(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ボリュメトリック画像データ内の物質境界を特定する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20231219BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231219BHJP
G06T 7/12 20170101ALI20231219BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 373
G06T7/00 612
G06T7/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534955
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021084510
(87)【国際公開番号】W WO2022122698
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】サブシンスキ ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】ウィームカー ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】クリンダー トビアス
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA13
4C093CA35
4C093DA01
4C093EA07
4C093FA44
4C093FF16
4C093FF42
5L096AA09
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA01
5L096DA02
5L096FA06
5L096FA66
(57)【要約】
ボリュメトリック画像データ内の物質境界を特定する方法である。この方法は、距離の関数として物質境界を横断するボクセル値の予想される進行をモデル化するモデル境界遷移関数の使用に基づいている。各ボクセルが順番に取得され、ボクセルを囲むサブ領域内のボクセル値がモデル関数にフィッティングされ、モデルフィッティングの品質に関連するパラメータに加えて、対応するフィッティングパラメータが得られる。各ボクセルのこれらのパラメータに基づいて、少なくともボクセルのサブセットごとに、3D画像データセット内の物質境界上にあると推定される候補空間点が特定される。任意選択で、追加の予備ステップを適用して、例えば、物質境界までの各ボクセルの推定距離に基づいて、候補ボクセルまで、ボクセルをフィルタリングすることもできる。これは、各ボクセルのモデルパラメータの特定の組み合わせに基づいて推定できる。候補点は、特定された候補ボクセルについてのみ特定できる。その結果、境界壁の外形に空間的に対応する候補空間点群がもたらされる。これらに基づいて、境界壁の表現(例えば、表面メッシュ)を生成できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボリュメトリック画像データを処理して、前記ボリュメトリック画像データ内の物質境界を特定する方法であって、
被検体の解剖学的領域を表すボリュメトリック画像データを取得するステップと、
少なくとも、前記解剖学的領域内のボクセルのサブセットごとに、
ボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域を特定するステップであって、前記ボリュメトリックサブ領域は、少なくとも、直接隣接するボクセルのサブセットを含む、特定するステップと、
事前に決定された境界遷移関数を取得するステップであって、前記事前に決定された境界遷移関数は、特定する前記物質境界を横断する距離の関数として予想されるボクセル値のモデルを表す、取得するステップと、
前記事前に決定された境界遷移関数を、前記ボリュメトリックサブ領域内に含まれる前記ボクセル値にフィッティングするステップであって、前記モデル関数のフィッティングパラメータを決定することを含む、フィッティングするステップと、
前記モデル関数のフィッティングの品質を示すフィッティング品質パラメータを決定するステップと、
を含み、
前記方法は更に、
各ボクセルの、決定された前記フィッティングパラメータ及び前記フィッティング品質パラメータに基づいて、前記物質境界の場所の候補空間点を特定するステップと、
少なくとも、特定された前記候補空間点のサブセットに基づいて、前記ボリュメトリック画像データ内の前記物質境界を推定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記境界遷移関数は、前記物質境界の片側にある最小ボクセル値m
lowから、前記物質境界のもう片側にある最大ボクセル値m
highまでの進行として、前記ボクセル値をモデル化し、前記フィッティングパラメータは、
前記最小ボクセル値m
low、
前記最大ボクセル値m
high、
前記物質境界からの前記ボクセルの垂直距離d、及び
前記物質境界の単位法線ベクトル、
のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記候補空間点を特定するステップは、候補ボクセルを特定する予備ステップを含み、各候補空間点は、各候補ボクセルについて、前記候補ボクセルの前記フィッティングパラメータに基づいて特定され、候補ボクセルを特定する前記予備ステップは、前記フィッティングパラメータの値のうちの1つ以上に基づいて、及び/又は、前記フィッティング品質パラメータの値に基づいて、イメージングされた前記解剖学的領域内のボクセルのマスキングを実行するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
各ボクセルの前記フィッティング品質パラメータであって、各ボクセルは、前記フィッティング品質パラメータが、前記フィッティングの品質の事前に定義された参照値を超えることに依存してマスキングされる、前記フィッティング品質パラメータ、
各ボクセルの最大ボクセル値m
high及び最小ボクセル値ml
owの値であって、各ボクセルは、最大ボクセル値m
high及び最小ボクセル値m
lowの前記値が、最大ボクセル値m
high及び最小ボクセル値m
lowの参照値の事前に決定されたペアの事前に定義された許容範囲内にあることに依存してマスキングされ、前記参照値は、関心の特定の物質境界に対応する、最大ボクセル値m
high及び最小ボクセル値ml
owの前記値、及び
各ボクセルの前記垂直距離dであって、各ボクセルは、前記垂直距離値dが、垂直距離値dの参照値の事前に定義された許容範囲内にあることに依存してマスキングされる、前記垂直距離d、
のうちの1つ以上に基づいて、別個のマスクが生成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
複数のマスクが、異なるパラメータに対して生成され、組み合わせで前記ボリュメトリック画像データに適用され、マスクの前記組み合わせの相互に重なり合う領域にあるボクセルが、前記候補ボクセルとして特定される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記フィッティングパラメータには、前記物質境界からの前記ボクセルの垂直距離d、及び前記物質境界の単位法線ベクトルが含まれ、
前記候補空間点を特定する前記ステップは、単位法線方向に沿ってボクセル位置から距離dにある点の座標を特定するステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記物質境界を推定するステップは更に、前記物質境界を表す表面メッシュを生成するステップを含み、前記表面メッシュは、少なくとも、特定された前記候補空間点のサブセットを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
取得した前記ボリュメトリック画像データが、X線CTボリュメトリック画像である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
取得した前記ボリュメトリック画像データが、スペクトル画像データであって、複数の画像データセットを含み、各画像データセットは、異なるスペクトルデータチャネルに対応するデータから形成され、前記方法は、前記画像データセットの各々に対して実行され、各スペクトルチャネルについて、異なる事前に決定された物質境界遷移関数が存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記物質境界は、解剖学的構造の構造壁を表す、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記物質境界は、例えば結腸である内腔の境界を定める解剖学的構造の壁を表す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムコードは、プロセッサ上で実行可能であり、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を前記プロセッサに実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項13】
ボリュメトリック画像データを処理して、前記ボリュメトリック画像データ内の物質境界を特定する処理装置であって、
被検体の解剖学的領域を表すボリュメトリック画像データを取得することと、
少なくとも、前記解剖学的領域内のボクセルのサブセットごとに、
ボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域を特定することであって、前記ボリュメトリックサブ領域は、少なくとも、直接隣接するボクセルのサブセットを含む、特定することと、
事前に決定された境界遷移関数を取得することであって、前記事前に決定された境界遷移関数は、特定する前記物質境界を横断する距離の関数として予想されるボクセル値のモデルを表す、取得することと、
前記事前に決定された境界遷移関数を、前記ボリュメトリックサブ領域内に含まれる前記ボクセル値にフィッティングすることであって、前記モデル関数のフィッティングパラメータを決定することを含む、フィッティングすることと、
前記モデル関数のフィッティングの品質を示すフィッティング品質パラメータを決定することと、
を実行し、
前記処理装置は更に、
各ボクセルの、決定された前記フィッティングパラメータ及び前記フィッティング品質パラメータに基づいて、前記物質境界の候補空間点を特定することと、
少なくとも、特定された前記候補空間点のサブセットに基づいて、前記ボリュメトリック画像データ内の前記物質境界を推定することと、
を実行する、処理装置。
【請求項14】
前記境界遷移関数は、前記物質境界の片側にある最小ボクセル値m
lowから、前記物質境界のもう片側にある最大ボクセル値m
highまでの進行として、前記ボクセル値をモデル化し、前記フィッティングパラメータは、
前記最小ボクセル値m
low、
前記最大ボクセル値m
high、
前記物質境界からの前記ボクセルの垂直距離d、及び
前記物質境界の単位法線ベクトル、
のうちの1つ以上を含む、請求項13に記載の処理装置。
【請求項15】
前記候補空間点を特定することは、候補ボクセルを特定することを含み、各候補空間点は、各候補ボクセルの前記フィッティングパラメータに基づいて特定され、前記候補ボクセルを特定することは、前記フィッティングパラメータの値のうちの1つ以上に基づいて、及び/又は、前記フィッティング品質パラメータの値に基づいて、イメージングされた前記解剖学的領域内のボクセルのマスキングを実行することを含む、請求項13又は14に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法に関し、特にボリュメトリック画像データ内の物質境界を特定する画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボリュメトリックイメージングの分野では、イメージングされた領域内の特定の構造の境界又は壁を特定して視覚化できることが一般的に有用である。この必要性は、例えば、臓器やその一部など、特定の解剖学的構造の壁の形態の表現を生成することが有用である医用イメージングの分野において発生する。これが有用である特定の分野の1つは、仮想結腸内視鏡検査の分野である。
【0003】
仮想結腸内視鏡検査は、例えばX線コンピュータ断層撮影(CT)イメージングを使用して取得したボリュメトリック画像データを使用する結腸壁の目視検査である。結腸壁の視覚化は、通常、ボリュームレンダリング技術を使用して行われる。その結果、結腸内視鏡検査中の実際の内視鏡のビューと同様の画像印象が得られる。
【0004】
結腸内視鏡検査は、結腸内のポリープを特定するために使用される。結腸内のポリープは、結腸がんに発展する可能性がある。早期に切除すれば、がんを効果的に予防できる。したがって、一定年齢以上の無症候性の患者であっても、ポリープの可能性を検出し評価するために、結腸の内視鏡検査(結腸内視鏡検査)を行うことが推奨される。残念ながら、このスクリーニングは、主に内視鏡検査に関連する不快感からあまり受け入れられていない。
【0005】
そのため、CTスキャンに基づく非侵襲的な仮想結腸内視鏡検査(VC)が代替として開発されている。
【0006】
VCは、通常、直接ボリュームレンダリング技術を使用する。直接ボリュームレンダリングでは、CTボリュメトリック画像データセットの各ボクセルについて、そのハウンズフィールド密度値を不透明度及びカラー値にマッピングする伝達関数(TF)が使用される。この不透明度及びカラーは、VC画像に投影され、結腸の仮想レンダリングが作成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このアプローチにはいくつかの欠点がある。
【0008】
まず、伝達関数の形式とパラメータによっては、レンダリングされた画像の結腸壁の見かけの位置が異なり、実際の結腸壁の位置と正確に一致しない場合がある。
【0009】
第2の問題は、結腸内に残留便又は排泄物があることにより発生する。これは、CTスキャンデータ内で結腸壁組織に似たコントラストを有する。そのため、その存在は、結腸壁のビューを不明瞭にする可能性がある。これを解決するために、通常は、仮想クレンジングと呼ばれるプロセスが実行される。これは通常、残留便又は排泄物に関連する画像の一部を除去する前処理ステップを含む。この画像の前処理は、通常、下剤を経口投与して便を除去した後、残っている便にタグ付けをするために、CTイメージングの前にヨウ素を含む造影剤を投与することによってサポートされる。このタグ付けは、データ収集後に画像から残っている排泄物をデジタルで除去する際に役立つ。
【0010】
ただし、ボクセル単位の仮想クレンジング(VC)方法は、純粋な物質のハウンズフィールド値がわかっていることに依存している。通常、VCには、空気、軟部組織、及びタグ付けされた排泄物の3つの異なるクラスの関連物質があると想定されている。しかし、空気を除いて、軟組織とタグ付けされた排泄物のハウンズフィールド値は、CT画像ごとにだけでなく、単一のCT画像内でも異なる。したがって、純粋な物質のハウンズフィールド値の知識に依存するクレンジング方法は、レンダリングされた画像にアーチファクトを生成する可能性がある。更に、純粋な物質の物質特性が正確にわかっている場合でも、ボクセル単位のレンダリング方法では、3つの物質の遷移部で幾何学的アーチファクトが生成する可能性がある。VCでは、これらは、結腸壁に3つの純粋な物質(空気、組織、タグ付けされた排泄物)全てが接触する場所である「水位」アーチファクトとして現れる。
【0011】
ボリュメトリックイメージングデータセット内の物質境界を特定する改良されたアプローチが、仮想結腸内視鏡検査だけでなく、関心のターゲット物体の境界が特定される任意の領域のイメージングにも有用である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
【0013】
本発明の一態様による実施例によれば、ボリュメトリック画像データを処理して、当該データ内の物質境界を特定する方法が提供される。この方法は、
被検体の解剖学的領域を表すボリュメトリック画像データを取得するステップと、
少なくとも、解剖学的領域内のボクセルのサブセットごとに、
ボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域を特定するステップであって、このサブ領域は、少なくとも、直接隣接するボクセルのサブセットを含む、特定するステップと、
事前に決定された境界遷移関数を取得するステップであって、この境界遷移関数は、特定する物質境界を横断する距離の関数として予想されるボクセル値のモデルを表す、取得するステップと、
事前に決定された境界遷移関数を、ボリュメトリックサブ領域内に含まれるボクセル値にフィッティングするステップであって、モデル関数のフィッティングパラメータを決定することを含む、フィッティングするステップと、
モデル関数のフィッティングの品質を示すフィッティング品質パラメータを決定するステップとを含み、
上記の方法は更に、各ボクセルの、決定されたフィッティングパラメータ及びフィッティング品質パラメータに基づいて、物質境界の場所の候補空間点を特定するステップと、
少なくとも、特定された候補点のサブセットに基づいて、上記データ内の物質境界を推定するステップとを含む。
【0014】
本発明の実施形態は、物質遷移のモデルに基づいて、物質境界壁の表現を得る様々なアプローチに基づいている。提案されるアプローチでは、前に生成されたモデル関数を使用する。このモデルは、物質境界を横断するボクセル値の進行をモデル化する。各ボクセルを囲む領域をこのモデルにフィッティングすることと、フィッティングパラメータ及びフィッティング品質を計算することとに基づいて、少なくとも、ボクセルのサブセットごとに、境界上にある又は境界の付近にあると推定される候補空間点を特定できる。
【0015】
いくつかの実施例では、各ボクセルのフィッティングパラメータ及びフィッティング品質に基づいて、物質境界上にある可能性が最も高いボクセルの特定のサブセットを、候補ボクセルとして最初に特定する追加のステップを実行できる。そして、これらの候補ボクセルの各々について、境界空間点が特定される。これらは、モデルフィッティングパラメータ(例えば、物質境界までの各ボクセルの距離)に基づいて、更に縮小するようにフィルタリングされる。
【0016】
したがって、これが、例えばより一般的なボリュームレンダリング技術と比べて全く異なる物質境界を特定するアプローチとなるゆえんである。前述のように、ボリュームレンダリングでは、各ボクセルを、ボクセル密度値から不透明度及びカラー値にマッピングするために伝達関数(TF)を使用する。本発明の実施形態によるアプローチは、物質境界の特定に特化したものであり、事前に決定された物質遷移関数を、各ボクセルを囲むボリュメトリック領域にフィッティングした結果に基づいて、物質境界の場所に対応する空間点を特定することを目的とする。空間点はボクセル間空間点であり、つまり、各ボクセルの中心を示す座標位置間にある。
【0017】
このアプローチでは、位置及び形状の両方について、レンダリングされた境界壁のより正確な結果が提供され、ボリュームレンダリング技術を使用すると発生する可能性のある幾何学的アーチファクトが減少する。
【0018】
このアプローチは、仮想結腸内視鏡検査の分野で有利に使用されるが、医用イメージング分野や医用イメージング分野以外の幅広い分野でも使用できる。このアプローチは、その場所を特定する必要のある物質境界を含む任意の領域を表すボリュメトリック画像データに使用できる。
【0019】
好ましくは、各ボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域には、全ての直接隣接するボクセルが含まれている。
【0020】
候補空間点の特定、フィッティングパラメータ及び/又はフィッティング品質パラメータから得られる更なる(二次)パラメータに基づいて行われてもよい。
【0021】
境界遷移関数は、物質境界の片側にある最小ボクセル値mhighから、物質境界のもう片側にある最大ボクセル値mlowまでの進行として、ボクセルの値をモデル化できる。
【0022】
フィッティングパラメータには、
最小ボクセル値mlow、
最大ボクセル値mhigh、
物質境界からのボクセルの垂直距離d、及び
物質境界の単位法線ベクトル、のうちの1つ以上が含まれる。
【0023】
垂直距離とは、境界に垂直な方向に沿った距離を意味する。
【0024】
フィッティングパラメータには更に、データ取得装置(CTスキャナなど)の点拡がり関数の幅σが含まれ得る。
【0025】
フィッティングパラメータには、事前にわかっているもの(例えば、σ)もあれば、測定されるものもある。
【0026】
候補空間点の特定は、1つ以上のフィッティングパラメータの測定された値に基づいて行われても、及び/又はフィッティングパラメータから得られる更なるパラメータに基づいて行われてもよい。更なるパラメータには、例えば、mhigh(i)とmlow(i)との絶対差、及び/又は関数の少なくとも一部の勾配を示すパラメータが含まれる。
【0027】
フィッティング品質パラメータは、モデル関数のフィッティングのフィッティング品質を特徴付ける数量である。例として、フィッティング品質パラメータには、フィッティング最適性基準の尺度、フィッティングの良さ、フィッティングからの剰余、フィッティングの成功の尺度、及び結果の許容範囲のうちの任意の1つ以上が含まれる。
【0028】
いくつかの実施形態では、候補空間点の特定は、候補ボクセルを特定する予備ステップを含み、各候補点は、各候補ボクセルのフィッティングパラメータに基づいて特定される。つまり、これは、ボクセルのセット全体を、正確又は信頼性の高い推定境界空間点をもたらす可能性が最も高いボクセルに縮小又はフィルタリングするステップである。候補ボクセルの特定は、各ボクセルの、決定されたフィッティングパラメータ及び/又はフィッティング品質パラメータに基づいて行われ得る。
【0029】
候補ボクセルの特定は、各ボクセルについて得られた様々なパラメータ(モデルフィッティングパラメータ、フィッティング品質パラメータ、又はこれらから得られる任意の数量)の参照値に基づいて行われ得る。参照値は、関心の物質境界についてのこれらのパラメータの予想値に対応し得る。例えば、ターゲット物質境界の両側の典型的なmhigh及びmlowは、例えば、境界を含む領域の以前のスキャンデータから事前にわかっている場合がある。したがって、候補ボクセルは、パラメータ値が参照値の事前に定義された許容範囲内にあるボクセルとして特定できる。
【0030】
いくつかの実施例では、候補ボクセルの特定は、フィッティングパラメータ及び/又はフィッティング品質パラメータから得られる更なる(二次)パラメータに基づいて行われてもよい。
【0031】
いくつかの実施例では、候補ボクセルの特定は、フィッティングパラメータの値のうちの1つ以上に基づいて、及び/又は品質パラメータの値に基づいて、イメージングされた解剖学的領域内のボクセルのマスキングを実行することを含み得る。
【0032】
異なるフィッティングパラメータの各々について、及びフィッティング品質パラメータについて、別個のマスクが生成されてもよい。いくつかの実施例では、複数のこれらのマスクを組み合わせてボリュメトリック画像データに適用でき、マスクのセットの相互に重なり合う領域にあるボクセルが、候補ボクセルとして特定される。
【0033】
いくつかの実施例では、フィッティングパラメータ、フィッティング品質パラメータ、及びそれらから得られる任意の二次パラメータの各々に基づいて、イメージングされた解剖学的領域の新しい画像又は画像表現が生成される。特に、各パラメータについて、イメージングされた領域の新しい画像表現が得られる。各ボクセルのボクセル値は、そのボクセルについて得られたパラメータ値と同じに設定される。
【0034】
その後、マスキングが、新しく構築された画像の各々に、その構築された画像が表す対応するパラメータの参照値に基づいて適用される。いくつかの実施例では、これらのマスクを1つのマスクに組み合わせて、元のボリュメトリック画像データに適用して、全てのマスクの重なり領域にあるボクセルとして候補ボクセルを特定する。
【0035】
いくつかの実施例では、マスキングで使用される基準は、物質境界がボクセルのボリュメトリックサブ領域内にあるボクセルを特定するように較正される。しかしながら、これは必須ではない。
【0036】
各ボクセルのフィッティング品質パラメータであって、各ボクセルは、フィッティング品質パラメータが、フィッティング品質の事前に定義された参照値を超えることに依存してマスキングされる、フィッティング品質パラメータ、
各ボクセルのmhigh及びmlowの値であって、各ボクセルは、mhigh及びmlowの値が、mhigh及びmlowの参照値の事前に決定されたペアの事前に定義された許容範囲内にあることに依存してマスキングされ、参照値は、関心の特定の物質境界に対応する、mhigh及びmlowの値、及び
各ボクセルの距離dであって、各ボクセルは、距離値dが、dの参照値の事前に定義された許容範囲内にあることに依存してマスキングされる、距離d、
のうちの1つ以上の各々に基づいて、別個のマスクが生成/適用される。
【0037】
有利な実施例では、少なくともフィッティング品質パラメータ、並びにmhigh及びmlowの値についてマスキングが行われる。これは、これらが最も直接的にボクセルと関心の物質境界に近いボクセル領域との対応関係を反映しているためである。mhigh及びmlowの各々に別個のマスクが生成されても、値の組み合わせペアに対して単一のマスクが生成されてもよい。
【0038】
1つ以上の実施形態に従って、複数のマスクが、異なるパラメータに対して生成され、組み合わせでボリュメトリック画像データに適用され、マスクの組み合わせの相互に重なり合う領域にあるボクセルが、候補ボクセルとして特定される。
【0039】
そして、これらの候補ボクセルの各々について、候補空間点が得られる。候補ボクセルから得られる候補空間点のセットは、通常、物質境界の候補点群を表す。点群は、特定される物質境界を定める。
【0040】
最初に候補ボクセルのセットを特定し、次に候補ボクセルごとに候補空間点を決定する代わりに、このプロセスをボクセルごとに実行できる。ここでは、各ボクセルが順番に評価されて、候補ボクセルとして事前に定義された基準を満たしているかどうかが決定され、満たしている場合は、そのボクセルについて得られたフィッティングパラメータを使用して、候補空間点が決定される。この代替実施例では、別個のマスキングステップが不要である。代わりに、前述のマスクを得るための評価基準と同じ評価基準をボクセルごとに適用できる。
【0041】
いくつかの実施例では、各ボクセルのフィッティングパラメータには、物質境界からのボクセルの垂直距離d、及び物質境界の単位法線ベクトルが含まれる。ボクセルの候補空間点の特定は、単位法線方向に沿ってボクセル位置から距離dにある点の座標を特定することを含み得る。
【0042】
1つ以上の実施形態に従って、物質境界の推定は更に、物質境界を表す表面メッシュを生成することを含み、表面メッシュは、少なくとも、特定された候補候補空間点のサブセットを含む。
【0043】
メッシュの生成は、少なくとも空間点のサブセットからの空間点を、三角形となるように結び付けることを含む。
【0044】
これにより、表面のレンダリングがより明確になる。
【0045】
ただし、メッシュの生成は、必須ではなく、代わりに物質境界の異なる表現が生成されてもよい。例えば、単に物質境界の場所に対応すると特定された空間点座標位置の配列を表現として使用できる。
【0046】
1つ以上の実施形態に従って、取得したボリュメトリック画像データは、X線CTボリュメトリック画像データである。
【0047】
いくつかの実施例では、上記の方法は、CT投影データを受信することと、ボリュメトリック画像データを得るために画像再構成を実行することとを含む。他の実施例では、上記の方法は、再構成済みのボリュメトリック画像データを受信することを含む。
【0048】
CTデータの代案として、例えば、MRI画像データ又はボリュメトリック超音波データがある。
【0049】
1つ以上の実施形態に従って、得たボリュメトリック画像データは、スペクトル画像データである。このデータには、複数の画像データセットが含まれ、各セットは異なるスペクトルデータチャネルに対応するデータから形成される。本発明による方法は、各データセットに対して実行され、各スペクトルチャネルについて、異なる事前に決定された物質遷移関数が存在する。
【0050】
一例として、X線スペクトルCTデータの使用がある。X線スペクトルCTは、複数のX線エネルギーの投影データを取得することで、従来のX線CTシステムの機能を拡張するイメージングモダリティである。これは、異なるX線エネルギーを区別できる検出器(エネルギーを区別する光子計数検出器やエネルギー積分検出器など)を組み込むか、X線エネルギースペクトルを順次変更して対応する検出器データを順次取得することで行うことができる。スペクトルX線データにより、スキャンした物体に含まれている物質を判別し、定量化できる。これは、異なる物質が異なるX線吸収スペクトルを持つ可能性があるためである。例えば、関心物質によって最大又は最小に吸収されることが知られているX線エネルギースペクトルを使用できる。
【0051】
異なるスペクトルチャネルからのデータを使用して異なる物質境界表現を生成することで、補足情報が提供される。異なるスペクトルチャネルからの画像データは、イメージングされる物体の物質組成によって異なるためである。例えば、異なる物質の複数ペア間の境界を特定して組み合わせることで、異なる物質遷移によってマークされる臓器の境界壁の特定を強化できる。
【0052】
一例として、スペクトルCTイメージングをCTコロノグラフィの分野に使用して、投影されたX線エネルギーの低エネルギーレベルと高エネルギーレベルとに対応する多数の(少なくとも2つの)スペクトルチャネルを生成できる。スペクトルチャネルは、ヨウ素濃度マップなどを含む様々な表現に変換できる。これにより、イメージングされた結腸内の造影剤分布を視覚化できる。コロノグラフィの文脈では、いくつかの実施形態において、複数のスペクトルチャネルデータを使用して、(上記の)仮想クレンジングの実行を支援できる。
【0053】
1つ以上の実施形態に従って、特定される物質境界は、解剖学的構造の構造壁を表す。
【0054】
いくつかの実施例では、物質境界は、例えば結腸である内腔の境界を定める解剖学的構造の壁を表す。
【0055】
本発明の更なる態様に従う実施例は、コンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラムコードは、プロセッサ上で実行可能であり、プロセッサに、上記若しくは後述の任意の実施例若しくは実施形態に従う、又は本出願の任意の請求項に従う方法を実行させる。
【0056】
本発明の更なる態様による実施例は、ボリュメトリック画像データを処理して、当該データ内の物質境界を特定する処理装置も提供する。この処理装置は、
被検体の解剖学的領域を表すボリュメトリック画像データを取得することと、
解剖学的領域内のボクセルごとに、
ボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域を特定することであって、このサブ領域は、少なくとも、直接隣接するボクセルのサブセットを含む、特定することと、
事前に決定された境界遷移関数を取得することであって、この境界遷移関数は、特定する物質境界を横断する距離の関数として予想されるボクセル値のモデルを表す、取得することと、
事前に決定された境界遷移関数を、ボリュメトリックサブ領域内に含まれるボクセル値にフィッティングすることであって、モデル関数のフィッティングパラメータを決定することを含む、フィッティングすることと、
モデル関数のフィッティングの品質を示すフィッティング品質パラメータを決定することと、を実行し、
上記の処理装置は更に、各ボクセルの、決定されたフィッティングパラメータ及びフィッティング品質パラメータに基づいて、物質境界の候補空間点を特定することと、
少なくとも、特定された候補点のサブセットに基づいて、上記データ内の物質境界を推定することとを実行する。
【0057】
1つ以上の実施形態に従って、境界遷移関数は、物質境界の片側にある最小ボクセル値mlowから、物質境界のもう片側にある最大ボクセル値mhighまでの進行として、ボクセル値をモデル化でき、フィッティングパラメータは、
最小ボクセル値mlow、
最大ボクセル値mhigh、
境界からのボクセルの垂直距離d、及び
境界の単位法線ベクトル、のうちの1つ以上を含む。
【0058】
いくつかの実施例では、候補空間点の特定は、候補ボクセルを特定する予備ステップを含み、各候補点は、各候補ボクセルのフィッティングパラメータに基づいて特定される。候補ボクセルの特定は、フィッティングパラメータの値のうちの1つ以上に基づいて、及び/又はフィッティング品質パラメータの値に基づいて、イメージングされた解剖学的領域内のボクセルのマスキングを実行することを含み得る。
【0059】
いくつかの実施例では、
各ボクセルのフィッティング品質パラメータであって、各ボクセルは、フィッティング品質パラメータが、フィッティング品質の事前に定義された参照値を超えることに依存してマスキングされる、フィッティング品質パラメータ、
各ボクセルのmhigh及びmlowの値であって、各ボクセルは、mhigh及びmlowの値が、mhigh及びmlowの参照値の事前に決定されたペアの事前に定義された許容範囲内にあることに依存してマスキングされ、参照値は、関心の特定の物質境界に対応する、mhigh及びmlowの値、及び
各ボクセルの距離dであって、各ボクセルは、距離値dが、dの参照値の事前に定義された許容範囲内にあることに依存してマスキングされる、距離d、
のうちの1つ以上の各々に基づいて、別個のマスクが適用される。
【0060】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明をより深く理解し、それがどのように実行されるかをより明確に示すために、ほんの一例として添付の図面を参照する。
【0062】
【
図1】
図1は、1つ以上の実施形態による方法例のステップの概要を説明する。
【
図2】
図2は、1つ以上の実施形態による、各ボクセルに対してモデル境界遷移関数をフィッティングするために使用されるモデリングパラメータを概略的に示す。
【
図3】
図3は、1つ以上の実施形態による境界遷移関数例を概略的に示す。
【
図4】
図4は、特定対象の物質境界を含むボリュメトリック画像データセット例の1つのスライスを示す。
【
図5(a)】
図5(a)は、画像データセット内の各ボクセルに対して計算されたモデル関数パラメータ(物質境界の片側にある最小ボクセル値m
low)の画像表現を表す。
【
図5(b)】
図5(b)は、画像データセット内の各ボクセルに対して計算されたモデル関数パラメータ(物質境界のもう片側にある最大ボクセル値m
high)の画像表現を表す。
【
図6】
図6は、各ボクセルについて得られたモデルフィッティング品質パラメータの画像表現を表す。
【
図7】
図7は、関心の物質境界から各ボクセルの決定された絶対距離の画像表現を表す。
【
図8】
図8は、各ボクセルについて決定されたm
lowモデルパラメータ値に基づくボクセルのマスキングを示す。
【
図9】
図9は、各ボクセルについて決定されたm
highモデルパラメータ値に基づくボクセルのマスキングを示す。
【
図10】
図10は、
図8及び
図9のマスクを元のボリュメトリック画像データセットに重ね合わせた結果を示す。
【
図11】
図11は、適用されたマスクの組み合わせの重なり領域に位置していたボクセルから得られた抽出された候補点群の図を示す。
【
図12】
図12は、適用されたマスクの組み合わせの重なり領域に位置していたボクセルから得られた抽出された候補点群の図を示す。
【
図13】
図13は、候補ボクセルから得られた候補空間点に基づいて構築された表面メッシュ例の図を示す。
【
図14】
図14は、候補ボクセルから得られた候補空間点に基づいて構築された表面メッシュ例の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、図を参照して説明される。
【0064】
詳細な説明及び具体的な実施例は、装置、システム、及び方法の模範的な実施形態を示しているが、説明のみを目的としたものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。本発明の装置、システム、及び方法のこれらの及び他の特徴、態様並びに利点は、次の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるようになるであろう。図は単なる概略図であり、縮尺どおりに描かれていないことが理解されるべきである。また、図全体で同じ参照番号を使用して、同じ部分又は類似の部品を示すことが理解されるべきである。
【0065】
本発明は、ボリュメトリック画像データ内の物質境界を特定するための新しいアプローチを提供する。このアプローチは、距離の関数として物質境界を横断するボクセル値の予想される進行をモデル化するモデル境界遷移関数の使用に基づいている。各ボクセルが順番に取得され、ボクセルを囲むサブ領域内のボクセル値がモデル関数にフィッティングされ、モデルフィッティングの品質に関連するパラメータに加えて、対応するフィッティングパラメータが得られる。各ボクセルのこれらのパラメータに基づいて、少なくともボクセルのサブセットごとに、3D画像データセット内の物質境界上にあると推定される候補空間点が特定される。任意選択で、追加の予備ステップを適用して、例えば、物質境界までの各ボクセルの推定距離に基づいて、候補ボクセルまで、ボクセルをフィルタリングすることもできる。これは、各ボクセルのモデルパラメータの特定の組み合わせに基づいて推定できる。候補点は、特定された候補ボクセルについてのみ特定できる。その結果、境界壁の外形に空間的に対応する候補空間点群がもたらされる。これらに基づいて、境界壁の表現(例えば、表面メッシュ)を生成できる。
【0066】
図1は、1つ以上の実施形態による方法例の基本ステップの概要を説明するブロック図を示している。方法10は、コンピュータ実施方法である。この方法は、ボリュメトリック画像データ内の物質境界を特定するためにボリュメトリック画像データを処理するためのものである。
【0067】
方法10は、被検体の解剖学的領域を表すボリュメトリック画像データを取得するステップ12を含む。
【0068】
方法10は更に、少なくとも解剖学的領域内のボクセルのサブセットごとに、次の各ステップを実行することを含む。即ち、
ボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域を特定するステップ14であって、このサブ領域は、少なくとも直接隣接するボクセルのサブセットを含む、特定するステップ14と、
特定する物質境界を横断する距離に関してボクセル値の事前に決定されたモデル関数を表す、事前に決定された境界遷移関数を取得するステップ16と、
事前に決定された境界遷移関数を、ボリュメトリックサブ領域内に含まれるボクセル値にフィッティングするステップ18であって、このフィッティングには、モデル関数のフィッティングパラメータを決定することを含む、フィッティングするステップ18と、
モデル関数のフィッティングの品質を示すフィッティング品質パラメータを決定するステップ20とを実行する。
【0069】
いくつかの実施例では、上記のステップは、イメージングされた領域内の全てのボクセルに対して実行される。しかし、他の実施例では、メインの方法を適用する前に、特定のボクセル(境界位置と一致する可能性の低いと推定される)を除去又はフィルタリングするために1つ以上の前処理ステップが実行されてもよい。
【0070】
各ボクセルについて上記のステップが実行されると、方法は更に、各ボクセルの決定されたフィッティングパラメータとフィッティング品質パラメータとに基づいて、境界壁の候補空間点を特定するプロセス22を含む。例えば、1つの実施形態のセットでは、フィッティングパラメータには、物質境界からボクセルの垂直距離dと、物質境界の単位法線ベクトルとが含まれており、候補空間点を決定することは、単位法線方向に沿ってボクセル位置からの距離dにある点の座標を決定することを含む。
【0071】
候補空間点が特定された(22)後、方法は更に、特定された候補空間点に基づいてデータ内の物質境界を推定すること(24)を含む。
【0072】
いくつかの実施例では、特定された候補空間点に基づいて、又は、抽出されたそのサブセットに基づいて、表面メッシュが生成される。他の実施例では、単に特定された候補空間点の座標位置の配列、又は抽出されたそのサブセットを含む境界の表現が生成される。
【0073】
上記の方法は、1つのプロセッサか、又は1つ以上のプロセッサを含む処理装置によって実行される。ボリュメトリック画像データを取得することは、イメージング装置など(例えば、CT又はMRIスキャン装置)の外部ソース、又はデータストアからボリュメトリック画像データを受信することを含む。更なる実施例では、ボリュメトリック画像データを得ることは、再構成されていないスキャンデータ(CT投影データなど)を受信することと、ボリュメトリック画像データを再構成するステップを実行することとを含む。
【0074】
本発明の実施形態は、ボリュメトリック画像データ(例えば、CT画像データ)における離散的な純粋な物質クラス間の物質遷移の出現の数学的モデルに基づいている。しかしながら、同じ原理は、MRIなどの他の形態のボリュメトリック画像データにも適用できる。
【0075】
問題の特定の物質遷移に応じて、異なるモデル物質遷移関数が適用可能である。例えば、異なるモデル関数は、物質境界の各側の組織密度、遷移が発生する一般的な距離、及び境界の潜在的な幾何学的特性によって異なる。
【0076】
図2に、モデル境界遷移関数に使用されるモデルが概略的に示されている。これは2物質遷移を表している。しかし、同じ原理を他の遷移(例えば3物質遷移)にも適用できる。
【0077】
図2を参照すると、2物質遷移は、モデル関数g(m
high、m
low、d、n、σ)によってモデル化できる。ここで、m
lowは、2物質遷移境界34の第1の側38a及び第2の側38bにおける2つの純粋な物質の予想される低いボクセル32値であり、m
highは、予想される高いボクセル値である。例えば、画像データがCT画像データである場合、ボクセル値はハウンズフィールド値になる。パラメータdは、物質境界34から、関数がフィッティングされるボクセルiまでの垂直距離を表し、nは、物質境界の単位法線ベクトルを表す。パラメータσは、スキャン装置(CTスキャナなど)の点拡がり関数の幅を表す。
【0078】
各ボクセルiについて、モデル関数は、ボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域36内のボクセル32の値にフィッティングされる。これは、固定サイズのサブ領域であり、例えば全ての辺で問題のボクセルから1つのボクセル分離れて延在する。つまり、3ボクセル単位長の立方体である。これには、直接隣接する全てのボクセルが含まれる。これには、直接隣接するボクセルよりも多くのボクセルが含まれていてもよい。例えば5×5×5若しくは7×7×7ボクセル、又は任意の他の数の立方体が含まれる。
【0079】
図3は、境界遷移関数例を概略的に示している。境界遷移関数は、物質境界34の片側にある最大ボクセル値m
highから、物質境界34のもう片側にある最小ボクセル値m
lowまでの進行として、ボクセル32の値をモデル化する。関数は非線形である。
図3は、モデルがフィッティングされ得るボクセル例iの位置を示し、物質境界34からのボクセルの距離を表すモデルフィッティングパラメータdを示している。いくつかの実施例では、被検体のイメージングされた解剖学的領域に対して事前に定義された空間座標系があり、dはこの座標系の単位で表される(mmなど)。他の実施例では、ボクセル空間の単位で表されてもよい(つまり、1つのボクセルの幅が単位長に対応する)。
【0080】
1つ以上の実施形態に従って方法の1つのワークフロー例を詳細に概説する。そこから方法の一般的なステップがより明確になるであろう。本明細書で説明する方法では、腹部のCT画像を入力として使用する。任意選択で、イメージングの前に、ヨウ素造影剤で残留排泄物にタグ付けしていてもよい。
【0081】
以下に説明する方法は、2物質遷移(空気-組織、空気-便、又は便-組織)のためのものであるが、他の遷移(3物質遷移など)にも同様に適用できる。
【0082】
この方法は、被検体の関連の解剖学的領域を表すボリュメトリック画像データを取得することから始まる。
図4は、CTボリュメトリック画像データセットの例からの1つの画像スライスを示している。この実施例では、画像データセットは、被検体の結腸を含む領域を表している。
【0083】
ターゲット物質境界に固有の特定のモデル境界遷移関数gが、例えばローカル又はリモートデータストアから読み出される。この特定の実施例では、特定される物質境界は結腸壁である。物質境界は、例えば、便残渣の物質と結腸壁組織との境界、又は結腸内腔内の空気と結腸壁組織との境界である。
【0084】
モデル境界遷移関数が取得されると、モデル関数は、ボリュメトリック画像データセット内の各ボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域内に含まれるボクセル値にフィッティングされる。
【0085】
このモデルフィッティングプロセスは、3D画像データセット内の各ボクセル(又は少なくともボクセルの特定されたサブセット)に対して順番に実行される。例えば、この方法では、ボクセルを1つずつ繰り返したりインデックスを作成したりして、モデルフィッティングを順番に適用する。
【0086】
関連する各ボクセルiについて、ボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域36(又はローカル環境)が特定される。このサブ領域には、少なくとも直接隣接するボクセルのサブセットが含まれる。上述したように、ボリュメトリックサブ領域は、事前に定義されたサイズの立方サブ領域であり得る。例えば、サブ領域は、ボクセルiのすぐ隣にある全てのボクセルを含む。サブ領域は、例えばサイズk3の立方サブ画像で、ボクセルiが中央にある。
【0087】
次に、取得した境界遷移モデル関数gは、サブ領域36にあるボクセル値(例えば、ここでは、ハウンズフィールド値)にフィッティングされる。フィッティングは、例えば最小二乗フィッティング方法を使用して行われる。しかし、当業者は、代わりに適用できる様々なモデルフィッティング方法を認識するであろう。例えば、多項式回帰、ロジスティック回帰、多変数回帰など、ほぼ全ての回帰方法が適している。
【0088】
モデル関数フィッティングの結果、各ボクセルiのフィッティングされたモデルパラメータ(本明細書では、フィッティングパラメータ)が得られる:mhigh(i)、mlow(i)、d(i)、n(i)、σ(i)(上記でより詳細に概説されている)。
【0089】
更に、各ボクセルiのサブ領域に対するモデル関数のフィッティングの品質を表す1つ以上の更なるパラメータが決定される。これらは、使用するフィッティング方法によって異なる。例えばフィッティング品質パラメータには、モデルフィッティングの最適性、最小二乗フィッティングの剰余、フィッティングの成功、フィッティング結果の許容範囲、又は当業者には明らかであろう任意の他の適切なパラメータのうちの1つ以上が含まれる。
【0090】
各ボクセルiのフィッティングパラメータ及びフィッティング品質パラメータに基づいて、更なる二次パラメータ又は数量が得られる。これらはモデル関数自体のパラメータではなく、推定されたモデルパラメータから計算される。例えば、これらには、物質遷移境界24からのボクセルiの絶対距離、mhigh(i)とmlow(i)との絶対差、及び/又はモデル遷移関数の勾配若しくは急勾配が含まれる。
【0091】
いくつかの実施例では、フィッティングパラメータ、フィッティング品質パラメータ、及びそこから得られる任意のパラメータの各々を表す、イメージングされた解剖学的領域の新しい画像又は画像表現が生成される。特に、各パラメータについて、イメージングされた領域の新しい画像表現が得られる。各ボクセルのボクセル値は、そのボクセルについて得られたパラメータ値と同じに設定される。
【0092】
例えば、
図5(a)は、各ボクセルについて、フィッティングされたモデルパラメータm
lowの値を表す画像を示し、
図5(b)は、パラメータm
highの値を表す画像を示している。
図6は、各ボクセルのフィッティング品質パラメータの値を表す画像を示している。
図7は、物質遷移境界からのボクセルiの絶対距離の二次パラメータの値を表す画像を示している。
【0093】
各ボクセルiについて得られた様々なパラメータに基づいて、ボクセルのマスキングが実行される。これは、パラメータ値の参照値又は基準の更なる使用に基づいている。いくつかの実施例では、マスキングは、モデルパラメータ及びフィッティング品質パラメータについて得られた画像に基づいている。例えば、参照値は、ローカル又はリモートデータストアに事前に保存される。参照値は、関心の物質境界に近いボクセルに関連付けられる以前のスキャンデータからわかっている値である。例えば参照値を閾値として使用するか、又は、決定基準には、ボクセルパラメータ値が参照値の事前に定義された許容範囲内であるかどうかが含まれる。
【0094】
少なくとも異なるフィッティングパラメータとフィッティング品質パラメータのサブセットごとに、別個のマスクが生成されてもよい。
【0095】
いくつかの実施例では、各ボクセルのフィッティング品質パラメータに基づいて少なくとも1つのマスクが生成される。この場合、各ボクセルは、フィッティング品質パラメータが、フィッティングの品質の事前に定義された参照値又は閾値を超えることに依存してマスキングされる。
【0096】
更に又は或いは、各ボクセルのm
high及びm
lowの値に基づいて、少なくとも1つのマスクを生成することもできる。ここで、各ボクセルは、m
high及びm
lowの値が、m
high及びm
lowの参照値の事前に決定されたペアの事前に定義された許容範囲内にあることに依存してマスキングされる。参照値は、関心の特定の物質境界に対応する。したがって、ここでは、マスキングは、2つ(又はそれ以上の)既知の物質間の特定の遷移を、これら2つの物質内の典型的なボクセル値(例えば、ハウンズフィールド値)の事前知識を使用して特定することに基づいている。例えば、空気のハウンズフィールド値は約-1000で、軟部組織のハウンズフィールド値は約0であることが知られている。この場合、空気-組織遷移に属するボクセルiは、m
high(i)≒0及びm
low(i)≒-1000の条件を満たすべきであり、m
high(i)及びm
low(i)がこれらの事前値の事前に定義された許容範囲内にあるボクセルのみがマスキングされる。例示として、
図8及び
図9は、空気-組織物質遷移のm
low(i)及びm
high(i)のそれぞれのマスクの例を示している。
【0097】
更に又は或いは、各ボクセルの距離dに基づいて少なくとも1つのマスクを生成することもできる。この場合、各ボクセルは、距離値dが、dの参照値の事前に定義された許容範囲内にあることに依存してマスキングされる。したがって、ここでは、物質境界に対して事前に定義された最小近接内にあるボクセルのみがマスキングされる。
【0098】
1つ以上の実施形態に従って、複数のマスクが、異なるパラメータに対して生成され、組み合わせでボリュメトリック画像データに適用される。マスクの組み合わせの相互に重なり合う領域にあるボクセルが、候補ボクセルとして特定される。
【0099】
図10に、
図8及び
図9に示す2つのマスクの組み合わせを重ね合わせた結果を示した例を概略的に示している。マスクの重なり合う領域のボクセルは、
図10では白で示されて、これらは画像データに示されている結腸の壁に沿っていることがわかる。これらのボクセルは、候補ボクセルのセットを形成する。つまり、これらは、画像データ内の結腸壁に最もよく一致する、又はモデルフィッティングが最適であるボクセルの候補である。
【0100】
物質境界の表現を得ることは更に、境界からの各ボクセルのモデルによって得られた距離dに基づいて、及び境界のモデルによって得られた単位法線ベクトルに基づいて、物質境界上にあると推定される候補点を、各候補ボクセルから特定することを含む。
【0101】
特に、各候補ボクセルの候補空間点を特定することは、ボクセルのフィッティングパラメータから得られた境界単位法線方向に沿ってボクセル位置からの距離dにある点の座標を特定することを含む。
【0102】
特に、ほとんどの場合、平坦な平面が、所与のボクセルに最も近い局所領域での境界の形状の適切な近似である。平坦な平面は、例えば、ヘッセの標準形によってパラメータ化され、単位ベクトル(nx、ny、nz)と境界までのボクセルの距離dとで構成される。これらのパラメータは両方ともモデル境界遷移関数のフィッティングパラメータであるため、各候補ボクセルに対して事前に計算される。そうすると、物質境界の候補空間点を、境界単位法線方向に沿ってボクセルからの距離dの空間点として特定できる。したがって、座標位置(i,j,k)を持つボクセルの場合、候補点の座標位置pは、p=(i,j,k)+d*(nx,ny,nz)と特定される。
【0103】
候補ボクセルのフルセットに対して得られる候補空間点のセットは、点のリスト(又は群)になる。これらは全て物質境界上にあるが、ボクセルグリッド上の点と必ずしも一致しているわけではない。
【0104】
図11は、このように生成された候補点群の例の画像表現を示している。
図12は、点群の近景の拡大図を示している。
【0105】
点群内の各点について、単位法線ベクトルnが、後の使用のために保存される。これは、更なるレンダリングステップに有用である。
【0106】
例として、1つ以上の実施形態によれば、物質境界を表す表面メッシュが更に生成される。この表面メッシュには、点群を形成する候補点の縮小したサブセットが含まれている。表面メッシュを得ることは、点群からの点を三角形となるように結び付けることを含む。これらをレンダリングに使用できる。
【0107】
図13は、
図11の候補点群に基づいて構築される表面メッシュの例を示している。
図14は、表面メッシュの近景の拡大図を示している。
図16~
図18は、結腸壁の滑らかな表面表現を提供するために、点を結び付けて得られる三角形が埋められている表面メッシュレンダリングの更なる例を示している。
図16は、結腸内腔の切断図を示している。
【0108】
上記のように、いくつかの実施例では、各ボクセルについて、フィッティングパラメータ、二次パラメータ、及びフィッティング品質パラメータの各々を表す新しい画像が生成される。いくつかの実施例では、これらの画像のうちの一部又は全てを更に使用して、より多くの情報を視覚化するために、表面メッシュに色付けする。画像は半透明にレンダリングされて、メッシュの上に重ね合わされてもよい。複数の画像を一緒に異なる色でメッシュ上に重ね合わせてもよく、又は、ユーザは、ユーザインターフェースを用いて、メッシュ上に重ね合わされたパラメータ画像を選択的に切り替えることができる。
【0109】
上記の実施例は2物質境界に関連して説明されているが、より複雑な境界にも同じ原理を適用できる。その一例として、多層境界がある。この一例は、別の物質領域(物質1)内に埋め込まれた(物質2の)薄い物質層である。この場合、多層境界は、単純に2物質境界のペアとして扱われる。つまり、物質1から物質2の薄い層への第1の境界と、物質2の層から物質1への第2の境界である。両方の2物質境界を包含する単一の境界遷移関数を使用してもよいし、又は、別々の2物質遷移関数をボリュメトリック画像データに連続して適用して、薄い層の両側の境界のペアを特定することもできる。いずれの場合も、境界遷移関数を使用して物質境界のペアを推定するための原理は、単一の2物質境界について上記で概説したものと同じである。
【0110】
更なる実施例として、3物質境界(3つの物質領域が共通線で接触する)の場合がある。ここでも、2物質遷移と同じ原理が適用されるが、境界を横断する距離の関数(境界遷移関数で表される)として予想されるボクセル値のモデルには、追加の方向依存性(境界のアプローチの方向)があり、3つの物質領域が共通の境界線で接触しているという事実が考慮される。しかし、境界遷移関数は、依然として境界に対する位置の関数としてボクセル値をモデル化する。モデルには、境界線を囲む様々な物質領域間の角度、及び/又は1つ以上の異なる物質領域に対する若しくは境界線に対するボクセルの角度に関連するモデルパラメータ(フィッティングパラメータ)が追加で含まれる。これにより、境界遷移モデルが、様々な物質領域内の位置又は様々な物質領域に対する位置に関係なく、所与のボクセルを囲むボリュメトリックサブ領域にフィッティングされる。
【0111】
上記のように、1つ以上の実施形態に従って、得たボリュメトリック画像データは、スペクトル画像データである。このデータには、複数の画像データセットが含まれ、各セットは異なるスペクトルデータチャネルに対応するデータから形成される。本発明による方法は、各データセットに対して実行され、各スペクトルチャネルについて、異なる事前に決定された物質遷移関数が存在する。
【0112】
一例として、X線スペクトルCTデータの使用がある。X線スペクトルCTは、複数のX線エネルギーの投影データを取得することで、従来のX線CTシステムの機能を拡張するイメージングモダリティである。これは、異なるX線エネルギーを区別できる検出器(エネルギーを区別する光子計数検出器やエネルギー積分検出器など)を組み込むか、X線エネルギースペクトルを順次変更して対応する検出器データを順次取得することで行うことができる。スペクトルX線データにより、スキャンした物体に含まれている物質を判別し、定量化できる。これは、異なる物質が異なるX線吸収スペクトルを持つ可能性があるためである。例えば、関心物質によって最大又は最小に吸収されることが知られているX線エネルギースペクトルを使用できる。
【0113】
別の例として、MRIデータの使用がある。マルチパラメータMRIでは、2つ以上のMRシーケンスを繰り返し、それぞれに対して画像データのセットが取得される、同様の原理が適用される。異なる物質が、異なるMRシーケンス(チャネル)に対して、より大きいコントラストで又はより小さいコントラストで表される。
【0114】
上記の方法ワークフローの例を、スペクトルボリュメトリック画像データに適用するために拡張できる。
【0115】
スペクトルCTデータの例について概説する。ただし、MRIや超音波などの他のモダリティから得られたスペクトル画像データにも同じ原理を適用できる。
【0116】
スペクトルCTデータを使用する場合、例えば、異なるkeV(X線管電圧)値での合成された単一エネルギー画像を作成できる。これらの単一エネルギー画像内に、異なる物質が異なるコントラストで示される。
【0117】
いくつかの小さな変更を加えることで、上記のワークフローを2つ以上の異なるスペクトルチャネルからのデータを処理するように適応できる。これにより、物質境界のより堅牢なレンダリングが可能になる。
【0118】
この方法は、スペクトル画像データIiのn個の異なるセットを得ることを含む。ここで、nは1よりも大きい任意の整数である。各画像データセットは、異なるスペクトルチャネルから取得された画像データに対応している。異なるスペクトルチャネルとは、投影データ(ここから画像データセットが再構成される)が、異なるX線管電圧(又は異なるX線エネルギースペクトル)を使用して得られたことを意味する。
【0119】
一例として、2つの画像データセットI1、I2が受信され(n=2)、各々が異なるX線エネルギーチャネル(X線管電圧)に対応している(例えば、各々が異なる単一エネルギー画像データセットに対応している)。例えば、I1は45keV(管電圧)にあり、I2は125keVにある。
【0120】
ここで、2物質遷移が、n個の異なる物質境界遷移関数gi(mi,high、mi,low、d、n、σ)でモデル化される(i=1、・・・、n)。物質パラメータmi,high及びmi,lowは、各スペクトル画像データセットIiで異なり、幾何学的パラメータd、n、及びσは、各データセットで同じである。
【0121】
モデル関数のフィッティングを実行して、モデル関数giと全てのスペクトル画像Iiとのマッチングを同時に最適化する。つまり、モデル関数は各スペクトルデータセットに同時に、且つ全てのモデルのフィッティングを同時に最適化しようとするコスト関数を使用してフィッティングされる。例えば、スペクトル画像データセットを、各ボクセルに複数のボクセル値を持つ単一のデータセットとして表すことができる。例えば、kがボクセルのインデックスで、i=0,1がスペクトル画像データセットのインデックスで、Iikがボクセルkにおけるスペクトル画像iのボクセル値である場合、例えば、コスト関数Σk(I0k-g0k(m0high,m0low,d,n,sigma))2+(I1k-g1k(m1high,m1low,d,n,sigma))2が最適化される。
【0122】
スペクトル画像データセットの各ボクセルに対する2つのモデル関数の各々のフィッティングから、各ボクセルjのモデル関数フィッティングパラメータが推定される。フィッティングパラメータには、各スペクトル画像データセットIiの物質パラメータmi,high(j)及びmi,low(j)が含まれる(ここで、mi,lowは物質境界の片側の最小ボクセル値であり、mi,highは物質境界のもう片側の最大ボクセル値である)。フィッティングパラメータには、幾何学的パラメータd(j)、n(j)、σ(j)も含まれており、これらは各画像データセットIiで同じである。
【0123】
更に、フィッティングパラメータに基づいて、各スペクトル画像データセットIiについて、二次パラメータが追加的に得られる。二次パラメータには、例えば、mi,high(j)とmi,low(j)との絶対差が含まれる。
【0124】
各画像データセットの各ボクセルについてのフィッティングパラメータ、二次パラメータ、及びフィッティング品質パラメータに基づいて、候補ボクセルが決定される。上記のワークフローで説明したように、これはボクセルのマスキングの使用に基づいている。
【0125】
特に、マスキングは、各スペクトルデータセットに対して決定されたモデルフィッティングパラメータに基づいて、且つ1つ以上の事前に決定された参照値又は参照基準に基づいて実行される。マスキングは単一の画像データセットの画像データに適用できるが、複数のスペクトルチャネルからのパラメータ値に基づいて得られたマスクを使用する。つまり、複数のスペクトルチャネルから得られた情報を使用して、候補ボクセルが特定される。例えば、1つのスペクトルチャネルからのフィッティングパラメータに基づいて第1のマスクが生成され、第2のスペクトルチャネルからのフィッティングパラメータに基づいて第2のマスクが生成され、それぞれ、事前に定義された参照基準に基づいている。両方のマスクは組み合わされて、2つのスペクトルチャネルのうちのいずれか、又は第3のスペクトルチャネルの画像データに適用される。したがって、複数のスペクトルチャネルからの情報を考慮に入れることができ、その結果、候補ボクセルの特定が大幅に強化される。候補ボクセルは、2つ以上のマスクの重なり領域にあるボクセルとして特定されてもよい。このようにして、1つのスペクトルチャネルからの誤ったフィッティング結果をより確実に考慮から外すことができる。
【0126】
候補ボクセルが特定されると、方法の残りのステップは、非スペクトルデータについて説明したワークフローで概説したステップと同じである。特に、物質境界の候補空間点が、候補ボクセルのモデルフィッティングパラメータに基づいて、候補ボクセルごとに特定される。これにより、各々の候補点群が形成される。これらの候補点から、例えば点を三角形となるように結び付けることによって、表面メッシュが作成される。
【0127】
異なるスペクトルデータセットを使用して、異なる物質ペア又はセット間の境界を特定できるため、各スペクトルデータセットの点群は、異なる物質ペア又はセット間の遷移の境界を定める。例えば、これらには、空気から組織への遷移のための1つの点群、造影剤から組織への点群、及び空気から造影剤への点群が含まれる。例えば、空気から組織への点群と造影剤から組織への点群とを組み合わせることで、組織境界全体の複合点群が得られる。これが、例えば、結腸壁の境界を特定しようとする場合に求められるものである。したがって、このようにして、仮想クレンジングのプロセス(前出)を実行できる。
【0128】
上記の実施形態のいずれかに従って、以下の変形例を適用できる。
【0129】
上記の実施例では、画像データの取得に使用する画像スキャン装置の点拡がり関数が等方性であることを前提としている。しかし、更なる実施例では、スキャナの点拡がり関数は異方性であってもよい。この場合、σはベクトルσに置き換えられる。
【0130】
スキャナの点拡がり関数(等方性又は異方性)は、先験的にわかっていてもよい。この場合、推定する必要がなく、アルゴリズムの固定値にすることができる。
【0131】
1つ以上の実施形態に従って、各ボクセルにモデル関数をフィッティングする前に前処理ステップが適用される。前処理は、ボクセルを縮小ボクセルセットにフィルタリングするためのものであり、物質境界に近い可能性が最も高いボクセルを特定することに基づいている。物質境界に近く、候補ボクセルになる可能性が低いと推定されるボクセルが考慮から外される。そうすると、モデル関数のフィッティングは、フィルタリング後に残っているボクセルにのみ適用される。
【0132】
フィルタリングは、様々な要因のうちのいずれかに基づいて実行される。1つのオプションでは、求められる物質境界のいずれかの側の予測されるmhigh値及びmlow値の事前に定義された範囲内に、ボクセル値があるボクセルのみが選択される。他のオプションでは、イメージングされたボリュメトリック領域全体にわたるボクセル値の勾配の表現が検出され、相対的に高い勾配の領域にあるボクセルのみが選択される。
【0133】
本発明の更なる態様による実施例は、上記の若しくは後述する任意の実施例若しくは実施形態に従う、又は本出願の任意の請求項に従う方法を実行する処理装置を提供する。
【0134】
処理装置は、一般に、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを含む。処理装置は、単一の含有デバイス、構造体、又はユニット内に設置されても、複数の異なるデバイス、構造体、又はユニット間に分散されてもよい。したがって、特定のステップ又はタスクを実行するように適合又は構成されている処理装置への言及は、単独又は組み合わせのいずれかで、複数の処理コンポーネントのうちの任意の1つ又は複数によって実行されているそのステップ又はタスクに対応する。当業者は、そのような分散処理装置をどのように実装できるかを理解するであろう。処理装置は、データを受信し、更なるコンポーネントにデータを出力するための通信モジュール又は入出力部を含む。
【0135】
処理装置の1つ以上のプロセッサは、ソフトウェアやハードウェアを使用して、様々なやり方で実装して、必要な様々な機能を実行することができる。通常、プロセッサは、ソフトウェア(例えばマイクロコード)を使用してプログラムされて、必要な機能を行う1つ以上のマイクロプロセッサを用いる。プロセッサは、一部の機能を行うための専用ハードウェアと、他の機能を行うための1つ以上のプログラム済みマイクロプロセッサ及び関連回路との組み合わせとして実装できる。
【0136】
本開示の様々な実施形態に用いられ得る回路の例としては、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
様々な実装形態では、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)などの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの1つ以上の記憶媒体と関連付けられ得る。記憶媒体は、1以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要な機能を実行する1つ以上のプログラムでエンコードされ得る。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内で固定されていても、そこに保存されている1つ以上のプログラムをプロセッサにロードできるように輸送可能であってもよい。
【0138】
本発明の更なる態様は、上記の処理装置を含み、更に画像データ内の物質境界の生成された表現を表示するために使用する処理装置と動作可能に結合された表示ユニットを含むシステムを提供する。処理装置は、特定された物質境界の画像表現を表示ユニットに表示させるための表示制御出力を生成する。システムは更に、ユーザが実行される方法のプロパティや設定を変更したり、表示ユニット上の物質境界の表示に関する設定を構成したりすることを可能にするユーザインターフェースを含んでいてもよい。
【0139】
開示された実施形態の変形例は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。特許請求の範囲において、語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を排除するものではない。
【0140】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されているいくつかのアイテムの機能を果たしてもよい。
【0141】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。
【0142】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの任意の適切な媒体に格納/配布することができるが、インターネット又は他の有線若しくはワイヤレス通信システムを介してなど他の形式で配布することもできる。
【0143】
「~するように適応されている」という用語が、特許請求の範囲又は説明で使用されている場合、「~するように適応されている」という用語は「~するように構成されている」という用語と同等であることを意図していることに留意されたい。
【0144】
特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】