(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】UV安定性繊維強化ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231219BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231219BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/134 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/527 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/372 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20231219BHJP
C08K 9/10 20060101ALI20231219BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20231219BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20231219BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20231219BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08K7/02
C08K5/13
C08K5/134
C08K5/3477
C08K5/524
C08K5/527
C08K5/372
C08K5/07
C08K9/10
C08K7/14
C08L23/10
C08L23/12
B29B11/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533919
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 US2021061783
(87)【国際公開番号】W WO2022132462
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アーロン・エイチ
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB22
4F072AD04
4F072AE10
4F072AG05
4F072AH04
4F072AH46
4F072AK02
4F072AK15
4F072AL02
4J002AA011
4J002BB032
4J002BB111
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB213
4J002CE002
4J002CF062
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4J002CH091
4J002CL001
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4J002CL062
4J002CM041
4J002CN011
4J002CN012
4J002DA016
4J002DA018
4J002DA066
4J002DC006
4J002DE146
4J002DJ016
4J002DK006
4J002DL006
4J002EJ017
4J002EJ027
4J002EJ028
4J002EU088
4J002EU178
4J002EU197
4J002EV067
4J002EW067
4J002FB288
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD044
4J002FD048
4J002FD077
4J002FD090
4J002FD170
4J002FD203
4J002GN00
(57)【要約】
ポリマーマトリクス、安定剤系、およびポリマーマトリクス内に分布する複数の長尺強化用繊維を含む繊維教科ポリマー組成物が提供される。安定剤系は、抗酸化剤、紫外線安定剤、およびカーボン粒子を含む炭素材料を含む。ポリマー組成物は、SAE J2527_2017092に従って2,500kJ/m
2の全露光レベルでUV光に曝露された後、約0.6~約3のΔE値を示す表面を規定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化ポリマー組成物であって、
前記組成物の約30重量%~約90重量%を構成する、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリクス;
抗酸化剤、紫外線安定剤、およびカーボン粒子を含む炭素材料を含む安定剤系;ならびに
前記組成物の約10重量%~約70重量%を構成する、前記ポリマーマトリクス内に分布する複数の長尺強化用繊維を含み;
前記ポリマー組成物は、SAE J2527_2017092に従って2,500kJ/m
2の全露光レベルでUV光に曝露された後の約0.6~約3のΔE値を示す表面を規定し、前記ΔE値は以下の式に従って求められ:
ΔE=[(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2]
1/2
式中、ΔL
*は、UV曝露前の前記表面の明度値L
*から減じたUV曝露後の前記表面の明度値L
*であり、Δa
*は、UV曝露前の前記表面の赤/緑軸値a
*から減じたUV曝露後の前記表面の赤/緑軸値a
*であり;Δb
*は、UV曝露前の前記表面の黄/青軸値b
*から減じたUV曝露後の前記表面の黄/青軸値b
*であり、ここで、L
*、a
*およびb
*はASTM D2244-16によるCIELAB単位を使用して算定される、繊維強化ポリマー組成物。
【請求項2】
前記抗酸化剤が立体障害フェノール抗酸化剤を含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項3】
前記立体障害フェノール抗酸化剤が以下の一般構造(IV)、(V)および(VI)のうちの1つを有する、請求項2に記載の繊維強化ポリマー組成物:
【化1】
[式中、
a、bおよびcは、独立して1~10の範囲であり;
R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12は、水素、C
1~C
10アルキル、およびC
3~C
30分岐アルキルから独立して選択され;
R
13、R
14およびR
15は、以下の一般構造(VII)および(VIII)のうちの1つによって表される部分から独立して選択され:
【化2】
ここで、
dは1~10の範囲であり;
R
16、R
17、R
18およびR
19は、水素、C
1~C
10アルキル、およびC
3~C
30分岐アルキルから独立して選択される]。
【請求項4】
前記立体障害フェノール抗酸化剤が前記一般構造(VI)を有する、請求項3に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項5】
前記立体障害フェノール抗酸化剤がトリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレートを含む、請求項2に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項6】
前記抗酸化剤がホスファイト抗酸化剤を含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項7】
前記ホスファイト抗酸化剤が以下の一般構造(IX)を有するアリールジホスファイトである、請求項6に記載の繊維強化ポリマー組成物:
【化3】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9およびR
10は、水素、C
1~C
10アルキル、およびC
3~C
30分岐アルキルから独立して選択される]。
【請求項8】
前記アリールジホスファイトが、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、またはそれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項9】
前記抗酸化剤がチオエステル抗酸化剤を含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項10】
前記チオエステル抗酸化剤が以下の一般構造を有するチオカルボン酸エステルである、請求項9に記載の繊維強化ポリマー組成物:
R
11-O(O)(CH
2)
x-S-(CH
2)
y(O)O-R
12
[式中、
xおよびyは独立して1~10であり;
R
11およびR
12は、直鎖または分岐C
6~C
30アルキルから独立して選択される]。
【請求項11】
前記チオカルボン酸エステルが、チオジプロピオン酸ジステアリル、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジ-2-エチルヘキシル、チオジプロピオン酸ジイソデシルまたはそれらの組み合わせである、請求項10の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項12】
前記安定剤系が、立体障害フェノール抗酸化剤、ホスファイト抗酸化剤およびチオエステル抗酸化剤を含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項13】
前記ホスファイト抗酸化剤と前記立体障害フェノール抗酸化剤の重量比が約1:1~約5:1であり、前記チオエステル抗酸化剤と前記立体障害フェノール抗酸化剤の重量比が約2:1~約10:1であり、および/または、前記チオエステル抗酸化剤と前記立体障害フェノール抗酸化剤の重量比が約2:1~約10:1である、請求項12に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項14】
前記UV安定剤がベンゾフェノン類を含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項15】
前記ベンゾフェノン類が2-ヒドロキシベンゾフェノンである、請求項12に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項16】
前記カーボン粒子がカーボンブラックを含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項17】
前記カーボン粒子が前記ポリマー組成物の約0.2~約2重量%を構成する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項18】
前記カーボン粒子が前記ポリマー組成物の約0.3~約1重量%を構成する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項19】
前記炭素材料がキャリア樹脂を含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項20】
極性官能基で修飾されたポリオレフィンを含む相溶化剤をさらに含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項21】
前記表面が、SAE J2527_2017092に従って2,500kJ/m
2の全露光レベルでUV光に曝露された後、約0.8~約2のΔE値を示す、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項22】
ISO試験No.179-1:2010に従って23℃の温度で求めて約15kJ/m
2以上のシャルピーノッチ付き衝撃強度を示す、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項23】
150℃の温度で1,000時間経時変化した後に、ISO試験No.179-1:2010に従って23℃の温度で求めて約15kJ/m
2以上のシャルピーノッチ付き衝撃強度を示す、請求項22に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項24】
経時変化後の前記シャルピーノッチ付き衝撃強度と経時変化前の前記シャルピーノッチ付き衝撃強度の比が約0.6以上である、請求項23に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項25】
SAE J2527_2017092に従って2,500kJ/m
2の全露光レベルでUV光に曝露された後、ISO試験No.179-1:2010に従って23℃の温度で求めて約15kJ/m
2以上のシャルピーノッチ付き衝撃強度を示す、請求項22に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項26】
UV光への曝露後の前記シャルピーノッチ付き衝撃強度とUV光への曝露前のシャルピーノッチ無し衝撃強度の比が約0.6以上である、請求項25に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項27】
ISO試験No.527-1:2019に従って23℃の温度で求めて約20~約300MPaの引張強度を示す、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項28】
150℃の温度で1,000時間の経時変化後、ISO試験No.527-1:2019に従って23℃の温度で求めて約20~約300MPaの引張強度を示す、請求項27に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項29】
経時変化後の前記引張強度と経時変化前の前記引張強度の比が約0.6以上である、請求項28に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項30】
SAE J2527_2017092に従って2,500kJ/m
2の全露光レベルでUV光に曝露された後、ISO試験No.527-1:2019に従って23℃の温度で求めて約20~約300MPaの引張強度を示す、請求項27に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項31】
UV光への曝露後の前記引張強度とUV光への曝露前の前記引張強度の比が約0.6以上である、請求項28に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項32】
前記繊維がガラス繊維である、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項33】
前記熱可塑性ポリマーがプロピレンポリマーを含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項34】
前記プロピレンポリマーがホモポリマーを含む、請求項33に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項35】
前記ホモポリマーがメタロセンで触媒されたものである、請求項34に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項36】
前記繊維が間隔を空けて実質上類似の方向に並んでいる、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項37】
請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物を含む成形部品。
【請求項38】
射出成形された、請求項28に記載の成形部品。
【請求項39】
請求項37に記載の成形部品を含む自動車部品。
【請求項40】
インテリア自動車部品である、請求項39に記載の自動車部品。
【請求項41】
前記部品が、ペダルモジュール、計器板、ひじ掛け、コンソール、シート構造体、インテリアモジュール、リフトゲート、インテリアオーガナイザー、ステップアシスト、灰皿、グローブボックス、変速レバーまたはそれらの組み合わせである、請求項40に記載の自動車部品。
【請求項42】
エクステリア自動車部品である、請求項39に記載の自動車部品。
【請求項43】
前記エクステリア自動車部品が、ファンシュラウド、サンルーフシステム、ドアパネル、フロントエンドモジュール、サイドボディパネル、アンダーボディシールド、バンパーパネル、クラッディング、カウル、吹付けノズルボディ、キャプチャリングホースアセンブリ、ピラーカバー、ロッカーパネルまたはそれらの組み合わせである、請求項42に記載の自動車部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2020年12月16日の出願日を有する米国特許仮出願第63/126,028号の出願の利益を主張し、これはその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]長尺繊維強化(long fiber-reinforced)ポリマー組成物は、改善された機械的性質を提供するために成形品でしばしば用いられる。通常、そのような組成物は、複数の連続的な長さの強化繊維上に含浸ダイによってポリマーを押し出すことを伴うプロセスによって形成される。個々の繊維ストランドの樹脂への完全な含浸を引き起こすために、ポリマーおよび強化繊維はダイを通して引き抜かれる。その恩恵にもかかわらず、ある製品用途(例えば自動車部品)でそのような材料の使用を試みる場合、製造業者が直面する共通の問題の1つは、濡れ不良の繊維束、部品の表面のわずかな繊維、目に見える流れ線、劣化した材料などの存在によりそれらが表面欠陥を示す傾向があるということである。そのような色の欠陥は紫外線への曝露後に特に目立つようになり、結果的に部品の望ましくない色の変化をもたらすことがある。したがって、現在、特に紫外線への曝露後に表面外観および色の安定性が改善された繊維強化ポリマー組成物に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によると、ポリマーマトリクス;抗酸化剤、紫外線安定剤、およびカーボン粒子を含む炭素材料を含む安定剤系;ならびにポリマーマトリクス内に分布する複数の長尺強化用(reinforcing)繊維を含む繊維強化ポリマー組成物が開示される。ポリマーマトリクスは熱可塑性ポリマーを含み、ポリマーマトリクスは、組成物の約30重量%~約90重量%を構成する。繊維は、組成物の約10重量%~約70重量%を構成する。さらに、ポリマー組成物は、SAE J2527_2017092に従って2,500kJ/m2の全露光レベルでUV光に曝露された後、約0.6~約3のΔE値を示す表面を規定し、ΔE値は以下の式に従って求められる:
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
[0004]式中、ΔL*は、UV曝露前の表面の明度値L*から減じた、UV曝露後の表面の明度値L*であり、Δa*は、UV曝露前の表面の赤/緑軸値a*から減じた、UV曝露後の表面の赤/緑軸値a*であり;Δb*は、UV曝露前の表面の黄/青軸値b*から減じた、UV曝露後の表面の黄/青軸値b*であり、ここで、L*、a*およびb*はASTM D2244-16に従ってCIELAB単位を使用して算定される。
【0004】
[0005]本発明の他の特徴および態様は以下により詳しく述べられる。
[0006]本発明の完全で実施可能な開示が、当業者にとってそれらの最良の様式を含めて、以下の添付の図への参照を含む本明細書の残りの部分により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】[0007]本発明の繊維強化ポリマー組成物を形成するために使用されてもよいシステムの一実施形態の模式図である。
【
図2】[0008]
図1に示されるシステムで用いられてもよい含浸ダイの断面図である。
【
図3】[0009]本発明の繊維強化ポリマー組成物から形成された1つまたは複数の部品を含み得る自動車インテリアの一実施形態の透視図である。
【
図4】[0010]
図3に示され、本発明の繊維強化ポリマー組成物から形成されてもよいドアモジュールの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0011]本明細書および図面中の参照文字の繰り返し使用は、本発明の同じまたは類似した特徴または要素を表すように意図される。
[0012]本議論が、例示の実施形態の説明のみであり、本発明のより広範な態様を限定するように意図されないことは、当業者によって理解されるはずである。
【0007】
[0013]概して言えば、本発明は、ポリマーマトリクス内に分布する複数の長尺強化用繊維を含む成形部品(例えば成形品)に使用される繊維強化組成物を対象とする。長尺繊維は、例えば、組成物の約10重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約15重量%~約65重量%、および幾つかの実施形態において約20重量%~約60重量%を構成してもよい。同様に、ポリマーマトリクスは通常、組成物の約30重量%~約90重量%、幾つかの実施形態において約35重量%~約85重量%、および幾つかの実施形態において約40重量%~約80重量%を構成する。組成物はまた、抗酸化剤、UV安定剤および炭素材料の相乗的な組み合わせを含む安定剤系を含む。
【0008】
[0014]これらの成分のそれぞれの特定の性質および濃度に対する選択的制御によって、本発明者らは、結果として得られる組成物が紫外線への曝露後でさえその色を維持する能力を有することができることを発見した。そのような色のUV安定性は、紫外線(例えば1,250時間または2,500kJ/m2の全露光レベル)への曝露の前後に分光光度計で組成物(またはそれから形成された成形部品)の表面の光吸収率を測定することにより定量することができる。紫外線は、SAE J2527_2017092(外部周期)に従ってキセノンランプ耐候性試験機(例えばCi4000)を使用して供給されてもよく、以下のように明周期および暗周期を用いる:霧吹きのない40分間の明、試験片前面の霧吹きを含む20分間の明、霧吹きのない60分間の明、および試験片裏面の霧吹きを含む60分間の暗)。明周期は、0.55W/m2の照射、70℃ブラックパネル温度および50%の相対湿度で行われ、暗周期は、38℃ブラックパネル温度および95%の相対湿度で行われる。色測定は、ASTM D2244-16に従って発光体D65(正反射様式を含む10°の観察装置)の下で分光光度計(例えばDataColor 600)を使用して遂行されてもよく、色座標はCIELAB単位を使用して算定されてもよい。この方法は3つの色座標L*、a*およびb*を定義し、これは色知覚の反対色説に基づいて知覚色の3つの特性と対応し、以下のように定義される:
L*=明度値の範囲0~100(0=黒および100=白);
a*=赤/緑軸(-150~100の範囲);正の値は赤寄りであり、負の値は緑寄りである;および
b*=黄/青軸(-100~100の範囲);正の値は黄寄りであり、負の値は青寄りである。
【0009】
[0015]CIELAB色空間は多少視覚的に均質であるので、次式:
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
を用いて、人によって知覚される2つの色(例えばUV経時変化(aging)の前後、洗浄無し)の間の全絶対色差を表すデルタ値(ΔE)を計算することができる。
【0010】
[0016]ここで、ΔL*は、UV曝露前の表面の明度値から減じたUV曝露後の表面の明度値であり、Δa*は、UV曝露前の表面の赤/緑軸の値から減じたUV曝露後の表面の赤/緑軸の値であり;Δb*は、UV曝露前の表面の黄/青軸の値から減じたUV曝露後の表面の黄/青軸の値である。CIELAB色空間においては、各ΔE単位は2つの色の間の「丁度可知」差異にほぼ等しく、したがって、色の差異を表現する目的のために用いることができる対象物や装置に依存しない表色系としての良好な指標である。本発明のポリマー組成物(またはそれから形成された成形部品)の表面は、SAE J2527_2017092に従って2,500kJ/m2の全露光レベルで紫外線に曝露された後、例えば、約0.6~約3、幾つかの実施形態において約0.7~約2.5、幾つかの実施形態において約0.8~約2、および幾つかの実施形態において約0.9~約1.4のΔE値を示してもよい。
【0011】
[0017]従来は、紫外線への曝露後のそのような安定な表面外観を有する組成物はまた、良好な機械的性質を有することはないと考えられた。しかしながら、本発明者らは、ポリマー組成物が優れた機械的性質を維持することができることを発見した。例えば、ポリマー組成物は、ISO試験No.179-1:2010(技術的にASTM D256-10e1と同等)に従って様々な温度、例えば-30℃、23℃または80℃で測定して約15kJ/m2以上、幾つかの実施形態において約20~約80kJ/m2、および幾つかの実施形態において約30~約60kJ/m2のシャルピーノッチ付き衝撃強度を示すことができる。引張および曲げの機械的性質もまた良好であり得る。例えば、ポリマー組成物は、約20~約300MPa、幾つかの実施形態において約30~約200MPa、および幾つかの実施形態において約40~約150MPaの引張強度;約0.5%以上、幾つかの実施形態において約0.6%~約5%、および幾つかの実施形態において約0.7%~約2.5%の引張破壊歪み;および/または約3,500MPa~約20,000MPa、幾つかの実施形態において約6,000MPa~約15,000MPaおよび幾つかの実施形態において約8,000MPa~約15,000MPaの引張弾性率を示してもよい。引張特性は、ISO試験No.527-1:2019(技術的にASTM D638-14と同等)に従って-30℃、23℃または80℃で求められてもよい。ポリマー組成物は、また約50~約500MPa、幾つかの実施形態において約80~約400MPaおよび幾つかの実施形態において約100~約250MPaの曲げ強度;約0.5%以上、幾つかの実施形態において約0.6%~約5%および幾つかの実施形態において約0.7%~約2.5%の曲げ破壊歪み;および/または約3,500MPa~約20,000MPa、幾つかの実施形態において約3,000MPa~約15,000MPaおよび幾つかの実施形態において約6,000MPa~約12,000MPaの曲げ弾性率を示してもよい。曲げ特性は、ISO試験No.178:2019(技術的にASTM D790-17と同等)に従って-30℃、23℃または80℃で求められてもよい。
【0012】
[0018]本発明者らは、ポリマー組成物が高温での経時変化にあまり敏感ではないこともまた発見した。例えば、組成物は、約100℃以上、幾つかの実施形態において約120℃~約200℃および幾つかの実施形態において約130℃~約180℃(例えば150℃)の温度を有する雰囲気中で約100時間以上、幾つかの実施形態において約300時間~約3000時間および幾つかの実施形態において約400時間~約2500時間(例えば500時間または1,000時間)の期間経時変化し得る。経時変化の後でさえ、機械的性質(例えば衝撃強度、引張特性および/または曲げ特性)は、上記に注目した範囲内に持続し得る。例えば、150℃で1,000時間の「経時変化」後の特定の機械的性質(例えばシャルピーノッチ無し衝撃強度、引張強度、曲げ強度など)とそのような経時変化前の初期の機械的性質との比は、約0.6以上、幾つかの実施形態において約0.7以上および幾つかの実施形態において約0.8~1.0であってもよい。同様に、ポリマー組成物は、紫外線にあまり敏感ではない。例えば、ポリマー組成物は、上記に注目されるような紫外線の1つまたは複数の周期に晒されてもよい。そのような曝露(例えばSAE J2527_2017092に従って2,500kJ/m2の全露光レベル)の後でさえ、機械的性質(例えば衝撃強度、引張強度、曲げ強度など)およびそのような性質の比は、上記に注目された範囲内に持続し得る。
【0013】
[0019]ポリマー組成物は、また揮発性有機化合物の低度の排出を示し得る。本明細書において使用される場合、用語「揮発性化合物」または「揮発分」は、一般に比較的高い蒸気圧を有する有機化合物を指す。例えば、大気圧(1気圧)でのそのような化合物の沸点は、約80℃以下、幾つかの実施形態において約70℃以下および幾つかの実施形態において約0℃~約60℃であってもよい。そのような化合物の1つの例は2-メチル-1-プロペンである。従来の考えに反して、結果として得られた組成物は、ポリマー組成物に用いられる材料の性質に対する選択的制御およびそれらが一緒に組み合わせられる特定の方式によって揮発分の低い排出を示すことができる。例えば、ポリマー組成物は、VDA 277:1995に従って求めて組成物1グラム当たりの炭素相当量として約100マイクログラム(「μgC/g」)以下、幾つかの実施形態において約70μg/g以下、幾つかの実施形態において約50μg/g以下および幾つかの実施形態において約40μg/g以下の全揮発分含有率(「VOC」)を示してもよい。組成物はまた、組成物1グラム当たりのトルエン相当量として約250マイクログラム(「μg/g」)以下、幾つかの実施形態において約150μg/g以下、幾つかの実施形態において約100μg/g以下のトルエン相当量の揮発分含有率(「TVOC」)、ならびに組成物1グラム当たりのヘキサデカンとして約500マイクログラム(「μg/g」)以下、幾つかの実施形態において約350μg/g以下、および幾つかの実施形態において約300μg/g以下のフォギング含有率(「FOG」)を示してもよく、そのそれぞれはVDA 278:2002に従って求められてもよい。
【0014】
[0020]良好な表面外観、良好な機械的強度および可撓性、および低排出などの上記に検討された性質に照らして、ポリマー組成物は、インテリアおよびエクステリアの自動車部品(例えば射出成形品)における使用に特に適している。適切なエクステリア自動車部品は、ファンシュラウド、サンルーフシステム、ドアパネル、フロントエンドモジュール、サイドボディパネル、アンダーボディシールド、バンパーパネル、クラッディング(例えば後部ドアライセンスプレート近くの)、カウル、吹付けノズルボディ、キャプチャリングホースアセンブリ、ピラーカバー、ロッカーパネルなどを含んでいてもよい。同様に、本発明のポリマー組成物から形成されてもよい適切なインテリア自動車部品は、例えば、ペダルモジュール、計器板(例えばダッシュボード)、ひじ掛け、コンソール(例えばセンターコンソール)、シート構造体(例えば後部座席またはシートカバーの背もたれ)、インテリアモジュール(例えばトリム、ボディパネルまたはドアモジュール)、リフトゲート、インテリアオーガナイザー、ステップアシスト、灰皿、グローブボックス、変速レバーなどを含んでいてもよい。
図3を参照すると、例えば、その1つまたは両方が本発明のポリマー組成物から全体または一部が形成されてもよい、インテリアドアモジュール100aおよび計器板100bを有する、自動車のインテリア1000の一実施形態が示される。
図4は、例えば、ひじ掛けコンポーネント110a、第1の綿入りコンポーネント110b、第2の綿入りコンポーネント110cおよびトリムコンポーネント110dを含むインテリア自動車モジュール100aの特定の実施形態を描く。ドアモジュール100aはまた基体コンポーネント120aおよびアクセントコンポーネント120bを含むことができる。基体コンポーネント120aは、自動車モジュール100aのコンポーネントのそれぞれのまわりに形成されてもよい。
【0015】
[0021]本発明の様々な実施形態が、ここでより詳細に記載される。
I. ポリマーマトリクス
A. 熱可塑性ポリマー
[0022]ポリマーマトリクスは組成物の連続相として機能し、1種または複数の熱可塑性ポリマー、例えばプロピレンポリマー、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン(例えばポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどを含む。プロピレンポリマーは特に適切である。この点に関して、様々なプロピレンポリマーまたはプロピレンポリマーの組み合わせのうちのいずれも、一般に、例えば、プロピレンホモポリマー(例えば、シンジオタクチック、アタクチック、アイソタクチックなど)、プロピレンコポリマーなどがポリマーマトリクスにおいて用いられてもよい。一実施形態において、例えば、アイソタクチックまたはシンジオタクチックホモポリマーであるプロピレンポリマーが用いられてもよい。一般に「シンジオタクチック」という用語は、メチル基のかなりの部分(すべてではないにしても)がポリマー鎖に沿って交互に反対側にあるタクティシティーを指す。一方、「アイソタクチック」という用語は一般に、メチル基のかなりの部分(すべてではないにしても)がポリマー鎖に沿って同じ側にあるタクティシティーを指す。そのようなホモポリマーは約160℃~約170℃の融点を有していてもよい。なお他の実施形態において、α-オレフィンモノマーを含むプロピレンのコポリマーが用いられてもよい。適切なα-オレフィンモノマーの特定の例としては、エチレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1個もしくは複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を含む1-ペンテン;1個もしくは複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を含む1-ヘキセン;1個もしくは複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を含む1-ヘプテン;1個もしくは複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を含む1-オクテン;1個もしくは複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を含む1-ノネン;エチル、メチルまたはジメチル置換の1-デセン;1-ドデセン;およびスチレンを含んでいてもよい。そのようなコポリマーのプロピレン含有率は、約60モル%~約99モル%、幾つかの実施形態において約80モル%~約98.5モル%、および幾つかの実施形態において約87モル%~約97.5モル%であってもよい。α-オレフィン含有率は同様に、約1モル%~約40モル%、幾つかの実施形態において約1.5モル%~約15モル%、および幾つかの実施形態において約2.5モル%~約13モル%の範囲であってもよい。
【0016】
[0023]様々な公知技法のいずれかが、一般にプロピレンホモポリマーおよびプロピレン/α-オレフィンコポリマーを形成するために用いられてもよい。例えば、オレフィンポリマーは、フリーラジカルまたは配位触媒(例えばZiegler-Natta)を使用して形成されてもよい。しかしながら、通常、コポリマーは、メタロセン触媒などの単一部位配位触媒から形成されて、揮発性有機排出の程度を最小限にするのを助ける。そのような触媒系は、コモノマーが、ランダムに分子鎖内に分布し、異なる分子量分画にわたって一様に分布するコポリマーを生成する。メタロセン触媒の例は、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)スカンジウムクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、コバルトセン、シクロペンタジエニルチタントリクロリド、フェロセン、ハフノセンジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル-1-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、モリブドセンジクロリド、ニッケロセン、ニオボセンジクロリド、ルテノセン、チタノセンジクロリド、ジルコノセンクロリドヒドリド、ジルコノセンジクロリドなどを含む。メタロセン触媒を使用して製造されたポリマーは、通常狭い分子量範囲を有する。例えば、メタロセン触媒ポリマーは、4未満の多分散性数(Mw/Mn)、制御された短鎖分岐分布、および制御されたアイソタクティシティーを有し得る。
【0017】
[0024]ポリマーマトリクスが、それ自身プロピレンポリマーであってもそうではなくてもよい1種または複数の追加のポリマーと組み合わせてプロピレンポリマーを含んでいてもよいことは注目されるべきである。幾つかの実施形態において、例えば、プロピレンポリマーのブレンド、例えば、プロピレンホモポリマーとプロピレン/α-オレフィンコポリマーのブレンド、複数のプロピレンホモポリマーのブレンド、または複数のプロピレン/α-オレフィンコポリマーのブレンドが用いられてもよい。特定の一実施形態において、例えばポリマーマトリクスは、通常、メタロセンで触媒された少なくとも1種のプロピレンホモポリマーを含む。そのような実施形態において、ポリマーマトリクスはプロピレンホモポリマーのみを含んでいてもよい。代替として、ポリマーマトリクスは、プロピレンホモポリマー(例えば、メタロセンで触媒された)およびプロピレン/α-オレフィンコポリマーのブレンドを含んでいてもよく、これはメタロセンで触媒されても、または、他のタイプのプロセス(例えばZiegler Nattaで触媒された)から形成されてもよい。一実施形態において、マトリクスの約30重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約35重量%~約65重量%、および幾つかの実施形態において約40重量%~約60重量%の量のプロピレンホモポリマー、ならびにマトリクスの約30重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約35重量%~約65重量%、および幾つかの実施形態において約40重量%~約60重量%の量のプロピレンα-オレフィンコポリマーを含むブレンドが用いられてもよい。
【0018】
[0025]組成物に通常用いられる熱可塑性ポリマーは、小形部品への組成物の成形を容易にするのを助けるために高度の流動性を有する。高流動性プロピレンポリマーは例えば、ISO 1133-1:2011(技術的にASTM D1238-13と同等)に従って2.16kgの荷重および230℃の温度で求めて比較的高いメルトフローインデックス、例えば10分当たり約150グラム以上、幾つかの実施形態において10分当たり約180グラム以上、および幾つかの実施形態において10分当たり約200~約500グラムを有していてもよい。
【0019】
B. 安定剤系
[0026]上記に示すように、ポリマーマトリクスはまた、紫外線および高温に曝露された後でさえ、所望の表面外観および/または機械的性質を維持するのを助けるために安定剤系を含む。とりわけ、安定剤系は少なくとも1種の抗酸化剤(例えば立体障害フェノール抗酸化剤、ホスファイト抗酸化剤、チオエステル抗酸化剤など)、紫外線安定剤、炭素材料、ならびに様々な他の任意選択の光安定剤、任意選択の熱安定剤などを含む。
【0020】
i. 抗酸化剤
[0027]ポリマー組成物において用いられてもよい抗酸化剤の1つのタイプは立体障害フェノールである。用いられる場合、立体障害フェノールは通常、ポリマー組成物の約0.01~約1重量%、幾つかの実施形態において約0.02重量%~約0.5重量%および幾つかの実施形態において約0.05重量%~約0.3重量%の量で存在する。様々な異なる化合物が用いられてもよいが、特に適切な立体障害フェノール化合物は、以下の一般構造(IV)、(V)、および(VI)の1つを有するものである:
【0021】
【0022】
[式中、a、bおよびcは、独立して、1~10、幾つかの実施形態において2~6の範囲であり;R8、R9、R10、R11およびR12は、独立して、水素、C1~C10アルキル、およびC3~C30分岐アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたは第三級ブチル部分から選択され;R13、R14およびR15は、以下の一般構造(VII)および(VIII)の1つによって表される部分から独立して選択され:
【0023】
【0024】
ここで、dは、1~10、および幾つかの実施形態において2~6の範囲であり;R16、R17、R18およびR19は、水素、C1~C10アルキル、およびC3~C30分岐アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、または第三級ブチル部分から独立して選択される]。
【0025】
[0028]上記に述べた一般構造を有する適切な立体障害フェノールの特定の例としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,4-ジ-tert-ブチル-フェノール;ペンタエリトリチルテトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシシンナメート)]メタン;ビス-2,2’-メチレン-ビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)テレフタレート;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート;1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン;1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン;1,3,5-トリス[[3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル];4,4’,4’’-[(2,4,6-トリメチル-1,3,5-ベンゼントリイル)トリス-(メチレン)]トリス[2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)];6-tert-ブチル-3-メチルフェニル;2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール;2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール);4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール);4,4’-ジヒドロキシジフェニル-シクロヘキサン;アルキル化ビスフェノール;スチレン化フェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル);4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);ステアリル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ステアリル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメートなど、ならびにそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0026】
[0029]特に適切な化合物は一般構造(VI)を有するもの、例えば名称Irganox(登録商標)3114の下で市販されているトリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートである。
【0027】
[0030]別の適切な抗酸化剤はホスファイト抗酸化剤である。用いられる場合、ホスファイト抗酸化剤は、通常、ポリマー組成物の約0.02~約2重量%、幾つかの実施形態において約0.04重量%~約1重量%および幾つかの実施形態において約0.1重量%~約0.6重量%の量において存在する。ホスファイト抗酸化剤は、様々な異なる化合物、例えばアリールモノホスファイト、アリールジホスファイトなど、ならびにそれらの混合物を含んでいてもよい。例えば、以下の一般構造(IX)を有するアリールジホスファイトが用いられてもよい:
【0028】
【0029】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、水素、C1~C10アルキル、およびC3~C30分岐アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、または第三級ブチル部分から独立して選択される]。
【0030】
[0031]そのようなアリールジホスファイト化合物の例は、例えば、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(Doverphos(登録商標)S-9228として市販されている)、およびビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(Ultranox(登録商標)626として市販されている)を含む。同様に、適切なアリールモノホスファイトはトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168として市販されている);ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト(Irgafos(登録商標)38として市販されている)などを含んでいてもよい。
【0031】
[0032]なお別の適切な抗酸化剤はチオエステル抗酸化剤である。用いられる場合、チオエステル抗酸化剤はまた通常、ポリマー組成物の約0.04~約4重量%、幾つかの実施形態において約0.08重量%~約2重量%および幾つかの実施形態において約0.2重量%~約1.2重量%の量において存在する。本発明で使用される特に適切なチオエステル抗酸化剤は、以下の一般構造を有するものなどのチオカルボン酸エステルである:
R11-O(O)(CH2)x-S-(CH2)y(O)O-R12
[式中、
xおよびyは、独立して1~10、幾つかの実施形態において1~6および幾つかの実施形態において2~4(例えば2)であり;
R11およびR12は、直鎖または分岐C6~C30アルキル、幾つかの実施形態においてC10~C24アルキル、および幾つかの実施形態においてC12~C20アルキル、例えばラウリル、ステアリル、オクチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、オレイルなどから独立して選択される]。
【0032】
[0033]適切なチオカルボン酸エステルの特定の例は、例えばジステアリルチオジプロピオネート(Irganox(登録商標)PS 800として市販されている)、チオジプロピオン酸ジラウリル(Irganox(登録商標)PS 802として市販されている)、チオジプロピオン酸ジ-2-エチルヘキシル、チオジプロピオン酸ジイソデシルなどを含んでいてもよい。
【0033】
[0034]本発明の特に適切な実施形態において、組成物の性質に相乗効果を与えるのを助けるために、抗酸化剤の組み合わせが用いられてもよい。一実施形態において、例えば、安定剤系は、少なくとも1種の立体障害抗酸化剤、ホスファイト抗酸化剤およびチオエステル抗酸化剤の組み合わせを用いてもよい。用いられる場合、ホスファイト抗酸化剤と立体障害フェノール抗酸化剤の重量比は、約1:1~約5:1、幾つかの実施形態において約1:1~約4:1、および幾つかの実施形態において約1.5:1~約3:1(例えば約2:1)の範囲であってもよい。チオエステル安定剤とホスファイト抗酸化剤の重量比は、また一般に、約1:1~約5:1、幾つかの実施形態において約1:1~約4:1、および幾つかの実施形態において約1.5:1~約3:1(例えば約2:1)である。同様に、チオエステル抗酸化剤と立体障害フェノール抗酸化剤の重量比は、また一般に、約2:1~約10:1、幾つかの実施形態において約2:1~約8:1、および幾つかの実施形態において約3:1~約6:1(例えば約4:1)である。これらの選択される比の内では、高温および/または紫外線への曝露後でさえ、組成物は安定性を持続する独特の能力を得ることができると考えられる。
【0034】
ii. UV安定剤
[0035]ポリマー組成物はまた1種または複数のUV安定剤を含む。適切なUV安定剤は例えば、ベンゾフェノン類(例えば(2-ヒドロキシ-4-(オクチロキシ)フェニル)フェニル,メタノン(Chimassorb(登録商標)81)、ベンゾトリアゾール類(例えば2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)234)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)329)、2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)928)など)、トリアジン類(例えば2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシロキシフェニル)-s-トリアジン(Tinuvin(登録商標)1577))、立体障害アミン(例えばビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Tinuvin(登録商標)770))またはコハク酸ジメチルと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンのポリマー(Tinuvin(登録商標)622))など、ならびにそれらの混合物を含んでいてもよい。ベンゾフェノン類は、ポリマー組成物において使用するのに特に適している。用いられる場合、そのようなUV安定剤は通常、組成物の約0.05重量%~約2重量%、幾つかの実施形態において約0.1重量%~約1.5重量%および幾つかの実施形態において約0.2重量%~約1.0重量%を構成する。
【0035】
iii. 炭素材料
[0036]安定剤系は、また、紫外線および/または高温への曝露後の所望の程度の色の安定性を与えるのを助ける炭素材料を含む。炭素材料は一般に、複数のカーボン粒子、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブなどを含む。ファーネスブラック、チャネルブラック、アセチレンブラックまたはランプブラックなどのカーボンブラックが、特に適切であり得る。カーボン粒子は、例えば、粒状、フレーク(鱗片状)などの任意の所望の形状を有していてもよい。カーボン粒子の平均サイズ(例えば直径)は、比較的小さくてもよく、例えば、約1~約200ナノメートル、幾つかの実施形態において約5~約150ナノメートル、および幾つかの実施形態において約10~約100ナノメートルであってもよい。また通常、例えば約1百万分率(「ppm」)以下、および幾つかの実施形態において約0.5ppm以下の量の多核芳香族炭化水素(例えばベンゾ[a]ピレン、ナフタレンなど)を含むカーボン粒子は、相対的に純粋であることが望ましい。例えば、カーボン粒子は、約10 十億分率(「ppb」)以下、および幾つかの実施形態において約5ppb以下の量においてベンゾ[a]ピレンを含んでいてもよい。所望の場合、粒子はまた、大きい比表面積、例えば1グラム当たり約20平方メートル(m2/g)~約1,000m2/g、幾つかの実施形態において約25m2/g~約500m2/g、および幾つかの実施形態において約30m2/g~約300m2/gを有していてもよい。表面積は、ASTM D6556-19aに従って物理的気体吸着(BET)方法(吸着ガスとして窒素)によって求められてもよい。理論に制約される意図はないが、そのような小サイズ、高純度および/または大きい表面積を有する粒子は、多くのフリーラジカルに対する吸着能力を改善し得て、熱可塑性ポリマーの酸化を最小限にすることができると考えられる。
【0036】
[0037]所望の場合、炭素材料はカーボン粒子をカプセル化することができるキャリア樹脂を含んでもよく、それによって、様々な恩恵を提供する。例えば、キャリア樹脂は、粒子を取り扱いポリマーマトリクスに組み込む能力を高めることができる。任意の公知のキャリア樹脂がこの目的のために用いられ得るが、特定の実施形態において、キャリア樹脂は、上記のようなオレフィンポリマー(例えばプロピレンポリマー)であってもよく、これは、ポリマーマトリクスに用いられるオレフィンポリマーと同じであっても異なっていてもよい。所望の場合、キャリア樹脂はカーボン粒子で前もってブレンドされてマスターバッチを形成してもよく、これは後にポリマーマトリクスと組み合わせることができる。用いられる場合、キャリア樹脂は通常、マスターバッチの約40重量%~約90重量%、幾つかの実施形態において約50重量%~約80重量%、および幾つかの実施形態において約60重量%~約70重量%を構成し、カーボン粒子は通常、マスターバッチの約10重量%~約60重量%、幾つかの実施形態において約20重量%~約50重量%、および幾つかの実施形態において約30重量%~約40重量%を構成する。カーボン粒子およびキャリア樹脂の相対濃度は、本発明においてポリマー組成物の機械的性質に悪影響を与えずに、所望の抗酸化挙動を達成するように選択的に制御されてもよい。例えば、カーボン粒子は通常、全ポリマー組成物の約0.2~約2重量%、幾つかの実施形態において約0.25~約1.5重量%および幾つかの実施形態において約0.3~約1重量%の量で用いられる。キャリア樹脂を含んでもよい炭素材料は、同様に、ポリマー組成物の約0.4重量%~約4重量%、幾つかの実施形態において約0.5重量%~約3重量%および幾つかの実施形態において約0.6重量%~約2重量%を構成してもよい。
【0037】
C. 他の成分
[0038]上記で注目された成分に加えて、ポリマーマトリクスはまた様々な他の成分を含んでいてもよい。そのような任意選択の成分の例は例えば、相溶化剤、微粒子充填剤、滑剤、色素、流動調整剤、顔料、ならびに性質および加工性を高めるために添加される他の材料を含んでいてもよい。適切な顔料は、例えば、二酸化チタン、ウルトラマリン、コバルトブルー、フタロシアニン、アントラキノン、黒色顔料、メタリック顔料などを含んでいてもよい。黒色顔料を用いる場合、上記に注目した炭素材料はまた顔料として機能してもよく、および/または、または追加の黒色顔料が用いられてもよい。相溶化剤はまた、ポリマーマトリクスとの長尺繊維間の密着度を高めるために用いられてもよい。用いられる場合、そのような相溶化剤は通常、ポリマー組成物の約0.1重量%~約15重量%、幾つかの実施形態において約0.5重量%~約10重量%および幾つかの実施形態において約1重量%~約5重量%を構成する。ある実施形態において、相溶化剤は、極性官能基で修飾されたポリオレフィンを含むポリオレフィン相溶化剤であってもよい。ポリオレフィンは、オレフィンホモポリマー(例えばポリプロピレン)またはコポリマー(例えばエチレンコポリマー、プロピレンコポリマーなど)であってもよい。官能基は、ポリオレフィン骨格上にグラフト化され、またはポリマーのモノマー構成要素(例えばブロックまたはランダムコポリマー)などとして組み込まれてもよい。特に適切な官能基は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、無水マレイン酸とジアミンの反応生成物、無水ジクロロマレイン酸、マレイン酸アミドなどを含む。
【0038】
[0039]用いられる特定の成分には無関係に、原料(例えば熱可塑性ポリマー、安定剤、相溶化剤など)は、通常、一緒に溶融ブレンドされて長尺繊維で強化される前にポリマーマトリクスを形成する。原料は、材料を分散ブレンドする溶融ブレンド装置に同時にまたは順に供給されてもよい。バッチおよび/または連続的溶融ブレンド技法が用いられてもよい。例えば混合機/混練機、バンバリーミキサー、Farrel連続混合機、単軸押出機、二軸押出機、ロールミルなどが材料をブレンドするのに利用されてもよい。特に適切な溶融ブレンド装置の1つは同方向回転二軸押出機(例えばWerner & Pfleiderer Corporation of Ramsey, N.J.から入手可能なZSK-30二軸押出機)である。そのような押出機は供給および放出ポートを含み、高強度の分配分散混合を提供することができる。例えば、プロピレンポリマーは二軸押出機の供給ポートに供給され溶融されてもよい。その後、安定剤はポリマー溶融物に注入されてもよい。代替として、安定剤は、その長さに沿った異なる地点で押出機に別々に供給されてもよい。選ばれる特定の溶融ブレンド技法には無関係に、原料は高い剪断/圧力および熱の下でブレンドされて十分な混合を確実にする。例えば、溶融ブレンドは、約150℃~約300℃、幾つかの実施形態において、約155℃~約250℃および幾つかの実施形態において約160℃~約220℃の温度で行ってもよい。
【0039】
[0040]上記に注目したように、本発明のある実施形態は、ポリマーマトリクス内のポリマーのブレンド(例えば、プロピレンホモポリマー、および/または、プロピレン/α-オレフィンコポリマー)の使用を企図する。そのような実施形態において、ブレンドにおいて用いられるポリマーのそれぞれは、上に記載の方式で溶融ブレンドされてもよい。しかし、なお他の実施形態において、第1のポリマー(例えばプロピレンポリマー)を溶融ブレンドして濃縮物を形成することが所望されてもよく、次いで、これは下記の方式で、長尺繊維で強化されて前駆体組成物を形成する。前駆体組成物は、その後第2のポリマー(例えばプロピレンポリマー)とブレンド(例えばドライブレンド)されて所望の性質を有するポリマー組成物を形成してもよい。また、追加のポリマーもまた、長尺繊維でのポリマーマトリクスの強化の前および/またはその最中に添加することができることは理解されるはずである。
【0040】
II. 長尺繊維
[0041]本発明の繊維強化組成物を形成するために、長尺繊維が一般に、ポリマーマトリクス内に埋め込まれる。用語「長尺繊維」は一般に、連続的でなく、約1~約25ミリメートル、幾つかの実施形態において約1.5~約20ミリメートル、幾つかの実施形態において約2~約15ミリメートルおよび幾つかの実施形態において約3~約12ミリメートルの長さを有する繊維、フィラメント、ヤーンまたはロービング(例えば繊維の束)を指す。繊維のかなりの部分は、成形部品に形成された後(例えば射出成形)でさえ比較的大きい長さを維持してもよい。すなわち、組成物中の繊維の中央値長さ(D50)は、約1ミリメートル以上、幾つかの実施形態において約1.5ミリメートル以上、幾つかの実施形態において約2.0ミリメートル以上および幾つかの実施形態において約2.5~約8ミリメートルであってもよい。それらの長さには無関係に、繊維の公称直径(例えばロービング内の繊維の直径)は、結果として得られるポリマー組成物の表面外観を改善するのを助けるために選択的に制御されてもよい。とりわけ、繊維の公称直径は、約20~約40マイクロメートル、幾つかの実施形態において約20~約30マイクロメートル、および幾つかの実施形態において約21~約26マイクロメートルの範囲であってもよい。この範囲内では、成形部品の表面に繊維の「凝集」する傾向は低減し、それによって部品の色および表面外観が優勢的にポリマーマトリクスに由来することを可能にする。改善された審美的な一貫性を提供することに加えて、またポリマーマトリクス内により容易に安定剤系を用いることができるので、紫外線への曝露後に色が良好に維持されることを可能にする。当然のことながら、約1~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態において約8~約19マイクロメートル、および幾つかの実施形態において約10~約18マイクロメートルのものなどの他の公称直径が用いられてもよいことは理解されるべきである。
【0041】
[0042]繊維は、当業界で公知の任意の従来材料、例えば、金属繊維;ガラス繊維(例えばEガラス、Aガラス、Cガラス、Dガラス、ARガラス、Rガラス、S1ガラス、S2ガラス)、炭素繊維(例えばグラファイト)、ボロン繊維、セラミック繊維(例えばアルミナまたはシリカ)、アラミド繊維(例えばKevlar(登録商標))、合成有機繊維(例えばポリアミド、ポリエチレン、パラフェニレン、テレフタルアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリフェニレンスルフィド)、および熱可塑性組成物を強化すると知られている様々な他の天然または合成の無機または有機繊維質材料から形成されてもよい。ガラス繊維および炭素繊維が特に望ましい。繊維は捩じれていても直鎖状であってもよい。所望の場合、繊維は、単繊維タイプまたは異なるタイプの繊維を含むロービング(例えば繊維の束)の形態をしていてもよい。異なる繊維は個々のロービング中に含まれていてもよく、または、代替として、各ロービングは異なる繊維タイプを含んでいてもよい。例えば、一実施形態において、あるロービングは炭素繊維を含んでいてもよく、一方で他のロービングはガラス繊維を含んでいてもよい。各ロービング中に含まれる繊維の数は、一定であってもよいが、またはロービングごとに変動することができる。通常、ロービングは、約1,000の繊維~約50,000の個々の繊維、および幾つかの実施形態において約2,000~約40,000の繊維を含んでいてもよい。
【0042】
[0043]様々な異なる技法のうちのいずれかが一般に、ポリマーマトリクスに繊維を組み込むために用いられてもよい。長尺繊維は、ポリマーマトリクス内にランダムに分布してもよく、または代替として、整列して分布してもよい。一実施形態において、例えば、連続繊維は、ストランドを形成するために最初にポリマーマトリクスへ含浸させられてもよく、その後冷却され、次に、結果として得られた繊維が長尺繊維としての所望の長さを有するようにペレットへ細断される。そのような実施形態において、ポリマーマトリクスおよび連続繊維(例えばロービング)は通常、含浸ダイを通して引抜成形されて繊維とポリマーの間で所望の接触を達成する。引抜成形は、また繊維が間隔を空けて同じまたは実質上類似の方向、例えば、ペレットの主軸(例えば長手)と平行な縦方向に並ぶことを確実にするのを助けることができ、それがさらに機械的性質を増強する。
図1を参照すると、例えば、引抜成形プロセス10の一実施形態が示され、ここで、ポリマーマトリクスが押出機13から含浸ダイ11に供給され、一方で連続繊維12は引抜装置18によってダイ11を通して引き抜かれて複合構造体14を生成する。通常の引抜装置は、例えばキャタピラー引抜機および往復引抜機を含んでもよい。任意選択であるが、複合構造体14はまた、押出機16に取り付けられたコーティングダイ15(それを通してコーティング樹脂が塗布されて被覆構造体17を形成する)を通して引き抜くこともできる。
図1に示されるように、被覆構造体17は、次に引抜機アセンブリ18によって引き抜かれ、長尺繊維強化組成物を形成するための望ましいサイズに構造体17を切断するペレタイザー19に供給される。
【0043】
[0044]引抜成形プロセス中に用いられる含浸ダイの性質を選択的に変化させて、ポリマーマトリクスと長尺繊維との間に良好な接触を達成するのを助けることができる。適切な含浸ダイシステムの例は、Hawleyへの再発行特許第32,772号;Reganらへの第9,233,486号;およびEastepらへの第9,278,472号に詳細に記載されている。
図2を参照すると、例えば、そのような適切な含浸ダイ11の一実施形態が示されている。示されるように、ポリマーマトリクス127は、押出機(図示せず)を介して含浸ダイ11に供給されてもよい。とりわけ、ポリマーマトリクス127は、バレルフランジ128を通して押出機から出て、ダイ11のダイフランジ132に導入することができる。ダイ11は、下側ダイ半体136と噛合する上側ダイ半体134を含む。連続繊維142(例えばロービング)は、リール144から供給ポート138を通してダイ11の上側ダイ半体134に供給される。同様に、連続繊維146もリール148から供給ポート140を通して供給される。マトリクス127は、上側ダイ半体134および/または下側ダイ半体136内に搭載されたヒーター133によって、ダイ半体134および136の内側で加熱される。ダイは一般に、熱可塑性ポリマーの溶融および含浸を引き起こすのに十分な温度で作業される。通常は、ダイの作業温度はポリマーマトリクスの融点よりも高い。このように処理されると、連続繊維142および146はマトリクス127中に埋め込まれる。次に、混合物は、含浸ダイ11を通して引き抜かれて繊維強化組成物152を生成する。所望の場合、圧力センサー137によって含浸ダイ11付近の圧力を検知して、スクリューシャフトの回転速度、またはフィーダーの供給量を制御することによって、押出速度に対する制御を発揮させることを可能にすることもあり得る。
【0044】
[0045]含浸ダイ内では、繊維が一連の衝突帯域に接触することが一般に望ましい。これらの帯域において、ポリマー溶融物が繊維を通して横方向に流れて剪断および圧力を生じさせることができ、これにより含浸の程度が著しく高まる。これは、高い繊維含有率のリボンから複合体を形成する場合に特に有用である。通常は、ダイは、十分な程度の剪断および圧力を生じさせるために、ロービング当たり少なくとも2、幾つかの実施形態においては少なくとも3、幾つかの実施形態においては4~50の衝突帯域を含む。それらの特定の形態は変化してもよいが、衝突帯域は、通常は湾曲した突出部、ロッドなどのような湾曲した表面を有する。衝突帯域はまた、通常、金属材料で製造される。
【0045】
[0046]
図2は、突出部182の形態の多数の衝突帯域を含む含浸ダイ11の一部の拡大概略図を示す。本発明は、場合によって機械方向と同軸であってよい複数の供給ポートを使用して実施することができることは理解されるべきである。使用される供給ポートの数は、ダイ内で一度に処理される繊維の数に伴って変化してもよく、供給ポートは、上側ダイ半体134または下側ダイ半体136内に搭載されてもよい。供給ポート138は、上側ダイ半体134内に搭載されたスリーブ170を含む。供給ポート138は、スリーブ170内に摺動可能に搭載されている。供給ポート138は、ピース172および174として示される少なくとも2つのピースに分割される。供給ポート138は、長手方向に貫通する孔176を有する。孔176は、上側ダイ半体134から離隔した直円柱状コーン開口として成形されてもよい。繊維142は、孔176を通過し、上側ダイ半体134と下側ダイ半体136との間の通路180に入る。また、通路210が回旋状の経路をとるように、一連の突出部182が上側ダイ半体134および下側ダイ半体136内に形成される。突出部182によって繊維142および146が少なくとも1つの突出部上を通過して、通路180の内部のポリマーマトリクスがそれぞれの繊維と十分に接触するようになる。このようにして、溶融ポリマーと繊維142および146との間の十分な接触が確実になる。
【0046】
[0047]含浸をさらに容易にするために、繊維はまた、含浸ダイ内に存在している間、張力下に維持されてもよい。張力は、例えば、繊維のトウ当たり約5~約300ニュートン、幾つかの実施形態において約50~約250ニュートン、および幾つかの実施形態において約100~約200ニュートンの範囲であってよい。さらに、繊維はまた、剪断を増大させるために、曲がりくねった進路で衝突帯域を通過させてもよい。例えば、
図2に示される実施形態において、繊維は正弦波型の通り道で衝突帯域を横切る。ロービングが1つの衝突帯域から別の衝突帯域へ横切る角度は、一般に剪断を増大させるのに十分に高いが、繊維を破断する過剰な力を引き起こすほどは高くない。したがって、例えばこの角度は約1°~約30°、および幾つかの実施形態においては約5°~約25°の範囲であってよい。
【0047】
[0048]上記に示され記載された含浸ダイは、本発明において用いられてもよい種々の可能な構成の1つにすぎない。例えば、代替の実施形態において、繊維はポリマー溶融物の流れの方向に対してある角度に位置するクロスヘッドダイ中に導入されてもよい。繊維がクロスヘッドダイを通って移動し、ポリマーが押出機バレルから出る地点に到達すると、ポリマーは強制的に繊維と接触させられる。二軸押出機などの任意の他の押出機の設計も用いられてよいことも理解されるべきである。なおさらに、場合によって、繊維の含浸を補助するために他の構成要素も用いられてもよい。例えば、ある実施形態において、「ガスジェット」アセンブリを用いて、それぞれが最大24,000もの繊維を含んでいてよい個々の繊維の束またはトウを、合体したトウの全幅にわたって均一に拡げるのを助けることができる。これによって、リボン内の強度特性の均一な分布を達成するのを助ける。そのようなアセンブリは、出口ポートを通過する移動している繊維トウ上に概して垂直に衝突する圧縮空気または他のガスの供給部を含むことができる。次に、拡げられた繊維束は、上記のように、含浸のためにダイ中に導入されてもよい。
【0048】
[0049]繊維強化ポリマー組成物は一般に、様々な異なる技法を使用して成形部品を形成するために用いられてもよい。適切な技法は例えば、射出成形、低圧射出成形、押出圧縮成形、ガス射出成形、発泡射出成形、低圧ガス射出成形、低圧発泡射出成形、ガス押出圧縮成形、発泡押出圧縮成形、押出成形、発泡押出成形、圧縮成形、発泡圧縮成形、ガス圧縮成形などを含んでいてもよい。例えば、繊維強化組成物が注入されてもよい型を含む射出成形システムが用いられてもよい。ポリマーマトリクスが先に凝固しないように、射出機内の時間が制御され最適化されてもよい。サイクル時間に到達し、バレルが排出に向けて満たされたら、型穴に組成物を注入するためにピストンが使用されてもよい。圧縮成形システムもまた用いられてもよい。射出成形でのように、所望の用品への繊維強化組成物の成形はまた、型内で行われる。組成物は、任意の公知技法を使用して、例えば、自動ロボットアームで掴むことによって圧縮型に装入されてもよい。凝固を可能にするために、所望の期間、型の温度が、ポリマーマトリクスの凝固温度またはその上の温度に維持されてもよい。次いで、成形物は、溶融温度のそれより下の温度に至らせることにより凝固されてもよい。結果として得られた生成物は脱型されてもよい。各成形プロセスのサイクル時間は、ポリマーマトリクスに適し、十分な接着を達成し、プロセス全体の生産性を高めるように調節されてもよい。繊維強化組成物の独特の性質により、比較的薄い成形部品(例えば射出成形部品)を容易にそれから形成することができる。例えば、そのような部品は、約4ミリメートル以下、幾つかの実施形態において約2.5ミリメートル以下、幾つかの実施形態において約2ミリメートル以下、幾つかの実施形態において約1.8ミリメートル以下、および幾つかの実施形態において約0.4~約1.6ミリメートル(例えば1.2ミリメートル)の厚さを有していてもよい。
【0049】
[0050]本発明は、以下の実施例を参照してより良好に理解することができる。
【実施例】
【0050】
試験方法
[0051]メルトフローインデックス:ポリマーまたはポリマー組成物のメルトフローインデックスは、ISO 1133-1:2011(技術的にASTM D1238-13と同等)に従って2.16kgの荷重および230℃の温度で求められてもよい。
【0051】
[0052]揮発性有機物含有率(「VOC」):VDA 277:1995として公知の自動車産業標準試験に従って全揮発性有機物含有率が求められてもよい。この試験において、例えば、0.25mmの内径および30mの長さのWCOTキャピラリーカラム(ワックスタイプ)を含むガスクロマトグラフィー(GC)装置が用いられてもよい。GCの設定は以下のとおりであってもよい:50℃で3分等温、12K/分で200℃まで加熱、200℃で4分等温、200℃の注入温度、250℃の検出温度、キャリアはヘリウムであり、1:20の流動モードスプリットおよび22~27cm/秒の平均キャリア速度。水素炎イオン化検出器(「FID」)が全揮発分含有率を求めるために用いられてもよく、質量分析法(「MS」)検出器も、場合によって、単一の揮発性成分を求めるために用いられてもよい。試験の後、VOC量は、組成物の重量(グラム)で揮発分量(炭素相当量のマイクログラム)を除することにより算定される。
【0052】
[0053]トルエン揮発性有機物含有率(「TVOC」):VDA 278:2002として公知の自動車産業標準試験に従ってトルエン相当量の揮発性有機物含有率が求められてもよい。とりわけ、測定は、試料について、Gerstelによって供給されるような熱脱離アナライザー(「TDSA」)を使用し、キャリアガスとしてヘリウム5.0、ならびに長さ50m、および直径0.32mmおよび5%フェニルメチルシロキサンの0.52μmコーティングのカラムHP Ultra 2を使用して行われてもよい。解析は、例えば装置設定1および以下のパラメーターを使用して、遂行されてもよい:スプリットレスの流動モード、最終温度90℃;最終時間30分、および速度60K/分。冷却トラップは、1:30の流動モードスプリットを用いて-150℃~+280℃の温度範囲で12K/秒の加熱速度および5分の最終時間を用いてパージされてもよい。解析に関しては、ガスクロマトグラフィー(「GC」)設定は、40℃で2分等温、92℃まで3K/分で加熱、次いで160℃まで5K/分、次いで280℃まで10K/分、10分等温、および1.3ml/分の流動であってもよい。試験の後、TVOC量は、組成物の重量(グラム)で揮発分(トルエン相当量のマイクログラム)の量を除することにより算定される。
【0053】
[0054]フォギング含有率(「FOG」):フォギング含有率は、VDA 278:2002として公知の自動車産業標準試験に従って求められてもよい。とりわけ、測定は、試料について、Gerstelによって供給されるような熱脱離アナライザー(「TDSA」)を使用し、キャリアガスとしてヘリウム5.0、ならびに長さ50m、および直径0.32mmおよび5%フェニルメチルシロキサンの0.52μmコーティングのカラムHP Ultra 2を使用して行われてもよい。解析は、例えば装置設定1および以下のパラメーターを使用して、遂行されてもよい:スプリットレスの流動モード、最終温度120℃;最終時間60分、および速度60K/分。冷却トラップは、1:30の流動モードスプリットを用いて-150℃~+280℃の温度範囲で12K/秒の加熱速度を用いてパージされてもよい。解析に関しては、ガスクロマトグラフィー(「GC」)設定は、50℃で2分等温、160℃まで25K/分で加熱、次いで280℃まで10K/分、30分等温、および1.3ml/分の流動であってもよい。試験の後、FOG量は、組成物の重量(グラム)で揮発分(ヘキサデカン相当量のマイクログラム)の量を除することにより算定される。
【0054】
[0055]引張弾性率、引張応力、および破断時引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527-1:2019(ASTM-D638-14と技術的に同等)に従って試験されてもよい。長さ170/190mm、厚さ4mmおよび幅10mmを有するイヌ骨形状の試験片試料で、弾性率および強度の測定が行われてもよい。試験温度は-30℃、23℃または80℃であってよく、試験速度は1または5mm/分であってよい。
【0055】
[0056]曲げ弾性率、破断時曲げ伸びおよび曲げ応力:曲げ特性は、ISO試験No.178:2019(ASTM-D790-17と技術的に同等)に従って試験されてもよい。この試験は64mmの支持材スパンで行われてもよい。試験は、未切断のISO 3167多目的棒材の中央部分で行われてもよい。試験温度は-30℃、23℃または80℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0056】
[0057]ノッチ付きシャルピー衝撃強度:シャルピー特性は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM-D256-10、方法Bと技術的に同等)に従って試験されてもよい。この試験は、タイプ1の試験片サイズ(長さ80mm、幅10mmおよび厚さ4mm)を使用して行われてもよい。ノッチ付き衝撃強度を試験する場合、ノッチはタイプAノッチ(0.25mmの基部半径)であってもよい。試験片は、一枚歯フライス盤を使用して多目的棒材の中央部分から切り出されてもよい。試験温度は-30℃、23℃または80℃であってよい。
【0057】
[0058]荷重撓み温度(「DTUL」):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2:2013(ASTM-D648-07と技術的に同等)に従って求められてもよい。とりわけ、長さ80mm、幅10mmおよび厚さ4mmを有する試験片試料が、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルであるエッジワイズ3点曲げ試験にかけられてもよい。試験片は、0.25mm(ISO試験No.75-2:2013としては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させるシリコーン油浴中に降下させてもよい。
【0058】
実施例1
[0059]プロピレンホモポリマー(メルトフローインデックス65g/10分、密度0.902g/cm3)およそ54.9重量%、カップリング剤1.2重量%、安定剤系3.9重量%、および連続的ガラス繊維ロービング(2400 Tex、16μmのフィラメント径)40重量%を含む試料を形成する。安定剤系は、Irganox(登録商標)B 225 9.0重量%、Chimassorb(登録商標)944 30.6重量%、Irganox(登録商標)1010 15.8重量%、Irgafos(登録商標)168 3.6重量%、Chimassorb(登録商標)234 7.2重量%、Ultranox(登録商標)626 15.8重量%および炭酸カルシウム 18重量%を含んでいた。溶融温度が265℃、ダイ温度が330℃、および帯域温度が160℃~320℃の範囲、およびスクリュー速度が160rpmである単軸押出機(90mm)で試料を溶融加工する。
【0059】
実施例2
[0060]プロピレンホモポリマー(メルトフローインデックス65g/10分、密度0.902g/cm3)およそ56.9重量%、カップリング剤1.2重量%、安定剤系1.9重量%、および連続的ガラス繊維ロービング(2400 Tex、16μmのフィラメント径)40重量%を含む試料を形成する。安定剤系は、Irganox(登録商標)3114 9.2重量%、Chimassorb(登録商標)81 25.8重量%、Ultranox(登録商標)626 18.4重量%、Irganox(登録商標)PS 102 36.7重量%、炭素材料0.9重量%、および炭酸カルシウム9重量%を含んでいた。炭素材料は、Remafin(登録商標)Black PPであり、カーボンブラック粒子35重量%およびポリプロピレン65重量%を含んでいた。溶融温度が265℃、ダイ温度が330℃、および帯域温度が160℃~320℃の範囲、およびスクリュー速度が160rpmである単軸押出機(90mm)で試料を溶融加工する。
【0060】
実施例3
[0061]プロピレンホモポリマー(メルトフローインデックス65g/10分、密度0.902g/cm3)およそ56.8重量%、カップリング剤1.2重量%、安定剤系2重量%、および連続的ガラス繊維ロービング(2400 Tex、16μmのフィラメント径)40重量%を含む試料を形成する。安定剤系は、Irganox(登録商標)3114 9.2重量%、Chimassorb(登録商標)81 25.7重量%、Ultranox(登録商標)626 18.4重量%、Irganox(登録商標)PS 102 36.6重量%、炭素材料1.1重量%、および炭酸カルシウム9.0重量%を含んでいた。炭素材料は、PXC 14759 PP Blackであり、カーボンブラック粒子30重量%およびポリプロピレン70重量%を含んでいた。溶融温度が265℃、ダイ温度が330℃、および帯域温度が160℃~320℃の範囲、およびスクリュー速度が160rpmである単軸押出機(90mm)で試料を溶融加工する。
【0061】
実施例4
[0062]プロピレンホモポリマー(メルトフローインデックス65g/10分、密度0.902g/cm3)およそ57.0重量%、カップリング剤1.2重量%、安定剤系1.9重量%、および連続的ガラス繊維ロービング(2400 Tex、16μmのフィラメント径)40重量%を含む試料を形成する。安定剤系は、Irganox(登録商標)3114 9.2重量%、Chimassorb(登録商標)81 25.8重量%、Ultranox(登録商標)626 18.4重量%、Irganox(登録商標)PS 102 36.8重量%、炭素材料0.8重量%、および炭酸カルシウム9.0重量%を含んでいた。炭素材料は、PXC 0109245 PP Blackであり、カーボンブラック粒子40重量%およびポリプロピレン60重量%を含んでいた。溶融温度が265℃、ダイ温度が330℃、および帯域温度が160℃~320℃の範囲、およびスクリュー速度が160rpmである単軸押出機(90mm)で試料を溶融加工する。
【0062】
実施例5
[0063]プロピレンホモポリマー(メルトフローインデックス65g/10分、密度0.902g/cm3)およそ56.4重量%、カップリング剤1.2重量%、安定剤系2.4重量%、および連続的ガラス繊維ロービング(2400 Tex、16μmのフィラメント径)40重量%を含む試料を形成する。安定剤系は、Irganox(登録商標)3114 9.1重量%、Chimassorb(登録商標)81 25.5重量%、Ultranox(登録商標)626 18.2重量%、Irganox(登録商標)PS 102 36.4重量%、炭素材料1.9重量%、および炭酸カルシウム8.9重量%を含んでいた。炭素材料はRemafin(登録商標)Black PPであった。溶融温度が265℃、ダイ温度が330℃、および帯域温度が160℃~320℃の範囲、およびスクリュー速度が160rpmである単軸押出機(90mm)で試料を溶融加工する。
【0063】
実施例6
[0064]プロピレンホモポリマー(メルトフローインデックス65g/10分、密度0.902g/cm3)およそ56.1重量%、カップリング剤1.2重量%、安定剤系2.8重量%、および連続的ガラス繊維ロービング(2400 Tex、16μmのフィラメント径)40重量%を含む試料を形成する。安定剤系は、Irganox(登録商標)3114 9.0重量%、Chimassorb(登録商標)81 25.4重量%、Ultranox(登録商標)626 18.1重量%、Irganox(登録商標)PS 102 36.2重量%、炭素材料2.4重量%、および炭酸カルシウム8.9重量%を含んでいた。炭素材料はPXC 0109245 PP Blackであった。溶融温度が265℃、ダイ温度が330℃、および帯域温度が160℃~320℃の範囲、およびスクリュー速度が160rpmである単軸押出機(90mm)で試料を溶融加工する。
【0064】
[0065]実施例1~6の試料を機械的性質および色の安定性について、150℃で1,000時間の長期的な熱経時変化の前後の両方、および2,500kJ/m2の紫外線への曝露後に試験する。平均の結果は、以下の表に述べる。
【0065】
【0066】
[0066]本発明のこれらおよび他の修正および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。さらに、種々の実施形態の態様は、全体的にまたは部分的に交換することができることが理解されるべきである。さらに、当業者であれば、上の記載が単に例示の目的であり、添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
【国際調査報告】