(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】窒化物系抗病原体性組成物及びデバイス、並びにその使用方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20231219BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231219BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20231219BHJP
A01N 59/06 20060101ALI20231219BHJP
A01N 59/14 20060101ALI20231219BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20231219BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20231219BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20231219BHJP
A61L 27/04 20060101ALI20231219BHJP
A61L 27/06 20060101ALI20231219BHJP
A61L 27/30 20060101ALI20231219BHJP
A61L 29/02 20060101ALI20231219BHJP
A61L 29/10 20060101ALI20231219BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20231219BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20231219BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20231219BHJP
A61L 31/08 20060101ALI20231219BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20231219BHJP
A61B 17/70 20060101ALI20231219BHJP
A61M 16/04 20060101ALI20231219BHJP
A61B 17/24 20060101ALI20231219BHJP
A61C 8/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A01N59/00 D
A01P3/00
A01P1/00
A01N59/06 Z
A01N59/14
A01N25/04 102
A01N25/08
A61L27/02
A61L27/04
A61L27/06
A61L27/30
A61L29/02
A61L29/10
A61L31/02
A61L27/54
A61L29/16
A61L31/08
A61L31/16
A61B17/70
A61M16/04 Z
A61B17/24
A61C8/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535522
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 US2021062650
(87)【国際公開番号】W WO2022125797
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519324710
【氏名又は名称】シントクス テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイア、ブライアン、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボック、ライアン、エム.
(72)【発明者】
【氏名】バル、バジャンジット、シン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C159
4C160
4H011
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081AB06
4C081AB13
4C081AB15
4C081AB36
4C081AC03
4C081AC07
4C081AC08
4C081BA14
4C081CF11
4C081CF14
4C081DA01
4C081DA03
4C081DA04
4C081DA05
4C081DC03
4C159AA71
4C160LL24
4C160LL62
4C160LL69
4C160MM03
4C160MM08
4H011AA02
4H011AA04
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA02
4H011DA14
(57)【要約】
本明細書には、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、窒化ケイ素、又はそれらの組み合わせから選択される窒化物を含む抗病原体性組成物、並びにウイルス、細菌、及び/又は真菌を不活化するために上述の組成物を使用する方法が記載される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体を不活化するための方法であって、前記病原体を、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される窒化物の有効濃度を含む組成物と接触させることを含み、前記窒化物の前記有効濃度が、前記病原体を不活化する、方法。
【請求項2】
前記組成物が、窒化ケイ素を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、窒化アルミニウムを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記窒化物が、窒化ホウ素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、水性媒体中の窒化物粒子のスラリーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記窒化物の前記有効濃度が、約0.1体積%~約20体積%である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、前記窒化物の粉末を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、デバイスの表面の少なくとも一部にわたってコーティングされ、かつ/又は前記デバイスに組み込まれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記窒化物の前記有効濃度が、約1重量%~約100重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記デバイスが、整形外科用インプラント、脊椎インプラント、椎弓根スクリュー、歯科用インプラント、留置カテーテル、気管内チューブ、大腸内視鏡検査スコープ、手術用ガウン、マスク、フィルタ、又はチュービングである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記病原体が、ウイルス、細菌、又は真菌である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスが、コロナウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記病原体が、表面上、又はヒト、動物、若しくは植物内にある、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記病原体が、無生物物体の表面上にある、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
病原体を不活化するための窒化物系組成物であって、前記組成物が、水性媒体中の窒化物粒子のスラリーを含み、前記窒化物が、約0.1体積%~約20体積%の濃度で存在し、前記濃度が、前記病原体を不活化するのに有効である、窒化物系組成物。
【請求項16】
前記窒化物が、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項15に記載の窒化物系組成物。
【請求項17】
前記組成物が、窒化ケイ素を更に含む、請求項16に記載の窒化物系組成物。
【請求項18】
前記組成物が、窒化アルミニウムを更に含む、請求項16に記載の窒化物系組成物。
【請求項19】
前記窒化物が、窒化ホウ素である、請求項16に記載の窒化物系組成物。
【請求項20】
前記病原体が、ウイルス、細菌、又は真菌である、請求項15に記載の窒化物系組成物。
【請求項21】
前記ウイルスが、コロナウイルスである、請求項20に記載の窒化物系組成物。
【請求項22】
前記病原体が、表面上、又はヒト、動物、若しくは植物内にある、請求項15~21のいずれか一項に記載の窒化物系組成物。
【請求項23】
前記病原体が、無生物物体の表面上にある、請求項15~21のいずれか一項に記載の窒化物系組成物。
【請求項24】
病原体を不活化するための窒化物系デバイスであって、前記デバイスが、前記デバイスの表面の少なくとも一部にわたってコーティングされ、かつ/又は前記デバイスに組み込まれる窒化物の粉末を含み、前記窒化物が、約10重量%~約30重量%の濃度で存在し、前記濃度が、前記病原体を不活化するのに有効である、窒化物系デバイス。
【請求項25】
前記窒化物が、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項24に記載の窒化物系デバイス。
【請求項26】
前記デバイスが、窒化ケイ素を更に含む、請求項25に記載の窒化物系デバイス。
【請求項27】
前記デバイスが、窒化アルミニウムを更に含む、請求項25に記載の窒化物系デバイス。
【請求項28】
窒化物窒化ホウ素、請求項25に記載の窒化物系デバイス。
【請求項29】
前記病原体が、ウイルス、細菌、又は真菌である、請求項24に記載の窒化物系デバイス。
【請求項30】
前記ウイルスが、コロナウイルスである、請求項29に記載の窒化物系デバイス。
【請求項31】
前記病原体が、表面上、又はヒト、動物、若しくは植物内にある、請求項24~30のいずれか一項に記載の窒化物系デバイス。
【請求項32】
前記病原体が、無生物物体の表面上にある、請求項24~30のいずれか一項に記載の窒化物系デバイス。
【請求項33】
病原体を不活化するための方法であって、前記病原体を、α-窒化ケイ素の有効濃度を含むスラリーと接触させることを含み、窒化物の前記有効濃度が、前記病原体を不活化し、前記スラリー中のα-窒化ケイ素の前記有効濃度が、約15%w/vである、方法。
【請求項34】
前記スラリーが、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される窒化物を更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
病原体を不活化するための方法であって、前記病原体を、窒化アルミニウムの有効濃度を含むスラリーと接触させることを含み、窒化物の前記有効濃度が、前記病原体を不活化し、前記スラリー中の窒化アルミニウムの前記有効濃度が、約15%w/vである、方法。
【請求項36】
前記スラリーが、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される窒化物を更に含む、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月9日に出願された米国仮特許出願第63/123,037号の優先権及び利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、抗病原体性組成物及びデバイスに関し、具体的には、窒化物系抗病原体性組成物及びデバイスのためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
病原性生物の表面伝播は、多数の疾病、障害、及び死を引き起こすことはよく知られている。近年、SARS-CoV-2ウイルスなどの新しい病原体の発見は、この問題を強調するものである。表面上に生息する病原体を死滅させるか、又は不活化させる方法は、多くの場合、洗浄製品、高熱若しくは高圧、又は電磁放射の使用を伴う。これらの方法は、高価である場合があり、場合によっては、毒性化学物質への曝露、又は激しい紫外線照射などの他の危険性をヒトに提示する可能性がある。更に、時間の経過とともに、ある種の病原体は、既存の方法に対する耐性を示す。
【0004】
したがって、病原性生物を不活化するか、又は死滅させるのに有用な方法及び組成物が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書には、ウイルス、細菌、及び/又は真菌を不活化するための窒化物系組成物又はデバイスが提供される。窒化物系組成物は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、様々な形態の窒化ケイ素、又はそれらの組み合わせを含む。
【0006】
また、本明細書には、ウイルス、細菌、及び/又は真菌を、本明細書に開示される抗病原体性窒化物系組成物又はデバイスと接触させることによる、病原体を不活化するための方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】水性媒体中、室温で1分間及び10分間、15重量%のCu、AlN、及びSi3N4粉末で処理された窒化物粉末によるSARS-CoV-2の不活化を示すグラフ表示であり、対照ウイルスは、なんら粉末を添加することなく同一に処理された。遠心分離後、上清をTCID50アッセイに供した。Reed-Muench法を使用して、ウイルス力価を判定した。TCID50/50μL(
図1A及び1B)、並びに減少%の
図1C及び1Dは、それぞれ1分間及び10分間のウイルス不活化時間について示される。統計を、対応のない両側スチューデントのt検定(n=3)に従って挿入図に示す。
【
図2A】銅又は窒化物粒子への曝露後に重度の分解を受けたウイルスRNAを示すグラフ表示である。
図2A及び
図2Bでは、ウイルス懸濁液を、Cu、AlN、及びSi3N4粉末に1分間曝露し、上清中及び粒子上のウイルスRNAを、それぞれウイルスN遺伝子「セット1」及び「セット2」プライマーを使用して評価した。上清及びペレット試料について収集したデータを、未処理のまま放置した懸濁液中のウイルスN遺伝子RNAの量と比較して示す。
図2C及び
図2Dでは、それぞれウイルスN遺伝子「セット1」及び「セット2」プライマーについて、上清をCu、AlN、及びSi3N4粉末に10分間曝露した後のRT-PCR試験の結果を示す。統計を、対応のない両側スチューデントのt検定(n=3)に従って挿入図に示す。
【
図2B】銅又は窒化物粒子への曝露後に重度の分解を受けたウイルスRNAを示すグラフ表示である。
図2A及び
図2Bでは、ウイルス懸濁液を、Cu、AlN、及びSi3N4粉末に1分間曝露し、上清中及び粒子上のウイルスRNAを、それぞれウイルスN遺伝子「セット1」及び「セット2」プライマーを使用して評価した。上清及びペレット試料について収集したデータを、未処理のまま放置した懸濁液中のウイルスN遺伝子RNAの量と比較して示す。
図2C及び
図2Dでは、それぞれウイルスN遺伝子「セット1」及び「セット2」プライマーについて、上清をCu、AlN、及びSi3N4粉末に10分間曝露した後のRT-PCR試験の結果を示す。統計を、対応のない両側スチューデントのt検定(n=3)に従って挿入図に示す。
【
図2C】銅又は窒化物粒子への曝露後に重度の分解を受けたウイルスRNAを示すグラフ表示である。
図2A及び
図2Bでは、ウイルス懸濁液を、Cu、AlN、及びSi3N4粉末に1分間曝露し、上清中及び粒子上のウイルスRNAを、それぞれウイルスN遺伝子「セット1」及び「セット2」プライマーを使用して評価した。上清及びペレット試料について収集したデータを、未処理のまま放置した懸濁液中のウイルスN遺伝子RNAの量と比較して示す。
図2C及び
図2Dでは、それぞれウイルスN遺伝子「セット1」及び「セット2」プライマーについて、上清をCu、AlN、及びSi3N4粉末に10分間曝露した後のRT-PCR試験の結果を示す。統計を、対応のない両側スチューデントのt検定(n=3)に従って挿入図に示す。
【
図2D】銅又は窒化物粒子への曝露後に重度の分解を受けたウイルスRNAを示すグラフ表示である。
図2A及び
図2Bでは、ウイルス懸濁液を、Cu、AlN、及びSi3N4粉末に1分間曝露し、上清中及び粒子上のウイルスRNAを、それぞれウイルスN遺伝子「セット1」及び「セット2」プライマーを使用して評価した。上清及びペレット試料について収集したデータを、未処理のまま放置した懸濁液中のウイルスN遺伝子RNAの量と比較して示す。
図2C及び
図2Dでは、それぞれウイルスN遺伝子「セット1」及び「セット2」プライマーについて、上清をCu、AlN、及びSi3N4粉末に10分間曝露した後のRT-PCR試験の結果を示す。統計を、対応のない両側スチューデントのt検定(n=3)に従って挿入図に示す。
【
図3A】Cuが細胞を死滅させた細胞生存率に影響を及ぼすことなく、Si3N4がウイルス感染を抑制したことを示す画像である。VeroE6/TMPRSS2細胞に、(
図3A)曝露されていないビリオン、並びにSi3N4(
図3B)、AlN(
図3C)、及びCu(
図3D)に10分間UTE曝露したビリオンを接種した。
図3Eでは、接種しなかった細胞(「偽感染した」細胞とラベル付けされている)も調製し、比較のために画像化した。固定後、細胞を、抗SARSコロナウイルスエンベロープ抗体(赤色)、F-アクチンを可視化するためのファロイジン(緑色)、及び核を染色するためのDAPI(青色)で染色した。n=3の試料を代表する蛍光顕微鏡写真を示す。
【
図3B】Cuが細胞を死滅させた細胞生存率に影響を及ぼすことなく、Si3N4がウイルス感染を抑制したことを示す画像である。VeroE6/TMPRSS2細胞に、(
図3A)曝露されていないビリオン、並びにSi3N4(
図3B)、AlN(
図3C)、及びCu(
図3D)に10分間UTE曝露したビリオンを接種した。
図3Eでは、接種しなかった細胞(「偽感染した」細胞とラベル付けされている)も調製し、比較のために画像化した。固定後、細胞を、抗SARSコロナウイルスエンベロープ抗体(赤色)、F-アクチンを可視化するためのファロイジン(緑色)、及び核を染色するためのDAPI(青色)で染色した。n=3の試料を代表する蛍光顕微鏡写真を示す。
【
図3C】Cuが細胞を死滅させた細胞生存率に影響を及ぼすことなく、Si3N4がウイルス感染を抑制したことを示す画像である。VeroE6/TMPRSS2細胞に、(
図3A)曝露されていないビリオン、並びにSi3N4(
図3B)、AlN(
図3C)、及びCu(
図3D)に10分間UTE曝露したビリオンを接種した。
図3Eでは、接種しなかった細胞(「偽感染した」細胞とラベル付けされている)も調製し、比較のために画像化した。固定後、細胞を、抗SARSコロナウイルスエンベロープ抗体(赤色)、F-アクチンを可視化するためのファロイジン(緑色)、及び核を染色するためのDAPI(青色)で染色した。n=3の試料を代表する蛍光顕微鏡写真を示す。
【
図3D】Cuが細胞を死滅させた細胞生存率に影響を及ぼすことなく、Si3N4がウイルス感染を抑制したことを示す画像である。VeroE6/TMPRSS2細胞に、(
図3A)曝露されていないビリオン、並びにSi3N4(
図3B)、AlN(
図3C)、及びCu(
図3D)に10分間UTE曝露したビリオンを接種した。
図3Eでは、接種しなかった細胞(「偽感染した」細胞とラベル付けされている)も調製し、比較のために画像化した。固定後、細胞を、抗SARSコロナウイルスエンベロープ抗体(赤色)、F-アクチンを可視化するためのファロイジン(緑色)、及び核を染色するためのDAPI(青色)で染色した。n=3の試料を代表する蛍光顕微鏡写真を示す。
【
図3E】Cuが細胞を死滅させた細胞生存率に影響を及ぼすことなく、Si3N4がウイルス感染を抑制したことを示す画像である。VeroE6/TMPRSS2細胞に、(
図3A)曝露されていないビリオン、並びにSi3N4(
図3B)、AlN(
図3C)、及びCu(
図3D)に10分間UTE曝露したビリオンを接種した。
図3Eでは、接種しなかった細胞(「偽感染した」細胞とラベル付けされている)も調製し、比較のために画像化した。固定後、細胞を、抗SARSコロナウイルスエンベロープ抗体(赤色)、F-アクチンを可視化するためのファロイジン(緑色)、及び核を染色するためのDAPI(青色)で染色した。n=3の試料を代表する蛍光顕微鏡写真を示す。
【
図4】蛍光標識された細胞及び標識されていない細胞を、蛍光顕微鏡写真上でカウントし、感染細胞%及び生存細胞%を以下のように計算したことを示すグラフ表示である。感染細胞%=(抗SARSコロナウイルスエンベロープ抗体で染色された細胞の数)/(DAPIで染色された細胞の数)×100、及び生存細胞%=(ファロイジンで染色された細胞の数)/(DAPIで染色された細胞の数)×100。データは、n=3の試料の代表である。*及び**は、対応のない両側スチューデントのt検定(n=3)によって、それぞれp<0.05及び0.01であり、n.s.=有意ではない。
【
図5A】以下についてのラマンスペクトルのグラフ表示である。(a)感染していない細胞(
図5A)(すなわち、ビリオンに曝露されていない)、並びに(b)Si3N4(
図5B)、(c)AlN(
図5C)、及び(d)Cu(
図5D)に10分間曝露したSARS-CoV-2ビリオンに感染した細胞。
図5Eには、曝露されていないビリオンによって感染した細胞のラマンスペクトル(陰性対照)。
図5Fには、曝露されていないビリオン、及び異なる粒子に10分間曝露されたビリオン(ラベルを参照されたい)による感染細胞の割合の関数としての2つのトリプトファンT1及びT2バンド(それぞれ756及び875cm-1)の平均強度のプロット。挿入図には、酵素的IDO反応時のトリプトファンの異化における中間体であるN’-ホルミルキヌレニンの構造。
図5Gでは、グラフ表示は、Cu(II)イオンのキレート化の際にチロシン中の環振動(Ty2バンド)の消失を正当化し得るチロシン系ペプチドの3つの可能な立体配座を示す。
【
図5B】以下についてのラマンスペクトルのグラフ表示である。(a)感染していない細胞(
図5A)(すなわち、ビリオンに曝露されていない)、並びに(b)Si3N4(
図5B)、(c)AlN(
図5C)、及び(d)Cu(
図5D)に10分間曝露したSARS-CoV-2ビリオンに感染した細胞。
図5Eには、曝露されていないビリオンによって感染した細胞のラマンスペクトル(陰性対照)。
図5Fには、曝露されていないビリオン、及び異なる粒子に10分間曝露されたビリオン(ラベルを参照されたい)による感染細胞の割合の関数としての2つのトリプトファンT1及びT2バンド(それぞれ756及び875cm-1)の平均強度のプロット。挿入図には、酵素的IDO反応時のトリプトファンの異化における中間体であるN’-ホルミルキヌレニンの構造。
図5Gでは、グラフ表示は、Cu(II)イオンのキレート化の際にチロシン中の環振動(Ty2バンド)の消失を正当化し得るチロシン系ペプチドの3つの可能な立体配座を示す。
【
図5C】以下についてのラマンスペクトルのグラフ表示である。(a)感染していない細胞(
図5A)(すなわち、ビリオンに曝露されていない)、並びに(b)Si3N4(
図5B)、(c)AlN(
図5C)、及び(d)Cu(
図5D)に10分間曝露したSARS-CoV-2ビリオンに感染した細胞。
図5Eには、曝露されていないビリオンによって感染した細胞のラマンスペクトル(陰性対照)。
図5Fには、曝露されていないビリオン、及び異なる粒子に10分間曝露されたビリオン(ラベルを参照されたい)による感染細胞の割合の関数としての2つのトリプトファンT1及びT2バンド(それぞれ756及び875cm-1)の平均強度のプロット。挿入図には、酵素的IDO反応時のトリプトファンの異化における中間体であるN’-ホルミルキヌレニンの構造。
図5Gでは、グラフ表示は、Cu(II)イオンのキレート化の際にチロシン中の環振動(Ty2バンド)の消失を正当化し得るチロシン系ペプチドの3つの可能な立体配座を示す。
【
図5D】以下についてのラマンスペクトルのグラフ表示である。(a)感染していない細胞(
図5A)(すなわち、ビリオンに曝露されていない)、並びに(b)Si3N4(
図5B)、(c)AlN(
図5C)、及び(d)Cu(
図5D)に10分間曝露したSARS-CoV-2ビリオンに感染した細胞。
図5Eには、曝露されていないビリオンによって感染した細胞のラマンスペクトル(陰性対照)。
図5Fには、曝露されていないビリオン、及び異なる粒子に10分間曝露されたビリオン(ラベルを参照されたい)による感染細胞の割合の関数としての2つのトリプトファンT1及びT2バンド(それぞれ756及び875cm-1)の平均強度のプロット。挿入図には、酵素的IDO反応時のトリプトファンの異化における中間体であるN’-ホルミルキヌレニンの構造。
図5Gでは、グラフ表示は、Cu(II)イオンのキレート化の際にチロシン中の環振動(Ty2バンド)の消失を正当化し得るチロシン系ペプチドの3つの可能な立体配座を示す。
【
図5E】以下についてのラマンスペクトルのグラフ表示である。(a)感染していない細胞(
図5A)(すなわち、ビリオンに曝露されていない)、並びに(b)Si3N4(
図5B)、(c)AlN(
図5C)、及び(d)Cu(
図5D)に10分間曝露したSARS-CoV-2ビリオンに感染した細胞。
図5Eには、曝露されていないビリオンによって感染した細胞のラマンスペクトル(陰性対照)。
図5Fには、曝露されていないビリオン、及び異なる粒子に10分間曝露されたビリオン(ラベルを参照されたい)による感染細胞の割合の関数としての2つのトリプトファンT1及びT2バンド(それぞれ756及び875cm-1)の平均強度のプロット。挿入図には、酵素的IDO反応時のトリプトファンの異化における中間体であるN’-ホルミルキヌレニンの構造。
図5Gでは、グラフ表示は、Cu(II)イオンのキレート化の際にチロシン中の環振動(Ty2バンド)の消失を正当化し得るチロシン系ペプチドの3つの可能な立体配座を示す。
【
図5F】以下についてのラマンスペクトルのグラフ表示である。(a)感染していない細胞(
図5A)(すなわち、ビリオンに曝露されていない)、並びに(b)Si3N4(
図5B)、(c)AlN(
図5C)、及び(d)Cu(
図5D)に10分間曝露したSARS-CoV-2ビリオンに感染した細胞。
図5Eには、曝露されていないビリオンによって感染した細胞のラマンスペクトル(陰性対照)。
図5Fには、曝露されていないビリオン、及び異なる粒子に10分間曝露されたビリオン(ラベルを参照されたい)による感染細胞の割合の関数としての2つのトリプトファンT1及びT2バンド(それぞれ756及び875cm-1)の平均強度のプロット。挿入図には、酵素的IDO反応時のトリプトファンの異化における中間体であるN’-ホルミルキヌレニンの構造。
図5Gでは、グラフ表示は、Cu(II)イオンのキレート化の際にチロシン中の環振動(Ty2バンド)の消失を正当化し得るチロシン系ペプチドの3つの可能な立体配座を示す。
【
図5G】以下についてのラマンスペクトルのグラフ表示である。(a)感染していない細胞(
図5A)(すなわち、ビリオンに曝露されていない)、並びに(b)Si3N4(
図5B)、(c)AlN(
図5C)、及び(d)Cu(
図5D)に10分間曝露したSARS-CoV-2ビリオンに感染した細胞。
図5Eには、曝露されていないビリオンによって感染した細胞のラマンスペクトル(陰性対照)。
図5Fには、曝露されていないビリオン、及び異なる粒子に10分間曝露されたビリオン(ラベルを参照されたい)による感染細胞の割合の関数としての2つのトリプトファンT1及びT2バンド(それぞれ756及び875cm-1)の平均強度のプロット。挿入図には、酵素的IDO反応時のトリプトファンの異化における中間体であるN’-ホルミルキヌレニンの構造。
図5Gでは、グラフ表示は、Cu(II)イオンのキレート化の際にチロシン中の環振動(Ty2バンド)の消失を正当化し得るチロシン系ペプチドの3つの可能な立体配座を示す。
【
図6】Si3N4の表面におけるプロトン化アミン基Si-NH3+と、細胞におけるリジンのN末端C-NH3+との間の化学及び電荷の類似性を示す概略モデル(左パネル)、並びにSARS-CoV-2ウイルスと、Si3N4の表面における帯電した分子種(具体的には、プロトン化アミンの帯電を加える)及び溶出した種NH3/NH4+との相互作用(中央パネル)である。溶出したNは、固体表面に3+の帯電した空孔を残し(紫色の部位)、これは負に帯電したシラノールとともに発生する。溶出した窒素種(すなわち、2’-ヒドロキシル基の脱プロトン化、一過性のペンタホスフェートの形成、及び加水分解によるアルカリ性エステル交換によるRNA骨格中のホスホジエステル結合の切断)によるRNA骨格切断をもたらす3ステップのプロセスを右パネルに示す。プロトン化アミンとリジンのN末端との間の類似性が、SARS-CoV-2ビリオン不活化のための非常に効果的な「競合結合」の引き金となる可能性があり、一方で、溶出したアンモニアが、組み合わされた「捕まえて死滅させる」効果において、ビリオンRNAを致命的なほど分解することに留意されたい。
【
図7】24時間目及び48時間目のPEEK、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、Shapal(窒化ホウ素及び窒化アルミニウムの組み合わせ)、及び窒化ケイ素材料に対する平均細菌成長の対数比較である。
【
図8】15重量%/体積で30分間曝露した、α-及びβ-窒化ケイ素粉末に対する、SARS-CoV-2ウイルスのワシントン州バリアントのRT-qPCRゲノム試験を示すチャートである。
【
図9A】15重量%/体積で30分間曝露した、α-及びβ-窒化ケイ素粉末に対する、SARS-CoV-2ウイルスのワシントン州バリアントのプラークアッセイ試験の結果を示すチャートである。
【
図9B】15重量%/体積で30分間曝露した、α-及びβ-窒化ケイ素粉末に対する、SARS-CoV-2ウイルスの南アフリカバリアントのプラークアッセイ試験の結果を示すチャートである。
【
図9C】15重量%/体積で30分間曝露した、α-及びβ-窒化ケイ素粉末に対する、SARS-CoV-2ウイルスの英国バリアントのプラークアッセイ試験の結果を示すチャートである。
【0008】
対応する参照符号は、図面の図のうちの要素を示す。図面で使用される見出しは、特許請求の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の様々な実施形態が、以下に詳細に論じられる。具体的な実装形態が論じられるが、これは例示目的のみのために行われることを理解されたい。当業者は、他の構成成分及び構成が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用され得ることを認識するであろう。したがって、以下の説明及び図面は例示であり、限定するものとして解釈されるべきではない。本開示の完全な理解をもたらすために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかし、特定の事例では、説明を不明瞭にすることを避けるために、周知又は通例の詳細は説明されていない。本開示における1つ又はある実施形態への言及は、同じ実施形態又は任意の実施形態への言及となり得、そのような言及は、実施形態の少なくとも1つを意味する。
【0010】
「一実施形態」又は「ある実施形態」との言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所における「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではなく、他の実施形態と相互排他的な別個の実施形態又は代替の実施形態でもない。更に、いくつかの実施形態によって示され、他の実施形態によって示されない可能性がある様々な特徴が記載される。
【0011】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「有する(having)」、及び「含む(including)」という用語は、それらのオープンで非限定的な意味で使用される。「a」、「an」、及び「the」という用語は、複数及び単数を包含すると理解される。したがって、「その混合物(a mixture thereof)」という用語はまた、「それらの混合物(mixtures thereof)」に関する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「不活化する」又は「不活化」は、ウイルスを完全に除去するか、又はウイルスを非感染性にすることのいずれかによって、ウイルスが製品又は物体を汚染することを止めるウイルス不活化を指す。
【0013】
本明細書で使用される「物体」、「装置」又は「構成成分」という用語は、材料、組成物、デバイス、表面コーティング、及び/又は複合材を含む。いくつかの例では、装置は、様々な医療用デバイス又は器具、検査台、衣類、フィルタ、マスク及び手袋などの個人用保護具、カテーテル、内視鏡器具、ウイルスの持続性が疾患の拡散を促進し得る一般的に触れられる表面などを含み得る。装置は、金属、ポリマー、及び/又はセラミック(例えば、窒化ケイ素及び/又は他のセラミック材料)であってもよい。
【0014】
本明細書で使用される場合、「接触する」は、組成物又は装置によって影響を受けるように、組成物又は装置に物理的に接触しているか、又は十分に近接して近い範囲内にあることを意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「個人用保護具」又は「PPE」は、病原体又は他の有害物質への曝露を最小限に抑えるために、人によって着用されるか、又は他の方法で使用される任意のデバイス、物品、又は装置を意味する。PPEの非限定的な例には、ボディカバー、ヘッドカバー、靴のカバー、フェイスマスク、目のプロテクタ、顔及び目のプロテクタ、並びに手袋が含まれる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「窒化ケイ素」という用語は、α-Si3N4、β-Si3N4、SiYAlON、β-SiYAlON、SiYON、SiAlON、又はそれらの組み合わせを含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「構成成分」という用語は、抗病原体性目的に有用である、窒化物系材料、化合物、インプラント、デバイス、又は同様のものを含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、「有効濃度」という用語は、少なくとも30分間で病原体の少なくとも90%を不活化するのに必要な材料の濃度として定義される。非限定的な例として、α-Si3N4の有効濃度は、30分以内にウイルスの活性を少なくとも1-log10減少させる濃度であってもよい。
【0019】
本明細書で使用される用語は、一般に、開示の文脈内で、及び各用語が使用される特定の文脈において、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本明細書で論じられる用語のうちのいずれか1つ以上について代替の言語及び同義語を使用してもよく、ある用語が本明細書で詳述されるか、又は論じられるか否かに特別な重要性が置かれるべきではない。場合によっては、特定の用語の同義語が提示される。1つ以上の同義語の列挙は、他の同義語の使用を排除しない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む、本明細書のいずれかの例の使用は、単なる例示であり、本開示又は任意の例示的な用語の範囲及び意味を更に限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0020】
以下の説明において、本開示の追加の特徴及び利点を述べ、一部は、説明から明らかであるか、又は本明細書に開示される原理の実践により知得することができる。本開示の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される器具及び組み合わせによって実現し、取得することができる。本開示のこれら及び他の特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、又は本明細書で述べる原理の実践によって知得することができる。
【0021】
I.窒化ケイ素及び窒化アルミニウムを用いたSARS-CoV-2の不活化
本明細書には、ウイルスを、窒化ケイ素及び/又は窒化アルミニウムを含む物体又は組成物と接触させることによる、SARS-CoV-2ウイルスを不活化するための方法が提供される。窒化ケイ素及び/又は窒化アルミニウムは、連続的に結合し(すなわち、捕捉し)、次いで、ウイルスを不活化する(例えば、「捕まえて死滅させる」)。
【0022】
窒化ケイ素は、独特の表面化学を有し、生体適合性であり、多くの生物医学的用途を提供し、例えば、1)脊椎インプラント及び歯科用インプラントなどにおける同時の骨形成、骨誘導、骨伝導、及び静菌、2)異なる機構によるグラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方の死滅、3)ヒト及び動物のウイルス、細菌、及び真菌の不活化、並びに4)ポリマー若しくは金属マトリックス複合材、天然若しくは人工の繊維、ポリマー、又は窒化ケイ素粉末を含有する金属は、重要な窒化ケイ素の骨修復性、静菌性、抗ウイルス性、及び抗真菌性を保持する。
【0023】
窒化ケイ素(Si3N4)は、1950年以来多くの産業で使用されてきた非酸化物セラミック化合物である。Si3N4の製剤は、長期安全性、有効性、及び生体適合性が証明されている、頸椎及び腰椎の固定術における椎間スペーサとしての使用について、FDAに承認されている。Si3N4インプラントについての臨床データは、同種移植片、チタン、及びポリエーテルエーテルケトンなどの他の脊椎生体材料と有利に比較される。興味深い知見は、Si3N4インプラントが、他のインプラント材料(2.7%~18%)と比較した場合に、細菌感染の発生率が低い(すなわち、0.006%未満)ことである。この特性は、少量の窒素を溶出し、これがアンモニア、アンモニウム、及び細菌を阻害する他の反応性窒素種(RNS)に変換される、Si3N4の複雑な表面生化学を反映している。最近の調査はまた、水性懸濁液中の焼結Si3N4粉末へのウイルス曝露が、H1N1(インフルエンザA/Puerto Rico/8/1934)、ネコカリシウイルス、及びエンテロウイルス(EV-A71)を中和したことを見出した。これらの知見に基づいて、Si3N4は、SARS-CoV-2を不活化することができる可能性がある。
【0024】
窒化ケイ素は、水性媒体、又は生物学的流体及び組織と接触したときに窒素含有種が放出されることに起因して、抗病原体性であり得る。窒化ケイ素の表面化学は、以下のように示すことができる。
【0025】
【0026】
表面のシラノールが比較的安定であるため、窒素は、ケイ素よりも速く(数分以内に)溶出する。ウイルスの場合、驚くべきことに、窒化ケイ素は、ゲノムの完全性の喪失及びウイルス不活化をもたらすアルカリ性エステル交換によるRNA切断をもたらし得ることが見出された。赤血球凝集素の活性も減少させ得る。アンモニアの溶出は、これに付随するpHの増加とともに、ウイルス、細菌、及び真菌を不活化する。実施例に示されるように、驚くべきことに、窒化ケイ素及び窒化アルミニウムのそれぞれがSARS-CoV-2を不活化することが見出された。
【0027】
歴史的に認識されている殺ウイルス剤である銅(Cu)の使用は、その細胞毒性によって制限される。Cuとは対照的に、Si3N4で作られたセラミックデバイス又は装置は生体適合性であり、人体に有毒ではない。Si3N4の利点は、材料の汎用性である。したがって、Si3N4は、ポリマー、生物活性ガラス、更には他のセラミックに組み込まれて、Si3N4の好ましい生体適合特性及び抗ウイルス特性を保持する複合材及びコーティングを作製し得る。
【0028】
本開示は、SARS-CoV-2を、Si3N4及び窒化アルミニウム(AlN)粒子の水性懸濁液、及び2つの対照(すなわち、銅(Cu)粒子の懸濁液(陽性対照)及び抗ウイルス剤を含まないSARS-CoV-2ビリオンの偽懸濁液(陰性対照))に曝露する効果を比較する。ウイルスを含む様々な微生物を不活化するそのよく知られた能力のために、銅(Cu)を陽性対照として選択した。窒化アルミニウムは、Si3N4と同様に、水溶液中での表面加水分解が窒素の溶出をもたらし、それに付随するpHの増加と伴う窒素系化合物であるため、試験に含めた。同等の抗ウイルス現象及び抗菌現象は、全ての窒化物系化合物に対して有効であると考えられているので、窒素含有無機材料の抗病原体性機構についての更なる洞察を得るために、AlNを使用した。
【0029】
一般的な材料(例えば、金属、プラスチック、紙、及び布地)並びに接触面(例えば、ノブ、ハンドル、レール、机、及びデスクトップ)におけるヒトコロナウイルスの持続性は、疾患の院内拡散及び社会的拡散に寄与し得る。Warnes et al.は、室温、30~40%の湿度で、病原性ヒトコロナウイルス229E(HuCoV-229E)が、テフロン、ポリ塩化ビニル、セラミックタイル、ガラス、ステンレス鋼、及びシリコーンゴムなどの様々な材料の上で少なくとも5日間持続的に生存した後も、肺細胞モデルにおいて感染性を維持していたことを報告した。これらの研究者らはまた、Cu表面に対する模擬の指先汚染について、迅速なHuCoV-229E不活化(数分以内)を示した。Cuイオン放出及び活性酸素種(ROS)の生成は、ウイルス不活化に関与していた。銅及び真鍮表面との接触時間の増加は、ウイルスRNAのより大きな非特異的断片化を引き起こし、このことは、可逆的なウイルス不活化を示している。より最近になって、Doremalen et al.は、プラスチック、厚紙、ステンレス鋼、及び更にはCu表面上で、適用から4~72時間、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2ウイルスの両方の表面安定性を示した。呼吸用N95等級マスクは、微粒子を吸入し得る前に捕捉することができるが、SARS-CoV-2ウイルス粒子はマスクフィルタ内で最大7日間活性を維持する。したがって、Cu表面で観察されるようなウイルスの接触での死滅は、疾患緩和の戦略として新たな関心を集めている。
【0030】
驚くべきことに、内因性の窒素放出が可能な化合物、例えば、Si3N4及びAlNは、少なくともCuと同程度に効果的に、SARS-CoV-2ウイルスを不活化することができる。いずれか1つの理論に限定されるものではないが、RNA断片化、Cu及びAlNの場合には、直接的な金属イオン毒性などの複数の抗ウイルス機構が有効である可能性がある。しかし、Cu及びAlNの上清は細胞溶解を示したが、Si3N4は、代謝の変化を引き起こさない可能性がある。Si3N4ウイルス上清に曝露したVeroE6細胞のラマンスペクトルは、感染していない偽のラマンスペクトルと同様であった。これらの知見は、Si3N4、Cu及びAlNが、全てSARS-CoV-2ウイルスを不活化することができたが、Si3N4が最も安全であったことを示している。
【0031】
抗ウイルス効果は、電気的引力(インフルエンザウイルスの場合、エンベロープ糖タンパク質ヘマグルチニンへの「競合結合」を含む)及び反応性窒素種(RNS)によるウイルスRNA断片化に関連し得る。これらの現象は、水溶液中の自由電子及び負に帯電したシラノールの放出と合わさって、アンモニア(NH3)及びアンモニウム(NH4+)部分を形成するSi3N4の表面からの窒素のゆっくりと制御された溶出に起因する。
【0032】
SARS-CoV-2ウイルス不活化の文脈では、Si3N4の表面化学の2つの重要な態様が、基本的な役割を果たす。(i)Si3N4の表面にあるプロトン化アミノ基Si-NH3+と、ウイルス上のリジンのN末端C-NH3+との類似性、及び(ii)Si3N4加水分解に起因する気体アンモニアの溶出。SARS-CoV-2とSi3N4表面との間の相互作用の概略図を
図6(中央パネル)に示す。類似性は、この図の左パネルに示されている。これは、B型肝炎及びインフルエンザAなどのいくつかの成功した他の例に由来する、SARS-CoV-2不活化に対する非常に効果的な「競合結合」アプローチの引き金となる。溶出した(気体状)NH3の強い抗ウイルス効果は、ビリオンの浸透及びRNA骨格との反応に起因するものである。RNAは、そのホスホジエステル結合の加水分解を介してアルカリ性エステル交換を受ける。RNAホスホジエステル結合切断を
図6の右パネルに概略的に示す。本研究のRT-PCR及び蛍光顕微鏡法の結果は、以前の研究と一致して、両方の機構からのSARS-CoV-2の不活化への寄与を示唆している。上清又はSi3N4粒子のいずれかから回収されたウイルスRNAについて、
図1A~1Dに示されるTCID50の結果、及び
図2A~2DのRT-PCRデータは、これらの機構に関する重要な情報を提供する。Si3N4への1分間の曝露後に、99%を超える不活化が達成されたが(
図1B)、上清について部分的なウイルスRNA断片化のみが観察され(
図2A)、一方で、Si3N4粒子から回収されたRNA(
図2B)は、本質的に完全に断片化されていた。なお、Cuについては、逆の効果が見られた。このことは、
図6の左パネルに示すように、Si3N4の不活化の機構が、「競合結合」及びアンモニア毒の連続的な事象(一種の「捕まえて死滅させる」シナリオ)を有していたことを示唆している。Si3N4への10分間の曝露時の完全なRNA断片化は、窒素溶出が、ウイルス不活化を引き起こす反応のカスケードの引き金となる重要なプロセスであることを示唆している(
図6の右パネルを参照されたい)。
【0033】
いくつかの実施形態では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含む物体、物品、又は組成物は、ウイルス(例えば、SARS-Cov-2)に連続的に結合し、次いで、ウイルスを不活化するように操作可能であり得る。
【0034】
Si3N4の抗ウイルス効果は、Cuに匹敵し得る。Cuは、ヒトの健康にとって必須の微量元素であり、Cu+とCu2+との間の酸化還元状態を変化させることによる、いくつかの重要な酵素の電子供与体/受容体であるが、これらの特性は、細胞損傷も引き起こす可能性がある。抗ウイルス剤としてのその使用は、アレルギー性皮膚炎、過敏症及び多臓器機能障害によって制限される。対照的に、脊椎固定術中の恒久的に埋め込まれた材料としてのSi3N4の安全性は、実験及び臨床データによって十分に確立されている。したがって、窒化ケイ素を含む物体、物品、又は組成物は、Cuの悪影響なく、Cuと同様にウイルスを不活化するのに有効であり得る。
【0035】
Si3N4は、工業材料としてのその能力について、よく知られている。荷重を支持するSi3N4人工股関節軸受け及び脊椎固定インプラントは、Si3N4の優れた強度及び靱性のために、最初に開発された。後の研究は、整形外科用インプラントの設計において好まれるSi3N4の他の特性、例えば、骨伝導性の向上、静菌性、放射線透過性の改善、インプラント沈下がないこと、及び耐摩耗性を示した。したがって、Si3N4の表面化学、トポグラフィ、及び親水性は、二重の効果(すなわち、細菌の付着及びバイオフィルム形成を同時に防止しつつ、脊椎固定を促進するための骨形成活性の上方調節)に寄与する。バイオインプラントとしての実績に加えて、Si3N4の利点は、その製造の汎用性である。Si3N4の焼結粉末は、ポリマー、他のセラミック、バイオガラス、及び金属などの他の材料に組み込まれて、モノリシックなSi3N4の指数骨形成特性及び抗菌特性を維持する複合材構造を生成している。Si3N4の三次元積層堆積は、微生物の疾患の媒介物媒介性の伝播を減少させる医療における保護的な表面の製造を可能にし得る。Si3N4粒子を、フェイスマスク、保護ガウン、及び手術用ドレープなどの個人用保護具の布地に組み込むことは、医療従事者及び患者の安全に寄与し得る。
【0036】
Si3N4は、曝露後数分でSARS-CoV-2ウイルスを不活化する。いずれか1つの理論に限定されるものではないが、作用機序は、窒化アルミニウムなどの微量の表面消毒剤を発現する他の窒素系化合物と共通のものであろう。
【0037】
いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスを結合させ、不活化するために使用される物体は、物体の表面の少なくとも一部分に窒化ケイ素及び/又は窒化アルミニウム組成物を含み得るデバイス又は装置である。窒化ケイ素又は窒化アルミニウムコーティングは、粉末として物体の表面に適用されてもよい。いくつかの例では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウム粉末は、デバイスの少なくとも一部分に充填されてもよいか、埋め込まれてもよいか、又は含浸されてもよい。いくつかの実施形態では、粉末は、ミクロン、サブミクロン又はナノメートルサイズの範囲の粒子を有し得る。平均粒径は、約100nm~約5μm、約300nm~約1.5μm、又は約0.6μm~約1.0μmの範囲であり得る。他の実施形態では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムは、デバイスに組み込まれてもよい。例えば、物体は、物体の本体内に窒化ケイ素及び/又は窒化アルミニウム粉末を組み込んでいてもよい。一実施形態では、デバイスは窒化ケイ素で作製されてもよい。別の実施形態では、物体は窒化アルミニウムで作製されてもよい。更に別の実施形態では、物体は、窒化アルミニウム又は窒化ケイ素粒子のスラリー又は懸濁液を含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、物体は、紙、厚紙、布地、プラスチック、セラミック、ポリマー、ステンレス鋼、金属、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない他の材料を更に含んでもよい。物体のいくつかの非限定的な例には、手術用ガウン、手術用ドレープ、靴のカバー、キュービクルカーテン、チュービング、衣類、手袋、目のプロテクタ、手術用マスクを含むマスク及びフェイスシールド、PPE、病院検査台及び手術台などの台、椅子、ベッドフレーム、ベッドトレイ、机、備品、キャビネット、機器ラック、カート、ハンドル、ノブ、レール、玩具、水フィルタ、並びにフェイスマスクフィルタ、人工呼吸器フィルタ、空気濾過フィルタ、及び空気換気フィルタなどの空気フィルタ、又は空調フィルタが含まれ得る。いくつかの例では、フィルタは、空気が感染した肺の内外を移動するときにフィルタ内の抗菌性表面層が肺病原体を捕捉することができるように、麻酔器、換気装置、又はCPAP装置の濾過デバイス内にあってもよい。様々な実施形態では、物体は、医療用デバイス又は装置であり得る。医療用デバイス又は装置の非限定的な例としては、整形外科用インプラント、脊椎インプラント、椎弓根スクリュー、歯科用インプラント、留置カテーテル、気管内チューブ、大腸内視鏡検査スコープ、及び他の同様のデバイスが挙げられる。
【0039】
他の実施形態では、物体は、スラリー、懸濁液、ゲル、スプレー、塗料、又は練り歯磨きを含むがこれらに限定されない、窒化ケイ素又は窒化アルミニウム粉末をその中に組み込んだ組成物であってもよい。例えば、次いで表面に塗布される塗料などのスラリーに窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを添加することにより、抗菌性、抗真菌性、及び抗ウイルス性の表面を設けることができる。他の実施形態では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを任意の適切な分散剤及びスラリー安定化剤とともに水と混合し、その後、スラリーを様々な表面に噴霧することによって適用することができる。分散剤の例は、Dolapix A88である。
【0040】
窒化ケイ素又は窒化アルミニウムコーティングは、約1重量%~約100重量%の濃度で、物体の表面上に存在し得る。窒化ケイ素及び/又は窒化アルミニウムは、物体の上にコーティングされてもよいか、又は物体内で積層されてもよい。様々な実施形態では、コーティングは、約1重量%、2重量%、5重量%、7.5重量%、8.3重量%、10重量%、15重量%、16.7重量%、20重量%、25重量%、又は約30重量%の窒化ケイ素粉末又は窒化アルミニウム粉末を含み得る。いくつかの例では、コーティングは、約10重量%~約20重量%の窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含み得る。少なくとも1つの例では、コーティングは、約15重量%の窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含む。いくつかの実施形態では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムは、約1重量%~約100重量%の濃度で、物体内に(充填剤として)、又は物体の表面上に埋め込まれてもよい。様々な実施形態では、物体は、約1重量%、2重量%、5重量%、7.5重量%、8.3重量%、10重量%、15重量%、16.7重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33.3重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%から、100重量%までの窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含み得る。いくつかの例では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムは、約10重量%~約20重量%の濃度で、物体の表面上にあってもよい。少なくとも1つの例では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムは、約15重量%の濃度で、物体の表面上にあってもよい。いくつかの態様では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムの濃度は、紙、厚紙、布地、プラスチック、セラミック、ポリマー、ステンレス鋼、及び/又は金属などの物体の基剤の材料に依存し得る。いくつかの実施形態では、物体の基剤の材料はポリマーであってもよく、ポリマーは、物体に組み込まれ得る窒化ケイ素及び/又は窒化アルミニウムの量に実用上の限界(すなわち、パーコレーションの限界)を有し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、物体は、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムからなるモノリシックな構成成分であり得る。そのような物体は、内部空隙を有さず完全に高密度であってもよいか、又は約1%~約80%の範囲の空隙率を有する多孔質であってもよい。モノリシックな物体は、医療用デバイスとして使用されてもよいか、又はウイルスの不活化が望まれ得る装置で使用されてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、物体は、限られた期間、SARS-CoV-2ウイルスと接触し得る。ウイルスを不活化するために、物体をSARS-CoV-2ウイルスと約1分間~約2時間接触させてもよい。様々な例では、物体を、少なくとも30秒間、少なくとも1分間、少なくとも5分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも5時間、又は少なくとも1日間、SARS-CoV-2ウイルスと接触させてもよい。少なくとも1つの例では、物体を、患者に恒久的に埋め込んでもよい。少なくとも1つの例では、物体は、ユーザによって外部から着用されてもよい。別の例では、物体を、患者に恒久的に埋め込んでもよい。更に別の例では、物体は、高接触面であってもよい。更なる例では、物体は、患者の体液と連続的又は持続的に接触していてもよい。体液は、血液であってもよいし、気体(例えば、吸入若しくは呼気ガス)であってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、物体と少なくとも1分間、少なくとも5分間、又は少なくとも30分間接触した後、少なくとも70%不活化され、少なくとも75%不活化され、少なくとも80%不活化され、少なくとも85%不活化され、少なくとも90%不活化され、少なくとも95%不活化され、又は少なくとも99%不活性化される。少なくとも1つの例では、ウイルスは、物体と少なくとも1分間接触した後に少なくとも85%不活化される。別の例では、ウイルスは、物体と少なくとも30分間接触した後に少なくとも99%不活化される。更に別の例では、ウイルスは、物体と少なくとも1分間接触した後に少なくとも99%不活化される。
【0044】
抗ウイルス特性及び抗微生物特性を有する個人用保護具の物品も本明細書に提示される。物品は、物品に組み込まれた窒化ケイ素若しくは窒化アルミニウムを含んでもよいか、又は窒化ケイ素若しくは窒化アルミニウムは、物品の表面上にコーティングされてもよい。
【0045】
窒化ケイ素又は窒化アルミニウムコーティングは、約1重量%~約100重量%の濃度で、物品の表面上に存在し得る。様々な実施形態では、コーティングは、約1重量%、2重量%、5重量%、7.5重量%、8.3重量%、10重量%、15重量%、16.7重量%、20重量%、25重量%、又は約30重量%の窒化ケイ素粉末又は窒化アルミニウム粉末を含み得る。いくつかの例では、コーティングは、約10重量%~約20重量%の窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含み得る。少なくとも1つの例では、コーティングは、約15重量%の窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含む。いくつかの実施形態では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムは、約1重量%~約100重量%の濃度で、物品内に(充填剤として)、又は物品の表面上に埋め込まれてもよい。様々な実施形態では、物体は、約1重量%、2重量%、5重量%、7.5重量%、8.3重量%、10重量%、15重量%、16.7重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33.3重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%から、100重量%までの窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含み得る。いくつかの例では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムは、約10重量%~約20重量%の濃度で、物品の表面上にあってもよい。少なくとも1つの例では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムは、約15重量%の濃度で、物品の表面上にあってもよい。いくつかの態様では、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムの濃度は、物体の基剤の材料に依存し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、物品は、PPEである。いくつかの態様では、物品は、ボディカバー、ヘッドカバー、靴のカバー、フェイスマスク、顔及び目のプロテクタ、又は手袋である。いくつかの態様では、物品は、物品がSARS-CoV-2ウイルスと接触したときにウイルスを不活化するように操作可能である。
【0047】
II.窒化物系抗病原体性組成物及びデバイス、並びにその使用方法
本明細書には、ウイルス、細菌、及び真菌の不活化のための窒化物を含む抗病原体性組成物及びデバイスが提供される。本明細書で使用される場合、窒化物は、窒素が-3から+5の公称酸化状態を有する窒素の化合物である。好適な窒化物の非限定的な例としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせが挙げられる。窒化物は、高い固有窒素含有量を有することができる。例えば、窒化ケイ素(Si3N4)は、約40重量%の窒素を含有し、窒化ホウ素(BN)は、約56重量%の窒素を有し、窒化アルミニウム(AlN)は、34重量%の窒素を有し、窒化チタン(TiN)は、約22重量%の窒素を有する。
【0048】
窒化物は、一般に、水性媒体、又は生物学的流体及び組織と接触したときに窒素含有種が放出されることに起因して、抗病原体性であり得る。例えば、窒化ケイ素の表面加水分解化学は、以下のように示すことができる。
【0049】
【0050】
同様に、第2の例として、窒化ホウ素の表面加水分解化学は、以下のように示すことができる。
【0051】
【0052】
更に、水存在下では、アンモニア及びアンモニウムは、以下のようにpH依存性の平衡状態で存在する。
【0053】
【0054】
アンモニアの溶出、アンモニウム及び水酸化物イオンへのそのプロトン化、並びにそれに付随するpHの増加は、ウイルス、細菌、及び真菌を不活化する。窒化ケイ素と同様に、他の窒化物材料は、窒素の表面加水分解並びにその結果として生じるアンモニア及びアンモニウムの形成に起因して、抗病原体性特性を示し得る。以前は、β-窒化ケイ素のみが抗病原体性特性を示すと考えられていた。しかしながら、驚くべきことに、他の窒化物材料が同様の表面化学反応を示すことが見出された。これらの結果は、全ての窒化物が本質的に水に不溶性であり、それらの加水分解が、以前は、抗病原体性特性を生成するのに不十分であると考えられていたという事実を考慮すると、予想されないものであった。
【0055】
ある実施形態では、抗病原体性窒化物系組成物は、(i)通常の気体状態からではなく、固体状態からのアンモニアの遅いが連続的な溶出、(ii)真核細胞への損傷又は悪影響がない、及び(iii)pHの低下とともに増加する優れた溶出を示す溶出動態を示し得る。
【0056】
本明細書に開示される抗病原体性組成物及びデバイスは、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、及び窒化ジルコニウムのうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物及びデバイスは、α-窒化ケイ素などの窒化ケイ素を更に含み得る。他の実施形態では、窒化物は、α-窒化ケイ素であり得る。いくつかの実施形態では、窒化物は、窒化アルミニウムであり得る。更に他の実施形態では、抗病原体性組成物及びデバイスは、AlN及びBNの混合物などの窒化物混合物を含み得る。驚くべきことに、これらの組成物が、ウイルスを不活化することができることが見出された。
【0057】
窒化物系組成物は、粉末、粒状物、スラリー、懸濁液、コーティング、フィルム、及び/又は複合材であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、窒化物のマイクロメートル粒子又はナノメートル粒子を含み得る。窒化物の平均粒径は、約100nm~約5μm、約300nm~約1.5μm、又は約0.6μm~約1.0μmの範囲であり得る。別の実施形態では、組成物は、窒化物粒子のスラリー又は懸濁液を含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、抗病原体性組成物は、窒化物からなるモノリシックな構成成分であり得る。そのような構成成分は、内部空隙を有さず完全に高密度であってもよいか、又は約1%~約80%の範囲の空隙率を有する多孔質であってもよい。モノリシックな構成成分は、医療デバイスとして使用されてもよいか、又はウイルス、細菌、及び/若しくは真菌の不活化が望まれ得る装置で使用されてもよい。
【0059】
別の実施形態では、抗病原体性窒化物系組成物は、デバイス内に、又はデバイスの表面上のコーティング内に組み込まれ、ウイルス、細菌、及び真菌を不活化してもよい。デバイスの表面の少なくとも一部分は、窒化物系組成物を含むコーティングでコーティングされてもよい。好適なデバイスの非限定的な例としては、整形外科用インプラント、脊椎インプラント、椎弓根スクリュー、歯科用インプラント、留置カテーテル、気管内チューブ、大腸内視鏡検査スコープ、及び他の同様のデバイスが挙げられる。デバイス又は装置は、金属、ポリマー、及び/又はセラミックであり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、窒化物は、ポリマー及び布地、手術用ガウン、手袋、チュービング、衣類、空気及び水のフィルタ(例えば、麻酔機械、換気装置、又はCPAP機の濾過デバイス)、マスク、病院診察台及び手術台などのテーブル、机、備品、ハンドル、ノブ、玩具、及び空腸フィルタなどのフィルタ、又は歯ブラシなどの抗病原体性特性のための材料又は装置へのコーティングとして、内部に組み込まれてもよいか、又は適用されてもよい。
【0061】
窒化物系コーティングは、粉末としてデバイスの表面に適用されてもよい。いくつかの例では、窒化物粉末は、デバイスの少なくとも一部分に埋め込まれてもよいか、又は含浸されてもよい。いくつかの実施形態では、粉末は、マイクロメートル又はナノメートルのサイズであり得る。他の実施形態では、窒化ケイ素は、デバイスに組み込まれてもよい。例えば、デバイスは、デバイスの本体内に窒化物粉末を組み込んでいてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、抗病原体性窒化物系組成物は、水溶液中の窒化物粉末のスラリーであり得る。水性媒体は、水、生理食塩水、緩衝生理食塩水、又はリン酸緩衝生理食塩水であり得る。他の実施形態では、窒化物系組成物は、窒化物粉末と、局所適用に適したビヒクル(例えば、クリーム、ゲル、又はローション)との懸濁液又はエマルションであり得る。窒化物粉末は、約0.1体積%~約20体積%の濃度で組成物中に存在し得る。様々な実施形態では、スラリーは、約0.1体積%、0.5体積%、1体積%、1.5体積%、2体積%、5体積%、10体積%、15体積%、又は20体積%の窒化ケイ素を含み得る。いくつかの実施形態では、窒化物の濃度は、病原体を不活化するのに有効なものであり得る。
【0063】
他の実施形態では、窒化物系コーティングは、約1重量%~約100重量%の濃度で、デバイスの表面上又はデバイス内に存在し得る。様々な実施形態では、コーティングは、約1重量%、2重量%、5重量%、7.5重量%、8.3重量%、10重量%、15重量%、16.7重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33.3重量%、35重量%、又は40重量%の窒化物粉末を含み得る。少なくとも1つの例では、コーティングは、約15重量%の窒化物を含む。いくつかの実施形態では、窒化物は、約1重量%~約100重量%の濃度で、デバイス又は装置の中又は表面上に存在し得る。様々な実施形態では、デバイス又は装置は、約1重量%、2重量%、5重量%、7.5重量%、8.3重量%、10重量%、15重量%、16.7重量%、20重量%、25重量%、30重量%、33.3重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%から、100重量%までの窒化物を含み得る。いくつかの実施形態では、窒化物の濃度は、病原体を不活化するのに有効なものであり得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗病原体性窒化物系組成物又はデバイスは、ウイルス、細菌、及び/又は真菌を不活化してもよいか、又はその伝播を低下させてもよい。ウイルス、細菌、及び真菌は、哺乳動物細胞、動物細胞、及び/又は植物細胞に感染し得る。抗病原体性窒化物系組成物によって不活化され得るウイルスの比限定的な例としては、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)、ライノウイルス、インフルエンザウイルス(A、B、C、D)、及びネコカリシウイルスが挙げられる。抗病原体性窒化物系組成物又はデバイスは、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方を死滅させ得る。溶解され得る真菌の例としては、限定されないが、べと病、うどんこ病、灰色かび病、フザリウム株腐病、さび病、リゾクトニア根腐病、菌核病(Sclerotinia rot)、菌核病(Sclerotium rot)、又は他の農業に関連する疾患を引き起こすものが挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態では、病原体は、ヒト、動物、若しくは植物の表面上、又はヒト、動物、若しくは植物内にあってもよい。他の実施形態では、病原体は、無生物物体の表面上、又は無生物物体内にあってもよい。
【0066】
更に、本明細書には、ウイルス、細菌、及び/又は真菌を、本明細書に開示される抗病原体性窒化物系組成物と接触させることによる、病原体を不活化するための方法も提供される。ある実施形態では、方法は、デバイス又は装置を窒化物系組成物でコーティングすることと、コーティングされた装置を、ウイルス、細菌、又は真菌と接触させることと、を含み得る。別の実施形態では、方法は、ウイルス、細菌、及び/又は真菌を、窒化物系組成物を含む組成物と接触させることを含み得る。本組成物は、窒化物粉末又は粒子を含むスラリーであり得る。本組成物は、窒化物粉末を含む懸濁液又はエマルションであり得る。
【0067】
本明細書には、ヒト患者中のある場所で病原体を処理又は予防する方法も提供される。例えば、病原体は、ウイルス、細菌、又は真菌であり得る。本方法は、患者を、窒化物系組成物を含むデバイス、装置、又は組成物と接触させることを含み得る。本デバイス、装置、又は組成物は、約1重量%~約100重量%の窒化物を含み得る。いくつかの例では、デバイス又は装置は、デバイス又は装置の表面上に約1重量%~約100重量%の窒化物を含み得る。ある実施形態では、デバイス又は装置は、モノリシックな窒化物系セラミックであり得る。別の実施形態では、デバイス又は装置は、窒化物粉末コーティングなどの窒化物コーティングを含み得る。別の実施形態では、デバイス又は装置は、デバイスの本体内に窒化物を組み込んでいてもよい。例えば、窒化物粉末は、当該技術分野で既知の方法を使用して、デバイス又は装置の本体に埋め込まれてもよいか、又は含浸されてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、デバイス又は装置を、少なくとも1分間、少なくとも5分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも5時間、又は少なくとも1日間、患者又はユーザと接触させてもよい。少なくとも1つの例では、デバイス又は装置を、患者に恒久的に埋め込んでもよい。少なくとも1つの例では、デバイス又は装置は、ユーザによって外部から着用されてもよい。
【0069】
例示的な実施形態
実施形態1:病原体を不活化するための方法であって、病原体を、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される窒化物の有効濃度を含む組成物と接触させることを含み、窒化物の有効濃度が、病原体を不活化する、方法。
【0070】
実施形態2:組成物が、窒化ケイ素を更に含む、実施形態1の方法。
【0071】
実施形態3:組成物が、窒化アルミニウムを更に含む、実施形態1の方法。
【0072】
実施形態4:窒化物が、窒化ホウ素である、実施形態1の方法。
【0073】
実施形態5:組成物が、水性媒体中の窒化物粒子のスラリーを含む、実施形態1の方法。
【0074】
実施形態6:窒化物の有効濃度が、約0.1体積%~約20体積%である、実施形態5の方法。
【0075】
実施形態7:組成物が、窒化物の粉末を含む、実施形態1の方法。
【0076】
実施形態8:組成物が、デバイスの表面の少なくとも一部にわたってコーティングされ、かつ/又はデバイスに組み込まれる、実施形態7の方法。
【0077】
実施形態9:窒化物の有効濃度が、約1重量%~約100重量%である、実施形態8の方法。
【0078】
実施形態10:デバイスが、整形外科用インプラント、脊椎インプラント、椎弓根スクリュー、歯科用インプラント、留置カテーテル、気管内チューブ、大腸内視鏡検査スコープ、手術用ガウン、マスク、フィルタ、又はチュービングである、実施形態8又は9の方法。
【0079】
実施形態11:病原体が、ウイルス、細菌、又は真菌である、実施形態1~10のうちのいずれか1つの方法。
【0080】
実施形態12:ウイルスが、コロナウイルスである、実施形態11の方法。
【0081】
実施形態13:病原体が、表面上、又はヒト、動物、若しくは植物内にある、実施形態1~12のうちのいずれか1つの方法。
【0082】
実施形態14:病原体が、無生物物体の表面上にある、実施形態1~12のうちのいずれか1つの方法。
【0083】
実施形態15:病原体を不活化するための窒化物系組成物であって、組成物が、水性媒体中の窒化物粒子のスラリーを含み、窒化物が、約0.1体積%~約20体積%の濃度で存在し、濃度が、病原体を不活化するのに有効である、窒化物系組成物。
【0084】
実施形態16:窒化物が、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される、実施形態15の窒化物系組成物。
【0085】
実施形態17:組成物が、窒化ケイ素を更に含む、実施形態16の窒化物系組成物。
【0086】
実施形態18:組成物が、窒化アルミニウムを更に含む、実施形態16の窒化物系組成物。
【0087】
実施形態19:窒化物が、窒化ホウ素である、実施形態16の窒化物系組成物。
【0088】
実施形態20:病原体が、ウイルス、細菌、又は真菌である、実施形態15の窒化物系組成物。
【0089】
実施形態21:ウイルスが、コロナウイルスである、実施形態20の窒化物系組成物。
【0090】
実施形態22:病原体が、表面上、又はヒト、動物、若しくは植物内にある、実施形態15~21のうちのいずれか1つの窒化物系組成物。
【0091】
実施形態23:病原体が、無生物物体の表面上にある、実施形態15~21のうちのいずれか1つの窒化物系組成物。
【0092】
実施形態24:病原体を不活化するための窒化物系デバイスであって、デバイスが、デバイスの表面の少なくとも一部にわたってコーティングされ、かつ/又はデバイスに組み込まれる窒化物の粉末を含み、窒化物が、約10重量%~約30重量%の濃度で存在し、濃度が、病原体を不活化するのに有効である、窒化物系デバイス。
【0093】
実施形態25:窒化物が、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される、実施形態24の窒化物系デバイス。
【0094】
実施形態26:デバイスが、窒化ケイ素を更に含む、実施形態25の窒化物系デバイス。
【0095】
実施形態27:デバイスが、窒化アルミニウムを更に含む、実施形態25の窒化物系デバイス。
【0096】
実施形態28:窒化物が、窒化ホウ素である、実施形態25の窒化物系デバイス。
【0097】
実施形態29:病原体が、ウイルス、細菌、又は真菌である、実施形態24の窒化物系デバイス。
【0098】
実施形態30:ウイルスが、コロナウイルスである、実施形態29の窒化物系デバイス。
【0099】
実施形態31:病原体が、表面上、又はヒト、動物、若しくは植物内にある、実施形態24~30のうちのいずれか1つの窒化物系デバイス。
【0100】
実施形態32:病原体が、無生物物体の表面上にある、実施形態24~30のうちのいずれか1つの窒化物系デバイス。
【0101】
実施形態33:病原体を不活化するための方法であって、病原体を、有効濃度のα-窒化ケイ素を含むスラリーと接触させることを含み、窒化物の有効濃度が、病原体を不活化し、スラリー中のα-窒化ケイ素の有効濃度が、約15%w/vである、方法。
【0102】
実施形態34:スラリーが、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される窒化物を更に含む、実施形態33の方法。
【0103】
実施形態35:病原体を不活化するための方法であって、病原体を、窒化アルミニウムの有効濃度を含むスラリーと接触させることを含み、窒化物の有効濃度が、病原体を不活化し、スラリー中の窒化アルミニウムの有効濃度が、約15%w/vである、方法。
【0104】
実施形態36:スラリーが、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化セリウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン、窒化リン、窒化硫黄、窒化タンタル、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化イットリウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの組み合わせから選択される窒化物を更に含む、実施形態35の方法。
【実施例】
【0105】
実施例1:窒化ケイ素及び窒化アルミニウムによるSARS-CoV-2の迅速な不活化
本研究は、SARS-CoV-2ウイルスを、窒化ケイ素(Si3N4)粒子、窒化アルミニウム(AlN)粒子の水性懸濁液、及び2つの対照(すなわち、銅(Cu)粒子の懸濁液(陽性対照)及び抗ウイルス剤を含まないもの(陰性対照))に曝露する効果を比較した。ウイルスを含む様々な微生物を不活化するそのよく知られた能力のために、Cuを陽性対照として選択した。
【0106】
試験材料の調製
Si3N4、Cu、及びAlN粉末を商業的供給源から入手した。Si3N4粉末(90重量%のSi3N4、6重量%のY2O3、及び4重量%のAl2O3の公称組成)を、無機構成要素の水性混合及び噴霧乾燥、その後の噴霧乾燥した顆粒の焼結(約1700℃で約3時間)、熱間静水圧プレス(約1600℃、2時間、N2中140MPa)、水系粉砕、及び凍結乾燥によって調製した。得られた粉末の平均粒径は、0.8±1.0μmであった。受領したままのCu粉末(USPグレード99.5%純度)顆粒を粉砕して、Si3N4と同等の粒径を達成した。AlN粉末は、受領したままで1.2±0.6μmの平均粒径を有し、これはSi3N4と同等であった。
【0107】
哺乳動物及びウイルス細胞の調製
VeroE6/TMPRSS2哺乳動物細胞をウイルスアッセイで使用した。細胞を、G418ジサルフェート(1mg/ml)、ペニシリン(100単位/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)、5%ウシ胎児血清を追加したダルベッコ改変イーグル最小必須培地(DMEM)中で成長させ、加湿雰囲気中、37℃、5%CO2/95%中で維持した。SARS-CoV-2ウイルスのストックを、VeroE6/TMPRSS2細胞を用いて37℃で2日間増殖させた。ウイルス力価を、組織培養感染用量中央値(TCID50)によってアッセイした。
【0108】
実施例2:
ウイルスアッセイ
15重量パーセント(15重量%)のSi3N4、Cu、及びAlN粉末を、1mLのPBS(-)に別々に分散させ、続いてウイルス懸濁液(20μL中2×105のTCID50)を添加した。Cu粉末の密度がより高いことに起因して、その体積分率は、Si3N4のおよそ3分の1であった。4℃でゆっくりと手動で回転させることによって、1分間及び10分間の混合を行った。曝露後、粉末を、遠心分離(2400rpmで2分間)によってペレット化し、その後に0.1μm媒体を通して濾過した。上清を回収し、TCID50アッセイ、リアルタイムRT-PCR試験、及び蛍光イメージングに供した。抗ウイルス粉末を含まない偽の上清を含んで3連で実験を行った。96ウェルプレート中のVeroE6/TMPRSS2細胞のコンフルエントな単層に、0.5%のFBS DMEM(すなわち、維持培地)で10倍段階希釈した各ウイルス懸濁液50μL/ウェルを接種した。37℃で1時間のウイルス吸着を、10分ごとに傾けつつ行った。その後、50μL/ウェルの維持培地を添加した。プレートを5%CO2/95%加湿雰囲気中、37℃で4日間インキュベートした。感染細胞の細胞変性効果(CPE)を位相差顕微鏡下で観察した。その後、10μL/ウェルのグルタルアルデヒドを添加し、続いて0.5%のクリスタルバイオレットで染色することによって、細胞を固定した。TCID50を、Reed-Muench法に従って計算した。
【0109】
ウイルスRNAアッセイ
粉末への曝露後、140μLの上清をウイルスRNA抽出に使用した。遠心分離し、濾過した粉末の表面からもRNAを抽出した。QIAamp Viral RNA Miniキットを用いてRNA精製を行った。ReverTra Ace(登録商標)qPCR RT Master Mixを用いて、16μLの単離RNAのアリコートを逆転写した。定量的リアルタイムPCRを、2つの特異的ウイルスN遺伝子セットについてのStep-One Plus Real-Time PCRシステムプライマー/プローブを使用して行った。各20μLの反応混合物は、4μLのcDNA、8.8pmolの各プライマー、2.4pmolのプローブ及び10μLのGoTaq Probe qPCRマスターミックスを含有していた。増幅プロトコルは、95℃で3秒間の変性及び60℃で20秒間のアニーリング及び伸長の50サイクルからなっていた。
【0110】
免疫化学蛍光アッセイ
カバーガラス上のVero E6/TMPRSS2細胞に200μLのウイルス上清を接種した。37℃で1時間のウイルス吸着後、細胞をCO2インキュベーター内で維持培地と7時間インキュベートした。感染細胞の検出のために、これらの細胞をTBS(20mMのTris-HCl pH7.5、150mMのNaCl)で洗浄し、室温(RT)で10分間、4%PFAで固定し、続いてRTで5分間、TBS中0.1%のTriton Xで膜透過処理した。細胞を、TBS中2%のスキムミルクを用い、RTで60分間かけてブロックし、抗SARSコロナウイルスエンベロープ(ウサギ)抗体(希釈=1:100)を用い、RTで60分間かけて染色した。緩衝液で洗浄した後、細胞をAlexa 594ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(1:500)及びAlexa 488ファロイジン(1:50)とともに暗所、RTで60分間インキュベートした。DAPIを含むProLong(商標)Diamond Antifade Mountantを封入培地として使用した。染色を蛍光顕微鏡BZX710下で観察した。全細胞数及び感染細胞数を、Keyence BZ-X Analyzerを使用して得た。
【0111】
ラマン分光法アッセイ
Vero E6/TMPRSS2細胞を、ガラスの場所において200μLの各ウイルス懸濁液で感染させた。37℃で1時間のウイルス吸着後、感染細胞をCO2インキュベーター中の維持培地で4時間インキュベートし、4%パラホルムアルデヒドを用い、RTで10分間固定した。蒸留水で2回洗浄した後、感染細胞を風乾し、ラマンマイクロプローブ分光計を使用してその場で分析した。ラマンスペクトルは、20倍光学レンズを備えた高感度分光器を使用して収集した。これは、二次元の共焦点撮像を伴う顕微鏡測定モードで操作された。光回路内のホログラフィックノッチフィルタを使用して、10mWで動作する532nm励起源を介して1.5cm-1のスペクトル分解能を効率的に達成した。ラマン発光を、空冷電荷結合素子(CCD)検出器(1024×256ピクセル)に接続された単一のモノクロメーターを使用してモニターした。取得時間は10秒に固定した。30のスペクトルを収集し、各分析時点について平均した。ラマンスペクトルを、市販のソフトウェアを使用して、Gaussian-Lorentzianにデコンボリューションした。
【0112】
統計分析
スチューデントのt検定により、Prismソフトウェアを使用して、n=3、及びp値0.01で、統計学的有意性を判定した。
【0113】
実施例3:
組織培養感染用量中央値
15重量%のSi3N4、Cu、及びAlN粉末についてのTCID50アッセイ結果を
図1A~1Dに示す。1分間及び10分間の不活化時間が、それぞれ、
図1A及び1B、並びに
図1C及び1Dに示される。陰性対照と比較して、3つの粉末は全て、2つの曝露時間について、SARS-CoV-2ビリオンの不活化に有効であった(99%を超える)。
【0114】
RNA遺伝子断片化
ウイルスRNAが、上清及び粉末の両方への曝露から断片化されたかどうかを調べるために、ウイルスのRNAのN遺伝子セットに対してRT-PCR試験を行った。結果を、それぞれ1分間及び10分間の曝露について、
図2A及び2B、並びに
図2C及び2Dに示す。ここでも再び、上清への1分間の曝露時の陰性対照と比較して、CuについてはRNAのほぼ完全な断片化が観察されたが、AlNによって、また、Si3N4によってより少ない程度まで、顕著な損傷が引き起こされた。上清への10分間の曝露後、RNAの実質的な切断が、3つの全ての材料についてみられた。Cuは、依然として最大の断片化を示したが、Si3N4は、同様の有効性を示し、AlNは、1分間の曝露条件と本質的に同一であった。ウイルスRNAは、1分間の曝露時のペレット化粉末から抽出されたRNAに基づいて、3つの全ての材料について実質的に検出不可能であった(
図2A及び2Bを参照されたい)。この結果は、上清中のウイルスRNAの低下が、粉末へのRNAの付着によるものではなく、むしろ直接的な分解によるものであったことを示唆している。
【0115】
免疫蛍光試験
次いで、抗SARSコロナウイルスエンベロープ抗体(赤色)、生存細胞中のF-アクチンを染色するファロイジン(緑色)、及び細胞核染色のためのDAPI(青色)を使用した免疫蛍光イメージングを使用して、TCID50アッセイ及び遺伝子断片化の結果を確認した。
図3A~3Dは、(a)曝露されていないビリオン(すなわち、陰性対照)、並びに(b)Si3N4、(c)AlN、及び(d)Cuの10分間曝露したビリオンの上清を接種したVeroE6/TMPRSS2細胞集合体を表す蛍光顕微鏡写真を示す。
図3Eは、ウイルスを接種しなかった細胞(「偽感染した」細胞とラベル付けされている)を示す。陰性対照(
図3A)の赤色のスポットは、ビリオンがVero6E細胞の代謝に侵入してハイジャックしたことを示した。このことは、正常な代謝機能を示した偽感染した細胞(
図3E)とは対照的である。
【0116】
注目すべきことに、Si3N4からの上清を接種した細胞、また、それより程度は低いが、AlNからの上清を接種した細胞は、ほとんど感染を伴わずに、ほぼ正常な機能を示した。これとは逆に、Cu上清を接種した細胞は、本質的に死滅していた(すなわち、Fアクチンの完全な消失、
図3D)が、核の中に存在する青色がかった赤色の染色に基づき、ビリオンがいくつかの核をハイジャックしたように見えることから、生存しているが死滅する前の段階であった可能性がある。このことは、細胞溶解が、ウイルス感染の結果であっただけではなく、細胞内の遊離Cuイオンからの毒性効果にも起因することを示唆している。
図3A~3Eからの比色結果の定量化を
図4に示す。これらのデータは、陰性対照からの生存VeroE6細胞の約35%がビリオンに感染したが、一方で、Si3N4及びAlNからの上清を接種した細胞の2%及び8%のみがそれぞれ感染したことを示している。Cuの上清を接種した細胞の定量的評価は、それらの早すぎる死のために評価することができなかった。
【0117】
ラマン分光法
ラマン分光法により、様々な上清に曝露されたVeroE6細胞を調べて、感染並びにイオン(すなわち、Cu及びAl)毒性に起因する生化学的な細胞変化を評価した。
図5A~
図5Gは、(a)感染していないVeroE6/TMPRSS2細胞、並びに(b)Si3N4、(c)AlN、(d)Cu(陽性対照)、及び(e)抗ウイルス化合物なし(陰性対照)に10分間曝露したビリオンを含有する上清を接種した細胞についての、700~900cm-1の周波数範囲におけるラマンスペクトルを示す。基本的に重要なのは、トリプトファンのインドール環の環呼吸及びHはさみの振動バンドである(それぞれ、756及び875cm-1であり、T1及びT2とラベル付けされる)。トリプトファンは、タンパク質合成及び様々な免疫学的機能のための分子の生成において重要な役割を果たす。その立体異性体は、細胞膜内にタンパク質を固定するのに役立ち、その異化物は免疫抑制機能を有する。トリプトファンの異化は、ウイルス感染によって引き起こされる。これは、過剰反応性免疫応答から宿主細胞を保護するインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の酵素活性を介して起こる。IDOはトリプトファンをキヌレニンに、次いでN’-ホルミル-キヌレニンに還元する。IDO活性の増加はトリプトファンを枯渇させる。その結果、トリプトファンバンド(T1及びT2)の強度は、これらの生化学的変化の指標である。Cuで処理された試料を除き、
図5Fに示されるデータは、感染細胞の分率と相関するトリプトファンバンドの組み合わせの指数関数的減少を示す。(明確にするために、N’-ホルミル-キヌレニンの化学構造を挿入図に示す)。銅の異常は、その毒性の更なる証拠を提供する。VeroE6細胞は、トリプトファンを消費してCu2+を還元し、それをCu+として安定化した。
【0118】
アデニン、シトシン、グアニン、及びチミンの環伸長振動に起因するラマンシグナルは、725、795、680及び748cm-1で見られ、
図5A~5EではそれぞれA、Cy1、G、及びThとラベル付けされている)。これらのバンドは、ウイルス曝露後に保存された。しかし、Cu曝露ビリオンに感染した細胞では、それぞれTy1及びTy2とラベル付けされた642及び832cm-1のチロシンを表す系統に異常があった。チロシンの環呼吸バンドTy2は、他の試料と比較して非常に弱かった(
図5Dを
図5Bとともに参照されたい)。逆に、C-C結合に関連するTy1シグナルは強いままであった。これは、チロシンの芳香環がCuイオンをキレート化したことを示唆している。これは、C-Cシグナルが変化しないままチロシン環呼吸モードのみが減少した理由を説明する。チロシン中の3つの可能なCu(II)キレート化立体配座を
図5Gに示す。
【0119】
AlNで処理されたビリオンに曝露したVeroE6について(
図5C)、トリプトファンT1及びT2バンドは保存されたが、DNAシトシン中の環屈曲に起因する615及び約700cm-1のバンド(
図5A~5EにおいてCy2及びCy3としてそれぞれラベル付けされている)は、ほとんど消失した。それらの消失は、進行性のヌクレオソーム間DNA切断又は複合体の形成のいずれかに起因するものであり、両方とも毒性に関連する。シトシンシグナルの損失は、Alイオンによる毒性効果として解釈されるが、銅よりもはるかに重要ではない。Al3+は、ヌクレオチド塩基中のカルボニルO及び/又はN環供与体と相互作用し、PO2基の骨格に、及び/又はキレート化によってG-C塩基のグアニンN-7部位に、選択的に結合する。
【0120】
中程度から重度の毒性をもたらしたCu及びAlNの上清へのVeroE6細胞の曝露とは異なり、Si3N4は、トリプトファン、チロシン及びシトシンの修飾を引き起こさなかった。Si3N4ウイルス上清のスペクトルの形態は、感染していない偽懸濁液のものと密接に一致した(
図5A及び5Bを参照されたい)。
【0121】
実施例4:窒化アルミニウム及び窒化ホウ素材料のバイオフィルムアッセイ
この研究は、窒化ケイ素及び他のセラミック材料の生体材料変形に対するStaphylococcus epidermidisバイオフィルム成長を、陽性対照としてのPEEKとともに比較するために実施した。観察中のセラミック材料には、アズファイア窒化ケイ素(AFSN)、窒化アルミニウム(AlN)、2つのグレードの窒化ホウ素(BN:AX05BN及びPCBN1000)、並びにShapal(AlN及びBNの混合物)が含まれていた。
【0122】
基本的な統計分析のために、24時間及び48時間の時点で、各試料材料について、3の反復を選択した。試料を、アルコール中、5分間超音波撹拌しつつ洗浄し、その後、5分間超音波撹拌を使用してDI水ですすぎ、次いで、試料を、各側面へのUV-C光曝露により30分間滅菌し、接種前に試料を少なくとも60分間休ませることによって、試料を調製した。
【0123】
7%のグルコース、1×PBS、及び10%のヒト血漿を合わせ、次いで、Staphylococcus epidermidisの小さなアリコートとともに接種することによって、細菌培地を調製した。分光光度計を使用して、初期吸光度値を得た。次いで、培地を、37℃及び175rpmで6時間、振盪インキュベーター中に配置し、0.05AUの吸光度値(以前に生成した成長曲線に従って105細胞/mLに対応する)が達成されるまで、細菌を増殖させた。
【0124】
各滅菌試料をウェルプレートに配置し、7mLの液体培地を添加した。ウェルプレートを、37℃、125rpmで24時間、振盪インキュベーター内に配置した。t=24時間で、液体培地を除去し、7mLの新鮮な培地を添加した。ウェルプレートを更に24時間、振盪インキュベーターに戻した。
【0125】
試料を適切な時点(24又は48時間)で除去し、125rpmで2分間、振盪インキュベーター内の新鮮なウェルプレート中、5mLの1×PBSで洗浄した。各試料を、新鮮な1×PBS中で浸漬洗浄した。試料を、50mLの遠心チューブ内の10mLの1×PBS中に配置し、2分間激しくボルテックス撹拌した。
【0126】
ディスク直径、幅、及び重量を使用して、表面積測定値を得た。各ペトリフィルム上のコロニーの数をカウントし、記録し、比較した。
【0127】
各試料のバイオフィルム溶液を、1×PBSで連続的に希釈し、元の試料の1倍、1/10倍、1/100倍、1/1,000倍、及び1/10,000倍の濃度を得た。各希釈物をペトリフィルム上に配置し、各試料についてのデータ比較において、最も低いカウント可能な希釈液を使用することができるようにした。37℃で24時間のインキュベート環境で成長させた後、細菌は、コロニー形成単位(CFU)として参照されるコロニーを形成した。CFUカウントを得たら、カウントに適切な希釈係数を乗算して、試料当たりのCFUを計算した。次に、総CFUを表面積によって除算して、異なるサイズの試料を正確に比較したため、報告された最終データは、CFU/mm2の単位である。統計分析を実施し、グラフ化した。表1及び
図7は、24時間及び48時間の両方での各材料の平均を示す。全ての試料に対し、95%信頼区間を有する不均一分散両側t検定を適用することにより、統計分析を行った。
【0128】
【0129】
24時間時点で、PEEKの細菌成長は、アズファイアβ-Si3N4(AFSN)、AlN、及びShapalよりも1桁以上大きく、いずれもp<0.05であった。PEEKと、AX05BNを除く全ての材料との間に統計的差異が見出された。AX05BNはまた、全ての他の材料と比較して、バイオフィルムの成長において、統計的に有意な差を有することも見出された。AlN、Shapal、AFSN、及びPCBN1000の間のバイオフィルム成長の比較は、全体的に顕著に異ならなかった。24時間時点について、AlN、Shapal、PCBN1000、及びAFSNは、最も効率的な抗菌特性を有すると結論付けることができる。
【0130】
48時間時点で、段落0093(実施形態25)に記載される連続希釈及びプレーティング手順を、残りの試料に対して実施した。PEEK上のバイオフィルム成長は、CFUカウントがセラミック材料のうちのいずれかよりも少なくとも1桁大きいままであったため、24時間時点で見出された結果と一致した。この比較についての代表的なp値は、1個のPEEK試料外れ値に起因して、視覚的な差を反映したものではなかった。予想される生物学的変動のため、この外れ値は、全体的な結果から得られた結論を変えるものではない。AFSN、Shapal、及びAlNと比較して、AX05BN及びPCBN1000の両方について、顕著な差が見出された。AFSN、AlN、及びShapalについてのp値は、AX05BNと比較した場合、それぞれp=0.032、p=0.031、及びp=0.033であった。48時間の結果は、24時間からの傾向と合致している。全ての材料は、時間経過に伴って、バイオフィルム成長の一貫した増加を有していた。
【0131】
24時間及び48時間の両方の時点で、Staphylococcus epidermidisは、予想されるように、セラミック変形物のうちのいずれかよりもPEEK上で顕著に密度の高いバイオフィルムを形成することが見出された。AX05BNは、得られたCFUカウントがPEEKと顕著に異ならなかったため、この実験で評価された他のセラミック材料ほど効率的に性能を発揮しなかった。Shapal、AlN、及びAFSNは、同様のバイオフィルム成長を有しており、S.epidermidis表面付着及びコロニー形成に抵抗する能力を強調した。それらの細菌耐性は、非常によく似ていたが、AlNは、24時間及び48時間の時点の評価の両方において、バイオフィルム形成の抵抗においてPEEK、AX05BN、PCBN1000、Shapal、及びAFSNを上回った。Shapal及びAFSNは、その抗菌特性において、AlNにすぐに続くものであった。
【0132】
これらの結果は、セラミック材料が、バイオフィルム耐性においてPEEKを顕著に上回るという以前の結論を裏付ける。セラミック試料内の比較は、AX05BNが、他のセラミック組成物よりも細菌の付着に抵抗する効率が顕著に低いことを示す。Shapal、AlN、及びAFSNの間に顕著な差は見られなかったが、AlNは、両方の時点でバイオフィルム形成がわずかに少なかった。
【0133】
実施例5:アルファ-窒化ケイ素及びベータ-窒化ケイ素によるSARS-CoV-2の迅速な不活化
2つの窒化ケイ素粉末を調製した。β-窒化ケイ素粉末は、90重量%のβ-Si3N4、6重量%のイッティラ(yttira)(Y2O3)、及び4重量%のアルミナ(Al2O3)の公称組成を有していた。粉末はそれぞれ、有機構成要素の水性混合及び噴霧乾燥、その後の約1700℃で約3時間の噴霧乾燥した顆粒の焼結によって調製された。次に、焼結した顆粒を約1600℃で2時間、窒素中、140MPaで高温静水圧プレスした。プレスに続いて、水系粉砕及び凍結乾燥を行った。
【0134】
α-窒化ケイ素粉末は、約2重量%のSiO2を含む、98重量%の純粋なSi3N4であった。市販の高純度α-窒化ケイ素を空気中、約300℃で約1時間加熱し、次いで、室温まで冷却することによって、調製した。
【0135】
抗ウイルス試験を実施するために、SARS-CoV-2ウイルスのワシントン州バリアントを、2×104ビリオン/mLの濃度になるまで、DMEM成長培地で希釈した。次いで、4mLの希釈したウイルス溶液を、15重量%/体積(w/v)でα-又はβ-窒化ケイ素粉末のいずれかを含有するチューブに添加した。Si3N4を含まないウイルスを、対照として並列で処理した。十分な接触を確保するために、チューブを30秒間ボルテックス撹拌し、次いで、チューブリボルバに30分間配置した。試料を遠心分離し、上清を収集し、0.2μmフィルタを通して濾過した。清澄化した上清内の残りの感染性ウイルス中のRNAを、ペレットとともに単離し、RT-qPCR法によって定量化した。
【0136】
上清を、プラークアッセイ試験方法にも供した。
図8に提供される結果は、ウイルスのみの対照のゲノムコピーが、約1×106/mLの濃度を有し、一方で、β-窒化ケイ素粉末の1つが、およそ4.3×104/mL(95.9%)までのビリオンの減少を示し、α-窒化ケイ素の2つの異なるロットが、およそ1×103/mL(99.9%)までのビリオンの減少を示した。この同じ一連の試験では、2つのα-窒化ケイ素からのペレット化された試料は、生存ビリオンをまったく含まないことが見出された。
【0137】
プラークアッセイ試験結果を
図9Aに提供する。これらのデータは、1.25~3.5log10(約93%~99.97%)の範囲のβ-窒化ケイ素粉末についてのウイルス活性の減少を示し、一方で、α-窒化ケイ素粉末は、4.5log10を超える(99.997%を超える)減少を示した。β-窒化ケイ素粉末の表面加水分解の変動は、観察された結果の範囲につながったと考えられる。しかしながら、RT-qPCRとプラークアッセイ法を比較すると、SARS-CoV-2ビリオンが、窒化ケイ素とともにペレット化されておらず、そのRNA構造が、窒化ケイ素とともにインキュベートされたときに損傷を受けることを示唆している。
【0138】
上に記載したのと同じ粉末及び方法を使用して、SARS-CoV-2ウイルスの南アフリカバリアントに対するα-及びβ-窒化ケイ素粉末の有効性について、プラークアッセイ試験を行った。結果を
図9Bに示す。α-窒化ケイ素は、ウイルスを4.5log10を超えて減少させ(99.9997%)、非常に効果的であることが判明し、β-窒化ケイ素粉末は、およそ1-log10の減少(約90%)を示している。
【0139】
同様に、上に与えられたのと同じ材料及び手順を使用して、SARS-CoV-2ウイルスの英国バリアントに対するα-及びβ-窒化ケイ素粉末の有効性について、プラークアッセイを行った。結果を
図9Cに提供する。α-窒化ケイ素粉末は、ウイルス数を約4-log10(99.99%)まで減少させ、β-窒化ケイ素を約1-log10(約90%)まで減少させた。
【0140】
いくつかの実施形態を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な修正、代替の構成、及び均等物を使用することができることが当業者によって認識されるであろう。更に、本発明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、いくつかの周知のプロセス及び要素は記載されていない。したがって、上記の説明は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0141】
当業者は、ここに開示される実施形態が限定ではなく例として教示することを理解するであろう。したがって、上記の説明に含まれるか、又は添付の図面に示される事項は、例示的なものとして解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載された全ての一般的及び特定の特徴、並びに本方法及びシステムの範囲の全ての記述を包含することを意図しており、これらは、言語の問題として、それらの間にあると言われる場合がある。
【国際調査報告】