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特表2023-553934ヒトIL-10Ra受容体を活性化するためのイムノサイトカインおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ヒトIL-10Ra受容体を活性化するためのイムノサイトカインおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/24 20060101AFI20231219BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231219BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231219BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C12N15/24
C07K14/54 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/00 K
A61K38/20
A61P37/04
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K39/395 U
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535331
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 RU2021050432
(87)【国際公開番号】W WO2022124950
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2020140807
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516261966
【氏名又は名称】ジョイント・ストック・カンパニー “バイオキャド”
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】コノノフ,アレクセイ・ウラディミロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】エウドキモウスカイア,イウリーア・ビクトロウナ
(72)【発明者】
【氏名】スミルノワ,イアナ・アンドリーウナ
(72)【発明者】
【氏名】エウドキモウ・スタニスラウ・ルドルフォビッチ
(72)【発明者】
【氏名】コロソワ,エレナ・セルジーウナ
(72)【発明者】
【氏名】アギーフ,セルゲイ・アンドリービッチ
(72)【発明者】
【氏名】チムピロウ,ウラドミール・セルギービッチ
(72)【発明者】
【氏名】ソロウィエフ,ワレリ-・ウラディミロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】イアコフレフ,パベル・アンドリービッチ
(72)【発明者】
【氏名】モロゾフ,ドミトリー・バレンチノビッチ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG02
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC15
4B065BA01
4B065BC01
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA06
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084DA12
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA02
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、生物工学および医薬の分野、特にヒトIL-10Rα受容体を活性化するためのイムノサイトカインに関する。本発明はさらに、前記イムノサイトカインをコードする核酸、発現ベクター、宿主細胞およびそれを生産するための方法、イムノサイトカインを生産するための方法、上記イムノサイトカインを含む医薬組成物、上記イムノサイトカインと他の治療的に活性な化合物とを含む医薬組成物、腫瘍性疾患を処置するための方法、ならびに腫瘍性疾患を処置するためのイムノサイトカインまたはその医薬組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくホモ二量体複合体を含み、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく単量体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための単離されたイムノサイトカイン。
【請求項2】
請求項1に記載のイムノサイトカインをコードする単離された核酸。
【請求項3】
DNAである、請求項2に記載の単離された核酸。
【請求項4】
配列番号3を有するヌクレオチド配列を含む、請求項2に記載の単離された核酸。
【請求項5】
配列番号4を有するヌクレオチド配列を含む、請求項2に記載の単離された核酸。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項7】
請求項1に記載のイムノサイトカインを生産するための宿主細胞を生産するための方法であって、請求項6に記載のベクターでの細胞の形質転換を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載のイムノサイトカインを生産するための宿主細胞であって、請求項2から5のいずれかに記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項9】
請求項1に記載のイムノサイトカインを生産するための方法であって、前記イムノサイトカインを生産するのに十分な条件下で、請求項8に記載の宿主細胞を培養培地中で培養するステップ、必要に応じて、それに続いて、得られたイムノサイトカインを単離および精製するステップを含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載のイムノサイトカインおよび1種または複数の医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
腫瘍性疾患を処置するための、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
腫瘍性疾患が、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のイムノサイトカインと、少なくとも1種の他の治療的に活性な化合物とを含む、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための医薬組成物。
【請求項15】
腫瘍性疾患を処置するための、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
腫瘍性疾患が、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
他の治療的に活性な化合物が、抗体、化学療法剤またはホルモン療法剤である、請求項14から15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
他の治療的に活性な化合物が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項14から15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1に特異的に結合する抗体、PD-L1に特異的に結合する抗体またはCTLA-4に特異的に結合する抗体から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
PD-1に特異的に結合する抗体が、プロルゴリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブを含む群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
CTLA-4に特異的に結合する抗体が、イピリムマブである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
PD-L1に特異的に結合する抗体が、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、マネリマブを含む群から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項23】
請求項1に記載のイムノサイトカインまたは請求項10、14のいずれかに記載の医薬組成物を、治療有効量で、このような処置が必要な対象に投与するステップを含む、腫瘍性疾患を処置する方法。
【請求項24】
腫瘍性疾患が、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される、請求項23に記載の処置する方法。
【請求項25】
ヒトIL-10Rα受容体の活性化が必要な対象において、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための方法であって、有効量の請求項1に記載のイムノサイトカインまたは請求項10、14のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項26】
腫瘍性疾患の処置が必要な対象における、腫瘍性疾患を処置するための、請求項1に記載のイムノサイトカインまたは請求項10、14のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
腫瘍性疾患が、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
腫瘍性疾患の処置が必要な対象における、腫瘍性疾患の処置のための、請求項1に記載のイムノサイトカインまたは少なくとも1種の他の治療的に活性な化合物の使用。
【請求項29】
腫瘍性疾患が、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
他の治療的に活性な化合物が、抗体、化学療法剤またはホルモン療法剤である、請求項28から29のいずれかに記載の使用。
【請求項31】
他の治療的に活性な化合物が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項28から29のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1に特異的に結合する抗体、PD-L1に特異的に結合する抗体またはCTLA-4に特異的に結合する抗体から選択される、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
PD-1に特異的に結合する抗体が、プロルゴリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブを含む群から選択される、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
CTLA-4に特異的に結合する抗体が、イピリムマブである、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
PD-L1に特異的に結合する抗体が、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、マネリマブを含む群から選択される、請求項32に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物工学および薬の分野に関し、特に、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するためのイムノサイトカインに関する。本発明はさらに、前記イムノサイトカインをコードする核酸、発現ベクター、宿主細胞およびそれを生産するための方法、イムノサイトカインを生産するための方法、上記のイムノサイトカインを含む医薬組成物、上記のイムノサイトカインと他の治療的に活性な化合物とを含む医薬組成物、腫瘍性疾患を処置するための方法、ならびに腫瘍性疾患を処置するためのイムノサイトカインまたはその医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン10(またはIL-10)は、サイトカインであり、近頃まで抗炎症性サイトカインとみなされていた。これは、およそ37~39kDaの分子量を有するホモ二量体である。ヒトインターロイキン10(human and interleukin 10)は、マウスのインターロイキン10と、約80%の高い相同性を有する。
【0003】
IL-10は、血管新生、転移を妨げることができ、直接的な抗腫瘍作用を有する(Martin Oft、IL-10:Master Switch from Tumor-Promoting Inflammation to Antitumor Immunity,Cancer Immunology at the Crossroads:Experimental Immunotherapies、2014年3月、第2巻、第3号、10.1158/2326-6066.CIR-13-0214)。
【0004】
IL-10の可能性がある抗腫瘍作用の1つは、PD-1を発現するCD8リンパ球へのその活性化作用であることが示されている。IL-10は強力な抗アポトーシス細胞内カスケードを引き起こし、このことが、腫瘍微小環境における細胞傷害性リンパ球の生存に寄与する(Martin Oft、Immune regulation and cytotoxic T cell activation of IL-10 agonists-Preclinical and clinical experience、Seminars in Immunology、第44巻、2019年8月、DOI:10.1016/j.smim.2019.101325)。
【0005】
IL-10は、およそ37~39kDaのその小さいサイズのために、短い血漿内半減期を特徴とし、結果として迅速な腎クリアランスが生じる;実際に、全身区画におけるその半減期は2.5時間である(Braat H.ら、Interleukin-10-based therapy for inflammatory bowel disease、Expert Opin.Biol.Ther.3(5)、2003、725~731頁)。このサイトカインのペグ化が、血流中の保持時間、曝露、効能を増加させるため、および腎臓での吸収を低減させるために、一部の著者によって採用されてきた(Mattos A.ら、PEGylation of interleukin-10 improves the pharmacokinetic profile and enhances the antifibrotic effectivity in CCl-induced fibrogenesis in mice、J. Control Release 162、2012、84~91頁およびMumm J.B.ら、IL-10 elicits IFNγ-dependent tumor immune surveillance、Cancer Cell 20(6)、2011、781~796頁)。しかしながら、ペグ化の不利益としては、免疫原性などの起こり得るリスク、ペグ化した分子の生物学的活性の減少、およびペグ化の不均質性を挙げることができ、この事実により、異なる特性(サイズ、電荷など)を有する治療的分子が生産されたり、治療的分子を取り囲む親水性コーティングが形成されたりする可能性がある。さらに、このアプローチは、血流中の製剤の半減期を24時間まで延長することができる。
【0006】
血漿中のIL-10の半減期を延長するための別の方法は、炎症を起こしている組織へのサイトカインの指向性の輸送およびそこでのサイトカインの蓄積のために、抗体またはそれらの断片およびIL-10を含む融合タンパク質を使用することである。
【0007】
先行技術は、IL-10およびFc断片に基づくイムノサイトカインを記載した論文(Zheng,X.X.ら、A noncytolytic IL-10/Fc fusion protein prevents diabetes,blocks autoimmunity,and promotes suppressor phenomena in NOD mice.J.Immunol.1997、158、4507~4513、およびZheng,X.X.ら、Administration of noncytolytic IL-10/Fc in murine models of lipopolysaccharide-induced septic shock and allogeneic islet transplantation.J.Immunol.1995、154、5590~5600)を提供する。
【0008】
国際出願WO2012045334およびWO2014023673はさらに、IL-10およびFc断片に基づくヘテロ二量体複合体を含む融合タンパク質を提供する。
国際出願WO2015117930は、IgGクラス抗体および突然変異IL-10分子を含む融合タンパク質を提供し、融合タンパク質は、2つの同一な重鎖ポリペプチドおよび2つの同一な軽鎖ポリペプチドを含み、突然変異IL-10分子は、野生型IL-10分子と比較して突然変異IL-10分子のIL-10受容体への結合親和性を低減させるアミノ酸置換を含む。
【0009】
上記のIL-10およびFc断片に基づく融合タンパク質(イムノサイトカイン)は、血清プロテアーゼによって分解しやすいために、共通の不利益を有し、特に、血液中での不十分な安定性という不利益を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のことと関連して、IL-10と比較して血漿中で延長された半減期を示し、血清プロテアーゼ分解に対する耐性によって安定であると予想される、IL-10およびFc断片に基づく融合タンパク質(イムノサイトカイン)を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らによって見出された通り、本発明において提供されるIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくホモ二量体複合体を含むイムノサイトカインは、IL-10の血漿内半減期と比較して延長された血漿内半減期を有し、それらの固有な構造に起因する血清プロテアーゼ分解に対する耐性のために安定である。
【0012】
一態様において、本発明は、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくホモ二量体複合体を含む、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するためのイムノサイトカインであって、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく単量体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、イムノサイトカインに関する。
【0013】
一態様において、本発明は、上記イムノサイトカインをコードする単離された核酸に関する。
一部の実施形態において、単離された核酸は、DNAである。
【0014】
一部の実施形態において、単離された核酸は、配列番号3を有するヌクレオチド配列を含む。
一部の実施形態において、単離された核酸は、配列番号4を有するヌクレオチド配列を含む。
【0015】
一態様において、本発明は、上記核酸のいずれかを含む発現ベクターに関する。
一態様において、本発明は、上記ベクターでの細胞の形質転換を含む、本発明の上記イムノサイトカインを生産するための宿主細胞を生産するための方法に関する。
【0016】
一態様において、本発明は、上記核酸のいずれかを含む、本発明の上記イムノサイトカインを生産するための宿主細胞に関する。
一態様において、本発明は、本発明の上記イムノサイトカインを含む配合物を調製するための方法であって、前記イムノサイトカインを生産するのに十分な条件下で、上記宿主細胞を培養培地中で培養するステップ、必要に応じて、それに続いて、得られた本発明のイムノサイトカインを単離および精製するステップを含む、方法に関する。
【0017】
一態様において、本発明は、本発明の上記イムノサイトカインおよび1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤を含む、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための医薬組成物に関する。
【0018】
一態様において、本発明は、本発明の上記イムノサイトカインおよび少なくとも1種の他の治療的に活性な化合物を含む、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための医薬組成物に関する。
【0019】
一部の実施形態において、医薬組成物は、腫瘍性疾患を処置するために使用される。
一部の実施形態において、腫瘍性疾患は、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される。
【0020】
医薬組成物の一部の実施形態において、抗体、化学療法剤、またはホルモン療法剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
医薬組成物の一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
【0021】
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤から選択される免疫チェックポイント阻害剤が使用される。
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合する抗体であるPD-L1阻害剤が使用される。
【0022】
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合し、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、マネリマブ(manelimab)を含む群から選択される抗体が使用される。
【0023】
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合する抗体であるPD-1阻害剤が使用される。
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合し、プロルゴリマブ(prolgolimab)、ペンブロリズマブ、ニボルマブを含む群から選択される抗体が使用される。
【0024】
医薬組成物の一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合する抗体であるCTLA-4阻害剤が使用される。
医薬組成物の一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合し、イピリムマブである抗体が使用される。
【0025】
一態様において、本発明は、本発明の上記イムノサイトカインと、少なくとも1種の他の治療的に活性な化合物とを含む、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための医薬組合せに関する。
【0026】
一部の実施形態において、医薬組合せは、腫瘍性疾患を処置するために使用される。
一部の実施形態において、腫瘍性疾患は、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される。
【0027】
医薬組合せの一部の実施形態において、抗体、化学療法剤、またはホルモン療法剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
医薬組合せの一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
【0028】
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤から選択される免疫チェックポイント阻害剤が使用される。
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合する抗体であるPD-L1阻害剤が使用される。
【0029】
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合し、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、マネリマブを含む群から選択される抗体が使用される。
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合する抗体であるPD-1阻害剤が使用される。
【0030】
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合し、プロルゴリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブを含む群から選択される抗体が使用される。
医薬組合せの一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合する抗体であるCTLA-4阻害剤が使用される。
【0031】
医薬組合せの一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合し、イピリムマブである抗体が使用される。
一態様において、本発明は、腫瘍性疾患を処置するための方法であって、本発明の上記イムノサイトカインまたは上記のいずれかの医薬組成物を、このような処置が必要な対象に治療有効量で投与するステップを含む、方法に関する。
【0032】
処置するための方法の一部の実施形態において、腫瘍性疾患は、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される。
【0033】
一態様において、本発明は、ヒトIL-10Rα受容体の活性化が必要な対象において、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための方法であって、有効量の本発明の上記イムノサイトカインまたは上記のいずれかの医薬組成物を、このような処置が必要な対象に治療有効量で投与するステップを含む、方法に関する。
【0034】
一態様において、本発明は、腫瘍性疾患を処置するための本発明の上記イムノサイトカインまたは上記のいずれかの医薬組成物の、このような処置が必要な対象における使用に関する。
【0035】
一態様において、本発明は、本発明の上記イムノサイトカインまたは少なくとも1種の他の治療的に活性な化合物の、腫瘍性疾患の処置が必要な対象における腫瘍性疾患の処置のための使用に関する。
【0036】
使用の一部の実施形態において、腫瘍性疾患は、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される。
【0037】
使用の一部の実施形態において、抗体、化学療法剤、またはホルモン療法剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
使用の一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
【0038】
使用の一部の実施形態において、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤から選択される免疫チェックポイント阻害剤が使用される。
使用の一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合する抗体であるPD-L1阻害剤が使用される。
【0039】
使用の一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合し、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、マネリマブを含む群から選択される抗体が使用される。
使用の一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合する抗体であるPD-1阻害剤が使用される。
【0040】
使用の一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合し、プロルゴリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブを含む群から選択される抗体が使用される。
使用の一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合する抗体であるCTLA-4阻害剤が使用される。
【0041】
使用の一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合し、イピリムマブである抗体が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】EPEAタグがC末端に連結された、ヒトIL-10R受容体サブユニットアルファの細胞外部分の配列を含むプラスミドpIntA-IL-10Ra-exc-hum-EPEAのマップである。AmpRは、アンピシリンに対する耐性を提供する遺伝子である。pUCは、細菌の複製起点である。cmv-エンハンサーは、サイトメガロウイルスエンハンサーである。hCMVプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルスの真核生物プロモーターである。イントロンAは、イントロンAの配列である。コザックは、翻訳開始のためのコザックコンセンサス配列である。mIgKリーダーは、リーダーペプチドである。SalIは、SalI制限部位である。IL-10Ra-exc-humは、ヒトIL-10受容体サブユニットアルファの細胞外部分である。EPEA-タグは、タンパク質精製のためのEPEAタグ配列である。KpnIは、KpnI制限部位である。Stopは、停止コドンである。SV40_PAターミネーターは、ポリ(A)SV40転写ターミネーターである。EBV oriは、真核生物の複製起点である。
図2】突然変異LALA、GKの欠失を有し、リンカーを介してヒトIL-10に架橋されたN末端ヒトIgG1 Fc断片の配列を含む、プラスミドpIntA-N-Fc-LALA-連結-hIL-10のマップである。AmpRは、アンピシリンに対する耐性を提供する遺伝子である。pUCは、細菌の複製起点である。cmv-エンハンサーは、サイトメガロウイルスエンハンサーである。hCMVプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルスの真核生物プロモーターであるイントロンAは、イントロンAの配列である。コザックは、翻訳開始のためのコザックコンセンサス配列である。mIgKリーダーは、リーダーペプチドである。SalIは、SalI制限部位である。Fc-LALA-DELGKは、ヒトIgG1 Fc断片の配列であり、C末端にLALA突然変異(逐次的な番号付けに従ってL19A、L20A)および欠失したGK(逐次的な番号付けに従ってG231、K232)を有する。リンカーは、リンカー配列である。hIL-10は、ヒトIL-10配列である。XbaIは、XbaI制限部位である。Stopは、停止コドンである。SV40_PAターミネーターは、ポリ(A)SV40転写ターミネーターである。EBV oriは、真核生物の複製起点である。
図3】CHO細胞由来であり、それから単離された、ヒト、カニクイザルおよびウサギIL-10受容体の細胞外部分のPAAG電気泳動を示す図である。1)タンパク質分子量マーカー、2)ヒトexcIL-10Ra、3)カニクイザルexcIL-10Ra、4)タンパク質分子量マーカー、5)ウサギexcIL-10Ra
図4】CHO細胞由来であり、それから単離された、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく組換えイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)のPAAG電気泳動である。1)タンパク質分子量マーカー、2)還元条件下におけるIL10-Fc 4.5μg、3)非還元条件下におけるIL10-Fc 4.5μg。
図5】+37Cで長時間にわたりヒト血清中で貯蔵した場合の、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)の安定性を示すグラフである。X軸は、貯蔵時間であり、Y軸は、血清中の安定な分子の相対含量である(元の試料のパーセント)。
図6】IL-10のものと比較して血管増殖活性を呈示する本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)の能力を示すグラフである。X軸は、IL-10(Peprotechからの陽性対照ヒト組換えIL-10)の濃度であり、Y軸は、生存可能な細胞の数を反映する相対的な蛍光である。対照試料の半最大有効濃度は91.7pMであり、本発明のIL-10+Fcの同値は53.3pMであった。
図7】Peprotechからの組換えヒトIL-10および対照のものと比較した、Raji標的細胞に対するCD8+T細胞の細胞傷害性への本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)の作用を示すグラフである。
図8】Jurkat細胞株を採用するアッセイにおける本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく試験イムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)におけるCDC活性の非存在を示すグラフである。対照抗体リツキシマブは、標的細胞の補体媒介溶解を誘導する。
図9】Jurkat標的細胞を採用するアッセイにおける、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく試験イムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)における抗体依存性細胞傷害(ADCC活性)の非存在を示すグラフである。抗PD1抗体を、陽性対照として使用した。
図10A】0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlの濃度での、ヒト末梢血液細胞の部分集団に対して、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)における自己細胞傷害の非存在を示すヒストグラムである:図10A)CD4+T細胞、図10B)CD8+T細胞、図10C)T細胞、図10D)NK細胞、図10E)B細胞。陽性対照として、B細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD20抗体およびNK細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD47抗体を使用した。
図10B】0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlの濃度での、ヒト末梢血液細胞の部分集団に対して、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)における自己細胞傷害の非存在を示すヒストグラムである:図10A)CD4+T細胞、図10B)CD8+T細胞、図10C)T細胞、図10D)NK細胞、図10E)B細胞。陽性対照として、B細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD20抗体およびNK細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD47抗体を使用した。
図10C】0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlの濃度での、ヒト末梢血液細胞の部分集団に対して、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)における自己細胞傷害の非存在を示すヒストグラムである:図10A)CD4+T細胞、図10B)CD8+T細胞、図10C)T細胞、図10D)NK細胞、図10E)B細胞。陽性対照として、B細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD20抗体およびNK細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD47抗体を使用した。
【0043】
陽性対照として、B細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD20抗体およびNK細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD47抗体を使用した。
図10D】0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlの濃度での、ヒト末梢血液細胞の部分集団に対して、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)における自己細胞傷害の非存在を示すヒストグラムである:図10A)CD4+T細胞、図10B)CD8+T細胞、図10C)T細胞、図10D)NK細胞、図10E)B細胞。陽性対照として、B細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD20抗体およびNK細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD47抗体を使用した。
図10E】0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlの濃度での、ヒト末梢血液細胞の部分集団に対して、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10+Fc)における自己細胞傷害の非存在を示すヒストグラムである:図10A)CD4+T細胞、図10B)CD8+T細胞、図10C)T細胞、図10D)NK細胞、図10E)B細胞。陽性対照として、B細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD20抗体およびNK細胞に対する自己細胞傷害を誘導する抗CD47抗体を使用した。
図11】CT26癌腫を接種したBalb/cマウスにおける、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)ならびに本発明のIL-10-Fcと抗mPD1抗体との組合せの、抗腫瘍活性を発揮する能力を反映するヒストグラムである。対照として、抗MPD1抗体を使用した。
図12】CT26癌腫を接種したBalb/cマウスにおける、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)ならびに本発明のIL-10-Fcと抗mPD1抗体との組合せの、抗腫瘍活性を発揮する能力を反映するヒストグラムである。対照として、抗MPD1抗体を使用した。Y軸は、腫瘍増殖指数(ITG)である。
図13】CT26癌腫を接種したBalb/cマウスにおける、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)ならびに本発明のIL-10-Fcと抗mPD1抗体との組合せの、抗腫瘍活性を発揮する能力を反映するヒストグラムである;ヒストグラムは、腫瘍増殖阻害(TGI)のインジケーターを示す。対照として、抗MPD1抗体を使用した。
図14】本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)の様式の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
定義および一般的な方法
本明細書において別段の指定がない限り、本発明と関連して使用される全ての専門用語や科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有するものとする。
【0045】
さらに、文脈上別段の要求がなされない限り、単数形の用語は複数形の用語を含むものとし、複数形の用語は単数形の用語を含むものとする。典型的には、細胞培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、有機合成化学、医化学および製薬化学による、本発明の分類および方法、加えて、本明細書に記載されるタンパク質および核酸のハイブリダイゼーションおよび化学は当業者周知であり、当業界で広く使用される。酵素反応および精製方法は、当業界で一般的であるように、または本明細書に記載される通りに、製造元のガイドラインに従って実行される。
【0046】
「結合親和性」は、一般的に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合による相互作用の総計の強度を指す。別段の指定がない限り、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば抗体および抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の(特徴的な、真の)結合親和性を指す。分子Xのその結合パートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(Kd)によって表すことができる。好ましいKd値は、約200nM、150nM、100nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、8nM、6nM、4nM、2nM、1nM、またはそれ未満である。親和性は、本発明の説明に記載されるものを含む当業界において公知の共通の方法によって測定することができる。低親和性の抗体は、一般的に抗原とゆっくり結合し、容易に解離する傾向があり、それに対して高親和性の抗体は、一般的に、それより速く抗原と結合し、それより長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法は当業界において公知であり、それらのいずれも本発明の目的に使用することができる。
【0047】
用語「インビトロ」は、人工条件下での、体外での、生物学的な実体、生物学的なプロセス、または生物学的な反応を指す。例えば、インビトロで増殖した細胞は、体外の環境中で、例えば試験管、培養バイアル、またはマイクロタイタープレート中で、増殖した細胞として理解されるものとする。
【0048】
用語「IC50」(阻害濃度50%)は、本明細書で使用される場合、測定可能な活性または応答、例えば腫瘍細胞などの細胞の成長/増殖が50%阻害される配合物の濃度を指す。IС50値は、カーブフィッティングのための特殊な統計ソフトウェアを使用して、適切な用量応答曲線を使用して計算することができる。
【0049】
用語「ED50」(EC50)(50%有効量/濃度)は、50%の生物学的作用(これは、細胞傷害性を含む場合もある)を生じる配合物の濃度を指す。
本発明の説明およびそれに続く特許請求の範囲で使用される通り、文脈による別段の規定がない限り、言葉「有する(have)」、「含む(include)」、および「含む(comprise)」またはそれらの変化形、例えば「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprises)」、または「含む(comprising)」は、述べられている整数または整数の群を包含するが、他のいずれの整数または整数の群も排除しないことを示すと理解されるものとする。
イムノサイトカイン
驚くべきことに著者によって見出された通り、本発明において提供されるIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくホモ二量体複合体を含むイムノサイトカインは、IL-10の血漿内半減期と比較して延長された血漿内半減期を有し、それらの固有な構造に起因する血清プロテアーゼ分解に対する耐性のために安定である。
【0050】
上記イムノサイトカインの様式は、図15に示される。
用語「イムノサイトカイン」は、サイトカインまたはその誘導体に直接的または共有結合によって間接的に連結された抗体を含む分子またはその断片を意味する。前記抗体および前記サイトカインは、リンカーペプチドによって連結されていてもよい。
【0051】
本発明のイムノサイトカインは、単離されたイムノサイトカインを指すことが予期される。
本発明のイムノサイトカインは、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質を指す。
【0052】
この説明の様々なイムノサイトカインを記載するのに使用される用語「単離された」は、イムノサイトカインが発現される細胞または細胞培養物から、同定され、分離された、および/または再生成したイムノサイトカインを意味する。天然環境からの不純物(汚染物質成分)は、典型的には、ポリペプチドの診断的または治療的使用に干渉する物質であり、その例としては、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク性溶質を挙げることができる。単離されたポリペプチドは、典型的には、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0053】
本発明のイムノサイトカインは、組換えイムノサイトカインである。
用語「組換えイムノサイトカイン」は、イムノサイトカインをコードするヌクレオチド配列を含む細胞または細胞株で発現されるイムノサイトカインを指すことが意図され、その場合、前記ヌクレオチド配列は、天然に細胞と関連していない。
【0054】
免疫グロブリンの断片結晶化可能領域(「Fc領域、Fc断片」)は、細胞表面Fc受容体に加えて補体系の一部のタンパク質と相互作用する免疫グロブリン分子の「テール」領域である。この特性は、抗体が免疫系を活性化することを可能にする。IgG、IgAおよびIgDアイソタイプにおいて、Fc領域は、それぞれ2つの重鎖の第2および第3の定常ドメインからの2つの同一なタンパク質断片で構成され、IgMおよびIgEアイソタイプにおいて、Fcは、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CH2、CH3、およびCH4ドメイン)を含有する。
【0055】
IL-10のための受容体は、IL-10ra遺伝子によってコードされた2つのIL-10Rα(IL-10R1とも称される)分子、およびIL-10rb遺伝子によってコードされた2つのIL10Rβ(IL-10R2とも称される)分子を含むヘテロ四量体複合体である。
【0056】
ヒトIL-10Rα受容体(またはCD210a、もしくはIL-10R1)は、インターロイキン10受容体、アルファサブユニットを指す。IL-10Rαの分子量は90~120kDaであり、受容体複合体のリガンド結合サブユニットとして役立つ。
【0057】
一態様において、本発明は、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するためのイムノサイトカインであって、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくホモ二量体複合体、すなわち、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく2つの同一な単量体を含む二量体を含み、単量体は、アミノ酸配列
【0058】
【化1】
【0059】
を含む、イムノサイトカインに関する。
一実施形態において、本発明は、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するためのイムノサイトカインであって、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくホモ二量体複合体、すなわち、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく2つの同一な単量体を含む二量体を含み、単量体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する、イムノサイトカインに関する。
【0060】
本発明のイムノサイトカインは、イムノサイトカインのエフェクターを有さない特性を提供するために、ヒトIgG1抗体のFc断片中にL234AおよびL235A(LALA)突然変異を含む。これらの突然変異は、配列番号1を有するアミノ酸配列を含む上記イムノサイトカイン中に存在する。
【0061】
一実施形態において、本発明のイムノサイトカインは、リーダーペプチドを含む。
本発明の一実施形態において、本発明のリーダーペプチドを有するイムノサイトカインは、リーダーペプチド、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくホモ二量体複合体、すなわち、リーダーペプチド、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく2つの同一な単量体を含む二量体を含み、単量体は、アミノ酸配列
【0062】
【化2】
【0063】
を有する。
用語「本発明のイムノサイトカイン」、「IL-10およびFcに基づくイムノサイトカイン」、「本発明の融合タンパク質」、「IL-10-Fc」および「IL-10+Fc」は、本明細書において同義的に使用され、本発明の上記イムノサイトカインを指す。
核酸
一態様において、本発明は、本発明の上記イムノサイトカインをコードする単離された核酸に関する。
【0064】
用語「核酸」、「核酸配列(nucleic sequence)」、「核酸配列(nucleic acid sequence)」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」は、本発明の説明において同義的に使用され、非天然ヌクレオチドを含有する、または含有しない、核酸の断片または領域を決定する、改変された、または改変されていないヌクレオチドの正確な配列を意味し、二本鎖DNAもしくはRNA、一本鎖DNAもしくはRNA、または前記DNAの転写産物のいずれかである。
【0065】
本発明はまた、その天然の染色体の環境、すなわち天然状態にあるヌクレオチド配列に関連しないことも本明細書に包含されるものとする。本発明の配列は、単離および/または精製されており、すなわちそれらは、例えば少なくとも部分的に改変されたその環境をコピーすることによって、直接的または間接的にサンプリングされたものである。したがって、例えば宿主細胞の手段によって組換え体遺伝学により得られた、または化学合成により得られた単離された核酸もここで言及されているものとする。
【0066】
「単離された」核酸分子は、少なくとも1つの核酸分子、すなわち自然源中で結合している不純物から同定され、分離されているものである。単離された核酸分子は、それが自然状態で見出される形態またはセットと異なる。したがって、単離された核酸分子は、自然状態で細胞中に存在する核酸分子と異なる。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が、自然状態での細胞におけるその局在化と異なって染色体に局在化されている場合、イムノサイトカインが通常発現される細胞中に配置された核酸分子を含む。
【0067】
一部の実施形態において、単離された核酸は、DNAである。
一実施形態において、本発明は、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質の単量体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、単量体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、核酸分子に関する。
【0068】
一実施形態において、本発明は、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質の単量体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、単量体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する、核酸分子に関する。
【0069】
当業者であれば認識していると思われるが、遺伝子コードの冗長性のために、様々なDNA配列が、配列番号1のアミノ酸配列を有する融合タンパク質をコードすることができる。同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を作り出すことは、十分に当業界で訓練を受けた者の能力の範囲内である。このようなバリアントDNA配列は、本発明の範囲内である。
【0070】
ヌクレオチド配列への言及は、別段の規定がない限り、その相補物も包含する。したがって、特定の配列を有する核酸への言及は、その相補配列を有するその相補鎖を包含するものとして理解されるものとする。
【0071】
一部の実施形態において、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質の単量体をコードする単離された核酸であって、単量体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、核酸は、配列番号3を有するヌクレオチド配列を含む。
【0072】
一部の実施形態において、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質の単量体をコードする単離された核酸であって、単量体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する、核酸は、配列番号3を有するヌクレオチド配列を有する。
【0073】
一部の実施形態において、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質の単量体をコードする単離された核酸であって、単量体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、核酸は、配列番号4を有するヌクレオチド配列を含む。
【0074】
一部の実施形態において、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質の単量体をコードする単離された核酸であって、単量体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する、核酸は、配列番号4を有するヌクレオチド配列を有する。
【0075】
一部の実施形態において、本発明の核酸は、リーダーペプチド、IL-10、およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質の単量体をコードする。
一部の実施形態において、リーダーペプチド、IL-10、およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質の単量体をコードし、その単量体が、配列番号2のアミノ酸配列を有する核酸は、配列番号5を有するヌクレオチド配列を有する。
【0076】
一部の実施形態において、リーダーペプチド、IL-10、およびヒトIgG1 Fc断片に基づく融合タンパク質の単量体をコードする核酸でありし、その単量体が、配列番号2のアミノ酸配列を有する核酸は、配列番号6を有するヌクレオチド配列を有する。
【0077】
上記核酸分子は、本発明のイムノサイトカインを発現させるのに使用することができる。
発現ベクター
一態様において、本発明は、上記ヌクレオチド配列のいずれかを含む発現ベクターに関する。
【0078】
本発明は、本明細書に記載されるヌクレオチド配列のいずれかの発現に好適なベクターに関する。
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、それに連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を意味する。一部の実施形態において、ベクターは、プラスミド、すなわち、追加のDNAセグメントがライゲートされていてもよいDNAの環状の二本鎖断片である。一部の実施形態において、ベクターは、ウイルスゲノムに追加のDNAセグメントがライゲートされていてもよいウイルスベクターである。
【0079】
一部の実施形態において、ベクターは、それが導入された宿主細胞における自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点部位を有する細菌ベクターおよびエピソームの哺乳類ベクター)。さらなる実施形態において、ベクター(例えば非エピソーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されるときに宿主細胞のゲノムに統合されていてもよく、それによって、宿主遺伝子と共に複製される。さらに、特定のベクターは、それが作動可能に連結した遺伝子の発現を指示することが可能である。このようなベクターは、本明細書では、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。
【0080】
本発明は、本明細書に記載される本発明のイムノサイトカイン(融合タンパク質)、その一部(例えば、IL-10配列またはFc断片の第2および第3の定常ドメインの配列)のアミノ酸配列をコードする核酸分子を含むベクターに関する。本発明はさらに、本発明のIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)またはその断片をコードする核酸分子を含むベクターに関する。
【0081】
発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えばカリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが挙げられる。DNA分子は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、DNAの転写および翻訳を調節するその意図した機能を発揮するように、ベクターにライゲートされていてもよい。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選択することができる。DNA分子は、標準的な方法(例えば、イムノサイトカイン遺伝子断片およびベクターへの相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合、平滑末端のライゲーション)によって、発現ベクターに導入することができる。
【0082】
用語「制御配列」は、特定の宿主生物における作動可能に連結したコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に好適な制御配列は、例えば、プロモーターであり、任意選択でオペレーター配列およびリボソーム結合部位である。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを含むことが公知である。
【0083】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列または分泌リーダー配列のためのDNAは、それがポリペプチドの分泌に参加する前駆タンパク質として発現される場合、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結されている;プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されている;リボソーム結合部位は、それが翻訳を容易にするように位置する場合、コード配列に作動可能に連結されている。典型的には、「作動可能に連結した」は、連結されているDNA配列が連続していることを意味し、分泌リーダー配列の場合、連続しており、リーディング相中にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続していなくてもよい。
【0084】
組換え発現ベクターは、宿主細胞からのイムノサイトカインの分泌を容易にするシグナル(リーダー)ペプチドをコードしていてもよい。イムノサイトカイン遺伝子は、シグナル(リーダー)ペプチドがフレーム内でイムノサイトカイン鎖のアミノ末端に連結されるように、ベクターにクローニングされていてもよい。シグナル(リーダー)ペプチドは、免疫グロブリンシグナル(リーダー)ペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナル(リーダー)ペプチド)であってもよい。
【0085】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるイムノサイトカイン遺伝子の発現を制御する調節配列を有していてもよい。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどの要因に依存する可能性があることが当業者には理解されるであろう。哺乳動物における発現宿主細胞のための好ましい制御配列としては、哺乳類細胞における高レベルのタンパク質発現を確実にするウイルスエレメント、例えば、レトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス、(例えば主要後期プロモーターアデノウイルス(AdMLP))、ポリオーマウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、ならびに強い哺乳類プロモーター、例えばネイティブの免疫グロブリンプロモーターもしくはアクチンプロモーターが挙げられる。
【0086】
細菌細胞または真菌細胞、例えば酵母細胞においてポリペプチドを発現させるための方法も当業界において周知である。
イムノサイトカイン遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、追加の配列、例えば宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)および選択可能マーカー遺伝子を有していてもよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする。
【0087】
用語「発現制御配列」は、本発明の説明で使用される場合、それにライゲートされたコード配列の発現およびプロセシングを実行するのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列としては、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的なRNAプロセシングシグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質内のmRNAを安定化させる配列;翻訳効率を強化する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を強化する配列;および望ましい場合、タンパク質分泌を強化する配列が挙げられる。このような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なっており、原核生物では、このような制御配列は、一般的に、リボソーム結合部位のプロモーター、および転写終結配列を含み;真核生物では、典型的には、このような制御配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、それらの存在が発現およびプロセシングに必須である少なくとも全ての構成要素を含み、それらの存在が有利である追加の構成要素、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列を含んでいてもよい。
宿主細胞およびその生産のための方法
一態様において、本発明は、上記ベクターでの細胞の形質転換を含む、本発明のイムノサイトカインを生産するための宿主細胞を生産するための方法に関する。
【0088】
一態様において、本発明は、上記核酸のいずれかを含む、本発明のイムノサイトカインを生産するための宿主細胞に関する。
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書で使用される場合、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指す。本発明は、例えば、上述した本発明によるベクターを含んでいてもよい宿主細胞に関する。本発明はさらに、本発明のイムノサイトカインをコードする核酸のいずれかを含む宿主細胞に関する。「組換え宿主細胞」および「宿主細胞」は、特定の対象細胞を指すだけでなく、同様にこのような細胞の後代も指すことが理解されるものとする。後の世代で突然変異または環境の影響のいずれかに起因する改変が生じる可能性があるため、このような後代は、実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、このような細胞は、それでもなお本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0089】
本発明のイムノサイトカインをコードする核酸分子およびこれらの核酸分子を含むベクターは、好適な哺乳類またはその細胞、植物またはその細胞、細菌または酵母宿主細胞のトランスフェクションに使用することができる。形質転換は、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するあらゆる公知の技術によって行うことができる。異種ポリヌクレオチドの哺乳類細胞への導入のための方法は当業界において周知であり、その例としては、デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性ポリマー-核酸複合体トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポソームへのポリヌクレオチドの封入、およびDNAの核への直接のマイクロインジェクションが挙げられる。加えて、核酸分子は、ウイルスベクターによって哺乳類細胞に導入されてもよい。
【0090】
形質転換のための宿主として使用される哺乳類細胞株は当業界において周知であり、その例としては、利用可能な複数の不死化細胞株が挙げられる。これらの細胞株としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK-293T細胞、FreeStyle293細胞(Invitrogen)、NIH-3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、および多数の他の細胞株が挙げられる。細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有し、生産されたタンパク質の必要な特徴をもたらすかを決定することによって選択される。使用可能な他の細胞株は、昆虫細胞株、例えばSf9またはSf21細胞である。本発明のイムノサイトカインをコードする組換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入される場合、イムノサイトカインは、宿主細胞中で本発明のイムノサイトカインを発現させるのに十分な、またはより好ましくは、宿主細胞が培養される培養培地にイムノサイトカインを分泌するのに十分な期間にわたり宿主細胞を培養することによって生産される。本発明のイムノサイトカインは、標準的なタンパク質精製技術を使用して培養培地から単離することができる。植物宿主細胞としては、例えば、タバコ属、シロイヌナズナ属、ウキクサ、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモなどが挙げられる。細菌の宿主細胞としては、大腸菌属およびストレプトマイセス属の種が挙げられる。酵母宿主細胞としては、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピチア・パストリス(Pichia pastoris)が挙げられる。
【0091】
さらに、生産細胞株からの本発明のイムノサイトカインの生産のレベルは、多数の公知の技術を使用して強化することができる。例えば、グルタミン合成酵素遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下で発現を強化するための一般的なアプローチである。
【0092】
異なる細胞株またはトランスジェニック動物における本発明のイムノサイトカインは、互いに異なるグリコシル化パターンを有する可能性が高い。しかしながら、本明細書に記載される核酸分子によってコードされた、または本明細書で提供されるアミノ酸配列を含む本発明のイムノサイトカインは、結合分子のグリコシル化に関係なく、一般的に、翻訳後修飾の存在または非存在に関係なく、本発明の一部である。
【0093】
上記宿主細胞は、ヒト胎芽を使用して生産された宿主細胞を指さない。
上記宿主細胞は、ヒト生殖細胞系細胞の遺伝学的な完全性を改変することによって生産された宿主細胞を指さない。
【0094】
一態様において、本発明は、本発明のイムノサイトカインを含む生成物を調製するための方法であって、前記イムノサイトカインを生産するのに十分な条件下で、上記宿主細胞を培養培地中で培養するステップ、必要に応じて、それに続いて、得られたイムノサイトカインを単離および精製するステップを含む、方法に関する。
【0095】
本発明は、本発明のイムノサイトカインを生産するための方法に関する。本発明の1つの実施形態は、本明細書において定義されるイムノサイトカインを生産するための方法であって、本発明のイムノサイトカインを発現することが可能な組換え宿主細胞を調製すること、本発明のイムノサイトカインの発現/生産に好適な条件下で前記宿主細胞を培養するステップ、および得られたイムノサイトカインを単離することを含む、方法に関する。このような組換え宿主細胞におけるこのような発現によって生産されたイムノサイトカインは、本明細書では「組換えイムノサイトカイン」と称される。本発明はまた、このような宿主細胞からの細胞の後代および同じように生産されたイムノサイトカインにも関する。
医薬組成物および医薬組合せ
一態様において、本発明は、本発明のイムノサイトカインおよび1種または複数の医薬的に許容される賦形剤を含む、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための医薬組成物に関する。
【0096】
「医薬組成物」は、本発明のイムノサイトカインと、医薬的に許容される、薬理学的に適合性の増量剤、溶媒、希釈剤、担体、助剤、分配剤および感知剤、送達剤、例えば保存剤、安定剤、増量剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤、甘味料、矯味矯臭剤、着香剤、抗細菌剤、殺真菌剤、潤滑剤、ならびに長期送達制御剤(prolonged delivery controller)を含む群から選択される成分の少なくとも1つとを含む組成物を指し、それらの選択および好適な比率は、投与のタイプおよび方法ならびに投薬量に依存する。好適な懸濁化剤の例は、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン(polyoxyethene)、ソルビトールおよびソルビトールエーテル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天ならびにトラガカント、同様にそれらの混合物である。微生物の作用に対する保護は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸、および類似の化合物などによって提供することができる。組成物はまた、等張化剤、例えば、糖、ポリオール、塩化ナトリウムなどを含有していてもよい。組成物の長期にわたる作用は、活性成分の吸収を減速させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンによって達成することができる。好適な担体、溶媒、希釈剤および送達剤の例としては、注射の場合、水、エタノール、多価アルコールおよびそれらの混合物、天然油(例えばオリーブ油)ならびに有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられる。増量剤の例は、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどである。崩壊剤および分配剤の例は、デンプン、アルギン酸およびその塩、ケイ酸塩などである。好適な潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルクおよび高分子量のポリエチレングリコールである。単独での、または別の活性な化合物と組み合わせた、活性成分の、経口、舌下、経皮、眼球内、筋肉内、静脈内、皮下、局所または直腸内投与のための医薬組成物は、従来の製剤用担体との混合物の形態で、標準的な投与形態で、ヒトおよび動物に投与することができる。好適な標準的な投与形態としては、経口形態、例えば錠剤、ゼラチンカプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、チューインガムおよび経口用溶液または懸濁液;舌下および口腔粘膜投与形態;エアロゾル;インプラント;局所、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内または眼球内の形態および直腸内投与の形態が挙げられる。
【0097】
用語「賦形剤」は、本明細書において、本発明のイムノサイトカイン以外のあらゆる成分を記載するのに使用される。これらは、薬物製品に必要な物理化学的な特性を付与するために医薬品製造で使用される無機または有機の性質を有する物質である。
【0098】
用語「医薬的に許容される」は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける投与に好適な1つまたは複数の適合性の液体または固形成分を指す。
用語「緩衝液」、「緩衝組成物」、「緩衝剤」は、その酸と塩基とがコンジュゲートした成分の作用によってpH変化に耐えることが可能であり、イムノサイトカイン生成物をpH変化に耐性にすることができる溶液を指す。一般的に、医薬組成物は、好ましくは、4.0~8.0の範囲のpHを有する。使用される緩衝液の例としては、これらに限定されないが、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩などの緩衝溶液が挙げられる。
【0099】
用語「トニック剤(tonic agent)」、「オスモライト」または「浸透圧剤」は、本明細書で使用される場合、本発明のイムノサイトカインの液体配合物の浸透圧を調整できる賦形剤を指す。「等張」薬は、ヒト血液の浸透圧と同等の浸透圧を有する薬物である。等張薬は、典型的には、約250~350mOsm/kgの浸透圧を有する。使用される等張剤としては、これらに限定されないが、ポリオール、糖およびスクロース、アミノ酸、金属塩、例えば、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0100】
「安定剤」は、活性薬剤の物理的および/または化学的安定性を提供する賦形剤または2種もしくはそれより多くの賦形剤の混合物を指す。安定剤としては、アミノ酸、例えば、これらに限定されないが、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、リジン、グルタミン、プロリン;界面活性剤、例えば、これらに限定されないが、ポリソルベート20(商標名:Tween 20)、ポリソルベート80(商標名:Tween 80)、ポリエチレン-ポリプロピレングリコールおよびそれらのコポリマー(商標名:ポロキサマー(Poloxamer)、プルロニック(登録商標)(Pluronic)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);抗酸化剤、例えば、これらに限定されないが、メチオニン、アセチルシステイン、アスコルビン酸、モノチオグリセロール、亜硫酸塩など;キレート剤、例えば、これらに限定されないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0101】
一態様において、本発明は、本発明のイムノサイトカインおよび少なくとも1種の他の治療的に活性な化合物を含む、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための医薬組成物に関する。
【0102】
医薬組成物の一部の実施形態において、抗体、化学療法剤、またはホルモン療法剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
医薬組成物の一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
【0103】
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤から選択される免疫チェックポイント阻害剤が使用される。
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合する抗体であるPD-L1阻害剤が使用される。
【0104】
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合し、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、マネリマブを含む群から選択される抗体が使用される。
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合する抗体であるPD-1阻害剤が使用される。
【0105】
医薬組成物の一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合し、プロルゴリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブを含む群から選択される抗体が使用される。
医薬組成物の一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合する抗体であるCTLA-4阻害剤が使用される。
【0106】
医薬組成物の一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合し、イピリムマブである抗体が使用される。
一態様において、本発明は、本発明の上記イムノサイトカインと、少なくとも1種の他の治療的に活性な化合物とを含む、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための医薬組合せに関する。
【0107】
医薬組合せの一部の実施形態において、抗体、化学療法剤、またはホルモン療法剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
医薬組合せの一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
【0108】
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤から選択される免疫チェックポイント阻害剤が使用される。
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合する抗体であるPD-L1阻害剤が使用される。
【0109】
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合し、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、マネリマブを含む群から選択される抗体が使用される。
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合する抗体であるPD-1阻害剤が使用される。
【0110】
医薬組合せの一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合し、プロルゴリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブを含む群から選択される抗体が使用される。
医薬組合せの一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合する抗体であるCTLA-4阻害剤が使用される。
【0111】
医薬組合せの一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合し、イピリムマブである抗体が使用される。
一部の実施形態において、医薬組成物または医薬組合せは、腫瘍性疾患を処置するために使用される。
【0112】
「処置する」、「処置すること」および「処置」は、生物学的な障害および/またはその付随する症状の少なくとも1つを軽減する、または妨げる方法を指す。本明細書で使用される場合、疾患、障害または状態を「軽減する」は、疾患、障害、または状態の症状の重症度および/または出現頻度を低減することを意味する。さらに、本明細書における「処置」への言及は、治癒的な、緩和的な、および予防的な処置への言及を含む。
【0113】
用語「腫瘍性疾患」、「がん」および「がん性」は、生理学的な状態を指すか、または典型的には細胞の無秩序な成長/増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を表す。腫瘍性疾患の例としては、これらに限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。このようながん性疾患のより特定の例としては、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、胃がんを含む消化器がん、膵臓がん、膠芽腫、神経膠腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん(腎細胞癌)、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、および様々な頭頸部がんが挙げられる。
【0114】
一態様において、処置の対象、または患者は、哺乳動物であり、好ましくはヒト対象である。前記対象は、あらゆる年齢の雄または雌のいずれであってもよい。
医薬組成物または組合せ中の本発明のイムノサイトカインは、治療有効量で存在する。
【0115】
「治療有効量」は、処置されている疾患の症状の1種または複数をある程度緩和すると予想される、処置中に投与される治療剤の量を指す。
一部の実施形態において、腫瘍性疾患は、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される。
【0116】
本発明の医薬組成物または医薬組合せおよびそれらの調製方法は、疑いの余地なく当業者には明らかであろう。医薬組成物または医薬組合せは、好ましくはGMP(医薬品の製造管理および品質管理に関する基準)の要件に従って製造されるべきである。組成物または組合せは、緩衝組成物、等張化剤、安定剤および可溶化剤を含んでいてもよい。組成物または組合せの長期の作用は、医薬品有効成分の吸収を減速させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンによって達成することができる。好適な担体、溶媒、希釈剤および送達剤の例としては、注射の場合、水、エタノール、多価アルコールおよびそれらの混合物、油、および有機エステルが挙げられる。
【0117】
好適には、当業界において容認されたイムノサイトカインを投与するためのあらゆる方法が、本発明のイムノサイトカインに採用することができる。
医薬組成物または医薬組合せは、貯蔵温度で、例えば2~8℃の貯蔵温度での、特定された貯蔵寿命中に、活性薬剤がその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を保持する場合、「安定」である。好ましくは、活性薬剤は、物理的および化学的安定性の両方、加えて生物学的活性を保持する。貯蔵期間は、加速または天然の老化条件での安定性試験の結果に基づいて調整される。
【0118】
本発明の医薬組成物または医薬組合せは、単一単位の用量の形態で、またはすぐに調剤できる形態での複数の単一単位の用量の形態で製造したり、パッケージングしたり、または広く販売したりできる。用語「単一単位の用量」は、本明細書で使用される場合、予め決定された量の活性成分を含有する医薬組成物の別々の量を指す。活性成分の量は、典型的には、対象に投与しようとする活性成分の用量に等しいか、またはこのような用量の便利な部分、例えばこのような用量の半分または3分の1に等しい。
【0119】
本発明による医薬組成物または医薬組合せは、典型的には、皮膚または粘膜バリアの突破、注射、輸注および埋め込みによって消化管を迂回することによるヒトの体への投与を意図した滅菌配合物として、非経口投与に好適である。特定には、非経口投与としては、とりわけ、皮下、腹膜内、筋肉内、静脈内、動脈内、髄腔内、心室内、尿道内、頭蓋内、滑液包内、経皮注射または輸注、および腎臓透析輸注技術が挙げられる。腫瘍内の送達、例えば、腫瘍内の注射も採用することができる。局所灌流も予期される。
【0120】
好ましい実施形態は、静脈内および皮下経路を含む。当業界において容認されたペプチドまたはタンパク質を投与するためのあらゆる方法が、本発明のイムノサイトカインに好適に採用することができる。
【0121】
注射配合物は、これらに限定されないが、単位剤形で、例えばアンプル、バイアル、プラスチック容器、プレフィルドシリンジ、自己注射デバイスの形態で、調製したり、パッケージングしたり、または販売したりできる。非経口投与のための配合物としては、とりわけ、懸濁剤、液剤、油性または水性ベース中の乳剤、ペースト剤などが挙げられる。
【0122】
別の実施形態において、本発明は、非経口投与のための医薬配合物であって、医薬組成物または医薬組合せは、投与前に好適なベース(例えば滅菌されたパイロジェンフリー水)で再構成するために、乾燥(すなわち粉末または顆粒状の)形態で提供される、医薬配合物を提供する。このような医薬配合物は、例えば、凍結乾燥、すなわち、当業界ではフリーズドライとして公知の、生成物の凍結、それに続く凍結した材料からの溶媒の除去を含むプロセスによって調製することができる。
【0123】
本発明のイムノサイトカインはまた、単独で、好適な医薬的に許容される賦形剤との混合物として、好適な噴射剤を使用して、または使用しないで、吸入器、例えば加圧したエアロゾル容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、またはネブライザーから、鼻腔内に、または吸入によって投与されるか、または点鼻剤、またはスプレーとして投与されるかのいずれかであってもよい。
【0124】
非経口投与のための剤形は、即時の放出または制御された放出になるように製剤化されてもよい。放出制御医薬配合物としては、遅延型の、持続的な、パルス化された、制御された、標的化された、およびプログラム化された放出が挙げられる。
処置のための方法/処置のための使用
一態様において、本発明は、腫瘍性疾患を処置するための方法であって、本発明のイムノサイトカインまたは上記のいずれかの本発明の医薬組成物を、このような処置が必要な対象に治療有効量で投与するステップを含む、方法に関する。
【0125】
一態様において、本発明は、本発明のイムノサイトカインまたは上記のいずれかの本発明の医薬組成物の、腫瘍性疾患の処置が必要な対象における腫瘍性疾患の処置のための使用に関する。
【0126】
処置するための方法の一部の実施形態において、腫瘍性疾患は、HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸がん、原発不明がん、膠芽腫、食道がん、膀胱がん、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、CRC(結腸直腸がん)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺がん)、腎臓がん、卵巣がん、マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸がん、白血病(急性白血病または骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、肉腫、肝細胞癌、膠芽腫、ホジキンリンパ腫、TおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病、小細胞肺がん、難治性非ホジキンB細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、高リスク骨髄異形成症候群を含む群から選択される。
【0127】
腫瘍(例えば、がん)のケースにおいて、本発明のイムノサイトカインの治療有効量は、がん細胞の数を低減させることができ;最初の腫瘍サイズを低減させることができ;周囲の臓器へのがん細胞の浸潤を阻害することができ(すなわちある程度遅くし、好ましくは止める);腫瘍転移を阻害することができ(すなわちある程度遅くし、好ましくは止める);腫瘍増殖をある程度阻害することができ;および/または疾患に関連する症状の1つまたは複数をある程度緩和することができる。本発明のイムノサイトカインは、増殖をある程度防止したり、および/または既存のがん細胞をある程度致死させたりすることができ、これは、細胞増殖抑制性であってもよいし、および/または細胞傷害性であってもよい。がん療法の場合、インビボの効能は、例えば、生存、腫瘍進行までの時間(無進行生存)、処置への腫瘍応答速度(TRR)、応答の持続時間および/または生活の質を評価することによって測定することができる。
【0128】
本発明のイムノサイトカインは、さらなる治療的処置を行わずに、すなわち独立した療法として投与することができる。さらに、本発明のイムノサイトカインによる処置は、少なくとも1つの追加の治療的処置(併用療法)を含んでいてもよい。一部の実施形態において、本発明のイムノサイトカインは、がんを処置するための別の薬物療法剤/製剤と一緒に投与されてもよいし、またはそれと共に製剤化されてもよい。
【0129】
本明細書で使用される場合、用語「共投与」、「共投与される」および「と組み合わせて」は、本発明のイムノサイトカインおよび1種または複数の他の治療剤に対して言及され、以下を指すかまたはそれらを含むことを意味することが予期される:
1)処置が必要な患者への、このような本発明のイムノサイトカインおよび治療剤の組合せの同時投与であって、このような成分が、実質的に同じ時間に前記成分を前記患者に放出する単一の剤形に、一緒に製剤化される、投与、
2)処置が必要な患者への、このような本発明のイムノサイトカインおよび治療剤の組合せの同時投与であって、このような成分が別個の剤形に互いに離れて製剤化される場合、それが実質的に同じ時間に前記患者によって摂取されると、前記成分が実質的に同じ時間に前記患者に放出される、投与、
3)処置が必要な患者への、このような本発明のイムノサイトカインおよび治療剤の組合せの逐次的な投与であって、このような成分が別個の剤形に互いに離れて製剤化される場合、各投与間に有意な時間間隔をおいて連続した時間に前記患者によって摂取されると、前記成分が、実質的に異なる時間に前記患者に放出される、投与;および
4)処置が必要な患者への、このような本発明のイムノサイトカインおよび治療剤の組合せの逐次的な投与であって、このような成分が、制御された方法で前記成分を放出する単一の剤形に一緒に製剤化される場合、その後それらは、同じおよび/または異なる時間に、同時に、連続的に、および/またはオーバーラップして前記患者に放出され、この場合各部分は、同じまたは異なる経路のいずれによって投与されてもよい、投与。
【0130】
一態様において、本発明は、腫瘍性疾患の処置が必要な対象における腫瘍性疾患の処置のための、本発明のイムノサイトカインまたは少なくとも1種の他の治療的に活性な化合物の使用に関する。
【0131】
本発明のイムノサイトカインは、細胞傷害性物質、化学療法剤、ホルモン療法剤、または別の治療抗体を含む群から選択される治療剤と組み合わせることができる。
用語「細胞傷害性物質」は、本明細書で使用される場合、細胞の機能を阻害もしくは防止する、および/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、および毒素、例えば低分子の毒素または細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性な毒素、加えてそれらの断片および/またはバリアントを含むことが意図される。
【0132】
「化学療法剤」は、悪性新生物の処置において有用な化学物質である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(登録商標));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチルアメルアミン(methylamelamine)、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチルメラミンなど;アセトゲニン(例えばブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノールであるMARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログであるトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))を含む)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、および9-アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼルシンおよびビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(例えばクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosure)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine);抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、例えばカリケアマイシンガンマIIおよびカリケアマイシンオメガII(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed.Engl.、33:183~186(1994)を参照);ダイネミシン、例えばダイネミシンAなど;エスペラミシン;加えて、ネオカルチノスタチンクロモフォアおよび関連する色素タンパク質であるエンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルチノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(例えば、アドリアマイシン(登録商標)、モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(DOXOL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLCD-99(MYOCET(登録商標))、ペグ化(peglylated)リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、およびデオキシドキソルビシンなど)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクシウリジン;副腎皮質抑制剤(anti-adrenals)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばホリニン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(例えば、T-2毒素、ベラキュリン(verracurin)A、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子配合物(アブラキサン)、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロラムブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金剤、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン;チューブリン重合が微小管を形成しないようにするビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標))、FILDESIN(登録商標))、およびビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))など;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸、例えばベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))など;ビスホスホン酸、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロン酸塩(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAJX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、および上皮増殖因子受容体(EGF-R)などの;ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(Pfizer);ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;チピファルニブ(811577);オラフェニブ(orafenib)、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;EGFR阻害剤(以下の定義を参照);チロシンキナーゼ阻害剤(以下の定義を参照);および上記のもののいずれかの医薬的に許容される塩、酸または誘導体;加えて、上記のもののうち2またはそれより多くの組合せ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの組合せ療法の略語であるCHOP、ならびに5-FUおよびロイコボリン(leucovovin)と組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いる処置レジメンの略語であるFOLFOXが挙げられる。
【0133】
また、腫瘍へのホルモンの作用を調節または阻害するように作用するホルモン療法剤、例えば、混成のアゴニスト/アンタゴニストプロファイルを有する抗エストロゲン、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVTSTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェンなど、および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えばSERM3;アゴニスト特性を有さない純粋な抗エストロゲン、例えばフルベストラント(FASLODEX(登録商標))、およびEM800(このような薬剤は、エストロゲン受容体(ER)の二量体化をブロックする、DNA結合を阻害する、ER転換を増加させる、および/またはERレベルを抑制することができる);アロマターゼ阻害剤、例えば、ステロイド性アロマターゼ阻害剤、例えばフォルメスタンおよびエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、および非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、例えばアナストラゾール(AREVIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアミノグルテチミドなど、ならびに他のアロマターゼ阻害剤、例えば、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、イミダゾールなど;黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト、例えば、ロイプロリド(LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、およびトリプトレリン(tripterelin)など;性ステロイド、例えば、黄体ホルモン、例えば酢酸メゲストロールおよび酢酸メドロキシプロゲステロン、エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロールおよびプレマリン、ならびにアンドロゲン/レチノイド、例えばフルオキシメステロン、完全トランス型レチノイン酸(fully transretionic acid)およびフェンレチニドなど;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD);抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミドおよびビカルタミド;テストラクトン;ならびに医薬的に許容される塩、上記のもののいずれかの酸または誘導体;加えて上記のもののうちの2種またはそれより多くの組合せもこの定義に含まれる。
【0134】
本発明のイムノサイトカインと組み合わせて使用できる他の治療剤は、PD-1に対する抗体(例えばプロルゴリマブ、ペンブロリズマブまたはニボルマブ)、PD-L1に対する抗体、CTLA4に対する抗体、4-1BBに対する抗体、OX40に対する抗体、GITRに対する抗体、CD20に対する抗体(例えばリツキシマブ)、HER2に対する抗体(例えばトラスツズマブまたはパーツズマブ)、VEGFに対する抗体(例えばベバシズマブ)、またはそれらの組合せを含む群から選択される治療抗体であり得る。
【0135】
使用の一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤である他の治療的に活性な化合物が使用される。
用語「免疫チェックポイント阻害剤」(または「チェックポイント阻害剤」)は、免疫チェックポイントの活性を阻害する化合物を指す。阻害としては、機能の低減および完全な妨害が挙げられる。阻害性チェックポイント分子の例としては、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、KIR、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、TIGIT、およびVISTAが挙げられる。一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質を特異的に認識する抗体である。多数の免疫チェックポイント阻害剤が公知であり、これらの公知の免疫チェックポイントタンパク質阻害剤と同様に、近い将来代替の免疫チェックポイント阻害剤が開発される可能性がある。免疫チェックポイント阻害剤としては、これらに限定されないが、ペプチド、抗体、核酸分子、および低分子量化合物が挙げられる。
【0136】
使用の一部の実施形態において、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤から選択される免疫チェックポイント阻害剤が使用される。
使用の一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合する抗体であるPD-L1阻害剤が使用される。
【0137】
使用の一部の実施形態において、PD-L1に特異的に結合し、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、マネリマブを含む群から選択される抗体が使用される。
使用の一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合する抗体であるPD-1阻害剤が使用される。
【0138】
使用の一部の実施形態において、PD-1に特異的に結合し、プロルゴリマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブを含む群から選択される抗体が使用される。
使用の一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合する抗体であるCTLA-4阻害剤が使用される。
【0139】
使用の一部の実施形態において、CTLA-4に特異的に結合し、イピリムマブである抗体が使用される。
一態様において、本発明は、ヒトIL-10Rα受容体の活性化が必要な対象において、ヒトIL-10Rα受容体を活性化するための方法であって、有効量の本発明のイムノサイトカインまたは上記のいずれかの本発明の医薬組成物を、このような処置が必要な対象に治療有効量で投与するステップを含む、方法に関する。
【0140】
本発明のイムノサイトカインは、上述したように、処置するための方法において、上述したように、処置のための使用において、および/または上述した治療用途のための医薬の製造において使用することができることが理解される。
用量および投与経路
本発明のイムノサイトカインは、問題の状態の処置において効果的な量で、すなわち所望の結果を達成するのに必要な用量および期間にわたり投与されると予想される。治療有効量は、例えば、処置しようとする具体的な状態、患者の年齢、性別、および体重、ならびにイムノサイトカインが、単独で、または1種または複数の追加の薬物または処置技術と組み合わせて投与されているかどうかなどの要因に従って変更することができる。
【0141】
投薬レジメンは、最適な所望の応答が提供されるように調整することができる。例えば、単回のボーラスが投与されてもよいし、数回に分けた用量が長期にわたり投与されてもよいし、または治療状況の緊急性により指定された通りに、用量を比例的に低減もしくは増加させてもよい。投与しやすさおよび投薬量の均一性のための単位剤形で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、処置しようとする患者/対象のための一体化された投薬量として適した物理的に別々の単位を指すことが意図され、各単位は、所望の製剤用担体と共に、所望の治療作用を生じるように計算された予め決定された量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形のための詳細は、典型的には、(a)化学療法剤の固有な特徴および達成しようとする特定の治療または予防的作用、ならびに(b)対象における感受性を処置するためのこのような活性化合物を調剤する分野において固有の限界によって決定され、直接的にそれらに依存する。
【0142】
したがって、当業者は、本明細書で提供される開示に基づいて、用量および投薬レジメンは、治療分野において周知の方法に従って調整されることを認識しているであろう。すなわち、最大許容量は、容易に確立することが可能であり、検出可能な治療作用を患者に提供する有効量も決定することができ、検出可能な治療作用を患者に提供するために、各薬剤を投与するための時間的な要件も同様に決定することができる。したがって、特定の用量および投与レジメンが本明細書において例示されるが、これらの例は、本発明の実施形態の実施において患者に提供され得る用量および投与レジメンを少しも限定しない。
【0143】
投薬量の値は、軽減しようとする状態のタイプおよび重症度に応じて変更することができ、それには、単回または複数回の用量を含み得ることに留意されたい。さらに、いずれの特定の対象にとっても、具体的な投薬レジメンは、個々の必要性および組成物を投与したりまたは組成物の投与を管理したりする医療専門家の判断に従って、経時的に調整すべきであること、および本発明の説明に記載の投薬量範囲は単なる例示であり、特許請求された組成物の範囲または実施を限定する意図はないことを理解されたい。さらに、本発明の組成物を用いた投薬レジメンは、疾患のタイプ、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、状態の重症度、投与経路、および本発明の特定のイムノサイトカインなどの様々な要因に基づいていてもよい。したがって、投薬レジメンは広く変更することができるが、標準的な方法を使用して慣例的に決定することができる。例えば、用量は、毒作用などの臨床的な作用または実験値を含み得る薬物動態学的および薬力学的なパラメーターに基づいて調整することができる。したがって、本発明は、当業者によって決定される患者内の用量漸増を包含する。適切な投薬量およびレジメンを決定するための方法は当業界において周知であり、本明細書で開示された概念が提供されれば、当業者によって理解されるであろう。
【0144】
好適な投与方法の例は、上記で提供される。
本発明のイムノサイトカインの好適な用量は、0.007~200mg/kg、好ましくは0.007~100mg/kg、例えば約0.5~50mg/kg、例えば約1~20mg/kgなどの範囲であると予想されることが予期される。本発明のイムノサイトカインは、例えば、少なくとも0.25mg/kg、例えば少なくとも0.5mg/kg、例えば、少なくとも1mg/kgなど、例えば少なくとも1.5mg/kg、例えば少なくとも2mg/kg、例えば少なくとも3mg/kg、例えば、少なくとも4mg/kg、例えば少なくとも5mg/kgなど;および例えば、最大50mg/kgまで、例えば、最大30mg/kgまでなど、例えば、最大20mg/kgまで、例えば、最大15mg/kgまでなどの用量で投与されてもよい。投与は、典型的には、適切な時間間隔で、例えば週1回、2週毎に1回、3週毎に1回または4週毎に1回で繰り返してもよく、関与する医師によって適切とみなされる限り、一部のケースにおいて、用量を必要に応じて増加または低減させる場合がある。
本発明の実行
以下の実施例は、本発明のより優れた理解のために提供される。これらの実施例は単に例示のためであり、どのような形でも本発明の範囲を限定すると解釈されないものとする。
【0145】
本明細書で引用された全ての出版物、特許、および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。前述の発明は、理解しやすくするために例証および例によっていくらか詳細に記載したが、添付の実施形態の本質または範囲から逸脱することなくそれらに特定の変更および改変をなすことができるという本発明の教示の観点から、当業者には容易に明確になるであろう。
材料および一般的な方法
ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)に示される。抗体鎖のアミノ酸は、EUの番号付けに従って番号付けされる(Edelman,G.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 63(1969)78~85;Kabat,E.A.、ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)。
組換えDNA技術
標準的な方法を使用して、Sambrook,J.ら、Molecular cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1989に記載されたようにDNAを操作した。分子生物学的な試薬は、製造元のプロトコールに従って使用された。
遺伝子合成
化学合成によって作製されたオリゴヌクレオチドから所望の遺伝子セグメントを調製した。単一の制限部位が隣接する長さ300~4000kbの遺伝子セグメントを、PCR増幅などのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよびライゲーションによってアセンブルし、その後、指定された制限部位を介してクローニングした。サブクローニングした遺伝子断片のDNA配列を、DNAシーケンシングによって確認した。
DNA配列決定
DNA配列を、サンガーシーケンシングによって決定した。
DNAおよびタンパク質の配列分析ならびに配列データの管理
配列の作成、マッピング、分析、アノテーションおよびイラストレーションのために、InfomaxのVector NT1 Advanceスイートバージョン8.0を使用した。
発現ベクター
記載された抗体および抗原の発現のために、原核細胞(大腸菌(E.coli))における発現が意図された発現プラスミドのバリアントに、真核細胞(例えばCHO細胞)における一過性発現を適用した。抗体発現カセットのほかにも、ベクターは、大腸菌における前記プラスミドの複製を可能にする複製起点、大腸菌において様々な抗生物質(例えばアンピシリンおよびカナマイシン)への耐性を付与する遺伝子を含んでいた。
【0146】
後述する記載された抗体鎖を含む融合遺伝子を、PCRおよび/または遺伝子合成によって生成し、例えば対応するベクターにおける固有な制限部位を使用した、一致する核酸セグメントの接続によって、公知の組換え方法および技術を用いてアセンブルした。サブクローニングした核酸配列を、DNAシーケンシングによって検証した。一過性トランスフェクションのために、形質転換した大腸菌培養物からのプラスミド調製によって、より多くの量のプラスミドを調製した。
【実施例
【0147】
実施例1
ヒトIL-10Ra遺伝子の配列、ならびにカニクイザル(Macaca cynomolgus(fascicularis))のオーソロガスなIL-10Ra遺伝子およびアナウサギ(Oryctolagus cuniculus)(ウサギ)のIL-10Ra遺伝子の配列の生産。
【0148】
ヒトIL-10Ra受容体の細胞外部分(https://www.uniprot.org/uniprot/Q13651)およびIL-10Ra Macaca cynomolgus(https://www.uniprot.org/uniprot/A0A2K5WJ66)の配列をクローニングするために、本発明者らは、完全にオーバーラップする遺伝子配列を形成するそれぞれ60ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドを合成した。2回のPCRを使用して各遺伝子をアセンブルすることで、642bpの断片の生産をもたらした。次に、受容体の細胞外部分を、タンパク質の親和性精製のためのEPEAタグを有するpIntAの一過性発現のためのベクターにクローニングした。
【0149】
アナウサギIL-10Ra受容体の細胞外部分の配列をクローニングするために、全RNAをウサギ末梢血液細胞から単離し、cDNAを生成した。逆転写産物を、ポリメラーゼ連鎖反応でのテンプレートとして使用して、制限部位が隣接する受容体遺伝子を生産した。次に、受容体遺伝子を、タンパク質の親和性精製のためのEPEAタグを有するpIntAの一過性発現のためのベクター(図1)にクローニングした。クローニングした核酸配列を、DNAシーケンシングによって検証した。
【0150】
実施例2
ヒトIL-10/Fc断片融合タンパク質、加えてウサギIL-10/Fc断片融合タンパク質の配列の生産。
【0151】
ヒト/ウサギIL-10配列およびヒトIgG1 Fc断片を含む遺伝子をクローニングするために、PCRによって、ならびに/または公知の組換え方法および適切な核酸セグメントを接続することによるプロトコールを使用した、例えば、SOE-PCR(オーバーラップ伸長によるスプライシング)を使用した、遺伝子合成およびアセンブリによって、遺伝子を融合した。次に、融合タンパク質遺伝子を、pIntAの一過性発現のためのベクター(図2)にクローニングした。クローニングした核酸配列を、DNAシーケンシングによって検証した。
【0152】
実施例3
哺乳類細胞懸濁培養物からのヒト、サルおよびウサギIL-10R受容体の単離および精製。
【0153】
組換えタンパク質(ウサギ、ヒトおよびサルIL-10Rα受容体、ウサギIL-10受容体)をCHO-C細胞培養培地中で生成した。発現ベクターでの細胞のトランスフェクション後、無血清培地中で、5~10日間、オービタルフィードバッチ培養(orbital feed-batch cultivation)を実行した。培養の後、細胞培養物を、2000gで20分遠心分離し、0.22μmのフィルターに通過させてろ過した。標的タンパク質を、5mlのCaptureSelect C-タグ親和性マトリックス(Thermo Scientific)およびSuperdex 200 Increase 10/300 GL(GE Healthcare)を有するXK 16カラム(GE Healthcare)を使用したAkta Pure 25クロマトグラフシステムでのアフィニティークロマトグラフィーを使用して、培養液体から単離した。培養液体を、CaptureSelect C-タグ親和性マトリックスを有するカラムに適用し、その後このカラムを、150mMのNaClが補充された20mMのTrisHCl pH7で洗浄し、タンパク質を、150mMのNaClが補充された20mMのTrisHCl pH7中の2MのMgCl2溶液で溶出させた。次に、タンパク質を、150mMのNaClを含む20mMのTrisHCl pH7に対して透析し、その後、生成物を1mlに濃縮し、150mMのNaClが補充された20mMのTrisHCl pH7溶液で平衡化したGE Superdex 200 Increase 10/300 GLカラムに適用した。標的のピークを収集し、得られた溶液をろ過した(0.22μm)。生成物を-70℃で貯蔵した。得られたタンパク質溶液の純度をSDSゲル電気泳動によって評価した(図3)。
【0154】
実施例4
哺乳類細胞懸濁培養物からのIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)の単離および精製。
【0155】
本発明の組換えIL-10-Fcタンパク質を、CHO-C細胞培養培地中で生成した。発現ベクターでの細胞のトランスフェクション後、無血清培地中で、5~10日間、オービタルフィードバッチ培養を実行した。問題のイムノサイトカインの分泌を、プロテインAバイオセンサーでの分子相互作用分析のためのPall ForteBioのOctet RED96システムを使用してモニターした。
【0156】
培養した後、細胞培養物を、2000gで20分遠心分離し、0.22μmのフィルターに通過させてろ過した。標的タンパク質を、HiTrap rProtein A FF、5mlおよびHiPrep 16/60 Sephacryl S-300HRカラム(GE Healthcare)を使用したAkta Pure 25クロマトグラフィーシステムでのアフィニティークロマトグラフィーによって、培養液体から単離した。培養液体をHiTrap rProtein A FFカラムに適用し、その後、このカラムをPBSで洗浄し、タンパク質を、100mMのクエン酸緩衝液pH3の溶液で溶出させ、その後、1/10v/Vの比率で2Mの酢酸緩衝液pH6を添加することによってタンパク質溶液を中和した。次に、タンパク質を20mMの酢酸緩衝液pH6に対して透析し、その後、生成物を濃縮し、200mMの酢酸緩衝液pH6の溶液で平衡化したHiPrep 16/60 Sephacryl S-300HRカラムに適用した。標的のピークを収集し、得られた溶液をろ過した(0.22μm)。生成物を-70℃で貯蔵した。得られたタンパク質溶液の純度をSDSゲル電気泳動によって評価した(図4)。
【0157】
実施例5
Forte Bio OctetRed96を使用した、IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)と、ヒト、カニクイザル、マウスおよびウサギIL-10Rα受容体との間の相互作用の親和性および特異性の反応速度論研究。
【0158】
ヒトIL-10受容体への、加えてカニクイザル、マウスおよびウサギIL-10Rα受容体への本発明のヒトIL-10-Fcの結合を、OctetRed96デバイス(Pall)を使用したバイオレイヤー干渉法によって評価した。AR2Gセンサーの調製および固定に関する製造元の説明書に従って、IL-10-FcをAR2Gセンサーに結合させた。次いでIL-10が固定されたセンサーを、ヒト、マカク、マウスまたはウサギIL-10Rα受容体を含有するウェルに浸した。インターロイキンおよび受容体の会合後、センサーを、後続の解離段階のための使用溶液中に浸した。得られたセンサーグラム(sensogram)から参照シグナルを引いた後、Octetデータ分析ソフトウェア(バージョン8.0)を使用して、標準的手順に従って、1:1の相互作用モデルを使用してそれを分析した。得られたデータによれば(表1)、本発明のIL-10-Fcは、ヒト、カニクイザル、マウスIL-10受容体に結合する。
【0159】
【表1】
【0160】
実施例6
IL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)の熱安定性の分析。
【0161】
20mMの酢酸緩衝液、pH6中の本発明の組換えIL10-Fcタンパク質を、プラスチック試験管中で、増幅器を使用して、50Cで48時間、続いて+4Cにシフトして加熱した。プログラムが終わった後、加熱前および後に、TSKゲルG3000SWxlカラムでの分析ゲルクロマトグラフィーを使用して試料を分析した。加熱の前および後における試料の標的のピークの面積を比較した。48時間の加熱後における二量体ピークの面積における7%の変化は、生成物の安定性および長期貯蔵の可能性を示す(表2)。
【0162】
【表2】
【0163】
実施例7
37Cでのヒト血清中での長期貯蔵におけるIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)の安定性の分析。
【0164】
IL-10は、生物において相対的に短い半減期を有する。例えば、マウスにおける半減期は、インビトロのバイオアッセイまたは敗血症性ショックシミュレーションシステムにおける効能によって測定したところ[Smithら、Cellular Immunology 173:207~214(1996)を参照]、約2~6時間である。本発明の研究において、安定性は、+37℃、ヒト血清中でのインビトロの貯蔵後における全長IL-10候補分子の濃度の減少として理解された。安定性を決定するために、IL-10-Fcイムノサイトカインをヒト血清で5μg/mlの濃度に希釈し、温度調節されたチャンバー中で+37℃で24時間~14日貯蔵した。問題の試料のバックグラウンド濃度値の後続の決定に使用される補充されていないヒト血清の試料を、類似の条件下で貯蔵した。貯蔵後、試料の濃度を、酵素免疫検査法によって決定した。データ計算およびプロットを、MS Excelソフトウェアパッケージを使用して実行した(図5)。
【0165】
したがって、本発明のIL-10+Fcは、血清プロテアーゼ分解に対する耐性により、血清中で高い安定性を有する。耐性は、所与の融合タンパク質の構造的な特徴によって提供される、このような構造は、配列番号1に示される。
【0166】
実施例8
MC/9マウス肥満細胞での細胞アッセイにおけるIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)の血管増殖活性の決定。
【0167】
サイトカイン機能に関する重要な工程は、サイトカインとその受容体との相互作用である。試験候補によるIL-10Rα受容体の活性化を、共刺激サイトカインIL4の存在下での標準的な増殖アッセイにおいて、MC/9細胞株で分析した。文献で、IL-10は、IL4の存在下で、MC/9マウス肥満細胞の増殖を刺激することが示されている(Thompson-Snipes Lら、J Exp Med.1991 doi:10.1084/jem.173.2.507 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2118779/)。アッセイは、組換えヒトIL-10の商業的に入手可能な配合物の生物学的活性を評価するための標準的なアッセイとして使用される。対照生成物(組換えヒトIL-10)の活性は、製造元(Peprotech)によって述べられた通り、MC/9株での増殖アッセイにおいて≦2.0ng/mlである。
【0168】
アッセイを、懸濁細胞培養のための96-ウェル培養プレートで行った。懸濁液は、ウェル当たり、10,000個のMC/9細胞、およびグラフに示された通りの濃度の試験候補(組換えヒトIL-10、Peprotechカタログ番号:200-10、および本発明のIL-10+Fc)を含有していた。最終的な懸濁液体積はウェル当たり150μlであった。全ての懸濁液成分を、2mMのグルタミン、10μg/mlのゲンタマイシン、10%の不活性化ウシ胎児血清(FBS)、および10pg/mlのIL4が補充されたRPMI-1640培地中で調製した。全ての成分を添加した後、湿潤した雰囲気中、5%COの存在下で、プレートを37℃で72時間インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、17μLのアラマーブルー色素をウェルに添加し、プレートを、湿潤した雰囲気中、5%のCOの存在下で、37℃で3~6時間、ピンク色の染色が見えるまでインキュベートした。蛍光を、プレートリーダーを使用して、495/590nmの波長で測定した。
【0169】
したがって、本発明のIL-10-Fcは、MC/9細胞での増殖細胞アッセイで確認された通り、IL-10Rα受容体を活性化する(図6)。本発明の試験IL-10+Fcイムノサイトカインの最大有効濃度の半分(EC50)は、細胞アッセイにおいて53.3pMであり、それに対してPeprotechからの対照組換えヒトIL-10のEC50は91.7pMであった。得られたデータは、本発明のIL-10+Fcの活性は、商業的に入手可能なIL-10の活性と比較してより高いことを示す。
【0170】
実施例9
ヒトCD8+T細胞によるIFN-γの分泌によるIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合タンパク質)(IL-10-Fc)の機能的な活性の決定。
【0171】
インビトロでのCD8+T細胞におけるTCRおよびCD28の抗原非依存性活性化(抗CD3および抗CD28抗体を介した)は、細胞表面におけるPD1発現を引き起こし、それにより、細胞傷害性リンパ球の活性の抑制とそれに続くその枯渇が起こる。同時に、IL-10Rα受容体は、細胞表面上で発現され、その活性化は、IL-10と相互作用すると、抗アポトーシス作用を有し、これが、腫瘍微小環境においてIFN-γなどの様々なサイトカインを生産する細胞傷害性T細胞の生存に寄与する。
【0172】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール密度勾配遠心分離によって健康なドナーからの全血から単離した。次いでCD8+T細胞を、商業的なキットを使用して、磁気カラム上でPBMCの懸濁液から単離した。
【0173】
ウェルに抗CD3抗体(1μg/ml)が予め固定された96-ウェルプレートで試験を実行した。懸濁液は、ウェル当たり、30,000個のCD8+T細胞、加えて1μg/mlの濃度の抗CD28抗体を含有していた。ウェル中の細胞懸濁液および抗体の最終体積は200μlであり、懸濁液の全ての成分は10%FBSを含むRPMI-1640培地中で調製された。プレートを、37℃で3日間、5%COと共にインキュベートした。インキュベーションの4日目に、細胞を収集し、遠心分離によって抗CD28抗体を洗い落とした。得られた細胞沈殿を、細胞0.3×10個/mlの濃度で、10%FBSが補充されたRPMI1640培地に懸濁した。100μlの洗浄した細胞および100μlの候補抗体を、グラフで特定された通りの濃度で、プラスチック上に抗CD3抗体が固定された新しい予備調製されたELISA96-ウェルプレートのウェルに導入した(1μg/ml)。プレートを、37℃で3日間、5%COと共にインキュベートした。インキュベーションの4日目に、培養液体のアリコートをウェルから収集し、IFN-γの濃度を測定した。
【0174】
したがって、本発明のIL-10-Fcは、ヒト活性化細胞傷害性CD8+T細胞によるサイトカインIFN-γの生産を誘導する能力を示す。
実施例10
Raji標的細胞に対するヒトCD8+T細胞の細胞傷害性へのIL-10およびヒトIgG1 Fc断片に基づくイムノサイトカイン(融合したタンパク質)(IL-10-Fc)の作用の決定。
【0175】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール密度勾配遠心分離よって健康なドナーからの全血から単離した。次いでCD8+T細胞を、磁気カラム上でPBMCの懸濁液から単離した。
【0176】
30,000個のCD8+T細胞および1μg/mlの抗CD28抗体を含有する懸濁液200μlを、ウェルに抗CD3抗体(1μg/ml)が予め固定された96-ウェルプレートに導入し、37℃で3日間、5%COでインキュベートした。次いで細胞を収集し、遠心分離によって洗浄し、10%FBSが補充されたRPMI-1640培地に懸濁し、プラスチック上に固定された抗CD3抗体(1μg/ml)およびグラフで特定された通りの濃度の候補抗体溶液を含む新しい予備調製されたELISA96-ウェルプレートのウェルに、細胞30,000個/ウェルで注入した。プレートを、37℃で3日間、5%COと共にインキュベートした。次いで細胞をプレートウェルから収集し、遠心分離によって洗浄し、沈殿を、RPMI-1640 10%培地に、細胞0.3×10個/mlの濃度で懸濁した。
【0177】
6.5mlのカルセインAM溶液を、2×10個のRaji細胞に添加した。カルセインを含む細胞を、COインキュベーター中で37℃で30分間インキュベートした。インキュベーションの最後に、遠心分離によって細胞からカルセインを2回洗い落とした。細胞0.3×10個/mlの濃度の懸濁液を調製した。
【0178】
96-ウェル培養プレート中でアッセイを実行した。懸濁液は、ウェル当たり、30,000個のCD8+T細胞、30,000個のカルセインAMで標識されたRaji細胞、および50ng/mlの最終濃度の抗CD3/CD20抗体を含有していた。プレートを、インキュベーター中、37℃、5%COで、2.5時間インキュベートした。
【0179】
インキュベーション終了前の30分間、溶解緩衝液溶液を、最大の溶解になるように制御してウェルに添加した。プレートリーダーで、485/538nmで蛍光を測定した。
本発明のIL-10+Fcの存在下におけるCD8+T細胞の培養は、Raji標的細胞に対するその細胞傷害性活性を、対照の活性と比較して7倍増加させることが示された(図8)。
【0180】
実施例11
CDC活性の測定。
CDCアッセイは、Jurkat細胞株を使用した。アッセイを、96-ウェル培養プレートで実行した。懸濁液は、ウェル当たり、50,000個のJurkat細胞、加えて、特定された濃度の本発明のIL-10+Fcおよび1:4に希釈したヒト血清相補物を含有していた。ウェル中の細胞懸濁液の最終体積は150μlであり、懸濁液の全ての成分は、0.1%BSAを含むRPMI-1640培地中で調製された。次いでプレートを、37℃で4時間、5%COと共にインキュベートした。15μlのアラマーブルー試薬を各ウェルに添加し、37℃で、5%CO、16時間インキュベートした。JSC「Biocad」によって生産されたCDC活性を有する抗体であるリツキシマブ(CO83031118R)およびJurkat細胞と同じ濃度のRaji標的細胞を、陽性対照として使用した。プレートリーダーを使用して、544nmの励起波長および590nmの発光波長で蛍光を測定した。
【0181】
本発明のIL-10+Fcは、Jurkat細胞株の補体媒介溶解(CDC)を誘導しないことが示されている(図9)。
実施例12
ADCC活性の測定。
【0182】
アッセイは、表面上にCD16を安定して発現し、NFATプロモーターの制御下にホタルルシフェラーゼをコードする遺伝子を含有する、Jurkat細胞株をベースとして作製されたレポーター細胞株Jurkat-NFAT-Luc-CD16を使用し、Jurkat-PD1クローン43が、標的細胞として使用された。アッセイを実行して、本発明の試験イムノサイトカインであるIL-10+Fcにおけるエフェクター特性の非存在を確認した。
【0183】
アッセイを、発光アッセイのために設計された白色の96-ウェル培養プレートで実行した。懸濁液は、ウェル当たり、25,000個のJurkat-NFAT-Luc-CD16エフェクター細胞、25,000個のJurkat-PD1標的細胞、およびグラフで特定された通りの濃度の本発明のIL-10-Fcを含有していた。JSC「Biocad」によって生産されたエフェクター抗PD1抗体を、陽性対照として使用した。ウェル中の細胞懸濁液およびイムノサイトカイン(本発明のIL-10+Fc)の最終体積は75μlであり、懸濁液の全ての成分は、10%FBSを含むRPMI-1640培地中で調製された。全ての成分を添加した後、プレートを、37℃で5時間、5%COでインキュベートし、次いで、One-Gloルシフェラーゼアッセイキット(Promega)を使用して、本発明者らは、ウェル中の発光強度を測定した。プレートリーダーを使用して発光を測定した。
【0184】
本発明のIL-10+Fcは、Jurkat-NFAT-Luc-CD16-V176レポーター細胞株を使用したアッセイにおいて抗体依存性細胞傷害を呈示しないことが示されている(図10)。
【0185】
実施例13
自己細胞傷害の測定。
このアッセイは、血液中の白血球の主要な部分集団の抗体によって誘導された枯渇のインビトロの評価を可能にし、順に、インビボでの研究前であっても開発中の治療的分子の安全性を評価することを可能にする。
【0186】
アッセイを、懸濁培養のための96-ウェル培養プレートで実行した。懸濁液は、ウェル当たり、300,000個の健康なドナーから新たに単離されたPBMCおよび特定された濃度の本発明のIL-10+Fcを含有しており、ウェル中の細胞懸濁液の最終体積は、150μlであった。オビヌツズマブ(aCD20)および抗CD47抗体を、陽性対照として使用した。全ての懸濁液成分を、10%のウシ胎児血清が補充されたRPMI-1640培地中で調製した。PBMCおよび抗体を混合した後、プレートを、37℃で16時間、5%COでインキュベートした。次いで、懸濁液中のPBMCにおけるCD45+、CD56+、CD19+、CD3+、CD4+およびCD8+部分集団の比率を、対応するCDに対する蛍光標識された抗体で懸濁液を直接染色することによって測定し、続いてフローサイトフルオロメーターを使用して細胞を分析した。CD56+、CD19+、CD3+細胞の場合、グラフは、試験懸濁液のCD45+細胞に対するそれらの比率を示し、それに対してCD4+、CD8+細胞の場合、グラフは、CD45+CD3+細胞に対するそれらの比率を示す。
【0187】
インビトロの自己細胞傷害アッセイは、本発明のIL-10+Fcが、ヒトPBMCにおけるNK、BおよびT細胞集団の著しい枯渇を誘導することを示さなかった(図11A、11B、11C、11D、11E)。さらに、対照抗体オビヌツズマブ(aCD20)は、CD20+B細胞集団のほぼ完全な枯渇を示し、抗CD47抗体は、NK細胞のほぼ50%の枯渇を示した。
【0188】
実施例14
インビボにおける抗腫瘍活性の研究。
研究は、Balb/cマウス(4~6週齢、体重18~24gの雄)で実行された。0.1mlのCT26腫瘍細胞懸濁液を、細胞2×10個の量で、マウスの右側面の皮下に注射した。腫瘍がおよそ70mmの体積(V=LW2/2)に達したら、動物を、グループにおける平均腫瘍体積が10%より大きく異ならないようにグループ分けした。薬物の全てを、3週にわたり週2回、腹膜内(i.p.)投与によって投与した。全てのケースにおいて、本発明のIL-10-Fcは、0.1mg/kgの用量で投与され、amPD-1は、10mg/kgの用量で投与された。本発明のIL-10-Fcの組合せを用いたグループにおいて、本発明のIL-10-Fc投与後の日にamPD-1を投与した。「腫瘍増殖対照」グループからの動物に、緩衝液を投与した。腫瘍結節の直線サイズを週2回評価した。ITG(腫瘍増殖指数)を、処置開始の日の腫瘍体積に対する測定日(1~19)における腫瘍体積の比率として計算した。
【0189】
本発明のIL-10+Fcは、単独療法において抗腫瘍活性を有すること、さらに、本発明のIL-10+Fcと抗PD1抗体との組合せは、本発明のイムノサイトカインIL-10+Fcまたは抗PD-1抗体のいずれかを用いた単独療法と比較して、抗腫瘍活性において著しい相乗効果を有することが示されている(図12、13、14)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2023553934000001.app
【国際調査報告】