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特表2023-553870ガラスシートのレーザ誘起マーキングを消去する方法、ならびにガラスシート、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシートのマーキング及びマーキング除去のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ガラスシートのレーザ誘起マーキングを消去する方法、ならびにガラスシート、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシートのマーキング及びマーキング除去のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 23/00 20060101AFI20231219BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20231219BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20231219BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20231219BHJP
【FI】
C03C23/00 D
B23K26/354
B23K26/00 B
B23K26/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023533802
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2021080482
(87)【国際公開番号】W WO2022117271
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102020215234.9
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】523204008
【氏名又は名称】ヘグラ ボライデント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コー. カーゲー
【氏名又は名称原語表記】HEGLA BORAIDENT GMBH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 21, 37688 Beverungen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】レイナー, トーマス
【テーマコード(参考)】
4E168
4G059
【Fターム(参考)】
4E168AA02
4E168AB02
4E168AC01
4E168AD17
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA32
4E168DA45
4E168DA46
4E168DA47
4E168JA14
4E168JA15
4G059AA01
4G059AB03
4G059AC03
4G059AC09
(57)【要約】
本発明は、ガラスシート、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシートのマーキング及びマーキング除去のための方法及び装置に関する。本発明は、さらに、ガラスシート、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシートのレーザ誘起マーキングを消去する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスシート(1)、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシート(3)のレーザ誘起マーキング(7a;b)を消去する方法であって、
前記マーキング(7a;b)がレーザ放射によって消去される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記マーキングは、色中心に基づく内部マーキング(7a)である
ことを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内部マーキング(7a)を消去するために、前記内部マーキング(7a)の色に対して補色の範囲の波長を有する前記レーザ放射が使用される
ことを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記内部マーキング(7a)を消去するために、前記色中心によって吸収される波長範囲の前記レーザ放射が使用される
ことを特徴とする、
請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記内部マーキング(7a)を消去するために前記レーザ放射が使用され、前記レーザ放射は、
a)紫色又は青色又は緑色のスペクトル範囲の波長、
あるいは、
b)紫色から緑色のスペクトル範囲、
を有する
ことを特徴とする、
請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記内部マーキング(7a)を消去するために、300~575nmの波長を有する前記レーザ放射が使用される
ことを特徴とする、
請求項2~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マーキングは、前記ガラスシート(1)のガラスシート表面(1a)の表面的な、彫り込まれた平面マーキング(7b)であり、前記平面マーキング(7b)の消去がレーザ研磨によって行われる
ことを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザ研磨のために、前記ガラスシート表面(1a)によって吸収される波長範囲の前記レーザ放射が使用される
ことを特徴とする、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザ研磨のために、<330nm又は≧4.8μmの波長を有する前記レーザ放射が使用される
ことを特徴とする、
請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザ研磨のために、UVレーザ又はIRレーザ、好ましくはCOレーザ又はCOレーザが使用される
ことを特徴とする、
請求項7~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記平面マーキング(7b)が<10μm、特に<2μmの侵入深さを有する
ことを特徴とする、
請求項7~請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マーキング(7a;b)を消去するために、連続的な前記レーザ放射、又は≧1nsのパルス持続時間の前記レーザ放射が使用される
ことを特徴とする、
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記マーキング(7a;b)は、機械可読マーキング(7a;b)、特に機械可読コード、好ましくはデータ・マトリックス・コード(DMC)又はバーコード又はQRコードである
ことを特徴とする、
請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ガラスシート(1)、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシート(3)のマーキング及びマーキング除去のための方法において、
a)前記ガラスシート(1)又はガラスシート表面(1a)にマーキング(7a;b)をレーザ誘起により生成するステップと、
b)レーザ放射によって前記マーキング(7a;b)を消去するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
a)超短パルスレーザ放射によって、色中心を形成することにより前記ガラスシート(1)に内部マーキング(7a)をレーザ誘起により生成するステップと、
b)特に請求項2~請求項6又は請求項12のいずれか一項に従い、前記レーザ放射によって前記内部マーキング(7a)を消去するステップと、
を含むことを特徴とする、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a)超短パルスレーザ放射によるレーザ彫刻によって前記ガラスシート(1)の前記ガラスシート表面(1a)に表面的な平面マーキング(7b)をレーザ誘起により生成するステップと、
b)特に請求項8~請求項10又は請求項12のいずれか一項に従い、レーザ研磨によって前記平面マーキング(7b)を消去するステップと、
を含むことを特徴とする、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記平面マーキング(7b)が<10μm、特に<2μmの侵入深さで生成される
ことを特徴とする、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マーキング(7a;b)は、前記基礎ガラスシート、特に前記フロートガラスシート(3)の製造プロセス中に、エンドレス基礎ガラス帯体、特にフロートガラス帯体(4)に導入され、続いて、前記基礎ガラスシート、特に前記フロートガラスシート(3)が、前記エンドレス基礎ガラス帯体、特に前記フロートガラス帯体(4)から切り離される
ことを特徴とする、
請求項14~請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記マーキング(7a;b)の生成時、及び/又は前記マーキング(7a;b)の消去時に、前記レーザ放射を提供するレーザヘッド(9;15)が前記ガラスシート(1)に対して、又は前記基礎ガラス帯体(4)に対して固定式又は移動式である
ことを特徴とする、
請求項14~請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記マーキング(7a;b)の生成時、及び/又は前記マーキング(7a;b)の消去時に、前記ガラスシート(1)又は前記基礎ガラス帯体(4)が特に送り方向(V)に移動する
ことを特徴とする、
請求項14~請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記マーキング(7a;b)を生成するために、300nm~2μm、好ましくは533nm~1200nm、特に好ましくは533nm~1μmの波長を有する前記レーザ放射が使用されることを特徴とする、
請求項14~請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記マーキング(7a;b)を生成するために、10-11~10-13sのパルス持続時間を有する前記レーザ放射が使用される
ことを特徴とする、
請求項14~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記マーキング(7a;b)を生成するために、20~100Wのレーザ出力を有するレーザビーム(10)が使用される
ことを特徴とする、
請求項14~請求項22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記マーキング(7a;b)を生成するために、集束されたレーザビーム(10)が使用される
ことを特徴とする、
請求項14~請求項23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記レーザビーム(10)が10~100μmの直径を有する
ことを特徴とする、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
機械可読マーキング(7a;b)、特に機械可読コード、好ましくはデータ・マトリックス・コード(DMC)、バーコード、又はQRコードが生成されることを特徴とする、請求項14~請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
2つのガラス表面(1a、b)のうちの1つに、少なくとも1つの金属含有機能層及び/又は少なくとも1つのセラミック機能層を含む機能性コーティング(5)を有する前記ガラスシート(1)がマーキング及び/又はマーキング除去され、レーザ照射時に、コーティングされないガラス表面(1b)に照射又は透過されることを特徴とする、請求項14~請求項26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
特に請求項14、請求項15又は請求項18~請求項27のいずれか一項に記載の方法を実行することによる、ガラスシート(1)、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシート(3)のマーキング及びマーキング除去のための装置であって、
a)色中心を形成することによって、前記ガラスシート(1)に内部マーキング(7a)をレーザ誘起により生成するために、超短パルスレーザ放射を提供するためのレーザヘッド(9)を有するマーキング装置(8a)と、
b)前記色中心により吸収される、及び/又は、特に前記内部マーキング(7a)の色に対して補色の範囲の波長を有する波長範囲のレーザ放射によって前記内部マーキング(7a)を消去するためのレーザヘッド(15)を有するマーキング除去装置(14a)と、
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項29】
特に請求項14、請求項16~請求項27のいずれか一項に記載の方法を実行することによって、ガラスシート(1)、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシート(3)のマーキング及びマーキング除去のための装置であって、
a)レーザ彫刻、好ましくは侵入深さが<10μmのレーザ彫刻によって、平面マーキング(7b)を生成するために超短パルスレーザ放射を提供するためのレーザヘッド(9)を有するマーキング装置(8b)と、
b)レーザ研磨によって、好ましくはガラスシート表面(1a)によって吸収される波長範囲のレーザ放射を用いて、前記平面マーキング(7b)を消去するためのレーザヘッド(15)を有するマーキング除去装置(14b)と、
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項30】
前記装置が、前記マーキング(7a;b)の生成時、及び/又は前記マーキング(7a;b)の消去時に前記ガラスシート(1)又は前記基礎ガラス帯体(4)を送り方向(V)に移動させる手段を有することを特徴とする、
請求項28又は請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記レーザ放射を提供する前記レーザヘッド(9;15)は、前記マーキング(7a;b)の生成時及び/又は前記マーキング(7a;b)の消去時に前記ガラスシート(1)又は前記基礎ガラス帯体(4)に対して固定される、あるいは前記装置は、前記マーキング(7a;b)の生成時及び/又は前記マーキング(7a、b)の消去時に、前記ガラスシート(1)又は前記基礎ガラス帯体(4)に対して前記レーザ放射を提供する前記レーザヘッド(9;15)を移動させる手段を有する
ことを特徴とする、
請求項28~請求項30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
前記マーキング(7a;b)の生成時及び/又は前記マーキング(7a;b)の消去時に前記レーザヘッド(9;15)を送り方向Vに、特に前記ガラスシート(1)又は前記ガラス帯体(4)と同じ速度で移動させる手段を有する
ことを特徴とする、
請求項28~請求項31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記マーキング(7a;b)を生成するための前記レーザヘッド(9)及び/又は前記マーキング(7a;b)を消去するための前記レーザヘッド(15)は、それぞれレーザビーム(10;16)を走査フィールドに移動させるための走査光学系を含むレーザ光学系(12)を有することを特徴とする、請求項28~請求項32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
好ましくは請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の方法に従い、ガラスシート(1)、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシート(3)のレーザ誘起マーキング(7a;b)を消去するためのレーザヘッド(15)を有するマーキング除去装置(14a;14b)の使用。
【請求項35】
請求項28~請求項33のいずれか一項に記載のマーキング除去装置(14a;14b)の特徴を有する前記マーキング除去装置(14a;14b)が使用される
ことを特徴とする、
請求項34に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスシート、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシートのマーキング及びマーキング除去のための方法及び装置に関する。本発明は、さらに、ガラスシート、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシートのレーザ誘起マーキングを消去する方法、及び本発明によるそのための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎ガラスは、例えば単板安全ガラスシート、合わせ安全ガラスシート、又は断熱グレージングなどの機能ガラス若しくは板ガラス製品を製造するための出発材料若しくは原材料である。また、基礎ガラスは板ガラスである。適用される製造プロセス、寸法、形状、仕上げに関係なく、ガラスシートの形態のあらゆるガラスが板ガラスと呼ばれる。したがって、基礎ガラスシートは、ガラス原板(未加工ガラスシート)である。
【0003】
それに加えて、基礎ガラスは、通常、シリケートガラスからなる。
【0004】
フロートガラスシートは、フロート法又はフロートガラス法で製造される板ガラスである。フロートガラス法は、液状のガラス溶融物が一方の側から液状のスズバスへ連続的に供給される、エンドレスの連続製造プロセスである。ガラス塊は、エンドレスで、歪みのないフロートガラス帯体の形態で溶融スズ上に「浮かぶ」。フロート槽の端でフロートガラス帯体が冷却通路に入り、そこで室温までゆっくりと冷却される。ガラス帯体は、例えば600×321cmのガラス原板に切断され、その後、ガラス加工業者に輸送され、ガラス加工業者はそこから例えば断熱ガラスシート、単板安全ガラスシート、又は合わせ安全ガラスシートを製造する。
【0005】
フロートガラス法は、1960年代から工業的に適用され、それ以来、板ガラス製造若しくはガラス原板の製造の他のほとんどの方法に大きく取って代わった。
【0006】
他の種類の基礎ガラスは、例えば装飾ガラス又はフルコールガラスである。
【0007】
装飾ガラス(鋳造ガラス又は構造ガラスとも呼ばれる)は、2つのローラによって、まだ赤熱するガラス塊にパターンが刻み込まれることによって製作される。構造ローラによって、片面又は両面に装飾の多い部分と少ない部分を有する表面を持つガラスができる。
【0008】
フルコールガラス法は、引上げ法で透明な窓ガラスを製造する方法であり、ガラス溶融物が、その中に押し込まれた矩形の引上げノズル上に盛り上がり、その直後に鉄製コテで横から掴んで垂直上方に引き上げられる。固化したガラス塊を一対のローラが垂直の冷却塔を通して搬送する。
【0009】
製造される基礎ガラスシート、特にフロートガラスシートに、基礎ガラスシートに関する特定の情報を含むマーキングを施すことは当該技術分野において知られている。例えば、マーキングは、例えば基礎ガラスシートがガラス欠陥を有するかどうか、そして有する場合にはどの箇所にあるのかなどの基礎ガラスシートの品質に関する情報を含む。ガラス欠陥は、例えば、気泡、及び/又は、例えば金属封入物などの粒子封入物、あるいは条痕又は亀裂などであり得る。これらの情報はデータベースに保存され、ガラス加工業者によって読み取られ、かつ例えばガラス欠陥が切り取られるように切断するなど、ガラス加工業者が基礎ガラスシートを相応に活用できるようにする。
【0010】
つまり、製造される基礎ガラスシート、特にフロートガラスシートは、後の使用のために、通常、裁断される必要がある。そのために、特にガラス原板は個々のガラスシート裁断片に分割される。これは、基礎ガラス製造業者又は次のガラス加工業者のもとで、それ自体既知の切断設備で行われる。切断後、ガラスシート裁断片若しくは切断されたガラスシートは、特に、例えば断熱ガラスラインなどのさらなる加工設備で、例えばエッジ加工設備などの加工設備、又は強化処理装置(Tempervorrichtung)などでさらに加工される。
【0011】
これに加えて、基礎ガラス製造業者又は次のガラス加工業者のもとで、製造された単板基礎ガラスシートを、2つ以上の単板基礎ガラスシートを互いに接合することによって合わせ基礎ガラスシートに加工することができる。その際、必要に応じて、単板基礎ガラスシートに予め機能層が設けられる。
【0012】
マーキングは、例えば記号列として、又は、特に機械可読の、例えばデータ・マトリックス・コード(DMC)などのコードの形態で存在する。
【0013】
ガラスシートの生産時だけでなく、加工時にもマーク付けする(Kennzeichnung)必要がある。特徴付けすることによって、生産フローの組織化が容易になる一方で、製品の追跡が可能になる。その際、マーク付けの内容は絶えず変化する。それに加えて、基礎ガラスのマーキングは、最終製品に現れるべきでない。その結果、消去可能なマーキングが望まれる。
【0014】
当該分野では、マーキングは、例えば、現在のところ、インクジェット印刷の原理に従って行われ(塗布によるマーキング法)、帯体製造されたフロートガラス帯体がフロートガラスシートに裁断される前に、帯体の低温の端に最初のマーキングが行われる。マーキングは、加工時のそれぞれの加工工程の前に再び除去され、その後、新たに設けられる。これは、後続の加工工程の間にマーキングのインクによる影響によって品質が損なわれることを避けるためにも行われる。例えば、インクは機能層を設ける際や、合わせ基礎ガラスシートを製造する際に邪魔になる。
【0015】
欧州特許第1735517号明細書は、外側から見ることができ、かつ誰もが識別できる、記号列からなる少なくとも1つの永久マーキングを含むグレージングを開示する。マーキングは、グレージングの技術的特徴、その製造又は商業的情報に関する情報を示す。記号列は数字列を含み、各数字は、マーク付け要素の1つの記号又は複数の連続する記号による2進又は16進コードによってコーディングされている。マーキングは彫込み又は印刷によって行うことができる。
【0016】
さらに、ガラスシートにマーキングするためのレーザマーキング方法が独国特許出願公開第102005026038号明細書及び独国特許出願公開第102005025982号明細書の2つの刊行物から知られている。
【0017】
独国特許出願公開第102005026038号明細書によれば、金属ナノ粒子を含むガラス状の層が、レーザによってガラスシートの表面に設けられる。そのために、ドナー媒体若しくはキャリア媒体を、記されるべきガラスシート表面に接触させ、レーザビーム誘起プロセスによってガラスシート表面にマーキングを生成する。キャリア媒体は、例えば、Low-E機能コーティングを含むPETフィルムを有し、これは少なくとも1つの金属機能層を有する。マーキングのために、レーザビームが機能コーティングに向けられ、レーザビーム入射によって、材料がPETキャリアフィルムの機能コーティングからマーキングされるべきガラスシート表面に転写される。この材料は、金属ナノ粒子を含むガラス状のマトリックスとしてガラスシート表面に付着し、マトリックスは機能コーティングの機能層にもともと存在する物質から形成されている。PETキャリアフィルムは無傷のままである。
【0018】
独国特許出願公開第102005025982号明細書によれば、同様に、レーザ放射によってガラスシートのLow-E機能コーティングの色を変化させ、それによりマーキングが生成される。
【0019】
さらに、当該技術分野では、ガラスシートが、ガラスシートの内部に位置する内部マーキングを備えることが知られている。内部マーキングは、例えばレーザ誘起により行うことができる(Forschungsvereinigung Feinmechanik,Optik und Medizintechnik e.V.,“Untersuchung zur Materialreaktion im innern optisch transparenter Materialien nach Ultrakurz-Laserpulsanregung:Generierung spannungsarmer Innenmarkierungen(micro-dots))。
【0020】
例えば、レーザ誘起によりガラスに微小亀裂を生成することが知られている。生成された構造は光を散乱させ、したがってマーキングとして認識可能であり、コードリーダで読み取ることができる。ただし、微小亀裂はガラスシートの機械的特性を変化させる。
【0021】
さらに、内部マーキングのために、レーザ誘起によりガラスに色中心(体積着色)(Volumenfaerbung)を生成することが知られている。色中心の形成によるガラスシートの内部マーキングは、レーザ放射によってSiO2ネットワークに欠陥が生成されるということに基づいている。欠陥は、光学特性の変化、特に光透過率の低下をもたらす。したがって、色中心は、可視光を吸収するSiO2ネットワークの欠陥である。可視光の波長範囲の電磁放射は色中心で吸収される可能性があり、そのことがガラスを黄褐色に変色させる。色中心(体積着色)の生成には、355~1064nmの波長のピコ秒範囲及びフェムト秒範囲のパルス持続時間のレーザが使用される。色中心を用いた内部マーキングは熱可逆性である。
【0022】
さらに、内部マーキングは、複素屈折率(=光学密度)の局所的な変化に基づいたマイクロドットを生成することによって行うことができる。密度の変化は、材料の局所的な溶融、すなわち熱プロセスによって生成される。マイクロドットの生成にも、355~1064nmの波長のピコ秒範囲及びフェムト秒範囲のパルス持続時間とのレーザが使用される。マイクロドットを用いた内部マーキングは熱的に安定している。ただし、局所的な密度変化の周囲に応力が発生するため、ガラスの機械的強度も変化する。
【0023】
例えば、独国特許出願公開第10162111号明細書から、例えばガラスに内部マーキングする方法が読み取れ、この場合、ガラスを透過するレーザビームがガラスの表面に向けられる。例えば、パルス持続時間が200fs、波長800nmのレーザが使用される。表面から離れていてガラス内に配置された場所にレーザビームが集束され、それによりそこに高い出力密度が存在する。このようにして達成されるレーザビームの高い出力密度は、励起の非線形光学効果を誘起し、それにより透明な材料に非常に局所的なエネルギー作用が生じる。構成部品とレーザビームの出力密度に応じて複素屈折率の変化を達成でき、これは透明な材料内に、光学特性が変化した領域の形態でマーキングを作り出す。本発明による方法によって生成されるマーキングの光学特性の変化は、複素屈折率の変化に限定されるべきである。この方法で適切に設定した場合、構成部品に微小亀裂が発生することはない。内部マーキングは、永久的に、室温より数100K高い温度範囲で維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】欧州特許第1735517号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005026038号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005025982号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10162111号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Forschungsvereinigung Feinmechanik,Optik und Medizintechnik e.V.,“Untersuchung zur Materialreaktion im innern optisch transparenter Materialien nach Ultrakurz-Laserpulsanregung:Generierung spannungsarmer Innenmarkierungen(micro-dots)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の課題は、経済的で、ガラスシートの機械的損傷につながらない、ガラスシート、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシートのレーザ誘起マーキングを消去する方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらなる課題は、経済的で、ガラスシートの機械的損傷につながらない、機械可読のマーク付けを可能にする、ガラスシート、特に基礎ガラスシート、好ましくはフロートガラスシートのマーキング及びマーキング除去のための方法を提供することである。
【0028】
さらなる課題は、この方法を実行するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題は、請求項1及び請求項14の特徴を有する方法、ならびに請求項28及び請求項29の特徴を有する装置によって解決される。請求項34には、本発明による使用が記載される。本発明の有利なさらなる実施形態は、後続の従属請求項に特徴付けられる。
【0030】
本発明の範囲内で、驚くべきことに、最初に体積着色によってガラスシートにレーザ誘起内部マーキングを生成し、続いて、生成された内部マーキングを同様にレーザ放射によって再び消去若しくは除去することが可能であるということが判明した。
【0031】
レーザ誘起とは、レーザ放射によって生成されることを意味する。
【0032】
これに代えて、レーザ誘起による表面の微細彫刻によってもマーキングを行うことができる。その際、本発明の範囲内で、このマーキングも同様にレーザ研磨によって再び除去若しくは消去できることが判明した。
【0033】
その場合、消去は、本発明の範囲内で、たとえそれが好ましいとしても、マーキングの完全な除去だけでなく、マーキングの情報が読み取れなくなったような強度の弱化も含む。
【0034】
以下、図面をもとにして本発明を例示的に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の実施形態によるマーキング装置を用いてマーキングされるガラスシートの断面を非常に簡略化して模式的に示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態によるマーキング除去装置を用いてマーキングされたガラスシートの断面を非常に簡略化して模式的に示す図である。
図3】エンドレスフロートガラス帯体を非常に簡略化して模式的に示す平面図である。
図4】出発ガラス、マーキングされたガラス、及びマーキング除去されたガラスの吸収スペクトルの図である。
図5】本発明のさらなる実施形態によるマーキング装置を用いてマーキングされるガラスシートの断面を非常に簡略化して模式的に示す図である。
図6】本発明のさらなる実施形態によるマーキング除去装置を用いてマーキングされたガラスシートの断面を非常に簡略化して模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明によりマーキングされるガラスシート1(図1図5)は、第1及び第2のガラス表面1a;bと、特にガラスシート周縁1cを有する。ガラスシート1は、特にそれぞれ単一若しくはただ1つのガラス板2(図1)のみを有する。各ガラス板2は、2つのガラス板表面2a;bを有する。ガラスシート1がただ1つのガラス板2のみを有する場合、2つのガラス板表面2a;bはガラスシート1のガラス表面1a;bを形成する。
【0037】
マーキングされるガラスシート1が、基礎ガラスシート若しくはガラス原板(Glasrohtafel)であることが特に好ましく、好ましくはフロートガラスシート3である。
【0038】
すでに説明したように、フロートガラスシート3の製造は、エンドレスフロートガラス帯体(Floatglasband)4の製造によって行われ、これが冷却後に切断されてフロートガラスシート3とされる。あるいは、フロートガラスシート3は、冷却されたフロートガラス帯体4から切り離され、特に切り取られる。その際、フロートガラス帯体4は常に、自由な低温端4aを有する。
【0039】
その場合、特にフロートガラスシート3のマーキングは製造中にすでに行われ、その際、マーキングは、フロートガラスシート3に裁断される前に、製造されたフロートガラス帯体4の低温端4aでフロートガラス帯体4に導入される。
【0040】
他の製造法でも同様に、それぞれの基礎ガラス帯体にマーキングを導入することができる。
【0041】
しかし、基礎ガラスシート、特にフロートガラスシート3のマーキングは、ガラス帯体から切り離した後に行うこともできる。
【0042】
それに加えて、マーキングされるガラスシート1は、すでにさらに加工されたガラスシート1であってもよく、例えば単板安全ガラスシート、又は複層断熱ガラスシート又は裁断された合わせガラスシート、特に合わせ安全ガラスシート(LSGシート)であってもよい。
【0043】
知られているように、合わせガラスシートは、互いに接合された複数のガラス板2からなる(図示せず)。合わせガラスシートは、それぞれ接着可能なプラスチックの中間層を介在させて、特に引裂強度が高い粘弾性で熱可塑性のフィルムによって互いに接合された少なくとも2つの個別のガラス板2の積層体である。この場合、それぞれ、外側に位置する2つのガラス板表面2a;bは、ガラスシート1のガラス表面1a;bを形成する。合わせガラスシートの複数のガラス板2は、特に少なくとも部分的に、予め応力が与えられた複数のガラス板2である。この場合、マーキングは、複数のガラス板2のうちの1つの内部に導入される。
【0044】
知られているように、複層断熱ガラスシートは少なくとも2つのガラス板2からなり、それらの間には気密及び防湿に閉鎖された中空空間が存在する。
【0045】
それに加えて、ガラスシート1又はガラス板2は、2つのガラス表面1a;b、2a;bのうちの1つに表面機能性コーティング5を有することができる。
【0046】
機能性コーティング5は、1つ又は複数の個別の機能層を有することができる。したがって、それは機能層積層体である。機能層は、ガラスシート1の特定の特性を変化させるか、若しくはガラスシート1に特定の機能を付与する。その場合、機能は、例えば遮熱、遮光、又は保温などであり得る。機能性コーティング5が波長選択性コーティング若しくはLow-Eコーティングであることが好ましい。機能性コーティング5は、ガラスシート1の意図された使用前には除去されず、ガラスシート1の意図された使用時にもまだ存在する。ガラスシート1の機能性コーティング5は、通常、少なくとも1つの金属含有機能層を有する。特に、それぞれ、金属酸化物層、又は、好ましくはセラミックの金属酸化物層である。したがって、ガラスシート1の機能性コーティング5は、少なくとも1つの金属機能層及び/又は少なくとも1つの、好ましくは金属含有セラミック機能層を有する。さらに、機能性コーティング5は、特に<2μm、好ましくは<1μmの厚さを有する。
【0047】
さらに、ガラスシート1は、2つのガラス表面1a;bのうちの1つに剥離可能な保護フィルム又はポリマー保護層の形態のそれ自体知られている保護コーティング6を有することもできる。これは、特に、ガラスシート1が、まだ硬化させる必要のある機能性コーティング5を有する場合に、これを保護しなければならないという場合である。保護コーティング6は、その下に配置された機能性コーティング5を保護する。
【0048】
すでに説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、最初にガラスシート1にレーザ誘起内部マーキング7aが生成され、続いてこれが同様にレーザ放射によって再び除去される。その場合、内部マーキング7aは、超短パルスレーザ放射を用いて色中心(=体積着色)を形成することによって生成される。そして、内部マーキング7aの除去若しくは消去は、色中心によって吸収される波長範囲のレーザ放射によって行われる。
【0049】
図1は、内部マーキング7aを生成するためのマーキング装置8aを例示的に示す。
【0050】
マーキング装置8aは、レーザビーム10を生成若しくは提供するためのレーザビーム生成装置若しくはレーザヘッド9を有する。レーザヘッド9は固定式であっても可動式であってもよく、そのために相応の駆動手段が存在する。
【0051】
レーザヘッド9は、レーザ放射源11及び関連するレーザ光学系12を有する。レーザビーム10は、とりわけレーザ光学系12によって集束される。それに加えて、レーザビーム10を、レーザ光学系12を用いてガラス表面1a;bに対して垂直又は鉛直に方向合わせされた開始位置から旋回若しくは偏向させることができ、それによりレーザビーム10が走査フィールドをくまなく移動できるが、それについては後から詳しく言及される。
【0052】
その場合、レーザ放射源11は、ピコ秒範囲又はフェムト秒範囲のパルス持続時間を有する超短パルスレーザビーム10を生成する。特に、レーザビーム10は、10-11~10-13sのパルス持続時間を有する。
【0053】
さらに、レーザ放射源11は、特に、繰り返し率が10~数MHzのレーザビーム10を生成する。その場合、繰り返し率が高いほど、マーキングをより速く行うことができる。これは、移動するガラスシート1をマーキングする場合に特に重要である。
【0054】
さらに、パルスエネルギーは、特に数マイクロジュール~約1mJであることが好ましい。
【0055】
それに加えて、レーザ放射源11は、特に、300nm~2μm、好ましくは533nm~1200nm、特に好ましくは533nm~1μmの波長を有するレーザビーム10を生成する。
【0056】
したがって、レーザ放射源11は、特にVISレーザ又はIRレーザである。
【0057】
それに加えて、これは特に固体レーザ、好ましくはファイバレーザである。
【0058】
それに加えて、レーザ放射源11は、特に、1~数100W、好ましくは20~100Wのレーザ出力を有するレーザビーム10を生成する。
【0059】
知られているように、体積着色によって色中心を生成する場合、エネルギー密度(レーザ出力/面積)を相応に設定することが重要である。特定のエネルギー閾値を超えると、材料切除(Materialabtrag)、若しくは材料の溶融が生じることになる。その場合、エネルギー閾値の高さの程度は、とりわけ材料によって決まる。
【0060】
本発明による方法の目標は、可能な限り短時間で、可能な限りコントラストに富み、かつ可能な限り暗色の内部マーキング7aを生成することである。
【0061】
レーザビーム10の移動は、内部マーキングの場合、すでに説明したように、特にレーザ光学系12によって行われる。このために、レーザ光学系12は、それ自体知られているように、走査フィールド内でレーザビーム10を移動させるための走査光学系を有する。特に、走査光学系は、少なくとも2つの変位可能なミラーである。走査フィールドは、例えば、100mm×100mmである。
【0062】
この場合、ガラスシート1が送り方向に移動する場合でも、若しくはガラス帯体4が送り方向Vに移動する場合でも内部マーキングは可能な限り迅速に行われるべきである。その場合、マーキングされるガラスシート1若しくはマーキングされるガラス帯体4の送り速度は、特に1~80m/min、好ましくは10~20m/minである。
【0063】
その場合、マーキングは、固定式又は移動式のレーザヘッド9を用いて行うことができる。特に、マーキング時にレーザヘッド9も同様に送り方向Vに、特にガラスシート1若しくはガラス帯体4と同じ速度で移動する。すなわち、レーザヘッド9は、ガラスシート1若しくはガラス帯体4と共に運ばれる。レーザヘッド9は、マーキングプロセスの間、ガラスシート1若しくはガラス帯体4に対して移動しない。レーザビーム10のみが、走査光学系によって走査フィールドの範囲内でガラスシート1若しくはガラス帯体4に対して移動される。
【0064】
しかし、レーザ光学系12は、走査フィールドに影響を及ぼすだけでなく、マーキングの結果にも直接影響を及ぼす。その理由は、レーザ光学系12を用いて、レーザ焦点13のサイズ、焦点深度、ひいてはガラス内のエネルギー密度を設定できるからである。
【0065】
その場合、特に、レーザ光学系12によって設定されるレーザ焦点13は、10~100μmの直径を有する。それに加えて、レーザ焦点13は、ガラス板表面2a;bから離れた内部マーキング7aを生成するために、マーキングされるガラス板2の2つのガラス板表面2a;bの間にある。
【0066】
それに加えて、生成される内部マーキング7aは、特に機械可読コード、特にデータ・マトリックス・コード(DMC)、又はバーコード、又はQRコードである。しかし、ロゴ、製品ID、又はシリアル番号であることも可能である。
【0067】
それに加えて、内部マーキング7aは特に次の寸法を有する。
【0068】
【表1】
【0069】
それに加えて、内部マーキング7aは、特に、ガラス厚さ方向に見て、ガラスシート1の厚さ全体にわたって、すなわち一方のガラスシート表面1aから他方のガラスシート表面1bまで延在する。したがって、これは3次元の内部マーキング7aである。
【0070】
それに加えて、用途に応じて、これは特に、その内容が行われた加工工程を直接示すプロセス固有の内部マーキング7a、及び/又は最終顧客固有の内部マーキング7aである。
【0071】
すでに説明したように、内部マーキング7aは、典型的には黄色及び/又は茶色を有し、人間の目に認識可能である。可能な限り良好なコントラストのために可能な限り暗色の着色を達成することが目標である。内部マーキング7aの読み取りは、それ自体既知のように白色透過光で行うことができる。特に、機械的に、それ自体既知であって内部マーキング7aの種類に合わせたリーダを用いて行うことができる。
【0072】
同様にすでに説明したように、色中心に基づく内部マーキング7aの生成は主に可逆的プロセスであり、すなわち色中心は時間と共に多少なりとも退化する。このいわゆる組換え(Rekombination)は、外からの影響なしに自然に起こる。
【0073】
次に、本発明の範囲内で、組換え速度を的確に高めることができることが判明した。知られているように、内部マーキング7aの能動的な消去は、温度処理によって可能である。
【0074】
しかしながら、本発明によれば、内部マーキング7aは、的確に、局所的にレーザ照射することによって消去することもできる。これは、特に、内部マーキング7aの色に対して補色の範囲の波長を有するレーザ放射により可能であることが判明した。それによって、レーザ放射が内部マーキング7aによって吸収され、内部マーキング7aのコントラストが消去若しくは弱化される。
【0075】
したがって、この場合、内部マーキング7aを消去するか、又は少なくとも弱化するために使用されるレーザ放射は、紫色又は青色又は緑色のスペクトル範囲、あるいは紫色から緑色のスペクトル範囲の波長を有する。特に、レーザ放射は、300~575nmの波長を有する。
【0076】
内部マーキング7aを消去するために、特にマーキング除去装置14a(図2)が使用され、これは構造上、実質的にマーキング装置8aのように形成されている。
【0077】
したがって、マーキング除去装置14aも同様に、レーザビーム16を生成するためのレーザヘッド若しくはレーザビーム発生装置15を有している。レーザヘッド15は固定式であっても可動式であってもよく、そのために相応の駆動手段が存在する。
【0078】
レーザヘッド15は、レーザ放射源17及び関連するレーザ光学系18を有する。レーザビーム16は、レーザ光学系18によって集束される。その場合、レーザ光学系18によって、レーザビーム16を、ガラス表面1a;bに対して垂直又は鉛直に方向合わせされた開始位置から旋回若しくは偏向させることができ、それによりレーザビーム16が走査フィールドをくまなく移動できるが、それについては後から詳しく言及される。
【0079】
その場合、レーザ放射源17は、パルス状又は連続的なレーザビーム16を生成する。パルスレーザビーム16の場合、それは特にナノ秒レーザ放射源である。したがって、パルス持続時間は特に少なくとも1ns、好ましくは2、3若しくは数nsである。しかし、パルス持続時間をより長くすることもできる。したがって、このパルス持続時間は、レーザ放射源11の場合よりも短い。
【0080】
それに加えて、レーザ放射源17は、特に固体レーザ、好ましくはファイバレーザである。
【0081】
特に、レーザ放射源17は、消去プロセスを加速させるために、高エネルギー密度のレーザビーム16を生成する。
【0082】
その場合、レーザビーム16の移動は、特にレーザ放射源17をレーザ光学系18と共に移動させることによって行われる。レーザビーム16は、例えば並べて配置されたラインの形態で、消去される内部マーキング7a上をガイドされる。その場合、レーザ焦点19の直径が大きくなるほど、ラインの幅が広くなり、必要なラインの数が少なくなる。それに加えて、レーザ焦点19の直径は、内部マーキング7aを一回だけ通過すればよいか、又は全く通過する必要がないほど大きくてもよいが、照射される面積が内部マーキング7aの平面範囲と同じ大きさであることから照射しさえすればよい。
【0083】
当然のことながら、レーザビーム16の移動は、上述したように走査光学系によって行うこともできる。
【0084】
その場合、マーキング除去も、ガラスシート1が送り方向に移動する場合でも行うことができるように、可能な限り迅速に行われるべきである。これは、マーキングに関して上述したのと同様に行うことができる。しかし、当然のことながら、移動しないガラスシート1にもマーキング除去を行うことができる。この場合、レーザヘッド15も固定式であることが好ましい。
【0085】
これに加えて、第1の実施形態によれば、レーザ焦点19は、マーキングの場合と同様に、マーキングされるガラス板2の2つのガラス板表面2a;bの間に配置される。しかし、レーザ焦点19は、ガラスシート表面1a;b若しくはガラス板表面2a;bに位置することもできる。
【0086】
特に、レーザ焦点径は50μm~500μmである。
【0087】
本発明による方法の利点は、マーキングとマーキングの消去の両方が、迅速かつ安価に、そしてガラスシート1の機械的特性に目立った変化を与えることなく可能であるということである。ガラスは巨視的には変化しない。したがって、ガラスシート1を機械的損傷なしに任意の頻度でマーキング及びマーキング除去することができる。したがって、この方法は可逆的である。特に、マーキングを消去するために、ガラスシート1において内部マーキング7aの領域に局所的にのみレーザ放射が当たり、ガラスシート1全体を加熱する必要がないことも有利である。これによっても、ガラスシート1にかかる負荷が大幅に少なくなる。
【0088】
本発明の第2の実施形態による方法もこれらの利点を提供する。本発明の第2の実施形態によれば、最初に表面の平面マーキング7bがレーザ彫刻によってガラスシート1に生成され、続いてこれがレーザ研磨によって再び除去される。平面マーキング7bは、2次元のマーキングである。
【0089】
知られているように、レーザ彫刻では、マーキングされるガラスシート1は、マーキングされるガラスシート表面1aがレーザ放射によって切除される。次に、本発明の範囲内で、微細彫刻である場合、刻み込まれた平面マーキング7bを除去することも可能であることが判明した。その場合、微細彫刻は、超短パルスレーザ放射を用いたガラス表面1aからの非熱的な材料切除によって生成される。特に、ネットワーク変換器(Netzwerkwandler)が電子と相互作用し、そのことが材料切除につながる。
【0090】
微細彫刻であるからこそ、刻み込まれた平面マーキング7bを再び除去することが可能になる。それは、刻み込まれた平面マーキング7bの深さが、レーザ研磨により除去できるほど小さいからである。
【0091】
その場合、刻み込まれた平面マーキング7bは、特に、<10μm、好ましくは<5μm、特に<2μmの侵入深さを有する。
【0092】
図5は、表面の平面マーキング7bを生成するためのマーキング装置8bを例示的に示す。マーキング装置8bは、内部マーキング7aを生成するためのマーキング装置8aと同様に形成され、そのため、レーザパラメータに関してもそれについての記述を参照されたい。
【0093】
しかしながら、内部マーキング7aを生成するのとは異なり、レーザ焦点13は、マーキングされるガラスシート表面1aに合焦される。
【0094】
さらに、エネルギー密度がより高くなる。特に、それは材料切除が生じるほどの高さである。この場合もまた、エネルギー密度の高さの程度は、とりわけ材料によって決まる。
【0095】
すでに説明したように、平面マーキング7bはレーザ研磨により消去される。
【0096】
レーザ研磨は、ガラスシート1の薄い表層におけるレーザ放射の吸収に基づき、それにより表面近くの温度が蒸発温度の直前にまで達する。この加熱により、ガラスの粘度が低下するので、表面張力に起因する凹凸がなくなり、これが平滑化される。したがって、材料切除によってではなく、再溶解(Umschmelzen)による平滑化が行われる。それによって、レーザ研磨を用いて、とりわけ有利な非常に小さい微小粗さが達成される。
【0097】
図6は、平面マーキング7bを消去するためのマーキング除去装置14bを例示的に示す。マーキング除去装置14bは、内部マーキング7aを消去するためのマーキング除去装置14aと実質的に同様に形成されているので、これについての説明を参照されたい。特に、例えば、レーザ焦点径は、内部マーキングを消去する場合と同様に50μm~500μmであり、それにより広い面積も消去することができる。
【0098】
しかしながら、内部マーキング7aを消去するのとは異なり、レーザ焦点19は常にガラスシート表面1aに合焦される。
【0099】
それに加えて、レーザ放射源17は、ガラスシート表面1a若しくはガラス板表面2aによって吸収される波長範囲のレーザ放射を生成する。
【0100】
特に、これは、波長が<330nm又は≧4.8μmのレーザビーム16を生成する。
【0101】
特に、レーザ放射源17は、UVレーザ又はIRレーザである。
【0102】
特に、レーザ放射源17は、COレーザ又はCOレーザである。COレーザは通常、10.6μmの波長のレーザ放射を生成する。COレーザは通常、4.8~8.3μmの波長のレーザ放射を生成する。
【0103】
レーザ出力は、特に1~数100Wである。
【0104】
本発明による第2の方法の利点も同様に、平面マーキングと平面マーキング7bの消去の両方を迅速かつ安価に、そしてガラスシート1の機械的特性に目立った変化を与えることなく可能であるということである。彫刻時の材料切除は、あったとしても最小限であり、熱応力も生成されない。したがって、微細彫刻は、同様にガラスの強度にはほとんど影響を与えない。したがって、ガラスシート1を機械的損傷なしに任意の頻度でマーキング及びマーキング除去することができる。したがって、この方法は可逆的である。特に、ガラスシート1が、平面マーキング7bを消去するために、ガラスシート表面1aにおいて内部マーキング7bの領域に局所的にのみレーザ放射が当たり、ガラスシート1全体を処理する必要がないことも有利である。これによっても、ガラスシート1にかかる負荷が大幅に少なくなる。
【0105】
それに加えて、内部マーキング7a若しくは平面マーキング7bの消去を、それぞれの製造プロセス又は加工プロセスに簡単に組み込むことができる。これは特に、連続プロセスの場合にも当てはまる。
【0106】
例えば、基礎ガラス製造業者のもとで、製造プロセスの最後にマーキング7a;bが設けられ、次いでマーキングされた基礎ガラスシートがガラス加工業者に引渡される。ガラス加工業者はマーキング7a;bを読み取り、例えば切断又は機能層のコーティングなどの次の加工工程の前にこれを除去し、続いて、必要に応じて新しいマーキング7a;bを設ける。これは任意の頻度で行うことができる。その場合、最終製品にマーキング7a;bが存在しなくなっていることが好ましい。
【0107】
しかしながら、基礎ガラス製造業者のもとですでに、この基礎ガラス製造業者が基礎ガラスシートを、例えばすでに分割するなど、さらに加工する場合、当初のマーキング7a;bを消去することもできる。
【0108】
すでに説明したように、例えば基礎ガラス製造業者のもとでも、製造された単板基礎ガラスシートに機能性コーティング5を設けることができ、及び/又は、2つ以上の単板基礎ガラスシートが互いに接合されることにより、合わせ基礎ガラスシートに加工することができる。この場合、当初のマーキング7a;bを消去することができ、ガラス加工業者に引き渡す前に新しいマーキング7a;bを設けることができる。
【0109】
その場合、本発明の範囲内で、機能性コーティング5を設ける前、及び/又は合わせ基礎ガラスシートを製造する前には、当初のマーキング7a;bが邪魔にならないため消去する必要がないことが判明した。驚くべきことに、平面マーキング7bも、合わせ基礎ガラスシートのフィルムによって埋められるほどわずかな浸透深さを有することから邪魔にならず、マーキングされたガラスシート表面1aに機能性コーティング5を載置することもできる。
【0110】
それに加えて、本発明による方法を用いて、任意のタイプのガラスシート、例えば標準フロートガラスだけでなく、低鉄フロートガラスも処理することができる。しかしながら、シリケートガラスで作られたガラスシート1にマーキングされることが好ましい。
【0111】
マーキング時に、スズ側から照射されるか空気側から照射されるのかも重要でない。
【0112】
それに加えて、本発明による方法は、それぞれの読み取り装置に使用される光学系/照明の組み合わせでコントラストを適応的に設定することによって、高いプロセス信頼性を保証する。それによって、読み取り率を最適化できる。
【実施例
【0113】
(実施例1)
IR psレーザ(1030nm)を用いて、すでに切断されたシリケートガラスからなるフロートガラスシートも辺長さ5×5mm及び3×3mmの複数の内部マーキング(DMC)を作成した。その場合、フロートガラスシートとレーザヘッドを20m/minの速度で相対的に移動させた。レーザは次の特性を有する。
【0114】
【表2】
【0115】
それぞれ、十分なコントラストを有する内部マーキングを生成した。
【0116】
続いて、レーザ照射を用いて、内部マーキングを能動的に弱化するか、若しくは完全に消去した。このために使用されたnsレーザ(532nm)は、以下の特性を有する。
【0117】
【表3】
【0118】
その場合、初期コントラストが中程度若しくは低いマーキングは完全に消去された。極めて暗色のマーキングのみが、処理後にまだかすかに認識できた。
【0119】
すでに述べたように、色中心によって引き起こされるマーキングは、それが白色透過光で見た場合、黄褐色の色調を有する。すなわち、この光は、青色のスペクトル範囲で吸収される。実施された分光試験もこれを示す(図4を参照)。図4は、例示的に、本発明により生成された高コントラストの内部マーキングの色中心の測定された吸収スペクトルと、さらなるレーザ処理後の内部マーキングの吸収スペクトルと、出発ガラスの吸収スペクトルを示す。内部マーキングの場合、最初に、425nmの明確な吸収域と、ここでは肩としてのみ現れる、約550~600nmのいくらか小さい吸収域を認識できる。レーザ照射後、425nmの主要な吸収域がほぼ完全に消失するのに対して、550nmでは残留吸収が存在することが認識できる。これが、まだかすかに認識できる灰色がかった着色の原因である。しかし、照射時間を長くした場合、この着色も消去可能である。
【0120】
(実施例2)
内部マーキングのものと同じレーザを用いて、平面マーキングを微細彫刻で生成した。
【0121】
続いて、レーザ研磨を用いて平面マーキングを消去した。これには、以下の特性を有する連続COレーザ(10.6μm)を使用した。
【0122】
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】