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特表2023-553933モノリス形態にある触媒の存在中でアセチレンを含んでいるC2フラクションの選択的水素化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】モノリス形態にある触媒の存在中でアセチレンを含んでいるC2フラクションの選択的水素化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20231219BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20231219BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20231219BHJP
   C07C 5/09 20060101ALI20231219BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
B01J35/04 301Z
B01J23/44 M
C07C11/04
C07C5/09
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535330
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2021083464
(87)【国際公開番号】W WO2022122459
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2013013
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】アラン フロラン
(72)【発明者】
【氏名】アルーン ヤシン
(72)【発明者】
【氏名】セルヴェル マリオン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA03A
4G169BA05A
4G169BA06A
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BA17
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB14A
4G169BC65A
4G169BC68A
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169CB04
4G169DA06
4G169EA19
4G169EB12X
4G169EB12Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EC01X
4G169EC01Y
4G169EE06
4G169FA06
4G169FB23
4G169FC08
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC11
4H006BA25
4H006BA55
4H006BE20
4H039CA19
4H039CB10
(57)【要約】
開示されているのは、少なくとも1種のVIII族金属から作られた活性相と、セラミックまたは金属のモノリスの形態にある担体とを含んでいる触媒の存在中での、アセチレンを含んでいるC2水蒸気分解フラクションの選択的水素化のための方法であって、担体は、単位長さ当たりの多数のチャネルCPSI300から1200を含む点、および活性相は、担体の壁上の層の形態にあり、活性相の層の厚さは、30μm~150μmである点で特徴付けられる、方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチレンを含んでいるC2水蒸気分解フラクションの選択的水素化のための方法であって、気相中、触媒の存在中で行い、その際の温度は、0℃~300℃であり、その際の圧力は、0.1MPa~6.0MPaであり、その際の水素/(水素化対象のポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000であり、その際の毎時空間速度は、100h-1~60000h-1であり、触媒は、少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする活性相と、セラミックまたは金属のモノリスの形態で提供される担体とを含んでおり、前記担体は、単位長さ当たり多数のチャネル(CPSI):300~1200を含むこと、および活性相は、前記担体の壁上の層の形態で提供され、活性相の前記層の厚さは、30μm~150μmであることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記触媒が含む幾何学的表面積は、1500m2/m~5000m2/mである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒の壁の厚さは、0.08mm~0.5mmである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒の多孔性度は、20%~90%である、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
活性相の前記層の厚さは、60μm~100μmである、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
担体は、アルミナ(Al)、シリカ-アルミナ、炭化ケイ素(SiC)、リン-アルミナ、マグネシア(MgO)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ZrO)またはコーディエライト(AlMgAlSi18)から作られたモノリスから選ばれるセラミックモノリスである、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記第VIII族金属を、ニッケル、白金、およびパラジウムから選ぶ、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記第VIII族金属は、パラジウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
パラジウム含有率は、触媒の全重量に対する前記元素の重量で0.005重量%~2重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記担体の単位長さ当たりのチャネルの数は、400~700である、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、セラミックまたは金属のモノリスの形態で提供された触媒の存在中での、炭化水素供給原料中、より具体的には、C2水蒸気分解フラクション中のポリ不飽和化合物の選択的水素化のための方法にある。
【背景技術】
【0002】
モノリス担体には多数の種類があり、種々の技術を用いて開発・製造されている。モノリス担体は、セラミック材料、例えば、アルミナまたは炭化ケイ素またはジルコニウムまたはコーディエライトから作られ得る。金属材料によるモノリス担体もあり、これらは、例えば、鋼、ステンレス鋼、および多くの他のタイプの金属から作られる。
【0003】
モノリス担体を製造する種々の方法がある。製造技術は、当業者に周知であり、Forzattiらによる論文(非特許文献1)、あるいはまたAvilaらによる論文(非特許文献2)、または、最後に、Sandeeranらによる論文(非特許文献3)中に見出され得る。
【0004】
セラミックおよび金属のモノリスは、さまざまな幾何学的形状やサイズをとることができる。それらは、薄い壁によって互いに分離された平行なチャネルからなる。これらのチャネルは、種々の断面形状を有することができる:長方形、円筒形、三角形、六角形、および多くの他のより複雑な形状。
【0005】
(セラミックまたは金属の)モノリス担体は、一般に、チャネルの密度およびサイズ、より具体的には、単位長さ当たりのチャネルの数(これはCPSI(「channels per square inch」)と呼ばれる)によって特徴付けられる。その略語が指し示しているように、それは、1×1インチ、すなわち、2.54×2.54cmの断面によってはさみ取られるチャネルの数に対応する。モノリスは、それらの壁の厚さ、または、チャネルの断面が長方形または正方形である場合にはチャネル窓の幅に、あるいはほかに、それらの多孔度よって特徴付けられてもよい。多孔度は、以下の式によって計算され得る:
【0006】
【数1】
【0007】
式中、
ε:モノリスの多孔度または空げき率;
ρm:モノリスの密度;
ρmat: モノリスの材料の密度。
【0008】
金属またはセラミックのモノリスは、さまざまな触媒用途、特に排気ガスの処理(特許文献1および2)においてまたはNO還元触媒(Tomasic, V. 2007)として、あるいはほかに、ポリ不飽和化合物を含んでいる炭化水素供給原料の選択的水素化において用いられ得る。
【0009】
総説論文(非特許文献4)では、1,3-ブタジエンの選択的水素化のための金属のモノリスまたは発泡体の形態にある触媒担体の使用に焦点が当てられている。この文献には、NiPd/(CeO-Al)活性相によりコートされた発泡体またはモノリスから作られた担体の使用は、転化の点および1,3-ブタジエンの選択的水素化における選択性の点で良好な結果を与えることが開示されている。モノリスの形態にある担体を有している触媒が有する活性相の層厚は、18μmまたは20μmである。
【0010】
論文(非特許文献5)では、アセチレンの選択的水素化のためのα-アルミナセラミックモノリスの形態にある触媒担体の使用に焦点が当てられている。この文献には、モノリスの壁上にPdClを直接的に含浸させられたモノリス担体の使用が開示され、パラジウムに基づいて得られた活性相が有してる厚さは、200μmである。
【0011】
これに関連して、本発明の目的の1つは、活性相を担持する金属またはセラミックのモノリスの形態で提供される触媒の存在中での、C2水蒸気分解フラクションの選択的水素化のための方法を提供することにあり、これにより、選択性の点で、最先端技術から知られている方法のものと少なくとも同等、またはそれよりも優れた水素化性能品質を得ることが可能となる。
【0012】
本出願人は、少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする活性相と、特定の幾何学的構造を有しているセラミックまたは金属のモノリスの形態で提供される担体とを含んでいる触媒であって、前記活性相は、前記担体の壁上の規定された厚さの層の形態で提供される、触媒により、選択性の点で、アセチレンを含有しているC2水蒸気分解フラクションの選択的水素化のための方法において使用された場合に、少なくとも同等に良好な、さらには改善された触媒性能品質を得ること、供給原料にとって利用可能な触媒容積を(同一の転化率でも)低減させながら、圧力降下を制限しながらそのようにすることが可能となることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3441381号明細書(1969)
【特許文献2】米国特許第35971653号明細書(1971)
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Forzattiら著、“Preparation and characterization of extruded monolithic ceramic catalysts”、CatalysisToday、1998年、第41巻、p.87-94
【非特許文献2】Avilaら著、“Monolithic reactors for environmental applications: A review on preparation technologies”、Chem.Eng.J、2005年、第109巻、p.11-36
【非特許文献3】Sandeeranら著、“Preparation Methods and Their Relevance to Oxidation”、Catalysts、2017年、第7巻、p.62
【非特許文献4】F. J. Mendezaら著、“Selective hydrogenation of 1,3-butadiene in the presence of 1-butene under liquid phase conditions using structured catalysts”、CatalysisToday、第289号、2017年、p.151-161
【非特許文献5】Aspludら著、“Catalyst deactivation in liquid- and gas-phase hydrogenation acetylene using a monolithic catalyst reactor”、出版元Catalysis Today、第24巻、p。181-187、1995年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の主題)
本発明の主題は、アセチレンを含んでいるC2水蒸気分解フラクションの選択的水素化のための方法にあり、前記方法は、触媒の存在中、気相で行われ、その際の温度は、0℃~300℃であり、その際の圧力は、0.1MPa~6.0MPaであり、その際の水素/(水素化対象のポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000であり、その際の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、100h-1~60000h-1、好ましくは500h-1~30000h-1であり、触媒は、少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする活性相と、セラミックまたは金属のモノリスの形態で提供される担体とを含んでおり、好ましくは、それらからなり、前記担体は、単位長さ当たり多数のチャネル(CPSI):300~1200を含む点、および活性相は、前記担体の壁上の層の形態で提供され、活性相の前記層の厚さは、30μm~150μmである点で特徴付けられる。
【0016】
その理由は、本出願人が、セラミックまたは金属のモノリスの形態にある担体を特徴とし、前記担体は、単位長さ当たり特定数のチャネルを含んでおり、担体の壁上の活性相の層の特定の厚さと結び付けられるそのような触媒の開発により、同一の転化率につき、アセチレンを含んでいるC2水蒸気分解フラクションについての選択的水素化反応を行うのに要求される触媒床の容積を低減させる一方で、望みの生成物のための反応の選択性を大幅に改善することが可能となることを観察したことにある。
【0017】
好ましくは、前記触媒が含む幾何学的表面積は、1500m2/m~5000m2/mである。
【0018】
好ましくは、触媒の壁の厚さは、0.08mm~0.5mmである。
【0019】
好ましくは、前記触媒の多孔性度は、20%~90%である。
【0020】
好ましくは、活性相の前記層の厚さは、60μm~100μmである。
【0021】
本発明による1つの実施形態において、担体は、鋼、ステンレス鋼(316L、310SS)、ニッケル、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル-クロム、ニッケル-クロム-アルミニウム、鉄-クロム-アルミニウム、およびインコネル(Inconel(登録商標))から作られたモノリスから選ばれる金属モノリスである。
【0022】
本発明による1つの実施形態において、担体は、アルミナ(Al)、シリカ-アルミナ、炭化ケイ素(SiC)、リン-アルミナ、マグネシア(MgO)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ZrO)、およびコーディエライト(AlMgAlSi18)から作られるモノリスから選ばれるセラミックモノリスである。
【0023】
好ましくは、前記第VIII族金属は、ニッケル、白金、およびパラジウムから選ばれる。より優先的には、前記第VIII族金属は、パラジウムである。
【0024】
本発明による1つの実施形態において、第VIII族金属がパラジウムである場合、パラジウム含有率は、触媒の全重量に対する前記元素の重量で0.005重量%~2重量%である。
【0025】
好ましくは、前記担体の単位長さ当たりのチャネル数(CPSI)は、400~700である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(詳細な説明)
(定義)
以下の本文において、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列の金属に対応する。
【0027】
以下に記載する担体および触媒の組織特性および構造特性は、当業者に知られている特徴付け方法によって決定される。全細孔容積および細孔分布は、本発明では、F. Rouquerol、J. RouquerolおよびK. Singによって記述された研究“Adsorption by Powders and Porous Solids. Principles, Methodology and Applications”、Academic Press、1999において記載されているような窒素ポロシメトリによって決定される。
【0028】
用語「比表面積」は、機関誌“The Journal of the American Chemical Society”, 1938, 60, 309に記載されたBrunauer-Emmett-Teller法から確立された規格ASTM D 3663-78に従う窒素吸着によって決定されるBET比表面積(SBET(m/g))を意味するように理解される。
【0029】
本明細書において、モノリス担体(セラミックまたは金属)は、単位長さ当たりのチャネルの数(CPSI)によって特徴付けられる。このようなモノリス担体を含んでいる触媒のCPSIの値は、触媒の活性相の層の厚さがどうであれ変わらないことが留意されるべきである。
【0030】
第VIII族金属の含有率は、蛍光X線によって測定される。
【0031】
(方法の説明)
モノ不飽和有機化合物、例えば、エチレン等は、ポリマー、プラスチックおよび付加価値を有している他の化学物質の製造の根幹をなしている。これらの化合物は、天然ガス、ナフサまたはガスオイルであって、水蒸気分解または接触分解の方法によって処理されたものから得られる。これらの方法は、高温で操作されるため、望みのモノ不飽和化合物だけではなく、ポリ不飽和有機化合物、例えば、アセチレン、またはジオレフィンの化合物も生じさせる。これらのポリ不飽和化合物は、高度に活性であり、ポリマー化ユニットにおいて副反応をもたらす。そのため、これらのフラクションの経済的な使用をなす前にそれらを取り除くことが必要である。選択的水素化は、これらの炭化水素供給原料から不要なポリ不飽和化合物を特定的に取り除くように開発された主要な処理である。それにより、ポリ不飽和化合物の完全の飽和、それ故に、対応するアルカンの形成を回避しながらポリ不飽和化合物の対応するアルケンへの転化が可能となる。
【0032】
本発明は、したがって、アセチレンを含んでいるC2水蒸気分解フラクションの選択的水素化のための方法を提供し、前記方法は、触媒の存在中、気相で行われ、その際の温度は、0℃~300℃であり、その際の圧力は、0.1MPa~6.0MPaであり、その際の水素/(水素化対象のポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000であり、その際の毎時空間速度(HSV)は、100h-1~60000h-1、好ましくは500h-1~50000h-1であり、触媒は、少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする活性相と、セラミックまたは金属のモノリスの形態で提供される担体とを含んでおり、好ましくはそれらからなり、前記担体は、単位長さ当たりの多数のチャネル(CPSI):300~1200を含んでおり、活性相は、前記担体の壁上の層の形態で提供され、活性相の前記層の厚さは、30μm~150μmである。
【0033】
C2水蒸気分解フラクション中のアセチレンの含有率は、供給原料の全重量に対して、アセチレンの重量で有利には0.1重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~2.5重量%である。本発明による選択的水素化法の実施のために用いられるC2水蒸気分解フラクションは、例えば、以下の組成を含む:40重量%~95重量%のエチレンおよび0.1重量%~5重量%のアセチレン、残部エタンおよび/またはメタン。一部のC2水蒸気分解フラクションには、0.1重量%~1重量%のC3化合物も存在する場合がある。
【0034】
本発明による選択的水素化法は、モノ不飽和炭化水素、すなわち、エチレンの水素化を伴わずに、水素化のための前記供給原料からアセチレンを取り除くことに狙いを定められる。選択的水素化法の技術的実施は、例えば、上向流または下降流の様式での、ポリ不飽和炭化水素供給原料および水素の少なくとも1基の固定床反応器への注入によって行われる。前記反応器は、等温タイプまたは断熱タイプのものであり得る。断熱反応器が好適である。ポリ不飽和炭化水素供給原料は、有利には、選択的水素化反応が行われる前記反応器から生じた流出物の、反応器の入口および出口の間に位置する反応器の1または複数の点のところにおける1回または複数回の再注入によって希釈され、反応器中の温度勾配を制限することができる。本発明による選択的水素化法の技術的実施は、有利には、反応蒸留塔または反応器-交換器またはスラリータイプ反応器中の前記触媒の埋め込みによっても行われ得る。水素の流れは、水素化されるべき供給原料と同時におよび/または反応器の1個または複数個の異なる点のところで導入され得る。
【0035】
C2水蒸気分解フラクションの選択的水素化は、気相で行われる。一般的に言えば、C2水蒸気分解フラクションの選択的水素化が行われる際の温度は、0℃~300℃、好ましくは15℃~280℃であり、その際の圧力は、0.1MPa~6.0MPa、好ましくは0.2MPa~5.0MPaであり、その際の水素/(水素化対象のポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000、好ましくは0.7~800であり、その際の毎時空間速度(HSV)は、100h-1~60000h-1、好ましくは500h-1~50000h-1である。
【0036】
(触媒の説明)
選択的水素化のための方法内で用いられる触媒は、少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする活性相と、セラミックまたは金属のモノリスの形態で提供される担体とを含み、好ましくは、それらからなり、前記担体は、単位長さ当たりの多数のチャネル(CPSI)300~1200を含む点、および活性相は、前記担体の壁上の層の形態で提供され、活性相の前記層の厚さは、30μm~150μmである点で特徴付けられる。
【0037】
好ましくは、前記担体の単位長さ当たりのチャネルの数(CPSI)は、300~1200、好ましくは350~1000、より好ましくは400~700、よりなおさら好ましくは450~750である。
【0038】
好ましくは、前記触媒の幾何学的表面積は、1500m2/m~5000m2/m、好ましくは1500m2/m~4000m2/m、よりなおさら好ましくは2000m2/m~4000m2/mである。
【0039】
好ましくは、触媒の壁の厚さは、0.08mm~0.5mm、より好ましくは0.1mm~0.4mmである。
【0040】
好ましくは、前記触媒の多孔性度は、15%~90%、好ましくは20%~90%、より好ましくは20%~70%である。
【0041】
好ましくは、活性相の前記層の厚さは、60μm~100μm、よりなおさら好ましくは60μm~90μmである。
【0042】
触媒の担体が金属モノリスの形態で提供される場合、前記モノリスは、好ましくは、鋼、ステンレス鋼(316L、310SS)、ニッケル、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル-クロム、ニッケル-クロム-アルミニウム、鉄-クロム-アルミニウム、およびインコネル(登録商標)から作られたモノリスから選ばれる。
【0043】
触媒の担体がセラミックモノリスの形態で提供される場合、前記モノリスは、好ましくは、アルミナ(Al)、シリカ-アルミナ、炭化ケイ素(SiC)、リン-アルミナ、マグネシア(MgO)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ZrO)、およびコーディエライト(AlMgAlSi18)から作られたモノリスから選ばれる。好ましくは、前記セラミックモノリスは、アルミナ(Al)、シリカ-アルミナ、リン-アルミナまたは炭化ケイ素(SiC)から作られる。
【0044】
活性相の第VIII族金属は、好ましくは、ニッケル、白金、およびパラジウムから選ばれる。好ましくは、第VIII族金属は、パラジウムである。
【0045】
第VIII族金属がパラジウムである場合、パラジウム含有率は、触媒の全重量に対する前記元素の重量で一般的に0.005重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~2重量%、より優先的には0.05重量%~1重量%である。
【0046】
触媒は、活性相として、第IB族からの元素をさらに含むことができ、好ましくは、銀および銅から選ばれる。好ましくは、第IB族からの元素は、銀である。第IB族からの元素の含有率は、好ましくは、触媒の全重量に対して0.01重量%~0.3重量%、より好ましくは0.015重量%~0.2重量%である。
【0047】
モノリスの形態で提供される担体上の触媒の活性相の堆積は、当業者に周知である従来の方法によって行われ得、ウォッシュコーティングによって特に行われる。この含浸技術は、セラミックまたは金属のモノリスの形態にある担体を、望みの活性相(1または複数)の前駆体塩(1種または複数種)を含有している溶液中に完全に浸漬し、次いで、前記含浸済みモノリスを、再度、取り出し、続けて、空気(好ましくは空気の流れ)下に乾燥させることによって行われる。操作は、数回繰り返され得る。触媒の前駆体が一般的に乾燥させられる際の温度は、50℃~550℃、より好ましくは70℃~200℃である。乾燥の継続期間は、一般的に0.5時間~20時間である。この調製ルートは、担体の壁上に活性相の層を得るように行われ、前記層の厚さは、30μm~150μm、優先的には60μm~100μm、よりなおさら優先的には60μm~90μmである。
【0048】
(触媒の使用)
本発明による1つの実施形態において、触媒は、選択的水素化反応器中の触媒床において、立方体または平行六面体の形状の要素が互いに積み重なったブロックの形態で用いられ得る。反応器の壁のところで、モノリス担体と触媒ブロックは、反応器の形状に効果的に適合するように丸い形状を有していてもよい。
【0049】
本発明による方法に関連して用いられる選択的水素化反応器は、上記の触媒を充填された複数本の管を備えることができる。管は、円形、正方形または長方形の断面を有することができる。管の壁は、多孔性または非多孔性であり得る。管間の最大間隔は、0~100mm、優先的には0~20mmである。この実施形態によると、反応セクションの高さは、互いに接続された複数本の管から構成され得る。
【0050】
本発明による方法との関連において用いられる選択的水素化反応器は、反応器-交換器タイプのものであり得る。反応器-交換器には、上記の触媒が充填された多数本の管が装備されている。管は、円形、正方形または長方形の断面を有することができる。伝熱流体は、管の間を循環して、発熱の選択的水素化反応によって生じた熱を放散する。伝熱流体の流れの方向は、管中の供給原料の流れと同一の方向にあっても管中の供給原料の流れに対して反対の方向にあってもよい。向流方向は、依然として好適な実施形態である。伝熱流体は、液体であっても凝縮する蒸気であってもよい。
【0051】
(実施例)
本発明のいくつかの利点を例証するために、アセチレンの選択的水素化において、以下を用いて結果を比較することを提案する:
- 触媒A(非準拠):アルミナ担体(SBET=10m2/g)上のパラジウムをベースとする触媒;担体を径が3.8mmであるビーズの形態で提供し、パラジウム含有率は、触媒の全重量に対するPd元素の重量で800重量ppmである;
- 触媒B(非準拠):セラミックモノリスの形態にあるが、本発明に準拠していない幾何学的特徴を有している担体上のパラジウムをベースとする触媒(以下の表1を参照のこと);
- 触媒C(準拠):本発明に準拠するモノリスの形態で提供される担体上のパラジウムをベースとする触媒(以下の表1を参照のこと);
- 触媒D(非準拠):セラミックモノリスの形態にあるが、本発明に準拠していない幾何学的特徴を有している担体上のパラジウムをベースとする触媒(以下の表1を参照のこと);
- 触媒E(非準拠):セラミックモノリスの形態にあるが、本発明に準拠していない幾何学的特徴および活性層の厚さを有している担体上のパラジウムをベースとする触媒(以下の表1を参照のこと)。
【0052】
触媒B~Eについて、パラジウム活性相を、ウォッシュコーティング技術によって、望みの濃度で堆積させて、最終触媒上で、以下のパラジウム元素の含有率を得た:触媒の全重量に対する重量でB:0.028%Pd、C:0.042%Pd、D:0.054%Pd、およびE:0.015%Pd。
【0053】
【表1】
【0054】
考慮される操作条件を表2に与える。それらは、調査された5つのケースで同一である。
【0055】
【表2】
【0056】
結果を下記表3に与える。これらの結果の全てについて、径1mの反応器を用いる。
【0057】
【表3】
【0058】
触媒の全ては、アセチレンの転化率99%超を有し、反応器出口のところのアセチレン含有率は、1ppmであるか、さらには、本発明に準拠していない触媒B(1.3ppm)および本発明に準拠していない触媒E(14ppm)について1ppm超であることが分かる。この転化率が反応器容積における低減により達成されるのは、当該方法が、ビーズの形態で提供される担体を有している触媒A(非準拠)の存在中での方法と関連して、触媒C(準拠)およびD(非準拠)の存在中で行われる場合である。本発明による触媒Cの使用により、非準拠触媒AおよびBとの関連において等しく30容積%の反応器容積における低減および圧力降下に関する利得も可能となる。同じ転化率で、反応器の全容積が低減させられ得る。同様に留意されるのは、本発明による方法上の担体のチャネル密度(CPSI)の選択の影響である。その理由は、本発明に準拠していない触媒BおよびDは、モノリスの形態で提供されているものの、触媒Bについての反応器出口におけるアセチレン含有率(反応器がより高い触媒容積を有しているのに反して)および触媒Dについての圧力降下(選択性の観点からはわずか)の両方の点で平凡な結果を有しているからである。最後に、非準拠の触媒Eは、本発明による触媒Cよりも高い選択性を示すものの、より低い転化率を有し(それ故に、反応器出口のところのあまりに高いアセチレン含有率)、圧力降下が大きくなるが、これは、それぞれ、過剰なチャネル密度および低い活性相の層の厚さによるものである。したがって、アセチレン選択性、圧力降下、および触媒の反応容積の間のトレードオフを可能にするのは、本発明による触媒Cのみである。
【国際調査報告】