(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】組織オルガノイドバイオプリンティングおよびハイスループットスクリーニング法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20231219BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20231219BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20231219BHJP
【FI】
C12Q1/02
A61K45/06
A61K45/00
A61P35/00
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534083
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 US2021062264
(87)【国際公開番号】W WO2022125585
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ソラグニ,アリス
(72)【発明者】
【氏名】テボン,ペイトン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ルダ
(72)【発明者】
【氏名】テヴァネ,ナスリン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ボウエン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QS40
4B063QX02
4B065AA90X
4B065BD50
4B065CA60
4C084AA17
4C084AA20
4C084NA20
4C084ZB26
(57)【要約】
本開示は、有効な抗腫瘍免疫療法レジメンを特定するために迅速で高度に個別化したスクリーニングのためのハイスループット法を説明する。一実施形態において、治療薬またはその組み合わせは、腫瘍成形オルガノイド押出成形物を、同じ患者から採取した免疫細胞の集団と同時培養することによりスクリーニングされる。治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の機能が低下するか、免疫細胞の機能が向上することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定する。
【選択図】
図1A、
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法であって、
i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記腫瘍細胞が前記腫瘍細胞を含む1つまたは複数の成形された三次元のオルガノイド押出成形物を形成するように、前記腫瘍細胞の収集物を組織培養ウェルに押出成形するステップ;
iii)治療薬またはその組み合わせの存在下で前記成形オルガノイド押出成形物をアッセイ細胞の集団と前記組織培養ウェル内で同時培養するステップであって、前記治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の機能が低下するか、アッセイ細胞の機能が向上することで、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ヒドロゲル内の細胞の収集物を組織培養ウェルに押出成形することにより生体試料をバイオプリンティングするための方法であって、前記細胞が、1つまたは複数の幾何学的形状の三次元押出成形物を形成する、方法。
【請求項3】
前記腫瘍細胞の機能が、腫瘍細胞の増殖、腫瘍細胞の生存率または腫瘍細胞の移動性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
腫瘍細胞の機能の低下が、移動性の低下、増殖率の低下、または細胞生存率の低下である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
腫瘍細胞の機能の低下が、腫瘍細胞死である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記治療薬またはその組み合わせの存在下での腫瘍細胞の機能の低下およびアッセイ細胞の機能の向上により、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アッセイ細胞が、免疫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫細胞の機能が、サイトカイン産生または免疫細胞の増殖を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記アッセイ細胞が、肝臓細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組織培養プレートが、384ウェル、96ウェル、48ウェル、24ウェル、12ウェルまたは6ウェルプレートのウェルである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記成形オルガノイド押出成形物が、前記組織培養ウェルの底部で周囲にリングとして堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記成形細胞押出成形物が、前記組織培養ウェルの底部で周囲にリングとして堆積される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記成形細胞押出成形物が、前記組織培養ウェルの底部で周囲にリングとして堆積され、前記成形オルガノイド押出成形物が、前記組織培養ウェルの側壁に直接接触しない、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記成形オルガノイド押出成形物が、前記組織培養ウェルの底部で実質的に角形に堆積され、前記成形オルガノイド押出成形物が、前記組織培養ウェルの側壁に直接接触しない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記成形オルガノイド押出成形物が、前記組織培養ウェルの底部で実質的に角形に堆積され、前記成形オルガノイド押出成形物が、前記組織培養プレートの側壁に直接接触しない、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記腫瘍細胞が、肉腫細胞またはカルシノーマ細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記成形オルガノイド押出成形物が、ヒドロゲルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドロゲルが、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項2または17に記載の方法。
【請求項19】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、手動または自動化されたバイオプリンティングにより実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、約0℃から約37℃の温度で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項21】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、約37℃の温度で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項22】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、約18℃の温度で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項23】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、約0.1mmから約1mmの直径の開口部を通って実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項24】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、約0.26mmの直径の開口部を通って実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項25】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、約0.6mmの直径の開口部を通って実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項26】
前記組織培養ウェルが、前記分配中、約0℃から約37℃の温度で維持される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項27】
前記組織培養ウェルが、前記分配中、約37℃の温度で維持される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項28】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約1kPaから約150kPaの押出圧力で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項29】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約10kPaから約15kPaの押出圧力で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項30】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約15kPaの押出圧力で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項31】
前記成形オルガノイドまたは細胞押出成形物の前記分配が、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約1mm/秒から約200mm/秒のプリントヘッド速度で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項32】
各成形オルガノイドまたは細胞押出成形物が、1マイクロリットルあたり約50個から約5,000個の細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項33】
各成形オルガノイドまたは細胞押出成形物が、1マイクロリットルあたり約500個から約1,400個の細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項34】
前記組織培養ウェルが、1つまたは複数の96ウェルプレート内にあり、各成形オルガノイドまたは細胞押出成形物が、1マイクロリットルあたり約50個から約500個の細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項35】
前記組織培養ウェルが、1つまたは複数の24ウェルプレート内にあり、各成形オルガノイドまたは細胞押出成形物が、1マイクロリットルあたり約500個から約5,000個の細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項36】
前記アッセイ細胞が、前記患者から取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記アッセイ細胞が、循環免疫細胞または腫瘍浸潤性免疫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記成形オルガノイド押出成形物および前記アッセイ細胞が、記組織培養ウェルの組織培養培地中に置かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記成形オルガノイド押出成形物および前記アッセイ細胞が、前記組織培養ウェルの中央領域から離れて維持される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記アッセイ細胞が、ヒドロゲルを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒドロゲルが、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記治療薬が、化学療法剤または免疫療法剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、
i)請求項1に記載のステップを実行するステップ;および
ii)前記治療薬またはその組み合わせを用いて前記患者を処置するステップ
を含む、方法。
【請求項44】
前記腫瘍細胞の機能が、腫瘍細胞の増殖、腫瘍細胞の移動性、または腫瘍細胞の生存率を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記腫瘍細胞の機能が、腫瘍細胞死を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記治療薬またはその組み合わせの存在下での腫瘍細胞の機能の低下およびアッセイ細胞の機能の向上により、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定する、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記アッセイ細胞が、免疫細胞である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記アッセイ細胞の機能が、サイトカイン産生または免疫細胞の増殖を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記アッセイ細胞が、肝臓細胞である、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記組織培養プレートが、96ウェル組織培養プレートまたは24ウェル組織培養プレートである、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記成形オルガノイド押出成形物が、前記組織培養ウェルの底部で周囲にリングとして堆積される、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
前記成形オルガノイド押出成形物が、前記組織培養ウェルの底部で実質的に長方形または実質的に角形に堆積され、前記成形オルガノイド押出成形物が、前記組織培養ウェルの側壁に直接接触しない、請求項43に記載の方法。
【請求項53】
前記腫瘍細胞が、肉腫細胞またはカルシノーマ細胞である、請求項43に記載の方法。
【請求項54】
前記成形オルガノイド押出成形物が、ヒドロゲルを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項55】
前記ヒドロゲルが、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記ヒドロゲルが、マトリゲル(登録商標)であり、前記温度が、18Cであり、圧力が、12~20kPaであり、速度が、10~20mm/秒である、請求項2または55に記載の方法。
【請求項57】
成形オルガノイド押出成形物をバイオプリンティングするための自動化法であって、
i)被験者から組織試料を取得して、前記組織試料の単一細胞懸濁液、細胞凝集体または細胞クラスターを調製するステップ;
ii)前記単一細胞懸濁液、凝集体またはクラスターをゲル前駆体溶液と混合し、それによって、細胞およびマトリックスを含む細胞複合体を形成するステップ;
iii)前記細胞複合体を、自動装置の1つまたは複数のディスペンサにより1つまたは複数の組織培養ウェルに分配するステップであって、前記ディスペンサが前記組織培養ウェルの基部の上に前記細胞複合体を多角形またはリングとして堆積させるように較正されているステップ
を含む、方法。
【請求項58】
前記細胞複合体の前記分配が、約0℃から約37℃の温度で実行される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記細胞複合体の前記分配が、約37℃の温度で実行される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記細胞複合体の前記分配が、約0.1mmから約1mmの直径の開口部を通って実行される、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記細胞複合体の前記分配が、約0.26mmの直径の開口部を通って実行される、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
分配の前に、前記細胞複合体が、約0℃から37℃の温度で維持されたリザーバ内に保持される、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
分配の前に、前記細胞複合体が、約37℃の温度で維持されたリザーバ内に保持される、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
前記組織培養ウェルが、分配中、約0℃から37℃の温度で維持される、請求項57に記載の方法。
【請求項65】
前記組織培養ウェルが、分配中、約37℃の温度で維持される、請求項57に記載の方法。
【請求項66】
前記細胞複合体の前記分配が、約1kPaから約150kPaの押出圧力で実行される、請求項57に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞複合体の前記分配が、約10kPaから約20kPaの押出圧力で実行される、請求項57に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞複合体の前記分配が、約15kPaの押出圧力で実行される、請求項57に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞複合体の前記分配が、約1mm/秒から約200mm/秒のプリントヘッド速度で実行される、請求項57に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞複合体が、1マイクロリットルあたり約50個から約5,000個の細胞を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項71】
前記細胞複合体が、1マイクロリットルあたり約500個から約1,400個の細胞を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項72】
前記組織培養ウェルが、1つまたは複数の96ウェルプレート内にあり、前記細胞複合体が、1マイクロリットルあたり約50個から約500個の細胞を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項73】
前記組織培養ウェルが、1つまたは複数の24ウェルプレート内にあり、前記細胞複合体が、1マイクロリットルあたり約500個から約5,000個の細胞を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項74】
前記96ウェルプレートで1ウェルあたり押出成形された細胞懸濁液の体積が、10マイクロリットルである、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記96ウェルプレートで1ウェルあたり押出成形された細胞懸濁液の体積が、5マイクロリットルである、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記24ウェルプレートで1ウェルあたり押出成形された細胞懸濁液の体積が、70マイクロリットルである、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記細胞複合体の前記マトリックスが、ヒドロゲルである、請求項57に記載の方法。
【請求項78】
前記ヒドロゲルが、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記ゲル前駆体溶液が、MammoCult(商標)無血清培地およびマトリゲル(登録商標)またはCultrex(登録商標)BMEのいずれかを3:4の比で含む、請求項57に記載の方法。
【請求項80】
前記組織試料が、腫瘍試料である、請求項57に記載の方法。
【請求項81】
前記腫瘍試料が、肉腫またはカルシノーマである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記単一細胞懸濁液、細胞凝集体または細胞クラスターが、酵素消化により取得される、請求項57に記載の方法。
【請求項83】
前記単一細胞懸濁液が、40マイクロメートルセルストレーナーに通して濾過される、請求項57に記載の方法。
【請求項84】
前記ディスペンサが、前記ディスペンサを所望の位置に配置して前記細胞複合体を分配するように、組織培養ウェルに挿入されたアライメントガイドで較正されている、請求項57に記載の方法。
【請求項85】
前記細胞懸濁液、細胞凝集体または細胞クラスターの前記変動性、生存率または細胞懸濁液の完全性が、評価される、請求項57に記載の方法。
【請求項86】
前記組織培養ウェルに分配された細胞数の変動係数が、5%以内である、請求項57に記載の方法。
【請求項87】
前記組織培養ウェルに分配された細胞が、少なくとも90%の生存率を有する、請求項57に記載の方法。
【請求項88】
アッセイ細胞の前記集団が、2つまたはそれ以上の細胞型を含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
アッセイ細胞の前記集団が、前記組織培養ウェルに提供される、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
第2の細胞型が、前記組織培養ウェルに提供される、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記ヒドロゲルまたはゲル前駆体溶液が、基底膜抽出物を含み、前記分配が、約2℃から約37℃の温度であり、前記印刷表面温度が、約4℃から約37℃であり、前記押出圧力が、約1kPaから約25kPaであり、前記プリントヘッド速度が、約5mm/秒から約40mm/秒である、請求項1、2または57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記ゲル前駆体溶液が、基底膜抽出物を含み、前記分配が、約4℃から約18℃の温度であり、前記印刷表面温度が、約17℃であり、前記押出圧力が、約1kPaから約15kPaであり、前記プリントヘッド速度が、約10mm/秒から約20mm/秒である、請求項1、2または57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記ゲル前駆体溶液が、CELLINK LAMININKを含み、前記分配が、約15℃から約25℃の温度であり、前記印刷表面温度が、約20℃から約25℃であり、前記押出圧力が、約35kPaから約55kPaであり、前記プリントヘッド速度が、約10mm/秒から約20mm/秒である、請求項1、2または57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記ゲル前駆体溶液が、PPOを含み、前記分配が、約20℃から約25℃の温度であり、前記印刷表面温度が、約20℃から約25℃であり、前記押出圧力が、約35kPaから約150kPaであり、前記プリントヘッド速度が、約1mm/秒から約80mm/秒である、請求項1、2または57のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、生物学、腫瘍学および免疫腫瘍学の分野に関する。一実施形態において、本開示は、細胞の迅速なバイオプリンティングおよび成形オルガノイド押出成形物に対する腫瘍学または免疫腫瘍学療法のハイスループットスクリーニングのための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
癌のための免疫療法、すなわち、免疫腫瘍学(IO)は、従来の外科手術および薬物治療と並んで急速に癌の処置の新規礎石となってきている。IOは、免疫系の自然の能力を増強することにより作用し、ウイルスおよび細菌からの感染に対して我々を保護するのとほとんど同じ方法で癌細胞を見つけて排除する。生きた動的システムとして、免疫系は、体内のあらゆる場所の癌を検出することができ、他の臓器に広がっているか転移している癌を有する患者を処置する際に特に重要である。
【0003】
免疫療法は、作用機序、応答時間、持続的反応の可能性、および副作用の点で他の癌処置とは非常に異なっている。IO療法は、癌およびある特定の正常細胞を含む、急速に分割する細胞をすべて直接死滅させる化学療法;または癌細胞および時には周囲の健康な細胞を標的化して直接死滅させる放射線;または癌細胞が増殖するのに必要とされる特定のメカニズムを妨害する小分子とは異なり、免疫系それ自体に作用する。免疫療法は、処置後の癌細胞に対する保護を継続すること(免疫系が「記憶」を有しているので)、再発のリスクを低下させることを提供する可能性を有する。
【0004】
近年の臨床的成功により、単独および他の処置と組み合わせて、進行性固形腫瘍および血液癌を含むほぼ20種類の癌についてIO療法が食品医薬品局(FDA)承認となっている。膀胱癌、メラノーマ、およびある特定のタイプの肺癌において、IO療法は、化学療法のような従来の処置に取って代わるか、併用承認の場合はそれを改善する第一選択処置として、FDAの承認を受けている。IO療法はまた、以前の処置に効果がなかった数人の患者を処置するためにFDAに承認されており、多くの他のタイプの癌におけるIO剤の有用性についてテストするための臨床試験が進行中である。
【0005】
活性化、排除、および抑制を含む、抗腫瘍免疫応答における種々のステップを標的化する多様なIO薬がある。チェックポイント封鎖、細胞療法、モノクローナル抗体、ワクチン、およびサイトカインのような免疫調節薬、パターン認識受容体などを含む、異なる作用機序を有する異なるクラスのIOもある。異なるIO療法は、異なる癌または癌のサブセットにおいて異なって作用することが示されている。例えば、ある特定のタイプのCAR-T細胞療法は、B細胞急性リンパ性白血病において83パーセントの応答率、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫において50パーセントの応答を達成しているが、肺、膀胱、腎臓、結腸、脳、および他の臓器で発生する固形腫瘍を処置するにはまだ有効ではない。
【0006】
患者が、従来の治療ありまたは従来の治療なしで、一剤または併用剤での免疫療法を受けるべきかを判断する必要がある。患者がIO処置に応答しそうであるか、または処置が他のものよりも作用しそうであるかを決定する鍵は、患者の環境、ライフスタイル、治療歴、ならびに患者の腫瘍の遺伝子構成および遺伝子発現などの患者の固有の状況を考慮することであると考えられる。
【0007】
したがって、有効なIOレジメンを特定するために迅速で高度に個別化したスクリーニングのためのハイスループットスクリーニング法を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態において、本開示は、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞を含む幾何学的形状のオルガノイド押出成形物を組織培養プレートの組織培養ウェル内に分配するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせの存在下で成形オルガノイド押出成形物をアッセイ細胞の集団と組織培養ウェル内で同時培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の機能が低下するか、アッセイ細胞の機能が向上することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法を提供する。任意の実施形態において、アッセイ細胞は、免疫細胞または肝臓細胞、すなわち肝細胞を含む可能性がある。
【0009】
別の実施形態において、本開示は、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養プレートの組織培養ウェルに分配するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせの存在下で成形オルガノイド押出成形物をアッセイ細胞の集団と組織培養ウェル内で同時培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の機能が低下するか、アッセイ細胞の機能が向上することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに(iv)治療薬またはその組み合わせを用いて患者を処置するステップを含む、腫瘍を有する患者を処置する方法を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本開示は、被験者から組織試料を取得して、組織試料の単一細胞懸濁液を調製するステップ;単一細胞懸濁液、凝集体またはクラスターをゲル前駆体溶液と混合し、それによって、細胞およびマトリックスを含む細胞複合体を形成するステップ;細胞複合体を、自動装置の1つまたは複数のディスペンサにより1つまたは複数の組織培養ウェルに分配するステップであって、前記ディスペンサが組織培養ウェルの基部の周囲に細胞複合体をリングまたは角形または他の形状に堆積させるように較正されているステップを含む、細胞または成形オルガノイド押出成形物をバイオプリンティングするための自動化法を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本開示は、治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体の存在下で腫瘍細胞に対する活性について候補治療薬をスクリーニングするための方法を提供し、その方法は、(i)成形オルガノイド押出成形物を含む複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレート、および(ii)薬剤に対する腫瘍の感受性をインビボで変更する可能性があり、患者における薬剤の潜在的な有用性の改善された評価を提供する細胞をさらに含むウェルを含む。一実施形態において、活性細胞複合体は、肝臓細胞または腸細胞を含む。
【0012】
したがって、一態様において、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞が前記腫瘍細胞を含む1つまたは複数の成形された三次元のオルガノイド押出成形物を形成するように、前記腫瘍細胞の収集物を組織培養ウェルに押出成形するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせの存在下で前記成形オルガノイド押出成形物をアッセイ細胞の集団と前記組織培養ウェル内で同時培養するステップであって、前記治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の機能が低下するか、アッセイ細胞の機能が向上することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法が提供される。一実施形態において、アッセイ細胞は、免疫細胞、肝臓細胞または腸細胞を含む。
【0013】
したがって、一態様において、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞が前記腫瘍細胞を含む1つまたは複数の成形オルガノイド押出成形物を形成するように、前記腫瘍細胞の収集物を組織培養ウェルに押出成形するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせの存在下で前記成形オルガノイド押出成形物をアッセイ細胞の集団と前記組織培養ウェル内で同時培養するステップであって、前記治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の機能が低下するか、アッセイ細胞の機能が向上することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに(iv)治療薬またはその組み合わせを用いて患者を処置するステップを含む、腫瘍を有する患者を処置するための方法が提供される。
【0014】
前述の方法のいくらかの実施形態において、腫瘍細胞の機能は、腫瘍細胞の増殖、腫瘍細胞の生存率または腫瘍細胞の移動性を含む。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞の機能の低下は、移動性の低下、増殖率の低下、または細胞生存率の低下である。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞の機能の低下は、腫瘍細胞死である。いくらかの実施形態において、前記治療薬またはその組み合わせの存在下での腫瘍細胞の機能の低下およびアッセイ細胞の機能の向上により、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせが同定される。
【0015】
いくらかの実施形態において、アッセイ細胞は免疫細胞である。いくらかの実施形態において、免疫細胞の機能は、サイトカイン産生または免疫細胞の増殖を含む。いくらかの実施形態において、アッセイ細胞は肝臓細胞である。いくらかの実施形態において、組織培養プレートは、384ウェル、96ウェル、48ウェル、24ウェル、12ウェルまたは6ウェルプレートのウェルである。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物は、前記組織培養ウェルの底部で周囲にリングとして堆積される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物は、前記組織培養ウェルの底部で実質的に角形に堆積され、成形オルガノイド押出成形物は、前記組織培養ウェルの側壁に直接接触しない。
【0016】
いくらかの実施形態において、腫瘍細胞は肉腫細胞である。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物はヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0017】
いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、手動または自動化されたバイオプリンティングにより実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、約0℃から約37℃の温度で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、約37℃の温度で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、約18℃の温度で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、直径が約0.1mmから約1mmの開口部を通って実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、直径が約0.26mmの開口部を通って実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、直径が約0.6mmの開口部を通って実行される。いくらかの実施形態において、組織培養ウェルは、前記分配中、約0℃から約37℃の温度で維持される。いくらかの実施形態において、組織培養ウェルは、前記分配中、約37℃の温度で維持される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約1kPaから約150kPaの押出圧力で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約10kPaから約15kPaの押出圧力で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約15kPaの押出圧力で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約1mm/秒から約200mm/秒のプリントヘッド速度で実行される。いくらかの実施形態において、各成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約50個から約5,000個の細胞を含む。いくらかの実施形態において、各成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約500個から1,400個の細胞を含む。
【0018】
いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、ヒドロゲルを含み、分配は、約0℃から約37℃の温度であり、印刷表面温度は、約0℃から約37℃であり、押出圧力は、約1kPaから約150kPaであり、プリントヘッド速度は、約1mm/秒から約200mm/秒である。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、基底膜抽出物を含み、分配は、約2℃から約37℃の温度であり、印刷表面温度は、約4℃から約37℃であり、押出圧力は、約1kPaから約25kPaであり、プリントヘッド速度は、約5mm/秒から約40mm/秒である。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、基底膜抽出物を含み、分配は、約4℃から約18℃の温度であり、印刷表面温度は、約17℃であり、押出圧力は、約1kPaから約15kPaであり、プリントヘッド速度は、約10mm/秒から約20mm/秒である。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、CELLINK LAMININKを含み、分配は、約15℃から約25℃の温度であり、印刷表面温度は、約20℃から約25℃であり、押出圧力は、約35kPaから約55kPaであり、プリントヘッド速度は、約10mm/秒から約20mm/秒である。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、PPOを含み、分配は、約20℃から約25℃の温度であり、印刷表面温度は、約20℃から約25℃であり、押出圧力は、約35kPaから約150kPaであり、プリントヘッド速度は、約1mm/秒から約80mm/秒である。
【0019】
いくらかの実施形態において、組織培養ウェルは、1つまたは複数の96ウェルプレート内にあり、各成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約50個から約500個の細胞を含む。いくらかの実施形態において、組織培養ウェルは、1つまたは複数の24ウェルプレート内にあり、各成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約500個から約5,000個の細胞を含む。
【0020】
いくらかの実施形態において、アッセイ細胞は、前記患者から取得される。いくらかの実施形態において、アッセイ細胞は、循環免疫細胞または腫瘍浸潤性免疫細胞である。
【0021】
いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物およびアッセイ細胞は、前記組織培養ウェルの組織培養培地中に置かれる。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物およびアッセイ細胞は、前記組織培養ウェルの中央領域から離れて維持される。いくらかの実施形態において、アッセイ細胞はヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、ヒドロゲルは、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0022】
いくらかの実施形態において、治療薬は、化学療法剤または免疫療法剤を含む。
【0023】
別の態様において、(i)被験者から組織試料を取得して、前記組織試料の単一細胞懸濁液を調製するステップ;(ii)前記単一細胞懸濁液をゲル前駆体溶液と混合し、それによって、細胞およびマトリックスを含む細胞複合体を形成するステップ;(iii)前記細胞複合体を、自動装置の1つまたは複数のディスペンサにより1つまたは複数の組織培養ウェルに分配するステップであって、前記ディスペンサが前記組織培養ウェルの基部の上に前記細胞複合体を多角形またはリングとして堆積させるように較正されているステップを含む、成形オルガノイド押出成形物をバイオプリンティングするための自動化法が提供される。
【0024】
いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、約0℃から約37℃の温度で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、約37℃の温度で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、約18℃の温度で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、直径が約0.1mmから約1mmの開口部を通って実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、直径が約0.26mmの開口部を通って実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、直径が約0.6mmの開口部を通って実行される。いくらかの実施形態において、組織培養ウェルは、前記分配中、約0℃から約37℃の温度で維持される。いくらかの実施形態において、組織培養ウェルは、前記分配中、約37℃の温度で維持される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約1kPaから約150kPaの押出圧力で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約10kPaから約15kPaの押出圧力で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約15kPaの押出圧力で実行される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングを使用して、約1mm/秒から約200mm/秒のプリントヘッド速度で実行される。いくらかの実施形態において、各成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約50個から約5,000個の細胞を含む。いくらかの実施形態において、各成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約500個から1,400個の細胞を含む。いくらかの実施形態において、96ウェルプレートで1ウェルあたり押出成形された細胞懸濁液の体積は、10マイクロリットルである。いくらかの実施形態において、96ウェルプレートで1ウェルあたり押出成形された細胞懸濁液の体積は、5マイクロリットルである。いくらかの実施形態において、24ウェルプレートで1ウェルあたり押出成形された細胞懸濁液の体積は、70マイクロリットルである。
【0025】
いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、ヒドロゲルを含み、分配は、約0℃から約37℃の温度であり、印刷表面温度は、約0℃から約37℃であり、押出圧力は、約1kPaから約150kPaであり、プリントヘッド速度は、約1mm/秒から約200mm/秒である。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、基底膜抽出物を含み、分配は、約2℃から約37℃の温度であり、印刷表面温度は、約4℃から約37℃であり、押出圧力は、約1kPaから約25kPaであり、プリントヘッド速度は、約5mm/秒から約40mm/秒である。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、基底膜抽出物を含み、分配は、約4℃から約18℃の温度であり、印刷表面温度は、約17℃であり、押出圧力は、約1kPaから約15kPaであり、プリントヘッド速度は、約10mm/秒から約20mm/秒である。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、CELLINK LAMININKを含み、分配は、約15℃から約25℃の温度であり、印刷表面温度は、約20℃から約25℃であり、押出圧力は、約35kPaから約55kPaであり、プリントヘッド速度は、約10mm/秒から約20mm/秒である。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、PPOを含み、分配は、約20℃から約25℃の温度であり、印刷表面温度は、約20℃から約25℃であり、押出圧力は、約35kPaから約150kPaであり、プリントヘッド速度は、約1mm/秒から約80mm/秒である。
【0026】
いくらかの実施形態において、前記細胞複合体のマトリックスはヒドロゲルである。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。いくらかの実施形態において、ゲル前駆体溶液は、MammoCult(商標)無血清培地およびマトリゲル(登録商標)またはCultrex(登録商標)BMEのいずれかを3:4の比で含む。
【0027】
いくらかの実施形態において、組織試料は腫瘍試料である。いくらかの実施形態において、腫瘍試料は肉腫である。いくらかの実施形態において、単一細胞懸濁液、凝集体またはクラスターは、酵素消化により取得される。いくらかの実施形態において、単一細胞懸濁液、凝集体またはクラスターは、40マイクロメートルセルストレーナーに通して濾過される。いくらかの実施形態において、ディスペンサは、前記ディスペンサを所望の位置に配置して前記細胞複合体を分配するように、組織培養ウェルに挿入されたアライメントガイドで較正されている。
【0028】
いくらかの実施形態において、変動性、生存率または細胞懸濁液の完全性が評価される。いくらかの実施形態において、前記組織培養ウェルに分配された細胞数の変動係数は、5%以内である。いくらかの実施形態において、前記組織培養ウェルに分配された細胞は、生存率が少なくとも90%である。
【0029】
これらおよび他の態様は、以下の図面の説明および詳細な説明から理解されるであろう。
【0030】
いくらかの実施形態は、添付の図面を参照して、例示のためにのみ、本明細書で説明される。ここで特に図面を詳細に参照すると、特に示されるものは一例であり、実施形態の例証的議論の目的のためであることが強調される。この点について、図面と併せて説明することで、実施形態がどのように実行され得るか、当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1A~
図1Bは、オルガノイドを使用するスクリーニングのためのハイスループット法の一実施形態を示す。
図1Aは、96ウェルプレート内の成形オルガノイド押出成形物を示す。挿入
図1は、ウェル内のオルガノイドを有するマトリゲル(登録商標)リングの概略上面図(左)および側面図(右)である。上面図に対応する実写画像をパネル2に示し、Celigo(Nexcelom)を使用する全ウェルイメージングをパネル3に示す。この図面には、外径がウェルの内周に隣接して配置された成形オルガノイド押出成形物が示されるが、いくらかの実施形態において、リングは、外径がより小さく、ウェルの壁に接触しないか、ウェルの底部の中心でない場合には1箇所でのみ接触するものであってもよい。他の実施形態において、リングは、角形または他の形状に変更される。
図1Bは、代表的な明視野像を用いたスクリーニングプロトコルの概要を示す。0日目、マトリゲル(登録商標)に腫瘍細胞が播種され、リングが印刷される。1~3日目、オルガノイド形成がリング内で生じる。4~5日目、腫瘍細胞が、テストされる治療薬に曝露される。6日目、腫瘍細胞が放出され、ATPアッセイまたは他のパラメータによる生存率が決定され、治療薬の効果を評価する。他の実施形態において、細胞は、種々の時間の長さ(0~45日間)で増殖し、種々の持続時間(例えば、約12時間から約10日間)で治療に曝露される。
【
図2】
図2A~
図2Dは、オルガノイドのバイオプリンティングがどのように効率的な高速生細胞干渉法(HSLCI)を可能にするかを示す顕微鏡写真およびデータを示す。(A)HSLCI撮像経路(薄い黒色の矢印)に関連したミニリング(上)およびミニ角形(下)を有するウェルの概略図。上面図(左)は、リングから方形に移行することで、干渉計の撮像経路内の材料の量が増加することを示す。側面図(右)は、角形のオルガノイドがリングのオルガノイドよりも良好に単焦点面に一致することを示す。(B)印刷前のウェルプレートのプラズマ処理は、ヒドロゲル構造物の形状を最適化する。マトリゲルの未処理ガラス(左)上へのバイオプリンティングは、厚い(約200μm)構造物を生成し、焦点面から外れたオルガノイドの数を増加させることにより、オルガノイドの追跡効率を低下させる。全ウェルプラズマ処理(中央)は、マトリゲルが表面上に薄く(約50μm)拡がるようにして、すべてのウェル表面の親水性を高める;しかし、親水性を高めると、ウェルの壁がバイオインクも吸い上げる。ウェルマスクを用いるプラズマ処理により、ウェルの所望の領域(右)の選択的処理が容易になる。これにより、撮像経路を横切っておおよそ75μmの均一な厚みを有する最適構造物となる。(C)個々のオルガノイドは、画像モダリティ全体で経時的に追跡することができる。5つの代表的なHSLCI画像は、明視野画像全体で撮像経路にトレースされる。(D)マトリゲルベースのバイオインクで印刷したものと手動で播種されたMCF-7細胞の細胞生存率。手動で播種された対照に対してすべてのバイオプリントされた条件を比較するために使用される、通常の一元配置分散分析に続いて事後ボンフェローニ多重比較検定を実行した(p=0.0605)。調整済みp値は、印圧10kPa、15kPa、20kPa、25kPaについてそれぞれ0.0253、0.6087、>0.9999、0.1499であった。
【
図3】
図3A~
図3Gは、アラインメントガイドの3つの実施形態を示し、これは、プレート上の他のウェルへの充填および後続の自動化ステップのための針を並べるためにマイクロタイタープレートの参照ウェルに取り付けられる。
図3Aは、アラインメントガイドの1つの種類の図を示す。
図3Bは、アラインメントのために中に針が配置される中央チャネルを示す断面図である。
図3Cは、アラインメントガイドの別のバージョンを示し、これは、針のアラインメント位置を提供する参照ウェルに取り付けられる。
図3Dは、内部チャネルが底部で円錐形であり、製造元からまたは使用中もしくは使用の間に曲げられる可能性がある針を収容することを示す。上面の中央から外れた角形チャネルは、ピンセットで容易に掴むためのものである。
図3Eは、アラインメントガイドの別のバージョンを示し、Z高さのフィードバックを有する針のアラインメント位置を提供する2つの参照ウェルに取り付けられる。レバー105は、デザインに組み込まれ、適切なアラインメントの明らかなインジケータを提供する。針が開口部101を通過し(適切なXおよびYのアラインメントを確実にする)、レバー102の参照位置の端に押し付けられる場合、フラッグの端103は、適切なZアラインメントの視覚的インジケータとして表面にある開口部を通って持ち上がる。レバーは、参照位置の端のZ高さにおける小さい変化をフラッグの端の大きく、より明らかな変化に移すために使用される。プラットフォーム106にある円錐形の開口部104は、レバーの参照位置の端がプラットフォームの高さより上まで持ち上がることを妨げる。
図3F~
図3Gは、レバーを示すアライナの断面図をさらに詳細に示す。
【
図4】
図4は、バイオプリンティングがオルガノイド内の組織学的または形態学的変化を含まないことを示す組織像を示す。H&E染色は、播種方法に関係なく経時的に多細胞オルガノイドの発達を示す。多細胞オルガノイドの普及およびサイズは、培養時間に応じて大きくなる。Ki-67/カスパーゼ-3染色は、ほとんどの細胞が培養時間全体を通じて増殖状態にあることを示す。アポトーシス細胞が72時間培養されたオルガノイドで観察された一方で、大部分の細胞は、強力なKi-67陽性を示す。すべての画像は、40×の倍率であり、挿入図は80×の倍率である。Ki-67は褐色に染色され、カスパーゼ-3はピンク色に染色される。
【
図5】
図5は、バイオプリンティングがオルガノイドトランスクリプトームを変更しないことを示すデータを示す。(A)検出された転写物の総数の分布(上)および存在量の中央値に基づいて十分位数の群に整理された100万あたりの転写物(TPM)として測定された転写物の存在量(下)。(B)3つの異なる時点(t=1時間、24時間、および72時間)での手動で播種されたオルガノイドおよびバイオプリントされたオルガノイドのRNA存在量(log2 TPM)。スピアマンのρを、各集団について評価した。両細胞株について、印刷されたオルガノイドおよび手動で播種されたオルガノイド由来のRNA存在量間に強い相関があることが分かった。(C)手動で播種された腫瘍オルガノイドと印刷された腫瘍オルガノイドとの間の転写物のRNA存在量を比較する未調整p値(左)および偽発見率(FDR)調整済みp値(右)を用いるMCF7およびBT474オルガノイドについてのマン-ホイットニーのU検定結果のボルケーノプロット。RNA転写物の倍率変化を評価し、log2変換した。いずれの細胞株のオルガノイドについても、播種方法に基づいて優先的に発現される転写物はなかった(27,077の遺伝子のうちn=0、q値<0.1、マン-ホイットニーのU検定)。(D)エクソンスキッピングアイソフォームのパーセントスプライスイン(PSI)の中央値は、MCF7(左)およびBT474(右)由来のオルガノイド間で同様に分布していた。アイソフォームの分布は、手動で播種された(青)腫瘍オルガノイドとバイオプリントされた(赤)腫瘍オルガノイドとの間で一致している。PSIの1は、アイソフォームが独占的にエクソン包含アイソフォームであることを示唆し、一方で、PSIの0は、アイソフォームが独占的にエクソンスキッピングアイソフォームであることを示唆する。
【
図6】
図6は、高速生細胞干渉法のためのバイオプリンティングに基づくプロトコルについての概要を示す。押出成形に基づくバイオプリンティングを使用して、単層のマトリゲル構造物を96ウェルプレートに堆積させる。オルガノイドの増殖は、明視野撮像を通じてモニターすることができる。処置後、位相イメージングのためにウェルプレートを高速生細胞干渉計に移す。コヒーレント光は、バイオプリントされた構造物を照射し、位相画像を取得する。オルガノイドは、干渉計を使用して3日間追跡され、オルガノイド質量における変化を測定して処置に対する応答を観察する。
【
図7】
図7は、10μMスタウロスポリン、10μMラパチニブ、および50μMラパチニブで処置されたオルガノイドの代表的な画像を示す。10μMラパチニブで処置された場合に質量を獲得するBT-474オルガノイドに白色矢印で注釈をつける。
【
図8】
図8A~
図8Bは、処置による追跡したMCF-7オルガノイドの質量、
図8A、およびBT-474オルガノイドの質量、
図8Bを示す。左の棒および薄色の点は、処置6時間後のオルガノイド質量を表し、右の棒および濃色の点は、処置48時間後のオルガノイド質量を表す。
【
図9】
図9は、経時的に正規化したオルガノイド通過の散布図を示す。各処置条件についての全オルガノイド追跡を各プロットに対して示す。正規化した質量の平均値±標準偏差も、オレンジ色(MCF-7)および青色(BT-474)で示す。
【
図10】
図10A~
図10Dは、10μMスタウロスポリンおよびビヒクル、ならびに50μMラパチニブおよびビヒクルで処置されたオルガノイド間の時間あたりの増殖率比較(パーセント質量変化)を示す。
図10Aは、10μMスタウロスポリンおよびビヒクルで処置されたMCF-7細胞であり;
図10Bは、50μMラパチニブおよびビヒクルで処置されたMCF-7細胞であり;
図10Cは、10μMスタウロスポリンおよびビヒクルで処置されたBT-474細胞であり;
図10Dは、50μMラパチニブおよびビヒクルで処置されたBT-474細胞である。
【
図11】
図11A~
図11Bは、ATP放出アッセイにより決定された、処置済みのウェル内のMCF-7細胞のパーセント細胞生存率、
図11A、およびBT-474細胞のパーセント細胞生存率、
図11Bを示し、
図11A~
図11Bそれぞれにおいて、p<0.05は、*により示され、p<0.01は、**により示され、p<0.001は、***により示される。
【
図12】
図12は、HER2についての3D培養物の免疫組織化学染色を示す。BT-474細胞は、増幅されたHER2発現を有するが、MCF-7細胞は、HER2の発現が低レベルであり、HER2増幅がない。
【
図13】
図13は、BT-474およびMCF-7オルガノイドにおけるエストロゲン受容体発現を示す。ERについての3D培養物の免疫組織化学染色。BT-474およびMCF-7細胞株は両方とも、ER陽性である。
【
図14】
図14A~
図14Bは、RNA融合および編集部位を示す。
図14Aは、腫瘍オルガノイド播種方法によるFusionCatcherにより検出されたRNA融合の数を示す。RNA融合の数は、手動で播種されたオルガノイドとバイオプリントされたオルガノイドとの間で大きくは異なっていなかった(pBT-474=0.179、pMCF-7=0.179)。
図14Bは、REDItoolsにより検出されたアデノシンからイノシンへの(A-to-I)RNA編集部位の数が、腫瘍オルガノイド発達法と関係していなかったこと(p=0.48、マン-ホイットニーのU検定)を示す。細胞株により、A-to-I RNA編集部位の数は、印刷されたオルガノイドと手動で播種されたオルガノイドとの間に差異がなかった(pBT-474=0.1、pMCF-7=0.7)。
【
図15】
図15A~
図15Bは、MCF-7細胞について、
図15A、およびBT-474細胞について、
図15B、初期オルガノイド質量が比オルガノイド増殖率と相関する散布図および線形回帰を示す。比増殖率(全質量のパーセンテージとして質量の増加)対初期オルガノイド質量を、追跡したすべてのオルガノイドについてプロットした。線形回帰分析は、MCF-7オルガノイドでは初期オルガノイド質量と比増殖率との間に有意な陽性関係を示した(傾きの95%信頼区間は、0.1040~0.2993である)、
図15A、しかし、BT-474オルガノイドでは示さなかった(傾きの95%CIは、-0.041~0.2363)、
図15B。
【
図16】
図16A~
図16Bは、スタウロスポリンで処置されたオルガノイドについて、
図16A、およびラパチニブで処置されたオルガノイドについて、
図16B、オルガノイド質量変化の円グラフの分類を示す。円グラフは、12時間後、24時間後、および48時間後の質量を獲得した(>10%の質量増加)、安定なまま(<10%の質量変化)、または質量を喪失した(>10%の質量低下)オルガノイドの割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一態様において、本開示は、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養プレートの組織培養ウェルに分配するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせの存在下で成形オルガノイド押出成形物をアッセイ細胞の集団と組織培養ウェル内で同時培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の機能が低下するか、アッセイ細胞の機能が向上することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法を提供する。一実施形態において、腫瘍細胞の機能は、腫瘍細胞の増殖または腫瘍細胞の生存率、または両方を含む。一実施形態において、「アッセイ細胞」は、免疫細胞または肝臓細胞を含む可能性がある。一実施形態において、アッセイ細胞の機能は、サイトカイン産生または免疫細胞増殖、または両方を含む。いくらかの実施形態において、アッセイ細胞は、組織培養ウェルに含まれない。いくらかの実施形態において、アッセイ細胞は、懸濁液に含まれない。いくらかの実施形態において、アッセイ細胞は、成形オルガノイド押出成形物に含まれない。任意の実施形態において、アッセイ細胞は、免疫細胞または肝臓細胞、すなわち肝細胞である可能性がある。
【0033】
一実施形態において、組織培養プレートは、384ウェルプレート、96ウェルプレート、24ウェルプレート、12ウェルプレートまたは6ウェルプレートである。一実施形態において、組織培養ウェルは、腫瘍細胞を含む1つまたは複数の成形オルガノイド押出成形物を含み、各成形オルガノイド押出成形物は、組織培養ウェルの底部に堆積されている。本開示の目的のため、「成形オルガノイド押出成形物」は、シート、リング、または多角形を含むが限定されない二次元形状配置を含む可能性がある。成形オルガノイド押出成形物は、多角形、環状、卵形、楕円形、環状体、レムニスケート、X型、C型などであり得、任意の特定の二次元形状に限定されない(文脈がそれ以外を指示する場合があることを除く)。いずれのタイプの腫瘍または癌も、組織培養ウェルの底部に堆積することができる。腫瘍または癌の例には、限定されないが、カルシノーマ、肉腫、リンパ腫、白血病、胚細胞腫瘍、芽細胞腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、骨肉腫(osteosarcoma)、横紋筋肉腫、心臓癌、脳癌、星状細胞腫、神経膠腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、乳癌、髄様癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、メルケル細胞癌、眼癌、胃腸癌、結腸癌、胆嚢癌、胃癌(gastric cancer)(胃癌(stomach cancer))、消化管カルチノイド腫瘍、肝細胞癌、膵癌、直腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、腎細胞癌、前立腺癌、精巣癌、尿道癌、子宮肉腫、膣癌、頭部癌、頸部癌、上咽頭癌、造血器癌(hematopoietic cancer)、非ホジキンリンパ腫、皮膚癌、基底細胞癌、メラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、またはそれらのいずれかの組み合わせが含まれる。1つより多くの成形オルガノイド押出成形物は、組織培養ウェルの底部に堆積される可能性がある。例えば、2つのオルガノイドは、同じウェル内で互いに隣り合わせに配置される可能性がある。同心の角形のオルガノイド押出成形物は、一方が他方に入れ子になって堆積される可能性がある。
【0034】
一実施形態において、組織培養ウェルの底部に堆積した成形オルガノイド押出成形物はヒドロゲルを含む。例えば、成形オルガノイド押出成形物は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチンまたは限定されないがマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、手動で、または本明細書に開示されるように自動化されたバイオプリンティングにより独立して実行される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、約0℃から約37℃の温度で実行される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、約37℃の温度で実行される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、直径が約0.1mmから約1mmの開口部または針を通って実行される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、直径が約0.26mmの開口部または針を通って実行される。一実施形態において、組織培養ウェルは、細胞の分配中、約0℃から約37℃の温度で維持される。一実施形態において、組織培養ウェルは、細胞の分配中、約37℃の温度で維持される。一実施形態において、温度は、約2℃から約37℃である。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングにより、約1kPaから約150kPaの押出圧力で実行される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングにより、約10kPaから約15kPaの押出圧力で実行される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングにより、約15kPaの押出圧力で実行される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の分配は、自動化されたバイオプリンティングにより、約1mm/秒から約200mm/秒のプリントヘッド速度で実行される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約50個から約5,000個の細胞を含む。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約500個から約1,400個の細胞を含む。一実施形態において、組織培養ウェルは、1つまたは複数の96ウェルプレート内にあり、成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約50個から約500個の細胞を含む。別の実施形態において、組織培養ウェルは、1つまたは複数の24ウェルプレート内にあり、成形オルガノイド押出成形物は、1マイクロリットルあたり約500個から約5,000個の細胞を含む。
【0035】
一実施形態において、上記方法で使用されるアッセイ細胞は、腫瘍を有する患者から取得される。別の実施形態において、アッセイ細胞は、いずれかの臓器の正常細胞である。別の実施形態において、アッセイ細胞は、循環免疫細胞または腫瘍浸潤性免疫細胞である可能性がある免疫細胞である。一実施形態において、免疫細胞は、懸濁液に播種される。別の実施形態において、アッセイ細胞は、腫瘍オルガノイドと同じヒドロゲルマトリックスに点在して播種される。別の実施形態において、アッセイ細胞は、別のバイオプリントされた同心ヒドロゲルリングに播種される。
【0036】
一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物および場合によってはアッセイ細胞は、組織培養ウェル内の組織培養培地に浸漬される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物およびアッセイ細胞は、組織培養ウェルの中央領域から離れて維持される。一実施形態において、アッセイ細胞はヒドロゲルを含む。一実施形態において、ヒドロゲルは、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、限定されないがマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。自動化または手動の印刷のためのそのようなヒドロゲルおよび他の材料または組み合わせは、バイオインクとも呼ばれる。
【0037】
一実施形態において、上記方法でスクリーニングされた治療薬は、1つまたは複数の化学療法剤もしくは標的剤または1つもしくは複数の免疫療法剤またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0038】
別の実施形態において、本開示は、(i)患者の腫瘍由来の腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養プレートの組織培養ウェルに分配するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせの存在下で成形オルガノイド押出成形物をアッセイ細胞の集団と組織培養ウェル内で同時培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の機能が低下するか、アッセイ細胞の機能が向上することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに(iv)治療薬またはその組み合わせを用いて患者を処置するステップを含む、腫瘍を有する患者を処置するための方法を提供する。一実施形態において、腫瘍細胞の機能は、腫瘍細胞の増殖または腫瘍細胞の移動性、または両方を含む。任意の実施形態において、アッセイ細胞は、免疫細胞または肝臓細胞である可能性がある。一実施形態において、免疫細胞の機能は、サイトカイン産生または免疫細胞の増殖、または両方を含む。いくらかの実施形態において、アッセイ細胞は含まれない。任意の実施形態において、腫瘍細胞の機能の低下は、細胞運動性、細胞移動性、細胞増殖、または細胞生存率の低下を指す可能性がある。任意の実施形態において、腫瘍細胞の機能の低下は、腫瘍細胞死を指す可能性がある。
【0039】
別の実施形態において、本開示は、(i)被験者から組織試料を取得して、組織試料の単一細胞またはクラスターの懸濁液を調製するステップ;(ii)単一細胞懸濁液、凝集体またはクラスターをゲル前駆体溶液と混合し、それによって、細胞およびマトリックスを含む細胞複合体を形成するステップ;(iii)細胞複合体を、自動装置の1つまたは複数のディスペンサにより1つまたは複数の組織培養ウェルに分配するステップであって、ディスペンサが、組織培養ウェルの基部の周囲で細胞複合体をリングまたは他の幾何学的形状として堆積させるように較正されているステップを含む、成形オルガノイド押出成形物をバイオプリンティングするための自動化法を提供する。一実施形態において、細胞複合体の分配は、約0℃から約37℃の温度で実行される。一実施形態において、細胞複合体の分配は、約37℃の温度で実行される。一実施形態において、細胞複合体の分配は、直径が約0.1mmから約1mmの開口部を通って実行される。一実施形態において、細胞複合体の分配は、直径が約0.26mmの開口部を通って実行される。一実施形態において、分配の前に、細胞複合体は、約0℃から約37℃の温度で維持されたリザーバ内に保持される。一実施形態において、分配の前に、細胞複合体は、約37℃の温度で維持されたリザーバ内に保持される。一実施形態において、組織培養ウェルは、分配中、約0℃から約37℃の温度で維持される。一実施形態において、組織培養ウェルは、分配中、約37℃の温度で維持される。一実施形態において、細胞複合体の分配は、約1kPaから約150kPaの押出圧力で実行される。一実施形態において、細胞複合体の分配は、約12kPaから約15kPaの押出圧力で実行される。一実施形態において、細胞複合体の分配は、約15kPaの押出圧力で実行される。一実施形態において、細胞複合体の分配は、約1mm/秒から約200mm/秒のプリントヘッド速度で実行される。一実施形態において、細胞複合体は、1マイクロリットルあたり約50個から約5,000個の細胞を含む。一実施形態において、細胞複合体は、1マイクロリットルあたり約500個から約1,400個の細胞を含む。一実施形態において、組織培養ウェルは、1つまたは複数の96ウェルプレート内にあり、細胞複合体は、1マイクロリットルあたり約50個から約500個の細胞を含む。別の実施形態において、組織培養ウェルは、1つまたは複数の24ウェルプレート内にあり、細胞複合体は、1マイクロリットルあたり約500個から約5000個の細胞を含む。
【0040】
いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物は、ウェルの底部の周囲に印刷される。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物は、ウェルの内径よりも小さい。例えば、直径が3.3mmのリングは、直径が6.35mmのウェルの底部で印刷される可能性がある。いくらかの実施形態において、直径が0.4~1.0mmの開口部または針を使用して、おおよそ0.4~1.0mmの幅のリングを印刷する。特定の直径の成形オルガノイド押出成形物は、内径および外径の平均を表す。一実施形態において、96ウェルプレートで1ウェルあたり細胞懸濁液の10マイクロリットルの体積が押出成形される。別の実施形態において、24ウェルプレートで1ウェルあたり細胞懸濁液の70マイクロリットルの体積が押出成形される。一実施形態において、細胞複合体のマトリックスは、ヒドロゲルであり、例えばゲル前駆体溶液は、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。一実施形態において、ゲル前駆体溶液は、MammoCult(商標)無血清培地およびマトリゲル(登録商標)またはCultrex(登録商標)BMEのいずれかを3:4の比で含む。
【0041】
上記自動化されたバイオプリンティング法の一実施形態において、組織試料は腫瘍試料である。腫瘍のタイプの例は、上述している。一実施形態において、腫瘍細胞の単一細胞懸濁液、凝集体またはクラスターは、例えば生検または外科手術により取得された腫瘍試料の酵素消化により取得される。一実施形態において、単一細胞懸濁液、細胞凝集体または細胞クラスターは、40マイクロメートルセルストレーナーに通して濾過される。
【0042】
上記自動化されたバイオプリンティング法の一実施形態において、ディスペンサ(例えば開口部または針)は、ディスペンサを所望の位置に配置して細胞複合体を分配し、成形オルガノイド押出成形物を形成するように、プレート上の1つの組織培養ウェルに挿入されたアライメントガイド201で較正されている。Z高さのフィードバックを有する針のアラインメント位置を提供する2つの参照ウェルに取り付けられる、アラインメントガイドの別のバージョンを
図3E~
図3Gに示す。レバー105は、デザインに組み込まれ、適切なアラインメントの明らかなインジケータを提供する。針が開口部101を通過し(適切なXおよびYのアラインメントを確実にする)、レバー102の参照位置の端に押し付けられる場合、フラッグの端103は、適切なZアラインメントの視覚的インジケータとして表面にある開口部を通って持ち上がる。レバーは、参照位置の端のZ高さにおける小さい変化をフラッグの端の大きく、より明らかな変化に移すために使用される。プラットフォーム106にある円錐形の開口部104は、レバーの参照位置の端がプラットフォームの高さより上まで持ち上がることを妨げる。
図3F~
図3Gは、レバーを示すアライナの断面図をさらに詳細に示す。アライナデバイスおよび使用は、本開示の一態様である。
【0043】
本明細書で使用されるように、成形オルガノイド押出成形物という用語またはオルガノイドリングという用語は、細胞がその中でオルガノイドを形成する前に、マトリックスおよび細胞を含む印刷されたリングまたは任意の他の多角形を指すために使用される可能性がある。一実施形態において、変動性、生存率、生物学的特性または細胞懸濁液の完全性が評価される。変動性は、生細胞数を定量する多種多様のアッセイ、例えば代謝アッセイ、live/dead染色用アッセイ、または画像解析を通じて実行されるオルガノイド計数/面積算出を使用して評価される可能性がある。生存率は、代謝アッセイを使用して同様に評価することができる;そのような一例において、一実施形態では、いくつかの(例えば4つの)リングは、手作業によりプレーティングされ、生存率のベンチマークとして使用される。発光ベースのアッセイを使用すると、パーセント生存率は、バイオプリントされたリングがあるウェルからの発光シグナルを手動で播種された対照の発光シグナルで割ることにより算出される。生物学的特性は、トランスクリプトーム解析、ゲノム解析またはメタボロミクス解析により特徴づけられる可能性がある。リングの完全性は、高含有量明視野撮像を使用して定量的に評価される可能性があり、クラック、材料の変形またはセグメントの欠落に関する観察を行うことができ、機械学習アプローチにより定量される。一実施形態において、組織培養ウェルに分配された細胞の数の変動計数は、5~25%以内である。一実施形態において、分配された細胞の変動は、5~20%以内である。一実施形態において、分配された細胞の変動は、5~15%以内である。一実施形態において、分配された細胞の変動は、5~10%以内である。一実施形態において、分配された細胞の変動は、5%未満である。別の実施形態において、組織培養ウェルに分配された細胞は、元の細胞懸濁液における生存率に対して少なくとも80%の生存率を有する。別の実施形態において、組織培養ウェルに分配された細胞は、元の細胞懸濁液における生存率に対して少なくとも85%の生存率を有する。別の実施形態において、組織培養ウェルに分配された細胞は、元の細胞懸濁液における生存率に対して少なくとも90%の生存率を有する。別の実施形態において、組織培養ウェルに分配された細胞は、元の細胞懸濁液における生存率に対して少なくとも95%の生存率を有する。
【0044】
一実施形態において、複数のヒドロゲル構造物は、単一のウェル内に堆積することができる。これらの構造物は、サイズ、形状、材料組成、および細胞含有物において変更することができる。追加の構造物は、独立したプリントヘッドまたは単一のプリントヘッドにより堆積させる可能性がある。すべての後続の分析は、複数パーツの構造物についても同一であるままである。一実施形態において、組織培養ウェルに分配された細胞の数の変動係数は、5~25%以内である。別の実施形態において、組織培養ウェルに分配された細胞は、元の細胞懸濁液に対して少なくとも80%の生存率を有する。
【0045】
上記自動印刷法のいくらかの実施形態において、組織培養プレートのウェルの底部に堆積された成形オルガノイド押出成形物の形状は、閉鎖多角形である。上記自動印刷法のいくらかの実施形態において、組織培養プレートのウェルの底部に堆積された成形オルガノイド押出成形物の形状は、開放多角形または非多角形である。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物の形状は、長円である。本明細書で使用されるように、「成形オルガノイド押出成形物」は、組織培養ウェルの底部の境界内に取り付けられる任意の閉鎖多角形または非多角形二次元形状を含む。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物は、円形、楕円形、角形、長方形、または別の閉鎖多角形もしくは非多角形二次元形状で印刷される可能性がある。成形オルガノイド押出成形物の形状は、限定されない。いくらかの実施形態において、組織培養プレートのウェルの底部に堆積された成形オルガノイド押出成形物の形状は、プレートの異なるウェルの間で変化する。いくらかの実施形態において、組織培養プレートのウェルの底部に堆積された成形オルガノイド押出成形の体積は、プレートの異なるウェルの間で変化する。いくらかの実施形態において、組織培養プレートのいくらかのウェルは、成形オルガノイド押出成形物を含まない。
【0046】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の参照を含める。
【0047】
この出願全体を通じて、本開示の種々の実施形態は、範囲形式で提示される可能性がある。範囲形式での説明が、単に便宜上、簡略化したものであり、本明細書に開示された範囲を柔軟に限定するものと解釈すべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記述は、その範囲内にある個々の数値と同様にすべての可能な部分範囲を具体的に開示しているとみなすべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲およびその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示しているとみなすべきである。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0048】
本明細書に数値範囲が表示される場合はいつでも、表示された範囲内で任意の引用された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の表示数字と第2の表示数字との「範囲内/間の範囲」、および第1の表示数字から第2の表示数字「までの」「範囲内/間の範囲」という成句は、本明細書において交換可能に使用され、第1および第2の表示数字およびその間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0049】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術および/または科学用語は、本開示が関係する当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料は、実施形態の実行またはテストに使用することができるが、代表的な方法および/または材料は、以下に説明される。競合する場合、特許明細書は、定義を含めて支配する。さらに、材料、方法、および実施例は、例証のみであり、必ずしも限定することを意図していない。本明細書で言及される各文献参照または他の引用は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0050】
本明細書に提示された説明において、各ステップおよびそのバリエーションが説明される。この説明は、限定することを意図しておらず、構成要素、ステップの順序、および他のバリエーションの変化は、本開示の範囲内であると理解されるであろう。
【0051】
明確にするために、別個の実施形態の状況で説明されている、ある特定の特徴がまた、単一の実施形態で組み合わせて提供される可能性があることが認識される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の状況で説明されている種々の特徴はまた、別個にまたはいずれかの適切な部分的組み合わせで、またはいずれかの他の説明された実施形態で適切に提供される可能性がある。種々の実施形態の状況で説明された、ある特定の特徴は、実施形態が、これらの要素なしで実施されない限り、これらの実施形態の本質的な特徴とみなされない。
【0052】
本明細書の前記で確定されたような、そして以下の特許請求の範囲のセクションで主張されるような本開示の種々の実施形態および態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【0053】
本明細書で特定の機能を例証し、説明しているが、多くの修飾、置換、変更、および等価物は、ここで、当業者であれば思いつくであろう。そのため、添付の特許請求の範囲が、本開示の真の精神に収まるような、すべてのそのような修飾および変更をカバーすることを意図していることが理解される。
【0054】
実施例1
ハイスループット薬物スクリーニングおよび治療選択のためのオルガノイドのバイオプリンティング
現在、患者由来オルガノイドに対する治療をスクリーニングするためのプロトコルは、ウェルの周囲への細胞搭載ゲルの手動の堆積に依存する。この手順は手間がかかり、洗練された技術を必要とし、したがって、テストすることができる患者の数および各患者についてスクリーニングされる薬剤の数の両方を大きく制限する。さらに、後続のオルガノイドの撮像および分析は、対象の焦点面に一貫性がないこと、およびウェル形状により生成されたメニスカス効果により複雑である。
【0055】
上記課題を克服するため、本実施例は、効率および一貫性を改善し、またデータ収集および分析をより容易に、より強固にするためにバイオプリンティングを利用する自動化されたオルガノイド播種プロセスを説明する。
【0056】
バイオプリンティングを使用して、一貫した強固なヒドロゲル構造物を生成する。一実施形態において、バイオプリンティングアプローチは、腫瘍オルガノイドをインビトロで生成するそれらの能力について選択された肉腫細胞株を使用することにより最適化することができる。細胞は、96ウェルプレートにCELLINK BioXを使用して直接印刷することができる。バイオプリントされたミニリングの性能は、前述したように手動でピペットによりプレーティングされたミニリングと比較することができる。リングは、3つの主要な基準:変動性、完全性、および細胞生存率に基づいて評価することができる。サイズ、形状、および細胞数における変動は、試料間で最小化される必要がある。さらに、印刷されたゲル構造物は、プレートの取り扱いおよび自動化された流体交換に伴う撹拌およびせん断に耐える必要がある。一実施形態において、3:4の比でMammoCult(商標)無血清培地およびマトリゲル(登録商標)またはCultrex(登録商標)BMEのいずれかからなるマトリックスを使用することができる。しかし、これらの材料は、印刷中に特有の課題を引き出す温度依存性粘度を有している。それらをテストして、プリントヘッドおよび堆積表面温度を制御することにより最適化することができる。室内での周囲温度を制御し、正確な環境温度制御のために冷蔵ロッカー/シェーカーを使用することによりこれらの課題に対処する。さらに、他の市販のマトリックス(例えばCELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111、GelXA CELLINK LAMININK+、バイオインク)および単なるゲル形成溶液(例えばゼラチン、コラーゲン、ラミニン)もまた使用することができる。各材料について、得られる細胞生存率および増殖は、カルセインAMおよびヨウ化プロピジウム染色およびATPアッセイを用いてそれぞれ分析することができる。一貫した安定ゲルで生存可能なオルガノイドを得る条件は、患者由来細胞を用いて検証することができる。
【0057】
一実施形態において、最適化されたバイオプリンティングプロトコルは、異なる患者の試料に由来するオルガノイドに対してテストすることができる。上で概説した基準に加えて、患者の試料のための印刷プロトコルはまた、腫瘍の固有の表現型を保全する必要がある。これにより、パラフィン埋め込み試料の免疫組織化学(IHC)ならびにヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色により評価して、細胞形態および表現型マーカーを定量的に特徴づけることができる。RNA配列決定(RNAseq)はまた、遺伝子発現を観察するために実行することができる。細胞の挙動がバイオプリンティングにより変更されないことを保証するために、オルガノイドの組織および遺伝子発現プロファイルを元の試料に対して比較することができる。
【0058】
バイオプリンティングにより作成された腫瘍オルガノイドは、患者用の薬物スクリーニングプロセスに実装することができる。これらの患者は、既存の方法を使用する同時スクリーニングも比較のために実行することができるため、利用可能な量の組織に基づいて選択することができる。一実施形態において、バイオプリンティングプロセスは、96ウェルプレート内の最適化されたヒドロゲルマトリックス内に埋め込まれた5000個の細胞/ウェルを印刷することを含む。オルガノイドは、72時間インキュベートされ、24時間ごとに明視野画像を撮影することができる。インキュベーション期間の後、ウェル内の液体を取り除き、対象の薬物を含む新しい培地で置き換える。すべての薬物は、最低4連で、例えば0.1μM、1μM、および10μMの濃度でテストすることができる。処置は、連続した日数をかけて2回繰り返される。一実施形態において、標準の化学療法剤および標的治療薬(例えば、キナーゼ、PARP、プロテアソーム、およびHDAC阻害剤)を含む、ほぼ500個の化合物を含む薬物アレイを使用することができる。処置後、各試料に対するATPアッセイ(CellTiter-Glo 3D、プロメガ)は、感受性を測定するために実行される。感受性は、各ウェル内のオルガノイドの生存率を比較することにより算出される。生存率は、所与のウェル内の生細胞の数を未処置の陰性対照ウェルに対して比較することにより決定される。ATPアッセイは、生細胞の数に直接比例する定量可能な蛍光を生じることにより、生細胞の数を見積もるための代替である。同等性を確実にするために、現在の手動のバイオプリンティングプロトコルにより生成したものに対してバイオプリントされたオルガノイドの感受性を比較することができる。
【0059】
一実施形態において、バイオプリンティング条件はまた、患者由来細胞を使用して最適化することができる。材料および印刷パラメータは変更される可能性がある。例えば、ATPアッセイは、生存率についての代替であり、代謝経路に影響する薬物に偏っている。したがって、一定期間にわたる分析を含む、形態学的分析を使用して薬物の影響を定量するために、標識がない画像に基づくアプローチを開発することができる。同様の方法は、単一細胞およびオルガノイドの特徴について開発されている。バイナリマスキングおよび形態学的特徴づけに基づく標準画像分析は、MATLABまたはPythonを使用して実行することができ、面積、円形度、および光学密度などのパラメータを生存率と相関させ、重要なメトリクスを同定することができる。ニューラルネットワークは、明視野画像および抽出された機能特性に対してモデルを訓練することによりオルガノイドの生存率を予測するために訓練することができる。これは、治療に対する感受性(処置後の生存率)で標識された肉腫オルガノイド画像の既存のデータベースを活用する。この分析ツールの全体的な目標は、オルガノイドに対する薬物の影響を評価するために破壊的な化学的アッセイを実行する必要性を排除することである。
【0060】
したがって、場合によっては免疫療法剤またはその組み合わせを含む、腫瘍細胞の機能の活性、および/またはアッセイ細胞の活性もしくは機能に対する治療薬またはその組み合わせの効果の分析の結果は、腫瘍細胞を取得した患者を処置するための潜在的な治療効果のある治療計画を同定するために使用される。いくらかの実施形態において、本明細書に記載の方法を使用して腫瘍の活性または機能を低下させるのに有効であると同定された化学療法剤または組み合わせを患者に投与する。いくらかの実施形態において、本明細書に記載の方法によりアッセイ細胞の機能の活性を向上させるのに有効であると同定され、また腫瘍細胞の活性または機能を低下させる効果を有している可能性がある免疫療法剤または組み合わせを患者に投与する。いくらかの実施形態において、本明細書に記載の方法を使用して腫瘍活性または機能を低下させるのに有効であると同定された化学療法剤または組み合わせを患者に投与する。いくらかの実施形態において、患者に化学療法剤またはその組み合わせ、および免疫療法剤またはその組み合わせを投与し、化学療法剤および免疫療法剤の組み合わせは、本明細書に記載の方法によりアッセイ細胞の機能の活性を向上させるのに有効であり、腫瘍細胞の活性もしくは機能、または両方を低下させるのに有効であると同定されている。
【0061】
一般的手順
一実施形態において、バイオプリンティングプロセスは、細かく刻まれ、コラゲナーゼIVで処置されると単一細胞懸濁液、凝集体またはクラスターに解離される、患者由来組織試料を回収することで開始される。細胞懸濁液は、その後、40μmセルストレーナーに通して濾過される。細胞懸濁液をゲル前駆体溶液に混合し、リング(または他の)形状で個々のウェルの底部の周囲に、バイオプリンタを使用して自動的に堆積させる。いくらかの実施形態において、リングは、ウェルの底部の周囲に堆積される。溶液が温かい環境でゲル化すると、培地を添加する。48~72時間後、スクリーニングのために対象の薬物を含む培地で培地を交換する。実験の最後まで、各ウェルの画像を24時間ごとに撮影する。生存率は、化学的アッセイを使用して追跡され、画像解析で補足される。すべての培地交換は、自動流体ハンドラにより管理され、イメージングもまた、自動イメージングシステムにより管理することができる。
【0062】
したがって、本明細書のさらなる実施例で説明されるように、患者の腫瘍試料は、患者にとって最適な治療計画を同定するために多数の治療薬および化学療法剤に対する感受性について評価することができる。また、本明細書に記載されるように、成形オルガノイド押出成形物または培地内に、患者の腫瘍に対してテストされた治療薬の活性を調整する可能性がある(非腫瘍)アッセイ細胞、例えば肝臓細胞または免疫細胞の試料が包含され、潜在的に有効な治療計画の改善された選択は、その特定の患者の腫瘍について、または他の患者用その治療計画について同定される可能性がある。
【0063】
印刷プロセスの各ステップ、およびその調製についてのガイダンスは、以下に提供され、ガイダンスは、単に例示であり、非限定的であり、所望の結果を達成するために、本明細書の開示による教示として修正される可能性がある。
【0064】
プリンタ調製
(1)プリンタの電源をつける。
(2)ベッド、プリントヘッド、およびインキュベータの温度を所望の温度に設定する。
(3)予め指定された印刷プロトコル(例えばSTLまたはGcodeファイル)を機械にロードする。
(4)バイオインクゲルおよび培地の所望の複合体内で細胞懸濁液を調製する。
(5)細胞がロードされたバイオインクを印刷温度で30分間撹拌して均質な細胞分散体および温度平衡を確実にする。
(6)細胞がロードされたバイオインクをプリンタ固有のバイオインクリザーバにロードする。
(7)使用するまで余分なバイオインクリザーバを印刷温度で撹拌する。
(8)バイオインクリザーバをプリンタに挿入する。所望の印刷ノズルまたは針をプリンタに取り付ける。
(9)ノズルまたは針を準備して、バイオインクが充填され、材料を堆積させる準備ができていることを保証する。
(10)プリンタ用のキャリブレーションウェルの中央および底部に対してX、Y、およびZ位置を較正する。より詳細については、以下のプリンタアラインメントプロトコルを参照する。以下に記載のプロトコルは、ウェルH1に対して較正する;しかし、これは任意の選択である。
(11)機械が較正されると、印刷プロトコルを実行する。
(12)機械が印刷を終了した後、下流の分析のためにプレートを回収する。
【0065】
プリントヘッドアラインメント
一実施形態において、プリンタの絶対座標をセットして、参照ウェルの中央を(0,0,0)(X,Y,Z)と認識させる。一実施形態において、アラインメントプロセスは、以下のように実行することができる:
(1)印刷表面上にウェルプレートを置く;
(2)3D印刷されたアラインメントガイド(
図3A~
図3D)をウェルH1に挿入する;
(3)XおよびYをH1内でアラインメントガイドの中央に整列させる;
(4)針の先端がプレートのプラスチックと接触するまで、ウェルの表面に徐々に近づけることによりプリンタ針を適切なZ高さに移動させる;
(5)これらの座標を(0,0,0)として保存する。
(6)必要に応じて、複数のプリントヘッドについて、ステップ3~5を繰り返す。
【0066】
プリンタの必要要件
バイオインクリザーバ全体の温度管理:0~37℃;
基板全体の温度管理:0~37℃;
水平(XY)精度:50μm;
垂直(Z)精度:50μm;
プリンタ速度:0~100mm/秒;
バイオインク開口部直径(針サイズ):0.4~1mm。
【0067】
【0068】
前記の表は、ヒドロゲルのいくらかの例について本明細書に開示されるように成形オルガノイド押出成形物をバイオプリンティングするためのパラメータの選択に対するガイダンスを提供する。選択による変動は、本明細書における教示とともにある。
【0069】
いくらかの実施形態において、マトリゲル(登録商標)およびBMEは、4℃~18℃、1~20kPaの圧力、17℃の印刷表面および10~20mm/秒のプリントヘッド速度で印刷される。
【0070】
一実施形態において、用語「ヒドロゲル」は、市販のもの(例えばCELLINKシリーズ、Allevi Liver dECM)および天然物(例えばコラーゲン、ゼラチン、アルギン酸)または合成生体適合性ポリマーまたはポロキサマー(例えばプルロニック、PEG、PPO)由来のラボ開発材料(例えばGelMA、ColMA)の両方を包含する。これらの材料は、本明細書ではバイオインクと呼ばれる。いくらかの実施形態において、ヒドロゲルは、基底膜抽出物を含む。
【0071】
一実施形態において、マトリゲル(登録商標)系バイオインクは、マトリゲル(登録商標)および細胞培養培地の複合体である。種々のゲルマトリックス(例えばマトリゲル(登録商標)、BMEなど)を細胞培養培地(例えばMammoCult(商標)、RPMI、DMEM)と混合する際、いくつかの比率を使用することができる。例えば、培地3部をマトリゲル(登録商標)4部に使用する。他の実施形態において、培地のマトリゲル(登録商標)に対する比率は、1:2、1:1、2:1、または3:1であり得るか、純マトリゲル(登録商標)溶液を使用することができる。他の実施形態において、キサンタンガムまたはカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの増粘剤は、機械的特性を変更するために、約1%から約20%で含まれる可能性がある。
【0072】
細胞播種の必要要件
一実施形態において、96ウェルプレートで1ウェルあたり500~25,000個の細胞、または24ウェルプレートで1ウェルあたり10,000~200,000個の細胞の範囲で細胞が播種される。これは、50個の細胞/μlから5000個の細胞/μlの密度で播種されたバイオインク溶液に由来する。細胞密度は、さまざまな要因に依存する。細胞は、任意の種類の腫瘍細胞または正常細胞であり得る。
【0073】
形状の必要要件
印刷された形状は、単一または複数の層からなる任意の閉鎖または非閉鎖の多角形または非多角形であり得る。複数の形状は、非限定例として、同じウェル内に並んで、同心円状に、または重ねて印刷することができる。各形状/構造は、単数、複数の細胞型を含むことができるか、全く含まない可能性がある。形状は、所与のウェルプレートの内径を有する円により外接することができる必要があり、ウェルの中央領域、例えば中心から半径0.5mm以内を占有するべきではない。一実施形態において、直径が6.35mmの基部を有する培養ウェルを使用することができ、印刷針の外縁が6.35mmの円形境界内で、除外された中心半径の外に残る前提で、どのような印刷形状も使用することができる。一実施形態において、平均直径3.3mmで、幅1mmであるリングが印刷される。ウェルの中央に印刷されるので、印刷されたリングは、ウェルの壁のいずれとも接触しない。
【0074】
実施例2
ハイスループット薬物スクリーニング法
腫瘍オルガノイドは、それらが生成される癌の、異種性、細胞組織化、および薬物応答を含む、多くの重要な特徴を再現することができる。本実施例は、何百もの治療薬に対する患者由来腫瘍オルガノイドの応答をテストするために固有の形状を利用する強固な自動化ハイスループットスクリーニングプラットフォームを表す。スクリーニング結果は、外科手術から1週間以内に利用可能になり得、タイムラインは、治療の意思決定と一致する。
【0075】
本明細書の他の場所で言及された成形オルガノイド押出成形物は、本明細書全体に開示されるように、典型的には腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を指す他の関連記述の中で、本実施例においては、リング形状、ミニリング、マキシリング、ミニ角形、腫瘍オルガノイドを指す。
【0076】
一実施形態において、スクリーニングプロセスは、細かく刻まれ、コラゲナーゼIVなどの酵素で処置されると単一細胞懸濁液、凝集体またはクラスターに解離される、患者由来腫瘍組織試料を回収することで開始される。細胞懸濁液は、その後、セルストレーナー、例えば40μmセルストレーナーに通して濾過される。細胞懸濁液をゲル前駆体溶液と混合し、リング形状で個々の組織培養ウェルの底部の周囲に、ピペットを使用して手動で、または本明細書に記載のバイオプリンタを使用して自動的に堆積させる。溶液が温かい環境でゲル化すると、培養培地を添加する。所望の期間の後、例えば48時間後、スクリーニングのために対象の薬物を含む培地で培養培地を交換する。スクリーニングの最後まで、各ウェルの画像を所望の時間間隔、例えば24時間ごとに撮影する。一実施形態において、細胞生存率は、化学的アッセイを使用して追跡され、画像解析で補足することができる。すべての培地交換は、自動流体ハンドラにより管理することができ、イメージングもまた、自動イメージングシステムにより管理することができる。
【0077】
方法。
2D細胞培養。
MCF-7およびBT-474乳腺癌細胞株をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から取得した。すべての細胞株を、10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco 16140-071)および1%抗生物質-抗真菌剤(Gibco 15240-062)を添加したRPMI1640(Gibco 22400-089)中、最大10回の継代のために増殖させた。両方の細胞株は、GenePrint10キット(Laragen)を使用するショートタンデムリピートプロファイリングにより認証された。
【0078】
手動で播種された3Dオルガノイド。
オルガノイドは、出版されているプロトコルにしたがって手動で播種された。簡潔に言うと、MammoCult(商標)(StemCell Technologies 05620)およびマトリゲル(登録商標)(コーニング 354234)の3:4混合物に懸濁された単一細胞を、24ウェルまたは96ウェルプレートのいずれかのウェルの周囲に堆積させた。播種プロセスの間ずっと細胞懸濁液を氷上で維持し、マトリゲルのゲル化を防止した。オルガノイドを96ウェルプレート(コーニング 3603)に播種するため、ピペットを使用して細胞懸濁液(5×105個の細胞/mL)5μLを各ウェルの底部周縁部に沿って分配した;この「ミニリング」播種形状は、液体ハンドリングシステムを用いる培地の自動交換および薬物の添加を容易にした。8ウェルごとに、細胞懸濁液を短時間ボルテックスし、ピペットチップを交換した。すべてのミニリングが生成されると、プレートを37℃、5%CO2で20分間インキュベートし、マトリゲル(登録商標)を固化し、事前に温めたMammoCult(商標)100μLを各ウェルの中央に、epMotion 96液体ハンドラ(エッペンドルフ)を使用して添加した。より大きいリング(マキシリング)を24ウェルプレート(コーニング 3527)で生成するため、細胞懸濁液(1.4×106個の細胞/mL)70μLを各ウェルの周囲に堆積させた。3ウェルごとに細胞懸濁液をボルテックスした後、ピペットチップを交換した。播種に続いて、プレートを37℃、5%CO2で45分間インキュベートし、マトリゲル(登録商標)を固化し、事前に温めたMammoCult(商標)1mLを各ウェルの中央に添加した。
【0079】
3D印刷プラズママスク。
これらの実験で使用されたウェルプレートの仕様に合致させるため、カスタムウェルマスクを設計した。デザインは、Inventor2020(Autodesk)で生成し、Form3B(FormLabs)を使用して印刷した。その生体適合性およびオートクレーブ滅菌能力から、これらの構造物を生成するためにBiomedアンバーレジン(FormLabs)を使用することを選択した。デザインをSTLファイルとしてエクスポートし、PreForm(FormLabs)ソフトウェアにインポートして、パーツを配置した。印刷後、パーツを、イソプロパノールの2回の洗浄、少なくとも30分間の空気乾燥、およびForm Cure(FormLabs)内で70℃でのさらに30分間の養生で後処理した。
【0080】
バイオプリントされた3Dオルガノイド。
CELLINK BioXを使用して、温度制御プリントヘッドを用いて細胞をバイオプリントした。Gcodeファイルを記述して、所望の単層形状を印刷した。繰り返しの形状についての印刷パスをコードするGcodeの標準化ブロックを記述した。MATLAB(MathWorks社)を使用して、これらの標準化ブロックを、各ウェルについて定義された座標を有する完全Gcodeファイルに統合した。標準24ウェルプレート内のウェルの深さにより0.5インチ長の針の使用を不可能にするので、より大きい構造物を印刷する際には8ウェルプレートを使用した。大きいリングは、RNA-SeqおよびIHCのために十分な数の細胞を堆積させるために必要であった。直径が14.5mmの4つのリングをRNA配列決定(全体でおおよそ200,000個の細胞)のために印刷し、一方で同心の直径が14.5mm、12.5mm、および10.5mmのリングの4つのセットをIHC分析のために使用した(全体でおおよそ500,000個の細胞)。薬物スクリーニングおよびHSLCIイメージングのために辺長が3.9mmのミニ角形を印刷した。ミニ角形は、ウェルプレートの側部に平行な側部を有する円形ウェル内に内接した。構造物の開放中心により、流体ハンドリング装置を用いる自動操作が容易になるが、角形の側部は、HSLCIにより撮像されたオルガノイドの数を最大化するために配置される。バイオプリンティングプロセスでは、手動で播種されたオルガノイドのために堆積された同じ材料を利用した。MammoCult(商標)およびマトリゲル(登録商標)の3:4混合物中の単一細胞懸濁液、凝集体またはクラスターを氷上で調製した。均質化するために短時間ボルテックスした後、プランジャを取り除き、他端にキャップをすることにより、混合物を3mLシリンジに移した。プランジャが置き換えられると、シリンジを反転させ、気泡を先端から追い出した。その後、両面メスルアーロックアダプタ(CELLINK)を用いてシリンジとカートリッジとを接続することにより、材料を室温の3mLバイオプリンタカートリッジ(CELLINK)に移した。シリンジ内の気泡がすべて除去され、ロードされたカートリッジを回転インキュベータ(エンヴァイロ-ジェニー、Scientific Industries)内で30分間、印刷温度でインキュベートした。
【0081】
インキュベーション期間中、ビルトインUV照射機能を用いてプリンタを滅菌し、プリントヘッドを印刷温度に設定した。この時間の間、表面の親水性を改善するために96ウェルプレートを酸素プラズマで処理した。ウェルマスクを使用前にオートクレーブした。マスクをウェルプレートに挿入し、ガラス表面に接触させて押圧した。ゴムバンドを使用して、マスクを所定の位置に保持し、プラズマ処理中ずっと、コンフォーマル接触を維持することを確実にした。バイオプリンティングの15分前に、ウェルプレートをPE-25(Plasma Etch)内で30~90秒間、酸素プラズマで処理した。プラズマ処理後、ウェルプレートをバイオプリンタに配置し、自動ベッドレベリング(ABL)を実行した。
【0082】
インキュベーション期間が終了すると、0.5インチの25ゲージ針を取り付け、カートリッジに予め冷却したプリントヘッドを装填した。プリンタを較正する前に、少量の材料を15kPaで押出成形することにより針を準備した。印刷の直前、印刷の開始前に40kPaを使用して少量を押出成形することにより針からゲル化した材料を取り除いた。適切な厚みの構造物を作成するため、8ウェルプレートでの印刷物は、15kPaで押出成形され、96ウェルプレートでの印刷物は、12~15kPaで押出成形された。バイオプリンタは、おおよそ4分で96ウェルプレート用の堆積プロセスを完了する。印刷後、構造物を37℃で少なくとも30分間インキュベートしてマトリックスを固化し、その後、MammoCult(商標)培地100μLを添加した。
【0083】
生存率の評価。
手動で播種されたオルガノイドおよびバイオプリントされたオルガノイドの生存率を、ATP検出アッセイを使用して比較した。上述ならびにそれぞれ参照により本明細書に組み込まれている、以前出版されたPhan,N.et al.A simple high-throughput approach identifies actionable drug sensitivities in patient-derived tumor organoids.Commun.Biol.2,1-11(2019);Nguyen,H.T.L.&Soragni,A.Patient-Derived Tumor Organoid Rings for Histologic Characterization and High-Throughput Screening.STAR Protoc.1,(2020),doi.org/10.1016/j.xpro.2020.100056;およびShihabi,A.A.et al.Personalized chordoma organoids for drug discovery studies.bioRxiv 2021.05.27.446040(2021)doi:10.1101/2021.05.27.446040のプロトコルにしたがって手動で播種されたオルガノイドを調製した。バイオプリントされたオルガノイドの生存率を評価するため、記載されたようにバイオインクおよびバイオプリンタを調製した。バイオインクをウェルプレートに印刷する代わりに、バイオインク100μLをエッペンドルフチューブに各印圧(10kPa、15kPa、20kPa、および25kPa)について押出成形した。押出成形されたバイオインクを使用して、4つの10μLのリングを96ウェルプレートに播種した。その後、5mg/mLディスパーゼ(ライフテクノロジーズ 17105-041)溶液50μLを各ウェルに添加し、25分間インキュベートした。オービタルシェーカーで5分間、80RPMで振盪した後、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Reagent(プロメガ G968B)75μLを各ウェルに添加し、参照により本明細書に組み込まれているメーカーの説明書にしたがった。発光の読み取りをSpectraMax iD3(モレキュラーデバイス)プレートリーダーで行った。各ウェルの生存率は、発光シグナルを、手動で播種された対照のウェルからの平均シグナルに対して正規化することにより算出された。GraphPad Prismで、通常の一元配置分散分析に続いて事後ボンフェローニ多重比較検定を実行した。
【0084】
免疫組織化学。
手動で播種されたオルガノイドおよび24ウェルプレートまたは6ウェルプレートに播種されたバイオプリントされたオルガノイドに対してそれぞれ免疫組織化学染色を実行した。詳細な手順は、独立して上記Nguyen,H.T.L.&Soragni,A.で出版されている。構造物を破壊することなくウェルからすべての培地を注意深く吸引し、事前に温めたリン酸緩衝溶液(PBS)で洗浄することにより、組織学的分析のために試料を調製した。層間剥離および断片化を回避するために、ウェルの中央にPBSを滴下で添加した。ウェルからすべての残りの液体を吸引した後、10%緩衝ホルマリン(VWR 89370-094)を添加し、続いて37℃でインキュベートした。5分間のインキュベーションの後、プレートを30分間氷に移してから、回収まで4℃冷蔵庫で貯蔵した。ピペットチップを使用してウェルの表面を削り取って固定されたオルガノイドを3日以内に回収し、続いてオルガノイドを円錐形チューブに移した。2000×gで5分間の遠心分離により、オルガノイドをペレット化し、上清を吸引した;このプロセスを2回繰り返して可能な限り多くの液体を除去した。その後、HistoGel(サーモサイエンティフィック HG-40000-012)をペレットに添加した。短時間ボルテックスすることにより細胞をHistoGelと混合してから氷上に置き、固化させた。カセットに標識をつけ、HistoGel5μLを使用して底面の領域をコートした。固化すると、HistoGel中の細胞ペレットをカセット内に配置し、安定性のためにさらにHistoGel4μLをペレットの頂部に添加した。カセットをパラフィルムで包み、それらを氷上で3分間冷却してから包みをほどき、70%エタノールに浸漬した。その後、乾燥およびパラフィン包埋のために、カセットをUCLAトランスレーショナル病理学コア研究所(TPCL)に送った。包埋後、8μmの薄切片をパラフィンブロックから切断した。
【0085】
スライドを45℃で20分間焼成し、キシレン中で脱パラフィンし、続いてエタノールおよび脱イオン水で洗浄した。H&E染色のため、ヘマトキシリンおよびエオシン染色キット(Vector Labs H-3502)を、参照により本明細書に組み込まれているメーカーのプロトコルにしたがって使用した。Ki-67/カスパーゼ-3、HER2、およびER染色のため、Peroxidazed-1(バイオケアメディカル PX968M)を室温で5分間適用し、内在性ペルオキシダーゼをブロックした。次に、110℃で15分間加熱するために、NxGEN Decloaking Chamber(バイオケアメディカル)を使用してDiva Decloaker(バイオケアメディカル DV2004LX)にスライドを浸漬させることにより、抗原回復を実行した。Ki-67/カスパーゼ-3プロトコル内での抗原回復の後、さらに2分間のペルオキシダーゼブロッキングステップを実行した。Background Punisher(バイオケアメディカル BP947H)を用いて、ブロッキングをRTで5分間実行した。予め希釈したKi-67/カスパーゼ-3(バイオケアメディカル PPM240DSAA)溶液を用いて4℃で最初のKi-67/カスパーゼ-3染色を一晩実行し、Mach 2 Double Stain 2(バイオケア)溶液を用いて40分間室温で二次染色を実行した。HER2(Novus Biologicals、CL0269)およびER(アブカム、E115)染色用の一次抗体を、Da Vinci Green Diluent(バイオケアメディカル PD900L)中で1:100に希釈した。HER2抗体を4℃で一晩インキュベートし、一方でER抗体を室温で30分間インキュベートした。HER2用にMach3マウスプローブおよびMach3マウスHRP-ポリマーを、ER用にMach3ウサギプローブおよびMach3ウサギHRP-ポリマーを用いて二次染色を実行し、すべての二次染色ステップは10分であった。Betazoid DAB(バイオケアメディカル、BDB2004)を用いて発色現像を実行し、反応を脱イオン水でクエンチした。20%ヘマトキシリン(サーモサイエンティフィック#7221)を用いて7.5分間、対比染色を実行した。Permount(フィッシャーサイエンティフィック SP15-100)をカバースリップに適用する前にエタノールおよびキシレンの浴の順でスライドを乾燥させた。Revolve顕微鏡(Echo Laboratories)を用いて撮像を実行した。Adobe Photoshopで画像のホワイトバランスを実行した。
【0086】
RNA配列決定のための試料調製。
全トランスクリプトームシーケンシング(RNA-Seq)用の調製において、オルガノイドをマトリゲル(登録商標)から放出させた。各リングから培地を吸引した後、1リングにつき冷ディスパーゼ1mlを添加した。37℃で20分間のインキュベーションの後、細胞懸濁液を回収し、1500×gで5分間の遠心分離によりペレット化し、PBS45mlで洗浄してから再度2000×gでさらに5分間遠心分離した。すべての液体が吸引されると、チューブを急速冷凍し、-80℃で貯蔵した。その後、冷凍した細胞ペレット(おおよそ200,000個の細胞)を、RNA配列決定のために、UCLAのゲノミクス&バイオインフォマティクステクノロジーセンター(TCGB)に移した。2×150bpペアエンドプロトコルを使用して、NovaSeq SP(イルミナ)の1レーンで配列決定を実行した。
【0087】
RNA配列決定データの加工および解析。
pipeline-align-RNA v6.2.2、pipeline-quantitate-RNA v2.0.1、pipeline-quantitate-SpliceIsoform v2.0.6、pipeline-call-RNAEditingSite v5.0.0、pipeline-call-FusionTranscript v1.1.0を含む、UCLA-CDSパイプラインを使用してFASTQファイルを加工した。pipeline-align-RNA v6.2.2は、FASTQC v0.11.9、fastp v0.20.1、STAR v2.7.6a、HISAT2 v2.2.1の組み合わせを使用し、Pipelinequantitate-RNAは、kallisto v0.46.0、samtools v1.10、rsem 1.3.3を使用した。pipeline-quantitate-SpliceIsoformsは、rmats v4.1.0を使用した。Pipeline-call-RNAEditingSiteは、REDItools2 v1.0.0を使用した。Pipeline-call-FusionTranscriptsは、STAR-Fusion v1.9.1、fusioncatcher v1.33、Arriba v2.1.0を使用した。低転写物存在量(TPM<0.1;100万あたりの転写物)の試料を除外した結果、27,077/67,060の転写物を分析に含めた。低パワーのため、5またはそれより多くの試料において、データが欠落しているスプライスアイソフォーム(17,449のうち8,561)を除外した。RNA編集部位は、十分なカバレッジ(q30>10)および0.9を超える頻度でアデノシンからイノシンのイベントを含むようにフィルタリングされた。ポリA除去RNAは、アノテートされたマイクロRNA(miRNA)を含むが、ポリA濃縮RNAは、コードRNAを含んでいた。生データおよび加工データはGEOで利用可能になる。
【0088】
マン-ホイットニーのU検定を使用して、RNA存在量の分配、転写物融合の数、およびバイオプリントされた腫瘍オルガノイドと手動で播種された腫瘍オルガノイドとの間の編集部位を比較した。偽発見率(FDR)法を使用して多重比較のために調節した。FDR値(q<0.1)は、強力な関係の基準であった。R統計環境(v4.0.2)でBPG(v6.0.1)パッケージを使用して統計解析およびデータ可視化を実行した。
【0089】
高速肝臓細胞干渉計。
HSLCIは、Huang,D.et al.High-Speed Live-Cell Interferometry:A New Method for Quantifying Tumor Drug Resistance and Heterogeneity.Anal.Chem.90,3299-3306(2018);およびMurray,G.F.et al.Live Cell Mass Accumulation Measurement Non-Invasively Predicts Carboplatin Sensitivity in Triple-Negative Breast Cancer Patient-Derived Xenografts.ACS Omega 3,17687-17692(2018)に以前記載されている。HSLCIプラットフォームは、軸外quadriwaveラテラルシアリング干渉計(QWLSI)カメラ(SID4BIO、Phasics社)、単一の標準フットプリント(128×85mm)を保持する電動ステージ(ソーラボ)、ガラス底マルチウェルプレート、および試料領域内で多くの視野(FOV)にわたって連続繰り返し画像収集を可能にするピエゾ作動式ダイナミックフォーカス安定化システムに接続された特注の倒立型光学顕微鏡である。プラットフォームのハードウェアおよびソフトウェアの構成要素はすべて、市販されている。
【0090】
HSLCIプラットフォームを標準細胞培養インキュベータの内部に設置した。すべての増殖速度論研究および薬物スクリーニングについて、40×対物(ニコン、NA 0.75)を使用して、オルガノイドを96ウェルガラス底プレート(Cellvis P96-1.5H-N)内で撮像した。オルガノイドを、上述したようにMammoCult(商標)およびマトリゲル(登録商標)の3:4混合物中の単一細胞懸濁液として播種し、1%抗生物質-抗真菌剤(Gibco 15240-062)を添加したMammoCult(商標)培地中、37℃、5%CO2で増殖させた。プレートをパラフィルムで包み、蒸発を制限し、干渉計に置いた。典型的な撮像間隔は、同じFOVでの連続フレーム間で10分であった。
【0091】
薬物スクリーニング。
3Dオルガノイドのすべての薬物処置を、無血清条件下、1%抗生物質-抗真菌剤(Gibco 15240-062)を添加したMammoCult(商標)培地で実行した。薬物スクリーニングについての詳細なプロトコルは、上記Phan,N.et al.;および上記Nguyen,H.T.L.&Soragniで以前出版されている。簡潔に言うと、培養培地を播種後3日目に完全に除去し、自動ピペットシステム(EpMotion(登録商標)96)を使用して示された処置を含むMammoCult(商標)培地100μLで交換した。処置後、撮像のため、オルガノイドをHSLCIに移した。処置後6時間から48時間、オルガノイドをHSLCIにより撮像した。撮像後、ATPアッセイを実行し、メーカーの指示書にしたがって細胞生存率を評価した。培地を各ウェルから吸引し、5mg/mLディスパーゼ(サーモフィッシャー)溶液50μLで交換し、マトリゲルを消化した。37℃での25分間のインキュベーション後、プレートを、80RPMのオービタルシェーカーに5分間置いた。その後、CellTiter-Glo(登録商標)試薬(プロメガ)30μLを添加し、プレートをフィルムでシールし、プレートをホイルで覆って光から保護し、プレートを5分間、80RPMで振盪し、室温でさらに20分間インキュベートした。SpectraMax iD3プレートリーダーを使用して、発光を測定した。発光読み取りのためのプログラムパラメータは、読み取り前の5分間の振盪、全波長の読み取り、および500msにわたるシグナルの積分であった。各ウェル内のオルガノイド生存率を、各ウェルからの発光シグナルを対照(1%DMSO)ウェルの発光の平均値で割ることにより算出した。両側対応なしt検定を実行してオルガノイド質量および細胞生存率における統計的有意差を評価した。0.05未満のP値を有意であると考えた。
【0092】
HSLCIデータ解析。
カスタム多段階MATLABパイプラインを使用して下流のコンピュータで画像加工およびデータ解析を実行した。最初に、SID4Bio QWLSIカメラにより捕捉されたインターフェログラムを、MATLAB用のSID4ソフトウェア開発キット(Phasics)を使用して位相シフト画像に変換した。次に、ガウシアンローパスフィルタおよびウォーターシェッド変形の組み合わせを使用して、位相画像を個々の細胞またはオルガノイドに分割した。各物体の分割された領域から、位相シフトを領域全体で積分し、その後実験的に決定された1.8×10-4m3/kgの比屈折増分を乗じることにより、質量を抽出する。最後に、画像分割により同定された物体を、IDL用に最初にJohn CrockerおよびDavid Grierにより開発され、続いてDaniel BlairおよびEric DufresneによりMATLAB用に適合させた粒子追跡コードを使用して経時的に追跡した。参照により本明細書に組み込まれている、Crocker,J.C.&Grier,D.G.Methods of Digital Video Microscopy for Colloidal Studies.J.Colloid Interface Sci.179,298-310(1996)を参照されたい。
【0093】
記録された時間あたりの増殖率の品質を確実にするため、質量の75パーセンタイルが350pgのバイオマストラックのみ、および十分に低い局所的変動性を示すバイオマストラックのセグメント(質量対時間)のみが含められるように、データをフィルタリングした。最小質量フィルタは、追跡開始時にすでに死滅しているオルガノイドがデータに含まれていないことを確実にする。11個の質量対時間データポイントのビン内の正規化した質量変化の標準偏差を算出することにより、変動性を評価した。最大許容標準偏差は、MCF-7およびBT-474について、それぞれ2.8%および3.6%であった。これは、細胞残屑または焦点外の物体により導入されたノイズを説明し、残屑により遮断されるか、焦点外に移動する場合、トラックの一部を除外する。さらに、高い局所変動性を有する質量対時間トラックのセグメントをシグモイドフィルタにフィットさせ、ユーザ定義閾値より良好な適合度を有するものを維持し、生存して焦点内にある状態で開始して追跡中全体で死滅する細胞に対応するトラックを含めた。
【0094】
結果。
バイオプリンティングは、撮像アプリケーションに適している構造でマトリゲル(登録商標)内に細胞を播種することができる。現在の制限に対処し、HSLCIによる3Dオルガノイドの非侵襲性ラベルフリーリアルタイムイメージングを容易にするため、押出式バイオプリンタを使用して、自動細胞印刷プロトコルを最適化した。我々の初期のプラットフォームは、96ウェルプレートのリムの周囲のマトリゲル(登録商標)のミニリング内にある播種された細胞の利点を活かす。空の中央は、液体ハンドラの実装および自動化を可能にし、培地交換および摂動因子の追加を容易にする。空の中央の機能を維持したが、マトリゲル(登録商標)内に細胞のミニ角形をバイオプリントするために我々の形状を変更した。HSLCIの撮像経路内の角形の側部を位置決めすることにより、より広い領域で試料採取することができるとともに、ウェルの縁での照度ムラによる撮像アーティファクトを防止することができる。我々のバイオプリンティングプロトコルは、培地およびマトリゲル(登録商標)が3:4の比で構成されるバイオインク内の懸濁細胞を必要とする。その後、この材料を、プリントカートリッジに移し、17℃で30分間インキュベートし、各ウェルに12kPaから15kPaの圧力でバイオプリントされる。
【0095】
このプロトコルを使用すると、ガラス底プレート上の標準印刷物は、厚みがおおよそ200μmである。HSLCIプラットフォームは、波面センシングカメラおよびダイナミックフォーカス安定化システムを使用して、生体試料の連続ハイスループット定量的位相イメージング、それらのバイオマス変化の経時的追跡を実行する。対象の物体が焦点外である場合、干渉計カメラを用いて取得された位相情報は、試料の乾燥バイオマスとの直接的な関係を維持することを仮定することができない。
【0096】
したがって、マトリゲル(登録商標)の薄層を生成することにより、いかなる時でも定量的に評価することができる焦点内に多数のオルガノイドを有することができる。効率的なHSLCIイメージングに適しているより薄い(約100μm)の構造物を生成するため、酸素プラズマ処理によりガラス表面の親水性を高めた。対象の領域を選択的に機能化するためにBioMedアンバーレジン(FormLabs)で構成される3Dマスクを開発した。バイオプリンティング事後プラズマ処理により、(約70μmの)厚みで、単一焦点面上に近接して並んでいるオルガノイドを有する均一なミニ角形が生成された。そのため、薄く印刷されたミニ角形が、HSLCIによる超並列QPIに適しているという検証を進めた。バイオプリントされたオルガノイドは、印刷されたミニ角形の脚をHSLCI撮像経路と整列させることにより容易に撮像することができる。
【0097】
最後に、使用した印刷パラメータが、10kPaから25kPaの範囲の押出圧力を使用して25ゲージ針(内径260μm)に通して印刷された細胞にしたがって手動で播種されたMCF-7細胞を直接比較することにより細胞生存率を変更したかを検証した。ATP放出アッセイにより測定されるように、細胞生存率における低下はまったく観察されなかった。これらの結果は、細胞生存率における低下が、多くの場合、より粘性のある材料を押出成形するために使用されることが多い、より高い印圧(50~300kPa)と関連しているという既存の文献と一致している。全体として、細胞生存率に影響を及ぼさずにハイスループットHSLCIイメージングに適したバイオプリントされた層を生成するプロトコルを最適化した。無細胞のウェル中央を有することにより、ミニ角形は、頑強な下流の用途に重要である、自動化の適合性を保持している。
【0098】
バイオプリントされた腫瘍オルガノイドは、手動で播種されたオルガノイドの組織学的特徴を維持する。次に、異なる分子的特徴およびヒト上皮成長因子受容体2(HER2)およびエストロゲン受容体(ER)状態を有する2つの乳癌細胞株、BT-474およびMCF-7から生成されたバイオプリントされたオルガノイドおよび手動播種のオルガノイドの組織学および免疫組織化学プロファイルを直接比較した。下流の特徴づけのために十分な材料を保持するため、細胞をマキシリング(100,000個の細胞/リング)として播種した。細胞は、24ウェルプレートまたは8ウェルプレートに15kPaの押出圧力で、手動で播種された。バイオプリントされた細胞および得られるオルガノイド構造物は、播種後1時間、24時間および72時間で撮影された明視野像およびH&E染色部分に見えるように、手動で播種された対照物と形態学的に区別がつかない。バイオプリントされた試料および手動で播種された試料は両方とも、経時的にサイズが大きくなった。バイオプリンティングは、増殖(Ki-67染色)またはアポトーシス(開裂したカスパーゼ-3)を変更させなかった。ホルモン受容体状態は、HER2およびERのIHCにより示されるように変更されていなかった。これらの結果は、両細胞株についての受容体状態の文献報告と一致している。全体として、バイオプリンティングは、組織学的特徴に影響しなかった。
【0099】
バイオプリントされたオルガノイドおよび手動で播種されたオルガノイドは、分子的に区別がつかない。実行されたバイオプリンティングプロトコルがオルガノイドに対して影響が最小であるという我々の知見をさらに支持するため、手動で播種された細胞およびバイオプリントされた細胞のトランスクリプトームも播種後1時間、24時間、および72時間で分析した。27,077のRNAの分布を評価し、これらをその存在量の中央値に基づいて十分位数にクラスタリングし、細胞播種アプローチ間の分布に有意差を認めなかった。手動で播種されたオルガノイドおよびバイオプリントされたオルガノイドの全体的なトランスクリプトームは、極めて高い相関を有していた。同様に、個々のトランスクリプトームはすべて、いずれの細胞株においてもRNA存在量に有意差がなかった(0/27,077個の遺伝子、q<0.1、マン-ホイットニーのU検定)。
【0100】
転写物の存在量を変化させることはできないが、事前のmRNA変更スプライシングイベントにおける変動により機能的変化を誘導することができる。エクソン包含およびエクソンスキッピングアイソフォームの密度が変化せず、個々の融合アイソフォームがいずれの細胞株でもオルガノイド印刷法と関連していなかったことが分かった(0/8,561、q<0.1、マン-ホイットニーのU検定)。同様に、融合転写物の数は、播種方法と関連していなかった(p=0.17、マン-ホイットニーのU検定)が、少数の試料でのみ大量のシングルトンが検出された。最後に、RNA編集を考察した;再度、印刷された腫瘍オルガノイドと手動で発達させた腫瘍オルガノイドとの間でRNA編集部位の数において有意差がないことが分かった(p=0.48、マン-ホイットニーのU検定)。これらの知見は、我々のバイオプリンティングプロトコルが、短期的または長期的にRNA発現、スプライシング、融合、または編集部位に大きく影響せず、それらの分子プロファイルを保全するが、HSLCIを使用するハイスループットイメージングに適した厚みの減少のような好ましい特徴を導入することを示す。
【0101】
バイオプリントされたたオルガノイドの質量蓄積における傾向は、単一オルガノイド解像度を用いるHSLCIにより定量することができる。完全オルガノイドスクリーニングパイプラインは、細胞バイオプリンティング(0日目)、オルガノイド確立(0~2日目)、完全培地交換(3日目)、それに続くHSLCIインキュベータへの移動を含む。培地交換の6時間以内に、その後の48~72時間、プレートを連続的に撮像する。撮像期間の最後に、エンドポイントATPアッセイを実行して細胞生存率を評価する。
【0102】
HSLCIベースの撮像を使用すると、処置後6時間でのn=8の解釈可能な反復ウェルにおけるn=67のMCF-7オルガノイド(8.38/ウェル)およびn=12の解釈可能なウェルにおけるn=101のBT-474オルガノイド(8.42/ウェル)のリアルタイム追跡が可能になった。48時間後、追跡されたオルガノイドの数は、MCF-7(n=89のオルガノイド;n=8のウェル;11.13/ウェル)およびBT-474オルガノイド(n=106のオルガノイド;n=10のウェル;10.6/ウェル)の両方で僅かに増加した。撮像期間全体を通じて、n=219のMCF-7およびn=265のBT-474オルガノイドが少なくとも6時間追跡された。追跡されたオルガノイドの数は、事前処置中の位置特異的参照画像を使用し、各ウェル内のより多くの視野を分析し、異なる画像分割および追跡アルゴリズムを実行することにより改善することができる。
【0103】
次に、SID4ソフトウェア開発キットを使用してインターフェログラムを位相シフト画像に変換することにより、各オルガノイドの質量を決定した。オルガノイド質量は、オルガノイド領域全体で位相シフトを積算し、実験的に決定された比屈折増分を乗じることにより算出された。撮像期間の開始時、平均オルガノイド質量は、BT-474オルガノイド(1.6±0.5ng)よりもMCF-7(2.0±1.2ng)が僅かに大きかった。48時間後に持続する差異は、MCF-7オルガノイドでは平均2.5±1.9ngであり、BT-474オルガノイドでは2.4±1.0ngまで増殖した。BT-474細胞は、毎時1.01±3.13%の率で増殖したが、MCF-7オルガノイドは、より遅い平均の時間あたりの増殖率(毎時0.23±2.92%)を示した。3D BT-474オルガノイドの増殖率は、2D培養で6時間後に観察されたものに匹敵する(おおよそ1.3%)が、MCF-7オルガノイドは、以前報告された2D培養(おおよそ1.7%)よりも低い増殖率を示した。初期オルガノイド質量と増殖率との間の正の関係(傾きの95%信頼区間は0.1040から0.2993である)も、MCF-7オルガノイドのみで観察された。
【0104】
上で定量化された平均パラメータは、オルガノイドの挙動の集団-ワイド写真を提示するが、HSLCIイメージングの力は、試料内の不均質性を定量するその能力である。細胞増殖、細胞分割、および/または複数の細胞もしくは小さいオルガノイドの凝集を含む、オルガノイドが経時的に質量を獲得するいくつかのメカニズムを同定した。12時間、24時間、および48時間かけて質量を獲得、喪失、および維持したオルガノイドの比率を定量した。薬物処置がない場合、48時間かけて、BT-474オルガノイドの1.9%がそれらの初期質量の10%より多くを喪失し、82.1%がそれらの初期質量の10%より多くを獲得した。対照的に、MCF-7オルガノイドの37.1%のみが質量を獲得し、20.2%が質量を喪失した。MCF-7オルガノイドの20.4%が12時間以内に質量の10%より多くを獲得したので、オルガノイド集団における不均質性も経時的に明らかになる。この割合は、24時間後に36.7%までほぼ倍増するが、48時間後に37.1%までのわずかな増加と一致する。質量を獲得したオルガノイドの集団が48時間かけて連続的に増加するので、このパターンは、BT-474オルガノイドとは異なる。>10%の質量を獲得したオルガノイドの割合は、12時間後の31.2%から24時間後の61.8%、および48時間後の82.1%に増加する。全体として、我々のデータは、3Dで腫瘍オルガノイドを撮像するため、ならびに集団および単一のオルガノイドのレベルの特徴および不均質性を両方とも定量するためにHSLCIを使用することができることを確認する。
【0105】
【0106】
オルガノイドの薬物応答における時間依存的差異は、HSLCIにより定量することができる。その後、ハイスループット3Dスクリーニングにおいて薬物応答を検出する際に我々のプラットフォームの有用性をテストした。原理の証明として、広い細胞毒性を有する非選択的タンパク質キナーゼ阻害剤であるスタウロスポリン、EGFRおよびHER2を標的化する標的小分子チロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブをテストした。0.1~50μMの濃度で薬物をテストした。この範囲は、ラパチニブについて報告された最大血漿中濃度(4.2μM)を含み、それを超えている。代表的なHSLCI画像は、処置に対する応答の範囲を示す。処置後6ヶ月での平均質量は、ビヒクル対照と大きくは異なっていない。48時間後、処置済み試料の数で有意差が観察された。対照のMCF-7オルガノイドは平均2.48±1.89ngであったが、1μMおよび10μMスタウロスポリンで処置されたものは、それぞれ平均質量1.33±1.08ng(p=0.0121、ダネットの多重比較検定)および1.26±0.80ng(p=0.0086、ダネットの多重比較検定)まで有意な減少を示した。BT-474オルガノイドは、対照オルガノイドと同様のパターンを示し、平均2.36±1.02ngであり、スタウロスポリン処置済みオルガノイドでは平均0.70±0.26ng(1μM、p<0.0001、ダネットの多重比較検定)および0.83±0.72ng(10μM、p<0.0001、ダネットの多重比較検定)であった。正規化増殖曲線は、1μMスタウロスポリンでの処置に対する応答を迅速に示す。12時間後、対照の3.2%に対して追跡されたBT-474オルガノイドの33.3%が質量を喪失し、サイズが増加したオルガノイドの数は60%減少した(31.2%対19%)。
【0107】
ラパチニブに対する応答は、細胞型特異的傾向を明らかに示した。MCF-7細胞は、50μMラパチニブで処置した場合のみ、48時間で平均質量において有意な低下を示した(2.48±1.89ngから1.32±1.06ng、p=0.0285、ダネットの多重比較検定)。逆に、BT-474は、わずか1μMの濃度で影響を受けた。我々の分析により、全MCF-7オルガノイドの4.3%が50μMラパチニブの存在下で増殖を続け、さらに43.5%が処置の48時間後にそれらの質量を維持したことが示された。BT-474オルガノイドは、ラパチニブで処置された場合、用量依存的応答を示し、0.1μM、1μM、10μMおよび50μMの濃度で、全BT-474オルガノイドの6.5%、22.5%、37.7%、および84.6%が質量を喪失することになる(対照の1.9%に対して)。ラパチニブに対するBT-474細胞の感受性の向上は、これらの細胞で認められるHER2のより高い発現を考慮して期待される。
【0108】
すべての条件にわたって処置に対して応答しないオルガノイドの割合を一貫して観察した。例えば、50μMラパチニブで処置されたMCF-7オルガノイドの割合は、平均で処置の36時間後のビヒクル処置済み細胞と同様の比率で増殖した。全体的にラパチニブに対する感受性が高いが、応答しなかった個々のBT-474オルガノイドを正確に指摘することができた。我々の知見は、HSLCIイメージングにより迅速に同定することができるオルガノイドの耐性集団を示す。
【0109】
HSLCIにより測定された応答を検証するため、HSLCIイメージングで使用した同じプレートでエンドポイントATP放出アッセイを実行し、処置の72時間後のオルガノイド生存率を評価した。ATPアッセイにより、両細胞株が、1μMおよび10μMの濃度で処置された場合、ゼロに近い生存率で、スタウロスポリン処置に対して感受性が高いことが確認された。さらに、BT-474オルガノイドは、0.1μMラパチニブで72時間処置された場合、生存率における有意な低下を示す。全体として、72時間後の細胞生存率アッセイの結果から、HSLCIによりわずか12時間で観察された傾向が確認される。
【0110】
【0111】
【0112】
化学療法剤、標的療法剤または生物製剤は、プラットフォームを使用してスクリーニングすることができる。スタウロスポリン、ドセタキセル、ゲムシタビン、テモゾロミド、ラロトレクチニブ、イブルチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、パゾパニブ、ボルテゾミブ、パノビノスタット、リンシチニブ、カピバセルチブ、スニチニブ、エベロリムス、レンバチニブ、レゴラフェニブ、カルフィルゾミブ、イマチニブ、クリゾチニブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、トラスツズマブ、およびカボザンチニブなどであるがこれらに限定されない薬物は、スクリーニングされる可能性がある。さらに、ゲムシタビン(gemcetabine)とドセタキセル、カルフィルゾミブとパノビノスタット、ボルテゾミブとパノビノスタット、ソラフェニブとエベロリムス、およびカボザンチニブとエベロリムスなどであるがこれらに限定されない併用療法剤は、評価される可能性がある。
【0113】
上記スクリーニングプラットフォームは、固有の免疫反応性を評価し、免疫療法剤を単独または標的剤もしくは化学療法剤と組み合わせてスクリーニングするための免疫系構成成分を含めるために拡大することができる。このプラットフォームを使用して、オルガノイドスクリーニングプラットフォームを同じ患者から取得したアッセイ細胞と統合することができる。任意の実施形態において、アッセイ細胞は、免疫細胞であり得る。一実施形態において、腫瘍オルガノイドと同時培養された免疫細胞は、患者の腫瘍から単離される腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であり得る。別の実施形態において、免疫細胞は、患者から単離された循環免疫細胞を選別することができる。同時培養は、単離された免疫細胞を溶液中に添加することにより、またはそれらをバイオプリンタにより押出成形された組織様ゲルマトリックスに埋め込むことにより確立することができる。
【0114】
一実施形態において、アッセイ細胞の集団は、別個の場所または一緒に組み合わせて、2つまたはそれ以上の細胞型を含む。一実施形態において、アッセイ細胞の集団は、組織培養ウェルに提供される。一実施形態において、アッセイ細胞の集団は、2つまたはそれ以上の細胞型を含む。任意の組み合わせまたは場所またはいずれか1つもしくは複数のアッセイ細胞型が本明細書に包含される。
【0115】
いくらかの実施形態において、腫瘍オルガノイドがウェルの底部で成形オルガノイド押出成形物内に提供され、アッセイ細胞がウェル内に提供される、本明細書で提供されるすべての特徴、使用、方法、配置、場所、および他の説明は、交換可能である。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物内に提供される免疫細胞の運動性および/または生存率および/または機能は、本明細書に記載の特徴を評価するために撮像されるか、他の方法で特徴づけられる。
【0116】
一実施形態において、同時培養された免疫細胞の免疫細胞機能、例えばサイトカイン産生または免疫細胞増殖は、当業者に一般的に既知である技術により決定することができる。別の実施形態において、CD4および/またはCD8 T細胞ならびにそのオルガノイドの細胞の数または細胞増殖は、顕微鏡検査および/または代謝読み取り値を使用して決定することができる。別の実施形態において、細胞生存率は、顕微鏡検査および/または代謝読み取り値を使用して決定することができる。
【0117】
上述した方法を使用して、抗腫瘍および/または免疫調節化合物をスクリーニングし、T細胞抗腫瘍効果を強化するそれらの機能を決定することができる。一実施形態において、本明細書に記載のプラットフォームを使用して、標的剤または化学療法レジメンのいずれかとなる小分子を用いるIO併用スクリーニングを実行することができる。一実施形態において、本明細書に記載のプラットフォームおよびシステムを使用して、有効なIOレジメンを同定するために迅速で高度の個別化スクリーニングを実行することができる。癌-免疫細胞同時培養増殖条件は、当業者に一般的に既知である方法および技術を使用して決定することができる。腫瘍オルガノイドは、大量の異なる腫瘍型から取得することができ、例えば肉腫または肺腫瘍は、一般に利用可能なソースおよび技術を通じて日常的に取得することができる。
【0118】
一実施形態において、上述したプラットフォームを使用して、免疫チェックポイント阻害剤治療、例えばニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはイピリムマブをスクリーニングすることができる。別の実施形態において、プラットフォームを使用して、細胞療法、例えばCAR-T細胞療法またはNK細胞療法をスクリーニングすることができる。複数のタイプの治療の組み合わせ、例えばニボルマブとラパマイシンもまた、調査することができる。
【国際調査報告】