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特表2023-5539414-(3,5-ジフルオロフェニル)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-アミンの調製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-アミンの調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20231219BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C07D487/04 146
A61K31/506
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535379
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2021084734
(87)【国際公開番号】W WO2022122800
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/135294
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェイチュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,グオツァイ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB06
4C050CC05
4C050EE04
4C050FF01
4C050GG02
4C050HH01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086CB08
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
(57)【要約】
本発明は、化合物(I)

又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法に関し、化合物(I)は、脳へのβアミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、並びに脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症、及びダウン症候群等の他の疾患の予防及び治療用の化合物を合成するための重要な中間体として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(VIII)
【化48】

又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法であって、以下の工程:
工程a)化合物(III)
【化49】

の、化合物(II)
【化50】

とMOMクロリドとの反応を介した形成;
工程b)化合物(IV)
【化51】

の、化合物(III)と3,5-ジフルオロアニリンとのアルキル化反応を介した形成;
工程c)化合物(VI)
【化52】

の、化合物(IV)と化合物(V)
【化53】

との反応を介した形成;
工程d)化合物(VII)
【化54】

の、化合物(VI)の脱保護反応を介した形成;
工程e)化合物(VIII)
【化55】

の、化合物(VII)の内部Mitsunobu環化反応を介した形成
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)における化合物(III)の前記形成が、溶媒の存在下で行われ、前記溶媒がDCM及びTHFから選択され、好ましくは、前記溶媒がTHFであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)における化合物(III)の前記形成が、塩基の存在下で行われ、前記塩基がKOAc、NaOAc及びNaHから選択され、好ましくは、前記塩基がNaHであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)における化合物(IV)の前記形成が、溶媒の存在下で行われ、前記溶媒が2-MeTHF、DCM及びTHFから選択され、好ましくは、前記溶媒がTHFであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)における化合物(IV)の前記形成が、塩基の存在下で行われ、前記塩基がNaHMDS、KCO、KOH、NaOH、NaH及びLiHMDSから選択され、好ましくは、前記塩基がLiHMDSであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基の当量が、1.0当量~2.5当量であり、好ましくは、前記当量が、約1.0当量、約1.2当量、約1.5当量、約2.0当量及び約2.5当量から選択され、より好ましくは、前記当量が約2.0当量であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
3,5-ジフルオロアニリンの当量が、1.0当量~2.5当量であり、好ましくは、前記当量が、約1.0当量、約1.2当量、約1.5当量、約2.0当量及び約2.5当量から選択され、より好ましくは、前記当量が約2.5当量であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)における化合物(IV)の前記形成が、-20~70℃、好ましくは10~70℃、より好ましくは25~30℃で行われることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程c)における化合物(VI)の前記形成が、塩基の存在下で行われ、前記塩基がNaOH、NaCO、CsCO及び炭酸カリウムから選択され、好ましくは、前記塩基が炭酸カリウムであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
塩基の量が、2.0当量~3.0当量であり、好ましくは、前記量が約2.06当量であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
化合物(V)の当量が、1.7当量~2.26当量であり、好ましくは、前記当量が1.7当量であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程d)における化合物(VII)の前記形成が、酸の存在下で行われ、前記酸がHBr、TFA及びHClから選択され、好ましくは、前記酸がHClであり、より好ましくは、前記酸がHCl(36.5重量%)であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
酸の体積が、1V~2Vであり、好ましくは、前記体積が約2Vであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程e)における化合物(VIII)の前記形成が、溶媒を用いてDEAD、PPhの存在下で行われ、前記溶媒がDMSO、NMP及びDMFから選択され、好ましくは、前記溶媒がDMFであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
溶媒の体積が、5V~10Vであり、好ましくは、前記体積が約5Vであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
化合物(VIII)
【化56】

又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法であって、以下の工程:
工程f)化合物(IX)
【化57】

の、化合物(II)
【化58】

と1-クロロ-3-ヨード-プロパンとの反応を介した形成、及び
工程g)化合物(VIII)
【化59】

の、化合物(IX)及び3,5-ジフルオロアニリンからのテレスコープアルキル化反応を介した形成
を含む、方法。
【請求項17】
工程f)における化合物(IX)の前記形成が、溶媒の存在下で行われ、前記溶媒がMeTHF及びTHFから選択され、好ましくは、前記溶媒がTHFであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程f)における化合物(IX)の前記形成が、塩基の存在下で行われ、前記塩基がKOAc、NaOAc、NaOH、KOH、KCO及びNaCOから選択され、好ましくは、前記塩基がKCOであることを特徴とする、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項19】
工程f)における化合物(IX)の前記形成が、0~70℃、好ましくは20~30℃、より好ましくは20~25℃で行われることを特徴とする、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程g)における化合物(VIII)の前記形成が、溶媒の存在下で行われ、前記溶媒が2-MeTHF、DCM及びTHFから選択され、好ましくは、前記溶媒が2-MeTHFであることを特徴とする、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程g)における化合物(VIII)の前記形成が、塩基の存在下で行われ、前記塩基がNaHMDS、KCO、KOH、NaOH、NaH及びLiHMDSから選択され、好ましくは、前記塩基がLiHMDSであることを特徴とする、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
塩基の量が、1.0当量~3.75当量であり、好ましくは、前記当量が、1.0当量、1.2当量、1.5当量又は3.75当量であり、より好ましくは、前記当量が3.75当量であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
3,5-ジフルオロアニリンの当量が、1.0当量~1.5当量であり、好ましくは、前記当量が1.0当量、1.2当量及び1.5当量から選択され、好ましくは、前記当量が1.2当量であることを特徴とする、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程g)における化合物(VIII)の前記形成が、-20~70℃、好ましくは0~25℃、より好ましくは最初に0℃~5℃、次いで20℃~25℃で行われることを特徴とする、請求項16~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
化合物(I)
【化60】

又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法であって、以下の工程:
工程h)化合物(I)の、化合物(VIII)
【化61】

と化合物(X)
【化62】

(X)とのBuchwaldクロスカップリング反応を介した形成
を含む、方法。
【請求項26】
工程h)における化合物(I)の前記形成が、溶媒の存在下で行われ、前記溶媒がIPAc、EtOAc、MTBE、トルエン、THF及び2-MeTHFから選択され、好ましくは、前記溶媒が2-MeTHFであることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程h)における化合物(I)の前記形成が、塩基の存在下で行われ、前記塩基がNaCO、KCO、NaHCO、KHCO、NaOH、KOH及びNaOtBuから選択され、好ましくは、前記塩基がNaOtBuであることを特徴とする、請求項25又は請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程h)における化合物(I)の前記形成が、触媒の存在下で行われ、前記触媒がPd(dba)・CHCl及びPd(OAc)から選択され、好ましくは、前記触媒がPd(dba)・CHClであることを特徴とする、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
工程h)における化合物(I)の前記形成が、20℃~80℃、好ましくは70℃~75℃で行われることを特徴とする、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
工程h)における化合物(I)の前記形成が、配位子の存在下で行われ、前記配位子がBrettPhos、AdCyBrettPhos、tBuBrettPhos、AdBrettPhos、RocPhos、tBuXphos、BippyPhos、MetBuXphos及びMeMeOtBuXphosから選択され、好ましくは、前記配位子がtBuXphosであることを特徴とする、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
工程h)における化合物(I)の前記形成が、溶媒中での再結晶を更に含み、前記溶媒がヘプタン、ヘキサン及び石油エーテルから選択され、好ましくは、前記溶媒がヘプタンであり、より好ましくは、前記溶媒がn-ヘプタンであることを特徴とする、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記再結晶が、20℃~80℃、好ましくは70℃~75℃で行われることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
溶液のpHが、3~8に調節され、好ましくは前記溶液のpHが、最初に3~4に調節され、次いで7~8に調節されたことを特徴とする、請求項31又は請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法又は請求項16~24のいずれか一項に記載の方法に従って、化合物(VIII)を調製することを更に含む、請求項25~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項25~34のいずれか一項に記載の方法に従って製造される場合の化合物(I)。
【請求項36】
請求項35に記載の化合物(I)と、薬学的に許容され得る担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、ビヒクル又はそれらの組み合わせと、を含む、薬学的組成物。
【請求項37】
脳へのβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、又は脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症、及びダウン症候群から選択される疾患の治療又は予防のための、請求項35に記載の化合物(I)。
【請求項38】
脳へのβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、又は脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症、及びダウン症候群から選択される疾患の治療又は予防のための、請求項35に記載の化合物(I)の使用。
【請求項39】
脳へのβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、又は脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症及びダウン症候群から選択される疾患の治療又は予防のための医薬品を製造するための、請求項35に記載の化合物(I)又は請求項36に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項40】
脳へのβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、又は脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症及びダウン症候群から選択される疾患を治療又は予防するための方法であって、治療有効量の請求項35に記載の化合物(I)又は請求項36に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物(I)
【化1】

又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法に関し、化合物(I)は、γ-セクレターゼのモジュレーターであり、脳へのβアミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、並びに脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症、及びダウン症候群等の他の疾患の予防及び治療用の化合物を合成するための重要な中間体として有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
化合物(I)の合成アプローチは、国際公開第2018060300号及び国際公開第2018065340号に開示された。しかしながら、現在のプロセスは、以下の問題:
(a)例えば、
【化2】

の製造について19.8%及び
【化3】

の生産について62%の非常に低い収率を有する7つの線形合成工程、
(b)中間体
【化4】

などの全ての中間体及び最終生成物のための面倒な後処理プロセスを用いたカラム精製、
(c)ヒドラジンの毒性試薬に関する安全性の懸念、
(d)大規模なAPI製造のためのより高いコスト及び触媒を除去するための複雑なプロセスをもたらし得る高価な触媒Pd(20%)の高充填の使用、
(e)HPLC分離による高コスト、
(f)大規模生産中の新たに形成されたトリアゾール環の安全性、再現性、及びスケーラビリティの懸念
のために大規模生産には適していない。
【発明の概要】
【0003】
以上のような課題を踏まえ、本発明の1つの目的は、上記の課題を一部又は全て解決し、技術的規模で適用できる効率的な合成法を見出すことである。
【0004】
本発明の一態様は、式(I)
【化5】

の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法に関する。
【0005】
本発明の別の態様は、化合物(III)
【化6】

及び化合物(IV)
【化7】

の調製のための新規な方法に関する。
【0006】
本発明の方法の利点には、以下の1つ又は複数:
(a)工程の少ない全く新しいプロセス;
(b)スケールアップのために安全で堅牢、トリアゾール環形成工程なし;
(c)後処理プロセスを実施し、カラム精製はなし
が含まれるが、これらに限定されない。
【0007】
別の実施形態では、化合物(I)、及びその薬学的に許容され得る担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、ビヒクル又は組み合わせを含む薬学的組成物が本明細書で提供される。
【0008】
別の実施形態では、脳へのβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、又は脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症、及びダウン症候群から選択される疾患の治療又は予防のための化合物(I)が本明細書で提供される。
【0009】
別の実施形態では、脳へのβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、又は脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症、及びダウン症候群から選択される疾患の治療又は予防のための化合物(I)の使用が本明細書で提供される。
【0010】
別の実施形態では、脳へのβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、又は脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症及びダウン症候群から選択される疾患の治療又は予防のための医薬品を製造するための化合物(I)又は薬学的組成物の使用が本明細書で提供される。
【0011】
別の実施形態では、脳へのβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、又は脳アミロイド血管症、Dutch型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症及びダウン症候群から選択される疾患を治療又は予防する方法であって、治療有効量の化合物(I)又は本明細書に開示される薬学的組成物を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、式Iの化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、適切な非毒性の有機若しくは無機酸又は有機若しくは無機塩基から形成される通常の酸付加塩又は塩基付加塩を指す。酸付加塩には、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸及び硝酸などの無機酸に由来するもの、並びにp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸などの有機酸に由来するものなどが含まれる。塩基付加塩には、アンモニウム、カリウム、ナトリウム及び第四級アンモニウムヒドロキシド、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに由来するものが含まれる。薬学的化合物の塩への化学的改変は、化合物の改善された物理的及び化学的安定性、吸湿性、流動性並びに溶解度を得るための、薬学系化学者に周知の技法である。これは例えば、Bastin R.J.,ら、Organic Process Research&Development 2000,4,427-435;又はAnsel,H.,ら,In:Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,6th ed.(1995),pp.196 and 1456-1457に記載されている。
【0013】
略語
API 医薬品有効成分
(Boc)O 二炭酸ジ-tert-ブチル
DCM ジクロロメタン
DEAD ジエチルアゾジカルボキシレート
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
Eq.当量
EtOAc又はEA 酢酸エチル
EtOH エタノール
IPA イソプロパノール
IPAc 酢酸イソプロピル
CO 炭酸カリウム
KOAc 酢酸カリウム
KOH 水酸化カリウム
Pd(dba) トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
Pd(OAc)酢酸パラジウム(II)
LiHMDS リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
2-MeTHF 2-メチルテトラヒドロフラン
MeOH メタノール
MOM メトキシメチル
MgSO 硫酸マグネシウム
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
NaH 水素化ナトリウム
NaHMDS ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド
NaOAc 酢酸ナトリウム
NaOtBu ナトリウムtert-ブタノール
NHCl 塩化アンモニウム
NMP N-メチル-2-ピロリドン
PPh トリフェニルホスフィン
SEM 2-(トリメチルシリル)エトキシメチル
tBuOH tert-ブタノール
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
TFA トリフルオロ酢酸
v/v 体積比
wt.% 重量パーセント
【0014】
本発明は、スキーム1~3に概説されるような革新的なプロセスを提供する。
【化8】
【0015】
合成は、以下の工程:
工程a)化合物(III)
【化9】

の、化合物(II)
【化10】

とMOMクロリドとの反応を介した形成;
工程b)化合物(IV)
【化11】

の、化合物(III)と3,5-ジフルオロアニリンのアルキル化反応を介した形成;
工程c)化合物(VI)
【化12】

の、化合物(IV)と化合物(V)
【化13】

との反応を介した形成;
工程d)化合物(VII)
【化14】

の、化合物(VI)の脱保護反応を介した形成;
工程e)化合物(VIII)
【化15】

の、化合物(VII)の内部Mitsunobu環化反応を介した形成
を含む。
【0016】
工程a)~e)の詳細な説明は以下の通りである。
【0017】
工程a)化合物(III)
【化16】

の、化合物(II)
【化17】

とMOMクロリドとの反応を介した形成。
【0018】
化合物(III)は、適切な溶媒及び適切な塩基の存在下で合成される。
【0019】
適切な溶媒は、DCM及びTHFから選択される。好ましくは、溶媒はTHFである。
【0020】
適切な塩基は、KOAc、NaOAc及びNaHから選択される。好ましくは、好適な塩基はNaHである。
【0021】
工程b)化合物(IV)
【化18】

の、化合物(III)と3,5-ジフルオロアニリンとのアルキル化反応を介した形成。
【0022】
化合物(IV)は、適切な塩基を含む適切な溶媒中で合成される。
【0023】
適切な溶媒は、2-MeTHF、DCM及びTHFから選択される。好ましくは、溶媒はTHFである。
【0024】
適切な塩基は、NaHMDS、KCO、KOH、NaOH、NaH及びLiHMDSから選択される。好ましくは、塩基はLiHMDSである。
【0025】
適切な塩基の適切な当量は、1.0当量~2.5当量である。好ましくは、当量が、約1.0当量、約1.2当量、約1.5当量、約2.0当量及び約2.5当量から選択される。より好ましくは、当量が約2.0当量である。
【0026】
3,5-ジフルオロアニリンの当量が、1.0当量~2.5当量である。好ましくは、当量が、約1.0当量、約1.2当量、約1.5当量、約2.0当量及び約2.5当量から選択される。より好ましくは、当量が約2.5当量である。
【0027】
反応は、-20~70℃、10~70℃、好ましくは25~30℃で行われる。
【0028】
本発明で設計された温度システムは、高収率及び不純物に対して良好なパージ効果を与える。
【0029】
工程c)化合物(VI)
【化19】

の、化合物(IV)と化合物(V)
【化20】

との反応を介した形成。
【0030】
化合物(VI)は、適切な量の塩基と共に化合物(V)の存在下で合成される。
【0031】
化合物(V)の適切な量は、1.7当量~約2.26当量である。好ましくは、当量は約1.7当量である。
【0032】
適切な塩基は、NaOH、NaCO、CsCO及び炭酸カリウムから選択される。好ましくは、塩基は炭酸カリウムである。
【0033】
塩基の適切な量は、2.0当量~3.0当量であり、好ましくは、量は約2.06当量である。
【0034】
工程d)化合物(VII)
【化21】

の、化合物(VI)の脱保護反応を介した形成。
【0035】
この工程における化合物(VII)は、適切な体積の酸の存在下での脱保護反応を介して合成される。
【0036】
適切な酸は、HBr、TFA及びHClから選択される。好ましくは、酸はHClである。より好ましくは、酸は水中のHCl(36.5重量%)である。
【0037】
脱保護反応に使用される酸の適切な体積は1V~2Vである。好ましくは、体積は約2Vである。
【0038】
工程e)化合物(VIII)
【化22】

の、化合物(VII)の内部Mitsunobu環化反応を介した形成。
【0039】
化合物(VIII)は、適切な体積の溶媒を用いたDEAD、PPhの存在下での環化である。
【0040】
適切な溶媒は、DMSO、NMP及びDMFから選択される。好ましくは、溶媒はDMFである。
【0041】
溶媒の適切な体積は、5V~10Vである。好ましくは、体積は約5Vである。
【化23】
【0042】
合成は、以下の工程:
工程f)化合物(IX)
【化24】

の、化合物(II)
【化25】

と1-クロロ-3-ヨード-プロパン
との反応を介した形成;
工程g)化合物(VIII)
【化26】

の、化合物(IX)及び3,5-ジフルオロアニリンからのテレスコープアルキル化反応を介した形成
を含む。
【0043】
工程f)~g)の詳細な説明は以下の通りである。
【0044】
工程f)化合物(IX)
【化27】

の、化合物(II)
【化28】

と1-クロロ-3-ヨード-プロパン
【化29】

との反応を介した形成。
【0045】
式(IX)の化合物は、適切な溶媒の存在下で適切な塩基を用いて合成される。
【0046】
適切な溶媒は、MeTHF及びTHFから選択される。好ましくは、溶媒はTHFである。
【0047】
適切な塩基は、KOAc、NaOAc、NaOH、KOH、KCO及びNaCOから選択される。好ましくは、好適な塩基はKCOである。
【0048】
反応は、0℃~70℃、好ましくは20℃~30℃、より好ましくは20℃~25℃で行われる。
【0049】
ジボロモプロパン又はジクロロプロパンをアルキル化試薬として使用している間に二量体
【化30】

が検出されたが、これらは選択性が低いために大規模製造には適さない。本発明では、1-クロロ-3-ヨード-プロパンを使用して化合物(IX)を提供し、これは、大規模製造における二量体不純物を回避するために良好に制御することができる。
【0050】
工程g)化合物(VIII)
【化31】

の、化合物(IX)及び3,5-ジフルオロアニリンからのテレスコープアルキル化反応を介した形成。
【0051】
化合物(VIII)は、適切な塩基を含む適切な溶媒中で合成される。
【0052】
適切な溶媒は、2-MeTHF、DCM及びTHFから選択される。好ましくは、溶媒は2-MeTHFである。
【0053】
適切な塩基は、NaHMDS、KCO、KOH、NaOH、NaH及びLiHMDSから選択される。好ましくは、塩基はLiHMDSである。
【0054】
塩基の適切な当量は、1.0当量~3.75当量である。好ましくは、当量は、1.0当量、1.2当量、1.5当量又は3.75当量である。より好ましくは、当量は3.75当量である。
【0055】
3,5-ジフルオロアニリンの適切な当量は、1.0当量~1.5当量であり、好ましくは、当量は、1.0当量、1.2当量及び1.5当量から選択される。好ましくは、当量は1.2当量である。
【0056】
反応は、-20℃~70℃、好ましくは0℃~25℃、より好ましくは最初に0℃~5℃、次いで20℃~25℃で行われる。
【0057】
温度は、環化に関してプロセス全体にとって重要である。本発明では、工程g)は、2段階で実行することができ、これらは固体単離なしにテレスコープ式にされる。本発明の工程g)の温度は、高収率及び不純物に対して良好なパージ効果を与える。
【化32】
【0058】
工程h)化合物(I)
【化33】

の、化合物(VIII)及び化合物(X)(国際公開第2019141832号に記載されている方法に従って調製)のBuchwaldクロスカップリング反応を介した形成。
【0059】
工程h)の詳細な説明は以下の通りである。
【0060】
この工程における化合物(I)は、適切な溶媒中、適切な触媒、塩基及び配位子の存在下、Buchwaldクロスカップリング反応を介して、合成される。化合物(I)を、適切な溶媒中で行った再結晶によって精製する。
【0061】
クロスカップリング反応に使用される適切な触媒は、Pd(dba)・CHCl、Pd(OAc)から選択される。好ましくは、前記触媒はPd(dba)・CHClである。
【0062】
クロスカップリング反応に使用される適切な塩基は、NaCO、KCO、NaHCO、KHCO、NaOH、KOH及びNaOtBuから選択される。好ましくは、塩基はNaOtBuである。
【0063】
クロスカップリング反応に使用される適切な溶媒は、IPAc、EtOAc、MTBE、トルエン、THF及び2-MeTHFから選択される。好ましくは、溶媒は2-MeTHFである。
【0064】
クロスカップリング反応は、適切な溶媒中、20℃~80℃、好ましくは70℃~75℃で行われる。
【0065】
配位子は、BrettPhos、AdCyBrettPhos、tBuBrettPhos、AdBrettPhos、RocPhos、tBuXphos、BippyPhos、MetBuXphos及びMeMeOtBuXphosから選択され、好ましくは、配位子はtBuXphosである。
【0066】
再結晶は、適切な溶媒中、20℃~80℃、好ましくは70℃~75℃で行われる。適切な溶媒は、ヘプタン、ヘキサン及び石油エーテルから選択される。好ましくは、溶媒はヘプタンである。より好ましくは、溶媒はn-ヘプタンである。
【0067】
再結晶のために、溶液のpHを3~8に調節した。好ましくは、溶液のpHを最初に3~4に調節して透明な溶液を得て、次いで7~8に調節した。
【0068】
本発明における再結晶条件は、不純物及び過剰の残留溶媒に対する良好なパージ効果を有する高収率生成物を生成することができる。
【実施例
【0069】
実施例
本発明は、以下の実施例を参照することによってよりよく理解されるであろう。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0070】
実施例1
3,5-ジブロモ-1H-1,2,4トリアゾール(化合物(III))
【化34】
【0071】
10Lガラス内張反応器中のNaH(125g、3.11mol、1.1当量)のTHF(3.5L)溶液に、3,5-ジブロモ-1H-1,2,4-トリアゾール(641g、2.83mol)を、0~5℃でゆっくりと小分けにして投入した。0~5℃で1時間撹拌した後、その混合物にMOMクロリド(275g、3.40mol)を0℃で滴下した。混合物を20~25℃で16時間撹拌した。氷水(6.5kg、10v)を滴下して反応混合物を0~5℃でクエンチし、次いで、EA(6.5L)で3回抽出した。合わせた有機層を水(6.5kg)及び20重量%のNaCl水溶液(6.5kg)で洗浄し、次いで、濃縮して、化合物(III)を得た(613kg、収率80%、純度99.4%)。
化合物(III):H NMR(400MHz,CDCl)δ=5.44(s,2H),3.47(s,3H).
[M+H]=269.8
【0072】
実施例2
5-ブロモ-N-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-(メトキシメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-アミン(化合物(IV))
【化35】
【0073】
10Lガラス内張反応器中の化合物(III)(613g、2.3mol)の無水THF(3L)溶液に、3,5-ジフルオロアニリン(741g、5.75mol、2.5当量)を、20~25℃で投入した。30分間撹拌し、0~5℃に冷却した後、LiHMDS(THF中1M、4.6L、4.6mol、2.0当量)を、0~5℃で滴下した。反応混合物を、更に16時間撹拌しながら25~30℃まで加温した。飽和NHCl水溶液(6.1kg、10v)を、反応混合物に滴下して、0~5℃で反応をクエンチし、次いで、EA(6.5L)で3回抽出した。合わせた有機層を、水(6.5kg)及び20重量%NaCl水溶液(6.5kg)で洗浄し、次いで、真空下で濃縮した。石油(3.2kg)を反応混合物に添加し、次いで、20~25℃で1時間スラリー化した。固体を、ろ過によって分離し、石油(1kg)で洗浄した。ろ液を、真空オーブン(30mmHg、40℃)中で32時間乾燥させて、化合物(IV)を得た(541g、収率75%、純度98.8%)。
化合物(IV):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=7.14-7.11(t,1H),6.94(s,1H),5.40(s,2H),3.46(s,1H).
[M+H]=320.8
【0074】
反応温度の影響を実証するために一連の研究を実施したところ、25~30℃が、アルキル化反応の最良の条件であることが示された。更に、2.0当量のLiHMDS及び2.5当量の3,5-ジフルオロアニリンは、より良好な結果を提供する。
【表1】
【0075】
実施例3
5-ブロモ-N-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-(メトキシメチル)-N-(3-テトラヒドロピラン-2-イルオキシプロピル)-1,2,4-トリアゾール-3-アミン(化合物(VI))
【化36】
【0076】
10Lガラス内張反応器中の化合物(IV)(843g、2.64mol)のDMF(4000mL)溶液に、KCO(750g、5.43mol、2.06当量)及び2-(3-ブロモプロポキシ)テトラヒドロピラン(1000g、4.48mol、1.7当量)を、20~25℃で投入し、16時間撹拌した。得られた反応混合物を、0~5℃に冷却した。水(3kg)を、反応混合物に添加し、次いで、EA(6.5L)で3回抽出した。合わせた有機層を、水(6.5kg)及び20重量%NaCl水溶液(6.5kg)で洗浄し、次いで、濃縮して、化合物(VI)を褐色油として得て(1.51kg、収率100%、純度94.0%)、この油を、更なる精製なしで次の工程で使用した。
化合物(VI):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=6.54-6.47(dd,2H),5.02(s,1H),4.60-4.58(d,2H),3.97-3.81(m,5H),3.64-3.45(m,3H),3.36(s,3H),1.99-1.56(m,13H).
【0077】
実施例4
3-(N-(3-ブロモ-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)-3,5-ジフルオロアニリノ)プロパン-1-カルバメート(化合物(VII))
【化37】
【0078】
20Lガラス内張反応器に、化合物(VI)(1510g)、メタノール(6000mL)、塩酸(2.4L)及び水(2.4L)を20~25℃で投入し、次いで混合物を70~75℃に加熱し、5時間撹拌した。得られた反応混合物を。20~25℃に冷却し、濃縮してメタノールを除去し、次いで、4N NaOH水溶液(6.9L)で残渣をpH=8~9に調節した。得られた反応混合物をEA(15L)で2回抽出した。合わせた有機層を、食塩水で20重量%NaCl水溶液(20L)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して溶媒を除去した。得られた反応混合物にEA(2L)を添加し、次いで、50~55℃に加熱し、次いで、ヘプタン(6L)を反応混合物に滴下し、次いで、6時間かけて20~25℃に冷却し、更に1時間撹拌した。固体をフィルタによって分離し、EA/ヘプタン(1/3、500mL)で洗浄し、真空中(30mmHg、40℃)で16時間乾燥させることにより、化合物(VII)を白色固体として得た(621g、収率70%、純度99.0%)。
化合物(VII):H NMR:(400MHz,CDCl)δ ppm:12.17-10.22(s,1H),6.90-6.88(dd,2H),6.66-6.60(t,1H),4.03-3.99(t,2H),3.71-3.68(d,2H),1.88-1.85(t,2H).
【0079】
実施例5
2-ブロモ-4-(3,5-ジフルオロフェニル)-6,7-ジヒドロ-5 H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン(化合物(I)
【化38】
【0080】
10Lガラス内張反応器に、化合物(VII)(621g、1.86mol)、DMF(4L)、PPh(800g、3.05mol、1.64当量)を、20~25℃で投入した。得られた混合物を-20~10℃に冷却し、次いで、DEAD(500g、2.87mol)を-20~-10℃の混合物に滴下し、3時間撹拌した。水(6.21kg、10v)を反応混合物に滴下して0~5℃で反応をクエンチし、次いで、EA(6.5L)で3回抽出した。合わせた有機層を、20重量%NaCl水溶液(10L)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して溶媒を除去した。得られた残留物を、20~25℃でMeOH(6.2L、10V)で希釈し、1時間撹拌し、次いで、固体をフィルタによって分離し、MeOH(600mL)ですすいだ。得られた残留物を、20~25℃でEA(6.2L、10V)で希釈し、次いで、70~75℃に加熱し、1時間撹拌した。得られた混合物を20~25℃に冷却し、次いで、固体をフィルタによって分離し、EA(600mL)ですすいだ。得られたケーキを真空オーブン(30mmHg、40℃)で16時間乾燥させて、化合物(I)を白色固体として得た(287g、収率48.0%、純度98.0%)。
化合物(VIII):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=7.39-7.34(m,2H),6.97-6.92(m,1H),4.11-4.08(m,2H),3.85-3.83(m,2H),2.26-2.20(m,2H).
【0081】
実施例6
3,5-ジブロモ-1H-1,2,4トリアゾール(化合物IX)
【化39】
【0082】
250mL反応器に、3,5-ジブロモ-1H-1,2,4-トリアゾール(10g、44.1mmol、当量:1)、THF(88g、100ml)、炭酸カリウム(12.2g、88.2mmol、当量:2.0)及び1-クロロ-3-ヨードプロパン(11g、53.8mmol、当量:1.22)を投入した。混合物を20℃~25℃で16時間撹拌した。水(100mL)を反応混合物に添加し、次いで、EA(100mL)で抽出した。合わせた有機層を、20重量%NaCl水溶液(50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで、濃縮して溶媒を除去し、化合物(IX)を得た。粗製物を、更なる精製なしで次の工程で使用した。
【0083】
実施例7
3,5-ジブロモ-1H-1,2,4トリアゾール(化合物IX)
【化40】
【0084】
250mL反応器に、3,5-ジブロモ-1H-1,2,4-トリアゾール(35g、154mmol、当量:1)、THF(88g、350ml;炭酸カリウム(42.6g、309mmol、当量:2.0)及び1-クロロ-3-ヨードプロパン(31.5g、154mmol、当量:1)を投入し、20℃~25℃で48時間撹拌した。水(300mL)を反応混合物に添加し、次いで、2-MeTHF(150mL)で抽出した。合わせた有機層を、20重量%NaCl水溶液(150mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで、濃縮して溶媒を除去し、化合物(IX)を得た(54.5g、純度78.94% GC-MS、収率91.9%)。粗製物を、更なる精製なしで次の工程で使用した。
【0085】
実施例8
3,5-ジブロモ-1H-1,2,4トリアゾール(化合物IX)
【化41】
【0086】
2L反応器に、3,5-ジブロモ-1H-1,2,4-トリアゾール(110g、475mmol、当量:1)、THF(880g、1L)、炭酸カリウム(134g、950mmol、当量:2.0)及び1-クロロ-3-ヨードプロパン(129g、618mmol、当量:1.3)をを投入し、20℃~25℃で48時間撹拌した。水(550mL)を反応混合物に添加し、次いで、分離し、次いで、有機層を20重量%NaCl水溶液(225mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで、濃縮して溶媒を除去し、化合物(IX)を得た(165g、純度81%(GC-MS)、収率92.7%)。粗製物を、更なる精製なしで次の工程で使用した。
【0087】
実施例9
2-ブロモ-4-(3,5-ジフルオロフェニル)-6,7-ジヒドロ-5 H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン(化合物(VIII)
【化42】
【0088】
500mLガラス内張反応器に、3,5-ジフルオロアニリン(5.79g、44.9mmol、1.2当量)、化合物(IX)(14g、37.4mmol、1.0当量)及び2-MeTHF(140mL)を、20℃~25℃で投入した。30分間撹拌し、0~5℃に冷却した後、LiHMDS(THF中1M、140mL、140mmol、3.75当量)を0℃~5℃で滴下した。反応混合物を更に1時間撹拌しながら20℃~25℃に加温した。飽和NHCl水溶液(200mL、10v)を反応混合物に滴下して20~25℃で反応をクエンチし、次いで、20重量%NaCl水溶液(100mL)を20~25℃で反応物に添加し、1時間撹拌した。得られた混合物をEA(200mL)で抽出した。合わせた有機層を、20重量%NaCl水溶液(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで、濃縮して溶媒を除去した。得られた反応混合物に、EA(50mL)を添加し、次いで、50℃~55℃に加熱し、次いで、ヘプタン(150mL)を反応混合物に滴下し、次いで、6時間かけて20℃~25℃に冷却し、更に1時間撹拌した。固体をフィルタによって分離し、EA/ヘプタン(1/3、10mL)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、40℃)で32時間乾燥させて、化合物(IV)を灰色固体として得た(8g、収率67.2%、純度99.0%)。
化合物(VIII):H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=7.39-7.34(m,2H),6.97-6.92(m,1H),4.11-4.08(m,2H),3.85-3.83(m,2H),2.26-2.20(m,2H).
【0089】
反応温度及びアニリン化合物(IXa)の当量の影響を実証するために一連の研究を実施したところ、0℃~25℃及び1.2当量の化合物(IXa)が、この環化反応の最良の条件であることが示された:
【化43】

【表2】
【0090】
実施例10
2-ブロモ-4-(3,5-ジフルオロフェニル)-6,7-ジヒドロ-5 H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン(化合物(VIII)
【化44】
【0091】
3Lガラス内張反応器に、3,5-ジフルオロアニリン(69.6g、529mmol、1.2当量)、化合物(IX)(165g、441mmol、1.0当量)及び2-MeTHF(825mL)を、20℃~25℃で投入した。30分間撹拌し、0~5℃に冷却した後、LiHMDS(THF中1.9M、835mL、1.59mol、3.6当量)を、0℃~5℃で滴下した。反応混合物を更に1時間撹拌しながら20℃~25℃に加温した。飽和NHCl水溶液(2L、10v)を反応混合物に滴下して20~25℃で反応をクエンチし、次いで、20重量%NaCl水溶液(1L)を20~25℃で反応物に添加し、1時間撹拌した。得られた混合物をEA(2000mL)で抽出した。合わせた有機層を、20重量%NaCl水溶液(1L)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで、濃縮して溶媒を除去した。得られた反応混合物にEA(500mL)を添加し、次いで、50℃~55℃に加熱し、次いで、ヘプタン(1.5L)を反応混合物に滴下し、次いで、6時間かけて20℃~25℃に冷却し、更に1時間撹拌した。固体をフィルタによって分離し、EA/ヘプタン(1/1、100mL)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、40℃)で32時間乾燥させて、化合物(IV)を灰色固体として得た(94g、収率67.7%、純度98.8%)。
化合物(VIII):H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=7.39-7.34(m,2H),6.97-6.92(m,1H),4.11-4.08(m,2H),3.85-3.83(m,2H),2.26-2.20(m,2H).
【0092】
実施例11
4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-アミン(化合物(I))
【化45】
【0093】
50mLの一ツ口フラスコに、NaOtBu(1.2g、12.4mmol、当量:4)、2-MeTHF(10.2g、120ml、10V)、(1R,5S,8S)-3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-アミン二塩酸塩(1.06mg、3.42mmol、当量:1.1)を、N下、20℃~25℃で一度に投入した。次いで、得られた混合物に、化合物(VIII)(1g、3.11mmol、当量:1)、Pddba・CHCl(32.2mg、31μmol、当量:0.01)及びtBuXphos(26.4mg、62.2μmol、当量:0.02)を、20℃~25℃で投入した。得られた混合物を約75℃に加熱し、2時間撹拌した。得られた混合物を、20℃~25℃に冷却し、水(10mL)及びMeOH(10mL)を添加し、次いで、2-MeTHF(25mL)で2回抽出した。合わせた有機層を、MCCパッドを通してフィルタにかけ、次いで、濃縮して溶媒を除去した。残留物に2-MeTHF(5mL)を添加し、次いで、反応混合物を20℃~25℃に加熱した。Hpetane(15mL)を反応混合物に滴下し、次いで、20℃~25℃に冷却し、更に10時間撹拌した。生成物を、フィルタによって回収し、ヘプタン(2ml)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、40℃)中で16時間乾燥させて、化合物(IV)を得た(1.1g、収率77.5%、純度98.8%)。
【0094】
化合物(VI):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ ppm 8.35(s,1H),7.45(dd,J=10.6,2.0Hz,2H),6.78-6.86(m,1H),6.63(s,1H),5.84(d,J=4.1Hz,1H),3.96-4.41(m,2H),3.93(t,J=6.0Hz,2H),3.75-3.81(m,2H),3.54(d,J=4.1Hz,1H),2.96(br d,J=12.1Hz,2H),2.44(br s,2H),2.25(s,3H),2.19(quin,J=5.8Hz,2H),1.83-1.88(m,2H),1.27-1.33(m,2H).
13C NMR(101MHz,DMSO-d)δ ppm 21.85(s,1C),24.20(s,1C),25.74(s,2C),38.73(s,2C),43.86(s,1C),45.64(s,1C),50.63(s,2C),62.08(s,1C),97.20(t,J=26.41Hz,1C),101.92(s,1C),102.81(d,J=29.34Hz,2C),145.80(t,J=13.94Hz,1C),149.51(s,1C),157.61(s,1C),160.39(s,1C),162.79(dd,J=242.09,16.14Hz,2C),163.20(s,1C),164.75(s,1C)
19F NMR(376MHz,DMSO-d6)δ=-110.00-1110.13(m,2F)
[α]D25=0.199
HRMS:計算値453.225 [C2326+H],実測値453.2354 [M+H]
【0095】
実施例12
4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-アミン(化合物(I))
【化46】
【0096】
250mLの一ツ口フラスコに、NaOtBu(12g、124mmol、当量:4)、2-MeTHF(102g、120ml、10V)、(1R,5S,8S)-3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-アミン二塩酸塩(10.7g、34.2mmol、当量:1.1)を、N下、20℃~25℃で一度に投入した。次いで、得られた混合物に、化合物(VIII)(10g、31.1mmol、当量:1)、Pddba・CHCl(322mg、311μmol、当量:0.01)及びtBuXphos(264mg、622μmol、当量:0.02)を、20℃~25℃で投入した。得られた混合物を75℃に加熱し、2時間撹拌した。得られた混合物を20℃~25℃に冷却し、水(100mL)及びMeOH(100mL)を添加し、次いで、2-MeTHF(250mL)で2回抽出した。合わせた有機層を、MCC(微結晶セルロース)パッドを通してフィルタにかけ、次いで、濃縮して溶媒を除去した。残留物に2-MeTHF(50mL)を添加し、次いで、反応混合物を20℃~25℃に加熱した。ヘプタン(150mL)を反応混合物に滴下し、次いで、20℃~25℃に冷却し、更に10時間撹拌した。生成物を、フィルタによって回収し、ヘプタン(20)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、40℃)で16時間乾燥させて、化合物(I)を得た(12g、収率85%、純度98.1%)。
【0097】
化合物(I):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ ppm 8.35(s,1H),7.45(dd,J=10.6,2.0Hz,2H),6.78-6.86(m,1H),6.63(s,1H),5.84(d,J=4.1Hz,1H),3.96-4.41(m,2H),3.93(t,J=6.0Hz,2H),3.75-3.81(m,2H),3.54(d,J=4.1Hz,1H),2.96(br d,J=12.1Hz,2H),2.44(br s,2H),2.25(s,3H),2.19(quin,J=5.8Hz,2H),1.83-1.88(m,2H),1.27-1.33(m,2H).
13C NMR(101MHz,DMSO-d)δ ppm 21.85(s,1C),24.20(s,1C),25.74(s,2C),38.73(s,2C),43.86(s,1C),45.64(s,1C),50.63(s,2C),62.08(s,1C),97.20(t,J=26.41Hz,1C),101.92(s,1C),102.81(d,J=29.34Hz,2C),145.80(t,J=13.94Hz,1C),149.51(s,1C),157.61(s,1C),160.39(s,1C),162.79(dd,J=242.09,16.14Hz,2C),163.20(s,1C),164.75(s,1C)
19F NMR(376MHz,DMSO-d)δ=-110.00-1110.13(m,2F)
[α]D25=0.199
HRMS:計算値453.225[C2326+H],実測値453.2354 [M+H]
【0098】
実施例13
4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-アミン(化合物(I))
【化47】
【0099】
5Lの3ツ口フラスコに、NaOtBu(191g、1.99mol、当量:4)、2-MeTHF(1.6L、10V)、(1R,5S,8S)-3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-アミン二塩酸塩(171g、547mmol、当量:1.1)を、N下、20℃~25℃で一度に投入した。次いで、得られた混合物に、化合物(VIII)(160g、498mmol、当量:1)、Pd(dba)・CHCl(4.56g、4.98mmol、当量:0.01)及びtBuXphos(4.23g、9.95mmol、当量:0.02)を、20℃~25℃で投入した。得られた混合物を70℃~75℃に加熱し、2時間撹拌した。得られた混合物にヘプタン(1.6L)を添加し、次いで、20℃~25℃に冷却した。粗固体をフィルタによって回収し、Hep/2-MeTHF(1:1、150mL)ですすいだ。得られたケーキを水でスラリー化し、20℃~25℃で2時間撹拌した。粗固体をフィルタによって回収し、水(200mL)ですすいだ。得られたケーキを、2L反応器内でMeOH(400mL)及びDCM(1L)で希釈した。木炭(20g)を懸濁液に添加し、2時間撹拌しながら60℃~65℃に加熱し、次いで20℃~25℃に冷却した。懸濁液をセライトを通してろ過し、MeOH/DCM(4:10、100mL)ですすいだ。ろ液を濃縮し、残留物を2-MeTHF(500mL)で希釈し、60℃~65℃に加熱し、30分間撹拌した。得られた混合物にヘプタン(1500mL)を60℃~65℃で滴下し、次いで60℃~65℃に冷却し、10時間撹拌した。粗製物をフィルタによって回収し、ヘプタン(200mL)ですすぎ、次いで、ケーキを水(160ml)で希釈し、HCl(36.5重量%、129mL)でpHを3~4に調節した。得られた反応混合物にNaOH(1M、568mL)を添加し、pHを7~8に調節し、得られた混合物を20℃~25℃で1時間撹拌した。生成物を、フィルタによって回収し、ヘプタン(20)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、40℃)で16時間乾燥させて、化合物(I)(200g、収率87.9%、純度98.98%)を得た。
【0100】
化合物(I):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ ppm 8.35(s,1H),7.45(dd,J=10.6,2.0Hz,2H),6.78-6.86(m,1H),6.63(s,1H),5.84(d,J=4.1Hz,1H),3.96-4.41(m,2H),3.93(t,J=6.0Hz,2H),3.75-3.81(m,2H),3.54(d,J=4.1Hz,1H),2.96(br d,J=12.1Hz,2H),2.44(br s,2H),2.25(s,3H),2.19(quin,J=5.8Hz,2H),1.83-1.88(m,2H),1.27-1.33(m,2H).
13C NMR(101MHz,DMSO-d)δ ppm 21.85(s,1C),24.20(s,1C),25.74(s,2C),38.73(s,2C),43.86(s,1C),45.64(s,1C),50.63(s,2C),62.08(s,1C),97.20(t,J=26.41Hz,1C),101.92(s,1C),102.81(d,J=29.34Hz,2C),145.80(t,J=13.94Hz,1C),149.51(s,1C),157.61(s,1C),160.39(s,1C),162.79(dd,J=242.09,16.14Hz,2C),163.20(s,1C),164.75(s,1C)
19F NMR(376MHz,DMSO-d)δ=-110.00-1110.13(m,2F)
[α]D25=0.199
HRMS:計算値453.225[C2326+H],実測値453.2354 [M+H]
【国際調査報告】