなるヌクレオチドの付加を容易に許容しない。
【0028】
当該分野で公知の技術(例えば、参考文献8を参照のこと)を使用して、当業者は、相当する標的RNA配列についての任意の特定のDNA配列の融解温度、およびニック形成されたDNA配列の融解温度を計算し得る。上記第1の温度は、第1の温度が、上記標的RNAに対して上記バインダーDNAの融解温度を下回るが、制限エンドヌクレアーゼおよび適切な場合には逆転写酵素が機能し得る温度でもあることから、上記バインダーDNAが結合すると予測される温度であるように選択される。温度が高すぎれば、制限エンドヌクレアーゼ/逆転写酵素は機能しないこともあり(例えば、上記酵素(複数可)は、変性状態になり得る)、温度が低すぎれば、ニック形成反応および/または鎖伸長反応が遅くなりすぎることもある。
【0029】
結合しているDNAが標的RNAに結合する一部分および上記標的RNAを結合しない一部分を含む教示において、上記第1の温度は、上記標的RNA配列に対して上記バインダーDNAの融解温度を下回るが、ニック形成されたDNA分子の融解温度を上回るように選択され、その結果、ニック形成の際に、上記ニック形成されたDNA分子は、上記標的RNA分子から放出される。当業者は、上記標的RNA分子を結合しない上記バインダーDNAならびに領域の長さにわたる任意のミスマッチの融解温度に対する効果を容易に考慮し、当業者の共通の一般的知識を使用して、相応に第1の温度を設定することが可能である。
【0030】
上記バインダーDNA分子の適切な設計を通じて、その長さ、ならびにミスマッチ、認識配列の位置および上記標的RNA分子を結合しない領域の長さを考慮すれば、上記バインダーDNA分子は、その標的RNA分子についてのその融解温度が45~70℃の範囲にある/その範囲にあり得る、および上記ニック形成されたDNA分子の融解温度が30~45℃の範囲にある/その範囲にあり得るように、設計され得る。上記第1の温度は、上記バインダーDNA分子の融解温度を下回るが、上記ニック形成されたDNA分子の融解温度を上回るように選択される。従って、例えば、相補的な核酸分子に対するバインダーDNA分子の融解温度が60℃として計算され、上記ニック形成されたDNA分子の融解温度が35℃として計算される場合、上記第1の温度は、例えば、上記バインダーDNA分子が上記標的RNA分子を結合し、上記ニック形成されたDNAが結合せず、上記標的RNA分子から放出されることを確実にするために、45℃~55℃の間であり得る。
【0031】
上記ニック形成されたDNA配列は、上記標的RNA配列に結合しない(よって、非相補的である)配列の領域、ならびにRNA標的と相補的でありかつニック形成反応が起こる前にRNA標的に結合しない領域を含む。
【0032】
プライマーおよび逆転写酵素を利用する本明細書で記載される方法によれば、上記プライマーは、その標的RNA配列に相補的であってもよく、従って、その標的RNA配列を結合しないことが意図される一部分を含まない。しかし、標的RNA結合および非結合領域を含み、逆転写酵素を利用しないバインダーDNAの使用に関する教示とは異なり、上記ニック形成されたDNA配列は、単に、第1の温度がその標的RNA配列に対して上記ニック形成されたDNA分子の融解温度を上回ることによって、上記標的RNA配列から放出されなくてもよい。このような状況では、上記逆転写酵素および/または他のプロセシング酵素は、上記標的RNA配列から上記ニック形成されたDNA分子の放出を促進し得る。
【0033】
上記のように、上記ニック形成された1本鎖DNA分子の長さは、上記バインダーDNA分子の設計に依存し得る。しかし、代表的には、上記ニック形成された1本鎖DNA分子は、10~30ヌクレオチドの長さ(例えば、12~24ヌクレオチド、または14~20ヌクレオチドの長さ、または上限値と下限値との間の任意の整数もしくは範囲(例えば、10~20、もしくは14~30ヌクレオチドの長さ))であり得る。
【0034】
本開示に従うバインダーDNAを設計する一般化された方法は、先ず、DNA配列の中で、潜在的な標的RNAに相補的であるBstNI、AvrIIまたはPhoI制限部位全てを探すことを含み得る。このような制限部位を有するバインダーDNA分子が結合する適切な標的領域がいったん特定されると、以下の工程のうちの1またはこれより多くのもの(例えば、少なくとも2、3、または4つ)が行われる:
1)任意の潜在的バインダーDNA配列から、複数のBstNI、AvrIIまたはPhoI制限部位(例えば、2個、3個、4個またはこれより多くの制限部位)を有する配列およびポリAを含む配列を排除する工程;
2)5’末端においてAGGGを有するバインダーDNA配列を設計する工程;
3)1より多くの潜在的バインダーDNA配列が特定された場合、その潜在的バインダーDNA配列のTmを決定し、最高のTmおよび最低のTmを有する配列を除去する工程、
4)上記バインダーDNA分子のニック形成後に生じるであろう上記ニック形成されたDNA/トリガー配列の3’末端を評価して、塩基CCACが存在するかどうかを調べる工程。最も多くのCCACのマッチを有する配列は、工程3の後に最高のTmおよび最低のTmを有するバインダーDNA配列に加えて選択される。
【0035】
上記DNA制限エンドヌクレアーゼは、任意の制限エンドヌクレアーゼであり得、これは、DNA/RNA二重鎖のDNA鎖にニック形成するかまたは優先的にニック形成することができる。「優先的にニック形成する」によって、本発明者らは、DNA/RNA二重鎖において、そのDNA鎖がそのRNA鎖より大きな程度までニック形成されることを意味する。より大きな程度によって、本発明者らは、上記RNA鎖に関して、60%超、70%超、80%超、90%超または95%超を意味する。1つのこのようなDNA制限エンドヌクレアーゼは、BstNIである。Murrayら Nucleic Acids Research, 2010, Vol. 38, No. 22 8257-8268は、いくつかの制限エンドヌクレアーゼが、RNA:DNAヘテロ二重鎖にニック形成し得ることを示した。例えば、BstNI(切断部位はCC/WGG(ここでW=AまたはT))は、RNA/DNAヘテロ二重鎖のDNA鎖のみを効率的に切断する。これは、BstNIのような酵素が、本教示に従って、DNA/RNAヘテロ二重鎖を切断して、ニック形成されたDNA分子を生じるために使用され得ることを意味する。極めて重要なことには、制限エンドヌクレアーゼは、プロセッシブではないので、フラグメントを生じるために単一の反応のみを必要とする。例えば、逆転写酵素(RT)は、DNAフラグメントが増幅反応のために生成される前に、いくつかのホスホジエステル結合の形成を触媒するために必要とされるであろう。このことは、エンドヌクレアーゼ反応(例えば、BstNI反応)をRT反応より本質的に速くする。RNA/DNA二重鎖のDNA鎖を切断することができる他の制限酵素としては、AvrII、NdelおよびPhoIが挙げられる。例えば、http://rebase.neb.com/cgi-bin/hybridlistおよび参考文献14を参照のこと。
【0036】
上記ニック形成されたDNA分子の、上記標的RNA分子からの放出後に、上記ニック形成されたDNA分子は、より長いテンプレートDNA分子に/より長いテンプレートDNA分子と結合し、dNTPsおよびDNAポリメラーゼの存在下で鎖伸長および増幅された生成物の生成を開始し得る。上記テンプレート分子は、上記ニック形成されたDNA分子がそれに対して特異的に結合することができ、鎖伸長を開始するように設計される。1つの教示において、上記増幅された生成物は、当該分野で公知のEXPAR技術9-11を通じて生成される。
【0037】
例示的な増幅反応は、テンプレートDNA分子内の配列によって特定される短いオリゴヌクレオチド(例えば、8~16塩基)を迅速に合成し得る。当業者に公知の反応のバージョンは、線形増幅反応もしくは指数関数的増幅反応(EXPAR)のいずれかにおいて進み得る。別の例は、ローリングサークル増幅(RCA)およびループ媒介性等温増幅(LAMP)である。これらの反応はともに、単純で安定な等温(すなわち、サーモサイクリングしない)条件を利用する。サーモサイクリング反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびそのバージョン)はまた、使用され得る。増幅の速度は、反応において分子の相互作用を左右する分子パラメーターに完全に依存する。上記方法の指数関数的バージョンは、各線形的反応のオリゴヌクレオチド生成物を使用して、増幅のその後のラウンドおよび増幅された生成物の生成において使用するためのいっそう多くの同じニック形成されたDNA分子を作り出し得る分子の連鎖反応である。
【0038】
上記ニック形成されたDNA分子は、上記テンプレートDNAの3’末端または末端領域に結合し得、上記テンプレートDNA分子の5’末端または末端領域を増幅し得る。上記テンプレートDNA分子は、代表的には、100ヌクレオチド未満(例えば、70未満、60未満または50未満のヌクレオチドの長さ、およびその間の任意の整数)であり得る。上記テンプレートDNA分子は、上記ニック形成されたDNA分子より長く、場合によっては、本明細書中により詳細に記載されるように、ニック形成され、短くされた1本鎖DNA分子の長さの少なくとも2倍であり得る。
【0039】
少なくとも、工程a)および工程b)が単一のレセプタクル/容器(例えば、エッペンドルフチューブ、マルチウェルプレードのウェルなど)において行われる1個のレセプタクル/容器の実施形態において、上記テンプレートDNA分子を有する上記ニック形成されたDNA分子の融解温度は、上記標的RNA分子に関するものより高い。従って、上記第2の温度は、上記ニック形成されたDNA分子が、上記テンプレートDNA分子を結合することができかつ鎖伸長を開始することができるが、上記標的RNA分子を結合することができないように選択され得る。1つの教示において、上記第1のおよび第2の温度は同じであるが、これは、常にそうである必要はない。例えば、上記第1の温度が55℃であり、標的DNA分子に対して上記ニック形成されたDNA分子の融解温度が30℃~45℃の間であった場合、上記テンプレートDNA分子を有する上記ニック形成されたDNA分子の融解温度は、例えば、55℃~65℃の間であり得る。そうであれば、上記第2の温度は、例えば、上記テンプレートDNAを有する上記ニック形成されたDNAの計算された融解温度より低い温度であり得る(例えば、40℃~50℃)。
【0040】
1つの実施形態において、増幅された生成物の生成は、DNAを増幅するための等温反応(例えば、LAMPまたはEXPAR)によって行われる。等温増幅方法は、最新の指数関数的方法で核酸標的配列の検出を提供し、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する場合のサーマルサイクリングの制約によって制限されない。多くの等温技術は、当業者に公知であるが、それらは全て、共通していくつかの特徴を共有する。例えば、DNA鎖が熱変成されないことから、全ての等温方法は、プライマー結合および増幅反応の開始を可能にする代替のアプローチ:鎖置換活性を有するポリメラーゼに依拠する。反応がいったん開始されると、そのポリメラーゼはまた、目的の配列にまだアニールされている鎖を分離する必要がある。
【0041】
等温方法は、代表的には、二重鎖DNAを分離するために特有のDNAポリメラーゼを使用する。この能力を有するDNAポリメラーゼとしては、中程度の温度の反応(25~40℃)に関してはKlenow exo-、Bsuラージフラグメント、およびphi29、ならびに高温の反応(50~65℃、例えば、50℃、55℃、または60℃)に関してはBst DNAポリメラーゼのラージフラグメントが挙げられる。本教示に従う方法は、等温または実質的に一定の温度条件下で行われ得る。実質的に一定の温度下で上記方法を行うことに関する実施形態において、温度におけるいくらかのゆらぎが許容される。例えば、いくつかの実施形態において、実質的に一定の温度は、所望のまたは特定された目標温度範囲(例えば、約±2℃または約±5℃)内でゆらぎ得る。実施形態において、実質的に一定の温度は、PCRを行う場合に使用されるようなサーマルサイクリングを含まない温度を含み得る。いくつかの実施形態において、上記第2の温度は、上記テンプレートDNA分子の計算された/推定されたもしくは実験的に決定された最適なハイブリダイゼーションまたは融解温度について、例えば、5℃~10℃であるかまたはそれより低い、あるいは上記テンプレートDNA分子の計算された/推定されたもしくは実験的に決定された最適なハイブリダイゼーションまたは融解温度について下回る。いくつかの実施形態において、便宜上、上記第1のおよび第2の温度は、同じまたは実質的に同じ(例えば、約±2℃または約±5℃)である。
【0042】
1つの実施形態において、本教示は、鎖置換増幅(SDA)またはニック形成酵素増幅反応(NEAR)を利用する。両方の技術が、上記テンプレートDNA分子中に含まれる部位における鎖に制限される制限エンドヌクレアーゼまたはニック形成酵素によって作製されるニックにおいて開始するために、鎖置換DNAポリメラーゼ、代表的には、Bst DNAポリメラーゼ、BsuラージフラグメントまたはE.coliに由来するKlenowフラグメントに依拠する。ニック形成部位は、各ポリメラーゼ置換工程で再生され、指数関数的増幅を生じる。NEARは、極めて迅速かつ高感度であり、数分で、小さな目標量の検出を可能にする。
【0043】
1つのこのような適切なニック形成酵素は、Nt.BstNBIである。Nt.BstNBIは、2本鎖DNA基質におけるDNAの1つの鎖のみを切断する部位特異的エンドヌクレアーゼである。ニック形成エンドヌクレアーゼは、認識配列の3’側を4塩基超えて1本鎖破壊を触媒する。適切なニック形成酵素の他の非限定的な例としては、Nb.BbvCI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nb.BsrDI、Nb.Btsl、Nt.BspQI、Nb.BsmI、Nt.CviPII、およびNt.BsmAIが挙げられる。
【0044】
本明細書で記載される方法は、単一のレセプタクル(例えば、エッペンドルフチューブもしくは他のチューブ)を含む任意の適切なフォーマットにおいて、または例えば、マルチウェルプレートのような複数のフォーマットにおいて行われ得る。さらに、関連するリーダーありまたはなしで使用するためのカートリッジフォーマット(例えば、ラテラルフローまたは微小流体ベースのカートリッジ)が、想定され得る。
【0045】
上記増幅された生成物は、当該分野で公知の技術(例えば、発光、UVまたは可視分光法もしくは分光測定法、蛍光分光法もしくは分光測定法、質量分析法、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、電気化学、電気泳動、酵素標識(例えば、ペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)、蛍光標識(例えば、フルオレセインもしくはローダミン)、化学発光、生物発光、表面プラズモン共鳴(SPR)、または発蛍光団改変プローブDNA(例えば、TaqManプローブ)によって、裸眼によって視覚的に、適切な色素生成/色の変化もしくは生成によって(例えば、適切なタグもしくは色素改変プローブもしくは核酸を使用することによって)、または上記技術の組み合わせ)によって検出され得る。
【0046】
代表的には、上記バインダーDNAと上記標的RNA配列とを接触させてから、十分な(例えば、ベースライン値(代表的には、任意のシグナル生成が起こる前に、アッセイの開始時に得られる)から5、6、7、8、9もしくは10 標準偏差より大きいかまたはこれらに等しい検出可能なシグナル)増幅された生成物を検出するまでの合計時間は、15分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、またはさらには5分未満であり得る。
【0047】
EXPARの速度の鍵は、2要素ある; 第1に、増幅は、1つの温度において起こる、従って、長々とした加熱および冷却工程を回避する、第2に、その増幅された配列は、比較的小さい(代表的には15~20塩基の長さ)。これらの2つの要素は、EXPARを生じ、いったん誘発されると、数分もすれば、DNA生成物の約109の鎖を生じる9,12。本教示によれば、ニック形成された1本鎖DNA分子(トリガー)は、テンプレートDNA分子と相互作用することによってEXPAR反応を開始する。次いで、上記テンプレートをインタクトなままにしながら、上記配列を伸長することにDNAポリメラーゼが、そしてそれを切断することにニック形成エンドヌクレアーゼが関わる等温サイクルにおいて大量の短い2本鎖DNA配列が生成される(スキーム1aを参照のこと)。qPCRアッセイと同様に、二重鎖形成が分光学的に、例えば、蛍光色素(例えば、SYBR Green II)の使用を通じてモニターされ得る13。
【0048】
本明細書に記載されるとおりの上記バインダーDNAおよびテンプレートDNA分子は、合成により作製され得、当該分野で公知のホスホルアミダイト法、ホスホトリエステル法、H-ホスホネート法、またはチオホスホネート法を使用して合成され得る。合成後に、上記バインダーDNAおよびテンプレートDNA分子は、例えば、イオン交換HPLCを使用して精製され得る。
【0049】
用語「3’」および「5’」とは、核酸の1本鎖内の特定の部位の位置を説明するために本明細書で使用される。核酸における位置が、参照ヌクレオチドもしくは参照ヌクレオチド配列「に対して3’」側または参照ヌクレオチドまたは参照ヌクレオチド配列の「3’」側にある場合、このことは、その位置が、上記参照ヌクレオチドもしくは上記参照ヌクレオチド配列の3’末端と上記核酸のその鎖の3’ヒドロキシルとの間にあることを意味する。同様に、核酸における位置が、参照ヌクレオチドもしくは参照ヌクレオチド配列「に対して5’」側または参照ヌクレオチドまたは参照ヌクレオチド配列の「5’」側にある場合、このことは、その位置が、上記参照ヌクレオチドもしくは上記参照ヌクレオチド配列の5’末端と上記核酸のその鎖の5’ホスフェートとの間にあることを意味する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ニック形成する(nicking)」とは、完全に2本鎖の核酸分子、またはニック形成を行う酵素によって認識されるヌクレオチド配列に対して特定の位置において部分的に2本鎖の核酸分子の2本鎖の一部分の一方の鎖のみの切断をいう。上記核酸がニック形成される特定の位置は、「ニック形成部位(nicking site)」(NS)といわれる。
【0051】
例えば、例示的な2本鎖DNAニック形成エンドヌクレアーゼであるN.BstNB Iの認識配列およびニック形成部位は、切断部位を示すために「▼」および任意のヌクレオチドを示すためにNを用いて以下で示される:
【化3】
【0052】
上記Nt.BstNBI認識配列のセンス鎖の配列は、5’-GAGTC-3’であるのに対して、アンチセンス鎖の配列は、5’-GACTC-3’である。
【0053】
「鎖伸長を開始する」とは、上記ニック形成されたDNA分子が、上記テンプレートDNAに結合した場合にプライマーとして作用し、上記ニック形成されたDNA分子の3’末端へ、上記テンプレートDNAに存在する次の塩基に相補的であるヌクレオチドを付加することによるプロセスをいう。このようにして、上記ニック形成されたDNAの長さは、上記ニック形成されたDNA分子の伸長された3’末端にさらなるヌクレオチドが各々付加されて、成長または伸長する。これはまた、プライマーが標的RNA配列に結合し、逆転写酵素が、標的RNAの逆相補DNA配列を生成するために使用される教示にも当てはまる。
【0054】
用語「増幅された生成物の生成」とは、上記テンプレートDNAの5’末端または領域に相補的な配列を含むプライマーとしてニック形成されたDNA分子を使用して、テンプレートDNA分子またはその一部分の1より多くのコピーを作製するプロセスに言及する。
【0055】
本明細書で使用される場合、語句「増幅された生成物」とは、特定の核酸分子の1またはこれより多くのコピーを含む生成物に言及する。代表的には、上記増幅された生成物は、上記核酸分子の少なくとも103、104、105、106、107、108、109、またはこれより多くのコピーを含む。
【0056】
さらなる局面において、以下を含むか、本質的になるか、またはからなるキットが提供される:
本明細書で定義されるとおりのバインダーDNA分子;および
制限エンドヌクレアーゼの認識配列において、標的RNA分子に結合される場合に上記バインダーDNA配列にニック形成することができる上記制限エンドヌクレアーゼ。
【0057】
CoVID-19の検出における使用に関する1つの教示において、上記バインダーDNA分子は、以下の配列から本質的になるかまたはからなる:
【化4】
。
【0058】
1つの教示において、上記バインダーDNA分子は、以下の配列から本質的になるかまたはからなる:
【化5】
。
【0059】
この文脈において、から本質的になるは、特定されたヌクレオチド(例えば、3’ヌクレオチド)のうちの1またはこれより多くのものが、化学的に改変され得るが、ただしこれは、その標的RNA配列に結合する配列の能力に実質的に影響を及ぼさないことを意味することが意図される。
【0060】
1つの教示において、上記制限エンドヌクレアーゼは、BstNIである。
【0061】
上記キットは、必要に応じてさらに以下を含み得る:
上記ニック形成されたDNA分子が、(必要に応じてタグ化または色素標識された)dNTPsおよびDNAポリメラーゼの存在下で、増幅された生成物を生成するために、結合し、鎖伸長を開始し得るテンプレートDNA分子。上記キットは、(必要に応じてタグ化または色素標識された)dNTPsおよび/またはDNAポリメラーゼ(例えば、Bst DNAポリメラーゼ)、ラージフラグメントまたはKlenowフラグメント(3’-5’ exo-)および必要に応じてDNAニック形成酵素(例えば、Nt.BstNBI)をさらに含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、上記方法および/またはキットは、さらなる試薬をさらに含み得る。本明細書中の教示に従って使用され得る他の試薬のいくつかの非限定的な例としては、金属塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、および硫酸マグネシウム);基質(例えば、dNTPミックス);および緩衝溶液(例えば、Tris-HCl緩衝液、トリシン緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、およびリン酸カリウム緩衝液)が挙げられる。同様に、洗浄剤、酸化剤および還元剤がまた、本明細書で開示される方法の実施において使用され得る、および/あるいはDNAインターカレート色素(例えば、SYBR Green I)、または任意の増幅された生成物に結合するように設計されたタグもしくは色素標識プローブが、さらに提供され得る。
【0063】
本開示の実施形態は、ここで例示によって、および添付の図面を参照しながら記載される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1-1】
図1は、(a)指数関数的増幅反応を模式的に示す。トリガーXは、テンプレートX’-X’にアニールし、DNAポリメラーゼ(Bst 2.0ポリメラーゼ)によって伸長される。次いで、ここで二重DNAの上の鎖は、ニック形成酵素(Nt.BstNBI)によって切断される。放出されたDNAは、トリガーXと同一であり、従って、別のテンプレートX’-X’をプライミングすることができる。(b)逆転写酵素非含有EXPAR。バインダーDNAは、ウイルスRNAにアニールする。DNA:RNAヘテロ二重鎖のうちのDNAが、DNAのみを切断することによるニック形成酵素としての制限エンドヌクレアーゼBstNIによってニック形成される。放出されたDNA鎖は、トリガーXであり、EXPARによって増幅される;(c)逆転写酵素プライマーは、ウイルスRNAにアニールし、逆転写酵素(SuperScript IV逆転写酵素)によってcDNAへと変換される。上記RNA:DNAヘテロ二重鎖形成は、制限エンドヌクレアーゼ(BstNI)のための認識部位を作り出して、上記DNA鎖を切断する。その切断されたcDNA鎖は、トリガーX配列を含み、これは、テンプレートX’-X’をプライミングし、全二重鎖を形成するために伸長される。次いで、ここで二重鎖DNAのうちの上の鎖は、ニック形成酵素(Nt.BstNBI)によって切断される。その放出されたDNAは、トリガーXであり、従って、別のテンプレートX’-X’をプライミングすることができる。
【
図2】
図2は、
図1に対してより詳細に、CoVID-19標的RNA配列、上記標的RNAを結合し得るバインダーDNA配列、ニック形成されたDNA配列およびテンプレートDNA配列の特定の配列を有する例を示す。
【
図3】
図3は、トリガーXおよびブランクの増幅後の時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【
図4】
図4は、トリガーAおよびブランクの増幅後の時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【
図5】
図5は、トリガーBおよびブランクの増幅後の時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【
図6】
図6は、10nM~100fMの範囲の濃度のトリガーXおよびブランクの増幅後の時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【
図7】
図7は、蛍光シグナルが10nM~100fMの範囲の濃度でのトリガーXおよびブランクの増幅後に、ベースラインから10 標準偏差より高い場合の時間を示す棒グラフである。
【
図8】
図8は、テンプレートX’-X’を使用するトリガーX、トリガーA、トリガーBおよびブランクの増幅後の時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【
図9】
図9は、蛍光シグナルが、テンプレートX’-X’を使用するトリガーX、トリガーA、トリガーBおよびブランクの増幅後に、ベースラインから10 標準偏差より高かった場合の時間を示す棒グラフである。
【
図10】
図10は、患者の陽性および陰性サンプルの2ポット逆転写酵素EXPAR後の時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【
図11】
図11は、蛍光シグナルが、2ポット逆転写酵素EXPAR後に、患者の陽性および陰性サンプルのベースラインから10 標準偏差より高かった場合の時間を示す棒グラフである。
【
図12】
図12は、患者の陽性および陰性サンプルの1ポット逆転写酵素EXPAR後の時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【
図13】
図13は、蛍光シグナルが、1ポット逆転写酵素EXPAR後に、患者の陽性および陰性サンプルのベースラインから10 標準偏差より高かった場合の時間を示す棒グラフである。
【
図14】
図14は、患者の陽性および陰性サンプルの2ポット逆転写酵素EXPAR後の時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【
図15】
図15は、蛍光シグナルが、2ポット逆転写酵素EXPAR後に、患者の陽性および陰性サンプルのベースラインから10 標準偏差より高かった場合の時間を示す棒グラフである。
【
図16】
図16は、患者の陽性および陰性サンプルの1ポット逆転写酵素EXPAR後の時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【
図17】
図17は、蛍光シグナルが、1ポット逆転写酵素EXPAR後に、患者の陽性および陰性サンプルのベースラインから10 標準偏差より高かった場合の時間を示す棒グラフである。
【
図18-1】
図18は、COVID19 Orf1ab遺伝子を調べる患者サンプルからの結果を示す。a)シグナルを生成するためのRTF-EXPARに関する時間を示す、患者検証サンプルに関するRTF-EXPARアッセイデータ。赤色の棒は、陽性サンプルを表し、青色の棒は、陰性サンプルを表し、黄色の破線は、6分間のカットオフ時間を表す。各実行時間を、蛍光シグナルがベースラインシグナルから10 標準偏差より高かった点(10-シグマ時間)であるように計算した;およびb)患者サンプル検証試験の結果を示す混同行列。
【
図19-1】
図19は、COVID19 N遺伝子を調べる患者サンプルからの結果を示す。a)シグナルを生成するためのRTF-EXPARに関する時間を示す、患者検証サンプルに関するRTF-EXPARアッセイデータ。赤色の棒は、陽性サンプルを表し、青色の棒は、陰性サンプルを表し、黄色の破線は、6分間のカットオフ時間を表す。各実行時間を、蛍光シグナルがベースラインシグナルから10 標準偏差より高かった点(10-シグマ時間)であるように計算した;およびb)患者サンプル検証試験の結果を示す混同行列。
【
図20】
図20は、2ng/μLのHPV mRNAおよび陰性コントロールの1ポット逆転写酵素EXPAR後に時間に対する正規化した蛍光単位を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
材料
Millipore Elix-Gradient A10システム(抵抗率>18μΩ.cm、TOC≦5ppb、Millipore, France)で精製したMilli-Q水を、全ての実験において使用した。Nt.BstNBI、BstNIおよびBst 2.0ポリメラーゼを、New England Biolabs(Hitchin, UK)から得た。緩衝液も同様であり、10×等温増幅緩衝液(200mM Tris-HCl、100mM(NH4)2SO4、500mM KCl、20mM MgSO4、1% Tween(登録商標) 20、pH 8.8)を、全ての実験において使用した。Superscript IV逆転写酵素を、ThermoFisher(Paisley, UK)から得、DMSO(≧99%)を、Fisher Scientific(Loughborough, UK)から得、dsGreen 100×(SYBR Green Iのアナログ)を、Lumiprobe(Hannover, De)から得た。ウシ血清アルブミン(BSA, 水で4mg/mLへと希釈)および1本鎖結合タンパク質(SSB、 20mM Tris-HCl(pH 8.0)、0.5M NaCl、0.1mM EDTA、0.1mM DTT、50% グリセロール中、0.5mgの溶液)を、Sigma-Aldrich(Dorset, UK)から得た。全てのヌクレオチド三リン酸およびオリゴヌクレオチド配列(脱塩済み)を、Sigma-Aldrich(Dorset, UK)から得た。SARS-CoV-2 RNAおよびcDNA患者サンプル(MagNA Pure溶離緩衝液中)を、Public Health England(PHE)から得、-80℃において貯蔵した。
【0066】
PHEサンプル:全ての臨床標本を、封じ込めレベル2実験室の中で扱った。各サンプルを調製するために、鼻および咽頭スワブからのViral Transfer Medium (VTM, 300μL, Medical Wire ViroCult)を、Buffer AL(Qiagen)に1:1比で添加し、較正したヒートブロックにおいて60℃へと30分間加熱した。次いで、サンプルを、MagNAPure96(Roche)自動化抽出システムで抽出し、次いで、SARS-CoV-2 RNA検出に関してAbbott M2000 RT-qPCR Testで実行した。EXPARアッセイ開発のために、SARS-CoV-2 RNAアッセイからの陽性および陰性サンプルを、MagNA Pure溶離緩衝液中で別個に組み合わせた(組み合わせた陽性サンプルに関しては29,080 RNAコピー/μLを与える)。PHEから受領した際に、各サンプルを400倍希釈し、50μL バイアルへとアリコートに分け、-80℃で貯蔵した。使用前に、各サンプルを氷中に沈め、ゆっくりと溶解させた;いったん溶解したら、上記サンプルを直ぐに使用し、その後-80℃において再び貯蔵するために冷却した。
【表1-1】
【表1-2】
【0067】
データ分析および分類
EXPARリアルタイム蛍光増幅曲線を分析するために、本発明者らは、蛍光データの分析を行うプログラムをC#で開発した。そのプログラムは、最初の20個のデータ点を分析し、ベースラインとして平均値および標準偏差を計算する。これらの2つの値の生成後に、各々のその後のデータ点を分析して、その値から平均値を引いたものが平均から10 標準偏差を超えて離れているかどうかを決定する。この基準を満たすサイクルを時間へと変換し、最小増幅時間として使用する。この時間が20分未満である場合、その出力は真であり、SARS-CoV-2 RNAの存在を示し、20分以降の時間である場合は、偽の出力を生じ、これは、SARS-CoV-2 RNAの非存在を示す。
【実施例】
【0068】
実施例
成功裡のEXPARアッセイの開発への重要な要素は、標的ゲノムにおける最適なヌクレオチド配列の特定である。
【0069】
Qianらは以前、EXPARにおいて使用される特定のトリガー配列が、その成功を決定するにあたって極めて重要な役割を果たすことを見出した
12。それらのアプローチを適合させて、本発明者らは、SARS-CoV-2ゲノムにおけるOrf1ab
14の配列に相補的である、EXPARのための17マーのDNAトリガー(トリガーX、
図1a)を設計した。
【0070】
上記バインダーDNA配列の設計は、この配列を以下ができるように設計しなければならなかった:
1)RNA上の関連配列と安定な複合体を生じるために十分な塩基対形成相互作用を有する
2)関連酵素によって認識され得かつニック形成され得る配列を生成する
3)反応の次の段階のためのDNAテンプレートX’-X’配列にアニールすることを可能にするであろう非相補的配列(例えば、5’末端において)を含む。
【0071】
これを達成するために、本発明者らは、ウイルスRNAに対しては相補的でないが、上記テンプレートX’-X’配列に対してなお相補的である、5’末端において「テール」を含むようにバインダーDNA配列を設計した。その「テール」の長さおよび配列は、それが、RNAへの結合を阻害するかまたはRNAの非存在下でEXPAR反応を誘発するいかなる二次構造をも形成しないように設計されなければならなかった。「テール」配列の配列はまた、上記テンプレートX’-X’に相補的な鎖のポリメラーゼ触媒性の伸長を可能にするために十分安定な二重鎖が形成されることを確実にするために、上記テンプレートX’-X’への結合に関して十分な結合エネルギーを提供しなければならなかった(
図1bを参照のこと)。
【0072】
上記テールの配列はまた、それがDNA:RNAヘテロ二重鎖から放出されたらEXPAR反応が進み得るようにされる必要がある。例示的なテール配列は、Qianらの教示に従って開発した。しかし、簡潔には、上記プロセスは、以下の工程を含む:
1)目的の領域における全てのBstNI制限部位は、5’末端および3’末端に10塩基で存在することが見出された
2)これらから、複数の制限部位およびポリA(ploy A)を有する配列を排除した。
3)これらの残りの配列から、AGGGを5’末端に付加した(これらの塩基はEXPARにとって重要であることが示されているので(Qianら))
4)これらのバインダー配列のTmを分析し、その最高および最低のTmを有する配列を除去した
5)本発明者らが選択した配列は、高Tmおよび低Tmを有した配列、ならびに3’末端において最も多くの塩基CCACを有する配列であった(Qianらの教示)。
【0073】
より詳細には、
図2は、特定のCoVID-19ウイルス標的RNA配列(a)およびこの標的RNA配列を結合するように設計された上記バインダーDNA配列(b)を特定する。示されるように、上記バインダーDNAは、上記標的RNA配列に相補的でありかつBstNI認識配列(CCTGG)を含む3’の一部分、ならびに非相補的5’末端を含む。BstNIによる上記バインダーDNAのニック形成の際に、上記ニック形成されたDNA(標識されたトリガーX)は、標的RNA空放出される。上記ニック形成されたDNAは、上記テンプレートDNA(標識されたテンプレートX’-X’)に結合し、鎖伸長および増幅されたDNA/DNA二重鎖テンプレートX’-X’の生成を開始することができる。上記テンプレートDNAの配列は、中央にあるスペーサーとともに、上記テンプレートのいずれかの末端において反復配列を有し、Nt.BstNBIのための認識配列を有するように設計される。Nt.BstNBIの作用は、DNA/DNA二重鎖の上の鎖にニック形成し、ポリメラーゼ分子は、そのニック形成された部位から伸長させ続けることができ、テンプレートX’-X’分子を結合して別のラウンドの増幅を開始できるトリガーX分子のコピーを置き換える。このようにして、増幅されたDNA/DNA二重鎖テンプレートX’-X’分子の指数関数的生成が起こり得、このようなDNA/DNA二重鎖分子の生成数の増加は、例えば、DNA/DNA二重鎖分子を結合することができる色素の使用によって検出され得る。
【0074】
図1cにおいて、特定のCoVID-19 RNA標的配列が特定され、プライマー配列がアニールし、逆転写酵素を使用して伸長される。BstNI認識配列(CCTGG)にわたる伸長は、DNA鎖が切断され、転写酵素の鎖置換活性によって置換されることを可能にする。その切断されたDNA鎖は、テンプレートX’-X’のDNA/DNA二重鎖を形成するためにBstポリメラーゼによって伸長されるテンプレートX’-X’に相補的である。Nt.BstNBIの認識配列は、DNA/DNA二重鎖の上の鎖がニック形成されることを可能にし、テンプレートX’-X’分子を結合し得かつEXPARを開始し得るトリガーX分子のコピーを置換する。
【0075】
実施例1:どのトリガー配列が最も適切であるかの決定
この実験は、特異的増幅と非特異的増幅との間の最大の分離を提供する配列を決定するために、それらそれぞれのテンプレート配列に対するこのプロセスのために設計された3個のトリガーを試験する。
【0076】
方法
パートA:
1.50μLの水、2.50μLの10×等温増幅緩衝液、3.75μLのBSA溶液、1.50μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ(1.6 U/μL)、0.75μLのNt.BstNBI(10 U/μL)。
パートB:
5.55μLの水、5.00μLの10×等温増幅緩衝液、1.50μLのテンプレート(1μM)、2.40μLのMgSO4(100mM)、1.50μL dNTP(10nM)、0.75μLのdsGreen(100×~20×までDMSO中で1:5希釈)、0.30μLのSSB溶液。
パートC:
100nMにおいて3μLの1個のトリガー(トリガーXまたはトリガーAまたはトリガーB)
【0077】
添加工程:パートB(17μL)を4℃に冷却したPCRチューブに添加する。これに、パートCを添加し、4℃において5分間維持し、その後、パートA(10μL)を添加する。次いで、チューブをシールし、その内容物を増幅に供する。
【0078】
増幅工程:等温インキュベーションおよび蛍光シグナル測定を、55℃の一定温度に設定したAgilent Mx3005P Real-Time PCRシステム(Didcot, UK)を使用して行う。蛍光を、少なくとも20分のインキュベーション時間にわたって10秒ごとに測定する。
【0079】
結果
実験の結果を、
図3~5に示す。プロットのx軸は、時間を示す。全ての試験は、2分以内にトリガーを含むサンプルの増幅を示す。非特異的増幅までの時間は、トリガーによって異なり、トリガーXは、シグナルが増加するのに9分超かかる。非特異的サンプルの蛍光増幅に基づいて、最も成功裡のトリガーとしてトリガーXを選択し、前に進めた。
【0080】
実施例2:EXPAR配列の感度の決定
最適化工程を、陽性増幅と陰性増幅との間のより大きな分離を生じたトリガーXおよびテンプレートX’-X’を使用して行った。上記テンプレート濃度を、50nMから25nMへと減少させ、反応温度を55℃から50℃へと下げた。この改変された手順を使用して、EXPAR反応の感度を、ある濃度範囲(10nM~100fM)にわたるトリガーXを使用して観察した。
【0081】
方法
パートA:
1.50μLの水、2.50μLの10×等温増幅緩衝液、3.75μLのBSA溶液、1.50μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ(1.6 U/μL)、0.75μLのNt.BstNBI(10 U/μL)。
パートB:
6.30μLの水、5.00μLの10×等温増幅緩衝液、0.75μLのテンプレートX’-X’(1μM)、2.40μLのMgSO4(100mM)、1.50μL dNTP(10nM)、0.75μLのdsGreen(100×~20×までDMSO中で1:5希釈)、0.30μLのSSB溶液。
パートC:
3μLのトリガーX(100nM、10nM、1nM、100pM、10pM、1pM、ブランク)。
【0082】
添加工程:パートB(17μL)を4℃に冷却したPCRチューブに添加する。これに、パートCを添加し、4℃において5分間維持し、その後、パートA(10μL)を添加する。次いで、チューブをシールし、その内容物を増幅に供する。
【0083】
増幅工程:等温インキュベーションおよび蛍光シグナル測定を、50℃の一定温度に設定したAgilent Mx3005P Real-Time PCRシステム(Didcot, UK)を使用して行う。蛍光を、少なくとも20分のインキュベーション時間にわたって10秒ごとに測定する。
【0084】
結果
結果を、
図6~7に示す。トリガーXの濃度を減少させるにつれて、増幅が起こる時間は増加する。これらの結果は、トリガーXの濃度が高いほど、増幅がより迅速に生じることを示す。従って、バインダーDNAの濃度が高いほど、より好ましい。
【0085】
実施例3:EXPAR手順の特異度の決定
この実験は、任意の配列が増幅を生じ得るかどうかを決定するために、テンプレートX’-X’配列に対して複数の非特異的トリガー配列を試験する。
【0086】
方法
パートA:
1.50μLの水、2.50μLの10×等温増幅緩衝液、3.75μLのBSA溶液、1.50μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ(1.6 U/μL)、0.75μLのNt.BstNBI(10 U/μL)。
パートB:
6.30μLの水、5.00μLの10×等温増幅緩衝液、0.75μLのテンプレートX’-X’(1μM)、2.40μLのMgSO4(100mM)、1.50μL dNTP(10nM)、0.75μLのdsGreen(100×~20×までDMSO中で1:5希釈)、0.30μLのSSB溶液。
パートC:
3μLの1個のトリガー配列(トリガーX、トリガーA、トリガーBおよびトリガーC)
【0087】
添加工程:パートB(17μL)を4℃に冷却したPCRチューブに添加する。これに、パートCを添加し、4℃において5分間維持し、その後、パートA(10μL)を添加する。次いで、チューブをシールし、その内容物を増幅に供する。
【0088】
増幅工程:等温インキュベーションおよび蛍光シグナル測定を、50℃の一定温度に設定したAgilent Mx3005P Real-Time PCRシステム(Didcot, UK)を使用して行う。蛍光を、少なくとも20分のインキュベーション時間にわたって10秒ごとに測定する。
【0089】
結果
結果を、
図8~9に示す。これらのデータセットは、完全に相補的なトリガーXが、8分後に増幅を生じ得ることを示す。対照的に、非特異的トリガーは、20分後にまで増幅を生じ得ない。これは、反応が非常に配列特異的であることを示す。
【0090】
実施例4:2ポット逆転写EXPAR.
この実験は、2ポットrt-EXPAR手順が、ウイルスRNAからの生成後に、SARS-CoV-2 cDNAの存在を検出することができるかどうかを試験する。患者の陽性および陰性サンプルを使用することによって、増幅時間に区別があるかどうかを評価した。
【0091】
方法:
パートA:
1.50μLの水、2.50μLの10×等温増幅緩衝液、3.75μLのBSA溶液、1.50μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ(1.6 U/μL)、0.75μLのNt.BstNBI(10 U/μL)。
パートB:
6.30μLの水、5.00μLの10×等温増幅緩衝液、0.75μLのテンプレートX’-X’(1μM)、2.40μLのMgSO4(100mM)、1.50μL dNTP(10nM)、0.75μLのdsGreen(DMSO中で1/5希釈)、0.30μLのSSB溶液。
パートC:
2μL BstNI(10 U/μL)および3μLのウイルスcDNA。
【0092】
添加工程:パートB(17μL)を4℃に冷却したPCRチューブに添加する。これに、パートCを添加し、4℃において5分間維持し、その後、パートA(10μL)を添加する。次いで、チューブをシールし、その内容物を増幅に供する。
【0093】
増幅工程:等温インキュベーションおよび蛍光シグナル測定を、50℃の一定温度に設定したAgilent Mx3005P Real-Time PCRシステム(Didcot, UK)を使用して行う。蛍光を、少なくとも20分のインキュベーション時間にわたって10秒ごとに測定する。
【0094】
結果:
結果を、
図10~11に示す。これらのデータセットは、患者の陽性サンプルが8.33分後に増幅を生じたのに対して、患者の陰性サンプルが22.33分後に増幅を生じることを示す。これは、サンプルの増幅時間の間に有意差が存在し、cDNAの検出が可能であることを示す。
【0095】
実施例5:1ポット逆転写EXPAR.
この実験は、1ポットrt-EXPAR手順が、SARS-CoV-2 RNAの存在を検出することができるかどうかを試験する。患者の陽性および陰性サンプルを使用することによって、増幅時間に区別があるかどうかを評価した。
【0096】
方法:
パートA:
1.50μLの水、2.50μLの10×等温増幅緩衝液、3.75μLのBSA溶液、1.50μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ(1.6 U/μL)、0.75μLのNt.BstNBI(10 U/μL)。
パートB:
6.30μLの水、5.00μLの10×等温増幅緩衝液、0.75μLのテンプレートX’-X’(1μM)、2.40μLのMgSO4(100mM)、1.50μL dNTP(10nM)、0.75μLのdsGreen(DMSO中で1/5希釈)、0.30μLのSSB溶液。
パートC:
1μLのrt-プライマー(100nM)、1μLのBstNI(10 U/μL)、3μLのウイルスRNA(72.7コピー/μL)および0.1μLのSuperScript IV Reserve Transcriptase(200 U/μL)。
【0097】
添加工程:パートB(17μL)を4℃に冷却したPCRチューブに添加する。これに、パートCを添加し、4℃において5分間維持し、その後、パートA(10μL)を添加する。次いで、チューブをシールし、その内容物を増幅に供する。
【0098】
増幅工程:等温インキュベーションおよび蛍光シグナル測定を、50℃の一定温度に設定したAgilent Mx3005P Real-Time PCRシステム(Didcot, UK)を使用して行う。蛍光を、少なくとも20分のインキュベーション時間にわたって10秒ごとに測定する。
【0099】
結果:
結果を、
図12~13に示す。これらのデータセットは、患者の陽性サンプルが7.50分後に増幅を生じたのに対して、患者の陰性サンプルが23.04分後に増幅を生じることを示す。これは、サンプルの増幅時間の間に有意差が存在し、RNAの検出が可能であることを示す。
【0100】
実施例6:2ポット逆転写フリーEXPAR.
この実験は、2ポットrtf-EXPAR手順が上記バインダーDNA配列および酵素BstNIを使用して、SARS-CoV-2 RNAの存在を検出することができるかどうかを試験する。患者の陽性および陰性サンプルを使用することによって、増幅時間に区別があるかどうかを評価した。
【0101】
方法:
パートA:
1.50μLの水、2.50μLの10×等温増幅緩衝液、3.75μLのBSA溶液、1.50μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ(1.6 U/μL)、0.75μLのNt.BstNBI(10 U/μL)。
パートB:
6.30μLの水、5.00μLの10×等温増幅緩衝液、0.75μLのテンプレートX’-X’(1μM)、2.40μLのMgSO4(100mM)、1.50μL dNTP(10nM)、0.75μLのdsGreen(100×~20×までDMSO中で1:5希釈)、0.30μLのSSB溶液。
パートC:
10μLのRNA:DNAヘテロ二重鎖消化混合物(以下のように調製):25μLの水、5μLの10×等温増幅緩衝液、5μL BstNI(10 U/μL)、10μLのバインダーDNA(1μM)および5μLのウイルスRNA(72.7コピー/μL)。次いで、その混合物を、50℃において5分間インキュベートする。
【0102】
添加工程:パートB(17μL)を4℃に冷却したPCRチューブに添加する。これに、パートCを添加し、4℃において5分間維持し、その後、パートA(10μL)を添加する。次いで、チューブをシールし、その内容物を増幅に供する。
【0103】
増幅工程:等温インキュベーションおよび蛍光シグナル測定を、50℃の一定温度に設定したAgilent Mx3005P Real-Time PCRシステム(Didcot, UK)を使用して行う。蛍光を、少なくとも20分のインキュベーション時間にわたって10秒ごとに測定する。
【0104】
結果:
結果を、
図14~15に示す。これらのデータセットは、患者の陽性サンプルが9.12分後に増幅を生じたのに対して、患者の陰性サンプルが27.29分後に増幅を生じることを示す。これは、サンプルの増幅時間の間に有意差が存在し、バインダーDNAの使用を通じてRNAの検出が可能であることを示す。
【0105】
実施例7:1ポット逆転写フリーEXPAR.
この実験は、1ポットrtf-EXPAR手順が、単一のポットにおいて上記バインダーDNA配列および酵素BstNIを使用して、SARS-CoV-2 RNAの存在を検出することができるかどうかを試験する。患者の陽性および陰性サンプルを使用することによって、増幅時間に区別があるかどうかを評価した。
【0106】
方法:
パートA:
1.50μLの水、2.50μLの10×等温増幅緩衝液、3.75μLのBSA溶液、1.50μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ(1.6 U/μL)、0.75μLのNt.BstNBI(10 U/μL)。
パートB:
6.30μLの水、5.00μLの10×等温増幅緩衝液、0.75μLのテンプレートX’-X’(1μM)、2.40μLのMgSO4(100mM)、1.50μL dNTP(10nM)、0.75μLのdsGreen(100×~20×までDMSO中で1:5希釈)、0.30μLのSSB溶液。
パートC:
1μL BstNI(10 U/μL)、2μLのバインダーDNA(1μM)および3μLのウイルスRNA(72.7コピー/μL)。
【0107】
添加工程:パートB(17μL)を4℃に冷却したPCRチューブに添加する。これに、パートCを添加し、4℃において5分間維持し、その後、パートA(10μL)を添加する。次いで、チューブをシールし、その内容物を増幅に供する。
【0108】
増幅工程:等温インキュベーションおよび蛍光シグナル測定を、50℃の一定温度に設定したAgilent Mx3005P Real-Time PCRシステム(Didcot, UK)を使用して行う。少なくとも20分のインキュベーション時間にわたって10秒ごとに測定する。
【0109】
結果:
結果を、
図16~17に示す。これらのデータセットは、患者の陽性サンプルが4.69後に増幅を生じたのに対して、患者の陰性サンプルが24.90後に増幅を生じることを示す。これは、サンプルの増幅時間の間に有意差が存在し、バインダーDNAの使用を通じてRNAの検出が可能であることを示す。
【0110】
結論として、DNA選択的制限エンドヌクレアーゼを含む新たな逆転写酵素フリーEXPAR方法の使用を通じて、本発明者らは、5分未満の増幅時間を伴う、10分未満でSARS-CoV-2 RNAの成功裡の検出を明らかに示した。これらの速度は、qPCR(少なくとも60分のアッセイ時間)より遙かに迅速であるのみならず、現在のところ、LAMPおよび30分のラテラルフロー試験より性能も優れている。このrtf-EXPAR方法は、qPCRベースのCoVID-19アッセイのために現在使用されている装置での使用に関して完全に適合している(導入の準備ができている)。上記アッセイの単純さおよび速度は、この方法が、本明細書上記で記載されるとおりの一連の感染性疾患(例えば、少し例を挙げれば、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルスおよびエボラ)を検出するために改変されることを可能にする。
【0111】
本明細書で言及される全ての参考文献は、それらの全体が本明細書に援用される。
【0112】
実施例8:Orf1abおよびN遺伝子に基づいてCOVI19を検出することに関する患者検証試験
指数関数的増幅反応
そのプロトコールは、先ず、3種の溶液、パートA、パートBおよびパートCの調製、続いて、添加工程、次いで最後に増幅工程を含む。
パートA
1.50μLの水、2.50μLの10×等温増幅緩衝液、3.75μLのBSA溶液、1.50μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ(1.6 U/μL)および次いで0.75μLのNt.BstNBI(10 U/μL)。
パートB
6.30μLの水、5.00μLの10×等温増幅緩衝液、0.75μLのテンプレートX’-X’(1μM)、2.40μLのMgSO4(100mM)、1.50μL dNTP(10nM)、0.75μLのdsGreen(100×から20×までDMSO中で1:5希釈)および次いで0.30μLのSSB溶液。
パートC
RTF EXPARアッセイ(1ポットRTF-EXPAR):試薬を、以下のように一緒に混合する:1μL BstNI(2 U/μL)、2μLのバインダーDNA X(100nM)、および次いで3μLの陽性または陰性サンプル。
【0113】
添加工程
パートB(17μL)をPCRチューブに添加し、これに、パートC(6μL)、続いてパートA(10μL)を添加する。次いで、チューブをシールし、その内容物を増幅に供する。
【0114】
EXPAR増幅
等温インキュベーションおよび蛍光シグナル測定を、Thermo Fisher QuantStudio 5 Real-Time PCRシステム、96ウェル、0.2mLを使用して行う。温度を25℃、15秒間に設定し、その後、アッセイの継続時間にわたって50℃へと上昇させる。蛍光読み取りは、30分のインキュベーション時間にわたって10秒ごとに測定する。
【0115】
結果
結果を、
図18~19に示す。これらのデータセットは、6分間のカットオフ時間を示す。6分間未満の増幅時間を有する全てのサンプルを陽性として記録したのに対して、6分間を超える任意の時間を陰性として記録した。
図18aおよびbは、感度82%および陰性度(negativity)96%を示すOrf1ab遺伝子標的の結果を示す。
図19aおよびbは、感度96%および陰性度96%を示すN遺伝子標的の結果を示す。これは、RNAありおよびなしで、サンプルの増幅時間の間に有意差が存在することを示す。
【0116】
【0117】
指数関数的増幅反応
そのプロトコールは先ず、3種の溶液、パートA、パートBおよびパートCの調製、続いて添加工程、および次いで最後に増幅工程を含む。
パートA
1.50μLの水、2.50μLの10×等温増幅緩衝液、3.75μLのBSA溶液、1.50μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ(1.6 U/μL)および次いで、0.75μLのNt.BstNBI(10 U/μL)。
パートB
6.30μLの水、5.00μLの10×等温増幅緩衝液、0.75μLのテンプレートHPV’-HPV’(1μM)、2.40μLのMgSO4(100mM)、1.50μL dNTP(10nM)、0.75μLのdsGreen(100×から20×までDMSO中で1:5希釈)および次いで、0.30μLのSSB溶液。
パートC
RTF EXPARアッセイ(1ポットRTF-EXPAR):試薬を、以下のように一緒に混合する:1μL BstNI(2 U/μL)、2μLのバインダーDNA HPV(100nM)、および次いで、3μLの陽性または陰性サンプル。
【0118】
添加工程
パートB(17μL)をPCRチューブに添加する。これに、パートC(6μL)を添加し、続いてパートA(10μL)を添加する。次いで、チューブをシールし、その内容物を増幅に供する。
【0119】
EXPAR増幅
等温インキュベーションおよび蛍光シグナル測定を、Thermo Fisher QuantStudio 5 Real-Time PCRシステム、96ウェル、0.2mLを使用して行う。温度を25℃、15分間に設定し、その後、アッセイの継続時間にわたって50℃へと上昇させる。蛍光読み取りは、30分のインキュベーション時間にわたって10秒ごとに測定する。
【0120】
結果
結果を
図20に示す。これらのデータセットは、mRNA陽性サンプルが4.5分後に増幅を生じたのに対して、陰性サンプルは6分後に増幅を生じることを示す。これは、サンプルの増幅時間の間に有意差が存在し、バインダーDNAおよび本明細書で記載される方法の使用を通じて、mRNAの検出が可能であることを示す。
【0121】
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【配列表】
【国際調査報告】