(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】液化ガス貯蔵設備におけるガスアップ及びガス試験の方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20231219BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
B63B25/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535323
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2021085106
(87)【国際公開番号】W WO2022122982
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】デ レイスゲス スタニスラス
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BB13
3E172BB17
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA03
3E172EA13
3E172EB02
3E172EB03
3E172HA03
3E172KA03
(57)【要約】
ガスアップ方法は、液相の液化ガスの流れ(25)を第1貯蔵タンク(10A)に導入して、前記第1貯蔵タンクを冷却し、前記第1貯蔵タンク内の前記液相の液化ガスの一部又は全体を蒸発させ、前記液相の液化ガスの流れ(25)が前記第1貯蔵タンク(10A)に導入される間、前記液相の液化ガスの気化によって生成された気相の液化ガスの流れ(26、126)を、前記第1貯蔵タンクの上部から第2貯蔵タンク(10B)の上部に導き、前記第2貯蔵タンク(10B)の下部から不活性ガスの流れ(27)を放出することにより、少なくとも前記第2貯蔵タンク(10B)の上部において、前記気相の液化ガス(21)によって不活性ガス(22)が置き換えられることを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物上の液化ガス貯蔵設備内の貯蔵タンクをガスアップするガスアップ方法であって、
前記液化ガス貯蔵設備を準備状態にし、前記液化ガス貯蔵設備は、複数の貯蔵タンク(10A~10C)と、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続された少なくとも1つのマニホールド(4、2)とを備え、前記準備状態にある前記複数の貯蔵タンクのうち第1貯蔵タンク(10A)が気相の液化ガス(21)で満たされており、前記第1貯蔵タンク内の前記気相の液化ガスは、前記液化ガスの気液平衡温度より高い温度にあり、前記準備状態にある前記複数の貯蔵タンクのうち第2貯蔵タンク(10B)は、不活性ガス(22)で満たされており、
液相の液化ガスの流れ(25)を前記第1貯蔵タンク(10A)に導入して、前記第1貯蔵タンクを冷却し、前記第1貯蔵タンク内の前記液相の液化ガスの一部又は全体を蒸発させ、
前記液相の液化ガスの流れ(25)が前記第1貯蔵タンク(10A)に導入される間、前記液相の液化ガスの気化によって生成された気相の液化ガスの流れ(26、126)を、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に接続された前記少なくとも1つのマニホールド(4、2)を通じて、前記第1貯蔵タンクの上部から前記第2貯蔵タンク(10B)の上部に導き、前記気相の液化ガス(21)は前記不活性ガス(22)よりも密度が低く、
前記気相の液化ガスの流れの圧力下で前記第2貯蔵タンク(10B)の下部から不活性ガスの流れ(27)を放出することにより、少なくとも前記第2貯蔵タンク(10B)の上部において、前記気相の液化ガス(21)によって前記不活性ガス(22)が置き換えられる
ことを含むことを特徴とするガスアップ方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのマニホールドはメンテナンスマニホールド(4)を備え、
前記メンテナンスマニホールドは、それぞれの第1遮断バルブ(11)を介して前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続され、
前記気相の液化ガスの流れ(26、126)は、前記第1貯蔵タンク(10A)に関連する前記第1遮断バルブ(11)を通って、前記第1貯蔵タンクの上部から前記メンテナンスマニホールド(4)に導かれ、及び/又は、前記第2貯蔵タンクに関連する前記第1遮断バルブ(11)を通って、前記メンテナンスマニホールド(4)から前記第2貯蔵タンク(10B)の上部に導かれる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのマニホールドは蒸気マニホールド(2)も備え、
前記蒸気マニホールドは断熱されており、
前記蒸気マニホールド(2)は、それぞれの第2遮断バルブ(12)を介して前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続され、
前記蒸気マニホールド(2)は、前記メンテナンスマニホールド(4)と直列に接続されており、
前記気相の液化ガスの流れ(26)は、前記第1貯蔵タンク(10A)に関連付けられた前記第1遮断バルブ(11)、前記メンテナンスマニホールド(4)、前記蒸気マニホールド(2)、及び前記第2貯蔵タンク(10B)に関連付けられた前記第2遮断バルブ(12)を、順に通過し、又は、前記第1貯蔵タンクに関連付けられた前記第2遮断バルブ(12)、前記蒸気マニホールド(2)、前記メンテナンスマニホールド(4)、前記第2貯蔵タンクに関連付けられた前記第1遮断バルブ(11)を、順に通過する
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記気相の液化ガスの流れ(26、126)は、自然対流によって前記第1貯蔵タンク(10A)の上部から前記第2貯蔵タンク(10B)の上部へ流れる
ことを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記液化ガス貯蔵設備は、前記メンテナンスマニホールド(4)及び前記蒸気マニホールド(2)のいずれか一方に接続された入口と、前記メンテナンスマニホールド(4)及び前記蒸気マニホールド(2)のいずれか他方に接続される出口と、を有するガス再加熱装置(14)を更に備え、
前記気相の液化ガスの流れ(26、28)は、前記第2貯蔵タンク(10B)の上部に到達する前に前記ガス再加熱装置を通って再加熱される
ことを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記液化ガス貯蔵設備は、前記メンテナンスマニホールド及び前記蒸気マニホールド(2)のいずれか一方に接続された入口と、前記メンテナンスマニホールド(4)及び前記蒸気マニホールドのいずれか他方に接続される出口と、を有するガス再加熱装置(14)を更に備え、
第1フロー期間中に、前記気相の液化ガスの流れ(26)は、自然対流によって前記第1貯蔵タンクの上部から前記第2貯蔵タンクの上部に流れ、第2フロー期間中に、前記気相の液化ガスの流れ(26、28)は、前記第2貯蔵タンクの上部に到達する前に、前記ガス再加熱装置(14)を通って再加熱される
ことを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1フロー期間中に、前記第1貯蔵タンク(10A)から出る前記気相の液化ガスの温度を監視するステップと、
前記気相の液化ガスの温度が所定の基準を満たしているときに、前記気相の液化ガスの流れ(26)を前記再加熱装置(14)に切り替えるステップと
を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記液相の液化ガスの流れ(25)は、前記液化ガス貯蔵設備が接続されている陸上ターミナル(77)から導かれることを特徴とする請求項1~7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記液相の液化ガスの流れ(25)は、前記液化ガス貯蔵設備が接続されている供給船から導かれることを特徴とする請求項1~7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記液化ガス貯蔵設備は、第3貯蔵タンクと、前記複数の貯蔵タンク(10A~10C)のそれぞれに並列に接続されたスプレーマニホールド(3)と、を備え、
前記準備状態にある前記第3貯蔵タンクが前記液相の液化ガスで部分的又は完全に満たされており、
前記液相の液化ガスの流れ(25)は、前記第3貯蔵タンクにポンプで送られ、前記スプレーマニホールド(3)を通って前記第1貯蔵タンクに導かれる
ことを特徴とする請求項1~7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記液相の液化ガスの流れは、スプレー装置(5)によって前記第1貯蔵タンクにスプレーされることを特徴とする請求項1~10のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記液化ガス貯蔵設備は、前記複数の貯蔵タンク(10A~10C)のそれぞれの下部に並列に接続された液体マニホールド(1)と、前記液体マニホールド(1)に接続されたガス抜きマスト(13)とを備え、
前記第2貯蔵タンク(10B)から出た前記不活性ガスの流れ(27)は、前記液体マニホールド(1)を通って前記ガス抜きマスト(13)に導かれる
ことを特徴とする請求項1~11のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
浮体構造物上の液化ガス貯蔵設備内においてガス試験を実施するための方法であって、
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法によって、前記第2貯蔵タンクをガスアップし(103、105)、
前記第2貯蔵タンクがガスアップされると、液相の液化ガスの流れを前記第2貯蔵タンクに導入して(106)、前記第2貯蔵タンクを冷却する
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
浮体構造物に搭載される液化ガス貯蔵設備であって、
複数の貯蔵タンク(10A~10C)と、
それぞれの第1遮断バルブ(11)を介して前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続されたメンテナンスマニホールド(4)と、
それぞれの第2遮断バルブ(12)を介して前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続された蒸気マニホールド(2)であって、断熱された蒸気マニホールド(2)と、
前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの下部に並列に接続された液体マニホールド(1)であって、断熱された液体マニホールド(1)と、
前記液体マニホールドに接続されたガス抜きマスト(13)と、
を備え、
前記複数の貯蔵タンク(10A~C)のそれぞれは、前記液体マニホールド(1)に接続された充填ライン(9)と、前記貯蔵タンクの上部に繋がる蒸気ライン(6)と、を備え、前記蒸気ライン(6)は、前記貯蔵タンクに関連付けられた前記第1遮断バルブ(11)を介して前記メンテナンスマニホールド(4)と、前記貯蔵タンクに関連付けられた前記第2遮断バルブ(12)を介して前記蒸気マニホールド(2)と、に並列に接続されており、
前記第1遮断バルブ(11)は、前記メンテナンスマニホールド(4)を前記複数の貯蔵タンクのうち第1貯蔵タンク(10A)の上部と選択的に連通させるように切り替え可能であり、気相の液化ガスの流れ(26)を前記第1貯蔵タンク(10A)に関連付けられた前記第1遮断バルブ(11)を介して前記第1貯蔵タンクから前記メンテナンスマニホールド(4)まで導く
ことを特徴とする液化ガス貯蔵設備。
【請求項15】
前記蒸気マニホールド(2)が前記メンテナンスマニホールド(4)と直列に接続されており、
前記第2遮断バルブ(12)は、前記蒸気マニホールド(2)を前記複数の貯蔵タンクのうち第2貯蔵タンク(10B)の上部と選択的に連通させるように切り替え可能であり、前記気相の液化ガスの流れ(26)を、前記第1貯蔵タンクに関連する前記第1遮断バルブ(11)、前記メンテナンスマニホールド(4)、前記蒸気マニホールド(2)、及び前記第2貯蔵タンクに関連する前記第2遮断バルブ(12)を順に介して、前記第1貯蔵タンクから前記第2貯蔵タンクまで導く
ことを特徴とする請求項14に記載の液化ガス貯蔵設備。
【請求項16】
前記複数の貯蔵タンクのそれぞれに並列に接続されたスプレーマニホールド(3)と、
前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に配置され、前記スプレーマニホールド(3)に接続されたスプレー装置(5)と、
を更に備えることを特徴とする請求項14又は15に記載の液化ガス貯蔵設備。
【請求項17】
前記浮体構造物は、液化ガスを輸送するための船(70)であることを特徴とする請求項14~16のいずれか1項に記載の液化ガス貯蔵設備。
【請求項18】
ガス試験を行うための試験システムであって、
請求項17に記載の液化ガス貯蔵設備と、
前記液体マニホールド(1)又は前記スプレーマニホールド(3)を陸上ターミナル(77)に接続するために配置された断熱パイプ(73、79、76、81)と、
前記陸上ターミナルから前記液体マニホールド(1)又は前記スプレーマニホールド(3)まで前記断熱パイプを通じて液相の液化ガスの流れを駆動するためのポンプと、
を備えることを特徴とする試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス貯蔵設備の分野に関し、特に、LNG運搬船などの浮体構造物上の設備に関する。
【0002】
液化ガス貯蔵設備、特にLNGを貯蔵するための液化ガス貯蔵設備は、例えば、陸上の貯蔵設備、海底に設置された貯蔵設備、又は沿岸若しくは深海における浮体式構造物の船上設備、特に、LNG船、浮体式貯蔵再ガス化設備(Floating Storage and Regasification Unit(FSRU))、浮体式生産貯蔵積出設備(Floating Production Storage and Offloading(FPSO))などであることができる。
【0003】
液化ガスは、可燃性ガス、特に、液化天然ガス(LNG)又は液化石油ガス(LPG)などであることができる。
【背景技術】
【0004】
LNG貯蔵タンクの製造後に試運転する場合、又は大規模な修理後に使用に戻す場合には、乾燥、不活性化、ガスアップ(英語では「gassing-up」)、冷却(英語では「cool-down」)、その後積載という一連の作業が必要になる。
【0005】
これらの作業は、特にガス試験中に実行され、LNG船の試運転又は再試運転前に、貯蔵タンクとカーゴハンドリングシステムが低温で正しく動作することを確認するために実施される試験である。ガス試験と推奨される実施方法の詳細な説明は、下記の出版物に記載されている:国際ガスタンカー運航者及び基地操業者協会(The Society of International Gas Tanker and Terminal Operators(SIGTTO))論文(2019版)の「LNG船のガス試験計画のガイド」、ISBN13:978-1-85609-810-6(9781856098106)。
【0006】
特に、海上での運用中は、次のような複数の貯蔵タンクでガス試験を同時に実行するのが通例である。
-LNG気化ユニットでの強制気化によって生成される気相のガスの流れによる貯蔵タンクのガスアップ、
-次に、液相のガスの流れによる貯蔵タンクの冷却。
【0007】
海上でのこれらすべての作業では、事前に別のタンクに積み込まれていたLNGが消費され、船上に蓄積できない蒸発ガス、つまり気相の液化ガスが生成される。この蒸発ガスを処理する従来の技術は、再液化、推進エンジンでの消費、燃焼装置での燃焼、及び/又は大気中への放出で構成される。
【発明の概要】
【0008】
本発明のある態様は、ガス試験、特にガスアップ及び冷却動作では大量の蒸発ガスが発生するが、その処理を容易にし、液化ガスを節約し、及び/又は大気中へのガス排出を削減するには、蒸発ガスを削減することが望ましい、という観察に基づいている。
【0009】
本発明の基礎となるアイデアは、特に液化ガス貯蔵設備内の複数のタンクを含むガス試験中に、タンクの冷却中に生成される蒸発ガスを利用して別のタンクのガスアップを実行することにある。
【0010】
そのために、本発明は、液化ガス貯蔵設備の貯蔵タンクをガスアップするガスアップ方法を提案する。液化ガス貯蔵設備は、浮体構造物に搭載されていることが好ましく、前記ガスアップ方法は、前記液化ガス貯蔵設備を準備状態にし、前記液化ガス貯蔵設備は、複数の貯蔵タンクと、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続された少なくとも1つのマニホールドとを備え、前記準備状態にある前記複数の貯蔵タンクのうち第1貯蔵タンクが気相の液化ガスで満たされており、前記第1貯蔵タンク内の前記気相の液化ガスは、前記液化ガスの気液平衡温度より高い温度にあり、前記準備状態にある前記複数貯蔵タンクのうち第2貯蔵タンクは、不活性ガスで満たされており、液相の液化ガスの流れを前記第1貯蔵タンクに導入して、前記第1貯蔵タンクを冷却し、前記第1貯蔵タンク内の前記液相の液化ガスの一部又は全体を蒸発させ、前記液相の液化ガスの流れが前記第1貯蔵タンクに導入される間、前記液相の液化ガスの気化によって生成された気相の液化ガスの流れを、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に接続された前記少なくとも1つのマニホールドを通じて、前記第1貯蔵タンクの上部から前記第2貯蔵タンクの上部に導き、前記気相の液化ガスは前記不活性ガスよりも密度が低く、前記気相の液化ガスの流れの圧力下で前記第2貯蔵タンクの下部から不活性ガスの流れを放出することにより、少なくとも前記第2貯蔵タンクの上部において、前記気相の液化ガスによって不活性ガスが置き換えられることを含む。
【0011】
これらの特性のために、複数の貯蔵タンクのガスアップと冷却を連続的又は部分的に連続した方法で実行し、従来の同期的な手順よりも発生する蒸発ガスの量を減らすことができる。
【0012】
有利な実施形態によれば、そのような方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を有しても良い。
【0013】
第1貯蔵タンクから第2貯蔵タンクへ気相の液化ガスの流れを導くことを可能にする接続は、様々な方法で行うことができる。
【0014】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つのマニホールドはメンテナンスマニホールドを備え、前記メンテナンスマニホールドは、それぞれの第1遮断バルブを介して前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続され、前記気相の液化ガスの流れは、前記第1貯蔵タンクに関連する前記第1遮断バルブを通って、前記第1貯蔵タンクの上部から前記メンテナンスマニホールドに導かれ、及び/又は、前記第2貯蔵タンクに関連する前記第1遮断バルブを通って、前記メンテナンスマニホールドから前記第2貯蔵タンクの上部に導かれる。
【0015】
好ましくは、このメンテナンスマニホールドは絶縁されていない。特に、メンテナンスマニホールドは、不活性ガス生成ユニットに接続され、通常はタンクの不活性化中に使用されるマニホールドであってもよい。
【0016】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つのマニホールドは蒸気マニホールドも備え、前記蒸気マニホールドは断熱されており、前記蒸気マニホールドは、それぞれの第2遮断バルブを介して前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続され、前記蒸気マニホールドは、前記メンテナンスマニホールドと直列に接続されており、前記気相の液化ガスの流れは、前記第1貯蔵タンクに関連付けられた前記第1遮断バルブ、前記メンテナンスマニホールド、前記蒸気マニホールド、及び前記第2貯蔵タンクに関連付けられた前記第2遮断バルブを、順に通過し、又は、前記第1貯蔵タンクに関連付けられた前記第2遮断バルブ、前記スチームマニホールド、前記メンテナンスマニホールド、前記第2貯蔵タンクに関連付けられた前記第1遮断バルブを、順に通過する。
【0017】
第1貯蔵タンクから第2貯蔵タンクへの気相の液化ガスの流れは、様々な方法で行うことができる。
【0018】
一実施形態によれば、前記気相の液化ガスの流れは、自然対流によって第1貯蔵タンクの上部から第2貯蔵タンクの上部に流れる。これらの特性のために、追加のエネルギーを消費することなく、流れが受動的に達成される。
【0019】
一実施形態によれば、前記液化ガス貯蔵設備は、前記メンテナンスマニホールド及び前記蒸気マニホールドのいずれか一方に接続された入口と、前記メンテナンスマニホールド及び前記蒸気マニホールドのいずれか他方に接続される出口と、を有するガス再加熱装置を更に備え、前記気相の液化ガスの流れは、前記第2貯蔵タンクの上部に到達する前に前記ガス再加熱装置を通って再加熱される。これらの特徴により、比較的低温の蒸発ガス、特に第1タンクの冷却運転が進んだ状態で第1タンク内で得られる蒸発ガスを回収することができる。
【0020】
一実施形態によれば、前記液化ガス貯蔵設備は、前記メンテナンスマニホールド及び前記蒸気マニホールドのいずれか一方に接続された入口と、前記メンテナンスマニホールド及び前記マニホールドのいずれか他方に接続される出口と、を有するガス再加熱装置を更に備え、第1フロー期間中に、前記気相の液化ガスの流れは、自然対流によって前記第1貯蔵タンクの上部から前記第2貯蔵タンクの上部に流れ、第2フロー期間中に、前記気相の液化ガスの流れは、前記第2貯蔵タンクの上部に到達する前に、前記ガス再加熱装置を通って再加熱される。
【0021】
一実施形態によれば、前記ガスアップ方法は、前記第1フロー期間中に、前記第1貯蔵タンクから出る前記気相の液化ガスの温度を監視するステップと、前記気相の液化ガスの温度が所定の基準を満たしているときに、前記気相の液化ガスの流れを前記再加熱装置に切り替えるステップと、を更に備える。
【0022】
これらの特性のために、第1貯蔵タンクの冷却運転開始時に、所定の基準に達するまで自然な流れを実現することができる。所定の基準とは、例えば、それを下回ると気相の液化ガスが濃くなりすぎてガスアップオペレーションが実行できなくなる温度閾値である。次に、流れがヒーターに切り替えられ、第2貯蔵タンクのガスアップオペレーションが継続される。
【0023】
液相の液化ガスの流れは、例えば液化ガス貯蔵設備の外部又は内部など、幾つかの方法で生成することができる。実施形態によれば、前記液相の液化ガスの流れは、液化ガス貯蔵設備が接続されている陸上ターミナル又は供給船から導かれる。
【0024】
一実施形態によれば、前記液化ガス貯蔵設備は、第3貯蔵タンクと、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれに並列に接続されたスプレーマニホールドとを備え、準備状態にある前記第3貯蔵タンクが前記液相の液化ガスで部分的又は完全に満たされており、前記液相の液化ガスの流れは、前記第3貯蔵タンクにポンプで送られ、前記スプレーマニホールドを通って前記第1貯蔵タンクに導かれる。
【0025】
一実施形態によれば、前記液相の液化ガスの流れは、スプレー装置によって前記第1貯蔵タンクにスプレーされる。
【0026】
不活性ガスは様々な方法で排出できる。一実施形態によれば、前記液化ガス貯蔵設備は、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの下部に並列に接続された液体マニホールドと、前記液体マニホールドに接続されたガス抜きマストとを備え、前記第2貯蔵タンクから出た前記不活性ガスの流れは、前記液体マニホールドを通って前記ガス抜きマストに導かれる。
【0027】
一実施形態によれば、本発明は、更に、浮体構造物上の液化ガス貯蔵設備内においてガス試験を実施するための方法を提供し、前記ガス試験を実施するための方法は、上述したガスアップ方法によって前記第2貯蔵タンクをガスアップし、前記第2貯蔵タンクがガスアップされると、液相の液化ガスの流れを前記第2貯蔵タンクに導入し、前記第2貯蔵タンクを冷却することを含む。
【0028】
以前と同様に、第2貯蔵タンクの冷却動作と同時に、別の貯蔵タンクのガス処理を実行できる。従って、第2貯蔵タンクの冷却オペレーション中に生成される蒸発ガスの量が利用され、従来の同期手順と比較して蒸発ガスの全体的な生成が減少する。
【0029】
一実施形態によれば、本発明は、更に、液化ガス貯蔵設備を提供し、前記液化ガス貯蔵設備は、浮体構造物に搭載されていることが好ましく、前記液化ガス貯蔵設備は、複数の貯蔵タンクと、それぞれの第1遮断バルブを介して前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続されたメンテナンスマニホールドと、それぞれの第2遮断バルブを介して前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に並列に接続された蒸気マニホールドであって、断熱された蒸気マニホールドと、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの下部に並列に接続された液体マニホールドであって、断熱された液体マニホールドと、前記液体マニホールドに接続されたガス抜きマストと、を備え、前記第1遮断バルブは、前記メンテナンスマニホールドを前記複数の貯蔵タンクのうち前記第1貯蔵タンクの上部と選択的に連通させるように切り替え可能であり、気相の液化ガスの流れを前記第1貯蔵タンクに関連付けられた前記第1遮断バルブを介して前記第1貯蔵タンクから前記メンテナンスマニホールドまで導く。
【0030】
有利な実施形態によれば、そのような液化ガス貯蔵設備は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有してもよい。
【0031】
一実施形態によれば、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれは、前記液体マニホールドに接続された充填ラインと、前記貯蔵タンクの上部に開口する蒸気ラインと、を備え、前記貯蔵タンクに関連付けられた前記第1遮断バルブを介して前記メンテナンスマニホールドと、前記貯蔵タンクに関連付けられた前記第2遮断バルブを介して前記蒸気マニホールドと、に並列に接続されている。
【0032】
一実施形態によれば、前記蒸気マニホールドが前記メンテナンスマニホールドと直列に接続されており、前記第2遮断バルブは、前記蒸気マニホールドを前記貯蔵タンクの前記第2貯蔵タンクの上部と選択的に連通させるように切り替え可能であり、前記気相の液化ガスの流れを、前記第1貯蔵タンクに関連する前記第1遮断バルブ、前記メンテナンスマニホールド、前記蒸気マニホールド、及び第2貯蔵タンクに関連する前記第2遮断バルブを順に介して、前記第1貯蔵タンクから前記第2貯蔵タンクまで導く。
【0033】
一実施形態によれば、前記液化ガス貯蔵設備は、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれに並列に接続されたスプレーマニホールドと、前記複数の貯蔵タンクのそれぞれの上部に配置され前記スプレーマニホールドに接続されたスプレー装置と、を更に備える。
【0034】
一実施形態によれば、液化ガスは液化天然ガスである。
【0035】
一実施形態によれば、前記浮体構造物は、液化ガスを輸送するための船である。液化ガスを輸送するためのそのような船は、ダブルハルと、ダブルハル内に配置された貯蔵タンクとを備えることができる。一実施形態によれば、貯蔵タンクはメンブレン技術で作られ、ダブルハルは貯蔵タンクの耐力壁を形成するインナーハルを備える。
【0036】
一実施形態によれば、本発明は、更に、ガス試験を行うための試験システムを提供し、前記試験システムは、前述の液化ガス貯蔵設備と、前記液体マニホールド又は前記スプレーマニホールドを陸上ターミナルに接続するために配置された断熱パイプと、前記陸上ターミナルから前記液体マニホールド又は前記スプレーマニホールドまで前記断熱パイプを通じて液相の液化ガスの流れを駆動するためのポンプと、を備える。
【0037】
添付の図面を参照すると、本発明の幾つかの特定の実施形態についての以下の説明によって、本発明がよりよく理解され、他の目的、詳細、特徴及び利点がより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明による方法を実施することができる液化ガス貯蔵及び取扱いシステムを部分的に表す図である。
【
図2】
図2は、タンクにガスを充填する作業に先立つ状態における、液化ガス貯蔵及び取扱いシステムを示す、
図1と同様の図である。
【
図3】
図3は、タンクのガスアップ動作の第1段階における、液化ガス貯蔵及び取扱いシステムを示す、
図1と同様の図である。
【
図4】
図4は、ガスアップ動作中における、タンクの状態の時間変化を示すグラフである。
【
図5】
図5は、タンクのガスアップ動作の第2段階における、液化ガス貯蔵及び取扱いシステムを示す、
図1と同様の図である。
【
図6】
図6は、タンクのガスアップ動作の第3段階における、液化ガス貯蔵及び取扱いシステムを示す、
図1と同様の図である。
【
図7】
図7は、液化ガス貯蔵及び取扱いシステムで実施される試験手順を示すタイミング図である。
【
図8】
図8は、積み込み/積み下ろしターミナルに接続されたLNG運搬船の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、LNG運搬船などの浮体構造物に搭載されることができるLNG貯蔵設備を概略的に示す。
【0040】
3つの貯蔵タンク10A、10B、10Cが例示の目的で示されているが、この数はそれより多くても少なくてもよい。タンクは船体の長さ方向に連続して配置することも、異なる配置にすることもできる。貯蔵タンクは、例えば二重メンブレン技術などの様々な技術によって製造できる、密閉された断熱壁を有する。
【0041】
すべてのタンクを接続するカーゴハンドリングシステムの一部が示されている。各貯蔵タンク10A~Cは、特に、
-液体マニホールド1に接続された充填ライン9と、
-貯蔵タンクの上部に繋がり、第1遮断バルブ11を介してメンテナンスマニホールド4と、第2遮断バルブ12を介して蒸気マニホールド2と、に並列に接続されている蒸気ライン6と、
-貯蔵タンクの上部に開口し、スプレーマニホールド3に接続された1つ又は複数のスプレーブーム5と、
-ポンピングライン8によってスプレーマニホールド3に接続されたスプレーポンプ7と、
を含む。
【0042】
各貯蔵タンク内の1つ又は複数の荷下ろしポンプなど、図示されていない他の要素が存在してもよい。
【0043】
前述のマニホールド、例えば、全てのタンクの充填ライン9が接続される液体マニホールド1、及び、全てのタンクのスプレーブーム5が接続されるスプレーマニホールド3は、他の流体回路に接続することができる。例えば、リンク16及び17によって示されるように、液体マニホールド1及びスプレーマニホールド3は積み替え回路に接続され、陸上ターミナル又は別の船との間で流体を運ぶ。
【0044】
タンクの壁を横切るラインの数を制限するために、ここではメンテナンスマニホールド4と蒸気マニホールド2をタンクの内部空間と平行に接続する単一の蒸気ライン6が設けられている。あるいは、2つの別個の蒸気ラインを設けることもできる。
【0045】
スプレーマニホールド3、液体マニホールド1、及び蒸気マニホールド2は、冷たい流体を伝導することを目的としており、従って、好ましくは断熱されている。逆に、メンテナンスマニホールド4は、その通常の機能がタンク及びパイプの不活性化動作のために不活性ガス生成ユニット(図示せず)から不活性ガスを導くことであるため、断熱されていないか、わずかに断熱されているだけである。
【0046】
図1には、特に長い循環経路を形成するために、メンテナンスマニホールド4の一端を蒸気マニホールド2に接続する屈曲接続部19も示されており、その使用については
図3を参照して説明する。屈曲接続部19はオプションである。
【0047】
ガスヒータ14は、遮断バルブを介して、例えばガスヒータ14の出口でメンテナンスマニホールド4に接続され、例えばガスヒータ14の入口で蒸気マニホールド2に接続されている。同様に、気化ユニット15は、遮断バルブを介して、例えば気化ユニット15の入口でスプレーマニホールド3に接続され、例えば気化ユニット15の出口で蒸気マニホールド2に接続されている。
【0048】
図示されていない他の要素を様々なマニホールドに接続することができる。例えば、蒸気マニホールド2は、リンク18によって示されるように、気相のガスを消費する装置、例えば燃焼ユニット又は推進エンジンに接続することができる。
【0049】
図2から
図6を参照して、タンク10Aの冷却とタンク10Bのガスアップの同時動作について説明する。これを行うために、タンク10Bを不活性化しタンク10Aにガスアップすることにより、設備を事前に準備状態に置く。これらの操作は、任意の適切な方法によって実行されてもよい。
【0050】
慣例により、図中の太線は、システムで使用される流体の搬送に適したパイプ又は回路を表す。図中の矢印は、水平矢印の下のパイプ内、又は、垂直矢印の左側のパイプ内における、液体又は気体の流れを表す。
【0051】
従って、
図2に示される準備状態では、タンク10Aは室温の気相の天然ガス21で満たされ、タンク10Bは、室温の不活性ガス22、例えば窒素又は石油の燃焼から生じる二酸化炭素を多く含むガスで満たされている。
【0052】
準備状態で液相の液化ガスで部分的に満たされた別の貯蔵タンクが
図2に破線で示されている。スプレーマニホールド3もこの別のタンクに接続されている。
【0053】
図3は、タンク10Aの冷却とタンク10Bのガスアップの同時運転の第1段階を表す。
【0054】
LNGの流れ25はスプレーマニホールド3を介してタンク10Aに導入され、スプレーブーム5によってスプレーされてタンク10Aを冷却する。LNGは、タンク10A内でその潜在的な蒸発エネルギーを放出することによって蒸発し、過剰な気相の天然ガスを生成する。この気相の天然ガスの過剰分は、タンク10A内の圧力の上昇を避けるために、生成時にタンク10Aから排出されなければならない。このため、気相の天然ガスの流れ26をタンク10Aからタンク10Bに導き、タンク10Bのガス化を行うための循環経路が形成される。
【0055】
図3に示すように、LNGの流れ25は、他のタンクにポンプで送り込まれ、スプレーマニホールド3を通ってタンク10Aに導かれることができる。
【0056】
タンク10Bのガスアップは、不活性ガス22より密度の低いガスを用いて実行されなければならないので、不活性ガス22をタンク10Bの底部に向かって移動させるために、断熱されていないため周囲大気との熱交換を生じさせタンク10Bに到達する前に気相の天然ガスの流れ26を加熱することに寄与する、メンテナンスマニホールド4の長い長さを使う、気相の天然ガスの流れ26のための循環経路を使うことが有利である。この目的のため、矢印26は、タンク10Aから蒸気ライン6及び遮断バルブ11を介してメンテナンスマニホールド4に向かい、メンテナンスマニホールド4の全長に沿って屈曲接続部19まで延び、蒸気マニホールド2内をタンク10Bの蒸気ライン6まで伸びている循環経路を示す。
【0057】
この循環経路は、遮断バルブ11及び12を使用して、
-タンク10Aの遮断バルブを除く全ての遮断バルブ11を閉じることによって、
-タンク10Bの遮断バルブを除く全ての遮断バルブ12を閉じることによって、
構成できる。
【0058】
他の循環経路も考慮できる。例えば、上記の循環経路を逆にして、蒸気マニホールド2で開始し、メンテナンスマニホールド4で終了することができる。この逆の経路は、遮断バルブ11及び12を使用して、
-タンク10Aの遮断バルブを除く全ての遮断バルブ12を閉じることによって、
-タンク10Bの遮断バルブを除く全ての遮断バルブ11を閉じることによって、
構成できる。
【0059】
別の短い循環経路が矢印126で示されている。この場合、循環経路はタンク10Aから出て、タンク10Aの蒸気ライン6及び遮断バルブ11を介してメンテナンスマニホールド4に至り、タンク10Bの蒸気ライン6及び遮断バルブ11を介してタンク10Bに再び入る。
【0060】
タンク10Bのガスアップ動作中、蒸気の天然ガスの流れ26又は126は、不活性ガス22をタンク10Bの底部に向かって排出する。気相の天然ガスの流れ26又は126のタンク10Bへの自然な流れを可能にする圧力差を生成するために、タンク10B内の圧力は、充填ライン9、液体マニホールド1及び液体マニホールド1に接続された脱気マスト13を介して不活性ガス27の流れを放出することによって、タンク10Aよりも低い圧力に維持される。これは、船のブリッジハウスから最も遠い、前マストであることが好ましい。ガス処理中のタンク10B内の相対圧力は、例えば約60ミリバール(6kPa)であり得るが、タンク10A内の相対圧力は、例えば150ミリバール(15kPa)~180ミリバール(18kPa)の間であってもよい。
【0061】
図4は、冷却運転中のタンク10Aの熱力学的状態の推移を示すグラフである。横軸は時間を時間単位で表す。右側のY軸は、摂氏(℃)で表される、タンク10A内の気相の温度を表し、曲線41は、周囲温度(ここでは30℃)から約-130℃までの気相の温度の変化を表す。左側の縦軸は、kg/hで表される蒸発ガスの質量流量を表し、曲線42は、操作開始時の初期ゼロ流量からの、タンク10Aから出る蒸発ガスの質量流量の変化を表す。大容量タンクでは、冷却動作には約15時間かかりうる。
【0062】
図4に示す定量的な値は、単に例示的なものである。これらは、次の傾向を明確に示す。冷却動作の開始時には、生成される蒸発ガスは比較的高温であるため、密度はそれほど高くなく、その生成量は最初は低いが、急速に増加する。ある時間経過後、例えば
図4では約2時間後、蒸発ガスは低すぎる温度、例えば
図4では約-25℃に達し、タンク10Bを直接ガスアップするには、その密度が高くなりすぎる。
【0063】
この展開が起こる場合、
図3を参照して説明した第1段階を完了し、
図5に示すように、ガスヒータ14を利用して動作の第2段階を開始する必要があるかもしれない。
【0064】
図5では、LNGの流れ25と不活性ガスの流れ27は以前と同様に継続するが、しかし、気相の天然ガスの流れ26は、ガスヒータ14を通過する別の循環経路によって導かれ、タンク10Bのガスアップを継続するために適切な温度、例えば約20℃まで再加熱される。加熱された天然ガスの流れは矢印28で示されている。
図5の例では、循環経路は、蒸気ライン6及び遮断バルブ12を通ってタンク10Aから出て、蒸気マニホールド2、ガスヒータ14、メンテナンスマニホールド4、遮断バルブ11及び蒸気ライン6を通ってタンク10Bからタンク10Bへ流れる。
【0065】
第2段階を開始するための気相の天然ガスの流れ26のガスヒータ14への切り替えは、手動でも自動でもよい。第1段階を終了し、第2段階を開始するための基準は、気相の温度又は密度の基準とすることができる。この基準の達成は、人間のオペレーターによって監視することも、制御システムによって自動化することもできる。
【0066】
タンク10Aの冷却動作全体において、生成される蒸発ガスの量がタンク10Bのガスアップ動作の進行速度に比べて過剰である場合、過剰な気相の天然ガスは、例えばリンク18を介してガス消費機器に送ることができる。
【0067】
貯蔵タンク10Bをガスアップするための上述の2つの段階により、貯蔵タンク10Aの冷却動作中に必然的に生成される蒸発ガスを使用することが可能になる。これには2つのフェーズの使用は必須ではない。例えば、タンク10A内の蒸発ガスの温度が下がりすぎる前にタンク10Bのガスアップが完全に完了した場合、第2段階は必要ない。
【0068】
逆に、蒸発ガスの生成が比較的少ない場合、タンク10Bのガスアップを、タンク10Aの冷却操作の開始からではなく、蒸発ガスの流れが更に持続しより冷たくなった後に、開始するように決定することもできる。この場合、ガスヒータ14を直接使用することが決定されてもよく、その場合には、上述の第1段階は起こらない。
【0069】
従って、タンク10Aの冷却動作とタンク10Bのガスアップ動作との間の時間的重複は、完全に重複してもよく、部分的に重複してもよい。タンク10Bのガスアップ動作が完了する前にタンク10Aの冷却動作が完了する場合、
図6に示すように、任意の従来の方法によってタンク10Bのガスアップ動作を完了することが可能である。
【0070】
図6では、貯蔵タンク10Aは冷却後に液相のLNGで部分的に満たされている。タンク10Bのガスアップを継続するために、LNGの流れ30は、スプレーポンプ7を使用してタンク10Aの底部に貯蔵された液相23にポンプで送り込まれ、例えばスプレーマニホールド3を介して気化ユニット15に導かれる。従って、気化ユニット15は、例えば約20℃の温度で気化した天然ガスの流れ29を生成し、これが貯蔵タンク10Bに導かれてガスアップ動作が完了する。
【0071】
貯蔵タンク10Aの冷却動作と貯蔵タンク10Bのガスアップ動作を同時に実行するための上述の方法は、LNG運搬船又は他の任意のLNG貯蔵設備におけるガス試験手順を改善するために使用することができる。このような手順については、
図7を参照して以下で説明する。
【0072】
図7は、同様の容量を有し、船の長さに沿って連続的に配置された4つの貯蔵タンクを備えるLNG運搬船においてガス試験を実行するために使用できる動作の時系列を示すタイミング図である。タンクAは船尾にあるタンク、タンクDは船首にあるタンクを指す。横軸は時間を時間単位で表す。
【0073】
参照番号101から118で示される動作は次の通りである。
101:タンクAのガスアップ
102:タンクAの冷却
103:タンクBのガスアップ(部分的)
104:タンクAの部分充填
105:タンクBのガスアップ(完全)
106:タンクBの冷却
107:自由流動燃焼ユニット(GCU)の試運転
108:LDコンプレッサー(LDC)の試運転
109:タンクCのガスアップ(完全)
111:燃焼ユニットの最終試運転
112:タンクAからタンクBへの液相移送(ポンプテスト)
113:タンクCの冷却
114:タンクDのガスアップ(完全)
115:タンクBからタンクCへの液相移送
116:タンクDの冷却
117:タンクCからタンクDへの液相移送
118:タンクDからタンクAへの液相移送
【0074】
ステップ101から104は、外部のLNG供給源、すなわち、LNG運搬船が接続されている、陸上ターミナル又は供給船と連携して実行される。ステップ105から118は、海上で実行できるため、陸上ターミナルをレンタルするコストが発生しない。
【0075】
図7のフレーム100は、タンクの冷却動作は、もちろん最後のタンクの冷却を除いて、後続のタンクのガスアップ動作と部分的又は全体的に重なってよいことを示す。従って、冷却によって発生した蒸発ガスは、上述の方法によるガスアップに使用することができる。これにより、従来の同期手順と比較して、この手順で実施されるガス試験で発生する蒸発ガスの総量が大幅に削減される。
【0076】
この蒸発ガスの量の減少は、再液化、燃焼、ターミナルへの返送、又は大気中への排出のいずれかによって管理が容易になり、従ってすべての場合において利点がもたらされる。この利点は、運用コストの削減及び/又は環境上の利点(排出量の削減)である。
【0077】
ガス試験は、1つ又は複数の船のタンクで実行できる。複数のタンクの場合、ガス試験手順中に液体を交換できるようにこれらを接続する必要がある。従って、単一の船の荷役システムで実行される作業を上で説明したが、これらの操作は、相互に接続された2つ以上の船のカーゴハンドリングシステムでも実行できることが理解されるであろう。この場合、マニホールド、例えば蒸気マニホールドは、互いに接続された異なる船の蒸気マニホールドの結合体として理解できる。
【0078】
図8を参照すると、LNG運搬船70の断面図が、船のダブルハル72に取り付けられたほぼ角柱形状の密閉及び断熱タンク71を示す。タンク71の壁は、タンク内に含まれるLNGと接触することを目的とした一次気密バリアと、一次気密バリアと船のダブルハル72との間に配置された二次気密バリアと、一次気密バリアと二次気密バリアとの間、及び二次気密バリアとダブルハル72との間に、それぞれ配置される2つの断熱バリアと、を含む。
【0079】
船の上甲板上に配置された積み込み及び積み下ろしパイプ73は、LNGの積荷をタンク71から移送する又はタンク71に移送するために、海上又は港湾ターミナルへ適切なコネクターの手段によって公知の方法で接続されてもよい。
【0080】
図8は、積み込み及び積み下ろしステーション75と、水中パイプライン76と、陸上設備77とを含む海上ターミナルの例を示す。積み込み及び積み下ろしステーション75は、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78と、を含む、固定された海上設備である。可動アーム74は、積み込み及び積み下ろしパイプ73に接続することができる断熱フレキシブルパイプ79の束を担持する。調節可能な可動アーム74は、あらゆるサイズのLNG運搬船に適合する。タワー78の内部には、図示しない接続パイプが延びている。積み込み及び積み下ろしステーション75は、LNG運搬船70が陸上設備77から又は陸上設備77へ積み込み及び積み下ろしすることを可能にする。陸上設備77は、液化ガス貯蔵タンク80と、水中パイプライン76によって積み込み及び積み下ろしステーション75に接続された接続パイプ81と、を備えている。水中パイプライン76は、例えば5kmの長距離にわたって、積み込み及び積み下ろしステーション75と陸上設備77との間で液化ガスの移送を可能にし、これにより、積み込み及び積み下ろし作業中に、LNG運搬船70を海岸から遠距離に維持することを可能にする。
【0081】
液化ガスの移送に必要な圧力を生成するために、船70に搭載されたポンプ、及び/又は、陸上設備77に備えられたポンプ、及び/又は、積み込み及び積み下ろしステーション75に備えられたポンプが使用される。
【0082】
本発明は幾つかの特定の実施形態に関連して説明されたが、本発明は決してそれらに限定されず、説明された手段の全ての技術的均等物を含み、それらの組み合わせが本発明の範囲内にある場合にはそれらの組み合わせを含むことは明らかである。
【0083】
「含む」(「comporter」又は「comprendre」)という動詞の使用、及びその活用形の使用は、クレームに記載されているもの以外の他の要素又は他のステップの存在を排除するものではない。
【0084】
特許請求の範囲において、括弧内の参照記号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【国際調査報告】