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特表2023-553925構造化表面を有するフィルムを熱成形する方法及び物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】構造化表面を有するフィルムを熱成形する方法及び物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20231219BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20231219BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B32B33/00
B29C51/14
B29C51/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535285
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 IB2021061410
(87)【国際公開番号】W WO2022123440
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/124,134
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/152,500
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,レイモンド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】コネル,ジョディ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ガイスラー,カール ジェイ.エル.
(72)【発明者】
【氏名】ソロモン,ジェフリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】シュッタ,クリスタル エル.
(72)【発明者】
【氏名】レイザー,コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】ユー,タ-ファ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,アンソニー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ファンスラー,デュアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ポコルニー,リチャード ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4F100
4F208
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK17A
4F100AK23C
4F100AK25C
4F100AK51C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100DD01C
4F100DD07C
4F100EJ05C
4F100EJ42
4F100GB16
4F100GB33
4F100GB66
4F100JA04C
4F100JB12C
4F100JB13A
4F100JB15A
4F100JB16A
4F100JK08C
4F100JN02
4F100YY00B
4F100YY00C
4F208AF01
4F208AG01
4F208AG03
4F208AG05
4F208AH73
4F208AR12
4F208MA01
4F208MA02
4F208MA03
4F208MB01
4F208MC01
4F208MG04
4F208MG11
4F208MH06
(57)【要約】
ここでは、熱成形可能な平面状のベース層と平面状のベース層の主表面上に配置された構造化表面層とを含む構造化フィルムを提供することであって、構造化表面層が、熱成形可能な平面状のベース層とは異なる有機ポリマー材料を含む、提供することと、構造化フィルムを熱成形物品に熱成形することと、を含む、物品の製造方法について記載する。熱成形物品及び熱成形可能な物品についても記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の製造方法であって、
熱成形可能な平面状のベース層と前記平面状のベース層の主表面上に配置された構造化表面層とを含む構造化フィルムを提供することであって、前記構造化表面層が、前記熱成形可能な平面状のベース層とは異なる有機ポリマー材料を含む、提供することと、
前記構造化フィルムを熱成形物品に熱成形することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記熱成形物品が、少なくとも1.5、2.0、2.5、又は3の延伸比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱成形物品が、少なくとも2、5、10、又は15ccの体積を有するキャビティを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ランド層が、前記構造化表面層と前記平面状のベース層との間に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記平面状のベース層及びランド層が厚さを有し、前記ランド層の前記厚さを前記平面状のベース層の前記厚さで割った値×100%が15%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱成形物品が、前記構造化フィルムの構造とは異なる幅、高さ、及び/又は長さを有する構造を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記構造が、1ミクロン未満の高さ及び/又は幅を有するナノ構造を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記構造が、1mm未満の高さ及び幅を有する微細構造を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱成形可能な平面状のベース層が、熱可塑性の又は未硬化である熱硬化性の有機ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記構造化表面層が、十分に架橋された有機ポリマー材料を含み、それにより、前記有機ポリマー材料が、前記架橋された有機ポリマー材料の分解温度未満の熱溶融温度又は熱軟化温度を有しない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記構造化表面層が、前記熱成形可能な平面状のベース層よりも大きい熱溶融又は熱軟化の転移を有する熱可塑性ポリマーを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記構造化フィルムを物品に熱成形することが、前記構造化表面層の前記熱溶融又は熱軟化の転移よりも低い熱成形温度を利用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱成形することが、前記熱成形可能な平面状のベース層又は構造化表面層を金型と接触させることを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記構造化フィルムが山部構造及び隣接する谷部を含み、前記山部構造がポスト、ドーム、リブ、プリズム、又はキューブコーナー要素を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記山部構造が20~120度の範囲の頂角を有し、前記頂点が鋭利である、丸みを帯びている、又は切頭されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記微細構造化表面の隣接する山部構造同士が、少なくとも1つの方向において前記平面状のベース層の近傍で相互に接続している、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記山部構造が、同じ方向に連続した又は半連続した表面を形成している2つ以上のファセットを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記構造化フィルムが、透明、半透明、又は不透明である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記構造化フィルムが光学フィルムである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記構造化フィルム又は熱成形物品が、山部構造及び隣接する谷部を含み、前記谷部が、1ミクロン~250ミクロンの範囲の最大幅を有し、前記山部構造が、10度を超える側壁角度を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記微細構造化表面が、3より大きく90未満であるSbi/Sviを有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記谷部には交差する壁がない、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記構造が、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1度未満の壁角度を有する、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記フィルム及び熱成形物品の前記構造化表面層が、以下の特性:
i)少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、又は99%の微生物の接触移動の減少、
ii)洗浄後の少なくとも2、3、4、5、6、7、又は8の微生物(例えば、細菌)のlog10減少、
iii)洗浄溶液を前記構造化表面に適用した1~3分後に、前記構造化表面の少なくとも50、60、70、80、90%が前記洗浄溶液を含有、
iv)バイオフィルムの形成の防止、のうちの1つ以上を提供する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の方法によって調製された、熱成形物品。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の熱成形に使用するための構造化フィルム。
【請求項27】
熱可塑性又は熱硬化性の平面状のベース層と、前記平面状のベース層の主表面上に配置された構造化表面層とを含む熱成形物品であって、前記構造化表面層が、前記平面状のベース層とは異なる有機ポリマー材料を含み、前記熱成形物品が、請求項1~26のいずれか一項又は組み合わせによって更に特徴付けられる、熱成形物品。
【請求項28】
前記物品が、医療用物品、歯科用物品、歯科矯正装具、歯列矯正トレイアライナ、フェースマスク、又は酸素マスクである、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法又は物品。
【請求項29】
前記物品の前記構造化表面が、周囲(例えば、屋内又は屋外)環境に晒され、かつ、接触対象となる、又はそうでなくとも複数の人々及び/若しくは動物、並びに他の汚染物質(例えば、汚れ)と触れ合う、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法又は物品。
【請求項30】
前記物品が、ビークル(例えば、自動車、バス、電車、飛行機、ボート)の内装若しくは外装部品、電子デバイスのハウジング若しくはケース、包装容器(例えば、食品又は医療製品用)、ハンドル、又は子供用物品である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法又は物品。
【請求項31】
前記有機ポリマー材料が、(メタ)アクリルポリマー、ウレタンアシレートオリゴマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法又は物品。
【請求項32】
前記有機ポリマー材料が、(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマーを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法又は物品。
【請求項33】
前記構造化表面層の前記有機ポリマー材料が、23℃で50、100、150、又は200%超の伸びを有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記構造化表面層が、複数のセグメントを含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記セグメントの少なくとも一部が、熱成形中に分離する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載の熱成形物品。
【請求項37】
熱成形可能なベース層と、前記ベース層の主表面上に配置された構造化表面層とを含む構造化フィルムを備え、前記構造化表面層が、前記熱成形可能な平面状のベース層とは異なる有機ポリマー材料を含む、熱成形可能な物品。
【請求項38】
前記熱成形可能なベース層及び/又は構造化表面層が、請求項2~35のいずれか一項によって更に特徴付けられる、請求項36に記載の熱成形可能な物品。
【請求項39】
請求項37又は38に記載の熱成形に使用するための構造化フィルム。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
ここでは、熱成形可能な平面状のベース層と平面状のベース層の主表面上に配置された構造化表面層とを含む構造化フィルムを提供することであって、構造化表面層が、熱成形可能な平面状のベース層とは異なる有機ポリマー材料を含む、提供することと、構造化フィルムを熱成形物品に熱成形することと、を含む、物品の製造方法について記載する。いくつかの実施形態では、熱成形物品は、少なくとも1.5、2.0、2.5、又は3の延伸比を有する。いくつかの実施形態では、熱成形物品は、少なくとも2、5、10、又は15ccのキャビティ体積を有するキャビティを有する。いくつかの実施形態では、ランド層は、構造化表面層と平面状のベース層との間に存在する。いくつかの実施形態では、ランド層の厚さを平面状のベース層の厚さで割った値×100%は、15%未満である。
【0002】
構造化表面層は、典型的には、十分に架橋された有機ポリマー材料を含み、それにより、有機ポリマー材料は、架橋された有機ポリマー材料の分解温度未満の熱溶融温度又は熱軟化温度を有しない。いくつかの実施形態では、構造化フィルムは山部構造及び隣接する谷部を含み、山部構造はポスト、ドーム、リブ、プリズム、又はキューブコーナー要素を含む。いくつかの実施形態では、構造化フィルムは光学フィルムであり、構造化表面は光学効果を提供する。いくつかの実施形態では、フィルム及び熱成形物品の構造化表面は、以下の特性:i)少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、又は99%の微生物の接触移動の減少、ii)洗浄後の少なくとも2、3、4、5、6、7、又は8の微生物(例えば、細菌)のlog10減少、iii)洗浄溶液を微細構造化表面に適用した1~3分後に、構造化表面の少なくとも50、60、70、80、90%が洗浄溶液を含有、iv)バイオフィルムの形成の防止、のうちの1つ以上を提供する。
【0003】
熱成形物品、及び前述の請求項に記載の熱成形に使用するための構造化フィルムについても記載される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】様々な微細構造化表面を説明するために利用され得る表面のデカルト座標系の斜視レビューである。
図2】微細構造化表面の断面図である。
図3】プリズムの線形配列を含む微細構造化表面の斜視図である。
図4A】キューブコーナー要素の配列を含む微細構造化表面の斜視図である。
図4B】角錐形要素の配列を含む微細構造化表面の斜視図である。
図5】好適形状キューブコーナー要素の配列を含む微細構造化表面の斜視図である。
図6】様々な頂角を有する山部構造の断面図である。
図7】丸みを帯びた頂点を有する山部構造の断面図である。
図8】平坦な頂点を有する山部構造の断面図である。
図9】別の例示的な微細構造化表面の電子顕微鏡写真である(スケールバーは20ミクロンを表している)。
図10】例示的な(例えば、レンチ)熱成形物品の三次元画像である。
図11】例示的な(例えば、歯科矯正物品)熱成形物品の三次元画像である。
図12A図11の三次元画像の一部の個々のライン走査を示す図である。
図12B】ライン走査の一部の個々の点(x、y、z座標)を示す図である。
図12C】例示的な点群画像である。
図12D図13の点群のMatlabで生成された例示的な表面メッシュである。
図13】熱成形歯科用物品の実施形態の概略斜視図である。
図14】ランダムに破砕された微細構造化表面を有する熱成形歯科用物品の一部の顕微鏡画像(倍率5倍)である。
図15】均一に破砕された微細構造化表面を有する熱成形歯科用物品の一部の顕微鏡画像である。
図16】ナノ構造化フィルムの一部のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
構造化フィルムを熱成形することを含む物品の製造方法が記載される。構造化表面を含む熱成形(例えば、三次元)物品についても記載される。
【0006】
熱成形は、熱可塑性シート(フィルムとも呼ばれる)が、柔らかく可撓性になる温度まで加熱される製造プロセスである。次いで、空気(真空及び圧縮の両方)の圧力を使用して、シートを金型に押し込み、金型の上で延伸する。熱成形プロセスは、通常、薄いゲージ(典型的には5mm未満)の市場と厚いゲージの市場とに分けられる。薄ゲージ熱成形は、その名称が意味するように、薄いプラスチックを使用し、プラスチックカップ、食品容器、蓋、又はブリスターなどの剛性又は使い捨て包装物品を製造するために使用され、一方、厚ゲージ熱成形は、典型的には、ビークルのドア内側パネル及び電子機器包装などのより耐久性のある化粧用永久部品を形成するために使用される。いくつかの実施形態では、真空形成が、二重真空熱成形(DVT)としても知られる熱成形と組み合わせて使用され得る。
【0007】
図2図4、及び図6を参照すると、熱成形可能な構造化フィルムは、熱可塑性の、又は未硬化である熱硬化性の平面状のベース層210と、(例えば、平面状の)ベース層(210、310、410、610)の主表面上に配置された(例えば、加工)構造化表面層(200、300、400、600)と、を備える。構造化表面層は、(例えば)平面状のベース層とは(例えば、異なる)有機ポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、構造化表面層は、十分に架橋された有機ポリマー材料を含み、それにより、有機ポリマー材料は、架橋された有機ポリマー材料の分解温度未満の熱溶融温度又は熱軟化温度を有しない。他の実施形態では、構造化表面層は、熱成形可能な平面状のベース層よりも大きい熱溶融又は熱軟化の転移を有する熱可塑性ポリマーを含む。構造化表面層が熱可塑性である場合、熱成形温度は、構造化表面層の熱溶融又は熱軟化の転移よりも低い。構造化表面は、典型的には、1ミクロン未満の少なくとも1つの寸法を有するナノ構造、1mm未満の高さ及び幅を有する微細構造、並びにこれらの組み合わせを含む。熱成形中、熱成形可能な平面状のベース層又は構造化表面層は、金型に接触する。驚くべきことに、構造化表面の微細構造及び特にナノ構造は、熱成形構造化表面が非熱成形構造化フィルムと同じ又は類似の技術的効果を提供できるように、それらの形状及び寸法を十分に維持する。
【0008】
例えば図3に示されているように、連続するランド層360は、チャネル又は谷部の底部と(例えば、平面状の)ベース部材310の上面331との間に存在することができる。いくつかの実施形態では、ランド層の厚さは、典型的には、少なくとも0.5、1、2、3、4、又は5ミクロンから最大50、100、又は150ミクロンまでの範囲である。いくつかの実施形態では、ランド層の厚さは、45、40、35、30、25、20、15、又は10ミクロン以下である。別の実施形態では、ランド層は存在しない、又はランド層は0に近い厚さを有する。この実施形態では、ランド層は、0.5ミクロン(500ナノメートル)未満の厚さを有してもよい。ランド層を含む構造化フィルムは、典型的には、高忠実度でより速い速度で製造することができる。高忠実度とは、構造化表面が、それが形成された元の構造化表面の精密かつ正確な複製であることを指す。いくつかの実施形態では、ランド層は、平面状のベース層に対して薄い。ランド層の厚さをベース層の厚さで割った値×100は、典型的には、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%未満である。いくつかの実施形態では、ランド層の厚さをベース層の厚さで割った値×100は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%である。
【0009】
図1を参照すると、構造化表面は、デカルト座標系をその構造に重ね合わせることによって、三次元空間で特徴付けることができる。第1の基準面124は、主表面112と114との間の中心にある。y-z平面と称される第1の基準面124は、その法線ベクトルとしてx軸を有する。x-y平面と称される第2の基準面126は、表面116と実質的に同一平面上に延びており、その法線ベクトルとしてz軸を有する。x-z平面と称される第3の基準面128は、第1の端面120と第2の端面122との間の中心にあり、その法線ベクトルとしてy軸を有する。
【0010】
熱成形物品は、マクロスケールで三次元である。ただし、マイクロスケール又はナノスケール(例えば、少なくとも2つの隣接する微細構造体と、それらの微細構造体間に配置された谷部又はチャネルとを含む表面領域)では、ベース層は、微細構造体に対して平面であると見なすことができる。微細構造体の幅及び長さは、x-y平面にあり、微細構造体の高さは、z方向にある。更に、ベース層は、x-y平面に平行であり、z平面に直交している。
【0011】
図13は、代表的な熱成形物品である歯科矯正装具1300(本明細書では歯科矯正アライナトレイとも呼ばれる)を示す。歯科矯正装具1300は、患者の上顎又は下顎の1つ以上の歯を受け入れるように成形された複数のキャビティ1304を有する薄いポリマーシェルとして特徴付けられ得る。歯科矯正アライナトレイは、1本以上の歯を1つの歯配列から連続する歯配列に弾性的に整復するように、患者の歯に力を加えるように成形及び構成されたキャビティ1304を含む。リテーナトレイの場合、キャビティ1304は、以前に整列された1つ以上の歯の位置を受け入れる及び維持するように成形及び構成される。
【0012】
歯科矯正装具熱成形物品1300は、典型的には、概ね患者の歯に適合するモノリシック又は多層弾性ポリマー材料であり、透明、半透明、又は不透明であってもよい。ポリマー材料は、所望の治療期間中に十分かつ実質的に一定の応力プロファイルを提供及び維持するように、かつ歯科矯正装具の歯の整復効率を維持又は改善するために、治療期間にわたって比較的一定の歯整復力を提供するように選択される。
【0013】
図13に示すように、外側ポリマー層1314及び1310の一方又は両方は、歯科矯正装具熱成形物品1300の微細構造化及び/又はナノ構造化表面1306を含む。第1の(例えば、外部)主表面1306は、物品の使用中に患者の舌及び頬に接触する。第2の(例えば、内部)表面1308は、物品の使用中に患者の歯に接触する。第2の(例えば、内部)表面1308は、キャビティを形成する。熱成形可能な(例えば、平面状の)ベース層1312は、構造化ポリマー層1310と1314との間に配置される。ポリマーシェルの厚さは、第1及び第2の主表面に直交する。いくつかの実施形態では、ポリマー層1306は微細構造化又はナノ構造化されており、ポリマー層1308は非構造化又はナノ構造化されている。図10は、金型(図示せず)上で熱成形された構造化フィルム1100を含む三次元熱成形物品1000の別の表現を示す。この実施形態では、金型はレンチである。熱成形物品は、x-y平面においてレンチの主表面1200を含み、z平面において高さが変化する。この実施形態では、熱成形物品は、未成形構造化フィルム1100を更に含む。他の実施形態では、未成形構造化フィルムは、図13の熱成形歯科矯正物品の場合のように除去されてもよい。熱成形物品1000は、z平面における物品の厚さに対応する側面1500を更に含む。この実施形態では、側面1500は、x-y平面に直交し、未成形構造化フィルムに直交する。しかしながら、他の実施形態では、側面1500は角度が付けられていてもよく、又は複雑な表面を有していてもよい。
【0014】
熱成形中、構造化フィルムは、x-y平面及びz平面において延伸される。熱成形物品のトポグラフィマップは、レーザー三角測量を使用する3Dレーザープロファイリングを使用して得ることができる。図10は、例示的な(例えば、レンチ)熱成形物品のトポグラフィマップから導出された三次元画像を示し、図11は、別の例示的な(例えば、歯科矯正物品)熱成形物品のトポグラフィマップから導出された三次元画像を示す。図12Aは、図11の三次元画像の一部の個々のライン走査を示す。図12Bは、ライン走査の一部の個々の点(x、y、z座標)を示す。図12A及び図12Cの表現は、3D点群と呼ばれることが多い。表面メッシュは、図12Dに示すように、Matlabを使用して3D点群から作成することができる。表面メッシュは、複数の相互に接続されたサブ領域(例えば、要素)を含む。サブ領域の合計は、熱成形物品の全表面積に等しい。コンピュータソフトウェアを利用して、トポグラフィマップの個々の点(x、y、z座標)から熱成形物品の全表面積を決定することができる。表面又はメッシュの表面積を計算するための好適なコンピュータソフトウェアは、インターネット上で入手可能である。好適なソフトウェアの一例は、「Surface area version 1.2.0.0 by Sky Sartorius」である(参照:https://www.mathworks.com/matlabcentral/fileexchange?q=surface+area)。
【0015】
延伸比は、三次元熱成形物品の表面積を、x-y平面におけるフィルムのベース層の二次元面積(例えば、熱成形前)で割ることによって決定することができる。構造化フィルムの面積は、長さに幅を掛けることによって決定される。構造の表面積は、この計算に含まれない。いくつかの実施形態では、延伸比は、少なくとも1.5、2.0、2.5、又は3である。いくつかの実施形態では、延伸比は、10、9.5、9.0、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、又は3以下である。延伸比は、構造化フィルムが三次元物体に熱成形されるときに生じる形状の変化を表す1つの方法である。
【0016】
構造化フィルムの形状の変化を表す別の方法は、z基準面における熱成形物品の厚さ、又は言い換えれば、(例えば、平均)高さである。熱成形物品は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mmの平均高さ「h」(x-y基準面に対して)を有する三次元形状を有する。いくつかの実施形態では、平均高さは、少なくとも2、3、4、又は5cm以上である。平均高さは、それが形成された構造化フィルムの非熱成形ベース層の厚さよりも著しく大きい。例えば、構造化フィルムのベース層の厚さは、1mm以下であり得るが、熱成形物品の高さは、構造化フィルムの非熱成形ベース層の厚さの少なくとも2倍(例えば、2mm)、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍であり得る。いくつかの実施形態では、熱成形物品の高さは、典型的には、100倍、50倍、又は25倍以下である。いくつかの実施形態では、熱成形物品の高さは、構造化フィルムの非熱成形ベース層の厚さの20倍、19倍、18倍、17倍、16倍、15倍、14倍、13倍、12倍、11倍、又は10倍以下である。
【0017】
構造化フィルムの形状の変化を表す別の方法は、キャビティ体積である。構造化表面の谷部の体積を無視すると、熱成形前の構造化フィルムは、名目上0のキャビティ体積を有するものとして定義され得る。熱成形物品のキャビティ体積は、0よりも著しく大きい。熱成形物品のキャビティ体積は、熱成形キャビティを水又は除去可能な成形材料で充填し、キャビティから水又は成形材料を除去し、次いで、キャビティを充填した水又は成形材料の体積を測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、体積は、1、1.5、又は2ccよりも大きい。いくつかの実施形態では、キャビティ体積は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50cc以上である。いくつかの実施形態では、キャビティ体積は、1000、100、又は50cc以下であってもよい。キャビティ体積は、熱成形物品又は構成要素のサイズに応じて増加する。例えば、熱成形物品が航空機の成形部品である場合、キャビティ体積は、はるかに大きくてもよい。
【0018】
熱成形可能な(例えば、平面状の)ベース層の延伸は、構造化表面も延伸する。いくつかの実施形態では、このような延伸により、構造は、構造化フィルムの構造とは異なる寸法の幅、高さ、及び/又は長さを有するようになる。いくつかの実施形態では、熱成形物品の構造は、x-y平面において、最初の非熱成形構造化フィルムよりも大きな幅を有する。構造はx-y平面における寸法が増加すると、構造はまた、典型的には、z平面における寸法が減少し、又は言い換えれば、高さが減少する。あるいは、又はこれらの組み合わせでは、延伸により、構造を更に離間させることができる。ベース層が延伸すると、取り付けられた構造はベース層と共に移動する。ベース層のこの延伸は、構造を移動させ、更に離間させて、隣接する構造間の距離を増加させる、又は言い換えれば、構造のピッチを増加させることができる。構造化表面がランド層を含む場合、延伸により、構造化表面ランド層を延伸及び/又は破砕させることもできる。ランド層が破砕されるとき、熱成形ベース層は、典型的には、完全に無傷である。ランド層の厚さを平面状のベース層の厚さで割った値×100%が15%未満である場合、熱成形表面は、図15に示されるように均一な外観を有することができる。いくつかの実施形態では、ランド層の厚さを平面状のベース層の厚さで割った値×100%は、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%未満である。ランド層の厚さを平面状のベース層の厚さで割った値×100%が15%以上である場合、熱成形表面は、図14に示されるようにランダムに亀裂を生じ得る。
【0019】
構造化熱成形可能なフィルムは、(1)構造パターンを有するツールを使用して溶融熱可塑性樹脂を鋳造すること、(2)構造パターンを有するツール上に流体重合性樹脂をコーティングすること、その流体を硬化によって凝固させること、及び得られたフィルムを取り外すこと、(3)熱可塑性フィルムをニップロールに通して、構造パターンを有するツールに押し付けて圧縮すること(すなわち、エンボス加工)、及び/又は(4)揮発性溶媒中のポリマーの溶液又は分散体を、構造パターンを有するツールに接触させ、例えば、蒸発によって溶媒を除去すること、を含む様々な方法によって形成することができる。ツールは、ある程度はツール材料及び所望のトポグラフィの特徴に応じて選択される、当業者に知られている多数の技術のいずれかを使用して形成することができる。例示的な技術としては、エッチング(例えば、化学エッチング、機械エッチング、又はレーザーアブレーション若しくは反応性イオンエッチングなどの他のアブレーション手段、及びこれらの組み合わせ)、フォトリソグラフィ、ステレオリソグラフィ、マイクロマシニング、ローレット加工(例えば、切削ローレット若しくは酸強化ローレット)、スコアリング、カッティングなど、又はそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、ツールは金属ツールである。ツールは、国際公開第2009/032815号(David)に記載されているようなダイヤモンド様ガラス層を更に含み得る。
【0020】
(例えば、加工)構造化表面を形成する代替的な方法としては、熱可塑性樹脂の押出加工、硬化性流体コーティング法、及び硬化も可能な熱可塑性層のエンボス加工が挙げられる。(例えば、加工)構造化表面を形成するための材料及び様々なプロセスに関する追加情報は、例えば、Halversonらの国際公開第2007/070310号及び米国特許出願公開第2007/0134784号、Hanschenらの米国特許出願公開第2003/0235677号、Grahamらの国際公開第2004/000569号、Ylitaloらの米国特許第6,386,699号、Johnstonらの米国特許出願公開第2002/0128578号及び米国特許第6,420,622号、同第6,867,342号、同第7,223,364号、並びにScholzらの米国特許第7,309,519号に見ることができる。
【0021】
構造化表面が、より高い熱溶融又は熱軟化の転移を有する熱可塑性材料を含む場合、構造化表面は、(例えば、平面状の)ベース層、又は言い換えれば、第2のフィルム層上に配置される。(例えば、平面状の)ベース層は、構造化層の材料よりも低い熱溶融又は熱軟化の転移を有する熱可塑性又は熱硬化性材料を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、構造化フィルムは、熱可塑性又は熱硬化性の平面状のベース層上に重合性樹脂を鋳造及び硬化させることによって調製される。Luらの米国特許第5,175,030号、及びLuの米国特許第5,183,597号に記載されるように、(例えば、微細構造)ベアリング物品は、マスターネガ微細構造モールド面上に、マスターのキャビティを充填するのに、かろうじて十分な量で重合性組成物を堆積させる工程、又は重合性組成物のビーズを(モノリシック、又は多層(例えばPETフィルム)などの)予め形成されたベース部とマスターとの間で(そのうちの少なくとも1つが可撓性である)移動させることによってキャビティを充填する工程、及び組成物を硬化する工程を含む、方法によって調製することができる。マスターは、ニッケル、ニッケルめっきが施された銅、又は黄銅などの金属製であってもよく、あるいは重合条件下で安定であり、かつ、マスターからの重合材料のきれいな除去を可能にする表面エネルギーを有する熱可塑性材料であってもよい。ベースフィルムの表面のうちの1つ以上は、任意選択で、プライマー処理されるか、又はそうしない場合は、ベース層への構造化層の接着を促進するように処理されてもよい。
【0023】
有機成分及び重合性組成物は、好ましくは溶媒を実質的に含まない。「溶媒を実質的に含まない」とは、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、及び0.5重量%未満の(例えば、有機)溶媒を有する重合性組成物を指す。溶媒の濃度は、ガスクロマトグラフィーなどの既知の方法によって測定することができる。0.5重量%未満の溶媒濃度が好ましい。
【0024】
重合性組成物の構成成分は、重合性組成物が低粘度となるように好ましくは選択される。本明細書で使用される場合、粘度は、Dynamic Stress Rheometerを使用して40mmの平行プレートで(最大1000/秒のせん断速度で)測定される。重合性組成物の粘度は1000cps未満であり、典型的には900cps未満である。重合性組成物の粘度は、典型的には周囲温度(すなわち、25℃)~180°F(82℃)の範囲であるコーティング温度において、800cps未満、700cps未満、600cps未満、又は500cps未満であってもよい。有機成分は、固体であってもよく、又は重合性組成物中の融点がコーティング温度未満であるという条件で固体成分を含んでもよい。有機成分は、周囲温度で液体であることができる。
【0025】
平面状のベース層の厚さは、典型的には、少なくとも50、100、200、300、400、又は500ミクロンである。いくつかの実施形態では、平面状のベース層の厚さは、5、4、3、2、1、又は0.5mm(すなわち、500ミクロン(20ミル))以下である。
【0026】
有用なベース部材材料としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル、セルロース系ポリマー、例えば酢酸酪酸セルロース及び酢酸プロピオン酸セルロース;三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、生分解性ポリ乳酸系ポリマーを含むポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸をベースとするコポリマー又はブレンド、ポリオレフィン及びオレフィンコポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリイミド、シリコーン(例えば、ポリシロキサン)、フルオロエラストマーを含むフルオロポリマー、並びに生分解性ポリマー、例えばポリカプロラクトン、ポリ乳酸ポリマー、ポリエチレンオキシド、及びポリカルボン酸が挙げられる。ベース層は、これらのポリマーの混合物を含有することができる。ベース層は、このようなポリマーの2つ以上の層を含む多層フィルムであってもよい。更に、繊維強化ポリマー及び/又は粒子強化ポリマーも使用することができる。
【0027】
代表的なフルオロポリマーには、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF);ポリフッ化ビニリデン(PVDF);エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE);テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデン(THV)のコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びフッ化ビニリデン(VDF)由来のサブユニットを含むポリエチレンコポリマー;並びにフッ素化エチレンプロピレン(FEP)コポリマーが含まれる。フルオロポリマーは、Dyneon LLC(Oakdale,MN)、Daikin Industries,Ltd.(Osaka,Japan);Asahi Glass Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)及び E.I.du Pont de Nemours and Co.(Wilmoniton,DE)から市販されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、微細構造化フィルム又は微細構造化表面層は、先に引用された国際公開第2020/070589号に記載されているようなフルオロポリマーを含む多層フィルムを含む。このような多層フィルムは、例えば、UV-Cシールド、UV-C光コリメータ、及びUV-C光集光器として有用である。他の実施形態では、微細構造化フィルム又は微細構造化表面層は、UV-Cシールド、UV-C光コリメータ及びUV-C光集光器として有用ではないモノリシック又は多層フルオロポリマー(例えば保護)層を含む。
【0029】
熱成形に使用される最も一般的な熱可塑性樹脂は、アクリル(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、酢酸セルロース、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、及びナイロンを含むポリアミドである。これらのクラスの全ては、溶融され、フィルムに形成され、熱成形を介して異なる形態に再成形され得るポリマーを含む。
【0030】
熱成形可能な複合パネルは、熱可塑性材料、例えば、ある種の繊維で強化されたポリプロピレン(PP)、ナイロン6、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)であり、次いで、固体シートとして顧客に供給され、次いで、成形構造に熱成形される。
【0031】
溶融温度又は軟化温度は、(例えば、平面状の)ベース層又は微細構造化表面の熱可塑性材料又は熱硬化性材料の物理的特性である。本明細書で使用される場合、熱溶融温度又は熱軟化転移温度という用語は、(例えば、非晶質)熱可塑性ポリマーのASTM D1525-17に従って測定されるビカット軟化温度、又はASTM D3418に従って示差走査熱量計によって測定される結晶化度を有する熱可塑性ポリマーの溶融温度(Tm)を指す。
【0032】
いくつかの実施形態では、熱溶融温度の転移温度又は熱軟化の転移温度は、少なくとも50、55、60、65、70、75、又は80℃である。熱溶融の転移温度又は熱軟化の転移温度は、典型的には、400、375、350、325、300、275、250、200、又は175℃以下である。いくつかの実施形態では、熱溶融の転移温度又は熱軟化の転移温度は、170、165、160、155、150、145、140、135、130、125、又は120℃以下である。
【0033】
有用な熱成形可能材料の例は、PETgとして市販されているポリエチレンテレフタレートである。PETgのいくつかの代表的な物理的特性は以下のとおりである。
【表1】
【0034】
曲げ弾性率及び破断点伸び(例えば、室温で)は、ASTM D790-17に従って試験することができ、引張特性は、ASTM D638-14によって試験することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、熱成形可能材料(例えば、平面状シート又はフィルム)は、300mm/分の速度で25、50、75、100、125、150、又は200%超の伸びを有する。いくつかの実施形態では、熱成形可能材料(例えば、平面状シート又はフィルム)は、300mm/分の速度で500、450、400、350、300、250、200、150、又は100%以下の破断点伸びを有する。300mm/分での伸びは、高速で起こることが多い熱成形プロセスに関連し得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、熱成形可能材料(例えば、平面状シート又はフィルム)は、50mm/分の速度で20、25、30、35、40、45、又は50%超の伸びを有する。いくつかの実施形態では、熱成形可能材料(例えば、平面状シート又はフィルム)は、50mm/分の速度で100、75、又は50%以下の破断点伸びを有する。いくつかの実施形態では、熱成形可能材料(例えば、平面状シート又はフィルム)は、50mm/分の速度で45、40、35、30、又は25%以下の破断点伸びを有する。50mm/分での伸びは、歯科用トレイアライナなどの熱成形物品の最終用途に関連し得る。
【0037】
構造化(例えば、微細構造及びナノ構造化)フィルムの製造に好適な様々な有機ポリマー材料が記載されている。有機ポリマー材料はまた、好適な有機又は無機充填剤で充填されてもよく、特定の用途において、充填剤は放射線不透過性である。
【0038】
いくつかの実施形態では、構造化層は、十分に架橋された有機ポリマー材料を含み、それにより、構造化層は、構造化層の材料の分解温度までの温度で、熱溶融又は熱軟化の転移がない。したがって、構造化層は、構造化層が熱可塑性でないように十分に架橋される。分解温度は、熱重量分析を用いて測定することができる。多くの熱可塑性ポリマーは、400℃の温度で分解する。しかしながら、構造化フィルムの熱成形温度は、構造化層の材料の分解よりも低い。いくつかの実施形態では、熱成形温度は、350、300、250、200、150、又は100℃以下である。熱成形温度は、(例えば、平面状の)ベース層の材料の熱溶融の転移温度又は熱軟化の転移温度以上である。いくつかの実施形態では、(例えば、結晶性材料の)熱成形温度はまた、(例えば、平面状の)ベース層の材料のガラス転移温度(Tg)を上回る。熱成形温度は、(例えば、平面状の)ベース層の材料の熱溶融温度、熱軟化の転移温度、又はTgよりも少なくとも5、10、15、20、又は25度高くてもよい。
【0039】
典型的な実施形態では、重合性樹脂は、構造化層を形成するために利用され、典型的には、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基(例えば、Photomer 6210)及び(例えば、マルチ(メタ)アクリレート)架橋剤(例えば、HDDA)を含む少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含むモノマー又はオリゴマーは、(例えば、脂肪族)ウレタンアクリレートである。少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含むモノマー又はオリゴマーは、典型的には、少なくとも40、50、60、又は70%の伸びを有する。少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含むモノマー又はオリゴマーの引張強度は、典型的には、少なくとも1000、1500、又は2000psiである。いくつかの実施形態では、引張強度は、3000、2500、2000、又は1500psi以下である。典型的には、引張強度が増加するにつれて、伸びは減少する。引張及び伸び試験は、典型的には、23℃及び相対湿度50%で行われることが理解される。
【0040】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、より高い伸びを有するように選択される。いくつかの実施形態では、重合性樹脂は、40、50、60、又は70%より大きい伸びを有する。例えば、伸びは、少なくとも80、90、又は100%であってもよい。いくつかの実施形態では、伸びは、少なくとも125、150、175、又は200%である。いくつかの実施形態では、伸びは、500、450、400、350、300、250、200、150、又は100%以下である。
【0041】
構造化層の有機ポリマー(例えば、硬化重合性樹脂)の伸びは、ASTM D882-10に従って決定することができる(後でより詳細に説明するように)。熱成形可能材料の伸び、及びいくつかの実施形態では構造化層の伸びは、温度に応じて増大し得る。例えば、PETgは室温で90~180%の伸びを有するが、後述の実施例によって実証されるように、このような材料のフィルム又はシートは熱成形中に180%をはるかに超えて伸びることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、(メタ)アクリルポリマーを含む。
【0043】
構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、典型的には、1~14個の炭素原子及び好ましくは平均4~12個の炭素原子を含有する、(例えば非第三級)アルコールに由来する1つ以上の(メタ)アクリレートエステルモノマーの重合単位(polymerized units:重合した単位)を含む。
【0044】
モノマーの例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール;3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-プロピルヘプタノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノールなどの非第三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとのエステルが挙げられる。
【0045】
構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、典型的には、1つ以上の低Tg(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を含み、すなわち、(メタ)アクリレートモノマーのTは、反応してホモポリマーを形成する場合に0℃以下である。いくつかの実施形態では、低Tgモノマーは、-5℃以下、又は-10℃以下のTを有する。これらのホモポリマーのTgは、多くの場合、-80℃以上、-70℃以上、-60℃以上又は-50℃以上である。
【0046】
低Tgモノマーは、式HC=CRC(O)ORを有する場合があり、RはH又はメチルであり、Rは1~22個の炭素を有するアルキル、又は2~20個の炭素及び酸素若しくは硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を有するヘテロアルキルである。アルキル基又はヘテロアルキル基は、直鎖、分枝、環状、又はこれらの組み合わせとすることができる。
【0047】
例示的な低Tgモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びドデシルアクリレートが挙げられる。低Tgヘテロアルキルアクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチルアクリレート及び2-エトキシエチルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、6~20個の炭素原子を含むアルキル基を有する、少なくとも1つの低Tgモノマー(複数可)の重合単位を含む。いくつかの実施形態では、低Tgモノマーは、7個又は8個の炭素原子を含む、アルキル基を有する。例示的なモノマーとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、モノマーは、(メタ)アクリル酸と、再生可能資源に由来するアルコールとのエステル、例えば2-オクチル(メタ)アクリレートである。
【0049】
構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、典型的には、重合単位の総重量に基づいて(すなわち無機充填剤又は他の添加剤は除いて)、低Tgモノマー(例えば、Tgが0℃未満)の単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、少なくとも10、15、20、又は25重量%含む。本明細書で使用される場合、重合単位の重量%は、(メタ)アクリルポリマー、及び他の有機成分、例えば、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の総重量に基づく重量%を指す。構造化の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、典型的には、重合単位の総重量に基づいて、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を60、55、50、45、又は40重量%以下含む。
【0050】
他の実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、(メタ)アクリルポリマー、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を10重量%未満含む。例えば、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の最小濃度は、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8又は9重量%であってもよい。
【0051】
構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)が無機充填剤及び添加剤などの非重合構成成分を含まない場合、特定の重合単位の重量%は、構造化層の全組成物中に存在するその重合単位の重量%とほぼ同じである。しかしながら、有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)が無機充填剤又は他の非重合性添加剤などの非重合構成成分を含む場合、全組成物は実質的に少ない重合単位を含み得る。概ね、非重合性添加剤の総量は最大25重量%の範囲であってもよい。したがって、そのような非重合性添加剤を含む構造化層の場合、特定の重合単位の濃度は、そのような添加剤の総濃度に応じて、5、10、15、20、25重量%少なくなり得る。例えば、構造化層が無機充填剤を20重量%含む場合、低Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの濃度は20%少なくてもよく、すなわち、少なくとも8重量%、12重量%などであってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、少なくとも1つの(例えば非極性)高Tgモノマーを含み、すなわち、反応してホモポリマーを形成したときの(メタ)アクリレートモノマーは0℃より高いTgを有する。高Tgモノマーは、より典型的には、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、又は40℃より高いTgを有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、少なくとも1つの高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含み、その高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、t-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、及びプロピルメタクリレート又は組み合わせが挙げられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、40℃、50℃、60℃、70℃、又は80℃超のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、重合単位の総重量(すなわち無機充填剤又は他の添加剤を除く)に基づいて、少なくとも1、2、又は3重量%~最大35、40、45、50、55、60、65、又は70重量%含む。いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、30、25、20、又は10重量%以下含む。更に、いくつかの実施形態では、構造化層は、高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0055】
他の実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、(メタ)アクリルポリマー、及び他の有機成分、例えば、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、40℃超のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を40重量%超含む。例えば、40℃超のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の最大濃度は、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90重量%であってもよい。
【0056】
様々なモノマーのホモポリマーのTgは既知であり、様々なハンドブックに報告されている。いくつかの例示的なモノマーのTgは、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/094277号にも報告されている。
【0057】
典型的な実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、極性モノマーの重合単位を、少なくとも10、15、又は20重量%、かつ65重量%以下、更に含む。そのような極性モノマーは、概ね、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーと高Tg及び低Tgアルキル(メタ)アクリレート溶媒モノマーとの相溶化に役立つ。極性モノマーは、典型的には0℃より高いTgを有するが、Tgは高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーより低くてもよい。
【0058】
代表的な極性モノマーとしては、例えば、酸官能性モノマー、ヒドロキシル官能性モノマー、窒素含有モノマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、酸官能性モノマー(高Tgモノマーの一部)の重合単位を含み、ここで酸官能基は、カルボン酸など、酸それ自体であってもよく、又は一部分が、カルボン酸アルカリ金属などのその塩であってもよい。有用な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、b-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、アクリル酸等の酸官能性モノマーの重合単位を、0.5~最大20又は25重量%含む。いくつかの実施形態では、構造化層は、酸官能性モノマーの重合単位を、少なくとも1、2、3、4、又は5重量%含む。他の実施形態では、構造化層は、酸官能性モノマーの重合単位を1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0061】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、非酸官能性極性モノマーを含む。
【0062】
非酸官能性極性モノマーの1つの分類としては、窒素含有モノマーが挙げられる。代表的な例としては、N-ビニルピロリドン;N-ビニルカプロラクタム;アクリルアミド;モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド;t-ブチルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド;及びN-オクチルアクリルアミドが挙げられる。いくつかの実施形態では、構造化層は、窒素含有モノマーの重合単位を、少なくとも0.5、1、2、3、4又は5重量%、かつ典型的には25又は30重量%以下含む。他の実施形態では、構造化層は、窒素含有モノマーの重合単位を、1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0063】
非酸官能性極性モノマーの別の分類としては、アルコキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。代表的な例としては、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メトキシエトキシ)エチル、2-メトキシエチルメタクリレート、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、アルコキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、少なくとも0.5、1、2、3、4又は5重量%、かつ典型的には30又は35重量%以下含む。他の実施形態では、構造化層は、アルコキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0065】
好ましい極性モノマーとしては、アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアクリルアミド及びN-ビニルピロリジノンが挙げられる。構造化層は、極性モノマーの重合単位を少なくとも10、15又は20重量%、かつ典型的には65、60、55、50又は45重量%以下の量で含んでもよい。
【0066】
構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、任意選択で、ビニルモノマーを含んでいてもよく、そのビニルモノマーとしては、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート及びビニルプロピオネート)、スチレン、置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン)、ビニルハライド、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用されるビニルモノマーに極性モノマーは含まれない。いくつかの実施形態では、構造化層は、ビニルモノマーの重合単位を、少なくとも0.5、1、2、3、4又は5重量%、かつ典型的には10重量%以下含む。他の実施形態では、構造化層は、ビニルモノマーの重合単位を1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0067】
いくつかの有利な実施形態では、(メタ)アクリルポリマーの重合単位は脂肪族基を含み、かつ芳香族部分がない。
【0068】
典型的な実施形態では、(例えば溶媒の)モノマー(複数可)を重合させ、ランダム(メタ)アクリルポリマーコポリマーを形成する。
【0069】
いくつかの実施形態では、モノマーの種類及び量は、先に記載された範囲内のより高い伸びなどの物理的特性を有する(メタ)アクリルポリマーを形成するように選択され得る。
【0070】
いくつかの有利な実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、ポリビニルアセタールポリマーを更に含む。ポリビニルアセタールポリマーは、例えば、当該技術分野で既知であるように、ポリビニルアルコールをアルデヒドと反応させることによって得られ、かつ先に引用された国際公開第2016/094277号でより詳細に記載されている。ポリアセタール樹脂は、典型的にはランダム共重合体である。しかしながら、ブロック共重合体及びテーパードブロック共重合体もランダム共重合体と同様の有益性をもたらし得る。
【0071】
ポリビニルアセタール(例えばブチラール)の含有量は、典型的には、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの65重量%~90重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)の含有量は、約70又は75~80又は85重量%の範囲である。ポリビニルアルコールの含有量は、典型的には、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの約10~30重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーのポリビニルアルコールの含有量は、約15~25重量%の範囲である。ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーのポリビニルアセテートの含有量は、0であるか、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの1~8重量%の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、ポリビニルアセテートの含有量は、約1~5重量%の範囲である。
【0072】
いくつかの実施形態では、アルデヒドのアルキル残基は1~7個の炭素原子を含む。他の実施形態では、アルデヒドのアルキル残基Rは、ブチルアルデヒド(R=3)、ヘキシルアルデヒド(R=5)、n-オクチルアルデヒド(R=7)の場合のように、に3~7個の炭素原子を含む。これらのうち、ブタナールとしても知られるブチルアルデヒドが、最も一般的に用いられる。ポリビニルブチラール(「PVB」)ポリマーは、Kurarayから商品名「MOWITAL」及びSolutiaから商品名「BUTVAR」で市販されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーは、DSCによって測定したときに約60℃~約75℃又は80℃の範囲のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーのTgは、少なくとも65又は70℃である。n-オクチルアルデヒドなどの他のアルデヒドをポリビニルアセタールポリマーの調製に使用する場合、Tgは、65℃又は60℃未満であってもよい。ポリビニルアセタールポリマーのTgは、典型的には少なくとも35、40、又は45℃である。ポリビニルアセタールポリマーのTgが60℃未満の場合、ポリビニルブチラールポリマーを用いるものと比較して、より高濃度の高Tgモノマーを構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)に用いてもよい。アセトアルデヒドなどの他のアルデヒドをポリビニルアセタールポリマーの調製に使用する場合、Tgは75℃又は80℃より高くてもよい。ポリビニルアセタールポリマーのTgが70℃より高い場合、ポリビニルブチラールポリマーを用いるものと比較して、より高濃度の低Tgモノマーを構造化層に用いてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、ポリビニルアセタール(例えば、PVB)ポリマーは、典型的には、少なくとも10,000g/モル又は15,000g/モル、かつ150,000g/モル又は100,000g/モル以下の平均分子量(Mw)を有する。いくつかの有利な実施形態では、ポリアセタール(例えばPVB)ポリマーは、少なくとも20,000g/モル、25,000、30,000、35,000g/モル、かつ典型的には75,000g/モル以下の平均分子量(Mw)を有する。
【0075】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、(メタ)アクリレートポリマー、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールポリマーを5~30重量%含む。いくつかの実施形態では、構造化層は、ポリビニルアセタール(例えば、PVB)ポリマーを、少なくとも10、11、12、13、14、又は15重量%含む。いくつかの実施形態では、構造化層は、ポリビニルアセタール(例えば、PVB)ポリマーを25又は20重量%以下含む。構造化層が、平均分子量(Mw)が50,000g/モル未満のポリビニルアセタール(例えば、PVB)ポリマーを含む場合、構造化層は、ポリビニルアセタール(例えば、PVB)ポリマーを35又は40重量%などのより高濃度で含んでもよい。したがって、構造化は、微量のポリビニルアセタール(例えば、PVB)樹脂を、主要量の(メタ)アクリルポリマーとの組み合わせで含む。(メタ)アクリルポリマーの量は、典型的には、構造化層の少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95重量%である。
【0076】
他の実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、(メタ)アクリルポリマー、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーを5重量%未満含む。例えば、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーの最小濃度は、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、又は4.5重量%であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、重合架橋剤単位を含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、(メタ)アクリレート、ビニル、及びアルケニル(例えば、C~C20のオレフィン基)から選択される官能基を含む架橋剤;並びに塩素化トリアジン架橋化合物の場合のように、(メタ)アクリルポリマーの重合単位を架橋することができる多官能性架橋剤である。
【0078】
有用な(例えば脂肪族)多官能性(メタ)アクリレートの例としては、限定されないが、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレート、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられる。1つの例示的なポリウレタンジ(メタ)アクリレートは、Sartomerから商品名CN996(8℃のTgを有すると報告されている)で市販されている。
【0079】
他の実施形態では、架橋剤は、(メタ)アクリルポリマー(例えばHEA)のアルコキシ基又はポリビニルアセタール(PVB)のポリビニルアルコール基を架橋することが可能な、イソシアネート基などのヒドロキシル反応性基を含む。有用な(例えば脂肪族)多官能性イソシアネート架橋剤の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、並びにこれらの誘導体及びプレポリマーが挙げられる。
【0080】
2種以上の架橋剤の様々な組み合わせを使用することができる。
【0081】
存在する場合、架橋剤は、典型的には、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)の重合単位の総重量に基づいて、少なくとも0.5、1.0、1.5、又は2重量%から最大5、6、7、8、9、又は10重量%までの範囲の量で存在する。
【0082】
構造化層は、1種以上の従来の添加剤を任意選択的に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、加工助剤、静電気防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、充填剤、艶消剤、難燃剤(例えばホウ酸亜鉛)などが挙げられる。充填剤又は顔料のいくつかの例としては、酸化亜鉛、二酸化チタン、シリカなどの無機酸化物材料、カーボンブラック、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、金属粉末、雲母、黒鉛、タルク、セラミック微小球、ガラス又はポリマービーズ又はバブル、繊維、デンプンなどが挙げられる。
【0083】
存在する場合、添加剤の量は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5重量%であり得る。いくつかの実施形態では、添加剤の量は、構造化層全体(すなわち、全組成物)の25、20、15、10又は5重量%以下である。他の実施形態では、添加剤の濃度は、構造化層全体の最大40、45、50、55、又は約65重量%の範囲とすることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、構造化層は、可塑剤、粘着付与剤、及びこれらの組み合わせを含まない。他の実施形態では、構造化層は、可塑剤、粘着付与剤、及びこれらの組み合わせを、構造化層の全組成物の5、4、3、2、又は1重量%以下の量で含む。引張強度の観点から、粘着付与剤又は可塑剤を多量に添加しないことが好ましい。
【0085】
構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、様々な技術によって重合させることができるが、好ましくは、電子ビーム、ガンマ線、特に紫外線を使用したプロセスをはじめとする、無溶媒放射線重合によって重合させる。この(例えば紫外線照射による)実施形態では、概ね、メタクリレートモノマーはほとんど又は全く用いられない。したがって、構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、メタクリレート基を有するモノマーの重合単位を、含まないか(comprises zero)、又は10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1重量%以下含む。
【0086】
構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)を調製する1つの方法は、溶媒モノマー(複数可)を部分的に重合し、未重合の溶媒モノマー(複数可)に溶解した溶質(メタ)アクリルポリマーを含むシロップ組成物を作製することを含む。
【0087】
別の方法は、ポリビニルアセタール(例えば、PVB)ポリマーを(メタ)アクリルポリマーの未重合溶媒モノマー(複数可)に溶解させて、十分な粘度のコーティング可能組成物を形成することを含む。ポリビニルアセタール(例えば、PVB)ポリマーは、(メタ)アクリルポリマーのモノマー(複数可)の部分重合の前及び/又はその後に添加することができる。更なる詳細は、先に引用された国際公開第2016/094277号に見ることができる。
【0088】
次いで、(例えば、コーティング可能な)ものを、熱成形可能なフィルム又はシート、剥離ライナー上にコーティングし、微細構造化(例えば、ツール)表面と接触させ、放射線への曝露によって更に重合させる。微細構造化(例えば、ツール)表面は、当該技術分野で既知であるように、金属ツール又は微細構造化剥離ライナーであり得る。構造化ライナーを利用してこのような組成物から構造化表面を調製することは、国際公開第2017/112468号に記載されている。フィルム又はシートを(例えば、コーティング可能な)ものでコーティングすることによって、プライマー層又は結合層の非存在下で高い層間接着力を得ることができる。コーティング可能組成物の粘度は、典型的には25℃で1,000又は2,000cps以上、100,000cps以下の範囲である。いくつかの実施形態では、粘度は75,000、50,000又は25,000cps以下である。
【0089】
本方法は、予重合した(メタ)アクリルポリマーの溶媒ブレンドによって用いられ得るものと比べて、より高い分子量の(メタ)アクリルポリマーを形成することができる。より高い分子量の(メタ)アクリルポリマーによって鎖の絡み合い量が増加し、ひいては凝集力が増大し得る。また、架橋間の距離も高分子(メタ)アクリルポリマーでは大きくなり得るため、そのことが隣接する(例えばフィルム)層の表面上のウェットアウトを増加させる。構造化層の分子量は、架橋剤を含むことによって、更になお高めることができる。
【0090】
構造化層の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、典型的には、少なくとも20、25、30、35、又は40%のゲル含有量(テトラヒドロフラン(THF)を利用する国際公開第2016/094277号に記載されるゲル含有量試験方法に従い測定したときに)を有する。いくつかの実施形態では、ゲル含有量は少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95%である。ゲル含有量は、典型的には、100%、99%、又は98%未満である。
【0091】
構造化の有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)は、様々な技術を使用して特徴付けることができる。コポリマーのTgは、構成モノマーのTg及びその重量パーセントに基づきフォックス方程式を使用して推定してもよいが、フォックス方程式は、非相溶性などの効果の相互作用を考慮に入れないため、Tgが、計算したTgから外れる場合がある。構造化層のTgは、実施例に記載する試験方法に従い動的機械分析によって測定したときのTgを指す。構造化層の有機ポリマーが、150℃を超えるTgを有するモノマーの重合単位を含む場合、DSC試験温度の上限は、最も高いTgモノマーのものよりも高くなるように選択される。DSCによって測定したときのTg中点値は、動的機械分析(DMA)によって10Hzの周波数及び3℃/分の速度で測定したときのピーク温度Tgよりも10~12℃低い。したがって、DSCによって測定したときの60℃のTgは、この直前に記載した通りDMAによって測定したときの70~72℃と等価である。
【0092】
構造化層の有機ポリマーのTgは、典型的には、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30℃から最大55、60、65、又は70℃までの範囲である。いくつかの実施形態では、Tgは、50又は45℃以下である。いくつかの実施形態では、構造化層の有機ポリマーは、DSCによって測定したときに単一のTgを呈する。
【0093】
単一のTgは、単一の(例えば、連続)相形態の指標の1つである。したがって、構造化層の有機ポリマーは、単一(例えば、連続)相として特徴付けることができる。あるいは、構造化層の有機ポリマーは、国際公開第2016/094277号に記載されている試験方法に従って透過型電子顕微鏡(TEM)によって試験することができる。低ヘイズ及び高透過率を有するフィルムには、単一(例えば、連続)相形態が好ましい。
【0094】
他の実施形態では、構造化層の有機ポリマーは、(メタ)アクリルポリマーの連続相中にポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)の分散相を有するものとして特徴付けることができる。平均分散体サイズは、TEMを用い、分散相のランダムに(randomly)選択された粒子(例えば100個の粒子)の直径を平均することにより計算することができる。平均分散体サイズは、0.1~10ミクロンの範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、平均分散体サイズは、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1ミクロン未満である。また、0.1ミクロン未満の平均分散体サイズにより、ヘイズが低く透過率の高いフィルムを得ることもできる。
【0095】
微細構造化表面を製造するのに好適な、より高い伸びを有するいくつかの代表的な重合性組成物が、国際公開第2016/094277号に以下のように記載されている。
【表2】
【表3】
【表4】
【0096】
表BのフィルムのTgは、DSCを用いて測定した。(約5mgのフィルム試料の各々を個々の標準アルミニウムDSCパン(Thermal Analysis T080715)に置き、示差走査熱量計(TA DSC Q200、TA Instruments)のオートサンプラーに置いた。)各試料分析について、パンを個々に熱量計の密閉セル内の示差ポストの一方に、反対側のポストの空の基準パンと共に置いた。温度を5℃/分の速度で150℃に上昇させ、-50℃に冷却し、もう一度+150℃に再加熱した。2回目の加熱サイクルを用いてTg(ASTM D3418-12でTmgとして記載されている中点値温度を指す)を決定した。
【0097】
表Bのフィルムの引張及び伸び試験は、1kNロードセルを備えたINSTRON MODEL 4500 UNIVERSAL TESTING SYSTEMを利用して、ASTM D882-10に従って行った。試験は250mm(9.84インチ)の総距離について300mm/分(11.81インチ/分)の速度で実施した。試料は調製から少なくとも24時間以上後に試験した。0.5インチ(約1.3cm)幅ストリップのフィルムをカットし、マイクロメータを使用して各試料の厚さを決定した。典型的な試料長さは5~7cm(2~3インチ)であった。試験結果は、3~5つの試料の複製の平均として報告した。引張強さ(名目)及び破断点伸び率を、ASTM D882-10の11.3及び11.5により記載されるとおり決定した。
【0098】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面又は少なくともその山部構造は、低粘度ウレタンアクリレートオリゴマーを含む重合性樹脂の反応生成物である有機ポリマー材料を含む。ウレタンアクリレートオリゴマーの粘度は、典型的には、25℃で1000、750、又は500センチポアズ以下である。代表的なウレタンアクリレートオリゴマーは、商品名CN 2285、CN 3100、CN 3105で入手可能である。低粘度ウレタンアクリレートオリゴマーは、光開始剤と組み合わされ、UV放射線への曝露によって硬化され得る。
【0099】
他の実施形態では、50~70重量%の高粘度ウレタンアクリレートオリゴマーを、30~50重量%の単官能性(メタ)アクリレート希釈剤と組み合わせてもよい。ウレタンアクリレートオリゴマーの混合物は、好ましくは、25℃で1000、750、又は500センチポアズ以下の粘度を有する。代表的なウレタンアクリレートオリゴマーは、商品名CN 9009、CN 996、CN 986で入手可能である。好適な(例えば、高屈折率)モノ(メタ)アクリレート希釈剤は、後に記載される。あるいは、光学特性が重要でない微細構造化表面については、低屈折率モノ(メタ)アクリレート希釈剤が利用されてもよい。代表的な例としては、テトラヒドロフルフリルアクリレート及び環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートが挙げられる。様々な他の低屈折率モノ(メタ)アクリレート希釈剤は、当該技術分野で既知である。低粘度混合物は、光開始剤と組み合わされ、UV放射線への曝露によって硬化され得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面又は少なくともその山部構造は、少なくとも25℃のガラス転移温度(示差走査熱量計で測定される)を有する有機ポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、有機ポリマー材料は、少なくとも30、35、40、45、50、55、又は60℃のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、有機ポリマー材料は、少なくとも100、95、90、85、80、又は75℃のガラス転移温度を有する。他の実施形態では、微細構造化表面(例えば、少なくともその山部構造)は、示差走査熱量計で測定された25℃未満又は10℃未満のガラス転移温度を有する有機ポリマー材料を含む。少なくともいくつかの実施形態では、微細構造体は、エラストマーであってもよい。エラストマーは、他の材料と比較して、一般に、好適に低いヤング率及び高い降伏歪みを有する粘弾性(又は弾性)の特性を有するポリマーとして理解され得る。この用語は、多くの場合、ゴムという用語と同じ意味で使用されるが、架橋ポリマーを指す場合には、後者が好ましい。微細構造化表面又は少なくとも山部構造が熱可塑性材料を含む場合、微細構造化表面又は少なくとも山部構造は、典型的には、熱成形可能なベース層よりも高いTgを有する。しかしながら、微細構造化表面又は少なくとも山部構造が硬化された、又は言い換えれば、架橋された材料を含む場合、微細構造化表面又は少なくとも山部構造のTgは、熱成形可能なベース層よりも高くても低くてもよい。
【0101】
一実施形態では、微細構造体又は微細構造化表面は、硬化した熱硬化性材料を含んでもよい。溶融及び固化が熱的に可逆的である熱可塑性材料とは異なり、熱硬化性プラスチックは、加熱後に硬化するため、最初は熱可塑性だが、硬化後に再溶融できなくなるか、又は硬化後に溶融温度が著しく高くなる。
【0102】
いくつかの実施形態では、熱硬化性材料は、シリコーンポリマーを含む。シリコーンポリマーは、ポリジアルコキシシロキサン、又はより具体的にはポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)であり得る。いくつかの実施形態では、微細構造体又は微細構造化表面は、少なくとも95重量%のポリジアルコキシシロキサン(例えば、PDMS)を含む。ある特定の実施形態では、PDMSは、ビニル官能性PDMSなどの不飽和官能性PDMSとのシリコーン水素化物(Si-H)官能性PDMSのヒドロシリル化によって形成された、硬化した熱硬化性組成物である。Si-H及び不飽和基は、末端、ペンダント、又はそれらの両方であってもよい。他の実施形態では、PDMSは、アルコキシシラン末端PDMSなどの湿気硬化型であり得る。
【0103】
他のシリコーンポリマーも有用であり得る。いくつかの実施形態では、シリコーンポリマーのケイ素原子は、フェニルなどのアリール基、エチル、プロピル、ブチル、若しくはオクチルなどのアルキル基;3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル基;2-フェニルプロピルなどのアリールアルキル、又はそのような基の組み合わせを含む。シリコーンポリマーはまた、ビニル、水素化ケイ素(Si-H)、シラノール(Si-OH)、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、イソシアネート、無水物、メルカプト、及びクロロアルキルなどの反応基を含有し得る。シリコーンポリマーは、熱可塑性であってもよく、又は例えば、縮合硬化、ビニル及びSi-H基の付加硬化、若しくはペンダントアクリレート基のフリーラジカル硬化によって硬化されてもよい。シリコーンポリマーはまた、過酸化物で架橋されてもよい。そのような硬化は、熱又は化学線の追加によって達成され得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、構造化層は、有機又は無機粒子を更に含んでもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、構造化フィルムの材料は、再帰反射シート及び輝度向上フィルムの場合など、光学特性に基づいて選択される。したがって、構造化表面(例えば、山部構造及び隣接する谷部)は、少なくとも1.50、1.55、1.60以上の屈折率を有する材料を含んでもよい。更に、可視光の透過率は、典型的には85又は90%を超える。
【0106】
光学フィルムの構造化表面は、以下の一般構造を有する主要部分を含む少なくとも1つの芳香族又は非芳香族マルチ-(メタ)アクリレートモノマーを含む重合性組成物から調製されてもよい:
【化1】
式中、Zは、独立して-C(CH-、-CH-、-C(O)-、-S-、-S(O)-、又は-S(O)-であり、各Qは、独立して、O又はSである。Lは、連結基である。Lは、独立して、分枝又は直鎖C~C12アルキレン基を含んでもよく、nは、0~10の範囲である。Lは、好ましくは、分枝又は直鎖C~Cアルキレン基を含む。より好ましくは、Lは、C又はCであり、nは、0、1、2、又は3である。アルキレン連結基の炭素鎖は、任意選択で、1つ以上のヒドロキシ基で置換されていてもよい。例えば、Lは、-CHCH(OH)CH-であってもよい。典型的には、連結基は同じである。R1は、独立して、水素又はメチルである。
【0107】
いくつかの実施形態では、マルチ-(メタ)アクリレートモノマーは、アルキレンオキシド繰り返し単位を含む。1つの例示的なビスフェノールAエトキシル化ジアクリレートモノマーは、Sartomerから「SR602」の商品名(20℃で610cpsの粘度及び2℃のTgを有すると報告されている)で市販されている。別の例示的なビスフェノールAエトキシル化ジアクリレートモノマーは、Sartomerから「SR601」の商品名(20℃で1080cpsの粘度及び60℃のTgを有すると報告されている)で市販されている。
【0108】
アルキレンオキシド繰り返し単位を含む代表的な非芳香族マルチ-(メタ)アクリレートモノマーは、Sartomer USA(Exton,PA)から入手可能であり、商品名「SR268」、「SR259」、「SR344」、及び「SR610」で入手可能なものなどの、テトラエチレングリコールジアクリレート及びポリエチレングリコールジアクリレートが挙げられる。他の代表的なモノマーとしては、Monomer-Polymer&Dajac Labs(PA,USA)から商品名「Polypropylene Glycol 400 diacrylate」で入手可能なポリプロピレングリコールジアクリレートが挙げられる。
【0109】
いくつかの実施形態では、重合性組成物は、モノ(メタ)アクリレート希釈剤を更に含む。希釈剤は、典型的には、1.50超(例えば、少なくとも1.51又は1.52)の屈折率を有する。このような反応性希釈剤は、ハロゲン化又は非ハロゲン化(例えば、非臭素化)されたものであり得る。いくつかの実施形態では、モノ(メタ)アクリレート希釈剤は、少なくとも1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、又は1.58、典型的には1.60以下の屈折率を有する。好適なモノ(メタ)アクリレート希釈剤としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート;フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート;フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;フェニルチオエチルアクリレート;2-ナフチルチオエチルアクリレート;1-ナフチルチオエチルアクリレート;2,4,6-トリブロモフェノキシエチルアクリレート;2,4-ジブロモフェノキシエチルアクリレート;2-ブロモフェノキシエチルアクリレート;1-ナフチルオキシエチルアクリレート;2-ナフチルオキシエチルアクリレート;フェノキシ2-メチルエチルアクリレート;フェノキシエトキシエチルアクリレート;3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート;2,4-ジブロモ-6-sec-ブチルフェニルアクリレート;2,4-ジブロモ-6-イソプロピルフェニルアクリレート;ベンジルアクリレート;フェニルアクリレート;2,4,6-トリブロモフェニルアクリレートが挙げられる。ペンタブロモベンジルアクリレート及びペンタブロモフェニルアクリレートなどの他の高屈折率モノマーも使用することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、有機物は、モノ(メタ)アクリレート希釈剤として、ビフェニルモノマー、ベンジルモノマー、又はこれらの組み合わせを含む。
【0111】
別の実施形態では、重合性組成物は、モノ(メタ)アクリレート希釈剤として、ベンジル(メタ)アクリレートモノマーを含む。好適なベンジル(メタ)アクリレートモノマーは、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2012/158317号に記載される。ベンジル(メタ)アクリレートモノマーは、典型的には、以下の一般式を有する:
【化2】
式中、少なくとも1つのR1は、芳香族置換基を含み、
tは、1~4の整数であり、
R2は、水素又はメチルである。
【0112】
R1は、様々な芳香族置換基、例えば、
【化3】
を含んでもよい。
【0113】
芳香族置換基R1は、一般に、少なくとも1つの二価(例えば、アルキレン又はエーテル)連結基によってベンジル基の芳香環に結合している。したがって、R1の芳香環は、典型的には、ナフチルの場合と同様に、芳香族ベンジル環に縮合しない。いくつかの実施形態では、芳香族置換基R1は、2つ以上の二価(例えば、アルキレン又はエーテル)連結基によって芳香族ベンジル環に結合している。
【0114】
重合性樹脂組成物はまた、任意選択で、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を含む最大20重量%の非芳香族架橋剤を含んでもよい。好適な架橋剤としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタアクリレート)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、及びジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。架橋剤の任意の1つ又は組み合わせが用いられてもよい。
【0115】
有機成分は、メタクリレート基よりもアクリレート基を含むことが好ましい。
【0116】
一実施形態では、(例えば平面状の)ベース部材は、少なくとも複数の交互の第1及び第2の光学層を含む多層光学フィルムであって、第1及び第2の光学層が、0°、30°、45°、60°、又は75°の入射光角度のうちの少なくとも1つで、少なくとも100ナノメートル~280ナノメートルの波長範囲における少なくとも30ナノメートル波長反射帯域幅にわたって入射紫外光の少なくとも30パーセントを合計で反射する、多層光学フィルムを含む。このような多層光学フィルムは、国際公開第2020/070589号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれ、UV-Cシールド、UV-C光コリメータ、及びUV-C光として有用である。いくつかの実施形態では、少なくとも複数の交互の第1及び第2の光学層を通る入射可視光透過率は、少なくとも400ナノメートル~750ナノメートルの波長範囲内の少なくとも30ナノメートルの波長反射帯域幅にわたって30パーセントを超える。第1の光学層は、少なくとも1つのポリエチレンコポリマーを含み得る。第2の光学層は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンを含むコポリマー、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンを含むコポリマー、又はペルフルオロアルコキシアルカンのうちの少なくとも1つを含み得る。第1の光学層は、チタニア、ジルコニア、酸窒化ジルコニウム、ハフニア、又はアルミナを含み得る。第2の光学層は、シリカ、フッ化アルミニウム、又はフッ化マグネシウムのうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、微細構造体は、多層光学フィルムと共に、可視光透過性UV-C(例えば、反射)保護層、又は言い換えればUV-Cシールドを提供する。UVC光を使用して表面を消毒することができるが、これらの波長は、有機材料を損傷し、望ましくない変色を引き起こす可能性がある。本明細書に記載の微細構造化表面をUV-Cシールドと組み合わせることにより、表面は、UVC光及び従来の洗浄法(例えば、拭き取り、こすり取り、及び/又は抗菌溶液の適用)の両方を用いて清浄にされ、微細構造化表面を消毒することができる。
【0117】
しかしながら、他の具現化された熱成形可能なフィルム、方法、及び物品について、光学特性は重要ではない。したがって、着色された材料、光透過性の材料、及び不透明な材料を含むより低い屈折率を有する様々な他の材料を使用することができる。いくつかの実施形態では、熱成形構造化フィルムは、(例えば、印刷された)グラフィックを更に含んでもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、特に構造化表面が低い伸び率を有する有機ポリマー(例えば、重合性樹脂)を含む場合、構造化表面層は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,318,867号に記載されるようにセグメント化されてもよい。構造化セグメントの周辺部は、構造化表面の厚さを通って延びる複数の分離部によって画定することができる。熱成形中、セグメントは独立して延伸することができ、分離部の幅、又は言い換えればセグメント間の間隙の増加を引き起こす。隣接するセグメント間の分離部の幅は、典型的には、0.5~3ミリメートルの範囲である。しかしながら、分離部がセグメントの周辺部の連続的又は非連続的な切断又はスコアリングによって形成される場合、分離部の幅は0.5ミリメートル未満であってもよい。米国特許第6,318,867号に記載されているように、セグメントを画定する分離部は、任意の好適なプロセスによって形成することができる。いくつかの実施形態では、セグメントを画定する分離部は、レーザービーム又は鋭いエッジなどの切断デバイスで構造化表面層を切断することによって形成される。いくつかの実施形態では、セグメントを画定する分離部は、微細構造化表面層を延伸又は屈曲させることによって形成され、分離部が所望される領域にスコアリングすることと任意選択的に組み合わされる。いくつかの実施形態では、セグメントを画定する分離部は、微細構造化表面を成形して、そのような分離部を形成することによって形成される。いくつかの実施形態では、セグメントを画定する分離部は、シーティング内に不連続性を伝播させることによって形成される。不連続性は、熱衝撃並びに機械的振動又は超音波振動などの任意の好適な手段によって開始することができる。このようなプロセスの組み合わせを使用して、分離部を形成することができる。
【0119】
典型的な実施形態では、微細構造化セグメントは、分離部のパターンによって画定される。例えば、パターンは、平行四辺形、三角形、六角形などの複数の隣接する多角形、並びにバブルメッシュなどの非晶質パターンを含むことができる。
【0120】
例示的な構造化表面
熱成形可能なフィルム及び熱成形物品は、多種多様な構造化表面を含み得る。
【0121】
構造化表面は、特定の技術的効果を提供してもよい。いくつかの実施形態では、フィルムの構造化表面は、熱成形物品の構造化表面が光学特性を有するように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、フィルムの構造化表面は、熱成形物品の構造化表面が、以下の特性:i)少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、又は99%の微生物の接触移動の減少、ii)洗浄後の少なくとも2、3、4、5、6、7、又は8の微生物(例えば、細菌)のlog10減少、iii)洗浄溶液を(例えば、微細)構造化表面に適用した1~3分後に、構造化表面の少なくとも50、60、70、80、90%が洗浄溶液を含有、iv)バイオフィルムの形成の防止、のうちの1つ以上を有するように選択されてもよい。
【0122】
熱成形中に生じる延伸のため、熱成形物品の微細構造化表面は、典型的には、熱成形前のシート又はフィルムの微細構造化表面とは異なる。いくつかの実施形態では、熱成形前の(例えば、熱成形されていない)フィルム又はシートの微細構造化表面は、熱成形物品の微細構造化表面が特別な技術的効果を提供するように選択される。例えば、山部の高さは、熱成形物品の延伸された微細構造化表面のより小さい山部高さが好ましい範囲内にあるように、より大きくてもよい。更に別の例として、谷部の幅は、延伸された微細構造化表面のより大きい幅が好ましい範囲内にあるように、より小さくてもよい。更に別の例として、山部の頂角、谷部の夾角、又は谷部の側面角は、微細構造化表面のより大きい角度が好ましい範囲内にあるように、より小さくてもよい。
【0123】
図2は、(例えば、微細)構造化表面200の例示的な断面図である。このような断面は、複数の個別の(例えば、ポスト又はリブ)構造体220を表す。構造体は、(例えば、加工)平坦面216(基準面126と平行である図1の表面116)に隣接するベース部212を含む。上(例えば、平面状の)面208(表面216及び図1の基準面26に平行)は、構造体の高さ(「H」)だけベース部212から間隔が空いている。構造体220の側壁221は、平坦面216に垂直である。側壁221が平坦面216に垂直であるとき、構造体は、側壁角度が0度である。垂直側壁の場合、ある山部構造体の垂直側壁は互いに平行であり、垂直側壁を有する隣接する構造体とも平行である。あるいは、構造体230は、平坦面216に対して垂直ではなく角度付けされた側壁231を有する。側壁角度232は、側壁231と平坦面216に垂直な基準面233(図1の基準面126に垂直であり、基準面128に平行)との交点によって画定することができる。米国特許第9,335,449号に記載されているようなプライバシーフィルムの場合、壁角度は、典型的には、10、9、8、7、6、又は5度未満である。プライバシーフィルムのチャネルは光吸収材料を含むため、壁角度が大きくなると透過率が低減する可能性がある。図2の構造化表面は、他の用途に利用することができるが、0度に近い壁角度はまた、洗浄するのがより困難である。
【0124】
いくつかの実施形態では、(例えば、微細)構造化表面は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10度を超える側壁角度を有する構造を含む。いくつかの実施形態では、側壁角度は、少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20度である。他の実施形態では、側壁角度は、少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30度である。例えば、いくつかの実施形態では、構造体は、30度の側壁角度を有するキューブコーナー山部構造である。他の実施形態では、側壁角度は、少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、又は45度である。例えば、いくつかの実施形態では、構造体は、45度の側壁角度を有するプリズム構造である。他の実施形態では、側壁角度は、少なくとも46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60度である。側壁のいくつかがより小さい側壁角度を有する場合でも、構造化表面は有益であろうことが理解される。例えば、山部構造の配列の半分が所望の範囲内の側壁角度を有する場合、改善された微生物(例えば、細菌)除去の利点の約半分が得られ得る。したがって、いくつかの実施形態では、山部構造の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1度未満の側壁角度を有する。いくつかの実施形態では、山部構造の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、30、25、20、又は15度未満の側壁角度を有する。いくつかの実施形態では、山部構造の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、40、35、又は30度未満の側壁角度を有する。あるいは、上述のように、山部構造の少なくとも50、60、70、80、90、95、又は99%が、十分に大きな側壁角度を有する。
【0125】
いくつかの実施形態では、(例えば、微細)構造化表面は、微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)、黄色ブドウ球菌(Staphyloccus aureus)、又は緑膿菌(Psueodomonas aeruginosa)などの細菌)が構造化表面上に存在することを防止し、又は言い換えれば、バイオフィルムを形成することを低減若しくは防止する。このような表面は、例えば、米国特許出願公開第2017/0100332号、国際公開第2013/003373号、及び国際公開第2012/058605号に記載され、各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
国際公開第2012/058605号には、複数の微細構造を含む表面が記載されている。微細構造は、複数のナノ構造を更に含む。
【0127】
このタイプの1つの代表的な表面を図9に示す。図9の例示的な微細構造化表面は、不連続な谷部を有する。そのような表面はまた、蛇行経路を画定するように互いに対して配置された特徴部のグループを有するものとして説明されている。谷部は壁により分割され、個別のセルの配列を形成しており、各セルは壁に囲まれている。セルのいくつかは約3ミクロンの長さであり、一方、他のセルは約11ミクロンの長さである。
【0128】
例えば、国際公開第2013/003373号において記載されているように、5ミクロン以下の断面寸法を有する微細構造体は、HAI、又は抗力の増加、熱伝達の減少、ろ過ファウリングなど他の生物付着の問題に最も関与する標的細菌の定着及び付着を実質的に妨げると考えられる。
【0129】
図2を参照すると、この図に示される(例えば、微細)構造体の断面幅(「W」)は、隣接する構造体間のチャネル又は谷部の断面幅(「W」)以下である。したがって、(この線形プリズムの実施形態で)図示されるように、構造体の断面幅(W)が5ミクロン以下である場合、構造体間のチャネル又は谷部の断面幅(W)も、5ミクロン以下である。図2の構造体220によって示されるように、谷部の両側の微細構造体の側壁角度が0の場合、側壁によって画定されるチャネル又は谷部は、底面212に隣接するのと同じ幅(W)を上面208に隣接して有する。例えば構造体230の線231によって示されるように、構造体の側壁角度が0より大きい場合、谷部は、典型的には、底面212に隣接するチャネル又は谷部の幅と比較して、より大きな(例えば最大)幅を上面208に隣接して有する。
【0130】
米国特許出願公開第2017/0100332号、国際公開第2013/003373号、及び国際公開第2012/058605号の微細構造化表面は、バイオフィルム形成を防止することができるが、側壁角度が小さすぎる場合、及び/又は谷部の最大幅が小さすぎる場合、及び/又は微細構造化表面が、過剰な平坦な表面領域を含む場合、微細構造化表面は、(例えば、細菌及び汚れの)洗浄がより困難になることが見出された。
【0131】
いくつかの実施形態では、構造化表面は、谷部の最大幅が、少なくとも1、2、3、又は4ミクロン、より典型的には5、6、7、8、9、又は10ミクロンより大きく、最大250ミクロンまでの範囲の微細構造体を含む。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ミクロンである。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも30、35、40、45、又は50ミクロンである。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、50ミクロンより大きい。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも55、60、65、70、75、85、85、90、95又は100ミクロンである。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも125、150、175、200、225、又は250ミクロンである。谷部の幅が大きいほど、汚れの除去により適し得る。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、1000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、225、200、175、150、125、100、75、又は50ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、45、40、35、30、25、20、又は15ミクロン以下である。谷部のいくつかが最大幅よりも小さい場合でも、微細構造化表面が有益であろうことが理解される。例えば、微細構造化表面の谷部の総数の半分が所望の範囲内にある場合、約半分の利点が得られ得る。したがって、いくつかの実施形態では、谷部の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、10、9、8、7、6、又は5ミクロン未満の最大幅を有する。あるいは、上述のように、谷部の少なくとも50、60、70、80、90、95、又は99%が最大幅を有する。
【0132】
典型的な実施形態では、微細構造体の最大幅は、谷部について説明したのと同じ範囲内にある。他の実施形態では、谷部の幅は、微細構造体の幅よりも大きくてもよい。したがって、いくつかの有利な実施形態では、微細構造化表面は、典型的には、1ミクロン未満の幅を有するナノ構造を含めて、5、4、3、2、又は1ミクロン未満の幅を有する微細構造体を実質的に含まない。ナノ構造を更に含む微細構造化表面のいくつかの例は、先に引用された国際公開第2012/058605号に記載されている。ナノ構造は、典型的には、1ミクロンを超えない少なくとも1つ又は2つの寸法(例えば、幅及び高さ)を含み、典型的には、1ミクロン未満の1つ又は2つの寸法を含む。いくつかの実施形態では、ナノ構造の全ての寸法は、1ミクロンを超えないか、又は1ミクロン未満である。
【0133】
実質的に含まないとは、そのような微細構造体が、全く存在しないか、又は後に記載されるようにその存在が(例えば、洗浄性)特性を損なわないことを条件に、いくつかが存在し得ることを意味する。したがって、微細構造化表面又はその微細構造体は、微細構造化表面が本明細書に記載の技術的効果を提供することを条件として、ナノ構造を更に含んでもよい。
【0134】
表面が本明細書に記載の技術的効果を提供することを条件として、微細構造化表面は、第2の微細構造化表面上に存在してもよい。第2の微細構造化表面は、典型的には、より大きな微細構造体を有する(例えば、より大きな谷部の幅及び/又は高さを有する)。
【0135】
表面が本明細書に記載の技術的効果を提供することを条件として、微細構造化表面は、マクロ構造化表面上に存在してもよい。マクロ構造化表面は、典型的には、顕微鏡によって拡大することなく見ることができる。マクロ構造化表面は、少なくとも1mmの少なくとも2つの寸法(例えば、長さ及び幅)を有する。いくつかの実施形態では、マクロ構造体の平均幅は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mmである。いくつかの実施形態では、マクロ構造体の平均長さは、平均幅と同じ範囲であり得るか、又は幅よりも大幅に大きいこともあり得る。例えば、マクロ構造体がドアによく見られるような木目調の微細構造体である場合、マクロ構造体の長さは(例えば、ドア)物品の全長にわたって延びることがある。マクロ構造体の高さは、典型的には幅よりも小さい。いくつかの実施形態では、高さは、5、4、3、2、1又は0.5mm未満である。
【0136】
ナノ構造を含むより小さな構造体は、バイオフィルム形成を防止することができるが、小さな谷部及び/又は側壁角度が不十分な谷が多数存在すると、汚れの除去を含む洗浄性が妨げられる可能性がある。更に、より大きな微細構造体及び谷部を有する微細構造化表面は、典型的には、より速い速度で製造することができる。したがって、いくつかの実施形態では、(洗浄後の微生物の減少を示す)微細構造体の寸法はそれぞれ、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15ミクロンである、又は前述のように15ミクロンを超える。更に、いくつかの有利な実施形態では、少なくとも50、60、70、80、90、95、又は99%の微細構造体の寸法はいずれも、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ミクロン未満ではない。
【0137】
図9とは対照的に、記載された(洗浄後の微生物の減少を示す)微細構造化表面の谷部は、交差する側壁又は谷部に対する他の障害物を実質的に含まない。実質的に含まないとは、側壁又は他の障害物が、谷部内に存在しないか、又は後に記載されるようにその存在が洗浄性特性を損なわないことを条件に、いくつかが存在し得ることを意味する。谷部は、典型的には、少なくとも1つの方向に連続的である。これは、谷部を通る洗浄溶液の流れを円滑にすることができる。したがって、山部の配置は、典型的には、蛇行経路を画定しない。
【0138】
山部の高さは、前述のように、谷部の最大幅と同じ範囲内にある。いくつかの実施形態では、山部構造は、典型的には、1~125ミクロンの範囲の高さ(H)を有する。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、少なくとも2、3、4、又は5ミクロンである。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、少なくとも6、7、8、9、又は10ミクロンである。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、100、90、80、70、60又は50ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、45、40、35、30、又は25ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10ミクロン以下である。典型的な実施形態では、谷部又はチャネルの高さは、山部構造について説明したのと同じ範囲内である。いくつかの実施形態では、山部構造及び谷部は、同じ高さを有する。他の実施形態では、山部構造は、高さが様々であり得る。例えば、微細構造化表面は、平面状の表面上ではなく、マクロ構造化表面上又は微細構造化表面上に配置され得る。
【0139】
谷部のアスペクト比は、谷部の高さ(構造体の山部高さと同じとすることができる)を谷部の最大幅で割ったものである。いくつかの実施形態では、谷部のアスペクト比は、少なくとも0.1、0.15、0.2、又は0.25である。いくつかの実施形態では、谷部のアスペクト比は、1、0.9、0.8、0.7、0.6、又は0.5以下である。したがって、いくつかの実施形態では、谷部の高さは、典型的には、谷部の最大幅以下であり、より典型的には、谷部の最大幅よりも小さい。
【0140】
各(例えば、微細)構造体のベース部は、任意選択で角が丸みを帯びた平行四辺形、矩形、正方形、円、半円、半楕円、三角形、台形、他の多角形(例えば、五角形、六角形、八角形など、及びそれらの組み合わせ)を含むがこれらに限定されない、様々な断面形状を含み得る。いくつかの実施形態では、山部構造は、ポスト、ドーム、リブ、プリズム、又はキューブコーナー要素として記載されてもよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微細構造化表面は、微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス、黄色ブドウ球菌、又は緑膿菌、又はφ6バクテリオファージなどの細菌)が微細構造化表面上に存在することを防止しない、又は言い換えれば、バイオフィルムを形成することを防止しない。以下の実施例によって証明されるように、本明細書に記載の平滑な平坦面及び微細構造化表面の両方には、洗浄前には、ほぼ同じ量、すなわち、80コロニー形成単位を超える微生物(例えば、細菌)が存在していた。したがって、本明細書に記載される微細構造化表面は、無菌インプラント型医療用デバイスに有益であるとは期待されないであろう。
【0142】
しかしながら、以下の実施例によっても証明されるように、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される微細構造化表面は、洗浄がより容易であり、洗浄後に存在する微生物(例えば、細菌)は少量である。理論に束縛されることを意図するものではないが、走査型電子顕微鏡画像は、大きな連続したバイオフィルムが、典型的には平滑な表面上に形成されることを示唆している。しかしながら、山部及び谷部が、微生物(例えば、細菌)よりもはるかに大きい場合でも、微細構造化表面によって、バイオフィルムは分断される。いくつかの実施形態では、バイオフィルム(洗浄前)は、連続したバイオフィルムではなく、微細構造化表面上に不連続な凝集体及び細胞の小さなグループとして存在する。洗浄後、小さなパッチの状態のバイオフィルム凝集体が平滑な表面を覆う。しかしながら、微細構造化表面は、洗浄後、少量の細胞のグループ及び個々の細胞のみを有することが観察された。好ましい実施形態では、微細構造化表面が、洗浄後に、少なくとも2、3、4、5、6、7、又は8の微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、又はφ6バクテリオファージなどの細菌)のlog10減少をもたらした。いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、試験方法に従って調製された高度に汚染された表面について、洗浄後の微生物の回収コロニー形成単位の平均log10が、6、5、4、又は3未満であった。典型的な表面は、初期汚染が少ないことが多く、したがって、洗浄後の回収コロニー形成単位が更に少ないと予想される。これらの特性についての試験方法は、実施例において説明される。
【0143】
いくつかの実施形態では、(例えば、微細)構造化表面は、同じポリマー(例えば、熱可塑性、熱硬化性、又は重合樹脂)材料で構成される平滑な表面と比較して、水性又は(例えば、イソプロパノール)アルコール系洗浄溶液が玉形成する(beading up)のを防ぐことができる。洗浄溶液が玉形成する、又は言い換えれば、ディウェッティングする場合、消毒剤は、微生物を死滅させるのに十分な時間、微生物と接触しない可能性がある。しかしながら、洗浄溶液を構造化表面に適用した1分後、2分後、及び3分後に、構造化表面の少なくとも50、60、70、80、又は90%は、(実施例に記載の試験方法に従って)洗浄溶液を含み得ることが見出された。
【0144】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面が、微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、又はφ6バクテリオファージなどの細菌)の接触移動の減少をもたらす。微生物の接触移動の減少は、同じ平滑な(例えば、非構造化)表面と比較して、少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、又は99%であり得る。この特性についての試験方法は、実施例において説明される。
【0145】
一実施形態では、構造化フィルムは輝度向上光学フィルムであってもよく、又は構造化フィルムは(例えば、透明)光学フィルムでなくてもよいが、輝度向上フィルムと同じ表面を有してもよい。
【0146】
輝度向上フィルムは、一般に、照明デバイスの軸上の輝き(本明細書では「輝度」と呼ぶ)を向上させる。輝度向上フィルムは、光透過性微細構造化フィルムであってもよい。微細構造化トポグラフィは、フィルム表面上の複数のプリズムであってもよく、それにより、フィルムを使用して、反射及び屈折によって光の方向を変えることができる。プリズムの高さは、典型的には約1~約75ミクロンの範囲である。ラップトップ及びノートブックコンピュータ、携帯電話などに見られるような光学ディスプレイで使用される場合、微細構造化光学フィルムは、ディスプレイから漏れる光を、光学ディスプレイを通って延びる垂直軸から所望の角度で配置された一対の平面内に制限することによって、光学ディスプレイの輝度を増加させることができる。その結果、許容範囲外でディスプレイから出射する光は、反射されてディスプレイに戻り、そこでその一部を「再利用」して、ディスプレイから出射できる角度で微細構造化フィルムに戻すことができる。再利用は、所望のレベルの輝度を有するディスプレイを提供するのに必要な電力消費を低減することができるので、有用である。
【0147】
例えば、米国特許第7,074,463号において説明されるように、バックライト付き液晶ディスプレイは、一般に、拡散体と液晶ディスプレイパネルとの間に配置された輝度向上フィルムを含む。輝度向上フィルムは光をコリメートし、それによって液晶ディスプレイパネルの輝度を上昇させ、また光源の電力を低減することを可能にする。したがって、輝度向上フィルムは、微生物(例えば、細菌)又は汚れに曝露されない照明付き表示デバイス(例えば、携帯電話、コンピュータ)の内部構成要素として利用されている。
【0148】
図3を参照すると、一実施形態では、(例えば、微細)構造化表面300は、規則的な直角プリズム320の線形配列を含む。各プリズムは、第1のファセット321と第2のファセット322とを有する。プリズムは、典型的には、(例えば、予め形成されたポリマーフィルム)ベース部材310上に形成され、このベース部材310は、その上にプリズムが形成される、(基準面126と平行である)第1の平坦面331と、実質的に平ら又は平坦であり、かつ第1の面の反対側の第2の表面332と、を有する。直角プリズムは、頂角θ340が典型的には約90°であることを意味する。しかしながら、この角度は、70°~120°の範囲とすることができ、80°~100°の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、頂角は、60、65、70、75、80、又は85°より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、頂角は、150、145、140、135、130、125、120、110、又は100°未満でもよい。いくつかの実施形態では、谷部の夾角は、頂角と同じ範囲内である。これらの頂点は、(図示のように)鋭利であってもよく、(図7に示されるように)丸みを帯びていてもよく、又は(図8に示されるように)切頭状であってもよい。(例えば、プリズムの)山部間の間隔は、ピッチ(「P」)として特徴付けられ得る。この実施形態では、ピッチは、谷部の最大幅にも等しい。いくつかの実施形態では、ピッチは、前述のように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ミクロンより大きく、最大250ミクロンまでの範囲である。(例えば、プリズムの)構造体の長さ(「L」)は、典型的には最大寸法であり、構造化表面、フィルム、又は物品の寸法全体に延び得る。プリズムファセットは同一である必要はなく、プリズムは、図6に示すように互いに対して傾斜していてもよい。
【0149】
別の実施形態では、(例えば、微細)構造化フィルムはキューブコーナー再帰反射光学フィルムであってもよく、又は構造化フィルムは(例えば、透明)光学フィルムでなくてもよいが、キューブコーナー再帰反射フィルムと同じ表面を有してもよい。再帰反射性材料は、材料に入射した光を発光源に戻す方向に転換できる能力によって特徴付けられる。この特性は、様々な交通安全及び個人安全用途のための再帰反射シートの広範な使用をもたらしている。図4Aを参照すると、キューブコーナー再帰反射シートは、典型的には、実質的に平面状の前面を有する薄い透明層と、複数のキューブコーナー要素17を含む後部構造化表面10とを備える。封止フィルム(図示せず)は、典型的には、キューブコーナー要素の裏側に適用される。例えば、米国特許第4,025,159号及び同第5,117,304号を参照されたい。封止フィルムは、境界面での内部全反射を可能にし、かつ汚れ及び/又は水分などの汚染物質の侵入を阻止する、キューブの裏面の空気界面を維持する。
【0150】
図4Aの(例えば、微細)構造化表面10は、3組の平行な溝(すなわち、谷部)11、12、及び13によって画定されるキューブコーナー要素17の配列として特徴付けられ得る。2組の溝(すなわち、谷部)は、60度を超える角度で互いに交差し、第3の組の溝(谷部)は、他の2組のそれぞれと60度未満の角度で交差して、傾斜したキューブコーナー要素対応対の配列を形成する(米国特許第4,588,258号(Hoopman)を参照されたい)。溝の角度は、溝の交点の直線部において形成される二面角になるように選択され、例えば、代表的なキューブコーナー要素17についての14、15、及び16は、約90度である。いくつかの実施形態では、三角形の底部は、少なくとも64、65、66、67、68、69、又は70度の角度を有し、他の角度は、55、56、57、又は58度である。
【0151】
図4Bに示される別の実施形態では、図4Bの(例えば、微細)構造化表面400は、第1のy方向の平行溝(すなわち、谷部)の組と第2のx方向の平行溝の組とによって画定される角錐形山部構造420の配列として特徴付けられ得る。角錐形山部構造のベース部は、溝の間隔に応じて、多角形、典型的には正方形又は長方形である。頂角θ440は、典型的には約90°である。しかしながら、この角度は、70°~120°の範囲とすることができ、80°~100°の範囲であってもよい。他の実施形態では、頂角は、少なくとも20°、30°、40°、50°、又は60°である。
【0152】
「フルキューブ」又は「好適形状(PG)キューブコーナー要素」として記載される他のキューブコーナー要素構造は、典型的には、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,188,960号に記載されているように同一平面上にない少なくとも2つの非二面縁部を含む。フルキューブは、切頭状ではない。一態様では、平面図のフルキューブ要素のベース部は、三角形ではない。別の態様では、フルキューブ要素の非二面縁部は、特徴として全てが同じ平面内にあるわけではない(すなわち、同一平面上にはない)。そのようなキューブコーナー要素は、「好適形状(PG)キューブコーナー要素」として特徴付けられ得る。
【0153】
PGキューブコーナー要素は、基準面に沿って延びているキューブコーナー要素の構造化表面の文脈で定義され得る。PGキューブコーナー要素は、(1)基準面に対して非平行であり、かつ(2)近隣のキューブコーナー要素の隣接する非二面縁部に実質的に平行である、少なくとも1つの非二面縁部を有するキューブコーナー要素を意味する。矩形(正方形を含む)、台形、又は五角形を含む、反射面を有するキューブコーナー要素は、PGキューブコーナー要素の例である。
【0154】
図5を参照すると、別の実施形態では、(例えば、微細)構造化表面500は、好適形状(PG)キューブコーナー要素の配列を含み得る。例示的な構造化表面は、好適形状(PG)キューブコーナー要素の4つの列(501、502、503、及び504)を含む。好適形状(PG)キューブコーナー要素の各列は、「側溝」とも呼ばれる第1及び第2の溝の組から形成された面を有する。そのような側溝は、隣接する側溝に対して、名目上の平行~1度以内の非平行である。そのような側溝は、典型的には、図1の基準面124に対して垂直である。そのようなキューブコーナー要素の第3の面は、好ましくは、主溝面550を備える。この主溝面範囲は、側溝から形成された面に対して、名目上の垂直~1度以内の非垂直である。いくつかの実施形態では、側溝は、名目上90度の頂角θを形成することができる。他の実施形態では、好適形状(PG)キューブコーナー要素の列は、図5に示されるように、交互になった一対の側溝510及び511(例えば、約75度及び約105度)から形成された山部構造を含む。したがって、隣接する(PG)キューブコーナー要素の頂角540は、90度より大きくてもよいし、又はそれより小さくてもよい。いくつかの実施形態では、同じ列の隣接する(PG)キューブコーナー要素の平均頂角は、典型的には90度である。先に引用された米国特許第7,188,960号に記載されているように、PGキューブコーナー要素を含む(例えば、微細)構造化表面の製造中に、側溝を個々の薄層(薄いプレート)上に独立して形成することができ、各薄層は、そのようなキューブコーナー要素の1つの列を有する。反対の向きを有する薄層の対が、それらのそれぞれの主溝面が主溝552を形成するように配置され、それによって、垂直壁の形成を最小限に抑える。薄層を組み立てて構造化表面を形成し、そしてそれを複製して、適切なサイズのツールを形成することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、全ての山部構造は、同じ頂角θを有する。例えば、図3の前述の(例えば、微細)構造化表面は、各々が90度の頂角θを有する複数のプリズム構造を示す。別の例として、図4Bの前述の構造化表面は、各々が60度の頂角θを有する複数の角錐形構造を示す。他の実施形態では、山部構造は、同じではない頂角を形成し得る。例えば、図5に示すように、山部構造のいくつかは、90度を超える頂角を有してもよく、山部構造のうちのいくつかは、90度未満の頂角を有してもよい。いくつかの実施形態では、構造体の配列の山部構造は、異なる頂角を有する山部構造を有するが、頂角は、平均して60~120度の範囲の値である。いくつかの実施形態では、平均頂角は、少なくとも65、70、75、80、又は85度である。いくつかの実施形態では、平均頂角は、115、110、100、又は95度未満である。
【0156】
更に別の例として、図6の断面に示されるように、(例えば、微細)構造化表面600は、それぞれが山部652、654、及び656を有する646、648、及び650などの複数の山部構造を含み得る。構造化表面が平坦な表面(すなわち、図1の基準面126と平行である表面)を含まない場合、隣接する山部構造のファセットはまた、隣接する山部間の谷部も画定し得る。いくつかの実施形態では、山部構造のファセットは、90度未満の谷部角度を有する谷部(例えば、谷部658)を形成する。いくつかの実施形態では、山部構造のファセットは、90度を超える谷部角度を有する谷部(例えば、谷部660)を形成する。いくつかの実施形態では、谷部658及び660によって示されるように、谷部は対称である。他の実施形態では、谷部662によって示されるように、谷部は対称である。谷部が対称である場合、谷部を画定している隣接する山部構造の側壁同士は、実質的に同じである。谷部が非対称である場合、谷部を画定している隣接する山部構造の側壁同士は異なっている。(例えば、微細)構造化表面は、対称及び非対称の谷部の組み合わせを有し得る。
【0157】
図7は、(例えば、微細)構造化表面700の別の実施形態を示し、山部構造は、丸みを帯びた頂点740を有する。これらの山部構造は、弦幅742、断面ベース山部幅744、曲率半径746、及び根元角748によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、弦幅は、断面ピッチ幅の約20%~40%に等しい。いくつかの実施形態では、曲率半径は、断面ピッチ幅の約20%~50%に等しい。いくつかの実施形態では、根元角は、少なくとも50、65、70、80又は85度である。いくつかの実施形態では、根元角は、110、105、100、又は95度以下である。いくつかの実施形態では、少なくとも60、65、70、75、80、又は90度である根元角が好ましい。根元角は、谷部角度と同じであり得る。いくつかの実施形態では、山部構造は、少なくとも2、3、又は4マイクロメートルであり、かつ15、10、又は5マイクロメートル以下の範囲の半径に丸められた頂点を有する。いくつかの実施形態では、谷部は、少なくとも2、3、又は4マイクロメートルであり、かつ15、10、又は5マイクロメートル以下の範囲の半径に丸められている。いくつかの実施形態では、山部及び谷部の両方が、少なくとも2、3、又は4マイクロメートであり、かつ15、10、又は5マイクロメートル以下の範囲の半径に丸められている。
【0158】
図8は、(例えば、微細)構造化表面800の別の実施形態を示し、山部構造840は、切頭されており、平らな、又は言い換えれば平面状の、上面(図1の基準面126に実質的に平行)を有している。これらの山部構造は、平坦化された幅842及び断面ベース山部幅844によって特徴付けることができる。典型的な実施形態では、平坦化された幅は、断面ベース山部幅の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、又は1%以下であり得る。特に、山部構造は、頂点が、鋭利である、丸みを帯びている、又は切頭状であるかどうかに関係なく、同じ側壁角度を有することができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、山部構造は、典型的には、少なくとも2つ(例えば、図3のプリズム)、3つ(例えば、図4Aのキューブコーナー)又はより多数のファセットを含む。例えば、(例えば、微細)構造体のベース部が八角形である場合、山部構造は、8つの側壁ファセットを含む。しかしながら、ファセットが、図7図8に示されるような丸みを帯びた面又は切頭面を有する場合、(例えば、微細)構造体は、特定の幾何学的形状によって特徴付けられない場合がある。
【0160】
(例えば、微細)構造体のファセットが、頂点と谷部とが鋭利である又は丸みを帯びているが、切頭状ではないように接合される場合、構造化表面は、平面状のベース層と平行である平坦な表面を含まないことを特徴付けられ得る。しかしながら、頂点及び/又は谷部が切頭されている場合、構造化表面は、典型的には、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満の平坦な表面領域を含み、平坦な表面領域は平面状のベース層と実質的に平行である。一実施形態では、谷部は、平坦な表面を有してもよく、山部の側壁のうちの1つのみが、図2Aに示されるように角度付けされている。しかしながら、好ましい実施形態では、谷部(複数可)を画定している隣接する山部同士の両方の側壁は、前述のように、互いに向かって角度が付けられている。したがって、谷部の両側の側壁は、互いに平行ではない。
【0161】
図3図8の実施形態のそれぞれでは、隣接する(例えば、プリズム又はキューブコーナー)山部構造のファセット同士は、典型的には、谷部の底部において、すなわち平面状のベース層の近くで接続されている。山部構造のファセット同士は、同じ方向に連続表面を形成している。例えば、図3では、(例えば、プリズム)山部構造のファセット321及び322は、(例えば、微細)構造体の長さ(L)の方向、又は言い換えればy方向に連続している。更に別の例として、図5のPGキューブコーナー要素の主溝452及び550は、y方向に連続表面を形成している。他の実施形態では、ファセットは、同じ方向に半連続表面を形成している。例えば、図4では、(例えば、キューブコーナー又は角錐形)山部構造のファセットは、x方向及びy方向の両方において同じ平面内にある。これらの半連続表面及び連続表面は、表面からの病原体の洗浄を促進することができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、山部構造の頂角は、特に山部構造のファセット同士が山部構造の間の谷部で相互に接続している場合、典型的には、壁角度の2倍である。したがって、頂角は、典型的には20度を超え、より典型的には少なくとも25、30、35、40、45、50、55、又は60度である。山部構造の頂角は、典型的には160度未満であり、より典型的には155、150、145、140、135、130、125、又は120度未満である。
【0163】
共焦点レーザー走査顕微鏡(confocal laser scanning microscopy、CLSM)を使用して、トポグラフィマップを得た。全ての撮像に使用されるCLSM装置は、Keyence VK-X200である。CLSMは、集束レーザービームを使用して表面を走査し、表面のトポグラフィをマッピングする光学顕微鏡技術である。CLSMは、レーザービームを光源の開口部に通し、次いで対物レンズによって表面上の小さな領域に集束させることで機能し、試料から放出された光子を収集することによって画像が画素ごとに構築される。これは、ピンホールを使用して画像形成時の焦点外光を遮断する。次元解析を使用して、マニュアル(https://www.imagemet.com/media-library/support-documentsを参照)に従って、SPIP 6.7.7画像計測ソフトウェアを使用して、様々なパラメータを測定した。
【0164】
表面粗さパラメータ、Sa(粗さ平均)、Sq(二乗平均平方根)、及びSbi(表面ベアリング指数)、Svi(谷部流体保持指数)を、トポグラフィ画像(3D)から計算した。粗さを計算する前に、平面補正を使用した「減算平面」(一次平面フィッティングフォームの除去)。
【0165】
以下の表は、いくつかの代表的な実施例及び比較の平滑な実施例並びに実施例E及びFのSパラメータを記載する。実施例E及びFは、洗浄後の微生物の存在を減少させることに関して好ましくないが、実施例E及びFは、接触移動の著しい減少を提供することができる。
【表5】
粗さ平均Saは、次のように定義される;
【数1】
式中、M及びNは、データ点X及びYの数である。
【0166】
平滑な表面では、Saがゼロに近づくことがあるが、洗浄後に微生物除去が不十分であることが見出された比較例の平滑な表面は、少なくとも10、15、20、25、又は30nmの平均表面粗さSaを有していた。比較例の平滑な表面の平均表面粗さSaは、1000nm(1ミクロン)未満であった。いくつかの実施形態では、比較例の平滑な表面のSaは、少なくとも50、75、100、125、150、200、250、300、又は350nmであった。いくつかの実施形態では、比較例の平滑な表面のSaは、900、800、700、600、500、又は400nm以下であった。
【0167】
洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面の平均表面粗さSaは、1ミクロン(1000nm)以上であった。いくつかの実施形態では、Saは、少なくとも1100nm、1200nm、1300nm、1400nm、1500nm、1600nm、1700nm、1800nm、1900nm、又は2000nm(2ミクロン)であった。いくつかの実施形態では、微細構造化表面のSaは、少なくとも2500nm、3000nm、3500nm、4000nm、又は5000nmであった。いくつかの実施形態では、微細構造化表面のSaは、少なくとも10,000nm、15,000nm、20,000nm、又は25,000nmであった。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面のSaは、40,000nm(40ミクロン)、35,000nm、30,000nm、15,000nm、10,000nm、又は5,000nm以下であった。
【0168】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも2倍又は3倍である。他の実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも4、5、6、7、8、9、又は10倍である。他の実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍である。他の実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000倍である。
二乗平均平方根(RMS)パラメータSqは、次のように定義される;
【数2】
式中、M及びNは、データ点X及びYの数である。
【0169】
Sq値はSa値よりもわずかに高いが、Sq値もまたSa値について説明された範囲と同じ範囲内にある。
表面ベアリング指数Sbiは、次のように定義される;
【数3】
式中、Z0.05は、5%のベアリング面積での表面高さである。
谷部流体保持指数Sviは、次のように定義される;
【数4】
式中、Vv(h0.80)は、80~100%のベアリング面積内の谷部ゾーンでの空隙体積である。
【0170】
上記のSパラメータ表に記載されているように、比較例の平滑な試料のSbi/Svi比は、1及び3であった。洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、3より大きいSbi/Svi比を有していた。微細構造化表面は、少なくとも4、5、又は6であるSbi/Svi比を有する。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、少なくとも7、8、9、又は10であるSbi/Svi比を有していた。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、少なくとも15、20、25、30、35、40、又は45であるSbi/Svi比を有していた。洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、方形波状微細構造化表面よりも小さいSbi/Svi比を有していた。したがって、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、90、85、80、75、70、又は65未満であるSbi/Svi比を有していた。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、60、55、50、45、40、35、30、25、20、又は10未満であるSbi/Svi比を有していた。トポグラフィマップを使用して、微細構造化表面の他の特徴を測定することもできる。例えば、山部高さ(特に同じ高さの繰り返し山部)は、ソフトウェアの高さヒストグラム関数から決定することができる。方形波状フィルムの「平坦な領域」のパーセントを計算するためには、特定の形状(この場合は、微細構造化方形波状フィルムの「平坦な頂部」)を識別する、SPIPの粒子細孔分析機能を使用して「平坦な領域」を識別することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、構造化フィルムはナノ構造を含む。ナノ構造114の高さH又は幅Wのうちの少なくとも1つの寸法は、1マイクロメートル未満である。
【0172】
一実施形態では、図16に示すように、第1の層110のナノ構造化第1表面112は、規則的な高さHを有するナノ構造114を含むが、他の実施形態では、第1の層110のナノ構造化第1表面112は、様々な高さを有するナノ構造114を含む。これは、ナノ構造化表面を形成する方法に依存し得る。いくつかの実施形態では、ナノ構造114の(例えば、平均)高さHは、1マイクロメートル未満、950ナノメートル(nm)以下、900nm以下、850nm以下、800nm以下、750nm以下、700nm以下、650nm以下、又は600nm以下であり、ナノ構造114の高さHは、5nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、又は500nm以上である。いくつかの実施形態では、ナノ構造114の(例えば、平均)幅Wは、1マイクロメートル未満、950ナノメートル(nm)以下、900nm以下、850nm以下、800nm以下、750nm以下、700nm以下、650nm以下、又は600nm以下であり、ナノ構造114の幅Wは、5nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、又は500nm以上である。
【0173】
いくつかの実施形態では、熱成形物品は、熱成形可能な微細構造又はナノ構造化光学フィルムから調製される。この実施形態では、熱成形物品は、構造化光学フィルム表面によって提供される反射(例えば、再帰反射)及び/又は屈折及び/又は回折特性を有する。光学構造化表面は、ホログラム、拡散体、又は反射防止表面として特徴付けられ得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、熱成形物品は、創傷接触層、歯周インプラント、義歯、歯冠、コンタクトレンズ、眼内レンズ、軟組織インプラント(乳房インプラント、陰茎インプラント、顔面及び手インプラントなど)、外科用ツール、分解性縫合糸を含む縫合糸、創傷包帯、他のインプラント型デバイス、及び他の留置デバイスなどの(例えば、滅菌)医療用物品であってもよい。いくつかの有利な実施形態では、物品は、歯科矯正装具又は歯科用トレイアライナなどの歯科用物品である。いくつかの実施形態では、熱成形医療用物品を調製するために利用される構造化フィルムは、バイオフィルム形成を低減する微細構造及び/又はナノ構造を含む。
【0175】
記載した医療用物品は、単回使用物品として特徴付けられることができ、すなわち、物品は一度使用された後、廃棄される。上記の物品はまた、単一個人(例えば、患者)用物品として特徴付けられることができる。したがって、そのような物品は、典型的には、洗浄(滅菌ではなく)されず、他の患者に再利用されない。
【0176】
他の実施形態では、本明細書に記載の熱成形物品及び表面は、(例えば、微細)構造化表面が周囲(例えば、屋内又は屋外)環境に晒され、かつ、接触対象となる、又は複数の人々及び/若しくは動物、並びに他の汚染物質(例えば、汚れ)と触れ合うものを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、物品の(例えば、微細)構造化表面は、物品の通常の使用中に(例えば、複数の)人々及び/又は動物と直接(例えば、皮膚)接触する。他の実施形態では、(例えば、微細)構造化表面は、直接(例えば、皮膚)接触がないとしても、(例えば、複数の)人/又は動物にごく近接することがある。しかしながら、(例えば、微細)構造化表面はごく近接するので、そのような物品表面は、微生物(例えば、細菌)で容易に汚染される可能性があり、したがって、微生物が他に広がるのを防ぐために洗浄される。
【0178】
通常の使用中に洗浄され、構造化フィルムを熱形成することによって製造されるのに適した代表的な物品としては、以下のものの、様々な内面又は外面又は構成要素が挙げられる。
a)ビークル(例えば、自動車、バス、電車、飛行機、ボート、救急車、船)の表面又は構成要素、及び自動車、スクーター、自転車などの電動及び非電動の共有されるビークル(ヘッドレスト、ダッシュボード、ドアパネル、(例えば、航空機の)窓シャッター、ギアシフタ、シートベルトバックル、装置及びボタンパネル、(例えば、プラスチックの)シートバックトレイ及びアームレスト、手すり、客室壁板、荷物室、ステアリングホイール、ハンドルバーを含む);
b)電子デバイス(例えば、電話、ラップトップ、タブレット、又はコンピュータ)のハウジング及びケース、キーボード及びマウス(マウスパッドを含む)、タッチスクリーン、プロジェクタ、プリンタ、リモートコントロールデバイス、ロック、充電器(コード及びドッキングステーションを含む)、フォブ、ビデオ及びアーケードゲーム、スロットマシン、自動テラーマシン;(例えば、手持ち式)スキャナ、キーカード、クレジットカードリーダ、キーパッド、スタイリスト、レジ、バーコードスキャナ、支払いキオスクなどのPOS電子機器;
c)出荷及び包装製品;
d)ギャレー、カート、カッティングボード、ランチボックス、サーモス、電化製品(電子レンジ、ストーブ、オーブン、ブレンダー、トースター、コーヒーメーカー、棚や引き出しを含む冷蔵庫など)、グリル、飲料ディスペンサ、器具(例えば、特にそのハンドル)、メニュー、テーブルトップ及び椅子(特にレストラン、寮、老人ホーム、及び刑務所での公共の食事用)、ゴミ箱及びリサイクル可能容器を含む、食品の調理及びダイニングの表面、容器(プレート、ボウル、カブ、水筒を含む)、並びにフィルム;
e)医療、歯科、若しくは実験室施設、又は医療、歯科、若しくは実験室用機器の(例えば、非無菌の)表面(例えば、除細動器、人工呼吸器、及びCPAP(特にそのマスク)、フェイスシールド、松葉杖、車椅子、ベッド手すり、搾乳ポンプ装置、IVポール、(例えば、歯科材料用)硬化ライト、検査台);
f)家具の表面又は構成要素(例えば、デスク、テーブル、椅子、シート、及びアームレスト);
g)家具、建物のドア(押し板を含む)、ターンスタイルゲート、電化製品、ビークル(内外のドアハンドル、交通機関用手すり)、ショッピングカート及びバスケット、運動器具、(例えば、調理用)器具、ツール、ハンドルバー、窓ブラインドのレバー、マイク、荷物などを含む、物品のハンドル(例えば、ノブ、取っ手、ロックを含むレバー);
h)建物の表面(エスカレータ及びエレベータを含む)、例えば、ドア、手すり、壁、床、カウンタートップ、デスクトップ、キャビネット、ロッカー、窓(例えば、枠)、呼び鈴、電気変調器(例:電灯のスイッチ、調光器、及びそれらのプレートを含む差し込み口)など;
i)化粧室の表面及び構成要素(例えば、シンク、トイレ表面(例えば、レバー)、排水キャップ、シャワー壁、浴槽、洗面化粧台、カウンタートップ);
j)おもちゃ、チャイルドシート、ベビーベッド、おむつ交換台、遊具などの子供用物品;
k)掃除用品(掃除機、モップ、スクラブブラシ、ダスター、便器クリーナー、プランジャー、ほうきなど);
l)運動及びスポーツ用の保護用品(例えば、フットボール(football)、バスケットボール、サッカー(soccer)、ゴルフなどの様々なスポーツ用のヘルメット、ガード、ボール);
m)エクササイズ、スパ、サロン(例えば、ヘアスタイリング及びネイル)の設備(例えば、ウェイト、ヨガマット);
n)歯ブラシ、眼鏡フレーム、靴、衣類、ヘルメット、ヘッドバンド、ハードハット、ヘッドフォン、履物(例えば、靴及びブーツ)、ハンドバッグ、バックパックを含む個人的物品;
o)筆記具(例えば、鉛筆、ペン、マーカー)、書き込み可能な表面(フィルム及びホワイトボードを含む)、消しゴム、ファイルフォルダ、本及びノートブックカバー、スキャナ及びコピー機を含むオフィス及び学校の用品及び設備;
p)コンベヤベルト、(例えば、組立ラインの)機械操作のための制御パネルを含む、製造表面及び設備。
【0179】
洗浄後に微生物を低減する(例えば、微細)構造化表面は、軍用住宅、刑務所、寮、老人ホーム、アパート、ホテルなどの集合生活施設;オフィス、学校、アリーナ、カジノ、ボーリング場、ゴルフコース、アーケード、ジム、サロン、スパ、ショッピングセンター、空港、駅などの公共の場所;及び公共交通機関に特に好都合である。
【0180】
任意選択の添加剤及び表面処理
(例えば、微細)構造化表面の有機ポリマー材料は、抗菌剤(殺菌剤及び抗生物質を含む)、染料、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、熱及び光安定剤(紫外線(UV)吸収剤を含む)、充填剤、顔料などを含む他の添加剤を含有し得る。
【0181】
好適な抗菌剤を、ポリマーに組み込むか、又はポリマー上に堆積することができる。好適な好ましい抗菌剤としては、Scholzらの米国特許出願公開第2005/0089539号及び同第2006/0051384号、及びScholzの米国特許出願公開第2006/0052452号及び同第2006/0051385号に記載されているものが挙げられる。本発明の(例えば、微細)構造体はまた、Aliらの国際出願PCT/US2011/37966号に開示されているものなどの抗菌剤コーティングでコーティングされ得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、(例えば、微細)構造化表面は、フルオロポリマーなどの(例えば、フッ素化又はPDMS)低表面エネルギー材料からは調製されず、低表面エネルギーコーティングを含まず、平坦な表面上の材料又はコーティングは、90、95、100、105、又は110度を超える水との後退接触角を有する。この実施形態では、材料の低表面エネルギーは、洗浄性に寄与しない。むしろ、洗浄性の改善は、微細構造化表面の特徴に起因する。この実施形態では、微細構造化表面は、ある材料から調製され、その材料の平坦な表面が、典型的には、90、85、又は80度未満の水との後退接触角を有するように、調製される。
【0183】
他の実施形態では、低表面エネルギーコーティングを(例えば、微細)構造体に適用してもよい。使用され得る例示的な低表面エネルギーコーティング材料としては、いくつか例を挙げると、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)、又はオルガノシラン(例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、アクリルシラン、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)及びフッ素含有オルガノシラン)などの材料を挙げることができる。当該技術分野で既知の特定のコーティングの例は、例えば、米国特許出願公開第2008/0090010号、及び同一所有者の公開である、米国特許公開第2007/0298216号に見出すことができる。コーティングが(例えば、微細)構造体に適用される実施形態の場合、スパッタリング、蒸着、スピンコーティング、ディップコーティング、ロール・ツー・ロールコーティング、又は他の任意の数の適切な方法など、任意の適切なコーティング方法によって適用され得る。
【0184】
(例えば、微細)構造体の忠実度を維持するために、(例えば、微細)構造体を形成するために使用される組成物中に表面エネルギー改質化合物を含むことも可能であり、多くの場合で好ましい。いくつかの実施形態では、ブルーム添加剤は、ベース部組成物の結晶化を遅延又は防止し得る。好適なブルーム添加剤は、例えば、Scholzらの国際公開第2009/152345号、及びKlunらの米国特許第7,879,746号に見出すことができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、(例えば、微細)構造又は(例えば、微細)構造化表面は、(例えば、微細)構造化表面がより親水性であるように改質されてもよい。(例えば、微細)構造化表面は、一般に、改質された(例えば、微細)構造化表面と同じ材料の平坦な有機ポリマーフィルム表面が、脱イオン水と45度以下の前進接触角又は後退接触角を呈するように、改質され得る。そのような改質がない場合、(例えば、微細)構造化表面と同じ材料の平坦な有機ポリマーフィルム表面は、典型的には、脱イオン水と45、50、55、又は60度を超える前進接触角又は後退接触角を呈する。
【0186】
親水性を有する(例えば、微細)構造化表面を実現するために、任意の好適な既知の方法が利用されてもよい。プラズマ処理、真空蒸着、親水性モノマーの重合、フィルム表面への親水性部分のグラフト化、コロナ又は火炎処理などの表面処理を使用してもよい。特定の実施形態では、親水性表面処理は、双性イオン性シランを含み、また特定の実施形態では、親水性表面処理は、非双性イオン性シランを含む。非双性イオン性シランとしては、例えば、非双性イオン性アニオン性シランが挙げられる。
【0187】
他の実施形態では、親水性表面処理は、少なくとも1つのケイ酸塩を更に含み、例えば、これらに限定されないが、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、テトラエチルオルトシリケート、ポリ(ジエトキシシロキサン)、又はこれらの組み合わせを含む。1つ以上のケイ酸塩は、(例えば、微細)構造化表面への適用のために、親水性シラン化合物を含有する溶液中に混合されてもよい。
【0188】
任意選択的に、界面活性剤又は他の好適な薬剤を、(例えば、微細)構造化表面を形成するために利用される有機ポリマー組成物に添加してもよい。例えば、親水性アクリレート及び開始剤を重合性組成物に添加し、熱又は化学線によって重合させることができる。あるいは、(例えば、微細)構造化表面は、親水性ポリマーから形成することができ、親水性ポリマーとしては、エチレン酸化物のホモ及びコポリマー;ビニルピロリドン、カルボン酸、スルホン酸、又はアクリル酸などのホスホン酸官能性アクリレートなどのビニル不飽和モノマーを組み込む親水性ポリマー、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル及びその加水分解誘導体(例えばポリビニルアルコール)、アクリルアミド、ポリエトキシル化アクリレートなどのヒドロキシ官能性アクリレート;親水性改質セルロース、並びにデンプン及び改質デンプン、デキストランなどの多糖類などが挙げられる。
【0189】
このような親水性表面は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0045284号に記載されるように、流体制御フィルムに使用するために記載されている。
【0190】
微細構造化表面の洗浄
一実施形態では、洗浄時の微生物(例えば、細菌)除去が向上した表面を有する物品を提供する方法が記載されている。(例えば、微細)構造化表面は、例えば、(例えば、微細)構造化表面を織布又は不織布材料で拭くか、又は(例えば、微細)構造化表面をブラシでこすることによって、機械的に洗浄することができる。いくつかの実施形態では、織布材料又は不織布材料の繊維は、谷部の最大幅よりも小さい繊維径を有する。いくつかの実施形態では、ブラシの毛材は、谷部の最大幅よりも小さい直径を有する。あるいは、(例えば、微細)構造化表面は、(例えば、微細)構造化表面に抗菌溶液を適用することによって洗浄されてもよい。更に、(例えば、微細)構造化表面はまた、(例えば、紫外線)放射型の消毒によって洗浄され得る。そのような洗浄技術の組み合わせを使用することができる。
【0191】
抗菌溶液は、殺菌成分を含有してもよい。様々な殺菌成分が知られており、例えば、クロルヘキシジン及びその様々な塩(ジグルコネート、ジアセテート、ジメトサルフェート、及びジラクテート塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)、ポリヘキサメチレンビグアニドなどの高分子第四級アンモニウム化合物などのビグアニド及びビスビグアニド;銀及び様々な銀錯体;小分子第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム(benzalkoium)及びアルキル置換誘導体など);ジ-長鎖アルキル(C8~C18)第四級アンモニウム化合物;ハロゲン化セチルピリジニウム及びその誘導体;塩化ベンゼトニウム及びそのアルキル置換誘導体;オクテニジン、及びこれらの適合性のある組み合わせなどが挙げられる。他の実施形態では、抗菌成分は、過酸化水素、過酢酸、漂白剤などのカチオン性抗菌剤又は酸化剤であってもよい。
【0192】
いくつかの実施形態では、抗菌成分は、小分子第四級アンモニウム化合物である。好ましい第四級アンモニウム殺菌剤の例としては、C8~C18、より好ましくはC12~C16のアルキル鎖長、及び最も好ましくは鎖長の混合を有するベンザルコニウムハロゲン化物が挙げられる。例えば、典型的な塩化ベンザルコニウム試料は、40%のC12アルキル鎖、50%のC14アルキル鎖、及び10%のC16アルキル鎖から構成され得る。これらは、Lonza社(Barquat MB-50)を含む多数の供給源から市販されており、ベンザルコニウムハロゲン化物はフェニル環上でアルキル基で置換されている。市販の例は、Lonza社から入手可能なBarquat 4250であり、アルキル基がC8~C18の鎖長を有するジメチルジアルキルアンモニウムハライドである。鎖長の混合(ジオクチル、ジラウリル、及びジオクタデシルの混合など)が特に有用であり得る。例示的な化合物は、Lonza社製のBardac2050、205M、及び2250;Cepacol ChlorideとしてMerrell labsから入手可能な塩化セチルピリジニウムなどのセチルピリジニウムハロゲン化物;Rohm and Haas社から入手可能なHyamine1622及びHyamine10Xなどのベンゼトニウムハロゲン化物及びアルキル置換ベンゼトニウムハロゲン化物;オクテニジンなどが市販されている。
【0193】
一実施形態では、(例えば、消毒)抗菌溶液は、エンベロープウイルス(例えば、ヘルペスウイルス、インフルエンザ、B型肝炎)、非エンベロープウイルス(例えば、パピローマウイルス、ノロウイルス、ライノウイルス、ロトウイルス)、DNAウイルス(例えば、ポックスウイルス)、RNAウイルス(例えば、コロナウイルス、ノロウイルス)、レトロウイルス(例えば、HIV-1)、MRSA、VRE、KPC、アシネトバクター、及び他の病原体を3分で死滅させる。水性消毒剤溶液には、ベンジル-C12-16-アルキルジメチルアンモニウムクロリド(8.9重量%)、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロリド(6.67重量%)、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド(2.67重量%)、界面活性剤(5~10%)、エチルアルコール(1~3重量%)、及びpH1~3に調整されたキレート剤(7~10重量%)を含有する消毒剤濃縮物の1:256の希釈液が含有され得る。
【0194】
「微生物」という用語は、一般に、1つ以上の細菌(例えば、運動性若しくは非運動性、生長性若しくは休眠性、グラム陽性若しくはグラム陰性、プランクトン性若しくはバイオフィルム生息性)、細菌胞子又は内胞子、藻類、真菌類(例えば、酵母、糸状菌類、真菌胞子)、マイコプラズマ、及び原生動物、並びにそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の原核生物又は真核生物の微視的生物を指すために使用される。場合によっては、特に対象となる微生物は病原性を有するものであり、「病原体」という用語は、任意の病原性微生物を指すために使用される。病原体の例には、これらに限定されないが、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方、真菌、及びウイルスが含まれ、腸内細菌科のメンバー、又はミクロコッカス科のメンバー、又はブドウ球菌属種、連鎖球菌種、シュードモナス種、アシネトバクター種、腸球菌種、サルモネラ種、レジオネラ種、赤痢菌種、エルシニア種、エンテロバクター種、エシェリキア種、バチルス種、リステリア種、カンピロバクター種、アシネトバクター種、ビブリオ種、クロストリジウム種、クレブシェラ属、プロテウス属、アスペルギルス属、カンジダ属、及びコリネバクテリウム属が含まれる。病原体の特定の例としては、腸管出血性大腸菌を含むエシェリキア・コライ、例えば、血清型O157:H7、O129:H11;緑膿菌;セレウス菌;炭疽菌;サルモネラ腸炎菌;ネズミチフス菌;リステリア・モノサイトゲネス;ボツリヌス菌;ウェルシュ菌;黄色ブドウ球菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌;カルバペネム耐性腸内細菌科細菌、カンピロバクター・ジェジュニ;腸炎エルシニア菌;ビブリオ・バルニフィカス;クロストリジウム・ディフィシル;バンコマイシン耐性腸球菌;クレブシエラ・ニューモニエ;プロテウス・ミラビリス;及びエンテロバクター[クロノバクター]・サカザキを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0195】
本発明の利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量による。
[実施例]
【表6】
【0196】
方法
熱成形物品のキャビティ体積を決定する方法
熱成形物品のキャビティ体積は、デジタル天秤を使用して熱成形物品を秤量し、シェル構造のキャビティを室温で水で完全に満たし、水で満たされた物品を再秤量し、重量測定値の差を計算して、満たされたキャビティの水の量(グラム)を決定するプロセスによって決定した。水の密度を使用して、対応するキャビティ体積(cm)を計算した。
【0197】
走査型電子顕微鏡-試料調製及び撮像
試料ディスクを、各ディスクを5%グルタルアルデヒド溶液中に30分間慎重に浸漬することによって、走査型電子顕微鏡(SEM)用に固定した。これに続いて、以下の順序で実施した6つの連続したディスク浸漬洗浄工程(各洗浄工程につき30分の浸漬時間)を行った:1)PBS溶液、2)25%イソプロピルアルコール水溶液、3)50%イソプロピルアルコール水溶液、4)75%イソプロピルアルコール水溶液、5~6)100%イソプロピルアルコール溶液中での2回の最終的な浸漬洗浄。ピンセットを使用して各ディスクを96ウェルプレートに移した。ディスクを約48時間にわたって乾燥させた。次に、ディスクの微細構造化表面がスタブの外側に面した状態で、ディスクを両面テープを使用してSEMスタブに個別に取り付けた。各試料の縁部に導電性銀塗料を塗り、Denton Vacuum Desk V Sputter Coater(Denton Vacuum(Moorestown,NJ))と金のターゲットを使用してスタブアセンブリ全体を90秒間スパッタコーティングした。スパッタコーティング後、スタブを、JEOL JCM-500 NeoScope SEM装置(JEOL USA Incorporated(Peabody,MA))に移動させて撮像を行った。
【0198】
培地の調製
トリプシンソイブロス(TSB、Becton,Dickinson and Company(Franklin Lakes,NJ)から入手)を脱イオン水中に溶解し、製造業者の指示に従ってろ過滅菌した。
【0199】
Brain Heart Infusion(BHIS、Becton,Dickinson and Companyから入手)を脱イオン水中に溶解し、製造業者の指示に従ってろ過滅菌した。
【0200】
細菌培養
緑膿菌(ATCC 15442)又は黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)のストリークプレートを、Tryptic Soy Agarの凍結ストックから調製した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。プレートから1個のコロニーを10mLの滅菌TSBに移した。培養物を毎分250回転及び37℃で一晩振とうした。接種試料を、培養物(約10コロニー形成単位(cfu)/mL)をTSB中で1:100に希釈することによって調製した。
【0201】
ストレプトコッカスミュータンス(ATCC 25175)の一晩培養物を、滅菌した血清ピペットを使用して、この微生物の少量の25%グリセロール冷凍ストックをこすり取り、15mLコニカルチューブに移すことによって増殖させた。このチューブには5mLのBHIブロスが入っていた。チューブを静的(振とうなし)条件下で37℃で12~16時間にわたって維持した。接種試料を、この培養物(約10コロニー形成単位(cfu)/mL)をTSB中で1:100に希釈することによって調製した。
【0202】
微細構造化フィルムを調製するための手順
UV硬化性樹脂を、PHOTOMER 6210脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー(75部)、SR238 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(25部)、及びLUCIRIN TPO光開始剤(0.5%)から調製した。PHOTOMER 6210は、1400psiの引張強度及び40%の伸びを有すると報告されている。SR238 1,6-ヘキサンジオールジアクリレートと組み合わされているため、UV硬化性樹脂は、PHOTOMER 6210よりも高い引張強度及び低い伸びを有する。構成成分を高速ミキサーでブレンドし、約70℃のオーブン内で24時間加熱し、次いで室温に冷却した。線形プリズムフィルムを調製するためのテンプレートとして、銅ボタン(直径2インチ(5.08cm))を使用した。ボタン及び配合樹脂を両方とも約70℃のオーブン内で15分間加熱した。温められたボタンの中央に、トランスファーピペットを使用して、約6滴の加温された樹脂を適用した。MELINEX 618 PET支持フィルム[3インチ×4インチ(7.62cm×10.16cm)、厚さ5ミル]の断片を、適用された樹脂を覆うように置き、続いてガラスプレートを置いた。PETフィルムのプライマー処理された表面を、樹脂と接触するように向けた。樹脂がボタンの表面を完全に覆うまで、ガラスプレートを手で押して所定の位置に保持した。ガラスプレートを慎重に取り外した。気泡が入った場合、ゴムハンドローラを使用してそれらを除去した。
【0203】
試料を、窒素雰囲気下で15.2メートル/分(50フィート/分)の速度でUVプロセッサ(RPC Industries(Plainfield,IL)から入手した、2つのHg蒸気ランプを備えたモデルQC 120233AN)に2回通過させることにより、試料をUV光で硬化させた。図3の配列パターンを有する硬化した微細構造化フィルムを、90°の角度でそっと引き離すことによって、銅テンプレートから取り外した。剥離ライナーで裏張りされた接着剤層(厚さ8ミル、3M Corporation製の3M 8188 Optically Clear Adhesiveとして入手)を、ハンドローラを使用して微細構造化フィルムの裏面(すなわち非微細構造化表面)に適用した。調製された線形プリズム微細構造化フィルムの特徴を表1に報告する。
【表7】
【0204】
パターン化された微細構造化表面の代わりに樹脂と接触するための平滑な表面を有する銅ボタンを使用したことを除いて、比較例Aフィルムは、上記と同じ手順に従って調製された。これにより、平滑な表面を有するフィルム(すなわち、パターン化された微細構造化表面を有さないフィルム)が形成された。
【0205】
試料ディスクの調製
直径34mmの中空パンチを使用して、微細構造化フィルムから個々のディスクを切り出した。1つのディスクを、滅菌6ウェルマイクロプレートの各ウェル内に配置し、ディスクの微細構造化表面がウェル開口部に面し、剥離ライナーがウェル底部に面するように向けた。次いで、プレートにイソプロピルアルコールのミストを噴霧して、試料を消毒し、乾燥させた。ディスクを、比較例Aのフィルムからも調製した。
【0206】
試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法
細菌培養物(上記)の接種試料(4mL)を、ディスクの入った6ウェルマイクロプレートの各ウェルに添加した。6ウェルマイクロプレートに蓋を載せて、プレートをPARAFILM M 実験室フィルム(Bemis Company(Oshkosh,WI)から入手)で包んだ。包んだプレートを、湿った紙タオルを含むプラスチックバッグに入れ、密封したバッグを37℃のインキュベータ内に置いた。7時間後、プレートをインキュベータから取り出し、ピペットを用いて各ウェルから液体培地を除去した。新しい滅菌TSB(4mL)を各ウェルに添加し、プレートの蓋を取り付けた。そのプレートをPARAFILM M 実験室フィルムで再び包み、湿った紙タオルと共にバッグに密封し、インキュベータに戻した。17時間後、プレートをインキュベータから取り出した。液体培地を各ウェルから(ピペットを使用して)取り出し、4mLの滅菌脱イオン水と交換した。その水を取り除き、4mLずつの滅菌脱イオン水と更に2回交換した。最後の分の水を各ウェルから取り除き、次いでディスクを取り出した。ライナー層を各ディスクから剥離して、接着剤バッキングを露出させた。中空パンチを使用して、各ディスクから小さい直径12.7mmのディスクを切り出した。ディスクのうちのいくつか(n=3)を、ディスク上のコロニーカウント(cfu)について分析し、ディスクのうちのいくつか(n=3)を、洗浄手順工程に進ませた。
【0207】
試料ディスク洗浄手順A
直径12.7mmのディスクを、ディスクの接着剤バッキングを介してElcometer Model 1720 Abrasion and Washability Tester(Elcometer Incorporated(Warren,MI))の洗浄レーンに取り付けた。特に指定のない限り、各ディスクは、ディスク表面の微細構造化チャネルが洗浄キャリッジの動きと同じ方向に向けられるように、テスター内に配置された。不織布シート[SONTARA 8000又はポリプロピレン不織布シート(繊維径5.9ミクロン、40gsm)のいずれかから選択]の2インチ×5インチ(5.08cm×12.7cm)の断片を、脱イオン水中にTWEEN 20(0.05%)を含む溶液に浸漬し、余分な液体を絞り出した。この不織布シートをUniversal Material Clamp Tool(450g)の周りに固定し、このツールを装置のキャリッジに取り付けた。装置を、60サイクル/分の速度で15キャリッジサイクルで動作するように設定した(総洗浄時間=15秒)。
【0208】
試料ディスク洗浄手順B
直径12.7mmのディスクを、ディスクの接着剤バッキングを介してElcometer Model 1720 Abrasion and Washability Testerの洗浄レーンに取り付けた。特に指定のない限り、各ディスクは、ディスク表面の微細構造化チャネルが洗浄キャリッジの動きと同じ方向に向けられるように、テスター内に配置された。Acclean手動歯ブラシ(毛材の平均径約180ミクロン、Henry Schein Incorporated(Melville,NY)から入手)のヘッドを装置のキャリッジ内に保持するために、積層造形によってツールを準備した。歯ブラシヘッド及びディスクを、ディスクの露出した表面全体がブラシの毛材に接触するように並べた。ブラシ毛材を、動作前に水に浸漬した。装置を、60サイクル/分の速度で15キャリッジサイクルで動作するように設定した(総洗浄時間=15秒)。ツールの重量は190gであった。
【0209】
試料ディスクコロニーカウント方法A
洗浄手順に続いて、各ディスクを、PBS緩衝液中にTWEEN 20(0.05%)を含有した1mLずつの溶液で5回洗浄した。洗浄した各ディスクを、個別に、PBS緩衝液(10mL)中にTWEEN 20(0.05%)の溶液を含有した別個の50mL円錐バイアルに移した。各チューブを1分間連続的にボルテックスし、Branson2510 Ultrasonic Cleaning Bath(Branson Ultrasonics(Danbury,CT))を使用して1分間超音波処理し、1分間ボルテックスした。各チューブからの溶液をバターフィールド緩衝液(3M Corporationから入手)で段階希釈し(約8希釈)、3M PETRIFILM Aerobic Count Plate(3M Corporation)のカウント範囲内のコロニー形成単位(cfu)数をもたらす細菌濃度レベルを得た。希釈した各試料のアリコート(1mL)を、製造業者の指示に従って、別個の3M PETRIFILM Aerobic Count Plateにプレーティングした。カウントプレートを37℃で48時間にわたってインキュベートした。インキュベーション期間後、3M PETRIFILM Plate Reader(3M Corporation)を使用して、各プレート上のcfuの数をカウントした。カウント値を使用して、ディスクから回収したcfuの総数を計算した。結果は、3つのディスクについて決定された平均cfuカウントとして報告される。
【0210】
洗浄手順を受けなかったディスクを、同じ記載の手順を使用してコロニーカウント(cfu)について分析した。
【0211】
試料ディスクコロニーカウント方法B
ブラッシング手順に続いて、各ディスクを、PBS緩衝液中にTWEEN 20(0.05%)を含有した1mLずつの溶液で5回洗浄した。洗浄した各ディスクを、個別に、PBS緩衝液(10mL)中にTWEEN 20(0.05%)の溶液を含有した別個の50mL円錐バイアルに移した。各チューブを1分間連続してボルテックスし、Misonix Sonicator Ultrasonic Processor XL(Misonix Incorporated(Farmingdale,NY))を使用して、30秒間超音波処理し(パルス間0.5秒の2秒パルスで、レベル3設定)、1分間ボルテックスした。各チューブからの溶液をバターフィールド緩衝液で段階希釈し(約8希釈)、3M PETRIFILM Aerobic Count Plateのカウント範囲内のコロニー形成単位(cfu)数をもたらす細菌濃度レベルを得た。希釈した各試料のアリコート(1mL)を、製造業者の指示に従って、別個の3M PETRIFILM Aerobic Count Plateにプレーティングした。カウントプレートを、2つのBD GasPak EZパウチ(Becton,Dickinson and Companyから入手)を備えた気密嫌気性ボックス内で密封し、37℃で24時間にわたってインキュベートした。インキュベーション期間後、3M PETRIFILM Plate Readerを使用して、各プレート上のcfuの数をカウントした。カウント値を使用して、ディスクから回収したcfuの総数を計算した。結果は、3つのディスクについて決定された平均cfuカウントとして報告される。
【0212】
ブラッシング手順を受けなかったディスクを、同じ記載の手順を使用してコロニーカウント(cfu)について分析した。
【0213】
実施例9
緑膿菌を接種した実施例1、実施例2、及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」(上記)に記載されたように調製した。不織布シートとしてSONTARA 8000を使用して、「試料ディスク洗浄手順A」(上記)に従ってディスクを洗浄した。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法A」(上記)に従って分析した。平均log10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算log10cfu減少値と共に表2に報告する。
【0214】
洗浄前のディスクのSEM画像は、比較例Aのディスクの表面上に大きな連続したバイオフィルムを示していた一方で、実施例1及び2のディスクは、微細構造化ディスク表面上に、細胞の分離した凝集体及び小さなグループを示していた。洗浄手順の後、小さなパッチの状態のバイオフィルム凝集体が、比較例Aのディスクの表面を覆っていた一方で、実施例1及び2のディスクは、微細構造化ディスク表面上に細胞の小さなグループ及び個々の細胞のみを有していた。
【表8】
【0215】
実施例10
緑膿菌を接種した実施例3~8、及び比較例Aのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」に記載されたように調製した。不織布シートとしてSONTARA 8000を使用して、「試料ディスク洗浄手順A」に従ってディスクを洗浄した。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法A」に従って分析した。平均log10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算log10cfu減少値と共に表3に報告する。
【表9】
【0216】
実施例11
UV硬化性樹脂を、PHOTOMER 6210脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー(75部)、SR238 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(25部)、及びLUCIRIN TPO光開始剤(0.5%)から調製した。構成成分を高速ミキサーでブレンドし、約70℃のオーブン内で24時間加熱し、次いで室温に冷却した。銅ボタンを、キューブコーナー微細構造化フィルムを調製するためのテンプレートとして使用した。ボタン及び配合樹脂を両方とも約70℃のオーブン内で15分間加熱した。加温した樹脂を、トランスファーピペットを使用して、加温したボタンの中心に適用した。ボタンよりも大きいMELINEX 618 PET支持フィルム(厚さ5ミル)の断片を、適用された樹脂を覆うように置き、続いてガラスプレートを置いた。PETフィルムのプライマー処理された表面を、樹脂と接触するように向けた。樹脂がボタンの表面を完全に覆うまで、ガラスプレートを手で押して所定の位置に保持した。ガラスプレートを慎重に取り外した。気泡が入った場合、ゴムハンドローラを使用してそれらを除去した。
【0217】
試料を、窒素雰囲気下で15.2メートル/分(50フィート/分)の速度でUVプロセッサ(RPC Industries(Plainfield,IL)から入手した、2つのHg蒸気ランプを備えたモデルQC 120233AN)に2回通過させることにより、試料をUV光で硬化させた。硬化した微細構造化フィルムを、90°の角度でそっと引き離すことによって、銅テンプレートから取り外した。微細構造化表面は、図4Aに示されるような傾斜したキューブコーナー構造の配列を有していた。個々のキューブコーナー微細構造の寸法は以下のとおりであった:三角形底部が、70/55/55度(ベータ1、2、3);側壁角度アルファ2、アルファ3、アルファ1がそれぞれ、60、60、89度;山部高さが、63.3マイクロメートル;谷部幅が、127マイクロメートル及び145マイクロメートル。テンプレートとして利用された銅ボタンは、この微細構造化表面のネガ型複製を有していた。
【0218】
実施例12.微生物接触移動の減少
Tryptic Soy Agarを、製造業者の指示に従って調製した。緑膿菌(ATCC 15442)又は黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)のストリークプレートを、Tryptic Soy Agarの凍結ストックから調製し、37℃で一晩インキュベートした。プレートからの2つのコロニーを使用して、9mLの滅菌バターフィールド緩衝液(3M Corporation)に接種した。光学密度(吸光度)を600nmで読み取り、読み取り値が0.040±0.010であることを確認した。必要に応じて、培養物をこの範囲内になるように調整した。培養物の一部(1.5mL)を滅菌50mLコニカルチューブ中のバターフィールド緩衝液45mLに添加して、接触移動実験用の接種溶液を作製した。接種溶液の連続希釈試料を、バターフィールド緩衝液を使用して調製した。希釈試料を3M PETRIFILM Aerobic Countプレート(3M Corporation)にプレーティングし、製造業者の指示に従って評価し、各実験で使用した細胞濃度を確認した。
【0219】
実施例1、2、及び11の微細構造化試料(50mm×50mm)を調製し、両面テープを使用して滅菌100mmペトリ皿の内部底面に個別に接着した。各ペトリ皿には1つの試料が入っており、試料は、微細構造化表面が露出されるように取り付けられていた。対応する比較例Aの試料も試験され、対照試料としての役目を果たした。各微細構造化試料及び対照試料の露出表面を、95%イソプロピルアルコール溶液で湿潤させたKIMWIPE拭き取り布(Kimberly-Clark Corporation(Irving,TX))を使用して3回拭き取った。試料を、ファンをオンにした状態で、バイオ安全キャビネット内で15分間風乾した。次いで、UV光による照射を使用して、キャビネット内で試料を30分間滅菌した。
【0220】
接種溶液(上記の黄色ブドウ球菌又は緑膿菌のいずれか25mL)を滅菌ペトリ皿(100mm)に注いだ。試料ごとに、オートクレーブ滅菌したWhatman Filter Paper(グレード2、直径42.5mm;GE Healthcare(Marborough,MA))の円形ディスクを、火炎滅菌したピンセットを使用して掴み、接種溶液が入ったペトリ皿に5秒間浸した。その紙を取り出し、25秒間皿の上方で保持して、余分な接種菌液を紙から排出させた。接種した紙ディスクを微細構造化試料の上に置き、新しいオートクレーブ滅菌されたWhatman Filter紙片(グレード2、60×60mm)を、その接種した紙ディスクを覆うように置いた。滅菌したコンラージ棒をその積層物の上部紙表面に押し付けて、表面を横切るように垂直方向に2回移動させた。積層物を2分間維持した。次いで、滅菌ピンセットを使用して、両方のフィルタ紙片を微細構造化試料から取り外した。試料を室温で5分間風乾させた。各試料の微細構造化表面からの細菌の接触移動を、RODACプレート(Trypticase Soy Agar with Lecithin and Polysorbate 80;Thermo Fisher Scientific製)を均一な圧力(約300g)で5秒間フィルム試料に均等に押し付けることによって評価した。RODACプレートを37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション期間に続いて、プレートごとにコロニー形成単位(cfu)をカウントした。試料を3回試験し、平均カウント値を報告した。
【0221】
RODACプレートごとの平均cfuカウントをlog10スケールに変換した。接触移動によるcfuカウントのlog10減少値を、対応する対照試料(平滑表面を有する試料)で得られたlog10カウント値から微細構造化試料で得られたlog10カウント値を差し引くことによって決定した。接触移動の平均減少%(n=3)を、式Aによって計算した。結果を表4に報告する。
式A:接触移動の減少%=(1-10(-log 10 減少値))×100
【表10】
【0222】
実施例B.方形波状微細構造化フィルム
ダイヤモンド(先端幅29.0マイクロメートル、夾角3°、深さ87マイクロメートル)を使用して、複数の平行な直線状溝を有するツールが切断された。溝同士は、59.1マイクロメートルのピッチで間隔が空けられた。以下の表5の材料を混合することによって樹脂Aを調製した。
【表11】
【0223】
上記の樹脂A及びツールを使用して鋳造及び硬化高精細プロセスが実施された。ライン条件は、樹脂温度150°F(65.5℃)、ダイ温度150°F(65.5℃)、コータIR120°F(48.9℃)縁部/130°F(54.4℃)中心部、ツール温度100°F(37.8℃)、及びライン速度70fpmであった。ピーク波長が385nmのFusion Dランプ(Fusion UV Systems(Gaithersburg,MD)から入手)を硬化に使用し、100%の電力で動作させた。得られた微細構造化フィルムは、図2に示されているように、チャネルによって分離された複数の壁を備えていた。ベース層は、3ミル(76.2マイクロメートル)の厚さを有するPETフィルム(3M Corporation)であった。樹脂と接触したPETフィルムの側を、熱硬化性アクリルポリマー(Dow Chemical(Midland,MI)から入手したRhoplex 3208)でプライマー処理した。硬化した樹脂のランド層は、8マイクロメートルの厚さを有していた。図2を参照すると、得られた微細構造化フィルム表面の寸法は、以下のとおりであった:壁の高さ(H)84.1マイクロメートル、側壁角度0.4度、ピッチ59.1マイクロメートル、壁の上面の幅28.5マイクロメートル、及び最大谷部幅30.6ミクロン。
【0224】
実施例B及び比較例Aのディスク(12.7mm)を実施例9に記載の手順に従って調製し、洗浄し、分析した。平均log10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成された計算log10cfu減少値と共に表6に報告する。
【表12】
【0225】
実施例C及び実施例D.方形波状微細構造化フィルム
実施例Bに記載されている手順に従い、異なる寸法を有する2つの方形波状微細構造化フィルムを生成した。実施例Cの微細構造化フィルムは、以下の表面寸法を有していた:壁の高さ(H)89.5マイクロメートル、側壁角度1.4度、ピッチ62.3マイクロメートル、壁の上面の幅28.8マイクロメートル、及び最大谷部幅33.3マイクロメートル。実施例Dの微細構造化フィルムは、以下の表面寸法を有していた:壁の高さ(H)45マイクロメートル、側壁角度0.48度、ピッチ30マイクロメートル、壁の上面の幅15マイクロメートル、及び最大谷部幅15マイクロメートル。
【0226】
微細構造化フィルムの試料を、実施例12(黄色ブドウ球菌を使用)に記載の手順に従って、微生物接触移動の減少について評価した。実施例Cの微細構造化フィルムの微生物接触移動の平均減少率は、25~37%であった。実施例Dの微細構造化フィルムは、対応する対照試料と比較して、微生物接触移動の平均10%増加を示した。
【0227】
実施例C及びDは、熱成形可能な構造化表面であるが、このような表面は、洗浄後の微生物の存在を減少させるため、又は微生物の接触移動を減少させるために好ましくない。
【0228】
実施例13.液体消毒剤の表面被覆率
実施例1及び比較例Aの微細構造化フィルムの試料(7.6cm×20.3cmのストリップ)を、Elcometer Model 1720 Abrasion and Washability Tester(Elcometer Incorporated)の洗浄レーンに接着して取り付けた。各レーンには、1つの試験試料が入っていた。微細構造化試料については、微細構造化表面を、反対側の非微細構造化表面を洗浄レーンに取り付けた状態で、露出させた。実施例1の微細構造化フィルムについては、一部の試料を、フィルム表面の微細構造化チャネルがキャリッジの動きと同じ方向(平行方向)に向けられるようにして装置内に置き、その他の試料を、フィルム表面の微細構造化チャネルがキャリッジの動きに垂直な方向に向けられるようにして装置内に置いた。
【0229】
使用した湿らせた拭き取り布はSONTARA 8000不織布(5.1cmx12.7cm)であり、0.025%クリスタルバイオレット染料(Sigma-Aldrich Companyから入手)含有のイソプロピルアルコール(70%)の水溶液に浸漬したものであった。各拭き取り布から液体を手で絞ることによって、全ての拭き取り布から余分な液体を除去した。それぞれの湿らせた拭き取り布をUniversal Material Clamp Tool(450g)の周りに固定し、このツールを装置のキャリッジに取り付けた。装置を、60サイクル/分の速度で15キャリッジサイクルで動作するように設定した(総時間=15秒)。
【0230】
試験の完了後、各試料の表面の画像を1分後及び3分後に撮影し、試料表面上の染料の被覆率を判定した。カラー画像を8ビットに変換し、各画像の3つのランダムに選択された200×200画素領域を分析した。閾値を設定し、染料で覆われた表面積パーセントを、オープンソース画像処理ソフトウェアImageJ(NIH(Bethesda,MD)、https://imagej.nih.gov/ij/)を使用して測定した。結果を、染料で覆われた試験試料表面のパーセントとして表7に報告した。ここで、100%とは、染料が試験試料表面を完全に覆っていることを表す。報告値は、3つの分析領域から計算された平均値である。
【表13】
【0231】
実施例14
実施例1について説明した手順に従って、様々な寸法を有する3つの異なる線形プリズム微細構造化フィルムを調製した。3つのフィルムの寸法を、表8に報告する。実施例1及び比較例Aの試料と共にそれらの3つのフィルムの試料を、実施例9に記載の手順に従って評価した。全ての微細構造化フィルムが、比較例Aについて観察されたものよりも約1.5log大きいlog10cfuカウント減少を示した。
【表14】
【0232】
実施例15
金属ツールをラミネータと共に使用して、実施例3の寸法を有する図3の線形プリズムフィルムを作成した。3M Tape Primer 94(3M Corporationから入手)の層を、ブラシを使用して、VIVAK PET-Gシート(30cm×30cm、シート厚さ=2.1mm)の片面の中心部(12cm×13cm)に適用した。次いで、そのプライマー層を室温で5分間乾燥させた。同じ方法で2つ目のプライマー層を適用し、続いて乾燥させた。UV硬化性樹脂(「微細構造化フィルムを調製するための手順」の項で上述)をピペットでツールに適用し、ディスクのプライマー処理された表面がツールに面し、ツールがシートの中央に置かれた状態で、ツールを覆うようにPET-Gディスクを置いた。ディスクを、50psigのニップ圧力設定及び0.52フィート/分(0.16メートル/分)の速度設定を有するラミネータを使用して積層(laminate)した。試料を、窒素雰囲気下で15.2メートル/分(50フィート/分)の速度でUVプロセッサ(RPC Industriesから入手した、2つのHg蒸気ランプを備えたモデルQC 120233AN)に3回通過させることにより、試料をUV光で硬化させた。フィルムのランド層を、Keyence VK-X200シリーズレーザー顕微鏡(Keyence Corporation(Itasca,IL))を使用して125.5~142.3マイクロメートルと測定した。ランド層の厚さは、PET-G層の厚さの6.0~6.8%であった。
【0233】
得られた積層された微細構造化フィルムシートを、Model C22-S MAAC Thermoformar(MAAC Machines(Carol Stream,IL))を使用して熱成形した。テンプレートモデルは、並んで配置された2つの手動レンチからなっていた。一方のレンチは、調整可能なクレセントレンチ(全長110mm)であり、他方のレンチは、全長125mmの7/16インチのコンビネーションレンチ(開放端及びボックス端)であった。シートをホルダに入れ、浸漬時間100~110秒、上部及び底部加熱器出力55%、及び真空30mmHgで熱成形サイクルを開始した。微細構造化表面がレンチテンプレートから離れる方を向くような状態でシートの微細構造化部分がレンチテンプレートと位置合わせされるように、シートを向けた。シートは、レンチテンプレートを覆うように高忠実度でコンフォーマルに形成された。得られた熱成形三次元シェルをモデルから分離して、完成品を得た。物品の微細構造体を、Keyence VK-X200シリーズレーザー顕微鏡(Keyence Corporation)を使用して検査及び測定した。微細構造体は、それらの形状、及びそれらの山部高さの名目上60%を保持していた。「方法」の項に記載された手順を用いて、調整可能なクレセントレンチから形成された物品のキャビティ体積は10.5cmであると決定され、コンビネーションレンチから形成された物品のキャビティ体積は7.6cmであると決定された。熱成形フィルムの延伸比は、1.55と決定された。
【0234】
実施例16.
3M Tape Primer 94(3M Corporationから入手)の層を、DURAN PET-Gディスク(ディスク直径=125mm、ディスク厚さ=0.75mm)の片面の表面全体にブラシを使用して適用した。次いで、そのプライマー層を室温で5分間乾燥させた。
【0235】
金属ツールをラミネータと共に使用して、実施例3の寸法を有する図3の線形プリズムフィルムを作成した。金属ツールは、微細構造化表面のネガ型複製を有していた。UV硬化性樹脂(セクション「微細構造化フィルムを調製するための手順」で上述)をピペットによってツールに適用した。コーティングされたツールを真空オーブンに入れ、オーブン内の圧力を635mmHgまでゆっくりと下げた。一旦この真空が達成されると、圧力を上昇させて大気圧まで戻した。PET-Gディスクを、ディスクのプライマー処理された表面がツールに面した状態で、ツールを覆うように置いた。ディスクを、50psigのニップ圧力設定及び0.52フィート/分(0.16メートル/分)の速度設定を有するラミネータを使用して積層した。試料を、窒素雰囲気下で15.2メートル/分(50フィート/分)の速度でUVプロセッサ(RPC Industriesから入手した、2つのHg蒸気ランプを備えたモデルQC 120233AN)に3回通過させることにより、試料をUV光で硬化させた。ディスクをツールから慎重に取り外した。フィルムのランド層を、Keyence VK-X200シリーズレーザー顕微鏡を使用して34.5マイクロメートルと測定した。ランド層の厚さは、PET-G層の厚さの4.6%であった。
【0236】
積層された微細構造化ディスクを、BIOSTAR VI圧力成形機(Scheu-Dental GmbH)を使用して、歯科アライナ物品に形成した。微細構造化ディスクを30秒間加熱し、次いで剛性ポリマーモデルを覆うように引っ張った。微細構造化表面が、モデルと接触するようにフィルムを向けた。フィルムの後ろの成形機のチャンバを冷却しながら30秒間にわたって90psiに加圧し、次いでチャンバを通気して周囲圧力に戻した。熱成形されたフィルムと共にモデルを成形機から取り出し、超音波カッター(モデル NE80、Nakanishi Incorporated(Kanuma City,Japan))を使用して余分なフィルムをトリミングした。得られた熱成形三次元シェルをモデルから分離して、完成した歯科アライナ物品を得た。物品の微細構造体を、Keyence VK-X200シリーズレーザー顕微鏡を使用して検査及び測定した。線形プリズム微細構造体は、それらの形状、及びそれらの山部高さの名目上80%を保持していた。目視検査では、物品の微細構造化表面は均一な半透明の外観を有し、微細構造化表面上にわずかな微細な亀裂しか観察されず、大きな亀裂は観察されなかった(図15)。「方法」の項に記載された手順を用いて、シェルのキャビティ体積は、15.7cmであると決定された。
【0237】
歯科アライナ物品の表面分析は、まず、撮像用の造影剤として物品の表面に白色塗料を適用することによって行った。物品を平坦な水平面に置き、シェルの開口部が水平面に面し、歯の印象の上部輪郭面が水平面から離れる方向に面するように配向した。図11に示されるような熱成形された歯科アライナ物品の断面を、2つの角度付きGOCATOR 2520レーザーラインプロファイルセンサ(LMI Technologies(Vancouver,Canada))を使用して分析し、断面の表面の三次元点群マップを作成した。物品は、0.1mm毎にトリガされるセンサ取得を伴う高精度線形ステージを使用して横断された。画像データを、MATLABソフトウェア(MathWorks,Inc.(Natick,MA))を使用して分析して、クラウドマップによって定義された断面の表面積(mm)(SACM)を計算した。三次元表面積を、熱成形前のフィルムの二次元面積(mm)(SA)で割り、熱成形フィルムの延伸比を計算した。延伸比は2.76であった。
【0238】
比較例E.
フィルムの測定されたランド層が約113マイクロメートルになるように追加の樹脂を使用したことを除いて、実施例16に記載したのと同じ手順に従った。ランド層の厚さは、PET-G層の厚さの15.1%であった。
【0239】
熱成形ステップに続いて、形成された三次元シェルの微細構造を、Keyence VK-X200シリーズレーザー顕微鏡を使用して検査及び測定した。線形プリズム微細構造体は、それらの形状、及びそれらの山部高さの名目上87%を保持していた。目視検査では、物品の微細構造化表面は不均一な外観を有し、微細構造化表面上にたくさんの大きな亀裂が観察された(図14)。
【0240】
実施例17.ナノ構造化フィルム
両面に光沢表面仕上げを有していた厚さ125ミクロンのポリカーボネートフィルム(Tekra,Inc.(New Berlin,WI)から入手したフィルム)上に樹脂A(表5の組成物)をダイコーティングすることによって、図16に示すような円筒形ポストの繰り返し列のナノ構造化フィルムを調製した。このプロセスでは、バルク樹脂を加熱貯蔵容器内に保持し、加熱ホース及び加熱ダイアセンブリ(全て65.5℃に設定)を通して圧送した。コーティングフィルムを、15.2メートル/分の速度でゴム被覆ローラーを使用して、71℃に制御されたスチールローラーに取り付けられたナノ構造化ニッケル表面にプレスした。樹脂コーティングされたフィルムがナノ構造化ニッケル表面と接触した状態で、フィルムを、それぞれが142W/cmで動作するDバルブを備えた2つのFusion F600照射器(Fusion UV Systems(Gaithersburg,MD)から入手)からの放射線に曝露した。次いで、フィルムを、ゴム被覆ローラーを用いてニッケル表面から剥離し、フィルムの樹脂コーティング側を、142W/cmで動作するDバルブを備えたFusion F600照射器からの放射線に曝露した。完成したナノ構造化フィルムは、約310nmのポスト高さ、約200nmのポスト直径、及び約400nmのポストの中心間間隔を有していた(FEI Teneco走査型電子顕微鏡(FEI Company(Hillboro,OR))を使用して測定)。フィルムのランド層を、Keyence VK-X200シリーズレーザー顕微鏡を使用して約8.7~9.3マイクロメートルと測定した。ランド層の厚さは、ポリカーボネートフィルムの厚さの7.0~7.4%であった。
【0241】
ナノ構造化フィルムシートを、Model C22-S MAAC Thermoformar(MAAC Machines(Carol Stream,IL))を使用して熱成形した。テンプレートモデルは、調整可能なクレセントレンチ(全長110mm)であった。シートをホルダに入れ、浸漬時間20~29秒、上部及び底部加熱器出力55%、及び真空30mmHgで熱成形サイクルを開始した。ナノ構造化表面がレンチテンプレートに接触するようにシートのナノ構造化部分がレンチテンプレートと位置合わせされるように、シートを向けた。シートは、レンチを覆うように高忠実度でコンフォーマルに形成された。得られた熱成形三次元シェルをモデルから分離して、完成品を得た。物品のキャビティ体積は、10.1cmであると決定された。物品のナノ構造ポストを、FEI Teneo走査型電子顕微鏡(FEI Company(Hillsboro,OR))を使用して検査及び測定した。ナノ構造ポストは、それらの形状を保持し、名目上、ポスト高さの86%及びポスト直径の100~101%であった。「方法」の項に記載された手順を用いて、物品のキャビティ体積は、10.1cmであると決定された。
【0242】
熱成形物品の表面分析を、実施例16に記載したのと同じ方法で行った。熱成形物品の延伸比は、1.55であった。
【0243】
実施例18
【表15】
【0244】
調製例
調製ベースシロップ1:ベースシロップ1は、以下のとおり、構成成分を下表1に示す量で混合することにより調製した。アクリルモノマー及び光重合開始剤を、1ガロン(3.79L)のガラス瓶内で合わせ、高剪断力電動モーターを用いて混ぜて均一な混合物を得た。次に、混合しながらB60HHを約3分間かけて添加した。これに続いて、均一な粘稠溶液が得られるまで更に高速混合を行った。次いで、これを9.9水銀柱インチ(252mm)の真空下で10分間脱気した。
【表16】
【0245】
実施例18は、100gのベースシロップ1を5gのCN996架橋剤と共にSpeedmixer Cupに添加し、Flacktec DAC 150.21 FVZ-K Speedmixer内で3,000rpmで1分間高速混合することによって調製した。
【0246】
実施例18の組成物をフィルムに調製した。フィルムの引張及び伸び試験は、1kNロードセルを備えたINSTRON MODEL 4500 UNIVERSAL TESTING SYSTEMを利用して、ASTM D882-10に従って、前述の23頁に記載されているように行った。この試験の結果は以下のとおりである。
試験速度=300mm/分
平均破断点伸び=480%
平均弾性率=4.3MPa
破断時の平均引張応力=10MPa
【0247】
実施例18の組成物を、多層フィルム(すなわち、DURAN PET-Gディスク)とUVA光への曝露によって硬化された微細構造化金属ツールとの間に約5~10ミルの範囲の厚さで2ロールコーティングして、23ミクロンの山部高さを有する実施例3に記載の微細構造化表面を有する線形プリズム微細構造化フィルムを調製した。ピーク発光波長が365ナノメートルの複数の蛍光バルブを使用して、得られた組み合わせを1824ミリジュール/平方センチメートルの総UV-Aエネルギーに曝露した。低出力検出ヘッド(EIT Incorporated(Sterling,VA)から入手可能)を備えたPOWER PUCK II放射計を使用して、総UV-Aエネルギーを決定した。次いで、放射計の時間及エネルギーを使用して、アクリル系組成物の硬化条件下での総曝露エネルギーを計算した。次いで、微細構造コーティングされた多層フィルムを、以下の手順に従って、微細構造化表面が歯列弓モデルに面するトレイに熱成形した。
【0248】
熱成形するために、微細構造化基材を直径125mmのディスクにダイカットし、次いで、25秒間加熱し、次いで、圧力成形機(Scheu-Dental GmbH(Iserlohn,Germany)から商品名「BIOSTAR VI」で入手)上の剛性ポリマー歯列弓モデル上に引き下ろした。フィルムの後ろのBIOSTAR VIチャンバは、15秒間の冷却時間で90psiに加圧され、その後、チャンバを周囲圧力に開放し、形成された物品及びアーチモデルを機器から取り外し、周囲条件下で室温まで冷却した。熱成形された基材と共にモデルを成形機から取り出し、超音波カッター(Nakanishi Incorporated(Kanuma City,Japan)から商品名「SONIC-CUTTER NE80」で入手)を使用して余分なフィルムをトリミングした。
【0249】
熱成形物品を顕微鏡下で検査した。亀裂は観察されなかった。発泡が熱成形トレイのいくつかの位置で観察された。
【0250】
実施例19-Sartomerから入手した低粘度芳香族モノアクリレートオリゴマーCN131を、DURAN PET-Gディスク上に約25ミクロンの厚さでコーティングした。次いで、Fusion Dバルブ(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)から入手可能)を100%出力で使用して、窒素下、30フィート/分(9.2m/分)で、微細構造金属ツールに積層しながら、コーティングを多層フィルム側から硬化させた。引張試験を2つの速度で実施した。コーティングされたフィルムが高速で変形されるので、300mm/分は熱成形プロセスにより適切であると考えられ、一方、50mm/分は、熱成形物品の歯科用トレイアライナとしての使用により適切であると考えられる。結果は次のとおりである。
【表17】
【0251】
結果は、コーティングを有するフィルムが、コーティングを有さない対照フィルムと比較して同等又はより良好な伸びを有し、したがって、ランド層及び/又は構造化表面としての使用に好適であり得ることを示す。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】