(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】埋め込み型医療機器
(51)【国際特許分類】
A61F 2/08 20060101AFI20231219BHJP
A61F 2/48 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61F2/08
A61F2/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535326
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 FR2021052248
(87)【国際公開番号】W WO2022123180
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514211596
【氏名又は名称】ユロマン
【氏名又は名称原語表記】UROMEMS
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ラムラウイ,ハミド
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ティエリー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA20
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB06
4C097CC04
4C097CC16
4C097CC18
4C097DD10
4C097EE09
4C097EE13
(57)【要約】
本発明は、人又は動物の患者の体内に埋め込むのに適した密閉されたケーシング(1)と、膨張式要素(2)と、可変流体体積を有する流体リザーバー(5)を含み、該流体リザーバーと前記膨張式要素との間のチューブと共に前記ケーシング内に配置される流体回路と、前記流体リザーバー内の流体の体積を選択的に変化させるために前記ケーシング内に配置されるアクチュエータと、アクチュエータを制御するように構成された制御ユニット(100)と、流体回路内の流体の絶対圧力、流体リザーバーにかかる力、ケーシング内のガス圧、大気圧又は患者の高度に関する値を測定するのに適した少なくとも1つのセンサーと、を含み、制御ユニット(100)はアクチュエータが作動していない間のセンサーからの測定値に基づいて、患者の高度に関する値と基準値との差を検出することと、流体回路内の流体の圧力を制御するために、アクチュエータに出すべき命令を前記差の関数として決定することと、を行うように構成されている、医療機器に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器であって、
ガスを含み、人又は動物の患者の体内に埋め込むのに適した密閉されたケーシングと、
前記ケーシングの外で、前記患者の体内に埋め込むのに適した膨張式要素と、
可変流体体積を有する流体リザーバーを含み、該流体リザーバーと前記膨張式要素との間の流体接続を確実にするチューブと共に前記ケーシング内に配置される流体回路と、
前記ケーシング内に配置され、前記流体リザーバー内の流体の体積を選択的に変化させるために、前記流体リザーバーに機械的に連結されるアクチュエータと、
前記流体リザーバーと前記膨張式要素との間で前記流体を移動させるために前記アクチュエータを制御するように構成された制御ユニットと、
前記流体回路内の流体の絶対圧力、前記流体リザーバーにかかる力、前記ケーシング内のガス圧、大気圧又は前記患者の高度に関する値を測定するのに適した少なくとも1つのセンサーと、
を含み、
前記制御ユニットは、
前記アクチュエータが作動していない間の前記センサーからの測定値に基づいて、前記患者の高度に関する値と基準値との差を検出することと、
前記流体回路内の流体の圧力を制御するために、前記アクチュエータに出すべき命令を前記差の関数として決定することと、
を行うようにさらに構成されている、医療機器。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記患者の高度に関する値が第1の基準値よりも大きい場合に、前記膨張式要素内の流体の体積を減らすよう前記アクチュエータを制御するように構成されている、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記患者の高度に関する値が前記第1の基準値よりも大きいか又は前記患者の高度に関する値が前記第1の基準値と、前記第1の基準値よりも小さい第2の基準値との間にある限り、前記膨張式要素内の流体の減らされた体積を維持するようさらに構成されている、請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記患者の高度に関する値が前記第2の基準値よりも小さい場合、前記膨張式要素内の流体の体積を増やすために、前記アクチュエータに対する命令を決定するように構成されている、請求項3に記載の機器。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記患者が水中にいて、前記患者の高度に関する値が第3の基準値よりも小さい場合、前記膨張式要素内の流体の体積を減らすよう前記アクチュエータを制御するように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機器。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記患者が水中にいて、前記患者の高度に関する値が前記第3の基準値よりも小さいか又は前記患者の高度に関する値が前記第3の基準値と、前記第3の基準値よりも大きい第4の基準値との間にある限り、前記膨張式要素内の流体の減らされた体積を維持するようさらに構成されている、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記患者が水中にいて、前記患者の高度に関する値が前記第4の基準値よりも大きい場合、前記膨張式要素内の流体の体積を増やすために、前記アクチュエータに対する命令を決定するように構成されている、請求項6に記載の機器。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記患者の高度に関する値が前記第1の基準値よりも大きいか又は前記患者が水中にいて、前記患者の高度に関する値が第3の基準値よりも小さい期間が経過した後に、前記アクチュエータの制御をトリガーするように構成されている、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の機器。
【請求項9】
前記流体リザーバーは静止部分及び可動部分を含み、前記アクチュエータは、前記流体リザーバーの体積を変化させるために、該静止部分に対して該可動部分を直線的に動かすため該可動部分に機械的に連結されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の機器。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサーは、前記ケーシング内に配置され、前記アクチュエータに及び/又は前記流体リザーバーの可動部分に機械的に接続され、前記流体リザーバーの可動部分の動き方向における引張力及び/又は圧縮力を測定するように配置されたセンサーを含み、測定される該力は、少なくとも
前記流体回路内の圧力に関連して前記流体リザーバーの可動部分によって加えられる力、及び
前記ケーシング内のガスの圧力に関連して前記流体リザーバーの可動部分に加えられる力、
に起因し、
前記制御ユニットは測定された前記力に基づいて前記流体回路内の流体の圧力を測定するように構成されている、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
前記少なくとも1つのセンサーは前記ケーシング内にあるガス圧センサーを含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の機器。
【請求項12】
前記少なくとも1つのセンサーは前記ケーシング内に配置され、前記患者の高度に関する値を測定するように構成された高度計を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の機器。
【請求項13】
前記患者の体外にあり、前記患者による携帯に適した制御装置をさらに含み、該制御装置は大気圧センサーを含み、前記患者の高度に関する値を特定するために、該大気圧センサーによって測定された圧力を前記制御ユニットに伝達するのに適している、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の機器。
【請求項14】
前記制御ユニットは、前記力センサー、圧力センサー又は前記高度計の測定データに基づいて高度差を検出するように構成されている、請求項11、12又は13と組み合わされた請求項10に記載の機器。
【請求項15】
前記制御ユニットは、前記力センサー、圧力センサー及び前記高度計のうちの第1のセンサーからの測定データに基づいて前記高度差を検出し、前記力センサー、圧力センサー及び前記高度計のうちの別のセンサーからの測定データに基づいて、検出された前記高度差を確認するように構成されている、請求項14に記載の機器。
【請求項16】
前記制御ユニットは、前記高度差を非連続的に検出するように構成されている、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の機器。
【請求項17】
前記制御ユニットは、1~300分、好ましくは5~60分、より好ましくは5~15分の一定の間隔で前記高度差を検出するように構成されている、請求項16に記載の機器。
【請求項18】
前記膨張式要素は、解剖学的導管を選択的に閉じるために該解剖学的導管の周囲に配置するのに適した閉鎖カフである、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の機器。
【請求項19】
前記機器は、前記カフにより閉じるために人間又は動物の体に埋め込まれるように構成され、解剖学的導管は、少なくとも尿道、胃管、結腸及び直腸のうちから選択される、請求項18に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解剖学的な導管を選択的に閉じるために流体回路を含む埋め込み型医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
臓器の機能障害を補うために、人間又は動物の患者の体内に埋め込むことが可能な医療機器が存在する。
【0003】
これらの医療機器はとりわけ人工尿道括約筋を含み、人工尿道括約筋は尿道又は膀胱頸部等の自然の導管の周囲への配置に適した膨張式の閉塞カフと、カフと流体接続する流体リザーバーと、カフによって自然の導管に加えられる圧縮にしたがってカフとリザーバーとの間で流体を移動させるのに適したアクチュエータとを含む。
【0004】
このような医療機器は、例えば規制によって課される所定の範囲の流体圧で動作するように設計されている。
【0005】
しかしながら、圧力がこの範囲外になる状況がありうる。
【0006】
したがって、このような状況であっても、患者の機能障害を防止し、そのような機能障害をモーターらし得る患者に対するリスクを回避することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、このような医療機器を装着している患者が一定期間高い高度にいる場合に、患者に危険を及ぼし得るアクチュエータの誤動作を防止することである。
【0008】
本発明の別の目的は、医療機器を装着している患者が海面下にいる場合、例えば潜水の練習している場合に、アクチュエータの誤動作を防止することである。
【0009】
この目的のために、本発明は医療機器を提案し、医療機器は、
ガスを含み、人又は動物の患者の体内に埋め込むのに適した密閉されたケーシングと、
前記ケーシングの外で、前記患者の体内に埋め込むのに適した膨張式要素と、
可変流体体積を有する流体リザーバーを含み、該流体リザーバーと前記膨張式要素との間の流体接続を確実にするチューブと共に前記ケーシング内に配置される流体回路と、
前記ケーシング内に配置され、前記流体リザーバー内の流体の体積を選択的に変化させるために、前記流体リザーバーに機械的に連結されるアクチュエータと、
前記流体リザーバーと前記膨張式要素との間で前記流体を移動させるために前記アクチュエータを制御するように構成された制御ユニットと、
前記流体回路内の流体の絶対圧力、前記流体リザーバーにかかる力、前記ケーシング内のガス圧、大気圧又は前記患者の高度に関する値を測定するのに適した少なくとも1つのセンサーと、
を含み、
前記制御ユニットは、
前記アクチュエータが作動していない間の前記センサーからの測定値に基づいて、前記患者の高度に関する値と基準値との差を検出することと、
前記流体回路内の流体の圧力を制御するために、前記アクチュエータに出すべき命令を前記差の関数として決定することと、
を行うようにさらに構成されている。
【0010】
本発明の有利であるが任意の特徴によれば、任意の組み合わせて
前記制御ユニットは、前記患者の高度に関する値が第1の基準値よりも大きい場合に、前記膨張式要素内の流体の体積を減らすよう前記アクチュエータを制御するように構成され、
前記制御ユニットは、前記患者の高度に関する値が前記第1の基準値よりも大きいか又は前記患者の高度に関する値が前記第1の基準値と、前記第1の基準値よりも小さい第2の基準値との間にある限り、前記膨張式要素内の流体の減らされた体積を維持するようさらに構成され、
前記制御ユニットは、前記患者の高度に関する値が前記第2の基準値よりも小さい場合、前記膨張式要素内の流体の体積を増やすために、前記アクチュエータに対する制御を決定するように構成され、
前記制御ユニットは、前記患者が水中にいて、前記患者の高度に関する値が第3の基準値よりも小さい場合、前記膨張式要素内の流体の体積を減らすよう前記アクチュエータを制御するように構成され、
前記制御ユニットは、前記患者が水中にいて、前記患者の高度に関する値が前記第3の基準値よりも小さいか又は前記患者の高度に関する値が前記第3の基準値と、前記第3の基準値よりも大きい第4の基準値との間にある限り、前記膨張式要素内の流体の減らされた体積を維持するようさらに構成され、
前記制御ユニットは、前記患者が水中にいて、前記患者の高度に関する値が前記第4の基準値よりも大きい場合、前記膨張式要素内の流体の体積を増やすために、前記アクチュエータに対する制御を決定するように構成され、
前記制御ユニットは、前記患者の高度に関する値が前記第1の基準値よりも大きいか又は前記患者が水中にいて、前記患者の高度に関する値が第3の基準値よりも小さい期間が経過した後に、前記アクチュエータの制御をトリガーするように構成され、
前記流体リザーバーは静止部分及び可動部分を含み、前記アクチュエータは、前記流体リザーバーの体積を変化させるために、該静止部分に対して該可動部分を直線的に動かすため該可動部分に機械的に連結され、
前記少なくとも1つのセンサーは、前記ケーシング内に配置され、前記アクチュエータに及び/又は前記流体リザーバーの可動部分に機械的に接続され、前記流体リザーバーの可動部分の動き方向における引張力及び/又は圧縮力を測定するように配置されたセンサーを含み、測定される該力は、少なくとも
前記流体回路内の圧力に関連して前記流体リザーバーの可動部分によって加えられる力、及び
前記ケーシング内のガスの圧力に関連して前記流体リザーバーの可動部分に加えられる力、
に起因し、
前記制御ユニットは測定された前記力に基づいて前記流体回路内の流体の圧力を測定するように構成され、
前記少なくとも1つのセンサーは前記ケーシング内にあるガス圧センサーを含み、
前記少なくとも1つのセンサーは前記ケーシング内に配置され、前記患者の高度に関する値を測定するように構成された高度計を含み、
前記機器は、前記患者の体外にあり、前記患者による携帯に適した制御装置をさらに含み、該制御装置は大気圧センサーを含み、前記患者の高度に関する値を特定するために、該大気圧センサーによって測定された圧力を前記制御ユニットに伝達するのに適し、
前記制御ユニットは、前記力センサー、圧力センサー又は前記高度計の測定データに基づいて高度差を検出するように構成され、
前記制御ユニットは、前記力センサー、圧力センサー及び前記高度計のうちの第1のセンサーからの測定データに基づいて前記高度差を検出し、前記力センサー、圧力センサー及び前記高度計のうちの別のセンサーからの測定データに基づいて、検出された前記高度差を確認するように構成され、
前記制御ユニットは、前記高度差を非連続的に検出するように構成され、
前記制御ユニットは、1~300分、好ましくは5~60分、より好ましくは5~15分の一定の間隔で前記高度差を検出するように構成され、
前記膨張式要素は、解剖学的導管を選択的に閉じるために該解剖学的導管の周囲に配置するのに適した閉鎖カフであり、
前記機器は、前記カフにより閉じるために人間又は動物の体に埋め込まれるように構成され、解剖学的導管は、少なくとも尿道、胃管、結腸及び直腸のうちから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照した以下の詳細な説明から明らかになる。
【
図1】
図1は、患者の体内にある埋め込み型医療機器及び患者の体外にあるリモコン装置の概要を示す。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るケーシングの内部の概略断面図である。
【
図3】
図3は、高度的に患者が立ち上がった場合に医療機器を制御するために考慮される基準値を概略的に示すグラフである。
【
図4】
図4は、患者が水中にある場合に医療機器を制御するために考慮される基準値を概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、「患者」とは人又は動物を意味する。
【0013】
本発明は、とりわけ、解剖学的な導管を閉じることが可能な、とりわけ、尿道(男性の場合)又は膀胱頸部(女性の場合)を閉じることが可能な人工括約筋により尿失禁に対処する能動的な埋め込み型医療機器に関する。しかしながら、より一般的には、本発明は、とりわけ、高度の変化によって起こる圧力変動に敏感な流体回路を含む医療機器に関する。これらの他の機は、とりわけ、陰茎インプラント及び拘束性胃バンドを含み得る。
【0014】
非限定的な例により、人間又は動物の体内にある埋め込み型医療機器を
図1及び
図2に示す。
【0015】
埋め込み型機器は、
・ガスを含む密閉されたケーシング1と、
・患者の体内に埋め込むのに適した、ケーシングの外側にある膨張式要素3と、
・可変流体体積を有する流体リザーバー5を含み、ケーシング内でチューブ2と共に配置され、前記リザーバー5と前記膨張式要素3との間の流体接続を確保する流体回路と、
・ケーシング1の内部に配置され、流体リザーバー5内の流体の体積を選択的に変化させるために、流体リザーバー5の一部に機械的に連結されたアクチュエータ8と、
・リザーバーと膨張式要素との間で流体を移動させるためにアクチュエータを制御するように構成された制御ユニット100と
を含む。
【0016】
流体回路は流体を充填するのに適している。リザーバー5の体積の変動は、流体回路内の圧力の変動をモーターらす。より具体的には、リザーバー5の体積の減少により、リザーバー5から膨張式要素3に流体が移動し、流体回路内の圧力の増加をモーターらす。反対に、リザーバー5の体積の増加により、膨張式要素3からリザーバー5に流体が移動し、流体回路内の圧力の減少をモーターらす。
【0017】
ケーシング、チューブ及びカフは、患者Pの体に埋め込むのに適しており、その輪郭をこのアセンブリの両側で
図1に概略的に示す。
【0018】
医療機器と無線通信するために、患者又は第三者により、患者の体外にあるリモコン装置9を用いることができることがとりわけ有利である。
【0019】
膨張式要素
膨張式要素3は、埋め込み可能シリコーン、埋め込み可能ポリウレタン等の生体適合性材料で作ることができる。膨張式要素3は生体適合性エラストマー、例えば生体適合性シリコーンから作ることができる。
【0020】
膨張式要素3は、埋め込み型システムがとりわけ人工尿道括約筋の場合、膨張式閉塞カフであり得る。流体で満たされた膨張式閉塞カフ3は、閉じるべき導管を全体的に又は部分的に取り囲むのに適し得る。
【0021】
あるいは、膨張式要素3は、埋め込み型システムがとりわけ勃起補綴物の場合、膨張式陰茎インプラントであり得る。
【0022】
流体接続部
流体接続部2は、リザーバー5と膨張式要素3との間に配置されるチューブで構成され得る。チューブの第1の端部はリザーバー5に開口し、チューブの第2の端部は膨張式要素3に開口している。
【0023】
流体接続部2は、埋め込み可能シリコーン、埋め込み可能ポリウレタン等の生体適合性材料で作ることができる。流体接続部2は生体適合性エラストマー、例えば生体適合性シリコーンから作ることができる。
【0024】
可変容量リザーバー
リザーバー5は、ケーシングに対して静止している部分と、静止している部分に対して可動する部分で構成され、この可動部分はアクチュエータによって可動する。
【0025】
リザーバー5は、流体接続部2を介して、リザーバー5の外部からカフ3に流体を移すためのオリフィスをさらに含む。
【0026】
有利であるが限定されない実施形態によれば、リザーバーの固定部分はケーシング1の内壁の一部を含み、可動部分は、好ましくは剛性である可動壁6と、可動壁6とリザーバーの固定部分との間に延びる変形可能なベローズ7とを含む。
【0027】
アクチュエータ
アクチュエータ8は可動壁6の直線的な動きを制御するのに適しており、ベローズ7はアクチュエータ8によって制御される可動壁6の直線的な動きに応じて伸縮するのに適している。
【0028】
アクチュエータ8は、電気エネルギーを機械的な動きに変換することができる任意の電気機械システムから選択でき、その機械的な動きの出力は可変容積リザーバー5の可動壁6の力及び必要な速度での動きを可能にするために必要なものである。アクチュエータ8は、具体的には、圧電アクチュエータ、減速ギアに連結されるか又はされないブラシ付きの又はなしの電磁モーターを含む電磁アクチュエータ、電気活性ポリマー又は形状記憶合金であり得る。
【0029】
可動壁6は、可動壁6と一体の駆動スクリュー17の作用により長手軸に沿って平行移動できる。可動壁6は、可動壁6と一体のナット10を介して駆動スクリュー17に連結され、スクリュー17のネジと協働する雌ネジを有する。駆動スクリュー17は長手軸に沿って実質的に延在し得る。駆動スクリュー17の位置は可動壁6の中心に実質的に対応し得る。
【0030】
アクチュエータ8は、例えばピニオンを回転させることにより駆動スクリュー17を回転駆動するのに適している。長手軸を中心とする駆動スクリュー17の回転により、可動壁6を駆動して長手軸に沿って動かし、その結果、ベローズ7が長手軸に沿って伸縮する。
【0031】
アクチュエータ8は、減速ギアに連結されたモーター13を含み得る。コネクタ12は、モーターの動作順序に応じてモーター13に電力を供給することを可能にする。
【0032】
減速ギアは、それ自体が駆動スクリュー17に連結された歯付きホイール18に連結され、モーター13のシャフトのトルク及び回転を駆動スクリュー17に伝達する。そのため、駆動システムは、駆動スクリューに連結され、アクチュエータ8による駆動作用の効果の下でスクリューの軸を中心に二重作用スラスターボールベアリング上で回転可能なナットを含み、該ナットは、該ナットの回転によりスクリューが一意的に駆動されて可動部分の移動方向に平行移動するようにスクリューに連結されている。
【0033】
そして、スクリュー17の回転によりナットが駆動されて平行移動する。これは、可動壁6をスクリューの軸と平行な方向に、つまり、長手軸の方向に平行移動させる効果を有する。可動壁6の移動方向はモーター13の回転方向に依存する。
【0034】
歯付きホイール18は、ブロック15内での回転を可能にするボールベアリング16によってブロック15内に収容されている。
【0035】
制御ユニット
埋め込み型システムは、流体回路内の圧力設定点を受信し、受信した圧力設定点に対応するリザーバー容積5を決定するように構成された制御ユニット100を含むことができる。
【0036】
制御ユニットは、決定された体積に対応する位置にリザーバー5の可動壁6が移動するようにアクチュエータ8を制御するのにも適している。より具体的には、
図2に示す例では、制御ユニットは、リザーバー5の体積を増やすか又は減らすことが必要かどうかに応じて、電磁アクチュエータ8のモーターを一方向に又は他方向に動かす命令を発するのに適している。
【0037】
ケーシング
可変容量リザーバー5及びアクチュエータ8は、患者の体内に埋め込むことを目的とした密閉された生体適合性ケーシング1に組み込まれている。制御ユニット100(
図2に図示せず)もケーシング1に組み込むことができる。ケーシングはエネルギー源(図示せず)、例えば、制御ユニット、アクチュエータ及び電力を必要とする機器の他のコンポーネントに電力を供給するのに適した一次又は二次電池を包み込む。
【0038】
ケーシング1、とりわけ、リザーバー5を取り囲むケーシング1の内部容積11は、ガス、例えば不活性ガスを含む。
【0039】
ケーシング1はチタンで作ることができる。チタンは気密性及び生体適合性を有する材料であるため、ケーシング1に配置される要素、とりわけ、制御ユニット、電位センサー等の電子部品を外部環境から守るために用いることができる。
【0040】
ケーシング1は、体内環境との間で流体又はガスが移動しないように密閉されている。
【0041】
セット
セットは、上述した埋め込み型機器と、システムが埋め込まれている個人等が用いるのに適したリモコン装置とを含み得る。
【0042】
埋め込み型システム及びリモコン装置は、それらの間の通信に適した通信手段を含む。リモコン装置は、とりわけ、リモコン装置の通信手段によって埋め込み型機器の通信手段に送信される命令に基づいて、アクチュエータ8によるリザーバーの可動部分の動きを制御するのに適している。
【0043】
埋め込み型機器の通信手段はケーシング1に組み込むことができる。
【0044】
センサー
ケーシング1は、医療機器が埋め込まれている患者が位置する高度に関連する数値を測定するのに適した1つ以上のセンサー101、102及び/又は103を包み込む。
【0045】
特定の実施形態では、ケーシングは、アクチュエータ8及び/又は可変容積リザーバー5の可動壁6と機械的に接続されたセンサー101を含むことができる。当該センサーは、リザーバー5の可動部分の移動方向の圧縮力及び/又は引張力を測定するのに適し、ひずみゲージに基づくセンサー又は力を測定するための機構に連結された圧力センサーを含み得る。アクチュエータが非アクティブ(リザーバー内の流体の体積が一定)の場合、センサーによって測定された力の変動は、流体回路内の流体圧力の変動に変換される。
【0046】
特定の実施形態では、機器のケーシング内のガス圧及び大気圧を考慮した絶対圧力センサー102をケーシング1内及びリザーバーの外に配置できる。
【0047】
特定の実施形態では、大気圧センサー90は患者の体外のリモコン装置9の内部に配置できる。
【0048】
他の実施形態では、高度計103がケーシング1に含まれている。
【0049】
全ての場合、これらのセンサー(力、絶対圧及び大気圧センサー、高度計)からの測定データを患者の高度と関連付けることができる。例えば、アクチュエータが作動していない場合に、大気圧の変動を受けるケーシング内のガス圧とリザーバー内の流体圧との圧力差を測定することで、患者の高度値を特定することができる。
【0050】
各センサーからの測定データは制御ユニットに送信され、制御ユニットはそれらを処理し、膨張式要素内の流体の体積を減らす必要があるかどうかを判定するためにそれらを基準値と比較する。図を読み易くするために、センサーと制御ユニットとの接続は図示していない。これらの接続は有線又は無線であり得る。
【0051】
上記の実施形態は、例えば患者の高度を可能な限り確実に特定するために、異なるセンサーからの測定データを利用するように組み合わせることができる。
【0052】
そのため、例えば、制御ユニットは、ケーシング1に組み込まれた圧力センサー102及び/又は力センサー101からの測定データに基づいて高度値を特定し、特定された高度を患者の体外に配置されるリモコン装置9の大気圧センサー90からの測定データに基づいて確認できる。
【0053】
あるいは、患者の外にあるリモコン装置9のセンサー90による大気圧の測定値に基づいて高度値を特定し、その後、特定された高度をケーシングに組み込まれた圧力センサー102及び/又は力センサー101からの測定データに基づいて確認できる。
【0054】
制御ユニットは、高度に関する値と基準値との差を特定すると、流体回路内の圧力を調整するために医療機器を作動させることができる。そのため、高度に関する値が、流体回路内の圧力が高いことにより医療機器の動作にリスクが生じるようなものである場合、制御ユニットは、膨張式要素を開くためにアクチュエータを作動させ、膨張式要素からリザーバーに流体を移し、高度の値が機器の動作にとって許容可能であると考えられる値に戻るまでアクチュエータを非作動にすることができる。
【0055】
医療機器の不適切な形で非作動(例えば、患者が実際には検出された高度にいない場合又は患者が高度にとどまっている期間が短い場合)を回避するために、制御ユニットは、前で説明したように、第1のセンサーにより特定された高度を、第2のセンサーからの測定データを介して確認するように構成できる。あるいは又はそれに加えて、制御ユニットは、膨張式要素内の流体の体積の減らすよう命令する前に特定された高度が維持される所定の期間、例えば数分待つことができる。
【0056】
センサーによって行われる測定及び制御ユニットによって行われる処理は、継続的に行われるのではなく、電力を消費しすぎないように一定の間隔で行われることが好ましい。これらの間隔は、例えば、1~300分、好ましくは5~60分、より好ましくは5~15分である。
【0057】
患者の高度が上昇した場合
山歩き又は飛行機の機内等患者の高度が上がると、気圧が低下する。
【0058】
高度3000メートルより高くなると、アクチュエータが可変容量リザーバーの可動部分を動かして、膨張式要素が開くには流体回路内の流体圧が高くなりすぎる。
【0059】
そのような状況を回避するために、第1の基準値(
図3のグラフではA1で示す)よりも高い高度に患者がいることを制御ユニットが検出すると、制御ユニットはアクチュエータを制御して、リザーバーの容積を増やすことにより膨張式要素を開く。
【0060】
図3は、患者の高度Aが時間tにわたって変化する場合に、医療機器を制御するために考慮される基準値を概略的に示すグラフである。
【0061】
患者が高度A1を超えると、制御ユニットは、高度A1の通過と同時に起こるか又は少しの期間(例えば数分)後の時間t1でアクチュエータを作動させ、膨張式要素を開く(すなわち、少なくとも部分的に収縮させる)ためにリザーバーの容積を増やす。
【0062】
患者がA1より高い高度にとどまっている間、アクチュエータは、膨張式要素を開いたままにするために動作が停止される。
【0063】
第2の基準値A2は、制御ユニットが膨張式要素内に流体を移すために、アクチュエータを任意で再作動できる基準となる高度を有利に定義する。
【0064】
値A2は、患者がA1を中心に変動する高度に特定の期間とどまっている場合、制御ユニットが比較的短い期間に複数回アクチュエータを作動させ、動作を停止させる状況を回避するために、A1未満になるように選択されることが有利である。
【0065】
患者が高度A2に降りると、制御ユニットは、高度A2の通過と同時に起こるか又は少しの期間(例えば数分)後の時間t2でアクチュエータを作動させ、膨張式要素を少なくとも部分的に膨らませるためにリザーバーの容積を減らす。
【0066】
他の実施形態では、医療機器の正常な動作のためにアクチュエータを再作動させる権限を単独で与えられた医師を患者が訪問するまで、制御ユニットはアクチュエータの動作を停止させること場合を想定できる。
【0067】
患者が水中にいる場合
患者が海水位又は別の水面の下にいる場合、水深10メートル毎に1バールのオーダーで増加する圧力を受ける。前述の説明との整合性のために、深さは海面又は考えられる水面よりも下の負の高度と見なされる。したがって、常に高度が参照され、その高度が低いほど浸水の深さが大きくなる。
【0068】
この状況では、流体回路の過圧により医療機器が損傷する可能性がある。
【0069】
図4は、水中にいる患者の高度Aが時間tにわたって変化する場合に、医療機器を制御するために考慮される基準値を概略的に示すグラフである。
【0070】
患者が高度A3より下に下降すると、制御ユニットは、高度A3の通過と同時に起こるか又は少しの期間(例えば数分)後の時間t3でアクチュエータを作動させ、膨張式要素を開く(すなわち、少なくとも部分的に収縮させる)ためにリザーバーの容積を増やす。
【0071】
患者がA3よりも低い高度にとどまっている間、アクチュエータは、膨張式要素を開いたままにするために動作を停止する。
【0072】
第2の基準値A4は、制御ユニットが膨張式要素内に流体を移すために、アクチュエータを任意で再作動できる基準となる高度を有利に定義する。
【0073】
値A4は、患者がA3を中心に変動する高度に特定の期間とどまっている場合、制御ユニットが比較的短い期間に複数回アクチュエータを作動させ、動作を停止させる状況を回避するために、A3より大きくなるように選択されることが有利である。
【0074】
患者が高度A4に戻って上昇した場合、制御ユニットは、高度A4の通過と同時に起こるか又は少しの期間(例えば数分)後の時間t4でアクチュエータを作動させ、膨張式要素を少なくとも部分的に膨らませるためにリザーバーの容積を減らす。
【0075】
他の実施形態では、医療機器の正常な動作のためにアクチュエータを再作動させる権限を単独で与えられた医師を患者が訪問するまで、制御ユニットはアクチュエータの動作を停止させること場合を想定できる。
【国際調査報告】