(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車両の制御装置をテストするための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G01M17/007 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535388
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021082140
(87)【国際公開番号】W WO2022122339
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】102020215657.3
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】メーサローシュ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ユハス,チャバ
(72)【発明者】
【氏名】ネメシュ,アンドラーシュ
(72)【発明者】
【氏名】メーサローシュ,ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】バシュ,ペーテル・ミハーイ
(72)【発明者】
【氏名】イムレ,ビクトル
(57)【要約】
本発明は、車両の制御装置(20)をテストするための方法であって、前記制御装置(20)は、環境センサシミュレーションを用いて算出された、少なくとも1つのシミュレート環境センサの周辺データと、車両・周辺シミュレーションを用いて算出された、シミュレート車両の移動データと、を取得し、前記車両・周辺シミュレーションは、コンピュータプログラムによって実施され、前記コンピュータプログラムはプログラマブルコンピュータ装置(102)上で実行され、前記算出移動データは、シミュレート車両データバス(106)を介して前記制御装置(20)に伝送され、前記算出周辺データは、前記プログラマブルコンピュータ装置(102)と接続されているセンサテストユニット(104)を用いて、前記車両データバス(106)とは異なるセンサデータリンク(110)を介して前記制御装置(20)に伝送される。前記制御装置(20)による周辺データのシミュレート検出を実行するために、測定を実行するためのコマンドが前記センサテストユニット(104)に送信され、前記少なくとも1つのシミュレート環境センサの位置を特定する情報が前記コンピュータ装置(102)に伝送され、前記車両周辺におけるシミュレート物体上の反射点の位置が算出され、前記センサテストユニット(104)に伝送され、前記反射点の前記算出された位置に関する情報に基づいて算出周辺データが決定され、記制御装置(20)に伝達される。本発明の他の態様は、本方法を実行するように構成されている、車両の制御装置(20)をテストするためのシステム(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御装置(20)をテストするための方法であって、前記制御装置(20)は、環境センサシミュレーションを用いて算出された、少なくとも1つのシミュレート環境センサ(402)の周辺データと、車両・周辺シミュレーションを用いて算出された、シミュレート車両(401)の移動データと、を取得し、前記車両・周辺シミュレーションは、コンピュータプログラムによって実施され、前記コンピュータプログラムはプログラマブルコンピュータ装置(102)上で実行され、前記算出移動データは、シミュレート車両データバス(106)を介して前記制御装置(20)に伝送され、前記算出周辺データは、前記プログラマブルコンピュータ装置(102)と接続されているセンサテストユニット(104)を用いて、前記車両データバス(106)とは異なるセンサデータリンク(110)を介して前記制御装置(20)に伝送される方法において、前記制御装置(20)による周辺データのシミュレート検出を実行するために、
a)前記環境センサシミュレーションによる少なくとも1つのシミュレート環境センサ(402)を用いて測定を実行するためのコマンドが、前記制御装置(20)によって前記センサテストユニット(104)に送信されるステップと、
b)前記少なくとも1つのシミュレート環境センサ(402)の位置を特定する情報が、前記センサテストユニット(104)によって前記コンピュータ装置(102)に伝送されるステップと、
c)前記車両周辺におけるシミュレート物体(404)上の反射点(410、412)の位置が前記コンピュータ装置(102)によって算出され、前記反射点(410、412)の前記算出された位置に関する情報が前記センサテストユニット(104)に伝送されるステップと、
d)前記反射点(410、412)の前記算出された位置に関する情報に基づいて、前記センサテストユニット(104)によって算出周辺データが決定されるステップと、
e)前記反射点(410、412)の前記取得された位置についての算出周辺データが、前記センサテストユニット(104)によって前記制御装置(20)に伝達されるステップと、
が実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記車両・周辺シミュレーションは、前記コンピュータ装置(102)によって連続的に実行され、前記シミュレート車両(401)の規則的に算出される移動データが前記制御装置(20)に伝送され、ステップc)に係る反射点(410、412)の位置の決定が、車両・周辺シミュレーションと時間的に同期することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記算出周辺データは、前記それぞれのシミュレート環境センサの視野(408)を考慮し、および/または前記シミュレート車両(401)上の意図された設置場所を考慮して決定され、
i)前記算出周辺データは事前に算出され、前記センサテストユニット(104)のメモリに格納され、所定のステップサイズを有するグリッドが、前記シミュレート車両(401)および前記シミュレート物体(404)の位置パラメータに使用され、または、
ii)前記算出周辺データの算出は、前記センサテストユニット(104)の算出ユニットによる前記算出された位置に関する情報の取得後に行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)においてクロスエコーの測定が要求され、ステップb)において、送信環境センサの位置についての情報と、受信環境センサの位置についての情報とが伝送されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのシミュレート環境センサ(402)は、超音波センサ、LiDARセンサまたはレーダセンサであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記算出周辺データは、前記シミュレート環境センサ(402)と前記対応する反射点(410、412)との間の距離と、受信された超音波エコーの品質を記述する少なくとも1つの属性と、を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記車両データバス(106)は、CANバスまたはFlexRayであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記制御装置(20)と前記センサテストユニット(104)との間の通信に使用される通信プロトコルは、前記センサテストユニット(104)による前記少なくとも1つのシミュレート環境センサ(402)が使用するプロトコルと同一のものが選択され、前記通信は、暗号によって保護されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記制御装置(20)は、前記車両データバス(106)を介して前記シミュレート車両(401)の縦方向および/または横方向の誘導に影響を与える制御コマンドを送信するように構成されており、前記車両・周辺シミュレーションは、前記制御コマンドに反応し、それに応じて前記シミュレート車両(401)の移動に影響を与えるように構成されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法
【請求項10】
車両の制御装置(20)をテストするためのシステム(10)であって、前記システム(10)は、車両データバス(106)を介して前記制御装置(20)に接続可能なコンピュータ装置(102)と、前記コンピュータ装置(102)に接続され、センサ端子を介して前記制御装置(20)に接続可能なセンサテストユニット(104)と、を含むものにおいて、前記システム(10)は、車両の制御装置(20)に接続される際に、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法のうち一つを実行するように構成されていることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置をテストするための方法に関し、制御装置は、環境センサシミュレーションを用いて算出された、少なくとも1つのシミュレート環境センサの周辺データと、車両・周辺シミュレーションを用いて算出された、シミュレート車両の移動データと、を取得し、車両・周辺シミュレーションは、コンピュータプログラムによって実施され、コンピュータプログラムはプログラマブルコンピュータ装置上で実行され、算出移動データは、シミュレート車両データバスを介して制御装置に伝送され、算出周辺データは、プログラマブルコンピュータ装置と接続されているセンサテストユニットを用いて、車両データバスとは異なるセンサデータリンクを介して制御装置に伝送される。本発明の別の態様は、上記方法を実行するように構成されている、車両の制御装置をテストするためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車両は、例えば駐車アシストや非常用ブレーキアシストなど、運転者の運転操作を支援するための様々なアシスタンスシステムを有する。アシスタンスシステムは、その機能のために、例えば超音波センサ、レーダセンサ、LiDARセンサ、光学カメラなど、車両に配置された環境センサを介して取得される周辺データに依存している。アシスタンスシステムを実現するための制御装置の開発は複雑なプロセスであり、通常、新しい車両用に制御装置を調整する必要がある。
【0003】
新しい車両の開発や、車両に搭載されるシステムの開発では、シミュレーションを使用することが一般的である。これにより、例えば、環境センサを新しい車両に搭載する前に、その機能をテストすることが可能である。同様に、環境センサから提供される周辺データに対する制御装置の反応もテストすることができる。
【0004】
独国特許出願公開第102013212710号明細書には、センサ測定をシミュレートするためのシミュレータおよび方法が記載されている。シミュレータは、センサのハードウェアおよび/または物理的特性を記述するセンサモデルを含む。さらに、周辺モデルおよび車両モデルも提供されており、これらは、仮想測定を実行するために使用される。ハードウェアの実装では、使用される演算装置は、車両の制御コンピュータとして構成することができる。
【0005】
独国特許出願公開第10314129号明細書には、センサの検出範囲をシミュレートするための方法およびコンピュータプログラムが記載されている。センサ、特に超音波センサの検出範囲は、既知の指向特性を有するセンサの放射源の放射範囲内の異なる位置にある標準体が、このセンサの放射源によって照射される場合、標準体における放射線の反射として、センサの受信機が固定された所定の設置位置で受信するエコーの振幅値および受信時間をシミュレートすることによって特定される。ここで、シミュレーションは、放射線の伝搬速度と、標準体、受信機、および放射源のそれぞれの位置の距離および角度関係と、を考慮して実行される。
【0006】
その後、どの位置について標準体のエコーのそれぞれの振幅値が定義された閾値を上回るかが決定され、空間におけるこれらの位置の分布は、センサの検出範囲を表す。
米国特許公報第2018/0060725号明細書には、例えば仮想超音波センサからのセンサ反射をシミュレートするための方法およびテストスタンドが記載されている。テストスタンドは、車両の機械的特性に関する数学的モデルを実装し提供するハードウェアと、ハードウェアに結合されており、仮想車両周辺から取得される反射を処理するためのテストアルゴリズムを含むソフトウェアと、を含む。
【0007】
シミュレート環境センサから取得した周辺データに対する制御装置の反応をテストする場合、一方では、シミュレート車両の周辺と、その周辺内の全ての物体をシミュレートする必要がある。例えば駐車アシスタントや緊急ブレーキアシスタントなど、制御装置の複雑なシステムの機能を検査する場合は、シミュレート車両のシミュレート物体に対する相対的な移動も考慮する必要がある。
【0008】
環境センサの機能をシミュレートするための既知の方法には、周辺のシミュレーション、車両の移動、およびシミュレート周辺データの算出の間に時間オフセットが生じる可能性があり、シミュレーションでテストされる制御装置の応答に影響を与える可能性があるという問題がある。例えば、移動データと環境データとが同期していないと、制御装置は、車両の周辺における物体の信頼性の高いマップを作成することができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013212710号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10314129号明細書
【特許文献3】米国特許公報第2018/0060725号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
車両の制御装置をテストするための方法であって、制御装置は、環境センサシミュレーションを用いて算出された、少なくとも1つのシミュレート環境センサの周辺データと、車両・周辺シミュレーションを用いて算出された、シミュレート車両の移動データと、を取得し、車両・周辺シミュレーションは、コンピュータプログラムによって実施され、コンピュータプログラムはプログラマブルコンピュータ装置上で実行され、算出移動データは、シミュレート車両データバスを介して制御装置に伝送され、算出周辺データは、プログラマブルコンピュータ装置と接続されているセンサテストユニットを用いて、車両データバスとは異なるセンサデータリンクを介して制御装置に伝送される方法、が提案される。
【0011】
また、制御装置による周辺データのシミュレート検出を実行するために、第1のステップa)において、環境センサシミュレーションによる少なくとも1つのシミュレート環境センサを用いて測定を実行するためのコマンドが、制御装置によってセンサテストユニットに送信されることが企図されている。
【0012】
続くステップb)において、少なくとも1つのシミュレート環境センサの位置を特定する情報が、センサテストユニットによってコンピュータ装置に伝送される。
続いて、ステップc)において、車両周辺におけるシミュレート物体上の反射点の位置がコンピュータ装置によって算出され、反射点の算出された位置に関する情報がセンサテストユニットに伝送される。
【0013】
続くステップd)において、反射点の算出された位置に関する情報に基づいて、センサテストユニットによって算出周辺データが決定される。
続いて、ステップe)において、反射点の取得された位置についての算出周辺データが、センサテストユニットによって制御装置に伝達される。
【0014】
制御装置は、例えば、周辺データの取得に基づいて決定を行う車両の機能を実装するための制御装置であってよい。特に、機能は、車両のアシストシステムまたは自動運転機能であってよい。例えば、制御装置は、駐車アシストまたは緊急ブレーキアシストを実装することができる。
【0015】
制御装置の機能または制御装置に実装された機能をテストする準備のために、コンピュータ装置およびセンサテストユニットが、シミュレート車両および少なくとも1つのシミュレート環境センサについての情報を取得することが企図されている。この情報は、少なくとも1つの環境センサの物理的特性に関する情報、車両上の少なくとも1つの環境センサの配置に関する情報、車両の運転特性に関する情報、およびこれらの情報の組み合わせを含むことが好ましい。
【0016】
特に、複数のシミュレート環境センサを定義することを企図してもよい。
さらに、車両・周辺シミュレーションを設定するために、シミュレート車両に対してシミュレート周辺が定義されることが好ましい。特に、シミュレート物体が定義される。シミュレート物体は、特に、その形状、物体の種類、サイズ、方向、シミュレート周辺における位置、およびこれらのパラメータの複数の組み合わせについてのパラメータによって定義することができる。例えば、アシストシステムのテストに対しては、円筒形状、所定の高さ、所定の直径、および所定の位置などのパラメータを定義することにより、複数の支柱を定義することができる。
【0017】
シミュレート車両が複数のシミュレート環境センサを含む場合、ステップa)において、測定を実行するコマンドとともに情報が伝達され、この情報によって、センサテストユニットが、シミュレート測定が要求された、対応する環境センサを特定することが好ましい。個々の環境センサが独自のケーブル接続を介して制御装置と通信する場合、そのような情報は省略してもよい。
【0018】
少なくとも1つのシミュレート環境センサは、現実に存在する環境センサに対応してもよく、または開発中の環境センサの設計に基づいてもよい。少なくとも1つのシミュレート環境センサは、パルスエコー原理に基づく環境センサであることが好ましい。したがって、環境センサによる測定のために信号が送出され、続いて、周辺の物体によって反射された信号のエコーが受信される。このエコーが元の信号を送出したのと同じ環境センサによって受信された場合、そのエコーはダイレクトエコーと呼ばれる。エコーが別の環境センサによって受信された場合、そのエコーはクロスエコーと呼ばれる。したがって、測定を実行するコマンドは、単一のシミュレート環境センサに該当するか、2つ以上のシミュレート環境センサに該当することを企図することができる。したがって、ステップa)においてクロスエコーの測定が要求される場合、ステップb)において、送信環境センサの位置についての情報と、受信環境センサの位置についての情報とが伝送されることが好ましい。
【0019】
方法のステップb)において、センサテストユニットは、測定に関与するシミュレート環境センサの位置を特定する情報をコンピュータ装置に伝送する。例えば、クロスエコーが受信される測定を実行する場合、複数の環境センサが関与することがある。少なくとも1つの環境センサの位置を特定する情報は、車両・周辺シミュレーションにおけるそれぞれの環境センサの位置を記述する座標として移行することがある。例えば、コンピュータ装置が、どのシミュレート環境センサがシミュレート車両上のどの箇所に配置されているかについての情報を有している場合、そのような情報は、例えば固有の識別番号の形態で伝送することも可能である。また、位置を特定するための情報として、シミュレート車両の基準点に対する相対位置を送信することも考えられる。
【0020】
方法のステップc)において、コンピュータ装置は、少なくとも1つのシミュレート環境センサからの信号のエコーをシミュレート物体のどれが反射するかについて、車両・周辺シミュレーションに基づいて算出を実行し、シミュレート物体上の反射点の位置を決定する。
【0021】
特に、車両・周辺シミュレーションは、反射点の位置を決定する際に、シミュレート車両に対するシミュレート物体の相対位置を考慮するが、この位置は、シミュレート車両および/またはシミュレート物体のうちの1つが固有移動すると、連続的に変化する。換言すると、車両・周辺シミュレーションを実行することによって、コンピュータ装置は、シミュレート周辺におけるシミュレート車両を表すモデルの形状を決定する。この際、反射点の位置を決定するために、例えば、シミュレート環境センサの位置から送出され、シミュレート環境センサの長軸の方向に進む光線の、シミュレート物体の表面との交点を確認することができる。そして、その交点の位置が反射点の位置となる。さらに、反射点は、所定の規則を考慮して算出することができる。例えば、環境センサとして超音波センサを用いる場合、物体は複数のエコーを発生し、1つのエコーは物体の基点に発生することが知られている。
【0022】
車両・周辺シミュレーションの実行は、コンピュータ装置によって連続的に実行されることが好ましい。ここで、シミュレート車両の規則的に算出される移動データが制御装置に伝送され、ステップc)に係る反射点の位置の決定が、車両・周辺シミュレーションと時間的に同期することが企図されている。
【0023】
算出移動データは、特に、シミュレート車両の移動を特定するシミュレート車両センサからのシミュレートデータを含む。特に、オドメトリセンサ、回転速度センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサ、およびこれらのセンサの組み合わせが含まれる。
【0024】
算出移動データと算出周辺データとの間の時間的な同期について、移動データの算出と、周辺データが決定される基礎となる反射点の算出とは、同一の車両・周辺シミュレーションを介して取得される。さらに、異なる経路を介して制御装置に到達する移動データおよび周辺データの伝送における時間遅延を最小限にすることが企図されている。
【0025】
好ましくは、ステップd)において、算出周辺データは、それぞれのシミュレート環境センサの視野(field-of-viewとも呼ばれる)を考慮し、および/または車両上の意図された設置場所を考慮して決定される。
【0026】
環境センサの視野は、一方ではセンサのそれぞれの構成と技術によって決定される。他方で、それぞれの環境センサの設置場所は、その視野に大きく影響する。例えば、超音波を利用した環境センサは、車両のバンパに組み込まれることが多く、バンパの形状、材料の選択、および取り付けが環境センサの視野に影響を与えることがある。車両の設計プロセスの早期段階で、このように配置されたセンサの周辺データに対する制御装置の反応をテストできるようにするために、算出周辺データを決定する際に、環境センサの計画的な配置構成によって生じる視野が考慮される。
【0027】
設置場所および設置場所の環境を考慮するために、送出された信号および受信されたエコーの伝搬挙動のシミュレーションを実行することが好ましく、このために3Dモデルが使用されることが好ましい。例えば、環境センサをバンパに設置する場合、このバンパの3Dモデルや、場合によっては車両上のバンパの周囲の3Dモデルを使用してもよい。これにより、場合によっては車両のナンバープレート、車両のラジエータグリル、および/または地面における信号反射など、他の要因の影響を考慮してもよい。さらに、シミュレーションは、特に信号の周波数に依存することもある信号およびエコーのそれぞれの伝搬特性を考慮することが好ましい。
【0028】
シミュレートセンサを介して取得された周辺データの具体的な算出の際には、まずシミュレートエコーが算出され、この算出では、反射点の位置だけでなく、特に視野も考慮される。複数の反射点が取得された場合、これらから生じる複数のエコー間の干渉を追加的に考慮することが好ましい。
【0029】
シミュレートエコーを算出した後、算出周辺データを取得するために、対応する実際のセンサがそれぞれのエコーに対して行うのと同じ信号処理を実行することが企図されていることが好ましい。
【0030】
算出されたセンサデータを決定するために、第1の実施形態の変形例i)では、算出周辺データは事前に算出され、センサテストユニットのメモリに格納され、所定のステップサイズを有するグリッドが、シミュレート車両およびシミュレート物体の位置パラメータに使用される。
【0031】
このように、シミュレート環境センサとシミュレート物体との間の相対距離や、シミュレート物体への方向などのパラメータについて、ある所定のステップサイズで、算出周辺データが既に事前に決定され、センサテストユニットのメモリに格納される。その後、センサテストユニットが反射点の算出された位置を取得すると、それぞれの反射点のパラメータからの偏差が最も小さいパラメータを有するデータセットが、事前に算出された周辺データの集合から決定される。
【0032】
この方法の変形例では、算出周辺データを決定するために、複雑なモデルを使用することができる。周辺データは事前に算出されるため、有利には、制御装置への転送時の遅延は特に小さい。
【0033】
第2の実施形態の変形例ii)では、算出周辺データの算出は、センサテストユニットの算出ユニットによる算出された位置に関する情報の取得後に行われる。
車両・周辺シミュレーションからの算出周辺データの決定には、反射点の位置に関する一般的な幾何学的情報のみが必要であるため、コンピュータ装置とセンサテストユニットとの間で交換されるデータ量は非常に少なく、迅速な伝送が可能である。さらに、このデータは、シミュレート環境センサの内部機能について推測できないため、データ伝送を遅らせる可能性がある暗号保護も不要である。
【0034】
決定された算出周辺データは、ステップe)で制御装置に伝送される。制御装置とセンサテストユニットとの間の通信には、通信プロトコルが選択され、これは、センサテストユニットによって少なくとも1つのシミュレート環境センサの実例が使用するプロトコルと同一であることが好ましい。さらに、通信は、暗号によって保護されることが好ましい。
【0035】
少なくとも1つのシミュレート環境センサは、超音波センサであることが好ましい。しかし、提案された方法は、LiDARセンサまたはレーダセンサなどの他のタイプのセンサに適用してもよい。
【0036】
少なくとも1つのシミュレート環境センサが超音波センサである場合、算出周辺データは、シミュレート環境センサと対応する反射点との間の距離と、受信された超音波エコーの品質を記述する少なくとも1つの属性と、を含むことが好ましい。
【0037】
受信された超音波エコーの品質を記述する属性の例には、振幅、バックグラウンドノイズ、R値、およびそれらの組み合わせが含まれる。
超音波エコーの「R値」は、受信したエコーの形状が、元々送出された信号の形状とどの程度一致するかを記述する。例えば、形状を比較するために最適なフィルタを使用することができる。
【0038】
車両データバスは、CANバスまたはFlexRayであることが好ましい。しかし、原則的には、車両で使用される各伝送技術が適切である。
コンピュータ装置を実際の車両の車両データバスに対応するバスシステムに接続することにより、制御装置をできるだけ現実的な条件下で直接テストすることができる。
【0039】
試験される制御装置が、車両データバスを介してシミュレート車両の縦方向および/または横方向の誘導に影響を与える制御コマンドを送信するように構成されている場合、車両・周辺シミュレーションは、制御コマンドに反応し、それに応じてシミュレート車両の移動に影響を与えるように構成されていることが企図されていることが好ましい。さらに、車両・移動シミュレーションは、要請された車両システムから制御装置に、対応するフィードバックを提供することが好ましい。これは、駐車アシスタントや緊急ブレーキアシスタントなど、車両移動に介入する機能を実装する制御装置のテストに対して特に有利である。
【0040】
本発明の別の態様は、車両の制御装置をテストするためのシステムを提供することであり、このシステムは、車両データバスを介して制御装置に接続可能なコンピュータ装置と、コンピュータ装置に接続され、センサ端子を介して制御装置に接続可能なセンサテストユニットと、を含む。
【0041】
システムは、車両の制御装置に接続される際に、本明細書に記載された方法のいずれかを実行するように構成されている。したがって、方法のうち1つの範囲で記載された特徴はシステムに適用され、逆に、システムの範囲で記載された特徴は方法に適用される。
【0042】
システムは、コンピュータ装置を含む。システムは、自由にプログラム可能であることが好ましく、方法の範囲内で車両・周辺シミュレーションを実行する。コンピュータ装置は、例えば、Windows、LinuxまたはMacOSで操作される通常のPCであり、対応するソフトウェアを実行することによって方法に関与することが好ましい。
【0043】
センサテストユニットは、コンピュータ装置とは別のユニットであり、データリンクを介してコンピュータ装置に接続されている。センサテストユニットは、算出周辺データを決定するためにメモリおよび/または演算装置を含んでよい。センサテストユニットの機能を実装するために、例えば、プログラマブル・マイクロコントローラおよび/または特定用途向け集積回路(ASIC)を使用することができる。
【発明の効果】
【0044】
制御装置をテストするための提案された方法またはシステムは、実行されたシミュレーションの特に時間的に重要な部分、すなわち算出周辺データの決定を、特化したハードウェア、すなわちセンサテストユニットに実行させることが有利である。したがって、企図されたコンピュータ装置は、一般的なタスクと、車両・周辺シミュレーションの更新を行うだけでよい。通常のコンピュータ装置であるPCと比較して、センサテストユニットのような特化したユニットは、時間的に重要な動作において決定的な挙動を示し、それによって移動データと周辺データ間の時間遅延が一方では減少し、他方では残りの遅延が均一化される。これに対し、通常のコンピュータ装置では、多くの異なるタスクが並行して実行され、個々のタスクの実行が非決定的に遅延することがある。
【0045】
本発明に係る方法およびシステムで達成される移動データと周辺データ間の同期によって、シミュレート車両の移動時の制御装置の挙動を現実的にシミュレーションし、ひいてはテストすることができる。
【0046】
さらに、提案された方法は、制御装置への伝送を遅延することなく、取得されたエコーから周辺データを決定するために使用される方法を、暗号によって保護することができる。これは、センサテストユニットが、事前に算出された周辺データを含む、事前に格納されたデータベースや、周辺データを算出するために使用されるアルゴリズムへのアクセスを許可しない、閉じたシステムであることによって達成される。センサテストユニット自体は、コンピュータ装置上で実行される車両・周辺シミュレーションから反射点の位置についての一般的な幾何学的情報を取得するのみであり、これらの幾何学的情報からシミュレートされた環境センサの機能について推測することはできない。したがって、コンピュータ装置とセンサテストユニット間の通信は、迅速に伝送される少量のデータに削減される。他方で、暗号保護は必要ないため、暗号化による時間遅延は発生しない。
【0047】
センサテストユニットによって提供される算出周辺データは、実際のセンサと同じプロトコルで制御装置に提供されるため、制御装置を限りなく実環境に近い状態でテストすることができる。これにより、車両の既に早期の設計段階で、環境センサや制御装置の機能をテストすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明の実施形態はを、図面および以下の説明を参照して詳述する。
【
図1】従来技術に係る制御装置をテストするためのシステムである。
【
図2】本発明に係る制御装置をテストするためのシステムである。
【
図3】シミュレート車両のシミュレート周辺の概略図である。
【
図4】距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーの振幅の比較ある。
【
図5】距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーのR値の比較である。
【
図6】距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーに対して制御装置が行う有意値測定の比較である。
【
図7】距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーに対して制御装置が行う物体分類の比較である。
【
図8a】速度2.5km/hの速度で距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーに対して制御装置が行う高さ分類の比較である。
【
図8b】速度2.5km/hの速度で距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーに対して制御装置が行う高さ分類の比較である。
【
図9a】速度4.5km/hの速度で距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーに対して制御装置が行う高さ分類の比較である。
【
図9b】速度4.5km/hの速度で距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーに対して制御装置が行う高さ分類の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の実施形態の以下の説明において、同一または類似の要素には同一の参照符号を付しており、個々のケースにおけるこれらの要素の繰り返しの説明が省略される。図は、本発明の対象を模式的にのみ示す。
【0050】
図1は、制御装置20をテストするための従来技術に係るシステム10’を表す。システム10’は、コンピュータ装置102と、センサテストユニット104と、を含み、これらはデータケーブル108によって相互に接続され、データを交換することができる。
【0051】
センサテストユニット104は、センサデータ接続部110を介してテスト対象の制御装置20に接続されている。また、制御装置20とコンピュータ装置102は、車両データバス106を介して接続されている。
【0052】
周辺データに対する制御装置20の挙動をシミュレートするために、コンピュータ装置102は車両・周辺シミュレーションを連続的に更新し、シミュレーションは、シミュレート車両401の縦方向および/または横方向の誘導に影響を与える制御装置20の制御コマンドによって影響を受けることが企図されている。制御コマンドの送信は、
図1において参照符号206の矢印で示されている。車両・周辺シミュレーションによって表される状況の概略は、
図3に見ることができる。
【0053】
連続的に実行される車両・周辺シミュレーションによって、参照符号205の矢印で示されるように、車両データバス106を介して制御装置20に伝送される移動データが算出される。これと並行して、コンピュータ装置102は、シミュレート環境センサ402(
図3参照)によって検出でき、制御装置20から要求される場合がある環境センサデータを決定する。コンピュータ装置102は、全ての考えられる周辺データを考慮する。すなわち、例えば、複数の超音波ベースの環境センサ402の場合、および複数のシミュレート物体404(
図3参照)の場合、全ての考えられるダイレクトエコーおよびクロスエコーが、各シミュレート環境センサ402について決定され、対応する算出環境データが決定される。
【0054】
この算出環境データは、シミュレート環境センサ402で使用されるアルゴリズムの推測を可能とする場合があるため、参照符号201の矢印で示されるように、全ての算出周辺データは、暗号化された形態でセンサテストユニット104に伝送される。センサテストユニット104は、次に算出環境データを復号化し、メモリに格納する必要がある。データ量が多いため、データケーブル108を介した伝送にはかなりの時間が必要であり、かつ、暗号化および復号化に時間がかかるため、さらなる時間遅延が発生し、その結果、センサテストユニット104のメモリに格納された算出環境データは、車両データバス106を介して制御装置20に提供された算出移動データと時間的に同期していない。次に、制御装置20が参照符号202の矢印で示されるシミュレート環境センサ402のうちの1つの測定を要求すると、矢印203で示されるように内部メモリが読み出され、そこで決定された算出環境データが、参照符号204の矢印で示されるように制御装置20へ伝達される。
【0055】
制御装置20が取得する算出環境データは、提供される算出移動データと同期していないため、このようにしてテストされた制御装置20の挙動は、実際の周辺における挙動と相違する可能性がある。
【0056】
図2は、本発明に係る制御装置20をテストするためのシステム10を示す。システム10は、コンピュータ装置102と、センサテストユニット104と、を含み、これらはデータケーブル108によって相互に接続され、データを交換できる。
【0057】
センサテストユニット104は、センサデータ接続部110を介してテスト対象の制御装置20に接続されている。さらに、制御装置20とコンピュータ装置102は、車両データバス106を介して接続されている。したがって、制御装置20は、システム10において実際の車両と同じ接続を有する。
【0058】
周辺データに対する制御装置20の挙動をシミュレートするために、コンピュータ装置102が車両・周辺シミュレーションを連続的に更新し、シミュレーションは、シミュレート車両401の縦方向および/または横方向の誘導に影響を与える制御装置20の制御コマンドによって影響を受けることが企図されている。制御コマンドの送信は、
図2において参照符号216の矢印で示されている。車両・周辺シミュレーションによって表される状況の概略は、
図3に見ることができる。
【0059】
連続的に実行される車両・周辺シミュレーションによって、参照符号217の矢印で示されるように、車両データバス106を介して制御装置20に伝送される移動データが算出される。
【0060】
次に、制御装置20がシミュレート環境センサ402のうちの1つの測定を要求すると、矢印211で示されるように、対応するコマンドがセンサテストユニット104に送信され、そのコマンドには、関係するシミュレート環境センサ402を特定するための情報が含まれる。この情報は、参照番号212の矢印で示されるように、センサテストユニット104によってコンピュータ装置102に転送される。
【0061】
次に、コンピュータ装置102は、関係するシミュレート環境センサ402の位置と、車両・周辺シミュレーションの現在の状態とに応じて反射点410、412を決定し、反射点410、412の位置に関する情報を、矢印213で示されるように、センサテストユニット104に返送する。これらの位置表示は純粋な幾何学的情報であるため、これらのデータ量は少なく、データケーブル108を介して迅速に伝送することができる。さらに、それらは、シミュレート環境センサ402の機能方法の詳細を開示していないため、暗号化せずに伝送することができ、伝送をさらに加速することができる。
【0062】
次に、センサテストユニット104によって、
図2において参照符号214の矢印で示される算出環境データが決定される。続いて、決定された環境データは、参照符号215の矢印で示されるように、制御装置20に伝達される。
【0063】
制御装置20によって取得された算出環境データは、最小の時間遅延で制御装置20に到達し、したがって、取得された算出移動データと時間的に同期している。これにより、シミュレート車両401の移動時にも、制御装置20の挙動をテストすることができる。
【0064】
図3は、シミュレート車両401のシミュレート周辺を示す概略図である。
図3に示す状況において、シミュレート車両401は、円筒の支柱形状のシミュレート物体404に向かって移動している。
【0065】
シミュレート車両401は、例えば超音波センサとして構成されているシミュレート環境センサ402を有する。シミュレート環境センサ402は、その内側でシミュレート物体404を検知できる視野408を有する。シミュレート環境センサ402は、設置高さhで、バンパ(図示せず)の領域の前部に設置されている。シミュレート環境センサ402は、前方に向かって水平に配向されているため、シミュレート環境センサ402の主軸406も地面と平行に配向されている。
【0066】
シミュレート環境センサ402によって信号が送出されると、シミュレート環境センサ402は、シミュレート物体404上の反射点410、412から反射されるエコーを検知できる。
図3に示される状況では、シミュレート環境センサ402は、設置高さhのレベルの第1の反射点410から1つ、およびシミュレート物体404の基点にある第2の反射点412から1つの、2つのエコーを取得する。
【0067】
シミュレート環境センサ402から第2の反射点412までの距離は、第1の反射点410までの距離よりも長いため、シミュレート環境センサ402は、図示の状況において連続する2つのエコーを取得する。
【0068】
図4は、
図3に模式的に示されるような状況について、距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーの振幅の比較を示す。シミュレート超音波センサを有するシミュレート車両401は、支柱形状の障害物に向かって移動する。
【0069】
図4の図では、任意の単位での振幅AがY軸にプロットされ、反射点410、412のシミュレート環境センサ402までの距離dがmmでX軸にプロットされている。第1の曲線301は、周辺データの実測値から取得される振幅の平均波形を示し、第2の曲線302は、算出周辺データに基づいて取得される振幅の平均波形を示す。
【0070】
図4の表示から、算出周辺データは、実測された周辺データとよく一致していることがわかる。
図5は、
図3に模式的に示されるような状況について、距離dに応じたシミュレートエコーおよび実エコーのR値の比較を示す。
【0071】
図5の図では、任意の単位でのR値がY軸にプロットされ、反射点410、412のシミュレート環境センサ402までの距離dがmmでX軸にプロットされている。第1の曲線303は、周辺データに関連するR値の実測値の平均波形を示し、第2の曲線304は、周辺データに関連するR値の算出値の平均波形を示す。
【0072】
図5の表示から、算出周辺データは、実測された周辺データとよく一致していることがわかる。
図6は、
図3に模式的に示されるような状況について、距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーに対して制御装置20が行う有意値測定の比較である。
【0073】
図6の図では、任意の単位での有意値PがY軸にプロットされ、反射点410、412のシミュレート環境センサ402までの距離dがmmでX軸にプロットされている。第1の曲線305は、周辺データの実測値から決定された有意値Pの平均波形を示し、第2の曲線306は、算出周辺データに基づいて特定された有意値Pの平均波形を示す。
【0074】
有意値Pは、制御装置20によって決定され、かつ、取得された周辺データが周辺に実際に存在する物体を表している確率を表す。
図6の表示から、算出周辺データを用いて取得された有意値Pが、実測された周辺データについて取得された有意値とよく一致していることがわかる。
【0075】
図7は、
図3に模式的に示されるような状況について、距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーに対して制御装置20が行う物体分類の比較である。
図7の図では、物体分類を識別するID番号がY軸に示されている。支柱、茂み、壁、縁石等の異なる種類の物体には、それぞれ異なるID番号が付与される。
【0076】
第1の点307は、周辺データの実測に基づく物体分類を示し、第2の点308は、算出周辺データに基づいて特定された有意値の物体分類を示す。
図7の表示から、算出周辺データを用いて取得された物体分類が、実測された周辺データについて取得された物体分類とよく一致していることがわかる。
【0077】
図8a、
図8bは、シミュレート車両401が支柱に接近した際の、速度2.5km/hの速度で距離に応じたシミュレートエコーおよび実エコーに対して制御装置20が行う高さ分類の比較である。
図9a、
図9bも高さ分類を示すが、速度4.5km/hの場合である。
図8a、
図8b、
図9a、
図9bはそれぞれ、高さがあり、乗り越えることができない物体の存在確率を示す高さパラメータHの、mmの距離dに対する任意の単位での波形を示す。
図8a、
図9aはそれぞれ、実際の周辺データに対する高さパラメータHの波形を示し、
図8b、
図9bは算出周辺データに対する高さパラメータHの波形を示す。
図8a、9a、
図8b、9bに示す曲線301、302、303、304、305、306はそれぞれ、10回実行した実測、またはわずかに異なるパラメータで10回実施したシミュレーションによる平均値である。
【0078】
図8a、
図8bから、車速2.5km/hにおいて、距離が約1500mmを下回ると、支柱は、高さがあり、乗り越えることができない物体として確実に分類され、シミュレーション用の曲線301、302、303、304、305、306は測定とよく一致していることがわかる。制御装置20はこの分類のために移動データも使用するため、この良好な一致は、提案された方法の特別な利点である。
【0079】
図9a、
図9bから、車速4.5km/hにおいて、距離が約300mmを下回るとようやく、支柱は、高さがあり、乗り越えることができない物体として確実に分類されることがわかる。制御装置20のこの望ましくない挙動は、提案された方法の良好な特性、特に算出周辺データと移動データとが時間的に同期することによって、実測とシミュレーションの両方で確実に検知される。したがって、提案された方法は、車両の制御装置20の機能を確実にシミュレートするのに適している。
【0080】
本発明は、本明細書に記載された実施例およびそこで強調された態様に限定されるものではない。むしろ、特許請求の範囲によって記載される範囲で、当業者の行動の範囲内にある多数の変形が可能である。
【国際調査報告】