(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】窒化ホウ素ナノチューブ及びそれを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
C01B 21/064 20060101AFI20231219BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20231219BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20231219BHJP
【FI】
C01B21/064 B
C01B21/064 M
B82Y30/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534711
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 CA2021051752
(87)【国際公開番号】W WO2022120472
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503389611
【氏名又は名称】テクナ・プラズマ・システムズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ・コーシー
(57)【要約】
本開示は、不純物含有量が低い生成直後のBNNT、それを作製するための方法及び装置に関する。BNNTは、約10nm以下の平均直径を有し、20質量%以下の不純物含有量を有し、不純物含有量は、BNNTの製造後及び精製プロセス前に測定される。方法及び装置は、水素を含まないホウ素種の加熱ガスストリームを提供し、ガスストリームを冷却し、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むように構成される。したがって、方法及び装置は、有害な水素化ホウ素の形成を回避しながらBNNTの製造を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための方法であって、
a)ホウ素源をプラズマジェットと接触させて、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを得る工程であって、プラズマジェットは水素を含まないプラズマガスから生成される、工程と、
b)ガスストリームを冷却して、冷却ガスストリームを得る工程と、
c)BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り入れる工程と
を含む方法。
【請求項2】
ホウ素源が、液体、固体又はガス状形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホウ素源が、微粒子形態のホウ素を含み、ホウ素源のプラズマジェットへの曝露は、ホウ素源の気化をもたらし、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームが得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ホウ素源が、微粒子形態のh-BNを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
プラズマジェットのプラズマが、アルゴン、ヘリウム又はそれらの組合せを含むプラズマガスで生成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
プラズマガスが、窒素(N
2)を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程b)が、ホウ素粒子の核形成をもたらす、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)が、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
窒素含有ガスが、アンモニア(NH
3)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
窒素含有ガスが、窒素(N
2)を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
BNNTを収集する工程を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための装置であって、
・a)ホウ素源を第1のセクション内の気化ゾーンに供給するための入口、及び
b)気化ゾーン内でプラズマジェットを生成するためのプラズマ生成デバイス
を備える、第1のセクションであって、第1のセクションは、ホウ素源をプラズマジェットに曝露して、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを得るように構成され、プラズマジェットは、水素を含まないプラズマガスから生成される、第1のセクションと、
・第1のセクションと流体連通した第2のセクションであって、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むように構成される、第2のセクションと
を備える装置。
【請求項13】
入口が、液体、固体又はガス状形態のホウ素源を供給するように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
ホウ素源が、微粒子形態のホウ素を含み、第1のセクションが、ホウ素源をプラズマジェットに曝露して、ホウ素源の気化をもたらすように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
ホウ素源が、微粒子形態のh-BNを含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
プラズマ生成デバイスが、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せを含むプラズマガスからプラズマジェットを生成する、請求項12から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
プラズマガスが、窒素(N
2)を更に含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
第2のセクションが、ガスストリームを冷却してホウ素粒子の核形成をもたらすように構成される、請求項12から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
第2のセクションが、第1の部分及び第2の部分を含み、第1の部分は、ホウ素粒子の核形成をもたらし、第2の部分は、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させるように構成される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
窒素含有ガスが、アンモニア(NH
3)を含む、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
窒素含有ガスが、窒素(N
2)を更に含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
窒素含有ガスを第2の部分に注入するための入口を備える、請求項19から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
BNNTを収集するための第2のセクションと流体連通した収集デバイスを更に備える、請求項12から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
約10nm以下の平均直径を有し、20質量%以下の不純物含有量を有する、窒化ホウ素ナノチューブであって、不純物含有量は、BNNTの製造後及び精製プロセス前に測定される、窒化ホウ素ナノチューブ。
【請求項25】
不純物含有量が、元素ホウ素含有量、h-BN、非晶質BN及びBNH誘導体のうちの1つ又は複数を含む、請求項24に記載の窒化ホウ素ナノチューブ。
【請求項26】
不純物含有量が、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下の元素ホウ素を含む、請求項25に記載の窒化ホウ素ナノチューブ。
【請求項27】
不純物含有量が、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下のh-BN、非晶質BN及びBNH誘導体を含む、請求項25に記載の窒化ホウ素ナノチューブ。
【請求項28】
平均直径が、約2nm~約10nmである、請求項24から27のいずれか一項に記載の窒化ホウ素ナノチューブ。
【請求項29】
実質的に平行な壁を有する構造を有する、請求項24から28のいずれか一項に記載の窒化ホウ素ナノチューブ。
【請求項30】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための方法であって、
a)ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを提供する工程であって、加熱ガスは水素を含まない、工程と、
b)実質的に層流のガス流を得るようにガスストリームを制御しながら、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得る工程と、
c)BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り入れる工程と
を含む方法。
【請求項31】
工程b)が、異なる粒子経路にわたって実質的に均一な冷却を得るようにガスストリームの冷却を制御することを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1の粒子経路上の第1の粒子の熱履歴が、第2の異なる経路上の第2の粒子の熱履歴と実質的に同一である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程b)が、ホウ素粒子の核形成をもたらす、請求項30から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
工程c)が、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
窒素含有ガスが、アンモニア(NH
3)を含む、請求項30から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
窒素含有ガスが、窒素(N
2)を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
BNNTを収集する工程を更に含む、請求項30から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための装置であって、
a)ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを供給するための第1の入口であって、加熱ガスは水素を含まない、第1の入口と、
b)第1の入口と流体連通した筐体であって、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むための第2の入口を備えるように構成される、筐体と
を備える装置。
【請求項39】
筐体が、ガスストリームの横断面に沿って実質的に均一な冷却を得るようにガスストリームの冷却を制御するように構成される、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
ガスストリームの冷却が、ホウ素粒子の核形成をもたらす、請求項38又は39に記載の装置。
【請求項41】
筐体が、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させるように構成される、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
窒素含有ガスが、アンモニア(NH
3)を含む、請求項38から41のいずれか一項に記載の装置。
【請求項43】
窒素含有ガスが、窒素(N
2)を更に含む、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
BNNTを収集するための筐体と流体連通した収集デバイスを更に備える、請求項38から43のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための方法であって、
a)水素を含まないホウ素種の加熱ガスストリームを提供する工程と、
b)ホウ素粒子の制御された粒径分布を得るようにガスストリームの温度及びガス流量を制御する工程と、
c)BNNTを得るための条件下でホウ素粒子を窒素含有ガスと接触させる工程と
を含む方法。
【請求項46】
工程b)が、異なる粒子経路にわたって実質的に均一な冷却を得るようにガスストリームの冷却を制御することを更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
第1の粒子経路上の第1の粒子の熱履歴が、第2の異なる経路上の第2の粒子の熱履歴と実質的に同一である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
工程b)が、ホウ素粒子の核形成をもたらす、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
工程c)が、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下でホウ素粒子を窒素含有ガスと接触させることを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
窒素含有ガスが、アンモニア(NH
3)を含む、請求項45から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
窒素含有ガスが、窒素(N
2)を更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
BNNTを収集する工程を更に含む、請求項45から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための装置であって、
a)ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを供給するための第1の入口であって、加熱ガスは水素を含まない、第1の入口と、
b)第1の入口と流体連通した筐体であって、ホウ素粒子の制御された粒径分布を得るようにガスストリームの温度及びガス流量を制御し、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むための第2の入口を備えるように構成される、筐体と
を備える装置。
【請求項54】
筐体が、異なる粒子経路にわたって実質的に均一な冷却を得るようにガスストリームの冷却を制御するように構成される、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
第1の粒子経路上の第1の粒子の熱履歴が、第2の異なる経路上の第2の粒子の熱履歴と実質的に同一である、請求項54に記載の装置。
【請求項56】
ガスストリームの冷却が、ホウ素粒子の核形成をもたらす、請求項54又は55に記載の装置。
【請求項57】
筐体が、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させるように構成される、請求項56に記載の装置。
【請求項58】
窒素含有ガスが、アンモニア(NH
3)を含む、請求項53から57のいずれか一項に記載の装置。
【請求項59】
窒素含有ガスが、窒素(N
2)を更に含む、請求項58に記載の装置。
【請求項60】
BNNTを収集するための筐体と流体連通した収集デバイスを更に備える、請求項53から59のいずれか一項に記載の装置。
【請求項61】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を製造するための装置との使用のための収集システムであって、
a)供給導管を通って移動するBNNT含有ガスのストリームを受容するための入口と、
b)スクリーン又はフィルタメッシュの少なくとも一部が前記供給導管を通る前記ストリームを横断するように、スクリーン又はフィルタメッシュのロールからスクリーン又はフィルタメッシュを直線的に供給するための供給機構と
を備える収集システム。
【請求項62】
回収機構を更に備え、回収機構は、供給機構に対して反対の関係にあり、回収されたBNNTを有するフィルタメッシュを受容するように構成される、請求項61に記載の収集システム。
【請求項63】
スクリーン又はフィルタメッシュが、1mm未満の間隔サイズを有する、請求項61又は62に記載の収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月8日出願の米国仮特許出願第63/122,817号の利益を主張する。上で参照された文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、概して、窒化ホウ素ナノチューブ及び窒化ホウ素ナノチューブを生成するための方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)は、ハニカム格子状に共有結合したホウ素及び窒素で構成される一次元ナノ材料である。独特の原子構造により、BNNTは、優れた機械的強度、高い熱伝導率、電気絶縁挙動、圧電特性、中性子遮蔽能力、及び耐酸化性等の数多くの有利な固有特性を有する。したがって、BNNTは、BNNT-ポリマー複合材、BNNT-金属複合材、及び生物学的用途等の様々な用途で提案されている。
【0004】
現在のBNNT合成法のほとんどは、収率が低いこと、チューブが短いこと、生成が非連続的であること、結晶性が低いこと(すなわち分子構造内に多くの欠陥を有する)、及び整列度が低いことのうちの1つ又は複数を含む重大な欠点を有する。
【0005】
US9,862,604は、誘導結合プラズマトーチに供給される原料としてh-BN粉末を使用するBNNTを生成するための方法(「HABS」プロセス)を記載している。得られた生成速度は最大20g/時であり、このプロセスは、同じ稼働で積層可撓性クロス様材料、フィブリル様材料及び薄層透明フィルムを含むいくつかの異なる形態のBNNT材料を生成し、これらは、濾過チャンバ内のフィルタ表面上、及び反応器と濾過チャンバとの間に位置するパイプの壁上等の様々な場所で回収され得た。生成直後のBNNT材料は、約50%の純度を有するものとして特徴付けられ、未反応h-BN粉末、B含有ポリマー及び元素Bの形態の非チューブ状不純物を含有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US9,862,604
【特許文献2】米国特許第8,753,578号
【特許文献3】PCT/CA2020/051365
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Soul-Hee Leeら、Purification of Boron Nitride Nanotubes Enhances Biological Applications Properties、Int. J. of Mol. Sci.、2020、21、1529
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
より少ない欠陥及び増加した純度、並びに増加した生成速度を有するBNNTの連続生成のための装置、システム及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この概要は、以下の発明を実施するための形態で更に説明される簡略化された形態の一連の概念を導入するために提供される。この概要は、請求される主題の重要な態様、又は必須の態様を特定することを意図しない。
【0010】
本明細書で具現化され概略的に説明されるように、本開示は、約10nm以下の平均直径を有し、20質量%以下の不純物含有量を有する、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)に関し、不純物含有量は、BNNTの製造後及び精製プロセス前に測定される。
【0011】
いくつかの実施形態において、BNNTは、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る:
- 不純物含有量が、元素ホウ素含有量、h-BN、非晶質BN及びBNH誘導体のうちの1つ又は複数を含む。
- 不純物含有量が、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下の元素ホウ素を含む。
- 不純物含有量が、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下のh-BN、非晶質BN及びBNH誘導体を含む。
- 平均直径が、約2nm~約10nmである。
- 実質的に平行な壁を有する構造を有する。
【0012】
本明細書で具現化され概略的に説明されるように、本開示はまた、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための方法であって、a)ホウ素源をプラズマジェットと接触させて、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを得る工程であって、プラズマジェットは水素を含まないプラズマガスから生成される工程と、b)ガスストリームを冷却して、冷却ガスストリームを得る工程と、c)BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り入れる工程とを含む方法に関する。
【0013】
いくつかの実施形態において、この方法は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る:
- ホウ素源が、液体、固体又はガス状形態である。
- ホウ素源が、微粒子形態のホウ素を含み、ホウ素源のプラズマジェットへの曝露は、ホウ素源の気化をもたらし、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームが得られる。
- ホウ素源が、微粒子形態のh-BNを含む。
- プラズマジェットのプラズマが、アルゴン、ヘリウム又はそれらの組合せを含むプラズマガスで生成される。
- プラズマガスが、窒素(N2)を更に含む。
- 工程b)が、ホウ素粒子の核形成をもたらす。
- 工程c)が、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させることを含む。
- 窒素含有ガスが、アンモニア(NH3)を含む。
- 窒素含有ガスが、窒素(N2)を更に含む。
- BNNTを収集する工程を更に含む。
【0014】
本明細書で具現化され概略的に説明されるように、本開示はまた、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための装置であって、ホウ素源を第1のセクション内の気化ゾーンに供給するための入口、気化ゾーン内でプラズマジェットを生成するためのプラズマ生成デバイスを備える、第1のセクションであって、第1のセクションは、ホウ素源をプラズマジェットに曝露して、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを得るように構成され、プラズマジェットは、水素を含まないプラズマガスから生成される、第1のセクションと、第1のセクションと流体連通した第2のセクションであって、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むように構成される、第2のセクションとを備える装置に関する。
【0015】
いくつかの実施形態において、この装置は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る:
- 入口が、液体、固体又はガス状形態のホウ素源を供給するように構成される。
- ホウ素源が、微粒子形態のホウ素を含み、第1のセクションは、ホウ素源をプラズマジェットに曝露して、ホウ素源の気化をもたらすように構成される。
- ホウ素源が、微粒子形態のh-BNを含む。
- プラズマ生成デバイスが、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せを含むプラズマガスからプラズマジェットを生成する。
- プラズマガスが、窒素(N2)を更に含む。
- 第2のセクションが、ガスストリームを冷却してホウ素粒子の核形成をもたらすように構成される。
- 第2のセクションが、第1の部分及び第2の部分を含み、第1の部分は、ホウ素粒子の核形成をもたらし、第2の部分は、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させるように構成される。
- 窒素含有ガスが、アンモニア(NH3)を含む。
- 窒素含有ガスが、窒素(N2)を更に含む。
- 窒素含有ガスを第2の部分に注入するための入口を備える。
- BNNTを収集するための第2のセクションと流体連通した収集デバイスを更に備える。
【0016】
本明細書で具現化され概略的に説明されるように、本開示はまた、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための方法であって、a)ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを提供する工程であって、加熱ガスは水素を含まない工程と、b)実質的に層流のガス流を得るようにガスストリームを制御しながら、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得る工程と、c)BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り入れる工程とを含む方法に関する。
【0017】
いくつかの実施形態において、この方法は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る:
- 工程b)が、ガスストリームの横断面に沿って実質的に均一な冷却を得るようにガスストリームの冷却を制御することを更に含む。
- 工程b)が、ホウ素粒子の核形成をもたらす。
- 工程c)が、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させることを含む。
- 窒素含有ガスが、アンモニア(NH3)を含む。
- 窒素含有ガスが、窒素(N2)を更に含む。
- BNNTを収集する工程を更に含む。
【0018】
本明細書で具現化され概略的に説明されるように、本開示はまた、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための装置であって、a)ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを供給するための第1の入口であって、加熱ガスは水素を含まない第1の入口と、b)第1の入口と流体連通した筐体であって、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むための第2の入口を備えるように構成される筐体とを備える装置に関する。
【0019】
いくつかの実施形態において、この装置は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る:
- 筐体が、ガスストリームの横断面に沿って実質的に均一な冷却を得るようにガスストリームの冷却を制御するように構成される。
- ガスストリームの冷却が、ホウ素粒子の核形成をもたらす。
- 筐体が、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させるように構成される。
- 窒素含有ガスが、アンモニア(NH3)を含む。
- 窒素含有ガスが、窒素(N2)を更に含む。
- BNNTを収集するための筐体と流体連通した収集デバイスを更に備える。
【0020】
本明細書で具現化され概略的に説明されるように、本開示はまた、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための装置であって、a)ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを供給するための第1の入口であって、加熱ガスは水素を含まない第1の入口と、b)第1の入口と流体連通した筐体であって、ホウ素粒子の制御された粒径分布を得るようにガスストリームの温度及びガス流量を制御し、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むための第2の入口を備えるように構成される筐体とを備える装置に関する。
【0021】
いくつかの実施形態において、この装置は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る:
- 筐体が、ガスストリームの横断面に沿って実質的に均一な冷却を得るようにガスストリームの冷却を制御するように構成される。
- ガスストリームの冷却が、ホウ素粒子の核形成をもたらす。
- 筐体が、ホウ素粒子の窒化をもたらしてBNNTを形成するための条件下で冷却ガスストリームを窒素含有ガスと接触させるように構成される。
- 窒素含有ガスが、アンモニア(NH3)を含む。
- 窒素含有ガスが、窒素(N2)を更に含む。
- BNNTを収集するための筐体と流体連通した収集デバイスを更に備える。
【0022】
本開示において説明され、互いに排他的ではない例示的実施形態の全ての特徴は、互いに組み合わされてもよい。1つの実施形態の要素は、更に言及することなく他の実施形態でも利用され得る。本発明の他の態様及び特徴は、添付の図と併せて以下の特定の実施形態の説明を検討すれば、当業者に明らかとなるであろう。
【0023】
特許又は出願ファイルは、少なくとも1つのカラーの図面を含む。カラー図面付きの本特許又は特許出願公開の副本は、要望に応じて、また必要な料金の支払後に事務所から提供される。
【0024】
特定の例示的実施形態の詳細な説明が、添付の図面を参照しながら以下に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の一実施形態による気化セクション、核形成セクション及び反応セクションを含むBNNTを製造するための装置の断面図である。
【
図2】
図1の装置での使用のためのプラズマ生成デバイスの断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態によるBNNTを収集するための収集セクションの断面図である。
【
図4】実施例1によるBNNTを製造するための装置の断面図である。
【
図5】装置の様々なセクションにおける二次元温度場を示す
図1の装置の概略図である。
【
図6A】BNNT製造稼働後の
図1の装置のサイクロンの内側の写真である。
【
図6B】BNNT製造稼働後の
図1の装置のキャニスタの内側の写真である。ブリッジ及び綿毛状材料の形成は、ナノチューブが形成されたことを示す。
【
図7】Asys Fluentソフトウェア並びに以下のパラメータ:24slpmの中央のアルゴンガス、22slpmのアルゴンガス及び66splmの窒素ガスを含むシースガスを使用して計算流体力学シミュレーションプログラムにより得られた、装置の異なるセクション内のガス流ラインを示した
図1の装置の概略図である。
【
図8】装置の異なるセクション内のホウ素の質量分率を示した
図7の装置の概略図である。
【
図9】
図7の各ストリームライン対して核形成ゾーン内で質量要素により費やされる時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面において、例示的な実施形態は、例として示されている。説明及び図面は、ある特定の実施形態を例示することのみを目的としており、理解を補助するものであることが明示的に理解されるべきである。それらは、本発明の限界の定義を意図しない。
【0027】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細な説明を、本発明の原理を示す添付の図面とともに以下に示す。本発明はそのような実施形態に関連して説明されるが、本発明はいかなる実施形態にも限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。本発明の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が以下の説明において記載される。これらの詳細は、限定されない例のために提供され、本発明は、これらの特定の詳細の一部又は全てがなくても、特許請求の範囲に従い実践され得る。本発明に関連する技術分野において知られている技術資料は、本発明が不必要に不明瞭とならないように詳細には記載されていない。
【0028】
本発明者らは、R&D研究を通して、驚くべきことに、また予想外にも、プラズマガス中に水素を使用するBNNTを生成するための先行技術のプラズマプロセスが、ある特定の状況下で有毒な水素化ホウ素を生成し得ることを発見した。そのような先行技術のプロセスは水素の解離及びホウ素の気化を同時に必要とするため、そのような有毒な水素化ホウ素が生成され得ると考えられる。水素化ホウ素は極めて有毒である。例えば、米国国立労働安全衛生研究所によれば、ジボランの人間の生命又は健康に直ちに危険な(IDLH)濃度は15ppmと低く、ペンタボランでは1ppm、及びデカボランでは3ppmである。ペンタボランは、全ての水素化ホウ素の中で最も安定であるため、反応器内に残留する可能性が最も高い化合物と考えられる。非常に低い潜在的致死濃度の閾値という事実と相まってガスの検出が困難であることにより、検出への依存は操作者にとって非常に有害となる。
【0029】
本明細書に記載のBNNTは、有害な水素化ホウ素の形成を回避するように設計された方法及び装置を使用して製造され得る。
【0030】
例えば、方法は、水素を含まないホウ素種の加熱ガスストリームを提供する工程と、実質的に層流のガス流を得るようにガスストリームを制御しながら、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得る工程と、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り入れる工程とを含み得る。
【0031】
例えば、方法は、水素を含まないホウ素種の加熱ガスストリームを提供する工程と、ホウ素粒子の制御された粒径分布を得るようにガスストリームの温度及びガス流量を制御する工程と、BNNTを得るための条件下でホウ素粒子を窒素含有ガスと接触させる工程とを含み得る。
【0032】
例えば、方法は、ホウ素源をプラズマジェットと接触させて、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを得る工程であって、プラズマジェットは水素を含まないプラズマガスから生成される工程を含み得る。方法は、ガスストリームを冷却して、冷却ガスストリームを得る工程と、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り入れる工程とを更に含み得る。
【0033】
例えば、装置は、ホウ素源を第1のセクション内の気化ゾーンに供給するための入口、気化ゾーン内でプラズマジェットを生成するためのプラズマ生成デバイスを備える、第1のセクションであって、第1のセクションは、ホウ素源をプラズマジェットに曝露して、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを得るように構成され、プラズマジェットは、水素を含まないプラズマガスから生成される、第1のセクションと、第1のセクションと流体連通した第2のセクションであって、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むように構成される、第2のセクションとを含み得る。
【0034】
例えば、装置は、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを供給するための第1の入口であって、加熱ガスは水素を含まない第1の入口と、第1の入口と流体連通した筐体であって、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むための第2の入口を備えるように構成される筐体とを含み得る。
【0035】
例えば、装置は、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを供給するための第1の入口であって、加熱ガスは水素を含まない第1の入口と、第1の入口と流体連通した筐体であって、ホウ素粒子の制御された粒径分布を得るようにガスストリームの温度及びガス流量を制御し、BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り込むための第2の入口を備えるように構成される、筐体とを含み得る。
【0036】
本開示の方法及び装置は、先行技術の方法及び装置に勝る1つ又は複数の利点を提供し得る。例えば、本開示の方法は、以下の有利な特徴のうちの1つ又は複数を有し得る:有害な水素化ホウ素の形成を回避し得る、ホウ素蒸気の生成に極めて効率的となり得る、高収量のBNNTを生成し得る、より小さい直径のBNNTに極めて選択的となり得る、適度に純粋なBNNTを生成し得る、大気圧又はほぼ大気圧下で行われ得る、精製及び化学的に機能化することがより容易なBNNTを精製し得る、より環境に優しくなり得る、並びに拡張可能となり得る。本発明の方法は、大量の原料の効果的な処理に好適であり、それによって、小さい直径のBNNTの連続的な商業規模の生産を可能にする。
【0037】
本明細書に記載のBNNTもまた、有利な特徴を有する。
【0038】
例えば、本開示のBNNTは数層のものであり、10nm未満、例えば1~10nm、又は約2nm~約10nm、例えば約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、又は約10nm(その間の任意の値を含む)の直径を有する。例えば、BNNTは、単層~数層であってもよく、50ミクロン超の長さであってもよい。
【0039】
例えば、生成直後のBNNTは、低い不純物含有量を有し、例えば、20質量%未満の不純物含有量を有し得る。例えば、不純物は、未反応h-BN(六方晶BN)粉末、B含有ポリマー及び元素Bを含み得る。例えば、不純物は、元素ホウ素含有量、h-BN及びBNH誘導体(例えば、非晶質BxNyHz高分子)を含み得る。生成直後のBNNT中のそのような低レベルの不純物は、特に既存の商業製品を鑑みると予想外のものであり、既存の商業製品では、不純物のレベルは多くの場合50質量%近く、例えば約20~25%の元素B並びに約20~25質量%のh-BN及びBNH誘導体である(Soul-Hee Leeら、Purification of Boron Nitride Nanotubes Enhances Biological Applications Properties、Int. J. of Mol. Sci.、2020、21、1529)。これらの不純物は、その濃度に応じて、性能特性を高めるBNNTの能力を妨げることが知られている。
【0040】
例えば、BNNTは、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下の元素ホウ素含有量を有し得る。
【0041】
例えば、BNNTは、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下のh-BN及びBNH誘導体を有し得る。
【0042】
例えば、BNNTは、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下の元素ホウ素含有量、h-BN及びBNH誘導体を有し得る。
【0043】
図1は、本開示のBNNTを生成するための装置100の一実施形態の詳細な正面立面図を示す。装置100は、プラズマ112を生成するプラズマ生成デバイス120及び蒸発セクション200を含む。装置100は、核形成セクション300及び反応セクション400を更に含む。いくつかの実施形態において、装置100は、
図3に示されるように収集システム500を更に含み得る。装置100は、ケーシング、フランジ、ボルト等の他の構成要素を含み、これらは自明であると考えられ本明細書ではこれ以上説明されない。
【0044】
図2に示されるプラズマ生成デバイス120は、誘導結合プラズマ(ICP)トーチであり、より具体的には高周波(RF)誘導結合プラズマトーチである。ICPトーチの例は、TEKNA Plasma Systems,Inc.社により市販されているもの、例えばPL-50、PN-50、PL-35、PN-35、PL-70、PN-70、又はPN-100を含む。いくつかの実施形態において、プラズマ生成デバイス120は、別の種類のプラズマトーチ、例えば直流(DC)プラズマトーチ(例えばPraxair社、Oerlikon-Metco社、Pyrogenesis社及びNorthwest Mettech社により市販されているもの)等であってもよい。
【0045】
図2に示されるプラズマ生成デバイス120は、同軸配置での外側円筒形トーチ本体181、内側円筒形プラズマ閉じ込め管110、及び少なくとも1つの誘導コイル126を含む。外側円筒形トーチ本体181は、成形可能な複合材料、例えば成形可能な複合セラミック材料で作製され得る。内側円筒形プラズマ閉じ込め管110は、セラミック材料で作製され得、トーチ本体181と同軸である。誘導コイル126は、トーチ本体181と同軸でそれに埋め込まれ、RF(高周波)電磁場を生成し、そのエネルギーがプラズマ閉じ込め管110内に閉じ込められたプラズマ112を点火及び維持する。プラズマ生成デバイス120の電力レベルは、一般性を失うことなく、商業生産規模のユニットでは約10kW~約400kW、例えば約20kW、約25kW、約30kW、約35kW、約40kW、約45kW、約50kW、約55kW、約60kW、約65kW、約70kW、約75kW、約80kW、約85kW、約90kW、約95kW、約100kW等で変動し得る。
【0046】
プラズマは、プラズマ中央ガス20、好ましくは不活性ガス、例えばアルゴン、ヘリウム又はそれらの任意の組合せから生成される。本実施形態において、プラズマ中央ガス20は、有害なレベルの窒化ホウ素化合物の生成を回避するために、実質的に水素を含まない。本明細書に記載のものとしてのICP装置において、プラズマ中央ガス20は、典型的には、トーチ本体181の上端部のプラズマ生成デバイス120のヘッド185を通してプラズマ閉じ込め管110内に供給される。RF電流は、電力リード線(図示せず)を介して誘導コイル126に供給される。プラズマ中央ガス20は、その流れがトーチ本体181と同軸となるようにプラズマ生成デバイス120内に導入され得る。代替として、プラズマ中央ガス20は、例えばその流れがトーチ本体181に対して角度を有するようにプラズマ生成デバイス120内に導入され得る。
【0047】
装置100は、プラズマ閉じ込め管110の上流、下流、又はその中の1つ又は複数の場所で少なくとも1つのプラズマシースガス40を注入するように構成され得る。例えば、
図2に示されるように、ヘッド185は、プラズマ中央ガス20用の入口に隣接してプラズマシースガス40用の入口を含む。プラズマシースガス40は、管の中央でのプラズマ放電を安定化することができ、プラズマ放電から生じる高い熱流束からプラズマ閉じ込め管110を保護し得る。いくつかの実施形態において、プラズマ112は、プラズマ中央ガス20のみから、又はプラズマ中央ガス20及びプラズマシースガス40の両方から生成され得る。プラズマシースガス40は、水素を除く当技術分野において知られている任意のプラズマシースガスであってもよく、換言すれば、プラズマ中央ガス20の場合と同様に、プラズマシースガス40もまた、有害なレベルの窒化ホウ素の生成を回避するために実質的に水素を含まない。いくつかの実施形態において、プラズマシースガスは、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)又はそれらの混合物を含む。
【0048】
装置100は、ホウ素含有前駆体材料130(「ホウ素含有原料」と呼ばれる場合がある)を注入するための原料注入器114を更に含む。ホウ素含有原料130は、液体、気体又は粉末形態であってもよい。原料注入器114は、トーチ本体181と同軸であってもよく、前駆体材料130をプラズマ112内に注入するように構成され得る。ホウ素含有原料130は、高温誘導プラズマ112内に連続的に注入されて、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを形成し得る。固体形態(例えば粉末)のホウ素含有原料を注入する場合、原料はプラズマ112内で蒸発し、蒸発セクション200内にホウ素蒸気を放出する。窒化ホウ素(BN)粉末が、多くの方法において好ましくなり得る。いくつかの方法では、BNは気化中に窒素を放出し、装置100が追加の加熱能力を有することを必要とし得る。立方晶BN粉末が好適であり得るが、この材料はかなり高価であり、そのためBNNT作製へのその使用はあまり魅力的ではない。B及びBN粉末は両方とも、多くの工業グレードで入手可能である。典型的には、より小さい粒子がより容易に気化する。
【0049】
いくつかの実施形態において、前駆体材料130は、注入器114を介した装置100への注入の前に、それと同時に、又はその後に、キャリアガスと混合され得る。キャリアガスは、典型的には、前駆体材料130と反応しないガスである。キャリアガスは、プラズマ中央ガス20と同じ種類のガスであってもよく、及び/又はガスの混合物を含んでもよく、前駆体材料130の輸送を容易にし得る。プラズマ中央ガス20と同様に、キャリアガスもまた、有害なレベルの窒化ホウ素の生成を回避するために実質的に水素を含まない。
【0050】
プラズマ生成デバイス120は、
図2に示されるような排出出口(例えば排出ノズル)を介して蒸発セクション200と流体連通している。プラズマ生成デバイス120は、前駆体材料130との接触後に、蒸発セクション200内でガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを生成させる温度で前駆体材料を加熱するプラズマ112からのプラズマジェットを生成するように構成される。この加熱は、装置100の長手方向軸に沿ってプラズマ生成デバイス120の下に伸びるプラズマ112から生成されたプラズマジェットの一部であるプラズマアフターグロー146により画定される下流ゾーンまで延長され得る。好ましくは、蒸発セクション200は、細長い気化チャンバ250を画定するように構成される。いかなる理論にも束縛されないが、その細長い設計により、蒸発セクション200はまた、蒸発セクション200内のガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを均質化させ、したがって、さもなくば核形成ポケットを形成して本明細書に記載の方法を妨害し得るガス勾配の存在を低減すると考えられる。例えば、蒸発セクション200は、例えば
図5に示されるように、プラズマアフターグロー146を取り囲むガスにおける温度を約3000K~約3500Kの範囲内に維持するように採寸及び構成され得る。
図5は、アルゴン誘導プラズマ、4MHzの発振器周波数を有する高周波電源、及び50kWのプレート電力を用いて操作された場合の、装置100の様々なセクションにおける二次元温度場を示す装置100の概略図である。固体又は液体形態のホウ素源を注入する場合、気化するには、分散したホウ素の温度が、それをガスに変換するのに十分な時間その気化温度超に保持されることが必要である。期間は、少なくとも原料粒子のサイズ及び局所温度に依存するが、典型的には、約1ミリ秒~数百ミリ秒のオーダーであり得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、装置100は、細長い気化チャンバ250内の温度を制御するために蒸発セクション200の少なくとも一部を取り囲む、及び/又は同じく核形成チャンバ350内の温度を制御するために核形成セクション300の少なくとも一部を取り囲む断熱材230を更に含んでもよいが、これについては以下で更に説明する。
【0052】
蒸発セクション200は、核形成セクション300と流体連通している。好ましくは、核形成セクション300は、異なるガスストリームライン(最終的な異なるホウ素粒子経路に対応する)にわたり実質的に均一な冷却を可能にし、ホウ素粒子の制御された核形成及び成長を可能にするように構成される。換言すれば、第1のガスストリームライン(又は粒子経路)上の第1の粒子の熱履歴は、第2の異なるガスストリームライン(又は第2の粒子経路)上の第2の粒子の熱履歴と実質的に同一である。
【0053】
例えば、核形成セクション300は、ホウ素種を含有するガスの冷却を、初期T1温度から冷却T2温度に到達させるように採寸及び構成される。例えば、T1温度は、限定されないが、3000K超の温度であってもよく、T2温度は、限定されないが、約1400K~約2500Kの温度であってもよい。例えば、
図5に示されるように、T1は約3200Kであってもよく、T2は約2700Kであってもよい。好ましくは、核形成セクション300は、核形成チャンバ350が、蒸発セクション200から離れて伸びる装置100の長手方向軸に沿って直径が増加する断面を有するテーパ形状を有するように構成される。いかなる理論にも束縛されないが、そのようなテーパ設計により、核形成チャンバ350は、異なるガスストリームラインにわたる、特にT2とT1との間に画定された核形成ゾーン380内の反応物質ガスの実質的に制御された均一な冷却を可能にし、これにより、副生成物の形成が最小限となり、得られるナノチューブの生理化学的特性のより良好な制御が提供されると考えられる。いくつかの実施形態において、ホウ素蒸気冷却は、米国特許第8,753,578号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のように、凝縮器によって局所的に誘導されてもよい。凝縮器は、例えば冷却された銅ロッド又はタングステンワイヤ又はそれらの網若しくはグリッド等の多くの形態を取り得る。主な考慮点は、凝縮器がホウ素核形成セクション300の周囲温度に耐えることができること、及び流動ストリームがその上を/それを通して容易に通ることができることである。
【0054】
本方法では、ホウ素小滴がBNNT成長の種として機能するため、金属触媒を使用する必要がなく、これは金属不含BNNTが望ましい場合に特に有利である。しかしながら、1種又は複数種の金属触媒を含めることも依然として可能である。金属触媒のいくつかの例は、純金属、金属酸化物、金属塩又はそれらの任意の混合物である。混合金属酸化物に注目すべきである。金属触媒は、例えば、ニッケル、鉄、コバルト、セリウム、イットリウム、モリブデン又はそれらの任意の混合物を含み得る。そのような金属触媒は、当技術分野において一般的に知られている。
【0055】
反応混合物に1つ又は複数の炭素源を更に提供することによって、炭素ドープBNNT(例えばB-C-Nナノチューブ、BCNNT)を生成することもまた可能である。1つ又は複数の炭素源は、任意の物理形態、例えば固体、液体又は気体であってもよい。炭素源のいくつかの例は、元素炭素(例えばグラファイト炭素、非晶質炭素)、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素(例えばアセチレン、メタン)、又はそれらの任意の混合物である。炭素による窒化ホウ素ナノチューブのドープは、特定用途のためにナノチューブの電子特性及び/又は熱特性を調整するためのバンドギャップ操作を可能にする。
【0056】
核形成セクション300は、反応セクション400と流体連通している。核形成セクション300における蒸気の初期冷却はホウ素粒子の核形成を可能にし、次いでホウ素粒子は反応セクション400内で下流の窒素種と反応して、BNNTの形成を開始し得る。このために、反応セクション400は、反応チャンバ450内に窒素含有ガスを取り込んでホウ素粒子と接触させ、BNNTを形成するための1つ又は複数の入口を更に含み得る。例えば、窒素含有ガスはアンモニア(NH
3)を含んでもよく、キャリアガスと混合して、又はキャリアガスなしで核形成セクション300から下流の反応チャンバ450内に注入され得る。キャリアガスは、好適には不活性ガス、例えばアルゴン、ヘリウム若しくはそれらの混合物であってもよく、及び/又は別の窒素含有ガス、例えば窒素(N
2)を含んでもよい。BNNTは、反応チャンバ450の通過中に成長し続ける。反応混合物が反応チャンバ450内で更に冷却されると、BNNTの連続成長は最終的に停止する。いくつかの実施形態において、反応チャンバ450は、冷却流体、例えば水又は冷却ガスが流れる冷却流体ジャケットにより冷却され得る。いくつかの実施形態において、反応セクション400は、BNNT合成に好適な温度の維持を補助するために、反応チャンバ450の少なくとも長手方向部分にわたり延在し得る所望の温度に予熱されたガスの反応チャンバ450への注入を可能にするように構成され得る。換言すれば、高温ガスの注入は、長手方向軸に沿ったより平坦な温度プロファイルを可能にし、したがって、BNNTの生成に好適な温度でのより長い滞留時間を可能にする。いくつかの実施形態において、反応チャンバ450内に注入されるガスは、窒素(N
2)を含む。そのようなガスを注入するための構造的な詳細は、例えば、PCT/CA2020/051365(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、簡潔性のためにこれ以上本明細書では説明されない。典型的には、反応セクション400内の温度は、ホウ素の融点超及びホウ素の沸点未満であり得る。例えば、反応セクション400内の温度は、
図5に示されるように約1000℃~約2000℃の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態において、温度は、長手方向軸に沿って徐々に冷却され、徐々に反応が停止されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、反応セクション400は、BNNTが収集される収集セクションと流体連通している。
【0058】
いくつかの実施形態において、BNNTは、BNNTを捕捉する多孔質フィルタを通してBNNT含有ガスを引き出すために真空ポンプを使用する、例えばUS9,862,604(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような既知の収集システムを使用して収集される。簡潔に説明すると、収集システムは、パイプを介して反応チャンバと流体連通している収集チャンバを含んでもよい。真空ポートに接続された真空ポンプは、収集チャンバ内に配置される多孔質フィルタを通してBNNT含有ガスを引き出し、そうするとガスが引き出される一方でBNNTがフィルタ及びパイプの内壁上に堆積する。次いで、BNNTがフィルタ及びパイプから収集され得る。
【0059】
別の実施形態において、BNNTは、
図3に記載のように収集システム500を使用して収集される。収集システム500は、反応チャンバ450と流体連通した入口を含んでもよく、入口は、BNNT含有ガスストリーム605が供給導管610を通って流れるのを可能にする。有利には、例えば収集システム500の下流に真空ポンプが接続され、収集システム500を通してBNNT含有ガス605が引き出され得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、収集システム500は、フィルタメッシュ625の少なくとも一部が供給導管610を通るストリーム605を横断するように、ロール615からスクリーン又はワイヤメッシュフィルタ625を直線的に供給する供給機構640を含む。例えば、スクリーン又はワイヤメッシュフィルタ625は、BNNTを捕捉しながらストリーム605を通過させるための、5mm以下、例えば1mm以下の間隔(細孔)を有し得る。いくつかの実施形態において、スクリーン又はワイヤメッシュフィルタ625は、好適な材料、例えばステンレススチールワイヤから作製され得る。スクリーン又はワイヤメッシュフィルタ625の一部が供給導管610を通して直線的に供給される場合、BNNTがスクリーン又はワイヤメッシュフィルタ625上に堆積してBNNTを有するスクリーン又はワイヤメッシュフィルタ635を形成するように、スクリーン又はワイヤメッシュフィルタ625は、BNNT含有ガス605のストリームと交差する。
【0061】
収集システム500は、供給機構640の向かいの供給導管610の片側に配置された回収機構620を更に含んでもよい。したがって、供給機構640は、横方向(
図3に矢印で示される)に沿ってロール615から回収機構620に向けてスクリーン又はワイヤメッシュフィルタ625を供給するように構成され得、BNNTを有するスクリーン又はワイヤメッシュフィルタ625は、ロール645内に装填される。
【0062】
いくつかの実施形態において、収集システム500は余剰システムを含んでもよく、供給機構640及び回収機構620が一緒になって回収構造Aを形成し、収集システム500は、回収構造Aと実質的に同一であり得る回収構造Bを含む。一実施形態において、回収構造Bは、回収構造Aから下流に位置してもよい。一実施形態において、回収構造Bは、回収構造Aから上流に位置してもよい。
【0063】
例えば、回収構造Bは、一緒になって回収構造A内の対応する機構615、620と実質的に同様に動作する供給機構615’及び回収機構620’を含んでもよい。
【0064】
使用中、操作者は、回収構造Aの弁システム630を開放/閉鎖し、回収システムBの弁システムを開放/閉鎖して、一方の回収構造から他方の回収構造に切り替えることができる。例えば、操作者は、回収構造Aの弁システム630を開放してこの回収構造を操作する一方で、回収システムBの弁システム630’を閉鎖して回収システムBをオフにすることができる。それによって、例えば、操作者は、供給機構615’及び/又は回収機構620’からスクリーン又はワイヤメッシュのロールの装填/取出しを行いながら回収構造Aを操作することが可能となり得る。読者には、変形型が可能であり、例えば、収集システム500は、1つ若しくは複数の回収構造、及び/又はそれぞれ独自の収集システムを有する1つ若しくは複数の供給導管610を含んでもよいことが理解されるだろう。
【0065】
理論に束縛されないが、本開示におけるBNNTの形成は、反応セクションの上流で形成されたホウ素ナノ粒子のサイズによって少なくとも部分的に制御されると考えられる。したがって、正しいサイズを有する粒子の量を最大化することを目指す場合、狭い粒径分布(PSD)を有すること、及びこのPSDが正しい範囲内であることを確実にすることが有利である。プロセスの第1の時点で前駆体の蒸発後極めてすぐにガス状ホウ素の核形成が生じるため、装置100は、有利には、均一な核形成及び一様な成長につながる制御された環境を提供するように設計される。
【0066】
ガス状種は、ギブスの自由エネルギーを最小化するために既存の粒子上で核形成する傾向がある。したがって、すでに核形成した粒子を装置内のガス状ホウ素に富むエリアに戻した場合、ガス状ホウ素は、新たな粒子を形成するよりも戻った粒子上で凝縮する傾向があり、この現象は粒径分布を拡大する傾向があることが推測され得る。この文脈では、再循環を排除することが有利であろう。一実施形態において、これは、装置の異なるセクション内のガス流ラインを示した装置100の概略図である
図7に示されるような層流を使用して達成され得る。読者には、プラズマトーチ120の直後の円筒形ゾーン250によって流動プロファイルを標準化することが可能となり、これは最初にプラズマの存在により強く不安定化されることが理解されるだろう。読者にはまた、様々なセクションの間の遷移部において乱流が存在しないことが理解されるだろう。
【0067】
核形成動力学はまた、粒子の周囲環境におけるホウ素濃度に依存するであろう。前駆体は最初に注入プローブの排出口で濃縮されるため、核形成プロセスの開始前に種の適切な拡散を確実にすることが有利である。
図8は、本明細書に記載の方法を実践する装置100内のホウ素の質量分率を示し、核形成ゾーン380は点線の内側に示されている。最初に、またいわゆる「一様化」円筒形ゾーン250の終わりまで、ホウ素種は、円筒形ゾーン250の入口Cの近く及び装置100の軸X上で極めて濃縮される。しかしながら、この濃縮は速やかに消散し、円筒形ゾーン250にわたる濃度の偏差は、円筒形ゾーン250の入口Cと出口Dとの間で約4分の1に減少する。次いで、濃度は、核形成ゾーン380にわたり実質的に一様になる。
【0068】
均一な核形成の文脈において、ナノ粒子のサイズは、粒子上で凝縮する蒸気の量に起因する。これは動的プロセスであるため、核形成ゾーン内で費やされる時間に関連付けることができる。新生粒子はストリームラインに沿って同伴され、したがって、核形成プロセスの一様性を評価することは、各ストリームラインの核形成ゾーン内の質量要素により消費される時間の決定に帰する。
図9は、
図7及び
図8に示される例におけるこの時間を示すグラフである。
【0069】
ここでも理論に束縛されないが、本明細書に記載の装置及び方法は、はるかに高い原料供給速度に対応するためにプロセスに注入されるNH3の割合を増加させることを可能にし、したがってそれに比例してプロセスの生産性を増大させると考えられる。更に、本発明者らは、過剰の反応性窒素種の使用が、ホウ素の窒化動力学を促進することによりナノチューブの収率を増加させ、したがって合成直後のBNNT中の未反応ホウ素の割合を最小限にし得ると推測することが合理的であると提案する。
【0070】
したがって、いくつかの実践において、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための本明細書に記載の方法は、a)ホウ素源をプラズマジェットと接触させて、ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを得る工程であって、プラズマジェットは水素を含まないプラズマガスから生成される工程と、b)ガスストリームを冷却して、冷却ガスストリームを得る工程と、c)BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り入れる工程とを含み得る。
【0071】
したがって、いくつかの実践において、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための本明細書に記載の方法は、a)ガス状ホウ素種を含有する加熱ガスストリームを提供する工程であって、加熱ガスは水素を含まない工程と、b)実質的に層流のガス流を得るようにガスストリームを制御しながら、ガスストリームを冷却して冷却ガスストリームを得る工程と、c)BNNTを得るための条件下で窒素含有ガスを冷却ガスストリームに取り入れる工程とを含み得る。
【0072】
したがって、いくつかの実践において、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための本明細書に記載の方法は、a)水素を含まないホウ素種の加熱ガスストリームを提供する工程と、b)ホウ素粒子の制御された粒径分布を得るようにガスストリームの温度及びガス流量を制御する工程と、c)BNNTを得るための条件下でホウ素粒子を窒素含有ガスと接触させる工程とを含み得る。
【0073】
したがって、いくつかの実践において、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を生成するための本明細書に記載の方法は、a)水素を含まないホウ素種の加熱ガスストリームを提供する工程と、b)ホウ素粒子の制御された粒径分布を得るようにガスストリームの温度及びガス流量を制御する工程と、c)BNNTを得るための条件下でホウ素粒子を窒素含有ガスと接触させる工程とを含み得る。
【0074】
定義
別段に定義されていない限り、本明細書において使用される技術的及び科学的用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書において使用される場合、別段に指定されない限り、又は文脈により別様に解釈されない限り、以下の用語はそれぞれ以下に記載される定義を有するものである。
【0075】
本明細書において使用される場合、「平均粒径」という用語は、粒径の平均値を指す。いくつかの実施形態において、平均粒径は、D50、すなわち全体積が100%である場合の粒径分布曲線上の50%の点での粒子直径を指す。
【0076】
本明細書において使用される場合、「実質的に」という用語は、特定された特性(例えば球形度)が明らかに損なわれることがないような十分に小さい偏差の程度を指す。許容され得る厳密な偏差の程度は、いくつかの場合において、特定の文脈に依存し得る。
【0077】
本明細書において使用される場合、「プラズマ」という用語は、イオン化されたガス状物質が、長距離電場及び磁場が物質の挙動を支配する点まで極めて電気伝導性となる物質の状態を指す。プラズマは、典型的には、中性ガスを加熱することにより、又はそのガスを強電磁場に供することにより人為的に生成される。
【0078】
「プラズマトーチ」、「プラズマアーク」、「プラズマ銃」及び「プラズマカッター」という表現は、本明細書において交換可能に使用され、プラズマの直接的な流れを生成するためのデバイスを指す。
【0079】
本明細書において使用される場合、「μm」という略語はマイクロメートルを示し、「nm」という略語はナノメートルを示す。
【0080】
本明細書において使用される場合、「粒径分布」又は「PSD」という表現は、サイズによる存在する粒子の相対量を定義する。最も容易に理解される決定方法は、異なるサイズの篩で粉末が分離される篩分析である。したがって、PSDは、個別のサイズ範囲に関して定義され、例えば、45μm~53μmのサイズの篩が使用された場合、45μm~53μmのPSDとなる。PSDは通常、試料中に存在するほぼ全てのサイズをカバーするサイズ範囲のリストにわたって決定される。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本明細書に記載のある特定の実施形態を作製及び実践するいくつかの例示的な様式を説明している。これらの実施例は、例示のみを目的としており、本明細書に記載の組成物及び方法の範囲を限定することを意図しない。
【0082】
(実施例1)
先行技術のプロセスによるBNNTの比較生成
この実施例では、プラズマ中に水素ガスを含むICPプラズマの先行技術のプロセスを使用してBNNTを生成した。
【0083】
図4に示されるような装置において、全部で50gのh-BN原料を0.8g/分の平均供給速度で1時間にわたり120kW ICPプラズマ源(Tekna Plasma Systems Inc.社、カナダ)に供給した。この装置は、フィッシュテールセクション及び多孔質セクションを含む。トーチ排出口にセラミック管を挿入して、原料の気化及びガスの混合を促進するための高温領域を形成した。セラミック管の排出口において、温度の急速な低下が核形成及びナノ粒子形成を開始する。
【0084】
2つの試験を行った。第1の試験では、乱流を最小限にするためにセラミック管排出口周辺のガス速度と一致するようにフィッシュテールガス流量を計算した。アルゴンは低い熱伝導率を有するため、熱損失を最小限にし、テーパ型高温ゾーンを提供して核形成及びナノチューブ成長を可能にするためにアルゴンが選択された。
【0085】
第2の試験では、高速アルゴンガスをクエンチセクションからの最小限の窒素注入で置き換え、熱による損傷を防止した。
【0086】
この実験に使用されたパラメータを、Table 1(表1)に示す。
【0087】
【0088】
このプロセスでBNNTが得られたが、プロセスを停止した際に窒化ホウ素もまた検出された。窒化ホウ素は極めて有毒である。このプロセスにおいて生成される最も可能性のある化合物を、Table 2(表2)に列挙する。
【0089】
【0090】
ここで、IDLH:人間の生命又は健康に直ちに危険、STEL:短期曝露限界、及びTWA:時間加重平均である。この場合では、本発明者らは、ペンタボランが全ての水素化ホウ素の中で最も安定であり、室温で液体形態であり、ジボランの熱分解から生じるため、ペンタボランが最も可能性の高い化合物であることを提案する。重要なことに、ペンタボランはまた最も致死的である。
【0091】
(実施例2)
先行技術のプロセスによるBNNTの比較生成
この実施例では、実施例1のプロセスを再現したが、15kW ICPプラズマ源(Tekna Plasma Systems Inc.社、カナダ)を使用した。操作パラメータをTable 3(表3)に記載する。
【0092】
【0093】
このプロセスでBNNTが得られたが、窒化ホウ素もまた検出された(半導体型ボランガス検出器により)。
【0094】
いかなる理論にも束縛されないが、本発明者らは、プラズマガス中の水素の存在がNH種及びBxHy種の形成をもたらし得、次いでこれらの種がH2、BxHy及びN2種に変換され、続いてクエンチ並びに金属ホウ素ナノ粒子及びアンモニアガス(NH3)の形成が生じ、続いてナノ粒子の発熱性窒化が生じ、したがってBNNTが形成されることを提案する。
【0095】
(実施例3)
BNNTの生成
この実施例では、本開示の一実施形態による水素の非存在下でのプラズマを使用してBNNTを得た。
【0096】
この趣旨で、プラズマアフターグローの下流の制御された量のアンモニアガスの導入に対応するように、TekNano-15プラズマ装置(Tekna Plasma Systems,Inc.社、カナダ)を修正した。この特定の実施例において、アンモニアガスはシステムの多孔質セクションに導入され、プラズマ生成デバイス内に水素は全く注入されなかった。これは、以下の2つの目的を果たす:(1)それ以上原子ホウ素がアンモニアから解離する水素との反応に利用可能となり得ず、したがって窒化ホウ素形成のリスクを抑制するように、全てのホウ素粒子がアンモニアガス導入点で完全に核形成されると推定される。(2)トーチに水素が導入されないため、有害な水素化ボランの形成がない。
【0097】
実験は、Table 4(表4)に記載されるガス条件で行った。
【0098】
【0099】
原料は、キャリアとして3slpm Arガスを用いた0.7g/分の供給速度でのMK-hBN-N70であった。実験は50分間行い、その間34グラムの原料を供給した。
【0100】
システムが冷却されたら、プラスチック袋をフィルタキャニスタの周りに気密状態で取り付けた。フランジを若干開け、次いで穴を袋の中に差し込み、水素化ホウ素検出試験管を挿入した。管内でのいかなる反応もなしに、すなわち水素ホウ素の形成なしに管を通して5ポンプ体積を供給した。いかなる理論にも束縛されないが、得られた実験結果によれば、実験におけるナノチューブの観察は、BのNH3による直接的な窒化から得られると考えられる。
【0101】
次いでキャニスタを開け、フィルタ及びサイクロンセクション内の写真を撮影した。
図6A及び
図6Bは、これらの写真を示す。これらの領域の両方においてナノチューブの存在が明らかである。
【0102】
水素の非存在下でのBNNTの形成は、先行技術のプラズマプロセスにおいて提案されるBH及びNHの過渡的な種の形成が発生し得ず、したがってこれらの種がBNNTの形成に関与し得ないことを示唆している。これらの結果は、BNNTがBのNH3による窒化によって得られることを示唆している。これらの結果はまた、プラズマシステムによるBNNT作製の生産性を増大させる手法を示唆しており、過剰の反応性窒素種の使用は、ホウ素の窒化動力学を促進することによりBNNTの収率を増加させ、したがって未反応ホウ素の割合を最小限化することができる。
【0103】
他の実践例は、本説明の教示を鑑みて読者に明らかとなり、したがってここでは更に説明されない。
【0104】
表題又は副題は、本開示全体を通して読者の利便性のために使用され得るが、これらは決して本発明の範囲を限定すべきではないことに留意されたい。更に、ある特定の理論が本明細書において提案及び開示され得るが、それらは決して、正しいか又は間違っているかに関わらず、いかなる特定の理論又は作用スキームに関係なく本発明が本開示に従って実践される限り、本発明の範囲を限定すべきではない。
【0105】
明細書全体を通して引用される全ての参考文献は、参照によってその全体が全ての目的において本明細書に組み込まれる。
【0106】
明細書全体にわたる「いくつかの実施形態」等への言及は、本発明に関連して記載される特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態には存在しても、又はしなくてもよいことを意味する。更に、記載される本発明の特徴は、様々な実施形態において任意の好適な様式で組み合わされてもよいことを理解されたい。
【0107】
本明細書全体を通して、ある用語の前で使用される「a」という用語は、その用語が指すものの1つ又は複数を含む実施形態を包含することが当業者には理解されるであろう。また、本明細書全体を通して、「含む」、「含有する」又は「特徴とする」と同義である「備える」という用語は、包含的又は非制限的であり、列挙されていない追加の要素又は方法の工程を除外しないことが当業者には理解されるであろう。
【0108】
別段に定義されていない限り、本明細書において使用される技術的及び科学的用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が、本明細書において使用される用語の意味に関して優先される。
【0109】
本開示において使用される場合、「ほぼ」、「約」又は「およそ」という用語は一般に、当技術分野において一般に認められる許容誤差内を意味する。したがって、本明細書において示される数量は一般に、明示的に記載されていなくても「ほぼ」、「約」又は「およそ」という用語が暗示され得るようにそのような許容誤差を含む。
【0110】
本開示の様々な実施形態を説明及び例示してきたが、本説明に照らして様々な修正及び変形を行うことができることが当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲においてより具体的に定義される。
【符号の説明】
【0111】
20 プラズマ中央ガス
40 プラズマシースガス
100 装置
110 内側円筒形プラズマ閉じ込め管、プラズマ閉じ込め管
112 プラズマ、高温誘導プラズマ
114 原料注入器、注入器
120 プラズマ生成デバイス、プラズマトーチ
126 誘導コイル
130 ホウ素含有前駆体材料、ホウ素含有原料、前駆体材料
146 プラズマアフターグロー
181 外側円筒形トーチ本体、トーチ本体
185 ヘッド
200 蒸発セクション
230 断熱材
250 円筒形ゾーン、「一様化」円筒形ゾーン
300 核形成セクション
350 核形成チャンバ
380 核形成ゾーン
400 反応セクション
450 反応チャンバ
500 収集システム
605 BNNT含有ガスストリーム、BNNT含有ガス、ストリーム
610 供給導管
615 ロール、機構
615’ 供給機構
620 回収機構
620’ 回収機構
625 フィルタメッシュ、スクリーン又はワイヤメッシュフィルタ
630 弁システム
630’ 弁システム
640 供給機構
【国際調査報告】